(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】樹脂管の接続装置
(51)【国際特許分類】
F16L 47/14 20060101AFI20241203BHJP
F16L 23/08 20060101ALI20241203BHJP
F16L 21/06 20060101ALI20241203BHJP
F16L 58/10 20060101ALN20241203BHJP
【FI】
F16L47/14
F16L23/08
F16L21/06
F16L58/10
(21)【出願番号】P 2021094041
(22)【出願日】2021-06-04
【審査請求日】2024-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】東 総介
(72)【発明者】
【氏名】秋山 尚文
(72)【発明者】
【氏名】水川 賢司
(72)【発明者】
【氏名】山口 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】太田 悠介
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-050789(JP,A)
【文献】実開昭59-129525(JP,U)
【文献】特開2006-274039(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102537554(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 21/00-21/08
F16L 23/00-25/14
F16L 41/00-49/08
F16L 57/00-58/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部に環状のフランジ部を有する2本の樹脂管同士を接続する装置であって、
第1、第2分割体と、前記第1、第2分割体の一端部を互いに前記樹脂管の軸線と直交する平面に沿って回動可能に連結するヒンジ手段と、前記第1、第2分割体が前記2本の樹脂管の前記フランジ部を挟んだ状態で前記第1、第2分割体の他端部同士を近付けるように締め付ける締結手段とを備え、
前記第1、第2分割体の内周には円弧状に延びる嵌合溝が形成され、前記嵌合溝の内面はその両側にテーパ面を有し、前記締結手段による締め付け時に、前記嵌合溝の前記テーパ面が前記2本の樹脂管の前記フランジ部に形成されたテーパ面に当たることにより、前記2本の樹脂管の前記フランジ部が互いに突き合わされるようになっており、
前記第1、第2分割体はガラス繊維強化ナイロンを主原料とし、
前記第1、第2分割体の少なくとも前記嵌合溝の内面には、疎水層が形成されていることを特徴とする樹脂管の接続装置。
【請求項2】
前記第1、第2分割体の内周は、前記嵌合溝の軸方向両側に隣接する円筒面形状の管部押さえ面を有し、前記締め付け状態で前記管部押さえ面が、前記樹脂管における前記フランジ部に隣接する管部の外周面を押さえるようになっており、
前記疎水層が前記管部押さえ面にも形成されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂管の接続装置。
【請求項3】
前記疎水層が、前記第1、第2分割体の周方向端部の互いの対向面にも形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂管の接続装置。
【請求項4】
前記疎水層が前記第1、第2分割体の外表面全域に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂管の接続装置。
【請求項5】
前記疎水層がプライマーとして提供され、さらにその上に塗料が付されていることを特徴とする請求項4に記載の接続装置。
【請求項6】
前記疎水層が、アクリル系樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の樹脂管の接続装置。
【請求項7】
前記疎水層が10μm以上の厚さを有していることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の樹脂管の接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一端部にフランジ部を有する2本の樹脂管を接続する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給水配管の施工現場で融着作業をせずに樹脂管同士を接続することが求められる場合には、工場でフランジ部付きの短管を長尺の樹脂管本体にバット融着することにより、端部にフランジ部を有する樹脂管を製造する。フランジ部は先端側に樹脂管の軸線と直交する突き合わせ面を有し、反対側にテーパ面を有している。施工現場では接続装置を用い、2本の樹脂管のフランジ部を突き合わせるようにして接続する。
