(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】ガスクーラ
(51)【国際特許分類】
F04B 39/06 20060101AFI20241203BHJP
F04C 29/04 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
F04B39/06 L
F04C29/04 N
(21)【出願番号】P 2021009556
(22)【出願日】2021-01-25
【審査請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】521362885
【氏名又は名称】コベルコ・コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】壷井 昇
(72)【発明者】
【氏名】中村 元
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 順一朗
(72)【発明者】
【氏名】平田 和也
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-009598(JP,U)
【文献】特開平06-280747(JP,A)
【文献】実開昭56-095327(JP,U)
【文献】特開2019-055348(JP,A)
【文献】特開2006-250499(JP,A)
【文献】特開2004-019443(JP,A)
【文献】米国特許第5511953(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/06
F04C 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス導入口とガス導出口とが設けられたケーシングと、
前記ケーシングの内部に設けられ、前記ガス導入口が開口する上流側空間と、前記ガス導出口に連通する下流側空間とに前記ケーシングの内部を区画すると共に、前記ケーシングの前記内部に導入されたガスを冷却する冷却部と、
前記下流側空間の底部に設けられ、前記冷却部で前記ガスを冷却することによって前記ガスから分離されたドレンが溜まるドレン回収部と、
前記ドレン回収部に溜まった前記ドレンが前記ガスの一部と共に導入され、前記ドレンと前記ガスとを分離する分離部と、分離された前記ドレンが貯留される貯留部と、前記貯留部から前記ドレンを排出するためのドレン排出口とを有するドレンタンクと、
前記ドレン回収部に溜まった前記ドレンが前記ガスの一部と共に導入されるように、一端が前記ドレン回収部に連通され、他端が前記分離部に連通されているドレン排出流路と、
一端が前記分離部に連通され、他端が前記ドレン回収部より上方の前記下流側空間と前記ガス導出口とに通じるガス流路に連通されている通気流路と
を備える、ガスクーラ。
【請求項2】
前記ガス流路は、前記ドレン回収部から上方に向かって延び、前記下流側空間と前記ガス導出口とを接続する第1ガス流路を含み、
前記通気流路の前記他端は、前記第1ガス流路に連通されている、請求項1に記載のガスクーラ。
【請求項3】
前記第1ガス流路、前記分離部、前記ドレン排出流路、及び前記通気流路それぞれの流路断面積が以下の関係を有する、請求項2に記載のガスクーラ。
A1:第1ガス流路の流路断面積
A2:分離部の流路断面積
A3:ドレン排出流路の流路断面積
A4:通気流路の流路断面積
【請求項4】
前記第1ガス流路と前記分離部とにおけるガスの速度が以下の関係を有する、請求項3に記載のガスクーラ。
U:終端速度
U1:第1ガス流路におけるガスの速度
U2:分離部におけるガスの速度
V:ドレン回収部に導かれるガスの流量
V1:第1ガス流路に導かれるガスの流量
V2:分離部に導かれるガスの流量
【請求項5】
前記ドレンタンクの内側底面の高さ方向の位置が、前記ケーシングの内側底面の高さ方向の位置より相対的に低く、
前記ドレン排出流路は、前記ケーシング側で前記ケーシングの前記内側底面の高さ方向の位置を含むように開口しており、当該ドレン排出流路の底面が水平乃至は前記ドレンタンク側に向う下り傾斜である、請求項1から4のいずれか1項に記載のガスクーラ。
【請求項6】
前記通気流路を通過させるガスの流量を調整する絞り弁を備える、請求項1から5のいずれか1項に記載のガスクーラ。
【請求項7】
前記ドレンタンク内に前記貯留部に貯留される前記ドレンの上方を覆う多孔板を備える、請求項1から6のいずれか1項に記載のガスクーラ。
【請求項8】
