(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】免疫アッセイにおける干渉の低減
(51)【国際特許分類】
G01N 33/536 20060101AFI20241203BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20241203BHJP
G01N 21/76 20060101ALI20241203BHJP
C07K 16/10 20060101ALN20241203BHJP
C07K 14/005 20060101ALN20241203BHJP
C07K 14/195 20060101ALN20241203BHJP
【FI】
G01N33/536 A
G01N33/53 N
G01N21/76
C07K16/10
C07K14/005
C07K14/195
(21)【出願番号】P 2020548682
(86)(22)【出願日】2019-03-13
(86)【国際出願番号】 EP2019056304
(87)【国際公開番号】W WO2019175254
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-03-11
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】ポルツ,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】モック,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ウプマイアー,バルバラ
(72)【発明者】
【氏名】ツァルント,トラルフ
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0104632(US,A1)
【文献】国際公開第2017/093271(WO,A1)
【文献】国際公開第2003/002974(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2008/0153176(US,A1)
【文献】特表2002-535605(JP,A)
【文献】特開平05-133952(JP,A)
【文献】特表2018-501483(JP,A)
【文献】国際公開第2018/037060(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 -33/98
G01N 21/76
C07K 14/005-16/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の分析物を決定するための方法であって、以下の工程:
a)試料を少なくとも第1および第2検出化合物と接触させ;
b)少なくとも1種類の検出化合物を含む複合体の量を決定し;そして
c)工程b)の結果に基づいて該試料中の分析物を決定する;
を含み、該第1検出化合物が第1結合部分および第1標識を含み、該第2検出化合物が第2結合部分および第2標識を含み
、
該第1標識および該第2標識が同一ではなく
、かつ同じ検出可能な特性を提供する、
該第1および/または該第2検出化合物によって提供される検出可能な特性が、放射特性、発光特性、または化学発光特性である、そして
該方法が免疫アッセイである、方法。
【請求項2】
前記第1検出化合物中の標識が、Ru(bpy)
2-bpyCO-OSu(CAS登録番号137323-76-3)を含み、そして/または前記第2検出化合物中の標識が、スルホ-BPRu NHSエステル(CAS登録番号482618-42-8)を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程b)において複合体の量を決定することが、第1検出化合物の検出可能な特性および第2検出化合物の検出可能な特性を検出することを含み、
または第1検出化合物の検出可能な特性および第2検出化合物の検出可能な特性を同時に検出することを含む、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
前記の試料が、体液
、血液、血清または血漿試料である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記の分析物がポリペプチドである、請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記の分析物が、抗体
、抗A型肝炎抗体または抗トキソプラズマ抗体である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記の分析物が、病原性生物由来の抗原
、ウイルス抗原または細菌抗原である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
試料中の分析物を
免疫アッセイにより検出するためのキットであって、少なくとも分析物に関する第1および第2検出化合物を含み、
該第1検出化合物が第1結合部分および第1標識を含み、該の第2検出化合物が第2結合部分および第2標識を含み
、
該第1標識および該第2標識が同一ではな
く、かつ同じ検出可能な特性を提供する、そして
該第1および/または該第2検出化合物によって提供される検出可能な特性が、放射特性、発光特性、または化学発光特性である、
前記キット。
【請求項9】
前記のキットが、さらに前記の分析物に関する少なくとも1種類の捕捉化合物および/または該捕捉化合物もしくは少なくとも該分析物を含む試料の構成要素を固定化するための固体支持体を含む、請求項
8に記載のキット。
【請求項10】
試料中の分析物を
免疫アッセイにより決定するためのデバイスであって、分析物に関する少なくとも第1および第2検出化合物、ここで、該第1検出化合物は第1結合部分および第1標識を含み、そして該第2検出化合物は第2結合部分および第2標識を含み
、
ここで、該第1標識および該第2標識は同一ではな
く、かつ同じ検出可能な特性を提供する、そして
該第1および/または該第2検出化合物によって提供される検出可能な特性が、放射特性、発光特性、または化学発光特性であり、
そして該第1標識および該第2標識から得られる少なくとも1種類のシグナルを決定するための手段を含む、前記デバイス。
【請求項11】
分析物を
免疫アッセイにより検出するための、少なくとも第1および第2検出化合物を含む組成物の使用であって、該第1検出化合物が第1結合部分および第1標識を含み、該第2検出化合物が第2結合部分および第2標識を含み
、
該第1標識および該第2標識が同一ではな
く、かつ同じ検出可能な特性を提供する、そして
該第1および/または該第2検出化合物によって提供される検出可能な特性が、放射特性、発光特性、または化学発光特性である、
前記使用。
【請求項12】
前記第1および前記第2検出化合物の結合部分が同一である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の方法、請求項
8または
9に記載のキット、請求項
10に記載のデバイスおよび/または請求項
11に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以下の工程:a)前記の試料を少なくとも第1および第2検出化合物と接触させ;b)少なくとも1種類の検出化合物を含む複合体の量を決定し;そしてc)工程b)の結果に基づいて試料中の前記の分析物を決定する;を含む、試料中の分析物を決定するための方法に関し、ここで、前記の第1検出化合物は、第1結合部分および第1標識を含み、前記の第2検出化合物は、第2結合部分および第2標識を含み、かつここで、第1標識および第2標識は、同一ではない。本発明はさらに、試料中の分析物を検出するためのキットであって、前記の分析物に関する少なくとも第1および第2検出化合物を含み、前記の第1検出化合物が、第1結合部分および第1標識を含み、前記の第2検出化合物が、第2結合部分および第2標識を含み、かつ第1標識および第2標識が同一ではない、前記キットに;ならびに試料中の分析物を決定するためのデバイスであって、前記の分析物に関する少なくとも第1および第2検出化合物を含み、前記の第1検出化合物が、第1結合部分および第1標識を含み、前記の第2検出化合物が、第2結合部分および第2標識を含み、かつ第1標識および第2標識が同一ではなく、そして前記の第1標識および前記の第2標識から得られる少なくとも1つのシグナルを決定するための手段を含む、前記デバイスに;ならびに分析物を検出するための少なくとも第1および第2検出化合物を含む組成物の使用であって、前記の第1検出化合物が、第1結合部分および第1標識を含み、前記の第2検出化合物が、第2結合部分および第2標識を含み、かつ第1標識および第2標識が同一ではない使用に関する。
【発明の概要】
【0002】
臨床検査、特に免疫学的検査は、疾患の診断において非常に貴重なツールになっている。特に免疫アッセイは、複雑な混合物、例えば体液、例えば血液、血清または血漿中の単一の分析物または分析物の群を特異的に検出する可能性を提供してきた。しかし、免疫アッセイにおける干渉のいくつかの原因、例えば(少し例を挙げれば)干渉物質の捕捉化合物との交差反応性、検出化合物の固相への非特異的結合、ヘテロ親和性抗体またはヒト抗マウス抗体(HAMA)による捕捉化合物および検出化合物の“架橋”結合が、同定されている(例えば国際公開第2016097116 A1号;Park & Kricka (2013), David Wildにより編集されたThe Immunoassay Handbook (第4版)(Elsevier, Oxford: 403)中の第5.3章- Interferences in Immunoassay;Schiettecatte (2012), Interferences in Immunoassays, Advances in Immunoassay Technology, Dr. Norman H.L. Chiu (編者))。干渉のさらなる標的は、標識、すなわちアッセイにおけるシグナル生成単位であることができる(例えば、Buijs et al. (2011), Ann Clin Biochem. 48(Pt 3):276; Heijboer et al. (2009), Ann Clin Biochem.46(Pt 3):263; Ando et al. (2007), Intern Med. 46(15):1225)。
【0003】
競合免疫アッセイでは、試料中に含まれる分析物は、標識された分析物(特定剤(specifier))と捕捉化合物への結合に関して競合し、それは、しばしば抗体であり、または例えば病原体に対する抗体の存在が試験されるべきである場合、前記の病原体の抗原である。試料中の分析物の濃度が高い場合、特定剤の捕捉化合物への減少した結合をもたらし、シグナルの低減を引き起こす強い競合が存在し、それは、検査形式に応じて、定量的または定性的な検査結果をもたらす。抗標識干渉により引き起こされるシグナルの低減が存在する場合、これは、偽陽性の結果を引き起こし得る。
