IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 田村プラスチック製品株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】自動車外装品
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/04 20060101AFI20241203BHJP
   B62D 35/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B62D25/04 A
B62D35/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021026506
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2021151854
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2024-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2020048863
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314014184
【氏名又は名称】DNP田村プラスチック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】堀井 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】森 高徳
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-0138812(KR,B1)
【文献】特開2001-105852(JP,A)
【文献】特開2017-065481(JP,A)
【文献】実開昭58-160879(JP,U)
【文献】国際公開第2019/028674(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
B62D 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のフロントピラー部の外面に取り付け可能であって、
前記フロントピラー部への取付状態で、車体外側に向けて突出する突出部を有し、
前記突出部には、走行風を所望の方向へ誘導するための誘導部が2以上組み合わせて形成され、
各前記誘導部は、前記車体の前方から後方へかけて前記車体の左右方向外側へ傾斜して外方誘導風を発生させる第1の傾斜面と、前記車体の前方から後方へかけて上り傾斜して上方誘導風を発生させる第2の傾斜面夫々1以上有し、
前記第1の傾斜面及び前記第2の傾斜面によって複数の異なる方向へ前記走行風を誘導可能としたことを特徴とする自動車外装品。
【請求項2】
前記第1の傾斜面又は前記第2の傾斜面は平面で形成されることを特徴とする請求項1に記載の自動車外装品。
【請求項3】
前記突出部は、前記フロントピラー部の外面に取付可能な本体部の表面に設けられていることを特徴とする請求項又はに記載の自動車外装品。
【請求項4】
サイドバイザーを装着した前記自動車に取り付けられることを特徴とする請求項1乃至の何れかに記載の自動車外装品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフロントピラー部に取り付けられる自動車外装品に関する。
【背景技術】
【0002】
走行中の自動車において、図1に示すように、フロントガラス上を車体側方へ流れた走行風Wの一部がフロントピラー部Pで車体表面から剥離し、再度車体側へ戻る剥離流Sが生じる。また、剥離流Sがフロントピラー部Pに沿って渦状に上昇する縦渦Vが生じる。この剥離流Sと縦渦Vとが風切音の原因となることが知られている。
風切音の発生を抑制する技術として、例えば、特許文献1では、フロントピラー部の表面に、車体側方へ向けて突出する略水平な整流フィンを上下にわたり複数配置して成る整流装置が開示されている。当該整流装置は、整流フィンにより、フロントピラー部で発生し、フロントピラー部に沿って下部から上部へ向かって発達しようとする縦渦Vを分断することで縦渦Vの発達を防ぎ、風切音の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭58-160879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のような整流装置では、縦渦Vの発達を防ぐことはできるが、車体走行時は、常に走行風が車体表面を流れているため、整流フィンと整流フィンとの間を通る走行風によって発生し続ける剥離流Sに起因して風切音が生じる可能性があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、フロントガラス上を流れる走行風がフロントピラー部で剥離することによって発生する剥離流及び縦渦を弱体化させることで、風切音の低減を可能とする自動車外装品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、自動車のフロントピラー部の外面に取り付け可能であって、フロントピラー部への取付状態で、車体外側に向けて突出する突出部を有し、突出部には、走行風を所望の方向へ誘導するための誘導部が2以上組み合わせて形成され、各誘導部は、車体の前方から後方へかけて車体の左右方向外側へ傾斜して外方誘導風を発生させる第1の傾斜面と、車体の前方から後方へかけて上り傾斜して上方誘導風を発生させる第2の傾斜面夫々1以上有し、第1の傾斜面及び第2の傾斜面によって複数の異なる方向へ走行風を誘導可能としたことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、第1の傾斜面又は第2の傾斜面は平面で形成されることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項又はの構成において、突出部は、フロントピラー部の外面に取付可能な本体部の表面に設けられていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至の何れかの構成において、サイドバイザーを装着した前記自動車に取り付けられることを特徴とする。