【0003】
特許文献1、2に示すように、接続装置は、一対の半割形状の分割体と、これら一対の分割体の一端部を互いに回動可能に連結するヒンジ手段と、一対の分割体の他端部同士を近付けるように締め付ける締結手段とを備えている。一対の分割体の内周には半円をなして延びる嵌合溝がそれぞれ形成されている。嵌合溝の両側には前記樹脂管のフランジ部のテーパ面と等しいテーパ角をなすテーパ面が形成されている。
【0004】
前記接続装置による樹脂管の接続工程を簡単に説明すると、一対の分割体を開き状態にし、2本の樹脂管のフランジ部を下側の分割体の嵌合溝に乗せる。次に、上側の分割体を、前記ヒンジ手段を中心に閉じ方向に回動させて、嵌合溝に2本の樹脂管のフランジ部を緩く嵌合させる。最後に、締付手段により締め付けると、嵌合溝の両側のテーパ面と2本の樹脂管のフランジ部のテーパ面が当たり、前記締め付け力が2本の樹脂管のフランジ部同士を近づける軸方向の力に変換される。その結果、フランジ部の突き合わせ面が当たった状態で2本の樹脂管が接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許5740123号公報
【文献】特開2021-50789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2では、前記分割体の主原料としてガラス繊維強化樹脂を用いることにより、強度を高めている。ガラス繊維強化樹脂としてガラス繊維強化ポリプロピレン(GFPP)を主原料とする場合、配管に高温水が流れると熱劣化が生じ強度が低下する。
ガラス繊維強化ナイロン(GFPA)を分割体の主原料とする場合、高い強度を有し、熱劣化による強度の低下を招くこともないが、ナイロンが吸水性を有し、吸水による強度の低下を招くため、給水配管に用いる際の支障となっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、一端部に環状のフランジ部を有する2本の樹脂管同士を接続する装置であって、
第1、第2分割体と、前記第1、第2分割体の一端部を互いに前記樹脂管の軸線と直交する平面に沿って回動可能に連結するヒンジ手段と、前記第1、第2分割体が前記2本の樹脂管の前記フランジ部を挟んだ状態で前記第1、第2分割体の他端部同士を近付けるように締め付ける締結手段とを備え、前記第1、第2分割体の内周には円弧状に延びる嵌合溝が形成され、前記嵌合溝の内面はその両側にテーパ面を有し、前記締結手段による締め付け時に、前記嵌合溝の前記テーパ面が前記2本の樹脂管の前記フランジ部に形成されたテーパ面に当たることにより、前記2本の樹脂管の前記フランジ部が互いに突き合わされるようになっており、前記第1、第2分割体はガラス繊維強化ナイロンを主原料とし、前記第1、第2分割体の少なくとも前記嵌合溝の内面には、疎水層が形成されていることを特徴とする。
【0008】
前記構成によれば、第1、第2分割体の主原料をガラス繊維強化ナイロンとしたことにより、強度を高めることができ、樹脂管により構成される配管に高温水が流れても熱劣化による強度の低下を招かない。また、水に接する可能性が高い嵌合溝の内面に疎水層を形成したので、嵌合溝においてガラス繊維強化ナイロンの吸水を防止でき、吸水による強度低下を招かない。その結果、給水配管の接続装置として用いることができる。
【0009】
好ましくは、前記第1、第2分割体の内周は、前記嵌合溝の軸方向両側に隣接する円筒面形状の管部押さえ面を有し、前記締め付け状態で前記管部押さえ面が、前記樹脂管における前記フランジ部に隣接する管部の外周面を押さえるようになっており、前記疎水層が前記管部押さえ面にも形成されている。
前記構成によれば、水が接する可能性のある管部押さえ面においても、ガラス繊維強化ナイロンの吸水を防止できる。
【0010】
好ましくは、前記疎水層が、前記第1、第2分割体の周方向端部の互いの対向面にも形成されている。
前記構成によれば、水が接する可能性のある端部対向面においても、ガラス繊維強化ナイロンの吸水を防止できる。
【0011】
好ましくは、前記疎水層が前記第1、第2分割体の外表面全域に形成されている。
