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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20241203BHJP
   H01L 29/788 20060101ALI20241203BHJP
   H01L 29/792 20060101ALI20241203BHJP
   H10B 43/30 20230101ALI20241203BHJP
   H10B 99/00 20230101ALN20241203BHJP
【FI】
H01L29/78 371
H10B43/30
H10B99/00 461
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021143096
(22)【出願日】2021-09-02
(65)【公開番号】P2023036197
(43)【公開日】2023-03-14
【審査請求日】2024-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 慎治
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-009181(JP,A)
【文献】特開昭61-097867(JP,A)
【文献】特開2009-289823(JP,A)
【文献】特開2008-010480(JP,A)
【文献】特開平09-064205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/788
H01L 29/792
H10B 43/30
H10B 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有する半導体基板と、
前記主面上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを備え、
前記ゲート絶縁膜は、第1窒化ケイ素膜と、前記主面と前記第1窒化ケイ素膜との間に配置されており前記第1窒化ケイ素膜と接している酸化ケイ素膜とを含み、
前記酸化ケイ素膜と前記第1窒化ケイ素膜との境界部にSi-Si結合が形成されており
前記境界部において、前記Si-Si結合の密度は、O-Si結合の密度よりも低い、半導体装置。
【請求項2】
前記境界部において、前記Si-Si結合の前記密度は、7×1012個/cm2以下である、請求項に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ゲート絶縁膜は、前記酸化ケイ素膜からなるボトム酸化膜と、前記第1窒化ケイ素膜と、前記第1窒化ケイ素膜上に形成された絶縁膜と、前記絶縁膜上に形成された第2窒化ケイ素膜と、トップ酸化膜とが順に積層した膜である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
半導体基板の主面上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程とを備え、
前記ゲート絶縁膜を形成する工程は、
前記主面上に酸化ケイ素膜を形成する工程と、
前記酸化ケイ素膜の表面にSi終端を形成する工程と、
前記Si終端にSiが結合するように、前記表面上に窒化ケイ素膜を形成する工程とを含む、半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記Si終端を形成する工程は、前記表面にOH終端を形成する工程と、前記OH終端を形成する工程後に前記表面を加熱して前記表面からHOを脱離する工程とを含む、請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記HOを脱離する工程では、前記表面を430℃以上520℃以下に加熱する、請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記Si終端を形成する工程後、前記表面を酸素を含む雰囲気に曝すことなく、前記窒化ケイ素膜を形成する工程が行われる、請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記Si終端を形成する工程では、塩酸過水(HPM)、アンモニア過水(APM)、フッ化水素酸(HF)、水を含む処理液、水素プラズマ、過酸化水素ガス、および水蒸気からなる群から選択される少なくとも1つに、前記表面が曝される、請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記酸化ケイ素膜を形成する工程では、酸素を含む雰囲気下で前記主面を加温されることにより前記酸化ケイ素膜を形成する、請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゲート絶縁膜がボトム酸化膜、窒化膜、およびトップ酸化膜の積層膜(ONO膜)で構成された不揮発性半導体メモリを備える半導体装置がある(例えば、特開2009-289823号公報参照)。
