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特許7597589正極材料、非水電解質二次電池、および、正極材料の製造方法
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  • 特許-正極材料、非水電解質二次電池、および、正極材料の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】正極材料、非水電解質二次電池、および、正極材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20241203BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241203BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20241203BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/36 A
H01M4/36 C
H01M10/0566
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021006947
(22)【出願日】2021-01-20
(65)【公開番号】P2021118179
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2020009752
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花▲崎▼ 亮
(72)【発明者】
【氏名】神 貴志
(72)【発明者】
【氏名】後藤 なつみ
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 翔
(72)【発明者】
【氏名】近都 康平
【審査官】森 透
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/157046(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/078688(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2015/0037680(US,A1)
【文献】国際公開第2019/078689(WO,A2)
【文献】国際公開第2012/160707(WO,A1)
【文献】特開2012-221672(JP,A)
【文献】特開2009-176721(JP,A)
【文献】特開2006-066081(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110085832(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103208617(CN,A)
【文献】特開2016-189320(JP,A)
【文献】特開2006-107963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
H01M 4/36
H01M 10/0566
C01G 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体電解質を含む非水電解質二次電池に使用される、正極材料であって、
複数個の複合粒子からなり、
複数個の前記複合粒子の各々は、基材粒子、皮膜およびカーボンナノチューブを含み、
前記皮膜は、前記基材粒子の表面の少なくとも一部を被覆しており、
前記基材粒子は、正極活物質を含み、
前記皮膜は、ホウ素酸化物を含み、
前記カーボンナノチューブは、第1部分および第2部分を含み、
前記第1部分は、前記皮膜に埋め込まれており、
前記第2部分は、前記皮膜の表面に露出しており
X線光電子分光法により測定される、前記正極活物質に含まれるリチウムを除く金属元素とホウ素の合計物質量に対する、ホウ素の物質量の百分率は、56%以上82%以下であり、
前記正極活物質の質量に対する、前記カーボンナノチューブの質量の百分率は、0.01%から0.04%である、
正極材料。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブの長さは、前記基材粒子のメジアン径の0.1倍から0.5倍である、
請求項1に記載の正極材料。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブの長さは、2μmから4μmである、
請求項1または請求項2に記載の正極材料。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の正極材料を含む、
非水電解質二次電池。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の正極材料の製造方法であって、
前記基材粒子、ホウ酸、前記カーボンナノチューブおよび溶媒を混合することにより、第1前駆体を調製すること、
前記第1前駆体を乾燥することにより、第2前駆体を調製すること、