【0007】
本発明において、肉厚になるように形成するとは、板厚を増大して形成すること意味する。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、2以上の誘導部によって走行風を誘導して任意の指向性を付与し、第1の傾斜面によって、車体外側方向へ向かう外方誘導風を発生させることができ、第2の傾斜面によって上方へ向かう上方誘導風を発生させることができる。生じる外方誘導風と上方誘導風とが、縦渦及び剥離流と衝突するため、縦渦及び剥離流を相殺又は減衰させられることから、風切音を低減することができる。誘導風との衝突によって縦渦及び剥離流を相殺又は減衰させられることから、風切音を低減することができる。
請求項に記載の発明によれば、本体部を設ける事でフロントピラー部との接触面積が増加するため、フロントピラー部に対して堅牢に取り付けることが可能となる。
請求項に記載の発明によれば、誘導風によって剥離流を相殺又は減衰させることで、剥離流によってサイドバイザーの内側で生じ、風切音発生の一因となる乱流の発生を低減させられるため、風切音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の自動車外装品を取り付けていない車体のフロントピラー部周辺における風の流れを示す説明図である。
図2】本発明の自動車外装品の説明図であって、(a)は斜視、(b)及び(c)は自動車外装品によって誘導される風の流れを示す斜視である。
図3】(a)は本発明の自動車外装品の突出幅寸法を示す説明図、(b)は鉛直方向の傾斜角度を示す説明図、(c)は図3(b)のA-A線断面図であって水平方向の傾斜角度を示す説明図である。
図4】本発明の自動車外装品を取り付けた状態の車体を示す説明図である。
図5】本発明の自動車外装品を取り付けた状態の車体のフロントピラー部周辺における風の流れを示す説明図である。
図6】本体部を備えた本発明の自動車外装品を示す斜視図である。
図7】本発明における実施形態の自動車外装品の変形例1を示す説明図であって、(a)は斜視、(b)は図7(a)におけるB-B線端面図、(c)は図7(a)における拡大C-C線端面図である。
図8】本発明における実施形態の自動車外装品の変形例1の別の形態を示す説明図であって、(a)は斜視、(b)は図8(a)におけるD-D線拡大端面図である。
図9】(a)は変形例1の自動車外装品の突出幅寸法を示す説明図、(b)は第2の傾斜面の傾斜角度を示す説明図、(c)は図9(b)のE-E線端面図であって第1の傾斜面の傾斜角度を示す説明図、(d)は図9(b)のE-E線端面図であって第1の傾斜面後端部の傾斜角度を示す説明図、(e)は図9(b)のF-F線拡大端面図であって第2の傾斜面の本体部との間の傾斜角度、複合誘導部下部の本体部との傾斜角度、複合誘導部の突出幅、誘導部の幅長、及び隣接する複合誘導部の間隔を示す説明図である。
図10】変形例1の自動車外装品周辺における風の流れを示す説明図であって、(a)は外方へ向かう流れ、(b)は上方へ向かう流れである。
図11】本発明における実施形態の自動車外装品の変形例1の別の形態を示す説明図であって、(a)は斜視、(b)は図11(a)における丸枠Mに囲まれた部位の拡大図、(c)は図11(a)におけるG-G線端面図である。
図12】本発明における実施形態の自動車外装品の変形例2を示す説明図であって、(a)は斜視、(b)は正面、(c)は平面である。
図13】(a)は変形例2の自動車外装品の突出幅寸法を示す説明図、(b)は第2の傾斜面の傾斜角度を示す説明図、(c)は第1の傾斜面の傾斜角度を示す説明図である。
図14】変形例2の自動車外装品周辺における風の流れを示す説明図であって、(a)は外方へ向かう流れ、(b)は上方へ向かう流れ、(c)は上方から見た風の流れである。
図15】本発明における実施形態の自動車外装品の変形例3を示す説明図であって、(a)は斜視、(b)は正面である。
図16】(a)は変形例3の自動車外装品の突出幅寸法を示す説明図、(b)は第2の傾斜面の傾斜角度を示す説明図、(c)は第1の傾斜面の傾斜角度を示す説明図である。
図17】変形例3の自動車外装品周辺における風の流れを示す説明図であって、(a)は外方へ向かう流れ、(b)は上方へ向かう流れ、(c)は上方から見た風の流れである。
図18】本発明における実施形態の自動車外装品の変形例4を示す説明図であって、(a)は斜視、(b)は正面である。
図19】(a)は変形例4の自動車外装品の突出幅寸法を示す説明図、(b)は第2の傾斜面の傾斜角度を示す説明図、(c)は第1の傾斜面の傾斜角度を示す説明図である。
図20】変形例4の自動車外装品周辺における風の流れを示す説明図であって、(a)は外方へ向かう流れ、(b)は上方へ向かう流れである。
図21】本発明における実施形態の自動車外装品の変形例5を示す説明図であって、(a)は斜視、(b)は正面である。
図22】(a)は変形例5の自動車外装品の突出幅寸法を示す説明図、(b)は第2の傾斜面の傾斜角度を示す説明図、(c)は第1の傾斜面の傾斜角度を示す説明図である。
図23】変形例5の自動車外装品周辺における風の流れを示す説明図であって、(a)は外方へ向かう流れ、(b)は上方へ向かう流れである。
