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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】伝送装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/26 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
H04L27/26 420
H04L27/26 114
H04L27/26 410
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021119535
(22)【出願日】2021-07-20
(65)【公開番号】P2023015631
(43)【公開日】2023-02-01
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】神谷 伶
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/159411(WO,A1)
【文献】特開2006-140608(JP,A)
【文献】特開2001-127730(JP,A)
【文献】特開2010-213352(JP,A)
【文献】地上デジタル放送用デジタルSTL/TTL伝送方式,ARIB STD-B22,第2.1版,一般社団法人電波産業会,2014年03月18日,pp.71-75
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/00-27/38
H04B 1/06
H04B 1/10
H04B 7/14-7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IF伝送方式が用いられ、主信号にパイロット信号が多重された構成を具備する伝送信号が送信機から受信機に向けて発せられ、前記受信機が、受信した前記伝送信号の周波数変換を行う際に、前記伝送信号から抽出された前記パイロット信号を用いて前記伝送信号における位相雑音を圧縮する低雑音従属同期方式で動作する伝送装置であって、
前記受信機は、
前記伝送信号の受信強度が高い場合において、前記位相雑音を圧縮する前記低雑音従属同期方式で前記周波数変換を行う第1の動作を行い、
前記受信強度が低い場合において、前記位相雑音の圧縮の効果が当該低雑音従属同期方式よりも低い他の方式によって前記周波数変換を行う第2の動作を行う、
ことを特徴とする伝送装置。
【請求項2】
前記受信機は、前記パイロット信号を透過させるバンドパスフィルタを用いて、受信した前記伝送信号から前記パイロット信号を抽出し、
前記第1の動作においては、前記バンドパスフィルタとして第1のバンドパスフィルタを用い、
前記第2の動作においては、前記バンドパスフィルタとして、前記第1のバンドパスフィルタよりも狭い透過帯域を有する第2のバンドパスフィルタを用いることを特徴とする請求項1に記載の伝送装置。
【請求項3】
前記送信機において周波数変換によって前記伝送信号を生成する際に用いられる送信側ローカル信号は、外部基準信号と同期するように生成され、
前記受信機は、前記第2の動作において、前記送信機において用いられた前記外部基準信号と共通の前記外部基準信号を用いて生成することによって前記送信側ローカル信号と同期した受信側ローカル信号を用いて前記周波数変換を行う独立同期方式の動作を行うことを特徴とする請求項1に記載の伝送装置。
【請求項4】
前記受信機は、
前記受信強度が閾値を基準として高い状態から低くなった場合に前記第1の動作から前記第2の動作への切替を行い、
前記受信強度が前記閾値を基準として低い状態から高くなり、かつ前記受信機における前記伝送信号の受信状態の変化が一定期間にわたり小さいと認められた場合に、前記第2の動作から前記第1の動作への切替を行う、
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の伝送装置。
【請求項5】
IF伝送方式が用いられ、主信号にパイロット信号が多重された構成を具備する伝送信号が送信機から受信機に向けて発せられ、前記受信機が、受信した前記伝送信号の周波数変換を行う際に、前記伝送信号から抽出された前記パイロット信号を用いて前記伝送信号における位相雑音を圧縮する低雑音従属同期方式で動作する伝送装置であって、
前記送信機は、前記パイロット信号として、周波数が互いに異なる第1パイロット信号、第2パイロット信号をそれぞれ前記主信号に多重した前記伝送信号を発し、
前記受信機において、前記伝送信号から前記第1パイロット信号、前記第2パイロット信号をそれぞれ抽出し、前記第1パイロット信号から第1受信側ローカル信号、前記第2パイロット信号から第2受信側ローカル信号をそれぞれ生成し、前記第1受信側ローカル信号と前記第2受信側ローカル信号を混合した混合ローカル信号を用いて前記周波数変換を行うことを特徴とする伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低雑音従属同期方式が用いられるIF伝送方式の伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地上デジタル放送のための伝送装置として、マイクロ波帯の電波を利用したTTL(Transmitter to Transmitter Link)装置が用いられている。ここで、TTL装置(TTL回線)は親局送信所(演奏所)と中継送信所(送信所)との間、あるいは異なる2つの中継送信所間の通信のために用いられることによって、中継ネットワークが構成される。