【0003】
不揮発性半導体メモリでは、書き込み時には電子が半導体基板からボトム酸化膜を介して窒化膜に注入し、消去時にはホールが半導体基板からボトム酸化膜を介して窒化膜に注入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-289823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、不揮発性半導体メモリには、書き込み・消去電圧の低減、およびメモリ消去時間の短縮が求められている。これらを同時に実現する方法として、ボトム酸化膜の厚みを薄くする方法がある。これにより、半導体基板から窒化膜への電子の注入効率およびホールの注入効率が向上する。
【0006】
しかしながら、ボトム酸化膜の厚みを薄くすると、窒化膜に注入された電子がボトム酸化膜を介して半導体基板にトンネルしやすく、データの保持特性(リテンション特性)が低下する。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施の形態に係る半導体装置は、主面を有する半導体基板と、主面上に形成されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを備える。ゲート絶縁膜は、第1窒化ケイ素膜と、主面と第1窒化ケイ素膜との間に配置されており第1窒化ケイ素膜と接している酸化ケイ素膜とを含む。酸化ケイ素膜と第1窒化ケイ素膜との境界部にSi-Si結合が形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本実施の形態に係る半導体装置によれば、消去時間を短縮でき、かつリテンション特性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係る半導体装置の平面図である。
図2】本実施の形態に係る半導体装置の不揮発性メモリの構成を示す断面図である。
図3図2に示されるゲート絶縁膜の部分拡大図である。
図4図3に示されるゲート絶縁膜において、ボトム酸化膜と第1窒化ケイ素膜との境界部に形成されているSi-Si結合を説明するための模式図である。
図5図3に示されるゲート絶縁膜において、ボトム酸化膜と第1窒化ケイ素膜との境界部に形成されているSi-Si結合を説明するための模式図である。
図6】本実施の形態に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
図7】本実施の形態に係る半導体装置の製造方法において、ゲート絶縁膜となるべき絶縁膜部を形成する工程を示すフローチャートである。
図8】本実施の形態に係る半導体装置の製造方法の工程(S41)での第1酸化ケイ素膜の終端を説明するための模式図である。
図9】本実施の形態に係る半導体装置の製造方法の工程(S42)内の工程(S47)での第1酸化ケイ素膜の終端を説明するための模式図である。
図10】本実施の形態に係る半導体装置の製造方法の工程(S42)内の工程(S48)での第1酸化ケイ素膜の終端を説明するための模式図である。
図11】本実施の形態に係る半導体装置の製造方法の工程(S42)内の工程(S48)後の第1酸化ケイ素膜の終端を説明するための模式図である。
図12】本実施の形態に係る半導体装置の製造方法の工程(S48)において第1酸化ケイ素膜の表面から脱離するH2Oガスについて、昇温脱離ガス分析の結果を示すグラフである。
図13】本実施の形態に係る半導体装置の製造方法の工程(S43)の第1状態での第1酸化ケイ素膜の終端を説明するための模式図である。
図14】本実施の形態に係る半導体装置の製造方法の工程(S43)の第1状態後に実現される第2状態での第1酸化ケイ素膜の終端を説明するための模式図である。
図15】本実施の形態に係る半導体装置の製造方法の工程(S43)の第2状態後に実現される第3状態での第1酸化ケイ素膜の終端を説明するための模式図である。
図16】本実施の形態に係る半導体装置の消去動作時に半導体基板から第1窒化ケイ素膜に注入されるホールに対して、第1酸化ケイ素膜と第1窒化ケイ素膜との境界部に形成されるポテンシャルバリアを説明するための模式図である。
図17】本実施の形態に係る半導体装置の消去動作時のエネルギーバンド図である。
図18】本実施の形態に係る半導体装置のゲート電極と半導体基板との間に電圧を印加していないときに第1窒化ケイ素膜に蓄積されている電子に対して、第1酸化ケイ素膜と第1窒化ケイ素膜との境界部に形成されるポテンシャルバリアを説明するための模式図である。
図19】本実施の形態に係る半導体装置のゲート電極と半導体基板との間に電圧を印加していないときのエネルギーバンド図である。
