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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】農業用トラクタ
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/063 20060101AFI20241203BHJP
   B60K 1/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B60K15/063 B
B60K1/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021117177
(22)【出願日】2021-07-15
(65)【公開番号】P2023013186
(43)【公開日】2023-01-26
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高木 貴大
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02868509(EP,A1)
【文献】特開2003-149071(JP,A)
【文献】特開2017-193214(JP,A)
【文献】特開2020-198220(JP,A)
【文献】特開2012-210841(JP,A)
【文献】特開2021-075077(JP,A)
【文献】特開2021-075076(JP,A)
【文献】特開2013-247051(JP,A)
【文献】特開2021-070395(JP,A)
【文献】特開2005-125896(JP,A)
【文献】特開平07-025225(JP,A)
【文献】特開2005-044551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00 - 15/10
A01B 63/00 - 63/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、前記車体を支持する走行装置と、前記走行装置を駆動する駆動装置と、操縦席を収容するキャビンと、前記キャビンの前方に配置されたボンネットと、を備えた農業用トラクタであって、
前記駆動装置は、前記走行装置を駆動する駆動モータと、前記駆動モータに電力を供給する燃料電池と、前記燃料電池から前記駆動モータへの電力供給を制御するコントローラと、前記燃料電池に燃料用の水素ガスを供給する水素タンクと、を有し、
前記水素タンクを収容する収納ケースをさらに備え、
前記燃料電池は、前記キャビンの前方に配置されるとともに前記ボンネット内に配置され、
前記水素タンクは、前記キャビンの内部空間の上部に配置された、農業用トラクタ。
【請求項2】
車体と、前記車体を支持する走行装置と、前記走行装置を駆動する駆動装置と、操縦席を収容するキャビンと、を備えた農業用トラクタであって、
前記駆動装置は、前記走行装置を駆動する駆動モータと、前記駆動モータに電力を供給する燃料電池と、前記燃料電池から前記駆動モータへの電力供給を制御するコントローラと、前記燃料電池に燃料用の水素ガスを供給する水素タンクと、を有し、
水素ガスを検知する水素ガス検知部をさらに備え、
前記水素タンクは、前記キャビンの内部空間の上部に配置され、
前記水素ガス検知部は、前記キャビンの内部空間の上部に配置され、
前記キャビンの天井壁には、前記水素ガス検知部が水素ガスを検知した時に開放し、且つ前記キャビンの内部空間と外部とを連通させる排気扉がさらに設けられた、農業用トラクタ。
【請求項3】
車体と、前記車体を支持する走行装置と、前記走行装置を駆動する駆動装置と、操縦席を収容するキャビンと、を備えた農業用トラクタであって、
前記駆動装置は、前記走行装置を駆動する駆動モータと、前記駆動モータに電力を供給する燃料電池と、前記燃料電池から前記駆動モータへの電力供給を制御するコントローラと、前記燃料電池に燃料用の水素ガスを供給する水素タンクと、を有し、
前記水素タンクは、前記キャビンの内部空間の上部に配置され、
水素ガスを検知する水素ガス検知部をさらに備え、
前記キャビンには、当該キャビンの内部空間の換気を行う換気装置がさらに設けられ、
前記換気装置は、少なくとも前記水素タンクが前記燃料電池に水素ガスを供給する間、前記換気を行うとともに、前記水素ガス検知部が水素ガスを検知した時に前記換気の出力を上昇させる、農業用トラクタ。
【請求項4】
車体と、前記車体を支持する走行装置と、前記走行装置を駆動する駆動装置と、操縦席を収容するキャビンと、を備えた農業用トラクタであって、
前記駆動装置は、前記走行装置を駆動する駆動モータと、前記駆動モータに電力を供給する燃料電池と、前記燃料電池から前記駆動モータへの電力供給を制御するコントローラと、前記燃料電池に燃料用の水素ガスを供給する水素タンクと、を有し、
冷却風を発生させ、且つ前記キャビン内に当該冷却風を導入するエアコンユニットをさらに備え、
前記水素タンクは、前記キャビンの内部空間の上部に配置され、
前記キャビンには、前記エアコンユニットから導入された冷却風が前記水素タンクの外周を通過する冷却通路を設けられている、農業用トラクタ。
【請求項5】
車体と、前記車体を支持する走行装置と、前記走行装置を駆動する駆動装置と、操縦席を収容するキャビンと、を備えた農業用トラクタであって、
