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特許7597684車両用ドライブシステムの試験装置および試験方法
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  • 特許-車両用ドライブシステムの試験装置および試験方法 図1
  • 特許-車両用ドライブシステムの試験装置および試験方法 図2
  • 特許-車両用ドライブシステムの試験装置および試験方法 図3
  • 特許-車両用ドライブシステムの試験装置および試験方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】車両用ドライブシステムの試験装置および試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/08 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
G01M17/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021145127
(22)【出願日】2021-09-07
(65)【公開番号】P2023038427
(43)【公開日】2023-03-17
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 峻
(72)【発明者】
【氏名】伊君 高志
(72)【発明者】
【氏名】篠宮 健志
(72)【発明者】
【氏名】隅田 悟士
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智晃
【審査官】川野 汐音
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-257205(JP,A)
【文献】特開2017-134009(JP,A)
【文献】特開2011-038929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00-17/10
G01M 15/00-15/14
B60L 15/00-15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機である供試機とシャフトを介して接続された負荷機と、前記負荷機を駆動する電力変換器との組み合わせを複数備え、
前記複数の負荷機それぞれに設け当該負荷機それぞれの速度を検出する速度検出器と、
前記複数の電力変換器それぞれに設け当該電力変換器それぞれを制御する制御器と、
検出または推定した前記複数の供試機それぞれのトルクを入力として、試験対象とする車両に関するデータに基づいて前記複数の負荷機それぞれの速度指令値を出力する車両モデル演算器と
を備え、
前記制御器それぞれは、前記供試機のトルクを検出する供試トルク検出部または前記速度検出器が検出した前記負荷機の速度から前記供試機のトルクを推定する供試トルク推定部を有し、前記供試トルク検出部が検出しまたは前記供試トルク推定部が推定した前記供試機のトルクを前記車両モデル演算器に出力し、前記車両モデル演算器が出力する前記負荷機の速度指令値と前記負荷機の速度との差分に基づいて負荷機トルク指令値を演算し、前記負荷機トルク指令値を用いて前記電力変換器を制御し、
前記車両モデル演算器は、
前記制御器それぞれから入力した前記複数の供試機それぞれのトルクから前記車両の動軸それぞれの動軸トルクを演算する動軸トルク演算部と、
前記動軸トルクそれぞれを加算平均した平均動軸トルクと前記車両の車両抵抗分との差分に基づいて前記車両の車両速度を演算する車両速度演算部と、
前記演算した車両速度から前記動軸それぞれの車輪径に応じた補正を行い前記動軸それぞれの速度指令値を演算し前記負荷機それぞれの速度指令値として出力する速度指令値演算部とを備える
ことを特徴とする車両用ドライブシステム試験装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ドライブシステム試験装置であって、
前記動軸トルク演算部は、前記複数の供試機それぞれのトルクから前記車両の動軸それぞれの動軸トルクを演算する際に、前記車両の接線力係数に基づく演算を含む
ことを特徴とする車両用ドライブシステム試験装置。
【請求項3】
電動機である供試機とシャフトを介して接続された負荷機と、前記負荷機を駆動する電力変換器との組み合わせを複数備え、
前記複数の負荷機それぞれに設け当該負荷機それぞれの速度を検出する速度検出器と、
前記複数の電力変換器それぞれに設け当該電力変換器それぞれを制御する制御器と、
検出または推定した前記複数の供試機それぞれのトルクを入力として、試験対象とする車両に関するデータに基づいて前記複数の負荷機それぞれの速度指令値を出力する車両モデル演算器と