【0004】
非競合免疫アッセイでは、分析物は、分析物を、分析物に特異的に結合し、かつ標識自体を担持しているかまたは標識を担持する第2の分子の標的であるかのどちらかである化合物に接触させることにより検出される。従って、非競合免疫アッセイでは、分析物の量は、分析物および標識を担持している検出化合物の間に形成された複合体の量を決定することにより決定される。従って、類似の特異性の問題が、上記のように直面され得る。抗標識干渉は、標識に結合してシグナル収率における低減、それにより偽陰性の結果をもたらすことによりシグナルを低減する傾向がある。ある場合には、抗標識干渉は、非競合アッセイ形式においてもシグナルを増大させ、それにより偽陽性の結果をもたらし得る。
【0005】
現在、抗標識干渉をどのように低減するかに関して2つの異なる戦略が、知られている:最も一般的に使用されている方法は、干渉物質の標的(標識またはシグナルを生成することができないわずかに修飾された標的(標識類似体))をアッセイに通常は元の標識濃度を超える濃度で添加することである。標識または標識類似体の添加は、干渉物質に関する代替標的の役目を果たし、それは、干渉物質による標識への結合の低減をもたらし、干渉を排除または低減する。しかし、例えば活性な標識の添加はアッセイに干渉すると考えられるため、より多くの活性な標識を添加することによって干渉を十分に低減させることは、不可能である可能性がある。この場合に選択される方法は、シグナルを発生しないが干渉物質により標的とされる不活性な標識類似体を添加することである。しかし、反応性標識および標識類似体の間には構造的な違いがあるため、標識類似体の抗標識干渉を低減する効率は、限定され得る。
【0006】
標識特異的干渉を低減するための第2の可能性は、影響を受ける標識を、アッセイにおいて非反応性であるが干渉物質が標識に結合するのを遮蔽し、従って干渉の低減にもつながるアッセイに添加される結合パートナーにより、特異的に標的化することである。(例えばDE19519973A1、国際公開第2017093271A1号; Sapin et al. (2007), Clin Chern Lab Med. 45(3):416; DeForge (2010), J Immunol Methods. 362(1-2):70を参照)。しかし、そのような処置は、シグナル収率の著しい低減を必然的に伴い、それによって検出限界の低下または障害を引き起こし得る。
【0007】
解決しようとする課題
従って、本発明の目的は、上記のような問題を回避する改善した免疫アッセイを提供することである。
【0008】
課題を解決するための手段
これらの問題は、独立請求項の特徴を有する方法、キット、デバイスおよび組成物によって解決される。孤立した様式で、またはあらゆる任意の組み合わせで実現され得る典型的な態様が、従属請求項において列挙されている。
【0009】
従って、本発明は、以下の工程:
a)試料を少なくとも第1および第2検出化合物と接触させ;
b)少なくとも1種類の検出化合物を含む複合体の量を決定し;そして
c)工程b)の結果に基づいて試料中の前記の分析物を決定する;
を含む試料中の分析物を決定するための方法であって、前記の第1検出化合物が結合部分および第1標識を含み、かつ前記の第2検出化合物が結合部分および第2標識を含み、かつ第1標識および第2標識が同一ではない方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下で使用される際、用語“有する”、“含む(comprise)”もしくは“含む(include)”またはそれらのあらゆる任意の文法的バリエーションは、非排他的な方法で使用される。従って、これらの用語は、これらの用語によって導入された特徴の他にこの文脈で記載された実体にさらなる特徴が存在しない状況および1以上のさらなる特徴が存在する状況の両方を指すことができる。例として、“AはBを有する”、“AはBを含む(comprises)”および“AはBを含む(includes)”という表現は、Bの他に他の要素がAに存在しない状況(すなわち、AがB単独からなる、およびAが排他的にBからなる状況)およびBの他に1以上のさらなる要素、例えば要素C、要素CおよびD、またはさらに別の要素が実体Aに存在する状況の両方を指すことができる。
【0011】
さらに、以下で用いられる際、用語“好ましくは”、“より好ましくは”、“最も好ましくは”、“特に”、“より詳細には”、“具体的には”、“より具体的には”または類似の用語は、さらなる可能性を制限することなく任意の特徴と合わせて使用される。従って、これらの用語によって導入される特徴は、任意の特徴であり、特許請求の範囲を制限することは一切意図されていない。当業者は理解するであろうように、本発明は、代替の特徴を使用することにより実施されることができる。同様に、“本発明のある態様において”または類似の表現によって導入される特徴は、本発明のさらなる態様に関するいかなる制限もなく、本発明の範囲に関するいかなる制限もなく、かつそのようにして導入された特徴を本発明の他の任意の、または任意ではない特徴と組み合わせる可能性に関するいかなる制限もなく、任意の特徴であることが意図されている。
【0012】
別途示されていない場合、用語“約”は、関連分野における一般的に受け入れられている技術的正確さでの示された値に関し、好ましくは示された値±20%、より好ましくは±10%、最も好ましくは±5%に関する。さらに、用語“本質的に”は、示された結果または使用に対する影響を有する逸脱が存在しないこと、すなわち可能性のある逸脱が、示された結果を±20%、より好ましくは±10%、最も好ましくは±5%より大きく逸脱させないことを示す。従って、“から本質的になる”は、明記された構成要素を含むが、不純物として存在する物質、その構成要素を提供するために使用されたプロセスの結果として存在する不可避な物質、および本発明の技術的作用を達成する以外の目的のために添加された構成要素を除く他の構成要素を除外することを意味する。例えば、句“から本質的になる”を使用して定義された組成物は、あらゆる既知の許容可能な添加剤、賦形剤、希釈剤、キャリヤー等を包含する。好ましくは、構成要素のセットから本質的になる組成物は、5重量%未満、より好ましくは3重量%未満、さらにもっと好ましくは1重量%未満、最も好ましくは0.1重量%未満の明記されていない構成要素(単数または複数)を含むであろう。
【0013】
本発明の方法は、一態様において、インビトロの方法である。さらに、それは、具体的に言及された工程に加えて工程を含むことができる。特に、工程a)は、試料を提供する工程により先行されることができ、または工程a)および/もしくはb)は、結合および検出を容易にするためにさらなる化合物の添加を含むことができる。さらに、一部または全部の工程は、自動化された装置によって支援されることができる。一態様において、方法は、免疫学的方法であり、すなわち、一態様において、分析物および検出化合物の少なくとも一方は、抗体であるか、または抗体を含む。
【0014】
用語“生物学的分子”は、当業者に既知であり、典型的には少なくとも1つの生物の代謝によって生成された分子に関する。従って、用語“生物学的高分子”は、一態様において単量体性前駆体から生物によって生成されたポリマーに関する。典型的な生物学的高分子は、ポリペプチド、DNA、RNAまたは多糖類である。
【0015】
用語“ポリペプチド”は、本明細書で使用される際、一態様において、具体的に示されたポリペプチドのバリアントおよびフラグメントを含む。バリアントは、具体的に示されたアミノ酸配列と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。パーセント同一性の値は、好ましくは、アミノ酸配列領域全体にわたって計算される。様々なアルゴリズムに基づく一連のプログラムが、異なる配列を比較するために当業者に利用可能である。この文脈では、NeedlemanおよびWunschまたはSmithおよびWatermanのアルゴリズムが特に信頼できる結果を与える。配列のアラインメントを実施するために、プログラムPileUp(J. Mol. Evolution., 25, 351-360, 1987, Higgins et al., CABIOS, 5 1989: 151-153)またはプログラムGapおよびBestFit[Needleman and Wunsch (J. Mol. Biol. 48; 443-453 (1970))およびSmith and Waterman (Adv. Appl. Math. 2; 482-489 (1981))](それは、GCGソフトウェアパケット[Genetics Computer Group, 575 Science Drive, 米国ウィスコンシン州マディソン 53711 (1991)]の一部である)が、用いられるべきである。上記でパーセント(%)で引用された配列同一性の値は、好ましくは以下の設定:Gap Weight:50、Length Weight:3、Average Match:10.000およびAverage Mismatch:0.000で配列領域全体にわたってプログラムGAPを使用して決定されるべきであり、それは、別途明記されない限り、常に配列アライメントに関する標準設定として使用されるものとする。前記のポリペプチド配列のいずれかのフラグメントを含むポリペプチドも、一態様において、本発明のポリペプチドとして包含される。フラグメントは、分析物として、または本明細書の他の箇所で明記されているような検出化合物中での使用に関してなお適している、例えば本明細書の他の箇所で明記されているような結合部分である活性を有するポリペプチドである。従って、ポリペプチドは、前記の生物学的活性を付与する本発明のポリペプチドのドメインを含むかまたはそれからなることができる。本明細書で意図されるようなフラグメントは、好ましくは、前記のアミノ酸配列のいずれか1つの少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、少なくとも80、少なくとも100または少なくとも150個の連続したアミノ酸を含む、前記のアミノ酸配列のいずれか1つの少なくとも50、少なくとも100、少なくとも250または少なくとも500個の連続したアミノ酸残基を含む。本発明のポリペプチドは、さらにポリペプチド配列も含有することができる。具体的には、本発明のポリペプチドは、融合タンパク質であることができ、ここで、融合タンパク質の1つのパートナーは、本明細書で明記されたポリペプチドである。そのような融合タンパク質は、追加の部分として、発現をモニタリングするためのポリペプチド(例えば緑色、黄色、青色または赤色の蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ等)または検出可能なマーカーもしくは精製目的もしくは前記のポリペプチドを固体表面に結合させるのための補助手段の役目を果たすことができるいわゆる“タグ”を含むことができる。異なる目的のためのタグは、当技術分野で周知であり、FLAGタグ、6-ヒスチジンタグ、MYCタグ、ビオチン等を含む。