前記通気流路の前記他端が、前記ガス導出口に連通されることに代えて大気開放されている、請求項1から7のいずれか1項に記載のガスクーラ。
【請求項9】
前記ドレン回収部に達したガスは、前記ドレン回収部から前記ケーシング内のみを流れ、前記ガス導出口に達する第1流れと、前記ドレン回収部から前記ドレンタンクを経由した後、前記第1流れに合流する第2流れとに分かれる、請求項1から8のいずれか1に記載のガスクーラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスクーラに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されている圧縮機用のガスクーラでは、ガス導入口から内部に導入されたガスは、熱交換器で冷却され、ガス導出口から導出される。冷却により凝縮したガス中の液体(ドレン)は、ガスクーラの底部に設けられたドレン回収部に溜まり、ガスクーラのケーシングに設けられた開口(ドレン排出口)から外部に排出される。ケーシング内のガスの流路断面積とドレン排出口との大きさが適切に設定されていない場合や構造上の制約等によって適切に設定できない場合、ドレン回収部に溜まったドレンがガスの流れに同伴して、例えば2段目圧縮機本体に達する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ガスクーラにおいて、ケーシング内におけるガス流路の流路断面積によらず、ドレンを効率的にケーシング外に排出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ガス導入口とガス導出口とが設けられたケーシングと、前記ケーシングの内部に設けられ、前記ガス導入口が開口する上流側空間と、前記ガス導出口に連通する下流側空間とに前記ケーシングの内部を区画すると共に、前記ケーシングの前記内部に導入されたガスを冷却する冷却部と、前記下流側空間の底部に設けられ、前記冷却部で前記ガスを冷却することによって前記ガスから分離されたドレンが溜まるドレン回収部と、前記ドレン回収部に溜まった前記ドレンが前記ガスの一部と共に導入され、前記ドレンと前記ガスとを分離する分離部と、分離された前記ドレンが貯留される貯留部と、前記貯留部から前記ドレンを排出するためのドレン排出口とを有するドレンタンクと、前記ドレン回収部に溜まった前記ドレンが前記ガスの一部と共に導入されるように、一端が前記ドレン回収部に連通され、他端が前記分離部に連通されているドレン排出流路と、一端が前記分離部に連通され、他端が前記ドレン回収部より上方の前記下流側空間と前記ガス導出口とに通じるガス流路に連通されている通気流路とを備える、ガスクーラを提供する。
【0006】
本発明のガスクーラによれば、圧縮機本体から吐出されドレン回収部に達したガスは、ドレン回収部からケーシング内のみを流れ、ガス導出口に達する第1流れと、ドレン回収部からドレンタンクを経由した後、第1流れに合流する第2流れとに分かれる。ドレン回収部に溜まったドレンは、第2流れによってガスと共にドレンタンクの分離部に導かれるため、ドレンが第1流れに同伴してガス導出口に導かれることが抑制され得る。また、第2流れによってガスと共にドレンタンクに導かれたドレンは、分離部でガスとドレンとに分離され、分離されたドレンは貯留部に溜まり、分離されたガスは通気流路を経て第1流れに合流する。従って、ドレンが第2流れに同伴してガス導出口に達することも抑制され得る。また、ドレンタンクの内部に導かれたガスは通気流路を介してガス流路に戻るため、ガスの漏出によるガスの損失が抑制され得る。
【0007】
前記ガス流路は、前記ドレン回収部から上方に向かって延び、前記下流側空間と前記ガス導出口とを接続する第1ガス流路を含み、前記通気流路の前記他端は、前記第1ガス流路に連通されていてもよい。
【0008】
例えば、前記第1ガス流路、前記分離部、前記ドレン排出流路、及び前記通気流路それぞれの流路断面積が以下の関係を有してもよい。
A1:第1ガス流路の流路断面積
A2:分離部の流路断面積
A3:ドレン排出流路の流路断面積
A4:通気流路の流路断面積
【0009】
前記第1ガス流路と前記分離部とにおけるガスの速度が以下の関係を有してもよい。
U:終端速度
U1:第1ガス流路におけるガスの速度
U2:分離部におけるガスの速度
V:ドレン回収部に導かれるガスの流量
V1:第1ガス流路に導かれるガスの流量
V2:分離部に導かれるガスの流量
【0010】