図24】本発明における実施形態の自動車外装品の変形例6を示す説明図であって、(a)は斜視、(b)は側面、(c)は図24(a)のH-H線断面斜視である。
図25】(a)は変形例6の自動車外装品の突出幅寸法を示す説明図、(b)は第2の傾斜面の傾斜角度を示す説明図、(c)は図25(b)のI-I線断面図であって第1の傾斜面の傾斜角度を示す説明図である。
図26】変形例5の自動車外装品周辺における風の流れを示す説明図であって、(a)は上方へ向かう流れ、(b)は外方へ向かう流れである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図2は、本発明の自動車外装品の説明図であって、図2(a)は斜視、図2(b)及び図2(c)は自動車外装品によって誘導される風の流れを示す斜視である。
自動車外装品1は、フロントピラー部Pへの取付状態(図4)で、図2(a)に示すように、車体外側(図2における左方向)へ向けて、断面略三角形状で帯状に突出し、後述する傾斜角度αが異なる誘導部2a,2b,2cを一体に形成して備えている。フロントピラー部Pに取り付けられた状態の自動車外装品1において、誘導部2a,2cには、車体の前方から後方へかけて車体の左右方向外側へ傾斜する第1の傾斜面T1が形成されており、図2(b)に示すように、誘導部2a,2cにおける第1の傾斜面T1,T1を流れた走行風Wを外方誘導風Oとして車体外側方向へ向かうように誘導する。一方、誘導部2a,2b,2cには、車体の前方から後方へかけて上り傾斜する第2の傾斜面T2が形成されており、図2(c)に示すように、誘導部2a,2b,2cにおける第2の傾斜面T2,T2,T2を流れた走行風Wを上方誘導風Uとして上方へ向かうように誘導する。
【0011】
なお、自動車外装品1の断面形状は、略三角形状に限定されず、四角形状や円弧状等、その他の類似形状であっても良い。また、第1の傾斜面T1と第2の傾斜面T2とを備えていれば、自動車外装品1は、任意の形状に設計可能であり、例えば、フロントピラー部Pへの取付状態で車体外側へ向けて突出し、上方に誘導部2a,2b,2cを備えた板状に形成される等しても良い。
また、自動車外装品1において、誘導部2a,2b,2cの各傾斜面T1,T2,T1は、それぞれの境界を介して連続して設けられることで、滑らかな流れの誘導風を形成している。
一方、図示しないが、誘導部2a,2b,2cは連続していなくても良く、例えば、誘導部2a,2b,2cが、それぞれ別体として、少なくとも第1の傾斜面T1又は第2の傾斜面T2を有する誘導部として成形され、それら誘導部の組み合わせによって本発明の自動車外装品として構成しても良い。この時、フロントピラー部Pへの取付位置は、少なくとも外方誘導風O及び上方誘導風Uとして走行風を誘導可能であれば、任意に設定可能である。
【0012】
図3(a)は本発明の自動車外装品の突出幅寸法を示す説明図、図3(b)は第2の傾斜面の傾斜角度を示す説明図、図3(c)は図3(b)のA-A線断面図であって第1の傾斜面の傾斜角度を示す説明図である。
図3(a)に示す自動車外装品1のフロントピラー部Pからの突出幅D1は、1mm≦D1≦100mmの範囲で設定され、好ましくは10mm≦D1≦50mmで設定される。これにより、効果的に走行風を外方誘導風O及び上方誘導風Uとして誘導できる。
また、図3(b)に示す第2の傾斜面T2の傾斜角度α1は、フロントピラー部Pへの取付状態において地面との平行線L1を基準に、1°≦α1≦89°の範囲で設定され、好ましくは10°≦α1≦45°の範囲で設定される。
また、図3(c)に示す第1の傾斜面T1の傾斜角度θ1は、フロントピラー部Pへの取付状態において車体の前後を結ぶ中心線の平行線L2を基準に、90°≦θ1≦179°の範囲で設定され、好ましくは135°≦θ1≦179°の範囲で設定される。
【0013】
続いて、自動車外装品1の自動車への取付方法と、走行中の風の流れについて説明する。 図4は、本発明の自動車外装品を取り付けた状態の車体を示す説明図である。また、図5は、本発明の自動車外装品を取り付けた状態の車体のフロントピラー部周辺における、走行中の風の流れを示す説明図である。
自動車外装品1は、図4に示すように、フロントピラー部Pの下方外面に、両面テープ等の図示しない取付手段によって取り付けられる。本発明においてフロントピラー部Pの下方とは、フロントピラー部Pの傾斜方向における下半分と定義される。
【0014】
上述の様に、走行風Wは、誘導部2a,2b,2cによって外方誘導風O及び上方誘導風Uとして誘導される。すると、図5に示すように、フロントピラー部Pの近傍では、外方誘導風O及び上方誘導風Uによって、走行に伴って発生する縦渦と逆向きに旋回する渦流RVが発生する。発生した渦流RVが、風切音の原因となる剥離流と縦渦と衝突し、剥離流と縦渦を相殺又は減衰するため、風切音を低減させることができる。また、誘導部2a,2b,2cを連続して設けることで、外方誘導風O及び上方誘導風Uが滑らかな誘導風となるため、効果的に剥離流と縦渦を相殺又は減衰し、風切音を低減させることができる。
フロントピラー部Pの下端付近は、縦渦の発生起点であるため、自動車外装品1をフロントピラー部Pの下端付近に取り付けることで、縦渦が発達する前に相殺又は減衰させられ、効果的に風切音を低減させることができる。
【0015】
上記形態の自動車外装品1は、自動車のフロントピラー部Pの外面に取り付け可能であって、フロントピラー部Pへの取付状態で、車体外側に向けて突出し、走行風Wを異なる方向へ誘導するための誘導部2a,2b,2cを一体に設けてなる。
このようにして構成される自動車外装品1によれば、誘導部2a,2b,2cによって走行風Wを誘導して上方又は外方の指向性を付与し、上方誘導風U及び外方誘導風Oとして上方及び外方へ向かわせて、フロントピラー部周辺で発生する縦渦及び剥離流に衝突させる。上方誘導風U及び外方誘導風Oとの衝突によって縦渦及び剥離流を相殺又は減衰させられることから、風切音を低減することができる。
