IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三和シヤッター工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-引戸の上枠の防火構造 図1
  • 特許-引戸の上枠の防火構造 図2
  • 特許-引戸の上枠の防火構造 図3
  • 特許-引戸の上枠の防火構造 図4
  • 特許-引戸の上枠の防火構造 図5
  • 特許-引戸の上枠の防火構造 図6
  • 特許-引戸の上枠の防火構造 図7
  • 特許-引戸の上枠の防火構造 図8
  • 特許-引戸の上枠の防火構造 図9
  • 特許-引戸の上枠の防火構造 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】引戸の上枠の防火構造
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20241203BHJP
   E05D 15/06 20060101ALI20241203BHJP
   E05F 5/02 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
E06B5/16
E05D15/06 119
E05F5/02 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021023875
(22)【出願日】2021-02-18
(65)【公開番号】P2022126037
(43)【公開日】2022-08-30
【審査請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103137
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 滋
(74)【代理人】
【識別番号】100145838
【弁理士】
【氏名又は名称】畑添 隆人
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄治
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-145513(JP,A)
【文献】特開2017-115513(JP,A)
【文献】特開2008-082053(JP,A)
【文献】特許第4842073(JP,B2)
【文献】独国特許出願公開第03212640(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00 - 5/20
E05D 15/00 - 15/58
E06B 3/00 - 3/02
A62C 2/00 , 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上吊り引戸の上枠は、上枠本体と、前記上枠本体に着脱可能に取り付けられた点検カバーと、からなり、
前記点検カバーは、上枠の第1側見付面を形成する面部と、前記面部の上端に長さ方向に亘って形成された被支承部と、前記被支承部の長さ方向の複数箇所において立ち上がり形成された複数の係止片と、を備え、
前記上枠本体の上面の第1側部位は、前記点検カバーの前記被支承部に当接して支承する支承片と、前記点検カバーの前記係止片が内側から当接することで、前記被支承と前記支承の当接状態を維持する被当接部と、を備えた被装着部を備え、
上枠内には、全閉姿勢にある扉体の戸先側吊車の近傍に位置して1つ以上の可燃要素が設けてあり、全閉姿勢にある扉体の戸尻側吊車の近傍に位置して1つ以上の可燃要素が設けてあり、
前記複数の係止片は、全閉姿勢にある扉体の戸先側吊車の戸先側に位置する第1係止片と、全閉姿勢にある扉体の戸尻側吊車の戸尻側に位置する第2係止片と、全閉姿勢にある扉体の戸先側吊車と戸尻側吊車の間に位置する第3係止片と、を含み、前記可燃要素の近傍における前記支承片と前記被支承部の当接状態を維持する、
引戸の上枠の防火構造。
【請求項2】
前記被支承部は、前記面部の上端部位と、前記面部の上端に形成された水平片と、からなり、前記水平片の前記係止片に対応する部位は幅広部となっており、前記係止片は、前記幅広部に立ち上がり形成されており、
前記支承片は、前記面部の前記上端部位に内側から当接ないし近接し、上端が前記点検カバーの前記水平片に下方から当接して支承する、
請求項1に記載の引戸の上枠の防火構造。
【請求項3】
前記上枠本体の前記被装着部において、各被当接部の直下に挿入部が形成されており、
前記点検カバーは、前記係止片を略水平姿勢とした状態で、前記挿入部に正面から挿入し、下方に回動して前記係止片を前記被当接部に内側から当接ないし近接させた状態で取り付けられている、
請求項1、2いずれか1項に記載の引戸の上枠の防火構造。
【請求項4】
前記第1係止片は、前記点検カバーの戸先側端部に形成されており、
前記第2係止片は、前記点検カバーの戸尻側端部に形成されている、
請求項1~3いずれか1項に記載の引戸の上枠の防火構造。
【請求項5】
