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特許7597719cos型バクテリオファージに対する感受性が引き下げられた乳酸菌
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】cos型バクテリオファージに対する感受性が引き下げられた乳酸菌
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/21 20060101AFI20241203BHJP
   C12N 15/57 20060101ALI20241203BHJP
   A23C 9/123 20060101ALI20241203BHJP
   A23C 19/032 20060101ALI20241203BHJP
   A23K 10/16 20160101ALI20241203BHJP
   C12N 15/74 20060101ALI20241203BHJP
   C12P 1/04 20060101ALI20241203BHJP
   C12N 9/48 20060101ALN20241203BHJP
   C12Q 1/70 20060101ALN20241203BHJP
【FI】
C12N1/21 ZNA
C12N15/57
A23C9/123
A23C19/032
A23K10/16
C12N15/74 110Z
C12P1/04 Z
C12N9/48
C12Q1/70
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021547392
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 EP2020053676
(87)【国際公開番号】W WO2020165301
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】62/805,388
(32)【優先日】2019-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/904,787
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】397060588
【氏名又は名称】インターナショナル エヌ アンド エイチ デンマーク エーピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・フレモー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ホルヴァト
(72)【発明者】
【氏名】アルメル・コシュ-ブラシェール
(72)【発明者】
【氏名】デニス・ロメロ
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァン・モワノー
(72)【発明者】
【氏名】シモン・ラブリエ
【審査官】平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】Nature Reviews,2013年,Vol.11,pp.675-687
【文献】Applied and Environmental Microbiology,1997年,Vol.63, No.8,pp.3246-3253
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00- 7/08
C12N 9/00- 9/99
C12Q 1/00- 3/00
C12P 1/00-41/00
A23C 1/00-23/00
A23K 10/00-50/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチオニンアミノペプチダーゼ(MetAPタンパク質)タンパク質をコードするmetAP対立遺伝子を含む、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株又はストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)株からなる群から選択される連鎖球菌(Streptococcus)属の株であって、前記metAP対立遺伝子は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301誘導株の、ファージDT1に対する感受性を引き下げるmetAP対立遺伝子と定義され、前記SMQ-301誘導株は、前記metAP対立遺伝子によってmetAP対立遺伝子が置換されているストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株であり、ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められ、前記MetAPRタンパク質は配列番号2と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を
含むか、又はこれからなり、
前記MetAP R タンパク質の配列は、位置57のリシン、位置153のプロリン、位置168のグルタミン酸、位置206のグルタミン、位置228のアスパラギン酸、位置233のグルタミン、及び位置233のロイシンからなる群から選択されるアミノ酸を含み、ここで配列番号2に示されるアミノ酸配列がナンバリングに用いられ、または
前記MetAP R タンパク質は:
a)位置226にて終止コドンを含み、それ以外は配列番号2に定義される通りであるアミノ酸配列と;
b)配列番号2と少なくとも90%の同一性を有し、且つ位置226にて終止コドンを含むアミノ酸配列と;
c)位置226にて終止コドンを含み、それ以外は配列番号2と少なくとも90%の同一性を有するMetAP変異型タンパク質のアミノ酸配列と定義されるアミノ酸配列と
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、若しくはこれからなる、株。
【請求項2】
metAP遺伝子の唯一の対立遺伝子として前記metAP対立遺伝子を含む、請求
項1に記載の株。
【請求項3】
MetAPタンパク質をコードするポリヌクレオチドであって、前記ポリヌクレオチドは、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301誘導株の、ファージDT1に対する感受性を引き下げるmetAP対立遺伝子であり、前記SMQ-301誘導株は、前記metAP対立遺伝子によってmetAP対立遺伝子が置換されているストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株であり、ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められ、前記MetAPRタンパク質は配列番号2と少なくとも90%の同一性を有するア
ミノ酸配列を含むか、又はこれからなり、
前記MetAP R タンパク質の配列は、位置57のリシン、位置153のプロリン、位置168のグルタミン酸、位置206のグルタミン、位置228のアスパラギン酸、位置233のグルタミン、及び位置233のロイシンからなる群から選択されるアミノ酸を含み、ここで配列番号2に示されるアミノ酸配列がナンバリングに用いられ、または
前記MetAP R タンパク質は:
a)位置226にて終止コドンを含み、それ以外は配列番号2に定義される通りであるアミノ酸配列と;
b)配列番号2と少なくとも90%の同一性を有し、且つ位置226にて終止コドンを含むアミノ酸配列と;
c)位置226にて終止コドンを含み、それ以外は配列番号2と少なくとも90%の同一性を有するMetAP変異型タンパク質のアミノ酸配列と定義されるアミノ酸配列と
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、若しくはこれからなる、ポリヌクレオチド。
【請求項4】
ファージDT1に対する感受性の前記引下げは、少なくとも4対数、少なくとも5対数、又は少なくとも6対数のEOP引下げによって特徴付けられる、請求項1若しくは2に記載の株、又は請求項3に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
請求項1、2、及び4のいずれか一項に記載の株、並びに、場合によっては、連鎖球菌(Streptococcus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、リューコノストック(Leuconostoc)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、オエノコッカス(Oenococcus)属、及びビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属からなる群から選択される1つ又は複数の更なる乳酸菌を含む細菌組成物。
【請求項6】
請求項1、2、及び4のいずれか一項に記載の株、又は請求項に記載の細菌組成物を含む食品又は飼料製品、特に乳製品、肉製品、又は禾穀類食品若しくは飼料製品、より詳細には発酵乳製品。
【請求項7】
発酵製品を製造する方法であって:
a)基質、好ましくは乳基質に、請求項1、2、及び4のいずれか一項に記載の株、又は請求項に記載の細菌組成物を接種することと;
b)工程a)から得た、接種された前記基質を発酵させて、発酵製品、好ましくは発酵乳製品を得ることと
を含む方法。
【請求項8】
食品又は飼料製品、好ましくは発酵食品、より好ましくは発酵乳製品を製造するための、請求項1、2、及び4のいずれか一項に記載の株、又は請求項に記載の細菌組成物の
使用。
【請求項9】
cos型ファージに対して感受性の、連鎖球菌(Streptococcus)属の細菌、特にストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株又はストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)株の、少なくとも1つのcos型ファージに対する感受性を引き下げ、少なくとも1つのcos型ファージに対する感受性は、EOPアッセイIによって求められる、請求項3に記載のポリヌクレオチドの、又は請求項3に記載のポリヌクレオチドを含むベクターの使用。
【請求項10】
少なくとも1つのcos型ファージに対する感受性が引き下げられている、連鎖球菌(Streptococcus)属の細菌、特にストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株又はストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)株を調製する方法であって:
a)cos型ファージに対して感受性の連鎖球菌(Streptococcus)属の細菌を用意することと;
b)cos型ファージに対して感受性の連鎖球菌(Streptococcus)属の前記細菌のmetAP遺伝子の対立遺伝子を、請求項3に記載のポリヌクレオチドで置換すること、又は請求項3に記載のポリヌクレオチドと配列が同じmetAP対立遺伝子を有するように、cos型ファージに対して感受性の連鎖球菌(Streptococcus)属の前記細菌のmetAP遺伝子の配列を修飾することと;
c)少なくとも1つのcos型ファージに対する感受性が引き下げられた連鎖球菌(Streptococcus)属の細菌を回収することと
を含み、少なくとも1つのcos型ファージに対する感受性は、EOPアッセイIによって求められる、方法。
【請求項11】
感受性の前記引下げは、少なくとも4対数、少なくとも5対数、又は少なくとも6対数のEOP引下げによって特徴付けられる、請求項に記載の使用、又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の方法によって得られる乳酸菌。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、cos型バクテリオファージに対する感受性が引き下げられた乳酸菌に関する。
【背景技術】
【0002】
乳酸菌のスターター培養が、乳製品(例えば、ヨーグルト、バター、及びチーズ)、肉製品、ベーカリー製品、ワイン、及び野菜製品が挙げられる発酵製品の製造のために、食品業界において広範囲にわたって用いられている。食品業界において広く用いられている乳酸菌の例として、連鎖球菌(Streptococcus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、リューコノストック(Leuconostoc)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、オエノコッカス(Oenococcus)属、及びビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属が挙げられる。例えば、乳酸菌ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)は、酪農業界によって、広範囲にわたって用いられている。培養の調製は、大きな労働力を要し、大量の空間及び装置を占有し、そして乳発酵中にバクテリオファージ(ファージ)が混入するリスクがかなりある。
【0003】
バクテリオファージの感染及び増殖による細菌培養の攻撃は、細菌培養の産業用途の主要な問題の1つであると考えられる。細菌を攻撃する様々なメカニズムを有する、様々な多くのファージ型が存在する。さらに、新しい株のバクテリオファージが発生する。乳酸菌の種、例えばラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)及びストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)が挙げられる、業界で用いられている細菌株に感染することができる様々な多くのバクテリオファージ株が見出されており、そして単離されている。
【0004】
バクテリオファージ感染、及びこれによる細菌培養の失敗を最小限に抑えるために業界で用いられている戦略は、完全には有効でない。そのような戦略として、ファージ攻撃に対するある程度のレベルの耐性が存在することを確実にするための、混合スターター培養の使用が挙げられる。また、異なるバクテリオファージに対して感受性である選択された細菌株のローテーションが用いられている。しかしながら、新しいファージの発生後の、細菌株の、耐性株との迅速な置換えは、通常、可能でない。したがって、食品業界においてファージ混入物を除去することは、未だ可能でない。
【0005】
バクテリオファージの溶解感染サイクルは特に、新たにアセンブルされたファージ粒子を放出するための、細菌宿主細胞表面へのファージ吸着、細胞中へのファージDNAの注入、ファージDNA複製、ファージタンパク質発現、ファージアセンブリ、及び宿主細菌細胞溶解を伴う。細菌のファージ耐性メカニズムは、ファージ複製の溶菌サイクルの1つ又は複数の工程に関与する宿主因子によって決まり、そして通常、干渉する感染サイクルの工程に基づいて分類される。
【0006】
多数のファージ耐性メカニズムが、他の細菌種において見出されてきた一方、S.サーモフィルス(S.thermophilus)においては少数しか識別されていない。この種において最も支配的な防御メカニズムは、CRISPR-Cas系である(非特許文献1;非特許文献2)。この防御メカニズムにおいては、細菌細胞は、ファージゲノム由来の、スペーサーという名の短い配列を蓄積し、これは、以前の遭遇に対する細胞の記憶として作用して、侵入ファージDNAの特異的切断のためのガイドとして機能する。この食品グレードの連鎖球菌(Streptococcus)種において、ファージ感染に関与する他の宿主因子についての情報は、ほとんど利用できない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Barrangou et al.,2007
【文献】Horvath et al.,2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
食品業界又は飼料業界で用いられる向上した細菌株、例えばファージに対する感受性が引き下げられた細菌株を提供することが、当該技術において必要とされ続けている。したがって、乳酸菌、例えば連鎖球菌(Streptococcus)属におけるファージ感染に関与する宿主因子を識別する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、驚くべきことに、メチオニンアミノペプチダーゼ(MetAPタンパク質)をコードする宿主遺伝子が、ファージ感染に関与し、そしてcos型ファージDT1がその溶菌サイクルを完了するのに必須であることを見出した。metAP遺伝子中の突然変異は、cos型ファージに対する感受性が引き下げられたストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)を提供する。突然変異株の、感受性株のmetAP遺伝子との相補性により、ファージ感受性表現型の回復が生じる。また、同じ突然変異を、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)株内に導入することで、ファージ感受性表現型の引下げが実現される。このことは、ファージ感染における宿主MetAPの広範囲の重要性を示唆している。また、発明者らは、cos型ファージに対する感受性が引き下げられた表現型が、経時的に(少なくとも60世代)安定することを示した。これにより、産業用の発酵におけるmetAP突然変異の安定性及びmetAP突然変異乳酸菌の重要性を確認した。
【0010】
一態様において、本発明は、メチオニンアミノペプチダーゼタンパク質(MetAPタンパク質)をコードするmetAP対立遺伝子を含む乳酸菌に関し、前記metAP対立遺伝子は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株のmetAP遺伝子の対立遺伝子の代わりに挿入されている場合に、ファージDT1に対する感受性を引き下げ、ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイI(Efficiency of Plaquing(EOP)Assay I)によって求められる。ゆえに、本発明は、メチオニンアミノペプチダーゼ(MetAPタンパク質)タンパク質をコードするmetAP対立遺伝子を含む乳酸菌に関し、前記metAP対立遺伝子は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301誘導株の、ファージDT1に対する感受性を引き下げるmetAP対立遺伝子と定義され、前記SMQ-301誘導株は、前記metAP対立遺伝子によってmetAP対立遺伝子が置換されているストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株であり、ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められる。特定の実施形態において、前記乳酸菌は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株又はストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)株からなる群から選択される連鎖球菌(Streptococcus)属の株である。
【0011】
一態様において、本発明は、本発明の乳酸菌を含む細菌組成物に関する。
【0012】
一態様において、本発明は、本発明の乳酸菌又は細菌組成物を含む食品又は飼料製品に関する。
【0013】
一態様において、本発明は、発酵製品を製造する方法であって:a)基質に、本発明の乳酸菌又は細菌組成物を接種することと、b)工程a)から得た、接種された基質を発酵させて、発酵製品、好ましくは発酵乳製品を得ることとを含む方法に関する。
【0014】
一態様において、本発明は、食品又は飼料製品、好ましくは発酵食品、より好ましくは発酵乳製品を製造するための、本発明の乳酸菌又は細菌組成物の使用に関する。
【0015】