および
前記第2前駆体を加熱することにより、前記複合粒子を調製すること、
を含
正極材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、正極材料、非水電解質二次電池、および、正極材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2014-127235号公報(特許文献1)は、正極活物質粒子の少なくとも一部表面を被覆する非晶質の酸化ホウ素コート層を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-127235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非水電解質二次電池(以下「電池」と略記され得る。)において、正極活物質粒子は高電位を有する。そのため、正極活物質粒子の表面において、電解質が酸化分解し得る。電解質の酸化分解は、サイクル寿命低下の一因であると考えられる。
【0005】
例えば、正極活物質粒子の表面に、ホウ素酸化物の皮膜を形成することが考えられる。ホウ素酸化物は、正極活物質粒子と電解質との直接接触を阻害することが期待される。これにより、例えば、サイクル寿命の向上が期待される。
【0006】
しかし、ホウ素酸化物は電子伝導を阻害し得る。ホウ素酸化物の皮膜が形成されることにより、電池抵抗が増加する可能性がある。電池抵抗の増加を抑えるため、電極(正極)において、導電材(例えば、カーボンブラック等)を増量することも考えられる。ただし、導電材は電池容量に寄与しない。導電材の増量により、電池のエネルギー密度が低減すると考えられる。
【0007】
本開示の目的は、ホウ素酸化物の皮膜形成に伴う抵抗増加を、効率よく抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本開示の技術的構成および作用効果が説明される。ただし、本開示の作用メカニズムは、推定を含んでいる。作用メカニズムの正否は、特許請求の範囲を限定しない。
【0009】
〔1〕 正極材料は、非水電解質二次電池に使用される。
正極材料は、複数個の複合粒子からなる。複数個の複合粒子の各々は、基材粒子、皮膜およびカーボンナノチューブを含む。皮膜は、基材粒子の表面の少なくとも一部を被覆している。基材粒子は、正極活物質を含む。皮膜は、ホウ素酸化物を含む。カーボンナノチューブは、第1部分および第2部分を含む。第1部分は、皮膜に埋め込まれている。第2部分は、皮膜の表面に露出している。
【0010】
図1は、電極における電子伝導を示す第1概念図である。
複合粒子5は、正極集電体11の表面に配置されている。複合粒子5は、基材粒子1および皮膜2を含む。基材粒子1は、正極活物質を含む。皮膜2は、基材粒子1の表面を被覆している。皮膜2は、ホウ素酸化物を含む。電子(e-)は、基材粒子1同士の間を移動する。さらに電子は、基材粒子1と正極集電体11との間を移動する。皮膜2は、電子の移動を阻害し得る。その結果、電池抵抗が増加すると考えられる。
【0011】
電子伝導パスを形成するため、導電材4を増量することも考えられる。しかし、基材粒子1の表面に皮膜2が形成された後に導電材4が添加されても、基材粒子1同士を接続する電子伝導パスは形成され難いと考えられる。さらに、導電材4の増量により、電池のエネルギー密度が低減すると考えられる。導電材4によって、皮膜形成に伴う抵抗増加を抑えることは、非効率的であると考えられる。
【0012】
図2は、電極における電子伝導を示す第2概念図である。
本開示における複合粒子5は、基材粒子1、皮膜2に加えて、カーボンナノチューブ(CNT)3を含む。CNT3は、高い電子伝導性を有し得る。CNT3は、第1部分および第2部分を含む。第1部分は、皮膜2に埋め込まれている。第2部分は、皮膜2の表面に露出している。CNT3は、基材粒子1同士の間をつなぐ電子伝導パスを形成し得る。したがって、皮膜形成に伴う、抵抗増加が効率よく抑えられると考えられる。
【0013】
〔2〕 X線光電子分光法(x-ray photoelectron spectroscopy,XPS)により測定される、正極活物質に含まれるリチウム(Li)を除く金属元素とホウ素の合計物質量に対する、ホウ素の物質量の百分率は、例えば、80%以上であってもよい。
【0014】
以下「XPSにより測定される、正極活物質に含まれるLiを除く金属元素とホウ素の合計物質量に対する、ホウ素の物質量の百分率」は、「ホウ素比率」とも記される。ホウ素比率は、基材粒子の被覆率の指標である。ホウ素比率が高い程、基材粒子の被覆率が高いと考えられる。ホウ素比率が80%以上であることにより、サイクル寿命の向上が期待される。
【0015】
〔3〕 正極活物質の質量に対する、カーボンナノチューブの質量の百分率は、例えば0.02%から0.06%であってもよい。
【0016】
以下「正極活物質の質量に対する、カーボンナノチューブの質量の百分率」は、「CNT比率」とも記される。CNT比率が0.02%以上であることにより、電池抵抗の低減が期待される。CNT比率が0.06%以下であることにより、サイクル寿命の向上が期待される。
