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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】コンバイン及びコンバインの制御方法
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/24 20060101AFI20241203BHJP
   A01B 63/10 20060101ALI20241203BHJP
   A01D 69/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
A01D34/24 103
A01B63/10 D
A01D69/00 302G
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021114876
(22)【出願日】2021-07-12
(65)【公開番号】P2023011183
(43)【公開日】2023-01-24
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】今田 光一
(72)【発明者】
【氏名】八田 武俊
(72)【発明者】
【氏名】仲野 由将
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-137424(JP,A)
【文献】特開2016-101132(JP,A)
【文献】特開2000-157026(JP,A)
【文献】特開2019-017327(JP,A)
【文献】特開2002-315415(JP,A)
【文献】特開平11-137062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/02-34/408
A01B 63/00-63/12
A01D 67/00-69/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に対して昇降可能に設けられた刈取部と、前記刈取部の高さである刈高さを検出するための刈高検出装置と、前記刈高検出装置により検出された刈高さがあらかじめ設定された目標値となるように前記刈取部の高さを制御する制御装置と、を備えたコンバインであって、
前記制御装置は、前記刈高検出装置により検出された刈高さが前記目標値を上回っている場合または前記目標値を下回っている場合に、前記刈高検出装置により検出される刈高さが前記目標値となるように前記刈取部の高さを制御するとともに、前記走行機体の車速を減速させる
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記刈取部の高さの制御モードとして、通常モードと、前記通常モードよりも前記目標値の大きさが小さい倒伏モードとを有し、
前記制御モードが前記倒伏モードであることを条件として、前記刈高検出装置により検出される刈高さが前記目標値となるように前記刈取部の高さを制御するとともに、前記走行機体の車速を減速させる
ことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記制御装置は、前記刈高検出装置により検出された刈高さが前記目標値に所定値を加えた値を上回っている場合または前記目標値から所定値を減じた値を下回っている場合に、前記車速を減速させる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記制御装置は、前記刈高検出装置により検出された刈高さの前記目標値を上回った量または前記目標値を下回った量が大きいほど、前記車速の減速の度合を大きくする
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記制御装置は、前記刈取部を下降または上昇させる際の前記車速が、あらかじめ設定された設定速度を超えている場合に、前記車速が前記設定速度となるように前記車速を減速させる
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のコンバイン。
【請求項6】
前記制御装置は、前記刈取部を下降または上昇させる際の前記車速と前記設定速度との差が大きいほど、前記車速の減速の度合を大きくする
ことを特徴とする請求項5に記載のコンバイン。
【請求項7】
前記設定速度は、前記刈高検出装置により検出された刈高さの前記目標値を上回った量または前記目標値を下回った量が大きいほど低くなるように設定されている
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載のコンバイン。
【請求項8】
前記制御装置は、前記車速の減速の度合が大きいほど、前記刈取部を上昇させる速度を速くする
ことを特徴とする請求項4~7のいずれか1項に記載のコンバイン。
【請求項9】
前記制御装置は、前記車速の減速の度合が大きいほど、前記刈取部を下降させる速度を遅くする
ことを特徴とする請求項4~8のいずれか1項に記載のコンバイン。
【請求項10】
走行機体に対して昇降可能に設けられた刈取部を備え、前記刈取部の高さである刈高さを検出し、検出した刈高さがあらかじめ設定された目標値となるように前記刈取部の高さを制御するコンバインの制御方法であって、
検出した刈高さが前記目標値を上回っている場合または前記目標値を下回っている場合に、検出される刈高さが前記目標値となるように前記刈取部の高さを制御するとともに、車速を減速させる
ことを特徴とするコンバインの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高さ調整可能な刈取部を有するコンバイン及びコンバインの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンバインは、走行機体の前側に刈取部を備えるとともに、走行機体上に脱穀部を備え、走行しながら刈取部による穀稈の刈取りや脱穀部による脱穀等を行う。従来、コンバインには、刈取部を走行機体に対して昇降可能に設け、刈取部の地面からの高さである刈高さを制御するため、刈高検出装置を備えたものがある。このような構成においては、刈高検出装置の検出信号に基づき、刈取部を昇降させる油圧シリンダ等の昇降用装置の動作が制御され、刈高さの自動制御が行われる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1には、刈高さについて制御目標値を設定し、刈高さが制御目標値となるように刈取部の昇降を自動制御する技術が記載されている。具体的には、特許文献1には、刈残しを防止すべく、刈取部の駆動速度を増速させて刈取作業を行う際には、刈高さの制御目標値を低く設定する制御内容が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-137424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のとおり刈高さの自動制御においては、例えば走行機体の車速が比較的速い速度に設定されている場合、刈取部を上昇または下降させた際に倒伏した穀稈の刈残しが発生したり、地面に対する刈取部の突っ込みが発生したりするおそれがある。ここで、刈取部の突っ込みは、刈取部の前部に設けられた分草板等が地面に突き刺さることであり、場合によっては刈取部の刈刃等において土や作物による詰まりを生じさせ、作業効率を低下させる原因となり得る。
【0006】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、刈取部が昇降することによる刈残しや地面に対する刈取部の突っ込みを抑制することができるコンバイン及びコンバインの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るコンバインは、走行機体に対して昇降可能に設けられた刈取部と、前記刈取部の高さである刈高さを検出するための刈高検出装置と、前記刈高検出装置により検出された刈高さがあらかじめ設定された目標値となるように前記刈取部の高さを制御する制御装置と、を備えたコンバインであって、前記制御装置は、前記刈高検出装置により検出された刈高さが前記目標値を上回っている場合または前記目標値を下回っている場合に、前記刈高検出装置により検出される刈高さが前記目標値となるように前記刈取部の高さを制御するとともに、前記走行機体の車速を減速させるものである。
【0008】
本発明の他の態様に係るコンバインは、前記コンバインにおいて、前記制御装置は、前記刈取部の高さの制御モードとして、通常モードと、前記通常モードよりも前記目標値の大きさが小さい倒伏モードとを有し、前記制御モードが前記倒伏モードであることを条件として、前記刈高検出装置により検出される刈高さが前記目標値となるように前記刈取部の高さを制御するとともに、前記走行機体の車速を減速させるものである。
【0009】
本発明の他の態様に係るコンバインは、前記コンバインにおいて、前記制御装置は、前記刈高検出装置により検出された刈高さが前記目標値に所定値を加えた値を上回っている場合または前記目標値から所定値を減じた値を下回っている場合に、前記車速を減速させるものである。
【0010】
本発明の他の態様に係るコンバインは、前記コンバインにおいて、前記制御装置は、前記刈高検出装置により検出された刈高さの前記目標値を上回った量または前記目標値を下回った量が大きいほど、前記車速の減速の度合を大きくするものである。
【0011】
本発明の他の態様に係るコンバインは、前記コンバインにおいて、前記制御装置は、前記刈取部を下降または上昇させる際の前記車速が、あらかじめ設定された設定速度を超えている場合に、前記車速が前記設定速度となるように前記車速を減速させるものである。
【0012】
本発明の他の態様に係るコンバインは、前記コンバインにおいて、前記制御装置は、前記刈取部を下降または上昇させる際の前記車速と前記設定速度との差が大きいほど、前記車速の減速の度合を大きくするものである。
【0013】
本発明の他の態様に係るコンバインは、前記コンバインにおいて、前記設定速度は、前記刈高検出装置により検出された刈高さの前記目標値を上回った量または前記目標値を下回った量が大きいほど低くなるように設定されているものである。
【0014】
本発明の他の態様に係るコンバインは、前記コンバインにおいて、前記制御装置は、前記車速の減速の度合が大きいほど、前記刈取部を上昇させる速度を速くするものである。
【0015】
本発明の他の態様に係るコンバインは、前記コンバインにおいて、前記制御装置は、前記車速の減速の度合が大きいほど、前記刈取部を下降させる速度を遅くするものである。
【0016】