例えばケーシングが既存の部品である場合、流路断面積A1の値は固定される。また、圧縮機の使用状況、例えば顧客要求によって、圧縮機本体から吐出されドレン回収部に導かれるガスの流量Vの値も固定される。このような条件であっても、第1ガス流路に導かれるガスの流量V1を減少させる、すなわち分離部に導かれるガスの流量V2を増加させることで、第1ガス流路におけるガスの速度U1は終端速度U未満となり得る。また、ドレン排出流路、ドレンタンク、及び通気流路それぞれの流路断面積A2~A4は、上記の関係を満たす範囲で任意に設定できる。そのため、例えば、流路断面積A4を大きくすることで流量V2を増加させたとしても、流路断面積A2を大きくすることで分離部におけるガスの速度U2を終端速度U未満に設定できる。以上より、速度U1と速度U2とがそれぞれ、終端速度U未満となり得るため、ドレンがガスの流れに同伴してガス導出口に達することを抑制できる。
【0011】
前記ドレンタンクの内側底面の高さ方向の位置が、前記ケーシングの内側底面の高さ方向の位置より相対的に低く、前記ドレン排出流路は、前記ケーシング側で前記ケーシングの前記内側底面の高さ方向の位置を含むように開口しており、当該ドレン排出流路の底面が水平乃至は前記ドレンタンク側に向う下り傾斜であってもよい。
【0012】
前記の構成によれば、ドレン回収部からドレンタンクへドレンが速やかに導かれ得る。そのため、ドレン回収部でのドレンの滞留を減少でき、ドレンがガス導出口に達することを一層抑制できる。
【0013】
ガスクーラは、前記通気流路を通過させるガスの流量を調整する絞り弁を備えてもよい。
【0014】
前記の構成によれば、絞り弁の開度を調整することによって、流量V2が適宜設定され、速度U1と速度U2とを調整できる。
【0015】
ガスクーラは、前記ドレンタンク内に前記貯留部に貯留される前記ドレンの上方を覆う多孔板を備えてもよい。
【0016】
前記の構成によれば、貯留部に貯留されたドレンがガスの流れにのって持ち上げられることを抑制できるため、ドレンが通気流路を介してガス導出口に達することをより効果的に抑制できる。
【0017】
前記通気流路の前記他端が、前記ガス導出口に連通されることに代えて大気開放されていてもよい。
【0018】
前記の構成によれば、第2流れを第1流れに戻せない場合であっても、ドレンを貯留部に貯留することができる。
前記ドレン回収部に達したガスは、前記ドレン回収部から前記ケーシング内のみを流れ、前記ガス導出口に達する第1流れと、前記ドレン回収部から前記ドレンタンクを経由した後、前記第1流れに合流する第2流れとに分かれてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のガスクーラによれば、ケーシング内におけるガス流路の流路断面積によらず、ドレンを効率的にケーシング外に排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る圧縮機の概略構成図。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るガスクーラを備える圧縮機の概略図。
【
図3】本発明の第2実施形態に係るガスクーラを備える圧縮機の概略図。
【
図4】本発明の第2実施形態の変形例を示す概略図。
【
図5】本発明の第3実施形態に係るガスクーラを備える圧縮機の概略図。
【
図6】本発明の第4実施形態に係るガスクーラを備える圧縮機の概略図。
【
図8】本発明の第5実施形態に係るガスクーラを備える圧縮機の概略図。
【
図9】本発明の第6実施形態に係るガスクーラを備える圧縮機の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
本実施形態の圧縮機1は、オイルフリー式の2段型スクリュ圧縮機である。取り扱いガスとしては、空気を例に以下説明する。
【0022】
図1を参照すると、圧縮機1は、1段目圧縮機本体2、2段目圧縮機本体3、インタークーラ20、及びアフタークーラ60を備える。本実施形態では、空気流路において、1段目圧縮機本体2、インタークーラ20、2段目圧縮機本体3、及びアフタークーラ60が、この順で配置され、流体的に接続されている。
【0023】
1段目圧縮機本体2は、大気開放された吸込口4から空気を吸い込み、内部で空気を圧縮し、吐出口5から吐出する。吐出口5から吐出された圧縮空気は、インタークーラ20を介して2段目圧縮機本体3の吸込口6に送られる。
【0024】
