(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】発光デバイス
(51)【国際特許分類】
H10K 50/155 20230101AFI20241203BHJP
H10K 50/165 20230101ALI20241203BHJP
H10K 50/12 20230101ALI20241203BHJP
H10K 50/13 20230101ALI20241203BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20241203BHJP
H10K 101/30 20230101ALN20241203BHJP
H10K 101/40 20230101ALN20241203BHJP
【FI】
H10K50/155
H10K50/165
H10K50/12
H10K50/13
H10K85/60
H10K101:30
H10K101:40
(21)【出願番号】P 2021501131
(86)(22)【出願日】2020-02-12
(86)【国際出願番号】 IB2020051103
(87)【国際公開番号】W WO2020170074
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2019028421
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 哲史
(72)【発明者】
【氏名】尾坂 晴恵
(72)【発明者】
【氏名】橋本 直明
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/069434(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/017484(WO,A1)
【文献】特開2015-203027(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0236075(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-99/00
H05B 33/00-33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極との電極間にEL層を有し、
前記EL層は、陽極側から正孔注入層、正孔輸送層、発光層、および電子輸送層を有し、
前記正孔注入層は、前記陽極と接し、
前記発光層は、前記陽極側から積層された第1の発光層および第2の発光層を有し、
前記第1の発光層は、前記正孔輸送層と接し、
前記第2の発光層は、前記電子輸送層と接し、
前記第1の発光層は、第1の物質と、第2の物質と、を有し、
前記第2の発光層は、第3の物質と、第4の物質と、を有し、
前記第1の物質と前記第3の物質は、同一または異なる発光物質であり、
前記第2の発光層のホール移動度は、前記第1の発光層のホール移動度よりも小さく、
前記正孔注入層は、第5の物質と、第6の物質と、を有し、
前記第5の物質は、アクセプタ性材料であり、
前記第6の物質のHOMO準位は-5.7eV以上-5.4eV以下であり、
前記正孔輸送層は、第7の物質を有し、
前記第7の物質のHOMO準位は、前記第6の物質のHOMO準位よりも小さく、かつ前記第2の物質のHOMO準位よりも大きく、
前記電子輸送層は、第8の物質と、第9の物質と、を有し、
前記第8の物質は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機金属錯体であり、
前記第9の物質は、アントラセン骨格を有する化合物である、発光デバイス。
【請求項2】
請求項
1において、
前記電子輸送層における、前記第8の物質と前記第9の物質の存在比は、前記陰極側と前記第2の発光層側で異なる発光デバイス。
【請求項3】
請求項1
または請求項
2において、
前記電子輸送層中の前記第8の物質の存在比は、前記第2の発光層側よりも前記陰極側において小さくなる発光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、発光素子、発光デバイス、ディスプレイモジュール、照明モジュール、表示装置、発光装置、電子機器及び照明装置に関する。なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の一態様の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関するものである。または、本発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関するものである。そのため、より具体的に本明細書で開示する本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、液晶表示装置、発光装置、照明装置、蓄電装置、記憶装置、撮像装置、それらの駆動方法、または、それらの製造方法、を一例として挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
有機化合物を用いたエレクトロルミネッセンス(EL:Electroluminescence)を利用する発光デバイス(有機EL素子)の実用化が進んでいる。これら発光デバイスの基本的な構成は、一対の電極間に発光物質を含む有機化合物層(EL層)を挟んだものである。この素子に電圧を印加して、キャリアを注入し、当該キャリアの再結合エネルギーを利用することにより、発光物質からの発光を得ることができる。
【0003】
このような発光デバイスは自発光型であるためディスプレイの画素として用いると、液晶に比べて視認性が高く、バックライトが不要である等の利点があり、フラットパネルディスプレイ素子として好適である。また、このような発光デバイスを用いたディスプレイは、薄型軽量に作製できることも大きな利点である。さらに非常に応答速度が速いことも特徴の一つである。
【0004】
また、これらの発光デバイスは発光層を二次元に連続して形成することが可能であるため、面状に発光を得ることができる。これは、白熱電球やLEDに代表される点光源、あるいは蛍光灯に代表される線光源では得難い特色であるため、照明等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
【0005】
このように発光デバイスを用いたディスプレイや照明装置はさまざまな電子機器に適用好適であるが、より良好な効率、寿命を有する発光デバイスを求めて研究開発が進められている。
【0006】
特許文献1では正孔注入層に接する第1の正孔輸送層と、発光層との間に、第1の正孔注入層のHOMO準位とホスト材料のHOMO準位の間のHOMO準位を有する正孔輸送性材料を設ける構成が開示されている。
【0007】
発光デバイスの特性は、目覚ましく向上してきたが効率や耐久性をはじめ、あらゆる特性に対する高度な要求に対応するには未だ不十分と言わざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2011/065136号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の一態様では、新規発光デバイスを提供することを目的とする。または、発光効率の良好な発光デバイスを提供することを目的とする。または、長寿命な発光デバイスを提供することを目的とする。または、駆動電圧の低い発光デバイスを提供することを目的とする。
【0010】
または、本発明の他の一態様では、信頼性の高い発光装置、電子機器及び表示装置を各々提供することを目的とする。または、本発明の他の一態様では、消費電力の小さい発光装置、電子機器及び表示装置を各々提供することを目的とする。
【0011】
本発明は上述の課題のうちいずれか一を解決すればよいものとする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、一対の電極間にEL層を有する発光デバイスにおいて、EL層が有する発光層を機能的な積層構造とすることによって、発光デバイスの信頼性および発光効率を向上させることができる。
【0013】
本発明の一態様は、陽極と陰極との電極間にEL層を有し、EL層は、陽極側から正孔注入層、正孔輸送層、発光層、および電子輸送層を有し、正孔注入層は、陽極と接し、発光層は、陽極側から積層された第1の発光層および第2の発光層を有し、第1の発光層は、正孔輸送層と接し、第2の発光層は、電子輸送層と接し、第1の発光層は、第1の物質と第2の物質とを有し、第2の発光層は、第3の物質と第4の物質とを有し、第1の物質と第3の物質は、同一または異なる発光物質であり、第2の物質と第4の物質は、同一または異なる物質であり、正孔注入層は、第5の物質と第6の物質を有し、第5の物質は、アクセプタ性材料であり、第6の物質のHOMO準位は-5.7eV以上-5.4eV以下であり、正孔輸送層は、第7の物質を有し、第7の物質は、第6の物質のHOMO準位よりも小さく、かつ第2の物質のHOMO準位よりも大きく、電子輸送層は、第8の物質と第9の物質を有し、第8の物質は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機金属錯体であり、第9の物質は、HOMO準位が-6.0eV以上であり、かつ電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が1×10-7cm2/Vs以上5×10-5cm2/Vs以下である発光デバイスである。
【0014】
本発明の別の一態様は、陽極と陰極との電極間にEL層を有し、EL層は、陽極側から正孔注入層、正孔輸送層、発光層、および電子輸送層を有し、正孔注入層は、陽極と接し、発光層は、陽極側から積層された第1の発光層および第2の発光層を有し、第1の発光層は、正孔輸送層と接し、第2の発光層は、電子輸送層と接し、第1の発光層は、第1の物質と第2の物質とを有し、第2の発光層は、第3の物質と第4の物質とを有し、第1の物質と第3の物質は、同一または異なる発光物質であり、第2の物質と第4の物質は、同一物質であり、正孔注入層は、第5の物質と第6の物質を有し、第5の物質は、アクセプタ性材料であり、第6の物質のHOMO準位は-5.7eV以上-5.4eV以下であり、正孔輸送層は、第7の物質を有し、第7の物質は、第6の物質のHOMO準位よりも小さく、かつ第2の物質のHOMO準位よりも大きく、電子輸送層は、第8の物質と第9の物質を有し、第8の物質は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機金属錯体であり、第9の物質は、HOMO準位が-6.0eV以上であり、かつ電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が1×10-7cm2/Vs以上5×10-5cm2/Vs以下である発光デバイスである。
【0016】
上記各構成を有する発光デバイスは、第1の発光層および第2の発光層が、いずれも青色発光を呈することが好ましい。
【0017】
上記各構成を有する発光デバイスは、電子輸送層における、第8の物質と第9の物質の存在比は、陰極側と第2の発光層側で異なることが好ましい。
【0018】
上記各構成を有する発光デバイスは、電子輸送層における第8の物質の存在比が、第2の発光層側よりも陰極側において小さくなることが好ましい。
【0019】
なお、本明細書中における発光装置とは、発光デバイスを用いた画像表示デバイスを含む。また、発光デバイスにコネクター、例えば異方導電性フィルム又はTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、又は発光デバイスにCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールは、発光装置に含まれる場合がある。さらに、照明器具等は、発光装置を有する場合がある。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様では、新規発光デバイスを提供することができる。または、長寿命な発光デバイスを提供することができる。または、発光効率の良好な発光デバイスを提供することができる。
【0021】
または、本発明の他の一態様では、信頼性の高い発光装置、電子機器及び表示装置を各々提供することができる。または、本発明の他の一態様では、消費電力の小さい発光装置、電子機器及び表示装置を各々提供することができる。
【0022】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1は発光デバイスの構造を示す図である。
図2A、
図2Bは発光デバイスの構造について説明する図である。
図3A、
図3B、
図3Cは発光装置について説明する図である。
図4Aは発光装置について説明する上面図である。
図4Bは発光装置について説明する断面図である。
図5Aはモバイルコンピュータについて説明する図である。
図5Bは携帯型の画像再生装置について説明する図である。
図5Cはデジタルカメラについて説明する図である。
図5Dは携帯情報端末について説明する図である。
図5Eは携帯情報端末について説明する図である。
図5Fはテレビジョン装置について説明する図である。
図5Gは携帯情報端末について説明する図である。
図6A、
図6B、
図6Cは電子機器について説明する図である。
図7A、
図7Bは自動車について説明する図である。
図8A、
図8Bは照明装置について説明する図である。
図9は電子オンリー素子の構造を示す図である。
図10は電子オンリー素子の電流密度-電圧特性である。
図11は直流電源7.0VにおけるZADN:Liq(1:1)の算出されたキャパシタンスCの周波数特性である。
図12は直流電圧7.0VにおけるZADN:Liq(1:1)の-ΔBの周波数特性である。
図13は各有機化合物における電子移動度の電界強度依存特性である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0025】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である、発光デバイスの構造について
図1を用いて説明する。
【0026】
図1には、陽極として機能する第1の電極101と、陰極として機能する第2の電極102と、の間にEL層103が挟まれた構造を有する発光デバイスを示す。従って、EL層103は、正孔(ホール)注入層111、正孔(ホール)輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115が機能層として、順次積層された構造を有する。
【0027】
また、本発明の一態様である発光デバイスは、EL層103に含まれる発光層113が積層構造を有する。なお、
図1には、発光層113が、第1の発光層113-1および第2の発光層113-2を積層してなる2層構造を有する場合について示す。但し、発光層113の積層数については、特に2層である必要は無く、本発明の一態様として、発光層113に必要な機能を持たせることができる構成であればよい。
【0028】
なお、上記の発光層113に必要な機能としては、発光層113におけるキャリア(ホールおよび電子)の再結合確率を高める機能である。
【0029】