本発明に係るコンバインの制御方法は、刈取部の高さである刈高さを検出し、検出した刈高さがあらかじめ設定された目標値となるように前記刈取部の高さを制御するコンバインの制御方法であって、検出した刈高さが前記目標値を上回っている場合または前記目標値を下回っている場合に、検出される刈高さが前記目標値となるように前記刈取部の高さを制御するとともに、車速を減速させるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、刈取部が昇降することによる刈残しや地面に対する刈取部の突っ込みを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの左側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るコンバインの右側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るコンバインの刈取部の構成を示す平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る分草部および刈高検出装置の構成を示す左側面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る刈高検出装置の構成を示す斜視図である。
図6】本発明の一実施形態に係る刈高検出装置を示す左側面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る刈高検出装置を示す平面図である。
図8】本発明の一実施形態に係るコンバインの制御構成を示すブロック図である。
図9】本発明の一実施形態に係る制御装置による第1の制御態様を示すフローチャートである。
図10】本発明の一実施形態に係る制御装置による第2の制御態様を示すフローチャートである。
図11】本発明の一実施形態に係る制御装置による第3の制御態様を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、高さ調整可能な刈取部を有するコンバインにおいて、刈取部の高さである刈高さの検出値に基づいて刈取部の高さを制御するとともに車速を制御することにより、刈取部の昇降により起こり得る刈残しや刈取部の突っ込みを抑制しようとするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
[コンバインの全体構成]
まず、図1および図2を用いて、本実施形態に係るコンバイン1の全体構成について説明する。なお、以下の説明では、コンバイン1の前方(図1における左方)に向かって左側および右側を、それぞれコンバイン1における左側および右側とする。
【0021】
図1および図2に示すように、本実施形態に係るコンバイン1は、左右一対のクローラ部3,3を有するクローラ式の走行装置として構成された走行部2と、走行部2により支持された走行機体4とを備える。走行機体4は、コンバイン1の車体の枠状の構造部を含む。コンバイン1は、走行機体4上に搭載された駆動源としてのエンジン11を備える。
【0022】
走行機体4の前部には、圃場の稲、麦等の穀稈を刈り取りながら取り込む刈取部5が設けられている。走行機体4上には、刈取部5により刈り取られた穀稈を脱穀処理する脱穀部6と、脱穀部6から取り出された穀粒を貯留する穀粒タンク7とが、横並び状に設けられている。脱穀部6は機体左側に、穀粒タンク7は機体右側にそれぞれ配置されている。コンバイン1は、走行部2により走行しながら刈取部5による穀稈の刈取りや脱穀部6による脱穀等を行う。
【0023】
走行部2を構成する各クローラ部3は、走行機体4の下方において前後方向に延設されたトラックフレーム3aと、トラックフレーム3aに支持された駆動スプロケット3b等の各種回転体と、これらの回転体に巻回された履帯3cとを有する。クローラ部3は、駆動スプロケット3bにおいてエンジン11の動力の伝達を受けて駆動する。
【0024】
刈取部5は、エンジン11からの駆動力によって駆動し、穀稈を刈り取り、刈り取った穀稈を脱穀部6等に搬送する。刈取部5は、走行機体4の前側において、コンバイン1の機体幅の略全体にわたって設けられている。刈取部5は、走行機体4に対して昇降可能に設けられている。なお、図2は、刈取部5を図1に示す状態に対して下降させた状態を示している。
【0025】
脱穀部6は、前後方向を回転軸方向とする扱胴6aと、扱胴6aの左方に設けられた穀稈供給装置とを有する。穀稈供給装置は、刈取部5により刈り取られた穀稈の株元を挟持して穂先を扱胴6a側とした横臥姿勢で穀稈を後方へ搬送する。穀稈供給装置は、左右方向を回転軸方向とする複数のスプロケットに巻回されたフィードチェン6と、これと協動して穀稈の株元を挟扼する穀稈供給挟扼体6とを含んで構成されている。
【0026】
走行機体4上における脱穀部6の下方には、脱穀部6により脱穀処理された処理物を選別処理する選別部8が設けられている。選別部8は、揺動選別装置8aと、風選別装置および穀粒搬送装置とを有する。選別部8は、脱穀部6から落下してきた処理物を揺動選別装置8aにより揺動選別し、揺動選別後の処理物を風選別装置により風選別する。選別部8は、風選別後の処理物のうち、穀粒を穀粒搬送装置により穀粒タンク7に向けて右方へ搬送し、藁屑や塵埃などを風選別装置により後方へ飛ばして機体の外部に排出する。穀粒搬送装置により穀粒タンク7に向けて搬送された穀粒は、穀粒タンク7に貯留される。
【0027】
走行機体4上の右側後端部には、穀粒タンク7内の穀粒を外部へ排出する穀粒排出装置としての排出オーガ9が旋回可能に設けられている。排出オーガ9は、先端部に排出口9aを有し、穀粒タンク7に貯留されている穀粒を排出口9aから排出する。排出口9aから排出された穀粒は、トラックの荷台やコンテナ等に投入される。
【0028】
走行機体4上において、脱穀部6の後方には、脱穀部6による脱穀処理後の排藁を処理する排藁処理部10が設けられている。排藁処理部10は、排藁搬送装置10aと、排藁切断装置10bとを有する。排藁搬送装置10aは、脱穀部6により脱穀済みの穀稈(排稈)を後方に搬送して機体の外部に排出するかあるいは排藁切断装置10bに搬送する。排藁切断装置10bは、排藁搬送装置10aから搬送された排稈を切断して機体の外部に排出する。
【0029】
走行機体4上において、刈取部5の右方であって穀粒タンク7の前方には、キャビン13により覆われた運転部14が設けられている。運転部14の前部には、操向操作部としてのハンドル部15が設けられており、ハンドル部15の後方に、運転席16が設けられており、運転席16の側方に、主変速レバー17を含む各種操作具が配設されている。
【0030】
運転部14の下方にはエンジン11を含む原動機部が設けられている。エンジン11は、例えばディーゼルエンジンである。エンジン11の動力は、変速装置等を介して、コンバイン1が各部において備える各種装置に伝達される。
【0031】
刈取部5について、図1から図3を用いて説明する。刈取部5は、刈取フレームとしての刈取支持機枠20を有し、この刈取支持機枠20に、分草板21、引起装置22、掻込装置23、刈刃装置24、穀稈搬送装置25等を支持させて構成されている。刈取部5が有する各装置は、エンジン11から動力が伝達されることで作動する。
【0032】
分草板21は、刈取部5が有する分草部50を構成するものであり、刈取部5の前端に設けられ、先細り形状を有し、圃場に植生する穀稈を分草する。引起装置22は、分草板21の後側に設けられており、チェンで連結された複数のタイン22aを動作させることで、倒伏している穀稈を引き起こす。
【0033】
掻込装置23は、引起装置22の後側に設けられており、チェン駆動する搬送機構23aや回転パッカー23b等を含んで構成されており、穀稈を掻き込む。なお、図3においては、掻込装置23のうち、左側の端部に設けられた構成部分のみを示し、他の構成部分についての図示を省略している。
【0034】
刈刃装置24は、引き起された穀稈の株元を切断するバリカン型の装置である。穀稈搬送装置25は、刈り取られた穀稈を搬送する装置であり、複数条の刈取り穀稈を合流して後上方へ挟持搬送し、脱穀部6のフィードチェン6の始端部に横倒れ姿勢で受け渡す。
【0035】
図1に示すように、刈取支持機枠20は、走行機体4の前側において前下がり状に配された支持フレーム26により支持されている。支持フレーム26は、機体左右方向の略中央部に設けられており、支持フレーム26の前側に、刈取支持機枠20が設けられている。
【0036】
図3に示すように、刈取支持機枠20は、機体の左右方向に延伸した横フレーム31と、横フレーム31から前方に延出した複数の分草フレーム32とを有する。刈取支持機枠20は、横フレーム31において支持フレーム26による支持を受ける。
【0037】
横フレーム31は、角パイプ状の部材からなる直線状のフレーム部分である。分草フレーム32は、丸パイプ状の部材からなるフレーム部分であり、所定の屈曲形状または湾曲形状を有し、平面視で前後方向に延伸している。分草フレーム32は、後端部または後部を横フレーム31に固定支持させることで、片持ち状に支持されている。
【0038】
複数の分草フレーム32は、左右方向に所定の間隔を隔てて、並列配置されている。分草フレーム32は、コンバイン1の刈取りの条数よりも1つ多い本数設けられる。本実施形態に係るコンバイン1は7条刈りであり、8本の分草フレーム32が設けられている。8本の分草フレーム32のうち、左端に位置する分草フレーム32Aは、他の複数の(7本の)分草フレーム32と異なる形状を有する。
【0039】
左右に隣り合う分草フレーム32間に、引起装置22が配置されており、合計7台の引起装置22が設けられている。引起装置22の下部が、各分草フレーム32の前部に図示せぬ支持ステー等を介して連結支持されている。また、各分草フレーム32の前端に、分草板21が取り付けられている。なお、複数の分草板21としては、比較的大きいものと比較的小さいものとの2種の分草板21が所定の配置で設けられている。
【0040】
以上のような構成を備えた刈取部5は、走行機体4に対して、昇降用装置としての刈取昇降シリンダ18を介して所定の軸回りに回動可能に装着されている(図1参照)。つまり、刈取部5は、刈取昇降シリンダ18の伸縮動作による回動動作によって走行機体4に対して昇降可能に設けられている。刈取昇降シリンダ18は、油圧シリンダであり、走行機体4と支持フレーム26との間に設けられている。支持フレーム26の後端部が、刈取昇降シリンダ18による刈取部5の昇降動作の回動支点として走行機体4に対して左右方向の軸回りに回動可能に支持されている。
【0041】
以上のように、コンバイン1は、刈取部5を走行機体4に対して昇降可能に設けている。そして、コンバイン1は、刈取部5の地面G1からの高さである刈高さ(対地高さ)を制御するため、刈高検出装置40と、制御装置200(図8参照)とを備える。このような構成においては、刈高検出装置40の検出信号に基づき、制御装置200により、刈取部5を昇降させる刈取昇降シリンダ18の動作が制御され、刈高さの自動制御が行われる。
