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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 39/02 20060101AFI20241203BHJP
   D06F 39/08 20060101ALI20241203BHJP
   D06F 33/57 20200101ALI20241203BHJP
【FI】
D06F39/02 Z
D06F39/08 301A
D06F39/08 301B
D06F33/57
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021128399
(22)【出願日】2021-08-04
(65)【公開番号】P2023023149
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2024-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 啓太
(72)【発明者】
【氏名】内山 具典
(72)【発明者】
【氏名】加藤 瞬
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-083933(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112746440(CN,A)
【文献】特表2021-510097(JP,A)
【文献】特開2017-185088(JP,A)
【文献】特開2020-000802(JP,A)
【文献】特開2021-029614(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0301075(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 39/02
D06F 39/08
D06F 33/57
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽と、
ユーザにより粉末洗剤の投入を受ける投入受け部と、
複数回の洗濯運転で使用される量の液体洗剤を貯留可能であって前記水槽内に液体洗剤を自動的に投入する自動投入装置と、
前記自動投入装置に貯留された液体洗剤が投入される混合部と、
外部の水源から供給された水にナノバブルを含ませたナノバブル水を前記水槽に供給するナノバブル給水経路と、
前記外部の水源から供給された水にマイクロバブルを含ませたマイクロバブル水を前記水槽に供給するマイクロバブル給水経路と、を備え、
前記ナノバブル給水経路及び前記マイクロバブル給水経路のうち、少なくとも前記マイクロバブル給水経路は、前記混合部を通過せずに前記投入受け部を通って前記水槽に至る経路に構成されている、
洗濯機。
【請求項2】
前記マイクロバブル給水経路を開閉するマイクロバブル給水弁と、
洗濯物の重量又はユーザの設定に基づいて前記水槽に対する給水量である設定水量を設定する給水量設定処理を実行可能な給水量設定処理部と、
洗濯物の重量又はユーザの設定に基づいて前記設定水量に対する前記粉末洗剤の投入量を設定する投入量設定処理を実行可能な投入量設定処理部と、
前記マイクロバブル給水弁の開閉を制御して前記水槽に対する前記マイクロバブル水の給水を制御する給水処理を実行可能な給水処理部と、を更に備え、
前記給水処理は、前記投入量設定処理において設定された前記粉末洗剤の投入量が多い場合に、前記設定水量に対する前記マイクロバブル水の給水量の割合を多くする処理を含む、
請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記マイクロバブル給水経路を開閉するマイクロバブル給水弁と、
濯物の重量又はユーザの設定に基づいて前記水槽に対する給水量である設定水量を設定する給水量設定処理を実行可能な給水量設定処理部と、
前記投入受け部に対して手動により洗剤の投入する態様である手動投入と、前記自動投入装置により自動で洗剤を投入する態様である自動投入と、を設定可能な投入方法設定処理を実行可能な投入方法設定処理部と、
前記マイクロバブル給水弁の開閉を制御して前記水槽に対する前記マイクロバブル水の給水を制御する給水処理を実行可能な給水処理部と、を更に備え、
前記給水処理は、前記投入方法設定処理において、前記手動投入が設定された場合と前記自動投入が設定された場合とで前記設定水量に対する前記マイクロバブル水の給水量の割合を異ならせる処理を含む、
請求項1に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記給水処理は、前記投入方法設定処理において、前記手動投入が設定された場合には前記自動投入が設定された場合に対して前記設定水量に対する前記マイクロバブル水の給水量の割合を増大させる処理を含む、
請求項3に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記給水処理は、前記投入方法設定処理において、前記手動投入が設定された場合には前記自動投入が設定された場合に対して前記設定水量に対する前記マイクロバブル水の給水量の割合を低減する処理を含む、
請求項3に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に洗濯機は、洗濯物の素材や種類、ユーザの好み等により、液体洗剤と粉末洗剤とを使い分けることが可能な構成となっている。しかし、通常、粉末洗剤は、液体洗剤に比べて水に溶け難い。そのため、粉末洗剤を用いた場合には、洗濯機に投入した粉末洗剤のうちの一部が水に溶け切らずに残存することがある。したがって、従来構成では、洗濯機に投入した粉末洗剤の量に応じた本来の洗浄効果が発揮できないことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-113395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、粉末洗剤の溶解具合を高めて粉末洗剤の洗浄効果の向上を図ることができる洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の洗濯機は、水槽と、ユーザにより粉末洗剤の投入を受ける投入受け部と、外部の水源から供給された水にナノバブルを含ませたナノバブル水を前記水槽に供給するナノバブル給水経路と、前記外部の水源から供給された水にマイクロバブルを含ませたマイクロバブル水を前記水槽に供給するマイクロバブル給水経路と、を備え、前記ナノバブル給水経路及び前記マイクロバブル給水経路のうち、少なくとも前記マイクロバブル給水経路は、前記投入受け部を通って前記水槽に至る経路に構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態によるドラム式洗濯機の一例を概略的に示す図