【0016】
用語“抗体”は、本明細書で使用される際、モノクローナル抗体、少なくとも2つの完全な抗体から形成された多特異性抗体(例えば二重特異性抗体)および抗体フラグメントを、それらが本明細書の他の箇所で明記された所望の結合活性を示す限り、含む。一態様において、抗体は、抗血清中に含まれる抗体ではなく、典型的にはポリクローナル抗体またはポリクローナル血清ではない。従って、一態様において、抗体は、混合物中に含まれる抗体であり、ここで、前記の混合物中に含まれる抗体分子の少なくとも80%、一態様において少なくとも90%、さらなる態様において少なくとも95%が、本発明の検出化合物である。一態様において、抗体は、モノクローナル抗体である。一態様において、抗体は、完全長抗体または抗体フラグメントである。
【0017】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)は、異なるクラスに割り当てられることができる。5つの主な免疫グロブリンのクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMが、存在し、これらのいくつかは、さらに下位クラス(イソ型)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2に分けられ得る。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元構成は、周知であり、例えばAbbas et al., Cellular and Mol. Immunology, 第4版, W.B. Saunders, Co. (2000)において一般的に記載されている。抗体は、抗体の1つ以上の他のタンパク質またはペプチドとの共有結合的または非共有結合的会合によって形成されるより大きな融合分子の一部であることができる。
【0018】
用語“完全長抗体”、“完全な抗体”および“抗体全体”は、その実質的に完全な形態の抗体を指し、下記で定義されるような抗体フラグメントは指さないように、本明細書で互換的に使用される。その用語は、特に、Fc領域を含有する重鎖を有する抗体を指す。“抗体フラグメント”は、一態様において、その抗原結合領域を含む完全な抗体の一部を含む。抗体フラグメントの例は、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFvフラグメント;ダイアボディ;線状抗体;単鎖抗体分子;ならびに抗体フラグメントから形成された多特異性抗体を含む。抗体のパパイン消化は、それぞれが単一の抗原結合部位を有する“Fab”フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメントおよび残りの“Fc”フラグメントを生成し、その名前は、その容易に結晶化する能力を反映している。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有し、なお抗原を架橋することができるF(ab’)2フラグメントを生成する。“Fv”は、完全な抗原結合部位を含有する最小の抗体フラグメントである。一態様において、二本鎖Fv種は、緊密な非共有結合で会合した1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種では、1つの重鎖および1つの軽鎖可変ドメインが、軽鎖および重鎖が二本鎖Fv種における構造に類似した“二量体”構造で会合することができるように、柔軟なペプチドリンカーによって共有結合的に連結されていることができる。それぞれの可変ドメインの3つの超可変領域(HVR)が相互作用して抗原結合部位を定めることは、この構成においてである。6つのHVRは、全体として、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)でさえも、結合部位全体よりは低い親和性においてではあるが、抗原を認識して結合する能力を有する。用語“ダイアボディ”は、2つの抗原結合部位を有する抗体フラグメントを指し、そのフラグメントは、重鎖可変ドメイン(VH)が同じポリペプチド鎖中の軽鎖可変ドメイン(VL)に連結されたもの(VH-VL)を含む。
【0019】
用語“モノクローナル抗体”は、本明細書で使用される際、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、わずかな量で存在し得る可能性のある変異、例えば天然に存在する変異を除いて同一である。従って、修飾子“モノクローナル”は、別々の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。特定の態様において、そのようなモノクローナル抗体は、典型的には分析物に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、ここで、分析物に結合するポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列からの単一の分析物に結合するポリペプチド配列の選択を含むプロセスにより得られた。例えば、選択プロセスは、複数のクローン、例えばハイブリドーマクローン、ファージクローンまたは組換えDNAクローンのプールからの独特のクローンの選択であることができる。異なる決定基(エピトープ)に対して向けられた異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物のそれぞれのモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して向けられている。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、典型的にはそれらに他の免疫グロブリンが混入していない点で有利である。
【0020】
用語“分析物”は、本明細書で使用される際、分析物/検出化合物複合体の検出を可能にするために十分な親和性で本発明の検出化合物に結合する化学分子、一態様において有機分子に関する。一態様において分析物/検出化合物複合体の解離定数(Kd)は、最大で10-7mol/L、さらなる態様において最大で10-8mol/l、さらなる態様において最大で10-9mol/Lである。一態様において、分析物は、生物学的分子であり、さらなる態様において、分析物は、生物学的高分子である。さらなる態様において、分析物は、ポリペプチドである。
【0021】
一態様において、分析物がポリペプチドである場合、ポリペプチドは、感染因子、例えば、ウイルス、細菌もしくは原生動物によって生成された抗原であり;または分析物は、感染因子、例えば、ウイルス、細菌もしくは原生動物によって生成された抗原に対して対象により生成された抗体である。
【0022】
一態様において、分析物は、細菌性抗原、例えばトレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)抗原、ボレリア属(Borrelia)抗原、ブルセラ属(Brucella)抗原、クラミジア属(Chlamydia)抗原、マイコプラズマ属(Mycoplasma)抗原、リステリア属(Listeria)抗原または原生動物のような単細胞生物由来の抗原、一態様においてトリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)抗原である。一態様において、分析物は、細菌抗原に対する抗体であり、さらなる態様において細菌性ポリペプチドに対する抗体である。一態様において、抗体は、抗トレポネーマ・パリダム抗体、抗ボレリア属抗体、抗ブルセラ属抗体、抗クラミジア属抗体、抗マイコプラズマ属抗体または抗リステリア属抗体である。さらに別の態様において、分析物は、単細胞生物に対する抗体であり、一態様において抗トリパノソーマ・クルージ抗体である。さらなる態様において、分析物は、抗自己抗体、すなわち対象者自身によって生成された抗原を認識する抗体であり、一態様において疾患、一態様において自己免疫疾患を診断および/または予後決定する抗自己抗体である。診断および予後決定用抗自己抗体は、当該技術で既知であり、例えば全身性エリテマトーデスまたは多発性筋炎を示す抗核抗体、橋本甲状腺炎またはグレイブ病を示す抗甲状腺抗体、貧血を示す抗内因性因子抗体およびセリアック病またはグルテン過敏症を示す抗組織トランスグルタミナーゼ抗体を含む。
【0023】
一態様において、分析物は、ウイルス抗原、例えばウイルスの抗原であり、一態様において、肝炎ウイルス、アルボウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、サイトメガロウイルス、ヘルペスウイルス、エプスタインバーウイルス、ムンプスウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、風疹ウイルス、麻疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ポリオウイルスおよびエンテロウイルスからなるリストから選択されるウイルスの抗原である。一態様において、分析物は、一態様において本明細書において上記で明記されたリストから選択される、一態様において医学的に関連するウイルスの、ウイルス抗原に対する、さらなる態様においてウイルスポリペプチドに対する、またはさらなる態様においてウイルスカプシドポリペプチドに対する抗体である。一態様において、ウイルスは、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスである。一態様において、ウイルスカプシドポリペプチドは、肝炎ウイルスカプシドポリペプチドであり、一態様において、A型肝炎(HA)ウイルスカプシドポリペプチドである。従って、分析物は、一態様において、肝炎ウイルスカプシドポリペプチドに対する、例えばA型肝炎ウイルスカプシドポリペプチドに対する抗体である。
【0024】
一態様において、分析物は、例えばトキソプラズマ、一態様においてT・ゴンディ(T.gondii)からの原生動物抗原である。一態様において、分析物は、原生動物抗原に対する、さらなる態様において原生動物ポリペプチドに対する抗体である。一態様において、分析物は、T・ゴンディ p30ポリペプチド(Genbank受入れ番号:S85174.1)に対する抗体である。
【0025】
