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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】ファスナーシーリング材料及び方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20241203BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241203BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20241203BHJP
   F16J 15/14 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
C09K3/10 E
C09K3/10 D
C09J11/06
C09J133/00
F16J15/14 C
F16J15/14 D
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021522010
(86)(22)【出願日】2019-10-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 US2019057310
(87)【国際公開番号】W WO2020123037
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-05-12
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-22
(31)【優先権主張番号】16/166,654
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517015199
【氏名又は名称】ナイロック・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】NYLOK LLC
【住所又は居所原語表記】15260 Hallmark Court, Macomb, MI 48042, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】スチュパー、ジェフリー・エム
(72)【発明者】
【氏名】ジァロエンワッタナウィンニョー、パッカトルン
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】横山 幸弘
【審判官】中屋 裕一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/119040(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0001395(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00-7/26
C09K3/10-3/12
F16B23/00-43/02
F16J15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステムであって、ファスナーのヘッドの下側及び前記ヘッドの下側に隣接するシャンク又はねじ山にシーリング材料を有するファスナーによって接合された、第1の物品及び第2の物品を備え
前記シーリング材料は、前記シャンク又は前記ねじ山から前記ヘッドの前記下側への移行部で、円錐のような形状に形成され
前記シーリング材料は、前記シーリング材料の約90~約97重量パーセントの濃度で存在するアクリレート材料と、前記シーリング材料の約3~約10重量パーセントの濃度で存在するナノ構造材料とを備え
前記シーリング材料は、前記第1の物品及び前記第2の物品を接合する前にUV又はLED光を使用して硬化され、
それによって、前記第1の物品及び前記第2の物品を接合するファスナーは、ゼネラルモーターズワールドワイド手順GMW14906 4.5.4.3、加圧シール試験に従って試験されるとき、不良品を示さないことができ、及び
試験圧力が10psigに上げられると、不良品を示さないことができる、システム。
【請求項2】
前記アクリレート材料は、前記シーリング材料の約95重量パーセントの濃度で存在し、及び
前記ナノ構造材料は、前記シーリング材料の約5重量パーセントの濃度で存在する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記シーリング材料は、硬化されると、約55~60ショアDの硬度を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
ファスナーの群をさらに含み、
記システムを接合する、前記ファスナーの群の各ファスナーは、ゼネラルモーターズワールドワイド手順GMW14906 4.5.4.3、加圧シール試験に従って試験されるとき、不良品を示さないことができ、及び
試験圧力が10psigに上げられると、不良品を示さないことができる、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記アクリレート材料は、ウレタンアクリレートである、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記アクリレート材料は、アクリル化ウレタン及びアクリル化ポリエステルの一方又は組合せである、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記ナノ構造材料は、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)である、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記POSSは、前記シーリング材料の約5重量パーセントの濃度で存在する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
ステムであってファスナーのヘッドの下側及び前記ヘッドの下側に隣接するシャンク又はねじ山にシーリング材料を有するファスナーによって接合された、第1の物品及び第2の物品を備え