一態様において、本発明は、MetAPタンパク質をコードするポリヌクレオチドに関し、前記ポリヌクレオチドは、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株のmetAP遺伝子の対立遺伝子の代わりに挿入されている場合に、ファージDT1に対する感受性を引き下げ、ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められる。ゆえに、本発明は、MetAPタンパク質をコードするポリヌクレオチドに関し、前記ポリヌクレオチドは、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301誘導株の、ファージDT1に対する感受性を引き下げるmetAP対立遺伝子であり、前記SMQ-301誘導株は、前記metAP対立遺伝子によってmetAP対立遺伝子が置換されているストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株であり、ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められる。
【0016】
一態様において、本発明は、cos型ファージに対して感受性の乳酸菌の少なくとも1つのcos型ファージに対する感受性を引き下げるための、本発明のポリヌクレオチドの使用に関し、少なくとも1つのcos型ファージに対する感受性は、EOPアッセイIによって求められる。
【0017】
一態様において、本発明は、少なくとも1つのcos型ファージに対する感受性が引き下げられた乳酸菌株を調製する方法であって:a)cos型ファージに対して感受性の乳酸菌株を用意することと;b)cos型ファージに対して感受性の前記乳酸菌株のmetAP遺伝子の対立遺伝子を、本発明のポリヌクレオチドで置換すること、又は本発明のポリヌクレオチドと配列が同じmetAP対立遺伝子を有するように、cos型ファージに対して感受性の乳酸菌株のmetAP遺伝子の配列を修飾することと;c)少なくとも1つのcos型ファージに対する感受性が引き下げられた乳酸菌株を回収することとを含み、少なくとも1つのcos型ファージに対する感受性は、EOPアッセイIによって求められる、方法に関する。
【0018】
一態様において、本発明は、MetAPタンパク質をコードするmetAP対立遺伝子を識別する方法であって:a)ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株のmetAP遺伝子の対立遺伝子の代わりに、試験されることとなるmetAP対立遺伝子を挿入して、SMQ-301誘導株を得ることと;b)工程a)のSMQ-301誘導株に対するファージDT1のEOPをプラーク形成効率アッセイIによって求めることとを含み、少なくとも4対数、少なくとも5対数、又は少なくとも6対数のEOP引下げが、MetAPタンパク質をコードするmetAP対立遺伝子であるmetAP対立遺伝子を示す、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
一般的な定義
特に定義しない限り、本明細書において用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0020】
本開示は、本明細書に開示される例示的な方法及び原材料によって制限されず、本明細書に記載のものと類似の又は同等のいかなる方法及び原材料も、本開示の実施形態の実施又は試験において使用することができる。
【0021】
本明細書において提供される見出しは、本明細書を全体として参照することによって用いることができる本開示の種々の態様又は実施形態を制限するものではない。したがって、直ぐ下で定義する用語は、本明細書全体を参照することによってより完全に定義される。
【0022】
本明細書において使用する用語「ポリヌクレオチド」は、用語「ヌクレオチド配列」及び/又は用語「核酸配列」と同義である。他に規定しない限り、いずれの核酸配列も、左から右に向けて5’から3’の向きに記す。
【0023】
本明細書において使用する用語「タンパク質」には、タンパク質、ポリペプチド、及びペプチドが含まれる。本明細書において使用する用語「アミノ酸配列」は、用語「タンパク質」と同義である。本開示及び特許請求の範囲において、アミノ酸残基について、アミノ酸名、従来の3文字コード、又は従来の1文字コードが用いられる。また、タンパク質が、遺伝コードの縮重に起因して、複数のヌクレオチド配列によってコードされ得ることが理解される。他に規定しない限り、いずれのアミノ酸配列も、左から右に向けてアミノからカルボキシの向きに記す。
【0024】
本発明において、MetAPタンパク質内のアミノ酸残基位置の特定のナンバリングが使用されてもよい。サンプルMetAPタンパク質のアミノ酸配列の、配列番号2のMetAPタンパク質とのアライメントによって、前記サンプルMetAPタンパク質内のアミノ酸残基位置に、本発明の配列番号2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基位置又はナンバリングに対応する番号を割り当てることが可能である。
【0025】
用語の他の定義が、本明細書の全体にわたって出現する場合がある。例示的な実施形態をより詳細に説明する前に、本開示は、記載される特定の実施形態に限定されないので、勿論変化してもよいことが理解されるべきである。また、本明細書中で用いられる専門用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、制限であることは意図されないことも理解されるべきである。なぜなら、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されることとなるからである。
【0026】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈上そうでないと明記されない限り、複数形の指示対象も含むことに留意しなければならない。
【0027】
本明細書中で使用する用語「含んでいる(comprising)」、「含む(comprises)」、及び「で構成される(comprised of)」は、「含んでいる(including)」、「含む(includes)」、「含有している(containing)」、「含有する(contains)」と同義であり、包含的又はオープンエンドであり、列挙されていない追加の部材、要素、又は方法工程を排除しない。また、用語「含んでいる(comprising)」、「含む(comprises)」、及び「で構成される(comprised of)」は、用語「からなる(consisting of)」を含む。
【0028】
本明細書中で考察される刊行物は専ら、それらの開示について、本出願の出願日よりも前に提供されている。本明細書中では、そのような刊行物はいずれも、本明細書に添付の特許請求の範囲に対する先行技術を構成することの容認と解釈されるべきでない。
【0029】
本発明者らは、驚くべきことに、メチオニンアミノペプチダーゼ(MetAP)をコードする宿主遺伝子が、連鎖球菌(Streptococcus)属株におけるcos型ファージ増殖に関与する細菌宿主因子であることを見出した。特に、本発明者らは、驚くべきことに、MetAPタンパク質をコードするmetAP対立遺伝子が、少なくとも1つのcos型ファージに対する連鎖球菌(Streptococcus)属株の感受性を引き下げることを見出した。
【0030】
一態様において、本発明は、MetAPタンパク質をコードするmetAP対立遺伝子を識別する方法であって:
a)ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301のmetAP遺伝子の対立遺伝子の代わりに、試験されることとなるmetAP対立遺伝子(候補metAP対立遺伝子)を挿入して、SMQ-301誘導株を得ることと;
b)工程a)のSMQ-301誘導株に対するファージDT1のEOPをプラーク形成効率アッセイIによって求めることと
を含み、少なくとも4対数のEOP引下げが、MetAPタンパク質をコードするmetAP対立遺伝子であるmetAP対立遺伝子を示す、方法を提供する。
【0031】
本明細書中で使用する表現「metAP遺伝子の対立遺伝子」は、特定の乳酸菌において見出されるmetAP遺伝子のバージョンを意味する。ほとんどの細菌遺伝子について、遺伝子のヌクレオチド配列は変動し得、そして対立遺伝子は、同じ遺伝子の異なる配列を表す。ゆえに、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301のmetAP遺伝子の対立遺伝子は、配列番号1に示される通りである。配列番号1に定義されるこの対立遺伝子は、配列番号2に示されるMetAPタンパク質をコードする。
【0032】
MetAPタンパク質をコードするmetAP対立遺伝子
発明者らは、これらのmetAP対立遺伝子の一部が、SMQ-301のmetAP遺伝子(配列番号1)の元の(すなわち天然の)対立遺伝子の代わりに挿入されている場合に、ファージDT1に対するストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301の感受性を引き下げることができることを示した。これらのmetAP対立遺伝子は、「metAP対立遺伝子」として本明細書中で定義される。これらのmetAP対立遺伝子によってコードされるタンパク質は、本明細書中で「MetAPタンパク質」と称される。
【0033】
ゆえに、ファージDT1(本明細書中で定義される)に対するSMQ-301株の感受性を引き下げるあらゆるmetAP対立遺伝子(MetAPタンパク質をコードする)が、本発明の一部である。言い換えると、metAP対立遺伝子は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301誘導株の、ファージDT1に対する感受性を引き下げるmetAP対立遺伝子として定義され、前記SMQ-301誘導株は、前記metAP対立遺伝子によって元のmetAP対立遺伝子が置換されているストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株である。
【0034】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、以下の方法によって識別されるmetAP対立遺伝子として、本明細書中で(特に、本発明の乳酸菌又はポリヌクレオチドの文脈において)定義される:
a)ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301(配列番号1に示される)のmetAP遺伝子の対立遺伝子の代わりに、試験されることとなるmetAP対立遺伝子(候補metAP対立遺伝子)を挿入して、SMQ-301誘導株を得ることと;
b)工程a)のSMQ-301誘導株に対するファージDT1のEOPをプラーク形成効率アッセイIによって求めること
(少なくとも4対数のEOP引下げが、MetAPタンパク質をコードするmetAP対立遺伝子であるmetAP対立遺伝子を示す)。
【0035】
MetAPタンパク質の非限定的な例が、以下で開示される。
【0036】
本発明のmetAP対立遺伝子によって与えられる、バクテリオファージに対する感受性の引下げを求める一方法が、連鎖球菌(Streptococcus)属株のmetAP遺伝子の元の対立遺伝子の代わりに本発明の候補metAP対立遺伝子が挿入されている連鎖球菌(Streptococcus)属株に対するファージのプラーク形成効率(EOP)を求めるものである。
【0037】
一実施形態において、感受性の引下げは、本明細書中に記載されるプラーク形成効率アッセイI(EOPアッセイI)でプラーク形成効率(EOP)を算出することによって求められる。
【0038】
プラーク形成効率アッセイI
候補metAP対立遺伝子によって与えられるcos型バクテリオファージに対する感受性の引下げを求める一方法が、cos型ファージに対して感受性の乳酸菌(本明細書中で「参照株」と称される)、及び、候補metAP対立遺伝子でmetAP遺伝子の対立遺伝子が置換されている、対応する誘導乳酸菌(本明細書中で「誘導株」と称される)の双方の感受性を求めるものである。
【0039】
本発明の乳酸菌の(特に連鎖球菌(Streptococcus)属の、特にストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株の)バクテリオファージ感受性は、本明細書中に記載されるプラーク形成効率アッセイI(EOPアッセイI)でプラーク形成効率(EOP)を算出することによって求めることができる。
【0040】
感染性ファージ粒子の数え方は、Kropinski et al.2009によって記載される、本明細書中で「プラーク形成効率アッセイI」の名の二重アガーオーバレイプラークアッセイを用いて実行される。当該方法は、ソフトアガー栄養培地において表面上に増殖する細菌のローンに感染させることからなる。ファージによる感染により、細菌が死滅するか、又は増殖していない領域に対応する、局在化された澄明な、又は半透明のゾーンが生じることとなり、プラークと称される。ゆえに、感染性ファージ単位は、プラーク形成単位(pfu)と称される。当該アッセイを用いたファージの数え方は、1プレートあたり最小30~最大300pfuを必要とするので、ファージ懸濁液は希釈を必要とする場合がある。この目的のために、一次ファージ懸濁液が、5g/Lラクトース(v/v)を含有する10mLのM17培地中に10倍段階希釈される。
【0041】
プラーク形成効率アッセイIは、以下の:
i.5g/Lのラクトース(v/v)を含有するM17培地中で37℃にて一晩試験されることとなる各株(本明細書中で定義される通りに試験されることとなる参照株及びその誘導株)を前培養する工程と;
ii.各前培養体を別々に用いて、5g/Lのラクトース、10mMのCaCl、及び5g/L(w/v)のアガーを含有する5mLの溶融M17-CaClソフトアガー培地(水浴中で47℃にて維持されている)中1%(v/v)にて播種する工程と;
iii.試験されることとなる100μLのファージ希釈液を、播種された各培地に加える工程と;
iv.混合の後に、各混合液を、5g/Lのラクトース、10mMのCaCl、及び15g/L(w/v)のアガーを含有するM17-CaCl固体アガー培地の表面上に注ぐ工程と;
v.オーバレイの固化の後に、逆さにしたプレートを37℃にて48時間インキュベートする工程と;
vi.(30~300プラークを示すプレート上の)プラークを数え上げる工程と;
vii.病原性ファージの力価を:プラーク数×10×希釈率の逆数として算出して、pfu/mLで表す工程と;
viii.参照株(参照株のEOPは1である)に対するファージ力価で割った、試験されることとなる誘導株に対するファージ力価として、誘導株に対するファージのEOPを算出する工程と
を有する。
【0042】
特定の実施形態において、本発明の前記乳酸菌は、連鎖球菌(Streptococcus)属の株である。候補metAP対立遺伝子によって与えられるバクテリオファージに対する感受性は、cos型ファージ(参照株)に対して感受性の連鎖球菌(Streptococcus)属の株、及び、metAP遺伝子の対立遺伝子が候補metAP対立遺伝子で置換されている連鎖球菌(Streptococcus)属の対応する誘導株を用いて、本明細書中に記載されるプラーク形成効率アッセイIによって求められる。
【0043】
特定の実施形態において、本発明の前記乳酸菌は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)種のものである。候補metAP対立遺伝子によって与えられるバクテリオファージに対する感受性は、cos型ファージ(参照株)に対して感受性のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株、及び、metAP遺伝子の対立遺伝子が候補metAP対立遺伝子で置換されている対応する誘導ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株を用いて、本明細書中に記載されるプラーク形成効率アッセイIによって求められる。
【0044】
候補metAP対立遺伝子が、本発明に従うmetAPであるかを判定するために、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株SMQ-301が「参照株」として用いられ、そしてストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株のmetAP遺伝子の対立遺伝子の代わりに候補metAP対立遺伝子の挿入によって得られたストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株が誘導株(本明細書中で「SMQ-301誘導体」と呼ばれる)として用いられる。
【0045】
ゆえに、一実施形態において、本明細書中で定義されるプラーク形成効率アッセイIは、以下により実行される:
-「参照株」としてのストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株SMQ-301;SMQ-301株は、商業的に入手可能であり、ファージ-宿主相互作用を研究するモデル生物として用いられており(Tremblay and Moineau,1999;Labrie et al.,2015)、そしてFelix d’Herelle Reference Centre for Bacterial Viruses(www.phage.ulaval.ca)にて照会先HER 1368の下で入手可能であり;この株のゲノム配列は、受託番号CP011217.1の下で入手可能である;
-metAP遺伝子の対立遺伝子が候補metAP対立遺伝子によって置換されているストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株SMQ-301(SMQ-301誘導株);ゆえに、SMQ-301誘導株のmetAP遺伝子の対立遺伝子は、配列番号2に示されるMetAPタンパク質をコードせず、特に、配列番号1に記載されていない;並びに
-商業的に入手可能であり(Tremblay and Moineau 1999;Labrie et al.,2015)、そしてFelix d’Herelle Reference Centre for Bacterial Virusesにて照会先HER 368の下で入手可能であるファージDT1;このファージのゲノム配列は、受託番号NC_002072.2の下で入手可能である。
【0046】
本明細書中で定義される候補metAP対立遺伝子は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株のmetAP遺伝子の対立遺伝子の代わりに挿入されている場合に、前記候補metAP対立遺伝子が、ファージDT1に対する感受性を引き下げると、本発明に従うmetAP対立遺伝子であるとみなし、ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められる。ゆえに、候補metAP対立遺伝子は、前記候補metAP対立遺伝子が、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301誘導株の、ファージDT1に対する感受性を引き下げると、本発明に従うmetAP対立遺伝子であるとみなし、前記SMQ-301誘導株は、前記metAP対立遺伝子によって元のmetAP対立遺伝子が置換されているストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株であり、ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められる。
【0047】
ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301のmetAP遺伝子の元の対立遺伝子の代わりの候補metAP対立遺伝子(本発明のmetAP対立遺伝子又は本明細書中で定義されるmetAP変異型対立遺伝子を含む)の挿入は、SMQ-301誘導株をもたらすに違いなく、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって試験することができることは注目すべきである。EOPアッセイIを使用しても、DT1に対する感受性の判定を可能にしない配列のいかなるmetAP対立遺伝子も、本明細書中で定義されるmetAP対立遺伝子とみなさない。