図20】本実施の形態に係る半導体装置の書き込み動作時のエネルギーバンド図である。
図21】本実施の形態に係る半導体装置での消去時間と、比較例に係る半導体装置での消去時間とを示すグラフである。
図22】本実施の形態に係る半導体装置のリテンション特性と、比較例に係る半導体装置のリテンション特性とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0012】
<半導体装置の構成>
図1に示されるように、本実施の形態に係る半導体装置MCPは、半導体基板SUB上に形成された、不揮発性メモリ回路NVMと、ロジック回路LOGと、入出力回路IOCとを備えている。
【0013】
不揮発性メモリ回路NVMは、複数のメモリセルを含む。複数のメモリセルの各々は、図2に示されるMONOS型のトランジスタMTを含む。ロジック回路LOGは、例えばCPU(Central Processing Unit)である。入出力回路IOCは、トランジスタMTと半導体装置MCPに接続された外部機器との間で、書込みデータの入力および読出しデータの出力を行うためのインターフェースである。
【0014】
<トランジスタMTの構成>
図2に示されるように、トランジスタMTは、半導体基板SUB、ゲート絶縁膜GIM、ゲート電極CGE、サイドウォールスペーサSW、絶縁膜IF、層間絶縁膜IL1,IL2、コンタクトプラグCPG、および配線MLを備える。
【0015】
半導体基板SUBは、主面MSFを有している。半導体基板SUBは、ソース領域SR、ドレイン領域DR、ウェル領域WR、および素子分離領域ISRを有している。ソース領域SR、ドレイン領域DR、ウェル領域WR、および素子分離領域ISRの各々は、主面MSFに配置されている。半導体基板SUBは、例えば単結晶シリコン(Si)基板である。
【0016】
ソース領域SRは、第1部分SR1と、第2部分SR2とを有している。第1部分SR1は、サイドウォールスペーサSWと重なるように配置されている。主面MSFを平面視したときに、第2部分SR2は、第1部分SR1の外側に配置されている。第1部分SR1の不純物濃度は、第2部分SR2の不純物濃度よりも低い。第1部分SR1は、第2部分SR2に対する低濃度拡散層(Lightly Doped Drain:LLD)である。
【0017】
ドレイン領域DRは、主面MSFに沿った方向において、ソース領域SRと間隔を空けて配置されている。ドレイン領域DRは、第3部分DR1と、第4部分DR2とを有している。第3部分DR1は、サイドウォールスペーサSWと重なるように配置されている。主面MSFを平面視したときに、第4部分DR2は、第3部分DR1の外側に配置されている。第3部分DR1の不純物濃度は、第4部分DR2の不純物濃度よりも低い。第3部分DR1は、第4部分DR2に対する低濃度拡散層(Lightly Doped Drain:LLD)である。
【0018】
主面MSFを平面視したときに、ウェル領域WRは、ソース領域SRおよびドレイン領域DRを取り囲むように配置されている。
【0019】
ソース領域SRおよびドレイン領域DRは、第1導電型を有している。ウェル領域WRは、第1導電型とは反対の第2導電型を有している。例えば、第1導電型はn型であり、第2導電型はp型である。
【0020】
ゲート絶縁膜GIMおよびゲート電極CGEは、図3に示される構造を有している。ゲート絶縁膜GIMおよびゲート電極CGEの構造の詳細は後述する。
【0021】
サイドウォールスペーサSWは、ゲート電極CGEの側壁に配置されている。サイドウォールスペーサSWは、ソース領域SRの第1部分SR1およびドレイン領域DRの第3部分DR1上に配置されている。サイドウォールスペーサSWを構成する材料は、例えば、窒化ケイ素(Si)である。
【0022】
絶縁膜IFは、ゲート電極CGEおよびサイドウォールスペーサSW、ならびにゲート電極CGEおよびサイドウォールスペーサSWが形成されていない主面MSF上を覆うように配置されている。絶縁膜IFを構成する材料は、例えば、窒化ケイ素(Si)である。
【0023】
層間絶縁膜IL1は、絶縁膜IF上に配置されている。層間絶縁膜IL1の上面は平坦化されている。層間絶縁膜IL1を構成する材料は、例えば、酸化ケイ素(SiO2)である。
【0024】
コンタクトプラグCPGは、層間絶縁膜IL1および絶縁膜IFを貫通するスルーホール内に埋め込まれている。コンタクトプラグCPGは、ソース領域SRの第2部分SR2と電気的に接続されている。コンタクトプラグCPGは、例えば、第2部分SR2上に配置されたシリサイドCNT1を介して、第2部分SR2と電気的に接続されている。
【0025】
配線MLおよび層間絶縁膜IL2は、層間絶縁膜IL1上に配置されている。配線MLは、コンタクトプラグCPGと電気的に接続さている。層間絶縁膜IL2は配線MLの周囲に配置されている。