前記構成によれば、第1、第2分割体の外表面に浮き出たガラス繊維を覆うことができ、外観性を高めることができる。
【0012】
好ましくは、前記疎水層がプライマーとして提供され、さらにその上に塗料が付されている。
前記構成によれば、塗料を付すことによりさらに外観性を高めることができる。
【0013】
前記疎水層は、アクリル系樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂の少なくとも1つを含む。
前記疎水層は、10μm以上の厚さを有している。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、給水配管を構成する樹脂管の接続に用いても、高い強度を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂管の接続装置を樹脂管の接続が完了した状態で示す斜視図であり、接続装置および樹脂管の一部を切り欠いて示す。
【
図2】前記接続装置の上下一対の分割体を分離した状態で示す斜視図であり、一対の分割体はそれぞれ幅方向に半分に切断され、見る方向が異なっている。
【
図3】前記一対の分割体を分離した状態で示す横断面図である。
【
図4】前記接続装置による樹脂管の接続工程を順に示す横断面図であり、(A)は接続工程の途中の状態を示し、(B)は接続工程が完了した状態を、樹脂管を省いて示す。
【
図5】前記接続装置による樹脂管の接続工程を順に示す縦断面図であり、(A)は接続工程の途中の状態を示し、(B)は接続工程が完了した状態を示す。
【
図6】前記分割体に形成された疎水層の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
樹脂管の構成
最初に
図1、
図5を参照しながら接続対象となる給水配管の樹脂管1,2について説明する。樹脂管1,2はポリエチレン等の樹脂からなり、一端部に環状のフランジ部1a,2aを有している。フランジ部1a,2aの先端面が軸線Lと直交する突き合わせ面1x,2xとなっており、反対側の面がテーパ面1y,2yとなっている。一方の樹脂管1のフランジ部1aの突き合わせ面1xには、環状溝1zが形成され、この環状溝1zにOリング3が嵌められている。
なお、樹脂管1,2は、前記フランジ部1a,2aを有する短管と長尺の樹脂管本体とをバット融着することにより製造されている。
【0017】
樹脂管1,2の一端部内周には、短筒形状をなすインコア4がそれぞれ配置されている。インコア4はSUS304等のステンレス鋼からなり、その一端には径方向、外方向に突出する環状の鍔4aが形成されている。この鍔4aが樹脂管1,2の先端内周に形成された環状の凹部1b,2bに係合することにより、インコア4は軸方向の移動が制限された状態で、樹脂管1,2に装着されている。鍔4aは凹部1b,2bに収容されているため、後述するフランジ部1a,2aの突き合わせの支障にはならない。
【0018】
接続装置の構成
次に、前記樹脂管1,2を接続するための接続装置5について説明する。接続装置5は、上下一対の分割体すなわち上側分割体10(第1分割体)と下側分割体20(第2分割体)を備えている。分割体10,20は、ガラス繊維強化ナイロンを主原料とし、それぞれ略半円筒形状の本体部11,21を有している。
【0019】
分割体10,20の本体部11,21は、完全な半円筒より周方向寸法が僅かに短い。すなわち、
図3に示すように、上側分割体10の本体部11の周方向の両端面11x,11y(端部対向面)は、本体部11の内周の半径中心Cを通る平面Pより僅かに後退しており、この平面Pと平行をなしている。同様に、下側分割体20の本体部21の周方向の端面21x,21y(端部対向面)は、本体部21の内周の半径中心C’を通る平面P’より僅かに後退しており、この平面P’と平行をなしている。
【0020】
分割体10,20の本体部11,21の内周は、周方向に略半円をなして延びる嵌合溝12,22と、その軸方向両側に隣接する半円筒面形状の管部押さえ面13,23とを有している。管部押さえ面13,23の径は、樹脂管1,2の管部(フランジ部1a,2aを除く部位)の外径と等しい。
嵌合溝12,22の内面は、両側にテーパ面12x,22xを有し、中央に管部押さえ面13,23より径が大きい半円筒面をなす底面12y,22yを有している。テーパ面12x,22xのテーパ角度は、樹脂管1,2のフランジ部1a,2aのテーパ面1y、2yと等しい。底面12y、22yの径はフランジ部1a,2aの外径と等しい。嵌合溝12,22の断面形状は、後述するようにフランジ部1a,2aの突き合わせ面1x、2xが接した状態でのフランジ部1a、2aの断面形状と略等しい。
