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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】全固体電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/534 20210101AFI20241203BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241203BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20241203BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241203BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20241203BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20241203BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20241203BHJP
【FI】
H01M50/534
H01M4/62 Z
H01M4/66 A
H01M4/13
H01M10/0562
H01M10/0585
H01M10/052
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021190443
(22)【出願日】2021-11-24
(65)【公開番号】P2023077223
(43)【公開日】2023-06-05
【審査請求日】2023-07-18
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「先進・革新蓄電池材料評価技術開発(第2期)」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 正博
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 裕一
(72)【発明者】
【氏名】菅原 亮
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2023-519702(JP,A)
【文献】国際公開第2021/145345(WO,A1)
【文献】国際公開第1998/038688(WO,A1)
【文献】特開平06-349462(JP,A)
【文献】特開2021-096910(JP,A)
【文献】特開2015-076179(JP,A)
【文献】特開2009-080999(JP,A)
【文献】国際公開第2019/078001(WO,A1)
【文献】特開2019-096476(JP,A)
【文献】特開2001-068150(JP,A)
【文献】特開2019-149298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50
H01M 4/64- 4/84
H01M 4/13- 4/62
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/36-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体層、正極活物質層、固体電解質層、負極活物質層、及び負極集電体層をこの順に積層してなる構成単位セルを少なくとも一つ有している全固体電池であって、
前記構成単位セルの、前記正極集電体層側の面及び/又は前記負極集電体層側の面に、接続導体層が積層されており、
前記正極集電体層及び前記正極活物質層の外周を取り囲むようにして、額縁状の絶縁体が配置されている、
全固体電池。
【請求項2】
前記接続導体層の電気抵抗率は、前記接続導体層が積層されている前記正極集電体層又は前記負極集電体層の電気抵抗率よりも小さい、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項3】
前記接続導体層の電気抵抗率は、1×10-6Ωm以下である、請求項1又は2に記載の全固体電池。
【請求項4】
前記接続導体層は、銅製及び/又はアルミニウム製である、請求項1~3のいずれか一項に記載の全固体電池。
【請求項5】
前記負極活物質層は、硫化物系固体電解質を含有しており、かつ前記負極集電体層は、ステンレス鋼製又はニッケル製である、請求項1~4のいずれか一項に記載の全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
全固体電池は、従来の電解液系のリチウムイオン電池に用いられるセパレーター層と電解液を固体電解質に置き換えた構成を有し、固体電解質の難燃性が高いこと、冷却ユニットを必要としないことによりパックエネルギー密度が高くなること、ハイレート充電が可能であることなどの特性から、特に自動車用途に向けた実用化が期待されている。
【0003】
全固体電池の構造について、特許文献1には、固体電解質の一方の面に正極電極層、他方の面に負極電極層が形成されてなる単位セルを、正極集電体及び負極集電体を介して積み重ね、正極集電体をまとめて正極端子に、負極集電体をまとめて負極端子にそれぞれ接続し、電池外部に端子を取り出す構造が開示されている。しかしながら、かかる構造においては、集電体と端子との接続部の電気抵抗により電池の内部抵抗が増加する課題があった。