図2】第1実施形態による縦型洗濯機の一例を概略的に示す図
図3】第1実施形態による外部の水源から供給される水の経路の一例を示す図
図4】第1実施形態による外部の水源から供給される水の経路の他の例を示す図
図5】第1実施形態による加圧溶解装置の一例を示す断面図
図6】第1実施形態による加圧溶解装置の加圧タンクの一例を示す断面図
図7】第1実施形態による微細気泡発生器の一例を示す断面図
図8】第1実施形態による微細気泡発生器の一例を図7のX8-X8線に沿って示す断面図
図9】第1実施形態による加圧溶解装置のマイクロバブルの発生量への影響を調べた試験結果の一例を示す図
図10】第1実施形態による制御装置の電気的構成の一例を示すブロック図
図11】第1実施形態による洗濯運転全体の工程の一例を示すフローチャート
図12】第1実施形態による洗い工程の制御内容の一例を示すフローチャート
図13】第2実施形態による洗い工程の制御内容の一例を示すフローチャート
図14】第3実施形態による運転コースに応じた洗剤量とマイクロバブル水の給水量の割合との関係の一例を示す図
図15】第3実施形態によるユーザの設定に応じた洗剤量とマイクロバブル水の給水量の割合との関係の他の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0008】
(第1実施形態)
本実施形態は、図1に示す横軸または斜め軸型のドラム式洗濯機10、及び図2に示す縦軸型の洗濯機20のいずれにも適用することができる。なお、洗濯機10、20は、乾燥機能を備えたものであっても良いし、乾燥機能を備えていないものであっても良い。図1に示す洗濯機10は、外箱11、水槽12、回転槽13、モータ14、操作パネル15、及び排水機構16を備えている。なお、図1において、洗濯機10の設置面側つまり鉛直下側を洗濯機10の下側とし、設置面と反対側つまり鉛直上側を洗濯機10の上側とする。洗濯機10は、回転槽13の回転軸が水平へ向かう横軸型又は後方へ向かって下降傾斜した斜め軸型のドラム式洗濯機である。
【0009】
図2に示す洗濯機20は、外箱21、水槽22、回転槽23、撹拌翼231、モータ24、操作パネル25、及び排水機構26を備えている。なお、図2において、洗濯機20の設置面側つまり鉛直下側を洗濯機20の下側とし、設置面と反対側つまり鉛直上側を洗濯機20の上側とする。洗濯機20は、回転槽23の回転軸が鉛直方向を向いた縦型洗濯機である。
【0010】
図1に示すドラム式洗濯機10及び図2に示す縦型洗濯機20において、水槽12、22は、外箱11、21内に配置されて図示しないサスペンションによって弾性的に支持されている。回転槽13、23は、水槽12、22内に回転可能に配置されており、モータ14、24によって回転駆動される。
【0011】
回転槽23は、撹拌翼231を有する。撹拌翼231は、回転槽23の内底部に鉛直軸まわりに回転可能に配設されている。撹拌翼231は、モータ24と接続されておりモータ24によって回転駆動される。また、撹拌翼231は、裏側に水をかき上げる羽根部材を有しており、回転槽23と水槽22との間に設けられた図示しない循環水路を通して水槽22内の水を循環させる機能を有する。なお、洗い工程又はすすぎ工程においては、回転槽23は回転されず撹拌翼231だけが回転駆動される。
【0012】
モータ14、24は、水槽12、22の底部外側に設けられている。モータ14、24は、詳細は図示しないが、例えば回転数を変更可能なブラシレスのダイレクトドライブモータで構成されている。モータ14、24は、回転槽13、23に接続されており、回転槽13、23を水槽12、22に対して相対的に回転駆動させる機能を有する。
【0013】
操作パネル15、25は、図示しない表示部や操作部が設けられており、ユーザが洗濯運転コースを設定するための入力操作等を受け付けるとともに、入力された操作内容及び運転状況等を表示する。操作パネル15、25は、例えば外箱11、21の上面の前側部分に設けられている。
【0014】
排水機構16、26は、水槽12、22内に貯留されている水を洗濯機10、20の機外へ排出する機能を有する。排水機構16、26は、図1及び図2に示すように、排水弁161、261及び排水ホース162、262を有している。排水弁161、261は、電磁的に開閉動作が可能な液体用の開閉弁である。排水ホース162、262は、例えば可撓性を有するホースで構成されており、一方の端部が排水弁161、261に接続され、他方の端部が洗濯機10、20の機外に引き出されている。排水弁161、261が開放されると、水槽12、22内に貯留されていた水は、排水ホース162、262を通して洗濯機10、20の機外へ排出される。
【0015】
また、図1及び図2に示すように、洗濯機10、20は、それぞれ給水装置30を備えている。給水装置30は、それぞれ外箱11、21の上部に設けられている。給水装置30は、例えば水道等の外部の水源から供給される水を水槽12、22内に給水する機能を有する。給水装置30は、図1及び図2に示すように、例えば給水弁機構31、注水ケース32、注水ホース33、洗剤ケース34、仕上げ剤ケース35、自動投入装置36、混合部37、加圧溶解装置40、微細気泡発生器501、502を有して構成することができる。
【0016】
給水弁機構31は、図1及び図2に示すように、図示しない水道の蛇口等の外部の水源に接続される。給水弁機構31は、例えば電磁的に開閉動作が可能な液体用の開閉弁で構成されている。給水弁機構31は、注水ケース32の上流側に設けられている。給水弁機構31は、注水ケース32を介して水槽12、22内に至る複数の給水経路を個別に開閉する機能を有する。この場合、給水弁機構31は、例えば複数の給水弁311、312、313を一体的に備えた構成にすることができる。以下の説明では、3つの給水弁311、312、313のうち、給水弁311を通常水給水弁311と称し、給水弁312をナノバブル給水弁312と称し、給水弁313をマイクロバブル給水弁313と称することがある。
【0017】
注水ケース32は、給水弁機構31、混合部37、加圧溶解装置40、及び微細気泡発生器501、502の下流側に設けられている。注水ケース32は、例えば樹脂製であって内部に空間を有する中空箱状に形成されている。そして、注水ケース32は、内部に洗濯処理剤を収容可能に構成されている。洗濯処理剤とは、例えば粉末洗剤や液体洗剤等の洗剤、及び柔軟剤や香り付け剤等の仕上げ剤を含む。注水ケース32は、外部の水源から供給される水を受けて、その水を、注水ホース33を介して水槽12、22内に供給する機能を有する。
【0018】
注水ホース33は、例えば可撓性を有するホースで円筒状に構成されている。注水ホース33の一方の端部は注水ケース32に接続され、他方の端部は水槽12、22に接続されている。つまり、注水ホース33は、注水ケース32と水槽12、22内とを繋いでいる。外部の水源から注水ケース32内に流入した水は、注水ホース33を通って水槽12、22内に注水される。
