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特許7597647シミュレーションモデル生成装置、シミュレーションモデル生成方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】シミュレーションモデル生成装置、シミュレーションモデル生成方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/20 20200101AFI20241203BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20241203BHJP
【FI】
G06F30/20
G06F30/10 100
G06F30/10 200
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021089867
(22)【出願日】2021-05-28
(65)【公開番号】P2022182352
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2024-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】永井 裕
(72)【発明者】
【氏名】大稔 真斗
(72)【発明者】
【氏名】宇都木 契
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-266000(JP,A)
【文献】特開2013-045254(JP,A)
【文献】特開2003-281219(JP,A)
【文献】特開平02-129764(JP,A)
【文献】特開2013-122644(JP,A)
【文献】特開2000-137740(JP,A)
【文献】特開2016-132538(JP,A)
【文献】特開2019-016180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/398
B25J 1/00 -21/02
G05B 19/4097-19/4099
G06T 17/00 -19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3DCADモデルからのシミュレーションモデル生成装置において、
前記3DCADモデルを構成する各部品要素間の接触面数を判定する接触面数判定部と、
前記3DCADモデルを用いて、前記部品要素間の共有回転軸の有無を判定する共有回転軸判定部と、
前記接触面数および前記共有回転軸の有無に従って、非接触、固定、スライドおよび回転のいずれかを示す前記部品要素間の接続関係を特定する接続関係特定部を有するシミュレーションモデル生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシミュレーションモデル生成装置において、
さらに、前記接続関係を用いて、前記3DCADモデルにおける動作機構を特定する動作機構解析部を有するシミュレーションモデル生成装置。
【請求項3】
請求項2に記載のシミュレーションモデル生成装置において、
前記動作機構解析部は、複数の前記接続関係が閉ループを示す場合、当該閉ループに該当するリンク機構を、前記動作機構として特定するシミュレーションモデル生成装置。
【請求項4】
請求項3に記載のシミュレーションモデル生成装置において、
前記動作機構解析部は、前記閉ループを、深さ優先探索法を用いて、特定するシミュレーションモデル生成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のシミュレーションモデル生成装置において、
さらに、利用者から前記接続関係の特定に関する入力を受け付ける入力部を有し、
前記接続関係特定部は、前記入力に基づいて、前記接続関係を特定するシミュレーションモデル生成装置。
【請求項6】
3DCADモデルからのシミュレーションモデル生成方法において、
接触面数判定部により、前記3DCADモデルを構成する各部品要素間の接触面数を判定し、
共有回転軸判定部により、前記3DCADモデルを用いて、前記部品要素間の共有回転軸の有無を判定し、
接続関係特定部により、前記接触面数および前記共有回転軸の有無に従って、非接触、固定、スライドおよび回転のいずれかを示す前記部品要素間の接続関係を特定するシミュレーションモデル生成方法。
【請求項7】
請求項6に記載のシミュレーションモデル生成方法において、
さらに、動作機構解析部により、前記接続関係を用いて、前記3DCADモデルにおける動作機構を特定するシミュレーションモデル生成方法。
【請求項8】
請求項7に記載のシミュレーションモデル生成方法において、
前記動作機構解析部により、複数の前記接続関係が閉ループを示す場合、当該閉ループに該当するリンク機構を、前記動作機構として特定するシミュレーションモデル生成方法。
【請求項9】
請求項8に記載のシミュレーションモデル生成方法において、
前記動作機構解析部により、前記閉ループを、深さ優先探索法を用いて、特定するシミュレーションモデル生成方法。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれかに記載のシミュレーションモデル生成方法において、
さらに、入力部により、利用者から前記接続関係の特定に関する入力を受け付け、
前記接続関係特定部により、前記入力に基づいて、前記接続関係を特定するシミュレーションモデル生成方法。
【請求項11】
コンピュータである装置を構成する3DCADモデルからのシミュレーションモデル生成装置を、
前記3DCADモデルを構成する各部品要素間の接触面数を判定する接触面数判定部と、
前記3DCADモデルを用いて、前記部品要素間の共有回転軸の有無を判定する共有回転軸判定部と、
前記接触面数および前記共有回転軸の有無に従って、非接触、固定、スライドおよび回転のいずれかを示す前記部品要素間の接続関係を特定する接続関係特定部として機能させるためのプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のプログラムにおいて、
さらに、前記接続関係を用いて、前記3DCADモデルにおける動作機構を特定する動作機構解析部として機能させるためのプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のプログラムにおいて、
前記動作機構解析部は、複数の前記接続関係が閉ループを示す場合、当該閉ループに該当するリンク機構を、前記動作機構として特定するプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のプログラムにおいて、
前記動作機構解析部は、前記閉ループを、深さ優先探索法を用いて、特定するプログラム。
【請求項15】
請求項11乃至14のいずれかに記載のプログラムにおいて、