前記駆動装置は、前記走行装置を駆動する駆動モータと、前記駆動モータに電力を供給する燃料電池と、前記燃料電池から前記駆動モータへの電力供給を制御するコントローラと、前記燃料電池に燃料用の水素ガスを供給する水素タンクと、を有し、
前記キャビン内に外気を導入するエアコンユニットをさらに備え、
前記水素タンクは、前記キャビンの内部空間の上部に配置され、
前記エアコンユニットの外気取り入れ口を前記キャビンに設け、前記外気取り入れ口から取り入れられた外気が前記水素タンクの外周を通過するガイド通路を設けた、農業用トラクタ。
【請求項6】
車体と、前記車体を支持する走行装置と、前記走行装置を駆動する駆動装置と、操縦席を収容するキャビンと、を備えた農業用トラクタであって、
前記駆動装置は、前記走行装置を駆動する駆動モータと、前記駆動モータに電力を供給する燃料電池と、前記燃料電池から前記駆動モータへの電力供給を制御するコントローラと、前記燃料電池に燃料用の水素ガスを供給する水素タンクと、を有し、
前記キャビン内に外気を導入するエアコンユニットをさらに備え、
前記水素タンクは、前記キャビンの内部空間の上部に配置され、
前記エアコンユニットの外気取り入れ口を前記キャビンに設け、前記外気取り入れ口から取り入れられた外気が前記水素タンクの外周を通過するガイド通路を設け、
前記キャビンの天井壁は上側の第1壁と下側の第2壁とから構成された二重構造を有し、
前記ガイド通路は前記第1壁と前記第2壁との空間を用いて構成された、農業用トラクタ。
【請求項7】
前記キャビンの天井壁は上側の第1壁と下側の第2壁とから構成された二重構造を有し、
前記第1壁と前記第2壁との空間に前記水素タンクが配置された、請求項1に記載の農業用トラクタ。
【請求項8】
前記収納ケースには、前記水素タンクを冷却する水が貯留される、請求項1に記載の農業用トラクタ。
【請求項9】
前記水素タンクは、前記収納ケースの内部に形成された載置面に対して振動吸収部材を介して設置される、請求項1に記載の農業用トラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操縦席を収容するキャビンを備えた農業用トラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にキャビンを備えた従来のトラクタは、車体の前部にボンネットが設けられ、このボンネット内に、エンジン、ラジエター、燃料タンク及びバッテリー等を収納し、車体の後部にキャビンが設けられ、このキャビン内に操縦席及び操縦装置等を収容している。燃料タンクは、駆動源であるエンジンとともにボンネット内に収容されることにより、トラクタ全体及び燃料供給経路をコンパクトにしている。エンジン及びキャビンを備えたトラクタを開示した文献として特許文献1がある。
【0003】
ところで、昨今の自動車業界では、地球温暖化防止による地球環境の保護の観点から、化石燃料を用いた内燃機関の代わりに、水素ガス等の気体燃料を用いることにより、二酸化炭素等の有害物を排出しない燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)が開発されている。この燃料電池自動車では、たとえば前部座席の下に燃料電池を搭載し、後部座席の後側又は下側に水素タンクを収納し、駆動輪の近くに駆動モータを配置している(特許文献2)。水素タンクとしては、圧力70MPaの高圧に耐えられるように、炭素繊維強化樹脂(CFRP:Carbon Fiber refrain Plastic)で強化された高圧水素タンクが多く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-00899号公報
【文献】特開2010-23550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料電池自動車の高圧水素タンクは、炭素繊維強化樹脂の強度上の問題から85℃以下に保つように法規制されている。また、高圧水素タンク内に水素ガスを高圧急速充填すると、高圧水素タンク内の充填水素ガス温度が急上昇することが知られている。
【0006】
農業用トラクタに燃料電池を搭載する場合、ボンネット内に燃料電池等の発熱部材とともに高圧水素タンクを配置することが考えられるが、一般的に農業用のトラクタでは、外気温度が高い状況下で長時間連続作業を行うことが多く、ボンネット内温度が60℃近くになるため、連続作業後すぐに水素ガス充填を行うと、高圧水素タンク内の温度が85℃以上になる可能性がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、地球温暖化防止に役立てることは勿論のこと、農業用トラクタの振動及び転倒等から水素タンクを保護し、かつ、水素タンクの高温化を抑制できる農業用トラクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る農業用トラクタは、車体と、前記車体を支持する走行装置と、前記走行装置を駆動する駆動装置と、操縦席を収容するキャビンと、前記キャビンの前方に配置されたボンネットと、を備えた農業用トラクタであって、前記駆動装置は、前記走行装置を駆動する駆動モータと、前記駆動モータに電力を供給する燃料電池と、前記燃料電池から前記駆動モータへの電力供給を制御するコントローラと、前記燃料電池に燃料用の水素ガスを供給する水素タンクと、を有し、前記水素タンクを収容する収納ケースをさらに備え、前記燃料電池は、前記キャビンの前方に配置されるとともに前記ボンネット内に配置され、前記水素タンクは、前記キャビンの内部空間の上部に配置されている。