【0026】
次に、図3を参照して、ゲート絶縁膜GIMおよびゲート電極CGEの構造の詳細を説明する。なお、図3では、半導体基板SUB、ゲート絶縁膜GIMおよびゲート電極CGE以外の構造の図示が省略されている。
【0027】
ゲート絶縁膜GIMは、第1酸化ケイ素膜OM1、第1窒化ケイ素膜NM1、第3酸化ケイ素膜OM3、第2窒化ケイ素膜NM2、および第2酸化ケイ素膜OM2を含む。第1酸化ケイ素膜OM1、第1窒化ケイ素膜NM1、第3酸化ケイ素膜OM3、第2窒化ケイ素膜NM2、および第2酸化ケイ素膜OM2は、主面MSF側から順に積層されている。
【0028】
第1酸化ケイ素膜OM1は、ボトム酸化膜である。第2酸化ケイ素膜OM2は、トップ酸化膜である。第1窒化ケイ素膜NM1は、第1酸化ケイ素膜OM1と第3酸化ケイ素膜OM3との間に挟まれている。第2窒化ケイ素膜NM2は、第3酸化ケイ素膜OM3と第2酸化ケイ素膜OM2との間に挟まれている。
【0029】
第1酸化ケイ素膜OM1の厚みは、例えば第2酸化ケイ素膜OM2の厚みよりも薄い。上述のように、第1酸化ケイ素膜OM1の厚みが薄くなるほど、リテンション特性は低下する。そのため、第1酸化ケイ素膜OM1の厚みは、要求されるリテンション特性を実現し得るように設定されていればよい。例えば、第1酸化ケイ素膜OM1の厚みは、1nm以上3nm以下である。第1窒化ケイ素膜NM1の厚みは、例えば第1酸化ケイ素膜OM1の厚みよりも厚い。第3酸化ケイ素膜OM3の厚みは、例えば第1酸化ケイ素膜OM1の厚みよりも薄い。第2窒化ケイ素膜NM2の厚みは、例えば第1窒化ケイ素膜NM1の厚みよりも厚い。第2酸化ケイ素膜OM2の厚みは、例えば第1窒化ケイ素膜NM1の厚みよりも厚く、第2窒化ケイ素膜NM2の厚みよりも薄い。
【0030】
第1酸化ケイ素膜OM1、第3酸化ケイ素膜OM3、および第2酸化ケイ素膜OM2の各々のバンドギャップは、第1窒化ケイ素膜NM1および第2窒化ケイ素膜NM2の各々のバンドギャップよりも大きい。これにより、第1窒化ケイ素膜NM1および第2窒化ケイ素膜NM2の各々は、電子が蓄積される蓄積膜として作用する。なお、第1窒化ケイ素膜NM1上に積層配置されている、第3酸化ケイ素膜OM3、第2窒化ケイ素膜NM2、および第2酸化ケイ素膜OM2の各々は、各バンドギャップの上記大小関係を満足する限りにおいて、他の材料により構成されていてもよい。
【0031】
ゲート電極CGEは、第2窒化ケイ素膜OM2上に配置されている。ゲート電極CGEは、例えば不純物がドープされた多結晶のシリコンにより形成されている。ゲート電極CGEは、図示しないコンタクトプラグと電気的に接続されている。ゲート電極CGEは、例えばシリサイドCNT2を介してコンタクトプラグと電気的に接続されている。トランジスタMTのゲート電極CGEと半導体基板SUBとの間に印加される電圧に応じて、メモリセルは書き込みまたは消去動作を行う。ゲート電極CGEの電位が半導体基板SUBの電位に対して十分に大きい正の電位とされると、メモリセルは書き込み動作を行う。ゲート電極CGEの電位が半導体基板SUBの電位に対して十分に大きい負の電位とされると、メモリセルは消去動作を行う。
【0032】
図4および図5に示されるように、第1酸化ケイ素膜OM1と第1窒化ケイ素膜NM1との境界部には、Si-Si結合と、O-Si結合とが形成されている。第1酸化ケイ素膜OM1と第1窒化ケイ素膜NM1との境界部は、第1酸化ケイ素膜OM1と第1窒化ケイ素膜NM1との界面を含む領域である。Si-Si結合は、第1酸化ケイ素膜OM1のSi原子と第1窒化ケイ素膜NM1のSi原子とが結合したものである。O-Si結合は、第1酸化ケイ素膜OM1のO原子と第1窒化ケイ素膜NM1のSi原子とが結合したものである。
【0033】
ゲート絶縁膜GIMにおいて、Si-Si結合は、境界部BRにのみ形成されている。Si-Si結合は、ゲート絶縁膜GIMの積層方向において、境界部BRにのみ局所的に形成されている。Si-Si結合は、ゲート絶縁膜GIMの積層方向と直交する方向において、互いに離散的に形成されている。Si-Si結合は、O-Si結合に隣接している。
【0034】
境界部BRにおいて、Si-Si結合が形成されている領域は、O-Si結合が形成されている領域と比べて、消去動作時に半導体基板SUBから第1窒化ケイ素膜NM1へのホールが注入されやすい。つまり、境界部BRにおいて、Si-Si結合が形成されている領域は、上記消去動作時にホールが注入されやすいポイント(以下、ホールスルーポイントHTPとよぶ)として作用する。ホールスルーポイントHTPでのホールに対するポテンシャルバリアは、O-Si結合が形成されている領域でのホールに対するポテンシャルバリアと比べて低い。
【0035】