【0004】
これに対して、特許文献2には、正極集電体が、電極積層体のそれぞれの前記正極層同士を電気的に接続するように、折込まれて配置されており、負極集電体が、前記電極積層体のそれぞれの負極層同士を電気的に接続するように、折込まれて配置されている、積層型全固体電池構造が開示されている。これにより、従来構造における正極、負極集電体と端子との接続部の電気抵抗を低減することができる。しかしながら、かかる構造においては、製造工程が煩雑になる課題があった。
【0005】
一方、固体電解質に硫黄を含み、銅を集電体とする場合、硫化銅が生成して電気抵抗が増加する課題があった。そこで、特許文献3には、硫化銅の生成を抑え、導電性に優れた全固体電池として、電解銅箔、圧延銅箔又は銅合金箔の両面に、ニッケル皮膜を形成した全固体電池用負極集電体と、硫黄を含む固体電解質を有する全固体電池が開示されている。しかしながら、かかる構造においては、積層体がすべて接合されているため、一部の層に不具合があった場合でも該当箇所のみを交換することができず、生産時の歩留まりが低いことが課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-116156号公報
【文献】特開2020-113434号公報
【文献】特開2016-9526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本開示は、新規な構成を有する全固体電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための構成は、以下のとおりである:
《態様1》
正極集電体層、正極活物質層、固体電解質層、負極活物質層、負極集電体層をこの順に積層してなる構成単位セルを少なくとも一つ有している全固体電池であって、
前記構成単位セルの、前記正極集電体層側の面及び/又は前記負極集電体層側の面に、接続導体層が積層されている、全固体電池。
《態様2》
前記接続導体層の電気抵抗率は、前記接続導体が積層されている前記正極集電体層又は前記負極集電体層の電気抵抗率よりも小さい、態様1に記載の全固体電池。
《態様3》
前記接続導体層の電気抵抗率は、1×10-6Ωm以下である、態様1又は2に記載の全固体電池。
《態様4》
前記接続導体層は、銅製及び/又はアルミニウム製である、態様1~3のいずれか一つに記載の全固体電池。
《態様5》
前記負極活物質層は、硫化物系固体電解質を含有しており、かつ前記負極集電体層は、ステンレス鋼製又はニッケル製である、態様1~4のいずれか一つに記載の全固体電池。
《態様6》
前記構成単位セルと前記接続導体層とを交互に積層し、又は前記構成単位セルと前記接続導体とを重ねた小ユニットを積層して、積層体を形成する工程、
得られた前記積層体の前記接続導体層に正極端子及び負極端子を接続する工程、及び
前記積層体を外装体で封止する工程、
をこの順に有する、態様1~5のいずれか一つに記載の全固体電池の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、新規な構成を有する全固体電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の第1の実施形態に従う全固体電池1Aが有している構成単位セル10Aを示す模式図である。
図2図2は、本開示の第1実施形態に従う全固体電池1Aの模式図である。
図3図3は、本開示の第1の実施形態に係る全固体電池1Aを積層方向から見たときの平面図である。
図4図4は、本開示の第2の実施形態に従う全固体電池1Bの模式図である。
図5図5は、本開示の第3の実施形態に従う全固体電池1Cの模式図である。
図6図6は、本開示の第4の実施形態に従う全固体電池1Dの模式図である。
図7図7は、本開示の第5の実施形態に従う全固体電池1Eの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
《全固体電池》
本開示に係る全固体電池は、正極集電体層、正極活物質層、固体電解質層、負極活物質層、及び負極集電体層をこの順に積層してなる構成単位セルを有している全固体電池であって、構成単位セルの、正極集電体層側の面及び/又は負極集電体層側の面に、接続導体層が積層されていることを特徴とする。
【0012】
本開示に係る全固体電池は、構成単位セルを1つ有する単層構造を有してもよいし、構成単位セルと接続導体層とを交互に複数積層してなる積層構造を有してもよい。
【0013】
構成単位セルを複数積層することにより、体積あたりの充放電容量をより向上させることができ、電池の内部抵抗をより低減することができる。また、本開示に係る全固体電池において、各構成単位セル同士の間に接続導体層が配置されていると、構成単位セル同士が接合されていないため、特許文献3に開示されるような、積層体がすべて接合されている構成とは異なり、一部の構成単位セルに不具合があった場合に、該当する構成単位セルのみを交換することができることから、製造時の歩留まりを向上させることができる。
【0014】