【0019】
洗剤ケース34及び仕上げ剤ケース35は、例えば樹脂製の容器で構成され、注水ケース32に収容可能に構成されている。洗剤ケース34及び仕上げ剤ケース35は、図3に示すように、注水ケース32の底面321から上方に離れた位置に設けられている。洗剤ケース34は、ユーザが1回の洗濯運転に用いる量の粉末洗剤又は液体洗剤等の洗剤を投入可能に構成されている。
【0020】
洗剤ケース34は、図3に示すように、例えば洗剤投入口341を有して構成できる。洗剤投入口341は、洗剤ケース34を貫いて形成されており、注水ケース32の底面321に向かって開口している。洗剤投入口341は、洗剤ケース34で受けた洗剤を洗剤ケース34内で貯留させることなく注水ケース32の底面321側へ導く。ユーザは、洗剤ケース34が注水ケース32内に収容された状態で、洗剤投入口341を通して注水ケース32の底面321に洗剤を投入する。この場合、注水ケース32の底面321は、ユーザにより洗剤の投入を受ける投入受け部として機能する。
【0021】
仕上げ剤ケース35は、ユーザが1回の洗濯運転に用いる量の例えば柔軟剤や香り付け剤等の液体の仕上げ剤を投入可能に構成されている。仕上げ剤ケース35は、図3に示すように、サイフォン機構部351を有している。サイフォン機構部351は、仕上げ剤ケース35の底部に設けられており、仕上げ剤ケース35の外部と内部とを連通している。外部の水源から仕上げ剤ケース35内に供給された水と仕上げ剤とが仕上げ剤ケース35内で混合した混合水は、サイフォン機構部351を介して仕上げ剤ケース35外へ流出する。すなわち、給水によって仕上げ剤ケース35内の混合水の水位が上がってサイフォン機構部351の上方まで混合水が満たされると、通水路352から混合水が流れ始め、その後サイフォンの原理によって仕上げ剤ケース35の下方へ向かって混合水の流出が維持される。仕上げ剤ケース35から流出した当該混合水は、注水ケース32の底面321に沿って流れて、その後水槽12内に供給される。
【0022】
自動投入装置36は、水槽12、22の上部に設けられている。自動投入装置36は、複数回の洗濯運転で使用される量の洗濯処理剤を貯留可能であって、洗濯運転の進行に伴い必要量の洗濯処理剤を自動で水槽12、22に投入する機能を有する。外部の水源から供給された水は、自動投入装置36から供給される洗濯処理剤と混合部37で混合し、水槽12、22内に供給される。
【0023】
自動投入装置36は、例えば洗剤タンク361、仕上げ剤タンク362、投入ポンプ363を有して構成できる。洗剤タンク361は、複数回分の洗濯運転に用いる量の液体洗剤を貯留するためのものである。仕上げ剤タンク362は、複数回分の洗濯運転に用いる量の液体の仕上げ剤を貯留するためのものである。投入ポンプ363は、例えばピストンポンプで構成されており、タンク361、362に貯留された洗濯処理剤を吸引して混合部37に供給する機能を有する。
【0024】
混合部37は、例えば内部に所定量の洗濯処理剤を貯留可能な容器状に構成されている。自動投入装置36の投入ポンプ363の吐出側は混合部37に接続されており、投入ポンプ363によってタンク361、362から吸引された洗濯処理剤は、混合部37内に投入される。混合部37内に投入された洗濯処理剤は、外部の水源から供給された水と混合部37内で混合されて、その後注水ケース32内を介して水槽12、22内に供給される。
【0025】
また、洗濯機10、20は、図3に示すように、例えばナノバブル給水経路R1、仕上げ剤用給水経路R2、自動投入用給水経路R3、及びマイクロバブル給水経路R4を備えている。各給水経路R1、R2、R3、R4は、給水弁機構31からそれぞれ異なる経路を通って注水ケース32内に流入し、注水ケース32内を通って水槽12、22に至る経路である。すなわち、各給水経路R1、R2、R3、R4は、注水ケース32を介して間接的に水槽12、22に接続されている。
【0026】
ナノバブル給水経路R1は、給水弁312から微細気泡発生器501を介して注水ケース32内の洗剤ケース34を通って水槽12、22に至る経路である。この場合、ナノバブル給水経路R1は、外部の水源から供給された水にナノバブルを含ませたナノバブル水を水槽12、22に供給する機能を有する。ナノバブル水とは、水中に含まれる微細気泡のうちナノバブルの発生濃度が他オーダーに属する微細気泡の発生濃度よりも多いことを意味している。仕上げ剤用給水経路R2と自動投入用給水経路R3とは、図3に示すように、給水弁311の下流側で相互に分岐している。仕上げ剤用給水経路R2は、給水弁311から注水ケース32内の仕上げ剤ケース35を通って水槽12、22に至る経路である。この場合、仕上げ剤用給水経路R2は、仕上げ剤ケース35内に投入された仕上げ剤を水槽12、22内に供給する機能を有する。
【0027】
自動投入用給水経路R3は、給水弁311から混合部37及び注水ケース32内を通って水槽12、22内に至る経路である。この場合、自動投入用給水経路R3は、投入ポンプ363によって混合部37に投入されたタンク361、362内の洗濯処理剤を、注水ケース32の内部を通って水槽12、22内に供給する機能を有する。
【0028】
マイクロバブル給水経路R4は、給水弁313から加圧溶解装置40、微細気泡発生器502、及び注水ケース32内を通って水槽12、22に至る経路である。この場合、マイクロバブル給水経路R4は、外部の水源から供給された水にマイクロバブルを含ませたマイクロバブル水を水槽12、22に供給する機能を有する。マイクロバブル水とは、水中に含まれる微細気泡のうちマイクロバブルの発生濃度が他オーダーに属する微細気泡の発生濃度よりも多いことを意味している。
【0029】
マイクロバブル給水経路R4は、図3に示すように、注水ケース32の底面321を通って水槽12、22に至る経路に構成されている。すなわち、マイクロバブル給水経路R4は、洗剤ケース34を通らずに水槽12、22に至る経路とすることができる。このようにして、ユーザから洗剤ケース34を介して注水ケース32の底面321に投入された洗剤とマイクロバブル給水経路R4を流れる水とが注水ケース32の底面321で混合されながら底面321に沿って流れて、その後水槽12、22内に供給される。
【0030】
また、図4に示すように、マイクロバブル給水経路R4は、洗剤ケース34を含んで構成することができる。すなわち、マイクロバブル給水経路R4は、微細気泡発生器502の下流側で洗剤ケース34を通って水槽12、22に至る経路で構成できる。この場合、ナノバブル給水経路R1とマイクロバブル給水経路R4とは、洗剤ケース34を共通の構成として有している。
【0031】