前記上枠本体の前記被装着部の戸先側端部には、戸先側挿入部が形成されており、前記戸先側挿入部の直上には、前記第1係止片が当接する戸先側被当接部が形成されており、
前記上枠本体の前記被装着部の戸尻側端部には、戸尻側挿入部が形成されており、前記戸尻側挿入部の直上には、前記第2係止片が当接する戸尻側被当接部が形成されている、
請求項4(請求項3を従属するものに限る)に記載の引戸の上枠の防火構造。
【請求項6】
前記扉体の上方には、前記第3係止片の戸先側に位置して、前記戸先側吊車及び制動装置が設けてあり、
前記戸先側吊車及び前記制動装置は可燃要素を含んでいる、
請求項1~5いずれか1項に記載の引戸の上枠の防火構造。
【請求項7】
前記扉体の上方には、前記第3係止片の戸尻側に位置して、前記戸尻側吊車及び制動装置が設けてあり、
前記戸尻側吊車及び前記制動装置は可燃要素を含んでいる、
請求項1~6いずれか1項に記載の引戸の上枠の防火構造。
【請求項8】
前記上枠内には、前記第3係止片の近傍から戸先側に位置して、可燃要素である樹脂製ラックが設けてある、
請求項1~7いずれか1項に記載の引戸の上枠の防火構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸の上枠の防火構造に係り、詳しくは、点検カバーを備えた上枠の防火構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上吊り引戸は、扉体の上端部に設けた左右の吊り車ユニットのローラがレールを走行することで左右方向にスライド移動して開口部を開閉するものであり、開口部上方に位置して、レールを含む移動機構が設けてある。このような上吊り引戸においては、部材の取付やメンテナンスのために、開口部上方の上枠を、上枠本体と、上枠本体に対して着脱自在の点検カバーと、から構成している。このような点検カバーを備えた上枠の構造は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
このような上吊り引戸を防火設備として使用したい場合がある。上枠内には可燃要素がある。例えば、扉体の走行時の静音性の観点から、樹脂製のローラを採用する場合が多く、火災等の熱の影響でローラの樹脂が溶解して着火するおそれがある。移動機構には、樹脂製要素が用いられることが多く、これらの樹脂製要素が火災時の熱で溶解して着火するおそれもある。防火設備においては、これらの可燃要素が着火したとしても、上枠外部に炎が出ないことが要求される。
【0004】
ここで、特許文献1に開示されているような点検カバーを備えた上枠では、火災時の熱によって、点検カバーが変形して、点検カバーと上枠本体との間に防火上不利な隙間が形成されるおそれがある。この状態で上枠内部の可燃要素が着火すると、上記隙間から炎が出てくるおそれがある。なお、特許文献1には、防火性能については一切言及されていない。
【文献】特許第4842073号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、引戸の扉体が全閉姿勢にある時に、上枠に防火上不利な隙間が形成されることを防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明が採用した技術手段は、
上吊り引戸の上枠は、上枠本体と、前記上枠本体に着脱可能に取り付けられた点検カバーと、からなり、
前記点検カバーは、上枠の第1側見付面を形成する面部と、前記面部の上端に長さ方向に亘って形成された被支承部と、前記被支承部の長さ方向の複数箇所において立ち上がり形成された複数の係止片と、を備え、
前記上枠本体の上面の第1側部位は、前記点検カバーの前記被支承部に当接して支承する支承片と、前記点検カバーの前記係止片が内側から当接することで、前記被支承片と前記支承部の当接状態を維持する被当接部と、を備えた被装着部を備え、
上枠内には、全閉姿勢にある扉体の戸先側吊車の近傍に位置して1つ以上の可燃要素が設けてあり、全閉姿勢にある扉体の戸尻側吊車の近傍に位置して1つ以上の可燃要素が設けてあり、
前記複数の係止片は、全閉姿勢にある扉体の戸先側吊車の戸先側に位置する第1係止片と、全閉姿勢にある扉体の戸尻側吊車の戸尻側に位置する第2係止片と、全閉姿勢にある扉体の戸先側吊車と戸尻側吊車の間に位置する第3係止片と、を含み、前記可燃要素の近傍における前記支承片と前記被支承部の当接状態を維持する、
引戸の上枠の防火構造、である。
1つの態様では、「第1側」は室内側である。
【0007】
1つの態様では、前記被支承部は、前記面部の上端部位と、前記面部の上端に形成された水平片と、からなり、前記水平片の前記係止片に対応する部位は幅広部となっており、前記係止片は、前記幅広部に立ち上がり形成されており、
前記支承片は、前記面部の前記上端部位に内側から当接ないし近接し、上端が前記点検カバーの前記水平片に下方から当接して支承する。
【0008】
1つの態様では、前記上枠本体の前記被装着部において、各被当接部の直下に挿入部が形成されており、
前記点検カバーは、前記係止片を略水平姿勢とした状態で、前記挿入部に正面から挿入し、下方に回動して前記係止片を前記被当接部に内側から当接ないし近接させた状態で取り付けられている。