【0021】
上側分割体10の本体部11の周方向一端部には、係合部15が本体部11と一体をなして設けられている。この係合部15は、本体部11の一端部から径方向外側に突出する突出部15aと、この突出部15aの先端部から端面11xを越え端面11xと直交して下方に(下側分割体20に向かって)延びる延出部15bと、を有している。突出部15aの下面は、本体部11の端面11xと面一をなす端部対向面15xとなっている。
【0022】
上側分割体10の係合部15には係合穴16が形成されている。この係合穴16は、延出部15bに形成され径方向に貫通する主穴部16aと、突出部15aに形成され主穴部16aに連なる逃がし凹部16bとを有している。
主穴部16aは略矩形をなし、係合穴16の下側の面16xと端部対向面15xの仮想延長面との間を占めている。この下側の面16xは後述するように荷重受面として提供される。
逃がし凹部16bは、端部対向面15xの仮想延長面より上方(下側分割体20の反対側)に位置しており、径方向外側にのみ開放されている。逃がし凹部16bの横寸法は、主穴部16aの横寸法と等しい。
【0023】
下側分割体20の本体部21の周方向一端部には、径方向外方向に延びる係合突起25が本体部21と一体に形成されている。係合突起25の断面形状は矩形をなし、その上面は本体部21の端面21xと面一をなす端部対向面25xとなっている。係合突起25の縦寸法、横寸法は、上側分割体10の係合穴16の主穴部16aの縦寸法、横寸法より若干短い。
後述するように下側分割体20の係合突起25が上側分割体10の係合穴16に挿入されることにより、ヒンジ手段Hが構成される。このヒンジ手段Hは、上側分割体10を下側分割体20に対し、樹脂管1,2の軸線Lと直交する平面に沿って相対回動可能に連結する。
【0024】
分割体10,20の本体部11,21の周方向他端部には、径方向外側に突出する支持部18,28が、それぞれ本体部11,21と一体をなして形成されている。支持部18,28は、本体部11,21の端面11y,21yと面一をなす端部対向面18x,28xを有している。支持部18,28には、貫通穴18a,28aが形成されている。支持部28の下面には、貫通穴28aの両側に位置する一対の回り止め用凸部29が形成されている。
図4(B)に示すように、前記支持部18,28を締結するための締結手段30は、ボルト31とナット32を有している。
【0025】
接続装置による樹脂管の接続工程
前記接続装置5による樹脂管1,2の接続工程について説明する。
図4(A)、
図5(A)に示すように、最初に樹脂管1,2のフランジ部1a,2aを、Oリング3が樹脂管2の突き合わせ面2xに軽く接する程度に近づけた状態で、下側分割体20に乗せる。フランジ部1a,2aが嵌合溝22に位置合わせされ、その一部が嵌合溝22に収容される。
【0026】
次に、上側分割体10を下側分割体20に対して傾斜姿勢のまま横方向から近づけ、係合部15の係合穴16に係合突起25を挿入する。この際、係合突起25の先端部の一部は係合穴16の主穴部16aから外れるが、逃がし凹部16bに受け入れることができる。
【0027】
次に、上側分割体10を下側分割体20に近づけるように支点F(荷重受面16xの一端が係合突起25の下面に接した点)を中心として回動させることにより、上側分割体10の支持部18が下側分割体20の支持部28に近づき対峙する。この状態で、上側分割体10の嵌合溝12内にもフランジ部1a,2aの一部が収容される。また、下側分割体20の係合突起25は上側分割体10の係合穴16の主穴部16a内に収まる。
【0028】
次に、一対の回り止め用凸部29間にナット32を回動不能に嵌めた状態で、
図4(B)に示すようにボルト31を分割体10,20の支持部18,28の貫通穴18a,28aに通してナット32に螺合させ、締付方向に回す。これにより、下側分割体20と上側分割体10で樹脂管1,2のフランジ部1a,2aを挟んだ状態で締め付ける。この締め付け力は、嵌合溝12,22の両側のテーパ面12x,22xとフランジ部1a,2aのテーパ面1y,2yの作用により、フランジ部1a,2aを互いに近づける軸方向の力に変換される。その結果、
図5(B)に示すように、フランジ部1a,2aの突き合わせ面1x,2x同士がOリング3の弾性変形を伴って面接触する。このようにして接続工程が完了する。
【0029】