さらに、利用者から前記接続関係の特定に関する入力を受け付ける入力部として機能させ、
前記接続関係特定部は、前記入力に基づいて、前記接続関係を特定するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設計などに用いられる3次元CADの構造モデルデータの示す装置を構成する部品要素の接続関係を特定する技術に関する。この中でも特に、特定された接続関係を用いて、シミュレーションモデルを生成するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
装置における部品要素の接続関係を把握するための技術として、特許文献1が提案されている。特許文献1では、「互いに接触する部品どうしの固定状態を確認すること」を目的としている。
【0003】
この目的を達成するために、特許文献1では、「3次元CADで表される製品を構成する複数の部品のうち、互いに接触する部品の一方を被接触部品、他方を接触部品とし、被接触部品における接触部品が接触する被接触面を特定する。接触部品特定部14は、被接触面に接触する接触部品を特定する。固定状態判定部15は、接触部品特定部によって特定された接触部品を、被接触面に沿った複数の方向及び被接触面に直交する方向に移動させて、接触部品が接触部品以外の他の部分に接触するか否かに基づいて、被接触部品に対する接触部品の固定状態を判定する。表示制御部16は、製品画像を固定状態判定部によって判定された固定状態に応じた表示態様で表示部に表示するよう制御する。」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-016180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、設計のために、シミュレーションなどで検証を行うことがなされている。この設計には、物流や製造に関する装置、装置の組み合わせで実現されるシステムや装置・システムを利用した工程などが含まれる。このような検証においては、試作を行う前により早い段階で詳細な検証を行うことが、設計の製造期間の短縮化などの観点から求められる。しかしながら、シミュレーションモデルを手動で構築すると、より多くの時間を要してしまう。
【0006】
そこで、このような検証のために、特許文献1に記載された技術を用いて、部品要素の接続関係を把握することが考えられる。ここで、特許文献1では、指定された部品を所定の方向に動かした場合に接触する部品を検出することで、指定された部品の固定状態を自動的に抽出することが開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1では、部品要素間の固定状態しか把握できず、より実態に即した検証を行うことが困難であった。そこで、本発明では、部品要素間の接続関係をより詳細に特定し、装置などの検証を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、一例として特許請求の範囲に記載の発明により解決される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、装置における部品要素間の接続関係をより詳細に特定でき、装置などの検証を正確に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施例における処理を示すフローチャート
図2】本発明の一実施例におけるステップS102の詳細を説明するための具体例を示す図
図3】本発明の一実施例におけるステップS105、S106およびS108の具体例を示す図
図4】本発明の一実施例における接触面の有無の判定の具体例を示す図
図5】本発明の一実施例におけるコンポーネント1の3DCAD情報に含まれる3DCADモデルを示す図
図6】本発明の一実施例のコンポーネント1における各部品要素間の接触面の数の判定処理を説明する図
図7】本発明の一実施例におけるコンポーネント1の接触面を判定した結果を示す接触面数表
図8】本発明の一実施例におけるコンポーネント1の接触関係を示す接続関係表
図9】本発明の一実施例におけるコンポーネント1のツリー図
図10】本発明の一実施例におけるコンポーネント2の3DCAD情報に含まれる3DCADモデルを示す図
図11】本発明の一実施例のコンポーネント2における各部品要素間の接触面の数の判定処理を説明する図
図12】本発明の一実施例におけるコンポーネント2の接触面を判定した結果を示す接触面数表
図13】本発明の一実施例におけるコンポーネント2の接触関係を示す接続関係表
図14】本発明の一実施例におけるコンポーネント2のツリー図
図15】本発明の一実施例における深さ優先探索法の概念を示す図
図16】本発明の一実施例において、深さ優先探索法を、図14のツリー図に適用した例を示す図
図17】本発明の一実施例におけるユーザーインターフェースに関する処理フローを示すフローチャート
図18】本発明の一本実施例におけるシミュレーションモデル生成装置の機能ブロック図
図19】本発明の一本実施例におけるシステム構成図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について説明する。本実施例では、構造モデルデータとして、設計用の3DCAD情報を用いて、接続関係を特定し、シミュレーションモデルを生成する例を用いて説明する。
<構成>
まず、本実施例の構成を説明する。図18に、本実施例におけるシミュレーションモデル生成装置18の機能ブロック図を示す。図18において、シミュレーションモデル生成装置18は、3DCAD情報入力部1801、構成部品解析部1802、共有回転軸判定部1803、接触面数判定部1804、接続関係特定部1805、動作機構解析部1806、入出力部1807およびこれらを接続するバス1808を有する。以下、各構成の機能について説明するが、その詳細は、図1に示すフローチャートを用いて、後述する。また、本実施例では、シミュレーションモデル生成装置18を例として説明するが、シミュレーションモデルの生成を省略して、接続関係特性装置として構成してもよい。
【0012】
まず、3DCAD情報入力部1801は、3DCAD情報の入力を受け付ける。3DCAD情報は、検証対象の装置(コンポーネント)の設計情報であり、コンポーネントの形状、大きさやこれを構成する部品設置位置に関する情報である。
【0013】
また、3DCAD情報は、シミュレーションモデル生成装置18の図示しない記憶部や他装置の記憶部に格納されているものとする。このように、3DCAD情報入力部1801は、インターフェース機能を有するものである。
【0014】
次に、構成部品解析部1802は、入力された3DCAD情報を解析し、コンポーネントを構成する各部品要素に分解する。なお、部品要素には、コンポーネント自身、部品要素、部品の組み合わせであるモジュールが含まれ、構成要素とも表現できる。
【0015】