【0009】
1つの態様では、前記第1係止片は、前記点検カバーの戸先側端部に形成されており、
前記第2係止片は、前記点検カバーの戸尻側端部に形成されている。
1つの態様では、前記上枠本体の前記被装着部の戸先側端部には、戸先側挿入部が形成されており、前記戸先側挿入部の直上には、前記戸先側係止片が当接する戸先側被当接部が形成されており、
前記上枠本体の前記被装着部の戸尻側端部には、戸尻側挿入部が形成されており、前記戸尻側挿入部の直上には、前記戸尻側係止片が当接する戸尻側被当接部が形成されている。
【0010】
1つの態様では、前記扉体の上方には、前記第3係止片の戸先側に位置して、前記戸先側吊車及び制動装置が設けてあり、
前記戸先側吊車及び前記制動装置は可燃要素を含んでいる。
【0011】
1つの態様では、前記扉体の上方には、前記第3係止片の戸尻側に位置して、前記戸尻側吊車及び制動装置が設けてあり、
前記戸尻側吊車及び前記制動装置は可燃要素を含んでいる。
【0012】
1つの態様では、前記上枠内には、前記第3係止片の近傍から戸先側に位置して、可燃要素である樹脂製ラックが設けてある。
【発明の効果】
【0013】
本発明において、点検カバーの複数の係止片が内側から上枠本体の被当接部に当接することで、点検カバーの上端部位の熱変形に対抗し、複数の係止片の間において、上枠内の可燃要素の近傍における支承片(上枠本体)と被支承部(点検カバー)の当接状態を維持し、点検カバーの上端部位と上枠本体の被装着部との間に防火上不利な隙間が形成されることを防止し、上枠内で可燃要素が着火した場合であっても、上枠の上端部位から炎が外部に出ることを防止する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る引戸(開口部全閉時)を室内側から見た正面図である。
図2】本実施形態に係る引戸の縦断面図(引っ掛け部分)であり、左側が室内側、右側が室外側である。
図3】本実施形態に係る引戸の横断面図であり、上側が室外側、下側が室内側である。
図4】本実施形態に係る引戸の上方部位の縦断面図(支承部分)であり、左側が室内側、右側が室外側である。
図5】(A)、(B)は、それぞれ、本実施形態に係る引戸の上方部位を示す正面図であって、点検カバーを取り外した状態(上枠本体)を示しており。
図6図5と類似の図であり、さらに他の実施形態を示している。
図7】点検カバーの断面図であって、左図は、引っ掛け部における断面図、右図は、支承部における断面図である。
図8】点検カバーの上面図及び正面図である。
図9】上枠本体に対する点検カバーの取付を説明する図であり、上図は、点検カバーの引っ掛け部と上枠本体の挿入部との取り合い、下図は、点検カバーの支承部と上枠本体の凹部との取り合いを示している。
図10】火災時の熱による上枠の変形に伴う隙間の発生を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態に係る上吊り引戸は、手動式の片引き引戸であって、防火設備として用いられ得る。図1は、本実施形態に係る引戸(開口部全閉時)をメンテナンス側(本実施形態では室内側)から見た正面図、図2は、 本実施形態に係る引戸の縦断面図(引っ掛け部分)であり、左側が室内側、右側が室外側であり、図3は、本実施形態に係る引戸の横断面図であり、上側が室外側、下側が室内側である。図4は、 本実施形態に係る引戸の上方部位の縦断面図(支承部分)であり、左側が室内側、右側が室外側である。
【0016】
引戸は、戸先側縦枠1と、戸尻側縦枠2と、上ケースないし上枠3と、から形成された引戸枠を備えている。上枠3は、上枠本体3´と点検カバー4とから構成されている。戸先側縦枠1、戸尻側縦枠2、上枠本体3´は躯体に設けてあり、上枠3(上枠本体3´及び点検カバー4)は、戸先側縦枠1の上端部位と戸尻側縦枠2の上端部位の間に亘って延びている。戸先側縦枠1と戸尻側縦枠2の間の中間部位には、室外側に位置して中間縦枠5が設けてある。
【0017】
戸先側縦枠1と戸尻側縦枠2間の空間の戸先側半部が扉体6によって開閉される開口部となっており、戸尻側半部が扉体6の収納部となっている。より具体的には、開口部は、戸先側縦枠1と、中間縦枠5と、上枠3の戸先側半部と、床面FLとで形成された縦長方形状の空間であり、収納部は、戸尻側縦枠2と、中間縦枠5と、上枠3の戸尻側半部と、床面FLとで形成された縦長方形状の空間である。
【0018】
本実施形態に係る戸先側縦枠1は、室内側見付面10と、室外側見付面11と、開口部に面する見込面12と、を備え、見込面12は、開口部全閉時に扉体6の戸先側部位が収まる凹部120と、室内側部位121と、室外側部位122とを備え、室外側部位122の見込寸法は、室内側部位121の見込寸法よりも大きく、戸先側縦枠1の室外側部位は開口部に対して室外側に突出する室外側突出部となっている。室外側突出部において、見込面12の室外側部位122に対向する側には壁体Wが位置している。
【0019】
本実施形態に係る戸尻側縦枠2は、室内側見付面20と、収納部に面する見込面21と、を備えている。室内側見付面20の室外側部位には壁体Wが位置している。戸先側縦枠1の室内側見付面10と戸尻側縦枠2の室内側見付面20は面一である。戸尻側縦枠2の見込面21には、戸当たり部22が設けてある。