【0042】
刈取昇降シリンダ18の動作は、制御弁である電磁弁の動作制御によって制御される。制御装置200は、刈高検出装置40の検出信号に基づいて、刈取昇降シリンダ18の制御弁の動作を制御することで、刈高さを制御する。
【0043】
刈高さの自動制御は、刈高検出装置40の検出信号に基づいて、刈取部5の刈高さを設定値に維持するように、刈取昇降シリンダ18の制御弁の動作を制御し、刈取部5を自動的に昇降制御するものである。なお、運転部14には、刈高さ調整用の操作部が設けられており、例えば、刈高さの自動制御中において、操作部の操作による刈高さの調整を優先させる制御が行われる。
【0044】
刈高さの自動制御において、制御装置200は、刈高検出装置40により検出された刈高さがあらかじめ設定された目標値(以下「刈高目標値」という。)となるように刈取部5の高さを制御する。すなわち、制御装置200は、検出された刈高さが刈高目標値を下回っている場合は、刈取部5を上昇させ、検出された刈高さが刈高目標値を上回っている場合は、刈取部5を下降させ、刈取部5の高さが刈高目標値に対応した高さに保持されるように刈取部5の昇降制御を行う。
【0045】
以上のように、コンバイン1は、分草板21を含む分草部50を有し走行機体4に対して昇降可能に設けられた刈取部5と、刈取部5の高さである刈高さを検出するための刈高検出装置40と、刈高検出装置40により検出された刈高さが刈高目標値となるように刈取部5の高さを制御する制御装置200とを備える。本実施形態では、刈高検出装置40は、8個の分草板21のうち、左端に位置する分草板21Aの後側に配置されている。左端の分草板21Aは、左端に位置する分草フレーム32Aにより支持されている。なお、左端の分草板21Aは、2種の分草板21のうち比較的大きい分草板21である。
【0046】
[刈高検出装置の構成]
図4から図7を用いて、刈高検出装置40の構成について説明する。図4から図7に示すように、刈高検出装置40は、装置本体41と、接地体42と、刈高センサ43と、装置本体支持部材であるユニット支持体44とを備える。刈高検出装置40において、装置本体41、接地体42、および刈高センサ43により、一体的なセンサユニット45が構成されており、このセンサユニット45が、ユニット支持体44に対して左右方向の軸回りに回動可能に支持されている。ユニット支持体44は、分草部50に対して、前後方向の軸回りに回動可能に支持されている。
【0047】
刈高検出装置40は、全体として、分草部50に対して前後方向の軸回りに回動可能に支持されるとともに、センサユニット45を、ユニット支持体44に対して左右方向の軸回りに回動可能に支持させている。刈高検出装置40の前後方向軸回りの回動、およびセンサユニット45の左右方向軸回りの回動は、刈高検出装置40に作用する外力に応じて行われる。以下では、刈高検出装置40に外力が作用していない状態を基準状態とし、特に断りが無い限り基準状態の刈高検出装置40について説明する。
【0048】
センサユニット45において、装置本体41は、例えば金属製の鋳物で構成されたケース51内に、各種のギアやバネ等を所定の軸に支持させた構成を有する。ケース51は、ケース51の本体部をなす右ケース体52と、右ケース体52の左側を蓋状に覆う左ケース体53とによる左右二分割構造を有する。右ケース体52と左ケース体53は、側面視でケース51の周囲の4箇所で固定ボルト55により互いに固定されている。ケース51は、側面視において、概略的に、上辺側を凸側、下辺側を凹側とした湾曲形状を有する(図6参照)。
【0049】
センサユニット45において、接地体42は、ケース51の後端の後側から下方に延出している。また、刈高センサ43は、ケース51の右側面部に付設された態様で設けられている。
【0050】
ユニット支持体44は、帯状の板状部材が平面視で所定の形状をなすように屈曲形成された態様の部材であり、前後方向に延伸している。ユニット支持体44は、前後方向に細長い左側面部44aと、左側面部44aの前端部から右方に向けて直角状をなすように形成された前面部44bと、前面部44bの右端部から後方に向けて直角状をなすように形成された右前側面部44cと、左側面部44aの後端部から右方に向けて直角状をなすように形成された後面部44dとを有する。ユニット支持体44は、上下を開放させるとともに、左側面部44a、前面部44b、右前側面部44c、および後面部44dにより、平面視で、前後に長い矩形状に沿うとともに、右後側の大部分を開放させた形状を有する。
【0051】
このようなユニット支持体44に対し、センサユニット45が、ユニット支持体44により囲まれた空間部分の前部に位置するように設けられている。センサユニット45は、その略全体を、平面視でユニット支持体44の外形が沿う矩形状の範囲内に位置させている。
【0052】
センサユニット45は、ケース51の前端部を、前面部44bの直後方であって左側面部44aの前端部と右前側面部44cとの間に位置させている。また、前後方向について、左側面部44aは、その後側の略半分を、ケース51の後端よりも後側に位置させている。
【0053】
センサユニット45の各部について説明する。装置本体41は、第1軸である前側固定軸61に上下回動可能に設けられている(図7参照)。前側固定軸61は、左右方向を軸方向とする支軸であり、第1軸心P1を中心としてセンサユニット45を回動可能に支持する。
【0054】
前側固定軸61は、装置本体41において、ケース51の前端部近傍に位置している。前側固定軸61は、右端部を、ユニット支持体44の右前側面部44cに固定させた状態で、右前側面部44cから左方に向けて延出している。つまり、前側固定軸61は、右前側面部44cに対して片持ち状に支持された固定軸である。なお、前側固定軸61は、ユニット支持体44に対して固定された軸であればよい。前側固定軸61は、ケース51に対して相対回転可能に支持されている。つまり、ケース51は、前側固定軸61に対して回動可能に支持されている。
【0055】
このように、センサユニット45は、ユニット支持体44に固設された固定軸である前側固定軸61に対して、左右方向を軸方向として片持ち支持の状態で上下回動可能に設けられている(図6、矢印A1参照)。すなわち、ユニット支持体44は、前側固定軸61によってセンサユニット45の装置本体41を上下回動可能に支持している。
【0056】
ユニット支持体44に対するセンサユニット45の第1軸心P1回りの回動に関し、センサユニット45は、ケース51内に設けられたバネ等の弾性部材であるケース戻し部材により、下方回動方向に付勢されている。ケース戻し部材は、例えば、コイル状の部分およびその両端側の延出部を有するトーションバネである。この場合、ケース戻し部材は、コイル状の部分に前側固定軸61を貫通させ、一方の延出部を前側固定軸61側に係止させるとともに他方の延出部をケース51側に係止させた状態で設けられ、前側固定軸61側に対してケース51を下側に押し下げる力を作用させる。これにより、センサユニット45が、前側固定軸61の軸回りに下方に回動する方向に付勢される。
【0057】
一方、ユニット支持体44に対するセンサユニット45の回動に関し、ケース51に設けられた係止突起53bにより、センサユニット45の下方への回動が基準状態の位置で規制されている。係止突起53bは、左ケース体53の前後中央部の上端部に、左ケース体53の一部として、左方に向けて突出形成されている。基準状態において、センサユニット45は、係止突起53bをユニット支持体44の左側面部44aの上縁に当接させることで、ユニット支持体44に対する下方への相対回動を不能としている。
【0058】
このように、センサユニット45は、前側固定軸61回りの回動について、下方回動方向に付勢された状態で、基準状態からのユニット支持体44に対する下方回動が規制されている。したがって、センサユニット45を前側固定軸61回りに上方に回動させるような地面G1からの外力がセンサユニット45に作用することで、センサユニット45は、ケース戻し部材の付勢力に抗して上方に回動し、外力が解除されることで、ケース戻し部材の付勢力によって自動的に下方に回動し、係止突起53bの係止作用によって基準状態の位置に戻る。
【0059】
接地体42は、装置本体41に対して前側固定軸61の後方に位置する第2軸である後側回動軸62により回動可能に支持されている。後側回動軸62は、左右方向を軸方向とする支軸であり、第2軸心P2を中心として、装置本体41のケース51に対して接地体42を回動可能に支持する。
【0060】
後側回動軸62は、ケース51の後端部近傍に位置し、ケース51に対して相対回転可能に支持されている。後側回動軸62のケース51から右方への突出部分に、接地体42が固設されている。接地体42は、装置本体41から下方に延出した部分である接地体本体部42aと、後側回動軸62に対する支持部分である支持アーム部42bとを有する。接地体本体部42aおよび支持アーム部42bは、いずれも所定の形状を有する板状の部分である。
【0061】
接地体本体部42aは、上側から下側にかけて徐々に幅(左右方向の寸法)を広げた下広がりの形状を有するへら状の部分である。接地体本体部42aは、側面視において前側を凸側とした鈍角状の屈曲形状をなしている。支持アーム部42bは、鈍角状の屈曲形状をなす縦壁状の部分であって、ケース51の直後方に位置する接地体本体部42aの上端部から、ケース51に沿うように右前側に延出され、後側回動軸62に固定されている(図7参照)。支持アーム部42bは、左右方向を板厚方向とする前部に後側回動軸62の右端部を貫通させ、ナット68等により後側回動軸62に締結固定されている。
【0062】
このように、接地体42は、後側回動軸62に固定され、第2軸心P2を中心として後側回動軸62と一体的に回動する。接地体42は、その回動範囲において、ケース51に干渉しないように設けられている。接地体42の回動位置に関し、基準状態の刈高検出装置40における接地体42の位置を基準位置とする。
【0063】
接地体42は、装置本体41に対する後側回動軸62回りの相対回動として、次のような回動を行う。すなわち、接地体42は、先端を地面G1に接触させた状態で、コンバイン1が前進することによる地面G1からの引きずり抵抗(接地摺動抵抗)により、先端側を後方に移動させるように回動(後方回動)する(図6、矢印C1参照)。一方、接地体42は、コンバイン1が後進することによる接地摺動抵抗により、先端側を前方に移動させるように回動(前方回動)する(図6、矢印C2参照)。
【0064】
刈高センサ43は、接地体42の後側回動軸62回りの回動量を検出するセンサである。刈高センサ43は、刈高検出装置40が備える第3軸である中間回動軸70に対して設けられ、中間回動軸70の回動量から、接地体42の後側回動軸62回りの回動量を検出する。
【0065】