前記ボルト31の締め付けにより、支持部18,28同士が近づき、反対側が離れる方向に力が作用する。そのため、係合突起25は、係合部15の係合穴16の荷重受面16xに強く当たる。これにより、下側分割体20と上側分割体10が、フランジ部1a,2aを強く締め付けることができる。
【0030】
上記締付状態で、嵌合溝12,22の内面、すなわちテーパ面12x,22xと底面12y,22yが、樹脂管1,2のフランジ部1a,2aのテーパ面1y,2yと外周面にそれぞれ接し、管部押さえ面13,23が、樹脂管1,2においてフランジ部1a,2aに隣接する管部の外周面に接する。また、この締付状態で、上側分割体10の本体部11の端面11x,11yと下側分割体20の本体部21の端面21x,21yが互いに接近対向しており、ヒンジ手段Hの係合部15と係合突起15の端部対向面15x,25xが互いに接近対向し、支持部18,28の端部対向面18x,28xが互いに接近対向している。
【0031】
疎水層の形成
分割体10,20は、ガラス繊維強化ナイロンを主原料とした射出成形品である。そのため、高い強度を有し、給水配管に高温水が流れても熱劣化せず、高い強度を維持することができる。ただし、ナイロンが吸水性を有し、吸水による強度低下を招くおそれがある。例えば約1~5%吸水した状態になると、絶乾状態と比較して最大で50%強度が低下してしまう。
そこで、本実施形態では、分割体10,20において、樹脂管1,2の接合部から微小の漏水が生じた場合に水に接する可能性がある面に疎水層50(
図6参照)を形成している。この疎水層50は、アクリル系樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂の少なくとも1つを含む樹脂を、スプレーにより塗布することにより形成される。疎水層50は5~30μmの厚さ、より好ましくは10~30μmの厚さを有している。
【0032】
本実施形態では、分割体10,20において樹脂管1、2に接する内周全域と、互いに接近対向する面に、疎水層50を形成している。
分割体10,20の内周は、嵌合溝12,22の内面(すなわち、テーパ面12x,22xと底面12y,22y)、管部押さえ面13,23を含む。
分割体10,20の接近対向面は、本体部11,21の端面11x,11y,21x,21yと、端部対向面15x,25x,18x,28xを含む。
【0033】
上記のように疎水層50を分割体10,20の内周および対向面に形成したので、分割体10,20のガラス繊維強化ナイロンの吸水を防止でき、ひいては吸水による強度低下を防止でき、高い強度を維持することができる。
【0034】
実験
ダンベル形状をなす同一寸法のガラス繊維強化ナイロン製の試験片を2種類用意した。試験片(1)には、10~20μmの上記疎水層を形成し、試験片(2)には疎水層を形成しなかった。
両試験片をそれぞれ80℃の温水中でクリープ試験を実施し、破断時間を比較したところ、下記の表1の結果が得られた。表1から、疎水層の効果を確認することができた。
【表1】
【0035】
疎水層50は、水に接する可能性が最も高い嵌合溝12,22の内面にだけ形成してもよい。
また、疎水層50は分割体10,20の外表面(露出面)全域に形成してもよい。ガラス繊維強化ナイロンを射出成形すると成形品の外表面に微小ではあるが繊維が浮き出て外観を損なうが、これを疎水層50で覆うことにより外観を改善することができる。
【0036】
疎水層50を分割体10,20の外表面全域に形成する場合、疎水層をプライマーとし、このプライマーの上に全域に塗料60(
図6参照)を塗布すれば、外観をさらに向上させることができる。
【0037】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨に反しない限りにおいて種々の改変をなすことができる。例えば、ヒンジ装置は、第1、第2分割体と別体をなす軸部材、リンク等を含んでいてもよい。締結手段も種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、端部にフランジ部を有する樹脂管を接続する装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1、2 樹脂管
1a、2a フランジ部
1x、2x 突き合わせ面
1y、2y テーパ面
5 接続装置
10 上側分割体(第1分割体)
20 下側分割体(第2分割体)
11x、11y、21x、21y 本体部の端面(端部対向面)
12、22 嵌合溝
12x、22x テーパ面
12y、22y 底面
13、23 管部押さえ面
15x、25x、18x、28x 端部対向面
30 締結手段
50 疎水層
60 塗料
H ヒンジ手段