【0020】
本実施形態に係る中間縦枠5は、扉体6の移動経路(開口部)に対して全体が室外側に位置しており、室内側見付面50と、室外側見付面51と、見込面52と、を備えている。中間縦枠5の見込面52は、戸先側縦枠1の見込面12の室外側部位122に対向している。戸先側縦枠1の室外側見付面11と、中間縦枠5の室外側見付面51は面一である。中間縦枠5の見込面52は、室内側見付面50を超えて室内側に延びており、先端には室内側見付面50に対向する相じゃくり片53が形成されてており、室内側見付面50と相じゃくり片53との間に隙間530が形成されている。
【0021】
扉体6は、室内側見付面60、室外側見付面61、戸先側端面62、戸尻側端面63、上端部64、下端部65を備えている。扉体6の上端部64には、戸先側部位および戸尻側部位に位置して吊車ユニット66が設けてあり、吊車ユニット66は樹脂製ローラ67を備えている。扉体6は、上端部64に設けた吊車ユニット66の樹脂製ローラ67が上枠3内のレール7上を転動することで、左右方向に移動して開口部を開閉するようになっている。
【0022】
扉体6の下端部65は凹状となっており、内部には、振れ止め用レール650が設けてあり、扉体6の移動時に、開口部の戸尻側に位置して床面FLに設けたローラ651が振れ止め用レール650に摺接するようになっている。
【0023】
扉体6の上端部64には、扉体6の室内側見付面60よりも室内側に突出するように断面視L形状の相じゃくり片640が設けてあり、相じゃくり片640は、水平片6400と垂下片6401を備えている。扉体6の上端部64には、さらに、断面視コ字形状の板状体641が設けてあり、板状体641は、水平部6410と、水平部6410の幅方向両端の立ち上がり片6411、6411を備えている。板状体641の水平部6410の見込寸法は、扉体6の見込寸法(扉厚)よりも大きく、板状体641の立ち上がり片6411、6411は、それぞれ、扉体6の室内側見付面60よりも僅かに室内側、室外側見付面61よりも僅かに室外側に位置している。扉体6の戸尻側端面63には、扉体6の室外側見付面61よりも室外側に突出するように平面視L形状の相じゃくり片630が設けてあり、相じゃくり片630は、見込片6300と、見込片6300の先端から戸先側に向かって延びる見付片6301とからなる。
【0024】
上枠3は、上枠本体3´と、点検カバー4と、から構成されており、本実施形態に係る点検カバー4は、上枠3の室内側部位を構成している。上枠本体3´は躯体に取り付けてあり、点検カバー4は、上枠本体3´に対して着脱可能に取り付けられる。上枠本体3´、点検カバー4は共に戸先側縦枠1の上端部位と戸尻側縦枠2の上端部位の間に亘って延びる長手部材である。上枠本体3´の長さ方向両端部は、戸先側縦枠1の見込面12の上端部位、戸尻側縦枠2の見込面21の上端部位にそれぞれ突き当たっており、点検カバー4の長さ方向両端部は、戸先側縦枠1の見込面12の上端部位、戸尻側縦枠2の見込面21の上端部位にそれぞれ近接している。
【0025】
上枠本体3´は、室外側見付部30と、上面部31と、室外側見付部30の下端に設けられ、室外側に突出する室外側枠体32と、を備えている。室外側見付部30の外面は上枠3の室外側面部300となっており、室外側見付部30の内面301には、レール7が支持されている。室外側枠体32は、室内側見付面320と、室外側見付面321と、水平状の下面322と、を備えている。室外側見付面321は、戸先側縦枠1の室外側見付面11、中間縦枠5の室外側見付面51と略面一であるが、図示の態様では僅かに室外側に位置している。戸先側縦枠1の室外側部位と、中間縦枠5と室外側枠体32と、から開口部の室外側に位置して三方枠が形成されている。
【0026】
上枠本体3´の上面部31の室内側部位には、点検カバー4の上端部位を着脱可能に取り付けるための被装着部が長さ方向に亘って設けてある。被装着部は、点検カバー4の被支承部(面部40の上端部位、水平片41)を支承する支承片(立ち上がり支承片353)と、点検カバー4の引っ掛け部(立ち上がり係止片42)が当接する被当接部(被当接部351´)と、を備えている。被装着部の構成について詳細に説明する。後述するように、立ち上がり係止片42A、42B、42Cが被当接部351´に当接して引っ掛け部分38A、38B、38Cが形成される。
【0027】
上枠本体3´の上面部31の室内側部位には、上枠3の室内側見付面の上端部位を形成する垂下片33と、垂下片33の下端から上枠3内部に向かって延びる水平片34と、が形成されており、上面部31の下面の室内側部位には、被係止片35が設けてある。
【0028】
被係止片35は、上面部31の下面に固定される上側水平片350と、上側水平片350の室内側端部から垂下する垂直片351と、垂直片351の下端から水平片34に対向して室内側に延びる下側水平片352と、下側水平片352の先端の立ち上がり支承片353と、からなる。水平片34の先端は垂直片351に当接しており、下側水平片352は、水平片34の下方に位置して、水平片34に対向している。立ち上がり支承片353は、垂下片33に対して僅かに上枠3の内部側に位置している。