中間回動軸70は、左右方向を軸方向とする支軸であり、第3軸心P3を中心として、装置本体41のケース51に対して相対回動可能に支持されている。中間回動軸70は、前後方向について、前側固定軸61と後側回動軸62の中間に位置している。
【0066】
刈高センサ43は、ロータリ型のポテンショメータであり、中間回動軸70および後側回動軸62を介して、接地体42の回転位置を検出する。刈高センサ43は、前後方向について、前側固定軸61と後側回動軸62の間に位置している。刈高センサ43は、右ケース体52の右側面部に位置し、ボルト73により前後2箇所で右ケース体52に固定されている。
【0067】
刈高センサ43は、中間回動軸70の右端部の連結を受け、中間回動軸70を検出軸として、直接的には中間回動軸70の第3軸心P3回りの回転位置を検出する。刈高センサ43は、その本体部から上方に信号線43aを延出させており、制御装置200に接続されている。なお、刈高センサ43は、信号線43aの代わりに、本体部において信号線を接続させるコネクタ部を有する構成であってもよい。
【0068】
中間回動軸70は、接地体42の回動にともなう後側回動軸62の回転動力の伝達を受けて回動する。中間回動軸70は、後側回動軸62および中間回動軸70の各軸に対して設けられたギア等を介して、後側回動軸62の回転動力の伝達を受ける。中間回動軸70の回動が刈高センサ43によって検出される。なお、接地体42は、ケース51内に設けられたバネ等の弾性部材である接地体戻し部材が用いられ、ケース戻し部材および接地体戻し部材それぞれの付勢力(トルク)の設定により、後側回動軸62回りの回動について、外力の作用を受けていない状態で所定の基準位置に位置決めされるように設けられている。
【0069】
以上のような構成を備えた刈高検出装置40において、接地体42は、基準位置より後方に位置する状態では、前側固定軸61軸回りの回動を停止させた状態の装置本体41に対し、後側回動軸62回りに回動するように設けられている。すなわち、例えばコンバイン1の機体前進時等において、接地体42が前方からの押圧作用を受けることで基準位置よりも後側に回動した状態では、装置本体41は前側固定軸61回りに回動することなく、接地体42のみが装置本体41に対して後側回動軸62回りに相対回動することとなる。
【0070】
そして、刈高センサ43は、接地体42の基準位置から後方への回動量を検出する。すなわち、接地体42が基準位置にある状態からの接地体42の装置本体41に対する後方への相対回動が、刈高さを検出するための回動として、刈高センサ43によって検出される。
【0071】
一方、接地体42の装置本体41に対する相対回動に関し、接地体42の基準位置から前方への回動については、ケース51の上昇回動をともなうことになる。すなわち、接地体42の基準位置から前方への回動においては、接地体42の回動に連動して、装置本体41が全体的に前側固定軸61回りに上昇回動することとなる。ここで、装置本体41に対する接地体42の基準位置から前方への相対回動においては、中間回動軸70は回動することなく、刈高センサ43による中間回動軸70の回動の検出は行われない。
【0072】
以上のように、刈高検出装置40は、装置本体41に対する接地体42の基準位置からの後方への回動状態において、刈高センサ43による接地体42の回動量の検出が行われるように構成されている。
【0073】
以上のような構成を備えた刈高検出装置40により、コンバイン1は、刈高センサ43による検出信号に基づいて刈取部5の高さ(刈高さ)を検出する。上述のとおり、刈高検出装置40は、接地体42の後方回動を検出するものであるため、主にコンバイン1の機体前進時において、刈高さの検出を行う。
【0074】
刈高検出装置40において、刈高センサ43は、接地体42の回動に連動して回動する中間回動軸70の回動位置を検出することで、分草板21の地面G1からの高さ、つまり刈高さを検出する。刈高センサ43の検出信号は、信号線43aから制御装置200に送られる。制御装置200は、刈高センサ43からの検出信号の入力を受け、その検出信号に基づき、検出結果から算出される刈高さを刈高目標値に保持するように、刈取昇降シリンダ18を動作させ、刈高さを調整する。
【0075】
[刈高検出装置の支持構成]
図4から図7を用いて、刈高検出装置40の支持構成について説明する。刈高検出装置40は、分草部50に対するユニット支持体44の支持構成により、前後方向に沿う軸心線O1を中心に、左右に揺動するように回動可能に支持されている。
【0076】
図4から図7に示すように、分草部50は、刈取部5の下部に設けられた左端の分草フレーム32と、分草フレーム32の前側に設けられる分草板21と、分草フレーム32に固定されるサポートフレーム100とを含む。ここで、刈高検出装置40の支持に関する分草板21および分草フレーム32は、それぞれ左端に位置する分草板21Aおよび分草フレーム32Aである(図3参照)。
【0077】
分草フレーム32は、後側から前側にかけて、前下がりの傾斜部分である後側傾斜部101と、後側傾斜部101とともに鈍角状の角部をなす前上がりの傾斜部分である中間傾斜部102と、中間傾斜部102とともに鋭角状の角部をなす前下がりの傾斜部分である前側傾斜部103とを有する。分草フレーム32は、後側傾斜部101の中間部を横フレーム31の左端部の上方に位置させ、横フレーム31の左端部上に固設された支持部材105を介して、後側傾斜部101を、刈取支持機枠20を構成する横フレーム31に固定させている。
【0078】
サポートフレーム100は、丸パイプ状の部材からなるフレーム部分であり、所定の屈曲形状または湾曲形状を有する。サポートフレーム100は、後側から前側にかけて、前下がりの傾斜部分である後側傾斜部111と、後側傾斜部111とともに鈍角状の角部をなす水平状の部分である水平部112と、水平部112とともに鈍角状の角部をなす前上がりの傾斜部分である前側傾斜部113と、前側傾斜部113とともに鈍角状の角部をなすように斜め後上方に立ち上がった起立部114とを有する。
【0079】
サポートフレーム100の後端部である後側傾斜部111の後端部は、分草フレーム32の中間傾斜部102の下部の前側に溶接等によって固定されている。起立部114は、側面視において分草フレーム32の前側傾斜部103と略平行となる傾斜角度を有し、前側傾斜部103の後側に沿った状態で前側傾斜部103に溶接等によって固定されている。サポートフレーム100は、前後両側を分草フレーム32に溶接等によって固定させており、分草フレーム32とともに、側面視において多角形状をなす閉じたフレーム部分を構成している。
【0080】
分草板21は、分草板本体121と、分草板本体121の後側に設けられたリブ板部122とを有する。分草板本体121は、正面視および平面視において後側から前側にかけて徐々に幅狭となる先鋭形状を有するとともに、側面視において前下がりかつ後下側を凸側とした湾曲形状を有する。リブ板部122は、左右方向を板厚方向とする板状の部分であり、分草板本体121の正面板部の後側において、分草板本体121と一体の部分として設けられている。
【0081】
また、分草部50は、分草板21の後側に設けられた分草板支持部材としてのヒッチ125を含む。ヒッチ125は、長手状の板状部材であり、分草板21に取り付けられるとともに、分草フレーム32に固定されることで、分草板21を分草フレーム32の前方に支持する。ヒッチ125は、リブ板部122に対してボルト126等により上下2箇所で締結固定されている。ヒッチ125は、上部の後側を、分草フレーム32の先端部をなす円筒状の先端形成部材128の前側に溶接等によって固定させている。
【0082】
以上のような構成を備えた分草部50に対して、刈高検出装置40は、前側の軸支部である前側軸支部130Aと、後側の軸支部130である後側軸支部130Bとにより、前後方向の軸心線O1を回動軸として回動可能に支持されている。前側軸支部130Aは、分草板21の後側に設けられ、後側軸支部130Bは、サポートフレーム100に設けられている。
【0083】
前側軸支部130Aは、分草板21の後側に設けられた前支持部であるボス部132と、ユニット支持体44の前端部に設けられ、ボス部132に支持された前支持軸部131とを有する。前側軸支部130Aは、ユニット支持体44の前面部44bから前方に向けて突設された前支持軸部131を、ヒッチ125の下端部に設けられたボス部132に支承させた構成を有する。
【0084】
前支持軸部131は、ユニット支持体44と一体の部分であり、軸心を軸心線O1に一致させている。ボス部132は、後側を開口させた中空円筒状の部分であり、ヒッチ125の下端部に溶接等により固定されている。前支持軸部131は、前部をボス部132内に挿入させた状態でブッシュ等の軸受部材を介してボス部132に回動可能に支持されるとともに、止めネジ137およびロックナット138によってボス部132に対して抜け止めされている。このように、前側軸支部130Aは、分草部50に対して、刈高検出装置40の前側を、前後方向を回動軸として回動可能に支持している。
【0085】
前記後側軸支部130Bは、サポートフレーム100に設けられた後支持部であるステー142と、ユニット支持体44の後端部に設けられ、ステー142に支持された後支持軸部141とを有する。後側軸支部130Bは、ユニット支持体44の後面部44dから後方に向けて突設された後支持軸部141を、サポートフレーム100に対して支持プレート143を介して設けられたステー142に支承させた構成を有する。
【0086】
後支持軸部141は、ユニット支持体44と一体の部分であり、軸心を軸心線O1に一致させており、前支持軸部131と同軸心上に配置されている。支持プレート143は、サポートフレーム100の前側傾斜部113の下部の左側に溶接等によって固設されている。ステー142は、細長い矩形板状の部材を略「L」字状に屈曲形成した部材であり、ボルト145等によって前後2箇所で支持プレート143に固定されている。ステー142は、前側の支持面部142bをユニット支持体44の後面部44dの後側に近接対向させ、後支持軸部141を回動可能に支持している。このように、後側軸支部130Bは、分草部50に対して、刈高検出装置40の後側を、前側軸支部130Aと同軸上に前後方向を回動軸として回動可能に支持している。
【0087】
以上のように、刈高検出装置40は、分草部50に対してユニット支持体44を前後方向の軸心線O1回りに回動可能に支持させことで、ユニット支持体44に支持されたセンサユニット45を左右揺動可能に支持させている。
【0088】
刈高検出装置40は、前後方向の軸回りの回動について、前側軸支部130Aに設けられた戻しバネ147により、所定の中立位置に位置するように弾性的に位置決めされている。戻しバネ147は、いわゆるトーションバネであり、ボス部132から突出した前支持軸部131を貫通させるとともに、前支持軸部131の上方においてユニット支持体44の前面部44bから前方に向けて係止ピン148に係止されている。