本発明の一態様である発光デバイスは、キャリア輸送性の異なる複数の発光層を設けることにより、キャリアバランスを制御し、発光層におけるキャリアの再結合確率を高め、EL層を構成する機能層の劣化を防ぐことができるため、信頼性を向上させることができ、発光効率を高めることができる発光デバイスである。
【0030】
本発明の一態様では、積層された発光層113において、第1の発光層113-1に用いるホスト材料と、第2の発光層113-2に用いるホスト材料とを異なる材料で形成しても良い。また、第1の発光層113-1に用いるゲスト材料と、第2の発光層113-2に用いるゲスト材料とを異なる材料で形成しても良い。また、第1の発光層113-1および第2の発光層113-2に用いるゲスト材料およびホスト材料のいずれか一方が同じ材料を用いていても良い。また、第1の発光層113-1および第2の発光層113-2に用いるホスト材料は、1種類であっても複数種であっても良い。また、第1の発光層113-1および第2の発光層113-2に複数のホスト材料を用いる場合、これらの組み合わせは励起錯体を形成する組み合わせであっても良い。なお、第1の発光層113-1および第2の発光層113-2のキャリア輸送性の制御は、各層に用いるホスト材料で制御しても良いし、ゲスト材料で制御しても良いし、ホスト材料とゲスト材料の組み合わせで制御しても良い。
【0031】
上記のように、キャリア輸送性の異なる発光層を積層することにより、異なる発光層の積層界面で発光が得られるように制御することが可能となる。また、ゲスト材料の異なる発光層を積層することにより、これらの発光層間でのエネルギー移動を可能とし、発光効率を高める構成としてもよい。
【0032】
本発明の一態様では、積層された発光層113において、第1の発光層113-1よりも第2の発光層113-2のホール移動度が小さくなるように各発光層を形成し、再結合領域が第1の発光層113-1と第2の発光層113-2の界面付近になるように制御する構成としても良い。このような構成とすることにより、発光デバイスの発光効率を高めることができる。また、積層された発光層113において、第1の発光層よりも第2の発光層の電子移動度が大きくなるように各発光層を形成しても良い。また、これらの構成を両方組み合わせても良い。なお、ホール移動度および電子移動度等のキャリア移動度は、インピーダンス分光法で求めることができる。
【0033】
また、積層された発光層113において、第2の発光層113-2に含まれるゲスト材料の濃度を、第1の発光層113-1に含まれるゲスト材料の濃度よりも低く(例えば、第2の発光層113-2に含まれるゲスト材料の濃度が3w%以下、より好ましくは2w%以下)なるように形成し、キャリアの再結合領域を第1の発光層と第2の発光層との界面付近になるように制御する構成としても良い。このような構成とすることにより、発光デバイスの発光効率を高めることができる。これは、ゲスト材料のHOMO準位がホスト材料のHOMO準位よりも浅く、酸化されやすい(CV測定でその差が0.2eV、より好ましくは0.3eV以上大きい)場合において、ゲスト材料の濃度が低い場合はゲスト材料がホールをトラップし、ゲスト材料の濃度が高い場合は、ホールを輸送しやすくなるためである。なお、これらの違いは、抵抗の変化としてインピーダンス分光法等により確認することができる。
【0034】
また、積層された発光層113において、第1の発光層113-1よりも第2の発光層113-2のホール移動度が大きくなるように各発光層を形成し、駆動初期のキャリアの再結合領域が積層界面よりも第2の発光層113-2側になるような構成としても良い。このような構成とすることにより、初期(5%や10%輝度劣化)の信頼性を延ばすことができる。また、第1の発光層113-1よりも第2の発光層113-2の電子移動度が小さくなるように各発光層を形成してもよい。また、これらの構成を組み合わせても良い。なお、これらキャリア移動度は、インピーダンス分光法で求めることができる。
【0035】
また、積層された発光層113において、第1の発光層113-1よりも第2の発光層113-2の電気抵抗が低くなるように発光層を形成し、駆動初期のキャリアの再結合領域が積層界面よりも第2の発光層113-2側になるような構成としても良い。このような構成とすることで、駆動初期(5%や10%輝度劣化)における発光デバイスの信頼性を高めることができる。なお、上記電気抵抗は、インピーダンス分光法で求めることができる。
【0036】
また、積層された発光層113において、基板面に対する屈折率異方性が第1の発光層113-1よりも第2の発光層113-2の方が大きくなるように発光層を形成し、駆動初期のキャリアの再結合領域が積層界面よりも第2の発光層113-2側になるような構成としても良い。このような構成とすることで、駆動初期(5%や10%輝度劣化)の信頼性を高めることができる。これは、遷移双極子モーメントが基板に対して水平になることでキャリアを輸送しやすくなるためである。なお、この時の第2の発光層113-2へのゲスト材料の濃度は、2w%以上がより好ましい。また、上記のキャリア移動度は、インピーダンス分光法で求めることができる。また、基板面に対する屈折率異方性は分光エリプソで求めることができる。
【0037】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光デバイスについて説明する。
【0038】
<発光デバイスの構成例>
図2Aには、一対の電極間に発光層を含むEL層を有する発光デバイスの一例を示す。具体的には、第1の電極101と第2の電極102との間にEL層103が挟まれた構造を有する。なお、EL層103は、例えば、第1の電極101を陽極とした場合、正孔(ホール)注入層111、正孔(ホール)輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115が機能層として、順次積層された構造を有する。
【0039】
また、その他の発光デバイスの構造として、一対の電極間に電荷発生層を挟んで形成される複数のEL層を有する構成(タンデム構造)とすることにより低電圧駆動を可能とする発光デバイスや、一対の電極間に微小光共振器(マイクロキャビティ)構造を形成することにより光学特性を向上させた発光デバイス等も本発明の一態様に含めることとする。なお、電荷発生層は、第1の電極101と第2の電極102に電圧を印加したときに、隣り合う一方のEL層に電子を注入し、他方のEL層に正孔を注入する機能を有する。
【0040】
なお、上記発光デバイスの第1の電極101と第2の電極102の少なくとも一方は、透光性を有する電極(透明電極、半透過・半反射電極など)とする。透光性を有する電極が透明電極の場合、透明電極の可視光の透過率は、40%以上とする。また、半透過・半反射電極の場合、半透過・半反射電極の可視光の反射率は、20%以上80%以下、好ましくは40%以上70%以下とする。また、これらの電極は、抵抗率が1×10-2Ωcm以下とするのが好ましい。
【0041】
また、上述した本発明の一態様である発光デバイスにおいて、第1の電極101と第2の電極102の一方が、反射性を有する電極(反射電極)である場合、反射性を有する電極の可視光の反射率は、40%以上100%以下、好ましくは70%以上100%以下とする。また、この電極は、抵抗率が1×10-2Ωcm以下とするのが好ましい。
【0042】
<第1の電極および第2の電極>
第1の電極101および第2の電極102を形成する材料としては、上述した両電極の機能が満たせるのであれば、以下に示す材料を適宜組み合わせて用いることができる。例えば、金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを適宜用いることができる。具体的には、In-Sn酸化物(ITOともいう)、In-Si-Sn酸化物(ITSOともいう)、In-Zn酸化物、In-W-Zn酸化物が挙げられる。その他、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)などの金属、およびこれらを適宜組み合わせて含む合金を用いることもできる。その他、上記例示のない元素周期表の第1族または第2族に属する元素(例えば、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr))、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)などの希土類金属およびこれらを適宜組み合わせて含む合金、その他グラフェン等を用いることができる。
【0043】
なお、これらの電極の作製には、スパッタ法や真空蒸着法を用いることができる。
【0044】
<正孔注入層>
正孔注入層111は、有機アクセプタ材料およびHOMOの深い正孔輸送性材料を含む層である。有機アクセプタ材料は、HOMOの深い正孔輸送性材料に対し、電子受容性を示す物質である。また、HOMOの深い正孔輸送性材料は、そのHOMO準位が-5.7eV以上-5.4eV以下の比較的深いHOMO準位を有する物質である。このように正孔輸送性材料が比較的深いHOMO準位を有することによって、正孔輸送層112への正孔の注入が容易となる。
【0045】
有機アクセプタ材料は、電子吸引基(特にフルオロ基のようなハロゲン基やシアノ基)を有する有機化合物等を用いることができ、そのような物質の中から、上記第2の物質に対して電子受容性を示す物質を適宜選択すれば良い。このような有機化合物としては、例えば、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロキノジメタン(略称:F4-TCNQ)、クロラニル、2,3,6,7,10,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(略量:HAT-CN)、1,3,4,5,7,8-ヘキサフルオロテトラシアノ-ナフトキノジメタン(略称:F6-TCNNQ)、2-(7-ジシアノメチレン-1,3,4,5,6,8,9,10-オクタフルオロ-7H-ピレン-2-イリデン)マロノニトリル等を挙げることができる。特に、HAT-CNのように複素原子を複数有する縮合芳香環に電子吸引基が結合している化合物が、熱的に安定であり好ましい。また、電子吸引基(特にフルオロ基のようなハロゲン基やシアノ基)を有する[3]ラジアレン誘導体は、電子受容性が非常に高いため好ましく、具体的にはα,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[4-シアノ-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,6-ジクロロ-3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンアセトニトリル]などが挙げられる。
【0046】
上記のHOMOの深い正孔輸送性材料としては、正孔輸送性を有する正孔輸送性材料であることが好ましく、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格およびアントラセン骨格のいずれかを有していることが好ましい。特に、ジベンゾフラン環またはジベンゾチオフェン環を含む置換基を有する芳香族アミン、ナフタレン環を有する芳香族モノアミン、または9-フルオレニル基がアリーレン基を介してアミンの窒素に結合する芳香族モノアミンであっても良い。
【0047】
なお、上記のHOMOの深い正孔輸送性材料としては、電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質が好ましい。なお、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いることができる。なお、これらの材料が、N,N-ビス(4-ビフェニル)アミノ基を有する物質であると、長寿命な発光デバイスを作製することができるため好ましい。
【0048】
以上のようなHOMOの深い正孔輸送性材料としては、具体的には、N-(4-ビフェニル)-6,N-ジフェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BnfABP)、N,N-ビス(4-ビフェニル)-6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BBABnf)、4,4’-ビス(6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-イル-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:BnfBB1BP)、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-6-アミン(略称:BBABnf(6))、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BBABnf(8))、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[2,3-d]フラン-4-アミン(略称:BBABnf(II)(4))、N,N-ビス[4-(ジベンゾフラン-4-イル)フェニル]-4-アミノ-p-ターフェニル(略称:DBfBB1TP)、N-[4-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-N-フェニル-4-ビフェニルアミン(略称:ThBA1BP)、4-(2-ナフチル)-4’,4’’-ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNB)、4-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’,4’’-ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNBi)、4,4’-ジフェニル-4’’-(6;1’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAαNβNB)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7;1’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAαNβNB-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7-フェニル)ナフチル-2-イルトリフェニルアミン(略称:BBAPβNB-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(6;2’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBA(βN2)B)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7;2’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBA(βN2)B-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(4;2’-ビナフチル-1-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAβNαNB)、4,4’-ジフェニル-4’’-(5;2’-ビナフチル-1-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAβNαNB-02)、4-(4-ビフェニリル)-4’-(2-ナフチル)-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:TPBiAβNB)、4-(3-ビフェニリル)-4’-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:mTPBiAβNBi)、4-(4-ビフェニリル)-4’-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:TPBiAβNBi)、4-フェニル-4’-(1-ナフチル)トリフェニルアミン(略称:αNBA1BP)、4,4’-ビス(1-ナフチル)トリフェニルアミン(略称:αNBB1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-[4’-(カルバゾール-9-イル)ビフェニル-4-イル]トリフェニルアミン(略称:YGTBi1BP)、4’-[4-(3-フェニル-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]トリス(1,1’-ビフェニル-4-イル)アミン(略称:YGTBi1BP-02)、4-ジフェニル-4’-(2-ナフチル)-4’’-{9-(4-ビフェニリル)カルバゾール)}トリフェニルアミン(略称:YGTBiβNB)、N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-N-[4-(1-ナフチル)フェニル]-9,9’-スピロビ(9H-フルオレン)-2-アミン(略称:PCBNBSF)、N,N-ビス(4-ビフェニリル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:BBASF)、N,N-ビス(1,1’-ビフェニル-4-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-4-アミン(略称:BBASF(4))、N-(1,1’-ビフェニル-2-イル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ(9H-フルオレン)-4-アミン(略称:oFBiSF)、N-(4-ビフェニル)-N-(ジベンゾフラン-4-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:FrBiF)、N-[4-(1-ナフチル)フェニル]-N-[3-(6-フェニルジベンゾフラン-4-イル)フェニル]-1-ナフチルアミン(略称:mPDBfBNBN)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4-フェニル-4’-[4-(9-フェニルフルオレン-9-イル)フェニル]トリフェニルアミン(略称:BPAFLBi)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-アミン(略称:PCBASF)、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)等を挙げることができる。
【0049】
なお、正孔注入層111は、公知の様々な成膜方法を用いて形成することができるが、例えば、真空蒸着法を用いて形成することができる。
【0050】
<正孔輸送層>
正孔輸送層112は、正孔注入層111によって、第1の電極101から注入された正孔を発光層113に輸送する層である。
【0051】
正孔輸送層112は、上述した正孔輸送性材料を用いることができる。また、正孔輸送層112は、積層構造を有していても良い。なお、積層構造を有する場合、発光層側の層には、電子ブロック層としての機能を持たせても良い。
【0052】
また、正孔注入層111に用いた正孔輸送性材料のHOMO準位と、正孔輸送層112に用いた正孔輸送性材料のHOMO準位との比較において、正孔輸送層112に用いた正孔輸送性材料のHOMO準位が、正孔注入層111に用いた正孔輸送性材料のHOMO準位よりも深く、その差が0.2eV以下になるように各々材料を選択することが好ましい。なお、両方とも同じ材料であると正孔の注入がスムーズとなるため、より好ましい。
【0053】
また、正孔輸送層112が積層構造を有する場合、電子注入層111側に形成される正孔輸送層に用いる正孔輸送性材料のHOMO準位と、発光層113側に形成される正孔輸送層に用いる正孔輸送性材料のHOMO準位との比較において、後者のHOMO準位が前者のHOMO準位よりも深いほうが好ましい。さらに、その差が0.2eV以下になるように各々材料を選択するとよい。なお、正孔注入層111、および積層構造を有する正孔輸送層に用いる、これらの正孔輸送性材料のHOMO準位が上記の関係を有することにより、各層への正孔注入がスムーズに行われ、駆動電圧の上昇や発光層113における正孔の過少状態を防ぐことができる。
【0054】
なお、正孔注入層111、および積層構造を有する正孔輸送層112に用いる正孔輸送性材料は、各々正孔輸送性骨格を有することが好ましい。当該正孔輸送性骨格としては、これらの正孔輸送性材料のHOMO準位が浅くなりすぎないカルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格およびアントラセン骨格が好ましい。また、正孔注入層111、および積層構造を有する正孔輸送層112に用いる正孔輸送性材料の正孔輸送性骨格が、隣り合う層同士で共通していると、正孔の注入がスムーズになるため好ましい。特にこれらの正孔輸送性骨格としては、ジベンゾフラン骨格が好ましい。
【0055】
また、正孔注入層111、および積層構造を有する正孔輸送層112に用いる正孔輸送性材料が、隣り合う層で同一であると、陰極方向に隣り合う層への正孔の注入がよりスムーズとなるため好ましい。
【0056】
<発光層>
本発明の一態様である、発光デバイスにおいて、発光層113は、複数の発光層が積層された構造を有する。なお、複数の発光層の機能は、実施の形態1で説明した通りであり、このような機能を満たせるように下記に示す材料を用いて発光層を形成することができる。
【0057】
発光層113は、発光物質(ゲスト材料)と、発光物質を分散させるホスト材料を有する。
【0058】
なお、発光物質(ゲスト材料)としては、蛍光を発する物質(蛍光発光物質)、燐光を発する物質(燐光発光物質)、熱活性化遅延蛍光を示す熱活性化遅延蛍光(Thermally activated delayed fluorescence:TADF)材料、その他の発光物質等を用いることができる。また、ホスト材料としては、電子輸送性材料や正孔輸送性材料の他、上記TADF材料など様々なキャリア輸送材料を用いることができる。また、ホスト材料としては、正孔輸送性材料や電子輸送性材料などを用いることができる。なお、正孔輸送性材料や電子輸送性材料等の具体例としては、本明細書中に記載された材料や公知の材料を適宜、単数もしくは複数種用いることができる。
【0059】
発光層113のゲスト材料として用いることができる蛍光発光物質としては、例えば以下のようなものが挙げられる。また、これ以外の蛍光発光物質も用いることができる。
【0060】
5,6-ビス[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAP2BPy)、5,6-ビス[4’-(10-フェニル-9-アントリル)ビフェニル-4-イル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAPP2BPy)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)、N,N’-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニルスチルベン-4,4’-ジアミン(略称:YGA2S)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11-テトラ-tert-ブチルペリレン(略称:TBP)、4-(10-フェニル-9-アントリル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’’-(2-tert-ブチルアントラセン-9,10-ジイルジ-4,1-フェニレン)ビス[N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン](略称:DPABPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPPA)、N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPA)、N-[9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCABPhA)、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N-[9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N-フェニルアントラセン-2-アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9-トリフェニルアントラセン-9-アミン(略称:DPhAPhA)、クマリン545T、N,N’-ジフェニルキナクリドン、(略称:DPQd)、ルブレン、5,12-ビス(1,1’-ビフェニル-4-イル)-6,11-ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、2-(2-{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-6-メチル-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2-{2-メチル-6-[2-(2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)テトラセン-5,11-ジアミン(略称:p-mPhTD)、7,14-ジフェニル-N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)アセナフト[1,2-a]フルオランテン-3,10-ジアミン(略称:p-mPhAFD)、2-{2-イソプロピル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)、2-{2-tert-ブチル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、2-(2,6-ビス{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、2-{2,6-ビス[2-(8-メトキシ-1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)、N,N’-ジフェニル-N,N’-(1,6-ピレン-ジイル)ビス[(6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン)-8-アミン](略称:1,6BnfAPrn-03)、3,10-ビス[N-(9-フェニル-9H-カルバゾール-2-イル)-N-フェニルアミノ]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ビスベンゾフラン(略称:3,10PCA2Nbf(IV)-02)、3,10-ビス[N-(ジベンゾフラン-3-イル)-N-フェニルアミノ]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ビスベンゾフラン(略称:3,10FrA2Nbf(IV)-02)などが挙げられる。特に、1,6FLPAPrnや1,6mMemFLPAPrn、1,6BnfAPrn-03のようなピレンジアミン化合物に代表される縮合芳香族ジアミン化合物は、ホールトラップ性が高く、発光効率や信頼性に優れているため好ましい。
【0061】
また、発光層113のゲスト材料として用いることができる燐光発光物質としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0062】
トリス{2-[5-(2-メチルフェニル)-4-(2,6-ジメチルフェニル)-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル-κN2]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:[Ir(mpptz-dmp)3])、トリス(5-メチル-3,4-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz)3])、トリス[4-(3-ビフェニル)-5-イソプロピル-3-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrptz-3b)3])のような4H-トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス[3-メチル-1-(2-メチルフェニル)-5-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz1-mp)3])、トリス(1-メチル-5-フェニル-3-プロピル-1H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Prptz1-Me)3])のような1H-トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、fac-トリス[(1-2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-フェニル-1H-イミダゾール]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrpmi)3])、トリス[3-(2,6-ジメチルフェニル)-7-メチルイミダゾ[1,2-f]フェナントリジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(dmpimpt-Me)3])のようなイミダゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1-ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス{2-[3’,5’-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(III)ピコリナート(略称:[Ir(CF3ppy)2(pic)])、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)のような電子吸引基を有するフェニルピリジン誘導体を配位子とする有機金属イリジウム錯体が挙げられる。これらは青色の燐光発光を示す化合物であり、440nmから520nmに発光のピークを有する化合物である。
【0063】