境界部BRにおいて、Si-Si結合の密度(単位:個/cm2)は、O-Si結合の密度(単位:個/cm2)よりも低い。Si-Si結合の密度は、走査型トンネル顕微鏡(STM)またはアトムプローブ電界イオン顕微鏡を用いて算出される。具体的には、走査型トンネル顕微鏡(STM)またはアトムプローブ電界イオン顕微鏡を用いてゲート絶縁膜GIMの積層方向に沿った境界部BRの断面の原子配列を分析し、Si-Si結合の数(線密度)を測定する。測定された値を計算によって面積に拡張し、面密度を算出する。このようにすれば、第1酸化ケイ素膜OM1の界面近傍のバンドギャップは、第1窒化ケイ素膜NM1のバンドギャップよりも大きくなる(図17および図19参照)。
【0036】
好ましくは、Si-Si結合の密度は、7×1012個/cm2以下である。Si-Si結合の密度が7×1012個/cm2を超えると、Si-Si結合の密度が7×1012個/cm2以下である場合と比べて、トランジスタMT(メモリセル)を放置したときに第1窒化ケイ素膜NM1に注入された電子が抜けやすくなり、リテンション特性が劣化する。Si-Si結合の密度が7×1012個/cm2以下であれば、第1窒化ケイ素膜NM1に注入された電子の抜けやすさが、Si-Si結合が形成されておらずかつボトム酸化膜の厚みが第1酸化ケイ素膜OM1の厚みと同等である従来の半導体装置と同程度に抑えられるため、リテンション特性の劣化を抑制できる。
【0037】
<半導体装置の製造方法>
図6に示されるように、半導体装置MCPの製造方法は、工程(S1)~工程(S11)を備える。
【0038】
まず、主面MSFを有する半導体基板SUBを準備する(工程(S1))。半導体基板SUBは、シリコン単結晶基板である。
【0039】
次に、半導体基板SUBに素子分離領域ISRを形成する(工程(S2))。素子分離領域ISRを形成する方法は、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)法またはLOCOS(Local Oxidation of Si)法である。
【0040】
次に、半導体基板SUBにウェル領域WRを形成する(工程(S3))。ウェル領域WRを形成する方法は、写真製版処理およびイオン注入処理を含む。p型のウェル領域WRを形成する場合には、例えばホウ素(B)などのp型の不純物のイオンが注入される。n型のウェル領域WRを形成する場合には、例えばヒ素(As)などのn型の不純物のイオンが注入される。
【0041】
次に、主面MSF上に、ゲート絶縁膜GIMとなるべき絶縁膜の積層体を形成する(工程(S4))。本工程(S4)は、図7に示される工程(S41)~工程(S46)を含む。
【0042】
まず、主面MSF上に、第1酸化ケイ素膜OM1を形成する(工程(S41))。第1酸化ケイ素膜OM1は、例えば、酸素を含む雰囲気中において主面MSFを加熱することにより形成される。言い換えると、第1酸化ケイ素膜OM1は、例えば熱酸化膜である。本工程(S41)により形成された第1酸化ケイ素膜OM1の表面は、図8に示されるように、O原子により終端される。
【0043】
次に、第1酸化ケイ素膜OM1の表面(主面MSFと接している面とは反対側に位置する上面)にSi終端を形成する(S42)。言い換えると、第1酸化ケイ素膜OM1の表面がSi原子にて終端された状態を実現する。
【0044】
本工程(S42)は、第1酸化ケイ素膜OM1の表面にOH終端を形成する工程(S47)と、工程(S47)後に第1酸化ケイ素膜OM1の表面を加温して該表面からHOを脱離する工程(S48)とを含む。
【0045】
工程(S47)では、塩酸過水(HPM)、アンモニア過水(APM)、フッ化水素酸(HF)、水を含む処理液、水素プラズマ、過酸化水素ガス、および水蒸気からなる群から選択される少なくとも1つに、第1酸化ケイ素膜OM1の表面を曝す。第1酸化ケイ素膜OM1の表面が曝される溶液または雰囲気は、上記群の中から境界部BRにて形成すべきSi-Si結合の密度に応じて選択され得る。言い換えると、Si-Si結合の密度は、本工程(S47)にて第1酸化ケイ素膜OM1の表面が曝される溶液または雰囲気に応じて変化する。例えば、APMを用いた場合に境界部BRに形成されるSi-Si結合の密度は、HPMを用いた場合に境界部BRに形成されるSi-Si結合の密度より高く、HFを用いた場合に境界部BRに形成されるSi-Si結合の密度よりも低くなる。
【0046】
本工程(S47)が施された第1酸化ケイ素膜OM1の表面には、図9に示されるように、OH基により終端されたOH終端が形成される。第1酸化ケイ素膜OM1の表面上でのOH終端の密度は、臭素系カップリング剤修飾法により算出されるシラノール基の面密度として、算出され得る。
【0047】