次に、共有回転軸判定部1803は、構成部品解析部1802によって解析された各部品要素同士での共有回転軸の有無を判定する。より詳細には、共有回転軸判定部1803は、部品要素間における中心を共有する円の有無の判定処理を行う。これは、後述する図1のステップS102である。さらに、共有回転軸判定部1803は、共有軸が2以上あるか(図1のステップS104)を実行することが望ましい。
【0016】
次に、接触面数判定部1804は、各部品要素間における接触面数を判定する。つまり、接触面数判定部1804は、接触面数を計数する。より詳細には、後述する図1のステップS103を実行する。この結果、図7図12に示す接触面数表が生成される。これらについては、後述する。
【0017】
次に、接続関係特定部1805は、各部品要素同士の接触面数及び共通回転円の有無の情報を基に、各部品要素同士の接続関係を特定する。接続関係には、「非接触」「固定」「スライド」「回転」が含まれ、接続関係特定部1805はこれらのいずれであるかを特定する。具体的には、図2のステップS105~S109の各処理を実行する。なお、「非接触」とは、部品要素同士が接触ないし接続しない状態を示す。また、「固定」とは、部品要素同士が接触ないし接続し、その接触ないし接続において部品同士の動作が固定されることを示す。ここで、動作が固定とは、一定範囲内の動作としてもよい。また、「スライド」とは、部品要素同士が接触ないし接続し、ずれる(ストロークがある)ように動作することを示す。この際、ずれる量が、一定以上の場合にスライドと定義してもよい。さらに、「回転」とは、部品要素同士が接触ないし接続し、その接触ないし接続において部品同士が回転するように動作することを示す。
【0018】
次に、動作機構解析部1806は、接続関係を基に動作機構を解析する。つまり、対象のコンポーネントがどのような動作を行うかを特定する。この特定には、リンク機構、クランク機構といった動作機構の特定も含まれる。この処理は、図1のステップS111を実行する。具体的には、動作機構解析部1806は、図9図14図15図16に示すツリー図の生成やツリー図からの動作機構を導出する処理を実行する。この結果、動作機構解析部1806は、シミュレーションモデルを生成することになる。さらに、動作機構解析部1806は、上述の動作機構の解析結果を用いて、各種検証(シミュレーション)を実行することが望ましい。
【0019】
次に、入出力部1807は、ユーザーへの情報提示やユーザーからの情報入力を行う。このため、入出力部1807は、ディプレイのような表示装置とキーボードやマウスなどの入力デバイスで実現してもよいし、タッチパネルのような1つの構成で実現してもよい。また、入出力部1807は、シミュレーションモデル生成装置18に設けてもよいし、他の独立した端末装置として実現してもよい。なお、入出力部1807では、図17のフローチャートで示されるユーザーインターフェースを実行させる。
【0020】
なお、シミュレーションモデル生成装置18は、いわゆるコンピュータで実現できる。このため、構成部品解析部1802~動作機構解析部1806は、コンピュータプログラムで実現してもよいし、専用ハードウエアやFPGA(Field Programmable Gate Array)などで実現してもよい。なお、コンピュータプログラムは、記憶媒体に格納されたり、ネットワークを通じてシミュレーションモデル生成装置18に配信されたりする。
【0021】
次に、本実施例において、シミュレーションモデル生成装置18を、いわゆるクラウドなどのサーバで実現する場合の構成例を図19に示す。図19は、本実施例におけるシステム構成図である。図19において、シミュレーションモデル生成装置18は、3DCADシステムや端末装置1807-1~1807-3と接続される。これらのうち、3DCADシステムや端末装置1807-2、1807-3は、ネットワーク20を介して、シミュレーションモデル生成装置18を接続される。
【0022】
ここで、シミュレーションモデル生成装置18は、コンピュータで実現され、処理部181、記憶部182およびインターフェース部183を有し、これらは、バス1808を介して互いに接続される。
【0023】
ここで、処理部181は、いわゆる CPUの如きプロセッサで実現される。そして、処理部181は、構成部品解析部1802~動作機構解析部1806の処理を実行する。このために、処理部181は、構成部品解析部1802~動作機構解析部1806そのものを有してもよいし、記憶部182に記憶されたこれらに該当するコンピュータプログラムに従って処理してもよい。
【0024】
また、記憶部182は、情報やコンピュータプログラムを記憶する。このため、記憶部182は、メモリやHDD、SDDなどで実現できる。なお、本実施例では、3DCAD情報と、3DCADシステム19で保持する構成としたが、記憶部182が保持してもよい。
【0025】
また、インターフェース部183は、ネットワーク20や端末装置1807-1と接続する機能を実行するものであり、図18では3DCAD情報入力部1801に対応する。
【0026】
ここで、端末装置1807-1~1807-3は、図18の入出力部1807に相当するものである。そして、これらのうち端末装置1807-1は、シミュレーションモデル生成装置18と同じ敷地内に設置などされ、イントラネットを介して接続される。また、端末装置1807-2、1807-3は、シミュレーションモデル生成装置18と遠隔地に設けられ、ネットワーク20としてインターネットなどの広域網を介して接続される。これら端末装置1807-1~1807-3は、機能的に同じものであり、スマートフォン、タブレット、PCなどの情報処理装置で実現できる。このため、端末装置1807-1~1807-3は、いわゆるアプリといったコンピュータプログラムに従って、各種処理を実行する。
【0027】
さらに、3DCADシステム19は、端末装置1807-1~1807-3や自身が有する入力装置での操作に従って、コンポーネントの設計を行う。そして、3DCADシステム19は、設計の結果作成される設計情報である3DCAD情報を記憶している。この3DCAD情報は、インターフェース部183を介して、シミュレーションモデル生成装置18が取得可能である。以上で、本実施例の構成の説明を終了する。
<処理フロー>
次に、本実施例の処理フローについて、説明する。図1は、実施例における処理を示すフローチャートである。以下、図1に従って、処理主体として、図18の各構成を用いて、本実施例の処理フローを説明する。
【0028】
まず、ステップS101において、本処理フローを開始する。このために、入出力部1807が、ユーザーから処理の開始指示を受け付けることを条件とすることが望ましい。また、この際、3DCAD情報入力部1801が、対象とするコンポーネントの3DCAD情報を取得する。ここで、入出力部1807が、ユーザーから対象とするコンポーネントを特定する指示を受け付け、3DCAD情報入力部1801がこれに対応する3DCAD情報を取得することが望ましい。