【0009】
また、農業用トラクタは、車体と、前記車体を支持する走行装置と、前記走行装置を駆動する駆動装置と、操縦席を収容するキャビンと、を備えた農業用トラクタであって、前記駆動装置は、前記走行装置を駆動する駆動モータと、前記駆動モータに電力を供給する燃料電池と、前記燃料電池から前記駆動モータへの電力供給を制御するコントローラと、前記燃料電池に燃料用の水素ガスを供給する水素タンクと、を有し、水素ガスを検知する水素ガス検知部をさらに備え、前記水素タンクは、前記キャビンの内部空間の上部に配置され、前記水素ガス検知部は、前記キャビンの内部空間の上部に配置され、前記キャビンの天井壁には、前記水素ガス検知部が水素ガスを検知した時に開放し、且つ前記キャビンの内部空間と外部とを連通させる排気扉がさらに設けらている。
【0010】
また、農業用トラクタは、車体と、前記車体を支持する走行装置と、前記走行装置を駆動する駆動装置と、操縦席を収容するキャビンと、を備えた農業用トラクタであって、前記駆動装置は、前記走行装置を駆動する駆動モータと、前記駆動モータに電力を供給する燃料電池と、前記燃料電池から前記駆動モータへの電力供給を制御するコントローラと、前記燃料電池に燃料用の水素ガスを供給する水素タンクと、を有し、前記水素タンクは、前記キャビンの内部空間の上部に配置され、水素ガスを検知する水素ガス検知部をさらに備え、前記キャビンには、当該キャビンの内部空間の換気を行う換気装置がさらに設けられ、前記換気装置は、少なくとも前記水素タンクが前記燃料電池に水素ガスを供給する間、前記換気を行うとともに、前記水素ガス検知部が水素ガスを検知した時に前記換気の出力を上昇させる
【0011】
また、農業用トラクタは、車体と、前記車体を支持する走行装置と、前記走行装置を駆動する駆動装置と、操縦席を収容するキャビンと、を備えた農業用トラクタであって、前記駆動装置は、前記走行装置を駆動する駆動モータと、前記駆動モータに電力を供給する燃料電池と、前記燃料電池から前記駆動モータへの電力供給を制御するコントローラと、前記燃料電池に燃料用の水素ガスを供給する水素タンクと、を有し、冷却風を発生させ、且つ前記キャビン内に当該冷却風を導入するエアコンユニットをさらに備え、前記水素タンクは、前記キャビンの内部空間の上部に配置され、前記キャビンには、前記エアコンユニットから導入された冷却風が前記水素タンクの外周を通過する冷却通路を設けられている
【0012】
また、農業用トラクタは、車体と、前記車体を支持する走行装置と、前記走行装置を駆動する駆動装置と、操縦席を収容するキャビンと、を備えた農業用トラクタであって、前記駆動装置は、前記走行装置を駆動する駆動モータと、前記駆動モータに電力を供給する燃料電池と、前記燃料電池から前記駆動モータへの電力供給を制御するコントローラと、前記燃料電池に燃料用の水素ガスを供給する水素タンクと、を有し、前記キャビン内に外気を導入するエアコンユニットをさらに備え、前記水素タンクは、前記キャビンの内部空間の上部に配置され、前記エアコンユニットの外気取り入れ口を前記キャビンに設け、前記外気取り入れ口から取り入れられた外気が前記水素タンクの外周を通過するガイド通路を設けられている
【0013】
また、農業用トラクタは、車体と、前記車体を支持する走行装置と、前記走行装置を駆動する駆動装置と、操縦席を収容するキャビンと、を備えた農業用トラクタであって、前記駆動装置は、前記走行装置を駆動する駆動モータと、前記駆動モータに電力を供給する燃料電池と、前記燃料電池から前記駆動モータへの電力供給を制御するコントローラと、前記燃料電池に燃料用の水素ガスを供給する水素タンクと、を有し、前記キャビン内に外気を導入するエアコンユニットをさらに備え、前記水素タンクは、前記キャビンの内部空間の上部に配置され、前記エアコンユニットの外気取り入れ口を前記キャビンに設け、前記外気取り入れ口から取り入れられた外気が前記水素タンクの外周を通過するガイド通路を設け、前記キャビンの天井壁は上側の第1壁と下側の第2壁とから構成された二重構造を有し、前記ガイド通路は前記第1壁と前記第2壁との空間を用いて構成されている。
【0016】
また、前記キャビンの天井壁は上側の第1壁と下側の第2壁とから構成された二重構造を有し、前記第1壁と前記第2壁との空間に前記水素タンクが配置されている。
【0017】
また、前記収納ケースには、前記水素タンクを冷却する水が貯留される。
【0018】
また、前記水素タンクは、前記収納ケースの内部に形成された載置面に対して振動吸収部材を介して設置されている。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る農業用トラクタによれば、高圧の水素タンクの配置スペースを、余裕をもって確保できるとともに、高圧の水素タンクの温度上昇を容易に抑制でき、また、農業用トラクタの振動及び転倒等から水素タンクを保護することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態に係る農業用トラクタ1の概略側面図である。