図2を併せて参照すると、1段目圧縮機本体2と2段目圧縮機本体3との間にインタークーラ20が介在している。インタークーラ20には冷却部21が設けられている。冷却部21では、外部からの冷却液と、1段目圧縮機本体2から吐出された空気との間で熱交換が行われ、1段目圧縮機本体2から吐出された空気が冷却される。冷却部21を通過する前の空気は例えば180℃程度の高温になっているが、冷却部21を通過した後のインタークーラ20内の空気は例えば40℃程度まで冷却される。従って、2段目圧縮機本体3には、適度に冷却された圧縮空気が供給される。
【0025】
2段目圧縮機本体3は、インタークーラ20から供給される圧縮空気を吸い込んで内部で圧縮し、吐出口7から吐出する。吐出口7から吐出された圧縮空気は、インタークーラ20と同様に、アフタークーラ60の冷却部61によって冷却され、工場などの供給先に供給される。
【0026】
上記構成では、インタークーラ20又はアフタークーラ60の内部で空気が冷却された際、空気中の水分が凝縮し、それぞれの内部にドレンが発生する。ドレンは、空気の流れに乗って2段目圧縮機本体3又は供給先に流入することで、故障の原因になり得るが、本実施形態ではインタークーラ20とアフタークーラ60とがそれぞれ、ドレンを除去する構造を有している。
【0027】
以下、インタークーラ20におけるドレンを除去する構造について説明する。本実施形態では、アフタークーラ60もインタークーラ20と同様の構造を有する。
【0028】
図2を参照すると、インタークーラ20(ガスクーラ)は、ケーシング30、冷却部21、及びドレンタンク40を備える。
【0029】
ケーシング30には、ガス導入口31とガス導出口32とが設けられている。ガス導入口31は、1段目圧縮機本体2の吐出口5に接続されている。ガス導出口32は、2段目圧縮機本体3の吸込口6に接続されている。
【0030】
冷却部21は、ケーシング30の内部に設けられ、ガス導入口31が開口する上流側空間36と、ガス導出口32に連通する下流側空間37とにケーシング30の内部を区画している。
【0031】
また、冷却部21は、ケーシング30の内部に導入された空気(ガス)を冷却する。具体的には、空気が管巣22及びフィン23と接触し、管巣22内の冷却水と熱交換することで、空気は冷却される。空気が冷却される際、空気中の水分が凝縮して液滴となり落下することで、ドレンは生じる。
【0032】
ケーシング30は、下流側空間37の底部に設けられているドレン回収部33を備える。ドレン回収部33には、冷却部21で空気(ガス)を冷却することによって空気(ガス)から分離されたドレンが溜まる。
【0033】
また、ケーシング30は、ドレン回収部33より上方の下流側空間37とガス導出口32とに通じるガス流路38を備える。ガス流路38は、ドレン回収部33から上方に向かって延び、下流側空間37とガス導出口32とを接続する第1ガス流路39を含む。
【0034】
ドレンタンク40は、側壁41、頂壁42、及び底壁43を有する円筒状の中空のタンクである。ドレンタンク40は、ドレンタンク40の上方に位置する分離部47と、ドレンタンク40の下方に位置し、後述するようにドレンが貯留される貯留部48とを有する。貯留部48と分離部47との境界は固定されておらず、貯留されたドレンの液面より上の気相空間が分離部47である。ドレンタンク40の内側底面43aの高さH1は、ケーシング30の内側底面30aの高さH2より相対的に低い。なお、高さH2は、内側底面30aが水平な平坦面でない場合には、内側底面30aで最も低い位置とする。
【0035】
また、ドレンタンク40は、一端がドレン回収部33に連通され、他端が分離部47に連通されているドレン排出流路34を備える。すなわち、ドレン排出流路34は、一端がケーシング30のドレン回収部33の部分に設けられたドレン流出口35に接続され、他端が側壁41の分離部47の部分に設けられたドレン流入口49に接続されている。
【0036】
ドレンと空気とがドレン排出流路34を通過した後、分離部47では、ドレン回収部33に溜まったドレンが空気(ガス)の一部と共に導入され、ドレンと空気(ガス)とを分離し、分離されたドレンが貯留部48に貯留される。貯留部48の深さは、ドレン流入口49から十分に深く、ドレン流入口49を塞ぐことなくドレンが貯留されるようになっている。
【0037】
底壁43には、貯留部48からドレンを排出するためのドレン排出口44が設けられている。ドレン排出口44には、ドレン排出管45が接続されている。ドレン排出管45は封止機構46を介して外部配管に接続されている。封止機構46は、例えば、電磁弁等のバルブである。
【0038】