【0029】
被係止片35の下半部(垂直片351の下半部、下側水平片352、立ち上がり支承片353)は、長さ方向の複数箇所において切り欠かれて挿入部35A、35B、35Cが形成されており、挿入部35A、35B、35Cの直上に、垂直片351の上半部から被当接部351´が形成されている。
【0030】
図5図6に示すように、本実施形態では、挿入部35Aは、上枠本体3´(被係止片35)の戸先側端部に形成されており、挿入部35Bは、上枠本体3´(被係止片35)の戸尻側端部に形成されており、挿入部35Cは、上枠本体3´(被係止片35)の戸先側半部(開口部の上方に位置する部位)、より具体的には、全閉姿勢の扉体6の戸先側吊車ユニット66と、戸尻側吊車ユニット66の間に位置して形成されている。すなわち、本実施形態に係る被係止片35には、戸先側端部、戸尻側端部、全閉姿勢の扉体6の戸先側吊車ユニット66と、戸尻側吊車ユニット66の間に位置して、3つの被当接部351´が形成されている。
【0031】
上枠本体3´の室内側部位の上端には、水平片34と立ち上がり支承片353の上端とから、幅方向に水平状に延びる凹部36が形成されており、凹部36の両側に位置して、挿入部35A、35B、35C及び被当接部351´が形成されている。
【0032】
図7図8に示すように、点検カバー4の上端部位は、上枠3の室内側見付面を形成する面部40と、面部40の上端に形成され、室外側に延びる水平片41と、を備え、水平片41の長さ方向の複数部位は室外側に水平に延びる幅広部41´(幅広部41A´、41B´、41C´)となっており、幅広部41A´、41B´、41C´の端部において複数の立ち上がり係止片42(42A、42B、42C)が立ち上がり形成されている。面部40の下端部位は、面部40の下端に形成された水平片43と、水平片の先端の立ち上がり片44と、を備え、水平片43及び立ち上がり片44には、下端片45が固定されている。
【0033】
点検カバー4の上端部位は、面部40の上端部位と水平片41とからなる被支承部と、被支承部の長さ方向の複数箇所において形成された引っ掛け部(立ち上がり係止片42A、42B、42C)と、を備えている。点検カバー4の被支承部は、上枠本体3´の支承片(立ち上がり支承片353)及び凹部36に対応する位置にあり、点検カバー4の複数の立ち上がり係止片42(42A、42B、42C)は、上枠本体3´の挿入部35A、35B、35C及び複数の被当接部351´にそれぞれ対応する位置に形成されている。
【0034】
図8に示すように、本実施形態では、立ち上がり係止片42Aは、点検カバー4の戸先側端部に形成されており、立ち上がり係止片42Bは、点検カバー4の戸尻側端部に形成されており、立ち上がり係止片42Cは、点検カバー4の戸先側半部(開口部の上方に位置する部位)、より具体的には、全閉姿勢の扉体6の戸先側吊車ユニット66と、戸尻側吊車ユニット66の間に位置して形成されている。立ち上がり係止片42Aと立ち上がり係止片42Cの間に位置する部位、及び、立ち上がり係止片42Bと立ち上がり係止片42Cの間に位置する部位が、被支承部(面部40の上端部位と水平片41)となっている。
【0035】
点検カバー4は、上端部位(面部40の上端部位と水平片41とからなる被支承部、立ち上がり係止片42A、42B、42C)を介して、上枠本体3´の被装着部に着脱可能に取り付けられるようになっている。図2図4に示すように、点検カバー4の上端部位が上枠本体3´の被装着部に取り付けられた状態において、被装着部の立ち上がり支承片353が、点検カバー4の面部40の上端部位に内側から当接ないし近接し、立ち上がり支承片353の上端が点検カバー4の水平片41に下方から当接しており、被装着部の被当接部351´には、点検カバー4の上端部位の立ち上がり係止片42(42A、42B、42C)が内側から当接ないし近接している。
【0036】
点検カバー4が上枠本体3´に支承されている部位である支承部分37A、37B(図1参照)においては、被支承部と支承片が当接状態(被装着部の立ち上がり支承片353が、点検カバー4の面部40の上端部位に内側から当接ないし近接し、立ち上がり支承片353の上端が点検カバー4の水平片41に下方から当接している)となって、支承部分37A、37Bに隙間が生じないようになっている。支承部分37A、37Bの両側に位置して設けた引っ掛け部分38A、38B、38C(図1参照)において、被装着部の被当接部351´に、点検カバー4の上端部位の立ち上がり係止片42A、42B、42Cが内側から当接することで、支承部分37A、37Bにおける被支承片と支承部の当接状態を維持して支承部分37A、37Bに隙間が生じることを可及的に防止する。
【0037】
