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▶ 株式会社半導体エネルギー研究所の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20241203BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
H01L29/78 626C
H01L29/78 618B
H01L29/78 619A
H01L29/78 626Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020561969
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(86)【国際出願番号】 IB2019059960
(87)【国際公開番号】W WO2020136470
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2018243859
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [刊行物名] international ELECTRON DEVICES meeting 2018 TECHNICAL DIGEST, 312-315 発行年月日 平成30年12月1日 [集会名] 2018 IEEE International Electron Devices Meeting 開催日 平成30年12月1日-5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽夫
(72)【発明者】
【氏名】宮口 厚
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
【審査官】脇水 佳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-089613(JP,A)
【文献】国際公開第2017/125795(WO,A1)
【文献】特開2016-162913(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0057254(US,A1)
【文献】特開2011-103458(JP,A)
【文献】特開平11-330489(JP,A)
【文献】特開2016-006855(JP,A)
【文献】特開2006-319338(JP,A)
【文献】米国特許第08803206(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板と、
前記シリコン基板の上方に設けられたデバイスと、を有し、
前記デバイスは、トランジスタと、導電体とを有し、
前記トランジスタは、酸化物半導体膜を有し、
前記酸化物半導体膜は、前記トランジスタのチャネル形成領域を有し、
前記シリコン基板は、導電性が付与されており、
前記導電体は、前記デバイスに設けられた開口部を介して前記トランジスタのドレインと、前記シリコン基板と、のそれぞれに直接接続され、
前記導電体は、前記酸化物半導体膜の下面に接する領域を有する、半導体装置。
【請求項2】
シリコン基板と、
前記シリコン基板の上方に設けられたデバイスと、
第1の取り出し電極と、
第2の取り出し電極と、を有し、
前記デバイスは、トランジスタと、第1の導電体と、第2の導電体と、を有し、
前記トランジスタは、酸化物半導体膜を有し、
前記酸化物半導体膜は、前記トランジスタのチャネル形成領域を有し、
前記シリコン基板は、導電性が付与されており、
前記第1の導電体は、前記デバイスに設けられた開口部を介して前記トランジスタのドレインと、前記シリコン基板と、のそれぞれに直接接続され、
前記第1の導電体は、前記酸化物半導体膜の下面に接する領域を有し、
前記第1の取り出し電極は、前記トランジスタのソースに接続された前記第2の導電体に電気的に接続され、
前記第2の取り出し電極は、前記シリコン基板に電気的に接続される、半導体装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1の取り出し電極は、金属配線を介して、前記トランジスタのソースに接続された前記第2の導電体に電気的に接続される、半導体装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3において、
前記第2の取り出し電極は、前記シリコン基板に直接接続される、半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
前記シリコン基板は、p型の導電性が付与されている、半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一において、
前記シリコン基板および前記デバイスは、樹脂層に覆われ、
前記樹脂層は筐体内に設けられている、半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一において、
前記シリコン基板には、絶縁層を介してヒートシンクが設けられる、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
新たな半導体として、酸化物半導体と呼ばれる、半導体特性を示す金属酸化物に注目が集まっている。酸化物半導体を用いたトランジスタの開発は日々進められており、例えば、下記の特許文献1では、当該酸化物半導体を用いたトランジスタをパワートランジスタに適用可能なDCDCコンバータの構成について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2011/0254523号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
In-Ga-Zn系酸化物(IGZOとも表記する)などの酸化物半導体は、酸化シリコンなどの絶縁層の1/100程度の熱伝導率である。そのため、トランジスタ動作時、トランジスタのソースとドレインとの間に大電流が流れる際の自己発熱によって生じた熱が蓄積しやすい。自己発熱のためにトランジスタは、電気特性の変動、あるいは素子劣化が生じ、信頼性の低下を招く虞がある。
【0005】
本発明の一態様は、新規な構成の半導体装置等を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、信頼性に優れた、新規な構成の半導体装置等を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、自己発熱に伴うトランジスタの電気特性の変動、あるいは素子劣化への影響を低減することができる、新規な構成の半導体装置等を提供することを課題の一とする。
【0006】
なお本発明の一態様の課題は、上記列挙した課題に限定されない。上記列挙した課題は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお他の課題は、以下の記載で述べる、本項目で言及していない課題である。本項目で言及していない課題は、当業者であれば明細書又は図面等の記載から導き出せるものであり、これらの記載から適宜抽出することができる。なお、本発明の一態様は、上記列挙した記載、及び/又は他の課題のうち、少なくとも一つの課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、シリコン基板と、シリコン基板の上方に設けられたデバイスと、を有し、デバイスは、トランジスタと、導電体を有し、トランジスタは、チャネル形成領域に金属酸化物を有し、シリコン基板は、導電性が付与されており、導電体は、デバイスに設けられた開口部を介してトランジスタのドレインと、シリコン基板と、のそれぞれに電気的に接続される、半導体装置である。
【0008】
本発明の一態様は、シリコン基板と、シリコン基板の上方に設けられたデバイスと、第1の取り出し電極と、第2の取り出し電極と、を有し、デバイスは、トランジスタと、導電体を有し、トランジスタは、チャネル形成領域に金属酸化物を有し、シリコン基板は、導電性が付与されており、導電体は、デバイスに設けられた開口部を介してトランジスタのドレインと、シリコン基板と、のそれぞれに電気的に接続され、第1の取り出し電極は、トランジスタのソースに接続された導電体に電気的に接続され、第2の取り出し電極は、シリコン基板に電気的に接続される、半導体装置である。
【0009】
本発明の一態様において、第1の取り出し電極は、金属配線を介して、トランジスタのソースに接続された導電体に電気的に接続される、半導体装置が好ましい。
【0010】
本発明の一態様において、第2の取り出し電極は、シリコン基板に直接接続される、半導体装置が好ましい。
【0011】
本発明の一態様において、シリコン基板は、p型の導電性が付与されている、半導体装置が好ましい。
【0012】
本発明の一態様において、シリコン基板およびデバイスは、樹脂層に覆われ、樹脂層は筐体内に設けられている、半導体装置が好ましい。
【0013】
本発明の一態様において、シリコン基板には、絶縁層を介してヒートシンクが設けられる、半導体装置が好ましい。
【0014】
なおその他の本発明の一態様については、以下で述べる実施の形態における説明、及び図面に記載されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様は、新規な構成の半導体装置等を提供することができる。または、本発明の一態様は、信頼性に優れた、新規な構成の半導体装置等を提供することができる。または、本発明の一態様は、自己発熱に伴うトランジスタの電気特性の変動、あるいは素子劣化への影響を低減することができる、新規な構成の半導体装置等を提供することができる。
【0016】
なお本発明の一態様の効果は、上記列挙した効果に限定されない。上記列挙した効果は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお他の効果は、以下の記載で述べる、本項目で言及していない効果である。本項目で言及していない効果は、当業者であれば明細書又は図面等の記載から導き出せるものであり、これらの記載から適宜抽出することができる。なお、本発明の一態様は、上記列挙した効果、及び/又は他の効果のうち、少なくとも一つの効果を有するものである。従って本発明の一態様は、場合によっては、上記列挙した効果を有さない場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A図1Bは本発明の一態様を説明する斜視図および断面模式図である。
図2A図2B図2Cは本発明の一態様を説明する上面図である。
図3A図3Bは本発明の一態様を説明する斜視図および回路図である。
図4A図4Bは本発明の一態様を説明する断面模式図である。
図5A図5B図5Cは本発明の一態様を説明する断面模式図である。
図6A図6B図6Cは本発明の一態様を説明する断面模式図である。
図7は本発明の一態様を説明する断面模式図である。
図8A図8B図8C図8Dは本発明の一態様を説明する上面図である。
図9A図9B図9Cは本発明の一態様を説明する回路図、グラフおよびブロック図である。
図10は本発明の一態様を説明する断面模式図である。
図11A図11Bは本発明の一態様を説明する断面模式図である。
図12A図12Bは本発明の一態様を説明する断面模式図である。
図13A図13Bは本発明の一態様を説明する断面模式図である。
図14は電子機器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。ただし、本発明の一形態は、以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明の一形態は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0019】
なお本明細書等において、「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は、構成要素の混同を避けるために付したものである。従って、構成要素の数を限定するものではない。また、構成要素の順序を限定するものではない。また例えば、本明細書等の実施の形態の一において「第1」に言及された構成要素が、他の実施の形態、あるいは特許請求の範囲において「第2」に言及された構成要素とすることもありうる。また例えば、本明細書等の実施の形態の一において「第1」に言及された構成要素を、他の実施の形態、あるいは特許請求の範囲において省略することもありうる。
【0020】
図面において、同一の要素または同様な機能を有する要素、同一の材質の要素、あるいは同時に形成される要素等には同一の符号を付す場合があり、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0021】
本明細書において、例えば、電源電位VDDを、電位VDD、VDD等と省略して記載する場合がある。これは、他の構成要素(例えば、信号、電圧、回路、素子、電極、配線等)についても同様である。
【0022】
また、複数の要素に同じ符号を用いる場合、特に、それらを区別する必要があるときには、符号に“_1”、”_2”、”[n]”、”[m,n]”等の識別用の符号を付記して記載する場合がある。例えば、2番目の配線GLを配線GL[2]と記載する。
【0023】
(実施の形態1)
本発明の一態様である半導体装置の構成例について図1乃至図9を参照して説明する。
【0024】
なお本実施の形態における半導体装置は、負荷に大電流を流すように設計された、パワートランジスタ(パワー半導体ともいう)を含む装置である。パワートランジスタは、ソースに接続された電極と、ドレインに接続された電極との間に流れる電流量および印加される電圧が大きく、表示装置あるいはロジック回路などと比べて非常に大きい電力を扱うトランジスタをいう。
【0025】
図1Aに図示する半導体装置10では、シリコン基板12上にデバイス11(素子層という場合がある)が設けられた構成の斜視図を図示している。デバイス11は、複数のトランジスタ23A乃至23Dと、導電体21A、21Bと、導電体22A、22Bと、を有する。またデバイス11は、シリコン基板12に達する複数の開口部24A、24Bを有する。
【0026】
導電体21A、21Bは、トランジスタ23A乃至23Dのソースに接続される電極として機能する。図中、導電体21A、21Bには、ソース側を表す「S」を付して図示している。なお図1Aに示す構成において、ソースに接続される電極が2つとして図示しているが、単数でも3以上でもよい。
【0027】
導電体22A、22Bは、トランジスタ23A乃至23Dのドレインに接続される電極として機能する。図中、導電体22A、22Bには、ドレイン側を表す「D」を付して図示している。なお図1Aに示す構成において、ドレインに接続される電極が2つとして図示しているが、単数でも3以上でもよい。
【0028】