ここで、直列構造とは、接続導体の片面に構成単位セルの正極集電体側、他面に構成単位セルの負極集電体側が接するように配置し、複数の構成単位セルの極性が同方向になるように積層された構造(バイポーラ型構造)を指し、並列構造とは、正極接続導体の両面に構成単位セルの正極集電側、負極接続導体の両面に構成単位セルの負極集電体側が接するように配置し、複数の構成単位セルの極性が交互に逆方向になるように積層された構造(モノポーラ型構造)を指す。直列構造とすることにより、電池の電圧を大きくすることができる。また、並列構造とすることにより、充放電容量をより大きくし、電池の内部抵抗をより低減することができる。
【0015】
図1は、本開示の第1の実施形態に従う全固体電池が有している構成単位セルを示す模式図である。なお、図1は、本開示の全固体電池を限定する趣旨ではない。
【0016】
図1に示すように、本開示の第1の実施形態に従う全固体電池1Aが有している構成単位セル10Aは、正極集電体層11、正極活物質層12、固体電解質層13、負極活物質層14、及び負極集電体層15がこの順に積層された構成を有している。構成単位セル10Aを積層方向から見たときに、正極集電体層11及び正極活物質層12は、固体電解質層13、負極活物質層14、及び負極集電体層15の外周の内側に配置されている。また、正極集電体層11及び正極活物質層12の外周を取り囲むようにして、絶縁体16が配置されている。絶縁体16は、正極集電体層11及び正極活物質層12の外周を取り囲む額縁状の形状を有している。
【0017】
構成単位セル10Aが、上記のような絶縁体16を有することにより、正極集電体層11及び/又は正極活物質層12と負極活物質層14及び/又は負極集電体層15との接触による短絡を抑制することができる。
【0018】
図1において、絶縁体16は、構成単位セル10Aの積層方向から見たときに、正極集電体層11及び正極活物質層12の外周全体を取り囲むようにして正極集電体層11及び正極活物質層12の端部に配置されている。したがって、正極集電体層11及び/又は正極活物質層12と固体電解質層13及び/又は負極活物質層14との間に形成される隙間を埋めることができる。絶縁体16は、更に積層方向から見たときに負極活物質層14と負極集電体層15との外周全体を取り囲むようにして配置されていてもよい。
【0019】
図2は、本開示の第1実施形態に従う全固体電池1Aの模式図である。また、図3は、本開示の第1の実施形態に係る全固体電池1Aを積層方向から見たときの平面図である。なお、図2及び3は、本開示の全固体電池を限定する趣旨ではない。
【0020】
図2及び図3に示す全固体電池1Aにおいて、構成単位セル10Aの正極集電体層11側の面及び負極集電体層15側の面に、それぞれ正極接続導体層20a及び負極接続導体層20bが積層されている。構成単位セル10A及び各接続導体層20a、20bは、いずれも外装体50内に配置されている。正極接続導体層20aは、正極端子30に、負極接続導体層20bは、負極端子40に、それぞれ接続されている。正極端子30及び負極端子40は、それぞれ外装体50から外に導出した構造であり、そこから電流を取り出すことができる。
【0021】
図4は、本開示の第2の実施形態に従う全固体電池1Bの模式図である。なお、図4は、本開示の全固体電池を限定する趣旨ではない。
【0022】
図4に示す本開示の第2の実施形態に従う全固体電池1Bでは、3個の構成単位セル10Aが並列に接続された積層構造(モノポーラ型構造)を有している。全固体電池1Bは、負極接続導体層20bに構成単位セル10Aの負極集電体層15が、正極接続導体層20aに正極集電体層11が、それぞれ接するようにして積層された、積層構造を有する。ここで、各構成単位セル10Aは、極性を上下に反転させながら交互に積層されている。
【0023】
図4に示すように、複数の構成単位セル10Aを積層する場合には、複数の正極接続導体層20a及び負極接続導体層20bを、それぞれ正極端子30及び負極端子40に接続する。接続方法は、単層の場合と同様である。これらは、外装体50で封止され、正極端子30と負極端子40の一部のみ外装体50から外に導出されている。
【0024】
図5は、本開示の第3の実施形態に従う全固体電池1Cの模式図である。なお、図5は、本開示の全固体電池を限定する趣旨ではない。
【0025】
図5に示す本開示の第3の実施形態に従う全固体電池1Cでは、3個の構成単位セル10Aが直列に接続された積層構造(バイポーラ型構造)を有している。接続導体層20の両面に、それぞれ構成単位セル10Aの負極集電体層15と、別の構成単位セル10Aの正極集電体層11が接する積層構造を有する。積層した構成単位セル10Aの積層方向の両端では、単層の場合と同様に、正極集電体層11側の面に正極接続導体層20aが積層され、さらに正極端子30が接続される。一方、負極集電体層15側の面には負極接続導体層20bが積層され、負極端子40が接続される。これらは、外装体50で封止され、正極端子30と負極端子40の一部のみ外装体50から外に導出されている。
【0026】
図5に示す全固体電池1Cにおいて、接続導体層20、正極接続導体層20a、及び負極接続導体層20bを構成する材料としては、電気抵抗率が低いことが好ましく、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス(SUS)鋼などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、アルミニウム又は銅が好ましい。