【0089】
[刈高検出装置の動作]
コンバイン1による通常作業時、つまり機体前進状態での作業時には、刈高さが設定値に保持されるように、刈高検出装置40による刈高さの検出値に基づいて、刈高さの制御が行われる。刈高さの検出は、接地体42が装置本体41に対する回動位置を基準位置より後方とした状態で行われる。
【0090】
機体前進時において、先端を地面G1に接触させた状態で摺動する接地体42は、接地摺動抵抗により、装置本体41のケース51に対して、基準位置から後側回動軸62回りに後方に回動する(図6、矢印C1参照)。接地体42は、後側回動軸62と一体的に第2軸心P2回りに回動し、後側回動軸62の回動がギア等を介して中間回動軸70に伝達され、この中間回動軸70の回動が刈高センサ43によって検出され、中間回動軸70の回動量に基づいて刈高さが検出される。
【0091】
また、例えば接地体42が接地した状態で機体の操向操作が行われた場合等、刈高検出装置40に横方向の外力が作用した場合、刈高検出装置40は、前側軸支部130Aおよび後側軸支部130Bにより、前後方向の軸心線O1回りに回動して逃げることになる。刈高検出装置40に対する横方向の外力の作用が無くなると、戻しバネ147および係止ピン148による付勢構造により、刈高検出装置40は、所定の中立位置に戻ることになる。
【0092】
[コンバインの制御構成]
コンバイン1の制御構成について、図8を用いて説明する。図8に示すように、コンバイン1は、制御装置200を備える。制御装置200は、コンバイン1が備える各種センサ等からの入力信号に基づき、コンバイン1が備える各部を制御する。制御装置200は、各種演算処理や制御を実行する演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶装置、データ入出力用の入出力インターフェイス等の入出力装置(入出力回路)、クロック回路等の周辺回路等をバス等により接続した構成を備える。制御装置200のCPUは、ROM等に記憶された各種のプログラムに従って演算処理を行う。
【0093】
図8に示すように、コンバイン1は、制御装置200の入力装置(入力回路)に電気的に接続された構成として、刈高検出装置40の刈高センサ43のほか、車速センサ201、刈高目標値設定操作部202、および刈高モード切換スイッチ203を有する。制御装置200は、これらのセンサやスイッチ等からの信号の入力を受け、これらの信号に基づいて制御信号を生成する。
【0094】
制御装置200は、機能部として、エンジン制御部211と、車速制御部212と、車速設定部213と、刈取昇降制御部214と、刈高目標設定部215と、を有する。
【0095】
制御装置200は、エンジン制御部211により、エンジン11の出力制御として次のような制御を行う。すなわち、エンジン制御部211は、エンジン11の回転数(以下「エンジン回転数」という。)が、人為操作されるエンジン回転数操作部材(図示略)による設定回転数となるように、エンジン回転数を変更させるアクチュエータ(図示略)の動作制御を行う。
【0096】
エンジン回転数操作部材は、例えばアクセルダイヤル等の操作部材であり、運転部14に設けられている。エンジン回転数を変更させるアクチュエータは、例えばエンジン11が有する燃料噴射装置である。燃料噴射装置は、燃料タンクから燃料を吸い込む燃料供給ポンプと、燃料供給ポンプから圧送される燃料を蓄圧状態で貯留するコモンレールと、コモンレール内の蓄圧燃料をエンジン11の各気筒に噴射する複数のインジェクタとを含んで構成されている。
【0097】
車速センサ201は、コンバイン1(走行機体4)の走行速度である車速を検出するセンサである。制御装置200は、車速センサ201からの検出信号の入力を受け、車速を検知する。制御装置200は、車速センサ201の検出信号に基づき、車速制御部212により車速の制御を行う。
【0098】
コンバイン1は、車速に関する駆動部220として、走行変速を行うための走行用のHSTを有する。ここで、「HST」とは、油圧ポンプを駆動させることで発生させた油圧を油圧モータで再び回転力に変換する方式を採用した油圧式無段変速装置である。HSTは、互いに流体的に接続された可変容積型のポンプおよびモータと、ポンプおよびモータそれぞれに対応した電磁弁と、出力軸とを有する。HSTにおいては、エンジン11からの動力を受けつつポンプ用の電磁弁を介してポンプの調整駆動(走行駆動調整)が行われ、調整駆動によるモータの駆動が出力軸に伝達される。
【0099】
走行用のHSTの出力軸は、走行部2を構成する左右のクローラ部3,3に対して駆動力の伝達を行うための伝動機構に連動連結されている。この伝動機構は、遊星歯車群等を含んで構成されており、左右のクローラ部3の駆動スプロケット3bに駆動力を伝達する左右の出力軸を有する。
【0100】
制御装置200は、主変速レバー17の前後回動操作位置(操作量)についての検出信号の入力を受け、その検出信号に基づいて制御情報を生成し、生成した制御情報に基づき、駆動部220の駆動を制御する。主変速レバー17の操作量は、例えばロータリエンコーダやロータリポテンショメータ等により検出される。制御装置200は、HSTに対し、電磁弁の制御を行うことでポンプおよびモータの駆動を制御し、出力軸から伝動機構への動力伝達を制御する。
【0101】
このような構成において、車速センサ201は、車速として、例えばクローラ部3の回転速度や走行用のHSTの出力軸の回転速度を検出する。制御装置200は、車速制御部212により、車速センサ201によって検出される車速が主変速レバー17等の人為操作に応じた速度となるように、駆動部220を制御する。
【0102】
車速設定部213には、車速制御部212による車速の制御に用いられる設定速度等があらかじめ設定され記憶される。なお、設定速度の設定に関しては、運転部14にスイッチやダイヤル等の車速設定操作部を設け、運転席16に着座しているオペレータの操作により設定可能な構成としてもよい。
【0103】
制御装置200は、刈取昇降制御部214により、刈高センサ43からの検出信号に基づき、刈高さが刈高目標値に保持されるように、刈取昇降シリンダ18を動作させて刈取部5の昇降制御を行う。制御装置200は、刈取昇降シリンダ18の油圧制御用の電磁弁221の動作を制御することにより、刈取昇降シリンダ18の伸縮動作を制御する。
【0104】
刈高目標設定部215には、刈取昇降制御部214による刈取部5の昇降制御に用いられる刈高目標値が設定され記憶される。刈高目標設定部215に対する刈高目標値の設定は、刈高目標値設定操作部202により行われる。
【0105】
刈高目標値設定操作部202は、運転部14において、運転席16の周囲に設けられており、運転席16に着座しているオペレータにより操作される。刈高目標値設定操作部202は、例えばスイッチやダイヤル等の操作具により構成されており、刈高目標値設定スイッチや刈高目標値設定ダイヤル等として設けられる。刈高目標値は、例えば3cmや5cm等の値に設定される。
【0106】
制御装置200は、刈取部5の高さの制御モードとして、通常モードと、通常モードよりも刈高目標値の大きさが小さい倒伏モードとを有する。倒伏モードは、作物の品種や生育の状況等により刈取対象の作物が倒伏した状態の作物(倒伏作物)である場合に用いられるモードであり、倒伏作物の刈取りは、通常モードに比べて低い刈高さにより行われる。したがって、刈取部5の高さの制御モードが倒伏モードとなることで、刈取昇降制御部214による刈取部5の昇降制御に用いられる刈高目標値が、通常モードに比べて小さくなる。
【0107】
通常モードと倒伏モードの切換えは、刈高モード切換操作部としての刈高モード切換スイッチ203の操作により行われる。刈高モード切換スイッチ203は、運転部14において、運転席16の周囲に設けられており、運転席16に着座しているオペレータにより操作される。
【0108】
あくまでも一例であるが、通常モードにおける刈高目標値は、2~5cmの範囲内の値であり、倒伏モードにおける刈高目標値は、0~1cmの範囲内の値である。また、刈高目標値は、通常モードおよび倒伏モードの各モードにおいて、刈高目標値設定操作部202の操作により設定される。
【0109】
具体的に、例えば、刈高目標値設定操作部202が刈高目標値を1cm間隔で設定操作可能に構成されている場合を想定する。この場合、各モードにおける刈高目標値の上記の数値範囲を採用すると、例えば、通常モードでは、刈高目標値設定操作部202の操作により、刈高目標値が2cm、3cm、4cm、および5cmのいずれかの値に設定可能となり、倒伏モードでは、刈高目標値設定操作部202の操作により、刈高目標値が0cmおよび1cmのいずれかの値に設定可能となる。
【0110】
また、制御装置200における刈取部5の高さの制御モードの認識の態様として、刈高目標値設定操作部202の操作による刈高目標値の指示値に基づいて通常モードと倒伏モードの切換えが行われてもよい。具体的には、例えば、刈高目標値設定操作部202の操作によって刈高目標値を0~5cmの範囲で1cm間隔でN(N:整数)cmで設定可能とした場合を想定する。この場合、刈高目標値設定操作部202の操作による刈高目標値の設定値が2cm、3cm、4cm、5cmのいずれかの値に設定された状態では、通常モードが保持され、同設定値が0cm、1cmのいずれかの値に設定されることで、倒伏モードが発動する。
【0111】
[刈取昇降・車速制御]
以上のような構成を備えたコンバイン1においては、制御装置200により、刈取部5の昇降制御、つまり刈高さの制御と、車速の制御とを関連付けた制御(以下、「刈取昇降・車速制御」という。)が行われる。刈取昇降・車速制御について説明する。なお、刈取昇降・車速制御の説明においては、便宜上、刈高さの制御に関する刈高目標値を「刈高目標値R0」とし、車速の制御に関する設定速度を「設定速度V0」とする。
【0112】
刈取昇降・車速制御は、車速の制御に関し、主変速レバー17の操作等の人為操作に応じた車速制御に対して優先して行われる。すなわち、刈取昇降・車速制御によれば、主変速レバー17等の操作が行われることなく、刈高さ制御との関係で自動的に車速を変化させる制御が行われる。
【0113】
刈取昇降・車速制御において、制御装置200は、刈高検出装置40により検出された刈高さが刈高目標値R0を上回っている場合または刈高目標値R0を下回っている場合に、刈高検出装置40により検出される刈高さが刈高目標値R0となるように刈取部5の高さを制御するとともに、走行機体4の車速を減速させる。
【0114】
すなわち、制御装置200は、刈取昇降制御部214による刈高センサ43からの検出信号に基づく刈高目標値R0を基準とした刈高さの制御に連動して、刈高検出装置40により検出された刈高さの値(以下「刈高検出値R1」とする。)が刈高目標値R0からずれている場合に、車速制御部212により車速を減速させる制御を行う。なお、刈高目標値R0は、制御装置200においてROM等の記憶装置にあらかじめ設定され記憶される。