トランジスタ23A乃至23Dは、図1Aでは図示していないが、それぞれゲート、チャネル形成領域、ドレイン、またはソースとして機能する領域を有する。トランジスタ23Aは、ソースに接続された導電体21Aとドレインに接続された導電体22Aの間に設けられるトランジスタである。トランジスタ23Bは、ソースに接続された導電体21Aとドレインに接続された導電体22Bの間に設けられるトランジスタである。トランジスタ23Cは、ソースに接続された導電体21Bとドレインに接続された導電体22Aの間に設けられるトランジスタである。トランジスタ23Dは、ソースに接続された導電体21Bとドレインに接続された導電体22Bの間に設けられるトランジスタである。
【0029】
トランジスタ23A乃至23Dは、導電体21A、21Bと導電体22A、22Bとの間で複数のトランジスタがソースとドレインとが並列となるように配置される。複数のトランジスタを並列に配置することで、導電体21A、21Bと導電体22A、22Bとの間に大電流を流すことができる。またチャネル長方向の長さが1μm以下といった微細化されたトランジスタを用いてトランジスタ23A乃至23Dを構成することができるため、トランジスタ特性のバラつきを低減することができる。
【0030】
トランジスタ23A乃至23Dは、チャネル形成領域を有する半導体層が酸化物半導体で構成されるトランジスタ(OSトランジスタという)である。なお酸化物半導体は、金属酸化物、または酸化物と呼ぶ場合がある。なおOSトランジスタは、特に説明のない限り、nチャネル型のトランジスタとして説明する。酸化物半導体はキャリア濃度を小さくすることで、オフ時にソースとドレインとの間を流れる電流(オフ電流、あるいはリーク電流ともいう)を極めて低くすることができる。OSトランジスタの詳細については、後述する。
【0031】
OSトランジスタは、シリコン基板上などに積層することで自由に配置可能であるため、集積化を容易に行うことができる。またOSトランジスタは、チャネル形成領域を有する半導体層がシリコンで構成されるトランジスタ(Siトランジスタ)と同様の製造装置を用いて作製することが可能であるため、低コストで作製可能である。
【0032】
またOSトランジスタは、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極に加えて、バックゲート電極を含むと、4端子の半導体素子とすることができる。ゲート電極またはバックゲート電極に与える電圧に応じて、ソースとドレインとの間を流れる信号の入出力が独立制御可能な電気回路網で構成することができる。そのため、LSIと同一思考で回路設計を行うことができる。加えてOSトランジスタは、高温環境下において、Siトランジスタよりも優れた電気特性を有する。具体的には、100℃以上200℃以下、好ましくは125℃以上150℃以下といった高温下においてもオン電流とオフ電流の比が大きいため、良好なスイッチング動作を行うことができる。
【0033】
シリコン基板12は、導電性が付与されたシリコン基板である。シリコン基板12は、n型又はp型の導電型を付与するための不純物元素が導入されたシリコン基板である。シリコン基板12は、p型の導電型が付与されたシリコン基板とすることで、n型の導電型が付与されたシリコン基板と比べて熱伝導率を高めることができる。シリコン基板12は、ロジック回路を構成するためのトランジスタを有する構成としてもよい。
【0034】
開口部24A、24Bに導電体が設けられることで、導電体22A、22Bとシリコン基板12とが接続される。つまりトランジスタ23A乃至23Dのドレインが、導電体22A、22Bおよび開口部24A、24Bに設けられる導電体を介して、シリコン基板12と接続されることとなる。なおトランジスタ23A乃至23Dのドレインとシリコン基板12との接続は、導電体22A、22Bを介したものとしてもよいし、開口部24A、24Bに設けられる導電体を介して直接接続される構成としてもよい。
【0035】
図1Aの構成の半導体装置10は、OSトランジスタであるトランジスタ23A乃至23Dに電流が流れることで引き起こされるドレイン側での発熱を、デバイス11に設けられる開口部の導電体を介してシリコン基板12に放熱する構成とすることができる。そのため、発熱に伴うトランジスタ23A乃至23Dの電気特性の変動、あるいは素子劣化を抑制し、信頼性に優れた半導体装置10とすることができる。
【0036】
図1Bは、図1Aにおける切断面A-Bにおける半導体装置10の断面模式図である。図1Bに図示する断面模式図では、図1Aと同様に、シリコン基板12上にデバイス11が設けられる。デバイス11は、トランジスタ23Aおよび23Bが設けられる。トランジスタ23Aは、ゲート電極26Aおよび半導体層として機能する酸化物層25Aを有する。トランジスタ23Bは、ゲート電極26Bおよび半導体層として機能する酸化物層25Bを有する。なお酸化物層25A、酸化物層25Bは、他の図面において、酸化物層28と説明する場合がある。
【0037】
トランジスタ23Aにおいて、酸化物層25Aは、導電体21Aに接続される。また酸化物層25Aは、導電体22Aに接続される。トランジスタ23Aを流れる電流は、ドレイン(D)側からソース(S)側に流れる(図中、細線矢印で図示)。そのため、酸化物層25Aでは、ドレイン側の領域27Aで電子が加速されて自己発熱が生じる。発熱する領域27Aは、導電体22Aおよび開口部24Aに設けられた導電体を介してシリコン基板12側に放熱される(図中、太点線矢印で図示)。
【0038】
トランジスタ23Bにおいて、酸化物層25Bは、導電体21Aに接続される。また酸化物層25Bは、導電体22Bに接続される。トランジスタ23Bを流れる電流は、ドレイン(D)側からソース(S)側に流れる(図中、細線矢印で図示)。そのため、酸化物層25Bでは、ドレイン側の領域27Bで電子が加速されて自己発熱が生じる。発熱する領域27Bは、導電体22Bおよび開口部24Bに設けられた導電体を介してシリコン基板12側に放熱される(図中、太点線矢印で図示)。
【0039】
なおトランジスタ23Cおよび23Dも、トランジスタ23Aおよび23Bと同様の構成である。そのため、トランジスタのドレイン側の発熱が、導電体22A、22Bと、開口部24A、24Bに設けられる導電体と、を介してシリコン基板12に放熱することができる。
【0040】
図1A図1Bで説明したように本発明の一態様の半導体装置の構成では、シリコン基板と、OSトランジスタとが積層して設け、トランジスタのドレイン側で生じる発熱を開口部に設ける導電体を介してシリコン基板側に放熱する構成とする。シリコン基板をヒートシンクとして機能させることができる。発熱に伴うトランジスタの電気特性の変動、あるいは素子劣化を抑制し、信頼性に優れた半導体装置とすることができる。
【0041】
次いで図2Aには、図1A図1Bで説明したデバイス11の構成を説明するための上面図を示す。図2Aの上面図では、導電体21A、21Bと、導電体22A、22Bとの間の電気的な接続を制御するためのトランジスタ23A乃至23DがX字状の領域として図示される。またトランジスタ23A乃至23Dのドレインと、シリコン基板12(図示せず)を接続するための導電体が設けられる開口部24A、24Bは、導電体22A、22Bと重なる領域に設けることができる。なお上面レイアウト図で図示する導電体21A、21Bと、導電体22A、22Bとは、外部との接続配線を接続する電極として機能することができる。
【0042】
なお電極として機能する導電体21A、21Bおよび導電体22A、22Bの上面から見た形状は、外部との接続配線から各トランジスタまでの距離が等間隔となる形状であることが好ましい。例えば、円型状、あるいは図2Aに図示するように三角形状とすることが好ましい。当該構成とすることで、ワイヤーボンディングなどで導電体21A、21Bおよび導電体22A、22Bに接続される配線から、複数のトランジスタまでの配線抵抗を均一化することができる。
【0043】
図2Bには、図2Aに図示するトランジスタ23Bが設けられる領域に対応する、拡大した上面図について示す。図2Bには、導電体21Aおよび導電体22Bから延びて設けられた櫛歯状の電極の間に複数の島状の酸化物層28が設けられる。図2Aで図示するトランジスタ23Bは、導電体22Bの両端に設けられるトランジスタ23B_1、23B_2として表すことができる。
【0044】
図2Cでは、導電体21Aおよび導電体22Bで示す電極を点線で図示している。図2Cでは、島状の酸化物層28に重畳して設けられたゲート電極として機能する導電体26B_1、26B_2、およびバックゲート電極として機能する導電体29を図示している。
【0045】
また図3Aでは、図2Cに示すX方向、Y方向におけるトランジスタ23B(トランジスタ23A乃至23Dに適用可能なトランジスタをトランジスタ23ともいう)の斜視図について示す。図3Aでは、島状の酸化物層28に重畳して設けられた導電体26B_1および導電体29を図示している。図3Aでは、導電体29をバックゲート電極として電極BGEと図示している。図3Aでは、導電体26B_1をトップゲート電極として電極TGEと図示している。図3Aでは、導電体26B_1および導電体29を隔てた島状の酸化物層28の一方を端子「S」として図示し、他方を端子「D」として図示している。図3Aに図示するトランジスタ23は、図3Bに示すシンボルとして表すことができる。なおトランジスタの構成については、実施の形態2で詳述する。
【0046】
次いで図4A図4Bおよび図5A乃至図5Cでは、図1Bで説明した半導体装置10の断面模式図の変形例について説明する。
【0047】
図4Aに示す半導体装置10Aでは、図1Bと同様に、外部への取り出し電極または外部の金属配線に接続する電極をデバイス11の上面に配置する構成例を図示している。図4Aの構成例では、トランジスタ23A、23Bのソースに接続される導電体21Aと、トランジスタ23A、23Bのドレインに接続される導電体22A、22Bと、をデバイス11の上面である同じ側の面に配置することができる。
【0048】
図4Bに示す半導体装置10Bでは、図4Aとは異なる構成で、外部への取り出し電極または外部の金属配線に接続する電極をデバイス11の上面に配置する構成例を図示している。図4Bの構成例では、トランジスタ23A、23Bのソースに接続される導電体21Aを介してデバイス11の上層にある電極層30に設けられた導電体31Aに接続され、トランジスタ23A、23Bのドレインが導電体22A又は22B、およびシリコン基板12を介してデバイス11の上層にある電極層30に設けられた導電体31Bに接続される。図4Bに示す半導体装置10Bでも、図4Aと同様に、デバイス11の上面である同じ側の面に電極を配置することができる。
【0049】
図5Aに示す半導体装置10Cでは、図4A図4Bとは異なり、外部への取り出し電極または外部の金属配線に接続する電極の機能を、シリコン基板12で兼ねる構成例を図示している。図5Aの構成例では、トランジスタ23A、23Bのソースに接続される導電体21Aを介してデバイス11の上層にある電極層30に設けられた導電体31Aと、トランジスタ23A、23Bのドレインに接続される導電体22A、22Bを介してデバイス11の下層にあるシリコン基板12と、を異なる側の面に配置することができる。シリコン基板12側を電極として用いる構成とすることで、外部への取り出し電極またはワイヤーボンディングされる金属配線などを接着する面積を大きくすることができるため、電気的な接続をしやすくすることができる。
【0050】
図5Bに示す半導体装置10Dでは、図5Aとは異なる構成として、トランジスタ23A、23Bのソースに接続される導電体21Aを介してデバイス11の上層にある電極層30に設けられた導電体31Aと、トランジスタ23A、23Bのドレインに接続される酸化物層の下層の導電体22A、22Bをシリコン基板12と、を異なる側の面に配置することができる。シリコン基板12側を電極として用いる構成とすることで、外部への取り出し電極またはワイヤーボンディングされる金属配線と接続しやすくすることができる。また導電体22A、22Bを酸化物層の下層に配置することで、放熱の際の経路を短くすることができる。
【0051】
なお図5Bに示す半導体装置10Dでは、シリコン基板12を、外部への取り出し電極またはワイヤーボンディングされる金属配線と接続する構成として図示したが、別の構成でもよい。例えば図5Cの半導体装置10Eのように、電極層30に設けられた導電体31A、31B等を介して、デバイス11の上面である同じ側の面に電極を配置することができる。当該構成とすることで図5Bの構成においても図4Aと同様に、デバイス11の上面である同じ側の面に電極を配置することができる。
【0052】
上記説明した半導体装置10を、筐体に設けた際の電子部品の断面模式図の一例に付いて、図6A乃至図6Cに図示する。なお半導体装置10を筐体内に備えた電子部品については、半導体特性を利用したトランジスタを有する装置であるため、半導体装置と呼ぶ場合がある。
【0053】
図6Aに図示する電子部品100Aの断面模式図では、筐体106内に半導体装置10、金属配線104A、104B、取り出し電極105A、105Bおよび樹脂層103を有する。半導体装置10は、筐体106内で基板101に接着層102で固定されている。なお図6Aで図示する半導体装置10は、図4A図4Bで図示したデバイス11の上面で取り出し電極に接続される構成である。基板101および接着層102は、シリコン基板の放熱性を高めるため、周辺の構成材料と比べて、熱伝導率の大きい材料であることが好ましい。
【0054】
半導体装置10は、筐体106内で樹脂層103に覆われる。取り出し電極105Aは、金属配線104Aを介して、半導体装置10が有するデバイスの上面の電極に接続される。取り出し電極105Bは、金属配線104Bを介して、半導体装置10が有するデバイスの上面の電極に接続される。
【0055】
図6Bに図示する電子部品100Bの断面模式図では、筐体106内に半導体装置10、金属配線104A、取り出し電極105A、105Bおよび樹脂層103を有する。半導体装置10は、筐体106内で基板101に接着層102で固定されている。なお図6Bで図示する半導体装置10は、図5A図5Bで図示したデバイス11の上面とシリコン基板12側で取り出し電極に接続される構成である。
【0056】
半導体装置10は、筐体106内で樹脂層103に覆われる。取り出し電極105Aは、金属配線104Aを介して、半導体装置10が有するデバイスの上面の電極に接続される。取り出し電極105Bは、半導体装置10が有するシリコン基板に直接接続される。
【0057】
図6Cに図示する電子部品100Cの断面模式図では、筐体106内に半導体装置10、金属配線104A、取り出し電極105A、105Bおよび樹脂層103を有する。半導体装置10は、筐体106内で基板101に取り出し電極105Bを介して接着層102で固定されている。なお図6Cで図示する半導体装置10は、図5A図5Bで図示したデバイス11の上面とシリコン基板12側で取り出し電極に接続される構成である。
【0058】
半導体装置10は、筐体106内で樹脂層103に覆われる。取り出し電極105Aは、金属配線104Aを介して、半導体装置10が有するデバイスの上面の電極に接続される。取り出し電極105Bは、半導体装置10が有するシリコン基板に直接接続される。
【0059】
なお図6A乃至図6Cに図示する電子部品100A乃至100Cは、ヒートシンクと接続される構成とすることができる。図7には、基板101側にヒートシンク107が設けられた電子部品100Dを図示している。当該構成とすることで、シリコン基板12側からの放熱性を高めることができる。