しかし、分析物が検出化合物との複合体形成によって決定可能な低分子量化合物であることも、想定される。一態様において、分析物は、少なくとも100の分子質量(100原子質量単位に、100Daに対応し;1Daは、1.66×10-27kgに対応する)を有し、さらなる態様において少なくとも250、さらなる態様において少なくとも500、またはさらなる態様において少なくとも1000の分子質量を有する。一態様において、分析物は、チロキシン(T4)、トリヨードチロニン(T3)、葉酸、葉酸結合タンパク質、ビタミンB12または内因性因子である。
【0026】
本明細書で使用される際、用語“検出化合物”は、両方とも本明細書において他の箇所で明記されるような結合部分および標識を含む化合物に関する。一態様において、結合部分および標識は、前記の検出化合物中で親和性複合体を形成し、一態様においてここで、結合部分/標識複合体の解離定数(Kd)は、最大で10-8mol/L、さらなる態様において最大で10-9mol/L、さらなる態様において最大で10-10mol/Lである。一態様において、結合部分および標識は、共有結合的に連結されている。一態様において、分析物を決定するための方法は、非競合的免疫アッセイである。さらなる態様において、分析物を決定するための方法は、競合的免疫アッセイであり;理解されるであろうように、そのような場合、検出化合物は、アッセイの化合物であり、それは、当該技術において“特定剤”とも呼ばれ、すなわち、標識に結合した化合物であり、捕捉化合物への結合に関して分析物と競合する。
【0027】
用語“結合部分”は、本明細書で使用される際、本明細書において他の箇所で明記されるような標識ではない検出化合物の構造に関する。従って、例えば検出化合物が色素標識された抗体である場合、抗体が、結合部分であると考えられ;検出化合物が色素標識されたF(ab)フラグメントである場合、F(ab)フラグメントが、結合部分であろう。対照的に、用語“親和性ドメイン”は、検出化合物の分析物に対する親和性を媒介する検出化合物の部分構造に関するように用いられる。従って、親和性ドメインは、検出化合物/分析物複合体中の分析物と接触する原子を含む結合部分の部分構造である。従って、結合部分は、1個より多くの親和性ドメインを含むことができ、例えば一態様において結合部分がIgGである場合には2個の同一の親和性ドメイン、さらなる態様において結合部分がIgMである場合には10個の同一の親和性ドメイン、さらなる態様において結合部分がダイアボディである場合には2個の異なる親和性ドメインを含むことができる。さらなる態様において、結合部分は、結合部分がポリエピトープ抗原である場合には、多数、すなわち2より大きいあらゆる数の同一の、または同一ではない親和性ドメインを含むことができる。
【0028】
一態様において、第1検出化合物の結合部分は、第2検出化合物の結合部分と同一ではない。従って、一態様において、第1および第2検出化合物は、一態様において抗体の同じエピトープを認識する異なるモノクローナル抗体であることができる。一態様において、そのような場合、第1検出化合物および分析物の間に形成される複合体の解離定数ならびに第2検出化合物および分析物の間に形成される複合体の解離定数は、5倍より大きくない;一態様において2倍より大きくない;さらなる態様において1.5倍より大きくない差がある。一態様において、第1検出化合物および分析物の間に形成される複合体の解離定数は、第2検出化合物および分析物の間に形成される複合体の解離定数の70%~130%の値を有する。さらなる態様において、第1検出化合物および分析物の間に形成される複合体の解離定数は、第2検出化合物および分析物の間に形成される複合体の解離定数の80%~120%の値を有する。さらなる態様において、第1検出化合物および分析物の間に形成される複合体の解離定数は、第2検出化合物および分析物の間に形成される複合体の解離定数の90%~110%の値を有する。さらなる態様において、第1検出化合物および分析物の間に形成される複合体の解離定数ならびに第2検出化合物および分析物の間に形成される複合体の解離定数は、本質的に等しいか、または等しい。
【0029】
さらなる態様において、第1検出化合物の結合部分および第2検出化合物の結合部分は、本質的に同一であり、すなわち、分析物の結合に無関係な構造決定因子においてのみ異なる。さらなる態様において、第1検出化合物の結合部分および第2検出化合物の結合部分は、同一であり;従って、一態様において、第1検出化合物および第2検出化合物は、標識においてのみ異なる。当業者には理解されるであろうように、この違いは、一態様において第1標識および第2標識の異なるカップリング化学によって規定される違いを含むことができる。
【0030】
用語“標識”は、本明細書で使用される際、前記の標識を含む分子または複合体の存在を検出可能にするために適合された化合物に関する。典型的には、標識は、検出可能な特性、典型的には光学的特性または/および酵素的特性を有する。しかし、前記の検出可能な特性が放射能を放出する特性であることも、想定されている。理解されるであろうように、前記の検出可能な特性を検出するために決定されるパラメータは、“シグナル”または“検出可能なシグナル”とも呼ばれるであろう。疑義の回避のために、シグナルは、ゼロまたは検出限界未満であることが検出される可能性もあることが、特筆される。
【0031】
用語“酵素的特性”は、本明細書で使用される際、生物学的触媒作用によって基質から検出可能な生成物を生成する標識の特性に関する。従って、酵素的特性は、典型的には前記の標識中の前記の酵素的特性を有するポリペプチドの存在により付与される。典型的には、酵素的特性は、(例えばアルカリホスファターゼにおける)ホスファターゼ活性、(例えばホースラディッシュペルオキシダーゼにおける)ペルオキシダーゼ活性および(例えばベータ-ガラクトシダーゼにおける)グリコシダーゼ活性からなる群から選択される少なくとも1つの酵素活性である。酵素活性に関する典型的な基質は、当該技術で周知である。典型的には、前記の酵素活性は、本明細書において上記で明記された検出可能な光学的特性を有する生成物を生成するか、または/および前記の酵素活性は、電気機器によって検出可能である生成物を生成する。
【0032】
用語“光学的特性”は、本明細書で使用される際、光学機器によって検出されることができるあらゆる特性に関する。具体的には、光学的に決定可能な特性は、反射特性、透過特性、発光特性、散乱特性、蛍光特性、燐光特性、回折特性および偏光特性からなる群から選択される少なくとも1つの特性であることができ、またはそれを含むことができる。本発明により想定されるさらなる光学特性は、色、蛍光、発光または屈折である。一態様において、本明細書で言及されるような光学的に決定可能な特性は、光学的に検出されることができる化学化合物の特性、例えば光吸収、発光、再発光(light remission)またはそれらと関係する特性を指す。本明細書で使用される光学的に決定可能な特性の検出は、以前には検出可能ではなかった特性の存在の検出、以前に検出されている特性の非存在の検出および特性の定量的変化の検出、すなわち少なくとも1つの光学的特性の変化の程度に相関するシグナル強度の変化の検出を包含することは、理解されるであろう。用語“光学特性”は、一態様において、発光、一態様において化学発光、さらなる態様において電気生成化学発光としても知られている電気化学発光にも関することは、理解されている。従って、一態様において、検出可能なシグナルは、発光シグナル、一態様において化学発光シグナル、さらなる態様において電気化学発光シグナルであることができる。上記に従って、一態様において、標識は、色素であり、一態様において、化学発光性化合物である。
【0033】
本明細書で言及されるように、第1検出化合物は、第1結合部分および第1標識を含み、第2検出化合物は、第2結合部分および第2標識を含み、第1標識および第2標識は、同一ではない。本発明の第1および第2標識は、同一ではなく、すなわち、2つの標識は、少なくとも1つの物理的、生物学的および/または化学的特性において区別され得る。例えば、第1および第2標識は、それらの特定の抗血清もしくは抗体との相互作用によって、またはクロマトグラフィーおよび/もしくは質量分析によって区別され得る。一態様において、前記の区別する特性は、構造特性である。従って、一態様において、第1および第2標識は、それらの化学構造の少なくとも1つの特徴において、例えば少なくとも1つの原子、化学結合および/または電荷によって異なる。一態様において、第1および第2標識を区別する特徴は、第1および第2標識の検出可能な特性とは無関係であり;従って、一態様において、第1および第2標識の検出可能な特性は同一であるが、第1および第2標識は、構造的に異なる。さらなる態様において、第1および第2標識を区別する特徴は、第1および第2標識の検出可能な特性に関連し;従って、一態様において、第1および第2標識の検出可能な特性は、同一ではなく、第1および第2標識は、構造的に異なる。
【0034】
一態様において、(同一ではない)第1および第2標識は、検出可能な特性の同じ質を提供する。本明細書で使用される際、用語“検出可能な特性の質”は、その検出の方式を規定する検出可能な特性の物理的性質に関し;従って、検出可能な特性の同じ質を有する2つの標識は、同じ測定原理、すなわち放射、透過、化学発光を含む発光、吸光度等の測定によるそれらの検出可能な特性の検出を可能にする2つの標識である。さらなる態様において、第1および第2標識は、本質的に同じ検出可能な特性を提供し、すなわち、本質的に同じ方法によるそれらの検出可能な特性の検出を可能にし、2つの方法は、最大で1つの測定パラメーター、例えば検出波長が、最大で2、一態様において最大で1.5、さらなる態様において最大で1.2、さらなる態様において1.1の倍率で再調整される場合に、“本質的に同じ”である。さらなる態様において、第1および第2標識は、同じ検出可能な特性を提供し、すなわち、同じ方法によるそれらの検出可能な特性の検出を可能にする。理解されるであろうように、後者の場合には、第1および第2標識の検出可能な特性は、同時に検出されることができる。さらに理解されるであろうように、第1および/または第2標識の検出可能な特性の検出は、一方または両方の標識に関して非最適な条件下で実施されることができ;例えば、2つの標識が重複する吸収スペクトルを有する場合には、吸収は、両方の標識が同じモル吸光係数を有する非最大吸収の波長において測定されることができる。従って、一態様において、工程b)における複合体の量の決定は、第1検出化合物の特性および第2検出化合物の特性を検出することを含み、一態様において、第1検出化合物の特性および第2検出化合物の特性を同時に検出することを含む。
【0035】