インタークーラ20は、分離部47の空気をケーシング30内に戻すための通気流路50を備える。通気流路50は、一端がドレンタンク40の頂壁42に設けられたガス流出口51に接続され、他端がガス流路38の部分のケーシング30に設けられたガス流入口52に接続されている。すなわち、通気流路50は、一端が分離部47に連通され、他端がガス流路38に連通されている。換言すると、通気流路50の他端は、第1ガス流路39に連通されている。ガス流入口52は、第1ガス流路39の最も下流側の部分のケーシング30に設けられてもよい。
【0039】
以下、空気及びドレンの流れについて詳細に説明する。
【0040】
前述の通り、1段目圧縮機本体2の吐出口5から吐出された圧縮空気は、インタークーラ20を介して2段目圧縮機本体3の吸込口6に送られる。換言すると、ケーシング30の内部においてガス導入口31からガス導出口32に向かう空気の流れが生じている。
【0041】
本実施形態では、ガス導入口31からガス導出口32に向かって流れる空気は、ケーシング30内のみを流れる流れと、ドレンタンク40を経由する流れとに分かれる。換言すると、ドレン回収部33に達した空気は、矢印F1,F2で示されているように、第1ガス流路39を流れる第1流れと、矢印F3,F4示されているように、ドレンタンク40を経由する第2流れとに分かれる。
【0042】
ドレン回収部33に溜まったドレンは、第2流れによって、空気と共に速やかに分離部47に導かれる。
【0043】
空気と共に分離部47に導かれたドレンは、空気から分離され、自重によって貯留部48に貯留される。分離部47で分離された空気は、矢印F4で示されているように、通気流路50を介して第1ガス流路39に合流する。また、貯留部48に貯留されたドレンは、必要に応じて封止機構46を開くことでドレン排出口44から排出される。すなわち、封止機構46は、貯留部48に貯留されたドレンを排出するためだけに開閉制御される。つまり、ドレン回収部33から分離部47にドレンを導くために、封止機構46の開閉制御は必要ではない。
【0044】
また、貯留部48にドレンが貯留されている状態を維持するように封止機構46を開けば、封止機構46から空気が漏出し得ないため、空気の漏出を最小限に抑えるための封止機構46の開閉制御は必要ではない。例えば、貯留部48の所定の下限レベルまでドレンが減少したことを検知する第1の水位センサ70を高さH1から高さH3の間の下半部(例えばH1近傍)に設け、貯留部48の所定の上限レベルまでドレンが増加したことを検知する第2の水位センサ71を高さH1から高さH3の間の上半部(例えばH3近傍)に設ける。そして、第1の水位センサ70によってドレン貯留量が下限レベルに達したことを検知したときに封止機構46(電磁弁)を閉じ、第2の水位センサ71によってドレン貯留量が上限レベルに達したことを検知したときに封止機構46(電磁弁)を開くようにコントローラ72によって開閉制御すればよい。なお、第1の水位センサ70と第2の水位センサ71は、下限レベルから上限レベルまで連続的に水位を検出できる一つの水位センサに代えてもよい。また、第2の水位センサ71に代えて、第1の水位センサ70によってドレン貯留量が下限レベルに達したことを検知してからドレンが上限レベルに達するまでの間の任意の時間を設定可能なタイマーを設け、予め定めた設定時間がカウントされたときに封止機構46(電磁弁)を開くように開閉制御してもよい。また、封止機構は電磁弁に限らず、フリーフロート式のエアトラップ46aであってもよい(
図3参照)。フリーフロート式のエアトラップ46aによれば電気的な開閉制御自体が不要であるため、開閉制御を行うことなく自動的なドレン排出が可能となる。
【0045】
以上より、ドレン回収部33に達した空気は、ドレン回収部33からケーシング30内のみを流れ、ガス導出口32に達する第1流れと、ドレン回収部33からドレンタンク40を経由した後、第1流れに合流する第2流れとに分かれる。
【0046】
ドレン回収部33に溜まったドレンは、第2流れによって空気と共にドレンタンク40の分離部47に導かれるため、ドレンが第1流れに同伴して2段目圧縮機本体3に導かれることが抑制され得る。また、第2流れによって空気と共にドレンタンク40に導かれたドレンは、分離部47で空気とドレンとに分離され、分離されたドレンは貯留部48に溜まり、分離された空気は通気流路50を経て第1流れに合流する。従って、ドレンが第2流れに同伴して2段目圧縮機本体3に達することも抑制され得る。また、ドレンタンク40の内部に導かれた空気は通気流路50を介してガス流路38に戻るため、空気の漏出による空気の損失が抑制され得る。
【0047】
