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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】ホース接続部の構造及び継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 33/24 20060101AFI20241203BHJP
   F16L 33/10 20060101ALI20241203BHJP
   F16L 33/18 20060101ALI20241203BHJP
   F16L 33/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
F16L33/24
F16L33/10
F16L33/18
F16L33/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021076931
(22)【出願日】2021-04-29
(65)【公開番号】P2022170764
(43)【公開日】2022-11-11
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】508321823
【氏名又は名称】株式会社イノアック住環境
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】西 佳彦
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-108981(JP,A)
【文献】特開2018-135996(JP,A)
【文献】国際公開第2014/142226(WO,A1)
【文献】米国特許第5044671(US,A)
【文献】特開2005-053326(JP,A)
【文献】特開2005-308211(JP,A)
【文献】特開2011-122628(JP,A)
【文献】特表2013-519054(JP,A)
【文献】特開2017-048923(JP,A)
【文献】特表2014-514512(JP,A)
【文献】特開2010-203611(JP,A)
【文献】特開2006-300148(JP,A)
【文献】国際公開第2004/104466(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102005049271(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第03423861(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014206487(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0241579(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3667147(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第112313440(CN,A)
【文献】特開2020-186818(JP,A)
【文献】特開2017-172760(JP,A)
【文献】特開2018-119663(JP,A)
【文献】独国実用新案第202019104932(DE,U1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0292900(US,A1)
【文献】特開2019-065888(JP,A)
【文献】特開2021-124122(JP,A)
【文献】特開2021-124123(JP,A)
【文献】特開2021-127776(JP,A)
【文献】特開2021-156365(JP,A)
【文献】特開2021-167644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホースの内側に挿入される樹脂製の筒状挿入部と、
前記筒状挿入部の外面から突出して前記ホースに食い込み、前記ホースと前記筒状挿入部との間をシールするシール用環状突部と、
前記筒状挿入部の外面から突出し、その突出先端と前記筒状挿入部の中心軸との距離である嵌合半径が前記シール用環状突部の前記嵌合半径以下であると共に、前記筒状挿入部の軸方向で対向して相互間に環状溝を形成する1対の溝形成突部と、
前記環状溝に受容されてかつ前記シール用環状突部及び前記溝形成突部の前記嵌合半径より大きい前記嵌合半径を有し、前記ホースの内面に密着して前記ホースと前記筒状挿入部との間をシールする弾性リングと、を備えるホース接続部の構造であって、
以下の(1)、(2)の少なくとも1つを満足するホース接続部の構造。
(1)前記シール用環状突部の突出先端の稜線全体が、前記筒状挿入部の中心軸に対して傾斜している。
(2)前記ホースを外側から前記筒状挿入部に締め付け、前記溝形成突部と前記シール用環状突部とを前記ホースを介して外側から覆うホースクランプを備え、
前記ホースクランプは、ホース未挿入時には拡径状態に弾性変形してクリップに保持され、ホース挿入時に前記クリップによる保持が解除されて弾性復帰し、前記ホースを締め付ける構造をなし、
前記筒状挿入部を包囲し、内側に前記ホースクランプと前記クリップとを収容する筒状カバーと、
前記筒状カバーの先端部に嵌合されて、前記ホースクランプ及び前記クリップを抜け止めすると共に前記ホースが挿通されるホース挿通孔を有するキャップと、を備え、
前記クリップが、前記筒状挿入部の外側に挿入される前記ホースに押されて前記ホースクランプから外れる。
【請求項2】
ホースの内側に挿入される筒状挿入部と、
前記筒状挿入部の外面から突出して前記ホースに食い込み、前記ホースと前記筒状挿入部との間をシールするシール用環状突部と、
前記筒状挿入部の外面から突出し、その突出先端と前記筒状挿入部の中心軸との距離である嵌合半径が前記シール用環状突部の前記嵌合半径以下であると共に、前記筒状挿入部の軸方向で対向して相互間に環状溝を形成する1対の溝形成突部と、