前記シーリング材料は、前記シャンク又は前記ねじ山から前記ヘッドの前記下側への移行部で円錐のような形状に形成され
前記シーリング材料は、前記シーリング材料の約90~約97重量パーセントの濃度で存在するアクリレート材料と、前記シーリング材料の約3~約10重量パーセントの濃度で存在するナノ構造材料とを備え
それによって、前記シーリング材料は、前記ファスナーが前記第1の物品及び前記第2の物品を接合する前にUV又はLED光を使用して硬化され、
前記第1の物品及び前記第2の物品を接合する前記ファスナーは、ゼネラルモーターズワールドワイド手順GMW14906 4.5.4.1、真空シール試験に従って試験されるとき、不良品を示さないことができ、及び
真空が5psiに上げられると、不良品を示さないことができる、システム。
【請求項10】
前記アクリレート材料は、前記シーリング材料の約95重量パーセントの濃度で存在し、及び
前記ナノ構造材料は、前記シーリング材料の約5重量パーセントの濃度で存在する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記シーリング材料は、前記ヘッドの前記下側に隣接する前記ねじ山に塗布され、
前記シーリング材料は、ねじ山係止を提供する、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
ファスナーの群をさらに含み、
前記システムを接合する、前記ファスナーの群の各ファスナーは、ゼネラルモーターズワールドワイド手順GMW14906 4.5.4.1、真空シール試験に従って試験されるとき、不良品を示さないことができ、及び
真空が5psiに上げられると、不良品を示さないことができる、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記アクリレート材料は、ウレタンアクリレートである、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記アクリレート材料は、アクリル化ウレタン及びアクリル化ポリエステルの一方又は組合せである、請求項9に記載のシステム。
【請求項15】
前記ナノ構造材料は、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)である、請求項9に記載のシステム。
【請求項16】
前記POSSは、前記シーリング材料の約5重量パーセントの濃度で存在する、請求項15に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「Fastener Sealing Material and Method」という名称の2016年12月22日に出願された米国仮特許出願第62/437,967号明細書の利益及びそれに対する優先権を主張する、「Fastener Sealing Material and Method」という名称の2017年12月18日に出願された米国特許出願公開第15/844,985号明細書の一部継続出願である。これらの開示は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、例えば、ファスナーが使用される組立体内への水、湿気及びごみの侵入を防ぐために、ファスナーを適所に密閉するための材料と、このようなシーリング材料を塗布するための方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
ファスナーは、例えば、コンポーネント同士を固定するために使用される。一例において、ファスナーは、電子デバイス、例えばスマートフォン、タブレット、パッドなどの中でコンポーネントを固定するために使用される。デバイスがより小さくなるにつれて、コンポーネントもより小さくなる。そのコンポーネントを固定するためのファスナーは、小さくなっていく。また、デバイスは、より小さくなるものの、コンポーネントに水、湿気及びごみがない状態を維持する必要性は、変わっていない。実際に、多くのそのようなより小さいデバイスは、適切に機能するために、コンポーネントが周囲から良好に隔てられていることがさらにより高いレベルで確保されることを必要とする。
【0004】
既知のシーリング材料が存在する。しかし、これらの材料は、ナイロン11粉末などの粉末形態で提供される。これらの材料は、材料が溶けてファスナーのヘッドの下側の周りに流れるように、ファスナーが材料の塗布前又は塗布後に加熱されることを必要とする。これらの材料及びシーリング材料の塗布の方法は、ファスナーが大きいほど良好に機能する。しかしながら、小型及び超小型ファスナー - それぞれ2.0mm(M2.0)~3.0mm(M3.0)及び0.8mm(M0.8)~1.4mm(M1.4)のヘッド径を有し、ヘッド径の約1/2のシャンク径を有するファスナーについて、これらの材料及び方法は、問題を引き起こす可能性がある。塗り過ぎの問題を原因として、不良品発生率は、10~20パーセントもの高さになり得る。特に、ファスナーが一度しか修正することができず、例えば材料が一度しか除去することができず、シーリング材料が一度しか再塗布することができない点で、この不良品発生率は、許容可能なものより著しく高い。
【0005】
例えば、より大きいファスナーを使用する他の用途において、ファスナーに対するシーラントの粉末塗布は、良好に機能するが、欠点を有する。例えば、いくつかの用途において、シーラントは、高温にさらされることがあり、これらの高温にさらされたときに特定の条件を満たさない場合がある。自動車産業において、ファスナーシーラントは、望ましい物理的外観を維持しつつ、特定の仕様、例えば少なくとも85℃(185°F)の密閉環境の維持、ファスナーに対する高い接着性の維持、最小の圧縮永久ひずみを示すこと、繰り返しの設置及び除去(締める及び弛める)に耐える能力の維持、物理的完全性(例えば、亀裂なし)の維持を満たすことが求められ得る。
【0006】
既知のシーラント、例えばポリマーコーティング及び予め形成された弾性座金、例えばシリコーンなどを含む。多くの場合、そのような予め形成された座金は、物理的完全性、繰り返しの設置及び除去並びに圧縮永久ひずみが最小限又はないことを維持しつつ、温度条件に耐えることはできない。