【0003】
この場合における伝送方式は、例えば非特許文献1、特許文献1に記載されている。ここでは、受信したマイクロ波からTS多重信号を復調、再生してからSTL装置と同様に再度伝送を行うTS-TTL方式と、このような復調、再生を行わずにOFDM(直交多重信号)信号をIF(Intermedeate Frequency)信号に変換して伝送を行うIF-TTL方式と、がある。後者は復調、再生を行わないために装置構成が単純、小型となるため、特に中継のみのために用いられる中継送信所に適している。
【0004】
このようなIF伝送方式においては、受信側で周波数変換を行う際に用いられる受信側ローカル信号が、送信側で周波数変換のために用いられた送信側ローカル信号と同期していることが要求される。このための同期方式としては、例えば非特許文献1に記載されるように、大別すると、(1)独立同期方式、(2)従属同期方式の2種類がある。(1)独立同期方式においては、伝送された信号と独立した、同期のために使用できる共通の外部基準信号(例えばGNSS:Global Navigation Satellite System信号)を送信側、受信側で用いる方式である。一方、従属同期方式は、伝送信号においてOFDM信号(本来伝送されるべきデータに対応した信号:主信号)に加えて、送信側において周波数変換を行う際に使用された送信側ローカル信号と同期したパイロット信号が重畳される。受信側では、伝送信号からこのパイロット信号を抽出し、受信側ローカル信号はこのパイロット信号と同期するように設定される。このため、(1)独立同期方式においてはOFDM信号のみが伝送されるのに対して、従属同期方式においてはOFDM信号にパイロット信号が多重されて伝送される。この際、パイロット信号だけでなく、サービスチャンネル(SC)信号も同時に多重される場合もある。このような方式毎の伝送信号の具体的構成については、例えば非特許文献1に記載されている。
【0005】
図7は、このような従属同期方式の伝送装置9を構成する送信機80、受信機90の構成を簡略化して示す図である。ここでは、上記の動作に直接関連する構成要素のみが記載されている。送信機80においては、本来伝送すべき対象となる情報が変調されて形成されたOFDM信号(OFDM:主信号)に対して、パイロット信号発振器81によって生成されたパイロット信号PLを合成器82で合成することによって、IF信号(IF)が生成される。これに対して、ローカル発振器(送信側ローカル発振器)83で生成されたローカル信号(送信側ローカル信号)LoTをミキサ84で混合することによって周波数変換が行われることによって、最終的にRF(Radio Frequency)信号(RF)として発せられる。
【0006】
図8は、このRF信号の周波数配列を単純化して示す。この構成は、非特許文献1に記載されたものと同様であり、ここではSC信号は用いられていないものとしている。図示されるように、パイロット信号PLは、広い帯域で構成されたOFDM信号(OFDM)の中心周波数をF0としてF0+4MHzとなるように、OFDM信号とは重複しないように多重される。
【0007】
図7において、受信機90側ではこのRF信号を受信し、分離器91によってRFにおけるパイロット信号を分離し、図8のパイロット信号PLに対応した透過帯域をもつバンドパスフィルタ(BPF)92を通過させることによって、受信機90側で用いるパイロット信号PLとして抽出する。一方、RF信号をIFに変換するためのローカル発振器(受信側ローカル発振器)93が設けられ、その出力と、抽出されたパイロット信号PLとをミキサ94で混合して生成された受信側ローカル信号LoRが、ミキサ95によって元のRF信号と混合されて、IF信号(IF)が生成される。ここで、ミキサ95に入力するRF信号の強度は、AGC(Automatic Gain Control)96によって調整される。
【0008】
ここで、(2)従属同期方式には、(2-1)標準従属同期方式と(2-2)低雑音従属同期方式の2種類がある。送信側においてOFDM信号には理想的な信号に対して位相雑音が付加されるところ、OFDM信号とパイロット信号に付加される位相雑音が同等である場合において、このパイロット信号と同期する受信側ローカル信号LoRにおける位相雑音とOFDM信号における位相雑音を逆位相とすることができる。このため、この受信側ローカル信号LoRを用いて変換後のIF(図7におけるミキサ95の出力)中の位相雑音を圧縮できることが従属同期方式の利点となる。こうした点においては、低雑音従属同期方式は、標準従属同期方式と比べて、あるいは独立同期方式と比べても優れている。
【0009】
ただし、この状況は、受信側におけるパイロット信号の抽出帯域(図7におけるBPF92の透過帯域)に依存し、この抽出帯域外の位相雑音に対しては上記の効果が得られない。このため、(2-2)低雑音従属同期方式においては、この抽出帯域が十分に広く設定されることによって、上記の効果が特に大きくなる。
【0010】