また、トリス(4-メチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)3])、トリス(4-t-ブチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)3])、(アセチルアセトナト)ビス(6-メチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(6-tert-ブチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[6-(2-ノルボルニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(nbppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[5-メチル-6-(2-メチルフェニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(mpmppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(4,6-ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dppm)2(acac)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、(アセチルアセトナト)ビス(3,5-ジメチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr-Me)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(5-イソプロピル-3-メチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr-iPr)2(acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(ppy)3])、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(ppy)2(acac)])、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(bzq)2(acac)])、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(bzq)3])、トリス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(pq)3])、ビス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(pq)2(acac)])のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:[Tb(acac)3(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。これらは主に緑色の燐光発光を示す化合物であり、500nm~600nmに発光のピークを有する。なお、ピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、信頼性や発光効率にも際だって優れるため、特に好ましい。
【0064】
また、(ジイソブチリルメタナト)ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)2(dibm)])、ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)2(dpm)])、ビス[4,6-ジ(ナフタレン-1-イル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(d1npm)2(dpm)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)2(acac)])、ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)2(dpm)])、(アセチルアセトナト)ビス[2,3-ビス(4-フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Fdpq)2(acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(piq)3])、ビス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(piq)2(acac)])のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)のような白金錯体や、トリス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(DBM)3(Phen)])、トリス[1-(2-テノイル)-3,3,3-トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(TTA)3(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。これらは、赤色の燐光発光を示す化合物であり、600nmから700nmに発光のピークを有する。また、ピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、色度の良い赤色発光が得られる。
【0065】
また、以上で述べた以外にも公知の燐光発光物質を用いることができる。
【0066】
また、発光層113のゲスト材料として用いることができるTADF材料としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0067】
フラーレン及びその誘導体、アクリジン及びその誘導体、エオシン誘導体等を用いることができる。またマグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、白金(Pt)、インジウム(In)、もしくはパラジウム(Pd)等を含む金属含有ポルフィリンが挙げられる。該金属含有ポルフィリンとしては、例えば、以下の構造式に示されるプロトポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Proto IX))、メソポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Meso IX))、ヘマトポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Hemato IX))、コプロポルフィリンテトラメチルエステル-フッ化スズ錯体(SnF2(Copro III-4Me))、オクタエチルポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(OEP))、エチオポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Etio I))、オクタエチルポルフィリン-塩化白金錯体(PtCl2OEP)等も挙げられる。
【0068】
【0069】
その他にも、下記の構造式に示すように、2-(ビフェニル-4-イル)-4,6-ビス(12-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール-11-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:PIC-TRZ)、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PCCzPTzn)、2-[4-(10H-フェノキサジン-10-イル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PXZ-TRZ)、3-[4-(5-フェニル-5,10-ジヒドロフェナジン-10-イル)フェニル]-4,5-ジフェニル-1,2,4-トリアゾール(略称:PPZ-3TPT)、3-(9,9-ジメチル-9H-アクリジン-10-イル)-9H-キサンテン-9-オン(略称:ACRXTN)、ビス[4-(9,9-ジメチル-9,10-ジヒドロアクリジン)フェニル]スルホン(略称:DMAC-DPS)、10-フェニル-10H,10’H-スピロ[アクリジン-9,9’-アントラセン]-10’-オン(略称:ACRSA)、4-(9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4PCCzBfpm)、4-[4-(9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4PCCzPBfpm)、9-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9’-フェニル-2,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:mPCCzPTzn-02)等のπ電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有する複素環化合物を用いてもよい。
【0070】
【0071】
該複素環化合物は、π電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有するため、電子輸送性及び正孔輸送性が共に高く、好ましい。中でも、π電子不足型複素芳香環を有する骨格のうち、ピリジン骨格、ジアジン骨格(ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格)、およびトリアジン骨格は、安定で信頼性が良好なため好ましい。特に、ベンゾフロピリミジン骨格、ベンゾチエノピリミジン骨格、ベンゾフロピラジン骨格、ベンゾチエノピラジン骨格はアクセプタ性が高く、信頼性が良好なため好ましい。
【0072】
また、π電子過剰型複素芳香環を有する骨格の中でも、アクリジン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格、フラン骨格、チオフェン骨格、及びピロール骨格は、安定で信頼性が良好なため、当該骨格の少なくとも一を有することが好ましい。なお、フラン骨格としてはジベンゾフラン骨格が、チオフェン骨格としてはジベンゾチオフェン骨格が、それぞれ好ましい。また、ピロール骨格としては、インドール骨格、カルバゾール骨格、インドロカルバゾール骨格、ビカルバゾール骨格、3-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール骨格が特に好ましい。
【0073】
なお、π電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環とが直接結合した物質は、π電子過剰型複素芳香環の電子供与性とπ電子不足型複素芳香環の電子受容性が共に強くなり、S1準位とT1準位のエネルギー差が小さくなるため、熱活性化遅延蛍光を効率よく得られることから特に好ましい。なお、π電子不足型複素芳香環の代わりに、シアノ基のような電子吸引基が結合した芳香環を用いても良い。また、π電子過剰型骨格として、芳香族アミン骨格、フェナジン骨格等を用いることができる。また、π電子不足型骨格として、キサンテン骨格、チオキサンテンジオキサイド骨格、オキサジアゾール骨格、トリアゾール骨格、イミダゾール骨格、アントラキノン骨格、フェニルボランやボラントレン等の含ホウ素骨格、ベンゾニトリルまたはシアノベンゼン等のニトリル基またはシアノ基を有する芳香環や複素芳香環、ベンゾフェノン等のカルボニル骨格、ホスフィンオキシド骨格、スルホン骨格等を用いることができる。
【0074】
このように、π電子不足型複素芳香環およびπ電子過剰型複素芳香環の少なくとも一方の代わりにπ電子不足型骨格およびπ電子過剰型骨格を用いることができる。
【0075】
なお、TADF材料とは、S1準位とT1準位との差が小さく、逆項間交差によって三重項励起エネルギーから一重項励起エネルギーへエネルギーを変換することができる機能を有する材料である。そのため、三重項励起エネルギーをわずかな熱エネルギーによって一重項励起エネルギーにアップコンバート(逆項間交差)が可能で、一重項励起状態を効率よく生成することができる。また、三重項励起エネルギーを発光に変換することができる。
【0076】
また、2種類の物質で励起状態を形成する励起錯体(エキサイプレックス、エキシプレックスまたはExciplexともいう)は、S1準位とT1準位との差が極めて小さく、三重項励起エネルギーを一重項励起エネルギーに変換することが可能なTADF材料としての機能を有する。
【0077】
なお、T1準位の指標としては、低温(例えば77Kから10K)で観測される燐光スペクトルを用いればよい。TADF材料としては、その蛍光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをS1準位とし、燐光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをT1準位とした際に、そのS1とT1の差が0.3eV以下であることが好ましく、0.2eV以下であることがさらに好ましい。
【0078】
また、発光層113のゲスト材料として、TADF材料を用いる場合、ホスト材料のS1準位はTADF材料のS1準位より高い方が好ましい。また、ホスト材料のT1準位はTADF材料のT1準位より高いことが好ましい。
【0079】
次に、発光層113のホスト材料として用いることができる正孔輸送性材料としては、電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質が好ましく、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0080】
4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-イル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、9,9-ジメチル-N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フルオレン-2-アミン(略称:PCBAF)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-アミン(略称:PCBASF)などの芳香族アミン骨格を有する化合物や、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、3,3’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール)(略称:PCCP)などのカルバゾール骨格を有する化合物や、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-III)、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-IV)などのチオフェン骨格を有する化合物や、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P-II)、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-II)などのフラン骨格を有する化合物が挙げられる。上述した中でも、芳香族アミン骨格を有する化合物やカルバゾール骨格を有する化合物は、信頼性が良好であり、また、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与するため好ましい。また、上記正孔輸送性材料の例として挙げた有機化合物も用いることができる。