工程(S48)では、OH終端が形成された第1酸化ケイ素膜OM1の表面を加熱する。これにより、図10に示されるように、隣り合う2つのOH基うちの一方のOH基と他方のOH基中のO原子とが、HOガスとして脱離する。その結果、図11に示されるように、第1酸化ケイ素膜OM1の表面に、Si原子で終端されたSi終端と、O原子で終端されたO終端とが形成される。O終端は、Si終端の隣りに形成される。
【0048】
本工程(S48)での加熱温度は、例えば380℃以上550℃以下である。好ましくは、加熱温度は、430℃以上520以下である。図12は、OH基で終端された第1酸化ケイ素膜OM1の表面から脱離するH2Oガスについて、昇温脱離ガス分析の結果を示すグラフである。図12の横軸は加熱温度(単位:℃)であり、図12の縦軸はHOガスの強度である。図12に示されるように、本工程(S48)での加熱温度が380℃以上550℃以下の範囲内にあるときに、比較的多くのHOガスが第1酸化ケイ素膜OM1の表面から脱離することが確認された。本工程(S48)での加熱は、例えば後工程(S43)において第1窒化ケイ素膜NM1を形成するための加熱に対する予備加熱として行われ得る。
【0049】
次に、Si終端にSiが結合するように、第1酸化ケイ素膜OM1の表面上に第1窒化ケイ素膜NM1を形成する(工程(S43))。第1窒化ケイ素膜NM1を形成する方法は、例えば原子層堆積(Atomic Layer Deposition:ALD)法である。本工程(S43)では、工程(S42)にて第1酸化ケイ素膜OM1の表面に形成されたSi終端およびO終端の各々に、第1窒化ケイ素膜NM1を形成するための原料ガスに含まれるジクロロシラン(SiH2Cl2)が供給される。これにより、図13に示されるように、ジクロロシラン(SiH2Cl2)中のSiがSi終端に結合し、さらに塩化水素(HCl)が脱離することにより、図14に示されるように、上記表面にSi-Si結合が形成される。さらに、ジクロロシラン(SiH2Cl2)中のSiがO終端に結合し、さらに塩化水素(HCl)が脱離することにより、図14に示されるように、上記表面にSi-O結合が形成される。
【0050】
本工程(S43)では、さらに、第1窒化ケイ素膜NM1を形成するための原料ガスに含まれるアンモニア(NH3)が、Si終端に結合したSi、およびO終端に結合したSiに供給されることにより、図15に示されるように、Si-N結合が形成される。このようにして、第1窒化ケイ素膜NM1が形成される。
【0051】
本工程(S43)は、例えば、工程(S42)後に第1酸化ケイ素膜OM1の表面を酸素を含む雰囲気に曝すことなく連続して行われる。本工程(S43)は、例えば、工程(S42)後に第1酸化ケイ素膜OM1の表面の温度を低下させることなく行われる。第1窒化ケイ素膜NM1がALD法により形成される場合には、本工程(S43)での加熱温度は先の工程(S48)と同様に380℃以上550℃以下に設定され得る。
【0052】
次に、第1窒化ケイ素膜NM1上に、第3酸化ケイ素膜OM3を形成する(工程(S44))。第3酸化ケイ素膜OM3は、例えば水を含む処理液に第1窒化ケイ素膜NM1の上面を曝すことにより、形成され得る。
【0053】
次に、第3酸化ケイ素膜OM3上に、第2窒化ケイ素膜NM2を形成する(工程(S45))。第2窒化ケイ素膜NM2を形成する方法は、例えばLPCVD法である。
【0054】
次に、第2窒化ケイ素膜NM2上に、第2酸化ケイ素膜OM2を形成する(工程(S46))。第2酸化ケイ素膜OM2を形成する方法は、例えばLPCVD-HTO(High Temperature Oxidation)法である。
【0055】
このようにして、工程(S4)では、後工程(S6)にてゲート絶縁膜GIMに加工される絶縁膜の積層体が形成される。
【0056】
図6に示されるように、次に、工程(S4)にて形成された絶縁膜の積層体上に、後工程(S6)にてゲート電極CGEに加工される導電膜を形成する(工程(S5))。導電膜を形成する方法は、例えばCVD法である。
【0057】
次に、工程(S5)にて形成された絶縁膜の積層体および導電膜を加工して、ゲート絶縁膜GIMおよびゲート電極CGEを形成する(工程(S6))。ゲート絶縁膜GIMおよびゲート電極CGEを形成する方法は、例えば写真製版処理およびエッチング処理を含む。
【0058】
次に、半導体基板SUBの主面MSFに、ソース領域SRの第1部分SR1およびドレイン領域DRの第3部分DR1を形成する(工程(S7))。第1部分SR1および第3部分DR1を形成する方法は、例えばゲート電極CGEをマスクとするイオン注入法である。これにより、主面MSFを平面視したときに、第1部分SR1および第3部分DR1は、ゲート電極CGEを挟むように、ウェル領域WR上に形成される。
【0059】