【0017】
〔4〕 非水電解質二次電池は、上記〔1〕から〔3〕のいずれか1つに記載の正極材料を含む。本開示における電池は、エネルギー密度、電池抵抗およびサイクル寿命において優れることが期待される。
【0018】
〔5〕 正極材料は、非水電解質二次電池に使用される。
正極材料の製造方法は、下記(A)から(C)を含む。
(A) 基材粒子、ホウ酸、カーボンナノチューブおよび溶媒を混合することにより、第1前駆体を調製する。
(B) 第1前駆体を乾燥することにより、第2前駆体を調製する。
(C) 第2前駆体を加熱することにより、複合粒子を調製する。
正極材料は、複数個の複合粒子からなる。複数個の複合粒子の各々は、基材粒子、皮膜およびカーボンナノチューブを含む。皮膜は、基材粒子の表面の少なくとも一部を被覆している。基材粒子は、正極活物質を含む。皮膜は、ホウ素酸化物を含む。カーボンナノチューブが第1部分および第2部分を含むように、皮膜が形成される。第1部分は、皮膜に埋め込まれている。第2部分は、皮膜の表面に露出している。
【0019】
皮膜の形成時にCNTが混合されることにより、CNTの一部が皮膜に取り込まれ得る。その結果、CNTの一部が皮膜に埋め込まれ、CNTの残部が皮膜の表面に露出すると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、電極における電子伝導を示す第1概念図である。
図2図2は、電極における電子伝導を示す第2概念図である。
図3図3は、本実施形態の非水電解質二次電池の一例を示す概略図である。
図4図4は、本実施形態の正極材料の製造方法の概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施形態(以下「本実施形態」とも記される。)が説明される。ただし、以下の説明は、特許請求の範囲を限定しない。例えば、本実施形態においては、リチウムイオン電池が説明される。しかしリチウムイオン電池は、非水電解質二次電池の一例に過ぎない。非水電解質二次電池は、非水系の電解質を含む限り、任意の電池系であり得る。例えば、非水電解質二次電池は、ナトリウムイオン電池等であってもよい。
【0022】
本実施形態において、例えば「0.02%から0.06%」等の記載は、特に断りのない限り、境界値を含む範囲を示す。例えば「0.02%から0.06%」は、「0.02%以上0.06%以下」の範囲を示す。
【0023】
<正極材料>
図2に示されるように、本実施形態の正極材料は、複数個の複合粒子5からなる。すなわち正極材料は、粒子群(粉体)である。正極材料は、例えば、1μmから30μmのメジアン径を有していてもよい。正極材料は、例えば、5μmから20μmのメジアン径を有していてもよい。「メジアン径」は、体積基準の粒度分布において、小粒径側からの累積粒子体積が全粒子体積の50%になる粒子径を示す。メジアン径は、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定され得る。複合粒子5の各々は、基材粒子1、皮膜2およびCNT3を含む。
【0024】
《基材粒子》
基材粒子1は、複合粒子5のコアである。基材粒子1は、例えば、1μmから30μmのメジアン径を有していてもよい。基材粒子1は、例えば、5μmから20μmのメジアン径を有していてもよい。
【0025】
基材粒子1は、正極活物質を含む。基材粒子1は、実質的に正極活物質からなっていてもよい。正極活物質は、いわゆるホストゲスト化合物である。ゲストは、リチウム(Li)である。ホスト構造は、例えば、遷移金属元素等を含んでいてもよい。ホスト構造は、例えば、層状岩塩構造、スピネル構造、オリビン構造等を含んでいてもよい。
【0026】
正極活物質は、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム、および、リン酸鉄リチウムからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0027】
正極活物質に、各種元素がドープされていてもよい。正極活物質に、不純物元素が含まれていてもよい。正極活物質の組成は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(inductively coupled plasma atomic emission spectroscopy,ICP-AES)により特定され得る。
【0028】
正極活物質は、例えば、下記式(I):
LiMeO2 (I)
により表される組成を有していてもよい。
【0029】
上記式(I)中、「Me」は、金属元素を示す。「Me」は、例えば、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)およびアルミニウム(Al)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0030】
正極活物質は、例えば、下記式(II):
LiNiaCobMnc2 (II)
により表される組成を有していてもよい。
【0031】