を備え、
前記制御器それぞれは、前記供試機のトルクを検出する供試トルク検出部または前記速度検出器が検出した前記負荷機の速度から前記供試機のトルクを推定する供試トルク推定部を有し、前記供試トルク検出部が検出しまたは前記供試トルク推定部が推定した前記供試機のトルクを前記車両モデル演算器に出力し、前記車両モデル演算器が出力する前記負荷機の速度指令値と前記負荷機の速度との差分に基づいて負荷機トルク指令値を演算し、前記負荷機トルク指令値を用いて前記電力変換器を制御し、
前記車両モデル演算器は、
前記制御器それぞれから入力した前記複数の供試機それぞれのトルクを、前記複数の供試機それぞれに対応する前記車両の車軸の車輪径に応じた第1の補正を行い、当該第1の補正後の前記複数の供試機それぞれのトルクを加算平均した平均トルクから前記車両に関するイナーシャに基づく演算を行って前記複数の負荷機の平均速度指令値を算出し、前記平均速度指令値から前記車両の車軸の車輪径に応じた第2の補正を行い前記負荷機それぞれの速度指令値を出力する
ことを特徴とする車両用ドライブシステム試験装置。
【請求項4】
請求項に記載の車両用ドライブシステム試験装置であって、
前記車両モデル演算器は、
前記複数の負荷機の平均速度指令値を、前記第1の補正後の前記複数の供試機それぞれのトルクを加算平均した平均トルクと前記車両の車両抵抗分との差分から前記車両に関するイナーシャに基づく演算を行って算出する
ことを特徴とする車両用ドライブシステム試験装置。
【請求項5】
電動機である供試機とシャフトを介して接続される負荷機と、前記負荷機を駆動する電力変換器との組み合わせを複数備えた車両用ドライブシステムの試験方法であって、
前記複数の供試機それぞれのトルクから、試験対象とする車両に関するデータに基づいて前記複数の負荷機それぞれの速度指令値を出力する車両モデルを備え、
前記車両モデルは、前記複数の供試機それぞれのトルクから前記車両の動軸それぞれの動軸トルクを演算し、前記動軸トルクそれぞれを加算平均した平均動軸トルクと前記車両の車両抵抗分との差分に基づいて前記車両の車両速度を演算し、前記演算した車両速度から前記動軸それぞれの車輪径に応じた補正を行い前記動軸それぞれの速度指令値を演算し前記負荷機それぞれの速度指令値として出力し、
前記供試機のトルクを検出または推定し、当該供試機のトルクから前記車両モデルが出力する前記負荷機の速度指令値と前記負荷機の速度との差分に基づいて負荷機トルク指令値を演算し、前記負荷機トルク指令値を用いて前記電力変換器を制御する
ことを特徴とする車両用ドライブシステムの試験方法。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用ドライブシステムの試験方法であって、
前記車両モデルは、
前記複数の供試機それぞれのトルクから前記車両の接線力係数に基づく演算を行い、該演算の結果から前記車両の動軸それぞれの動軸トルクを演算する、
ことを特徴とする車両用ドライブシステムの試験方法。
【請求項7】
電動機である供試機とシャフトを介して接続される負荷機と、前記負荷機を駆動する電力変換器との組み合わせを複数備えた車両用ドライブシステムの試験方法であって、
前記複数の供試機それぞれのトルクから、試験対象とする車両に関するデータに基づいて前記複数の負荷機それぞれの速度指令値を出力する車両モデルを備え、
前記車両モデルは、
前記複数の供試機それぞれのトルクを、前記複数の供試機それぞれに対応する前記車両の車軸の車輪径に応じた第1の補正を行い、当該第1の補正後の前記複数の供試機それぞれのトルクを加算平均した平均トルクから前記車両に関するイナーシャに基づく演算により前記複数の負荷機の平均速度指令値を算出し、前記平均速度指令値から前記車両の車軸の車輪径に応じた第2の補正を行い前記負荷機それぞれの速度指令値を出力し、
前記供試機のトルクを検出または推定し、当該供試機のトルクから前記車両モデルが出力する前記負荷機の速度指令値と前記負荷機の速度との差分に基づいて負荷機トルク指令値を演算し、前記負荷機トルク指令値を用いて前記電力変換器を制御する
ことを特徴とする車両用ドライブシステムの試験方法。
【請求項8】
請求項7に記載の車両用ドライブシステムの試験方法であって、
前記車両モデルは、
前記複数の負荷機の平均速度指令値を、前記第1の補正後の前記複数の供試機それぞれのトルクを加算平均した平均トルクと前記車両の車両抵抗分との差分から前記車両に関するイナーシャに基づく演算により算出する
ことを特徴とする車両用ドライブシステムの試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドライブシステムの試験装置および試験方法に関し、鉄道車両用に好適である。
【背景技術】
【0002】