【0027】
図6は、本開示の第4の実施形態に従う全固体電池1Dの模式図である。なお、図6は、本開示の全固体電池を限定する趣旨ではない。
【0028】
図6に示す本開示の第4の実施形態に従う全固体電池1Dは、複数の構成単位セル10Aが直列に接続された積層構造を有している。第4の実施形態に従う全固体電池1Dは、図5の全固体電池1Cと比較して、構成単位セル10A間に接続導体層20を介さないバイポーラ構造を有している。接続導体層20を有しないことにより、電池体積を小さくし、電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【0029】
図7は、本開示の第5の実施形態に従う全固体電池1Eの模式図である。なお、図7は、本開示の全固体電池を限定する趣旨ではない。
【0030】
図7に示す本開示の第5の実施形態に従う全固体電池1Eには、2個の構成単位セルが直列に接続された積層構造を有している。構成単位セル10B(両面塗工型)は、集電体層17の片面に負極活物質層14及び固体電解質層13がこの順に配置され、もう一方の面に正極活物質層12、その外周に絶縁体16が配置された構造を有する。全固体電池1Eは、2個の構成単位セル10Bを固体電解質層13と正極活物質層12とを接するように積層したバイポーラ構造を有する。
【0031】
図7では、構成単位セル10Bにおいて、固体電解質層13側の端面には、正極集電体層11の片面に正極活物質層12が塗工され、その外周に絶縁体16を配置した積層体が、その正極活物質層12が接するようにして配置されている。また、正極集電体層11には正極端子30が接続された正極接続導体層20aが接している。また、構成単位セル10Bにおいて、正極活物質層12側の端面には、負極集電体層15の片面に負極活物質層14及び固体電解質層13がこの順に塗工された構造の積層体が、その固体電解質層13が接するようにして配置されている。また、負極集電体層15には負極端子40が接続された負極接続導体層20bが接している。これらは、外装体50で封止され、正極端子30と負極端子40の一部のみ外装体から外に導出されている。
【0032】
〈構成単位セル〉
本開示の全固体電池が有している構成単位セルは、正極集電体層、正極活物質層、固体電解質層、負極活物質層、及び負極集電体層がこの順に積層された構成を有している。
【0033】
構成単位セルを積層方向から見たときに、正極集電体層及び正極活物質層は、固体電解質層、負極活物質層、及び負極集電体層の外周の内側に配置されていることができる。また、構成単位セルを積層方向から見たときに、正極集電体層及び正極活物質層は、固体電解質層と外周が一致していることができ、この場合、正極集電体層、正極活物質層、及び固体電解質層は、負極活物質層及び負極集電体層の外周の内側に配置されていることができる。
【0034】
これは、正極活物質層、特にその端部を、固体電解質層及び負極活物質層に確実に対向させることで、充電時において正極活物質から移動したリチウムイオンが負極活物質内に挿入されやすくすることを可能とするためである。これにより、正極活物質層の表面や正極活物質層と固体電解質層との界面等にリチウム金属が析出することを抑制することができ、ひいては構成単位セルの内部短絡を抑制することができるためである。
【0035】
また、正極集電体層及び正極活物質層は、固体電解質層、負極活物質層、及び負極集電体層の外周の内側に配置されている構成において、正極集電体層及び正極活物質層の外周を取り囲むようにして、絶縁体が配置されていることができる。絶縁体は、正極集電体層及び正極活物質層の外周を取り囲む額縁状の形状を有していることができる。
【0036】
(正極集電体層)
正極集電体層を構成する材料は、固体電解質との接触や、正極作動電位内の充放電により反応しないこと、電気抵抗率が低いことが好ましい。例えば、アルミニウム、ステンレス(SUS、オーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト・フェライト系(2相))、ニッケルなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。特にこれらの中でも、アルミニウムが好ましい。
【0037】
なお、本開示の全固体電池において、正極集電体層は、アルミニウム製、ステンレス鋼製、又はニッケル製であってよい。これらの金属は、硫化物系固体電解質との反応性が低いためである。
【0038】
(正極活物質層)
正極活物質層は、主に正極活物質及び固体電解質で構成されることが好ましい。
【0039】
正極活物質としては、例えば、LiCoO、LiMnO、LiNiOや、Ni、Co、Mnの3元系酸化物リチウムやNi、Co、Alの3元系酸化物リチウム、LiFePOなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0040】