上記式(II)中、例えば、「0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1」の関係が満たされていてもよい。上記式(II)中、例えば、「0.5<a<1、0<b<0.5、0<c<0.5、a+b+c=1」の関係が満たされていてもよい。上記式(II)中、例えば、「0.7<a<1、0<b<0.3、0<c<0.3、a+b+c=1」の関係が満たされていてもよい。上記式(II)中、例えば、「0.8≦a<1、0<b<0.2、0<c<0.2、a+b+c=1」の関係が満たされていてもよい。
【0032】
正極活物質は、例えば、下記式(III):
LiNiaCobAlc2 (III)
により表される組成を有していてもよい。
【0033】
上記式(III)中、例えば、「0.7<a<1、0<b<0.3、0<c<0.3、a+b+c=1」の関係が満たされていてもよい。
【0034】
《皮膜》
皮膜2は、基材粒子1の表面の少なくとも一部を被覆している。皮膜2は、基材粒子1の表面の一部のみを被覆していてもよい。皮膜2は、実質的に、基材粒子1の表面全体を被覆していてもよい。皮膜2は、基材粒子1と電解質との直接接触を阻害することが期待される。すなわち、皮膜2は、電解質の酸化分解を阻害することが期待される。
【0035】
皮膜2の組成は、例えば、XPSにより特定され得る。皮膜2は、ホウ素酸化物を含む。皮膜2は、実質的にホウ素酸化物からなっていてもよい。ホウ素酸化物は、ホウ素(B)および酸素(O)を含む化合物を示す。ホウ素酸化物は、実質的にBおよびOからなっていてもよい。ホウ素酸化物は、結晶質であってもよい。ホウ素酸化物は、非晶質であってもよい。ホウ素酸化物は、BおよびOを含む限り、その他の元素をさらに含んでいてもよい。ホウ素酸化物は、例えば、Liをさらに含んでいてもよい。ホウ素酸化物は、実質的にB、OおよびLiからなっていてもよい。ホウ素酸化物は、任意の組成比を有し得る。ホウ素酸化物は、例えば、ホウ酸リチウム(LiBO2、Li3BO3、Li247等)を含んでいてもよい。
【0036】
正極活物質に含まれるLiを除く金属元素とホウ素の合計物質量に対する、ホウ素の物質量の百分率(「ホウ素比率」)は、例えば、56%以上であってもよい。ホウ素比率は、基材粒子1の被覆率の指標である。ホウ素比率が高い程、基材粒子1の被覆率が高いと考えられる。ホウ素比率は、例えば、80%以上であってもよい。ホウ素比率が80%以上であることにより、サイクル寿命の向上が期待される。ホウ素比率は、例えば、81%以上であってもよい。ホウ素比率は、例えば、82%以上であってもよい。ホウ素比率は、例えば、91%以上であってもよい。ホウ素比率は、例えば、100%以下であってもよい。ホウ素比率は、例えば、91%以下であってもよい。
【0037】
ホウ素比率は、XPSにより測定される。XPSにより、正極材料におけるホウ素の濃度が測定される。XPSにより、正極材料における、正極活物質に含まれるLiを除く金属元素とホウ素の合計濃度が測定される。例えば、正極活物質の組成が上記式(II)「LiNiaCobMnc2(0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)」によって表される時、正極活物質に含まれるLiを除く金属元素とホウ素の合計濃度は、Ni、Co、MnおよびBの合計濃度に等しい。ホウ素の濃度が、正極活物質に含まれるLiを除く金属元素とホウ素の合計濃度で除された値の百分率が「ホウ素比率」とみなされる。すなわちホウ素比率は、式「ホウ素比率[%]={B/(Ni+Co+Mn+B)}×100」により算出される。ホウ素比率は、3回以上測定される。3回以上の測定結果の算術平均値が採用される。
【0038】
XPSの測定条件は、例えば下記のとおりである。
装置 :ULVAC-PHI社製「PHI 5000 VersaProbe II」(これと同等品であればよい)
X線源 :単色化Al Kα線(1486.6eV)
加速電圧 :20kV
電力 :100W
測定モード:ワイドスキャン
検出角度 :45°
【0039】
《カーボンナノチューブ》
CNT3は、第1部分および第2部分を含む。第1部分は、皮膜2に埋め込まれている。第1部分は、基材粒子1に接触していてもよい。第2部分は、第1部分を除く残部を示す。第2部分は、皮膜2の表面に露出している。例えば、STEM(scanning transmission electron microscope)等により、複合粒子5が観察されることにより、CNT3が第1部分および第2部分を含むことが、確認され得る。
【0040】
CNT3は、高い電子伝導性を有し得る。CNT3は、基材粒子1同士の間をつなぐ電子伝導パスを形成し得る。CNT3は、例えば、SWCNT(single-walled carbon nanotube)であってもよい。CNT3は、例えば、DWCNT(double-walled carbon nanotube)であってもよい。CNT3は、例えば、MWCNT(multi-walled carbon nanotube)であってもよい。
【0041】