一態様において、第1標識は、Ru(bpy)2-bpyCO-OSu(“BP-Ru”とも呼ばれる;CAS登録番号137323-76-3、=ルテニウム(2+)、ビス(2,2’-ビピリジン-κN1,κN1’)[1-[4-(4’-メチル[2,2’-ビピリジン]-4-イル-κN1,κN1’)-1-オキソブトキシ]-2,5-ピロリジンジオン]-、(OC-6-33) Ru(bpy)2-bpyCO2H(=BPRuまたはRu-bpy)の反応性エステル、CAS登録番号115239-59-3))であり、第2標識は、スルホ-BPRu NHSエステル(“スルホ-Ru”とも呼ばれる;CAS登録番号482618-42-8、当該技術においてルテネート(2-)、ビス[[2,2’-ビピリジン]-4,4’-ジメタンスルホナト(2-)-κN1,κN1’][1-[4-(4’-メチル[2,2’-ビピリジン]-4-イル-κN1,κN1’)-1-オキソブトキシ]-2,5-ピロリジンジオン]-、ナトリウム(1:2)、(OC-6-31)としても知られている)である。
【0036】
本明細書で使用される際、用語“決定すること”は、試料中の本発明の方法によって決定されるべき分析物の少なくとも1つの検出可能な特徴を決定することを指す。一態様において、本発明の方法は、本明細書で明記される少なくとも1種類の検出化合物の使用および検出を含むあらゆる決定に適用可能である。従って、一態様において、決定することは、分析物の特徴の検出化合物との直接的または間接的な相互作用を決定することを含む。一態様において、分析物の特徴は、検出化合物に結合する、一態様において特異的に結合する結合ドメインである。従って、一態様において、分析物の検出可能な特徴は、受容体またはその受容体ドメイン、レクチン、アプタマー(ペプチドアプタマーまたはポリヌクレオチドアプタマーであることができる)、anticalin、設計されたアンキリンリピートタンパク質(Designed Ankyrin Repeat Protein)または免疫グロブリンもしくはその結合サブドメインであり、検出化合物は、前記の検出可能な特徴により特異的に結合される化学構造を含む。逆に、一態様において、検出化合物は、受容体またはその受容体ドメイン、レクチン、アプタマー(ペプチドアプタマーまたはポリヌクレオチドアプタマーであることができる)、anticalin、設計されたアンキリンリピートタンパク質または免疫グロブリンもしくはその結合サブドメインを含み、分析物の検出可能な特徴は、前記の検出化合物によって特異的に結合される化学構造を含む。
【0037】
本発明の文脈において、“アプタマー”は、その相互作用パートナーに特異的に結合する高分子である。アプタマーは、ペプチドまたはポリヌクレオチドアプタマーであることができ、原理的に当業者に既知である。用語“ペプチドアプタマー”は、本明細書で使用される際、その相互作用パートナーに特異的に結合し、8~80アミノ酸、一態様において10~50アミノ酸、さらなる態様において15~30アミノ酸を含むペプチドに関する。それらは、例えばパン酵母のような適当な宿主系におけるランダム化されたペプチド発現ライブラリーから単離されることができる(例えばKlevenz et al., Cell Mol Life Sci. 2002, 59: 1993-1998を参照)。
【0038】
本明細書で使用される際、用語“anticalin”は、その相互作用パートナーに特異的に結合するリポカリンに由来する人工ポリペプチドに関する。同様に、“設計されたアンキリンリピートタンパク質”または“DARPin”は、本明細書で使用される際、いくつかのアンキリンリピートモチーフを含みその相互作用パートナーに特異的に結合する人工ポリペプチドである。
【0039】
一態様において、分析物および/または検出化合物の検出可能な特徴は、免疫グロブリンまたはその結合サブドメインを含む。従って、一態様において、決定することは、分析物の免疫学的特徴の検出化合物との直接的もしくは間接的な相互作用および/または分析物の特徴の検出化合物の免疫学的特徴との直接的もしくは間接的な相互作用を決定することを含む。従って、一態様において、方法は、免疫アッセイである。本発明に従う免疫学的特徴は、一態様において、免疫学的手段によって試料中の分析物の検出を容易にする分析物の構造的特徴である。一態様において、前記の免疫学的特徴は、免疫学的手段による分析物の同定、さらなる態様において定量化を容易にする。従って、典型的な免疫学的特徴は、前記の分析物の試料中の他の化学化合物との区別を容易にする特徴である。一態様において、分析物を決定することは、分析物が方法の検出限界を超える濃度で試料中に存在するかまたは存在しないかを確立することである。検出限界を決定する方法は、当業者に既知である。さらなる態様において、決定することは、試料中の分析物の量または濃度を半定量的または定量的に決定することである。定量的決定に関して、分析物の絶対量または正確な量が、決定されると考えられ、または分析物の相対量が、決定されるであろう。相対量は、分析物の正確な量が決定されることができない、または決定されてはならない場合に、決定され得る。前記の場合には、前記の分析物を第2の量で含む第2試料に関して分析物が存在する量が増加しているかまたは減少しているかが、決定されることができる。
【0040】
当業者には理解されるであろうように、典型的には、第1検出化合物/分析物および第2検出化合物/分析物複合体を別々に決定する必要は、ないであろう。従って、一態様において、第1検出化合物および分析物の複合体ならびに第2検出化合物および分析物の複合体は、一緒に、すなわち、前記の第1検出化合物および前記の第2検出化合物の間で無差別に決定される。従って、一態様において、第1検出化合物または第2検出化合物または両方のいずれかとの複合体中に存在する分析物の総量が、決定される。これは、一態様において、本明細書において上記で明記されたように、工程b)において第1および第2標識の検出可能な特性を同時に決定することにより;または工程b)において第1および第2標識の検出可能な特性を別々に決定するが工程c)において第1検出化合物の特性の合計値および第2検出化合物の特性の合計値を決定することにより成し遂げられることができる。上記から理解されるように、第1および第2標識は、同じタイプの結合部分に結合していることができ;従って、第1および第2結合部分は、同一ではないことができるが、同一であることもできる。従って、決定することは、試料を、その第1フラクションが第1標識に結合し、その第2フラクションが第2標識に結合しているモノクローナル抗体と接触させることによって達成されることができる。同じことが、必要な変更を加えてポリクローナル抗体調製物に適用された。
【0041】
当業者にはさらに理解されるであろうように、分析物/捕捉化合物複合体の決定は、さらなる工程および/またはさらなる化合物の使用を含むことができる。例えば、少なくとも標識に関して第1および第2検出化合物と同一ではない1種類以上のさらなる検出化合物が、使用されることができる。一態様において、第1および第2検出化合物は、1:5~5:1、典型的には1:2~2:1、約1:1、または1:1の比率で使用される。さらなる態様において、3種類の検出化合物が、約2:1:1、1:2:1または1:1:2、約1:1:1または1:1:1の比率で使用される。従って、一態様において、第1および第2検出化合物および潜在的に存在するさらなる検出化合物が、反応混合物中に、およそ同じ量で、さらなる態様において同じ量で存在する。一態様において2~10種類の検出化合物、一態様において2~5種類の検出化合物、一態様において2~4種類の検出化合物、一態様において2~3種類の検出化合物が、使用され、使用されるすべての検出化合物の標識は、互いに同一ではない。一態様において、検出化合物は、本質的に等しい、一態様において等しい量で使用される。
【0042】
さらに、選択されるアッセイ形式に応じて、捕捉抗体が、分析物および分析物/検出化合物(単数または複数)複合体を固体表面に結合させるために用いられることができる。一態様において、アッセイは、競合免疫アッセイ、典型的には競合異種免疫アッセイ、すなわち免疫アッセイであり、ここで、分析物は、固体表面に結合した捕捉化合物への結合に関して前記の分析物の標識された誘導体と競合し、ここで、前記の捕捉化合物に結合した前記の分析物の標識された誘導体の量が、決定される。従って、そのような場合、その方法は、さらに試料に特定剤を混合することを含む。一態様において、本発明の方法は、異種競合免疫アッセイであり、前記の特定剤および前記の同一ではない捕捉化合物の間に形成された複合体の量を決定することにより、分析物および2種類の同一ではない捕捉化合物の間に形成された複合体の量を間接的に決定することを含む。一態様において、競合アッセイは、抗HAV(抗A型肝炎ウイルス)、抗HBc(抗B型肝炎コア抗原)、抗HBe(抗B型肝炎e-抗原)、葉酸、葉酸RBC(赤血球)、抗TSH-R、総ビタミンD、ビタミンB12、チロキシンT4、FT4(遊離チロキシン)、チロキシンT3、FT3(遊離トリヨードチロニン)、テストステロン、プロゲステロン、ジギトキシン、抗TG、抗TPO(抗甲状腺ペルオキシダーゼ)、DGEAまたはエストラジオールに関するアッセイである。
【0043】
さらなる態様において、免疫アッセイは、二重抗原サンドイッチアッセイ(“DAGS”)であり、ここで、二価の分析物、例えば抗体が、固体表面に結合した捕捉化合物に結合し、そしてここで、分析物/捕捉化合物複合体の量は、本明細書において下記で明記されるような検出化合物の前記の分析物/捕捉化合物複合体への結合により決定される。一態様において、DAGSアッセイは、抗トキソプラズマIgG、抗風疹IgG、抗HBs(B型肝炎ウイルス表面抗原)抗体、HCV(C型肝炎ウイルス)コア抗原または抗HCV抗体、CMV抗体(サイトメガロウイルス)IgG、梅毒(トレポネーマ・パリダム)抗体、HTLV(ヒトT細胞リンパ好性ウイルス)抗体またはシャーガス(アメリカトリパノソーマ症)抗体に関するアッセイである。
【0044】
本明細書で使用される際、用語“捕捉化合物”は、本明細書において上記で明記された分析物に直接または間接的に結合する化学分子に関する。一態様において、捕捉化合物は、固体表面に結合しているか、または固体表面に結合するように適合している。一態様において、捕捉化合物は、有機分子であり、さらなる態様において、本明細書において上記で明記された生物学的高分子、例えば本明細書において上記で明記されたポリペプチドである。一態様において、捕捉化合物は、分析物および捕捉化合物を含む複合体の検出を可能にするために十分な親和性を有する本発明の分析物に間接的に結合し;すなわち、そのような場合、捕捉化合物は、間接的なリガンドである。用語“間接的結合”は、本明細書で使用される際、リガンドが分析物に直接接触するのではなく、分析物に結合する、一態様において分析物に特異的に結合する化学分子と接触する結合に関し、ここで、一態様において、分析物に結合する前記の分子は、分析物に直接結合する分子であり、すなわち直接的なリガンドである。従って、一態様において、分析物、分析物に結合する化学分子および間接的なリガンドは、上記で示された特性を有する、特に示された解離定数を有する複合体を形成する。さらなる態様において、捕捉化合物は、本明細書において上記で明記されたように、本発明の分析物に、分析物/捕捉化合物複合体の検出を可能にするために十分な親和性で直接結合する。従って、一態様において、捕捉化合物は、直接的なリガンドである。