洗剤ケース34は、図4の例に示すように、例えば1回の洗濯運転に必要な洗濯処理剤を貯留可能な容器状に構成されて、洗剤ケース34の底部に注水ケース32の底面321に繋がる孔342が形成されて構成することができる。例えば洗剤ケース34内に洗剤が投入されていると、その洗剤は、微細気泡発生器502を通過した水とともに孔342から注水ケース32の底面321側に流し落とされて、その後注水ケース32の底面321に沿って流れて水槽12、22内に供給される。この場合、洗剤ケース34は、ユーザにより洗剤の投入を受ける投入受け部として機能する。
【0032】
加圧溶解装置40は、マイクロバブル給水経路R4の経路上であって、マイクロバブル給水弁313の下流側に設けられている。加圧溶解装置40は、外部の水源から供給された水を、その水の圧力で加圧して空気成分を溶解させる。加圧溶解装置40は、図5の黒矢印で示す方向に水が流れる流路を構成する。加圧溶解装置40は、図5に示すように、加圧タンク41、入口部42、出口部43、仕切壁44、空気導入管45、及び吸気弁46を有している。加圧タンク41は、給水弁313を通って供給された水が空気とともに一時的に貯留することができる。加圧タンク41は、気密及び水密性を有するとともに耐圧性を有する容器状に構成されている。耐圧性とは、外部の水源から流入する水の圧力この場合水道圧によって、加圧タンク41内の内部圧力が上昇した場合でも、加圧タンク41の変形を抑えて気密性及び水密性が維持されることを意味する。
【0033】
入口部42は、加圧タンク41の上部に設けられており、給水弁313の吐出側に接続されている。入口部42は、加圧タンク41の外部から内部に流入する水が通る部分である。外部の給水源から給水弁313に供給された水は、入口部42を通って加圧タンク41内に向かって導入される。この場合、給水弁313と入口部42との間には大きな抵抗となる構成が存在していないため、給水弁313から吐出された水は比較的高圧の状態で加圧タンク41内に供給される。
【0034】
更に、入口部42は、加圧タンク41内に入口部42を通る水を鉛直下方へ向かって落下させる。入口部42から流出し落下した水は、加圧タンク41内部に貯留した水面の上部の空気を引き込みながら、水面に対して激しく衝突する。これにより、入口部42から落下した水の衝突時のエネルギーによって加圧タンク41内に貯留した水が撹拌されて、加圧タンク41内部の空気成分の溶解が促進される。
【0035】
出口部43は、加圧タンク41の下部に設けられている。出口部43は、加圧タンク41の内部から外部に流出する水が通る部分である。つまり、入口部42から加圧タンク41内に流入した水は、出口部43を通って加圧タンク41の外部に流出する。本実施形態では、出口部43からの排水は加圧タンク41に貯留した水の水圧つまり静水圧のみで行われ、排水のための専用のポンプ等の駆動源を要していない。
【0036】
仕切壁44は、図5に示すように、加圧タンク41内の底部から立ち上がって設けられ、加圧タンク41内の空間の一部を水平方向に仕切っている。すなわち、仕切壁44は、加圧タンク41内の空間のうち下部の空間を、入口部42側の空間と出口部43側の空間とに仕切っている。これにより、加圧タンク41内に流入した水が加圧タンク41の入口部42側の空間における水面で撹拌されることで、加圧タンク41内の水と空気とを効率良く接触させることができる。よって、加圧タンク41内の水に対する空気成分の溶解を促進することができる。
【0037】
仕切壁44には、図6に示すように、スリット47が形成されている。スリット47は、微細気泡よりも粒径の大きな泡を遮蔽する機能を有している。加圧タンク41内に流出した水のうち仕切壁44の上端よりも下方に位置する水は、スリット47を通過して出口部43側の空間に流れる。このとき、入口部42から落下した水が水面と衝突することにより発生した例えばミリオーダーの比較的大きな気泡は、スリット47を通過せずに出口部43側の空間に流出することなく消滅する。
【0038】
空気導入管45は、例えば加圧タンク41の上部に設けられており、加圧タンク41の内部と外部とを連通している。吸気弁46は、例えば逆止弁で構成することができる。この場合、吸気弁46は、加圧タンク41の外部から加圧タンク41の内部へ向かう空気は通すが、加圧タンク41の内部から加圧タンク41の外部へ向かう空気は遮断する機能を有する。そして、吸気弁46は、加圧タンク41内の圧力が大気圧よりも高くなると閉じ、加圧タンク41内の圧力が大気圧に近い値になると開く構成とすることができる。また、吸気弁46は、例えば電磁的に開閉可能に構成することができる。この場合、吸気弁46が開放されると、空気導入管45を介して加圧タンク41内に外気が補充される。なお、吸気弁46に代えて、エアーポンプにより加圧タンク41内に空気を導入する構成としても良い。
【0039】
次に、加圧溶解装置40における加圧タンク41内の水に空気成分が溶解される状態について説明する。本実施形態では、加圧溶解装置40は、例えば加圧タンク41から流出する水量よりも加圧タンク41内に流入する水量を多くすることで、水道圧のみで加圧タンク41内を加圧することができる。この場合、例えば給水弁313が開放されると、入口部42から流入した水のうち出口部43から流出しなかった残りの水が加圧タンク41内に貯留されて加圧タンク41内の水位が上昇する。このとき、加圧タンク41内の空気は上昇する水面に圧縮され、これにより加圧タンク41内の圧力が上昇して吸気弁46が閉鎖する。
【0040】
その後、入口部42からの水の流入が継続されて加圧タンク41内の水位が所定水位まで上昇すると、加圧タンク41内の圧力と外部の水源から流入する水の圧力この場合水道圧とが均衡する。その結果、入口部42から流入する水の量と出口部43から加圧タンク41外に流出する水の量とが略等しくなり、加圧タンク41内が最大圧力この場合水道圧に近い圧力となる。このように、加圧タンク41内の圧力が大気圧よりも上昇することにより、加圧タンク41内の空気が加圧タンク41内に貯留されている水に溶解し易くなる。つまり、外部の水源から供給された水を加圧溶解装置40に通すことによって、加圧溶解装置40の下流側に供給される水に対して、加圧溶解装置40を通らない通常の水に比べて多量の空気成分を溶存させた水を供給することができる。
【0041】
そして、加圧タンク41内に給水が開始されて、例えば給水時間が所定時間経過した後に給水弁313を閉じると、加圧タンク41内の水位の低下に伴い加圧タンク41内の圧力も大気圧近くまで低下し、吸気弁46が開いて加圧タンク41内に外気が導入される。このように、給水弁313の開閉を繰り返すことで、加圧溶解装置40は、空気成分を溶解させた水を繰り返し吐出することができる。
【0042】
微細気泡発生器501は、ナノバブル給水経路R1上においてナノバブル給水弁312の下流側に設けられている。微細気泡発生器502は、マイクロバブル給水経路R4上において加圧溶解装置40の下流側に設けられている。本実施形態において、微細気泡発生器501と微細気泡発生器502とは同様の構造であり、微細気泡発生器501、502単体では、微細気泡発生器501、502を通る水に主としてナノオーダーの微細気泡を析出させる機能を有する。
