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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】骨切術用開大器
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/88 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
A61B17/88
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021030680
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131643
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390034740
【氏名又は名称】株式会社日本エム・ディ・エム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金井 久
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-010711(JP,A)
【文献】特開2018-192066(JP,A)
【文献】特開2008-006140(JP,A)
【文献】特開2019-093105(JP,A)
【文献】特開2007-046783(JP,A)
【文献】特開2019-208705(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0036205(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/88
A61B 17/56
A61B 17/14
A61F 2/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形性膝関節症患者の脛骨に形成された切込みに移植物を挿入して脛骨の角度を矯正する治療で用いる骨切術用の開大器であって、
前記開大器はそれぞれの側面が互いに係合可能な第1の構成体と第2の構成体から構成され、
前記第1の構成体は第1の上下の揺動体を有し、該第1の上下の揺動体の一方の端部が第1のヒンジ部によって上下方向に回転可能に連結され、前記第1の上下の揺動体の前記第1のヒンジ部と反対側の端部付近には、前記第1の上下の揺動体の間の角度を調節するための開閉機構と、前記切込みに挿入する前に前記第2の構成体を前記第1の構成体の側面に係合するための第1の係合部材が前記開閉機構に設けられ、
前記第2の構成体は第2の上下の揺動体を有し、前記第2の上下の揺動体の一方の端部が第2のヒンジ部によって上下に回転可能に連結され、前記第2の上下の揺動体の前記第2のヒンジ部と反対側の端部には、前記第2の上下の揺動体の一方には、前記第1の構成体を係合するための第2の係合部材と、前記第2の上下の揺動体の両方には、前記切込みを拡大した後前記第2の係合部材を前記第1の係合部材から解除するための機構が設けられており、
前記第2の係合部材が、前記第2の上下の揺動体から上側に突出した突起部からなり、前記解除するための機構が、前記第2の上下の揺動体の上側の先端部に設けられたレバーと、前記第2の上下の揺動体の下側に設けられたレバー型フック部材からなり、
前記第1の係合部材が、前記第1の上下の揺動体に設けられたフック受け部材を含み、前記第1の上下の揺動体の上側の前記フック受け部材は、前記突起部を前記ヒンジ部の方向に受け入れる溝を有し、前記第1の上下の揺動体の下側の前記フック受け部材は、前記レバー型フック部材の先端と嵌合する凹部とからなり、
前記レバーと前記レバー型フック部材を操作することにより、前記第2の係合部材の前記第1の係合部材への係合、及び解除が可能にされている
開大器。
【請求項2】
前記開閉機構が、前記第1の上下の揺動体を貫通し、表面にねじ山を有する円柱体と、前記第1の上下の揺動体のそれぞれに設けられた、前記円柱体のねじ山に嵌合するねじ溝が内面に設けられた貫通孔を有し、前記第1の上下の揺動体の側面方向の回転軸を有する回転部材から構成される、請求項1に記載の開大器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変形性膝関節症患者の治療のため、脛骨に形成された切込みに移植物を挿入する時に用いる骨切術用開大器の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、変形性膝関節症患者の変形した大腿骨または脛骨の角度を矯正するために、高位脛骨に高位脛骨骨切術(HTO:High Tibial Osteotomy)が行われている。この高位脛骨骨切術の一方法にオープンウェッジ法がある。これは、図1に示すように、変形性膝関節症患者の膝関節の一方を構成する脛骨1の上部を骨鋸を用いて切除し、その切込み3に楔型の移植骨や人工骨などの移植物を挿入して立位時の大腿骨または脛骨の角度を矯正する治療方法である。