前記環状溝に受容されてかつ前記シール用環状突部及び前記溝形成突部の前記嵌合半径より大きい前記嵌合半径を有し、前記ホースの内面に密着して前記ホースと前記筒状挿入部との間をシールする弾性リングと、を備えるホース接続部の構造であって、
前記1対の溝形成突部のうち、前記筒状挿入部の先端側の前記溝形成突部は、前記筒状挿入部からの突出量が前記筒状挿入部の先端側から基端側に向かって大きくなる断面略三角形状をなし、かつその溝形成突部の外周面の勾配が前記筒状挿入部の周方向で異なっているホース接続部の構造。
【請求項3】
ホースの内側に挿入される筒状挿入部と、
前記筒状挿入部の外面から突出して前記ホースに食い込み、前記ホースと前記筒状挿入部との間をシールするシール用環状突部と、
前記筒状挿入部の外面から突出し、その突出先端と前記筒状挿入部の中心軸との距離である嵌合半径が前記シール用環状突部の前記嵌合半径以下であると共に、前記筒状挿入部の軸方向で対向して相互間に環状溝を形成する1対の溝形成突部と、
前記環状溝に受容されてかつ前記シール用環状突部及び前記溝形成突部の前記嵌合半径より大きい前記嵌合半径を有し、前記ホースの内面に密着して前記ホースと前記筒状挿入部との間をシールする弾性リングと、を備えるホース接続部の構造であって、
前記1対の溝形成突部は、共に断面略直角三角形をなし、それら溝形成突部の互いに対向する面が平行になっていて、
前記シール用環状突部の突出先端の稜線全体が、前記筒状挿入部の中心軸に対して傾斜しているホース接続部の構造。
【請求項4】
ホースの内側に挿入される筒状挿入部と、
前記筒状挿入部の外面から突出して前記ホースに食い込み、前記ホースと前記筒状挿入部との間をシールするシール用環状突部と、
前記筒状挿入部の外面から突出し、その突出先端と前記筒状挿入部の中心軸との距離である嵌合半径が前記シール用環状突部の前記嵌合半径以下であると共に、前記筒状挿入部の軸方向で対向して相互間に環状溝を形成する1対の溝形成突部と、
前記環状溝に受容されてかつ前記シール用環状突部及び前記溝形成突部の前記嵌合半径より大きい前記嵌合半径を有し、前記ホースの内面に密着して前記ホースと前記筒状挿入部との間をシールする弾性リングと、を備えるホース接続部の構造であって、
前記1対の溝形成突部は、共に断面略直角三角形をなし、それら溝形成突部の互いに対向する面が平行になっていて、
前記シール用環状突部は、前記1対の溝形成突部を間に挟んだ2箇所を含む前記筒状挿入部の軸方向の複数箇所に配置されているホース接続部の構造。
【請求項5】
ホースの内側に挿入される筒状挿入部と、
前記筒状挿入部の外面から突出して前記ホースに食い込み、前記ホースと前記筒状挿入部との間をシールするシール用環状突部と、
前記筒状挿入部の外面から突出し、その突出先端と前記筒状挿入部の中心軸との距離である嵌合半径が前記シール用環状突部の前記嵌合半径以下であると共に、前記筒状挿入部の軸方向で対向して相互間に環状溝を形成する1対の溝形成突部と、
前記環状溝に受容されてかつ前記シール用環状突部及び前記溝形成突部の前記嵌合半径より大きい前記嵌合半径を有し、前記ホースの内面に密着して前記ホースと前記筒状挿入部との間をシールする弾性リングと、を備えるホース接続部の構造であって、
前記1対の溝形成突部は、共に断面略直角三角形をなし、それら溝形成突部の互いに対向する面が平行になっていて、
前記ホースを外側から前記筒状挿入部に締め付け、前記溝形成突部と前記シール用環状突部とを前記ホースを介して外側から覆うホースクランプを備え、
前記ホースクランプは、ホース未挿入時には拡径状態に弾性変形してクリップに保持され、ホース挿入時に前記クリップによる保持が解除されて弾性復帰し、前記ホースを締め付ける構造をなし、
前記筒状挿入部を包囲し、内側に前記ホースクランプと前記クリップとを収容する筒状カバーと、
前記筒状カバーの先端部に嵌合されて、前記ホースクランプ及び前記クリップを抜け止めすると共に前記ホースが挿通されるホース挿通孔を有するキャップと、を備え、
前記クリップが、前記筒状挿入部の外側に挿入される前記ホースに押されて前記ホースクランプから外れるホース接続部の構造。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1の請求項に記載のホース接続部の構造を有する継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ホースの内側に挿入される筒状挿入部の外面から環状突部が突出しているホース接続部の構造及び継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のホース接続部の構造として、環状突部をホースに食い込ませてホースと筒状挿入部との間をシールするものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-111066号公報(図2等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来のホース接続部の構造では、環状突部がホースに十分に食い込んでシールが図られるまでに時間を要するので、筒状挿入部をホースに接続してすぐに流体を流す等の使用を行うことができないことが問題になっていた。そこで、本開示では、筒状挿入部をホースに接続してすぐに流体を流して使用することが可能なホース接続部の構造及び継手を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた発明の一態様は、ホースの内側に挿入される筒状挿入部と、前記筒状挿入部の外面から突出して前記ホースに食い込み、前記ホースと前記筒状挿入部との間をシールするシール用環状突部と、前記筒状挿入部の外面から突出し、その突出先端と前記筒状挿入部の中心軸との距離である嵌合半径が前記シール用環状突部の前記嵌合半径以下であると共に、前記筒状挿入部の軸方向で対向して相互間に環状溝を形成する1対の溝形成突部と、前記環状溝に受容されてかつ前記シール用環状突部及び前記溝形成突部の前記嵌合半径より大きい前記嵌合半径を有し、前記ホースの内面に密着して前記ホースと前記筒状挿入部との間をシールする弾性リングと、を備えるホース接続部の構造である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の一実施形態に係るホース接続部の構造を有する継手の側断面図