【0060】
次いで図8A乃至図8Dでは、図2Aで説明したデバイス11の上面図の変形例について説明する。
【0061】
図8Aに示すデバイス11Aでは、図2Aと同様に、導電体21A、21Bと、導電体22A、22Bと、トランジスタ23A乃至23Dが設けられるX字状の領域23Rを図示している。図8Aに示すデバイス11Aでは、トランジスタ23A乃至23Dのドレインに接続される導電体22A、22Bと重なる領域にシリコン基板12に達する開口部24A、24Bでシリコン基板12とトランジスタ23A乃至23Dのドレインとを接続する構成を図示している。
【0062】
図8Bに示すデバイス11Bでは、導電体21A、21Bと、導電体22A、22Bと、領域23Rを図示している。図8Bに示すデバイス11Bでは、トランジスタ23A乃至23Dのソースに接続される導電体21A、21Bと重なるシリコン基板12の領域51A、51Bにシリコン基板12に設けられるトランジスタを備えることができる構成である。当該構成とすることで、自己発熱するドレインの熱が放熱される開口部24A、24Bとは離れた位置にロジック回路を構成することができる。
【0063】
図8Cに示すデバイス11Cでは、導電体21A、21Bと、導電体22A、22Bと、領域23Rを図示している。図8Cに示すデバイス11Cでは、領域23Rと重なる領域にシリコン基板12に達する開口部24C、24Dでシリコン基板12とトランジスタ23A乃至23Dのドレインとを接続する構成を図示している。当該構成とすることで、ドレインの発熱を放熱するとともに、トランジスタの熱を均一化してトランジスタ特性を安定化することができる。また導電体による配線をシリコン基板12まで引き回す構成と比べて、配線の抵抗を下げるといった効果、あるいは短い経路での放熱ができるといった効果もある。
【0064】
また図8Dのデバイス11Dに図示するように、図8Aで図示したデバイス11Aの構成と図8Cで図示したデバイス11Cの構成と、を組み合わせた構成とすることもできる。
【0065】
図9A乃至図9Dでは、上記説明した半導体装置および電子部品の動作例および応用例について示す。
【0066】
図9Aは、半導体装置20が有するトランジスタ23のゲートに電圧VG、バックゲートに電圧VBGを与えた際にソース(S)とドレイン(D)との間に電流IDが流れる様子を図示している。
【0067】
図9Bは、図9Aに図示するトランジスタ23の電流-電圧特性を表すグラフの模式図である。バックゲート電圧を電圧VBG_A、VBG_B(<VBG_A)で切り替えることで電気特性の異なる状態を切り替えることができる。例えばバックゲート電圧を電圧VBG_Aとしてトランジスタ23がオン時にソース(S)とドレイン(D)との間を流れる電流量を増加させる状態と、バックゲート電圧を電圧VBG_Bとしてトランジスタ23がオフ時にソース(S)とドレイン(D)との間を流れる電流量を極めて低い状態と、を切り替えることができる。
【0068】
パワートランジスタとして機能する半導体装置10のトランジスタ23をOSトランジスタで構成することで、図9Cに図示する電池61を備えた蓄電装置199のように電池保護回路60内に半導体装置10を備えた構成とすることも可能である。
【0069】
以上説明したように本発明の一態様の半導体装置の構成では、シリコン基板と、OSトランジスタとが積層して設けられており、トランジスタのドレイン側で生じる発熱を開口部を介してシリコン基板側に放熱する構成とすることができる。つまり、シリコン基板をヒートシンクとして機能させることができる。そのため、発熱に伴うトランジスタの電気特性の変動、あるいは素子劣化を抑制し、信頼性に優れた半導体装置とすることができる。
【0070】
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置の断面構成例について、図面を用いて説明する。
【0071】
図10に示す半導体装置は、シリコン基板12上にデバイス11が有するトランジスタ23が設けられている。また図10に示す半導体装置では、トランジスタ23のソースに接続される導電体21、ドレインに接続される導電体22を図示している。また図10に示す半導体装置では、導電体22からシリコン基板12に達する開口部24を図示しており、当該開口部24は、実施の形態1で説明した開口部24A、24Bに相当する。図11Aはトランジスタ23のチャネル長方向の断面図であり、図11Bはトランジスタ23のチャネル幅方向の断面図である。
【0072】
トランジスタ23は、実施の形態1で説明したトランジスタ23A乃至23Dに相当するOSトランジスタである。トランジスタ23は、オフ電流が小さい。このため、半導体装置を備えた電子装置の消費電力を低減することができる。
【0073】
シリコン基板12は、熱伝導性を高めるためにホウ素等が導入されることで、p型の導電性が付与された基板である。p型の導電性を付与したシリコン基板とすることで、n型の導電性を付与したシリコン基板あるいは導電性を付与していないシリコン基板と比べて、熱伝導性を向上させることができる。なおリコン基板は、ヒ素、リン等のn型の導電性が付与された基板でもよい。なおシリコン基板12には、pチャネル型、あるいはnチャネル型のトランジスタを備える構成としてもよい。
【0074】
シリコン基板12上には、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、及び絶縁体326が順に積層して設けられている。
【0075】
絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、及び絶縁体326として、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等を用いればよい。
【0076】
なお、本明細書等において、酸化窒化シリコンとは、その組成として窒素よりも酸素の含有量が多い材料を指し、窒化酸化シリコンとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い材料を示す。また、本明細書等において、酸化窒化アルミニウムとは、その組成として窒素よりも酸素の含有量が多い材料を指し、窒化酸化アルミニウムとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い材料を示す。
【0077】
絶縁体322は、その下方に設けられるシリコン基板12等の段差を平坦化する平坦化膜としての機能を有していてもよい。例えば、絶縁体322の上面は、平坦性を高めるために化学機械研磨(CMP)法等を用いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
【0078】
また、絶縁体324には、シリコン基板12等から、トランジスタ23が設けられる領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。
【0079】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、例えば、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ23等の酸化物半導体を有する半導体素子に水素が拡散することで、当該半導体素子の特性が低下する場合がある。したがって、トランジスタ23と、シリコン基板12との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
【0080】
水素の脱離量は、例えば、昇温脱離ガス分析法(TDS)等を用いて分析することができる。例えば、絶縁体324の水素の脱離量は、TDS分析において、膜の表面温度が50℃から500℃の範囲において、水素原子に換算した脱離量が、絶縁体324の面積当たりに換算して、10×1015atoms/cm以下、好ましくは5×1015atoms/cm以下であればよい。
【0081】
なお、絶縁体326は、絶縁体324よりも誘電率が低いことが好ましい。例えば、絶縁体326の比誘電率は4未満が好ましく、3未満がより好ましい。また例えば、絶縁体326の比誘電率は、絶縁体324の比誘電率の0.7倍以下が好ましく、0.6倍以下がより好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0082】
また、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、及び絶縁体326には、シリコン基板12とトランジスタ23とを接続する導電体328、及び導電体330等が埋め込まれている。なお、導電体328、及び導電体330は、プラグ又は配線としての機能を有する。また、プラグ又は配線としての機能を有する導電体は、複数の構造をまとめて同一の符号を付与する場合がある。また、本明細書等において、配線と、配線と接続するプラグとが一体物であってもよい。すなわち、導電体の一部が配線として機能する場合、及び導電体の一部がプラグとして機能する場合もある。
【0083】
各プラグ、及び配線(導電体328、導電体330等)の材料としては、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、又は金属酸化物材料等の導電性材料を、単層又は積層して用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデン等の高融点材料を用いることが好ましく、タングステンを用いることが好ましい。又は、アルミニウムや銅等の低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0084】
絶縁体326、及び導電体330上に、配線層を設けてもよい。例えば、図10において、絶縁体350、絶縁体352、及び絶縁体354が順に積層して設けられている。また、絶縁体350、絶縁体352、及び絶縁体354には、導電体356が形成されている。導電体356は、シリコン基板12とトランジスタ23とを接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。なお導電体356は、導電体328、又は導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0085】
なお、例えば、絶縁体350は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体356は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体350に設けられる開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、シリコン基板12とトランジスタ23とは、バリア層により分離することができ、シリコン基板12からトランジスタ23への水素の拡散を抑制することができる。
【0086】
なお、水素に対するバリア性を有する導電体としては、例えば、窒化タンタル等を用いるとよい。また、窒化タンタルと導電性が高いタングステンを積層することで、配線としての導電性を保持したまま、シリコン基板12からの水素の拡散を抑制することができる。この場合、水素に対するバリア性を有する窒化タンタル層が、水素に対するバリア性を有する絶縁体350と接する構造であることが好ましい。
【0087】
絶縁体354上には絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、及び絶縁体516が、順に積層して設けられている。絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、及び絶縁体516のいずれかは、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。
【0088】
例えば、絶縁体510及び絶縁体514には、シリコン基板12等からトランジスタ23を設ける領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。したがって、絶縁体324と同様の材料を用いることが好ましい。
【0089】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ23等の酸化物半導体を有する半導体素子に水素が拡散することで、当該半導体素子の特性が低下する場合がある。したがって、シリコン基板12とトランジスタ23との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜である。
【0090】
また、水素に対するバリア性を有する膜として、例えば、絶縁体510、及び絶縁体514には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル等の金属酸化物を用いることが好ましい。
【0091】
特に、酸化アルミニウムは、酸素と、トランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分等の不純物と、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中及び作製後において、水素、水分等の不純物のトランジスタ23への混入を防止することができる。また、トランジスタ23を構成する金属酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ23に対する保護膜として用いることに適している。
【0092】
また、例えば、絶縁体512、及び絶縁体516には、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、これらの絶縁体に、比較的誘電率が低い材料を適用することで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体512、及び絶縁体516として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜等を用いることができる。
【0093】
また、絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、及び絶縁体516には、導電体518、及びトランジスタ23を構成する導電体(例えば、導電体503)等が埋め込まれている。なお、導電体518は、シリコン基板12とトランジスタ23とを接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。導電体518は、導電体328、又は導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0094】
特に、絶縁体510、及び絶縁体514と接する領域の導電体518は、酸素、水素、及び水に対するバリア性を有する導電体であることが好ましい。当該構成により、シリコン基板12とトランジスタ23とは、酸素、水素、及び水に対するバリア性を有する層で分離することができ、シリコン基板12からトランジスタ23への水素の拡散を抑制することができる。
【0095】
絶縁体516の上方には、トランジスタ23が設けられている。
【0096】