点検カバー4の下端部位に固定された下端片45は、下片450と立ち上がり片451と、立ち上がり片451の上端から下片450に対向するように折り返された上片452とからなり、立ち上がり片451には、立ち上がり片44の上方に隣接して熱膨張耐火部材46が設けてある。点検カバー4の水平片43と、上枠本体3´の室外側に設けた室外側枠体32の下面322は同じ高さに位置しており、点検カバー4の下端の立ち上がり片44と室外側枠体32の室内側見付面320との間に、扉体6の上端部位を受け入れる開口が形成されている。室外側枠体32の室内側見付面320には、熱膨張耐火部材46と対向するように熱膨張耐火部材323が設けてある。
【0038】
図9に示すように、点検カバー4は、面部40を略水平姿勢として、先端側(上端側)の被支承部(面部40の上端部位及び水平片41)、立ち上がり係止片42(42A、42B、42C)を、上枠本体3´の室内側部位の上端の凹部36、挿入部35A、35B、35Cにそれぞれ位置合わせして、正面から挿入する。
【0039】
この時、点検カバー4の立ち上がり係止片42A、立ち上がり係止片42Bは、それぞれ点検カバー4の戸先側端部、戸尻側端部に形成されており、上枠本体3´の挿入部35A、挿入部35Bは、それぞれ上枠本体3´の戸先側端部、戸尻側端部に形成されているので、長さ方向(開口幅方向)の両端部同士を合わせることで、上枠本体3´に対する点検カバー4の位置合わせ作業を良好に行うことができる。上枠本体3´に対する点検カバー4の挿入時に、点検カバー4の戸先側端縁、戸尻側端縁を、それぞれ、戸先側縦枠1の見込面12の上端部位(挿入部35Aの戸先側端縁)、戸尻側縦枠2の見込面21の上端部位(挿入部35Bの戸尻側端縁)に当てることで、戸先側縦枠1の見込面12の上端部位、戸尻側縦枠2の見込面21を位置決めガイドとして用いることができる。
【0040】
点検カバー4の立ち上がり係止片42A、42B、42Cを、挿入部35A、35B、35Cから上枠本体3´内に挿入した時に、立ち上がり係止片42A、42B、42Cの先端は、挿入部35A、35B、35Cの直上の被当接部351´の裏側にまで延出している。この状態から点検カバー4を水平姿勢のまま下方に移動させると、点検カバー4の面部40の先端部位(上端部位)が立ち上がり支承片353の上端に当接し、この当接部を支点として点検カバー4を、面部40が垂直姿勢となるまで下方に回動させることで、点検カバー4の上端部位が上枠本体3´の被装着部に取り付けられる。そして、点検カバー4の面部40の下端側を被固定片47に螺子48で固定することで、点検カバー4の下端部位が固定される(図2参照)。被固定片47は、戸先側縦枠1の上端部位及び戸尻側縦枠2の上端部位、あるいは、上枠本体3´に持ち出し状に設けられる。
【0041】
扉体6の移動機構について説明する。上枠3の内部には、開口幅方向に延びるレール7が設けてある。本実施形態に係るレール7は上枠本体3´の室外側見付部30の内面301に設けてあり、戸先側端部は、戸先側縦枠1の見込面12に近い位置まで延びており、戸尻側端部は収納部の上方部位(少なくとも、開口部全開時における扉体6の戸尻側の吊車ユニット66に対応する位置)まで延びている。扉体6は、上端部64に設けた吊車ユニット66の樹脂製ローラ67が上枠3内のレール7上を転動することで、左右方向に移動して開口部を開閉するようになっている。本実施形態に係る上吊り引戸は手動式であり、また、本実施形態に係るレール7は、戸先側から戸尻側に向かって上方に緩やかに傾斜しており、開口部全開時で扉体6から手を離すと、扉体6が自重で閉鎖方向に移動するようになっている。
【0042】
図5(A)、(B)、図6に示すように、本実施形態に係る上吊り引戸は制動機構を備えている。制動機構は吊車ユニット66に設けた制動装置8と、レール7の所定部位(戸先側部位、戸尻側部位)に設けた樹脂製ラック9と、からなり、移動中の扉体6が所定位置まで移動した時に、制動装置8のギア(図示せず)がラック9と噛合することで、制動するようになっている。吊車ユニット66の樹脂製ローラ67、樹脂製ラック9は可燃要素であり、制動装置8は樹脂等の可燃要素を一部に含んでいる。
【0043】
図5(B)に示す態様では、上枠3の内部において、扉体6の全開姿勢が保持可能な煙感知連動装置13が設けてあり、扉体6の全開姿勢が保持された状態で火災時の煙を感知すると、煙感知連動装置13が作動して扉体6の保持状態を解除して、扉体6が自重で閉鎖するようになっている。煙感知連動装置13は、全開姿勢にある扉体6の戸先側部位の上方に位置しており、この位置は、全閉姿勢にある扉体6の戸尻側部位の上方の位置と略同じである。煙感知連動装置13は樹脂等の可燃要素を一部に含んでいる。
【0044】
図6に示す態様では、上枠3の内部において、扉体6を任意の開放位置で保持可能な煙感知連動装置13が設けてあり、開放姿勢が保持された状態で火災時の煙を感知すると、煙感知連動装置13が作動して扉体6の保持状態を解除して、扉体6が自重で閉鎖するようになっている。煙感知連動装置13は、装置本体13´と、扉体6の上端部位において、戸先側の吊車ユニット66と戸尻側の吊車ユニット66の間に亘って設けた長尺部材130と、戸先側の吊車ユニット66と戸尻側の吊車ユニット66の間に位置して設けた戸車131と、を備えている。煙感知連動装置13の本体13´は、全閉姿勢にある扉体6の戸尻側部位の上方に位置しており、本体13´は樹脂等の可燃要素を一部に含んでいる。