自動車用モータドライブシステムを試験するために、負荷発電機を制御して電気慣性制御を行う自動車用ダイナモメータシステムや動力計が提案されている。これらは、自動車のドライブトレインやエンジン等を試験するための装置である。
【0003】
例えば、特許文献1では、ダイナモメータシステムで前輪および後輪を同期速度で回転する制御について提案されている。
【0004】
また、特許文献2では、動力計でタイヤ慣性や車体慣性を模擬した負荷制御により、実車の走行状態を模擬する制御が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6525076号公報
【文献】特許第6737363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記背景技術で示した公知技術は、自動車用の試験を行う試験装置のための技術であって、鉄道用で模擬したい車輪径差や走行抵抗といった特性を考慮できないため、鉄道用ドライブシステムを正しく評価することができない。
【0007】
本発明の目的は、車輪径差や走行抵抗を考慮した鉄道用ドライブシステムの試験設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、代表的な本発明の車両用ドライブシステム試験装置の一つは、電動機である供試機とシャフトを介して接続される負荷機と、負荷機を駆動する電力変換器との組み合わせを複数備え、複数の負荷機それぞれに設け当該負荷機それぞれの速度を検出する速度検出器と、複数の電力変換器それぞれに設け当該電力変換器それぞれを制御する制御器と、検出または推定した複数の供試機それぞれのトルクを入力として試験対象とする車両に関するデータに基づいて複数の負荷機それぞれの速度指令値を出力する車両モデル演算器とを備え、制御器それぞれは、供試機のトルクを検出する供試トルク検出部または速度検出器が検出した負荷機の速度から供試機のトルクを推定する供試トルク推定部を有し、供試トルク検出部が検出しまたは供試トルク推定部が推定した供試機のトルクを車両モデル演算器に出力し、車両モデル演算器が出力する負荷機の速度指令値と負荷機の速度との差分に基づいて負荷機トルク指令値を演算し、負荷機トルク指令値を用いて電力変換器を制御し、車両モデル演算器は、制御器それぞれから入力した複数の供試機それぞれのトルクから車両の動軸それぞれの動軸トルクを演算する動軸トルク演算部と、動軸トルクそれぞれを加算平均した平均動軸トルクと車両の車両抵抗分との差分に基づいて車両の車両速度を演算する車両速度演算部と、演算した車両速度から動軸それぞれの車輪径に応じた補正を行い動軸それぞれの速度指令値を演算し負荷機それぞれの速度指令値として出力する速度指令値演算部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車輪径差や走行抵抗を考慮した鉄道用ドライブシステムの試験設備を提供することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施をするための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例1に係るドライブシステム試験設備の全体構成を示すブロック図である。
図2】実施例1の車両モデルの構成を示すブロック図である。
図3】空転試験に用いる接線力係数テーブルの特性を示す図である。
図4】本発明の実施例2の車両モデルの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態として実施例1および2について説明する。なお、実施例1および2により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0012】
以下の実施例1および2では、2軸の場合の試験装置を例にしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、4軸、6軸および8軸でも適用可能である。
【0013】
また、負荷機と負荷機の駆動制御に用いる電力変換器としては、三相交流機とインバータとも組み合わせを用いた例を示しているが、直流機とチョッパとの組み合わせを用いてもよく、負荷機としては、単相交流機等の別の交流機でもよい。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の実施例1に係るモータドライブシステム試験装置の全体構成を示すブロック図である。図1を用いて、実施例1の試験装置について説明する。
【0015】
供試インバータ11は、電圧指令値VT1*に従った出力電圧を、供試機13に供給する。ここで、供試機13としては、供試インバータ11によって駆動される電動機を用いる。
【0016】
供試機13は、シャフト15を介して、負荷機17に接続されている。