図11A図11Bに示すように、トランジスタ23は、絶縁体514及び絶縁体516に埋め込まれるように配置された導電体503と、絶縁体516及び導電体503の上に配置された絶縁体520と、絶縁体520の上に配置された絶縁体522と、絶縁体522の上に配置された絶縁体524と、絶縁体524の上に配置された酸化物530aと、酸化物530aの上に配置された酸化物530bと、酸化物530b上に互いに離れて配置された導電体542a及び導電体542bと、導電体542a及び導電体542b上に配置され、導電体542aと導電体542bの間に重畳して開口が形成された絶縁体580と、開口の底面及び側面に配置された酸化物530cと、酸化物530cの形成面に配置された絶縁体550と、絶縁体550の形成面に配置された導電体560と、を有する。
【0097】
また、図11A図11Bに示すように、酸化物530a、酸化物530b、導電体542a、及び導電体542bと、絶縁体580との間に絶縁体544を配置することが好ましい。また、図11A図11Bに示すように、導電体560は、絶縁体550の内側に設けられた導電体560aと、導電体560aの内側に埋め込まれるように設けられた導電体560bと、を有することが好ましい。また、図11A図11Bに示すように、絶縁体580、導電体560、及び絶縁体550の上に絶縁体574が配置されることが好ましい。
【0098】
なお、以下において、酸化物530a、酸化物530b、及び酸化物530cをまとめて酸化物530という場合がある。
【0099】
なお、トランジスタ23では、チャネルが形成される領域と、その近傍において、酸化物530a、酸化物530b、及び酸化物530cの3層を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、酸化物530bの単層、酸化物530bと酸化物530aの2層構造、酸化物530bと酸化物530cの2層構造、又は4層以上の積層構造を設ける構成にしてもよい。また、トランジスタ23では、導電体560を2層の積層構造として示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体560が単層構造であってもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。また、図10図11A図11Bに示すトランジスタ23は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
【0100】
ここで、導電体560は、トランジスタ23のゲート電極として機能し、導電体542a及び導電体542bは、それぞれソース電極又はドレイン電極として機能する。上記のように、導電体560は、絶縁体580の開口、及び導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に埋め込まれるように形成される。導電体560、導電体542a、及び導電体542bの配置は、絶縁体580の開口に対して自己整合的に選択される。つまり、トランジスタ23において、ゲート電極を、ソース電極とドレイン電極の間に自己整合的に配置させることができる。よって、導電体560を位置合わせのマージンを設けることなく形成することができるので、トランジスタ23の占有面積の縮小を図ることができる。これにより、半導体装置の微細化、高集積化を図ることができる。
【0101】
さらに、導電体560が、導電体542aと導電体542bの間の領域に自己整合的に形成されるので、導電体560は、導電体542a又は導電体542bと重畳する領域を有さない。これにより、導電体560と、導電体542a及び導電体542bと、の間に形成される寄生容量を低減することができる。よって、トランジスタ23のスイッチング速度が向上し、高い周波数特性を有することができる。
【0102】
導電体560は、第1のゲート(トップゲートともいう)電極として機能する場合がある。また、導電体503は、第2のゲート(ボトムゲートともいう)電極として機能する場合がある。その場合、導電体503に印加する電位を、導電体560に印加する電位と連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ23のしきい値電圧を制御することができる。特に、導電体503に負の電位を印加することにより、トランジスタ23のしきい値電圧を0Vより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。したがって、導電体503に負の電位を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電体560に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
【0103】
導電体503は、酸化物530、及び導電体560と重なる領域を有するように配置する。これにより、導電体560、及び導電体503に電位を印加した場合、導電体560から生じる電界と、導電体503から生じる電界と、がつながり、酸化物530に形成されるチャネル形成領域を覆うことができる。本明細書等において、第1のゲート電極、及び第2のゲート電極の電界によってチャネル形成領域を電気的に取り囲むトランジスタの構造を、surrounded channel(s-channel)構造という。
【0104】
また、導電体503は、導電体518と同様の構成であり、絶縁体514及び絶縁体516の開口の内壁に接して導電体503aが形成され、さらに内側に導電体503bが形成されている。なお、トランジスタ23では、導電体503a及び導電体503bを積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体503は、単層、又は3層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。
【0105】
ここで、導電体503aは、水素原子、水素分子、水分子、銅原子等の不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい。)導電性材料を用いることが好ましい。又は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子等の少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい。)導電性材料を用いることが好ましい。なお、本明細書等において、不純物、又は酸素の拡散を抑制する機能とは、上記不純物、又は上記酸素のいずれか一、又は全ての拡散を抑制する機能とする。
【0106】
例えば、導電体503aが酸素の拡散を抑制する機能を有することにより、導電体503bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。
【0107】
また、導電体503が配線の機能を兼ねる場合、導電体503bは、タングステン、銅、又はアルミニウムを主成分とする、導電性が高い導電性材料を用いることが好ましい。その場合、導電体503aは、必ずしも設けなくともよい。なお、導電体503bを単層で図示したが、積層構造としてもよく、例えば、チタン又は窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。
【0108】
絶縁体520、絶縁体522、及び絶縁体524は、第2のゲート絶縁膜としての機能を有する。
【0109】
ここで、酸化物530と接する絶縁体524は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む絶縁体を用いることが好ましい。つまり、絶縁体524には、過剰酸素領域が形成されていることが好ましい。このような過剰酸素を含む絶縁体を酸化物530に接して設けることにより、酸化物530中の酸素欠損を低減し、トランジスタ23の信頼性を向上させることができる。
【0110】
過剰酸素領域を有する絶縁体として、具体的には、加熱により一部の酸素が脱離する酸化物材料を用いることが好ましい。加熱により酸素を脱離する酸化物とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm以上、好ましくは1.0×1019atoms/cm以上、さらに好ましくは2.0×1019atoms/cm以上、又は3.0×1020atoms/cm以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、又は100℃以上400℃以下の範囲が好ましい。
【0111】
また、上記過剰酸素領域を有する絶縁体と、酸化物530と、を接して加熱処理、マイクロ波処理、又はRF処理のいずれか一又は複数の処理を行ってもよい。当該処理を行うことで、酸化物530中の水、又は水素を除去することができる。例えば、酸化物530において、VoHの結合が切断される反応が起きる、別言すると「VH→V+H」という反応が起きることにより、脱水素化することができる。このとき発生した水素の一部は、酸素と結合してHOとして、酸化物530、又は酸化物530近傍の絶縁体から除去される場合がある。また、水素の一部は、導電体542に拡散又は捕獲(ゲッタリングともいう)される場合がある。
【0112】
また、上記マイクロ波処理は、例えば、高密度プラズマを発生させる電源を有する装置、又は、基板側にRFを印加する電源を有する装置を用いると好適である。例えば、酸素を含むガスを用い、且つ高密度プラズマを用いることより、高密度の酸素ラジカルを生成することができる。また、基板側にRFを印加することで、高密度プラズマによって生成された酸素ラジカルを、効率よく酸化物530、又は酸化物530近傍の絶縁体中に導入することができる。また、上記マイクロ波処理は、圧力を133Pa以上、好ましくは200Pa以上、さらに好ましくは400Pa以上とすればよい。また、マイクロ波処理を行う装置内に導入するガスとしては、例えば酸素及びアルゴンを用い、酸素流量比(O/(O+Ar))は50%以下、好ましくは10%以上30%以下とするとよい。
【0113】
また、トランジスタ23の作製工程中において、酸化物530の表面が露出した状態で加熱処理を行うと好適である。当該加熱処理は、例えば、100℃以上450℃以下、より好ましくは350℃以上400℃以下で行えばよい。なお、加熱処理は、窒素ガスもしくは不活性ガスの雰囲気、又は酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、もしくは10%以上含む雰囲気で行う。例えば、加熱処理は酸素雰囲気で行うことが好ましい。これにより、酸化物530に酸素を供給して、酸素欠損(V)の低減を図ることができる。また、加熱処理は減圧状態で行ってもよい。又は、加熱処理は、窒素ガスもしくは不活性ガスの雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために、酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、又は10%以上含む雰囲気で行ってもよい。又は、酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、又は10%以上含む雰囲気で加熱処理した後に、連続して窒素ガスもしくは不活性ガスの雰囲気で加熱処理を行ってもよい。
【0114】
なお、酸化物530に加酸素化処理を行うことで、酸化物530中の酸素欠損を、供給された酸素により修復させる、別言すると「V+O→null」という反応を促進させることができる。さらに、酸化物530中に残存した水素と、酸化物530に供給された酸素と、が反応することで、当該水素をHOとして除去する(脱水化する)ことができる。これにより、酸化物530中に残存していた水素が酸素欠損に再結合してVHが形成されるのを抑制することができる。
【0115】
また、絶縁体524が過剰酸素領域を有する場合、絶縁体522は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子等)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)ことが好ましい。
【0116】
絶縁体522が、酸素や不純物の拡散を抑制する機能を有することで、酸化物530が有する酸素が絶縁体520側へ拡散することがなく、好ましい。また、導電体503が、絶縁体524や酸化物530が有する酸素と反応することを抑制することができる。
【0117】
絶縁体522は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウム及びハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、又は(Ba,Sr)TiO(BST)等のいわゆるhigh-k材料を含む絶縁体を単層又は積層で用いることが好ましい。トランジスタの微細化、及び高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流等の問題が生じる場合がある。ゲート絶縁膜として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。
【0118】
特に、不純物、及び酸素等の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料であるアルミニウム、ハフニウムの一方又は双方の酸化物を含む絶縁体を用いるとよい。アルミニウム、ハフニウムの一方又は双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、又はアルミニウム及びハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)等を用いることが好ましい。このような材料を用いて絶縁体522を形成した場合、絶縁体522は、酸化物530からの酸素の放出や、トランジスタ23の周辺部から酸化物530への水素等の不純物の混入を抑制する層として機能する。
【0119】
又は、これらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。又はこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコン、又は窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0120】
また、絶縁体520は、熱的に安定していることが好ましい。例えば、酸化シリコン及び酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好適である。また、high-k材料の絶縁体を酸化シリコン、又は酸化窒化シリコンと組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造の絶縁体520を得ることができる。
【0121】
なお、図11A図11Bのトランジスタ23では、3層の積層構造からなる第2のゲート絶縁膜として、絶縁体520、絶縁体522、及び絶縁体524が図示されているが、第2のゲート絶縁膜は、単層、2層、又は4層以上の積層構造を有していてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。