固体電解質としては、例えば、LiS-P(Li11)やLi10GeP12、LiPSCl、LiPSIなどの硫化物系固体電解質や、Li1.4Al0.4Ti1.6(PO、LiLaZr12、Li1.5Al0.5Ge1.5(POなどの酸化物系固体電解質などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、硫化物系固体電解質が好ましい。硫化物系固体電解質を用いる場合には、正極活物質の反応を抑制するため、正極活物質表面にLiNbOによるコーティングを行うことが好ましい。
【0041】
(固体電解質層)
固体電解質層は、主に固体電解質で構成される。固体電解質としては、正極活物質層を構成する固体電解質として例示したものが挙げられる。
【0042】
(負極活物質層)
負極活物質層は、主に負極活物質と固体電解質で構成されることが好ましい。
【0043】
負極活物質としては、黒鉛、ハードカーボン、チタン酸リチウム、酸化チタン、シリコン、酸化シリコンなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0044】
固体電解質としては、正極活物質層を構成する固体電解質として例示したものが挙げられる。
【0045】
(負極集電体層)
負極集電体層を構成する材料は、固体電解質との接触や、負極作動電位内の充放電により反応しないこと、電気抵抗率が低いことが好ましい。例えば、ステンレス(SUS)、カーボン、ニッケル、銅などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0046】
絶縁体を構成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリイミド(PI)、ポリフェニレンサルフィド(PPS)などの樹脂や、アルミナなどのセラミックスなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0047】
なお、本開示の全固体電池は、負極活物質層が、硫化物系固体電解質を含有している場合には、負極集電体層は、ステンレス鋼製又はニッケル製であることが好ましい。これらの金属は、硫化物系固体電解質との反応性が低いためである。
【0048】
〈接続導体層〉
本開示の全固体電池は、構成単位セルの正極集電体層側の面及び/又は負極集電体層側の面に、接続導体層が積層されている。
【0049】
本開示の全固体電池では、接続導体層に正極端子及び負極端子を接合することにより、構成単位セルの正極集電体層及び負極集電体層に直接的に正極端子及び負極端子を接合しない構成とすることができる。そして、構成単位セルの正極集電体層及び負極集電体層と接続導体層とを接着せずに単純に積層する構成とすることができる。
【0050】
これにより、本開示の全固体電池では、従来の全固体電池のような、正極集電体層及び負極集電体層が正極端子及び負極端子と接合される構成と異なり、全固体電池に構成された状態においても、構成単位セルを全固体電池から簡易に分離することができる。そのため、例えば全固体電池の製造工程において、構成単位セルの一部に不具合があった場合には、当該構成単位セルのみを、不具合のない構成単位セルに容易に交換可能である。
【0051】
したがって、全固体電池を構成する他の構成単位セルやその他の部品を無駄にすることなく使用することができ、全固体電池の製造の歩留まりを向上させることができる。
【0052】
また、構成単位セルと接続導体層(正極接続導体層及び負極接続導体層)とを交互に積層することによって全固体電池を形成することができる。したがって、全固体電池を簡易に製造することができる。
【0053】
正極接続導体層と負極接続導体層とは、それぞれ正極集電体層や、負極集電体層の大部分又は全体を覆う形状が好ましい。単位体積当たりの電気抵抗をより低減させる観点から、平面形状が好ましいが、格子状、メッシュ状などであってもよい。正極接続導体層と負極接続導体層は、それぞれ正極集電体層や負極集電体層と重ならない箇所に、正極端子、負極端子が接続されていることができる。接続方法は、接続部の電気抵抗をより低減させる観点から、超音波溶接やスポット溶接が好ましい。
【0054】
正極接続導体層及び負極接続導体層の電気抵抗率は、厚みに反比例する。一方、接続導体層の厚みが小さいほど、電池体積当たりのエネルギー密度を大きくすることから、正極接続導体層及び負極接続導体層の厚みは、小さい方が好ましい。具体的には、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。
【0055】
正極接続導体層と負極接続導体層を構成する材料は、電気抵抗が低いことが好ましい。例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス(SUS)などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。接続導体層の電気抵抗率が、それと接する正極集電体層又は負極集電体層よりも小さいことが好ましい。
【0056】
すなわち、正極接続導体層の電気抵抗率が、正極集電体層の電気抵抗率よりも小さく、負極接続導体層の電気抵抗率が、負極集電体層の電気抵抗率よりも小さいことが好ましい。
【0057】
より具体的には、接続導体層の電気抵抗率は、1×10-6Ωm以下が好ましい。電気抵抗率の測定はJIS C2525:1999に準拠する。
【0058】
接続導体層の電気抵抗率は、1×10-6Ωm以下、5×10-7Ωm以下、1×10-7Ωm以下、又は5×10-8Ωm以下であってよい。