図2】継手の分解斜視図
図3】継手の斜視図
図4】ホース接続部の構造の後方斜視図
図5】ホースクランプによりホースがホース接続筒部に締め付けられたときのベース筒部の斜視図
図6】ホースクランプに締め付けられてホースの内面に環状突部が食い込んでいるときのホース接続部の構造の側断面図
図7】(A)拡径状態のホースクランプ内にホースが挿入されたときの継手の側面図、(B)ホースによりクリップが押されてホースクランプが縮径状態に変化するときの継手の側面図
図8】ホース接続筒部の前方斜視図
図9】ホース接続筒部の後方斜視図
図10】横方向から見たホース接続筒部の側面図
図11】ホース接続筒部の側断面図
図12】ホース接続筒部の底面図
図13】ホース接続筒部の上側部分における弾性リング付近の拡大側面図
図14】ホース接続筒部の下側部分における弾性リング付近の拡大側面図
図15】(A)弾性リングを外したときのホース接続筒部の側面図、(B)弾性リングを外したときのホース接続筒部の底面図
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1に示すように、本開示の一実施形態に係るホース接続部の構造10は、継手100に設けられている。本実施形態の継手100は、ホース90と配管機器99とを接続するものであり、ベース筒部80に、筒状カバー40やキャップ50等の複数の部品が組付けられてなる(図1及び図2参照)。
【0008】
ベース筒部80は、ストレート状の筒形構造をなしている。ベース筒部80は、一端側に配管機器99(図1参照)に接続される機器接続部30Nを有すると共に、他端側にホース90に接続される筒状挿入部12を有する。以下では、ベース筒部80の中心軸J1と平行な方向を「前後方向H0」と呼び、筒状挿入部12側(図1における右側)を「前側」、機器接続部30N側を「後側」、と適宜呼ぶこととする。
【0009】
なお、配管機器99は、流体が流れる流路を備えた機器であれば、どのような機器であってもよく、単なる配管であってもよい。また、ホース90は、例えば、樹脂製等の単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。後者の場合、例えば、ホース90にアルミニウム等の金属層が含まれていてもよい。ホース90及び配管機器99に流れる流体は、液体、気体、気液混合体を問わない。
【0010】
本実施形態の例では、ベース筒部80は、その軸方向の途中位置に前端側を縮径するテーパ部13Dを有している。そして、ベース筒部80のうちテーパ部13Dよりも前側部分が、円筒状になった上記筒状挿入部12になっている。筒状挿入部12は、ホース90の内側に挿入され、その状態でホース90と筒状挿入部12が外側から後述のホースクランプ60に締め付けられることで、筒状挿入部12がホース90に抜け止めされて接続される(図5及び図6参照)。
【0011】
図1及び図3に示すように、機器接続部30Nは、ベース筒部80の後端部に設けられ、雄ねじ部を外周面に有する。機器接続部30Nの雄ねじ部は、配管機器99(図1参照)の図示しない雌ねじ孔に螺合され、これにより継手100が配管機器99に接続される。継手100と配管機器99との接続は、ねじ同士の螺合によるものでなくてもよく、例えば、フランジ結合又は圧入によるものであってもよいし、それ以外のものであってもよい。
【0012】
なお、図1に示すように、本実施形態の例では、ベース筒部80は、ホース接続筒部11と機器接続筒部30とが連結されてなる。ホース接続筒部11は、上述の筒状挿入部12とテーパ部13Dとを有すると共に、テーパ部13Dよりも後側に、筒状挿入部12よりも拡径されて機器接続筒部30と連結される後端連結部13を有している。機器接続筒部30は、その軸方向の途中位置に正六角形状のフランジ部30Fを有し(図2参照)、フランジ部30Fより後側に上述の機器接続部30Nを有している。図1に示すように、機器接続筒部30のうちフランジ部30Fよりも前側には、ホース接続筒部11と連結される前端連結部31が設けられている。機器接続筒部30の前端連結部31は、段階的に縮径される外周面を有し、ホース接続筒部11の後端連結部13の内側に嵌合される。例えば、前端連結部31の外周面と後端連結部13の内周面とには、互いに前後方向H0で凹凸係合する凹凸部が形成され、ベース筒部80には、それら外周面と内周面との間をシールするОリング19が設けられている。
【0013】
なお、本実施形態の例では、ホース接続筒部11は、樹脂製であるが(例えば、射出成形品であるが)、金属製であってもよい(例えば、切削加工品や鍛造品等であってもよい)。また、本実施形態の例では、機器接続筒部30は、金属製であるが、樹脂製であってもよい。なお、ベース筒部80が、ホース接続筒部11と機器接続筒部30が連結されてなるものでなくてもよく、例えば樹脂製又は金属製で一体形成されたものであってもよい。
【0014】
ホース接続筒部11の筒状挿入部12については、後に詳説する。その前に、筒状カバー40やキャップ50等、継手100におけるベース筒部80の周りの部品について説明する。
【0015】
図2に示すように、上述の筒状カバー40は、前後方向H0に延びる筒状のカバー本体40Hの外周面の周方向の一部から膨出部43が膨出した構成になっている。膨出部43は、カバー本体40Hの外周面の前端から後端寄り位置までの範囲に配置されている。膨出部43は、中空構造をなし、膨出部43の内部空間は、カバー本体40Hの内部空間と連通している。本実施形態の例では、筒状カバー40は、透明な樹脂製であるが(例えば射出成形品であるが)、不透明な樹脂製であってもよい。なお、膨出部43は、カバー本体40Hから、前後方向H0に対して直交する第1方向に膨出している。以下では、この第1方向を上下方向H1と呼び、上下方向H1における膨出部43が突出する側を、「上側」、その反対側を「下側」、と呼ぶこととする。
