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  • 特許-布帛および繊維製品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】布帛および繊維製品
(51)【国際特許分類】
   D03D 15/47 20210101AFI20241203BHJP
   A41D 31/08 20190101ALI20241203BHJP
   A41D 13/002 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
D03D15/47
A41D31/08
A41D13/002
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021018860
(22)【出願日】2021-02-09
(65)【公開番号】P2022121886
(43)【公開日】2022-08-22
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】北村 篤士
(72)【発明者】
【氏名】田中 謙吾
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-504941(JP,A)
【文献】特開平09-021074(JP,A)
【文献】特表2008-517181(JP,A)
【文献】特開2015-094043(JP,A)
【文献】特開2021-181647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 15/47
A41D 13/002
A41D 31/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラ型全芳香族ポリアミド繊維とメタ型全芳香族ポリアミド繊維とをこの順の混合率(重量比)で20/80~80/20で含む糸1と、ポリベンズオキサゾール繊維のみからなる糸2とを含むことを特徴とする布帛。
【請求項2】
前記糸2の総繊度が前記糸1の総繊度と同じか小さい、請求項1に記載の布帛。
【請求項3】
前記糸1が、ポリベンズイミダゾール繊維、酸化ポリアクリロニトリル繊維、難燃アクリル繊維、難燃レーヨン繊維、難燃ポリエステル繊維の群から選択されるいずれかの繊維をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の布帛。
【請求項4】
前記糸2が英式綿番手10~80の範囲内である牽切紡績糸である、請求項1~3のいずれかに記載の布帛。
【請求項5】
前記糸2が総繊度100~600dtexのマルチフィラメント糸である、請求項1~3のいずれかに記載の布帛。
【請求項6】
布帛が部分二重織物であり、前記糸2が経および緯に格子状に織り込まれており、かつ織物の経糸および緯糸において糸1と糸2が2:1~15:1の割合で配されてなる、請求項1~5のいずれかに記載の布帛。
【請求項7】
布帛の表面または裏面において、糸1の露出割合が70%以上である、請求項1~6のいずれかに記載の布帛。
【請求項8】
ISO17492で規定される試験装置を用いて熱流束84kW/mの火炎で10秒間暴露した後の引張強度保持率が10%以上である、請求項1~7のいずれかに記載の布帛。
【請求項9】
スーパーキセノンウエザーメーターを用いて、その紫外線照射面を変更することなく、UV照射強度:180W/m、ブラックパネル温度:63℃、降雨なしの条件で350時間照射処理した後の引張強度保持率が20%以上である、請求項1~8のいずれかに記載の布帛。
【請求項10】
ISO12947-2(マーチンデール)に規定される摩耗試験において、生地が破れるまでの回数が20000回以上である、請求項1~9のいずれかに記載の布帛。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載された布帛を用いてなる、防護服、消防防火服、消防活動服、救助服、ワークウェア、警察制服、自衛隊衣服、および軍服からなる群より選択されるいずれかの繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性だけでなく、耐光性、耐摩耗性、火炎または熱によって暴露された際に優れた強度を兼ね備えた布帛および繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消防服などの防護服に用いられる布帛として種々の布帛が提案されている。しかし、現在用いられている布帛は消防活動中に火炎や熱に一度でも暴露されると、その暴露を受けた部位が硬化、炭化して脆化してしまい、防護機能を著しく損ねるといった問題を有している。
【0003】
かかる問題を解決するため、例えば特許文献1では、耐熱性、軽量性、耐候性、および火炎暴露炭化後の布帛柔軟性を兼ね備えた布帛が提案されているが、熱暴露後の強度についてまだ十分とはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-94043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、難燃性だけでなく、耐光性、耐摩耗性、さらには火炎または熱によって暴露された際に優れた強度を有する布帛および繊維製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、布帛を構成する繊維種類などを巧みに工夫することにより難燃性だけでなく、耐光性、耐摩耗性、さらには火炎または熱によって暴露された際に優れた強度を有する布帛が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして、本発明によれば「パラ型全芳香族ポリアミド繊維とメタ型全芳香族ポリアミド繊維とをこの順の混合率(重量比)で20/80~80/20で含む糸1と、ポリベンズオキサゾール繊維のみからなる糸2とを含むことを特徴とする布帛。」が提供される。