【0059】
接続導体層の電気抵抗を小さくする方法としては、例えば、正極接続導体層や負極接続導体層を構成する材料として、正極集電体層や負極集電体層を構成する材料よりも電気抵抗率の小さい金属材料を用いる方法や、接続導体の厚みを厚くして断面積を増加させる方法などが挙げられる。
【0060】
具体的には、接続導体層は、銅製及び/又はアルミニウム製であってよい。
【0061】
本開示の全固体電池が固体電解質として硫化物系固体電解質を用いている場合、採用する負極集電体層の材料によっては、負極集電体層と硫化物系固体電解質とが反応して、全固体電池の内部抵抗が増加する可能性がある。このような場合においては、例えば負極集電体層の材料として、硫化物系固体電解質との反応性が低い材料、例えばステンレス鋼やニッケル等を採用することが考えられる。
【0062】
なお、ステンレス鋼やニッケル等の金属は、概して電気抵抗率が高い。例えば、ステンレス鋼の電気抵抗率は、銅の10倍以上である。したがって、これらの金属を集電体として採用すると、全固体電池全体としての内部抵抗が増加してしまう。
【0063】
この点に関して、固体電解質として硫化物系固体電解質を用いている場合に、集電体層には硫化物系固体電解質との反応性が低い材料、例えばステンレス鋼やニッケル等を採用しつつ、集電体層上に配置される接続導体層に電気抵抗率が低い材料、例えばアルミニウム又は銅を採用することが好ましい。このような構成であると、集電体層では硫化物系固体電解質との反応性の低い材料を用いて、集電体層の硫化物系固体電解質との反応を抑制して内部抵抗の増加を抑制しつつ、集電体層の高い電気抵抗率を、電気抵抗率の低い接続導体層で相殺することができ、全固体電池全体としての内部抵抗を低減することができる。
【0064】
《端子》
正極端子及び負極端子を構成する材料としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケルなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。外装体と接する箇所に、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂を用いたシーラントフィルムを配置してもよく、熱圧着による封止を強固にすることができる。
【0065】
《外装体》
外装体は、例えば、ラミネートフィルムなどにより形成される。構成単位セル中の固体電解質が、大気雰囲気に含まれる水分と反応して劣化することを抑制するため、外装体は、ガスバリア性を有することが好ましい。外装体は、真空封止されていることが好ましく、各層の界面抵抗を低減することができる。
【0066】
《全固体電池の製造方法》
本開示に従う全固体電池の製造方法は、例えば、構成単位セルと接続導体層を交互に複数積層し、又は構成単位セルと接続導体層を交互に積層して、積層体を形成する工程、得られた積層体の接続導体層に正極端子及び負極端子を接続する工程、及び積層体を外装体で封止する工程を、この順に有する。
【0067】
図2及び3に示す全固体電池1Aの製造方法としては、例えば、正極集電体層11と正極活物質層12との積層体、固体電解質層13、並びに負極活物質層14及び負極集電体層15との積層体を一体化させ、絶縁体16を配置して構成単位セル10Aを作製する工程、正極接続導体層20aを正極端子30に接続する工程、負極接続導体層20bを負極端子40に接続する工程、負極接続導体層20bの上に、負極集電体層15側が接するようにして構成単位セル10Aを積層し、構成単位セル10Aの正極集電体層11側に正極接続導体層20aを積層する工程、によって積層体を形成し、その後、積層体を正極端子30と負極端子40の一部を出して外装体50により封止する工程により、全固体電池1Aを製造する方法が挙げられる。
【0068】
また、あらかじめ正極端子30が接続された正極接続導体層20aと、負極端子40が接続された負極接続導体層20bを外装体50に固定する工程、正極接続導体層20aと負極接続導体層20bとの間に構成単位セル10Aを挟んでから、外装体50を封止する工程をこの順に有する方法などが挙げられる。
【0069】
同じ方向に順に積層すると製造がより容易であることから、前者の方法が好ましい。
【0070】
図4に示す全固体電池1Bの製造方法としては、例えば、正極集電体層11と正極活物質層12との積層体、固体電解質層13、並びに負極活物質層14と負極集電体層15との積層体を一体化させ、絶縁体16を配置して構成単位セル10Aを作製する工程、構成単位セル10Aを、負極接続導体層20bに負極集電体層15が接するようにして積層し、構成単位セル10Aの正極集電体層11側に正極接続導体層20aを積層する工程、構成単位セル10Aと正極接続導体層20a及び負極接続導体層20bとを交互に積層する工程、複数の正極接続導体層20aを構成単位セル10Aの積層範囲外で正極端子30に接続する工程、複数の負極接続導体層20bを構成単位セル10Aの積層範囲外で負極端子40に接続する工程、積層構造を正極端子30と負極端子40の一部を出して外装体50により封止する工程、をこの順に有する方法が挙げられる。構成単位セル10Aと正極接続導体層20a及び負極接続導体層20bとを交互に積層する工程としては、例えば、正極接続導体層20aの反対側に別の構成単位セル10Aを、その正極集電体層11側が接するようにして積層し、当該構成単位セル10Aの負極集電体層15側に負極接続導体層20bを積層する工程、同様の要領で構成単位セル10Aと正極接続導体層20a、負極接続導体層20bを積層する工程をこの順に有する方法が挙げられる。