【0081】
また、発光層113のホスト材料として用いることができる電子輸送性材料としては、電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質が好ましく、例えば以下のようなものが挙げられる。その他にも、後述する電子輸送層114に用いることができる電子輸送性材料を用いることもできる。
【0082】
ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq2)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体や、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm-II)などのポリアゾール骨格を有する複素環化合物や、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq-II)、2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II)、2-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、4,6-ビス[3-(フェナントレン-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、4,6-ビス〔3-(4-ジベンゾチエニル)フェニル〕ピリミジン(略称:4,6mDBTP2Pm-II)などのジアジン骨格を有する複素環化合物や、3,5-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)、1,3,5-トリ[3-(3-ピリジル)フェニル]ベンゼン(略称:TmPyPB)などのピリジン骨格を有する複素環化合物が挙げられる。上述した中でも、ジアジン骨格を有する複素環化合物やピリジン骨格を有する複素環化合物は、信頼性が良好であり好ましい。特に、ジアジン(ピリミジンやピラジン)骨格を有する複素環化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。
【0083】
また、発光層113のホスト材料としてTADF材料を用いる場合にも、先に挙げたものを同様に用いることができる。なお、TADF材料をホスト材料として用いると、TADF材料で生成した三重項励起エネルギーが、逆項間交差によって一重項励起エネルギーに変換され、さらに発光中心物質へエネルギー移動することで、発光素子の発光効率を高めることができる。このとき、TADF材料がエネルギードナーとして機能し、発光中心物質がエネルギーアクセプターとして機能する。従って、ホスト材料としてTADF材料を用いることは、ゲスト材料として蛍光発光物質を用いる場合に非常に有効である。また、このとき、高い発光効率を得るためには、TADF材料のS1準位は、蛍光発光物質のS1準位より高いことが好ましい。また、TADF材料のT1準位は、蛍光発光物質のS1準位より高いことが好ましい。したがって、TADF材料のT1準位は、蛍光発光物質のT1準位より高いことが好ましい。
【0084】
また、蛍光発光物質の最も低エネルギー側の吸収帯の波長と重なるような発光を呈するTADF材料を用いることが好ましい。そうすることで、TADF材料から蛍光発光物質への励起エネルギーの移動がスムーズとなり、効率よく発光が得られるため、好ましい。
【0085】
また、効率よく三重項励起エネルギーから逆項間交差によって一重項励起エネルギーが生成されるためには、TADF材料でキャリア再結合が生じることが好ましい。また、TADF材料で生成した三重項励起エネルギーが蛍光発光物質の三重項励起エネルギーに移動しないことが好ましい。そのためには、蛍光発光物質は、蛍光発光物質が有する発光団(発光の原因となる骨格)の周囲に保護基を有すると好ましい。該保護基としては、π結合を有さない置換基が好ましく、飽和炭化水素が好ましく、具体的には炭素数3以上10以下のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上10以下のトリアルキルシリル基が挙げられ、保護基が複数あるとさらに好ましい。π結合を有さない置換基は、キャリアを輸送する機能に乏しいため、キャリア輸送やキャリア再結合に影響をほとんど与えずに、TADF材料と蛍光発光物質の発光団との距離を遠ざけることができる。ここで、発光団とは、蛍光発光物質において発光の原因となる原子団(骨格)を指す。発光団は、π結合を有する骨格が好ましく、芳香環を含むことが好ましく、縮合芳香環または縮合複素芳香環を有すると好ましい。縮合芳香環または縮合複素芳香環としては、フェナントレン骨格、スチルベン骨格、アクリドン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格等が挙げられる。特にナフタレン骨格、アントラセン骨格、フルオレン骨格、クリセン骨格、トリフェニレン骨格、テトラセン骨格、ピレン骨格、ペリレン骨格、クマリン骨格、キナクリドン骨格、ナフトビスベンゾフラン骨格を有する蛍光発光物質は蛍光量子収率が高いため好ましい。
【0086】
また、発光層113のゲスト材料として蛍光発光物質を用いる場合、ホスト材料としては、アントラセン骨格を有する材料が好適である。アントラセン骨格を有する物質を用いると、発光効率、耐久性共に良好な発光層を実現することが可能である。なお、アントラセン骨格を有する物質としては、ジフェニルアントラセン骨格、特に9,10-ジフェニルアントラセン骨格を有する物質が化学的に安定であるため好ましい。
【0087】
また、ホスト材料がカルバゾール骨格を有する場合、正孔の注入・輸送性が高まるため好ましいが、カルバゾールにベンゼン環がさらに縮合したベンゾカルバゾール骨格を含む場合、カルバゾールよりもHOMOが0.1eV程度浅くなり、正孔が入りやすくなるためより好ましい。特に、ホスト材料がジベンゾカルバゾール骨格を含む場合、カルバゾールよりもHOMOが0.1eV程度浅くなり、正孔が入りやすくなる上に、正孔輸送性にも優れ、耐熱性も高くなるため好適である。
【0088】
したがって、アントラセン骨格である、9,10-ジフェニルアントラセン骨格、およびカルバゾール骨格(あるいはベンゾカルバゾール骨格やジベンゾカルバゾール骨格)を両方有する物質が、ホスト材料としてより好ましい。なお、上記の正孔注入・輸送性を向上させる観点から、カルバゾール骨格に換えて、ベンゾフルオレン骨格やジベンゾフルオレン骨格を用いてもよい。このような物質の例としては、9-フェニル-3-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:PCzPA)、3-[4-(1-ナフチル)-フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCPN)、9-[4-(10-フェニル-9-アントラセニル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)、7-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:cgDBCzPA)、6-[3-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン(略称:2mBnfPPA)、9-フェニル-10-{4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)ビフェニル-4’-イル}アントラセン(略称:FLPPA)、9-(1-ナフチル)-10-[4-(2-ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:BH513)等が挙げられる。特に、CzPA、cgDBCzPA、2mBnfPPA、PCzPAは非常に良好な特性を示すため、好ましい。
【0089】
なお、ホスト材料は複数種の物質を混合した材料であっても良く、混合したホスト材料を用いる場合は、電子輸送性材料と、正孔輸送性材料とを混合することが好ましい。電子輸送性材料と、正孔輸送性材料を混合することによって、発光層113の輸送性を容易に調整することができ、再結合領域の制御も簡便に行うことができる。正孔輸送性材料と電子輸送性材料の含有量の重量比は、正孔輸送性材料:電子輸送性材料=1:19~19:1とすればよい。
【0090】
なお、上記のように、ホスト材料が複数種の物質を混合してなる場合、その一部に燐光発光物質を用いることができる。燐光発光物質は、発光中心材料として蛍光発光物質を用いる際に蛍光発光物質へ励起エネルギーを供与するエネルギードナーとして用いることができる。
【0091】
また、上記のように混合された材料同士が、励起錯体を形成しても良い。この場合の材料の組み合わせとして、発光物質の最も低エネルギー側の吸収帯の波長と重なるような発光を呈する励起錯体を形成するような組み合わせを選択することで、エネルギー移動がスムーズとなり、効率よく発光を得ることができる。また、このような構成を用いることで駆動電圧を低下させることができるため好ましい。
【0092】
なお、励起錯体を形成する材料の少なくとも一方は、燐光発光物質であってもよい。この場合、逆項間交差により三重項励起エネルギーを効率良く一重項励起エネルギーへと変換することができる。
【0093】
なお、励起錯体を形成する材料の組み合わせとしては、正孔輸送性材料のHOMO準位が電子輸送性材料のHOMO準位以上であると好ましい。また、正孔輸送性材料のLUMO準位が電子輸送性材料のLUMO準位以上であると好ましい。なお、材料のLUMO準位およびHOMO準位は、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定によって測定される材料の電気化学特性(還元電位および酸化電位)から導出することができる。
【0094】
なお、励起錯体の形成は、例えば正孔輸送性材料の発光スペクトル、電子輸送性材料の発光スペクトル、およびこれら材料を混合した混合膜の発光スペクトルを比較し、混合膜の発光スペクトルが、各材料の発光スペクトルよりも長波長シフトする(あるいは長波長側に新たなピークを持つ)現象を観測することにより確認することができる。あるいは、正孔輸送性材料の過渡フォトルミネッセンス(PL)、電子輸送性材料の過渡PL、及びこれら材料を混合した混合膜の過渡PLを比較し、混合膜の過渡PL寿命が、各材料の過渡PL寿命よりも長寿命成分を有する、あるいは遅延成分の割合が大きくなるなどの過渡応答の違いを観測することにより、確認することができる。また、上述の過渡PLは過渡エレクトロルミネッセンス(EL)と読み替えても構わない。すなわち、正孔輸送性材料の過渡EL、電子輸送性を有する材料の過渡EL及びこれらの混合膜の過渡ELを比較し、過渡応答の違いを観測することによっても、励起錯体の形成を確認することができる。
【0095】
<電子輸送層>
電子輸送層114は、第2の電極102から注入された電子を発光層113に輸送する層であり、発光層113に接して設けられる。なお、電子輸送層114は、HOMO準位が-6.0eV以上の電子輸送性材料、およびアルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機金属錯体を有する。なお、HOMO準位が-6.0eV以上の電子輸送性材料としては、電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が、1×10-7cm2/Vs以上5×10-5cm2/Vs以下であると好ましいが、1×10-7cm2/Vs以上1×10-5cm2/Vs以下であるとより好ましい。
【0096】
なお、HOMO準位が-6.0eV以上の電子輸送性材料としては、アントラセン骨格を有することが好ましく、アントラセン骨格と複素環骨格を含むことがさらに好ましい。また、当該複素環骨格としては、含窒素5員環骨格が好ましい。含窒素5員環骨格としては、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環のように2つの複素原子を環に含む含窒素5員環骨格を有することが特に好ましい。その他、上記ホスト材料に用いることが可能な電子輸送性材料の一部、または上記蛍光発光物質に組み合わせてホスト材料として用いることが可能な材料として挙げたものを電子輸送層114に用いることができる。
【0097】
また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機金属錯体としては、リチウムの有機錯体が好ましく、特に、8-ヒドロキシキノリナト-リチウム(略称:Liq)が好ましい。
【0098】
また、電子輸送層114に用いる、HOMO準位が-6.0eV以上の電子輸送性材料の電子移動度(電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度)は、発光層113に用いるホスト材料の電子移動度よりも小さいことが好ましい。電子輸送層における電子の輸送性を落とすことにより発光層への電子の注入量を制御することができ、発光層が電子過多の状態になることを防ぐことができる。
【0099】
<電子注入層>
電子注入層115は、陰極102からの電子の注入効率を高めるための層であり、陰極102材料の仕事関数の値と、電子注入層115に用いる材料のLUMO準位の値とを比較した際、その差が小さい(0.5eV以下)材料を用いることが好ましい。従って、電子注入層115には、リチウム、セシウム、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)、8-(ヒドロキシキノリナト)リチウム(略称:Liq)、2-(2-ピリジル)フェノラトリチウム(略称:LiPP)、2-(2-ピリジル)-3-ピリジノラトリチウム(略称:LiPPy)、4-フェニル-2-(2-ピリジル)フェノラトリチウム(略称:LiPPP)リチウム酸化物(LiOx)、炭酸セシウム等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはこれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウム(ErF3)のような希土類金属化合物を用いることができる。
【0100】
また、
図2Bに示す発光デバイスのように、2つのEL層(103a、103b)の間に電荷発生層104を設けることにより、複数のEL層が一対の電極間に積層された構造(タンデム構造ともいう)とすることもできる。なお、本実施の形態において
図2Aで説明する、正孔注入層(111)、正孔輸送層(112)、発光層(113)、電子輸送層(114)、電子注入層(115)のそれぞれは、
図2Bで説明する、正孔注入層(111a、111b)、正孔輸送層(112a、112b)、発光層(113a、113b)、電子輸送層(114a、114b)、電子注入層(115a、115b)のそれぞれと、機能や用いる材料は共通である。
【0101】
<電荷発生層>
なお、