【0008】
その際、前記糸2の総繊度が前記糸1の総繊度と同じか小さいことが好ましい。また、前記糸1が、ポリベンズイミダゾール繊維、酸化ポリアクリロニトリル繊維、難燃アクリル繊維、難燃レーヨン繊維、難燃ポリエステル繊維の群から選択されるいずれかの繊維をさらに含むことが好ましい。また、前記糸2が英式綿番手10~80の範囲内である牽切紡績糸であることが好ましい。また、前記糸2が総繊度100~600dtexのマルチフィラメント糸であることが好ましい。また、布帛が部分二重織物であり、前記糸2が経および緯に格子状に織り込まれており、かつ織物の経糸および緯糸において糸1と糸2が2:1~15:1の割合で配されてなることが好ましい。また、布帛の表面または裏面において、糸1の露出割合が70%以上であることが好ましい。また、ISO17492で規定される試験装置を用いて熱流束84kW/mの火炎で10秒間暴露した後の引張強度保持率が10%以上であることが好ましい。また、スーパーキセノンウエザーメーターを用いて、その紫外線照射面を変更することなく、UV照射強度:180W/m、ブラックパネル温度:63℃、降雨なしの条件で350時間照射処理した後の引張強度保持率
が20%以上であることが好ましい。また、ISO12947-2(マーチンデール)に規定される摩耗試験において、生地が破れるまでの回数が20000回以上であることが好ましい。
【0009】
また、本発明によれば、前記の布帛を用いてなる、防護服、消防防火服、消防活動服、救助服、ワークウェア、警察制服、自衛隊衣服、および軍服からなる群より選択されるいずれかの繊維製品が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、難燃性だけでなく、耐光性、耐摩耗性、火炎または熱によって暴露された際に優れた強度を有する布帛および繊維製品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1で用いた織組織図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。まず、本発明の布帛は、糸1として、パラ型全芳香族ポリアミド繊維(以下、パラ型アラミド繊維と称することがある)とメタ型全芳香族ポリアミド繊維(以下、メタ型アラミド繊維と称することがある)とを混合率(重量比)20/80~80/20で含む。メタ型アラミド繊維の混合率の重量比が該範囲を超えると、初期の熱暴露後強度が低下するおそれがあるため好ましくない。
【0013】
ここで、前記パラ型全芳香族ポリアミド繊維は、パラフェニレンテレフタラミド繊維またはコパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維が好ましく、市販品では「トワロン(登録商標)」、「テクノーラ(登録商標)」などが例示される。また、前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、その繰返し単位の85モル%以上がm-フェニレンイソフタルアミドであるポリマーからなる繊維である。市販品では「コーネックス(登録商標)」などが例示される。
【0014】
前記糸1は、パラ型全芳香族ポリアミド繊維とメタ型全芳香族ポリアミド繊維のみで構成されていてもよいし他の繊維を含んでいてもよい。その際、他の繊維としては、ポリベンズイミダゾール繊維、酸化ポリアクリロニトリル繊維、難燃アクリル繊維、難燃レーヨン繊維、難燃ポリエステル繊維などがあげられる。
【0015】
また、本発明の布帛は、前記糸1だけでなく、ポリベンズオキサゾール繊維のみからなる糸2をも含む。また、前記糸2は英式綿番手10~80の範囲内である牽切紡績糸、あるいは繊度100~600dtexの範囲内であるマルチフィラメント糸であることが好ましい。また、ポリベンズオキサゾール繊維は、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維が好ましく、市販品では「ザイロン(登録商標)」などが例示される。ポリベンズオキサゾール繊維を用いることで火炎に暴露された後の強度を維持することができる。
【0016】
また、前記糸2の総繊度が前記糸1の総繊度と同じか小さいことが好ましい。前記糸2の総繊度が前記糸1の総繊度より大きいと、布帛の平滑性が小さくなり、摩耗性が低下するおそれがある。また、布帛の表面または裏面において、糸2の露出割合が高くなり、布帛の耐光性が低下するおそれがある。
【0017】
特に、火炎または熱によって暴露された際の強度を高める上で、また日光に晒された時の耐光性を高める上で、布帛の表面または裏面(好ましくは表面(使用の際に外気側に位置する面))において、糸1の露出割合が70%以上であることが好ましい。特に、布帛が部分二重織物であり、前記糸2が経および緯に格子状に織り込まれており、かつ織物の