次に、半導体基板SUBの主面MSF上に、サイドウォールスペーサSWを形成する(工程(S8))。サイドウォールスペーサSWを形成する方法は、例えば成膜処理、写真製版処理、およびエッチバック処理を含む。これにより、サイドウォールスペーサSWは、第1部分SR1および第3部分DR1の各々の一部上に形成される。
【0060】
次に、半導体基板SUBの主面MSFに、ソース領域SRの第2部分SR2およびドレイン領域DRの第4部分DR2を形成する(工程(S9))。第2部分SR2および第4部分DR2を形成する方法は、例えばゲート電極CGEおよびサイドウォールスペーサSWをマスクとするイオン注入法である。これにより、主面MSFを平面視したときに、第1部分SR1および第3部分DR1は、ゲート電極CGEおよびサイドウォールスペーサSWを挟むように、ウェル領域WR上に形成される。
【0061】
次に、シリサイドCNT1,CNT2、絶縁膜IF、層間絶縁膜IL1およびコンタクトプラグCPGを順に形成する(工程(S10))。本工程(S10)では、第1に、ソース領域SRの第2部分SR2およびドレイン領域DRの第4部分DR2上にシリサイドCNT1を形成し、かつゲート電極CGE上にCNT2を形成する。シリサイドCNT1,CNT2を形成する方法は、例えば金属膜の成膜処理、アニーリング処理、およびエッチング処理を含む。第2に、主面MSF上に、絶縁膜IFおよび層間絶縁膜IL1を形成する。絶縁膜IFおよび層間絶縁膜IL1を形成する方法は、例えば成膜処理と、成膜された積層体にコンタクトホールを形成するための写真製版処理およびエッチング処理とを含む。第3に、コンタクトホールの内部にコンタクトプラグCPGを形成する。コンタクトプラグCPGを形成する方法は、例えば成膜処理と、エッチバック処理または化学機械研磨(chemical mechanical polishing:CMP)処理とを含む。
【0062】
次に、層間絶縁膜IL2および配線MLを形成する(工程(S11))。本工程(S11)では、第1に、層間絶縁膜IL1上に、層間絶縁膜IL2を形成する。層間絶縁膜IL2を形成する方法は、例えば成膜処理と、成膜された絶縁膜に配線溝を形成するための写真製版処理およびエッチング処理とを含む。第2に、層間絶縁膜IL2の配線溝内に、配線MLを形成する。配線MLを形成する方法は、例えば成膜処理と、エッチバック処理またはCMP処理とを含む。
【0063】
このようにして、図2に示される半導体装置MCPのトランジスタMTが形成される。
<効果>
次に、図16図22を参照して、本実施の形態の効果を、比較例との対比に基づいて説明する。
【0064】
図16は、消去動作時に半導体基板SUBから第1窒化ケイ素膜NM1に注入されるホールに対して、第1酸化ケイ素膜OM1と第1窒化ケイ素膜NM1との間に形成されるポテンシャルバリアを説明するための模式図である。図18は、データ保持時に第1窒化ケイ素膜NM1に蓄積されている電子に対して、第1酸化ケイ素膜OM1と第1窒化ケイ素膜NM1との間に形成されるポテンシャルバリアを説明するための模式図である。
【0065】
図17図19、および図20は、本実施の形態の半導体基板SUB、第1酸化ケイ素膜OM1、第1窒化ケイ素膜NM1、第3酸化ケイ素膜OM3、第2窒化ケイ素膜NM2、および第2酸化ケイ素膜OM2の各々を、Si単結晶基板、SiO2、ALD法によるSi34、SiO2、LPCVD法によるSi34、およびSiO2としたときの、エネルギーバンド図である。図17は、ゲート電極と半導体基板と間に消去電圧が印加された時(以下、消去動作時とよぶ)のエネルギーバンド図である。図19は、第1酸化ケイ素膜の厚みを薄くすると、ゲート電極CGEと半導体基板SUBと間に電圧が印加されていない時(以下、データ保持時とよぶ)でのエネルギーバンド図である。図20は、トランジスタMTのゲート電極CGEと半導体基板SUBと間に書き込み電圧が印加された時(以下、書き込み動作時とよぶ)のエネルギーバンド図である。
【0066】
比較例は、ゲート絶縁膜の第1酸化ケイ素膜と第1窒化ケイ素膜との間の境界部にSi-Si結合、すなわちホールスルーポイントHTP、が形成されていない点でのみ、本実施の形態と異なるものとする。本実施の形態と比較例との間で、第1酸化ケイ素膜の厚み、および消去電圧・書き込み電圧などの動作条件は同じとする。比較例では、消去動作時のホール注入効率を高めるためには、第1酸化ケイ素膜の厚みを薄くする必要がある。他方、第1酸化ケイ素膜の厚みを薄くすると、データ保持時に第1窒化ケイ素膜に蓄積されている電子が第1酸化ケイ素膜を介して半導体基板にトンネルしやすく、リテンション特性が低下する。
【0067】