【0115】
具体的には、制御装置200は、刈高検出値R1が刈高目標値R0よりも小さい場合、刈高さを刈高目標値R0とするために刈取部5を上昇させるとともに、車速を減速させる。同様に、制御装置200は、刈高検出値R1が刈高目標値R0よりも大きい場合、刈高さを刈高目標値R0とするために刈取部5を下降させるとともに、車速を減速させる。
【0116】
そして、制御装置200は、車速を減速させた後、刈高検出値R1が刈高目標値R0となることで、車速制御部212により、減速前の速度、つまり主変速レバー17の操作等の人為操作に応じた速度に車速を戻す制御を行う。
【0117】
以上のように、本実施形態では、刈高さを検出し、検出した刈高さ(刈高検出値R1)があらかじめ設定された刈高目標値R0となるように刈取部5の高さを制御するコンバイン1の制御方法として、次のような制御が行われる。すなわち、刈高検出値R1が刈高目標値R0を上回っている場合または刈高目標値R0を下回っている場合に、検出される刈高さが刈高目標値R0となるように刈取部5の高さを制御するとともに、車速を減速させる制御である。
【0118】
このような制御を行うことにより、刈取部5の昇降にともなって車速が減速されるので、刈取部5が昇降することによる刈残しや地面G1に対する刈取部5の突っ込みを抑制することができる。ここで、刈取部5の突っ込みは、刈取部5の前部に設けられた分草板21等が地面G1に突き刺さることであり、場合によっては、地面G1から穀稈の株が抜ける株抜けや、刈取部5の刈刃装置24等における土や作物等の詰まりを生じさせ、作業効率を低下させる原因となり得る。したがって、刈取部5の突っ込みが抑制されることで、作業効率を向上させることができる。
【0119】
刈取部5による刈残しは、刈取部5の上昇時において引起装置22による穀稈の引起しが不十分となること等により生じやすい。このため、刈取部5の上昇にともなって車速を減速させることで、引起装置22による穀稈の引起しの作用を向上させることができ、刈残しを抑制することができ、仮に刈残しが生じた場合であっても、刈残しが発生する距離を短くすることができる。
【0120】
また、刈取部5の突っ込みは、刈取部5の下降時に生じやすい。このため、刈取部5の下降にともなって車速を減速させることで、刈取部5の突っ込みを抑制することができる。すなわち、車速が低くなることで、刈取部5が地面G1に突っ込もうとする手前で刈取部5を上昇させる時間が稼げるため、刈取部5の突っ込みを抑制することができる。また、車速が低くなることで、仮に刈取部5が地面G1に突っ込んだ場合であっても、突っ込みの程度を小さく抑える(突っ込みの距離を短くする)ことができ、刈取部5の突っ込みが作業に与える影響を小さくすることができる。
【0121】
刈取昇降・車速制御は、例えば倒伏作物の刈取作業において用いられる。倒伏作物の刈取作業においては、引起装置22による穀稈の引起しを確実に行うため、通常よりも刈高目標値R0が低く設定される。本実施形態では、刈取部5の高さの制御モードとして、通常モードと、通常モードよりも刈高目標値R0が低い倒伏モードとがあり、刈取昇降・車速制御は、倒伏モードにおいて実行される。
【0122】
すなわち、制御装置200は、刈取部5の高さの制御モードが倒伏モードであることを条件として、刈高検出装置40により検出される刈高さが刈高目標値R0となるように刈取部5の高さを制御するとともに、車速を減速させる。このように、刈取昇降・車速制御は、刈高モード切換スイッチ203の操作によって倒伏モードが選択された状態で行われる。なお、上述したように、倒伏モードは刈高目標値設定操作部202の操作によっても発動する。
【0123】
このように、倒伏作物の刈取作業のために刈高目標値R0が比較的低く設定された状態、つまり倒伏モードで刈取昇降・車速制御が行われることにより、倒伏作物の刈取作業において生じやすい刈残しや刈取部5の突っ込みを効果的に抑制することができる。また、倒伏していない状態の作物の刈取作業のように、通常モードでの刈取作業において、刈取部5が上昇したり下降したりするたびに車速が減速した場合、作業効率が低下することが考えられる。そこで、倒伏モードでのみ刈取昇降・車速制御を行うことにより、通常モードでの作業効率の低下を抑制することができる。
【0124】
通常モードにおいては、倒伏モードに比べて刈高目標値R0の値が大きいので、刈取部5の突っ込みが生じる可能性が低く、また、穀稈の穂先の位置が高いため、刈取部5が昇降することに起因する倒伏穀稈の刈残しの可能性が低い。このため、通常モードでは、作業性を優先して車速を減速させることなく、良好な作業性を得ることができる。
【0125】
制御装置200による制御態様の一例について、図9に示すフローチャートを用いて説明する。図9は、制御装置200による第1の制御態様を示すフローチャートである。以下に説明する制御は、制御装置200のCPUがRAM等の記憶装置に記憶された所定の制御プログラムを読み出して実行することにより行われる。
【0126】
図9に示すように、まず、刈取部5の高さの制御モードが倒伏モードか否かの判断が行われる(S10)。このステップでは、刈高モード切換スイッチ203によるモードの選択状態により、あるいは刈高目標値設定操作部202による刈高目標値の指示値により、倒伏モードであるか否かが判断される。
【0127】
ステップS10において、倒伏モードであると判断されなかった場合(S10、NO)、刈取昇降・車速制御は行われない。この場合、刈取部5の高さの制御モードは通常モードであり、刈取部5の昇降にともなう車速の減速制御は行われない。制御装置200は、刈取昇降・車速制御を行うに際し、刈取部5の高さの制御モードが倒伏モードか否かの判断を常時行う。
【0128】
一方、ステップS10において、倒伏モードであると判断された場合(S10、YES)、刈取昇降・車速制御が行われる。すなわち、まず、刈高検出値R1が刈高目標値R0を上回っていることと、刈高検出値R1が刈高目標値R0を下回っていることとの2つの条件のいずれかに該当するか否かが判断される(S20)。
【0129】
ステップS20において、上記2つの条件のいずれにも該当しないと判断された場合(S20、NO)、車速の減速は行われず、つまり主変速レバー17等の人為操作に応じた車速が保持され、処理はステップS10に戻る。一方、ステップS20において、上記2つの条件のいずれかに該当すると判断された場合(S20、YES)、車速が減速される(S30)。
【0130】
すなわち、刈高検出値R1が刈高目標値R0を上回っている場合、刈取部5が下降制御されるとともに、車速が減速され、刈高検出値R1が刈高目標値R0を下回っている場合、刈取部5が上昇制御されるとともに、車速が減速される。車速が減速された後、刈高検出値R1が刈高目標値R0となることで、例えば主変速レバー17の操作位置に応じた速度等の減速前の速度に車速が戻される。
【0131】
以上のような刈取昇降・車速制御によれば、倒伏モードにおいて刈取部5の昇降状態に応じて自動的に車速の減速が行われることから、例えばオペレータが刈取部5の昇降操作に反応して手動で車速を減速する場合と比べて早いタイミングで車速を落とすことができ、車速の減速のタイミングが遅れることを防止することができる。車速の減速のタイミングの遅れは、刈取部5による刈残しや刈取部5の突っ込みの原因となり得る。したがって、本実施形態に係る制御内容によれば、オペレータの負担を軽減しながら、刈取部5による刈残しや刈取部5の突っ込みを抑制することができる。
【0132】
また、刈取昇降・車速制御において、車速を減速させる際の制御態様の一例として、次のような制御が行われる。すなわち、制御装置200は、刈高検出値R1が刈高目標値R0に所定値を加えた値を上回っている場合または刈高目標値R0から所定値を減じた値を下回っている場合に、車速を減速させる。
【0133】
刈取部5の上昇側の所定値を第1の所定値ΔRaとし、刈取部5の下降側の所定値を第2の所定値ΔRbとした場合、制御装置200は、刈高検出値R1が刈高目標値R0に第1の所定値ΔRaを加えた値を上回ること、または刈高検出値R1が刈高目標値R0から第2の所定値ΔRbを減じた値を下回ることを条件として、車速を減速させる。なお、第1の所定値ΔRaおよび第2の所定値ΔRbは、制御装置200においてROM等の記憶装置にあらかじめ設定され記憶される。
【0134】
言い換えると、刈取昇降・車速制御において、刈高検出値R1の比較対象となる刈高目標値R0が、車速を減速させる制御に関して、刈高目標値R0±所定値の幅を持った数値範囲として設定される。この数値範囲は、(刈高目標値R0-第2の所定値ΔRb)を下限値(以下「下限値(R0-ΔRb)」とする。)とし、(刈高目標値R0+第1の所定値ΔRa)を上限値(以下「上限値(R0+ΔRa)」とする。)とした範囲となる。すなわち、制御装置200は、刈高検出値R1が上限値(R0+ΔRa)を上回ると車速を減速させ、刈高検出値R1が下限値(R0-ΔRb)を下回ると車速を減速させる。
【0135】
したがって、刈高検出値R1の値の範囲と各範囲に対応した制御内容との関係は次のとおりとなる。刈高検出値R1が下限値(R0-ΔRb)を下回っている場合は、刈取部5の上昇制御と、車速の減速が行われる。また、刈高検出値R1が下限値(R0-ΔRb)から刈高目標値R0までの範囲にある場合は、刈取部5の上昇制御のみが行われる。また、刈高検出値R1が刈高目標値R0から上限値(R0+ΔRa)までの範囲にある場合は、刈取部5の下降制御のみが行われる。また、刈高検出値R1が上限値(R0+ΔRa)を上回っている場合は、刈取部5の下降制御と、車速の減速が行われる。
【0136】
なお、第1の所定値ΔRaと第2の所定値ΔRbの値は互いに同じ大きさであってもよく、互いに異なる値であってもよい。また、第1の所定値ΔRaおよび第2の所定値ΔRbの値は、例えば20mmとして設定される。この場合、第1の所定値ΔRaと第2の所定値ΔRbが互いに同じ大きさのときは、刈高検出値R1の値が刈高目標値R0±20mmの範囲を超えることで、車速が減速されることになる。
【0137】
制御装置200による制御態様の一例について、図10に示すフローチャートを用いて説明する。図10は、制御装置200による第2の制御態様を示すフローチャートである。なお、上述した第1の制御態様と重複する内容については適宜説明を省略する。
【0138】
図10に示すように、まず、刈取部5の高さの制御モードが倒伏モードか否かの判断が行われる(S110)。
【0139】
ステップS110において、倒伏モードであると判断されなかった場合(S110、NO)、刈取昇降・車速制御は行われない。一方、ステップS110において、倒伏モードであると判断された場合(S110、YES)、刈高検出値R1が上限値(R0+ΔRa)を上回っていることと、刈高検出値R1が下限値(R0-ΔRb)を下回っていることとの2つの条件のいずれかに該当するか否かが判断される(S120)。