【0043】
微細気泡発生器501、502は、直径及び全長が例えば数mm~数十mm程度、具体的には直径が最大約15mmで長さが約10mmに設定されている。微細気泡発生器501、502は、図7に示すように、絞り部51、ストレート部52、及び衝突部53を有している。絞り部51及びストレート部52は、微細気泡発生器501、502の長手方向へ向かって、図7の黒矢印で示す方向へ水を流す流路を構成する。
【0044】
絞り部51は、微細気泡発生器501、502の流入側つまり上流側に設けられている。絞り部51は、微細気泡発生器501、502の長手方向の上流側端部から途中部分にかけて流路の断面積つまり内径が連続的に徐々に減少するようないわゆる截頭円錐形のテーパ管状に形成されている。ストレート部52は、絞り部51の下流側に設けられている。ストレート部52は、内径が変化しない、すなわち流路の断面積つまり液体の通過可能な面積が変化しない円筒形、いわゆるストレート管状に形成されている。
【0045】
衝突部53は、ストレート部52の下流端部分に設けられている。衝突部53は、微細気泡発生器501、502における水の通過可能な断面積を局所的に縮小することで、微細気泡発生器501、502を通過する液体中に主としてナノオーダー以下の微細気泡を多量に発生させることができる。
【0046】
衝突部53は、図8に示すように、例えば先端が尖った4本の棒状の部分で構成され、ストレート部52の内周面からこのストレート部52の断面における中心方向へ向かって突出している。4本の衝突部53は、ストレート部52の断面の周方向に向かって相互に等間隔に離間した状態で配置されている。この場合、各衝突部53の下流側の面は、平坦面に形成されている。また、各衝突部53で構成される隙間の面積が、微細気泡発生器501、502における水の通過可能な最小断面積となる。
【0047】
微細気泡発生器501、502の上流側に水が流入すると、截頭円錐テーパ形状に縮小するように形成された絞り部51において流路断面積が絞られることによって、流体力学のいわゆるベルヌーイの定理に基づき流速が高められるとともに減圧によるキャビテーションが発生する。そして、その高速流が衝突部53に衝突することで作用するせん断力によって細分化された微細気泡が生成される。これにより、微細気泡発生器501、502は、微細気泡発生器501、502内を通過する水の中に溶存している空気を微細気泡として多量に析出させて、微細気泡発生器501、502を通過する以前よりも微細気泡を多量に含んだ微細気泡水を供給することができる。
【0048】
ここで、一般に、微細気泡又はファインバブルは、その気泡の粒子径によって次のように分類されている。例えば、粒子径が数μmから100μm程度つまりマイクロオーダーの気泡は、マイクロバブルと称されている。これに対し、粒子径が50nm~1,000nm未満つまりナノオーダーの気泡は、ウルトラファインバブルと称されている。なお、本実施形態において、ナノオーダーの微細気泡、ウルトラファインバブル及びナノバブルは、いずれも同義であり、粒子径がナノオーダーの気泡を意味する。
【0049】
マイクロバブルは、電気的特性としてマイナス電荷を帯びており、洗濯物等の洗浄対象物に付着したプラス電荷を帯びた汚れと静電的に吸着しやすい。マイクロバブルとの電気的反応により洗浄対象物から引き剥がされた汚れは、マイクロバブル表面に吸着したままマイクロバブルの浮力により水面に浮上し滞留する。更に、気泡表面がマイナスに帯電したマイクロバブル同士は反発しあい結合することがなく液体中では分散するため、洗浄対象物から取り除いた汚れが洗濯水中で再び洗浄対象物に付着することを抑制することができる。
【0050】
一方、ウルトラファインバブルは、粒径が細かいため入り組んだ部分まで浸透が可能であり、マイクロバブル等の他の微細気泡では除去しきれない対象物の汚れを除去する洗浄効果を発揮することができる。また、ウルトラファインバブルは、粒子径がナノオーダーであり浮力が小さいこと及びマイクロバブルと比較して疎水性が大きく水に溶けにくいため液体中での滞在時間が長いという性質を有する。
【0051】
さて、本願発明者は、加圧溶解装置40及び微細気泡発生器501、502による微細気泡の発生量に関する検証試験を行った。この試験では、微細気泡発生器501、502単体の構成と微細気泡発生器501、502に加えて加圧溶解装置40を設けた構成すなわち本実施形態の仕様とによる2仕様について比較した。図9は、各仕様における発生した微細気泡の粒子径と微細気泡の発生量との関係を示したものであり、縦軸に微細気泡の濃度、横軸に微細気泡の径、を示す。
【0052】
マイクロバブルの発生状況について、図9に示すように、加圧溶解装置40を設けない仕様つまり微細気泡発生器501、502単体では、マイクロバブルの発生はほぼ確認されなかった。一方、加圧溶解装置40を設けた仕様では、粒子径が数μmから100μm程度の範囲でマイクロバブルの発生を確認した。これは、水に溶解している空気の量が増えると、微細気泡発生器501、502を通過した際に生成されるウルトラファインバブルが顕著に増加する結果、生成されたウルトラファインバブルの一部が相互に結合してマイクロバブルに発達するからと推測される。このように、微細気泡発生器501、502は、加圧溶解装置40を用いて微細気泡発生器501、502を通過する水に溶解している空気の量を増やすことで、マイクロバブルの発生量を飛躍的に向上させることがわかる。
【0053】
本実施形態では、上述したように、マイクロバブル給水経路R4において、加圧溶解装置40の下流側に微細気泡発生器502を配置している。そして、加圧溶解装置40及び微細気泡発生器502を通過して生成されたマイクロバブル水を、例えば粉末洗剤と混合させることによって洗浄効果を向上させることができる。つまり、粉末洗剤の粉末は、微細気泡のうちナノバブルよりも粒径つまり表面積の大きいマイクロバブルに吸着しやすい。そして、マイクロバブル表面に吸着した粉末は、マイクロバブルの浮力によって水面に浮上する過程でマイクロバブルの破裂に伴い細かく分解されて水への溶解がし易くなる。このため、多量のマイクロバブルを粉末洗剤に接触させることで洗濯水に対する粉末洗剤の溶解を促進させることができる。これにより、マイクロバブル水を用いない場合に比べて、洗濯水の洗浄効果を効率的に向上させることができる。
【0054】
洗濯機10、20は、図10に示すように、制御装置60、水位センサ61、流量計62、及び残量検知部63を備えている。制御装置60は、CPU601や、ROM、RAM、及び書き換え可能なフラッシュメモリなどの記憶領域602を有するマイクロコンピュータを主体に構成されており、洗濯機10、20全体の動作を制御する。水位センサ61は、水槽12、22内の水位を検出可能である。流量計62は、例えば給水弁機構31の上流側に設けられ、給水弁機構31の下流側で分岐して設けられた各給水経路R1、R2、R3、R4に流れる水の流量を計測する。制御装置60には、水位センサ61や流量計62からの検知信号が入力される。この場合、制御装置60は、流量計62の検知信号の積算により、水槽12、22に供給した水量を算出することができる。