図2Bの発光デバイスにおける電荷発生層104は、第1の電極(陽極)101と第2の電極(陰極)102との間に電圧を印加したときに、陽極である第1の電極101側のEL層103aに電子を注入し、陰極である第2の電極102側のEL層103bに正孔を注入する機能を有する。なお、電荷発生層104は、正孔輸送性材料に電子受容体(アクセプタ)が添加された構成(P型層)であっても、電子輸送性材料に電子供与体(ドナー)が添加された構成(N型層)であってもよい。また、これらの両方の構成が積層されていても良い。また、上記P型層と、後述する電子リレー層および電子注入バッファ層のいずれか一又は両方を組み合わせて形成されていても良い。なお、上述した材料を用いて電荷発生層104を形成することにより、EL層が積層された場合における駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0102】
電荷発生層104において、正孔輸送性材料に電子受容体が添加された構成(P型層)とする場合、正孔輸送性材料としては、本実施の形態で示した材料を用いることができる。また、電子受容体としては、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロキノジメタン(略称:F4-TCNQ)、クロラニル等を挙げることができる。また元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムなどが挙げられる。
【0103】
また、電荷発生層104において、電子輸送性材料に電子供与体が添加された構成(N型層)とする場合、電子輸送性材料としては、本実施の形態で示した材料を用いることができる。また、電子供与体としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属または希土類金属または元素周期表における第2、第13族に属する金属およびその酸化物、炭酸塩を用いることができる。具体的には、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、イッテルビウム(Yb)、インジウム(In)、酸化リチウム、炭酸セシウムなどを用いることが好ましい。また、テトラチアナフタセンのような有機化合物を電子供与体として用いてもよい。
【0104】
上記で、P型層との組み合わせが好ましいとして示した電子リレー層は、電子注入バッファ層とP型層との間に設けることで、電子注入バッファ層とP型層との相互作用を防いで電子をスムーズに受け渡す機能を有する。なお、電子リレー層は、少なくとも電子輸送性材料を含み、電子リレー層に含まれる電子輸送性材料のLUMO準位は、P型層における電子受容性物質のLUMO準位と、電子注入バッファ層に含まれる物質のLUMO準位との間であることが好ましい。電子リレー層に用いられる電子輸送性材料におけるLUMO準位の具体的なエネルギー準位は-5.0eV以上、好ましくは-5.0eV以上-3.0eV以下とするとよい。なお、電子リレー層に用いられる電子輸送性材料としてはフタロシアニン系の材料又は金属-酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体を用いることが好ましい。
【0105】
電子注入バッファ層には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))等の電子注入性の高い物質を用いることが可能である。
【0106】
また、電子注入バッファ層が、電子輸送性材料と電子供与性物質を含んで形成される場合には、電子供与性物質として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセン等の有機化合物を用いることもできる。なお、電子輸送性材料としては、先に説明した電子輸送層を構成する材料と同様の材料を用いて形成することができる。
【0107】
なお、
図2Bでは、EL層103が2層積層された構成を示したが、異なるEL層の間に電荷発生層を設けることにより3層以上のEL層の積層構造としてもよい。
【0108】
また、上記の電荷発生層は、上述した電子注入層の代わりに用いることもできる。なお、この場合には、陽極側から電子注入バッファ層、電子リレー層、P型層の順に積層されることが好ましい。
【0109】
<基板>
本実施の形態で示した発光デバイスは、様々な基板上に形成することができる。なお、基板の種類は、特定のものに限定されることはない。基板の一例としては、半導体基板(例えば単結晶基板又はシリコン基板)、SOI基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、金属基板、ステンレス・スチル基板、ステンレス・スチル・ホイルを有する基板、タングステン基板、タングステン・ホイルを有する基板、可撓性基板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含む紙、又は基材フィルムなどが挙げられる。
【0110】
なお、ガラス基板の一例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、又はソーダライムガラスなどが挙げられる。また、可撓性基板、貼り合わせフィルム、基材フィルムなどの一例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)に代表されるプラスチック、アクリル樹脂等の合成樹脂、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、又はポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、アラミド樹脂、エポキシ樹脂、無機蒸着フィルム、又は紙類などが挙げられる。
【0111】
なお、本実施の形態で示す発光デバイスの作製には、蒸着法などの真空プロセスや、スピンコート法やインクジェット法などの溶液プロセスを用いることができる。蒸着法を用いる場合には、スパッタ法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、分子線蒸着法、真空蒸着法などの物理蒸着法(PVD法)や、化学蒸着法(CVD法)等を用いることができる。特に発光デバイスのEL層に含まれる機能層(正孔注入層(111、111a、111b)、正孔輸送層(112、112a、112b)、発光層(113、113a、113b、113c)、電子輸送層(114、114a、114b)、電子注入層(115、115a、115b))、および電荷発生層(104、104a、104b)については、蒸着法(真空蒸着法等)、塗布法(ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、スピンコート法、スプレーコート法等)、印刷法(インクジェット法、スクリーン(孔版印刷)法、オフセット(平版印刷)法、フレキソ(凸版印刷)法、グラビア法、マイクロコンタクト法、ナノインプリント法等)などの方法により形成することができる。
【0112】
なお、本実施の形態で示す発光デバイスのEL層(103、103a、103b)を構成する各機能層(正孔注入層(111、111a、111b)、正孔輸送層(112、112a、112b)、発光層(113、113a、113b、113c)、電子輸送層(114、114a、114b)、電子注入層(115、115a、115b))や電荷発生層(104、104a、104b)は、上述した材料に限られることはなく、それ以外の材料であっても各層の機能を満たせるものであれば組み合わせて用いることができる。一例としては、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)、中分子化合物(低分子と高分子の中間領域の化合物:分子量400乃至4000)、無機化合物(量子ドット材料等)等を用いることができる。なお、量子ドット材料としては、コロイド状量子ドット材料、合金型量子ドット材料、コア・シェル型量子ドット材料、コア型量子ドット材料などを用いることができる。
【0113】
以上のような構成を有する本発明の一態様の発光装置に用いられる発光デバイスは、長寿命な発光デバイスとすることが可能である。
【0114】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができるものとする。
【0115】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光装置について説明する。なお、
図3Aに示す発光装置は、第1の基板201上のトランジスタ(FET)202と発光デバイス(203R、203G、203B、203W)が電気的に接続されてなるアクティブマトリクス型の発光装置であり、複数の発光デバイス(203R、203G、203B、203W)は、共通のEL層204を有し、また、各発光デバイスの発光色に応じて、各発光デバイスの電極間の光学距離が調整されたマイクロキャビティ構造を有する。また、EL層204から得られた発光が第2の基板205に形成されたカラーフィルタ(206R、206G、206B)を介して射出されるトップエミッション型の発光装置である。
【0116】
図3Aに示す発光装置において、第1の電極207は、反射電極として機能するように形成する。また、第2の電極208は、光(可視光または近赤外光)に対する透過性および反射性の両機能を有する、半透過・半反射電極として機能するように形成する。なお、第1の電極207および第2の電極208を形成する電極材料としては、他の実施形態の記載を参照し、適宜用いることができる。
【0117】
また、
図3Aにおいて、例えば、発光デバイス203Rを赤色発光デバイス、発光デバイス203Gを緑色発光デバイス、発光デバイス203Bを青色発光デバイス、発光デバイス203Wを白色発光デバイスとする場合、
図3Bに示すように発光デバイス203Rは、第1の電極207と第2の電極208との間が光学距離200Rとなるように調整し、発光デバイス203Gは、第1の電極207と第2の電極208との間が光学距離200Gとなるように調整し、発光デバイス203Bは、第1の電極207と第2の電極208との間が光学距離200Bとなるように調整する。なお、
図3Bに示すように、発光デバイス203Rにおいて導電層210Rを第1の電極207に積層し、発光デバイス203Gにおいて導電層210Gを積層することにより、光学調整を行うことができる。
【0118】
第2の基板205には、カラーフィルタ(206R、206G、206B)が形成されている。なお、カラーフィルタは、可視光のうち特定の波長域を通過させ、特定の波長域を阻止するフィルタである。従って、
図3Aに示すように、発光デバイス203Rと重なる位置に赤の波長域のみを通過させるカラーフィルタ206Rを設けることにより、発光デバイス203Rから赤色発光を得ることができる。また、発光デバイス203Gと重なる位置に緑の波長域のみを通過させるカラーフィルタ206Gを設けることにより、発光デバイス203Gから緑色発光を得ることができる。また、発光デバイス203Bと重なる位置に青の波長域のみを通過させるカラーフィルタ206Bを設けることにより、発光デバイス203Bから青色発光を得ることができる。但し、発光デバイス203Wは、カラーフィルタを設けることなく白色発光を得ることができる。なお、1種のカラーフィルタの端部には、黒色層(ブラックマトリックス)209が設けられていてもよい。さらに、カラーフィルタ(206R、206G、206B)や黒色層209は、透明な材料を用いたオーバーコート層で覆われていても良い。
【0119】
図3Aでは、第2の基板205側に発光を取り出す構造(トップエミッション型)の発光装置を示したが、
図3Cに示すようにFET202が形成されている第1の基板201側に光を取り出す構造(ボトムエミッション型)の発光装置としても良い。なお、ボトムエミッション型の発光装置の場合には、第1の電極207を半透過・半反射電極として機能するように形成し、第2の電極208を反射電極として機能するように形成する。また、第1の基板201は、少なくとも透光性の基板を用いる。また、カラーフィルタ(206R’、206G’、206B’)は、
図3Cに示すように発光デバイス(203R、203G、203B)よりも第1の基板201側に設ければよい。
【0120】
また、
図3Aにおいて、発光デバイスが、赤色発光デバイス、緑色発光デバイス、青色発光デバイス、白色発光デバイスの場合について示したが、本発明の一態様である発光デバイスはその構成に限られることはなく、黄色の発光デバイスや橙色の発光デバイスを有する構成であっても良い。なお、これらの発光デバイスを作製するためにEL層(発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層など)に用いる材料としては、他の実施形態の記載を参照し、適宜用いればよい。なお、その場合には、発光デバイスの発光色に応じてカラーフィルタを適宜選択する必要がある。
【0121】
以上のような構成とすることにより、複数の発光色を呈する発光デバイスを備えた発光装置を得ることができる。
【0122】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができるものとする。
【0123】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光装置について説明する。
【0124】
本発明の一態様である発光デバイスのデバイス構成を適用することで、アクティブマトリクス型の発光装置やパッシブマトリクス型の発光装置を作製することができる。なお、アクティブマトリクス型の発光装置は、発光デバイスとトランジスタ(FET)とを組み合わせた構成を有する。従って、パッシブマトリクス型の発光装置、アクティブマトリクス型の発光装置は、いずれも本発明の一態様に含まれる。なお、本実施の形態に示す発光装置には、他の実施形態で説明した発光デバイスを適用することが可能である。
【0125】
本実施の形態では、アクティブマトリクス型の発光装置について
図4を用いて説明する。
【0126】
なお、
図4Aは発光装置を示す上面図であり、
図4Bは
図4Aを鎖線A-A’で切断した断面図である。アクティブマトリクス型の発光装置は、第1の基板301上に設けられた画素部302、駆動回路部(ソース線駆動回路)303と、駆動回路部(ゲート線駆動回路)(304a、304b)を有する。画素部302および駆動回路部(303、304a、304b)は、シール材305によって、第1の基板301と第2の基板306との間に封止される。
【0127】
また、第1の基板301上には、引き回し配線307が設けられる。引き回し配線307は、外部入力端子であるFPC308と電気的に接続される。なお、FPC308は、駆動回路部(303、304a、304b)に外部からの信号(例えば、ビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等)や電位を伝達する。また、FPC308にはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。なお、これらFPCやPWBが取り付けられた状態は、発光装置に含まれる。
【0128】
【0129】
画素部302は、FET(スイッチング用FET)311、FET(電流制御用FET)312、およびFET312と電気的に接続された第1の電極313を有する複数の画素により形成される。なお、各画素が有するFETの数は、特に限定されることはなく、必要に応じて適宜設けることができる。