CNT3は、例えば、1nmから100nmの直径を有していてもよい。CNT3は、例えば、2nmから4nmの直径を有していてもよい。CNT3の直径は、HRTEM(high-resolution transmission electron microscope)により測定され得る。直径は、10本以上のCNT3において測定される。10本以上の算術平均値が採用される。
【0042】
CNT3の長さは、例えば、基材粒子1のメジアン径よりも短くてもよい。CNT3の長さは、例えば、基材粒子1のメジアン径の0.1倍から0.5倍であってもよい。CNT3は、例えば、1μmから10μmの長さを有していてもよい。CNT3は、例えば、1μmから5μmの長さを有していてもよい。CNT3は、例えば、2μmから4μmの長さを有していてもよい。CNT3の長さは、TEMまたはSEM(scanning electron microscope)により測定され得る。長さは、10本以上のCNT3において測定される。10本以上の算術平均値が採用される。
【0043】
正極活物質の質量に対する、カーボンナノチューブの質量の百分率(「CNT比率」)は、例えば0.01%から0.07%であってもよい。CNT比率は、例えば0.02%から0.06%であってもよい。CNT比率が0.02%以上であることにより、電池抵抗の低減が期待される。CNT比率が0.06%以下であることにより、サイクル寿命の向上が期待される。CNT比率は、例えば、0.04%以上であってもよい。CNT比率は、例えば、0.04%以下であってもよい。
【0044】
<非水電解質二次電池>
図3は、本実施形態の非水電解質二次電池の一例を示す概略図である。
電池100は、筐体90を含む。筐体90の外形は、円筒形である。ただし円筒形は一例に過ぎない。筐体90の外形は、例えば、角形であってもよい。筐体90は、例えば、金属製であってもよい。筐体90は、例えば、樹脂製であってもよい。筐体90は、例えば、アルミラミネートフィルム製のパウチ等であってもよい。
【0045】
筐体90は、蓄電要素50および電解質を収納している。筐体90は、密閉されていてもよい。蓄電要素50は、正極10、セパレータ30および負極20を含む。蓄電要素50は、巻回型である。蓄電要素50は、帯状の電極が渦巻状に巻回されることにより形成されている。蓄電要素50は、スタック型であってもよい。蓄電要素50は、枚葉状の電極が3枚以上積層されることにより形成されていてもよい。
【0046】
《正極》
正極10は、シート状であってもよい。正極10は、例えば、10μmから200μmの厚さを有していてもよい。正極10は、正極材料を含む。すなわち、電池100が、正極材料を含む。正極10は、正極材料に加えて、導電材、バインダ、正極集電体等を含んでいてもよい。正極10は、例えば、スラリーの塗布により形成されてもよい。すなわち、正極材料、導電材、バインダ、および分散媒等が混合されることにより、正極スラリーが調製され得る。正極スラリーが正極集電体の表面に塗布され、乾燥されることにより正極10が形成され得る。
【0047】
正極集電体は、例えば、Al箔等を含んでいてもよい。正極集電体は、例えば、5μmから50μmの厚さを有していてもよい。
【0048】
導電材は、任意の成分を含み得る。導電材は、例えば、カーボンブラックおよびグラフェンフレークからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。カーボンブラックは、例えば、アセチレンブラック等を含んでいてもよい。導電材の配合量は、100質量部の正極材料に対して、例えば、0.1質量部から10質量部であってもよい。
【0049】
バインダは、任意の成分を含み得る。バインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP)およびテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。バインダの配合量は、100質量部の正極材料に対して、例えば、0.1質量部から10質量部であってもよい。
【0050】
《負極》
負極20は、シート状であってもよい。負極20は、例えば、10μmから200μmの厚さを有していてもよい。負極20は、負極活物質を含む。負極20は、負極活物質に加えて、導電材、バインダ、負極集電体等を含んでいてもよい。負極20は、例えば、スラリーの塗布により形成されてもよい。すなわち、負極活物質、導電材、バインダ、および分散媒等が混合されることにより、負極スラリーが調製され得る。負極スラリーが負極集電体の表面に塗布され、乾燥されることにより負極20が形成され得る。
【0051】
負極活物質は、任意の成分を含み得る。負極活物質は、例えば、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、ケイ素(Si)、酸化ケイ素(SiO)、ケイ素基合金、スズ(Sn)、酸化スズ(SnO)、スズ基合金、およびチタン酸リチウムからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0052】
負極集電体は、例えば、銅(Cu)箔等を含んでいてもよい。負極集電体は、例えば、5μmから50μmの厚さを有していてもよい。
【0053】