【0071】
図5に示す全固体電池1Cの製造方法としては、例えば、図4に示す全固体電池1Bの製造方法と同様にして、構成単位セル10Aを作製する工程、正極接続導体層20aを正極端子30に接続する工程、負極接続導体層20bを負極端子40に接続する工程、構成単位セル10Aと接続導体層20を交互に積層して積層構造を得る工程、当該積層構造を正極接続導体層20aと負極接続導体層20bとの間に挟み込み、正極端子30と負極端子40の一部を出して外装体50により封止する工程、をこの順に有する方法が挙げられる。
【0072】
ここで、図5に示す全固体電池1Cにおいて、構成単位セル10Aと接続導体層20を交互に積層する工程としては、負極接続導体層20bの上に、負極集電体層15側が接するようにして構成単位セル10Aを積層し、当該構成単位セル10Aの正極集電体層11側に接続導体層20を積層する工程、接続導体層20の反対側に、負極集電体層15側が接するようにして別の構成単位セル10Aを積層し、当該別の構成単位セル10Aの正極集電体層11側に接続導体層20を積層する工程、同様の要領で構成単位セル10A及び接続導体層20を積層する工程、最後の構成単位セル10Aを積層後に、当該最後の構成単位セル10Aの正極集電体層11の上に正極接続導体層20aを積層する工程をこの順に有する方法が挙げられる。
【0073】
図6に示す全固体電池1Dの製造方法としては、隣り合う構成単位セル10A間に接続導体層20を配置しないことを除いて、図5に示す全固体電池1Cの製造方法と同様の方法が挙げられる。
【0074】
図7に示す全固体電池1Eの製造方法としては、例えば、集電体層17の片面に負極活物質層14、固体電解質層13をこの順に積層し、集電体層17の反対側の面に正極活物質層12、その周囲に絶縁体16を配置した構成単位セル10Bを作製する工程、正極接続導体層20aを正極端子30に接続する工程、負極接続導体層20bを負極端子40に接続する工程、負極接続導体層20bの上に、負極集電体層15と負極活物質層14、固体電解質層13をこの順に積層した構造を積層する工程、固体電解質層13側に構成単位セル10Bの正極活物質層12側を積層する工程、同様の要領で構成単位セル10Bを積層する工程、最後の構成単位セル10Bの固体電解質層13側に、正極集電体層11に正極活物質層12を積層し、絶縁体16を配置したものを、正極活物質層12側が接するようにして積層する工程、をこの順に有する方法が挙げられる。また、構成単位セル10Aのうち、正極集電体層11又は負極集電体層15を有しない積層体を互いに積層し、最後に、正極接続導体層20a及び負極接続導体層20bの間に挟む方法が挙げられる。
【0075】
構成単位セルを積層する場合、積層の位置ずれを抑制するために、構成単位セルや絶縁体、正極接続導体層、負極接続導体層、接続導体層などの一部に接着剤などを塗布して固定することもできる。
【0076】
図4~7に示す全固体電池1B~1Eの前述の製造方法においては、積層工程が終了した後も、積層構造を分解し、構成単位セル10A、10Bなどを容易に取り外すことが可能である。そのため、例えば積層工程終了後に構成単位セル10A、10Bの一部に不良があることが分かった場合には、その箇所のみを容易に良品と入れ替えることができるため、電池生産の歩留まりが向上する。
【0077】
また、従来の積層型の全固体電池においては、複数の構成単位セルを積層した構造の各層間を強く接合させて界面抵抗を低減するために、積層体の一括プレスを行う必要があるが、各層のサイズや材質、厚み、弾性率などが異なるために構造の一部が圧力集中などにより破損、短絡が起こりやすいことが課題であった。図4~7に示す全固体電池の前述の製造方法は、構成単位セルをプレスしてから積層を行うことができ、構成単位セル間は金属の層同士の接触となり、界面抵抗が低くなることから一括プレスを行わずに電池を作製することができる。
【0078】
図4~7における本形態に係る全固体電池1B~1Eの製造方法において、正極接続導体層20aと負極接続導体層20b、接続導体層20、構成単位セル10A、10B、及び絶縁体16は、最終的に積層の配置が図面通りであれば、どのような順序で積層してもよい。例えば図4で、負極接続導体層20bの両面に、2個の構成単位セル10Aの負極集電体層15側をそれぞれ一体化させてから、それと正極接続導体層20aを交互に重ねて積層体を作製することも可能である。
【実施例
【0079】
《実施例1及び2、並びに比較例1》
以下に実施例を示し説明する。本発明はこれに限定されるものではない。まず、各実施例及び比較例における評価方法について説明する。
【0080】
〈電気抵抗率測定〉
各実施例及び比較例に用いた集電体層や接続導体層について、JIS C2525:1999に従って電気抵抗率を測定した。
【0081】
〈電池の内部抵抗評価〉