【0055】
残量検知部63は、例えば図示しない磁気センサや永久磁石等を含んで構成することができる。残量検知部63は、タンク361、362内の洗濯処理剤の残量を検出する機能を有する。残量検知部63は、例えば洗濯処理剤の補充が必要な残量までタンク361、362内の洗濯処理剤の残量が低下すると、その残量の低下を検知することができる。この場合、制御装置60には、磁気センサからの検知信号が入力される。そして、制御装置60は、例えば操作パネル15、25に対する表示等を行うことによって、ユーザに対してタンク361、362への洗濯処理剤の補充を促す報知が行われる。
【0056】
図10に示すように、モータ14、24、排水弁161、261、給水弁機構31、及び投入ポンプ363は、制御装置60に電気的に接続されている。そして、制御装置60は、操作パネル15、25等から入力された信号に基づき、モータ14、24、排水弁161、261、給水弁機構31、及び投入ポンプ363の駆動制御を行う。
【0057】
例えば、制御装置60は、給水弁311を開くことで、仕上げ剤用給水経路R2及び自動投入用給水経路R3から加圧溶解装置40と微細気泡発生器501、502を通過しない水を水槽12、22に供給することができる。また、制御装置60は、給水弁312を開くことで、ナノバブル給水経路R1から微細気泡発生器501を通過したナノバブル水を水槽12、22に供給することができる。そして、制御装置60は、給水弁313を開くことで、マイクロバブル給水経路R4を通過したマイクロバブル水を水槽12、22に供給することができる。この場合、制御装置60は、各給水弁311、312、313の開閉を制御することで各給水経路R1、R2、R3、R4を適宜選択し組み合わせて使用することができる。
【0058】
また、制御装置60は、CPU601において記憶領域602に記憶された制御プログラムを実行することにより、重量検知処理部64、給水量設定処理部65、投入量設定処理部66、投入方法設定処理部67、及び給水処理部68をソフトウェアにより仮想的に実現する。なお、制御装置60は、これらの処理部64~68を集積回路等のハードウェアにより実現しても良いし、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせにより実現しても良い。
【0059】
重量検知処理部64は、重量検知処理を実行可能である。重量検知処理は、通常脱水処理の実行前に実行されて回転槽13、23内の洗濯物の重量を検知する処理を含む。重量検知処理部64は、例えば洗濯運転の初期の段階、具体的には洗い工程前に実行されて、乾燥状態つまり給水による水を含んでいない状態の洗濯物の重量を検知する。重量検知処理部64は、回転槽13、23を低速で回転させ、その際にモータ14、24のq軸電流を図示しない電流センサが測定することにより洗濯物の重量を検知することができる。
【0060】
給水量設定処理部65は、給水量設定処理を実行可能である。給水量設定処理は、重量検知処理部64で検知された洗濯物の重量、又は操作パネル15、25等を介して入力されたユーザの設定に基づいて、水槽12、22に対する給水量である設定水量を設定する処理を含む。設定水量とは、洗剤を用いた洗い工程において水槽12、22内に水を貯留する際に、給水装置30によって水槽12、22内に供給される水の総量を意味する。設定水量は、例えば重量検知処理によって検知された洗濯物の重量によって設定されるものでも良いし、例えばユーザが操作パネル15、25に対する入力操作によって任意に設定されるものでも良い。
【0061】
設定水量に到達したか否かは、例えば給水処理部68により判断される。この場合、給水処理部68は、給水量が設定水量に到達したか否かを、例えば流量計62の検出結果に基づいて判断しても良いし、水位センサ61の検出結果つまり水槽12、22内の水位に基づいて判断しても良い。なお、水槽12、22内への給水量を、水槽12、22内の水位として見た場合、設定水量は、設定水位と称することもできる。
【0062】
投入量設定処理部66は、投入量設定処理を実行可能である。投入量設定処理は、洗濯物の重量又はユーザの設定に基づいて、設定水量に対する洗剤の投入量を設定する処理を含む。投入量設定処理部66は、洗剤の投入量を洗濯物の重量が標準例えば5kgから6kgの場合に設定される洗剤の投入量を「標準」として、洗濯物の重量に応じて定めることができる。そして、投入量設定処理部66は、洗濯物の重量が少ない例えば5kg未満の場合には洗剤の投入量を「少」とし、洗濯物の重量が多い例えば6kgを超える場合には洗剤の投入量を「多」とすることができる。
【0063】
投入方法設定処理部67は、投入方法設定処理を実行可能である。投入方法設定処理は、例えば注水ケース32の底面321に対して手動により洗剤の投入する態様である手動投入と、自動投入装置36により自動で洗剤を投入する態様である自動投入と、を設定する処理を含む。投入方法設定処理部67は、洗い工程の初期の段階、具体的には、水槽12、22内への給水の前に投入方法設定処理を実行することができる。
【0064】
投入方法設定処理は、残量検知部63の検知した情報に基づいて手動投入と自動投入とを自動で設定する構成とすることができる。具体的には、投入方法設定処理部67は、水槽12、22内への給水開始前に、残量検知部63が洗剤タンク361内の洗剤の残量不足を検知した場合、手動投入に設定することができる。一方、投入方法設定処理部67は、残量検知部63が洗剤タンク361内の洗剤の残量不足を検知していない場合、自動投入に設定することができる。また、投入方法設定処理は、ユーザの操作パネル15、25に対する操作に基づいて行われる構成とすることができる。この場合、ユーザは、洗濯運転の開始前に、操作パネル15、25を操作することによって、手動投入又は自動投入のいずれの投入方法とするかを適宜選択することが可能である。
【0065】
給水処理部68は、給水処理を実行可能である。給水処理は、給水弁機構31を制御して水槽12、22に対する給水を制御する処理を含む。すなわち、給水処理は、通常水給水弁311の開閉を制御して、水槽12、22に対する仕上げ剤用給水経路R2及び自動投入用給水経路R3からの給水を制御する処理を含む。また、給水処理は、ナノバブル給水弁312の開閉を制御して、水槽12、22に対するナノバブル給水経路R1からのマイクロバブル水の給水を制御する処理を含む。更に、給水処理は、マイクロバブル給水弁313の開閉を制御して、水槽12、22に対するマイクロバブル給水経路R4からのマイクロバブル水の給水を制御する処理を含む。
【0066】