【0016】
筒状カバー40のうち膨出部43より後側には、カバー後端連結部42が設けられていて、カバー後端連結部42は、ベース筒部80の外側に嵌合される。具体的には、図1に示すように、筒状カバー40のカバー後端連結部42は、ホース接続筒部11と機器接続筒部30との連結部分にまたがって嵌合され、機器接続筒部30の前端連結部31の外周面と前後方向H0で凹凸係合する。また、筒状カバー40のカバー後端連結部42の内周面には、ホース接続筒部11の後端連結部13の外周面の段差部に前側から当接する段差部が設けられていて、これら段差部が当接することで、機器接続筒部30に対するホース接続筒部11の抜け止めが補強されている。
【0017】
筒状カバー40のうちカバー後端連結部42より前側部分、即ち、膨出部43が含まれる部分は、ホース接続筒部11の筒状挿入部12を包囲する包囲部41になっている。包囲部41内には、図1に示すホースクランプ60とクリップ70とが収容される。そして、ホースクランプ60とクリップ70を包囲部41内に留めるために、筒状カバー40の前端部にはキャップ50が嵌合され、キャップ50により筒状カバー40の前端開口が覆われている。キャップ50には、ベース筒部80と同軸に配置され、ホース90を筒状カバー40内に挿入するためのホース挿通孔51Aが貫通形成されている。ホース挿通孔51Aには、筒状挿入部12の前端部が挿通され、ホース挿通孔51Aの内周面と筒状挿入部12の外周面との間には、ホース90を挿入可能な隙間が設けられている。なお、例えば、筒状挿入部12の前端面とキャップ50の前端面とは略面一になっている。本実施形態の例では、キャップ50は、樹脂製の成形品であるが、例えば金属製であってもよい。
【0018】
図5に示すように、ホースクランプ60は、例えば、帯状板金を丸めてなり、リング状をなしている。ホースクランプ60は、その径方向外側に突出する1対のつまみ片63A,63Bを両端部に備え、それら端部同士が交差した構成になっている。なお、例えば、ホースクランプ60の一端部には、貫通孔61Kが形成され、その貫通孔61Kに、ホースクランプ60の幅狭になった他端部のつまみ片63Bが挿通されて突出し、ホースクランプ60の両端部が交差している。
【0019】
図4に示すように、クリップ70は、例えば板金を略直角に曲げてなり、ホースクランプ60に後側から重ねられる支持ベース71の上端部から前方に1対の挟持片72が延びた構成になっている。また、支持ベース71には、筒状挿入部12をまたぐように下側に開脚した1対の被押圧片73が備えられている(図4参照)。
【0020】
図1及び図4に示すように、膨出部43には、ホースクランプ60の1対のつまみ片63A,63Bとクリップ70の上部が収容される。ホースクランプ60は、包囲部41の内面に形成された段差面44と、キャップ50の後面とに挟まれ、包囲部41内で前後方向H0で位置決めされる(図1参照)。
【0021】
ホースクランプ60は、1対のつまみ片63A,63Bを挟持して近づけると、弾性変形して拡径状態になる。そして、クリップ70は、ホース90の未挿入時には、1対のつまみ片63A,63Bを1対の挟持片72で挟むように配置され、1対のつまみ片63A,63Bが互いに離れることを規制して、ホースクランプ60を拡径状態に保持する(図4参照)。この拡径状態のときに、ホース90がホース挿通孔51Aから筒状挿入部12とホースクランプ60との間に挿入されて、ホース90によりクリップ70が押されると、ホースクランプ60からクリップ70が外れて1対のつまみ片63A,63Bの挟持が解除される。すると、ホースクランプ60が、弾性復帰して縮径状態となり、ホース90を締め付けて筒状挿入部12の外面に押し付ける(図5及び図6参照)。
【0022】
なお、詳細には、上述のようにホース90が挿入されると、図7(A)から図7(B)への変化に示すように、ホース90によりクリップ70の1対の被押圧片73が押される。すると、1対の挟持片72のうち1対のつまみ部63A,63Bを挟持している部分を支点にして支持ベース71が上側に向かうようにクリップ70が回動する。そして、クリップ70が膨出部43の内面に当接すると、1対の挟持片72を下側に移動させるようにクリップ70がさらに回動する。これにより、1対の挟持片72が1対のつまみ片63A,63Bから外れ、クリップ70が外れる。なお、1対の挟持片72のうち一方の挟持片72は、他方の挟持片72よりも短くなっていて、この短い方の一方の挟持片72が、狭幅のつまみ片63B側に配置される(図4参照)。これにより、一方の挟持片72から狭幅のつまみ片63Bを外れ易くすることが可能となる。
【0023】
ここで、本実施形態のホース接続部の構造10は、筒状挿入部12と、筒状挿入部12の外面から突出するシール用環状突部20(以下、単に「環状突部20」と適宜呼ぶこととする。)と、を有している(図8及び図9参照)。環状突部20は、上述のようにホースクランプ60によってホース90が筒状挿入部12に締め付けられると、ホース90の内面に食い込み、ホース90と筒状挿入部12との間をシールする(図6参照)。次に、環状突部20の構成について詳説する。
【0024】
図10及び図11に示すように、本実施形態の例では、環状突部20は、その突出先端(即ち、中心軸J1から最も離れた部分)が、環状突部20の後端部に配置される形状をなしている。環状突部20は、その前端部から後端部に向かうにつれて、筒状挿入部12からの突出量を徐々に大きくする形状(即ち、中心軸J1から外周面が徐々に離れる形状)になっていて、断面視で(詳細には、筒状挿入部12の周方向の任意の位置で径方向に切った断面を見たときに)略三角形状になっている。また、環状突部20のうち前側を向く面は、中心軸J1に対して傾斜した環状の斜面21となっていると共に、環状突部20のうち後側を向く面は、筒状挿入部12の外周面から起立した段差面22になっている。
【0025】