【0048】
EOPアッセイIによる「ファージDT1に対する感受性の引下げ」とは、少なくとも4対数のEOP引下げを意味する。一実施形態において、EOP引下げは、少なくとも5対数である。一実施形態において、EOP引下げは、少なくとも6対数である。一実施形態において、EOP引下げは、少なくとも7対数である。一実施形態において、EOP引下げは、少なくとも8対数である。一実施形態において、metAP対立遺伝子は、EOP引下げが、少なくとも4対数、少なくとも5対数、少なくとも6対数、少なくとも7対数、及び少なくとも8対数のEOP引下げからなる群から選択される場合、本発明に従うmetAP対立遺伝子であるとみなし、ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められる。ゆえに、候補metAP対立遺伝子は、前記候補metAP対立遺伝子が、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301誘導株の、ファージDT1に対する感受性を少なくとも4対数引き下げると、本発明に従うmetAP対立遺伝子であるとみなし、前記SMQ-301誘導株は、前記metAP対立遺伝子によってmetAP対立遺伝子が置換されているストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株であり、ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって(すなわち、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株と比較して)求められる。
【0049】
対照的に、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株のmetAP遺伝子の対立遺伝子の代わりに挿入されている場合に、EOPを少なくとも4対数引き下げない(ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められる)候補metAP対立遺伝子は、本発明に従うmetAP対立遺伝子であるとみなさない。ゆえに、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301誘導株に対するファージDT1のEOPを少なくとも4対数引き下げない候補metAP対立遺伝子(前記SMQ-301誘導株は、前記候補metAP対立遺伝子によってmetAP対立遺伝子が置換されているストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株であり、ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められる)は、本発明に従うmetAP対立遺伝子であるとみなさない。
【0050】
表現「感受性を引き下げる」又は「EOPを引き下げる」は、アッセイIに従って、すなわち、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301誘導株に対するファージDT1のEOPを求めて、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株に対するファージDT1のEOPと比較することによって、定義される。
【0051】
MetAP変異型タンパク質をコードするmetAP変異型対立遺伝子
1)配列が配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するMetAPタンパク質をコードし、そして2)EOPを引き下げないか、又はEOPを3対数未満引き下げる(ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められる)metAP候補対立遺伝子は、本明細書中で、metAP変異型対立遺伝子(MetAP変異型タンパク質をコードする)と称される。表現「metAP変異型タンパク質」は、表現「配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するmetAP変異型タンパク質」と互換的に用いられる。
【0052】
一実施形態において、metAP変異型対立遺伝子は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株のmetAP遺伝子の対立遺伝子の代わりに挿入されている場合に、EOPを3対数未満引き下げる(ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められる)。ゆえに、metAP変異型対立遺伝子は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301誘導株に対するファージDT1のEOPを3対数未満引き下げ、前記SMQ-301誘導株は、前記metAP変異型対立遺伝子によってmetAP対立遺伝子が置換されているストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株であり、ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められる。一実施形態において、EOP引下げは、3対数未満である。一実施形態において、EOP引下げは、2対数未満である。一実施形態において、EOP引下げは、3対数未満又は2対数未満である。
【0053】
一実施形態において、metAP変異型対立遺伝子は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株のmetAP遺伝子の対立遺伝子の代わりに挿入されている場合に、同じEOPをもたらす(ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められる)。ゆえに、metAP変異型対立遺伝子は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株に対するファージDT1のEOPと同じ、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301誘導株に対するファージDT1のEOPをもたらし、前記SMQ-301誘導株は、前記metAP変異型対立遺伝子によってmetAP対立遺伝子が置換されているストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株であり、ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められる。
【0054】
先のEOP引下げに関する実施形態のいずれかとの組合せにおいても、metAP変異型対立遺伝子は、配列が配列番号2と少なくとも80%同一であるMetAP変異型タンパク質をコードすると定義される。「配列番号2と少なくとも80%同一」によって意味されるのは、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%である。一実施形態において、MetAP変異型タンパク質(metAP変異型対立遺伝子によってコードされる)は、配列番号2と少なくとも85%同一である配列を有する。一実施形態において、MetAP変異型タンパク質(metAP変異型対立遺伝子によってコードされる)は、配列番号2と少なくとも85%同一である配列を有する。一実施形態において、MetAP変異型タンパク質(metAP変異型対立遺伝子によってコードされる)は、配列番号2と少なくとも90%同一である配列を有する。一実施形態において、MetAP変異型タンパク質(metAP変異型対立遺伝子によってコードされる)は、配列番号2と少なくとも95%同一である配列を有する。一実施形態において、MetAP変異型タンパク質(metAP変異型対立遺伝子によってコードされる)は、配列番号2と少なくとも96%同一である配列を有する。一実施形態において、MetAP変異型タンパク質(metAP変異型対立遺伝子によってコードされる)は、配列番号2と少なくとも97%同一である配列を有する。一実施形態において、MetAP変異型タンパク質(metAP変異型対立遺伝子によってコードされる)は、配列番号2と少なくとも98%同一である配列を有する。一実施形態において、MetAP変異型タンパク質(metAP変異型対立遺伝子によってコードされる)は、配列番号2と少なくとも99%同一である配列を有する。
【0055】
一実施形態において、同一性のパーセンテージと組み合わせて、MetAP変異型タンパク質のサイズは、配列番号2に定義されるMetAPタンパク質(286アミノ酸残基)と同じである;ゆえに、一実施形態において、metAP変異型対立遺伝子は、加えて、286アミノ酸MetAP変異型タンパク質をコードすると定義される。
【0056】
一実施形態において、metAP変異型対立遺伝子は、本明細書中で:
1)配列が配列番号2と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるMetAP変異型タンパク質をコードし;且つ
2)ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株のmetAP遺伝子の対立遺伝子の代わりに挿入されている場合に、EOPを3対数未満又は2対数未満引き下げる(ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められる)
と定義される。
【0057】
ゆえに、metAP変異型対立遺伝子は、本明細書中で:
1)配列が配列番号2と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるMetAP変異型タンパク質をコードし;且つ
2)ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301誘導株に対するファージDT1のEOPを3対数未満引き下げる(前記SMQ-301誘導株は、前記metAP変異型対立遺伝子によってmetAP対立遺伝子が置換されているストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株であり、ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められる)
と定義される。
【0058】
一実施形態において、metAP変異型対立遺伝子は、本明細書中で:
1)配列が配列番号2と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるMetAP変異型タンパク質をコードし;且つ
2)ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株のmetAP遺伝子の対立遺伝子の代わりに挿入されている場合に、同じEOPをもたらす(ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められる)
と定義される。
【0059】
ゆえに、metAP変異型対立遺伝子はまた、本明細書中で:
1)配列が配列番号2と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるMetAP変異型タンパク質をコードし;且つ
2)ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株に対するファージDT1のEOPと同じ、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301誘導株に対するファージDT1のEOPをもたらす(前記SMQ-301誘導株は、前記metAP変異型対立遺伝子によってmetAP対立遺伝子が置換されているストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株であり、ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められる)
と定義される。
【0060】
本明細書中で定義されるmetAP変異型対立遺伝子は、ファージDT1に対して感受性である(ファージDT1に対する感受性は、EOPアッセイIによって求められる)と知られているか、又は特徴付けることができるストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株から始めて、当業者が容易に識別することができる。
【0061】
表現「同じEOP」又は「EOPを3対数未満又は2対数未満引き下げた」は、アッセイIに従って、すなわち、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301誘導株に対するファージDT1のEOPを求めて、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株に対するファージDT1のEOPと比較することによって、定義される。
【0062】
乳酸菌の(特にSMQ-301株の)metAP遺伝子の対立遺伝子の置換
metAP対立遺伝子(例えば候補metAP対立遺伝子又はmetAP変異型対立遺伝子)による参照乳酸菌の(特に連鎖球菌(Streptococcus)属の株の、特にストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株の)metAP遺伝子の対立遺伝子の置換は、分子生物学における従来の技術を用いて実行され、そして当業者の能力の範囲内である。一般的に言えば、適切なルーチン方法は、相同組換えを介した置換を含む。
【0063】
表現「metAP遺伝子の対立遺伝子の代わりに挿入されているmetAP対立遺伝子」は、表現「metAP遺伝子の対立遺伝子は、metAP対立遺伝子によって置換されている」(例えば候補metAP対立遺伝子又はmetAP変異型対立遺伝子)と同義である。表現「metAP遺伝子の対立遺伝子の代わりに挿入されているmetAP対立遺伝子」は、表現「metAP遺伝子の対立遺伝子は、metAP対立遺伝子によって置換されている」と同義である。
【0064】
置換されている(又は代わりに挿入されている)は、挿入されることとなるmetAP対立遺伝子(特に、候補metAP対立遺伝子又はmetAP変異型対立遺伝子)によってコードされるMetAPタンパク質の配列が、元の株(例えば参照株)のmetAP遺伝子の対立遺伝子によってコードされるMetAPタンパク質の配列と異なることを意味する。ゆえに、置換されている(又は代わりに挿入されている)は、元の株のmetAP遺伝子のコーディング配列(開始コドンの第1のヌクレオチドから終止コドンの最後のヌクレオチドまで)が、metAP対立遺伝子の(特に、候補metAP対立遺伝子又はmetAP変異型対立遺伝子の)対応するコーディング配列によって置換されていることを意味する。
【0065】
SMQ-301株の場合、置換されている(又は代わりに挿入されている)は、挿入されることとなるmetAP対立遺伝子(特に、候補metAP対立遺伝子又はmetAP変異型対立遺伝子)によってコードされるMetAPタンパク質の配列が、SMQ-301株の元のmetAP遺伝子によってコードされるMetAPタンパク質の配列と異なることを意味する。ゆえに、置換されている(又は代わりに挿入されている)は、SMQ-301株のmetAP遺伝子のコーディング配列(開始コドンの第1のヌクレオチドから終止コドンの最後のヌクレオチドまで、すなわち、配列番号1のヌクレオチド1~861)が、metAP対立遺伝子の(特に、候補metAP対立遺伝子又はmetAP変異型対立遺伝子の)対応するコーディング配列によって置換されていることを意味する。
【0066】
候補metAP対立遺伝子を生成すること
候補metAP対立遺伝子は、metAP対立遺伝子でないmetAP対立遺伝子から始めて、特に配列番号2において定義されるMetAPタンパク質をコードするmetAP対立遺伝子(例えば配列番号1)から、又は本明細書中で定義されるMetAP変異型対立遺伝子から始めて、ランダム突然変異誘発又は指向性突然変異誘発によって生成することができる。一実施形態において、候補metAP対立遺伝子は、ランダム突然変異誘発によって生成する。別の実施形態において、候補metAP対立遺伝子は、指向性突然変異誘発によって生成することができる。ランダム突然変異誘発又は指向性突然変異誘発に適した突然変異誘発プロトコルは、以下の材料及び方法のセクションに記載されている。
【0067】
また、候補metAP対立遺伝子は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)細菌(metAP遺伝子の対立遺伝子は、metAP対立遺伝子でない)(例えばSMQ-301株)を、ファージDT1によるチャレンジに提示することによって、生成することができる。株をファージによりチャレンジするのに適したプロトコルは、以下の材料及び方法のセクションに記載されている。一実施形態において、CRISPR-Cas系に起因する、ファージに対する感受性の引下げをもたらす遺伝的事象の数を減少させるために(ゆえに、metAP突然変異に関連する遺伝的事象の数を増大させるために)、抗CRISPR遺伝子(acr遺伝子)を有するファージを用いることによって、CRISPR-Cas系の効率を阻害するか、又は低下させることが可能である(国際公開第2018/197495号パンフレット)。
【0068】
このように生成された候補metAP対立遺伝子は、本明細書中で定義されるmetAP対立遺伝子を識別する方法を用いてスクリーニングすることができる。
【0069】
一態様において、本発明は、metAP対立遺伝子(MetAPタンパク質をコードする)を含む乳酸菌を提供し、前記metAP対立遺伝子は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株のmetAP遺伝子の対立遺伝子の代わりに挿入されている場合に、ファージDT1に対する感受性を引き下げ、ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められる。ゆえに、本発明は、メチオニンアミノペプチダーゼ(MetAPタンパク質)タンパク質をコードするmetAP対立遺伝子を含む乳酸菌に関し、前記metAP対立遺伝子は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301誘導株の、ファージDT1に対する感受性を引き下げるmetAP対立遺伝子と定義され、前記SMQ-301誘導株は、前記metAP対立遺伝子によって(元の)metAP対立遺伝子が置換されているストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株であり、ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められる。metAP対立遺伝子は、生成されたもの、スクリーニングされたもの、及び/又は本明細書中で定義されるものである。表現「ファージDT1に対する感受性を引き下げる」は、metAP対立遺伝子の定義のために本明細書中で定義される通りである。特に、そして本明細書中で定義されるように、本発明のmetAP対立遺伝子に関連する、ファージDT1に対する感受性の引下げは、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められて、少なくとも4対数の引下げである。
【0070】