図2図1のトラクタ1のキャビン5のII-II線断面略図ある。
図3図1のキャビン5の平面図である。
図4図1の水素タンクの縦断面略図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る農業用トラクタ1Aの概略側面図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る農業用トラクタ1Bの概略側面図である。
図7】本発明の変形例に係る、図1の水素タンク25の支持機構の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付して説明は省略する。
【0023】
[第1実施形態]
図1図4は、本発明による第1実施形態に係る農業用トラクタ1及びその部品を図示する。本実施形態では、車両進行方向(前方の矢印)をトラクタ1及びトラクタ用各部品の「前方」とし、車両進行方向の逆方向を後方とし、搭乗した操縦者から見た左右方向を、トラクタ1及びトラクタ用部品の「左右」として説明する。また、車体前後方向に直交する水平方向をトラクタ1の幅方向として説明する。
【0024】
図1は本発明の第1実施形態に係る農業用トラクタ1の概略側面図である。図1のトラクタ1はトラクタ全体の左側面を示す。図1のトラクタ1は、前後方向に長い車体2と、該車体2の前部に設けられたボンネット3と、車体2の後部に搭載され、オペレータが着座する操縦席4を収容するキャビン5と、車体2を走行可能に支持する車輪式の走行装置6と、該走行装置6を駆動する駆動装置7と、車体2の後端に設けられた3点リンク機構9と、駆動装置7からの動力を伝達するPTO軸(動力取り出し軸)10とを備えて構成される。
【0025】
図1の走行装置6は、左右一対の後輪11と左右一対の前輪12とを備えており、後輪11の上方はフェンダー13で覆われている。ここで、走行装置6は二駆四駆切り替え型の四輪駆動方式であり、後輪11のみの駆動による二輪駆動状態と、後輪11及び前輪12による四輪駆動状態との間で切り替え可能なように構成される。なお、本発明は、後輪のみが駆動する二輪駆動方式、もしくは履帯式(クローラ式)の走行装置を備えたトラクタにも適用可能である。
【0026】
図1の駆動装置7は、後輪11の近傍に配置され、走行装置6の車輪又は履帯を駆動する交流式の駆動モータ(電動モータ)21と、ボンネット3内に配置され、駆動モータ21に電力を供給する燃料電池22と、ボンネット3内に配置され、燃料電池22から駆動モータ21への電力供給を制御するコントローラ23と、キャビン5の内部空間S1の上部に配置され、燃料電池22に燃料用の水素ガスを供給する3本の水素タンク25と、キャビン5の内部空間S1の上部に配置され、水素ガスを検知する水素ガス検知器(水素ガス検知部)52と、キャビン5の天井壁43に設けられ、水素ガス検知器52が水素ガスを検知した時に開放するとともにキャビン5の内部空間S1と外部とを連通させる排気扉53と、を備えて構成される。なお、本実施形態では、便宜上、水素タンク3本を配置した例について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、1本もしくは3本以外の複数本の水素タンクを配置するように構成されてもよい。ここで、複数本の水素タンクはそれぞれ直列接続されてもよいしそれぞれ並列接続されてもよい。
【0027】
駆動モータ21の出力軸は伝動機構を介して間接的にもしくは直接的に後輪11の車軸に連動連結されるとともに、二駆四駆切り替え機構を介して切り換え自在に前輪12に連動連結される。また、燃料電池22は、水素タンク25から供給される水素ガスを外部から取り入れた空気(酸素)と反応させて発電し、その電力を駆動モータ21に供給する。
また、コントローラ23はインバータ機能を有し、燃料電池22で発電される直流電気を交流電気に変換するとともに、周波数制御して駆動モータ21の回転を制御する。さらに、ボンネット3内には、燃料電池22から駆動モータ21に供給される電力の余剰電気を蓄積するバッテリー27が配置される。
【0028】
3点リンク機構9は、車体2の後端下部に上下方向回動可能に支持された左右一対のロワリンク31と、車体2の後端上部に上下方向回動自在に支持されるとともに油圧装置により駆動される左右一対のリフトアーム32と、リフトアーム32の後端部とロワリンク31の中間部とを連結してリフトアーム32の回動によりロワリンク31を回動させる連結リンク33と、アッパーリンク装着用のブラケット34とを備えて構成される。左右一対のロワリンク31の後端部とブラケット34とに連結されたアッパーリンクにより各種作業装置を上下方向移動可能に支持する。また、PTO軸10にはドライブシャフトを介して各種作業装置の入力部が連結される。また、PTO軸10は駆動モータ21から動力伝達されて回転する。ここで、作業装置は、耕耘する耕耘装置、肥料を散布する肥料散布装置、農薬を散布する農薬散布装置、収穫を行う収穫装置、牧草等の刈取を行う刈取装置、牧草等の拡散を行う拡散装置、牧草等の集草を行う集草装置、牧草等の成形を行う成形装置(ロールベーラ)等である。
【0029】
次に、図1のキャビン5の内部空間S1の上部に配置される水素タンク25、水素ガス検知器(水素ガス検知部)52及び排気扉53、並びにそれぞれの取り付け構造について詳細に説明する。