本実施形態の例では、環状突部20は、周方向で、前後方向H0の幅が変化する形状になっている。環状突部20の前端線24は、中心軸J1に対して垂直な仮想平面内に配置されかつ中心軸J1を中心とする円形になっている。一方、環状突部20の後端部にある突出先端の稜線23の全体は、中心軸J1に対して傾斜している。環状突部20の稜線23は、前後方向H0(中心軸J1方向)から見ると、中心軸J1を中心とする円形になっていて、環状突部20の突出先端と中心軸J1と距離は、一定の嵌合半径Rになっている(図13及び図14参照)。環状突部20の斜面21は、周方向で、前後方向H0の幅が変化すると共に勾配も変化する形状になっている。斜面21の勾配は、斜面21の幅が最小となった部分で最大となり、斜面21の幅が最大となった部分で最小となっている。なお、環状突部20の稜線23は、環状突部20のうち中心軸J1から最も離れた先端点を中心軸J1回りにつなげた線である。
【0026】
図10に示すように、本実施形態の例では、環状突部の稜線23は、中心軸J1に直交する所定の第1方向(本実施形態の例では、上下方向H1)の一方側(例えば上側)に向かうにつれて、前後方向H0の一方側(前側又は後側)に向かうように形成されている。即ち、環状突部20の稜線23のうち最も前側にある前端点Pと、稜線23のうち最も後側にある後端点Qとが、稜線23における最も離れた2点となっている。前端点Pと後端点Qとを結ぶ線分は、稜線23における2点間を結ぶ線分で最も長い長軸Tになっていて、中心軸J1に対して斜めに交差する。本実施形態の例では、環状突部20及び斜面21の前後方向H0の幅は、周方向で、前端点Pを含む位置で最小となると共に後端点Qを含む位置で最大となっている。
【0027】
図10に示すように、本実施形態の例では、環状突部20の稜線23は、前後方向H0及び第1方向(上下方向H1)と直交する第2方向(以下、横方向H2という。図12参照)から見たときに、環状突部20の長軸Tに対して前側に凸となるように湾曲している。従って、環状突部20の稜線23が、仮想平面内に配される完全な楕円形になっている場合に比べて、前端点P付近及び後端点Q付近で環状突部20の突出先端を尖らせ易くすることが可能となり、環状突部20をホース90の内面に食い込み易くすることが可能となる。なお、環状突部20の稜線23を下側から見た図12に示すように、環状突部20の稜線23は、上下方向H1で後端点Q側から見ると、後側に凸となるように湾曲している。なお、環状突部20の稜線23は、長軸Tに対して、横方向H2で対称になっている。
【0028】
図10に示すように、環状突部20は、前後方向の複数個所に設けられている。本実施形態の例では、前側の第1の環状突部20Aと後側の第2の環状突部20Bとの2つが設けられていて、これら環状突部20A,20Bの稜線23の全体は、中心軸J1に対して互いに反対側に傾斜している。詳細には、横方向H2から見たときに、第1の環状突部の稜線23の長軸Tと、第2の環状突部20Bの稜線23の長軸Tとが、中心軸J1に対して互いに反対側に傾斜している。本実施形態の例では、これら長軸Tは、同じ仮想平面内に配置される。
【0029】
第1の環状突部20Aの稜線23全体は、上下方向H1で上側に向かうにつれて後側に向かうように傾斜している。第2の環状突部20Bの稜線23全体は、上下方向H1で上側に向かうにつれて前側に向かうように傾斜している。本実施形態の例では、第1と第2の環状突部20A,20Bの前端線は、円環状をなし、それぞれ中心軸J1に垂直な仮想平面内に配される。第1の環状突部20Aの前端線は、筒状挿入部12の前端部に位置している。第2の環状突部20Bの前端線24は、筒状挿入部12における前後方向H0の途中に位置している。
【0030】
なお、本実施形態の例では、筒状挿入部12のうち第2環状突部20Bよりも後側には、一定の外径を有する円筒部12Sが形成され、円筒部12Sの外周面のうち前寄り位置からは、円環状突部15が突出している。円環状突部15は、後側に向かうにつれて拡径されるテーパ状に形成されている。円環状突部15の突出先端部は、例えば、R面取りされている。
【0031】
ところで、従来のホース接続部の構造では、環状突部20がホース90に十分に食い込んでシールが図られるまでに時間を要する。例えば、このようなことは、ホース90が曲げられた状態で設置される場合等に特に顕著に見られる。そのため、筒状挿入部12をホース90に接続してすぐに流体を流す等の使用を行うことができないことが問題になっていた。そこで、本実施形態のホース接続部の構造10は、筒状挿入部12をホース90に接続してすぐに流体を流して使用可能とするための以下の特徴的な構成を有している。
【0032】
具体的には、図10に示すように、筒状挿入部12の外周面に、ホース90と筒状挿入部12との間をシールする弾性リング29が嵌着されている。本実施形態の例では、弾性リング29は、Оリングになっている。また、本実施形態の例では、弾性リング29は、第1と第2の環状突部20A,20Bの間に配置されている。
【0033】
弾性リング29は、筒状挿入部12の周方向に延びる環状溝29U(図15(A)及び図15(B)参照)に受容されている。環状溝29Uは、筒状挿入部12の外周面から突出する1対の溝形成突部27の相互間に形成されていて、本実施形態では、Оリング溝になっている。溝形成突部27は、筒状挿入部12の外周面の周方向全体から突出すると共に、前後方向H0で互いに対向している。溝形成突部27の対向面27M,27Mは、筒状挿入部12の外周面に対して起立した段差面になっていて、本実施形態の例では、互いに平行になっている(中心軸J1に対して垂直になっている)。溝形成突部27は、断面視で(詳細には、筒状挿入部12の周方向の任意の位置で径方向に切った断面を見たときに)略直角三角形状になっていて、前後方向H0で互いに近い側の端部を突出先端部として、互いに離れる側に徐々に突出量を小さくするように形成されている。即ち、溝形成突部27の外周面のうち互いに離れた側には、中心軸J1に対して傾斜する環状の斜面27Aが形成されている。溝形成突部27の突出先端の稜線は、中心軸J1を中心とする円形になっている。溝形成突部27の突出先端部は、例えば、R面取りされている。
【0034】