導電材は、任意の成分を含み得る。導電材は、例えば、カーボンブラック等を含んでいてもよい。導電材の配合量は、100質量部の負極活物質に対して、例えば、0.1質量部から10質量部であってもよい。
【0054】
バインダは、任意の成分を含み得る。バインダは、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびポリアクリル酸(PAA)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。バインダの配合量は、100質量部の負極活物質に対して、例えば、0.1質量部から10質量部であってもよい。
【0055】
《セパレータ》
セパレータ30は、フィルム状である。セパレータ30は、例えば、5μmから30μmの厚さを有していてもよい。セパレータ30は、正極10と負極20との間に介在している。セパレータ30は、正極10と負極20とを物理的に分離している。セパレータ30は、電気絶縁性である。セパレータ30は、例えば、ポリオレフィン製であってもよい。セパレータ30は、Liイオンを透過させる。セパレータ30は、多孔質である。セパレータ30は、例えば、30%から60%の空孔率を有していてもよい。空孔率は、水銀圧入法により測定され得る。
【0056】
セパレータ30は、単層構造を有していてもよい。例えば、セパレータ30は、ポリエチレン(PE)層のみからなっていてもよい。セパレータ30は、多層構造を有していてもよい。セパレータ30は、例えば、3層構造を有していてもよい。セパレータ30は、ポリプロピレン(PP)層と、PE層と、PP層とがこの順で積層されることにより形成されていてもよい。
【0057】
《電解質》
電解質は、Liイオン伝導体である。電解質は、液体であってもよいし、ゲルであってもよし、固体であってもよい。固体電解質は、セパレータとしても機能し得る。
【0058】
電解質は、例えば、溶媒および支持塩を含んでいてもよい。溶媒は、非プロトン性である。溶媒は、支持塩を溶かし得る。溶媒は、例えば、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)およびジエチルカーボネート(DEC)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0059】
支持塩は、例えば、LiPF6、LiBF4およびLi(FSO22Nからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。支持塩の濃度は、例えば、0.5mоl/Lから2mоl/Lであってもよい。
【0060】
電解質は、溶媒および支持塩に加えて、各種の添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤は、例えば、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、1,3-プロパンサルトン(PS)、シクロヘキシルベンゼン(CHB)、tert-アミルベンゼン(TAB)およびリチウムビスオキサレートボラート(LiBOB)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0061】
<正極材料の製造方法>
図4は、本実施形態の正極材料の製造方法の概略フローチャートである。
正極材料の製造方法は、「(A)湿式混合」、「(B)乾燥」および「(C)加熱」を含む。
【0062】
《(A)湿式混合》
正極材料の製造方法は、基材粒子1、ホウ酸、CNT3および溶媒を混合することにより、第1前駆体を調製することを含む。
【0063】
基材粒子1の粉体が準備される。基材粒子1の詳細は、前述のとおりである。基材粒子1は、正極活物質を含む。
【0064】
CNT3が準備される。CNT3の粉体が準備されてもよい。例えば、CNT3のディスパージョンが準備されてもよい。ディスパージョンの分散媒は、例えば水等を含んでいてもよい。ディスパージョンは、分散剤を含んでいてもよい。分散剤は、例えばポリビニルピロリドン(PVP)等を含んでいてもよい。複数本のCNT3が凝集することにより、束(バンドル)を形成していることがある。ディスパージョンは、例えば、ビーズミル等により調製され得る。例えば、PVPの共存下、ビーズミルにより、バンドルが粉砕され得る。バンドルがほぐされると共に、CNT3が細断されることが期待される。細断前のCNT3は、例えば、10μmから100μmの長さを有していてもよい。細断前のCNT3は、例えば、10μmから30μmの長さを有していてもよい。細断後のCNT3は、例えば、1μmから10μmの長さになっていてもよい。細断後のCNT3は、例えば、1μmから5μmの長さになっていてもよい。細断後のCNT3は、例えば、2μmから4μmの長さになっていてもよい。CNT3の配合量(質量)は、正極活物質の質量に対して、例えば、0.01%から0.07%であってもよい。
【0065】
ホウ酸は、皮膜2(ホウ素酸化物)の原料である。ホウ酸は、例えば、オルトホウ酸(H3BO3)等を含んでいてもよい。ホウ酸の配合量(物質量)は、正極活物質の物質量に対して、例えば、0.1%から10%であってもよい。ホウ酸の配合量は、正極活物質の物質量に対して、例えば、0.5%から2%であってもよい。