【0130】
FET309、310、311、312は、特に限定されることはなく、例えば、スタガ型や逆スタガ型などのトランジスタを適用することができる。また、トップゲート型やボトムゲート型などのトランジスタ構造であってもよい。
【0131】
なお、これらのFET309、310、311、312に用いることのできる半導体の結晶性については特に限定されず、非晶質半導体、結晶性を有する半導体(微結晶半導体、多結晶半導体、単結晶半導体、又は一部に結晶領域を有する半導体)のいずれを用いてもよい。なお、結晶性を有する半導体を用いることで、トランジスタ特性の劣化を抑制することができるため好ましい。
【0132】
また、これらの半導体としては、例えば、第14族の元素、化合物半導体、酸化物半導体、有機半導体などを用いることができる。代表的には、シリコンを含む半導体、ガリウムヒ素を含む半導体、インジウムを含む酸化物半導体などを適用することができる。
【0133】
駆動回路部303は、FET309とFET310とを有する。なお、駆動回路部303は、単極性(N型またはP型のいずれか一方のみ)のトランジスタを含む回路で形成されても良いし、N型のトランジスタとP型のトランジスタを含むCMOS回路で形成されても良い。また、外部に駆動回路を有する構成としても良い。
【0134】
第1の電極313の端部は、絶縁物314により覆われている。なお、絶縁物314には、ネガ型の感光性樹脂や、ポジ型の感光性樹脂(アクリル樹脂)などの有機化合物や、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン等の無機化合物を用いることができる。絶縁物314の上端部または下端部には、曲率を有する曲面を有するのが好ましい。これにより、絶縁物314の上層に形成される膜の被覆性を良好なものとすることができる。
【0135】
第1の電極313上には、EL層315及び第2の電極316が積層形成される。EL層315は、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層等を有する。
【0136】
なお、本実施の形態で示す発光デバイス317の構成は、他の実施の形態で説明した構成や材料を適用することができる。なお、ここでは図示しないが、第2の電極316は外部入力端子であるFPC308に電気的に接続されている。
【0137】
また、
図4Bに示す断面図では発光デバイス317を1つのみ図示しているが、画素部302において、複数の発光デバイスがマトリクス状に配置されているものとする。画素部302には、3種類(R、G、B)の発光が得られる発光デバイスをそれぞれ選択的に形成し、フルカラー表示可能な発光装置を形成することができる。また、3種類(R、G、B)の発光が得られる発光デバイスの他に、例えば、ホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)等の発光が得られる発光デバイスを形成してもよい。例えば、3種類(R、G、B)の発光が得られる発光デバイスに上述の数種類の発光が得られる発光デバイスを追加することにより、色純度の向上、消費電力の低減等の効果が得ることができる。また、カラーフィルタと組み合わせることによってフルカラー表示可能な発光装置としてもよい。なお、カラーフィルタの種類としては、赤(R)、緑(G)、青(B)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)等を用いることができる。
【0138】
第1の基板301上のFET(309、310、311、312)や、発光デバイス317は、第2の基板306と第1の基板301とをシール材305により貼り合わせることにより、第1の基板301、第2の基板306、およびシール材305で囲まれた空間318に備えられた構造を有する。なお、空間318には、不活性気体(窒素やアルゴン等)や有機物(シール材305を含む)で充填されていてもよい。
【0139】
シール材305には、エポキシ樹脂やガラスフリットを用いることができる。なお、シール材305には、できるだけ水分や酸素を透過しない材料を用いることが好ましい。また、第2の基板306は、第1の基板301に用いることができるものを同様に用いることができる。従って、他の実施形態で説明した様々な基板を適宜用いることができるものとする。基板としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiber-Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル樹脂等からなるプラスチック基板を用いることができる。シール材としてガラスフリットを用いる場合には、接着性の観点から第1の基板301及び第2の基板306はガラス基板であることが好ましい。
【0140】
以上のようにして、アクティブマトリクス型の発光装置を得ることができる。
【0141】
また、アクティブマトリクス型の発光装置を可撓性基板に形成する場合、可撓性基板上にFETと発光デバイスとを直接形成しても良いが、剥離層を有する別の基板にFETと発光デバイスを形成した後、熱、力、レーザ照射などを与えることによりFETと発光デバイスを剥離層で剥離し、さらに可撓性基板に転載して作製しても良い。なお、剥離層としては、例えば、タングステン膜と酸化シリコン膜との無機膜の積層や、ポリイミド等の有機樹脂膜等を用いることができる。また可撓性基板としては、トランジスタを形成することが可能な基板に加え、紙基板、セロファン基板、アラミドフィルム基板、ポリイミドフィルム基板、布基板(天然繊維(絹、綿、麻)、合成繊維(ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル)若しくは再生繊維(アセテート、キュプラ、レーヨン、再生ポリエステル)などを含む)、皮革基板、又はゴム基板などが挙げられる。これらの基板を用いることにより、耐久性や耐熱性に優れ、軽量化および薄型化を図ることができる。
【0142】
また、アクティブマトリクス型の発光装置が有する発光デバイスの駆動は、発光デバイスをパルス状(例えば、kHz、MHz等の周波数を用いる)に発光させ、表示に用いる構成としても良い。上記有機化合物を用いて形成される発光デバイスは、優れた周波数特性を備えるため、発光デバイスを駆動する時間を短縮し、消費電力を低減することができる。また、駆動時間の短縮に伴い発熱が抑制されるため、発光デバイスの劣化を軽減することも可能である。
【0143】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成を適宜組み合わせて用いることができる。
【0144】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光デバイス、本発明の一態様である発光デバイスを有する発光装置を適用して完成させた様々な電子機器や自動車の一例について、説明する。なお、発光装置は、本実施の形態で説明する電子機器において、主に表示部に適用することができる。
【0145】
図5A乃至
図5Eに示す電子機器は、筐体7000、表示部7001、スピーカ7003、LEDランプ7004、操作キー7005(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端子7006、センサ7007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい、又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン7008、等を有することができる。
【0146】
図5Aはモバイルコンピュータであり、上述したものの他に、スイッチ7009、赤外線ポート7010、等を有することができる。
【0147】
図5Bは記録媒体を備えた携帯型の画像再生装置(たとえば、DVD再生装置)であり、上述したものの他に、第2表示部7002、記録媒体読込部7011、等を有することができる。
【0148】
図5Cはテレビ受像機能付きデジタルカメラであり、上述したものの他に、アンテナ7014、シャッターボタン7015、受像部7016、等を有することができる。
【0149】
図5Dは携帯情報端末である。携帯情報端末は、表示部7001の3面以上に情報を表示する機能を有する。ここでは、情報7052、情報7053、情報7054がそれぞれ異なる面に表示されている例を示す。例えば使用者は、洋服の胸ポケットに携帯情報端末を収納した状態で、携帯情報端末の上方から観察できる位置に表示された情報7053を確認することもできる。使用者は、携帯情報端末をポケットから取り出すことなく表示を確認し、例えば電話を受けるか否かを判断できる。
【0150】
図5Eは携帯情報端末(スマートフォンを含む)であり、筐体7000に、表示部7001、操作キー7005、等を有することができる。なお、携帯情報端末は、スピーカ7003、接続端子7006、センサ7007等を設けてもよい。また、携帯情報端末は、文字や画像情報をその複数の面に表示することができる。ここでは3つのアイコン7050を表示した例を示している。また、破線の矩形で示す情報7051を表示部7001の他の面に表示することもできる。情報7051の一例としては、電子メール、SNS、電話などの着信の通知、電子メールやSNSなどの題名、送信者名、日時、時刻、バッテリーの残量、アンテナ受信の強度などがある。または、情報7051が表示されている位置にはアイコン7050などを表示してもよい。
【0151】
図5Fは、大型のテレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)であり、筐体7000、表示部7001、等を有することができる。また、ここでは、スタンド7018により筐体7000を支持した構成を示している。また、テレビジョン装置の操作は、別体のリモコン操作機7111、等により行うことができる。なお、表示部7001にタッチセンサを備えていてもよく、指等で表示部7001に触れることで操作してもよい。リモコン操作機7111は、当該リモコン操作機7111から出力する情報を表示する表示部を有していてもよい。リモコン操作機7111が備える操作キーまたはタッチパネルにより、チャンネル及び音量の操作を行うことができ、表示部7001に表示される画像を操作することができる。
【0152】
図5A乃至
図5Fに示す電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示する機能、様々なソフトウエア(プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々なコンピュータネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信又は受信を行う機能、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して表示部に表示する機能、等を有することができる。さらに、複数の表示部を有する電子機器においては、一つの表示部を主として画像情報を表示し、別の一つの表示部を主として文字情報を表示する機能、または、複数の表示部に視差を考慮した画像を表示することで立体的な画像を表示する機能、等を有することができる。さらに、受像部を有する電子機器においては、静止画を撮影する機能、動画を撮影する機能、撮影した画像を自動または手動で補正する機能、撮影した画像を記録媒体(外部又はカメラに内蔵)に保存する機能、撮影した画像を表示部に表示する機能、等を有することができる。なお、
図5A乃至
図5Fに示す電子機器が有することのできる機能はこれらに限定されず、様々な機能を有することができる。
【0153】
図5Gは、腕時計型の携帯情報端末であり、例えばスマートウォッチとして用いることができる。この腕時計型の携帯情報端末は、筐体7000、表示部7001、操作用ボタン7022、7023、接続端子7024、バンド7025、マイクロフォン7026、センサ7029、スピーカ7030等を有している。表示部7001は、表示面が湾曲しており、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、この携帯情報端末は、例えば無線通信可能なヘッドセットとの相互通信によりハンズフリーでの通話が可能である。なお、接続端子7024により、他の情報端末と相互にデータ伝送を行うことや、充電を行うこともできる。充電動作は無線給電により行うこともできる。
【0154】
ベゼル部分を兼ねる筐体7000に搭載された表示部7001は、非矩形状の表示領域を有している。表示部7001は、時刻を表すアイコン、その他のアイコン等を表示することができる。また、表示部7001は、タッチセンサ(入力装置)を搭載したタッチパネル(入出力装置)であってもよい。
【0155】
なお、
図5Gに示すスマートウォッチは、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示する機能、様々なソフトウエア(プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々なコンピュータネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信又は受信を行う機能、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して表示部に表示する機能、等を有することができる。
【0156】
また、筐体7000の内部に、スピーカ、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン等を有することができる。
【0157】
なお、本発明の一態様である発光装置は、本実施の形態に示す電子機器の各表示部に用いることができ、長寿命な電子機器を実現できる。
【0158】
また、発光装置を適用した電子機器として、
図6A乃至
図6Cに示すような折りたたみ可能な携帯情報端末が挙げられる。
図6Aには、展開した状態の携帯情報端末9310を示す。また、
図6Bには、展開した状態又は折りたたんだ状態の一方から他方に変化する途中の状態の携帯情報端末9310を示す。さらに、
図6Cには、折りたたんだ状態の携帯情報端末9310を示す。携帯情報端末9310は、折りたたんだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では、継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。
【0159】
表示部9311はヒンジ9313によって連結された3つの筐体9315に支持されている。なお、表示部9311は、タッチセンサ(入力装置)を搭載したタッチパネル(入出力装置)であってもよい。また、表示部9311は、ヒンジ9313を介して2つの筐体9315間を屈曲させることにより、携帯情報端末9310を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させることができる。なお、本発明の一態様の発光装置は、表示部9311に用いることができる。また、長寿命な電子機器を実現できる。表示部9311における表示領域9312は折りたたんだ状態の携帯情報端末9310の側面に位置する表示領域である。表示領域9312には、情報アイコンや使用頻度の高いアプリやプログラムのショートカットなどを表示させることができ、情報の確認やアプリなどの起動をスムーズに行うことができる。