【0007】
したがって、組立体においてファスナーを密閉し、例えば水、湿気、ごみなどの環境条件に対する許容可能な密閉を提供するために使用され得る材料が必要とされている。望ましくは、このような材料は、液状でファスナーに塗布され、必要に応じて、ヘッドの下側を完全に覆うために、塗り過ぎることなしにファスナーヘッドの下側(座面)の周りに容易に流れることができる。なおより望ましくは、このような材料は、速やかに硬化する。また、塗布の方法は、非加熱の又は最低限の加熱での製造プロセスである。なおより望ましくは、このような材料は、ファスナーの再使用を可能にする。すなわち、ファスナーは、シーリング材料がそのシーリング特性を維持した状態で塗布、除去及び再塗布され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の様々な実施形態は、小型及び超小型ファスナーへの塗布のためのファスナーシーリング材料を提供する。シーリング材料は、液体塗布アクリレート材料、例えばアクリル化ウレタン及びアクリル化ポリエステルなどから調合される。液体塗布材料は、紫外線又はLED光源を使用して且つ熱の使用なしに硬化される。
【0009】
実施形態において、材料の粘度は、約1500センチポワズ未満である。材料の粘度は、約500~2000センチポワズであり得る。このような粘度により、シーラントは、必要に応じて、ファスナーのシャンクに幾分ウィッキングすることが可能になる。この形状は、特定の用途において必要とされ得る。他の用途では、ウィッキングは、不要であるか又は望ましくない。
【0010】
超疎水性材料が添加剤として含まれ得る。他の添加剤には、好適な光開始剤が含まれるとともに、材料の硬化を妨げない量で存在する顔料、流動性改良剤及び耐熱性添加材が含まれ得る。
【0011】
実施形態において、材料は、約66℃(約151°F)以下の温度、好ましくは約室温25℃(約77°F)で紫外線又はLED光にさらされると、ファスナー上において、約2~20秒、好ましくは約2~10秒、より好ましくは約2~5秒以下で硬化する。シーリング材料が塗布されているファスナーは、複数回の設置及び除去後にもそれらのシーリング特性を保持する。例えば、シーリング材料が塗布されているファスナーは、少なくとも3回の設置及び除去後にもそれらのシーリング特性を保持する。
【0012】
いくつかの実施形態において、ファスナーシーリング材料は、ファスナーに塗布されると、ファスナーのシャンクの一部にウィッキングする。他の実施形態において、シーリング材料は、ファスナーシャンクの一部でウィッキングしない。ファスナーシーリング材料は、ファスナーに塗布されると、ファスナーのための係止材料も形成し得る。シーリング材料が塗布されているファスナーを作る方法も望まれている。
【0013】
他の態様、目的及び利点は、図面とあわせて以下の詳細な説明からより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】既知の先行技術シーリング材料が塗布されたファスナーの写真である。
図1B】既知の先行技術シーリング材料が塗布されたファスナーの写真である。
図1C】既知の先行技術シーリング材料が塗布されたファスナーの写真である。
図1D】既知の先行技術シーリング材料が塗布されたファスナーの写真である。
図1E】既知の先行技術シーリング材料が塗布されたファスナーの写真である。
図1F】既知の先行技術シーリング材料が塗布されたファスナーの写真である。
図1G】既知の先行技術シーリング材料が塗布されたファスナーの写真である。
図1H】既知の先行技術シーリング材料が塗布されたファスナーの写真である。
図2】本発明のファスナーシーリング材料の実施形態が塗布されたM1.4ファスナー座面の写真であり、ファスナーヘッドの下側のフローコーティングを示す。
図3A】本発明のファスナーシーリング材料の塗布前のM1.4ファスナーの下側又はヘッド下部(座部)表面の写真である。
図3B】ファスナーシーリング材料の塗布後のM1.4ファスナーの下側又はヘッド下部(座部)表面の写真である。
図4A】本発明のシーリング材料の塗布前のM1.0ファスナーの上面の写真である。
図4B】本発明のシーリング材料の塗布後のM1.0ファスナーの上面の写真である。
図4C】本発明のファスナーシーリング材料の塗布後の、4~40サイズのファスナーのヘッドの下側及びシャンクの一部の写真である。
図5】水没試験構造物の写真である。
図6A】試験チャンバーの写真である。
図6B】試験チャンバーの写真である。
図7A】材料がファスナーのシャンクにウィッキングする能力を示す写真である。本発明のシーリング材料の塗布前のファスナーを示す。
図7B】材料がファスナーのシャンクにウィッキングする能力を示す写真である。シーリング材料がファスナーに塗布されたファスナーを示し、且つ材料がファスナーのシャンクの一部にウィッキングしていることを示す。
図8】オリジナルのシーラント材料及び青色パッチ(係止機構/材料)を備えたファスナーの写真である。
図9ファスナーの対照群及び本発明のシーラントを備えたファスナーの群に対して様々な温度で実施されたシール試験の結果のグラフ表示である。
図10ファスナーの対照群及び本発明のシーラントを備えたファスナーの群に対して様々な温度で実施された亀裂試験の結果のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示のこれらの及び他の特徴及び利点は、添付の特許請求の範囲とあわせて以下の詳細な説明から明らかとなる。
【0016】
本開示は、様々な形態の実施形態が可能である。一方で、本開示は、例証であるとみなされ、且つ説明される特定の実施形態に本開示を限定することを意図するものではないという理解に基づき、現在好ましい実施形態が説明される。
【0017】