【0045】
本明細書で使用される際、用語“固体表面”は、本発明の捕捉化合物に結合するために適合した、そして試料から例えば物理的手段によって分離されるために適合したあらゆる適切な固体表面に関する。一態様において、前記の固体表面は、ビーズ、一態様においてマイクロビーズ、例えば磁気マイクロビーズまたは常磁性マイクロビーズの表面である。一態様において、前記の表面は、例えば捕捉化合物の部分構造に結合する分子を共有結合的または非共有結合的に取り付けることによって捕捉化合物の結合を改善するように適合している。捕捉化合物の部分構造に結合する典型的な分子は、例えば抗体、ストレプトアビジン、錯体形成したニッケルイオン、化合物“X”が“抗X”に特異的に結合するあらゆるX-抗X系の構成要素(例えば糖および糖結合タンパク質/レクチンまたはホルモンおよびその受容体のようなもの)等である。さらなる態様において、固体表面は、共有結合または非共有結合によって、例えば疎水性相互作用によって、前記の捕捉化合物に結合する。従って、一態様において、前記の固体表面は、マルチクラスタープレートの表面である。一態様において、マルチクラスタープレートの表面は、捕捉化合物の結合に関する親和性および/または容量を増大させるために前処理される。適切な前処理は、当該技術で既知である。
【0046】
生物学的分子、典型的にはポリペプチドを固体表面に結合させる方法は、当該技術で周知であり、例えば疎水性相互作用による結合、ビオチン化および固定されたストレプトアビジンを介した結合、共有結合、抗体-抗原相互作用等、またはこれらの相互作用の組み合わせ、例えば抗体および病原体のポリペプチドの間の抗体-抗原相互作用を含み、ここで、前記の抗体は、ビオチン化されており、固定化されたストレプトアビジンを介して固体表面に結合している。従って、捕捉抗体は、好ましくは捕捉複合体であることもできる。一態様において、捕捉化合物は、分析物に直接結合する捕捉複合体の化合物である。当業者は、選択された固体表面に応じてどのように捕捉化合物または複合体を固体表面に結合させるかを知っている。一態様において、捕捉化合物は、ウイルスポリペプチド、例えばウイルスカプシドポリペプチドである。一態様において、前記の捕捉化合物は、肝炎ウイルスカプシドポリペプチドであり、一態様において、A型肝炎ウイルス(HAV)カプシドポリペプチドである。しかし、捕捉化合物が抗体であることも、想定されている。
【0047】
用語“試料”は、本明細書で使用される際、体液の試料、組織もしくは臓器からの試料、または洗浄/すすぎ液の試料もしくは外側もしくは内側体表面から得られたスワブもしくはスメアに関する。一態様において、試料は、本明細書で明記された分析物を含むことが疑われる。試料は、一態様において、本明細書の他の箇所で明記されるような少なくとも1種類の分析物を含む。一態様において、試料は、血液、血漿、血清、尿、唾液または涙液試料である。試料は、ブラシ、(綿)スワブ、ヘラ、すすぎ/洗浄液、パンチ生検デバイスの使用、針もしくはランセットによる腔の穿刺により、または外科的器具使用により得られることができる。しかし、一態様において尿生殖器管、肛門周囲領域、肛門管、口腔、上部気道消化管および表皮からのスクレープ(scrapes)、スワブまたは生検を含む周知の技法によって得られた試料も、本発明の試料として含まれる。無細胞流体は、ホモジナイゼーションのような溶解技法により、および/または濾過もしくは遠心分離のような分離技法により体液または組織または臓器から得られることができる。一態様において、試料は、HAウイルスポリペプチドまたは/および少なくとも1種類のHAウイルスポリペプチドに対する抗体を含むことが知られている体液、すなわち、一態様において血液、血漿、血清、唾液等から、一態様において血漿または血清から得られる。試料は、本発明の方法を実施するためにさらに処理されることができることは、理解されるべきである。特に、細胞は、当該技術で知られている方法および手段によって試料から除去されることができる。さらに、少なくとも1種類の分析物は、当該技術で知られている方法および手段によって試料から抽出および/または精製されることができる。従って、試料という用語は、試料から希釈、富化、精製および/または抽出された少なくとも1種類の分析物を含む、または含むことが疑われる調製物に関することもできる。
【0048】
本発明の方法の文脈で使用される用語“接触させること”は、当業者には理解されている。一態様において、その用語は、本発明の化合物を試料と、またはさらなる化合物と物理的に接触させ、それにより、例えば試料および化合物を相互作用させることに関する。
【0049】
用語“対象”は、本明細書で使用される際、脊椎動物、一態様において哺乳類の対象に関する。一態様において、対象は、家畜、コンパニオンアニマルまたは実験動物、例えばウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ネコ、イヌ、モルモット、マウスまたはラットである。一態様において、対象は、ヒトである。さらなる態様において、対象は、本明細書で明記される分析物を含むことが疑われるヒトである。
【0050】
好都合には、免疫アッセイにおいて本質的に同じ量および/または質のシグナルを提供し得る異なる標識を使用することにより、試料からの抗標識化合物による干渉が低減され得ることが、本発明の基礎となる研究において発見された。例えば、競合免疫アッセイにおいて、偽陽性の結果を引き起こす抗標識干渉により引き起こされたシグナルの低減が、低減され得る。同様に、サンドイッチ/二重抗原サンドイッチ免疫アッセイでは、抗標識干渉が標識への結合によりシグナルを低減させる傾向があり、それは、シグナル収率における低減を引き起こし、それにより偽陰性の結果をもたらす。ある場合には、シグナルの増大も観察されており、それにより偽陰性の結果を引き起こしている。少なくともこれらの場合の全てにおいて、少なくとも2種類の異なる標識の使用は、干渉が偽の結果を引き起こすことを回避する。
【0051】
上記でなされた定義は、必要な変更を加えて以下に適用される。下記でさらになされる追加の定義および説明も、必要な変更を加えて本明細書で記載された全ての態様に適用される。
【0052】
本発明は、アッセイにおける分析物の検出の特異性を向上させるための方法であって、第1検出化合物の10%~90%を同一ではない標識を有する第2検出化合物により置き換えることを含む方法にも関する。
【0053】
本明細書で使用される際、用語“第1検出化合物のある割合を第2検出化合物により置き換える”は、アッセイから第1検出化合物の示された割合を省略し、そして省略された第1検出化合物の量に対応する量の第2検出化合物を新たに含めることに関する。一態様において、第1および第2検出化合物の割合および量は、モルベースで計算され;従って、アッセイ中の第1検出化合物の濃度が最初に10pMであり、50%が置き換えられた場合、第2検出化合物は、5pMの濃度で含まれるであろう。さらなる態様において、第1および第2検出化合物の割合および量は、シグナル収率に基づいて計算される。従って、例えば元のアッセイにおける第1検出化合物の濃度は、100%の任意のシグナル収率に設定されることができ;従って、シグナル収率に基づいて第1検出化合物の50%が置き換えられるものとする場合、第1検出化合物の量は、シグナル収率が50%に低減するように省略され、第2検出化合物は、シグナル収率が再び100%に上昇するように添加される。理解されるであろうように、上記は、第1検出化合物が1種類より多くのさらなる検出化合物により置き換えられる場合および1種類より多くの検出化合物が1種類以上のさらなる検出化合物(単数または複数)により置き換えられる場合に、必要な変更を加えて適用される。
【0054】
典型的には、置き換えられる捕捉化合物または検出化合物の割合は、置き換えの測定可能な作用が理論的に期待され得るように選択されるであろう。当業者には理解されるであろうように、測定可能な作用の期待値は、置き換えに使用される同一ではない標識の数に依存するであろう。例えば、改良後のアッセイにおいて1種類ではなく3種類の検出化合物が使用される場合、例えば初期の検出化合物の66%が置き換えられることが、好ましい。原則として、所与の検出化合物の割合は、(100%/n)±50%であり、n=(アッセイで使用される同一ではない検出化合物の数)であることが、想定される。別の態様において、(100%/n)±20%の割合が、使用される。当業者には理解されるであろうが、使用される割合の合計は、100%まで加算されるであろう。従って、一態様において、置き換えられる検出化合物の割合は、10%~90%の割合、一態様において25%~75%の割合、さらなる態様において40%~60%の割合、さらなる態様において約50%の割合である。
【0055】
本発明は、さらに、試料中の分析物を検出するためのキットであって、前記の分析物に関する少なくとも第1および第2検出化合物を含み、前記の第1検出化合物が、第1結合部分および第1標識を含み、前記の第2検出化合物が、第2結合部分および第2標識を含み、かつ第1標識および第2標識が、同一ではないキットに関する。
【0056】
用語“キット”は、本明細書で使用される際、本発明の前記の化合物、手段または試薬の集合体を指し、それは、一緒に包装されていることができ、または一緒に包装されていない可能性もある。キットの構成要素は、別々のバイアルによって(すなわち別々の部品のキットとして)構成されることができ、または単一のバイアルで提供されることもできる。さらに、一態様において、本発明のキットは、本明細書において上記で言及された方法を実施するために使用されるためのものである。一態様において、全ての構成要素が、上記で言及された方法を実施するためにすぐに使用可能な様式で提供されることが、想定される。さらに、キットは、一態様において、前記の方法を実施するための指示を含む。指示は、紙または電子形式での取扱説明書によって提供され得る。例えば、説明書は、本発明のキットを用いて前記の方法を実施する際に得られた結果を解釈するための指示を含むことができる。一態様において、少なくとも2種類の同一ではない検出化合物を含む試料中の分析物を検出するためのキットは、さらに少なくとも1種類の捕捉化合物を含む。さらなる態様において、キットは、さらに前記の捕捉化合物を固定化するため、または分析物を固定化するための固体支持体を含む。一態様において、前記の分析物に関する2~10種類の検出化合物、一態様において前記の分析物に関する2~5種類の検出化合物、一態様において2~4種類の検出化合物、一態様において前記の分析物に関する2~3種類の検出化合物が、前記のキット中に含まれる。