【0030】
図1のキャビン5は、四隅から立ち上がる4本のキャビンフレーム(支柱)41と、前面、右面及び後面を覆う透明の壁(符号なし)と、左面を覆う透明の乗降ドア42と、天井壁43とから構成される。ここで、操縦席4の前方にはハンドルなどを含む操縦装置44が配置され、操縦席4の下にはキャビン5の内部空間S1の空調を行うエアコン(エアコンディショナ)ユニット46が配置される。また、キャビン5の下方には、オペレータがキャビン5に乗り降りする際に足をかける乗降ステップ8が配置される。ここで、乗降ステップ8は、左側及び右側の各乗降ドア42の下方に設けられている。
【0031】
また、天井壁43は、上下方向に対向する上側の第1壁43aと下側の第2壁43bとから構成される二重構造を有し、第1壁43aと第2壁43bとで挟まれた天井空間(ガイド通路)45には3本の水素タンク25が配置される。ここで、天井空間(ガイド通路)45は第1壁43aと第2壁43bとの空間を用いて構成される。また、3本の水素タンク25は円筒状にそれぞれ形成され、幅方向に延びて、前後方向に等間隔にそれぞれ配置される。さらに、水素タンク25はそれぞれゴム等の振動吸収部材47を介して第1壁43a及び第2壁43bに支持される。ここで、第1壁43aの下面には、水素ガス検知器(水素ガス検知部)52が設けられ、第1壁43aの前部にはスライド式の排気扉53が設けられる。なお、排気扉53は水素ガス検知器52に連動するアクチュエータ(図示せず)が設けられ、水素ガス検知器52が一定量以上の水素ガスを検知すると、自動的に排気扉53が開放されて排気扉53を介して天井空間45内に漏洩した水素ガスが放出される。
【0032】
図2は、図1のII-II線断面略図であり、水素タンク25の配置及びエアコンユニット46の外気導入経路Eの構造を明確化する。
【0033】
図2を参照すると、エアコンユニット46は冷房機能、暖房機能及び送風機能を有するとともに、外気を導入するための外気導入経路Eが接続される。外気導入経路Eは、エアコンユニット46の左面の導入口からキャビン5の左側面に沿って上方に延びるように接続された複数のダクト48a,48b,48c,48dと、最上段のダクト48dの上端
に連通する天井空間45とから構成され、水素タンク25を収納した天井空間45を外気のガイド通路として利用する。天井空間45の右端部には、外部に対して下向きに開口する外気取り入れ口51が形成される。ここで、エアコンユニット46は、キャビン5内に外気を導入するように構成される。詳細には、エアコンユニット46の外気取り入れ口51をキャビン5に設け、外気取り入れ口51から取り入れられた外気が水素タンク25の外周を通過する天井空間(ガイド通路)45が設けられる。すなわち、外気導入経路Eは、外気取り入れ口51から天井空間(ガイド通路)45を右から左に横断し、天井空間(ガイド通路)45の左端部から複数のダクト48d,48c,48bを通って下方に延び、最終的に最下段のダクト48aを経てエアコンユニット46に到達する。
【0034】
水素タンク25の口金25a近傍には水素ガス検知器52が配置され、天井壁43の第1壁43aの下面に取り付けられる。
【0035】
図3は、キャビン5の平面図(上面図)であり、外気取り入れ口51は天井壁43の右前端部に位置し、一方、最上段のダクト48dの上端は、天井壁43の左後端部に位置する。また、スライド式の排気扉53は、水素タンク25の口金25a近傍に位置する。
【0036】
図4は水素タンク25の縦断面図であり、水素タンク25は、水素ガスが充填される内部空間を有するライナー60を有し、ライナー60の外面に炭素繊維強化樹脂(CFRP)層61が被覆される。ここで、ライナー60は高圧ガスを収容し、圧力を上昇させるかもしくは冷却することにより水素ガスを収容し、圧力を下降させるかもしくは加熱することにより水素ガスを放出する。また、水素タンク25は、高圧水素タンクである。この構成によれば、大量の水素ガスを収容することが可能となるとともに、水素タンクがより軽量化となるので、取り扱いがより容易となるとともに車両重量をより軽量化することが可能となる。
【0037】
以上のように構成された、水素タンク25が搭載されたトラクタ1の動作および作用について以下に説明する。
【0038】
まず、本実施形態に係る農業用トラクタ1に搭載された燃料電池22を利用した駆動装置7の基本的な動作を説明する。燃料電池22は、高圧の水素タンク25から供給される水素ガスを、外気から取り入れた空気(酸素)と反応させることより発電する。この時、排出される物質は水だけであり、二酸化炭素等の有害物質は排出されない。
【0039】
発電された直流の電力はコントローラ23で交流に変換されるとともに周波数制御され、駆動モータ21に供給され、駆動モータ21の出力軸を所望の回転速度で回転させる。
【0040】
駆動モータ21の回転動力は、伝動機構を介して間接的にもしくは直接的に後輪11の車軸に伝達され、後輪11を回転させ、たとえば二輪駆動状態で走行する。また、必要に応じて、前輪12にも回転動力を伝達し、四輪駆動状態で走行する。さらに、PTO軸10にも伝達され、作業装置を駆動する。
【0041】