給水処理は、投入方法設定処理において、手動投入が設定された場合と自動投入が設定された場合とで設定水量に対するマイクロバブル水の給水量の割合を異ならせる処理を更に含む。また、給水処理は、投入方法設定処理において、手動投入が設定された場合には、自動投入が設定された場合に対して設定水量に対するマイクロバブル水の給水量の割合を増大させる処理を更に含む。洗剤の投入方法については、ユーザの利便性を鑑みると、手動投入よりも自動投入が選択される頻度が高くなると考えられる。そのため、洗い工程におけるマイクロバブル水の給水量は、自動投入時のマイクロバブル水の給水量を標準として設定しておくことが好ましい。
【0067】
制御装置60は、操作パネル15、25に対するユーザからの操作を受けて又は予め設定された予約内容によって洗濯運転を実行することができる。制御装置60は、図11に示すように、洗濯運転が開始されると、重量検知処理部64によって洗濯物の重量を検知してから(ステップS11)、洗い工程(ステップS12)、すすぎ工程(ステップS13)、及び脱水工程(ステップS14)を順に行い、そして洗濯運転を終了する(エンド)。
【0068】
以下では、図12も参照して、洗い工程における制御内容について説明する。なお、以下の説明において、給水量設定処理部65、投入量設定処理部66、投入方法設定処理部67、及び給水処理部68で行われる処理は、全て制御装置60が主体となって行うものとして説明する。
【0069】
制御装置60は、図11のステップS12の洗い工程を実行すると、まず図12のステップS21において、重量検知処理部64により検知された洗濯物の重量に基づいて、給水量設定処理を実行して、設定水量を決定する。その後、制御装置60は、ステップS22において投入量設定処理を実行し、重量検知処理において検知した洗濯物の重量又はユーザの設定に基づいて洗剤の投入量を設定する。次に、制御装置60は、ステップS23において投入方法設定処理を実行した後に、洗剤の投入方法が手動投入であるか否かを判断する。洗剤の投入方法が手動投入でない場合(ステップS23でNO)。制御装置60はステップS24に処理を移行させる。そして、制御装置60は、ステップS24において、投入ポンプ363を駆動して、洗剤タンク361に貯留された洗剤を混合部37に供給する。
【0070】
一方、制御装置60は、洗剤の投入方法が手動投入であった場合(ステップS23でYES)、ステップS25に処理を移行させて、給水処理を実行し、自動投入が設定された場合に対して設定水量に対するマイクロバブル水の給水量の割合を増大させる。その後、制御装置60は、ステップS26において給水処理を実行し、水槽12、22内に設定水量に至るまで給水を行う。そして、制御装置60は、ステップS27において所定時間例えば3分間洗い動作を実行し、その後水槽12内の汚れを含んだ洗濯水を排水(ステップS28)する。その後、制御装置60は、ステップS29において所定時間例えば1分間脱水を行い、図11のフローの処理を戻し(図12のリターン)、図11に示すステップS13のすすぎ工程に処理を移行させる。
【0071】
以上説明した実施形態によれば、洗濯機10、20は、水槽12、22と、投入受け部321と、ナノバブル給水経路R1と、マイクロバブル給水経路R4と、を備える。投入受け部321は、ユーザにより粉末洗剤の投入を受ける。ナノバブル給水経路R1は、外部の水源から供給された水にナノバブルを含ませたナノバブル水を、水槽12、22に供給する。マイクロバブル給水経路R4は、外部の水源から供給された水にマイクロバブルを含ませたマイクロバブル水を、水槽12、22に供給する。そして、ナノバブル給水経路R1及びマイクロバブル給水経路R4のうち、少なくともマイクロバブル給水経路R4は、投入受け部321を通って水槽12、22に至る経路に構成されている。
【0072】
ここで、粉末洗剤の粉末は、微細気泡のうちナノオーダーのナノバブルよりも粒径つまり表面積の大きいマイクロオーダーのマイクロバブルに吸着しやすい。そして、マイクロバブル表面に吸着した粉末は、マイクロバブルの浮力によって水面に浮上する過程でマイクロバブルの破裂に伴い細かく分解されて水への溶解がし易くなる。このため、多量のマイクロバブルを粉末洗剤に接触させることで洗濯水に対する粉末洗剤の溶解を促進させることができる。これにより、洗濯水に対する粉末洗剤の溶解具合を高めて、粉末洗剤の洗浄効果の向上を図ることができる。
【0073】
また、洗濯機10、20は、マイクロバブル給水弁313と、自動投入装置36と、給水量設定処理部65と、投入方法設定処理部67と、給水処理部68と、を更に備える。マイクロバブル給水弁313は、マイクロバブル給水経路R4を開閉する。自動投入装置36は、複数回の洗濯運転で使用される量の液体洗剤を貯留可能であって、水槽12、22内に液体洗剤を自動的に投入する。給水量設定処理部65は、洗濯物の重量又はユーザの設定に基づいて、水槽12、22に対する給水量である設定水量を設定する給水量設定処理を実行可能である。投入方法設定処理部67は、投入受け部321に対して手動により洗剤の投入する態様である手動投入と、自動投入装置36により自動で洗剤を投入する態様である自動投入と、を設定可能な投入方法設定処理を実行可能である。給水処理部68は、マイクロバブル給水弁313の開閉を制御して、水槽12、22に対するマイクロバブル水の給水を制御する給水処理を実行可能である。そして、給水処理は、投入方法設定処理において、手動投入が設定された場合と自動投入が設定された場合とで設定水量に対するマイクロバブル水の給水量の割合を異ならせる処理を含む。
【0074】
一般に、自動投入装置36からの液体洗剤の投入は、予め設定された所定量によって安定して行われるのに対し、投入受け部321からの粉末洗剤の投入は、ユーザが手動で行うため、自動投入装置36からの液体洗剤の投入に比べて投入量が安定しない。そこで、投入受け部321からの粉末洗剤の手動投入と自動投入装置36からの液体洗剤の自動投入とのいずれが選択されるかによって、設定水量に対するマイクロバブル給水経路R4からの給水量の割合を異なる設定にすることで、例えば粉末洗剤の手動投入時のマイクロバブル水の供給量を変更することができる。これにより、例えばユーザによる粉末洗剤の手動投入時の洗剤投入量の増減傾向等に応じてマイクロバブル水の供給量を適切に変更することができるため、効率的に洗浄効果を高めることができる。
【0075】
また、給水処理は、投入方法設定処理において、手動投入が設定された場合には自動投入が設定された場合に対して、設定水量に対するマイクロバブル水の給水量の割合を増大させる処理を含む。ここで、手動投入時の場合、ユーザは使用する洗剤に定められた所定量よりも多くの洗剤を投入する傾向が見受けられる。そのため、手動投入が選択された場合には、設定水量に対するマイクロバブル水の給水量の割合を多くすることによって、洗濯水に対する洗剤の溶解具合を高めることができる。これにより、洗浄効率の向上を図ることができる。
【0076】