注目すべきは、表現「metAP対立遺伝子を含む」は、乳酸菌(LAB)のゲノム内に含有されるmetAP遺伝子の唯一の対立遺伝子が、metAP対立遺伝子であることを意味することである。ゆえに、本発明のLABのmetAP遺伝子の対立遺伝子は、本明細書中で定義されるmetAP対立遺伝子である。本発明のLABが、metAP遺伝子のいくつかの対立遺伝子を含むことは意図されない。一実施形態において、本発明のLABは、metAP遺伝子の唯一の対立遺伝子として、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株のmetAP遺伝子の対立遺伝子の代わりに挿入されている場合に、ファージDT1に対する感受性を引き下げるmetAP対立遺伝子を含み、ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められる。ゆえに、本発明のLABは、metAP遺伝子の唯一の対立遺伝子として、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301誘導株の、ファージDT1に対する感受性を引き下げるmetAP対立遺伝子を含み、前記SMQ-301誘導株は、前記metAP対立遺伝子によってmetAP対立遺伝子が置換されているストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株であり、ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められる。
【0071】
一態様において、本発明は、MetAPタンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供し、前記ポリヌクレオチドは、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株のmetAP遺伝子の対立遺伝子の代わりに挿入されている場合に、ファージDT1に対する感受性を引き下げ、ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められる。ゆえに、本発明は、MetAPタンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供し、前記ポリヌクレオチドは、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301誘導株の、ファージDT1に対する感受性を引き下げるmetAP対立遺伝子であり、前記SMQ-301誘導株は、前記metAP対立遺伝子によってmetAP対立遺伝子が置換されているストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株であり、ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められる。一実施形態において、ポリヌクレオチドは、本明細書中で定義されるmetAP対立遺伝子からなる。ポリヌクレオチドは、生成された、スクリーニングされた、且つ/又は本明細書中で定義されるmetAP対立遺伝子を含むか、又はこれからなる。表現「ファージDT1に対する感受性を引き下げる」は、metAP対立遺伝子の定義のために本明細書中で定義される通りであある。特に、そして本明細書中で定義されるように、本発明のmetAP対立遺伝子に関連するファージDT1に対する感受性の引下げは、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められて、少なくとも4対数の引下げである。
【0072】
MetAPタンパク質の配列
(本発明のポリヌクレオチドの一部としての、又は本発明の乳酸細菌中に含有される)本発明のmetAP対立遺伝子は、その、ファージDT1に対する感受性を引き下げる能力、特にその、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301誘導株の、ファージDT1に対する感受性を引き下げる能力(本明細書中でEOPアッセイIによって求められる)に加えて、そのヌクレオチド配列によって、又はそれがコードするMetAPタンパク質のアミノ酸配列によって、定義することができる。
【0073】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、以下からなる群から選択されるMetAPタンパク質に対する、アミノ酸の抑制、アミノ酸の付加、アミノ酸の置換、又はアミノ酸の抑制及び付加を含むMetAPタンパク質をコードする:
a)配列番号2に定義されるアミノ酸配列を有するMetAPタンパク質;及び
b)配列番号2と少なくとも80%の同一性を有する本明細書中で定義されるMetAP変異型タンパク質。本明細書中で定義されるMetAP変異型タンパク質は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株のmetAP遺伝子の対立遺伝子の代わりに挿入されている場合に、EOPを引き下げないか、又はEOPを3対数未満引き下げるmetAP変異型対立遺伝子によってコードされている(ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められる)。本明細書中で定義されるMetAP変異型タンパク質は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301誘導株に対するファージDT1のEOPを3対数未満引き下げる、又はストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301誘導株に対するファージDT1の同じEOPをもたらすmetAP変異型対立遺伝子によってコードされており、前記SMQ-301誘導株は、前記metAP変異型対立遺伝子によってmetAP対立遺伝子が置換されているストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株であり、ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められる。
【0074】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、配列が配列番号2と少なくとも80%の同一性を有する(が、配列番号2と異なる)MetAPタンパク質をコードする。
【0075】
EOPに関する特定の実施形態において、metAP変異型タンパク質の文脈内で本出願の他の場所に記載される同一性及びサイズのパーセンテージは、MetAPタンパク質の文脈において同様に当てはまる。
【0076】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、a)配列番号2に定義されるアミノ酸配列を有するMetAPタンパク質、及びb)配列番号2と少なくとも80%の同一性を有する本明細書中で定義されるMetAP変異型タンパク質からなる群から選択されるMetAPタンパク質に対するアミノ酸の抑制を含むMetAPタンパク質をコードする;特定の実施形態において、MetAPタンパク質は、少なくとも1つのアミノ酸の抑制によって、特に1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのアミノ酸の抑制によって特徴付けられる。特定の実施形態において、MetAPタンパク質は、1つのアミノ酸の抑制によって特徴付けられる。特定の実施形態において、MetAPタンパク質は、2つ、3つ、4つ、又は5つのアミノ酸の抑制によって特徴付けられる。特定の実施形態において、MetAPタンパク質は、2つ、3つ、4つ、又は5つの連続アミノ酸の抑制によって特徴付けられる。
【0077】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、a)配列番号2に定義されるアミノ酸配列を有するMetAPタンパク質、及びb)配列番号2と少なくとも80%の同一性を有する本明細書中で定義されるMetAP変異型タンパク質からなる群から選択されるMetAPタンパク質に対するアミノ酸の付加を含むMetAPタンパク質をコードする;特定の実施形態において、MetAPタンパク質は、少なくとも1つのアミノ酸の付加によって、特に1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのアミノ酸の付加によって特徴付けられる。特定の実施形態において、MetAPタンパク質は、1つのアミノ酸の付加によって特徴付けられる。特定の実施形態において、MetAPタンパク質は、2つ、3つ、4つ、又は5つのアミノ酸の付加によって特徴付けられる。特定の実施形態において、MetAPタンパク質は、2つ、3つ、4つ、又は5つの連続アミノ酸の付加によって特徴付けられる。
【0078】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、a)配列番号2に定義されるアミノ酸配列を有するMetAPタンパク質、及びb)配列番号2と少なくとも80%の同一性を有する本明細書中で定義されるMetAP変異型タンパク質からなる群から選択されるMetAPタンパク質に対するアミノ酸の置換を含むMetAPタンパク質をコードする;特定の実施形態において、MetAPタンパク質は、少なくとも1つのアミノ酸の置換によって、特に1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのアミノ酸の置換によって特徴付けられる。特定の実施形態において、MetAPタンパク質は、1つのアミノ酸の置換によって特徴付けられる。特定の実施形態において、MetAPタンパク質は、2つ、3つ、4つ、又は5つのアミノ酸の置換によって特徴付けられる。
【0079】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、MetAPタンパク質をコードし、前記MetAPタンパク質の配列は、位置57のグルタミン、位置153のロイシン、位置168のアラニン、位置206のヒスチジン、位置228のバリン、及び位置233のプロリンからなる群から選択されるアミノ酸を含まず、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、ナンバリングに用いられる。
【0080】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、MetAPタンパク質をコードし、前記MetAPタンパク質の配列は、位置57のグルタミンを含まず、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、ナンバリングに用いられる。
【0081】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、MetAPタンパク質をコードし、前記MetAPタンパク質の配列は、位置153のロイシンを含まず、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、ナンバリングに用いられる。
【0082】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、MetAPタンパク質をコードし、前記MetAPタンパク質の配列は、位置168のアラニンを含まず、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、ナンバリングに用いられる。
【0083】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、MetAPタンパク質をコードし、前記MetAPタンパク質の配列は、位置206のヒスチジンを含まず、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、ナンバリングに用いられる。
【0084】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、MetAPタンパク質をコードし、前記MetAPタンパク質の配列は、位置228のバリンを含まず、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、ナンバリングに用いられる。
【0085】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、MetAPタンパク質をコードし、前記MetAPタンパク質の配列は、位置233のプロリンを含まず、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、ナンバリングに用いられる。
【0086】
これらの実施形態のいずれにおいても、MetAPタンパク質のサイズは、配列番号2に定義されるMetAPタンパク質(286アミノ酸残基)と同じである。
【0087】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、位置57のリシン又はその等価のアミノ酸、位置153のプロリン又はその等価のアミノ酸、位置168のグルタミン酸又はその等価のアミノ酸、位置206のグルタミン又はその等価のアミノ酸、位置228のアスパラギン酸又はその等価のアミノ酸、位置233のグルタミン又はその等価のアミノ酸、及び位置233のロイシン又はその等価のアミノ酸からなる群から選択されるアミノ酸を含むMetAPタンパク質をコードし、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、ナンバリングに用いられる。
【0088】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、位置57にてリシン又はその等価のアミノ酸を含むMetAPタンパク質をコードし、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、ナンバリングに用いられる。
【0089】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、位置153にてプロリン又はその等価のアミノ酸を含むMetAPタンパク質をコードし、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、ナンバリングに用いられる。
【0090】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、位置168にてグルタミン酸又はその等価のアミノ酸を含むMetAPタンパク質をコードし、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、ナンバリングに用いられる。
【0091】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、位置206にてグルタミン又はその等価のアミノ酸を含むMetAPタンパク質をコードし、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、ナンバリングに用いられる。
【0092】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、位置228にてアスパラギン酸又はその等価のアミノ酸を含むMetAPタンパク質をコードし、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、ナンバリングに用いられる。
【0093】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、位置233にてグルタミン又はその等価のアミノ酸を含むMetAPタンパク質をコードし、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、ナンバリングに用いられる。
【0094】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、位置233にてロイシン又はその等価のアミノ酸を含むMetAPタンパク質をコードし、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、ナンバリングに用いられる。
【0095】
これらの実施形態のいずれにおいても、MetAPタンパク質のサイズは、配列番号2に定義されるMetAPタンパク質(286アミノ酸残基)と同じである。
【0096】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、位置57のリシン、位置153のプロリン、位置168のグルタミン酸、位置206のグルタミン、位置228のアスパラギン酸、位置233のグルタミン、及び位置233のロイシンからなる群から選択されるアミノ酸を含むMetAPタンパク質をコードし、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、ナンバリングに用いられる。
【0097】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、位置57にてリシンを含むMetAPタンパク質をコードし、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、ナンバリングに用いられる。
【0098】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、位置153にてプロリンを含むMetAPタンパク質をコードし、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、ナンバリングに用いられる。
【0099】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、位置168にてグルタミン酸を含むMetAPタンパク質をコードし、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、ナンバリングに用いられる。
【0100】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、位置206にてグルタミンを含むMetAPタンパク質をコードし、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、ナンバリングに用いられる。
【0101】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、位置228にてアスパラギン酸を含むMetAPタンパク質をコードし、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、ナンバリングに用いられる。
【0102】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、位置233にてグルタミンを含むMetAPタンパク質をコードし、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、ナンバリングに用いられる。
【0103】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、位置233にてロイシンを含むMetAPタンパク質をコードし、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、ナンバリングに用いられる。
【0104】
これらの実施形態のいずれにおいても、MetAPタンパク質のサイズは、配列番号2に定義されるMetAPタンパク質(286アミノ酸残基)と同じである。
【0105】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、以下を含むMetAPタンパク質をコードする:
a)普通であれば配列番号2に定義されるが、位置57のグルタミン、位置153のロイシン、位置168のアラニン、位置206のヒスチジン、位置228のバリン、及び位置233のプロリンからなる群から選択されるアミノ酸を含まないアミノ酸配列;これらのmetAP対立遺伝子は、それぞれ配列番号5~10に示されるMetAPタンパク質をコードする;
b)配列番号2と80%の同一性を有し、且つ、位置57のグルタミン、位置153のロイシン、位置168のアラニン、位置206のヒスチジン、位置228のバリン、及び位置233のプロリンからなる群から選択されるアミノ酸を含まないアミノ酸配列;又は
c)普通であれば配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するMetAP変異型タンパク質(本明細書中で定義されるMetAP変異型タンパク質)の1つであるが、位置57のグルタミン、位置153のロイシン、位置168のアラニン、位置206のヒスチジン、位置228のバリン、及び位置233のプロリンからなる群から選択されるアミノ酸を含まないアミノ酸配列。