【0016】
また、誘導部2a,2b,2cは、取付状態で、車体の前方から後方へかけて車体の左右方向外側へ傾斜する第1の傾斜面T1と、車体の前方から後方へかけて上り傾斜する第2の傾斜面T2とが形成されている。
よって、第1の傾斜面T1によって、車体外側方向へ向かう外方誘導風Oを発生させることができ、第2の傾斜面T2によって上方へ向かう上方誘導風Uを発生させることができる。生じる外方誘導風Oと上方誘導風Uとは、縦渦及び剥離流と衝突するため、縦渦及び剥離流を相殺又は減衰させられることから、風切音を低減することができる。
【0017】
また、自動車にサイドバイザーを装着している場合、剥離流がサイドバイザーの内側に巻き込まれることで生じる乱流が、風切音発生の一因となるが、外方誘導風Oと上方誘導風Uとによって剥離流を相殺又は減衰させることで、サイドバイザーの内側に巻き込まれる風の流れを低減させられるため、風切音を低減することができる。
【0018】
なお、自動車外装品1は、例えば図6に示すように、フロントピラー部Pへの取付状態で、車体側に板状の本体部50を備える構成としてもよい。
本体部50を設ける事でフロントピラー部Pへの取付面積が増加するため、自動車外装品1をフロントピラー部Pに対して堅牢に取り付けられる。
【0019】
図7は、本発明における実施形態の自動車外装品の変形例1を示す説明図であって、(a)は斜視、(b)は図7(a)におけるB-B線端面図、(c)は図7(a)におけるC-C線端面図である。
自動車外装品1aは、フロントピラー部Pへの取付状態で、図7(a),(b),(c)に示すように、後方へ向かうにつれて車体外側(図7における左方向)への突出幅が増大し、第1の傾斜面T1として機能する誘導部2dと、第2の傾斜面T2として機能する誘導部2eとを有する略台形形状の複合誘導部3とが、フロントピラー部Pの傾斜方向に沿って上下方向に所定の間隔を空けて3つ隣設された突出部40を、本体部50の外面前方に備えている。
【0020】
隣設する複合誘導部3と複合誘導部3とは、誘導部2dの最小幅長H1の少なくとも半分の間隔(最小間隔)h1を空けて配置される(図9)。ここで、誘導部2dの最小幅長H1は、誘導部2dの上下方向幅が最も小さくなる位置での幅長Hを指し、最小間隔h1は、複合誘導部3と複合誘導部3との間で上下方向幅が最も小さくなる位置での間隔hを指す。この配置とすることで、複数の複合誘導部3によって誘導された外方誘導風Oと上方誘導風Uとが縦渦及び剥離流を攪乱し、相殺又は減衰させるため、効果的に風切音を低減することができる。
また、複数の複合誘導部3は、突出部40として一体に設けられても良いし、それぞれ独立した別体として設けられても良く、設けられる個数も任意に設定可能である。ただし、複合誘導部3の設置数は、3以上であることが好ましい。
図8は、本発明における実施形態の自動車外装品の変形例1の別の形態を示す説明図であって、(a)は斜視、(b)は図8(a)におけるD-D線拡大端面図である。
自動車外装品1aの別の形態である自動車外装品1a’は、図8(a),(b)に示すように、複数の複合誘導部3がそれぞれ独立した別体として設けられることで、自動車外装品1a’の前端から後端にわたって、複合誘導部3と他の複合誘導部3との間に走行風の通り道が形成されるため、より効果的に風切音を低減することができる。
また、複合誘導部3は、略台形形状に限定されず、第1の傾斜面として機能する誘導部と第2の傾斜面として機能する誘導部とを備えていれば、三角形状や四角形状であっても良い。
【0021】
図9(a)は変形例1の自動車外装品の突出幅寸法を示す説明図、図9(b)は第2の傾斜面の傾斜角度を示す説明図、図9(c)は図9(b)のE-E線端面図であって第1の傾斜面の傾斜角度を示す説明図、図9(d)は図9(b)のE-E線端面図であって第1の傾斜面後端部の傾斜角度を示す説明図、図9(e)は図9(b)のF-F線拡大端面図であって第2の傾斜面の本体部との間の傾斜角度、複合誘導部下部の本体部との傾斜角度、複合誘導部の突出幅、誘導部の幅長、及び隣接する複合誘導部の間隔を示す説明図である。
図9(a)に示す自動車外装品1aのフロントピラー部Pからの突出幅D2は、1mm≦D2≦100mmの範囲で設定され、好ましくは5mm≦D2≦13mmで設定される。また、突出幅D2の最小値D2(min)及び最大値D2(max)は、D2(min)≦D2(max)<D2(min)×7の関係を満たす。さらに、複合誘導部3は、図9(e)に示す複合誘導部下方の突出幅D2aと上方の突出幅D2bにおいて、D2a≦D2bの関係を満たす。これにより、効果的に走行風を外方誘導風O及び上方誘導風Uとして誘導できる。
また、図9(b)に示す第2の傾斜面T2の傾斜角度α2aは、フロントピラー部Pへの取付状態において地面との平行線L1を基準に、1°≦α2a≦89°の範囲で設定され、好ましくは10°≦α2a≦45°の範囲で設定される。
また、図9(c)に示す第1の傾斜面T1の傾斜角度θ2aは、フロントピラー部Pへの取付状態において車体の前後を結ぶ中心線の平行線L2を基準に、90°≦θ2a≦179°の範囲で設定され、好ましくは135°≦θ2a≦179°の範囲で設定される。
また、図9(d)に示す第1の傾斜面T1の後端部の傾斜角度θ2bは、本体部50の表面を基準に、90°≦θ2b≦135°の範囲で設定される。
また、図9(e)に示す第2の傾斜面T2の本体部50との間の傾斜角度α2b及び複合誘導部3の下部と本体部50との間の傾斜角度α2cは、それぞれ、90°≦α2b≦135°及び90°≦α2c≦135°の範囲で設定される。