一態様において、ファスナーと、締結されているコンポーネントとの間に密閉を提供する必要性は、最も重要であり、且つ今日の電子デバイスにおいて特に重要である。この必要性は、これらのデバイスにおけるコンポーネントのサイズが小さくなり続けていることにより、一層高くなる。既知の材料は、0.8mm(M0.8)~1.4mm(M1.4)のヘッド径と、ヘッド径の約1/2のシャンク径とを有するファスナーである超小型ファスナーにとって十分ではない。この材料は、約2.0mm(M2.0)~3.0mm(M3.0)のヘッド径を有するファスナーである小型ファスナーにとっても十分でない場合がある。また、超小型ファスナーは、将来的にさらに小さくなり得ることが予想される。
【0018】
したがって、本発明のシーリング材料の実施形態は、主材料として、アクリレート、例えばアクリル化材料、例えばアクリル化ポリエステル、脂肪族及び芳香族アクリル化ウレタンなど、例えばアクリル化ウレタン、例えばMULTI-CURE(登録商標)6-621及び6-630の製品名でDymax Corporationから入手可能であるもの並びに製品番号AAS 81082A及び81091BでNewington,CTのAdvanced Adhesive Systems,Inc.から入手可能なものを含む。水及び湿気に対する抵抗を増すために、超疎水性材料添加剤がアクリレート材料、例えばアクリル化ウレタンに追加され得る。
【0019】
一実施形態において、約75~99重量パーセントのアクリル化ウレタン及び約1~24重量パーセントの超疎水性材料の調合物は、小型及び超小型ファスナーへの塗布に適した調合物を形成することが分かった。実施形態において、追加的な添加剤、例えば顔料、例えば黒色顔料、流動性改良剤及び偽造防止剤は、比較的少量において調合物に追加され得る。硬化剤、例えばファスナーに塗布された材料をUV又はLED光にさらすことにより材料を硬化させるのに適切な光開始剤などが材料中に存在する。シーリング材料の粘度が、ファスナーのサイズ、材料コーティング厚さ及び望ましいウィッキング特性などに依存して、シーリング材料が適切に望ましく流れるようなものである場合、流動性改良剤は、必要であることもそうでないこともある。耐熱性添加剤も、硬化後の材料のさらなる化学的及び/又は物理的変化を防ぐために調合物に包含され得る。使用されるいずれの添加剤も、UV又はLED硬化ステップを妨げるタイプのものであってはならないことが理解されるであろう。
【0020】
有利には、このような調合物は、不良品をあまり出さない高速塗布に、より良好に役立つ低粘度の液体材料を提供することが分かった。このような材料は、例えば、約500~2000センチポワズの低粘度のため、小さいねじへの高速塗布を可能にする。このような材料の粘性は、水よりも僅かにのみ高い粘度になる。
【0021】
さらに、そのような材料は、熱の使用なしに比較的短時間で硬化され得る。実際に、材料は、必要に応じて且つ使用される光開始剤のタイプに基づいて、紫外線源(紫外線の適切な波長における)又はLED光源を使用して硬化され得る。材料は、小型及び超小型ファスナー上において、熱の使用なしに約2~20秒、好ましくは約2~10秒、なお好ましくは約2~5秒で硬化され得ることが分かった。加熱されたファスナーへの塗布又はファスナーへの塗布後の加熱を必要とする既知のシーリング材料と異なり、本発明の材料は、約66℃(約151°F)未満の温度、好ましくは約室温25℃(約77°F)において約2~20秒、2~10秒又は2~5秒で硬化する。したがって、硬化は、誘導又は他のタイプの加熱の必要なしに実施され得る。
【0022】
ナイロンを溶かすために、375°F~450+°Fもの高温を必要とし得る加熱方法を使用して塗布された、ナイロンなどのシーリング材料を有するファスナーは、ねじ上に装飾仕上げの気泡を示し得ることが観察された。
【0023】
さらに、粉末として塗布される既知のシーリング材料と異なり、本発明のシーリング材料は、液体として塗布される。したがって、低粘度のため、材料がファスナー、例えばファスナーのヘッドの下側(例えば、座面)に塗布される場合、材料は、ヘッドの下側全体の周りに容易に流れるように調合され得、したがって硬化の準備ができている完全に濡れた表面を提供する。材料は、それが僅かにより流れにくくなり、座面にウィッキングしないように、例えば流れ添加剤と調合され得ることが理解されるであろう。このような調合物は、ファスナーのねじ山がヘッドの下側又は座面まで完全に延在するときなど、塗布時に有利であり得る。さらに、材料は、溶媒、ハロゲン、ポリ塩化ビニル(PVC)、REACH環境高負荷物資(REACH SVHC)、フタレート、ビスフェノールA(BPA)を含まず、RoHS(特定有害物質の使用制限)に準拠している。
【0024】
本発明のシーリング材料を有する小型及び超小型ファスナーは、防水の性能に、より優れていることと、硬化した材料は、金属に対して極めて優れた接着性を有することとが分かった。本発明のシーリング材料を有するファスナーは、鋼に対する優れた接着性及び複数回の設置についてより優れた耐久性を示すこと、すなわち、ファスナーは、複数回設置及び除去され得ることと、材料は、材料が塗布されたファスナーのシーリング特性が保持されるように、完全性の度合いが高い状態で適所に残ることとも分かった。本発明のシーリング材料は、良好な耐水性及び高温耐性、例えば約300°F(約150℃)までの耐熱性を示すことも観察された。
【0025】
ファスナーに対するシーラントの接着性能は、ファスナー及びシーラントが複数回の設置後にもそれらの特性を保持するようにさらに強化され得る。ファスナーに対するシーラントの塗布前にファスナーがプラズマ処理プロセスを受けると、最初の試験後の性能が向上したことが分かった。これらの予めプラズマ処理されたファスナーでは、複数回の設置及び除去後のシーラント不良がかなり減少した。接着性能は、内部(化学溶液)添加剤及び処理を使用しても強化され得る。好適な処理は、接着促進剤による処理を含む。
【0026】
試験は、本発明のシーリング材料の有効性を判定するために、M1.0ファスナーに対して本発明のシーリング材料を使用して実施された。水没試験構造物又はタンク(図5)及び水没試験チャンバー(図6A及び6B)を含む試験デバイスが構築された。試験デバイスにおいて、シーリング材料が塗布された10個のM1.0ファスナーにより、透明なプラスチックプレートを鋼製チャンバーに固定した。各試験において、密閉されたチャンバーは、分単位でのある時間、1メートルの深さまで水柱に沈められた。4つのタイプの試験が実施された。