経糸および緯糸において糸1と糸2とがこの順に2:1~15:1(より好ましくは3:1~10:1)の割合で配されていることが好ましい。
【0018】
かくして得られた布帛は、難燃性だけでなく、耐光性、耐摩耗性、火炎または熱によって暴露された際に優れた強度を有する。かかる強度保持率としては、ISO17492で規定される試験装置を用いて熱流束84kW/mの火炎で10秒間暴露した後、ISO13934-1に規定される引張試験を行って、経方向または緯方向において10%以上であることが好ましい。また、スーパーキセノンウエザーメーターを用いて、その紫外線照射面を変更することなく、UV照射強度:180W/m、ブラックパネル温度:63℃、降雨なしの条件で350時間照射処理した後の引張強度保持率が15%以上であることが好ましく、さらに20%以上であることが好ましい。また、ISO12947-2(マーチンデール)に規定される摩耗試験において、生地が破れるまでの回数が20000回以上であることが好ましい。
【0019】
次に、本発明の繊維製品は、前記の布帛を用いてなる、防護服、消防防火服、消防活動服、救助服、ワークウェア、警察制服、自衛隊衣服、および軍服からなる群より選択されるいずれかの繊維製品である。かかる繊維製品は前記の布帛を用いているので、難燃性だけでなく、耐光性、耐摩耗性、火炎または熱によって暴露された際に優れた強度を有する。
【実施例
【0020】
次に本発明の実施例および比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0021】
(1)熱暴露後の引張強度および引張強度保持率
ISO17492で規定される試験装置を用いて熱流束84kW/mの火炎で10秒間暴露した後、ISO13934-1に規定される引張試験を行った。
引張強度保持率(%)=熱暴露後の引張強度÷初期引張強度×100
【0022】
(2)紫外線照射後の引張強度および引張強度保持率
スーパーキセノンウエザーメーターを用いて、その紫外線照射面を変更することなく、UV照射強度:180W/m、ブラックパネル温度:63℃、降雨なしの条件で350時間照射処理した後、ISO13934-1に規定される引張試験を行った。
引張強度保持率(%)=紫外線照射後の引張強度÷初期引張強度×100
【0023】
(3)耐摩耗性
ISO12947-2(マーチンデール)に規定される摩耗試験を行った。
【0024】
[実施例1]
パラフェニレンテレフタラミド繊維(帝人社製「トワロン(登録商標)」)とポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(帝人社製「コーネックス(登録商標)」)を混合比率が60:40となる割合で混合した紡績糸(番手:30/2)を糸1とした。また、ポリベンズオキサゾール繊維(東洋紡社製「ザイロン(登録商標)」)のみからなる牽切紡績糸(英国式番手:30/2)を糸2とした。
【0025】
次いで、経糸は糸1:糸2を3:1、緯糸は糸1:糸2を2:1の割合で配して、織物密度が経80本/インチ(2.54cm)、緯55本/インチ(2.54cm)の図1の部分二重織物を製織し、目付け200g/mの織物を得た。織物の表面に出ている糸2の割合12%であった。熱暴露前後の縦方向の引張強度、スーパーキセノンウエザーメーターで照射後の縦方向の引張強度、摩耗性の測定結果を表1に示す。
【0026】
[実施例2]
実施例1において、ポリベンズオキサゾール繊維(東洋紡社製「ザイロン(登録商標)」)の牽切紡績糸(英国式番手:30/1)を糸2として用いる以外は実施例1と同様に実施した。
【0027】
[実施例3]
実施例1において、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(帝人社製「コーネックス(登録商標)」)とコパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人社製、商標名:テクノーラ(登録商標))とポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維(東洋紡社製「ザイロン(登録商標)」)を混合比率が60:30:10となる割合で混合した紡績糸(英国式番手:30/2)を糸1として用いる以外は実施例1と同様に実施した。
【0028】
[比較例1]
実施例1において、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(帝人社製「コーネックス(登録商標)」)とコパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人社製、商標名:テクノーラ(登録商標))とポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維(東洋紡社製「ザイロン(登録商標)」)を混合比率が60:30:10となる割合で混合した紡績糸(英国式番手:30/2)を糸2として用いる以外は実施例1と同様に実施した。
【0029】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば、難燃性だけでなく、耐光性、耐摩耗性、さらには火炎または熱によって暴露された際に優れた強度を兼ね備えた布帛および繊維製品が提供され、その工業的価値は極めて大である。
図1