以上のように、本実施形態のガスクーラによれば、ケーシング30内におけるガス流路の流路断面積によらず、ドレンを効率的にケーシング30外に排出できる。また、ドレンをケーシング30外に排出するための封止機構46の開閉制御と、空気の漏出を最小限に抑えるための封止機構46の開閉制御とを必要とすることなく、ドレンをケーシング30外に排出できる。
【0048】
以下、引き続き
図2を参照して、第1ガス流路39の流路断面積A1、分離部47の流路断面積A2、ドレン排出流路34の流路断面積A3、及び通気流路50の流路断面積A4のそれぞれに言及しつつ、空気及びドレンの流れについて詳細に説明する。流路断面積とは、流体が各流路を通過する際、流体が流れる方向に対しておおむね垂直な各流路の断面積をいう。気相空間である分離部47の流路断面積A2は、分離部47におけるドレンタンク40の内壁の水平断面の面積である。
【0049】
本実施形態では、第1ガス流路39、分離部47、ドレン排出流路34、及び通気流路50それぞれの流路断面積A1~A4が次の式(1)の関係を有する。
【0050】
【0051】
流路断面積A2は、流路断面積A1より十分に大きく設定されているので、空気の速度が、第1ガス流路39では終端速度U以上であっても、分離部47では終端速度U未満となり得る。ここで、終端速度Uとは、空気中で液滴が自由落下する際に空気抵抗と釣り合って達する最高速度のことをいい、例えば5m/秒程度と設定してもよい。
【0052】
流路断面積A3は、流路断面積A4より十分に大きいため、ドレン回収部33に溜まったドレンは、第2流れによって、空気と共に速やかに分離部47に導かれ得る。
【0053】
流路断面積A3は、前述の通りドレン回収部33に溜まったドレンを速やかに分離部47に導ける程度の大きさにしつつ、流路断面積A1と比較して小さくすることで、設置性が向上し得る。すなわち、例えば既存のケーシング30に対してドレンタンク40等を設けることが容易になり得る。
【0054】
以下、引き続き
図2を参照して、第1ガス流路39における空気(ガス)の速度U1、分離部47における空気(ガス)の速度U2、第1ガス流路39に導かれる空気(ガス)の流量V1、及び分離部47に導かれる空気(ガス)の流量V2について説明する。なお、本明細書中、「流量」とは「体積流量(単位:m
3/秒)」を意味する。
【0055】
本実施形態では、第1ガス流路39と分離部47とにおける空気(ガス)の速度が次の式(2)~(4)の関係を有している。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
例えばケーシング30が既存の部品である場合、流路断面積A1の値は固定される。また、圧縮機1の使用状況、例えば顧客要求によって、1段目圧縮機本体2から吐出されドレン回収部33に導かれる空気の流量Vの値も固定される。
【0060】
このような条件であっても、第1ガス流路39に導かれる空気の流量V1を減少させる、すなわち分離部47に導かれる空気の流量V2を増加させることで、第1ガス流路39における空気の速度U1は終端速度U未満となり得る。
【0061】
また、ドレン排出流路34、ドレンタンク40、及び通気流路50それぞれの流路断面積A2~A4は、上記の関係を満たす範囲で任意に設定することができる。そのため、例えば、流路断面積A4を大きくすることで流量V2を増加させたとしても、流路断面積A2を大きくすることで分離部47における空気の速度U2を終端速度U未満に設定できる。
【0062】
以上より、速度U1と速度U2とがそれぞれ、終端速度U未満となり得るため、ドレンが空気の流れに同伴して2段目圧縮機本体3に達することを抑制できる。
【0063】
以下、本発明の第2から第6実施形態を説明する。これらの実施形態に関し、特に言及しない点については、前述の第1実施形態と同様である。また、これらの実施形態に関する図面において、第1実施形態と同一の要素には、第1実施形態のものと同一の符号が付されている。
【0064】
(第2実施形態)
図3を参照すると、第2実施形態におけるインタークーラ20では、ドレン排出流路34の底面34aの高さH3は、ケーシング30の内側底面30aの高さH2と同一である。すなわち、ドレン排出流路34は、ケーシング30側でケーシング30の内側底面30aの高さ方向の位置H2を含むように開口しており、ドレン排出流路34の底面34aが水平である。また、第2実施形態におけるインタークーラ20では、封止機構46の代わりにフリーフロート式のエアトラップ46aが設けられている。
【0065】