【0106】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、普通であれば配列番号2に定義されるが、位置57のグルタミンを含まないアミノ酸配列(配列番号5)を含むか、配列番号2と80%の同一性を有し、且つ位置57のグルタミンを含まないアミノ酸配列を含むか、又は普通であれば配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するMetAP変異型タンパク質の1つであるが、位置57のグルタミンを含まないアミノ酸配列を含むMetAPタンパク質をコードする。
【0107】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、普通であれば配列番号2に定義されるが、位置153のロイシンを含まないアミノ酸配列(配列番号6)を含むか、配列番号2と80%の同一性を有し、且つ位置153のロイシンを含まないアミノ酸配列を含むか、又は普通であれば配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するMetAP変異型タンパク質の1つであるが、位置153のロイシンを含まないアミノ酸配列を含むMetAPタンパク質をコードする。
【0108】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、普通であれば配列番号2に定義されるが、位置168のアラニンを含まないアミノ酸配列(配列番号7)を含むか、配列番号2と80%の同一性を有し、且つ位置168のアラニンを含まないアミノ酸配列を含むか、又は普通であれば配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するMetAP変異型タンパク質の1つであるが、位置168のアラニンを含まないアミノ酸配列を含むMetAPタンパク質をコードする。
【0109】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、普通であれば配列番号2に定義されるが、位置206のヒスチジンを含まないアミノ酸配列(配列番号8)を含むか、配列番号2と80%の同一性を有し、且つ位置206のヒスチジンを含まないアミノ酸配列を含むか、又は普通であれば配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するMetAP変異型タンパク質の1つであるが、位置206のヒスチジンを含まないアミノ酸配列を含むMetAPタンパク質をコードする。
【0110】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、普通であれば配列番号2に定義されるが、位置228のバリンを含まないアミノ酸配列(配列番号9)を含むか、配列番号2と80%の同一性を有し、且つ位置228のバリンを含まないアミノ酸配列を含むか、又は普通であれば配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するMetAP変異型タンパク質の1つであるが、位置228のバリンを含まないアミノ酸配列を含むMetAPタンパク質をコードする。
【0111】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、普通であれば配列番号2に定義されるが、位置233のプロリンを含まないアミノ酸配列(配列番号10)を含むか、配列番号2と80%の同一性を有し、且つ位置233のプロリンを含まないアミノ酸配列を含むか、又は普通であれば配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するMetAP変異型タンパク質の1つであるが、位置233のプロリンを含まないアミノ酸配列を含むMetAPタンパク質をコードする。
【0112】
これらの実施形態のいずれにおいても、MetAPタンパク質のサイズは、配列番号2に定義されるMetAPタンパク質(286アミノ酸残基)と同じである。
【0113】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、以下を含むMetAPタンパク質をコードする:
a)普通であれば配列番号2に定義されるが、位置57のリシン若しくはその等価のアミノ酸、位置153のプロリン若しくはその等価のアミノ酸、位置168のグルタミン酸若しくはその等価のアミノ酸、位置206のグルタミン若しくはその等価のアミノ酸、位置228のアスパラギン酸若しくはその等価のアミノ酸、位置233のグルタミン若しくはその等価のアミノ酸、及び位置233のロイシン若しくはその等価のアミノ酸からなる群から選択されるアミノ酸置換を含むアミノ酸配列;
b)配列番号2と80%の同一性を有し、且つ位置57のリシン若しくはその等価のアミノ酸、位置153のプロリン若しくはその等価のアミノ酸、位置168のグルタミン酸若しくはその等価のアミノ酸、位置206のグルタミン若しくはその等価のアミノ酸、位置228のアスパラギン酸若しくはその等価のアミノ酸、位置233のグルタミン若しくはその等価のアミノ酸、及び位置233のロイシン若しくはその等価のアミノ酸からなる群から選択されるアミノ酸残基を含むアミノ酸配列;又は
c)普通であれば配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するMetAP変異型タンパク質(本明細書中で定義されるMetAP変異型タンパク質)の1つであるが、位置57のリシン若しくはその等価のアミノ酸、位置153のプロリン若しくはその等価のアミノ酸、位置168のグルタミン酸若しくはその等価のアミノ酸、位置206のグルタミン若しくはその等価のアミノ酸、位置228のアスパラギン酸若しくはその等価のアミノ酸、位置233のグルタミン若しくはその等価のアミノ酸、及び位置233のロイシン若しくはその等価のアミノ酸からなる群から選択されるアミノ酸置換を含むアミノ酸配列。
【0114】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、普通であれば配列番号2に定義されるが、位置57のリシン若しくはその等価のアミノ酸を含むアミノ酸配列を含むか、配列番号2と80%の同一性を有し、且つ位置57のリシン若しくはその等価のアミノ酸を含むアミノ酸配列を含むか、又は普通であれば配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するMetAP変異型タンパク質の1つであるが、位置57のリシン若しくはその等価のアミノ酸を含むアミノ酸配列を含むMetAPタンパク質をコードする。
【0115】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、普通であれば配列番号2に定義されるが、位置153のプロリン若しくはその等価のアミノ酸を含むアミノ酸配列を含むか、配列番号2と80%の同一性を有し、且つ位置153のプロリン若しくはその等価のアミノ酸を含むアミノ酸配列を含むか、又は普通であれば配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するMetAP変異型タンパク質の1つであるが、位置153のプロリン若しくはその等価のアミノ酸を含むアミノ酸配列を含むMetAPタンパク質をコードする。
【0116】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、普通であれば配列番号2に定義されるが、位置168のグルタミン酸若しくはその等価のアミノ酸を含むアミノ酸配列を含むか、配列番号2と80%の同一性を有し、且つ位置168のグルタミン酸若しくはその等価のアミノ酸を含むアミノ酸配列を含むか、又は普通であれば配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するMetAP変異型タンパク質の1つであるが、位置168のグルタミン酸若しくはその等価のアミノ酸を含むアミノ酸配列を含むMetAPタンパク質をコードする。
【0117】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、普通であれば配列番号2に定義されるが、位置206のグルタミン若しくはその等価のアミノ酸を含むアミノ酸配列を含むか、配列番号2と80%の同一性を有し、且つ位置206のグルタミン若しくはその等価のアミノ酸を含むアミノ酸配列を含むか、又は普通であれば配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するMetAP変異型タンパク質の1つであるが、位置206のグルタミン若しくはその等価のアミノ酸を含むアミノ酸配列を含むMetAPタンパク質をコードする。
【0118】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、普通であれば配列番号2に定義されるが、位置228のアスパラギン酸若しくはその等価のアミノ酸を含むアミノ酸配列を含むか、配列番号2と80%の同一性を有し、且つ位置228のアスパラギン酸若しくはその等価のアミノ酸を含むアミノ酸配列を含むか、又は普通であれば配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するMetAP変異型タンパク質の1つであるが、位置228のアスパラギン酸若しくはその等価のアミノ酸を含むアミノ酸配列を含むMetAPタンパク質をコードする。
【0119】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、普通であれば配列番号2に定義されるが、位置233のグルタミン若しくはその等価のアミノ酸を含むアミノ酸配列を含むか、配列番号2と80%の同一性を有し、且つ位置233のグルタミン若しくはその等価のアミノ酸を含むアミノ酸配列を含むか、又は普通であれば配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するMetAP変異型タンパク質の1つであるが、位置233のグルタミン若しくはその等価のアミノ酸を含むアミノ酸配列を含むMetAPタンパク質をコードする。
【0120】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、普通であれば配列番号2に定義されるが、位置233のロイシン若しくはその等価のアミノ酸を含むアミノ酸配列を含むか、配列番号2と80%の同一性を有し、且つ位置233のロイシン若しくはその等価のアミノ酸を含むアミノ酸配列を含むか、又は普通であれば配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するMetAP変異型タンパク質の1つであるが、位置233のロイシン若しくはその等価のアミノ酸を含むアミノ酸配列を含むMetAPタンパク質をコードする。
【0121】
これらの実施形態のいずれにおいても、MetAPタンパク質のサイズは、配列番号2に定義されるMetAPタンパク質(286アミノ酸残基)と同じである。
【0122】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、以下を含むMetAPタンパク質をコードする:
a)普通であれば配列番号2に定義されるが、位置206のグルタミン、位置57のリシン、位置153のプロリン、位置168のグルタミン酸、位置228のアスパラギン酸、位置233のグルタミン、及び位置233のロイシンからなる群から選択されるアミノ酸置換を含むアミノ酸配列;これらのmetAP対立遺伝子は、それぞれ配列番号4及び11~16に示されるMetAPタンパク質をコードする;
b)配列番号2と80%の同一性を有し、且つ位置206のグルタミン、位置57のリシン、位置153のプロリン、位置168のグルタミン酸、位置228のアスパラギン酸、位置233のグルタミン、及び位置233のロイシンからなる群から選択されるアミノ酸残基を含むアミノ酸配列;又は
c)普通であれば配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するMetAP変異型タンパク質(本明細書中で定義されるMetAP変異型タンパク質)の1つであるが、位置57のリシン、位置153のプロリン、位置168のグルタミン酸、位置206のグルタミン、位置228のアスパラギン酸、位置233のグルタミン、及び位置233のロイシンからなる群から選択されるアミノ酸置換を含むアミノ酸配列。
【0123】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、普通であれば配列番号2に定義されるが、位置57のリシンを含むアミノ酸配列(配列番号11)を含むか、配列番号2と80%の同一性を有し、且つ位置57のリシンを含むアミノ酸配列を含むか、又は普通であれば配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するMetAP変異型タンパク質の1つであるが、位置57のリシンを含むアミノ酸配列を含むMetAPタンパク質をコードする。
【0124】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、普通であれば配列番号2に定義されるが、位置153のプロリンを含むアミノ酸配列(配列番号12)を含むか、配列番号2と80%の同一性を有し、且つ位置153のプロリンを含むアミノ酸配列を含むか、又は普通であれば配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するMetAP変異型タンパク質の1つであるが、位置153のプロリンを含むアミノ酸配列を含むMetAPタンパク質をコードする。
【0125】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、普通であれば配列番号2に定義されるが、位置168のグルタミン酸を含むアミノ酸配列(配列番号13)を含むか、配列番号2と80%の同一性を有し、且つ位置168のグルタミン酸を含むアミノ酸配列を含むか、又は普通であれば配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するMetAP変異型タンパク質の1つであるが、位置168のグルタミン酸を含むアミノ酸配列を含むMetAPタンパク質をコードする。
【0126】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、普通であれば配列番号2に定義されるが、位置206のグルタミンを含むアミノ酸配列(配列番号4)を含むか、配列番号2と80%の同一性を有し、且つ位置206のグルタミンを含むアミノ酸配列を含むか、又は普通であれば配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するMetAP変異型タンパク質の1つであるが、位置206のグルタミンを含むアミノ酸配列を含むMetAPタンパク質をコードする。
【0127】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、普通であれば配列番号2に定義されるが、位置228のアスパラギン酸を含むアミノ酸配列(配列番号14)を含むか、配列番号2と80%の同一性を有し、且つ位置228のアスパラギン酸を含むアミノ酸配列を含むか、又は普通であれば配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するMetAP変異型タンパク質の1つであるが、位置228のアスパラギン酸を含むアミノ酸配列を含むMetAPタンパク質をコードする。
【0128】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、普通であれば配列番号2に定義されるが、位置233のグルタミンを含むアミノ酸配列(配列番号15)を含むか、配列番号2と80%の同一性を有し、且つ位置233のグルタミンを含むアミノ酸配列を含むか、又は普通であれば配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するMetAP変異型タンパク質の1つであるが、位置233のグルタミンを含むアミノ酸配列を含むMetAPタンパク質をコードする。
【0129】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、普通であれば配列番号2に定義されるが、位置233のロイシンを含むアミノ酸配列(配列番号16)を含むか、配列番号2と80%の同一性を有し、且つ位置233のロイシンを含むアミノ酸配列を含むか、又は普通であれば配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するMetAP変異型タンパク質の1つであるが、位置233のロイシンを含むアミノ酸配列を含むMetAPタンパク質をコードする。
【0130】
これらの実施形態のいずれにおいても、MetAPタンパク質のサイズは、配列番号2に定義されるMetAPタンパク質(286アミノ酸残基)と同じである。
【0131】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、配列番号2に示される配列を有するMetAPタンパク質から、Q57K、L153P、A168E、H206Q、V228D、P233Q、及びP233Lからなる群から選択されるアミノ酸置換によって得られるMetAPタンパク質をコードする。
【0132】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するMetAPタンパク質変異型から、Q57K、L153P、A168E、H206Q、V228D、P233Q、及びP233Lからなる群から選択されるアミノ酸置換によって得られるMetAPタンパク質をコードする。
【0133】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、配列番号2に示される配列を有するMetAPタンパク質から、又は配列番号2と少なくとも80%の同一性を有する、本明細書中で定義されるMetAP変異型タンパク質から、Q57K置換によって得られるMetAPタンパク質をコードする。
【0134】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、配列番号2に示される配列を有するMetAPタンパク質から、又は配列番号2と少なくとも80%の同一性を有する、本明細書中で定義されるMetAP変異型タンパク質から、L153P置換によって得られるMetAPタンパク質をコードする。
【0135】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、配列番号2に示される配列を有するMetAPタンパク質から、又は配列番号2と少なくとも80%の同一性を有する、本明細書中で定義されるMetAP変異型タンパク質から、A168E置換によって得られるMetAPタンパク質をコードする。
【0136】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、配列番号2に示される配列を有するMetAPタンパク質から、又は配列番号2と少なくとも80%の同一性を有する、本明細書中で定義されるMetAP変異型タンパク質から、H206Q置換によって得られるMetAPタンパク質をコードする。
【0137】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、配列番号2に示される配列を有するMetAPタンパク質から、又は配列番号2と少なくとも80%の同一性を有する、本明細書中で定義されるMetAP変異型タンパク質から、V228D置換によって得られるMetAPタンパク質をコードする。
【0138】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、配列番号2に示される配列を有するMetAPタンパク質から、又は配列番号2と少なくとも80%の同一性を有する、本明細書中で定義されるMetAP変異型タンパク質から、P233Q置換によって得られるMetAPタンパク質をコードする。