【0029】
そして、構成部品解析部1802が、以下の処理の準備として、取得された3DCAD情報の示すコンポーネントを各部品要素に分解する構成としてもよい。また、3DCADシステム19が、3DCAD情報として、各部品要素に分解された情報を記憶しておいてもよい。
【0030】
次に、ステップS102において、共有回転軸判定部1803が、コンポーネントを構成する各部品要素間に中心を共有する円の有無を判定する。このために、共有回転軸判定部1803は、各部品要素を抽出し、これらの組み合わせを作成する。そして、共有回転軸判定部1803は、各組み合わせである各部品要素間について、有無を判定する。なお、本ステップおよびステップS103~S109については、部品要素間ごとに実行される。この判定処理において中心を共有する円がないと判定された場合は(No)、ステップS103に遷移する。また、円があると判定された場合は(Yes)、ステップS104に遷移する。
【0031】
ここで、ステップS102の詳細を、図2に示す具体例を用いて説明する。共有回転軸判定部1803が、図2において、部品要素間に関するA,B,C,D,E,Fの各点を通過する閉曲線の重心Oを円の中心と判断する。そして、共有回転軸判定部1803は、中心と判断された点Oに対し、閉曲線A,B,C,D,E,Fを構成する面と垂直な方向軸上の点に同様に中心と判断される点が重なるかを判定する。この結果、重なる場合に、共有回転軸判定部1803は、共有する円があると判定する。なお、共有回転軸判定部1803は、所定の範囲内にそれぞれの点が存在する場合に、重なる点が存在すると判定する。以上、本処理によれば、閉曲線の重心から円の中心を求めること、閉曲線を構成する面の垂直軸方向に円の中心が重なるか判定することで、3Dのポリゴン情報から中心点を共有する円の有無を自動的に判定することを可能とする。
【0032】
そして、ステップS103において、接触面数判定部1804は、コンポーネントを構成する各部品要素間の接触面数の判定処理を行う。つまり、接触面数判定部1804は、接触面数を計数する。この結果、接触面数が0の場合は、ステップS105に遷移する。また、接触面数が1もしくは3の場合は、ステップS106に遷移する。さらに、接触面数が2の場合は、ステップS107に遷移する。なお、接触面数判定部1804は、接触面数を「0」「奇数」「偶数」と判定してもよい。この場合、接触面数が「0」の場合はステップS105に、「奇数」の場合はステップS106に、接触面数が「偶数」の場合はS107に遷移する。
【0033】
また、ステップS104において、共有回転軸判定部1803が、共有される円の共有軸の数を判定、つまり、計数する。この結果、共有軸が2個未満、即ち1個であると判定された場合は(No)、ステップS109に遷移する。2個以上あると判定された場合は(Yes)、ステップS107に遷移する。
【0034】
そして、ステップS107において、接続関係特定部1805が、スライド可動範囲が予め定められた閾値以上かと判定する。これは、接触面数が2の場合は接触面のない方向にスライドが可能であり、共有軸が2個以上ある場合は回転することはできず回転軸相当の方向にスライドが可能であることによる。ここで、ミクロにはスライドしても、その量が微小な場合は固定と判定できるので、ステップS107を実行する。
【0035】
以上の処理の結果に基づいて、ステップS105~S109において、接続関係の特定処理を実行する。なお、ステップS104およびステップS107は、省略して「共有回転軸の有無(ステップS102)」および「接触面数(ステップS103)」に基づいて、ステップS105~S109の接続関係の特定処理を実行してもよい。この場合、ステップS102において、共有する円がある場合は、ステップS109に遷移する。また、ステップS103において、接触面数が2と判定された場合、ステップS108に遷移する。
【0036】
次に、ステップS105において、接続関係特定部1805は、対象の部品要素間の接続関係を「非接触」と判定する。の場合は非接触であると判定する。これは、接続関係特定部1805が、中心を共有する円がなく、接触面数が0であることに基づき判定する。
【0037】
また、ステップS106において、接続関係特定部1805は、スライド可動範囲があらかじめ定めた閾値未満と判定もしくは拙速面数が1ないし3と判定されたため、接続関係を固定と判定する。
【0038】
また、ステップS108において、接続関係特定部1805は、スライド可動範囲が予め定められた閾値以上と判定されているため、接続関係をスライドと判定する。
【0039】
さらに、ステップS109において、接続関係特定部1805は、共有回転軸が1つと判定されているため、接続関係を回転と判定する。
【0040】
ここで、接続関係の判定の詳細を、図3および図4を用いて説明する。まず、図3を用いて、ステップS105、S106およびS108の具体例を説明する。
【0041】
まず、接続関係特定部1805は、図3(a)に示すように、部品要素Bodyに対して、接する面が0個の場合は、非接触であると判定する。また、接続関係特定部1805は、図3(b)に示す部品要素Bodyと他の部品の接触面が矢印の方向の1面だけである場合は、1面だけでは動作させる軸を構築しえないので固定されていると判定する。
【0042】
また、接続関係特定部1805は、図3(c)に示す様に、z軸とx軸に接触面がある場合は2つの接触面を支えとして、y軸方向にスライドすることが可能であるため、対象部品間はスライドする関係であると判定する。さらに、接続関係特定部1805は、
図3(d)に示す様に対象とする部品要素と他の部品の接触面x、y、zの異なる3方向の面で接触すると判定されると両社は動きようがなく固定関係と判定する。
【0043】
以上、本実施例によれば、3Dポリゴンの各部品要素の接触面の数からコンポーネントを構成する各部品要素間の接続関係を自動的に求めることが可能となる。
【0044】
ここで、接続関係の判定では、接触面数を判定している(図3およびステップS103参照)。このような接触面数の判定においては、部品要素間で接触があるか、つまり、接触面の有無の判定が必要になる。この接触面の有無の判定について、図4を用いてその具体例を説明する。
【0045】
接触面数判定部1804は、図4上における同一平面内に存在する部品要素を示す三角ポリゴン間で衝突判定を行い、衝突がある面を接触面とする。ここで、接触面数判定部1804は、三角形の辺を分離軸の候補(太線:401)とし、分離軸に垂直な線分(破線:402)に対して三角形を射影する。この結果、接触面数判定部1804は、射影部分(太破線)が重複していれば衝突している、即ち、接触面があると判定する(本図の場合は重複なく衝突はないと判定)。接触面数判定部1804は、以上の処理を各辺に対して実行する。このようにして、接触面の有無の判定が実現される。以上、本実施例によれば3Dポリゴン間の接触面の有無の判定を実現可能となる。