【0122】
トランジスタ23は、チャネル形成領域を含む酸化物530に、酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、酸化物530として、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、又はマグネシウム等から選ばれた一種、又は複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。特に、酸化物530として適用できるIn-M-Zn酸化物は、CAAC-OS(C-Axls Aligned Crystal Oxide Semiconductor)、CAC-OS(Cloud-Aligned Composite Oxide Semiconductor)であることが好ましい。また、酸化物530として、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物を用いてもよい。CAAC-OS及びCAC-OSについては後述する。なお、トランジスタ23のオン電流を高めたい場合においては、酸化物530にIn-Zn酸化物を用いると好適である。酸化物530にIn-Zn酸化物を用いる場合、例えば、酸化物530aにIn-Zn酸化物を用い、酸化物530bおよび酸化物530cにIn-M-Zn酸化物を用いる積層構造、または、酸化物530aにIn-M-Zn酸化物を用い、酸化物530bおよび酸化物530cのいずれか一方にIn-Zn酸化物を用いる積層構造などが挙げられる。
【0123】
また、トランジスタ23には、キャリア濃度の低い金属酸化物を用いることが好ましい。金属酸化物のキャリア濃度を低くする場合においては、金属酸化物中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性又は実質的に高純度真性という。なお、金属酸化物中の不純物としては、例えば、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0124】
特に、金属酸化物に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、金属酸化物中に酸素欠損を形成する場合がある。また、酸化物530中の酸素欠損に水素が入った場合、酸素欠損と水素とが結合しVHを形成する場合がある。VHはドナーとして機能し、キャリアである電子が生成されることがある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成する場合がある。したがって、水素が多く含まれている金属酸化物を用いたトランジスタは、ノーマリーオン特性となりやすい。また、金属酸化物中の水素は、熱、電界等のストレスによって動きやすいため、金属酸化物に多くの水素が含まれると、トランジスタの信頼性が悪化する恐れもある。本発明の一態様においては、酸化物530中のVHをできる限り低減し、高純度真性又は実質的に高純度真性にすることが好ましい。このように、VHが十分低減された金属酸化物を得るには、金属酸化物中の水分、水素等の不純物を除去すること(脱水、脱水素化処理と記載する場合がある。)と、金属酸化物に酸素を供給して酸素欠損を補填すること(加酸素化処理と記載する場合がある。)が重要である。VH等の不純物が十分に低減された金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0125】
酸素欠損に水素が入った欠陥は、金属酸化物のドナーとして機能しうる。しかしながら、当該欠陥を定量的に評価することは困難である。そこで、金属酸化物においては、ドナー濃度ではなく、キャリア濃度で評価される場合がある。よって、本明細書等では、金属酸化物のパラメータとして、ドナー濃度ではなく、電界が印加されない状態を想定したキャリア濃度を用いる場合がある。つまり、本明細書等に記載の「キャリア濃度」は、「ドナー濃度」と言い換えることができる場合がある。
【0126】
よって、金属酸化物を酸化物530に用いる場合、金属酸化物中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、金属酸化物において、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm未満、好ましくは1×1019atoms/cm未満、より好ましくは5×1018atoms/cm未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm未満とする。水素等の不純物が十分に低減された金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0127】
また、酸化物530に金属酸化物を用いる場合、チャネル形成領域の金属酸化物のキャリア濃度は、1×1018cm-3以下であることが好ましく、1×1017cm-3未満であることがより好ましく、1×1016cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1013cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1012cm-3未満であることがさらに好ましい。なお、チャネル形成領域の金属酸化物のキャリア濃度の下限値については、特に限定は無いが、例えば、1×10-9cm-3とすることができる。
【0128】
また、酸化物530に金属酸化物を用いる場合、導電体542(導電体542a、及び導電体542b)と酸化物530とが接することで、酸化物530中の酸素が導電体542へ拡散し、導電体542が酸化する場合がある。導電体542が酸化することで、導電体542の導電率が低下する蓋然性が高い。なお、酸化物530中の酸素が導電体542へ拡散することを、導電体542が酸化物530中の酸素を吸収する、と言い換えることができる。
【0129】
また、酸化物530中の酸素が導電体542(導電体542a、及び導電体542b)へ拡散することで、導電体542aと酸化物530bとの間、及び導電体542bと酸化物530bとの間に異層が形成される場合がある。当該異層は、導電体542よりも酸素を多く含むため、当該異層は絶縁性を有すると推定される。このとき、導電体542と、当該異層と、酸化物530bとの3層構造は、金属-絶縁体-半導体からなる3層構造とみなすことができ、MIS(Metal-Insulator-Semiconductor)構造という、又はMIS構造を主としたダイオード接合構造という場合がある。
【0130】
なお、上記異層は、導電体542と酸化物530bとの間に形成されることに限られない。例えば、異層が、導電体542と酸化物530cとの間に形成される場合がある。又は、導電体542と酸化物530bとの間、及び導電体542と酸化物530cとの間に形成される場合がある。
【0131】
また、酸化物530においてチャネル形成領域にとして機能する金属酸化物は、バンドギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、バンドギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0132】
酸化物530は、酸化物530b下に酸化物530aを有することで、酸化物530aよりも下方に形成された構造物から、酸化物530bへ不純物が拡散することを抑制することができる。また、酸化物530b上に酸化物530cを有することで、酸化物530cよりも上方に形成された構造物から、酸化物530bへ不純物が拡散することを抑制することができる。
【0133】
なお、酸化物530は、各金属原子の原子数比が異なる複数の酸化物層の積層構造を有することが好ましい。具体的には、酸化物530aに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物530aに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530cは、酸化物530a又は酸化物530bに用いることができる金属酸化物を用いることができる。
【0134】
具体的には、酸化物530aとして、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]、または1:1:0.5[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物530bとして、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]、または1:1:1[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物530cとして、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]、Ga:Zn=2:1[原子数比]、またはGa:Zn=2:5[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物530cを積層構造とする場合の具体例としては、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]と、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]との積層構造、Ga:Zn=2:1[原子数比]と、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]との積層構造、Ga:Zn=2:5[原子数比]と、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]との積層構造、酸化ガリウムと、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]との積層構造などが挙げられる。
【0135】
また、酸化物530a及び酸化物530cの伝導帯下端のエネルギーが、酸化物530bの伝導帯下端のエネルギーより高くなることが好ましい。また、言い換えると、酸化物530a及び酸化物530cの電子親和力が、酸化物530bの電子親和力より小さいことが好ましい。
【0136】
ここで、酸化物530a、酸化物530b、及び酸化物530cの接合部において、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換言すると、酸化物530a、酸化物530b、及び酸化物530cの接合部における伝導帯下端のエネルギー準位は、連続的に変化又は連続接合するともいうことができる。このようにするためには、酸化物530aと酸化物530bとの界面、及び酸化物530bと酸化物530cとの界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよい。
【0137】
具体的には、酸化物530aと酸化物530b、及び酸化物530bと酸化物530cが、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、欠陥準位密度が低い混合層を形成することができる。例えば、酸化物530bがIn-Ga-Zn酸化物の場合、酸化物530a及び酸化物530cとして、In-Ga-Zn酸化物、Ga-Zn酸化物、酸化ガリウム等を用いるとよい。
【0138】
このとき、キャリアの主たる経路は酸化物530bとなる。酸化物530a、及び酸化物530cを上述の構成とすることで、酸化物530aと酸化物530bとの界面、及び酸化物530bと酸化物530cとの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。そのため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さくなり、トランジスタ23は高いオン電流を得られる。
【0139】
なお、酸化物530に用いることができる半導体材料は、上述の金属酸化物に限られない。酸化物530として、バンドギャップを有する半導体材料(ゼロギャップ半導体ではない半導体材料)を用いてもよい。例えば、シリコンなどの単体元素の半導体、ヒ化ガリウムなどの化合物半導体、半導体として機能する層状物質(原子層物質、2次元材料などともいう。)などを半導体材料に用いることが好ましい。特に、半導体として機能する層状物質を半導体材料に用いると好適である。
【0140】
ここで、本明細書等において、層状物質とは、層状の結晶構造を有する材料群の総称である。層状の結晶構造は、共有結合やイオン結合によって形成される層が、ファンデルワールス力のような、共有結合やイオン結合よりも弱い結合を介して積層している構造である。層状物質は、単位層内における電気伝導性が高く、つまり、2次元電気伝導性が高い。半導体として機能し、かつ、2次元電気伝導性の高い材料をチャネル形成領域に用いることで、オン電流の大きいトランジスタを提供することができる。
【0141】
層状物質として、グラフェン、シリセン、カルコゲン化物などがある。カルコゲン化物は、カルコゲンを含む化合物である。また、カルコゲンは、第16族に属する元素の総称であり、酸素、硫黄、セレン、テルル、ポロニウム、リバモリウムが含まれる。また、カルコゲン化物として、遷移金属カルコゲナイド、13族カルコゲナイドなどが挙げられる。
【0142】
酸化物530として、例えば、半導体として機能する遷移金属カルコゲナイドを用いることが好ましい。酸化物530として適用可能な遷移金属カルコゲナイドとして、具体的には、硫化モリブデン(代表的にはMoS)、セレン化モリブデン(代表的にはMoSe)、モリブデンテルル(代表的にはMoTe)、硫化タングステン(代表的にはWS)、セレン化タングステン(代表的にはWSe)、タングステンテルル(代表的にはWTe)、硫化ハフニウム(代表的にはHfS)、セレン化ハフニウム(代表的にはHfSe)、硫化ジルコニウム(代表的にはZrS)、セレン化ジルコニウム(代表的にはZrSe)などが挙げられる。
【0143】
酸化物530b上には、ソース電極、及びドレイン電極として機能する導電体542a、及び導電体542bが設けられる。導電体542a、及び導電体542bとしては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンから選ばれた金属元素、又は上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いることが好ましい。例えば、窒化タンタル、窒化チタン、タングステン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物等を用いることが好ましい。また、窒化タンタル、窒化チタン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物は、酸化しにくい導電性材料、又は酸素を吸収しても導電性を維持する材料であるため好ましい。更に、窒化タンタル等の金属窒化物膜は、水素又は酸素に対するバリア性があるため好ましい。
【0144】