また、液体洗剤は、既に水に洗剤が溶解された状態となっている。そのため、液体洗剤を使用する場合は、粉末洗剤を使用する場合に比べて、洗濯水に対する洗剤の溶解を促進させるためにマイクロバブルを供給する効果は薄くなる。よって、液体洗剤の自動投入が選択された場合であって、洗浄効果よりも洗濯運転の時間短縮を優先するような状況では、手動投入が設定された場合に比べて設定水量に対するマイクロバブル水の給水量の割合を少ない設定にすることで、給水に要する時間の短縮化を図ることができる。
【0077】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図13を参照して説明する。
本実施形態の構成は、図12に示した洗い工程における制御内容以外、第1実施形態と同様とすることができる。すなわち、本実施形態では、洗い工程の制御内容が上記第1実施形態と異なる。図13に示す洗い工程の制御内容は、図12に示すステップS25の処理に換えて、ステップA25の処理を加えたものである。この場合、給水処理は、投入方法設定処理において、手動投入が設定された場合には自動投入が設定された場合に対して、設定水量に対するマイクロバブル水の給水量の割合を低減する処理を含む。
【0078】
具体的には、制御装置60は、ステップS23において、洗剤の投入方法が手動投入であった場合(ステップS23でYES)、ステップA25に処理を移行させて、給水処理を実行し、自動投入が設定された場合に対して設定水量に対するマイクロバブル水の給水量の割合を低減させる。その後、制御装置60は、ステップS26以降の処理を進める。
【0079】
これによれば、例えば起泡性が高い洗剤を使用しているユーザは、粉末洗剤を手動投入する際に、使用する洗剤に定められた所定量よりも洗剤を少なく投入することが考えられる。一方、マイクロバブル給水経路R4は、加圧溶解装置40が経路の途中に設けられているため、加圧溶解装置40を設けていない給水経路に比べて単位時間当たりの流量は構造上少なくなる。そのため、粉末洗剤の投入量が少ない場合には、それに応じて設定水量に対するマイクロバブル給水経路R4からの給水量の割合を少なくすることで、マイクロバブル水による洗濯水への粉末洗剤の溶解具合を高める効果は得つつ、給水に要する時間の長期化を抑制することができる。結果として、洗浄効果の向上を図りながらも、洗濯運転全体に要する時間の長期化を防ぐことができる。
【0080】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について図14及び図15を参照して説明する。上記各実施形態では、洗剤の投入方法の違いつまり手動投入か自動投入かによって、設定水量に対するマイクロバブルの給水量を異なる設定とする態様について説明したが、本実施形態では、洗剤の投入量に応じて設定水量に対するマイクロバブルの給水量の割合を異なる設定とする点において、上記各実施形態と異なる。
【0081】
洗濯機10、20は、洗濯運転において、複数の運転コースを実行可能に構成されている。複数の運転コースでは、例えば運転時間や洗剤の投入量等が異なっている。スピードコース、標準コース、及びつけおきコースは運転コースの一例である。ユーザは、いずれの運転コースを実行するかを、洗濯運転開始前に、操作パネル15、25に対する入力操作によって選択することが可能である。つまり、ユーザが運転コースを選択することにより、間接的に洗剤の投入量が設定される。
【0082】
図14において、標準コースにおける洗剤量を「標準」、設定水量に対するマイクロバブル水の給水量の割合を「標準」として、スピードコース及びつけおきコースにおける洗剤量と設定水量に対するマイクロバブル水の給水量の割合との関係を示している。この場合、各運転コースによって定められた洗剤量の多寡に応じて、設定水量に対するマイクロバブル水の給水量の割合を異なる設定に構成することができる。そして、洗剤の投入量が多いほど設定水量に対するマイクロバブル水の給水量の割合を多い設定に構成することができる。一方、洗剤の投入量が少ないほど設定水量に対するマイクロバブル水の給水量の割合を少ない設定に構成することができる。
【0083】
この場合、給水処理部68が実行する給水処理は、投入量設定処理において設定された洗剤の投入量が多い場合に、設定水量に対するマイクロバブル水の給水量の割合を多くする処理を含む。すなわち、給水処理は、投入量設定処理において設定された粉末洗剤の投入量が多い場合に、設定水量に対するマイクロバブル水の給水量の割合を多くする処理を含む。一方、給水処理部68が実行する給水処理は、投入量設定処理において設定された洗剤の投入量が少ない場合に、設定水量に対するマイクロバブル水の給水量の割合を少なくする処理を含む。すなわち、給水処理は、投入量設定処理において設定された粉末洗剤の投入量が少ない場合に、設定水量に対するマイクロバブル水の給水量の割合を少なくする処理を含む。
【0084】
また、運転コースの選択により間接的に洗剤の投入量が設定される構成に限らず、図15に示すように、設定水量に対する洗剤の投入量を操作パネル15、25に対する入力操作によって直接設定する構成とすることができる。少なめ設定、標準設定、及び多め設定は、ユーザによる洗剤投入量を設定する場合の一例である。この場合、図15の例において、ユーザ設定が標準設定における洗剤量を「標準」、設定水量に対するマイクロバブル水の給水量の割合を「標準」として、少なめ設定及び多め設定における洗剤量と設定水量に対するマイクロバブル水の給水量の割合との関係を示している。これによっても、ユーザの設定によって定められた洗剤量の多寡に応じて、設定水量に対するマイクロバブル水の給水量の割合を異なる設定に構成することができる。つまり、洗剤の投入量が多いほど設定水量に対するマイクロバブル水の給水量の割合を多い設定に構成することができる。一方、洗剤の投入量が少ないほど設定水量に対するマイクロバブル水の給水量の割合を少ない設定に構成することができる。
【0085】
このような第3実施形態によれば、粉末洗剤の投入量に応じて設定水量に対するマイクロバブル水の給水量の割合を変更することができる。これにより、粉末洗剤の投入量に対して適切な量のマイクロバブルを供給することができるため、洗濯水に対する粉末洗剤の溶解具合を適切に向上させることができる。
【0086】
なお、上記各実施形態は、相互に組み合わせることができる。また、2以上の実施形態の特徴部分のみを抽出して組み合わせることもできる。
上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0087】
10、20…洗濯機、313…マイクロバブル給水弁、321、34…投入受け部、36…自動投入装置、65…給水量設定処理部、66…投入量設定処理部、67…投入方法設定処理部、68…給水処理部、R1…ナノバブル給水経路、R4…マイクロバブル給水経路
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