【0003】
形成した切込み3に移植物を挿入するには、この切込み3を器具(開大器)を用いて拡大し、その状態を維持しながら移植物を所定の位置まで挿入し、挿入が終了したら開大器を引き抜いて完了する。しかし開大器で切込みを拡大した状態で移植物を挿入する場合、この開大器自体が挿入の障害になってしまう問題がある。この問題を避けるため、開大器の揺動部(切込みに挿入するブレード)を幅方向に2分割した構造にすることが従来から行われている(特許文献1~3)。このような1組の揺動部を重ねて切込みに挿入し拡大した後、片方の揺動部を取り出し、もう一方の揺動部で維持された切込みに移植物を挿入する。そして今度はこの挿入した移植物が拡大された切込みを維持するので、残された揺動部を取り出す。移植物が挿入された切込みは外側から金属板等で覆い固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4736091号公報
【文献】特許第6626474号公報
【文献】特開第2016―209435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの1組の揺動部材を一体化して用いる場合、挿入動作、及び切込みを拡大する動作を連動して行わせるため、両者を係合する機構が設けられている。例えば特許文献1では、第1の揺動部材には側面に突起が、第2の揺動部材の対向する側面には窪みが設けられ、両者を嵌合させることで一体化している。そして第1の上下の揺動部材を回転可能に連結するヒンジ部と反対側の先端付近には第1の開閉機構(棒状のねじ)が設けられ、これにより開大器を広げると第1と第2の上下の揺動部材が連動して所定の角度まで広がる。次に、第2の揺動部材に設けられた同様のねじ状の第2の開閉機構を回転させて、第2の上下の揺動部材間の上記所定の角度を固定した後、第1の揺動部材は取り除き、第2の揺動部材で切込みを支えて移植物を挿入する。挿入が終了したら第2の開閉機構を回転させて角度を小さくして第2の揺動部材を取り出して一連の操作が完了する。しかしながら、第2の揺動部材を所定の角度に固定する時、及び挿入終了後に第2の揺動部材を取り出す時に、ねじを回転させて行うことが必要なため、操作に手間と時間がかかるという問題がある。
【0006】
また、文献2の開大器は、まず第1と第2のブレード(揺動部材)21A、21Bを、双方の背部の共通溝に第1の連結部材5をスライドにより嵌合させ、かつ双方の揺動部材の側面の貫通穴に第2の連結部材6を貫通させて予め連結させることによって第1と第2のブレードを一体化させ、この状態で骨の切込みを拡大した後、この状態を保持しながら第1と第2の連結部材5を取り除いてから第1のブレードを閉じて取り除く。そして第2のブレードのみで拡大状態を保持しながら移植物を挿入後、第2のブレードを閉じて取り除いて操作が完了する。しかしながら、このような一連の操作は、第1と第2の連結部材5により予め第1と第2のブレードを嵌合させる操作や、その後切込み幅を保持した状態で第1と第2の連結部材5を取り除いて第1と第2のブレードを切り離す操作が必要なため、一連の操作が完了するまで手間と時間がかかるという問題がある。
【0007】
このように、骨切術用開大器は、脛骨の切込みを開大した後、一対の揺動部材または離間部材を切込みに残して拡大した状態を保持する操作や、一対の揺動部材を取り外す操作が煩雑なため施術時間が長くなるという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、骨の切込みに一対の揺動部材を装着し、移植物を挿入後取り外す操作が極めて容易な開大器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の開大器は以下のような構成を有する。
変形性膝関節症患者の脛骨に形成された切込みに移植物を挿入して脛骨の角度を矯正する治療で用いる骨切術用の開大器であって、
前記開大器はそれぞれの側面が互いに係合可能な第1の構成体と第2の構成体から構成され、