【0027】
第1の試験において、ファスナーが設置された。チャンバーは、30分間沈められた。チャンバーが30分間沈められた後、チャンバーは、タンクから除去され、漏れがないことを確認するためにプラスチックカバーを通して底部から調べられた。水没試験後、チャンバーは、表面が約122°F(50℃)に到達するまで、オーブン内に約195°F(90℃)で10分間置かれた。チャンバーは、次いで、オーブンから除去された。少量の水がプラスチックカバーに垂らされた。45秒後、水は、チャンバーに水蒸気又は小滴の兆しがないことを確かにするためにプラスチックカバーから拭き取られた。
【0028】
第2の試験において、複数回の設置にわたる耐久性を示すために、ファスナーは、4度設置及び除去された。続いて、水没試験が行われた。最後の設置後、チャンバーは、約1メートルの深さまで30分間沈められた。沈められた後、チャンバーは、タンクから除去され、漏れがないことを確認するためにプラスチックカバーを通して底部から調べられた。続いて、チャンバーは、試験治具が約122°F(50℃)に到達するまで、オーブン内に約195°F(90℃)で10分間置かれた。試験デバイスは、次いで、オーブンから除去された。少量の水がプラスチックカバーに垂らされた。45秒後、水は、チャンバーに水蒸気又は小滴の兆しがないことを確かにするためにプラスチックカバーから拭き取られた。
【0029】
第3の試験において、ファスナーは、プレートに締め付けられた。チャンバーは、調整された。例えば、チャンバーは、機械式オーブン内に約175°F(80℃)の温度で24時間置かれた。調整後、チャンバーは、水没試験の実施前に室温に戻された。チャンバーは、次いで、約1メートルの深さに約30分間沈められた。沈められた後、チャンバーは、タンクから除去され、漏れがないことを確認するためにプラスチックカバーを通して底部から調べられた。続いて、チャンバーは、表面が約122°F(50℃)に到達するまで、オーブン内に約195°F(90℃)で10分間置かれた。チャンバーは、次いで、オーブンから除去された。少量の水がプラスチックカバーに垂らされた。45秒後、水は、チャンバーに水蒸気又は小滴の兆しがないことを確かにするためにプラスチックカバーから拭き取られた。
【0030】
別の試験において、ファスナーは、プレートに締め付けられた。チャンバーは、調整された。例えば、チャンバーは、機械式オーブン内に約250°F(120℃)の温度で3時間置かれた。調整後、チャンバーは、水没試験の実施前に室温に戻された。チャンバーは、次いで、約1メートルの深さに約30分間沈められた。沈められた後、チャンバーは、タンクから除去され、漏れがないことを確認するためにプラスチックカバーを通して底部から調べられた。続いて、チャンバーは、表面が約122°F(50℃)に到達するまで、オーブン内に約195°F(90℃)で10分間置かれた。チャンバーは、次いで、オーブンから除去された。少量の水がプラスチックカバーに垂らされた。45秒後、水は、チャンバーに水蒸気又は小滴の兆しがないことを確かにするためにプラスチックカバーから拭き取られた。
【0031】
ファスナーがプラズマ処理され、Advanced Adhesive Systems,Inc.からの材料が使用されたファスナーのなお別の試験において、材料の塗布及び硬化後、ファスナーは、室温で3回設置及び除去された。ファスナー及びプレートは、次いで、8psi及び16psiで60秒間試験され、漏洩について検査された。漏洩は、観察されなかった。サンプルは、次いで、オーブン内において120℃で3時間加熱され、次いで8psi及び16psiで60秒間再試験され、漏洩について検査された。漏洩は、観察されなかった。ファスナーに対するシーラント材料の接着もチェックされた。材料は、ファスナーの座面から除去されることはできなかった。ファスナーが、120℃で3時間ではなく、80℃で12時間、オーブン内において加熱されたことを除いて、同じプロトコルに従う同様の試験が実施された。
【0032】
各試験の結果は、凝縮又は漏洩が観察されなかったことを示している。したがって、チャンバーの内部に湿気がなく、水がチャンバーに侵入していないことが判定された。
【0033】
シーリング材料は、より大きいファスナーでの使用のために調合され得ることも想定される。例えば、より大きいファスナーのための調合物は、主材料として、アクリレート又はアクリル化ウレタン、例えばDymax CorporationからDUAL-CURE 9481-E及び9482の製品名で入手可能なもの又はAdvanced Adhesive Systemsによる上述された材料を使用し得る。これらのアクリル化ウレタンは、防水性能が優れているという有利な特徴を保持しつつ、高い耐水性、耐薬品性及び耐熱性を有すると同時に、金属に対する極めて優れた接着性を示すことが分かった。加えて、これらの材料の使用は、鋼に対する優れた接着性と、材料が塗布されたファスナーのシーリング特性が保持されるように、完全性の度合いが高い状態での複数回の設置に対する優れた耐久性とを示すシーリング材料を提供する。
【0034】
上述のとおり、本発明のシーリング材料の実施形態の1つの有利な特徴は、ファスナーシャンクの一部にウィッキングする能力である。図7A及び7Bは、材料の実施形態の、ファスナーのシャンクにウィッキングする能力を示す写真である。図7Aは、本発明のシーリング材料の塗布前のファスナーを示す。図7Bは、シーリング材料のその実施形態がファスナーに塗布されたファスナーを示し、且つ材料がファスナーのシャンクの一部にウィッキングして、ファスナーのヘッドの近くのシャンク又はねじ山と、ファスナーヘッドとの間に円錐のような形状を形成することを示す。そのようなウィッキングは、特定の用途において望ましいか又は必要とされ得る。
【0035】
別の態様において、シーリング材料は、主材料として、アクリレート、例えばアクリル化材料、例えばアクリル化ポリエステル、脂肪族及び芳香族アクリル化ウレタンなど、例えばアクリル化ウレタン、例えばNewington、CTのAdvanced Adhesive Systemsから製品番号AAS82059Bで商業的に入手可能なウレタンアクリル化樹脂を含む。