【0139】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、配列番号2に示される配列を有するMetAPタンパク質から、又は配列番号2と少なくとも80%の同一性を有する、本明細書中で定義されるMetAP変異型タンパク質から、P233L置換によって得られるMetAPタンパク質をコードする。
【0140】
これらの実施形態のいずれにおいても、MetAPタンパク質のサイズは、配列番号2に定義されるMetAPタンパク質(286アミノ酸性残基)と同じである。
【0141】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、最後の四分の一がトランケートされているアミノ酸配列を含むMetAPタンパク質をコードする。「最後の四分の一」とは、MetAPタンパク質のC末端部分が、残基215から残基286で構成されることを意味し、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、ナンバリングに用いられる。したがって、一実施形態において、metAP対立遺伝子は、残基215から残基286で構成される残基に終止コドンを含むMetAPタンパク質をコードし、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、ナンバリングに用いられる。一実施形態において、metAP対立遺伝子は、残基226から残基286で構成される残基に終止コドンを含むMetAPタンパク質をコードし、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、ナンバリングに用いられる。
【0142】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、最後の四分の一がトランケートされているアミノ酸配列を含むMetAPタンパク質をコードし、前記MetAPタンパク質の配列は、配列番号2の対応する部分と少なくとも80%の同一性を有する。「対応する部分」とは、パーセンテージ同一性が、同じアミノ酸範囲についての2つの配列のアライメントに基づいて、残基1から始まって終止コドンの位置まで算出されることを意味する(一例として、タンパク質が位置226にてトランケートされているならば、配列番号2とのMetAPタンパク質の80%の同一性は、残基1~226についての2つの配列のアライメントに基づいて算出される)。「配列番号2の対応する部分との少なくとも80%の同一性」とは、配列番号2の対応する部分との少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、及び少なくとも99%の同一性を意味する。一実施形態において、metAP対立遺伝子は、普通であれば配列番号2に定義される通りであるが、終止コドンを最後の四分の一内に含むアミノ酸配列を含むMetAPタンパク質をコードする。
【0143】
一実施形態において、終止コドンは、ヌクレオチドの挿入及び/又は欠失に由来する。
【0144】
一実施形態において、終止コドンは、1ヌクレオチドの置換に由来する;一実施形態において、metAP対立遺伝子は、位置226にてトランケートされた(すなわち、位置226にて終止コドンを示す)MetAPタンパク質をコードし、配列番号2に示されるアミノ酸配列は、ナンバリングに用いられる。一実施形態において、metAP対立遺伝子のコドン226は、TGAである。
【0145】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、普通であれば配列番号2に定義される通りであるが、位置226に終止コドンを含むアミノ酸配列(配列番号17)を含むか、配列番号2と80%の同一性を有し、且つ位置226に終止コドンを含むアミノ酸配列を含むか、又は普通であれば配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するMetAP変異型タンパク質(本明細書中で定義されるMetAP変異型タンパク質)の1つであるが、位置226に終止コドンを含むアミノ酸配列を含むMetAPタンパク質をコードする。
【0146】
一実施形態において、metAP対立遺伝子は、配列番号2に示される配列を有するMetAPタンパク質から得られるMetAPタンパク質をコードし、位置226のグリシンは、終止コドンで置換されている。一実施形態において、metAP対立遺伝子は、配列番号2と少なくとも80%の同一性を有する、本明細書中で定義されるMetAP変異型タンパク質から得られるMetAPタンパク質をコードし、位置226のグリシンは、終止コドンで置換されている。
【0147】
アミノ酸ナンバリング
本発明において、アミノ酸残基位置の具体的なナンバリングが、本発明のMetAPタンパク質の特性評価に用いられる。候補MetAPタンパク質の、MetAPタンパク質の、又はMetAP変異型タンパク質のアミノ酸配列の、配列番号2に定義されるMetAPタンパク質とのアライメントによって、それぞれ前記候補MetAPタンパク質、前記MetAPタンパク質、又は前記MetAP変異型タンパク質内のアミノ酸残基位置に対して番号を割り当てることが可能であり、これらは、配列番号2に示されるアミノ酸配列のアミノ酸残基の位置又はナンバリングと対応する。
【0148】
本出願で用いられるアミノ酸ナンバリングを説明する別の方法は、アミノ酸位置が、配列番号2に示されるアミノ酸配列内の特定の位置に「対応する」アミノ酸位置によって識別されると言うものである。これは、本発明の配列が、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含まなければならないことを意味すると解釈されるべきでない。当業者であれば、MetAPタンパク質配列が、様々な細菌株の間で異なることを容易に認識するであろう。配列番号2に示されるアミノ酸配列への言及は、単に、特定のあらゆるMetAPタンパク質内の特定のアミノ酸位置の識別を可能にするために用いられる。そのようなアミノ酸位置は、配列アライメントプログラムを使用してルーチン的に識別することができ、その使用は、当該技術において周知である。
【0149】
乳酸菌
本明細書中で用いられる用語「乳酸菌」又は「LAB」は、糖を発酵させて、乳酸を排他的に、又は支配的に産生するグラム陽性菌を指す。
【0150】
一態様において、本発明は、本発明のmetAP対立遺伝子を含む乳酸菌を提供する。別の態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含む乳酸菌を提供する。
【0151】
産業的に最も有用な乳酸菌は、連鎖球菌(Streptococcus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、リューコノストック(Leuconostoc)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、オエノコッカス(Oenococcus)属、及びビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の中で見出される。したがって、一実施形態において、乳酸菌は、この属群から選択されることが好ましい。
【0152】
一実施形態において、本発明の乳酸菌は、連鎖球菌(Streptococcus)属のものである。一実施形態において、本発明の乳酸菌は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)種又はストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)種のものである。特定の実施形態において、本発明の乳酸菌は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)種のものである。
【0153】
一実施形態において、本発明の乳酸菌は、本明細書中で記載されるように、本発明のmetAP対立遺伝子を含むように操作されていてもよい。先に記載したように、「metAP対立遺伝子を含む」は、LABのゲノム内に含有されるmetAP遺伝子の唯一の対立遺伝子が、metAP対立遺伝子であることを意味する。一実施形態において、本発明の乳酸菌は、metAP遺伝子の唯一の対立遺伝子として、本発明のmetAP対立遺伝子を含む。
【0154】
そのような乳酸菌は、metAP遺伝子の元の対立遺伝子を、本発明のmetAP対立遺伝子によって置換することによって操作されていてもよい;置換は、本明細書中で定義される従来の技術を用いて行うことができる。
【0155】
別の実施形態において、そのような乳酸菌は:
a)cos型ファージに対して感受性の親LAB株(参照株)を、前記cos型ファージによってチャレンジすることと;
b)前記cos型ファージに対する感受性が引き下げられた株を選択することと(前記cos型ファージに対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められる);
c)工程b)において識別された、前記cos型ファージに対する感受性が引き下げられた株から、配列が親のLAB株のmetAP対立遺伝子と異なるmetAP対立遺伝子を有する株を選択することと;
d)工程c)において識別された株のmetAP対立遺伝子が、本明細書中で定義されるmetAP対立遺伝子であることをチェックすることと
を含む方法によって操作されてもよい。
【0156】
工程a)のファージによる株のチャレンジに適したプロトコルは、材料及び方法のセクションにおいて記載されている。感受性の引下げ(工程b)は、親のLAB株を参照株として用いて、本明細書中で定義されるプラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められる。特定の実施形態において、感受性の引下げは、EOPアッセイIによって求めた場合、少なくとも4対数、少なくとも5対数、少なくとも6対数、少なくとも7対数、又は少なくとも8対数のEOP引下げによって特徴付けられる。工程b)において識別された株のmetAP遺伝子と、親の株のmetAP遺伝子間の配列の差は、従来のあらゆる方法、例えばDNAシーケンシングによって実行することができる。特定の実施形態において、チェック工程d)は、本明細書中で定義されるMetAPタンパク質をコードするmetAP対立遺伝子を識別する方法を用いて実行される。
【0157】
一実施形態において、方法はまた、工程b)と工程c)との間に、工程b)において識別された株のCRISPR遺伝子座と、親のLAB株のCRISPR遺伝子座とを比較して、CRISPR遺伝子座が、親のLAB株の対応するCRISPR遺伝子座と比較して修飾されていない株を選択することからなる追加の工程[工程b1]を含む。CRISPR遺伝子座の比較は、CRISPR遺伝子座の長さを比較することによって、又はCRISPR遺伝子座を配列決定することによって実行することができる。続いて、工程c)が、工程b1)によって選択された株に実行される。
【0158】
バクテリオファージ
本明細書中で用いられる用語「バクテリオファージ」は、当該技術において理解される通りの従来の意味を有する、すなわち、細菌に選択的に感染するウイルスである。多くのバクテリオファージは、細菌の特定の属、種、又は株に特異的である。用語「バクテリオファージ」は、用語「ファージ」と同義である。
【0159】
「cos型ファージ」の定義は、当該技術に従い、ファージDNAのパッケージングに必要とされる特定の配列(cos部位)の存在を指す。ゆえに、cos型ファージは、ゲノム(cos部位)中に「粘着」末端を組み込み、これは、いわゆるヘッドフルDNAパッケージングシステムを使用し、従って、ゲノム(pac部位)中に追加の冗長性の(redundant)DNAを組み込み得るpac型ファージと対照的である。乳酸菌が挙げられる細菌の種に感染するcos型ファージが知られており、DNAパッケージング戦略に基づいて、又は遺伝的分析若しくはゲノム分析に基づいて識別することができる。
【0160】
S.サーモフィルス(S.thermophilus)において、cos型ファージ及びpac型ファージ(シホウイルス(Siphoviridae)科)が、Le Marrec et al.(1997)に詳述されている。ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株に感染する代表的なcos型ファージが、ファージDT1(本明細書中に記載されている)である。
【0161】
ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)株に感染する代表的なcos型ファージが、ファージM102ADであり、これは、Delisle et al.(2012)に記載されている。M102ADファージは、Felix d’Herelle Reference Centre for Bacterial Virusesにて、照会先HER503の下で入手可能である。このファージの宿主株は、Felix d’Herelle Reference Centre for Bacterial Virusesにて、照会先HER1503の下で入手可能であるストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)HER 1503である。
【0162】
ポリヌクレオチド
更なる態様において、本発明は、本発明のmetAP対立遺伝子[MetAPタンパク質をコードする]を含むか、又はこれからなるポリヌクレオチドを提供する。一実施形態において、ポリヌクレオチドは、本発明のmetAP対立遺伝子[MetAPタンパク質をコードする]である。
【0163】
一実施形態において、本発明のポリヌクレオチドのサイズは、少なくとも843ヌクレオチド、少なくとも846ヌクレオチド、少なくとも849ヌクレオチド、少なくとも852ヌクレオチド、少なくとも855ヌクレオチド、少なくとも858ヌクレオチド、又は少なくとも861ヌクレオチドである。一実施形態において、本発明のポリヌクレオチドのサイズは、3kb未満、2kb未満、又は1kb未満である。一実施形態において、ポリヌクレオチドのサイズは、少なくとも843ヌクレオチド、少なくとも846ヌクレオチド、少なくとも849ヌクレオチド、少なくとも852ヌクレオチド、少なくとも855ヌクレオチド、少なくとも858ヌクレオチド、及び少なくとも861ヌクレオチドからなる群から選択される最小サイズから、1kb、2kb、及び3kbからなる群から選択される最大サイズに及ぶ。一実施形態において、ポリヌクレオチドのサイズは、858ヌクレオチド又は861ヌクレオチドである。
【0164】
一実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、500bpから1kbに及ぶヌクレオチド領域の片側(5’、及び3’)、又は両側の側面に独立して位置する、本明細書中で定義されるmetAP対立遺伝子からなる。
【0165】
典型的には、本発明の範囲によって包含されるポリヌクレオチドは、本明細書中に記載される組換えDNA技術(すなわち組換えDNA)を用いて調製される。しかしながら、本発明の別の実施形態において、ポリヌクレオチドは、当該技術において周知の化学的方法を用いて全部又は一部を合成することができる(Caruthers MH et al.,(1980)Nuc Acids Res Symp Ser 215-23及びHorn T et al.,(1980)Nuc Acids Res Symp Ser 225-232参照)。
【0166】
本明細書中で定義されるMetAPタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、あらゆる乳酸菌から識別且つ/又は単離且つ/又は精製することができる。ポリヌクレオチドの識別及び/又は単離及び/又は精製について、種々の方法が当該技術内で周知である。
【0167】
一例として、適切なポリヌクレオチドが識別且つ/又は単離且つ/又は精製されると、より多くのポリヌクレオチドコピーを調製するPCR増幅技術を用いることができる。
【0168】
更なる例として、MetAPタンパク質を産生する乳酸菌由来の染色体DNAを用いて、ゲノムDNAライブラリを構築することができる。MetAPタンパク質の配列に基づいて、オリゴヌクレオチドプローブを合成してこれを用いて、乳酸菌から調製されたゲノムライブラリ由来のタンパク質コーディングクローンを同定することができる。
【0169】
これ以外にも、本発明のMetAPタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、確立された標準的な方法、例えば、Beucage S.L.et al.,1981,Tetrahedron Letters 22:1859-1869によって記載されるホスホラミダイト法、又はMatthes et al.,1984,EMBO J.,3:801-805によって記載される方法によって合成的に調製することができる。ホスホラミダイト法において、オリゴヌクレオチドは、例えば、自動DNA合成装置で合成され、精製され、アニールされ、ライゲートされ、且つ適切なベクター中にクローニングされる。
【0170】
ポリヌクレオチドは、例えば、米国特許第4,683,202号明細書又はSaiki R K et al.,1988,Science,239:487-491に記載されるように、特異的プライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって調製することができる。
【0171】
本発明によって包含されるポリヌクレオチド及び核酸は、単離されていてもよいし、実質的に精製されていてもよい。「単離された」又は「精製された」とは、ポリヌクレオチドが、天然の状態でポリヌクレオチドと通常は関連して見出される構成要素から、実質的に、又は本質的に解き放たれていることを意図する。そのような構成要素として、他の細胞材料、組換え生産由来の培地、及び核酸を化学的に合成する際に用いられる種々の化学物質が挙げられる。
【0172】
「単離された」ポリヌクレオチド又は核酸は、典型的に、核酸が由来する生物のゲノムDNA中の注目する核酸の側面に位置する核酸配列(5’末端又は3’末端に存在するコーディング配列等)から解き放たれている。しかしながら、分子は、組成物の基本的な特徴に悪影響を与えない、一部の追加の塩基又は部分(bases or moieties)を含んでもよい。
【0173】
ベクター
また、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターに関する。一実施形態において、当該ベクターはプラスミドである。
【0174】
一実施形態において、ベクターは、1つ又は複数の選択マーカー遺伝子、例えば、抗生物質耐性、例えばアンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール又はテトラサイクリン耐性を付与する遺伝子を含有する。一実施形態において、ベクターは、問題となっている宿主細胞内でベクターが複製することを可能とするヌクレオチド配列を含む。そのような配列の例として、プラスミドpUC19、pACYC177、pUBl 10、pE194、pAMBl、及びpIJ702の複製起源がある。
【0175】
本発明のベクターを用いて、本発明の乳酸菌を操作することができる。
【0176】
本発明のポリヌクレオチド又はベクターに基づく使用及び方法
一実施形態において、本発明は、cos型ファージに対して感受性の乳酸菌の少なくとも1つのcos型ファージに対する感受性を引き下げるための、本発明のポリヌクレオチド又はベクターの使用に関する。本発明のLABが、metAP遺伝子のいくつかの対立遺伝子を含むことは意図されない。ゆえに、ポリヌクレオチド又はベクターは、結果として生じる乳酸菌が、ゲノム内にmetAP遺伝子の1つのmetAP対立遺伝子を含むように用いられる。一実施形態において、ポリヌクレオチド又はベクターは、元の乳酸菌のmetAP遺伝子の対立遺伝子が、本発明のポリヌクレオチドによって置換されるように用いられる;置換は、本明細書中で定義される従来の技術を用いて行うことができる。
【0177】
一態様において、本発明は、少なくとも1つのcos型ファージに対する感受性が引き下げられた乳酸菌株を調製する方法であって:
a)cos型ファージ(参照株)に対して感受性の乳酸菌株を用意することと;
b)cos型ファージに対して感受性の前記乳酸菌株のmetAP遺伝子を、本発明のポリヌクレオチドで置換することと;
c)少なくとも1つのcos型ファージに対する感受性が引き下げられた乳酸菌株を回収することと
を含む方法に関する。
【0178】
一実施形態において、工程b)は、cos型ファージに対して感受性の前記乳酸菌株のmetAP遺伝子を、本発明のmetAP対立遺伝子からなるポリヌクレオチドで置換することからなる。
【0179】
一態様において、本発明は、少なくとも1つのcos型ファージに対する感受性が引き下げられた乳酸菌株を調製する方法であって:
a)cos型ファージ(参照株)に対して感受性の乳酸菌株を用意することと;
b)cos型ファージに対して感受性の乳酸菌株のmetAP遺伝子を、本発明のmetAP対立遺伝子と同じ配列を有するように修飾することと;
c)少なくとも1つのcos型ファージに対する感受性が引き下げられた乳酸菌株を回収することと
を含む方法に関する。
【0180】
これらの2つの方法の実施形態において、乳酸菌は、連鎖球菌(Streptococcus)属のものである。特定の実施形態において、乳酸菌は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)種又はストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)種のものである。一実施形態において、乳酸菌は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)種のものである。
【0181】
本発明の使用又は方法内で、バクテリオファージに対する乳酸菌の感受性は、本明細書中に記載されるプラーク形成効率アッセイIでプラーク形成効率(EOP)を算出することによって求めることができる。
【0182】
「cos型ファージに対する感受性の引下げ」とは、EOPアッセイIによって求めた場合の、少なくとも4対数のEOP引下げを意味する。一実施形態において、EOP引下げは、少なくとも5対数の引下げである。一実施形態において、EOP引下げは、少なくとも6対数の引下げである。一実施形態において、EOP引下げは、少なくとも7対数の引下げである。一実施形態において、EOP引下げは、少なくとも8対数の引下げである。
【0183】
本発明のポリヌクレオチドを含む乳酸菌
本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含む乳酸菌に関する。
【0184】
更なる態様において、本発明は、本発明の使用又は方法によって得た乳酸菌に関する。
【0185】
さらに他の態様において、本発明は、本発明の方法によって生産される、本発明に従う乳酸菌を提供する。
【0186】
セクション「乳酸菌」の下で先に与えた定義は、ここでも同様に当てはまる。
【0187】
一実施形態において、乳酸菌は、連鎖球菌(Streptococcus)属のものである。一実施形態において、乳酸菌は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)種又はストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)種のものである。一実施形態において、乳酸菌は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)種のものである。
【0188】
一実施形態において、本発明の乳酸菌は、本発明のポリヌクレオチドを含むように操作されていてもよい。本発明のLABが、metAP遺伝子のいくつかの対立遺伝子を含むことは意図されない。一実施形態において、本発明の乳酸菌は、metAP遺伝子の唯一の対立遺伝子として、本発明のポリヌクレオチドを含む。そのような乳酸菌は、metAP遺伝子の元の対立遺伝子を、本発明のポリヌクレオチドによって置換することによって操作されていてもよい;置換は、本明細書中で定義される従来の技術を用いて行うことができる。一実施形態において、本発明の乳酸菌は、本明細書中に記載される乳酸菌の株を調製する方法によって操作されている。
【0189】
細菌組成物
また、本発明は、少なくとも1つ、好ましくは1つの、本発明の乳酸菌株を含むか、又はこれからなる細菌組成物に関する。特定の実施形態において、乳酸菌は、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)である。一実施形態において、細菌組成物は、純粋な培養体である、すなわち、本発明の単一の乳酸菌株を含むか、又はこれからなる。別の実施形態において、細菌組成物は、混合培養体である、すなわち、本発明の乳酸菌株及び少なくとも1つの他の細菌株を含むか、又はこれらからなる。一実施形態において、細菌組成物は、純粋な培養体である、すなわち、本発明の単一のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株を含むか、又はこれらからなる。別の実施形態において、細菌組成物は、混合培養体である、すなわち、本発明のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株及び少なくとも1つの他の細菌株を含むか、又はこれらからなる。「少なくとも」1つの他の細菌株とは、1つ又はそれ以上、特に1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの株を意味する。
【0190】
ゆえに、一実施形態において、本発明の細菌組成物は、本発明の乳酸菌株、例えばストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株、並びにラクトコッカス(Lactococcus)属種、連鎖球菌(Streptococcus)属種、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)が挙げられるラクトバチルス(Lactobacillus)属種、エンテロコッカス(Enterococcus)属種、ペディオコッカス(Pediococcus)属種、リューコノストック(Leuconostoc)属種、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属種、及びオエノコッカス(Oenococcus)属種、又はそれらのあらゆる組合せからなる群から選択される種の1つ又は複数の更なる乳酸菌を含むか、又はこれらからなる。ラクトコッカス(Lactococcus)属種として、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp.lactis)、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・クレモリス(Lactococcus lactis subsp.cremoris)、及びラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティス・バイオバリアント・ダイアセチラクチス(Lactococcus lactis subsp.biovar diacetylactis)を含むラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)が挙げられる。ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属種として、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)、特にビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシズ・ラクティス(Bifidobacterium animalis subsp lactis)が挙げられる。他の乳酸菌種として、リューコノストック(Leuconostoc)属種、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ラクトバチルス・デルブリュッキイ・サブスピーシズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)、及びラクトバチルス・ヘルベティクス(Lactobacillus helveticus)が挙げられる。
【0191】
一実施形態において、細菌組成物は、本発明のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株、及び本発明のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株とは異なる少なくとも1つのストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株、及び/又はラクトバチルス(Lactobacillus)属種の少なくとも1つの株、及び/又はそれらのあらゆる組合せを含むか、又はこれらからなる。特定の実施形態において、細菌組成物は、本発明のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株、ラクトバチルス・デルブリュッキイ・サブスピーシズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)種の1つ若しくはいくつかの株、及び/又はラクトバチルス・ヘルベティクス(Lactobacillus helveticus)種の1つ若しくはいくつかの株、及び/又はそれらのあらゆる組合せ、並びに、場合によっては、本発明のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株とは異なる少なくとも1つのストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株を含むか、又はこれらからなる。特定の実施形態において、細菌組成物は、本発明のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株、本発明のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株とは異なるストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)種の少なくとも1つの株、及びラクトバチルス・デルブリュッキイ・サブスピーシズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)種の株を含むか、又はこれらからなる。別の特定の実施形態において、細菌組成物は、本発明のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株、及びラクトバチルス・デルブリュッキイ・サブスピーシズ・ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)種の株を含むか、又はこれらからなる。
【0192】
一実施形態において、細菌組成物は、本発明の乳酸菌株、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp.lactis)、及び/又はラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・クレモリス(Lactococcus lactis subsp.cremoris)を含むか、又はこれらからなる。一実施形態において、細菌組成物は、本発明のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp.lactis)、及び/又はラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・クレモリス(Lactococcus lactis subsp.cremoris)を含むか、又はこれらからなる。
【0193】
本明細書中で定義されるあらゆる細菌組成物の特定の実施形態において、純粋培養体又は混合培養体のいずれかとして、細菌組成物はさらに、少なくとも1つのプロバイオティック株、例えばビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシズ・ラクティス(Bifidobacterium animalis subsp.lactis)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、又はラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)を含む。
【0194】
特定の実施形態において、細菌組成物は、先で定義される純粋培養体又は混合培養体のいずれかとして、凍結したか、乾燥したか、凍結乾燥したか、液体か、若しくは固体のフォーマット、ペレット若しくは凍結ペレットの形態、又は粉末若しくは乾燥粉末である。特定の実施形態において、本発明の細菌組成物は、特に1つ又は複数のボックス又はサシェ中に含有される、凍結フォーマット、又はペレット若しくは凍結ペレットの形態である。別の実施形態において、本明細書中で定義される細菌組成物は、特に1つ又は複数のボックス又はサシェ中に含有される、粉末形態、例えば乾燥粉末又は凍結乾燥粉末である。
【0195】
特定の実施形態において、本発明の細菌組成物は、先で定義される純粋培養体又は混合培養体のいずれかとして、そしてフォーマット(凍結したか、乾燥したか、凍結乾燥したか、液体か、若しくは固体のフォーマット、ペレット若しくは凍結ペレットの形態、又は粉末若しくは乾燥粉末)が何であれ、本発明の乳酸菌株を、細菌組成物の1グラムあたり10~1012cfu(コロニー形成単位)(cfu/g)の範囲内に含まれる濃度で含む。特定の実施形態において、本発明の細菌組成物内の乳酸菌株の濃度は、細菌組成物の1グラムあたり10~1012cfuの範囲内、特に少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも1010、又は少なくとも1011cfu/細菌組成物gである。特定の実施形態において、凍結濃縮物又は乾燥濃縮物の形態である場合、細菌組成物内の(純粋培養体として、又は混合培養体としての)本発明の乳酸菌株の濃度は、10~1012cfu/凍結濃縮物又は乾燥濃縮物gの範囲内、より好ましくは少なくとも10、少なくとも10、少なくとも1010、少なくとも1011、又は少なくとも1012cfu/凍結濃縮物又は乾燥濃縮物gである。
【0196】
特定の実施形態において、本発明の細菌組成物は、先で定義される純粋培養体又は混合培養体のいずれかとして、そしてフォーマット(凍結したか、乾燥したか、凍結乾燥したか、液体か、若しくは固体のフォーマット、ペレット若しくは凍結ペレットの形態、又は粉末若しくは乾燥粉末)が何であれ、本発明のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株を、細菌組成物の1グラムあたり10~1012cfu(コロニー形成単位)の範囲内に含まれる濃度で含む。特定の実施形態において、本発明の細菌組成物内のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株の濃度は、細菌組成物の1グラムあたり10~1012cfuの範囲内、特に少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも1010、又は少なくとも1011cfu/細菌組成物gである。特定の実施形態において、凍結濃縮物又は乾燥濃縮物の形態である場合、細菌組成物内の(純粋培養体として、又は混合培養体としての)ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株の濃度は、10~1012cfu/凍結濃縮物又は乾燥濃縮物gの範囲内、より好ましくは少なくとも10、少なくとも10、少なくとも1010、少なくとも1011、又は少なくとも1012cfu/凍結濃縮物又は乾燥濃縮物gである。
【0197】
一実施形態において、株の数及び性質、株の組成物のフォーマット及び濃度が何であれ、細菌組成物はさらに、食品が許容可能な構成要素を含む。
【0198】
更なる態様において、発酵製品を製造する方法であって、a)基質に、本発明に従う乳酸菌又は細菌組成物を接種することと、b)接種された基質を発酵させて、発酵製品を得ることとを含む方法が提供される。特定の実施形態において、本発明の乳酸菌株は、本明細書中で定義される細菌組成物、例えば純粋培養体又は混合培養体として接種される。好ましくは、基質は、乳基質、より好ましくは乳である。「乳基質」とは、動物起源及び/又は植物起源の乳を意味する。特定の実施形態において、乳基質は、動物起源のもの、特にあらゆる哺乳動物、例えば、ウシ、ヤギ、ヒツジ、バッファロー、シマウマ、ウマ、ロバ、又はラクダのものである。乳は、天然の状態、還元乳、脱脂乳、又は細菌の増殖に、若しくは発酵乳の以降のプロセシングに必須の化合物が補充された乳であってもよい。好ましくは、乳基質は、固体の品目を含む。好ましくは、固体の品目は、果物、チョコレート製品、又は禾穀類を含むか、又はそれからなる。好ましくは、発酵製品は、発酵乳製品である。したがって、特定の実施形態において、本発明はまた、発酵乳製品を製造する方法であって、a)乳基質に本発明のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株又は細菌組成物を接種することと、b)前記接種された乳基質を発酵させて、発酵乳製品を得ることとを含む方法を提供する。
【0199】
また、本発明は、更なる態様において、食品又は飼料製品、好ましくは発酵乳製品を製造するための、本発明に従う乳酸菌又は細菌組成物の使用を提供する。
【0200】
また、本発明は、本発明の乳酸菌株又は細菌組成物を用いて得られる、特に本発明の方法によって得られるか、又は獲得可能である発酵乳製品に関する。ゆえに、本発明は、本発明の乳酸菌株を含む発酵乳製品に関する。好ましくは、発酵乳製品は、本発明のストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株を含む。特定の実施形態において、本発明の発酵乳食品は、フレッシュな発酵乳である。
【0201】
製品
本発明の乳酸菌又は細菌組成物から調製されるか、これを含有するか、又はこれを含むあらゆる製品が、本発明に従って意図される。
【0202】
適切な製品として、以下に限定されないが、食品又は飼料製品が挙げられる。
【0203】
これらとして、以下に限定されないが、果物、豆類、飼料作物、及び野菜が挙げられ、派生製品、穀物及び穀物由来製品、乳食品及び乳食品由来製品、肉、鳥肉、並びに海産食品が挙げられる。好ましくは、食品又は飼料製品は、乳製品、肉製品、又は禾穀類製品である。
【0204】
用語「食品」は、広義に用いられ、飼料、食材、食物成分、食物補助食品、及び機能性食品が挙げられる。本明細書では、用語「食品」は、広義に用いられ、ヒト用の食品及び動物用の食品(すなわち飼料)を包含する。好ましい態様において、食品は、ヒト食用である。
【0205】
本明細書中で用いられる用語「食物成分」は、製剤を含み、これは、食品に加えられるか、又は加えることができ、例えば酸性化又は乳化を必要とする、多種多様な製品に低いレベルにて用いることができる製剤が挙げられる。
【0206】
本明細書中で用いられる用語「機能性食品」は、栄養学的効果及び/又は味覚の満足感を提供することができるだけでなく、消費者に更なる有益な効果を届けることもできる食品を意味する。機能性食品の法的な定義は存在しないが、この分野において関心があるほとんどの団体は、特定の健康効果を有するものとして市販されている食品が存在することに同意している。
【0207】
本発明の乳酸菌は、食物成分、食物補助食品、又は機能性食品であってもよいし、これらに加えられてもよい。
【0208】
食品は、用途及び/又は使用モード及び/又は投与モードに応じて、溶液の形態であっても固体としてあってもよい。
【0209】
本発明の乳酸菌は、食品、例えば菓子類製品、乳製品、肉製品、鳥肉製品、魚製品、又はベーカリー製品の調製に用いることができる。
【0210】
一例として、細菌は、ソフトドリンク、フルーツジュース、又はホエータンパク質を含む飲料、茶、ココア飲料、乳飲料、及び乳酸菌飲料、ヨーグルト、飲用ヨーグルト、及びワインを調製する成分として用いることができる。