負荷機17は、インバータ21から、電圧指令値VG1*に従った出力電圧が供給されて駆動される。ここで、負荷機17としては、インバータ21によって駆動される電動機を用いる。
【0017】
速度検出手段19は、負荷機17の回転速度ωG1を検出して、供試トルク推定手段27および速度制御手段25に回転速度情報ωG1を送る。
【0018】
供試トルク推定手段27は、回転速度ωG1から、例えば外乱オブザーバを用いて供試機13の供試機トルクTMest1を推定する。
【0019】
供試機トルクTMest1は、車両モデル51に送られて、負荷機17の速度指令値ωG1*が計算される。
【0020】
速度制御手段25は、負荷機17の速度指令値ωG1*と回転速度ωG1とを比較して両者の偏差をゼロにする、すなわち、負荷機17の速度指令値ωG1*と回転速度ωG1とが一致するように、例えばPI制御器を用いるなどして、負荷機17のトルク指令値TG1*を演算する。
【0021】
トルク制御手段23は、負荷機17のトルクがトルク指令値TG1*となるように、電圧指令値VG1*を演算する。
【0022】
以上の構成で、車両モデル51を除いたものが第一軸試験装置29となる。
また、2軸の内、残る1軸に対して設けた第二軸試験装置49も、第一軸試験装置29と全く同じ構成を備える(各構成の説明は、第一軸試験装置29と同様であるので省略する)。
【0023】
次に、第一軸試験装置29および第二軸試験装置49で共通して用いる車両モデル51について説明する。
図2は、実施例1の車両モデル51の構成を示すブロック図である。
【0024】
第一軸側の供試機トルクTMest1が入力され、減算器61で車体トルクTbg1との差分を演算して積分器63に入力される。
【0025】
積分器63は、車輪相当のイナーシャJwの逆数をゲインとして乗算し時間積分して負荷速度指令値ωG1*を出力する。
【0026】
ゲイン65で、負荷速度指令値ωG1*に、(第一軸の車輪半径r1÷ギア比Gr)を乗算して車両速度に換算し、減算器67で車両速度vbとの差分を演算して、すべり速度vs1を出力する。
【0027】
接線力係数演算部69は、すべり速度vs1を入力として、例えばテーブル参照などによって接線力係数μ1を出力する。
【0028】
動軸トルク演算部71は、接線力係数μ1に動軸車体質量Wと重力加速度gとを乗算して、動軸トルクFW1を演算する。
【0029】
動軸トルクFW1は、ゲイン73で(第一軸の車輪半径r1÷ギア比Gr)を乗算されて車体トルクTbg1に換算され、減算器61に入力される。
【0030】
第二軸の方も同様に、第二軸側の供試機トルクTMest2が入力され、減算器81で車体トルクTbg2との差分を演算して積分器83に入力される。
【0031】
積分器83は、車輪相当のイナーシャJwの逆数をゲインとして乗算し時間積分して負荷速度指令値ωG2*を出力する。
【0032】
ゲイン85で、負荷速度指令値ωG2*に、(第二軸の車輪半径r2÷ギア比Gr)を乗算して車両速度に換算し、減算器87で車両速度vbとの差分を演算して、すべり速度vs2を出力する。
【0033】
接線力係数演算部89は、すべり速度vs2を入力として、例えばテーブル参照などによって接線力係数μ2を出力する。
【0034】
動軸トルク演算部91は、接線力係数μ2に動軸車体質量Wと重力加速度gとを乗算して動軸トルクFW2を演算する。
【0035】
動軸トルクFW2は、ゲイン93で(第二軸の車輪半径r2÷ギア比Gr)を乗算されて車体トルクTbg2に換算され、減算器81に入力される。
【0036】
また、加算器101は、動軸トルクFW1と動軸トルクFW2とを加算し、ゲイン103で1/2にされて平均動軸トルクFWを演算する。
【0037】
平均動軸トルクFWは、減算器105で車両抵抗Fdとの差分が演算され、積分器107に入力される。
【0038】
積分器107は、一動軸当たりの車体重量Mbで除算し積分をして車両速度vbを出力する。
【0039】
車両抵抗演算器109は、車両速度vbから車両抵抗Fdを演算して、減算器105に入力する。
【0040】
以上で用いる諸量の内、動軸車体質量W、車輪半径r1とr2、ギア比Gr、一動軸当たりの車体重量Mbおよび車両抵抗は、模擬したい車両によって変更してもよい。また、動軸車体質量Wおよび一動軸当たりの車体重量Mbは、乗車率によって変更してもよい。
【0041】
更に、車両抵抗は、例えば、出発抵抗、走行抵抗、勾配抵抗または曲線抵抗等で構成され、車両の走行パターン情報を保持し、時間または走行距離に応じて、勾配抵抗および曲線抵抗の演算に用いる勾配情報および曲線情報を変更してもよい。ここで、走行抵抗は、単に速度に応じて変化させるだけでもよく、走行パターンによりトンネル区間では演算方法を変更してもよい。
【0042】