【0140】
ステップS120において、上記2つの条件のいずれにも該当しないと判断された場合(S120、NO)、車速の減速は行われず、処理はステップS110に戻る。一方、ステップS120において、上記2つの条件のいずれかに該当すると判断された場合(S120、YES)、車速が減速される(S130)。
【0141】
なお、図10を用いて説明した一連の制御において、刈高検出値R1に基づく刈高目標値R0を基準とした刈取部5の昇降制御は、車速の減速に関する制御とともに行われる。
【0142】
以上のように、車速の制御に関して、刈高目標値R0を基準値とした数値範囲を設定し、車速を減速させるまでの刈高検出値R1の値について刈高目標値R0に対して幅を持たせる制御が行われる。このような制御によれば、第1の制御態様により得られる作用効果に加え、刈取部5の昇降幅が比較的大きい場合のみ車速を減速させることが可能となるので、刈取部5による刈残しおよび刈取部5の突っ込みを抑制することができるとともに、刈取部5の昇降幅が比較的小さい場合のハンチングを防止することができる。
【0143】
図9および図10の各図に示すフローチャートのステップS30、S130に関し、車速を減速させる際の制御態様の一例として、刈取部5の上昇量および下降量が大きいほど、車速の減速の度合を大きくする制御が行われる。
【0144】
すなわち、制御装置200は、刈高検出値R1の刈高目標値R0を上回った量が大きいほど、車速の減速の度合いを大きくし、刈高検出値R1の刈高目標値R0を下回った量が大きいほど、車速の減速の度合を大きくする。刈高検出値R1の刈高目標値R0を上回った量を「上昇量T1」とし、刈高検出値R1の刈高目標値R0を下回った量を「下降量T2」とする。
【0145】
車速の減速制御に関し、上述したように刈高検出値R1の比較対象について上限値(R0+ΔRa)および下限値(R0-ΔRb)が用いられる場合は、刈高検出値R1の上限値(R0+ΔRa)を上回った量が大きいほど、車速の減速の度合いが大きくなり、刈高検出値R1の下限値(R0-ΔRb)を下回った量が大きいほど、車速の減速の度合いが大きくなる。
【0146】
車速の減速制御において、「減速の度合」は、減速度(負の加速度)や減速率を含む概念である。上昇量T1および下降量T2が大きいほど減速の度合を大きくすることには、例えば次のような制御態様が含まれる。
【0147】
まず、上昇量T1および下降量T2の増加に応じて、減速度を徐々に大きくする制御態様がある。この制御態様では、例えば、上昇量T1および下降量T2の増加量に対して減速度が比例的に大きくされる。
【0148】
また、上昇量T1および下降量T2の増加に応じて、その時点での車速に対する減速率を変化させる制御態様がある。この制御態様では、具体的には例えば次のような制御が行われる。
【0149】
上昇量T1および下降量T2の値が、増加量に応じて所定の数値範囲(例えば10mm)で複数の範囲に区切られ、各範囲に応じた減速率があらかじめ設定される。これらの範囲を、上昇量T1および下降量T2それぞれについて値の小さい方から大きい方にかけて順に第1の範囲、第2の範囲、第3の範囲とした場合、各範囲に対応した減速率に係る係数(N1、N2、N3)が車速制御部212等においてあらかじめ設定され記憶される。
【0150】
例えば、第1の範囲に対応した係数N1は0.9、第2の範囲に対応した係数N2は0.7、第3の範囲に対応した係数N3は0.5等として設定される。この場合、車速を減速するタイミングでの車速を速度V(m/s)とすると、上昇量T1および下降量T2が比較的小さい第1の範囲では、速度V(m/s)が0.9・V(m/s)に(90%の速度に)減速される。また、上昇量T1および下降量T2が中程度の第2の範囲では、速度V(m/s)が0.7・V(m/s)に(70%の速度に)減速される。また、上昇量T1および下降量T2が比較的大きい第3の範囲では、速度V(m/s)が0.5・V(m/s)に(50%の速度に)減速される。
【0151】
このように、本制御態様に係る減速率とは、速度V(m/s)に掛けられる係数の減少率に対応しており、この係数の値が小さくなるほど、減速率による減速の度合いは大きくなる。なお、刈取作業時における車速は、例えば、1~2(m/s)程度である。
【0152】
このように、上昇量T1および下降量T2が大きいほど、車速の減速の度合を大きくすることにより、刈取部5による刈残しや刈取部5の突っ込みを抑制することができる。すなわち、上昇量T1および下降量T2が大きいほど、刈取部5による刈残しや刈取部5の突っ込みが生じる可能性が高くなるため、そのような状況に対応して車速の減速度合を大きくすることで、刈残しや突っ込みを効果的に抑制することができる。
【0153】
また、車速を減速させる際の制御態様の一例として、あらかじめ所定の設定速度V0を設定し、車速センサ201によって検出される車速が設定速度V0を超えている場合に、車速が設定速度V0となるように減速させる制御が行われる。
【0154】
すなわち、制御装置200は、刈取部5を下降または上昇させる際の車速が、あらかじめ設定された設定速度V0を超えている場合に、車速が設定速度V0となるように車速を減速させる。設定速度V0は、制御装置200においてROM等の記憶装置にあらかじめ設定され記憶される。
【0155】
車速の減速制御において、設定速度V0が車速の目標値とされ、車速センサ201によって検出される車速(以下「検出車速V1」とする。)が設定速度V0となるように車速が減速される。つまり、車速の減速制御において、設定速度V0が車速の下限値となる。したがって、検出車速V1が設定速度V0以下である場合、車速の減速は行われないことになる。
【0156】
設定速度V0は、刈取作業時における車速に対して十分に遅い速度として設定される。具体的には、あくまでも一例であるが、設定速度V0は、0.5(m/s)程度である。
【0157】
このような設定速度V0を目標値とした車速の減速制御において、上述したような上昇量T1および下降量T2のそれぞれを上回った量が大きいほど減速の度合を大きくする制御が行われてもよい。この場合、設定速度V0は、例えば、刈取部5の昇降量に応じて減速の度合を大きくする制御において刈取作業時における一般的な車速に対して最も減速した状態での車速よりも遅い速度として設定される。
【0158】
このように、設定速度V0を目標値として車速を減速する制御を行うことにより、減速した状態の車速を確実に低速の車速とすることができ、刈取部5による刈残しや刈取部5の突っ込みを抑制することができる。すなわち、減速した状態の車速が十分に低速となっていない場合、刈取部5による刈残しや刈取部5の突っ込みが生じる可能性が高くなるため、そのような状況に対応して車速を設定速度V0まで減速させることで、刈残しや突っ込みを効果的に抑制することができる。
【0159】
また、設定速度V0を用いて車速を減速させる際の制御態様の一例として、検出車速V1と設定速度V0の差が大きいほど、車速の減速の度合を大きくする制御が行われる。
【0160】
すなわち、制御装置200は、刈取部5を下降または上昇させる際の車速(検出車速V1)と設定速度V0との差が大きいほど、車速の減速の度合を大きくする。検出車速V1と設定速度V0の差を「速度差ΔV」とする。
【0161】
車速の減速制御において、速度差ΔVが大きいほど減速の度合を大きくすることには、例えば次のような制御態様が含まれる。
【0162】
まず、速度差ΔVが大きくなるにつれて、減速度を徐々に大きくする制御態様がある。この制御態様では、例えば、速度差ΔVの値に対して減速度が比例的に大きくされる。
【0163】
また、速度差ΔVが大きくなるにつれて、その時点での車速に対する減速率を変化させる制御態様がある。この制御態様では、具体的には例えば次のような制御が行われる。
【0164】
速度差ΔVの値が所定の数値範囲で複数の範囲に区切られ、各範囲に応じた減速率があらかじめ設定される。これらの範囲を、速度差ΔVについて値の小さい方から大きい方にかけて順に第1の範囲、第2の範囲、第3の範囲とした場合、各範囲に対応した減速率に係る係数(N1、N2、N3)が車速制御部212等においてあらかじめ設定され記憶される。
【0165】
例えば、第1の範囲に対応した係数N1は0.9、第2の範囲に対応した係数N2は0.7、第3の範囲に対応した係数N3は0.5等として設定される。この場合、車速を減速するタイミングでの車速を速度V(m/s)とすると、速度差ΔVが比較的小さい第1の範囲では、速度V(m/s)が0.9・V(m/s)に(90%の速度に)減速される。また、速度差ΔVが中程度の第2の範囲では、速度V(m/s)が0.7・V(m/s)に(70%の速度に)減速される。また、速度差ΔVが比較的大きい第3の範囲では、速度V(m/s)が0.5・V(m/s)に(50%の速度に)減速される。
【0166】
このように、速度差ΔVが大きいほど、車速の減速の度合を大きくすることにより、刈取部5による刈残しや刈取部5の突っ込みを抑制することができる。すなわち、速度差ΔVが大きいということは、検出車速V1が速いということであり、検出車速V1が速いほど、刈取部5による刈残しや刈取部5の突っ込みが生じる可能性が高くなるため、そのような状況に対応して車速の減速度合を大きくすることで、刈残しや突っ込みを効果的に抑制することができる。
【0167】
制御装置200による設定速度V0を用いた制御態様の一例について、図11に示すフローチャートを用いて説明する。図11は、制御装置200による第3の制御態様を示すフローチャートである。なお、上述した第1、第2の制御態様と重複する内容については適宜説明を省略する。
【0168】
図11に示すように、まず、刈取部5の高さの制御モードが倒伏モードか否かの判断が行われ(S210)、倒伏モードであると判断されなかった場合(S210、NO)、刈取昇降・車速制御は行われず、倒伏モードであると判断された場合(S210、YES)、図10に示すステップS120と同様のステップS220が行われる。
【0169】
ステップS220において、2つの条件のいずれにも該当しないと判断された場合(S220、NO)、車速の減速は行われず、処理はステップS210に戻る。一方、ステップS220において、上記2つの条件のいずれかに該当すると判断された場合(S220、YES)、検出車速V1が設定速度V0を上回っているか否かが判断される(S230)。
【0170】
ステップS230において、検出車速V1が設定速度V0を上回っていると判断されなかった場合(S230、NO)、車速の減速は行われない。一方、ステップS230において、検出車速V1が設定速度V0を上回っていると判断された場合(S230、YES)、車速が減速される(S240)。