これに対し、本実施の形態では、第1酸化ケイ素膜OM1と第1窒化ケイ素膜NM1との境界部BRにはSi-Si結合が形成されており、これらがホールスルーポイントHTPとして作用する。具体的には、図16に示されるように、境界部BRにおいてSi-Si結合からなるホールスルーポイントHTPが形成されている領域では、他の領域と比べて、消去動作時に半導体基板SUBから第1窒化ケイ素膜NM1に注入されるホールに対するポテンシャルバリアが局所的に低くなる。これは、図17に示されるように、ホールスルーポイントHTPが形成されていることにより、第1酸化ケイ素膜OM1の界面近傍のバンドギャップが、第1酸化ケイ素膜OM1の内部のバンドギャップよりも小さくなるためである。その結果、本実施の形態では、消去動作時のホール注入効率は、比較例と比べて高くなる。つまり、本実施の形態では、第1酸化ケイ素膜OM1の厚みを薄くすることなく、消去動作時のホール注入効率が高められている。
【0068】
他方、図18に示されるように、データ保持時に第1窒化ケイ素膜NM1に蓄積されている電子に対するポテンシャルバリアは、ホールスルーポイントHTPが形成されている領域と他の領域との間で同等の高さとなる。これは、図19に示されるように、第1酸化ケイ素膜OM1の界面近傍のバンドギャップが、第1窒化ケイ素膜NM1のバンドギャップよりも大きいためである。
【0069】
以上のように、本実施の形態に係る半導体装置MCPによれば、消去時間を短縮でき、かつリテンション特性の低下を抑制できる。
【0070】
<変形例>
本実施の形態に係る半導体装置MCPのゲート絶縁膜GIMは、第1酸化ケイ素膜OM1、第1窒化ケイ素膜NM1、および第2酸化ケイ素膜OM2に加えて、第3酸化ケイ素膜OM3および第2窒化ケイ素膜NM2を含んでいるが、これに限られない。ゲート絶縁膜GIMは、第1酸化ケイ素膜OM1、第1窒化ケイ素膜NM1、および第2酸化ケイ素膜OM2のみが順に積層した積層体として構成されていてもよい。この場合にも、第1酸化ケイ素膜OM1と第1窒化ケイ素膜NM1との境界部に、Si-Si結合が形成されていればよい。
【0071】
<消去時間の評価結果>
図21は、本実施の形態に係る半導体装置であって境界部BRにおけるSi-Si結合の密度のみが互いに異なる2つの実施例の消去時間の評価結果を示すグラフである。図21の横軸はSi-Si結合の密度(単位:個/cm2)であり、図21の縦軸は消去時間(単位:ミリ秒)である。第1実施例のSi-Si結合の密度は6.30×1012個/cm2であり、第2実施例のSi-Si結合の密度は5.45×1012個/cm2であった。閾値電圧は-1.25Vとした。図21に示されるように、第1実施例の消去時間は、第2実施例の消去時間の半分以下に短縮されていた。つまり、境界部BRに形成されたSi-Si結合がホールスルーポイントHTPとして作用することが確認された。
【0072】
<リテンション特性の評価結果>
第1窒化ケイ素膜および第2窒化ケイ素膜に蓄積されている電子の量が変動すると、メモリセルの閾値電圧Vthが変動する。本実験では、半導体装置を90℃の環境下に放置したときの閾値電圧の変動量に基づいて、リテンション特性を評価した。図22は、本実施の形態に係る半導体装置と、第1酸化ケイ素膜と第1窒化ケイ素膜との境界部にSi-Si結合が形成されていない点でのみ本実施の形態と異なる上記比較例との各々のリテンション特性の評価結果を示すグラフである。図22の横軸は上記放置時間(単位:秒)であり、図22の縦軸は閾値電圧(単位:V)である。図22において、白色のプロットが本実施形態の評価結果を示し、黒色のプロットは比較例の評価結果を示す。図22に示されるように、白色のプロットは黒色のプロットと重なっており、本実施の形態に係る半導体装置のリテンション特性は比較例のリテンション特性と同等であった。つまり、境界部BRに形成されたSi-Si結合がリテンション特性を劣化させないことが確認された。
【0073】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0074】
BR 境界部、CGE ゲート電極、CNT1,CNT2 シリサイド、CPG コンタクトプラグ、DR ドレイン領域、DR1 第3部分、DR2 第4部分、GIM ゲート絶縁膜、HTP ホールスルーポイント、IF 絶縁膜、IL1,IL2 層間絶縁膜、IOC 入出力回路、ISR 素子分離領域、LOG ロジック回路、MCP 半導体装置、ML 配線、MSF 主面、MT トランジスタ、NM1 第1窒化ケイ素膜、NVM 不揮発性メモリ回路、OM1 第1酸化ケイ素膜、OM3 第3酸化ケイ素膜、SR ソース領域、SR1 第1部分、SR2 第2部分、SUB 半導体基板、SW サイドウォールスペーサ、WR ウェル領域。
図1
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図5
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図10
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