次に、エアコンユニット46を作動させた場合、天井壁43の外気取り入れ口51から取り入れた外気は外気導入経路Eを通り、エアコンユニット46に導入される。この導入過程において、水素タンク25を収納する天井空間45がガイド通路として利用されるので、天井空間45内で水素タンク25の周囲を外気が通過することにより、水素タンク25が積極的に冷却される。すなわち、水素タンク25の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0042】
ここで、トラクタ1が転倒した場合には、水素タンク25はキャビン5の天井壁43で
保護されているので、水素タンク25の損傷を回避することができる。
【0043】
また、天井空間45内に水素ガスが漏洩すると、水素タンク25の口金25a近傍に配置された水素ガス検知器52が漏洩した水素ガスを検知して即座に排気扉53を開放する。従って、排気扉53を介して、天井空間45内に水素ガスが漏洩すると即座に漏洩した水素ガスを排出することが可能となる。
【0044】
本実施形態における効果をまとめると次の通りである。
【0045】
水素タンク25をキャビン5の内部空間S1の上部に配置しているので、たとえば燃料電池のような発熱部材とともにボンネット内に収容する場合と比較すると、配置スペースをより確保しやすくなるとともに、水素タンク25の温度上昇をより抑制することが可能となる。
【0046】
キャビン5内に水素タンク25を配置しているので、外部からの衝撃やトラクタ1の転倒などによる振動に対しても水素タンク25を保護できる。
【0047】
水素タンク25は、ライナー60の外面に炭素繊維強化樹脂層61が被覆されているので、従来の高圧水素タンクと比較すると、より軽量化となる。従って、大量の水素ガスを収納することが可能となるとともに、水素タンク25がより軽量化となるので、取り扱いがより容易となるとともに車両重量をより軽量化することが可能となる。
【0048】
水素ガス検知器52をキャビン5の内部空間S1の上部に配置しているので、水素ガスの漏洩があった場合でも、早期に水素ガス漏洩を検知でき、対処することが可能となる。
【0049】
また、水素ガス検知器52に連動する排気扉53を天井壁43(第1壁43a)に設けているので、漏洩した水素ガスを検知すると自動的に、素早く排気扉53を開放し、即座にキャビン5内から上方へ漏洩した水素ガスを排出することが可能となる。
【0050】
キャビン5内の空気を調節するエアコンユニット46を備えているので、高圧水素タンク用の冷却装置をわざわざ増設することなしに、水素タンク25の周囲の温度を調節できる。さらに、天井壁43の外気取り入れ口51から取り入れる外気は、天井空間(ガイド通路45)内の水素タンク25の周囲を通過するので、エアコンユニット46用の外気を効率良く水素タンク25の冷却に利用することが可能となる。
【0051】
キャビン5の天井壁43を上側の第1壁43aと下側の第2壁43bとから構成される二重構造を有し、第1壁43aと第2壁43bとの間の天井空間45をエアコンユニット46の外気導入用のガイド通路として利用している。従って、エアコンユニット46の外気導入用のガイド通路として増設することなしに既存の構造を流用しているので、車両のコスト低減及びコンパクト性を維持することが可能となる。
【0052】
第1壁43aと第2壁43bとの間の天井空間45に水素タンク25を配置しているので、外部障害物から高圧の水素タンク25を保護する機能が向上する。
【0053】
[第2実施形態]
上述した第1実施形態では、水素ガス検知器52が一定量以上の水素ガスを検知すると、自動的に開放する排気扉53を設けた。これに対して、本実施形態では、当該キャビン5の内部空間S1の換気を行う換気装置63をさらに設けたことを特徴とする。
【0054】
図5は本発明の第2実施形態に係る農業用のトラクタ1Aの概略側面図である。図5
トラクタ1Aは、図1のトラクタ1と比較すると、キャビン5の右側壁の上部に換気装置63が設けられたことが相違する。図5の換気装置63は、少なくとも水素タンク25が燃料電池22に水素ガスを供給する間、キャビン5の内部空間S1の換気を行う。この構成により、キャビン5の内部空間S1の温度が高温化するのを抑制することができ、強いては、水素タンク25が高温化するのをさらに抑制することが可能となる。
【0055】
また、図5の換気装置63は、ファン63aとモータ63bとを備えており、モータ63bは燃料電池22から電力が供給されるとともにコントローラ23に電気的に接続される。ここで、コントローラ23は、水素タンク25から燃料電池22に水素ガスが供給されている間、モータ63bを作動させて、キャビン5の内部空間S1の換気を行うように制御する。なお、モータ63bは燃料電池22から電力が供給されるように構成されたが、ボンネット3内に配置されたバッテリー27からモータ63bに電力が供給されるように構成されてもよい。また、コントローラ23は、水素ガス検知器52に電気的に接続され、水素ガス検知器52が水素ガスの漏洩を検知すると、モータ63bの回転数を上昇させるように制御して換気装置63の換気の出力を上昇させる。この構成により、水素タンク25からの水素ガスの漏洩が生じた時に、キャビン5内の漏洩した水素ガスをキャビン5の外部に排出することが可能となる。
【0056】
以上のように構成された第2実施形態に係るトラクタ1Aの動作は、第1実施形態に係るトラクタ1と同様である。
【0057】