【0046】
次に、図1に戻り、本実施例の処理フローの説明を続ける。次に、ステップS110において、接続関係特定部1805は、ステップS102で作成された部品要素の組み合わせのそれぞれについて、接続関係の判定が終了したかを判断する。この結果、各接続、つまり、各部品要素間の接続関係の判定が終了したと判定した場合(Yes)、ステップS111に遷移する。また、判定が終了していないと判定した場合(No)、ステップS102に遷移し、他の部品要素間について処理を行う。
【0047】
次に、ステップS111において、動作機構解析部1806は、動作機構の解析を行う。この結果、動作機構解析部1806は、コンポーネントを構成する部品要素で構成される動作機構を特定する。そして、動作機構解析部1806は、入出力部1807を介して、特定された動作機構を出力する。
【0048】
以上により、シミュレーションモデルが生成されることになる。そして、ステップS112において、本処理フローを終了する。
【0049】
以上、本実施例によれば複数の部品要素からなるコンポーネントに対して、自動的に各部品要素間の接触面数、中心を共有する円の個数の判定処理を行うことになる。このことにより、3DCAD情報、即ち複数の部品要素からなるコンポーネントの設計情報からシミュレーションに必要な動作機構情報を自動的に抽出することが可能となる。このため、3DCAD情報からシミュレーションモデルを、自動生成することを実現できる。なお、本実施例では、3DCAD情報を用いたが、他の設計情報や形状を含む装置情報を用いてもよい。
【0050】
また、本実施例では、ステップS112で処理を終了するが、入出力部1807からのユーザーの指定に応じて、動作機構解析部1806がシミュレーション(検証)を行ってもよい。この際、動作機構解析部1806は、接続関係や動作機構を用いて、シミュレーションを行う。
【0051】
以上で、本実施例の処理フローの説明を終了し、次に、本実施例の実例につて説明する。
<実例1>
上述した本実施例のシミュレーションモデルの生成について、実例を用いて説明する。まず、実例1として、コンポーネント1について説明する。図5は、本実施例におけるシミュレーションモデルを生成する対象となるコンポーネント1の3DCAD情報に含まれる3DCADモデルを示している。図5において、コンポーネント1は、各部品要素である、ボディー(501)、ケーブル(502)、モーター(503)、スライド1(504)、Yロボット(505)およびスライド2(506)を有する。コンポーネント1では、図5に示すような接続関係を有する。以下、図6を用いて、コンポーネント1の各部品要素間の接触面の数の判定処理を説明する。
【0052】
まず、図6(a)から図6(e)は、コンポーネント1における接触面が1以上の場合の接触面を示す図である。図6(a)は、ボディー(501)とスライド1(504)の接触面を示すもので、ボディー(501)とスライド1(504)は矢印で示される2つの面で接触することを示す。また、図6(b)は、スライド2(506)とYロボット(505)の接触面を示すもので、スライド2(506)とYロボット(505)は矢印で示される2つの面で接触することを示す。
【0053】
また、図6(c)は、ボディー(501)とモーター(503)の接触面を示すもので、ボディー(501)とモーター(503)は矢印で示される1つの面で接触することを示す。また、図6(d)は、スライド1(504)とYロボット(505)の接触面を示すもので、スライド1(504)とYロボット(505)は矢印で示される1つの面で接触することを示す。
【0054】
また、図6(e)は、ボディー(501)とケーブル(502)の接触面を示すもので、ボディー(501)とケーブル(502)は矢印で示される3つの面で接触することを示す。またさらに、図6(f)は、本図では接触箇所が見にくい場所ではあるがスライド1(504)とケーブル(502)は矢印で示される3つの面で接触することを示す。このように、接触面数判定部1804は、コンポーネント1の接触面を判定できる。
【0055】
次に、図7は、コンポーネント1の接触面を判定した結果を示す接触面数表である。この接触面数表では、縦軸および横軸にそれぞれコンポーネント1の部品要素を示し、その交差するエリアにその部品要素間の接触面数を記録している。まず、スライド1-ボディー間は、図6(a)で示される通り接触面数は2である。また、ケーブル-ボディー間は、図6(e)で示される通り接触面数は3である。ケーブル-スライド1間は、図6(f)で示される通り接触面数は3である。モーター-ボディー間は、図6(c)で示される通り接触面数は1である。モーター-スライド1間、モーター-ケーブル間は、それぞれ離れているため、接触面数は0である。Yロボット-ボディー間も、離れており接触面数は0である。Yロボット-スライド1間は、図6(d)に示される通り接触面数は1である。Yロボット-ケーブル間、Yロボット-モーター間には接触はなく接触面数は0である。スライド2-ボディー間、スライド2-スライド1間、スライド2-ケーブル間、スライド2-モーター間は、接触がなく接触面数は0である。スライド2-Yロボット間は、図6(e)に示される通り接触面数は2である。以上のように、接触面数判定部1804は、ステップS103の結果、図7に示す接触面数表を作成し、これを記憶部182に記憶する。
【0056】
次に、接続関係特定部1805で特定した接続関係を示す接続関係表を、図8を用いて説明する。図8は、図7の接触面数表を用いて、コンポーネント1の各部品要素間の接続関係を示している。図8において、接続関係表では、縦軸および横軸にそれぞれコンポーネント1の部品要素を示し、その交差するエリアに対応する部品要素間の接続関係を記録している。以下、接続関係特定部1805での処理内容およびその結果である接続関係表の内容について、説明する。
【0057】
まず、スライド1(504)-ボディー(501)間の接触面数は2であり、ストローク長は特に短いわけではないため、接続関係はスライドとなる。ここで、短いとは、ストローク長が予め設定された閾値より短いとする。
【0058】
また、ケーブル(502)-ボディー(501)間の接触面数は3のため、接続関係は固定となる。ケーブル(502)-スライド1(504)間の接触面数は3のため、接続関係は固定となる。モーター(503)-ボディー(501)間の接触面数は1のため、接続関係は固定となる。モーター(503)-スライド1(504)間、モーター(503)-ケーブル(502)間の接触面数は0のため、接続関係は非接触となる。Yロボット(505)-ボディー(501)間の接触面数は0のため、接続関係は非接触となる。Yロボット(505)-スライド1(504)間接触面数は1のため、接続関係は固定となる。Yロボット(505)-ケーブル(502)間、Yロボット(505)-モーター(503)間には接触面数は0のため、接続関係は非接触となる。スライド2(506)-ボディー(501)間、スライド2(506)-スライド1(504)間、スライド2(506)-ケーブル(502)間、スライド2(506)-モーター(503)間は、それぞれ接触面数が0のため、接続関係は非接触となる。スライド2(506)-Yロボット(505)間は、接触面数が2であり、ストローク長は特に短いわけではないため、接続関係はスライドとなる。