第2実施形態では、ドレン回収部33からドレンタンク40へのドレンの流れに対する抵抗が低減され、ドレンが速やかに導かれ得る。そのため、ドレン回収部33でのドレンの滞留を減少でき、ドレンがガス導出口32に達することを一層抑制できる。また、フリーフロート式のエアトラップ46aによれば電気的な開閉制御自体が不要であるため、開閉制御を行うことなく自動的なドレン排出が可能となる。
【0066】
図4に示すように、第2実施形態の変形例では、ドレン排出流路34の底面34aがドレンタンク40側に向う下り傾斜である。
【0067】
第2実施形態の変形例では、重力による下向きの力も加わり、一層速やかにドレンがドレンタンク40に導かれ得る。
【0068】
(第3実施形態)
図5を参照すると、第3実施形態におけるインタークーラ20は、通気流路50を通過させるガスの流量を調整する絞り弁53を備える。
【0069】
絞り弁53は、通気流路50を通過する空気の流量を調整する機能を有する。そのため、絞り弁53の開度を調整することによって、流量V2が適宜設定され、速度U1と速度U2とを調整できる。
【0070】
(第4実施形態)
図6及び
図7を参照すると、第4実施形態におけるインタークーラ20は、ドレンタンク40内に貯留部48に貯留されるドレンの上方を覆う多孔板54を備える。多孔板54は、複数の小孔54aが設けられた薄い板である。例えば、多孔板54は、いわゆるパンチングメタルと称されるような金属板を穿孔した部材であってもよいし、ドレン水よりも比重の軽い樹脂板に穿孔した部材であってもよい。
【0071】
多孔板54の設置方法は、特に限定されず、貯留部48の所定の深さ位置に固定されてもよいし、ドレンが貯留部48に溜まった際に浮かぶように貯留部48の底に単に載置していてもよい。
【0072】
多孔板54を備えることで、貯留部48に貯留されたドレンが空気の流れにのって持ち上げられることを抑制できるため、ドレンが通気流路50を介してガス導出口32に達することを一層抑制できる。
【0073】
(第5実施形態)
図8を参照すると、第5実施形態では、通気流路50の他端が、ガス導出口32に連通されていることに代えて大気開放されている。
【0074】
第5実施形態では、第2流れを第1流れに戻せない場合であっても、ドレンを貯留部に貯留することができる。
【0075】
(第6実施形態)
図9を参照すると、第6実施形態では、通気流路50の先端(他端)は、ケーシング30に接続されず大気開放されている。また、第6実施形態におけるインタークーラ20は、通気流路50を通過させるガスの流量を調整する絞り弁53を備える。
【0076】
絞り弁53は、通気流路50を通過する空気の流量を調整する機能を有する。そのため、絞り弁53の開度を調整することによって、流量V2が適宜設定され、速度U1と速度U2とを調整できる。
【0077】
また、第6実施形態では、第2流れを第1流れに戻せない場合であっても、ドレンを貯留部48に貯留することができる。また、通気流路50を通過する空気の流量を調整するだけで、すなわち、空気の損失を調整するだけで、ドレンが第1流れに同伴してガス導出口32に導かれることを抑制できる。
【0078】
以上より、本発明の具体的な実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、ケーシング30、ドレン排出流路34、ドレンタンク40および通気流路50は、それぞれを個別の部材によって形成したものでもよく、少なくとも2つ以上を鋳造品のように一体形成したものであってもよい。また、ケーシング30の内側底面30aが水平な場合を例示したが、内側底面30aはドレン流出口35に向かって連続的または段階的に低くなるように形成したものであってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 圧縮機
2 1段目圧縮機本体
3 2段目圧縮機本体
4,6 吸込口
5,7 吐出口
20 インタークーラ
21,61 冷却部
22,62 管巣
23,63 フィン
30 ケーシング
31 ガス導入口
32 ガス導出口
33 ドレン回収部
34 ドレン排出流路
35 ドレン流出口
36 上流側空間
37 下流側空間
38 ガス流路
39 第1ガス流路
40 ドレンタンク
41 側壁
42 頂壁
43 底壁
44 ドレン排出口
45 ドレン排出管
46 封止機構
46a エアトラップ(封止機構)
47 分離部
48 貯留部
49 ドレン流入口
50 通気流路
51 ガス流出口
52 ガス流入口
53 絞り弁
54 多孔板
60 アフタークーラ
70,71 水位センサ
72 コントローラ