以上のように受信側においてOFDM信号における位相雑音の影響は低減することが可能である一方、他の雑音成分として熱雑音がある。この熱雑音はランダムであり、その電力は帯域幅に比例する。受信側におけるこの単位帯域当たりの熱雑音をn[W/Hz]とすると、OFDM信号の全電力をPofdm[W]、OFDM信号の帯域幅をB[Hz]、パイロット信号のレベルをPpl[W]、パイロット信号の帯域幅をb[Hz]とした場合に、受信側ミキサに入力したOFDM信号のC/N比(C/N)ofdm、受信側ローカル信号のC/N比(C/N)localはそれぞれ以下の(1)(2)式で与えられ、受信側の総合的なC/N比(C/N)totalは以下の(3)式で与えられる。
【0011】
【数1】
【0012】
(3)式における分母(1+(C/N)ofdm/(C/N)local)は、受信側における熱雑音の増加度に対応する。この増加度をdB表示した値をXとして、Xは下の(4)式のとおりとなる。
【0013】
【数2】
【0014】
すなわち、パイロット信号の帯域幅bを広くすることによって、熱雑音は大きくなる。これは、前記の位相雑音とは逆の関係となる。更に、前記の非特許文献1に記載されたように、IF-TTLにおいては、パイロット信号以外にも、SC(サービスチャンネル)信号がOFDM信号に対して多重される場合もある。このように、OFDM信号(主信号)以外の信号が複数種類多重されている場合には、より一般化して、OFDM信号以外のこの各成分の種類に対応した指数をiとし、対応する成分のレベルをPとすると、総電力PとOFDM電力Pofdmの関係は、以下の(5)式のとおりとなり、これをXと同様にdB表示したYは(6)式の通りとなる。ここで、iで識別される各成分には、前記のパイロット信号、SC信号が含まれ、ここではこれら以外の成分も含めて一般化されている。
【0015】
【数3】
【0016】
このYは熱雑音の増加度となる。上記のX((4)式)とY((6)式)の和(X+Y)が受信側における雑音の増加を示す雑音増加係数zとなり、回線設計時においては受信機の熱雑音に加算されて考慮される。上記の3種類の伝送方式におけるパイロット信号、SC信号の緒元については非特許文献1に記載され、図9は、その内容の一部を示す表である。前記のように、低雑音従属同期方式においては、パイロット信号の抽出帯域を広く設定することによって、位相雑音を圧縮することができる。
【0017】
また、非特許文献1にも記載されている諮問第110号情報通信審議会答申「デジタル方式のSTL/TTLの技術的条件」に述べられているように、全雑音(C/N)の目標値を設定した場合、各雑音成分の配分をこれに応じて設定することができる。図10は、全雑音(C/N)を37.6dBとした場合におけるこの配分の例を示す。ここで示されたローカル雑音は前記の位相雑音の圧縮に関連し、熱雑音は前記の雑音増加係数に関連する。
【0018】
また、このような雑音成分の配分は、実際には親局送信機から最終的なユーザのテレビジョン受信機までの間で考慮する必要がある。この点についても、非特許文献1に記載され、ここでは、TTLの区間でフェージングが発生して(受信電力が低下して)C/Nが劣化して放送システムがダウンする場合のC/NとしてスレッショールドC/Nが定義される。システムの設計上、このスレッショールドC/Nを適正な根拠に基づき適正な値に設定することが要求され、この際にも前記のようなノイズ成分の配分が行われる。このスレッショールドC/Nの設定は、合理的な基準に基づいて行われ、例えば、この基準を、「放送エリアでフェージングが発生していない場合には干渉・マルチパス雑音は配分された値よりも小さく、エリアの半分の面積の境界にある受信機ではC/Nが22dBとする」とすることができる。図11の表は、対象となるエリアをその広さに応じた4種類とした場合における、この場合の雑音(C/N)の配分を示す。ここで、伝送路雑音がTTLに対するスレッショールドC/Nとなり、その値は28dBとなっている。
【0019】
このようにスレッショールドC/Nが定められた場合には、これに対する裕度が問題となり、回線設計においては、定常時の熱雑音のC/NとこのスレッショールドC/Nの差がこの裕度に対応するフェージングマージンとして定義される。ここで用いられる熱雑音のC/N((C/N)NF)は、受信電界のレベルをPin[dBm]、ボルツマン定数をk[J/K]、温度をT[K]、雑音指数をw、前記の雑音増加係数をzとすると、以下の(7)式で与えられる。
【0020】
【数4】
【0021】
すなわち、フェージングマージンの算定においては、ローカル雑音(位相雑音)ではなく、熱雑音が問題になる。あるいは、フェージングが発生する状況では、位相雑音ではなく熱雑音が支配的になる。この場合、(7)式より、本来の熱雑音成分(log成分)に加えて、低雑音従属同期方式では雑音増加係数zの影響が加わるため、その分(C/N)NFが小さくなり、フェージングマージンが低下する。
【0022】
また、上記のようなフェージングマージンの算定は、受信強度が低い場合には搬送波全体の電界強度が一様に減衰していることを前提としている。しかしながら、実際には特定の周波数帯においてのみ電界強度が低下する場合(周波数選択性フェージング)もある。この周波数選択性フェージングが図8において広い帯域をもつOFDM信号の範囲で発生した場合には、部分的なサブキャリアの減衰が発生するだけであるため、他のサブキャリアによってこの影響が補償されれば、これによる実質的な受信特性の劣化は小さい。しかしながら、これと比べて狭い帯域のパイロット信号でこのような周波数選択性フェージングが発生した場合には、パイロット信号は受信機側で正常に認識できなくなるため、OFDM信号の帯域に異常が発生しなくとも、適正にIF信号を生成することができなくなる。パイロット信号を使用しない独立同期方式においてはこうした問題は発生しない。