【0057】
さらに、本発明は、試料中の分析物を決定するためのデバイスであって、前記の分析物に関する少なくとも第1および第2検出化合物(ここで、前記の第1検出化合物は、第1結合部分および第1標識を含み、前記の第2検出化合物は、第2結合部分および第2標識を含み、かつここで、第1標識および第2標識は、同一ではない)ならびに前記の第1標識および前記の第2標識から得られる少なくとも1種類のシグナルを決定するための手段を含むデバイスに関する。
【0058】
用語“デバイス”は、本明細書で使用される際、少なくとも決定を可能にするように互いに作動的に(operatively)連結された前記の手段を含む手段のシステムに関する。分析物の量を決定するための典型的な手段および決定を実施するための手段、例えば少なくとも1種類のシグナルを決定するための手段は、本発明の方法に関連して上記で開示されている。当業者には理解されるように、少なくとも1種類のシグナルを決定するための手段は、1種類のシグナルを決定することができる手段を含み;同様に当業者には理解されるように、シグナルを決定するための手段は、シグナルがゼロまたは特定の試料に関する検出限界未満である場合でさえも、前記のシグナルを検出する能力を有する手段である。
【0059】
操作方法において手段をどのように連結するかは、デバイス中に含まれる手段のタイプに依存するであろう。一態様において、手段は、単一のデバイスに含まれる。従って、前記のデバイスは、(i)適用された試料中の分析物の量の測定のための分析ユニットおよび(ii)評価のための結果として得られるデータを処理するためのコンピュータユニットを含むことができる。検出のための典型的な手段が、上記の本発明の方法に関する態様に関連して開示されている。そのような場合、手段は、システムの使用者が説明書において与えられた指示および解釈に基づいて標識の検出可能な特性(一態様において標識の光学的または/および電気化学的に決定可能な特性)の決定の結果をまとめるという点で作動的に連結されており;または前記の指示および解釈は、決定の結果として適用された試料中の分析物の量もしくは濃度が使用者に出力されるように、デバイス中に含まれる実行可能なプログラムコード中に含まれている。当業者は、手段をどのように連結するかを、それ以上の説明無しで(without further ado)理解するであろう。典型的なデバイスは、専門技術者の特別な知識を用いずに適用されることができるデバイス、例えば試料を装填することのみを必要とする試験細片または電子デバイスである。結果は、技術者による解釈を必要とする生データの出力として与えられることができる。しかし、一態様において、デバイスの出力は、処理された、すなわち評価された生データであり、その解釈は、技術者を必要としない。さらなる典型的なデバイスは、分析ユニット/デバイス(例えばバイオセンサー、アレイ、ペプチドを特異的に認識するリガンドに結合された固体支持体、表面プラズモン共鳴デバイス、NMR分光計、質量分析計等)または本発明の方法に従う上記で言及された評価ユニット/デバイスを含む。一態様において、前記の分析物に関する2~10種類の検出化合物、一態様において前記の分析物に関する2~5種類の検出化合物、一態様において2~4種類の検出化合物、一態様において前記の分析物に関する2~3種類の検出化合物が、前記のデバイス中に含まれる。
【0060】
さらに、本発明は、分析物を検出するための少なくとも第1および第2検出化合物を含む組成物の使用に関し、ここで、前記の第1検出化合物は、第1結合部分および第1標識を含み、前記の第2検出化合物は、第2結合部分および第2標識を含み、かつここで、第1標識および第2標識は、同一ではなく;本発明は、診断用組成物または診断デバイスの製造のための分析物に関する少なくとも第1および第2検出化合物の使用に関し、ここで、前記の第1検出化合物は、第1結合部分および第1標識を含み、前記の第2検出化合物は、第2結合部分および第2標識を含み、かつここで、第1標識および第2標識は、同一ではなく;そして、本発明は、試料中の前記の分析物を決定するための分析物に関する少なくとも第1および第2検出化合物を含む組成物の使用に関し、ここで、前記の第1検出化合物は、第1結合部分および第1標識を含み、前記の第2検出化合物は、第2結合部分および第2標識を含み、かつここで、第1標識および第2標識は、同一ではない。
【0061】
上記の観点から、以下の態様が、特に想定される。
1. 試料中の分析物を決定するための方法であって、以下の工程:
a)前記の試料を少なくとも第1および第2検出化合物と接触させ;
b)少なくとも1種類の検出化合物を含む複合体の量を決定し;そして、
c)工程b)の結果に基づいて試料中の前記の分析物を決定する;
を含み、前記の第1検出化合物が、第1結合部分および第1標識を含み、前記の第2検出化合物が、第2結合部分および第2標識を含み、かつ第1標識および第2標識が、同一ではない方法。
【0062】
2. 態様1の方法であって、第1および第2標識が、検出可能な特性の同じ質を提供する方法。
3. 態様1または2の方法であって、第1および第2標識が、同じ検出可能な特性を提供する方法。
【0063】
4. 態様1~3のいずれか1つの方法であって、第1および第2標識が、検出可能な特性の本質的に同じ質を提供する方法。
5. 態様1~4のいずれか1つの方法であって、第1および/または第2検出化合物によって提供される検出可能な特性が、放射特性、一態様において発光特性、さらなる態様において化学発光特性である方法。
【0064】
6. 態様1~5のいずれか1つの方法であって、第1検出化合物中の標識が、Ru(bpy)2-bpyCO-OSu(CAS登録番号137323-76-3)を含む方法。
【0065】
7. 態様1~6のいずれか1つの方法であって、第2検出化合物中の標識が、スルホ-BPRu NHSエステル(CAS登録番号482618-42-8)である方法。
8. 態様1~7のいずれか1つの方法であって、工程b)における複合体の量の決定が、第1検出化合物の特性および第2検出化合物の特性を検出することを含み、一態様において第1検出化合物の特性および第2検出化合物の特性を同時に検出することを含む方法。
【0066】
9. 態様1~8のいずれか1つの方法であって、工程c)において前記の分析物を決定することが、第1検出化合物の特性の合計値および第2検出化合物の特性の合計値を決定することを含む方法。
【0067】
10. 態様1~9のいずれか1つの方法であって、結合部分が、前記の分析物に特異的に結合する、または分析物に特異的に結合する捕捉化合物に特異的に結合する方法。
11. 態様1~9のいずれか1つの方法であって、結合部分が、捕捉化合物への結合において分析物と競合する方法。
【0068】
12. 態様1~11のいずれか1つの方法であって、前記の結合部分が、生物学的分子またはそのフラグメントであり、一態様においてポリペプチドまたはそのフラグメントである方法。
【0069】
13. 態様1~12のいずれか1つの方法であって、前記の結合部分が、抗体またはそのフラグメントである方法。
14. 態様1~13のいずれか1つの方法であって、前記の方法が、免疫アッセイである方法。
【0070】
15. 態様1~14のいずれか1つの方法であって、前記の方法が、競合アッセイである方法。
16. 態様1~14のいずれか1つの方法であって、前記の方法が、サンドイッチアッセイであり、一態様において二重抗原サンドイッチアッセイである方法。
【0071】
17. 態様1~16のいずれか1つの方法であって、前記の方法が、定性的または半定量的アッセイである方法。
18. 態様1~17のいずれか1つの方法であって、前記の方法が、定量的アッセイである方法。
【0072】
19. 態様1~18のいずれか1つの方法であって、前記の分析物が、ポリペプチドである方法。
20. 態様1~19のいずれか1つの方法であって、前記の分析物が、抗体、一態様において病原性生物の抗原に対する抗体、一態様においてウイルス抗原に対する抗体、一態様において原生動物抗原に対する抗体である方法。
【0073】
21. 態様1~20のいずれか1つの方法であって、前記の分析物が、抗A型肝炎抗体または抗トキソプラズマ抗体である方法。
22. 態様1~19のいずれか1つの方法であって、前記の分析物が、病原性生物由来の抗原であり、一態様において細菌抗原である方法。
【0074】
23. 態様1~22のいずれか1つの方法であって、2~10種類の検出化合物、一態様において2~5種類の検出化合物、一態様において2~4種類の検出化合物、一態様において2~3種類の検出化合物が、使用され、かつ全ての検出化合物の標識が、相互に同一ではない方法。
【0075】
24. アッセイにおける分析物の検出の特異性を向上させるための方法であって、第1検出化合物の10%から90%を同一ではない標識を有する第2検出化合物により置き換えることを含む方法。
【0076】
25. 態様24の方法であって、前記の第1検出化合物の25%~75%、さらなる態様において40%~60%、さらなる態様において約50%が、置き換えられる方法。
26. 第1標識を有する検出化合物による分析物の決定を混乱させる干渉物質を含む試料を同定するための方法であって、以下の工程:
a)前記の試料の分割量を、前記の第1標識を有する第1検出化合物と接触させ;
b)前記の試料の分割量を、第2標識を有する第2検出化合物と接触させ;
c)第1標識によって生成された第1シグナルを決定し;
d)第2標識によって生成された第2シグナルを決定し;
e)工程c)の第1シグナルを工程d)の第2シグナルと比較することにより、第1標識を有する検出化合物による分析物の決定を混乱させる干渉物質を含む試料を同定する;
を含む方法。
【0077】
27. 態様26の方法であって、さらに複数の分析物を決定することを含む方法。
28. 試料中の分析物を検出するためのキットであって、前記の分析物に関する少なくとも第1および第2検出化合物を含み、前記の第1検出化合物が、第1結合部分および第1標識を含み、前記の第2検出化合物が、第2結合部分および第2標識を含み、かつ第1標識および第2標識が、同一ではないキット。
【0078】
29. 態様28のキットであって、前記のキットが、さらに前記の分析物に関する少なくとも1種類の捕捉化合物を含むキット。
30. 態様28または29のキットであって、前記のキットが、さらに前記の捕捉化合物または少なくとも前記の分析物を含む前記の試料の構成要素を固定化するための固体支持体を含むキット。
【0079】