【0036】
添加剤、例えばナノ構造の化学物質、例えば多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)は、シーラントの物理的特性を高めるためにウレタン材料に追加され得る。1つのそのようなPOSS材料は、Hattiesburg、MSのHybrid Plastics Inc.から製品等級MA0735で商業的に入手可能である。
【0037】
実施形態において、約90~97重量パーセントのアクリル化ウレタン及び約3~10重量パーセントのナノ構造の添加剤の調合物は、ファスナーへの塗布のための好適な調合物を形成することが分かった。実施形態において、ウレタンは、約95重量パーセントで存在し得、ナノ構造の添加剤は、シーラントの約5重量パーセントで存在し得る。実施形態において、追加的な添加剤、例えば顔料、例えば黒色顔料、流動性改良剤及び偽造防止剤は、比較的少量において調合物に追加され得る。硬化剤、例えばファスナーに塗布された材料をUV又はLED光にさらすことにより材料を硬化させるのに適切な光開始剤などが材料中に存在する。シーリング材料の粘度が、ファスナーのサイズ、材料コーティング厚さ及び望ましいウィッキング特性などに依存して、シーリング材料が適切に望ましいように流れるようなものである場合、流動性改良剤は、必要であることもそうでないこともある。使用されるいずれの添加剤も、UV又はLED硬化ステップを妨げるタイプのものであってはならないことが理解されるであろう。
【0038】
先に開示された調合物におけるように、有利には、このような調合物は、不良品をあまり出さない高速塗布に、より良好に役立つ低粘度の液体材料を提供することが分かった。このような材料は、例えば、約500~約2000センチポワズ(cP)、かつ約1300cPの低粘度のため、ファスナーへの高速塗布を可能にする。このような材料の粘性は、水よりも僅かにのみ高い粘度になる。
【0039】
また、そのような材料は、熱の使用なしに比較的短時間で硬化され得る。実際に、材料は、必要に応じて且つ使用される光開始剤のタイプに基づいて、紫外線源(紫外線の適切な波長における)又はLED光源を使用して硬化され得る。材料は、ファスナー上において、熱の使用なしに約2~20秒、好ましくは約2~10秒、なお好ましくは約2~5秒で硬化され得ることが分かった。加熱されたファスナーへの塗布又はファスナーへの塗布後の加熱を必要とする既知のシーリング材料と異なり、本発明の材料は、約66℃(約151°F)未満の温度、好ましくは約室温25℃(約77°F)において約2~20秒、2~10秒又は2~5秒で硬化する。したがって、硬化は、誘導又は他のタイプの加熱の必要なしに実施され得る。
【0040】
発明の液体塗布シーリング材料は、その低粘度のため、ファスナー、例えばファスナーのヘッドの下側(例えば、座面)に塗布される場合、ヘッドの下側全体の周りに容易に流れるように、且つ、ヘッドに隣接する、ねじ山又はシャンクの一部に沿ってウィッキングし、円錐のような形状を形成するように、調合され得、したがって硬化の準備ができている完全に濡れた表面を提供する。材料は、それが僅かにより流れにくくなり、座面にウィッキングしないように、例えば流れ添加剤と調合され得ることが理解されるであろう。このような調合物は、ファスナーのねじ山がヘッドの下側又は座面まで完全に延在するときなど、塗布時に有利であり得る。シーラントが塗布されており、5回の設置及び除去後のファスナーが、シーラントの亀裂又は層間剥離は、生じていないことが分かり得る。
【0041】
さらに、材料は、溶媒、ハロゲン、ポリ塩化ビニル(PVC)、REACH環境高負荷物資(REACH SVHC)、フタレート、ビスフェノールA(BPA)を含まず、RoHS(特定有害物質の使用制限)に準拠している。加えて、シーラントは、含硫黄化合物、可塑剤及びアウトガス性材料を含まない。
【0042】
本発明のシーリング材料を有するファスナーは、防水の性能に優れていることと、硬化した材料は、金属に対して極めて優れた接着性を有することとが分かった。本発明のシーリング材料を有するファスナーは、鋼に対する優れた接着性及び複数回の設置に対してより優れた耐久性を示すこと、すなわち、ファスナーは、複数回設置及び除去され得ることと、材料は、材料が塗布されたファスナーのシーリング特性が保持されるように、完全性の度合いが高い状態で適所に残ることとも分かった。本発明のシーリング材料は、良好な耐水性及び高温耐性、例えば少なくとも約85℃(185°F)までの耐熱性を示すことも観察された。
【0043】
ナノ構造の化学物質、例えば多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)添加剤を有するシーラントの有効性を判定するために試験が実施された。シーラントは、約95重量パーセントのアクリル化ウレタン及び約5重量パーセントのナノ構造の添加剤と調合された。
【0044】
及び10を参照する試験の第1のセットにおいて、30個のサンプルの2つのセットが試験された。サンプルの第1のセットは、ポリウレタンコーティングのみを有した(基準又は対照)。サンプルの第2のセットは、ポリウレタン(95重量%)及びそれに塗布されたナノ構造の化学物質(PU/POSS)(5重量%)シーラントを有した。185°F(85℃)でサンプルの全てがシール試験に合格した。亀裂を示したサンプルはなかった。
【0045】
203°F(95℃)において、参照サンプルのうちの25個がシール試験に合格した(5つが不合格だった)。PU/POSSサンプルの全てがシール試験に合格した。参照サンプルのうちの9つが亀裂を示した。PU/POSSサンプルのいずれも亀裂を示さなかった。221°F(105℃)において、参照サンプルのうちの16個がシール試験に合格した(14個が不合格であった)。PU/POSSサンプルのうちの20個がシール試験に合格した(10個が不合格であった)。参照サンプルのうちの16個が亀裂を示した。PU/POSSサンプルのうちの8個が亀裂を示した。
【0046】