【0171】
ステップS240の車速の減速制御においては、検出車速V1が設定速度V0となるまで車速が減速される。また、ステップS240においては、上昇量T1および下降量T2が大きいほど車速の減速の度合を大きくする制御と、速度差ΔVが大きいほど車速の減速の度合を大きくする制御との少なくともいずれか一方の制御が行われる。
【0172】
なお、図11を用いて説明した一連の制御において、刈高検出値R1に基づく刈高目標値R0を基準とした刈取部5の昇降制御は、車速の減速に関する制御とともに行われる。
【0173】
以上のような刈取昇降・車速制御によれば、刈取部5の昇降状態に応じて自動的に車速の減速が行われることから、オペレータの負担を軽減しながら、刈取部5による刈残しや刈取部5の突っ込みを効果的に抑制することができる。
【0174】
車速を減速させる際の制御態様の一例として、上昇量T1および下降量T2に応じて設定速度V0を複数設定し、上昇量T1および下降量T2が大きいほど設定速度V0が低くなるように設定速度V0を変化させる制御が行われる。すなわち、設定速度V0を用いた車速制御において、設定速度V0は、上昇量T1または下降量T2が大きいほど低くなるように設定されている。この制御態様では、具体的には例えば次のような制御が行われる。
【0175】
上昇量T1および下降量T2の値が、増加量に応じて所定の数値範囲(例えば10mm)で複数の範囲に区切られ、各範囲に応じた設定速度V0があらかじめ設定される。これらの範囲を、上昇量T1および下降量T2それぞれについて値の小さい方から大きい方にかけて順に第1の範囲、第2の範囲、第3の範囲とした場合、各範囲に対応した設定速度V0が車速制御部212等においてあらかじめ設定され記憶される。
【0176】
例えば、第1の範囲に対応した設定速度V0である第1設定速度V01が0.7(m/s)として設定され、第2の範囲に対応した設定速度V0である第2設定速度V02が0.5(m/s)として設定され、第3の範囲に対応した設定速度V0である第3設定速度V03が0.3(m/s)として設定される。
【0177】
このように、上昇量T1および下降量T2の増加量に応じて設定速度V0を減速側に変化させることにより、刈取部5による刈残しや刈取部5の突っ込みを抑制することができる。すなわち、上昇量T1および下降量T2が大きいほど、刈取部5による刈残しや刈取部5の突っ込みが生じる可能性が高くなるため、そのような状況に対応して減速する車速の下限値となる設定速度V0を低くすることで、刈残しや突っ込みを効果的に抑制することができる。
【0178】
また、刈取昇降・車速制御においては、車速の減速の度合に応じて、刈取部5の昇降速度を変化させる制御が行われてもよい。刈取部5の昇降速度の制御について説明する。
【0179】
刈取部5の昇降速度の制御態様の一例として、車速を減速させる際の車速の減速の度合が大きいほど、刈取部5の上昇速度を速くする制御が行われる。すなわち、制御装置200は、車速の減速の度合が大きいほど、刈取部5を上昇させる速度を速くする。
【0180】
刈取部5の昇降の速度は、制御装置200による電磁弁を介した刈取昇降シリンダ18の伸縮の速さの制御によって調整される。刈取昇降シリンダ18の伸縮の速さは、制御装置200により制御される電磁弁を介して刈取昇降シリンダ18に供給される作動油の給排量等によって調整される。
【0181】
車速の減速の度合と刈取部5の上昇速度との関係は、特に限定されるものではない。例えば、車速の減速の度合として減速度が用いられる場合、上昇量T1および下降量T2が大きいほど増加する減速度の増加に応じて、刈取部5の上昇速度を徐々に速くする制御態様がある。この制御態様では、例えば、減速度の増加量に対して刈取部5の上昇速度が比例的に大きくされる。
【0182】
また、上述したように、車速の減速の度合として、上昇量T1および下降量T2の値の数値範囲ごとに設定された減速率が用いられる場合、上昇量T1および下降量T2の値の各数値範囲に対応した刈取部5の上昇速度が刈取昇降制御部214等においてあらかじめ設定され記憶される。
【0183】
そして、上昇量T1および下降量T2の数値範囲として上述した例にならって第1の範囲、第2の範囲および第3の範囲が設定されている場合、刈取部5の上昇速度として、第1の範囲に対応した第1の上昇速度、第2の範囲に対応した第2の上昇速度、第3の範囲に対応した第3の上昇速度が設定される。ここで、第2の上昇速度は、第1の上昇速度よりも速く、第3の上昇速度は、第2の上昇速度よりも速い。
【0184】
このように、車速の減速の度合が大きいほど、刈取部5の上昇速度を速くすることにより、車速が減速する際に刈取部5を素早く上昇側に逃がすことができるので、刈取部5の突っ込みを効果的に抑制することができる。
【0185】
なお、車速の減速の度合いが大きいほど、刈取部5の上昇速度を遅くする制御であってもよい。車速の減速の度合が大きいほど、刈取部5の上昇速度を遅くすることにより、刈取部5の下を通過する穀稈を少なくすることができ、刈取部5による刈残しを抑制することができる。
【0186】
また、刈取部5の昇降速度の制御態様の一例として、車速を減速させる際の車速の減速の度合が大きいほど、刈取部5の下降速度を遅くする制御が行われる。すなわち、制御装置200は、車速の減速の度合が大きいほど、刈取部5を下降させる速度を遅くする。
【0187】
車速の減速の度合と刈取部5の下降速度との関係は、特に限定されるものではない。例えば、車速の減速の度合として減速度が用いられる場合、上昇量T1および下降量T2が大きいほど増加する減速度の増加に応じて、刈取部5の下降速度を徐々に遅くする制御態様がある。この制御態様では、例えば、減速度の増加量に対して刈取部5の下降速度が比例的に小さくされる。
【0188】
また、上述したように、車速の減速の度合として、上昇量T1および下降量T2の値の数値範囲ごとに設定された減速率が用いられる場合、上昇量T1および下降量T2の値の各数値範囲に対応した刈取部5の下降速度が刈取昇降制御部214等においてあらかじめ設定され記憶される。
【0189】
そして、上昇量T1および下降量T2の数値範囲として上述した例にならって第1の範囲、第2の範囲および第3の範囲が設定されている場合、刈取部5の下降速度として、第1の範囲に対応した第1の下降速度、第2の範囲に対応した第2の下降速度、第3の範囲に対応した第3の下降速度が設定される。ここで、第2の下降速度は、第1の下降速度よりも遅く、第3の下降速度は、第2の下降速度よりも遅い。
【0190】
このように、車速の減速の度合が大きいほど、刈取部5の下降速度を遅くすることにより、車速が減速する際に刈取部5を鈍い動作で下降させることができるので、刈高検出値R1が刈高目標値R0から乖離した状態での走行距離を短くすることができ、刈取部5の突っ込みを効果的に抑制することができる。
【0191】
なお、車速の減速の度合いが大きいほど、刈取部5の下降速度を速くする制御であってもよい。車速の減速の度合が大きいほど、刈取部5の下降速度を速くすることにより、刈取部5の下を通過する穀稈を少なくすることができ、刈取部5による刈残しを抑制することができる。
【0192】
上述した実施形態は本発明の一例であり、本発明は上述の実施形態に限定されることはない。このため、上述した実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。また、本開示に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。また、上述した各実施形態の構成および制御態様は適宜組み合せることができる。
【0193】
上述した実施形態では、刈高検出装置40は、刈取部5を構成する刈取支持機枠20の左端部に設けられているが、刈高検出装置40設ける位置は特に限定されるものではない。刈高検出装置40は、例えば、上述した実施形態と左右対称な構成とすることで、刈取支持機枠20の右端部に設けられてもよい。また、刈高検出装置40は、例えば刈取支持機枠20の左右両端部に設けること等により、複数個所に設けられてもよい。
【0194】
また、上述した実施形態では、刈取昇降・車速制御は、刈取部5の制御モードが倒伏モードの場合に実行される制御であるが、刈取部5の制御モードが通常モードの状態で刈取昇降・車速制御が行われてもよい。
【0195】
また、上述した実施形態では、刈取部5の高さの制御モードに関し、通常モードと倒伏モードの切換えは、刈高モード切換スイッチ203の操作、あるいは刈高目標値設定操作部202による刈高目標値の設定値に基づいて行われている。この点に関し、カメラやセンサ等の検出装置を用い、刈取部5の高さの制御モードの切換えを自動で行う構成が採用されてもよい。
【0196】
具体的には、制御モードの切換えにカメラが用いられる場合、図8に示すように、制御モード切換え用のカメラ204が制御装置200に接続される。カメラ204は、例えばCCDカメラであり、接続ケーブル等を介して制御装置200に接続される。
【0197】
カメラ204は、例えばキャビン13や刈取部5における所定の部位に設けられ、刈取作業中に、圃場における刈取部5の前方の未刈穀稈を所定の範囲で撮像する。カメラ204により得られた撮像信号は、制御装置200に入力される。制御装置200は、カメラ204からの撮像信号に基づき、所定の信号処理を行うことで、未刈穀稈が倒伏状態か否かを判断し、倒伏状態であると判断した場合、刈取部5の高さの制御モードを倒伏モードに切り換える。
【0198】
また、制御モードの切換えにセンサが用いられる場合、図8に示すように、制御モード切換え用の穀稈高さセンサ205が制御装置200に接続される。穀稈高さセンサ205は、例えば穀粒に対して特徴的な反射を示す周波数の超音波を用いた超音波センサであり、接続ケーブル等を介して制御装置200に接続される。
【0199】
穀稈高さセンサ205は、例えばキャビン13や刈取部5における所定の部位に設けられ、刈取作業中に、圃場における刈取部5の前方の所定の範囲の未刈穀稈に向けて超音波を発信し、その反射波を受信することで、未刈穀稈の植生高さを検出する。穀稈高さセンサ205により得られた穀稈の高さについての検出信号は、制御装置200に入力される。制御装置200は、穀稈高さセンサ205からの検出信号に基づき、未刈穀稈が倒伏状態か否かを判断し、倒伏状態であると判断した場合、刈取部5の高さの制御モードを倒伏モードに切り換える。
【符号の説明】
【0200】
1 コンバイン
4 走行機体
5 刈取部
14 運転部
18 刈取昇降シリンダ
40 刈高検出装置
43 刈高センサ
200 制御装置
R0 刈高目標値
R1 刈高検出値
T1 上昇量
T2 下降量
V0 設定速度
V1 検出車速
ΔRa 第1の所定値
ΔRb 第2の所定値
ΔV 速度差
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11