【0045】
本実施形態に係る引戸は防火設備として用いられ得るものであり、開口部全閉時には、扉体6の戸先側及び戸尻側に屋内外を貫通する隙間が形成されないようになっている。全閉姿勢の扉体6の戸先側端面62を含む戸先側部位は、戸先側縦枠1の見込面12の凹部120内に位置しており、扉体6の戸尻側端面63に設けた相じゃくり片630の見付片6301が、中間縦枠5の隙間530に入り込んだ状態となって戸先側と戸尻側であいじゃくり構造が形成されている(図3参照)。
【0046】
上枠3の内部空間には、複数の可燃要素が存在する。可燃要素としては、樹脂製ローラ67、樹脂製ラック9、制動装置8に含まれる樹脂製要素、煙感知連動装置13に含まれる樹脂製要素、扉体6の移動機構の可動部分に存在する油(例えば、樹脂製ローラのグリスや制動装置8内の油)を例示することができる。制動装置8に含まれる樹脂製要素には、制動装置9のケース外部に設けられた樹脂製ギア(図示せず)が例示される。煙感知連動装置13に含まれる樹脂製要素は、煙検知連動装置13のケース内に位置している。図5図6に示すように、全閉姿勢にある扉体6の戸先側吊車ユニット66の近傍に位置して、樹脂製ローラ67、制動装置8、樹脂製ラック9の戸先側部位が位置しており、全閉姿勢にある扉体の戸尻側吊車ユニット66の近傍に位置して、樹脂製ローラ67、制動装置8、煙感知連動装置13(図5(B))、煙感知連動装置13の本体13´(図6)が位置している。
【0047】
上枠3の下端部位に扉体6の上端部位が受け入れられており、扉体6の上端部64に設けた相じゃくり片640の水平片6400及び垂下片6401、点検カバー4の下端部位に固定された下端片45の上片452から、上枠3の内部で発生した煙が、扉体6の室内側見付面60の上端部位と上枠3の下端部位との隙間から排出されるまでの煙迂回路が形成され、扉体6の室内側見付面60の上端部位と上枠3の下端部位との隙間は、点検カバー4の下端部位に設けた熱膨張耐火部材46が加熱発泡することで閉塞されるようになっている。扉体6の室外側見付面61の上端部位と上枠3の下端部位との隙間は、室外側枠体32に設けた熱膨張耐火部材323が加熱発泡することで閉塞されるようになっている。
【0048】
上枠3の上端部位(上枠本体3´の被装着部に対する点検カバー4の上端部位の取付部位)において、防火上不利な隙間が生成されることが防止されている。点検カバー4が上枠本体3´に取り付けられた状態において、図2図4に示すように、被装着部の立ち上がり支承片353が、点検カバー4の面部40の上端部位に内側から当接ないし近接し、立ち上がり支承片353の上端が点検カバー4の水平片41に下方から当接しており、被装着部の被当接部351´には、点検カバー4の上端部位の立ち上がり係止片42A、42B、42Cが内側から当接ないし近接している。
【0049】
点検カバー4は、面部40の上端部位が立ち上がり支承片353の側面に当接ないし近接した状態で水平片41が立ち上がり支承片353の上端に支承されており、支承部分37A、37Bにおいては、点検カバー4の面部40の上端部位と立ち上がり支承片353の側面が当接ないし近接し、立ち上がり支承片353の上端から凹部36内に水平片41が延びることで、点検カバー4の上端部位と上枠本体3´の被装着部の間が密閉されて隙間が生じないようになっている。
【0050】
この状態において、火災時の熱が上枠3に作用すると、点検カバー4が、当該点検カバー4の上端の支承部(面部40の上端部位、水平片41)が、上枠本体3´の立ち上がり支承片353から離れるように変形して、点検カバー4の上端部位と上枠本体3´の被装着部との間に隙間が生じるおそれがある(図10参照)。本実施形態では、3つの立ち上がり係止片42A、42B、42Cが内側から被当接部351´に当接して引っ掛け部分38A、38B、38Cを形成することで、支承部分37A、37Bにおいて、点検カバーの上端部位と上枠本体3´の被装着部との間に防火上不利な隙間が形成されることを防止する。以下に、より具体的に説明する。
【0051】
支承部分37Aの長さ方向(開口幅方向)両側に引っ掛け部分38A、引っ掛け部分38Cが位置しており、点検カバー4の上端部位の立ち上がり係止片42A、42Cが被装着部の被当接部351´の内面に当接ないし近接することで、点検カバー4の上端部位(被支承部)が上枠本体3´から室内側に離間しようとする動きに対抗するようになっている。扉体6が全閉姿勢にある時に、上枠3の内部空間には、支承部分37Aに対応して、樹脂製ローラ67を備えた戸先側の吊車ユニット66、制動装置8、樹脂製ラック9が位置しており、引っ掛け部分38A(立ち上がり係止片42Aと被当接部351´)、引っ掛け部分38C(立ち上がり係止片42Cと被当接部351´)によって、支承部分37Aにおける被支承片(立ち上がり支承片353)と支承部(面部40の上端部位、水平片41)の当接状態を維持して、支承部分37Aに隙間が生じることを可及的に防止している。
【0052】