対照シーラント及びPU/POSSシーラントを備えたファスナーも、185°F(85℃)への30分間の露出の後、ファスナーを嵌め合い開口部にねじ込むことによる、表面に生じる層間剥離について試験された。ファスナーに塗布された各対照及びPU/POSSシーラントのうちの20個が試験された。試験された20個の対照ファスナーのうち、13個が座面に部分的除去又は層間剥離を示した。一方で、PU/POSSコーティングファスナーのいずれも部分的除去又は層間剥離を示さなかった。
【0047】
発明のシーラントは、組立体を密閉するためにファスナーで使用されることが想定される。シーラントを備えたファスナーは、(二物品システムにおいてテールライト組立体の2つの部分を互いに対して締め付けるために)テールライト組立体の部分の締付をシミュレーションするためにある環境において試験された。ファスナーは、上述のシーラントでコーティングされ、且つ25秒間、UV光を使用して硬化された。使用されたUV光は、比較的強度が低かった。より高い強度のUV光源が製造において使用されることが想定される。
【0048】
上記の水没試験と同様の試験の別のセットにおいて、水没試験構造物又はタンクと、水没試験チャンバーとを含む試験デバイスが構築された。試験デバイスにおいて、シーリング材料が塗布された5個のM3.0ファスナーにより、鋼製プレートを鋼製チャンバー(二物品システム)に固定した。試験は、ゼネラルモーターズワールドワイド手順(General Motors Worldwide procedure)GMW14906 4.5.4.3、加圧シール試験に従って実施された。各試験において、密閉されたチャンバーは、水没試験タンクにおいて1インチ(2.5cm)の深さまで水に沈められた。チャンバーの内部は、1psig(7kPa)の圧力まで5分間加圧された。POSS調合シーラントを備えたファスナーの50個のサンプルが試験された。全てが漏洩なしで合格した。圧力は、10psig(68.9kPa)まで上げられた。サンプルは、全て漏洩なしで合格した。10psigの圧力は、必要とされる圧力の10倍であった。
【0049】
同じ試験デバイスにおいて、50個のサンプルが真空下で試験された。試験は、ゼネラルモーターズワールドワイド手順GMW14906 4.5.4.1、真空シール試験に従って実施された。真空は、チャンバーに、チャンバーが15秒間水に沈められた状態で引き込まれた。3psi(-21.0kPa)の真空がチャンバーに引き込まれた。サンプルの全てが真空試験に合格した。真空は、5psi(-33.9kPa)まで増大された。サンプルの全てが、増大された真空でも合格した。
【0050】
圧力及び真空下での試験の別のセットがサンプルの熱サイクル後に実施された。これは、貯蔵試験と呼ばれ、ゼネラルモーターズワールドワイド手順GMW14906 4.9.2.12、貯蔵試験に従って実施された。この試験レジーム下において、サンプルは、熱サイクル前及び熱サイクル後の両方で試験された。サンプルは、第1に、176°F(80℃)+/-5.4°F(+/-3℃)の温度に48時間加熱され、次いで周囲温度73°F(23℃)+/-9°F(+/-5℃)まで15分を超える時間をかけて戻され、次いで-40°F(-40℃)+/-5.4°F(+/-3℃)の温度に24時間冷却された。サンプルは、次いで、15分を超える時間をかけて周囲温度73°F(23℃)+/-9°F(+/-5℃)に戻された。圧力及び真空試験が行われた。サンプルの全てが圧力及び真空試験に合格した。
【0051】
後続の試験は、ゼネラルモーターズワールドワイド手順GMW14906 4.0.2.8.8.3に従い、圧力下での不合格品に対する試験を行うために実施された。同じ試験デバイスにおいて、デバイスにおける圧力は、0.25psig(1.75kPa)に1分間上げられた。その後、デバイスにおける圧力は、1.52psig(10.5kPa)未満では.25psig(1.72kPa)ずつ、1.52psig(10.5kPa)を超えると.5psi(3.5kPa)ずつ上げられ、不合格品となるまで各増分で1分間保持された。圧力は、10psig(68.9kPa)まで上げられた。その後、安全に対する懸念から試験を終了した。10psigの圧力は、必要とされる圧力の10倍であった。サンプルは、いずれも試験終了前に不合格とならなかった。
【0052】
加圧及び真空試験も、GMW 14906 4.8.2.1.9.2、急速な温度遷移に従い、急速な温度遷移後に実施された。サンプルは、約6時間30分の期間において、185°F(85℃)~-76°F(-60℃)で5回熱サイクルされた。サンプルは、次いで、試験された。サンプルの全てが圧力及び真空試験に合格した。
【0053】
試験の別のセットにおいて、サンプルは、Fiat Chrysler Automobiles(FCA)手順FCA PF.90078 5.2.1、シーリング条件水没試験に従って水没試験された。これらの試験において、密閉されたチャンバーが水没試験タンクにおいて水に浸された。チャンバーの内部は、室温で60秒間.75psig(5.2kPa)の圧力まで加圧された。サンプルの全てが漏洩なしで合格した。
【0054】
サンプルは、次いで、FCA PF.90078 5.15、出荷/貯蔵温度試験に従って試験された。サンプルは、熱サイクルされ、続いて上記の水没試験で試験された。サンプルは、約24時間-40°F(-40℃)に冷却され、2時間約室温68°F(20℃)にされ、次いで24時間185°F(85℃)の温度に加熱され、次いで室温68°F(20℃)に戻された。サイクルに続いて、サンプルに水没試験を行った。サンプルの全てが漏洩なしで合格した。
【0055】
サンプルは、FCA PF.90078 5.22、不合格になるまでのシーラント圧力試験に従って試験された。チャンバーは、当初、圧力を.25psig(1.72kPa)ずつ徐々に上げながら、.75psig(5.2kPa)の圧力まで加熱され、不合格まで15秒保持された。試験は、10psig(68.9kPa)で終了した。不合格のサンプルはなかった。10psigの圧力は、必要とされる圧力の10倍であった。
【0056】