以上の実施の形態に係るトラクタ1Aによれば、第1実施形態に係るトラクタ1に比較すると、キャビン5内に配置されている水素タンク25が高温化するのを抑制できるとともに、水素ガス検知器52が水素ガスを検知した時に換気装置63のモータ63bの出力を上昇させるので、水素ガスの漏洩が生じた時に、キャビン5内の漏洩した水素ガスをキャビン5の外部に排出することが可能となる。
【0058】
[第3実施形態]
図6は本発明の第3実施形態に係る農業用のトラクタ1Bの概略側面図である。図6のトラクタ1Bは、図1のトラクタ1と比較すると、図1の天井空間45をエアコンユニット46の外気取入れ用のガイド通路として利用するのに対して、図6のトラクタ1Bでは、天井空間45をエアコンユニット46からキャビン5内に吐出される冷却風の冷却通路として利用することが相違する。
【0059】
詳細には、図6を参照すると、操縦席4の下には、冷却風を発生させ、かつ、キャビン5内に冷却風を導入するエアコンユニット46が設けられている。ここで、キャビン5の天井空間45は、エアコンユニット46で発生した冷却風の一部もしくは全部を水素タンク25の周囲を通過させる冷却通路として利用される。すなわち、キャビン5には、エアコンユニット46の冷却風導入口65aから冷却風又はその一部を天井空間(冷却通路)45に導入するダクト65bが設けられる。この構成により、エアコンユニット46から導入された冷却風が水素タンク25の外周を通過するので、水素タンク25の温度上昇をさらに抑制することが可能となる。
【0060】
以上のように構成された第3実施形態に係るトラクタ1Bの動作は、第1実施形態に係るトラクタ1と同様である。
【0061】
以上の実施の形態に係るトラクタ1Bによれば、第1実施形態に係るトラクタ1に比較すると、キャビン5の冷却用のエアコンユニット46を水素タンク25の冷却用としても流用できるので、冷却用の設備を増設することなしに水素タンク25を冷却することができる。従って、冷却用設備増設のためのコストを削減することができるとともに冷却効果
を向上させることが可能となる。
【0062】
[その他の実施形態]
(1)図7は、水素タンク25の支持機構の変形例を示しており、円筒型の金属製収納ケース70を使用した例を図示している。収納ケース70の内面(載置面)70aには、タンク周方向に等間隔を置いてゴム製の複数の振動吸収部材71が設けられている。収納ケース70内には冷却用の水Wが貯留されており、この収納ケース70内に水素タンク25を収納し、3個の振動吸収部材71により弾性的に支持している。ここで、水素タンク25を収納する収納ケース70を備え、該収納ケース70には、水素タンク70を冷却する水が貯留される。この構成によれば、高圧の水素タンク25を積極的に効率良く冷却でき、また、外部からの衝撃もしくは振動に対しても、水Wによる緩衝により、衝撃もしくは振動をより吸収することが可能となる。また、水素タンク25は、収納ケース70の内部に形成された載置面に対して振動吸収部材71を介して設置されるように構成されてもよい。
【0063】
ここで、収納ケース70は開閉可能な蓋72を有し、ロッククランプ機構73で蓋72を液密状態に閉じることにより、収納ケース70内を密封状態に維持できる。収納ケース70は、たとえば図1の天井壁43の天井空間45内に配置されるか、もしくは、二重構造でない天井壁(図示せず)の下面に取り付けられる。
【0064】
図7の変形例によると、高圧の水素タンク25を積極的に効率良く冷却でき、また、外部からの衝撃もしくは振動に対しても、振動吸収部材71による吸収作用並びに水Wによる緩衝により、衝撃もしくは振動をより吸収することが可能となる。
【0066】
以上説明したように、本発明の第1の態様に係る農業用トラクタ1は、車体2と、車体2を支持する走行装置6と、走行装置6を駆動する駆動装置7と、操縦席4を収容するキャビン5と、を備えた農業用トラクタ1であって、駆動装置7は、走行装置6を駆動する駆動モータ21と、駆動モータ21に電力を供給する燃料電池22と、燃料電池22から駆動モータ21への電力供給を制御するコントローラ23と、燃料電池22に燃料用の水素ガスを供給する水素タンク25と、を有し、水素タンク25は、キャビン5の内部空間S1の上部に配置されている。
【0067】
この構成によれば、水素タンク25をキャビン5の内部空間S1の上部に配置しているので、たとえば燃料電池22のような発熱部材とともにボンネット3内に収容する場合と比較すると、配置スペースをより確保しやすくなるとともに、水素タンク25の温度上昇をより抑制することが可能となる。
【0068】
また、農業用トラクタ1は、水素ガスを検知する水素ガス検知部52をさらに備え、水素ガス検知部52は、キャビン5の内部空間S1の上部に配置されている。
【0069】
この構成によれば、水素ガス検知部52をキャビン5の内部空間S1の上部に配置しているので、水素ガスの漏洩があった場合でも、早期に水素ガス漏洩を検知でき、対処することが可能となる。
【0070】
また、キャビン5の天井壁43には、水素ガス検知部52が水素ガスを検知した時に開放し、且つキャビン5の内部空間S1と外部とを連通させる排気扉53がさらに設けられ
ている。
【0071】
この構成によれば、水素ガス検知部52に連動する排気扉53を天井壁43に設けているので、漏洩した水素ガスを検知すると自動的に、素早く排気扉53を開放し、即座にキャビン5内から上方へ漏洩した水素ガスを排出することが可能となる。