また、図11A図11Bでは、導電体542a、及び導電体542bを単層構造として示したが、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、窒化タンタル膜とタングステン膜を積層するとよい。また、チタン膜とアルミニウム膜を積層してもよい。また、タングステン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、銅-マグネシウム-アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜上に銅膜を積層する二層構造、タングステン膜上に銅膜を積層する二層構造としてもよい。
【0145】
また、チタン膜又は窒化チタン膜と、そのチタン膜又は窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜又は銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜又は窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜又は窒化モリブデン膜と、そのモリブデン膜又は窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜又は銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜又は窒化モリブデン膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫又は酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
【0146】
また、図11Aに示すように、酸化物530の、導電体542a(導電体542b)との界面とその近傍には、低抵抗領域として領域543a、及び領域543bが形成される場合がある。このとき、領域543aはソース領域又はドレイン領域の一方として機能し、領域543bはソース領域又はドレイン領域の他方として機能する。また、領域543aと領域543bに挟まれる領域にチャネル形成領域が形成される。
【0147】
酸化物530と接するように上記導電体542a(導電体542b)を設けることで、領域543a(領域543b)の酸素濃度が低減する場合がある。また、領域543a(領域543b)に導電体542a(導電体542b)に含まれる金属と、酸化物530の成分とを含む金属化合物層が形成される場合がある。このような場合、領域543a(領域543b)のキャリア濃度が増加し、領域543a(領域543b)は、低抵抗領域となる。
【0148】
絶縁体544は、導電体542a、及び導電体542bを覆うように設けられ、導電体542a、及び導電体542bの酸化を抑制する。このとき、絶縁体544は、酸化物530の側面を覆い、絶縁体524と接するように設けられてもよい。
【0149】
絶縁体544として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、ネオジム、ランタン、マグネシウム等から選ばれた一種、又は二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。また、絶縁体544として、窒化酸化シリコン又は窒化シリコン等も用いることができる。
【0150】
特に、絶縁体544として、アルミニウム、又はハフニウムの一方又は双方の酸化物を含む絶縁体である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、又はアルミニウム及びハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)等を用いることが好ましい。特に、ハフニウムアルミネートは、酸化ハフニウム膜よりも耐熱性が高い。そのため、後の工程での熱処理において、結晶化しにくいため好ましい。なお、導電体542a、及び導電体542bが耐酸化性を有する材料、又は酸素を吸収しても著しく導電性が低下しない場合、絶縁体544は必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により適宜設計すればよい。
【0151】
絶縁体544を有することで、絶縁体580に含まれる水、及び水素等の不純物が、酸化物530c及び絶縁体550を介して酸化物530bに拡散することを抑制することができる。また、絶縁体580が有する過剰酸素により、導電体560が酸化することを抑制することができる。
【0152】
絶縁体550は、第1のゲート絶縁膜として機能する。絶縁体550は、酸化物530cの内側(上面、及び側面)と接するように配置することが好ましい。絶縁体550は、上述した絶縁体524と同様に、過剰に酸素を含み、かつ加熱により酸素が放出される絶縁体を用いて形成することが好ましい。
【0153】
具体的には、過剰酸素を有する酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素、及び窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを用いることができる。特に、酸化シリコン、及び酸化窒化シリコンは熱に対し安定であるため好ましい。
【0154】
加熱により酸素が放出される絶縁体を、絶縁体550として酸化物530cの上面に接して設けることにより、酸化物530cを通じて、絶縁体550から酸化物530bのチャネル形成領域に効果的に酸素を供給することができる。また、絶縁体524と同様に、絶縁体550中の水又は水素等の不純物濃度が低減されていることが好ましい。絶縁体550の膜厚は、1nm以上20nm以下とすることが好ましい。
【0155】
また、絶縁体550が有する過剰酸素を効率的に酸化物530へ供給するために、絶縁体550と導電体560との間に金属酸化物を設けてもよい。当該金属酸化物は、絶縁体550から導電体560への酸素拡散を抑制する機能を有することが好ましい。酸素の拡散を抑制する機能を有する金属酸化物を設けることで、絶縁体550から導電体560への過剰酸素の拡散が抑制される。つまり、酸化物530へ供給する過剰酸素量の減少を抑制することができる。また、過剰酸素による導電体560の酸化を抑制することができる。当該金属酸化物としては、絶縁体544に用いることができる材料を用いればよい。
【0156】
なお、絶縁体550は、第2のゲート絶縁膜と同様に、積層構造としてもよい。トランジスタの微細化、及び高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流等の問題が生じる場合がある。このため、ゲート絶縁膜として機能する絶縁体を、high-k材料と、熱的に安定している材料との積層構造とすることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位を低減することが可能となる。また、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。
【0157】
第1のゲート電極として機能する導電体560は、図11A図11Bでは2層構造として示しているが、単層構造でもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。
【0158】
導電体560aは、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(NO、NO、NO等)、銅原子等の不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。又は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子等の少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を有することで、絶縁体550に含まれる酸素により導電体560bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウム、又は酸化ルテニウム等を用いることが好ましい。また、導電体560aとして、酸化物530に適用できる酸化物半導体を用いることができる。その場合、導電体560bをスパッタリング法で成膜することで、導電体560aの電気抵抗値を低下させて導電体にすることができる。これをOC(Oxide Conductor)電極ということができる。
【0159】
また、導電体560bは、タングステン、銅、又はアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体560bは、配線としても機能するため、導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、タングステン、銅、又はアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体560bは積層構造としてもよく、例えば、チタン又は窒化チタンと上記導電性材料との積層構造としてもよい。
【0160】
絶縁体580は、絶縁体544を介して、導電体542a、及び導電体542b上に設けられる。絶縁体580は、過剰酸素領域を有することが好ましい。例えば、絶縁体580として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素、及び窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、又は樹脂等を有することが好ましい。特に、酸化シリコン、及び酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。特に、酸化シリコン、及び空孔を有する酸化シリコンは、後の工程で容易に過剰酸素領域を形成することができるため好ましい。
【0161】
絶縁体580は、過剰酸素領域を有することが好ましい。加熱により酸素が放出される絶縁体580を、酸化物530cと接する領域を有するように設けることで、絶縁体580中の酸素を、酸化物530cを通じて、酸化物530a及び酸化物530bへと効率良く供給することができる。なお、絶縁体580中の水又は水素等の不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0162】
絶縁体580の開口は、導電体542aと導電体542bの間の領域に重畳して形成される。これにより、導電体560は、絶縁体580の開口、及び導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に埋め込まれるように形成される。
【0163】
半導体装置を微細化するに当たり、ゲート長を短くすることが求められるが、導電体560の導電性が下がらないようにする必要がある。そのために導電体560の膜厚を大きくすると、導電体560はアスペクト比が高い形状となりうる。本実施の形態では、導電体560を絶縁体580の開口に埋め込むように設けるため、導電体560をアスペクト比の高い形状にしても、工程中に導電体560を倒壊させることなく導電体560を形成することができる。
【0164】
絶縁体574は、絶縁体580の上面、導電体560の上面、及び絶縁体550の上面に接して設けられることが好ましい。絶縁体574をスパッタリング法で成膜することで、絶縁体550、及び絶縁体580へ過剰酸素領域を設けることができる。これにより、当該過剰酸素領域から、酸化物530中に酸素を供給することができる。
【0165】
例えば、絶縁体574として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、又はマグネシウム等から選ばれた一種、又は二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
【0166】
特に、酸化アルミニウムはバリア性が高く、0.5nm以上3.0nm以下の薄膜であっても、水素、及び窒素の拡散を抑制することができる。したがって、スパッタリング法で成膜した酸化アルミニウムは、酸素供給源であるとともに、水素等の不純物のバリア膜としての機能も有することができる。
【0167】
また、絶縁体574の上に、層間膜として機能する絶縁体581を設けることが好ましい。絶縁体581は、絶縁体524等と同様に、膜中の水又は水素等の不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0168】
また、絶縁体581、絶縁体574、絶縁体580、及び絶縁体544に形成された開口に、導電体540a、及び導電体540bを配置する。導電体540a及び導電体540bは、導電体560を挟んで対向して設ける。導電体540a及び導電体540bは、後述する導電体546、及び導電体548と同様の構成である。
【0169】
絶縁体581上には、絶縁体582が設けられている。絶縁体582は、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。したがって、絶縁体582には、絶縁体514と同様の材料を用いることができる。例えば、絶縁体582には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル等の金属酸化物を用いることが好ましい。
【0170】
特に、酸化アルミニウムは、酸素、及びトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分等の不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中及び作製後において、水素、水分等の不純物のトランジスタ23への混入を防止することができる。また、トランジスタ23を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ23に対する保護膜として用いることに適している。
【0171】
また、絶縁体582上には、絶縁体586が設けられている。絶縁体586は、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、これらの絶縁体に、比較的誘電率が低い材料を適用することで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体586として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜等を用いることができる。
【0172】
また、絶縁体520、絶縁体522、絶縁体524、絶縁体544、絶縁体580、絶縁体574、絶縁体581、絶縁体582、及び絶縁体586には、導電体546、及び導電体548等が埋め込まれている。
【0173】
導電体546、及び導電体548は、シリコン基板12とトランジスタ23とを接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。導電体546、及び導電体548は、導電体328、又は導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0174】