支承部分37Bの長さ方向(開口幅方向)両側に引っ掛け部分38C、引っ掛け部分38Bが位置しており、点検カバー4の上端部位の立ち上がり係止片42C、42Bが被装着部の被当接部351´の内面に当接ないし近接することで、点検カバー4の上端部位(被支承部)が上枠本体3´から室内側に離間しようとする動きに対抗するようになっている。扉体6が全閉姿勢にある時に、上枠3の内部空間には、支承部分37Bの戸先側部位に対応して、樹脂製ローラ67を備えた戸尻側の吊車ユニット66、制動装置8、煙感知連動装置13(図5(B)、図6)が位置しており、引っ掛け部分38C(立ち上がり係止片42Cと被当接部351´)、引っ掛け部分38B(立ち上がり係止片42Bと被当接部351´)によって、支承部分37Bにおける被支承片(立ち上がり支承片353)と支承部(面部40の上端部位、水平片41)の当接状態を維持して、支承部分37B(特に、引っ掛け部分38Cに近い戸先側部位)に隙間が生じることを可及的に防止している。
【0053】
引っ掛け部分38A、38B、38Cにおいては、点検カバー4の上端部位の立ち上がり係止片42A、42B、42Cが被装着部の被当接部351´の内面に当接ないし近接した状態で、立ち上がり係止片42A、42B、42Cの下端から室内側に延びる水平片41の幅広部41A´、41B´、41C´が、被装着部の被当接部351´の下端に位置することから、点検カバー4の上端部位と被装着部の間が密閉され隙間が生じないようになっている。
【0054】
本実施形態では、点検カバー4の上端部位の立ち上がり係止片42Cと上枠本体3´の挿入部35C及び挿入部35Cに対応する被当接部351´が戸先から一定の位置にあることで、特に戸先側に位置する可燃要素(樹脂製ラック9)が着火したような場合に対して効果がある。より具体的には、開口部側に位置する樹脂製ラック9は、扉体6の移動方向に延びる長尺材であり、比較的容積が大きく、火災時(特に、室外側が火元)の炎や熱によって着火し易い。また、戸先側の樹脂製ラック9は、扉体6が全閉位置に近づいた時に扉体6を制動(減速)させるものであることから、扉体6の幅寸法(開口幅寸法)が変わっても、戸先側の樹脂製ラック9の位置は略一定である。また、本実施形態は、主として室外側に火元がある場合を想定しており、収納部側に位置する樹脂製ラック9の室外側には壁体Wが位置しているため、戸尻側の樹脂製ラック9の着火の可能性は低い。上枠3内には、開口部全閉状態における扉体6の戸尻側の上方には、可燃要素を含む煙感知連動装置13、煙感知連動装置13の本体13´が位置しているが、これらの可燃要素はケース内にあることから、火災時には、戸先側の樹脂製ラック9がより燃え易くなっている。本実施形態では、戸先側吊車ユニット66と戸尻側吊車ユニット66の間に位置し、戸先から一定の位置にあり、かつ、戸先側の樹脂製ラック9の近傍に位置する引っ掛け部分38C(立ち上がり係止片42Cと挿入部35Cに対応する被当接部351´)によって点検カバー4の熱変形を抑制し、戸先側の樹脂製ラック9が着火した場合であっても、炎が外部に出ることを防止する。なお、煙感知連動装置13の戸車131(図6)は樹脂製ローラであり、可燃要素であるが、戸車131は引っ掛け部分38Cの近傍に位置することから、戸車131の近傍に位置する点検カバー4の部分は、より変形し難くなっている。
【0055】
なお、図5(B)、図6に示す態様は、上枠3内に煙感知連動装置13、煙感知連動装置13の本体13´を設けたことによって、図5(A)に示す態様に比べて、上枠3の内部空間の高さ寸法が大きくなっており、上枠3の内部の可燃要素が着火した場合において、図5(A)に示す態様に比べて、点検カバー4の上端部位と上枠本体3´との間から火炎が外部に出難い構造となっている。
【0056】
本実施形態に係る上吊り引戸は手動式であるが、本発明は、電動式の引戸、自動ドア等に適用することも可能である。また、本実施形態では、1枚の扉体6を備えた片引き引戸を示したが、本発明は、例えば、2枚の扉体を備えた引き分け引戸に適用することも可能である。この実施形態では、開口部全閉姿勢にある各扉体の上方に位置して、それぞれ、点検カバーが設けてあり、一方の点検カバーの戸尻側部位は一方の縦枠の上端部位に位置しており、他方の点検カバーの戸尻側部位は他方の縦枠の上端部位に位置しており、前記一方及び前記他方の点検カバーの戸先側部位は隣接している。
【符号の説明】
【0057】
3 上枠
3´ 上枠本体
31 上面部
353 立ち上がり支承片(支承片)
351´ 被当接部
35A 挿入部(戸先側挿入部)
35B 挿入部(戸尻側挿入部)
35C 挿入部
4 点検カバー
40 面部(第1側見付面を形成する面部)
41 水平片
41´、41A´、41B´、41C´ 幅広部
42 立ち上がり係止片(係止片)
42A 第1立ち上がり係止片(第1係止片)
42B 第2立ち上がり係止片(第2係止片)
42C 第3立ち上がり係止片(第3係止片)
6 扉体
66 吊車ユニット(吊車)
67 樹脂製ローラ
7 レール
8 制動装置
9 樹脂製ラック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10