【0072】
また、キャビン5には、当該キャビン5の内部空間S1の換気を行う換気装置63がさらに設けられ、換気装置63は、少なくとも水素タンク25が燃料電池22に水素ガスを供給する間、換気を行っている。
【0073】
この構成によれば、少なくとも水素タンク25が燃料電池22に水素ガスを供給する間、キャビン5の内部空間S1の換気を行うので、キャビン5の内部空間S1の温度が高温化するのを抑制することができ、強いては、水素タンク25が高温化を抑制することが可能となる。
【0074】
また、農業用トラクタ1は、水素ガスを検知する水素ガス検知部52をさらに備え、換気装置63は、水素ガス検知部52が水素ガスを検知した時に換気の出力を上昇させる。
【0075】
この構成によれば、水素タンク25からの水素ガスの漏洩が生じた時に、キャビン5内の漏洩した水素ガスをキャビン5の外部に排出することが可能となる。
【0076】
また、農業用トラクタ1は、冷却風を発生させ、且つキャビン5内に当該冷却風を導入するエアコンユニット46をさらに備え、キャビン5には、エアコンユニット46から導入された冷却風が水素タンク25の外周を通過する冷却通路を設けられている。
【0077】
この構成によれば、エアコンユニット46から導入された冷却風が水素タンク25の外周を通過するので、水素タンク25の温度上昇をさらに抑制することが可能となる。
【0078】
また、農業用トラクタ1は、キャビン5内に外気を導入するエアコンユニット46をさらに備え、エアコンユニット46の外気取り入れ口51をキャビン5に設け、外気取り入れ口51から取り入れられた外気が水素タンク25の外周を通過するガイド通路45を設けている。
【0079】
この構成によれば、キャビン5内の空気を調節するエアコンユニット46を備えているので、高圧水素タンク25用の冷却装置をわざわざ増設することなしに、水素タンク25の周囲の温度を調節できる。さらに、天井壁43の外気取り入れ口51から取り入れる外気は、天井空間(ガイド通路45)内の水素タンク25の周囲を通過するので、エアコンユニット46用の外気を効率良く水素タンク25の冷却に利用することが可能となる。
【0080】
また、キャビン5の天井壁43は上側の第1壁43aと下側の第2壁43bとから構成された二重構造を有し、ガイド通路45は第1壁43aと第2壁43bとの空間を用いて構成されている。
【0081】
この構成によれば、キャビン5の天井壁43を上側の第1壁43aと下側の第2壁43bとから構成される二重構造を有し、第1壁43aと第2壁43bとの間の天井空間をエアコンユニット46の外気導入用のガイド通路45として利用している。従って、エアコンユニット46の外気導入用のガイド通路45として増設することなしに既存の構造を流用しているので、車両のコスト低減及びコンパクト性を維持することが可能となる。
【0082】
また、キャビン5の天井壁43は上側の第1壁43aと下側の第2壁43bとから構成
された二重構造を有し、第1壁43aと第2壁43bとの空間に水素タンク25が配置されている。
【0083】
この構成によれば、第1壁43aと第2壁43bとの間の天井空間に水素タンク25を配置しているので、外部障害物から高圧の水素タンク25を保護する機能が向上する。
【0084】
また、農業用トラクタ1は、水素タンク25を収納する収納ケース70をさらに備え、収納ケース70には、水素タンク25を冷却する水が貯留される。
【0085】
この構成によれば、高圧の水素タンク25を積極的に効率良く冷却でき、また、外部からの衝撃もしくは振動に対しても、水による緩衝により、衝撃もしくは振動をより吸収することが可能となる。
【0086】
また、農業用トラクタ1は、水素タンク25を収納する収納ケース70をさらに備え、水素タンク25は、収納ケース70の内部に形成された載置面に対して振動吸収部材71を介して設置されている。
【0087】
この構成によれば、振動吸収部材71による吸収作用により、衝撃もしくは振動をより吸収することが可能となる。
【0088】
また、水素タンク25は、水素ガスが充填される内部空間S1を有するライナーを有し、ライナーの外面に炭素繊維強化樹脂層61が被覆されている。
【0089】
この構成によれば、大量の水素ガスを収納することが可能となるとともに、水素タンク25がより軽量化となるので、取り扱いがより容易となるとともに車両重量をより軽量化することが可能となる。
【0090】
以上、本発明について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0091】
1 トラクタ
2 車体
3 ボンネット
4 操縦席
5 キャビン
6 走行装置
11 後輪
12 前輪
21 駆動モータ
22 燃料電池
23 コントローラ
25 水素タンク
41 キャビンフレーム
43 天井壁
43a 第1壁
43b 第2壁
44 操縦装置
45 天井空間(ガイド通路、又は冷却通路として利用)
46 エアコン(エアコンディショナ)ユニット
51 外気取り入れ口
52 水素ガス検知器(水素ガス検知部)
53 排気扉
63 換気装置
70 収納ケース
71 振動吸収部材
E 外気導入経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7