【0023】
このため、フェージングが発生しやすい(受信電界強度が低下しやすい)状況下では、独立同期方式が好ましい。あるいは、パイロット信号を用いない独立同期方式においてはこのようにパイロット信号に起因する問題は発生しないため、パイロット信号に起因する問題が発生するような環境下では好ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0024】
【文献】ARIB STD-B22 地上デジタル放送用デジタルSTL/TTL伝送方式
【特許文献】
【0025】
【文献】国際公開公報WO2018/159411
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
低雑音従属同期方式では、位相雑音が圧縮されるという目的は達成される一方で、雑音増加係数zに起因してフェージングマージンが低下した。雑音増加係数zはX((4)式)で示されるようにパイロット信号の帯域幅bが広い場合に大きくなる。一方、低雑音従属同期方式では帯域幅bを広くすることによって位相雑音を圧縮することが本来の目的であり、帯域幅bを狭くすることにより、位相雑音の圧縮が困難となる。すなわち、従来の低雑音従属同期方式では、熱雑音の低減と位相雑音の圧縮はトレードオフの関係にあり、このために、特に受信電界が低下する(フェージングが発生する)ような状況下では総合的な雑音の影響を低減することは困難であった。
【0027】
このため、受信強度が低い場合でも雑音の影響が低減される伝送装置が望まれた。
【0028】
本発明は、このような状況に鑑みなされたもので、上記課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の伝送装置は、IF伝送方式が用いられ、主信号にパイロット信号が多重された構成を具備する伝送信号が送信機から受信機に向けて発せられ、前記受信機が、受信した前記伝送信号の周波数変換を行う際に、前記伝送信号から抽出された前記パイロット信号を用いて前記伝送信号における位相雑音を圧縮する低雑音従属同期方式で動作する伝送装置であって、前記受信機は、前記伝送信号の受信強度が高い場合において、前記位相雑音を圧縮する前記低雑音従属同期方式で前記周波数変換を行う第1の動作を行い、前記受信強度が低い場合において、前記位相雑音の圧縮の効果が当該低雑音従属同期方式よりも低い他の方式によって前記周波数変換を行う第2の動作を行う。
本発明の伝送装置において、前記受信機は、前記パイロット信号を透過させるバンドパスフィルタを用いて、受信した前記伝送信号から前記パイロット信号を抽出し、前記第1の動作においては、前記バンドパスフィルタとして第1のバンドパスフィルタを用い、前記第2の動作においては、前記バンドパスフィルタとして、前記第1のバンドパスフィルタよりも狭い透過帯域を有する第2のバンドパスフィルタを用いてもよい。
本発明の伝送装置は、前記送信機において周波数変換によって前記伝送信号を生成する際に用いられる送信側ローカル信号は、外部基準信号と同期するように生成され、前記受信機は、前記第2の動作において、前記送信機において用いられた前記外部基準信号と共通の前記外部基準信号を用いて生成することによって前記送信側ローカル信号と同期した受信側ローカル信号を用いて前記周波数変換を行う独立同期方式の動作を行ってもよい。
本発明の伝送装置において、前記受信機は、前記受信強度が閾値を基準として高い状態から低くなった場合に前記第1の動作から前記第2の動作への切替を行い、前記受信強度が前記閾値を基準として低い状態から高くなり、かつ前記受信機における前記伝送信号の受信状態の変化が一定期間にわたり小さいと認められた場合に、前記第2の動作から前記第1の動作への切替を行ってもよい。
本発明の伝送装置は、IF伝送方式が用いられ、主信号にパイロット信号が多重された構成を具備する伝送信号が送信機から受信機に向けて発せられ、前記受信機が、受信した前記伝送信号の周波数変換を行う際に、前記伝送信号から抽出された前記パイロット信号を用いて前記伝送信号における位相雑音を圧縮する低雑音従属同期方式で動作する伝送装置であって、前記送信機は、前記パイロット信号として、周波数が互いに異なる第1パイロット信号、第2パイロット信号をそれぞれ前記主信号に多重した前記伝送信号を発し、前記受信機において、前記伝送信号から前記第1パイロット信号、前記第2パイロット信号をそれぞれ抽出し、前記第1パイロット信号から第1受信側ローカル信号、前記第2パイロット信号から第2受信側ローカル信号をそれぞれ生成し、前記第1受信側ローカル信号と前記第2受信側ローカル信号を混合した混合ローカル信号を用いて前記周波数変換を行う。
【発明の効果】
【0030】
本発明によると、受信強度が低い場合でも雑音の影響が低減される伝送装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る伝送装置における受信機の構成を示す図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る伝送装置における、切替動作の前後における雑音の状況を模式的に示す図である。
図3】本発明の第2の実施の形態に係る伝送装置における送信機、受信機の構成を示す図である。