本実施形態の例では、後側の溝形成突部27は、円環状をなし、その径方向が中心軸J1と垂直になるように形成され、突出先端部である前端部から後端に向かって縮径されるテーパ状の外周面を有している。また、後側の溝形成突部27の前後方向の幅は、筒状挿入部12の周方向で均一になっている。
【0035】
本実施形態の例では、前側の溝形成突部27は、その後端面である対向面27M(図15(A)参照)が中心軸J1に対して垂直になって前後方向H0の一箇所に位置するように配置される一方で、前側の溝形成突部27の環状の前端線27Fは、第1の環状突部20Aの稜線23に沿って形成され、中心軸J1に対して傾斜している。そのため、前側の溝形成突部27は、筒状挿入部12の周方向で、前後方向H0の幅が変化する形状になっている。前側の溝形成突部27の幅は、上端部で最も狭く、下端部で最も広くなっている。前側の溝形成突部27のうち前側を向く面は、中心軸J1に対して傾斜した上述の環状の斜面27Aとなっている。この斜面27Aは、周方向で、前後方向H0の幅が変化すると共に勾配も変化する形状になっている。斜面27Aの勾配は、斜面27Aの幅が最小となった部分(上端部)で最大となり、斜面27Aの幅が最大となった部分(下端部)で最小となっている。
【0036】
図13及び図14に示すように、溝形成突部27の突出先端と中心軸J1との距離である嵌合半径M(即ち、溝形成突部27の最大外径)は、環状突部20の上記嵌合半径R以下になっている。本実施形態の例では、嵌合半径Mは、環状突部20の嵌合半径Rよりも小さくなっているが、同じであってもよい。また、本実施形態の例では、溝形成突部27の嵌合半径Mは、円環状突部15の外径よりも大きくなっている。なお、1対の溝形成突部27の嵌合半径Mは、互いに異なっていてもよい。また、第1と第2の環状突部20の嵌合半径Rは、互いに異なっていてもよい。
【0037】
ここで、弾性リング29は、筒状挿入部12の外周面から突出し、その突出先端と中心軸J1との距離である嵌合半径L(即ち、弾性リング29の外径)は、環状突部20の嵌合半径Rと、溝形成突部27の嵌合半径Mとの何れよりも大きくなっている。従って、筒状挿入部12がホース90の内側に挿入されると、弾性リング29は、ホース90の内面に密着して、ホース90と筒状挿入部12との間をシールする(図6参照)。
【0038】
本実施形態のホース接続部の構造10では、ホースクランプ60により、第1と第2の環状突部20A,20Bと溝形成突部27とが(従って弾性リング29も)、外側から覆われる。ホースクランプ60に覆われる範囲に、第1と第2の環状突部20A,20Bの少なくとも一部が含まれることが好ましく、第1と第2の環状突部20A,20Bの全体が含まれることがより好ましい。
【0039】
なお、本実施形態の例では、環状突部20及び溝形成突部27が、横方向H2に型抜き可能な形状になっている。従って、ホース接続筒部11を射出成形により形成する場合には、ホース接続筒部11を成形する金型を、横方向H2に型抜きすることで、環状突部20及び溝形成突部27の形成を容易に行うことが可能となる。
【0040】
本実施形態のホース接続部の構造10では、ホース90の内側に筒状挿入部12を挿入してホース90と筒状挿入部12とが接続されると、筒状挿入部12の外面から突出するシール用環状突部20がホース90に食い込むことによって、ホース90と筒状挿入部12との間がシールされると共に、筒状挿入部12の外面から突出する1対の溝形成突部27の間の環状溝29Uに受容された弾性リング29がホース90の内面に密着することによってもホース90と筒状挿入部12との間がシールされる。ここで、ホース90が硬いため等でシール用環状突部20がホース90に十分に食い込んでシールが図られるまでに時間を要したとしても、弾性リング29の嵌合半径Lはシール用環状突部20の嵌合半径Rより大きいので、シール用環状突部20がホース90に十分に食い込んでいるか否かに拘わらず、弾性リング29がホース90の内面に密着してホース90と筒状挿入部12との間がシールされる。これにより、本実施形態のホース接続部の構造10によれば、筒状挿入部12をホース90に接続してすぐに流体を流して使用することが可能になる。
【0041】
本実施形態では、弾性リング29がOリングなので、ホース90と筒状挿入部12との間のシールが容易となる。また、弾性リング29が1対の環状突部20の間に配置されるので、弾性リング29がホース90により変形し過ぎることを抑制可能となり、弾性リング29の耐久性を向上させることが可能となる。しかも、ホース90に弾性リング29が進入するときには、ホース90が第1の環状突部20Aによって既に拡径されているので、既に拡径されていない場合に比べて、スムーズに弾性リング29をホース90に進入させることが可能となる。また、弾性リング29を挟んで対向する1対の溝形成突部27の対向面27M同士が平行になっているので、弾性リング29を環状溝29Uから外れ難くすることが可能となる。また、1対の溝形成突部27のうち互いに反対側を向く面が、互いに反対側に(即ち、第1と第2の環状突部20A,20B側に)、1対の溝形成突部27の突出量を小さくするように傾斜するので、ホース90の挿入時にホース90が引っ掛かり難くなるとともに弾性リング29の脱落もし難くなる。また、環状突部20がホース90に食い込み難くなることを抑えることが可能となる。
【0042】
本実施形態では、環状突部20の突出先端の稜線23全体が、筒状挿入部12の中心軸J1に対して傾斜している。従って、環状突部20の突出先端の稜線23全体が、筒状挿入部12の軸方向の1箇所に配置される場合に比べて、筒状挿入部12をホース90に挿入するときの挿入抵抗を小さくすることが可能となる。また、環状突部20は、稜線23と前端線24が非平行で、斜面21の勾配が周方向で変化した形状になっている。従って、斜面21の勾配が最も小さい部位では、ホース接続筒部11のホース90への挿入性を向上させることが可能となり、斜面21の勾配が最も大きな部位では、環状突部20の先端角部の角度が鋭くなって、ホース90の内面に対する係止力を高くすることが可能となる。
【0043】