各実施例及び比較例により作製した全固体電池について、両面を平板で挟んで加圧しながら、25℃、0.1Cレートで充放電試験を行い、充電容量及び放電容量を測定し、電池の内部抵抗を評価した。なお、Cレートについて、1Cは1時間で電池の全容量を充電する電流であり、0.1Cでは10時間で全容量を充電する電流値である。
【0082】
その後、60℃、2Cレートで充電を行い、充電容量を測定した後、0.1Cレートで放電した後、6Cレートでの充電容量を測定し、電池の内部抵抗を評価した。
【0083】
〈実施例1〉
(正極活物質層及び正極集電体層)
正極集電体層としてアルミニウム箔(電気抵抗率2.7×10-8Ω・m、厚さ20μm)を用い、LiNbOによりコートしたNi、Co、Mnの3元系酸化物リチウム(正極活物質)、アルジロダイト型硫化物系固体電解質、カーボンナノファイバー“VGCF”(登録商標)-H(導電助剤)及び有機系バインダを混合した正極活物質スラリーを塗工して、正極集電体層上に正極活物質層を形成した。
【0084】
(負極活物質層及び負極集電体層)
負極集電体層としてステンレス箔(電気抵抗率5.4×10-7Ω・m、厚さ10μm)を用い、黒鉛(負極活物質)、アルジロダイト型硫化物系固体電解質、有機系バインダを混合した負極活物質スラリーを塗工して、負極集電体層上に負極活物質層を形成した。
【0085】
(固体電解質層)
ステンレス箔にアルジロダイト型硫化物系固体電解質、有機系バインダを混合したものを塗工して、固体電解質層を形成した。
【0086】
(構成単位セル)
前述の正極活物質層、固体電解質層、及び負極活物質層を一体化させ、構成単位セルを得た。なお、固体電解質層のステンレス箔は、一体化時に剥離した。
【0087】
構成単位セル1個からなる全固体電池を下記のとおり作製した。正極接続導体層としてステンレス箔(電気抵抗率5.4×10-7Ω・m、厚さ10μm)を用い、アルミニウムの正極端子を超音波溶接により接続した。同様に負極接続導体層としてステンレス箔を用い、銅にニッケルコートを施した負極端子を超音波溶接で接続した。負極接続導体層に構成単位セルの負極集電体層側を重ね、構成単位セルの正極活物質層の端面に、絶縁性フィルムを、その内側を正極活物質層と同じ大きさに切り抜いて配置した。構成単位セルの正極集電層側に、あらかじめリードを接続させたアルミニウム箔(電気抵抗率2.7×10-8Ω・m、厚さ20μm)の接続導体層を載せた。上記の積層構造を外装体のラミネートフィルムで真空封止した。
【0088】
〈実施例2〉
正極接続導体層としてアルミニウム箔を用い、負極接続導体層として銅箔(電気抵抗率1.7×10-8Ω・m、厚さ17μm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、全固体電池を作製した。
【0089】
〈比較例1〉
正極接続導体層と負極接続導体層を使わずに、正極活物質層よりも一辺を大きくしたアルミニウム箔の正極集電体層と、負極活物質層よりも一辺を大きくした銅箔の負極集電体層を用いて構成単位セルを作製し、正極集電体層と負極集電体層の積層範囲外をそれぞれ正極端子と負極端子を超音波溶接により接続したこと以外は実施例1と同様にして、全固体電池を作製した。
【0090】
実施例1及び2、並びに比較例1の評価結果を表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
負極集電体層としてステンレス箔を用い、接続導体層を用いた実施例1~2は、比較例1に対して、放電容量及び充電容量が向上した。また、正極接続導体としてアルミニウム箔、負極接続導体として銅箔を用いた実施例2は、6Cレートにおける充電容量がさらに向上した。
【0093】
《実施例3及び4、並びに比較例2》
〈実施例3〉
実施例1と同様にして、実施例3の全固体電池を作製した。但し、製造した実施例1の全固体電池と実施例3の全固体電池とでは、正極活物質層と負極活物質層の合剤目付量が若干異なっていた。
【0094】
〈実施例4〉
実施例3で作製した構成単位セルを10個、互いに並列接続となるように積層して、外装体のラミネートフィルムで真空封止することにより、実施例4の積層型全固体電池とした。
【0095】
〈比較例2〉
正極集電体層にアルミニウム箔を、負極集電体層にステンレス箔を、それぞれ用いたことを除いて比較例1と同様にして作製した構成単位セルを10個、並列に積層して、外装体のラミネートフィルムで真空封止することにより、比較例2の積層型全固体電池とした。
【0096】
〈電池の評価〉
実施例3の全固体電池、並びに実施例4及び比較例2の積層型全固体電池を充放電し、その充電容量及び放電容量を測定した。測定結果を表2に示す。
【0097】
【表2】
【0098】
表2に示すように、実施例4の積層型全固体電池は、実施例3の全固体電池の約10倍の充電容量及び放電容量を有していた。
【0099】
他方、比較例2の積層型全固体電池は、積層の際に破損し、短絡した。
【符号の説明】
【0100】
1A、1B、1C、1D、及び1E 全固体電池
10A、10B 構成単位セル
11 正極集電体層
12 正極活物質層
13 固体電解質層
14 負極活物質層
15 負極集電体層
16 絶縁体
17 集電体層
20 接続導体層
20a 正極接続導体層
20b 負極接続導体層
30 正極端子
40 負極端子
50 外装体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7