前記第1の構成体は第1の上下の揺動体を有し、該第1の上下の揺動体の一方の端部が第1のヒンジ部によって上下方向に回転可能に連結され、前記第1の上下の揺動体の前記第1のヒンジ部と反対側の端部付近には、前記第1の上下の揺動体の間の角度を調節するための開閉機構と、前記切込みに挿入する前に前記第2の構成体を前記第1の構成体の側面に係合するための第1の係合部材が前記開閉機構に設けられ、
前記第2の構成体は第2の上下の揺動体を有し、前記第2の上下の揺動体の一方の端部が第2のヒンジ部によって上下に回転可能に連結され、前記第2の上下の揺動体の前記第2のヒンジ部と反対側の端部には、前記第2の上下の揺動体の一方には、前記第1の構成体を係合するための第2の係合部材と、前記第2の上下の揺動体の両方には、前記切込みを拡大した後前記第2の係合部材を前記第1の係合部材から解除するための機構が設けられている。
【0010】
また、前記第2の係合部材が、前記第2の上下の揺動体から上側に突出した突起部と、前記解除するための機構が、前記第2の上下の揺動体の上側の先端部に設けられたレバーと、前記第2の上下の揺動体の下側に設けられたレバー型フック部材からなり、
前記第1の係合部材が、前記開閉機構に設けられたフック受け部材を含み、前記第1の上下の揺動体の上側の前記フック受け部材は、前記突起部を前記ヒンジ部の方向に受け入れる溝を有し、前記第1の上下の揺動体の下側の前記フック受け部材は、前記レバー型フック部材の先端と嵌合する凹部とからなり、
前記レバーと前記レバー型フック部材を操作することにより、前記第2の係合部材の前記第1の係合部材への係合、及び解除が可能にされている。
【0011】
また、前記開閉機構が、前記第1の上下の揺動体を貫通し、表面にねじ山を有する円柱体と、前記第1の上下の揺動体のそれぞれに設けられた、前記円柱体のねじ山に嵌合するねじ溝が内面に設けられた貫通孔を有し、前記円柱体と前記第1の上下の揺動体の側面方向の回転軸を有する回転部材から構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、高位脛骨骨切術での従来の操作上の煩雑さが解消され、操作が容易な開大器を提供できるので、施術の時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、高位脛骨骨切術(HTO)のための膝関節の下側の骨への切込みを示す図である。
図2図2は、本発明による開大器の外観の斜視図である。
図3図3は、本発明による開大器の第1の構成体の側面図である。
図4図4は、本発明による開大器の第2の構成体の側面図である。
図5図5は、本発明による開大器の上面図とその部分的拡大図である。
図6図6は、本発明による開大器を用いて切込みを拡大している状態を示す図である。
図7図7は、本発明による開大器の第2の構成体を取り出している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図2は、本発明によるHTO用開大器(以下開大器と呼ぶ)100の外観の斜視図を示す。開大器100は第1の構成体10と第2の構成体20から構成される。素材にはステンレスやチタン等の金属が用いられる。第1の構成体10は、図3に示すように、一対の上側と下側の揺動部材11が一方の端部で第1のヒンジ部13によって上下方向に回転可能に連結されている。上側の揺動部の上面には、切込みを保持する際の滑り防止のために複数の横溝が設けられている。また上側の揺動部の第2の構成体側は、第2の構成体を取り除いて移植骨やセラミックス等の移植物の挿入操作を容易にするために横幅が細くされている。
【0015】
上下の揺動部材11のヒンジ部13と反対側の端部には操作部14が形成されている。操作部14には、開閉機構15が上側と下側の揺動部材11を貫くように設けられている。開閉機構15は円柱状であり、その中心点の少し上側から上端にかけて螺旋状のねじ山16が設けられ、また、中心点の少し下側から下端にかけては上側のねじとは逆向きの螺旋状のねじ山16が設けられている。従って、開閉機構15の中心部を手動で一方向に回転させると、上側と下側のねじが逆方法に回転するので、上側と下側の揺動部材11は互いに逆方向に動き、第1と第2の揺動部材11の間の角度12を調整することができる。上側と下側の揺動部材11の操作部14には、開閉機構15を通過させる通過口と、横方向の回転軸を有する回転部品19が設けられている。通過口には開閉機構15のねじ山16と嵌合する雌ねじが切られ、回転部品が揺動部材の上下運動に応じて回転するので、開閉機構15の動きに追従して上側と下側の揺動部材11が開閉する。さらに、上側と下側の揺動部材11の操作部14には、第2の構成体と係合するためのフック受け部材17(第1の係合部材)が開閉機構15、回転部品19と一体化して設けられている。
【0016】