図4】本発明の第1、第2の実施の形態に係る伝送装置における受信機の動作の例を示すフローチャートである。
図5】本発明の第3の実施の形態に係る伝送装置において用いられる伝送信号の周波数配列の例である。
図6】本発明の第3の実施の形態に係る伝送装置における送信機、受信機の構成を示す図である。
図7】従属同期方式で動作する従来の伝送装置における送信機、受信機の例の構成を示す図である。
図8】従属同期方式で動作する従来の伝送装置において用いられる伝送信号の周波数配列の例である。
図9】非特許文献1に記載された、独立同期方式、標準従属同期方式、低雑音従属同期方式におけるパイロット信号、サービスチャンネル(SC)信号の緒元を示す表である。
図10】諮問第110号情報通信審議会答申「デジタル方式のSTL/TTLの技術的条件」に記載された、全雑音(C/N)の目標値を設定した場合における、各雑音成分の配分の例である。
図11】4種類のエリアを設定した場合における、雑音の成分毎の配分の例である。
【0032】
次に、本発明を実施するための形態に係る伝送装置について具体的に説明する。この伝送装置は、IF-TTL方式かつ低雑音従属同期方式で動作する伝送装置である。このため、この伝送装置においては、前記のように、伝送されるべき本来の信号であるOFDM信号(主信号)に対して、パイロット信号が付加されて伝送信号(RF信号)として用いられる。このパイロット信号は、受信したRF信号を周波数変換(ダウンコンバート)してIF信号とする際に用いられる受信側ローカル信号を生成するために用いられる。これにより、位相雑音とOFDM信号における位相雑音が相殺するように、周波数変換が行われる。
【0033】
ただし、前記のように、熱雑音の低減と位相雑音の圧縮はトレードオフの関係にあるため、従来は雑音の影響を総合的に低減することは困難であった。これに対して、本発明では、以下に説明する構成によって、雑音の影響が特に受信強度が低い場合に低減されることによって、総合的に低減される。以下に説明する各実施の形態においては、このような動作の目的は共通であるが、このために行われる動作あるいは構成が異なる。
【0034】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係る伝送装置1は、常に従属同期方式で動作し、受信側において使用されるパイロット信号の帯域が2種類に設定される。図1は、この伝送装置1における受信機10の構成を示す図である。ここで用いられる送信機は、図7に示された従来の伝送装置9における送信機80と変わりがないために、その記載を省略する。このため、ここで用いられる伝送信号(RF信号)の周波数配列も、図8に示されたものと同様である。
【0035】
受信機10において、分離器11、ローカル発振器(受信側ローカル発振器)13、ミキサ14、15、AGC16は、それぞれ前記の受信機90における分離器91、ローカル発振器(受信側ローカル発振器)93、ミキサ94、95、AGC96と同様である。ここで、ミキサ14に入力するパイロット信号PLの帯域がBPF(バンドパスフィルタ)で制限される点についても受信機90と同様であるが、このためのBPFとしては、帯域幅の広いBPF12Aと、帯域幅の狭いBPF12Bが設けられ、これらは切替器171によって切り替えられる。BPF12Aを透過したパイロット信号をPL1、BPF12Bを透過したパイロット信号をPL2とすると、PL1、PL2のいずれかが切替器171によって選択されてパイロット信号PLとなり、このパイロット信号PLが受信側ローカル信号LoRを生成するために用いられる。切替器171における切替動作は、RF信号の受信強度に応じて行われ、分離器181によって分岐されたRF信号の一部を検波器182が検知し、切替制御部172が受信電界Pinを認識することによって制御される。ここで、帯域幅の広いBPF12Aは、標準的な低雑音従属同期方式に対応したものであり、PL1は図7におけるPLと等しい。ここで、受信電界がある値(切替閾値PSW)を下回った場合に、切替制御部172は、切替器171をBPF12A(PL1)からBPF12B(PL2)を選択するように切り替える。
【0036】
以下に、図11に示されたようにスレッショールドC/Nが28dBである場合における、この切替動作の例について説明する。(4)式により、雑音増加係数はパイロット信号の帯域幅(BPFの帯域幅)bに応じて定まり、例えば帯域幅の広いBPF12Aを用いた場合には4.5dB、帯域幅の狭いBPF12Bを用いた場合に0dBであるものとする。すなわち、(7)式により、BPF12Aを用いた通常の状態からBPF12Bに切り替えることによって、受信機10におけるローカル信号の熱雑音C/N((C/N)Lo)は、4.5dBだけ改善する。この際の受信電界のレベルPinが、この切替を行う際の受信電界PSWであるものとすると、(7)式より、以下の(8)式が成立する。
【0037】
【数5】
【0038】
この場合、Tを298K(25℃)、B=6MHz、w=4とし、BPF12AもしくはBPF12Bを用いた場合の(C/N)Loが35dBである場合、PSWは-71.5dBmとなる。PinがこのPSWとなった場合に切替を行わない場合に(C/N)LoがスレッショールドC/N(=28dB)に達する受信電界Pinは-74.1dBとなるのに対し、切替を行った場合におけるこのPinは-78.6dBとなる。すなわち、この差4.5dBがフェージングマージンの増加分となる。図2に、この状況(左側:切替前、右側:切替後)を模式的に示す。すなわち、切替を行うことによる雑音増加係数の変化の分だけフェージングマージンが改善する。