【0160】
また、発光装置を適用した自動車について、
図7A、
図7Bに示す。すなわち、発光装置を、自動車と一体にして設けることができる。具体的には、
図7Aに示す自動車の外側のライト5101(車体後部も含む)、タイヤのホイール5102、ドア5103の一部または全体などに適用することができる。また、
図7Bに示す自動車の内側の表示部5104、ハンドル5105、シフトレバー5106、座席シート5107、インナーリアビューミラー5108、フロントガラス5109等に適用することができる。その他のガラス窓の一部に適用してもよい。
【0161】
以上のようにして、本発明の一態様である発光装置を適用した電子機器や自動車を得ることができる。なお、その場合には、長寿命な電子機器を実現できる。また、適用できる電子機器や自動車は、本実施の形態に示したものに限らず、あらゆる分野において適用することが可能である。
【0162】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0163】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光装置、またはその一部である発光デバイスを適用して作製される照明装置の構成について
図8を用いて説明する。
【0164】
図8A、
図8Bは、照明装置の断面図の一例を示す。なお、
図8Aは基板側に光を取り出すボトムエミッション型の照明装置であり、
図8Bは、封止基板側に光を取り出すトップエミッション型の照明装置である。
【0165】
図8Aに示す照明装置4000は、基板4001上に発光デバイス4002を有する。また、基板4001の外側に凹凸を有する基板4003を有する。発光デバイス4002は、第1の電極4004と、EL層4005と、第2の電極4006を有する。
【0166】
第1の電極4004は、電極4007と電気的に接続され、第2の電極4006は電極4008と電気的に接続される。また、第1の電極4004と電気的に接続される補助配線4009を設けてもよい。なお、補助配線4009上には、絶縁層4010が形成されている。
【0167】
また、基板4001と封止基板4011は、シール材4012で接着されている。また、封止基板4011と発光デバイス4002の間には、乾燥剤4013が設けられていることが好ましい。なお、基板4003は、
図8Aのような凹凸を有するため、発光デバイス4002で生じた光の取り出し効率を向上させることができる。
【0168】
図8Bの照明装置4200は、基板4201上に発光デバイス4202を有する。発光デバイス4202は第1の電極4204と、EL層4205と、第2の電極4206とを有する。
【0169】
第1の電極4204は、電極4207と電気的に接続され、第2の電極4206は電極4208と電気的に接続される。また第2の電極4206と電気的に接続される補助配線4209を設けてもよい。また、補助配線4209の下部に、絶縁層4210を設けてもよい。
【0170】
基板4201と凹凸のある封止基板4211は、シール材4212で接着されている。また、封止基板4211と発光デバイス4202の間にバリア膜4213および平坦化膜4214を設けてもよい。なお、封止基板4211は、
図8Bのような凹凸を有するため、発光デバイス4202で生じた光の取り出し効率を向上させることができる。
【0171】
また、これらの照明装置の応用例としては、室内の照明用であるシーリングライトが挙げられる。シーリングライトには、天井直付型や天井埋め込み型等がある。なお、このような照明装置は、発光装置を筐体やカバーと組み合わせることにより構成される。
【0172】
その他にも床面に灯りを照射し、足元の安全性を高めることができる足元灯などへの応用も可能である。足元灯は、例えば、寝室や階段や通路などに使用するのが有効である。その場合、部屋の広さや構造に応じて適宜サイズや形状を変えることができる。また、発光装置と支持台とを組み合わせて構成される据え置き型の照明装置とすることも可能である。
【0173】
また、シート状の照明装置(シート状照明)として応用することも可能である。シート状照明は、壁面に張り付けて使用するため、場所を取らず幅広い用途に用いることができる。なお、大面積化も容易である。なお、曲面を有する壁面や筐体に用いることもできる。
【0174】
なお、上記以外にも室内に備えられた家具の一部に本発明の一態様である発光装置、またはその一部である発光デバイスを適用し、家具としての機能を備えた照明装置とすることができる。
【0175】
以上のように、発光装置を適用した様々な照明装置が得られる。なお、これらの照明装置は本発明の一態様に含まれるものとする。
【0176】
また、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0177】
<参考例>
本参考例では、各実施の形態で用いた有機化合物のHOMO準位、LUMO準位および電子移動度の算出方法について説明する。
【0178】
HOMO準位およびLUMO準位はサイクリックボルタンメトリ(CV)測定を元に算出することができる。
【0179】
測定装置としては電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製、型番:ALSモデル600Aまたは600C)を用いた。CV測定における溶液は、溶媒として脱水ジメチルホルムアミド(DMF)((株)アルドリッチ製、99.8%、カタログ番号;22705-6)を用い、支持電解質である過塩素酸テトラ-n-ブチルアンモニウム(n-Bu4NClO4)((株)東京化成製、カタログ番号;T0836)を100mmol/Lの濃度となるように溶解させ、さらに測定対象を2mmol/Lの濃度となるように溶解させて調製した。また、作用電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、PTE白金電極)を、補助電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、VC-3用Ptカウンター電極(5cm))を、参照電極としてはAg/Ag+電極(ビー・エー・エス(株)製、RE7非水溶媒系参照電極)をそれぞれ用いた。なお、測定は室温(20~25℃)で行った。また、CV測定時のスキャン速度は、0.1V/secに統一し、参照電極に対する酸化電位Ea[V]および還元電位Ec[V]を測定した。Eaは酸化-還元波の中間電位とし、Ecは還元-酸化波の中間電位とした。ここで、本参考例で用いる参照電極の真空準位に対するポテンシャルエネルギーは、-4.94[eV]であることが分かっているため、HOMO準位[eV]=-4.94-Ea、LUMO準位[eV]=-4.94-Ecという式から、HOMO準位およびLUMO準位をそれぞれ求めることができる。
【0180】
電子移動度はインピーダンス分光法(Impedance Spectroscopy:IS法)により測定することが可能である。
【0181】
EL材料のキャリア移動度の測定は、過渡光電流法(Time-of-flight:TOF法)や空間電荷制限電流(Space-charge-limited current:SCLC)のI-V特性から求める方法(SCLC法)などが古くから知られている。TOF法は実際の有機EL素子と比較してかなり厚い膜厚の試料が必要となる。SCLC法ではキャリア移動度の電界強度依存性が得られないなどの欠点がある。IS法では、測定に必要とする有機膜の膜厚が数百nm程度と薄いため、比較的少量のEL材料でも成膜することが可能であり、実際のEL素子に近い膜厚で移動度を測定できることが特徴であり、キャリア移動度の電界強度依存性も得ることができる。
【0182】
IS法では、EL素子に微小正弦波電圧信号(V=V0[exp(jωt)])を与え、その応答電流信号(I=I0exp[j(ωt+φ)])の電流振幅と入力信号との位相差より、EL素子のインピーダンス(Z=V/I)を求める。高周波電圧から低周波電圧まで変化させて素子に印加させれば、インピーダンスに寄与する様々な緩和時間を有する成分を分離、測定することができる。
【0183】
ここで、インピーダンスの逆数であるアドミタンスY(=1/Z)は、下記式(1)のようにコンダクタンスGとサセプタンスBで表すことができる。
【0184】
【0185】
さらに、単一電荷注入(single injection)モデルにより、それぞれ下記式(2)および(3)を算出することができる。ここで、g(式(4))は微分コンダクタンスである。なお、式中Cは静電容量(キャパシタンス)、θはωtであり走行角、ωは角周波数を表す。tは走行時間である。解析には電流の式、ポアソンの式、電流連続の式を用い、拡散電流およびトラップ準位の存在を無視している。
【0186】
【0187】
静電容量の周波数特性から移動度を算出する方法が-ΔB法である。また、コンダクタンスの周波数特性から移動度を算出する方法がωΔG法である。
【0188】
実際には、まず、電子移動度を求めたい材料の電子オンリー素子を作製する。電子オンリー素子とは、キャリアとして電子のみが流れるように設計された素子である。本明細書では、静電容量の周波数特性から移動度を算出する方法(-ΔB法)を説明する。用いた電子オンリー素子の模式図を
図9に示す。
【0189】
今回、測定用に作製した電子オンリー素子の構造は、
図9に示したように第1の電極901と第2の電極902との間に第1の層910と第2の層911と第3の層912を有する。電子移動度を求めたい材料は第2の層911の材料として用いれば良い。今回は、2-{4-[9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)-2-アントリル]フェニル}-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:ZADN)とLiqの1:1(重量比)の共蒸着膜についてその電子移動度を測定した例を挙げて説明する。具体的な構成例は以下の表にまとめた。
【0190】
【0191】
ZADNとLiqの共蒸着膜を第2の層911として作製した電子オンリー素子の電流密度-電圧特性を
図10に示す。
【0192】
インピーダンス測定は、5.0V~9.0Vの範囲で直流電圧を印加しながら、交流電圧が70mV、周波数が1Hz~3MHzの条件で測定を行った。ここで得られたインピーダンスの逆数であるアドミタンス(前述の(1)式)からキャパシタンスを算出する。印加電圧7.0Vにおける算出されたキャパシタンスCの周波数特性を
図11に示す。
【0193】
キャパシタンスCの周波数特性は、微小電圧信号により注入されたキャリアによる空間電荷が微小交流電圧に完全には追従できず、電流に位相差が生じることにより得られる。ここで、膜中のキャリアの走行時間は、注入されたキャリアが対向電極に到達する時間Tで定義され、以下の式(5)で表される。
【0194】
【0195】
負サセプタンス変化(-ΔB)は、静電容量変化-ΔCに角周波数ωを乗じた値(-ωΔC)に対応する。その最も低周波側のピーク周波数f’max(=ωmax/2π)と走行時間Tとの間には、式(3)より、以下の式(6)の関係があることが導出される。
【0196】
【0197】
上記測定から算出した(すなわち直流電圧が7.0Vの時の)-ΔBの周波数特性を
図12に示す。
図12より求まる最も低周波側のピーク周波数f’
maxは、図中の矢印で示した。
【0198】
以上の測定および解析から得られるf’maxから、走行時間Tが求まるため(上記式(6)参照)、上記式(5)より、今回で言えば電圧7.0Vにおける電子移動度を求めることができる。同様の測定を、直流電圧5.0V~9.0Vの範囲で行うことで、各電圧(電界強度)での電子移動度が算出できるため、移動度の電界強度依存性も測定できる。
【0199】
以上のような算出法により最終的に得られた、各有機化合物の電子移動度の電界強度依存性を
図13に示し、図から読み取った、電界強度[V/cm]の平方根が600[V/cm]
1/2の時の電子移動度の値を表2に示す。
【0200】
【0201】
以上のように電子移動度を算出することが可能である。なお、詳しい測定方法に関しては、Takayuki Okachi 他”Japanese Journal of Applied Physics”Vol.47,No.12,2008,pp.8965-8972を参照されたい。
【符号の説明】
【0202】
101:第1の電極、102:第2の電極、103:EL層、111:正孔注入層、112:正孔輸送層、113:発光層、113-1:第1の発光層、113-2:第2の発光層、114:電子輸送層、115:電子注入層、103a、103b:EL層、104:電荷発生層、111a、111b:正孔注入層、112a、112b:正孔輸送層、113a、113b:発光層、114a、114b:電子輸送層、115a、115b:電子注入層、200R、200G、200B:光学距離、201:第1の基板、202:トランジスタ(FET)、203R、203G、203B、203W:発光デバイス、204:EL層、205:第2の基板、206R、206G、206B:カラーフィルタ、206R’、206G’、206B’:カラーフィルタ、207:第1の電極、208:第2の電極、209:黒色層(ブラックマトリックス)、210R、210G:導電層、301:第1の基板、302:画素部、303:駆動回路部(ソース線駆動回路)、304a、304b:駆動回路部(ゲート線駆動回路)、305:シール材、306:第2の基板、307:引き回し配線、308:FPC、309:FET、310:FET、311:FET、312:FET、313:第1の電極、314:絶縁物、315:EL層、316:第2の電極、317:発光デバイス、318:空間、901:第1の電極、902:第2の電極、910:第1の層、911:第2の層、912:第3の層、4000:照明装置、4001:基板、4002:発光デバイス、4003:基板、4004:第1の電極、4005:EL層、4006:第2の電極、4007:電極、4008:電極、4009:補助配線、4010:絶縁層、4011:封止基板、4012:シール材、4013:乾燥剤、4200:照明装置、4201:基板、4202:発光デバイス、4204:第1の電極、4205:EL層、4206:第2の電極、4207:電極、4208:電極、4209:補助配線、4210:絶縁層、4211:封止基板、4212:シール材、4213:バリア膜、4214:平坦化膜、5101:ライト、5102:ホイール、5103:ドア、5104:表示部、5105:ハンドル、5106:シフトレバー、5107:座席シート、5108:インナーリアビューミラー、5109:フロントガラス、7000:筐体、7001:表示部、7002:第2表示部、7003:スピーカ、7004:LEDランプ、7005:操作キー、7006:接続端子、7007:センサ、7008:マイクロフォン、7009:スイッチ、7010:赤外線ポート、7011:記録媒体読込部、7014:アンテナ、7015:シャッターボタン、7016:受像部、7018:スタンド、7020:カメラ、7022、7023:操作用ボタン、7024:接続端子、7025:バンド、7026:マイクロフォン、7029:センサ、7030:スピーカ、7052、7053、7054:情報、9310:携帯情報端末、9311:表示部、9312:表示領域、9313:ヒンジ、9315:筐体