また、図9(b)及び(e)に示すように、誘導部2dの幅長Hは、最小幅長H1と最大幅長H2との間で任意の値に設定される。ここで、最大幅長H2は、誘導部2dの上下方向幅が最も大きくなる位置での幅長Hを指す。最小幅長H1と最大幅長H2とは、H1≦H2<H1×30の関係を満たす。また、最小幅長H1は、5mm以上が好ましい。
一方、隣接する複合誘導部3と複合誘導部3との間隔hは、最小間隔h1と最大間隔h2との間で任意の値に設定される。ここで、最大間隔h2は、複合誘導部3と複合誘導部3との間で上下方向幅が最も大きくなる位置での間隔hを指す。最小間隔h1と最大間隔h2とは、h1≦h2<h1×12の関係を満たす。また、最小間隔h1は、2mm以上が好ましい。
なお、複合誘導部3の幅長Hは、フロントピラー部Pへの取付状態における前側より後側を小さくしても良いし、前側より後側を大きくしても良い。隣接する複合誘導部3と複合誘導部3との間隔hも同様である。
加えて、各部の各傾斜角度は、それぞれの設定範囲内において、各部の全域にわたって同じ値で設定されても良いし、設定値を変化させても良い。
【0022】
続いて、変形例1の自動車外装品周辺における風の流れを説明する。
図10は、変形例1の自動車外装品周辺における風の流れを示す説明図であって、(a)は外方へ向かう流れ、(b)は上方へ向かう流れである。
自動車外装品1aは、フロントピラー部Pの下方に、両面テープ等の図示しない取付手段によって取り付けられる。誘導部2d,2d,2dは、図10(a)に示すように、その表面を流れた走行風Wを外方誘導風Oとして車体外側方向へ向かうように誘導する。一方、誘導部2e,2e,2eは、図10(b)に示すように、その表面を流れた走行風Wを上方誘導風Uとして上方へ向かうように誘導する。
上述のように走行風Wを誘導する3つの複合誘導部3,3,3を設けることで、3つの誘導風が生じ、それぞれが縦渦及び剥離流を攪乱して相殺又は減衰させられることから、風切音をより低減することができる。
【0023】
図11は、本発明における実施形態の自動車外装品の変形例1の別の形態を示す説明図であって、(a)は斜視、(b)は図11(a)における丸枠Mに囲まれた部位の拡大図、(c)は図11(a)におけるG-G線端面図である。
変形例1の別の形態1a’’は、図11(a)に示すように、フロントピラー部Pへの取付状態において、突出部40aの前端縁に凹部50aが形成され、これにより、突出部40aの下端近傍から上端にわたって、誘導部2f,2gが形成されている。また、誘導部2fは第2の傾斜面T2としての機能を備え、誘導部2gは、第1の傾斜面T1及び第2の傾斜面T2の両方の機能を備える。
図11(b)に示す誘導部2fの傾斜角度α2dは、フロントピラー部Pへの取付状態において地面との平行線L1を基準に、5°≦α2d≦20°の範囲で設定される。
また、図11(c)に示す誘導部2gの傾斜角度θ2cは、90°<θ2c≦135°の範囲で設定される。
これにより、より効果的に走行風を外方誘導風O及び上方誘導風Uとして誘導できる。
【0024】
図12は、本発明における実施形態の自動車外装品の変形例2を示す説明図であって、(a)は斜視、(b)は正面、(c)は平面である。
自動車外装品1bは、フロントピラー部Pへの取付状態で、車体外側(図12における左方向)へ向けて突出し、図12(a)~(c)に示すように、後方へ向かうにつれて外側への突出幅が増大する翼部6を備え、翼部6の外側端縁には、上方へ向けて倒立する縦壁部70が形成されている。縦壁部70は、その後方付近でより上方へ向けて延設部70aが延設される。また、延設部70aは、図10(c)に示すように、後方へ向かうにつれて車体左右方向へ肉厚となる断面略T字形状に成形されている。また、延設部70aは、図12(b)に示すように、前方から後方にかけて車体方向(図12における右方向)へ向けて傾斜して設けられている。
【0025】
翼部6は、誘導部2hをなし、第2の傾斜面T2として機能し、縦壁部70の肉厚部外面70bは、誘導部2iをなし、第1の傾斜面T1として機能する。一方、縦壁部70の肉厚部内面70cは、誘導部2jをなし、第2の傾斜面T2として機能する。
【0026】
また、縦壁部70を形成する位置は、翼部6上であれば良く、例えば、翼部6の突出方向の中央部で車体前後方向にわたって形成されても良いし、翼部6の外側端縁の前方だけに設けられる等しても良い。さらに、翼部6の下方へ向けて設けられても良いし、上下両側に設けられても良い。加えて、縦壁部70は、翼部6上に複数設けられても良い。
また、翼部6を含む縦壁部70の断面形状は、上述したような略L字形状以外にも、後述する変形例4のように、その断面形状が略コ字形状でも良いし、略T字形状や略F字形状、略円弧状であっても良く、走行風が拡散されない形状であれば限定されない。
【0027】
なお、自動車外装品1bは、例えば図6に示すように、フロントピラー部Pへの取付状態で、車体側に板状の本体部を備える構成としてもよい。
本体部を設ける事でフロントピラー部Pへの取付面積が増加するため、自動車外装品1をフロントピラー部Pに対して堅牢に取り付けられる。
【0028】
図13(a)は変形例2の自動車外装品の突出幅寸法を示す説明図、図13(b)は第2の傾斜面の傾斜角度を示す説明図、図13(c)は第1の傾斜面の傾斜角度を示す説明図である。
図13(a)に示す自動車外装品1bのフロントピラー部Pからの突出幅D3は、1mm≦D3≦100mmの範囲で設定され、好ましくは10mm≦D3≦50mmで設定される。これにより、効果的に走行風を外方誘導風O及び上方誘導風Uとして誘導できる。
また、図13(b)に示す第2の傾斜面T2の傾斜角度α3は、フロントピラー部Pへの取付状態において地面との平行線L1を基準に、1°≦α3≦89°の範囲で設定され、好ましくは10°≦α3≦45°の範囲で設定される。