なお、トランジスタ23の形成後、トランジスタ23を囲むように開口を形成し、当該開口を覆うように、水素、又は水に対するバリア性が高い絶縁体を形成してもよい。上述のバリア性の高い絶縁体でトランジスタ23を包み込むことで、外部から水分、及び水素が侵入することを防止することができる。又は、複数のトランジスタ23をまとめて、水素、又は水に対するバリア性が高い絶縁体で包み込んでもよい。なお、トランジスタ23を囲むように開口を形成する場合、例えば、絶縁体514又は絶縁体522に達する開口を形成し、絶縁体514又は絶縁体522に接するように上述のバリア性の高い絶縁体を形成すると、トランジスタ23の作製工程の一部を兼ねられるため好適である。なお、水素、又は水に対するバリア性が高い絶縁体としては、例えば、絶縁体522と同様の材料を用いればよい。
【0175】
続いて、導電体22、及び導電体21が設けられる。導電体22、及び導電体21は、シリコン基板12とトランジスタ23とを接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。
【0176】
導電体21、及び導電体22には、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素を含む金属膜、又は上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化タンタル膜、窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。又は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物等の導電性材料を適用することもできる。
【0177】
図10では、導電体21、及び導電体22は単層構造を示したが、当該構成に限定されず、2層以上の積層構造でもよい。例えば、バリア性を有する導電体と導電性が高い導電体との間に、バリア性を有する導電体、及び導電性が高い導電体に対して密着性が高い導電体を形成してもよい。
【0178】
本構造を用いることで、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、微細化又は高集積化を図ることができる。
【0179】
図12A図12Bは、図11A図11Bに示すトランジスタ23の変形例である。図12Aはトランジスタ23のチャネル長方向の断面図であり、図12Bはトランジスタ23のチャネル幅方向の断面図である。なお、図12A図12Bに示す構成は、トランジスタ23等、本発明の一態様の半導体装置が有する他のトランジスタにも適用することができる。
【0180】
図12A図12Bに示すトランジスタ23は、絶縁体402及び絶縁体404を有する点で、図11A図11Bに示すトランジスタ23と異なる。また、導電体540aの側面に接して絶縁体552が設けられ、導電体540bの側面に接して絶縁体552が設けられる点が、図11A図11Bに示すトランジスタ23と異なる。さらに、絶縁体520を有さない点が、図11A図11Bに示すトランジスタ23と異なる。
【0181】
図12A図12Bに示すトランジスタ23は、絶縁体512上に絶縁体402が設けられる。また、絶縁体574上、及び絶縁体402上に絶縁体404が設けられる。
【0182】
図12A図12Bに示すトランジスタ23では、絶縁体514、絶縁体516、絶縁体522、絶縁体524、絶縁体544、絶縁体580、及び絶縁体574がパターニングされており、絶縁体404がこれらを覆う構造になっている。つまり、絶縁体404は、絶縁体574の上面、絶縁体574の側面、絶縁体580の側面、絶縁体544の側面、絶縁体524の側面、絶縁体522の側面、絶縁体516の側面、絶縁体514の側面、絶縁体402の上面とそれぞれ接する。これにより、酸化物530等は、絶縁体404と絶縁体402によって外部から隔離される。
【0183】
絶縁体402及び絶縁体404は、水素(例えば、水素原子、水素分子などの少なくとも一)又は水分子の拡散を抑制する機能が高いことが好ましい。例えば、絶縁体402及び絶縁体404として、水素バリア性が高い材料である、窒化シリコン又は窒化酸化シリコンを用いることが好ましい。これにより、酸化物530に水素等が拡散することを抑制することができるので、トランジスタ23の特性が低下することを抑制することができる。よって、本発明の一態様の半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0184】
絶縁体552は、絶縁体581、絶縁体404、絶縁体574、絶縁体580、及び絶縁体544に接して設けられる。絶縁体552は、水素又は水分子の拡散を抑制する機能を有するが好ましい。たとえば、絶縁体552として、水素バリア性が高い材料である、窒化シリコン、酸化アルミニウム、又は窒化酸化シリコン等の絶縁体を用いることが好ましい。特に、窒化シリコンは水素バリア性が高い材料であるので、絶縁体552として用いると好適である。絶縁体552として水素バリア性が高い材料を用いることにより、水又は水素等の不純物が、絶縁体580等から導電体540a及び導電体540bを通じて酸化物530に拡散することを抑制することができる。また、絶縁体580に含まれる酸素が導電体540a及び導電体540bに吸収されることを抑制することができる。以上により、本発明の一態様の半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0185】
図13A図13Bは、図12A図12Bに示すトランジスタの変形例である。図13Aはトランジスタのチャネル長方向の断面図であり、図13Bはトランジスタのチャネル幅方向の断面図である。図13A図13Bに示すトランジスタは、酸化物530cが酸化物530c1及び酸化物530c2の2層構造である点が、図12A図12Bに示すトランジスタと異なる。
【0186】
酸化物530c1は、絶縁体524の上面、酸化物530aの側面、酸化物530bの上面及び側面、導電体542a及び導電体542bの側面、絶縁体544の側面、及び絶縁体580の側面と接する。酸化物530c2は、絶縁体550と接する。
【0187】
酸化物530c1として、例えばIn-Zn酸化物を用いることができる。また、酸化物530c2として、酸化物530cが1層構造である場合に酸化物530cに用いることができる材料と同様の材料を用いることができる。例えば、酸化物530c2として、n:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]、Ga:Zn=2:1[原子数比]、またはGa:Zn=2:5[原子数比]の金属酸化物を用いることができる。
【0188】
酸化物530cを酸化物530c1及び酸化物530c2の2層構造とすることにより、酸化物530cを1層構造とする場合より、トランジスタのオン電流を高めることができる。よって、トランジスタを、例えばパワーMOSトランジスタとすることができる。なお、図11A図11Bに示すトランジスタが有する酸化物530cも、酸化物530c1と酸化物530c2の2層構造とすることができる。
【0189】
図13A図13Bに示すトランジスタは、例えばトランジスタ23に適用することで、トランジスタ23のオン電流を高めることができる。
【0190】
本実施の形態は、他の実施の形態等に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0191】
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記の実施の形態で説明したOSトランジスタに用いることができる金属酸化物であるCAC-OS、及びCAAC-OSの構成について説明する。なお、本明細書等において、CACは機能、又は材料の構成の一例を表し、CAACは結晶構造の一例を表す。
【0192】
<金属酸化物の構成>
CAC-OS又はCAC-metal oxideとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。なお、CAC-OS又はCAC-metal oxideを、トランジスタの活性層に用いる場合、導電性の機能は、キャリアとなる電子(又はホール)を流す機能であり、絶縁性の機能は、キャリアとなる電子を流さない機能である。導電性の機能と、絶縁性の機能とを、それぞれ相補的に作用させることで、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC-OS又はCAC-metal oxideに付与することができる。CAC-OS又はCAC-metal oxideにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
【0193】
また、CAC-OS又はCAC-metal oxideは、導電性領域、及び絶縁性領域を有する。導電性領域は、上述の導電性の機能を有し、絶縁性領域は、上述の絶縁性の機能を有する。また、材料中において、導電性領域と、絶縁性領域とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ材料中に偏在する場合がある。また、導電性領域は、周辺がぼけてクラウド状に連結して観察される場合がある。
【0194】
また、CAC-OS又はCAC-metal oxideにおいて、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散している場合がある。
【0195】
また、CAC-OS又はCAC-metal oxideは、異なるバンドギャップを有する成分により構成される。例えば、CAC-OS又はCAC-metal oxideは、絶縁性領域に起因するワイドギャップを有する成分と、導電性領域に起因するナローギャップを有する成分と、により構成される。当該構成の場合、キャリアを流す際に、ナローギャップを有する成分において、主にキャリアが流れる。また、ナローギャップを有する成分が、ワイドギャップを有する成分に相補的に作用し、ナローギャップを有する成分に連動してワイドギャップを有する成分にもキャリアが流れる。このため、上記CAC-OS又はCAC-metal oxideをトランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、トランジスタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きなオン電流、及び高い電界効果移動度を得ることができる。
【0196】
すなわち、CAC-OS又はCAC-metal oxideは、マトリックス複合材(matrix composite)、又は金属マトリックス複合材(metal matrix composite)と呼称することもできる。
【0197】
<金属酸化物の構造>
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC-OS、多結晶酸化物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)及び非晶質酸化物半導体等がある。
【0198】
CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
【0199】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、及び七角形等の格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう)を確認することはできない。即ち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化すること等によって、歪みを許容することができるためと考えられる。
【0200】
また、CAAC-OSは、インジウム、及び酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、及び酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M)層と表すこともできる。
【0201】
CAAC-OSは結晶性の高い酸化物半導体である。一方、CAAC-OSは、明確な結晶粒界を確認することはできないため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成等によって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損等)の少ない酸化物半導体ともいえる。したがって、CAAC-OSを有する酸化物半導体は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する酸化物半導体は熱に強く、信頼性が高い。また、CAAC-OSは、製造工程における高い温度(所謂サーマルバジェット)に対しても安定である。したがって、OSトランジスタにCAAC-OSを用いると、製造工程の自由度を広げることが可能となる。
【0202】
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0203】
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。a-like OSは、鬆又は低密度領域を有する。即ち、a-like OSは、nc-OS及びCAAC-OSと比べて、結晶性が低い。
【0204】
酸化物半導体は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0205】
<酸化物半導体を有するトランジスタ>
続いて、上記酸化物半導体をトランジスタに用いる場合について説明する。
【0206】
上記酸化物半導体をトランジスタに用いることで、高い電界効果移動度のトランジスタを実現することができる。また、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0207】
また、トランジスタには、キャリア濃度の低い酸化物半導体を用いることが好ましい。酸化物半導体膜のキャリア濃度を低くする場合においては、酸化物半導体膜中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性又は実質的に高純度真性と言う。
【0208】
また、高純度真性又は実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
【0209】
また、酸化物半導体のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物半導体にチャネル形成領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
【0210】
したがって、トランジスタの電気特性を安定にするためには、酸化物半導体中の不純物濃度を低減することが有効である。また、酸化物半導体中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0211】
<不純物>
ここで、酸化物半導体中における各不純物の影響について説明する。
【0212】
酸化物半導体において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸化物半導体において欠陥準位が形成される。このため、酸化物半導体におけるシリコンや炭素の濃度と、酸化物半導体との界面近傍のシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1017atoms/cm以下とする。