【0066】
溶媒が準備される。本実施形態においては、ホウ酸を溶解し得る溶媒が選択される。溶媒は、例えば、水、エタノール、グリセリン等を含んでいてもよい。溶媒は、実質的に水からなっていてもよい。
【0067】
任意の攪拌機等により、基材粒子1、ホウ酸、CNT3および溶媒が混合される。基材粒子1の表面に、液体成分およびCNT3が均一に付着するように、混合条件が調整され得る。混合により、第1前駆体(湿潤混合物)が調製される。
【0068】
《(B)乾燥》
正極材料の製造方法は、第1前駆体を乾燥することにより、第2前駆体を調製することを含む。
【0069】
第1前駆体は、任意の方法により乾燥され得る。例えば、第1前駆体が自然乾燥されてもよい。例えば、乾燥機等が使用されてもよい。第1前駆体に含まれる溶媒が実質的に全部気化するように、乾燥条件が調整される。乾燥により、第2前駆体(乾燥混合物)が調製される。
【0070】
《(C)加熱》
正極材料の製造方法は、第2前駆体を加熱することにより、複合粒子5を調製することを含む。
【0071】
例えば、電気炉等が使用されてもよい。加熱雰囲気は、例えば、大気等であってもよい。加熱により、第2前駆体が焼成される。これにより、基材粒子1の表面においてホウ素酸化物が生成される。すなわち、基材粒子1の表面に皮膜2が形成される。加熱温度は、例えば、160℃から300℃であってもよい。
【0072】
加熱後、例えば、複合粒子5の凝集体が解砕されてもよい。複数個の複合粒子5から正極材料が形成される。すなわち、正極材料は、複数個の複合粒子からなる。
【0073】
本実施形態においては、皮膜2の原料と共にCNT3が混合されている。そのため、CNT3が第1部分および第2部分を含むように、皮膜2が形成され得る。第1部分は、皮膜2に埋め込まれている。第2部分は、皮膜2の表面に露出している。
【実施例
【0074】
以下、本開示の実施例(以下「本実施例」とも記される。)が説明される。ただし、以下の説明は、特許請求の範囲を限定しない。
【0075】
<実施例1>
<正極材料の製造>
《(A)湿式混合》
下記材料が準備された。
基材粒子 :正極活物質(LiNi0.8Co0.1Mn0.12
ホウ酸 :H3BO3
CNT :SWCNT(直径 2nmから4nm、長さ 10μmから30μm)
溶媒 :水
【0076】
基材粒子、ホウ酸、カーボンナノチューブおよび溶媒が混合されることにより、第1前駆体が調製された。ホウ酸の配合量(物質量)は、正極活物質の物質量に対して1%であった。
【0077】
《(B)乾燥》
乾燥機により、第1前駆体が乾燥された。これにより、第2前駆体が調製された。
【0078】
《(C)加熱》
電気炉により、第2前駆体が加熱された。加熱雰囲気は大気であった。加熱温度は、250℃であった。これにより、複合粒子5が形成された。複合粒子5の凝集体が解砕された。これにより、複数個の複合粒子5が形成された。すなわち、正極材料が製造された。実施例1におけるCNTの混合タイミングは、「皮膜の形成時」である。
【0079】
《ホウ素比率の測定》
XPSにより、正極材料のホウ素比率が測定された。本実施例においては、Ni、Co、MnおよびBの合計濃度に対する、Bの濃度の百分率が「ホウ素比率」とみなされた。
【0080】
<非水電解質二次電池の製造>
《正極の製造》
下記材料が準備された。
導電材 :アセチレンブラック
バインダ :PVdF
分散媒 :N-メチル-2-ピロリドン
正極集電体:Al箔(厚さ 15μm)
【0081】
上記で得られた正極材料、導電材、バインダおよび分散媒が混合されることにより、正極スラリーが調製された。正極スラリーが正極集電体の表面に塗布され、乾燥されることにより、正極が製造された。材料の配合は、「正極材料/導電材/バインダ=96.3/2.5/1.2(質量比)」であった。
【0082】
《負極の製造》
下記材料が準備された。
負極活物質:黒鉛
バインダ :「CMC/SBR=1/1(質量比)」
分散媒 :水
負極集電体:Cu箔(厚さ 10μm)
【0083】
負極活物質、バインダおよび分散媒が混合されることにより、負極スラリーが調製された。負極スラリーが負極集電体の表面に塗布され、乾燥されることにより、負極が製造された。材料の配合は、「負極活物質/バインダ=100/2(質量比)」であった。
【0084】
《組み立て》
セパレータが準備された。セパレータは3層構造を有していた。セパレータは、PP層、PE層およびPP層がこの順で積層されることにより形成されていた。
【0085】
蓄電要素が組み立てられた。蓄電要素は巻回型であった。蓄電要素は、正極、負極およびセパレータを含んでいた。円筒形の筐体が準備された。蓄電要素が筐体に収納された。
【0086】
電解質が準備された。電解質は下記成分を含んでいた。
溶媒 :「EC/DMC/EMC=3/4/3(体積比)」
支持塩 :LiPF6(濃度 1mоl/L)
添加剤 :VC(濃度 2質量%)
【0087】