また、図13(c)に示す第1の傾斜面T1の傾斜角度θ3は、フロントピラー部Pへの取付状態において車体の前後を結ぶ中心線の平行線L2を基準に、90°≦θ3≦179°の範囲で設定され、好ましくは135°≦θ3≦179°の範囲で設定される。
【0029】
続いて、変形例2の自動車外装品周辺における風の流れを説明する。
図14は、変形例2の自動車外装品周辺における風の流れを示す説明図であって、(a)は外方へ向かう流れ、(b)は上方へ向かう流れ、(c)は上方から見た風の流れである。
自動車外装品1bは、フロントピラー部Pの下方に、両面テープ等の図示しない取付手段によって取り付けられる。誘導部2iは、図14(a)に示すように、その表面を流れた走行風Wを外方誘導風Oとして車体外側方向へ向かうように誘導する。一方、誘導部2h,2jは、図14(b)に示すように、その表面を流れた走行風Wを上方誘導風Uとして上方へ向かうように誘導する。この時、フロントガラスから流れてくる走行風Wを縦壁部70によって受け止めて誘導部2h、2jへ導くことで、効率よく走行風Wを誘導可能である。
また、縦壁部70が車体方向へ傾斜して設けられることで、縦壁部70及びフロントピラー部Pの外面によって形成される空間80が、図14(c)に示すように、前方から後方にかけて窄まるように形成されるため、空間80を通過する際に上方誘導風Uを加速でき、外方誘導風Oと加速された上方誘導風Uとで、縦渦及び剥離流を効果的に相殺又は減衰させられることから、風切音をより低減することができる。
【0030】
図15は、本発明における実施形態の自動車外装品の変形例3を示す説明図であって、(a)は斜視、(b)は正面である。
自動車外装品1cは、フロントピラー部Pへの取付状態で、図15(a)に示すように、後方へ向かうにつれて車体外側(図11における左方向)へ向けて板厚が増大する本体部51と、本体部51の外面51aのフロントピラー部Pの傾斜方向における上下方向中央付近に設けられ、フロントピラー部Pへの取付状態で、外側へ向けて突出する突出部41とを備える。突出部41は、後方へ向かうにつれて外側への突出幅が増大する翼部6を備え、翼部6の外側端縁には、上方へ向けて倒立する縦壁部71が設けられている。縦壁部71は、その後方付近でより上方へ向けて延設部71aが延設される。また、縦壁部71は、図15(b)に示すように、縦壁部71及び本体部51の外面51aによって形成される空間80が、前方から後方にかけて窄まるように車体方向(図13における右方向)へ向けて傾斜して形成されている。
本体部51の外面51aは、誘導部2kをなし、第1の傾斜面T1として機能し、翼部6は、誘導部2hをなし、第2の傾斜面T2として機能する。
【0031】
なお、本体部51における翼部6の配置は、本体部51の外面51aであれば中央付近に限らず、どの位置に設けられていても良い。
また、本体部51における外側へ向けた板厚の増大部分は、限定された範囲のみに形成しても良く、例えば、側方から自動車外装品1cを見た際、縦壁部71と重なる範囲のみの板厚が増大する等しても良い。
【0032】
図16(a)は変形例3の自動車外装品の突出幅寸法を示す説明図、(b)は第2の傾斜面の傾斜角度を示す説明図、(c)は第1の傾斜面の傾斜角度を示す説明図である。
図16(a)に示す自動車外装品1cのフロントピラー部Pからの突出幅D4は、1mm≦D4≦100mmの範囲で設定され、好ましくは10mm≦D4≦50mmで設定される。これにより、効果的に走行風を外方誘導風O及び上方誘導風Uとして誘導できる。
また、図16(b)に示す第2の傾斜面T2の傾斜角度α4は、フロントピラー部Pへの取付状態において地面との平行線L1を基準に、1°≦α4≦89°の範囲で設定され、好ましくは10°≦α4≦45°の範囲で設定される。
また、図16(c)に示す第1の傾斜面T1の傾斜角度θ4は、フロントピラー部Pへの取付状態において車体の前後を結ぶ中心線の平行線L2を基準に、90°≦θ4≦179°の範囲で設定され、好ましくは135°≦θ4≦179°の範囲で設定される。
【0033】
続いて、変形例3の自動車外装品周辺における風の流れを説明する。
図17は、変形例3の自動車外装品周辺における風の流れを示す説明図であって、(a)は外方へ向かう流れ、(b)は上方へ向かう流れ、(c)は上方から見た風の流れである。
自動車外装品1cは、フロントピラー部Pの下方に、本体部51の内面(図17における右方向)を介して両面テープ等の図示しない取付手段によって取り付けられる。誘導部2kは、図17(a)に示すように、その表面を流れた走行風Wを外方誘導風Oとして車体外側方向へ向かうように誘導する。一方、誘導部2hは、図17(b)に示すように、その表面を流れた走行風Wを上方誘導風Uとして上方へ向かうように誘導する。この時、フロントガラスから流れてくる走行風Wを縦壁部71によって受け止めて誘導部2h,2kへ導くことで、効率よく走行風Wを誘導可能である。
【0034】
また、空間80が、図17(c)に示すように、前方から後方にかけて窄まるように形成されるため、空間80を通過する上方誘導風U及び外方誘導風Oを加速できる。加速された上方誘導風Uと外方誘導風Oとで、縦渦及び剥離流を効果的に相殺又は減衰させられることから、風切音をより低減することができる。
【0035】
図18は、本発明における実施形態の自動車外装品の変形例4を示す説明図であって、(a)は斜視、(b)は正面である。
自動車外装品1dは、フロントピラー部Pへの取付状態で、図18(a)に示すように、後方へ向かうにつれて車体外側(図18における左方向)へ向けて板厚が増大する本体部51と、本体部51の外面51aに、車体外側へ向けて突出する突出部42とを備える。突出部42は、後方へ向かうにつれて上り傾斜する翼部6を備え、翼部6の前後方向全域にわたり、上方へ向けて倒立し、翼部6と共に本体部51の外面51aとの間にトンネル状の空間81を形成する倒L字形状の縦壁部72が設けられている。縦壁部72は、図18(b)に示すように、空間81が、前方から後方にかけて窄まるように形成されている。また、縦壁部72の上端は、車体に接していなくても良いが、車体に接していると尚良い。