本発明のPOSS調合アクリル化ウレタンシーラントの他の利点も特定された。例えば、シーラントは、約30~70ショアAの硬度を有する既知のシーラントと比べて、既知のシーラント材料よりも硬く、約55~60ショアD硬度を有する。参照目的のために、55~60ショアD硬度は、100ショアA硬度と略等しい。硬度が強化されると、靱性及び引裂き抵抗が向上する。
【0057】
追加的に、シーラントは、上記のGMW及びFCA試験後、亀裂の兆候又は層間剥離の兆候を示さなかった。加えて、シーラントを備えたファスナーは、50%のメタノール水溶液、不凍剤及び冷却剤、ホイールクリーナ、オートマティックトランスミッション液、洗車シャンプー、自動車ガラスクリーナ、塗装面洗浄剤、オイルクリーナ、虫及びタールリムーバー、ディーゼル燃料、アイススプレーワックス及び潤滑油を含む、車両及び自動車産業において一般的に見られる様々な化学物質に晒された。シーラントを備えたファスナーはこれらの化学物質に24時間さらされた。その後、それらは、視覚的に検査され、劣化の兆候、層間剥離の兆候又は亀裂の兆候を示さなかった。
【0058】
上述のとおり、シーラントは、ファスナーに塗布されると、ファスナーのシャンク又は上ねじ山に沿って、ファスナーのヘッドの下をウィッキングする傾向があり、円錐のような形状を形成する。したがって、嵌り合う部品/表面に対して締め付けられると、シールは、嵌り合う部品全体にわたってよりもむしろ円周方向ラインに沿って生じる。これにより、嵌り合うねじ山によってかけられる力が集中する。これは、平らな弾性座金(例えば、ガスケットとして機能するもの)とは対照的である。平らな弾性座金は、部品の全体に沿って縮む。結果として、材料を圧縮してシールを形成するために、より大きい力又はよりやわらかい材料が必要となる。
【0059】
本発明のPOSS調合シーラントの他の利益には、シール材料若しくは形成されたシールに対する劣化若しくは損傷、又はシール材料若しくは形成されたシールの層間剥離がない、繰り返しの(5回の)設置及び除去が含まれる。ファスナーは、それらが設置されている物品が焼きなまされた後、再び締め付ける必要がない。例えば、テールライト組立体の中には、組立後のプラスチックにおける応力を低下させるために、(約80°F又は27℃での)焼きなましを必要とするものがある。ポリマー(EPDM)座金を含む既知のシーラントは、締付及び焼きなまし後に弛む傾向がある。一方、本発明のPOSS調合シーラントは、締付及び焼きなまし後に弛まない。本発明のシーラントはまた、設置後、圧縮永久ひずみが限定的もしくは皆無であった。
【0060】
本発明の材料は、裂けにくく、より良好なシーリング形状(例えば、シリンダの平坦部に対するよりもむしろ円錐に対するシーリング)を提供する。また、本発明のシーラントがファスナーに付着し、且つファスナーヘッドの下側の近くでシャンク及びねじ山にウィッキングする点において、平らな座金に比べて漏洩経路が短い。一方で、平らな座金は、ファスナーに緩く嵌合するため、Lで示されている漏洩経路を有する。
【0061】
本発明の材料の使用は、過酸化物又は硫黄を含む材料が使用されていないため、ガス放出をもたらさない。加えて、シーラントから浸出し得るフタレート又は他の化学物質が存在しない。したがって、本発明のシーラントは、そのシーラントが締め付けられているプラスチックのひび割れ又は亀裂を引き起こさない。また、本発明の材料は、溶液として塗布されるため、取扱い及び使用が容易である。
【0062】
さらに、鋼製ファスナーへのその大きい接着力及びナイロン11(ここでは、ファスナーのための機械的係止機構/材料として使用されている、例えば図8を参照されたい)と同等の硬度のため、本発明のシーリング材料は、複数の機能を果たす。したがって、シーリング材料としての使用に加えて、これは、例えば、係止パッチ(例えば、ナイロン11パッチ)を塗布するための二次加工の必要なしに、ファスナーを適所に係止するための機能も果たすことができる。それにより、追加的な生産性の向上と、製造において必要とされる複雑さ及びステップの減少とがもたらされる。このような用途において、シーラントは、ヘッド下シーラントとしての使用を伴っても又は伴わなくても、ねじ山係止材料として機能するようにねじ山に塗布され得る。
【0063】
シーリング材料が塗布されているファスナーを作る方法は、液体塗布アクリレート材料をファスナーに塗布するステップと、紫外線又はLED光源を使用して且つ熱の使用なしに液体塗布アクリレート材料を硬化するステップとを含む。本方法は、ファスナーをプラズマ処理で前処理することを含み得る。液体塗布アクリレート材料は、好適な光開始剤、ナノ構造材料、例えば多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)、材料の硬化を妨げないような量で存在する顔料などの他の添加物、流動性改良剤及び耐熱性添加材を含む上述の材料の任意のものであり得る。超疎水性材料も添加剤として含まれ得る。
【0064】
本開示において、「1つの(a)」又は「1つの(an)」という用語は、単数及び複数の両方を含むと解釈される。反対に、複数の品に対する言及のいずれも、適切な場合、単数を含む。全ての百分率は、別段の注記がない限り、重量パーセントである。
【0065】
本明細書において参照された全ての特許及び公開された出願は、本開示の文章において具体的に参照されているかどうかにかかわらず、それらの全体が参照により組み込まれる。
【0066】
相対的な方向を表す用語、例えば側部、上の、下の、頂部、底部、後方、前方などは、説明のためのみのものであり、本開示の範囲を限定することを意図されたものではないことも当業者により認められるであろう。
【0067】
上記から、本開示の新規な概念の真の趣旨及び範囲から逸脱することなく、多くの修正形態及び変更形態が達成され得ることが観察される。例証された特定の実施形態に対する限定は、意図されておらず、推論されるべきではないことを理解されたい。本開示は、添付の特許請求の範囲により、全てのそのような修正形態を特許請求の範囲に該当するものとして網羅することを意図されている。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10