電解質が筐体に注入された。電解質の注入後、筐体が密閉された。以上より、電池が製造された。電池は、円筒形18650サイズ(直径 18mm、高さ 65mm)であった。電池の設計容量は、1Ahであった。
【0088】
<実施例2から実施例7>
下記表1に示されるように、「ホウ素比率」および「CNT比率」が変更されることを除いては、実施例1と同様に、正極材料および非水電解質二次電池が製造された。
【0089】
<比較例1>
比較例1においては、未処理の基材粒子がそのまま正極材料として使用された。これを除いては実施例1と同様に、電池が製造された。
【0090】
<比較例2>
CNTが使用されないことを除いては、実施例1と同様に、正極材料および電池が製造された。
【0091】
<比較例3>
比較例2と同様に、CNTを含まない正極材料が製造された。正極材料、CNT、アセチレンブラック、バインダおよび分散媒が混合されることにより、正極スラリーが調製された。正極スラリーが正極集電体に塗布され、乾燥されることにより、正極が製造された。これらを除いては、比較例2と同様に電池が製造された。比較例3におけるCNTの混合タイミングは、「正極スラリーの調製時」である。
【0092】
<比較例4>
比較例1と同様に、未処理の基材粒子がそのまま正極材料として使用された。これを除いては、比較例3と同様に、電池が製造された。比較例4におけるCNTの混合タイミングは、「正極スラリーの調製時」である。
【0093】
なお、比較例3および比較例4においては、材料の配合が、「正極材料/(CNT+アセチレンブラック)/バインダ=96.3/2.5/1.2(質量比)」であった。
【0094】
<評価>
《電池抵抗》
本実施例において、「1C」は、満充電容量が1時間で放電される電流量を示す。
電池のSOC(state оf charge)が50%に調整された。SOCの調整後、25℃の温度環境の下で、10Cの放電電流により、電池が10秒間放電された。放電開始から10秒後の電圧降下量が測定された。電圧降下量が放電電流で除されることにより、電池抵抗が算出された。
【0095】
《サイクル試験》
25℃の温度環境の下で、充放電が100サイクル繰り返された。1サイクルは、定電流-定電圧方式(CCCV)充電と、定電流方式(CC)放電との一巡を示す。CCCV充電およびCC放電の条件は、下記のとおりである。
【0096】
CCCV充電:充電電流 0.5C、終止電圧 4.2V、終止電流 0.05C
CC放電 :放電電流 0.5C、終止電圧 3.0V
【0097】
容量維持率が求められた。容量維持率は、1サイクル時の放電容量に対する、100サイクル時の放電容量の百分率である。容量維持率は、下記表1に示される。容量維持率が高い程、サイクル寿命に優れると考えられる。
【0098】
【表1】
【0099】
<結果>
上記表1中、例えば、比較例1および比較例2において、皮膜の形成により、サイクル寿命が向上する傾向がみられる。同時に、皮膜の形成により、電池抵抗が増加する傾向もみられる。
【0100】
例えば、比較例1および比較例4において、CNTの添加により、電池抵抗が低減する傾向がみられる。CNTが単独で添加されても、サイクル寿命は実質的に変化しない傾向がみられる。
【0101】
比較例3は、正極スラリーの調製時にCNTが混合されている。そのため、比較例3の皮膜には、CNTの一部が埋め込まれていないと考えられる。比較例3におけるホウ素比率は、80%である。比較例3におけるCNT比率は、0.02%である。比較例3における電池抵抗は、44mΩである。
【0102】
実施例4においては、皮膜の形成時にCNTが混合されている。そのため、実施例4においては、CNTの一部が皮膜に埋め込まれており、かつCNTの残部が皮膜の表面に露出していると考えられる。実施例4におけるホウ素比率は、82%である。実施例4におけるCNT比率は、0.01%である。実施例4における電池抵抗は、44mΩである。実施例4は、比較例3に比して、ホウ素比率が高く、CNT比率が低い。したがって、実施例4の電池抵抗は、比較例3の電池抵抗よりも高くなると考えられる。しかし、実施例4は、比較例3と同等の電池抵抗を示している。実施例4においては、比較例3に比して、皮膜形成に伴う抵抗増加が効率よく抑えられていると考えられる。
【0103】
実施例1から実施例7において、ホウ素比率が80%以上である時、サイクル寿命(容量維持率)が向上する傾向がみられる。
【0104】
実施例1から実施例7において、CNT比率が0.02%以上である時、電池抵抗が低い傾向がみられる。CNT比率が0.06%以下である時、容量維持率が高い傾向がみられる。本実施形態および本実施例は、全ての点で例示である。本実施形態および本実施例は、制限的ではない。特許請求の範囲の記載に基づいて定められる技術的範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の意味における全ての変更を包含する。
【符号の説明】
【0105】
1 基材粒子、2 皮膜、3 カーボンナノチューブ(CNT)、4 導電材、5 複合粒子、10 正極、11 正極集電体、20 負極、30 セパレータ、50 蓄電要素、90 筐体、100 電池(非水電解質二次電池)。
図1
図2
図3
図4