【0059】
以上のように、接続関係特定部1805は、部品要素間の接続関係を特定し、記憶部182の接続関係表に記憶する。
【0060】
以上の様に、本実施例では、図5で示すコンポーネント1に対し、図6図7に示すとおり各部品要素の同士の接触面数を求め、図8に示すとおり各部品要素の同士の接触面数から接続関係を特定することができる。つまり、実例であるコンポーネント1について、図1に示すフローチャートの処理フローを適用できる。なお、本例では中心共有円がすべて無しと判定しているものとする(ステップS102において、No)。
【0061】
次に、コンポーネント1に対する、動作機構解析部1806の処理について説明する。図9は、動作機構解析部1806で生成するツリー図を示す。つまり、このツリー図は、動作機構解析部1806が、コンポーネント1について、図8で示される接続関係表から作成したツリー図である。以下、このツリー図の作成およびその構造を説明する。
【0062】
まず、動作機構解析部1806は、コンポーネント1の部品要素のうち、ボディー(501)をツリーの最上位パーツとして抽出する。このために、入出力部1807を介して、ユーザーから最上位の部品要素の指定を受け付けることが望ましい。もしくは、動作機構解析部1806は、所定のルールに従って、最上位の部品要素を抽出する。
【0063】
次に、動作機構解析部1806は、ボディー(501)と接続する部品要素を、接続関係表から抽出する。つまり、ボディー(501)と、非接触以外の接続関係を有する部品要素が抽出される。本例では、動作機構解析部1806は、ケーブル(502)、モーター(503)およびスライド1(504)を抽出する。そして、動作機構解析部1806は、抽出した各部品要素と、最上位の部品要素の接続関係を、接続関係表から特定する。つまり、ケーブル(502)は、ボディー(501)と固定(911)によりに接続される。モーター(503)は、ボディー(501)との固定(912)によりに接続される。また、スライド1(504)は、ボディー(501)とX軸方向にスライド(914)(軸方向は図6より)により接続される。
【0064】
次に、動作機構解析部1806は、抽出した各部品要素と、最上位の部品以外と接続する部品要素を、接続関係表から抽出する。上述のように、ここでも非接触以外の接続関係の部品要素が抽出される。このことで、動作機構解析部1806は、ツリー図の2段目の階層との接続関係を特定することになる。具体的には、動作機構解析部1806は、ケーブル(502)と接続するスライド1(504)を抽出する。そして、動作機構解析部1806は、ケーブル(502)とスライド1(504)の接続関係を、接続関係表から固定(913)と特定する。
【0065】
また、動作機構解析部1806は、ツリー図の3段目の階層として、スライド1(504)を特定する。そして、スライド1(504)と接続する部品要素のうち、既に接続を特定したボディー(501)、ケーブル(502)以外の部品構成を特定する。具体的には、Yロボット(505)が特定される。そして、動作機構解析部1806は、スライド1(504)とYロボット(505)の接続関係を、接続関係表から固定(915)であると特定する。
【0066】
以下、同様に、4段目の階層として、Yロボット(505)と接続関係にある部品要素として、スライド2(506)が特定され、これらの接続関係も接続関係をY軸方向にスライド(916)(軸方向は図6より)と特定される。
【0067】
そして、動作機構解析部1806は、スライド2(506)を、接触面数表や接続関係表に基づいて、最下層と判定する。このようにして、動作機構解析部1806は、図9に示すツリー図を作成することになる。こうして、作成されたツリー図を解析すると、ボディー(501)-固定(911)-ケーブル(502)-固定(913)-スライド1(504)-X軸方向にスライド(914)-ボディー(501)で構成されるループが生成される。
【0068】
ここで、動作機構解析部1806は、ツリー図が示すループを解析し、以下の矛盾を検出する。ケーブル(502)は、ボディー(501)、スライド1(954)の両者に固定されているが、ボディー(501)とスライド1(504)はスライドであり、矛盾が生じる。
【0069】
ここで、この矛盾を解消するためには、X軸方向にスライド(914)を固定に変更するか、固定(913)もしくは固定(911)を切断して非接触に変更する必要がある。
このことへの対応として、以下の(1)~(3)対応ができる。
(1)動作機構解析部1806での自動対応
本ツリー図を作成する際に、X軸方向へのスライド(914)については、ステップS107においてストローク長の判定処理で、予め定めた閾値以上であることを確認済である。このため、動作機構解析部1806は、固定(913)もしくは固定(911)を切断することと判断する。そして、動作機構解析部1806は、固定(913)および固定(911)のうち、ツリー図の上位側を優先する。つまり、動作機構解析部1806は、最上位のボディー(501)からより遠い固定(913)を切断する。この結果、図9に示すように、固定(913)とスライド1(504)の間が破線で示される。
【0070】
なお、本対応において、動作機構解析部1806は、固定(913)とスライド1(504)の間が切断の第一候補として特定してもよい。そして、動作機構解析部1806は、これらを入出力部1807に出力する。そして、動作機構解析部1806は、ユーザーからの許諾に応じて、切断箇所を決定する。
(2)ユーザーによる選択
動作機構解析部1806は、(1)における第一候補の他、固定911およびX軸方向にスライド(914)が他の候補として特定する。次に、動作機構解析部1806は、入出力部1807に、これらの各候補を出力する。この際、各候補は、特に区別せず出力されることが望ましい。そして、動作機構解析部1806は、入出力部1807を介して、ユーザーから受け付けられた選択結果を、切断箇所として決定する。
(3)ユーザー指示
動作機構解析部1806は、入出力部1807に矛盾が生じたことを出力する。次に、動作機構解析部1806は、入出力部1807を介して、ユーザーから切断箇所の指示を受け付ける。そして、動作機構解析部1806は、指示された箇所を切断箇所として決定する。
【0071】