【0039】
すなわち、このような受信機10を用い、パイロット信号の帯域幅を受信電界レベルに応じて切り替えることによって、受信電界Pinが高い状況では低雑音従属同期方式を用いながら、受信電界Pinが低い状況では、この状況で支配的となる熱雑音の影響をBPFの切替により低減することによって、フェージングマージンを高く維持することができる。
【0040】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る伝送装置2においては、前記の伝送装置1において受信電界Pinと切替閾値PSWの大小関係に応じてBPFの帯域幅が変更されたのに対し、これらの大小関係に応じて方式(低雑音従属同期方式、独立同期方式)の切替が行われる。こうした構成は、フェージングの状況によって特に受信側で適正にパイロット信号に起因する問題が発生しやすくなる場合に好ましい。
【0041】
図3は、伝送装置2における送信機20、受信機30の構成を示す図である。ここでは、前記の伝送装置1の場合とは異なり、送信機20の構成が従来の伝送装置9における送信機80とは異なるため、ここでは、送信機20、受信機30の構成が示されている。この送信機20におけるパイロット信号発振器21、合成器22、ミキサ24については、前記の送信機80におけるパイロット信号発振器81、合成器82、ミキサ84と、それぞれ同様である。このため、ここで用いられるRF信号、IF信号も、図8に示されたものと同様に、OFDM信号(OFDM)にパイロット信号PLが多重されて構成されている。
【0042】
ただし、ここでIF信号をRF信号に変換するために用いられるローカル発振器(送信側ローカル発振器)231は、通常の独立同期方式の場合に用いられる外部基準信号(例えばGNSS信号)と同期するように設定され、このために、この外部信号を入手するための外部基準信号入手部232が設けられる。このため、ここで用いられる送信側ローカル信号LoT2は、外部基準信号と同期する。これにより、この伝送装置2は、従属同期方式(低雑音従属同期方式)として動作できると共に、独立同期方式としても動作することもできる。
【0043】
図3の受信機30において、分離器31、BPF32、ミキサ34、35、AGC36は、前記の受信機90における分離器91、BPF92、ミキサ94、95、AGC96と、それぞれ同様である。BPF32は、低雑音従属同期方式に対応した広い透過帯域を有する。また、ここで用いられる第1ローカル発振器33は、前記の受信機90におけるローカル発振器(受信側ローカル発振器)93と同様である。このため、受信機30で受信されたRF信号から分離器31によってパイロット信号を分離してBPF32を通過させることによって、受信機30側で用いるパイロット信号PLが抽出され、このパイロット信号PLを用いて第1受信側ローカル信号LoR1が生成される。この第1受信側ローカル信号LoR1は、図7における受信側ローカル信号LoRと等しい。このため、この第1受信側ローカル信号LoR1を用いた低雑音従属同期方式によってIF信号(OFDM信号)を得ることができる。
【0044】
一方、この受信機30においては、第1ローカル発振器33とは別の第2ローカル発振器371も設けられる。第2ローカル発振器371は送信機20側におけるローカル発振器(送信側ローカル発振器)231に対応し、送信機20側で用いられた外部基準信号と共通の外部基準信号と同期するように設定され、このために、この外部信号を入手するための外部基準信号入手部372が設けられる。第2ローカル発振器371によって生成された第2受信側ローカル信号LoR2は、外部基準信号を介して送信機20側のローカル信号LoT2と同期がとれているため、この場合にはパイロット信号を用いる必要はない。このように第2受信側ローカル信号LoR2を生成し、これを受信側ローカル信号LoRとして用いて周波数変換を行う動作は、通常の独立同期方式と同様である。
【0045】
このため、この受信機30においては、通常の低雑音従属同期方式の動作と通常の独立同期方式の動作の2種類が切り替えて行われる。この切替動作においては、LoR1、LoR2のいずれかを選択してLoRとする切替器381が設けられる。切替器381におけるこの切り替え動作は、BPF32を通過し生成されたパイロット信号について分離器391によって分岐された信号の一部を検波器392が検知して切替制御部382が受信電界Pinを認識することによって制御される。すなわち、切替制御部382は、受信電界Pinが大きな場合(Pin≧PSW)の場合にはLoR1を選択し、受信電界Pinが小さな場合(Pin<PSW)の場合にはLoR2を選択するように動作する。これにより、この受信機30は、受信電界Pinが大きな場合には通常の低雑音従属同期方式で動作し、受信電界Pinが小さく熱雑音の影響が大きくなる場合には、パイロット信号を用いない独立同期方式で動作する。
【0046】
こうした動作は、受信電界Pinが小さい場合において特に周波数選択性フェージングが発生しやすく、パイロット信号が失われる場合等、パイロット信号に起因する問題が発生しやすい場合において、特に好ましい。
【0047】