また、前側の環状突部20Aの稜線23は、前後方向(中心軸J1方向か)ら見て円形になっているので、環状突部20の全体がホース90に進入すると、環状突部20の周方向の全体が略均等にホース90の内周面に押し付けられ、高いシール性を得ることが可能となる。また、溝形成突部27と環状突部20とが、ホース90を介して外側からホースクランプ60により覆われる範囲にあるので、ホースクランプ60の締め付けによって、環状突部20のシール性を高めることが可能となる。
【0044】
第1と第2の環状突部20A,20Bがホース90に進入してからさらに筒状挿入部12のホース90への挿入が進むと、ホース90が円環状突部15に到達する。このとき、ホース90は、円環状突部15より外径が大きな環状突部20A,20Bによって既に拡径されているのでスムーズに円環状突部15をホース90に進入させることが可能となる。また、円環状突部15の突出先端がR面取りされていることで、円環状突部15をスムーズにホース90に進入させることができる。円環状突部15によって、ホース90のホース接続筒部11に対する傾斜が抑制可能となる。
【0045】
ホース90は、円環状突部15が内部に進入したところで、図7(A)に示すようにクリップ70の被押圧片73に当接する。そして、さらにホース90が挿入されることで、上述の通りクリップ70によるホースクランプ60の保持が解除され、ホースクランプ60が縮径変形してホース90を締め付けてホース接続筒部11に固定する(図6参照)。このように、本実施形態では、ホース90をホース挿通孔15Aから筒状カバー40内に挿通して、筒状挿入部12をホース90に挿入するだけで、ホース90がクリップ70を押してホースクランプ60からクリップ70を外し、ホースクランプ60によってホース90を筒状挿入部12に固定することができる。
【0046】
また、第1と第2の環状突部20A,20Bの稜線23全体が、筒状挿入部12の中心軸J1に対して互いに反対側に傾斜しているので、ホース90を筒状挿入部12に対して回転し難くすることができ、ホース90を筒状挿入部12から抜け難くすることが可能となる。
【0047】
[他の実施形態]
(1)弾性リング29は、Оリングに限定されるものではなく、例えば、オイルシールであってもよいし、外周面にリップが突出した構造のものであってもよい。弾性リング29は、径方向に切った断面が四角形状のものであってもよい。
【0048】
(2)上記実施形態では、環状突部20が、2つ設けられていたが、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。環状突部20が複数設けられる場合、それら複数の環状突部20は、1対の溝形成突部27を挟んだ2箇所を含む前後方向の複数個所に配置されていてもよいし、1対の溝形成突部27に対して前後方向の一方側にのみ配置されていてもよい。
【0049】
(3)上記実施形態では、溝形成突部27が、断面略直角三角形状であったが、これに限定されるものではなく、例えば、断面四角形状であってもよい。
【0050】
(4)筒状カバー40が、継手100及びホース接続部の構造10に設けられていなくてもよい。また、ホース接続部の構造10に、クリップ70が設けられていなくてもよいし、クリップ70及びホースクランプ60が設けられていなくてもよい。また、ホースクランプ60の代わりに、例えば、ウォーム螺子で締め付け操作を行うタイプのホースクランプや、結束バンドのようにラッチ構造にて締め付け状態を保持するホースクランプを使用してもよい。
【0051】
(5)上記実施形態では、継手100の後端部に、配管機器99と接続される機器接続筒部30が設けられていたが、継手100の後端部にも、例えば筒状挿入部12と同様のものを有してホースと接続されるホース接続筒部が設けられていてもよい。
【0052】
(6)上記実施形態では、ホース接続部の構造10が、継手100に設けられていたが、ホース接続部の構造10が、流体機器の一部を構成してもよく、この場合、流体機器から筒状挿入部12を突出させた構造であってもよい。
【0053】
(7)上記各実施形態では、環状突部20の稜線23が、三次元的に湾曲した形状であったが、稜線23が、三次元的に湾曲又は屈曲することなく、二次元平面に収まる形状をなしていてもよい。また、三次元的に湾曲した稜線23を有する環状突部20と、二次元平面に収まる稜線23を有する環状突部20とが混在していてもよい。
【0054】
(8)上記実施形態では、環状突部20の稜線23全体が、中心軸J1に対して傾斜しているが、少なくとも1つの環状突部20の稜線23全体が、中心軸J1に対して垂直になっていてもよい(即ち、中心軸J1に垂直な仮想平面内に配置されていてもよい)。また、複数の環状突部20の稜線23が、中心軸J1に対して同じ側に傾斜していてもよい。
【0055】
(9)上記実施形態において、環状突部20の前端線の全体が、中心軸J1に対して傾斜していてもよい。この場合、環状突部20の稜線23全体は、中心軸J1に対して垂直になっていてもよいし、傾斜していてもよい(例えば、環状突部20の前端線と平行であってもよい)。
【0056】
(10)上記実施形態では、筒状挿入部12の前端面が、キャップ50の前面と略面一に配置されていたが、キャップ50の前面より突出してもよいし、キャップ50の前面より後端側に配置されていてもよい。
【0057】
<付記>
以下、上記実施形態から抽出される特徴群について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。
【0058】
例えば、以下の特徴1~9は、「ホースの内側に挿入される筒状挿入部の外面に環状突部を備えるホース接続部の構造及び継手」に関し、「従来、この種のホース接続部の構造として、環状突部をホースに食い込ませてホースと筒状挿入部との間をシールするものが知られている(例えば、特開2000-111066号公報(図2等)参照)。」という背景技術について、「しかしながら、上記した従来のホース接続部の構造では、環状突部がホースに十分に食い込んでシールが図られるまでに時間を要するので、筒状挿入部をホースに接続してすぐに流体を流す等の使用を行うことができないことが問題になっていた。そこで、本開示では、筒状挿入部をホースに接続してすぐに流体を流して使用することが可能なホース接続部の構造及び継手を提供する。」という課題をもってなされたものと考えることができる。