以上で、(1)~(3)の説明を終了する。この結果、母体となるボディー(501)にケーブル(502)とモーター(503)が固定され、スライド1(54)がボディー(501)に対して、X軸方向にスライドで接続している。また、スライド1(504)にYロボット(505)が接続され、Yロボット(505)に対してスライド2がY軸方向にスライドで接続している。動作機構解析部1806は、以上のように動作解析を行い、この結果に従ってシミュレーションモデルを生成することになる。
【0072】
以上、コンポーネント1に対して、シミュレーションモデルの生成を行う実例1について説明した。本実例1は、スライド機構を持つコンポーネントに対して動作解析が自動的に処理可能であることを示している。また、ケーブル(502)のような形状が可変しうるものに対してもツリー解析により正しく動作解析を行うことが可能である。
<実例2>
次に、実例2として、コンポーネント2に対するシミュレーションモデルの生成について説明する。図10は、コンポーネント2の3DCAD情報に含まれる3DCADモデルを示す図である。コンポーネント2は、ボディー1001、ホルダー1002、シリンダー1003およびロッド1004の各部品要素で構成される。
【0073】
図11を用いて、図10で示されるコンポーネントの各部品要素間の接触面の数の判定処理について説明する。以下、図11を用いて、コンポーネント2の各部品要素間の接触面の数の判定処理を説明する。
【0074】
図11(a)及び図11(b)及び図11(c)は中心を共有する円を持つ場合、図11(d)は接触面が1以上の場合をそれぞれ図示する。まず、図11(a)は、ボディー1001とホルダー1002の中心共有円1101を示す。ここでは、ボディー1001とホルダー1002は丸矢印で指される円を中心共有円とすることを示し、この中心共有円の中心を軸に回転できるようになっている。
【0075】
また、図11(b)は、ボディー1001とシリンダー1003の中心共有円(1102)を示す。そして、ここでは、ボディー1001とシリンダー1003は丸矢印で指される円を中心共有円とすることを示し、この中心共有円の中心を軸に回転できるようになっている。
【0076】
また、図11(c)は、ホルダー1002とロッド1004の中心共有円(1103)を示す。そして、ここでは、ホルダー1002とロッド1004は丸矢印で刺される円を中心共有円とすることを示し、この中心共有円の中心を軸に回転できるようになっている。
【0077】
また、図11(d)は、シリンダー1003とロッド1004の接触面を示すもので、シリンダー1003とロッド1004は矢印で示される2つの面で接触することを示す。
【0078】
次に、図11で示されるコンポーネント2の接触面を判定した結果を示す接触面数表を、図12に示す。図12の接触面数表は、コンポーネント2の各部品要素間の中心共有円もしくは接触面の数を各部品要素間の組み合わせについての判定処理結果を示す表である。この接触面数表は、コンポーネント1と同様に、動作機構解析部1806で作成される。
【0079】
ここで、接触面数表において、ボディー1001-ホルダー1002間は、図11(a)で示される通り中心共有円が存在する。シリンダー1003-ボディー1001間は、図11(b)で示される通り中心共有円が存在する。また、シリンダー1003-ホルダー1002間は離れており、接触面数は0である。ロッド-ボディー間は、離れており接触面数は0である。ロッド1004-ホルダー1002間は、図11(c)で示される通り中心共有円が存在する。ロッド1004-シリンダー1003間は、図11(d)で示される通り接触面数は2である。接触面数判定部1804は、以上のように示される接触面数表を作成し、これを記憶部182に記憶する。
【0080】
次に、コンポーネント2について、接続関係特定部1805で特定した接続関係を示す接続関係表を、図13を用いて説明する。
【0081】
図13において、接続関係特定部1805は、ボディー1001-ホルダー1002間を、中心共有円が存在するため接続関係を回転とする。また、接続関係特定部1805は、シリンダー1003-ボディー1001間を、中心共有円が存在するため接続関係を回転とする。接続関係特定部1805は、シリンダー1003-ホルダー1002間は離れており接触面数は0であるため、接続関係を非接触とする。
【0082】
また、接続関係特定部1805は、ロッド1004-ボディー1001間は接触面数が0であるため、接続関係を非接触とする。ロッド1004-ホルダー1002間は中心共有円が存在するため、接続関係を回転とする。また、接続関係特定部1805は、ロッド1004-シリンダー1003間は接触面数が2であるため、接続関係を特にストローク長が短い場合には当たらないためスライドとする。
【0083】
このように、接続関係特定部1805は、以上のように部品要素間の接続関係を特定し、記憶部182の接続関係表にこの結果を記憶する。
【0084】
以上の様に、本実例では、コンポーネント2に対し、図12図13に示すとおり各部品要素の同士の中心共有円の有無及び接触面数を求め、図10に示す通りすべての部品要素の同士の中心共有円の有無もしくは接触面数から接続関係を判定することができる。
【0085】
次に、コンポーネント2について、動作機構解析部1806の処理について説明する。図14は、動作機構解析部1806で生成するツリー図である。
図14においてはボディー1001をツリーの最上位パーツとして抽出する。このために、入出力部1807を介して、ユーザーから最上位の部品要素の指定を受け付けることが望ましい。もしくは、動作機構解析部1806は、所定のルールに従って、最上位の部品要素を抽出する。
【0086】
次に、動作機構解析部1806は、ボディー1001と接続する部品要素を、図12に示す接触面数表から抽出する。この結果、ホルダー1002、シリンダー1003が抽出される。ここで、図14に示すように、ホルダー1002とボディー1001の接続関係は、回転1411である。また、シリンダー1003とボディー1001の接続関係は、回転1412である。
【0087】
次に、動作機構解析部1806は、接続関係の2段目の階層を特定する。このために、動作機構解析部1806は、抽出した各部品要素と、最上位の部品以外と接続する部品要素を、図13の接続関係表から抽出する。つまり、動作機構解析部1806は、ホルダー1002と接続関係にある部品要素として、ロッド1004を抽出する。ここで、動作機構解析部1806は、ホルダー1002とロッド1004の接続関係は、回転1414であることを特定する。
【0088】
また、動作機構解析部1806は、もう一つの接続関係の2段目の階層を特定する。まず、動作機構解析部1806は、シリンダー1003と接続関係にある部品要素として、ロッド1004を抽出する。ここで、動作機構解析部1806は、シリンダー1003とロッド1004の接続関係は、Z軸方向にスライド1413であるあることを特定する。
【0089】