上記の受信機10における切替制御部172(切替器171)、受信機30における切替制御部382(切替器381)の動作は、受信電界Pinに応じて同様に行われる。このため、上記の受信機10、30は、共に、受信強度が高い場合には通常の低雑音従属同期方式の動作(第1の動作)を行い、受信強度が低い場合には、通常の低雑音従属同期方式とは異なる、これよりも位相雑音の圧縮効果の小さな、他の方式の動作(第2の動作)を行う。第1の動作、第2の動作の切替は、前記のように受信電界Pinの大小(PSWとの間の大小関係)に応じて行われるが、フェージングが発生する状況下では、実際には受信電界Pinは短時間で激しく変動する場合が多いため、一時的な受信電界PinとPSWとの単純な大小関係のみで切替を行った場合には、切替が不適正となる場合がある。このため、受信強度が通常の(高い)状態であり第1の動作が設定されている場合から受信強度が低下した場合には、素早く第2の状態に切り替えることが好ましいが、ここから受信強度が高まった場合には、即時に第1の状態に切り替えずに、一定期間の間において受信状態が良好であることが認められた場合において第1の状態に切り替えることが好ましい。
【0048】
図4は、このような切替制御部172(切替制御部382)の動作の例を示すフローチャートである。ここでは、上記の動作のために、検波器182(検波器392)によって受信電界Pinを認識するだけでなく、AGC16(AGC36)における制御電圧の時間変化率αが用いられる。αの絶対値の大きさは受信状況の変動の激しさに対応する。
【0049】
ここでは、受信機が通常の低雑音標準同期方式の動作(第1の動作)をさせる状態を標準設定(受信機10においては切替器171がPL1(BPF12A)側に接続された状態、受信機30においては切替器381がLoR1側に接続された状態)とし、第2の動作をさせる状態を非標準設定(受信機10においては切替器171がPL2(BPF12B)側に接続された状態、受信機30においては切替器381がLoR2側に接続された状態)とする。以下では、受信機10における切替制御部172における動作について説明するが、受信機30における切替制御部382の動作も同様である。
【0050】
図4において、まず、切替制御部172は、初期状態として、切替器171をPL1(BPF12A)側とする(標準設定とする(S1))。次に、切替制御部172は、検波器182によって受信電界Pinを認識し、Pin<PSWであれば(S2:Yes)、切替器171をPL2(BPF12B)側に切り替える(非標準設定とする(S3))。この判定(S2)は、例えば短時間の一定周期で行うことができ、Pin≧PSWであれば、受信状態が良好であるとみなされるため、標準状態が維持される。
【0051】
非標準設定に切り替えられた場合(S3)、以降は、切替制御部172は、この状態を変えるか否か(標準設定に再び戻すか否か)の判定を行う。このためには、切替制御部172は、AGC16における制御電圧の時間変化率αのモニターを開始する(S4)。次に、切替制御部172は、所定の期間(X秒間)の間における、αの絶対値(|α|)と、ある閾値α0との大小関係を判定する(S5)。ここで、この期間内において常時|α|≦α0の場合(S5:No)は、この期間内における受信状態の変化が小さいと考えられるため、次に、再びPinとPSWの大小関係が判定される(S6)。ここでPin≧PSWであれば(S6:No)、急激な受信状態の変動はなくX秒間において安定して受信状態が良好であったと考えられるため、切替制御部172は、切替器171を再び標準設定に戻す(S7)。これによって、再び初期状態(S1)に戻る。
【0052】
X秒間の間において|α|>α0となった場合(S5:Yes)には、この期間における受信状態は不安定であると認識されるため、即時に標準設定に戻すことは好ましくない。このため、切替制御部172は、再び、次のX秒間における|α|とα0との大小関係を判定する(S8)。ここで、この期間内において|α|≦α0の場合(S8:No)には、受信状態が緩やかに回復したと考えられるため、前記の場合と同様に、切替制御部172は、切替器171を再び標準設定に戻す(S7)。
【0053】
次のX秒間において|α|>α0となった場合(S8:Yes)、切替制御部172は、所定の期間(Y秒間)において常時Pin≧PSWであったか否かを判定する(S9)。常時Pin≧PSWであった場合(S9:Yes)には、Pinが高くなった状態が長期間維持されたと考えられるため、αの値によらず、切替制御部172は、切替器171を再び標準設定に戻す(S7)。この期間内でPin<PSWとなった場合があった場合(S9:No)には、再びX秒間における|α|とα0との大小関係の判定(S8)が行われ、前記の動作が繰り返される。
【0054】
上記の動作によれば、受信状態が劣化した場合(S2:Yes)には即時に非標準設定への切替が行われる(S3)のに対して、非標準設定から標準設定の切替は、一定期間(X秒間、Y秒間)にわたる良好な受信状態の継続が認められた場合(S5:No、S8:No、S9:Yes)においてのみ行われる。これによって、フェージングが発生しやすい状況下でもこの伝送装置1、2を安定して動作させることができる。なお、図4のフローチャートはこのような動作の一例であり、一定期間において受信状態が良好であったか否かの判断基準は適宜設定が可能である。