31. 試料中の分析物を決定するためのデバイスであって、前記の分析物に関する少なくとも第1および第2検出化合物(ここで、前記の第1検出化合物は、第1結合部分および第1標識を含み、前記の第2検出化合物は、第2結合部分および第2標識を含み、かつここで、第1標識および第2標識は、同一ではない)ならびに前記の第1標識および前記の第2標識から得られる少なくとも1つのシグナルを決定するための手段を含むデバイス。
【0080】
32. 分析物を検出するための少なくとも第1および第2検出化合物を含む組成物の使用であって、前記の第1検出化合物が、第1結合部分および第1標識を含み、前記の第2検出化合物が、第2結合部分および第2標識を含み、かつ第1標識および第2標識が、同一ではない使用。
【0081】
33. 診断用組成物または診断デバイスの製造のための分析物に関する少なくとも第1および第2検出化合物の使用であって、前記の第1検出化合物が、第1結合部分および第1標識を含み、前記の第2検出化合物が、第2結合部分および第2標識を含み、かつ第1標識および第2標識が、同一ではない使用。
【0082】
34. 態様32または33の使用であって、前記の分析物が、態様19~22のいずれか1つにおいて明記されている分析物である使用。
35. 試料中の前記の分析物を決定するための分析物に関する少なくとも第1および第2検出化合物を含む組成物の使用であって、前記の第1検出化合物が、第1結合部分および第1標識を含み、前記の第2検出化合物が、第2結合部分および第2標識を含み、かつ前記の第1標識および前記の第2標識が、同一ではない使用。
【0083】
36. 態様1~27のいずれか1つの方法、態様28~30のいずれか1つのキット、態様31のデバイスおよび/または態様32~35のいずれか1つの使用であって、第1および第2検出化合物の親和性ドメインおよび/または結合部分が、同一である方法、キット、デバイスおよび/または使用。
【0084】
37. 態様1~27のいずれか1つの方法、態様28~30のいずれか1つのキット、態様31のデバイスおよび/または態様32~35のいずれか1つの使用であって、第1および第2検出化合物の親和性ドメインおよび/または結合部分が、同一ではない方法、キット、デバイスおよび/または使用。
【0085】
本明細書で引用されたすべての参考文献は、それらの全開示内容および本明細書で具体的に言及された開示内容に関して、参照により本明細書に援用される。
以下の実施例は、単に本発明を説明するものである。それらは、いかなる場合でも本発明の範囲を限定するように解釈されてはならない。
【実施例】
【0086】
実施例1:定性的および競合的Elecsys抗A型肝炎ウイルス(抗HAV)アッセイにおける特異性の増大
抗HAV抗体のインビトロ決定のための免疫アッセイを、自動化されたElecsys(登録商標)cobas分析計(Roche Diagnostics GmbH)上で製造業者の指示に従って実施した。Elecsys(登録商標)は、Rocheグループの登録商標である。
【0087】
アッセイを、競合原理に従って実施した。第1インキュベーションでは、50μlの試料を、添加されたHAV抗原と共に、試料の抗HAVがHAV抗原に結合するようにインキュベートした。第2(その後の)インキュベーション工程では、HAV抗原に特異的なビオチン化抗体およびルテニウム標識抗体を、ストレプトアビジンでコーティングした微粒子と一緒に、HAV抗原上のまだ遊離している結合部位が占有されるように、試料-HAV抗原混合物に添加した。複合体全体が、ビオチンおよびストレプトアビジンの相互作用により、固相(微粒子)に結合した。次に、反応混合物を測定セル中に吸引し、ここで、微粒子は、電極の表面上に磁気的に捕捉された。次いで、未結合の物質を、ProCell/ProCell M(シグナル生成に必要なトリプロピルアミン(tripropylamin)を含む緩衝液)により除去した。次いで、電極への電圧の印加は、化学発光を誘導し、それは、光電子増倍管により測定された。結果を、2点較正(Cal1=ヒト抗HAV陰性血清を含む陰性較正物質;Cal2=ヒト血清中のヒト抗HAVを含む陽性較正物質)により機器特異的に生成された較正曲線により決定した。詳細には、モノクローナルMAK<HAV>M-2.157-F(ab’)2-抗体フラグメントを使用し、一方の分割量をBP-Ruで標識し、他方の分割量をSulfo-Ruで標識し;これらを用いて抗HAVアッセイの3つの異なるバージョンを生成した:
アッセイ1:R2で使用されたMAK<HAV>M-2.157-F(ab’)2の100%が、スルホ-Ruで標識されている。
【0088】
アッセイ2:R2で使用されたMAK<HA V>M-2.157-F(ab’)2の100%が、BP-Ruで標識されている。
アッセイ3:アッセイ1 R2およびアッセイ2 R2の1+1混合物(BP-Ruおよびスルホ-Ruの混合物を意味する)を使用した。BP-Ruおよびスルホ-Ruのシグナルのシグナル全体への寄与は、類似していた。
【0089】
第1標識は、Ru(bpy)2-bpyCO-OSuとも呼ばれる“BP-Ru”(CAS登録番号137323-76-3、=ルテニウム(2+),ビス(2,2’-ビピリジン-κN1,κN1’)[1-[4-(4’-メチル[2,2’-ビピリジン]-4-イル-κN1,κN1’)-1-オキソブトキシ]-2,5-ピロリジンジオン]-,(OC-6-33) Ru(bpy)2-bpyCO2H(=BPRuまたはRu-bpy)の反応性エステル、CAS登録番号115239-59-3))であり、第2標識は、スルホ-BPRu NHSエステルとも呼ばれる“スルホ-Ru”(CAS登録番号482618-42-8、当該技術においてルテネート(2-),ビス[[2,2’-ビピリジン]-4,4’-ジメタンスルホナト(2-)-κN1,κN1’][1-[4-(4’-メチル[2,2’-ビピリジン]-4-イル-κN1,κN1’)-1-オキソブトキシ]-2,5-ピロリジンジオン]-,ナトリウム(1:2)、(OC-6-31)としても知られている)である。
【0090】
較正物質および標準試料を用いた結果を、表1に示す。さらに、抗スルホ-Ru干渉試料のような27種類の既知の抗標識干渉試料ならびに1種類の既知の抗BP-Ru干渉試料を、3つのアッセイ全てにより試験した(表2)。これらの試料は、それぞれの抗HAVアッセイバリアントにおける使用の際に偽陽性結果をもたらすことが知られている。予想されたように、抗Sulfu-Ru干渉試料は、アッセイ1では偽陽性であるが、アッセイ2では正しい陰性であり、抗BP-Ru干渉試料は、アッセイ1では正しい陰性であるが、アッセイ2では偽陽性である。興味深いことに、1つの抗Sulfo Ru干渉試料(PN0206_0925)を除く全ての試料は、BP-RuおよびスルホRuの標識混合物を含有するアッセイ3で正しい陰性であり、これは、特異性における有意な改善を意味する。
【0091】
カットオフ指数(COI)は、以下のように計算される:
カットオフは、陰性(Cal1)および陽性(Cal2)較正物質を使用した2点較正を使用して決定された。カットオフ指数(COI)は、カウント数(試料)をカットオフで割ることにより決定された。結果は、COI≦1の場合は反応性であると解釈され、COI>1の場合は非反応性であると解釈される。
【0092】
実施例2:定量的DAGS Elecsys Toxo IgGアッセイの感度の増大
Toxo-IgG抗体のインビトロ決定のための免疫アッセイを、自動化されたElecsys(登録商標)cobas分析計(Roche Diagnostics GmbH)上で製造業者の指示に従って実施した。Elecsys(登録商標)は、Rocheグループの登録商標である。
【0093】
アッセイを、サンドイッチ原理(IgG抗体が2つのToxo-p30抗原の間に挟まれる)に従って実施した。第1インキュベーションでは、10μlの試料(ビオチン化された組換えT・ゴンディ特異的抗原およびルテニウム複合体で標識されたT・ゴンディ特異的組換え抗原)が、サンドイッチ複合体を形成する。第2工程では、ストレプトアビジンでコーティングされた微粒子を、試料抗体およびToxo抗原の免疫複合体がビオチンおよびストレプトアビジンの相互作用を介して固相に結合するように添加した。次に、反応混合物を測定セル中に吸引し、ここで、微粒子は、電極の表面上に磁気的に捕捉された。次いで、未結合の物質を、ProCell/ProCell M(シグナル生成に必要なトリプロピルアミン(tripropylamin)を含む緩衝液)により除去した。次いで、電極への電圧の印加は、化学発光を誘導し、それは、光電子増倍管により測定された。結果を、2点較正(Cal1=抗トキソプラズマ陰性であるヒト血清を含む陰性較正物質;Cal2=抗トキソプラズマIgGに反応性のヒト血清を含む陽性較正物質)により機器特異的に生成された較正曲線により決定した。
【0094】
詳細には、2種類の異なる標識を施された組換えToxo-p30抗原の質を使用し、一方は、BP-Ruで標識され、他方は、スルホ-Ruで標識されていた(標識の化学名は実施例1を参照)。2種類の組換えToxo-p30抗原の質を用いて、Toxo IgGアッセイの3つの異なるバージョンを生成した:
アッセイ1:R2で使用された組換えToxo-p30抗原の100%が、スルホ-Ruで標識されている。
【0095】
アッセイ2:R2で使用された組換えToxo-p30抗原の100%が、BP-Ruで標識されている。
アッセイ3:アッセイ1 R2およびアッセイ2 R2の1+1混合物(BP-RuおよびSulfo-Ruの混合物を意味する)を使用した。BP-Ruおよびスルホ-Ruのシグナルのシグナル全体への寄与は、類似していた。
【0096】
結果は、製造業者の指示に従って、1 IU/mL未満の場合は非反応性、1 IU/mL以上3 IU/mL未満の場合は不確定、そして3 IU/mL以上の場合は反応性と解釈された。較正物質および標準試料を用いた結果を表3に示す。さらに、それぞれのアッセイバリアントにおいて偽陰性または偽不確定の結果をもたらすいくつかの抗スルホ-Ruおよび抗BP-Ru干渉試料を、3つのアッセイ全てで試験した(表4)。予想された通り、抗Sulfu-Ru干渉試料は、アッセイ1では偽陰性または偽不確定であるが、アッセイ2では正しい不確定または正しい陽性である。その逆も同様であり、同じことが、アッセイ2に干渉する抗BPRu干渉試料に関しても当てはまる。興味深いことに、全ての試料は、BP-RuおよびスルホRuの標識混合物を含有するアッセイ3において正しい不確定または正しい陰性であることが分かり、これは、感度の著しい増加を意味する。
【0097】
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国際公開第2016097116 A1号
国際公開第2017093271 A1号
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