そして、動作機構解析部1806は、ロッド1404から先の接続がないことを、確認する。この結果、動作機構解析部1806は、図14に示すツリー図を作成することになる。
【0090】
ここで、深さ優先探索法を用いて、図14のツリー図から閉ループを抽出する処理について説明する。まず、図15に、深さ優先探索法の概念を示す。最上位の「パーツ(ノード)」から経由するパーツに「探索済み」としながらより深い(開始位置から遠い)方向のパーツを優先的に探索する。もし新しい経路を通って「探索済み」パーツにたどり着くと“閉路あり”と判断できる。図15では、(1)ABD-(2)DF-(3)EF-(4)EAの順で探索は実施され、この結果、A-B-F-Eという閉路があることが抽出される。そして、各パーツ間の関係(スライド/回転/固定)をカウントすることで、動作機構を判定できる。なお、ここでのパーツが、本実施例の部品要素に対応する。
【0091】
この深さ優先探索法を、図14のツリー図に適用する場合を図16で説明する。動作機構解析部1806は、最上位のボディー1001から探索を開始する。そして、動作機構解析部1806は、(1)-(2)-(3)-(4)の順で探索を実行する。この結果、動作機構解析部1806は、ボディー1001-回転1411-ホルダー1002-回転1414-ロッド1004-Z軸方向にスライド1413-シリンダー1003-回転1412-ボディー1001で構成されるループを抽出することになる。そして、動作機構解析部1806は、ループを解析し、当該ループが3つの回転と1つのスライドから構成されるリンクであることを特定する。
【0092】
この結果、動作機構解析部1806は、コンポーネント2に、スライドクランク機構が存在すると判定する。これは、動作機構解析部1806が、予め記憶された動作機構を定義する情報に基づいて判定できる。そして、この結果に従って、動作機構解析部1806は、シミュレーションモデルを自動生成することができる。
【0093】
このように、本実施例では、ツリー図が示す閉ループを抽出した場合、当該閉ループに含まれる複数の接続関係に該当する動作機構を特定することができる。以上で、実例2の説明を終了する。
<ユーザーインターフェース>
次に、本実施例におけるユーザーインターフェースに関する処理フローについて、図17に従って説明する。
【0094】
まず、ステップS1701において、入出力部1807が、ユーザーから処理開始指示を受け付ける。次に、ステップS1702において、入出力部1807が、ユーザーから最上位の部品要素の選択を受け付ける。ここで、入出力部1807は、コンポーネントを構成する各部品要素を出力することが望ましい。この出力に対して、ユーザーは部品要素を選択できる。この結果、動作機構解析部1806が最上位の部品要素を特定できる。なお、この選択は、実例1や2で説明したものである。このように、ユーザーからの選択を受け付けることで、最上位の部品要素の特定についての試行錯誤が減るため、演算処理時間が減り生成時間を有効に短縮できる。また、ツリー図の最上位は、シミュレーションモデルの基準位置であるため、ユーザーにとっては自明の情報であり且つ指定する手間が少ないので、ユーザーの負荷も小さい。但し、動作機構解析部1806が、予め定められたルールに従って、最上位の部品要素を抽出してもよい。
【0095】
また、ステップS1703において、入出力部1807は、ユーザーから許容誤差設定を受け付ける。具体的には、部品要素の距離、角度、直径等の位置及び形状に関する情報の許容誤差を指定するものである。これは、3DCAD情報の精度に合わせて指定することが可能になる。この結果、接続関係特定部1805が、この許容誤差を特定し、この値を記憶する。このために、入出力部1807は、距離、角度、直径等の位置及び形状ごとに、入力エリアを出力し、当該入力エリアに対する入力を受け付けることが望ましい。
【0096】
また、ステップS1704において、入出力部1807は、ユーザーからスライド条件設定を受け付ける。これは、図1のステップS107において実行されるストローク長の判定に用いられる。つまり、設定されたスライド条件が示すスライド長により、固定やスライドの判定を正確に行うことが可能になる。
【0097】
但し、ステップS1703およびS1704においても、接続関係特定部1805が、予め定められたルールに従って、誤差ないしストローク長を特定してもよい。このことには、予め誤差やストローク長が記録されており、これを用いることも含まれる。
【0098】
また、ステップS1705において、入出力部1807は、ユーザーから回転判定制約条件設定を受け付ける。そして、接続関係特定部1805が、これを記憶することになる。この回転判定制約条件は、設定した値より小さい径の中心共有円は回転とは判定しないように設定するものである。これは、ボルトなどの固定点を回転軸と判定しないように指定するものである。本実施例では、回転の軸となる部品とボルトの径を基準として効率よく分別することを試みているが、ボルトを個別に指定する方法でもよい。
【0099】
また、ステップSにおいて、入出力部1807は、ユーザーから接続関係を切断して非接触とするための指定を受け付ける。つまり、接触面数から固定などの被接触以外と判定されたものを、非接触と判定しなおすための入力を受け付ける。これは、上述した(1)から(3)の処理でも説明したように、予めユーザーから受け付けてもよいし、ツリー図からの機構解析処理中に矛盾が見つかった時点で対話形式により受け付けてもよい。
【0100】
なお、本フローチャートの処理順序は、図17の順序に限らない。また、各ステップは個別に処理され、連続的に実行されなくともよく、ステップS101~S112の処理に先行してまとめて行ってもよい。さらに、ステップS101~S112の処理を実行する中で必要に応じて対話形式で実行してもよい。以上、図17の処理によれば、3DCAD情報からのシミュレーションモデルの自動生成装置でユーザーにより自動生成の処理の精度の向上や処理時間の短縮につながる制御を実現可能なユーザーインターフェースを提供することができる。
【0101】
以上で、本実施例の説明を終了するが、本実施例によれば3DCADモデルからのシミュレーションモデルの自動生成することができ、シミュレーションの実施効率を大幅に改善する。
【0102】
また、本実施例によれば、部品要素の組み合わせから動作機構を特定できる。また、接続関係をより詳細に特定できる構造モデルデータから、シミュレーションモデルを生成できる。このため、検証を詳細に行うことも可能となる。
【符号の説明】
【0103】
18…シミュレーションモデル生成装置、1801…3DCAD情報入力部、1802…構成部品解析部、1803…共有回転軸判定部、1804…接触面数判定部、1805…接続関係特定部、1806…動作機構解析部、1807…入出力部、1808…バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19