【0213】
また、酸化物半導体にアルカリ金属又はアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成する場合がある。したがって、アルカリ金属又はアルカリ土類金属が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。具体的には、SIMSにより得られる酸化物半導体中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1016atoms/cm以下にする。
【0214】
また、酸化物半導体において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャリア濃度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を半導体に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。したがって、該酸化物半導体において、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、酸化物半導体中の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm未満、好ましくは5×1018atoms/cm以下、より好ましくは1×1018atoms/cm以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm以下とする。
【0215】
また、酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損を形成する場合がある。該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。したがって、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm未満、好ましくは1×1019atoms/cm未満、より好ましくは5×1018atoms/cm未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm未満とする。
【0216】
不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0217】
本実施の形態は、他の実施の形態等に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0218】
(実施の形態4)
本実施の形態は、上記実施の形態に示す半導体装置などが組み込まれた電子機器の例について図14を用いて説明を行う。
【0219】
ロボット7100は、照度センサ、マイクロフォン、カメラ、スピーカ、ディスプレイ、各種センサ(赤外線センサ、超音波センサ、加速度センサ、ピエゾセンサ、光センサ、ジャイロセンサなど)、および移動機構などを備える。電子部品100A又は100Dは、これら周辺機器を駆動するための電源を制御するためのスイッチとして機能する。
【0220】
マイクロフォンは、使用者の音声および環境音などの音響信号を検知する機能を有する。また、スピーカは、音声および警告音などのオーディオ信号を発する機能を有する。ロボット7100は、マイクロフォンを介して入力されたオーディオ信号を解析し、必要なオーディオ信号をスピーカから発することができる。ロボット7100において、は、マイクロフォン、およびスピーカを用いて、使用者とコミュニケーションをとることが可能である。
【0221】
カメラは、ロボット7100の周囲を撮像する機能を有する。また、ロボット7100は、移動機構を用いて移動する機能を有する。ロボット7100は、カメラを用いて周囲の画像を撮像し、画像を解析して移動する際の障害物の有無などを察知することができる。
【0222】
飛行体7120は、プロペラ、カメラ、およびバッテリなどを有し、自律して飛行する機能を有する。電子部品100A又は100Dは、これら周辺機器を駆動するための電源を制御するためのスイッチとして機能する。
【0223】
掃除ロボット7140は、上面に配置されたディスプレイ、側面に配置された複数のカメラ、ブラシ、操作ボタン、各種センサなどを有する。電子部品100A又は100Dは、これら周辺機器を駆動するための電源を制御するためのスイッチとして機能する。図示されていないが、掃除ロボット7140には、タイヤ、吸い込み口等が備えられている。掃除ロボット7140は自走し、ゴミを検知し、下面に設けられた吸い込み口からゴミを吸引することができる。
【0224】
自動車7160は、エンジン、タイヤ、ブレーキ、操舵装置、カメラなどを有する。電子部品100A又は100Dは、これら周辺機器を駆動するための電源を制御するためのスイッチとして機能する。
【0225】
電子部品100A又は100Dは、TV装置7200(テレビジョン受像装置)、スマートフォン7210、PC(パーソナルコンピュータ)7220、7230、ゲーム機7240、ゲーム機7260等に組み込むことができる。
【0226】
例えば、TV装置7200に内蔵された電子部品100A又は100Dは、TV装置7200を駆動するための電源を制御するためのスイッチとして機能する。
【0227】
スマートフォン7210は、携帯情報端末の一例である。スマートフォン7210は、マイクロフォン、カメラ、スピーカ、各種センサ、および表示部を有する。電子部品100A又は100Dは、これら周辺機器を駆動するための電源を制御するためのスイッチとして機能する。
【0228】
PC7220、PC7230はそれぞれノート型PC、据え置き型PCの例である。PC7230には、キーボード7232、およびモニタ装置7233が無線または有線により接続可能である。ゲーム機7240は携帯型ゲーム機の例である。ゲーム機7260は据え置き型ゲーム機の例である。ゲーム機7260には、無線または有線でコントローラ7262が接続されている。電子部品100A又は100Dは、各構成を駆動するための電源を制御するためのスイッチとして機能する。
【0229】
本実施の形態は、他の実施の形態などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0230】
(本明細書等の記載に関する付記)
以上の実施の形態、及び実施の形態における各構成の説明について、以下に付記する。
【0231】
各実施の形態に示す構成は、他の実施の形態あるいは実施例に示す構成と適宜組み合わせて、本発明の一態様とすることができる。また、1つの実施の形態の中に、複数の構成例が示される場合は、構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【0232】
なお、ある一つの実施の形態の中で述べる内容(一部の内容でもよい)は、その実施の形態で述べる別の内容(一部の内容でもよい)、及び/又は、一つ若しくは複数の別の実施の形態で述べる内容(一部の内容でもよい)に対して、適用、組み合わせ、又は置き換えなどを行うことが出来る。
【0233】
なお、実施の形態の中で述べる内容とは、各々の実施の形態において、様々な図を用いて述べる内容、又は明細書に記載される文章を用いて述べる内容のことである。
【0234】
なお、ある一つの実施の形態において述べる図(一部でもよい)は、その図の別の部分、その実施の形態において述べる別の図(一部でもよい)、及び/又は、一つ若しくは複数の別の実施の形態において述べる図(一部でもよい)に対して、組み合わせることにより、さらに多くの図を構成させることが出来る。
【0235】
また本明細書等において、ブロック図では、構成要素を機能毎に分類し、互いに独立したブロックとして示している。しかしながら実際の回路等においては、構成要素を機能毎に切り分けることが難しく、一つの回路に複数の機能が係わる場合や、複数の回路にわたって一つの機能が関わる場合があり得る。そのため、ブロック図のブロックは、明細書で説明した構成要素に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0236】
また、図面において、大きさ、層の厚さ、又は領域は、説明の便宜上任意の大きさに示したものである。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお図面は明確性を期すために模式的に示したものであり、図面に示す形状又は値などに限定されない。例えば、ノイズによる信号、電圧、若しくは電流のばらつき、又は、タイミングのずれによる信号、電圧、若しくは電流のばらつきなどを含むことが可能である。
【0237】
また、図面等において図示する構成要素の位置関係は、相対的である。従って、図面を参照して構成要素を説明する場合、位置関係を示す「上に」、「下に」等の語句は便宜的に用いられる場合がある。構成要素の位置関係は、本明細書の記載内容に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0238】
本明細書等において、トランジスタの接続関係を説明する際、「ソース又はドレインの一方」(又は第1電極、又は第1端子)、ソースとドレインとの他方を「ソース又はドレインの他方」(又は第2電極、又は第2端子)という表記を用いる。これは、トランジスタのソースとドレインは、トランジスタの構造又は動作条件等によって変わるためである。なおトランジスタのソースとドレインの呼称については、ソース(ドレイン)端子や、ソース(ドレイン)電極等、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0239】
また、本明細書等において「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」の用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって形成されている場合なども含む。
【0240】
また、本明細書等において、電圧と電位は、適宜言い換えることができる。電圧は、基準となる電位からの電位差のことであり、例えば基準となる電位をグラウンド電圧(接地電圧)とすると、電圧を電位に言い換えることができる。グラウンド電位は必ずしも0Vを意味するとは限らない。なお電位は相対的なものであり、基準となる電位によっては、配線等に与える電位を変化させる場合がある。
【0241】
また本明細書等において、ノードは、回路構成やデバイス構造等に応じて、端子、配線、電極、導電層、導電体、不純物領域等と言い換えることが可能である。また、端子、配線等をノードと言い換えることが可能である。
【0242】
本明細書等において、AとBとが接続されている、とは、AとBとが電気的に接続されているものをいう。ここで、AとBとが電気的に接続されているとは、AとBとの間で対象物(スイッチ、トランジスタ素子、またはダイオード等の素子、あるいは当該素子および配線を含む回路等を指す)が存在する場合にAとBとの電気信号の伝達が可能である接続をいう。なおAとBとが電気的に接続されている場合には、AとBとが直接接続されている場合を含む。ここで、AとBとが直接接続されているとは、上記対象物を介することなく、AとBとの間で配線(または電極)等を介してAとBとの電気信号の伝達が可能である接続をいう。換言すれば、直接接続とは、等価回路で表した際に同じ回路図として見なせる接続をいう。
【0243】
本明細書等において、スイッチとは、導通状態(オン状態)、または、非導通状態(オフ状態)になり、電流を流すか流さないかを制御する機能を有するものをいう。または、スイッチとは、電流を流す経路を選択して切り替える機能を有するものをいう。
【0244】
本明細書等において、チャネル長とは、例えば、トランジスタの上面図において、半導体(またはトランジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲートとが重なる領域、またはチャネルが形成される領域における、ソースとドレインとの間の距離をいう。
【0245】
本明細書等において、チャネル幅とは、例えば、半導体(またはトランジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲート電極とが重なる領域、またはチャネルが形成される領域における、ソースとドレインとが向かい合っている部分の長さをいう。
【0246】
なお本明細書等において、「膜」、「層」などの語句は、場合によっては、または、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
【符号の説明】
【0247】
10:半導体装置、10A:半導体装置、10B:半導体装置、10C:半導体装置、10D:半導体装置、10E:半導体装置、11:デバイス、11A:デバイス、11B:デバイス、11C:デバイス、11D:デバイス、12:シリコン基板、20:半導体装置、21A:導電体、21B:導電体、22A:導電体、22B:導電体、23:トランジスタ、23A:トランジスタ、23B:トランジスタ、23B_1:トランジスタ、23B_2:トランジスタ、23C:トランジスタ、23D:トランジスタ、23R:領域、24A:開口部、24B:開口部、25:トランジスタ、25A:酸化物層、25B:酸化物層、26:トランジスタ、26A:ゲート電極、26B:ゲート電極、26B_1:導電体、26B_2:導電体、27A:領域、27B:領域、28:酸化物層、29:導電体、30:電極層、31A:導電体、31B:導電体、51A:領域、51B:領域、60:電池保護回路、61:電池、100A:電子部品、100B:電子部品、100C:電子部品、100D:電子部品、101:基板、102:接着層、103:樹脂層、104A:金属配線、104B:金属配線、105A:電極、105B:電極、106:筐体、107:ヒートシンク、199:蓄電装置、320:絶縁体、322:絶縁体、324:絶縁体、326:絶縁体、328:導電体、330:導電体、350:絶縁体、352:絶縁体、354:絶縁体、356:導電体、402:絶縁体、404:絶縁体、503:導電体、503a:導電体、503b:導電体、510:絶縁体、512:絶縁体、514:絶縁体、516:絶縁体、518:導電体、520:絶縁体、522:絶縁体、524:絶縁体、530:酸化物、530a:酸化物、530b:酸化物、530c:酸化物、530c1:酸化物、530c2:酸化物、540a:導電体、540b:導電体、542:導電体、542a:導電体、542b:導電体、543a:領域、543b:領域、544:絶縁体、546:導電体、548:導電体、550:絶縁体、552:絶縁体、560:導電体、560a:導電体、560b:導電体、574:絶縁体、580:絶縁体、581:絶縁体、582:絶縁体、586:絶縁体、610:導電体、612:導電体、7100:ロボット、7120:飛行体、7140:掃除ロボット、7160:自動車、7200:TV装置、7210:スマートフォン、7220:PC、7230:PC、7232:キーボード、7233:モニタ装置、7240:ゲーム機、7260:ゲーム機、7262:コントローラ
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14