本体部51の外面51aは、誘導部2kをなし、第1の傾斜面T1として機能し、翼部6は、誘導部2hをなし、第2の傾斜面T2として機能する。
【0036】
図19(a)は変形例4の自動車外装品の突出幅寸法を示す説明図、(b)は第2の傾斜面の傾斜角度を示す説明図、(c)は第1の傾斜面の傾斜角度を示す説明図である。
図19(a)に示す自動車外装品1dのフロントピラー部Pからの突出幅D5は、1mm≦D5≦100mmの範囲で設定され、好ましくは10mm≦D5≦50mmで設定される。これにより、効果的に走行風を外方誘導風O及び上方誘導風Uとして誘導できる。
また、図19(b)に示す第2の傾斜面T2の傾斜角度α5は、フロントピラー部Pへの取付状態において地面との平行線L1を基準に、1°≦α5≦89°の範囲で設定され、好ましくは10°≦α5≦45°の範囲で設定される。
また、図19(c)に示す第1の傾斜面T1の傾斜角度θ5は、フロントピラー部Pへの取付状態において車体の前後を結ぶ中心線の平行線L2を基準に、90°≦θ5≦179°の範囲で設定され、好ましくは135°≦θ5≦179°の範囲で設定される。
【0037】
続いて、変形例4の自動車外装品周辺における風の流れを説明する。
図20は、変形例4の自動車外装品周辺における風の流れを示す説明図であって、(a)は外方へ向かう流れ、(b)は上方へ向かう流れである。
自動車外装品1dは、フロントピラー部Pの下方に、本体部51の内面(図20における右方向)を介して両面テープ等の図示しない取付手段によって取り付けられる。誘導部2kは、図20(a)に示すように、その表面を流れた走行風Wを外方誘導風Oとして車体外側方向へ向かうように誘導する。一方、誘導部2hは、図20(b)に示すように、その表面を流れた走行風Wを上方誘導風Uとして上方へ向かうように誘導する。この時、フロントガラスから流れてくる走行風Wを縦壁部72によって受け止めて誘導部2h,2kへ導くことで、効率よく走行風Wを誘導可能である。
【0038】
また、空間81が、前方から後方にかけて窄まるように形成されるため、空間81を通過する上方誘導風U及び外方誘導風Oを加速できる。加速された上方誘導風Uと外方誘導風Oとで、縦渦及び剥離流を効果的に相殺又は減衰させられることから、風切音をより低減することができる。
【0039】
図21は、本発明における実施形態の自動車外装品の変形例5を示す説明図であって、(a)は斜視、(b)は正面である。
自動車外装品1eは、フロントピラー部Pへの取付状態で、図21(a)に示すように、後方へ向かうにつれて車体外側(図21における左方向)へ向けて板厚が増大する本体部51と、本体部51の外面51aに、外側へ向けて突出する突出部43とを備える。突出部43は、後方へ向かうにつれて上り傾斜する翼部6を備え、翼部6の上方には、2枚の整流フィン9,9が上下に並列して設けられている。また、翼部6の前後方向全域にわたり、上方へ向けて倒立し、翼部6及び整流フィン9,9と共に本体部51の外面51aとの間に3つのトンネル状の空間82を形成する倒L字形状の縦壁部72が設けられている。縦壁部72は、図21(b)に示すように、空間82が、前方から後方にかけて窄まるように形成されている。さらに、縦壁部72の外面であって、内側に整流フィン9,9が設けられている位置には、外方へ山形に突出するリブR,Rが設けられている。
本体部51の外面51aは、誘導部2kをなし、第1の傾斜面T1として機能し、翼部6、整流フィン9,9は、それぞれ誘導部2hをなし、リブR,Rの上面は、誘導部2lをなし、何れも第2の傾斜面T2として機能する。
整流フィン9は、本体部51と縦壁部72との間であれば、設ける位置や数は限定されない。また、整流フィン9の左右端縁は、本体部51と縦壁部72との何れか一方又は両方に接して設けられる。
【0040】
なお、本体部51の外面51aや翼部6、縦壁部72には、走行風の整流を目的に、リブRや整流フィン9を適宜設けても良く、リブRや整流フィン9に替わり、表面を凹凸形状に成形する等しても良い。
また、翼部6及び/又は整流フィン9、縦壁部72及び本体部51の外面51aで形成される空間82の断面形状は、略四角形状以外にも、略円形状等、任意の形状で設計可能である。
【0041】
図22(a)は変形例5の自動車外装品の突出幅寸法を示す説明図、(b)は第2の傾斜面の傾斜角度を示す説明図、(c)は第1の傾斜面の傾斜角度を示す説明図である。
図22(a)に示す自動車外装品1eのフロントピラー部Pからの突出幅D6は、1mm≦D6≦100mmの範囲で設定され、好ましくは10mm≦D6≦50mmで設定される。これにより、効果的に走行風を外方誘導風O及び上方誘導風Uとして誘導できる。
また、図22(b)に示す第2の傾斜面T2の傾斜角度α6は、フロントピラー部Pへの取付状態において地面との平行線L1を基準に、1°≦α6≦89°の範囲で設定され、好ましくは10°≦α6≦45°の範囲で設定される。
また、図22(c)に示す第1の傾斜面T1の傾斜角度θ6は、フロントピラー部Pへの取付状態において車体の前後を結ぶ中心線の平行線L2を基準に、90°≦θ6≦179°の範囲で設定され、好ましくは135°≦θ6≦179°の範囲で設定される。
【0042】
続いて、変形例5の自動車外装品周辺における風の流れを説明する。
図23は、変形例5の自動車外装品周辺における風の流れを示す説明図であって、(a)は外方へ向かう流れ、(b)は上方へ向かう流れである。