【0055】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係る伝送装置3は、常時低雑音従属同期方式で動作し、伝送装置1(受信装置10)、伝送装置2(受信装置30)におけるような、状況に応じた信号の切替は行われない。この伝送装置3においては、送信機40において、OFDM信号に対して2種類のパイロット信号が同時に付加される。図5は、この場合のRF信号の周波数配列を図8に対応させて示す。ここで、一方のパイロット信号(第1パイロット信号PLA)は図8におけるパイロット信号PLと同一であり、その中心周波数はF0+4MHzとなる。これに対して、他方のパイロット信号(第2パイロット信号PLB)は、図5において第1パイロット信号PLAと対称な位置に設定され、その中心周波数はF0-4MHzとされる。
【0056】
図6は、この伝送装置3(送信機40、受信機50)の構成を示す図である。送信機40におけるローカル発振器(送信側ローカル発振器)43、ミキサ44は送信機80におけるローカル発振器(送信側ローカル発振器)83、ミキサ84と同様であり、これらによってIF信号からRF信号が生成される点も同様である。
【0057】
ただし、この送信機40においては、第1パイロット信号PLAを発振する第1パイロット信号発振器41A、第2パイロット信号PLBを発振する第2パイロット信号発振器41Bが同時に用いられ、第1パイロット信号PLA、第2パイロット信号PLBが合成器42でOFDM信号に多重されることによって、図5に対応した周波数配列の信号が生成され、これが変換されてRF信号となる。第1パイロット信号PLA、第2パイロット信号PLBには共通の位相雑音が重畳する。このため、低雑音従属同期方式の動作により、受信側でこれらを用いて位相雑音の圧縮を行うことができる。
【0058】
受信機50は、このRF信号を受信し、このRF信号から第1パイロット信号PLA、第2パイロット信号PLBをそれぞれ認識する。このため、図5における第1パイロット信号PLAに対応した帯域をもつBPF52Aと第2パイロット信号PLBに対応した帯域をもつBPF52Bが設けられ、これらがそれぞれ設けられた各系統に、分離器51によってRF信号が分岐される。第1パイロット信号PLAを通過させるBPF52Aは、図7におけるBPF92と同一である。BPF52A、52Bの透過帯域幅は、低雑音従属同期方式に対応し、十分に広く設定される。
【0059】
受信機50においては、図7の受信機90においてパイロット信号PLとローカル発振器93、ミキサ94を用いて受信側ローカル信号LoRが生成されたのと同様に、第1パイロット信号PLAと第1ローカル発振器53A、ミキサ54Aを用いて第1受信側ローカル信号LoRAが、第2パイロット信号PLBと第2ローカル発振器53B、ミキサ54Bを用いて第2受信側ローカル信号LoRBが、それぞれ生成される。第1ローカル発振器53Aと第2ローカル発振器53Bは独立している。
【0060】
受信機50におけるミキサ55、AGC56は、図7におけるミキサ95、AGC96とそれぞれ同様である。ただし、ここでは、ミキサ55でRF信号をIF信号に変換するために用いられる受信側ローカル信号LoRは、第1受信側ローカル信号LoRAと、第2受信側ローカル信号LoRBとが合成器57で合成されて生成された混合ローカル信号LoRMとなる。
【0061】
このような混合ローカル信号LoRMにはOFDM信号と同様の位相雑音が重畳しているため、ミキサ55によって、図7の受信機90と同様に、この位相雑音の圧縮を行うことができる。すなわち、この場合の動作も低雑音従属同期方式となる。この際、RF信号が送信機40側から受信機50側に伝送される際に周波数選択性フェージングによって第1パイロット信号PLA、第2パイロット信号PLBのうちのいずれかが失われた場合でも、図6における混合ローカル信号LoRMを得ることができ、低雑音従属同期方式の動作が可能となる。特に、この場合においては、前記の伝送装置1、2とは異なり、受信機50側における切替動作を要しない。
【0062】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0063】
1、2、3、9 伝送装置
10、30、50、90 受信機
11、31、91、181、391 分離器
12A BPF(バンドパスフィルタ:第1のバンドパスフィルタ)
12B BPF(バンドパスフィルタ:第2のバンドパスフィルタ)
13、93 ローカル発振器(受信側ローカル発振器)
14、15、24、34、35、44、54A、54B、55、84、94、95 ミキサ
16、36、56、96 AGC
20、40、80 送信機
21、81 パイロット信号発振器
22、42、57、82 合成器
32、52A、52B、92 BPF(バンドパスフィルタ)
33、53A 第1ローカル発振器
41A 第1パイロット信号発振器
41B 第2パイロット信号発振器
43、83、231 ローカル発振器(送信側ローカル発振器)
53B、371 第2ローカル発振器
171、381 切替器
172、382 切替制御部
182、392 検波器
232、372 外部基準信号入手部
LoR 受信側ローカル信号
LoR1 第1受信側ローカル信号
LoR2 第2受信側ローカル信号
LoRM 混合ローカル信号
LoT、LoT2 送信側ローカル信号
PL パイロット信号
PLA 第1パイロット信号
PLB 第2パイロット信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11