図2に示す車両モデル51においては、第一軸の車輪半径r1と第二軸の車輪半径r2の設定値を変更することで、車輪径差を考慮することが可能である。
【0043】
また、走行パターンに応じて車両抵抗を演算することで、実際の車両の走行パターンを模擬した試験を実現することができる。
【0044】
更には、接線力係数演算部69と接線力係数演算部89において、レールの状態の変化を模擬して空転現象を試験することができる。
【0045】
図3は、空転試験に用いる接線力係数テーブルの特性を示す図である。例えば、図3に示すように、参照するテーブルを切り替えることで、レールの状態がドライからウェットに変わることを模擬して、空転現象の試験を行う。この際に、単にテーブルに乗算するゲインを時間的に変化させてもよい。
【0046】
以上のように、車両モデルを構成することで、鉄道車両特有の車輪径差の考慮、車両抵抗の考慮、空転現象の再現等が実現できることから、試験装置で実際の鉄道車両と同様の試験を行うことができる。
【0047】
実施例1では、供試トルク推定手段27として外乱オブザーバを用いるが、供試トルクを検出可能なトルクセンサを用いても同様の効果が得られる。この場合には、供試トルク推定手段に替えて、トルクセンサによる供試トルク検出手段を用いる。ただし、外乱オブザーバを用いる方が、トルクセンサを用いない分、システムを簡略化できる。
【実施例2】
【0048】
図4は、本発明の実施例2の車両モデル51の構成を示すブロック図である。なお、実施例2における第一軸試験装置および第二軸試験装置は、図1に示す実施例1と同じ構成となるので、図示は省略する。
【0049】
供試機トルクTMest1が入力され、ゲイン121で、第一軸の車輪半径r1と平均車輪半径raveとの比(r1/rave)を乗算する。
【0050】
同様に、供試機トルクTMest2が入力され、ゲイン123で、第二軸の車輪半径r2と平均車輪半径raveとの比(r2/rave)を乗算する。
【0051】
双方の乗算値を加算器125で加算し、ゲイン127で半分にして加算平均を演算した後に、減算器129でゲイン127の出力から車両抵抗のトルク換算分TFdを減算して、積分器131に入力する。
【0052】
積分器131は、車両の車輪と車体の等価慣性相当のイナーシャJbgの逆数をゲインとして乗算し、時間積分して平均負荷速度指令値ωG_ave*を出力する。
【0053】
ゲイン133は、平均負荷速度指令値ωG_ave*に、平均車輪半径raveとギア比Grとの比(rave/Gr)を乗算して、車両速度vbを出力する。
【0054】
車両抵抗演算器135は、実施例1の車両抵抗演算器109と同じ演算であって、車両速度vbから車両抵抗Fdを演算する。
【0055】
ゲイン137は、車両抵抗Fdに、平均車輪半径raveとギア比Grとの比(rave/Gr)を乗算して、車両抵抗のトルク換算分TFdを出力する。
【0056】
ゲイン139は、平均負荷速度指令値ωG_ave*に、平均車輪半径raveと第一軸の車輪半径r1との比(rave/r1)を乗算して、第一軸の負荷速度指令値ωG1*を出力する。
【0057】
同様に、ゲイン141は、平均負荷速度指令値ωG_ave*に、平均車輪半径raveと第二軸の車輪半径r2との比(rave/r2)を乗算して、第二軸の負荷速度指令値ωG2*を出力する。
【0058】
以上のように、実施例2の車両モデル51を構成することで、実施例1と同様に、鉄道特有の車輪径差の考慮や車両抵抗の考慮が実現できるので、試験装置で実際の鉄道車両と同様の試験を行うことができる。
【0059】
ただし、実施例2では、空転現象を再現することができない点が実施例1と異なる。しかし、接線力係数のテーブル等を用意する必要がなくため、実施例1に比べてより簡便に車輪径差および車両抵抗の考慮が実現できる。
【0060】
また更には、車輪径差の考慮のみに絞った、より簡便な車両モデルとして、実施例2の車両モデル51の構成から、車両速度から演算した車両抵抗を減算するループを外してもよい。
【0061】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0062】
11,31:供試用インバータ、
13,33:供試機、
15,35:シャフト、
17,37:負荷機、
19,39:速度検出手段、
21,41:インバータ、
23,43:トルク制御手段、
25,45:速度制御手段、
27,47:供試トルク推定手段、
51:車両モデル、
61,67,81,87,105,129:減算器、
63,83,107,131:積分器、
65,73,85,93,103,121,123,127,133,137,139,141:ゲイン、
69,89:接線力係数演算部、
71,91:動軸トルク演算部、
101,125:加算器、
109,135:車両抵抗演算器
図1
図2
図3
図4