図4は第2の構成体の側面図を示す。第1の構成体と同様に、一対の上下の揺動部材21が一方の端部で第2のヒンジ部23によって上下方向に回転可能に連結されている。また上側の揺動部の上面には上述の滑り防止のための複数の横溝が設けられている。第2のヒンジ部23と反対側の端部の操作部24には上側の揺動部に、第1の係合部材と係合させるためのT型フック部材25(第2の係合部材)が設けられている。さらに上側の最端部にはレバー26が、下側の最端部にはレバー型フック部材27が設けられている。レバー型フック部材27はハンマー形状で、一方がかぎ状となっており、その先端部を下側のフック受け部材17に設けられた凹部に引っ掛けることができ、これにより第2の構成体は第1の構成体にロックされる。上側の端部は指で把持するようにレバー状となっており、これらを挟んで加圧すればロックを解除することができる。レバー26とレバー型フック部材27を片手で把持して操作し、T型フック部材25を第1の構成体10のフック受け部材17に引っ掛け、かつレバー型フック部材27でロックすることにより、第1と第2の構成体の一体化を容易に行うことができる。また反対の操作を行えば解除を容易に行うことができる。
【0017】
図5は係合した状態の上面図を示す。T型フック部材25はフック受け部材17の開口部18にスライドさせることにより装着できる。フック受け部材17は第2の構成体を覆うように第2の構成体方向にせり出して設けられ、第2の構成体の長さ方向に溝が設けられ、その開口部18は、施術の途中で第1と第2の構成体を分離する際に第2の構成体20を脛骨の切込みから引き抜く方向に設けられている。一方、T型フック部材25の側面には窪みが設けられているので、開口部18から溝に嵌め込んだ時にT型フック部材25が上下方向に固定されるようになっている。このように係合されたT型フック部材25は、レバー26とレバー型フック部材27を持ち開口部18から引き抜くことでフック受け部材17から容易に取り外すことができる。このように、従来の係合構造に比較して第1と第2の構成体を極めて容易に分離すことができる。
【0018】
本発明の開大器100の使用方法を図6及び図7を用いて説明する。まず図6に示すように、上述のようにT型フック部材25をフック受け部材17に引っ掛けて係合させ一体化した第1と第2の構成体を、開閉機構15を回転させて第1と第2の上下の揺動部材間の角度12を同時に十分小さい角度にしてから切込み3の奥まで挿入した後、開閉機構15を回転させて切込みの間隔が所定の間隔になるまで第1と第2の揺動部材間の角度12を同時に拡大する。そして、図7に示すように、この拡大した状態を保持したまま、第2の構成体20のレバー26とレバー型フック部材27を片手で操作してT型フック部材25をフック受け部材17から解除し、第2の構成体20を切込みから引き抜く。そして拡大した切込みに移植物の挿入した後、第1の構成体10の開閉機構15を緩めて第1の構成体10を切込み3から引き抜いて施術が終了する。このように、第1の構成体を切込みから取り除く操作を、レバー26とレバー型フック部材27を片手で操作するだけで行うことが出来る。
【0019】
なお、本発明の説明は上記実施例に基づいてなされたが、本発明はそれに限定されず、本発明の精神と添付の請求の範囲の範囲内で種々の変更、及び修正をすることができることは当業者に明らかである。
【0020】
例えば、上記実施例は脛骨の切込みへの操作で説明したが、例えば大腿骨等の他の骨の骨切術にも適用できることは言うまでもない。
【0021】
また、開閉機構は、上記実施例ではねじ山を有する細長い円柱体を用いたが、第1の上下の揺動体の間の角度を調整できかつ固定でれば、任意の機構を用いることができる。
【0022】
また、上記実施例では係合部材として第1の構造体にフック受け部材を、第2の構造体にT型フック部材とレバー型フック部材を用いたが、逆に第2の構造体にフック受け部材を、第1の構造体にT型フック部材とレバー型フック部材を用いてもよい。また係合部材は上記実施例の形状以外の他の形状のものを用いてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 脛骨
2 腓骨
3 切込み
100 開大器
10 第1の構成体
20 第2の構成体
11、21 揺動部材
12 上側と下側の揺動部材のなす角度
13、23 ヒンジ部
14、24 操作部
15 開閉機構
16 ねじ山
17 フック受け部材
18 開口部
25 T型フック部材
26 レバー
27 レバー型フック部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7