【0059】
[特徴1]
ホースの内側に挿入される筒状挿入部と、
前記筒状挿入部の外面から突出して前記ホースに食い込み、前記ホースと前記筒状挿入部との間をシールするシール用環状突部と、
前記筒状挿入部の外面から突出し、その突出先端と前記筒状挿入部の中心軸との距離である嵌合半径が前記シール用環状突部の前記嵌合半径以下であると共に、前記筒状挿入部の軸方向で対向して相互間に環状溝を形成する1対の溝形成突部と、
前記環状溝に受容されてかつ前記シール用環状突部及び前記溝形成突部の前記嵌合半径より大きい前記嵌合半径を有し、前記ホースの内面に密着して前記ホースと前記筒状挿入部との間をシールする弾性リングと、を備えるホース接続部の構造。
【0060】
特徴1のホース接続部の構造では、ホースの内側に筒状挿入部を挿入してホースと筒状挿入部とが接続されると、筒状挿入部の外面から突出するシール用環状突部がホースに食い込むことによって、ホースと筒状挿入部との間がシールされると共に、筒状挿入部の外面から突出する1対の溝形成突部の間の環状溝に受容された弾性リングがホースの内面に密着することによってもホースと筒状挿入部との間がシールされる。ここで、ホースが硬いため等でシール用環状突部がホースに十分に食い込んでシールが図られるまでに時間を要したとしても、弾性リングの嵌合半径はシール用環状突部の嵌合半径より大きいので、シール用環状突部がホースに十分に食い込んでいるか否かに拘わらず、弾性リングがホースの内面に密着してホースと筒状挿入部との間がシールされる。これにより、特徴1のホース接続部の構造によれば、筒状挿入部をホースに接続してすぐに流体を流して使用することが可能になる。
【0061】
[特徴2]
前記1対の溝形成突部は、共に断面略直角三角形をなし、それら溝形成突部の互いに対向する面が平行になっている、特徴1に記載のホース接続部の構造。
【0062】
特徴2では、溝形成突部の対向面同士が平行になっているので、弾性リングを環状溝から外れ難くすることが可能となる。
【0063】
[特徴3]
前記弾性リングは、Oリングであり、前記環状溝は、Oリング溝である、特徴1又は2に記載のホース接続部の構造。
【0064】
特徴3では、弾性リングがOリングなので、ホースと筒状挿入部との間のシールが容易となる。
【0065】
[特徴4]
前記シール用環状突部の突出先端の稜線全体が、前記筒状挿入部の中心軸に対して傾斜している、特徴1から3の何れか1の特徴に記載のホース接続部の構造。
【0066】
特徴4では、シール用環状突部の突出先端の稜線全体が、軸筒状挿入部の軸方向の1箇所に配置される場合に比べて、筒状挿入部をホースに挿入するときの挿入抵抗を小さくすることが可能となる。
【0067】
[特徴5]
前記シール用環状突部は、前記1対の溝形成突部を間に挟んだ2箇所を含む前記筒状挿入部の軸方向の複数箇所に配置されている、特徴1から4の何れか1の特徴に記載のホース接続部の構造。
【0068】
特徴5では、弾性リングが1対のシール用環状突部の間に配置されるので、弾性リングがホースにより変形し過ぎることを抑制可能となり、弾性リングの耐久性を向上させることが可能となる。また、ホースに弾性リングが進入するときには、ホースが1つのシール用環状突部によって既に拡径されているので、既に拡径されていない場合に比べて、スムーズに弾性リングをホースに進入させることが可能となる。
【0069】
[特徴6]
前記2箇所に配置されている1対の前記シール用環状突部の突出先端の稜線全体は、前記筒状挿入部の中心軸に対して互いに反対側に傾斜している、特徴5に記載のホース接続部の構造。
【0070】
特徴6によれば、ホースを筒状挿入部に対して回転し難くすることができ、ホースを筒状挿入部から抜け難くすることが可能となる。
【0071】
[特徴7]
前記ホースを外側から前記筒状挿入部に締め付け、前記溝形成突部と前記シール用環状突部とを前記ホースを介して外側から覆うホースクランプを備える、特徴1から6の何れか1の特徴に記載のホース接続部の構造。
【0072】
特徴7では、溝形成突部とシール用環状突部とが、ホースを介して外側からホースクランプにより覆われる範囲にあるので、ホースクランプの締め付けによって、シール用環状突部のシール性を高めることが可能となる。
【0073】
[特徴8]
前記ホースクランプは、ホース未挿入時には拡径状態に弾性変形してクリップに保持され、ホース挿入時に前記クリップによる保持が解除されて弾性復帰し、前記ホースを締め付ける構造をなし、
前記筒状挿入部を包囲し、内側に前記ホースクランプと前記クリップとを収容する筒状カバーと、
前記筒状カバーの先端部に嵌合されて、前記ホースクランプ及び前記クリップを抜け止めすると共に前記ホースが挿通されるホース挿通孔を有するキャップと、を備え、
前記クリップが、前記筒状挿入部の外側に挿入される前記ホースに押されて前記ホースクランプから外れる、特徴7に記載のホース接続部の構造。
【0074】
特徴8では、ホースをホース挿通孔から筒状カバー内に挿通して、筒状挿入部をホースに挿入するだけで、ホースがクリップを押してホースクランプからクリップを外し、ホースクランプによってホースを筒状挿入部に固定することができる。
【0075】
[特徴9]
特徴1から8の何れか1の特徴に記載のホース接続部の構造を有する継手。
【0076】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0077】
10 ホース接続部の構造
11 ホース接続筒部
12 筒状挿入部
20 環状突部
27 溝形成突部
29 弾性リング
29U 環状溝
40 筒状カバー
50 キャップ
60 ホースクランプ
70 クリップ
100 継手
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15