自動車外装品1eは、フロントピラー部Pの下方に、本体部51の内面(図23における右方向)を介して両面テープ等の図示しない取付手段によって取り付けられる。誘導部2kは、図23(a)に示すように、その表面を流れた走行風Wを外方誘導風Oとして車体外側方向へ向かうように誘導する。一方、誘導部2h,2lは、図23(b)に示すように、その表面を流れた走行風Wを上方誘導風Uとして上方へ向かうように誘導する。この時、フロントガラスから流れてくる走行風Wを縦壁部72によって受け止めて誘導部2h,2lへ導くことで、効率よく走行風Wを誘導可能である。
【0043】
また、空間82が、前方から後方にかけて窄まるように形成されるため、空間82を通過する上方誘導風U及び外方誘導風Oを加速できる。加速された上方誘導風Uと外方誘導風Oとで、縦渦及び剥離流を効果的に相殺又は減衰させられることから、風切音をより低減することができる。
【0044】
図24は、本発明における実施形態の自動車外装品の変形例6を示す説明図であって、(a)は斜視、(b)は側面、(c)は図24(b)のH-H線断面斜視である。
自動車外装品1fは、フロントピラー部Pへの取付状態で、図22(a)に示すように、車体外側(図24における左方向)へ向けて突出し、肉厚に成形された板状の本体部52を備える。本体部52には、本体部52の前端縁下部から後端縁上部にかけて、図24(b)に示すように、断面略V字形状の溝部11が、側面視く字形状に形成されている。
急勾配に形成された溝部11後部の底面11aは、誘導部2mをなし、図24(b),(c)に示すように、車体の前方から後方へかけて上り傾斜すると共に車体の左右方向外側へ傾斜するため、第1の傾斜面T1且つ第2の傾斜面T2として機能する。また、緩勾配に形成された溝部11前部の底面11bは、誘導部2nをなし、第2の傾斜面T2として機能する。
【0045】
なお、溝部の断面は、略V字形状に限定されず、略U字形状、略コ字形状等に適宜変更可能である。また、溝部底面に、複数の隆起部や凹部を設けることで、誘導風の指向性をさらに向上させることができる。
【0046】
図25(a)は本発明の自動車外装品の突出幅寸法を示す説明図、(b)は第2の傾斜面の傾斜角度を示す説明図、(c)は図25(b)のI-I線断面図であって第1の傾斜面の傾斜角度を示す説明図である。
図25(a)に示す自動車外装品1fのフロントピラー部Pからの突出幅D7は、1mm≦D7≦100mmの範囲で設定され、好ましくは10mm≦D7≦50mmで設定される。これにより、効果的に走行風を外方誘導風O及び上方誘導風Uとして誘導できる。
また、図25(b)に示す第2の傾斜面T2の傾斜角度α7は、フロントピラー部Pへの取付状態において地面との平行線L1を基準に、1°≦α7≦89°の範囲で設定され、好ましくは10°≦α7≦45°の範囲で設定される。
また、図25(c)に示す第1の傾斜面T1の傾斜角度θ7は、フロントピラー部Pへの取付状態において車体の前後を結ぶ中心線の平行線L2を基準に、90°≦θ7≦179°の範囲で設定され、好ましくは135°≦θ7≦179°の範囲で設定される。
【0047】
続いて、変形例6の自動車外装品周辺における風の流れを説明する。
図26は、変形例5の自動車外装品周辺における風の流れを示す説明図であって、(a)は上方へ向かう流れ、(b)は外方へ向かう流れである。
自動車外装品1fは、フロントピラー部Pの下方に、本体部52の内面(図26における右方向)を介して両面テープ等の図示しない取付手段によって取り付けられる。誘導部2m,2nは、図26(a)に示すように、溝部11前端の開口12から溝部11へ進入した走行風Wを上方誘導風Uとして上向へ向かうように誘導する。一方、誘導部2mは、図26(b)に示すように、その表面を流れた走行風Wを外方誘導風Oとして車体外側方へ向かうように誘導する。この時、上方誘導風U及び外方誘導風Oが溝部11内部を通過するため、誘導されていない走行風Wの影響を受けにくくなり、より安定した上方誘導風U及び外方誘導風Oを形成できることから、風切音をより低減することができる。
【0048】
以上は、本発明を図示例に基づいて説明したものであり、その技術範囲はこれに限定されるものではない。例えば、自動車外装品は、フロントピラー部に複数取り付けても良い。またその際、それぞれ異なる形状のものを組み合わせても良い。
また、自動車外装品の取付位置は、フロントピラー部の下方が望ましいが、フロントピラー部上であれば、どの位置に取り付けても良い。
また、誘導部の傾斜は、平面でも曲面でもよい。なお、曲面の場合、誘導部の傾斜角度は、地面との平行線又は車体の前後を結ぶ中心線の平行線を基準線として、基準線と曲面の接線との間の角度を以て設定される。
また、本明細書中では、第2の傾斜面が上り傾斜する場合について説明したが、下り傾斜していても良い。
また、翼部、縦壁部及びフロントピラー部又は本体部によって形成される空間は、広い空間の後方に狭い空間が形成されれば良く、そのための構成は、任意に設計可能である。例えば、縦壁部の後方を車体側へ傾けたり肉厚にする等しても良いし、フロントピラー部や本体部、縦壁部の当該空間側に別部材を設けたり、別の形状を形成する等しても良い。
また、サイドバイザーを装着した自動車においては、サイドバイザー上のフロントピラー部周辺に本発明を適用することも可能である。
また、各種寸法は、道路運送車両の保安基準等の法規上、支障が無い範囲で設定される。
【符号の説明】
【0049】
1,1a,1a’,1a’’,1b,1c,1d,1e,1f・・自動車外装品、2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2h,2i,2j,2k,2l,2m,2n・・誘導部、40,41,42,43・・突出部、50、51,52・・本体部、P・・フロントピラー部、T1・・第1の傾斜面、T2・・第2の傾斜面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26