【0211】
好ましくは、本明細書中で記載される食品は、乳製品である。より好ましくは、本明細書中で記載される乳製品は、以下の1つ又は複数である:ヨーグルト、チーズ(例えば、酸凝乳チーズ、ハードチーズ、セミハードチーズ、カテージチーズ)、バターミルク、クワルク、サワークリーム、ケフィア、発酵ホエーベースの飲料、クミス、乳飲料、ヨーグルト飲料、発酵乳、マチュアクリーム、チーズ、フロマージュフレ、乳、乳製品リテンテート、プロセスチーズ、クリーム状のデザート、又は乳児用ミルク。
【0212】
好ましくは、本明細書中に記載される食品は、発酵食品である。より好ましくは、本明細書中に記載される食品は、発酵乳製品、例えば、発酵乳、ヨーグルト、クリーム、マチュアクリーム、チーズ、フロマージュフレ、乳飲料、プロセスチーズ、クリーム状のデザート、カテージチーズ、ヨーグルト飲料、乳製品リテンテート、又は乳児用ミルクである。
【0213】
好ましくは、本発明に従う乳製品は、動物起源及び/又は植物起源の乳を含む。
【0214】
乳は、動物起源のもの、特にあらゆる哺乳動物、例えば、ウシ、ヤギ、ヒツジ、バッファロー、シマウマ、ウマ、ロバ、又はラクダ等のものを意味することが理解される。また、用語乳は、植物性ミルクと一般的に呼ばれているもの、すなわち、処理された植物材料、又はそうでなければ、例えば、マメ科植物(ダイズ、ヒヨコマメ、レンズマメ等)又は油糧種子(ナタネ、ダイズ、ゴマ、ワタ等)の抽出液に用いられ、当該抽出液は、溶液中に、又はコロイド懸濁液中にタンパク質を含有し、当該タンパク質は、化学作用によって、酸発酵によって、且つ/又は熱によって凝固可能である。最後に、文言乳はまた、動物性ミルクの、そして植物性ミルクの混合液を表す。
【0215】
一実施形態において、用語「乳」は、10分±1分間の90℃±0.2℃での加熱によって低温殺菌した3%(w/w)の半脱脂粉乳を補充した市販のUHT乳を意味する。
【0216】
本発明のMetAPタンパク質の配列内のアミノ酸等価物
一実施形態において、本発明のMetAPタンパク質は、位置57のリシン又はその等価のアミノ酸、位置153のプロリン又はその等価のアミノ酸、位置168のグルタミン酸又はその等価のアミノ酸、位置206のグルタミン又はその等価のアミノ酸、位置228のアスパラギン酸又はその等価のアミノ酸、位置233のグルタミン又はその等価のアミノ酸、及び位置233のロイシン又はその等価のアミノ酸からなる群から選択されるアミノ酸を含むことによって特徴付けられる。
【0217】
「その等価のアミノ酸」とは、MetAPタンパク質をコードするmetAP対立遺伝子が、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株のmetAP遺伝子の対立遺伝子の代わりに挿入されている場合に、(本明細書中で定義される)ファージDT1に対する感受性を引き下げる限り、残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性の性質の類似性を有するあらゆるアミノ酸を意味し、ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められる。
【0218】
一実施形態において、リシンに等価のアミノ酸は、グルタミン酸、アスパラギン酸、及びアルギニンからなる群から選択される。
【0219】
一実施形態において、プロリンに等価のアミノ酸は、アラニン及びグリシンからなる群から選択される。
【0220】
一実施形態において、グルタミン酸に等価のアミノ酸は、アスパラギン酸及びリシンからなる群から選択される。
【0221】
一実施形態において、グルタミンに等価のアミノ酸は、アスパラギン及びセリンからなる群から選択される。
【0222】
一実施形態において、アスパラギン酸に等価のアミノ酸は、グルタミン酸及びリシンからなる群から選択される。
【0223】
一実施形態において、ロイシンに等価のアミノ酸は、メチオニン、バリン、イソロイシン、及びフェニルアラニンからなる群から選択される。
【0224】
MetAPタンパク質の同一性のパーセンテージ
1)配列が配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するMetAPタンパク質をコードし、且つ2)EOPを引き下げないか、又はEOPを3対数未満引き下げる(ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められる)metAP対立遺伝子は、metAP変異型対立遺伝子(MetAP変異型タンパク質をコードする)と本明細書中で定義される。配列番号2に対する少なくとも80%の同一性のパーセンテージは、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、及び少なくとも99%からなる群から選択される同一性のパーセンテージを意味する。一実施形態において、MetAP変異型タンパク質の配列は、配列番号2と異なるが、MetAP変異型タンパク質のサイズは、配列番号2に定義されるMetAPタンパク質(286アミノ酸残基)と同じである。
【0225】
1)配列が、配列番号2と少なくとも80%の同一性を有するMetAPタンパク質をコードし、且つ2)ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301誘導株の、ファージDT1に対する感受性を少なくとも4対数引き下げる[前記SMQ-301誘導株は、metAP対立遺伝子によってmetAP対立遺伝子が置換されているストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)SMQ-301株である](ファージDT1に対する感受性は、プラーク形成効率(EOP)アッセイIによって求められる)metAP対立遺伝子は、metAP対立遺伝子(MetAPタンパク質をコードする)と本明細書中で定義される。配列番号2に対する少なくとも80%の同一性のパーセンテージは、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、及び少なくとも99%からなる群から選択される同一性のパーセンテージを意味する。一実施形態において、MetAPタンパク質の配列は、配列番号2と異なるが、MetAPタンパク質のサイズは、配列番号2に定義されるMetAPタンパク質(286アミノ酸残基)と同じである。
【0226】
配列の比較は、目視によって、又はより一般的には、容易に利用可能な配列比較プログラムを使用して行うことができる。これらの市販の、又は自由に利用できるコンピュータプログラムは、2つ又はそれ以上の配列間の類似性値又は同一性値を算出することができる。
【0227】
相同性のパーセンテージは、アラインした連続配列にわたって算出することができ、すなわち、一方の配列を別の配列に対してアラインして、一方の配列内の各アミノ酸を、他方の配列内の対応するアミノ酸と、1回に1残基、直接比較する。これは「ギャップなし」アライメントと呼ばれる。典型的には、そのようなギャップなしアライメントは、比較的少数の残基にわたってのみ実行される。
【0228】
これは非常に簡易で一貫した方法であるが、例えば、配列の普通であれば同一のペアにおいて、ある挿入又は欠失が、後続のアミノ酸残基をアライメントから外すこととなることを考慮できないので、グローバルアライメントを実施する場合に同一性を大きく低下させる可能性がある。結果的に、ほとんどの配列比較法は、同一性スコア全体を不当にペナルティ化することなく、考えられる挿入及び欠失を考慮する最適なアライメントをもたらすように設計されている。これは、配列アライメント中に「ギャップ」を挿入して、局所同一性の最大化を試みることによって達成される。これらのより複雑な方法は、同数の同一アミノ酸について、ギャップが可能な限り少ない配列アライメント(2つの比較配列間のより高い関係性を反映する)が、ギャップが多いものよりも高いスコアを達成するように、アライメント中に生じる各ギャップに「ギャップペナルティ」を割り当てる。典型的には、あるギャップの存在に対して比較的高いコストを課し、そして当該ギャップ中の後続の各残基に対してより小さいペナルティを課す「アファインギャップコスト」が使用される(ギャップエクステンションペナルティ)。これは、最も一般的に使用されるギャップスコアリングシステムである。高いギャップペナルティは、勿論、ギャップがより少ない最適化されたアライメントを生成することとなる。ほとんどのアライメントプログラムは、ギャップペナルティが変更されることを許容する。しかしながら、配列比較にそのようなソフトウエアを用いる場合、デフォルト値を用いることが可能である。なぜなら、当該デフォルト値は、ほとんどの場合、妥当な結果をもたらすように調整されてきたからである。したがって、同一性の最大パーセンテージの算出には、最初に、ギャップペナルティを考慮して、最適なアライメントを作成することが要求される。そのようなアライメントを実施するのに適したコンピュータプログラムは、Vector NTI(Invitrogen Corp.)である。配列比較を実施することができるソフトウエアの例として、以下に限定されないが、BLASTパッケージ(Ausubel et al.,1999,Short Protocols in Molecular Biology,4th Ed-Chapter 18)が挙げられる。
【0229】
アライメント品質を同一性に関して測定することができるが、アライメントプロセスそれ自体は典型的に、オールオアナッシングのペア比較に基づかない。代わりに、化学的類似性又は進化的距離に基づいて、各ペアワイズ比較にスコアを割り当てる数値換算類似性(scaled similarity)スコアマトリックスが一般に使用される。一般に使用されるそのようなマトリックスの一例が、BLOSUM62マトリックス(BLASTプログラムスイートのためのデフォルトマトリックス)である。Vector NTIプログラムは、一般に、パブリックデフォルト値、又は供給されていればカスタム比較表を使用する(更なる詳細については、ユーザマニュアルを参照)。これ以外にも、類似性のパーセンテージは、CLUSTAL(Higgins DG&Sharp PM(1988),Gene 73(1),237-244)と類似するアルゴリズムに基づくVector NTI(Invitrogen Corp.)における多重アライメント特徴を使用して算出することができる。
【0230】
ソフトウエアが最適なアライメントを作成すれば、配列類似性のパーセンテージ、好ましくは配列同一性のパーセンテージを算出することが可能である。ソフトウエアは、典型的に、これを配列比較の一部として実行して、数的結果を生成する。
【0231】
一実施形態において、タンパク質(アミノ酸)配列に関する同一性の程度は、少なくとも50個の連続アミノ酸にわたって、少なくとも100個の連続アミノ酸にわたって、少なくとも150個の連続アミノ酸にわたって、少なくとも200個の連続アミノ酸にわたって、又は少なくとも250個の連続アミノ酸にわたって求められる。
【0232】
一実施形態において、アミノ酸又はタンパク質配列に関する同一性の程度は、配列番号2の全配列にわたって求めることができる。
【0233】
一実施形態において、配列[MetAP変異型タンパク質の候補配列及び配列番号2]は、グローバルアライメントプログラムによってアラインされ、そして配列同一性は、候補配列の長さで割った、プログラムによって識別される正確なマッチ数を識別することによって算出される。
【0234】
一実施形態において、MetAP変異型タンパク質の候補配列と配列番号2との配列同一性の程度を:1)2つの配列を、任意の適切なアライメントプログラムによって、デフォルトのスコアリングマトリックス及びデフォルトのギャップペナルティを使用してアラインすることと、2)正確なマッチ数を同定することと(ここで、正確なマッチとは、アライメントプログラムがアライメントにおいて所定の位置上にある2つのアラインされた配列内の同一アミノ酸を同定した場合である)、3)正確なマッチ数を、候補配列の長さで割ることとによって求める。
【0235】
一実施形態において、グローバルアライメントプログラムは、デフォルトパラメータを用いるCLUSTAL及びBLAST、特にCLUSTALからなる群から選択され、配列同一性は、対象配列の長さで割った、プログラムによって識別される正確なマッチ数を識別することによって算出される。
【0236】
一実施形態において、グローバルアライメントプログラムは、デフォルトパラメータを用いたCLUSTALであり、そして配列同一性は、BioEditソフトウエア(http://www.mbio.ncsu.edu/BioEdit/bioedit.html)で求められる[「Sequence」ドロップダウンメニューを選択し、続いて「Pairwise alignment」サブメニューを選択してから、「Calculate identity/similarity for two sequences」メニュー項目を選択する]。
【0237】
一般的な組換えDNA方法論の技術
本発明は、特に示されない限り、当業者の能力の範囲内である生化学、分子生物学、微生物学、及び組換えDNAの従来技術を使用する。そのような技術は、文献に説明されている。例えば、J.Sambrook,E.F.Fritsch,and T.Maniatis,1989,MolecularCloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Books1-3,Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubel,F.M.et al.(1995 and periodic supplements;Current Protocols in Molecular Biology,ch.9,13,and,16,John Wiley&Sons,New,York,N.Y.);B.Roe,J.Crabtree,and,A.Kahn,1996,DNA Isolation and Sequencing:Essential Techniques,John Wiley&Sons;M.J.Gait(Editor),1984,Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach, Irl Press;及びD.M.J.Lilley and J.E.Dahlberg,1992,Methods of Enzymology:DNA Structure Part A:Synthesis and Physical Analysis of DNA Methods in Enzymology,Academic Pressを参照。これらのテキスト全般はそれぞれ、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0238】
次に、本発明を実施例によってさらに説明する。実施例は、本発明を実施する際に当業者を補助するのに役立つはずであり、いかなる形であれ、本発明の範囲を制限することは意図されない。
【実施例
【0239】
材料及び方法
細胞増殖及びファージ増殖
細菌株、ファージ、及びプラスミドを、表1に記載する。S.サーモフィルス(S.thermophilus)を、37℃又は42℃にて、0.5%ラクトース(LM17)を補充したM17培地(Oxoid,Nepean)中で増殖させた。必要であれば、pNZ123(De Vos et al.1987)及び誘導体を含有するS.サーモフィルス(S.thermophilus)株の増殖及び選択用に、クロラムフェニコール(Sigma,Oakville)を5μg/mLの最終濃度まで加えた。固形培地用に、アガー(LabMat,Quebec)を1%の最終濃度まで加えた。30μg/mLカナマイシン及び20μg/mLクロラムフェニコールを選択用に補充したルリアブロス(LB)中で、大腸菌(Escherichia coli)を37℃にて撹拌しながら増殖させた。pNZ123+細胞を選択する場合には10μg/mLのクロラムフェニコールを補充した、Brain Heart Infusion(BHI,Difco)中で、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)HER1503を37℃、5%COにて増殖させた。以前に記載されるように(Hynes et al.,2017)、ファージを増殖させた。
【0240】
バクテリオファージ非感受性ミュータント単離
バクテリオファージ非感受性ミュータント(BIM)を、以前に記載されるように(Hynes et al.,2017)、ソフトアガーオーバレイアッセイを用いて単離した。手短に言うと、野生型宿主S.サーモフィルス(S.thermophilus)SMQ-301を、ファージDT1でチャレンジした。細菌宿主を、LM17中で42℃にて、600nmでの光学濃度(OD600nm)が0.6に達するまで増殖させた。続いて、300μLの培養体を、塩化カルシウム(10mM)を補充した3mLの溶融LM17ソフトアガーに加えて、ファージDT1を、0.1の感染多重度(MOI)を達成するように加えた。プレートを、42℃にて16時間インキュベートした。結果として生じたコロニーを、LM17+1%アガー上にストリーキングして、CR1遺伝子座及びCR3遺伝子座におけるスペーサー獲得の有無に関して、CR1遺伝子座についてプライマーCR1-fwd及びCR1-revLongを、そしてCR3遺伝子座についてプライマーCR3-fwd及びCR3-revを用いてスクリーニングした(Hynes et al.,2017)。スペーサー獲得がCRISPRアレイ内で検出されなかった場合、BIMをゲノム配列決定用に保存した。
【0241】
【表1】
【0242】
DNA単離、配列決定、及びバイオインフォマティクス分析
以前に記載されるように(Bissonnette et al.,2000)、BIMのゲノムDNAを抽出した。ゲノムを、Illumina MiSeqプラットフォームを用いて配列決定した。ライブラリを、Nextera XT DNAサンプル調製キットにより、メーカーの説明書に従って調製して、MiSeq試薬(2×250nt対形成末端)を用いて配列決定した。平均カバー率は、6.8~80.1倍に及んだ。9つのBIMのゲノムについて得たリードを、デフォルト設定のNovoalign(http://www.novocraft.com)を用いて、S.サーモフィルス(S.thermophilus)SMQ-301ゲノム(Labrie et al.,2015)に対してアラインした。突然変異を、SAMTools(Li et al.,2009)を用いてアライメントファイルから抽出した。自社のPythonスクリプトを用いて、細菌ゲノム内の突然変異をマッピングして、タンパク質配列に翻訳した。SAMToolsによって提供されるスコアが最も高い突然変異を、第1であるとみなした。
【0243】
相補性アッセイ
S.サーモフィルス(S.thermophilus)SMQ-301:MetAPH206Q株を、配列番号1に示されるmetAP対立遺伝子(SMQ-301のmetAP対立遺伝子)で補完した。第1に、配列番号1に示されるmetAP対立遺伝子を、Gibsonアセンブリを用いてpNZ123中にクローニングした。ベクターpNZ123を、XbaI(Roche)により、メーカーの説明書に従って線状化した。挿入物を、Q5高フィデリティDNAポリメラーゼ(NEB)により、プライマーSJL154及びSJL155で増幅させた。双方のプライマーは、線状化ベクターの3’末端及び5’末端をそれぞれ補完する30ntの拡張を有した。3:1の挿入/ベクター比をアセンブリに用いた。以前に記載されるように(Gibson et al.,2009)、Gibsonアセンブリ用のマスター混合物を調製した。結果として生じた構築体を、メーカーの説明書に従って大腸菌(E.coli)NEB5α中に形質転換して、クローンを、1%アガー及び25μg/mLクロラムフェニコールを補充したLB培地上で選択した。1クローンを、CHUL CenterのPlateforme de Sequencage et de Genotypage des Genomesでのサンガーシーケンシング(ABI 3730xl)によって確認した。プラスミドDNAを、QIAprep Spin Miniprepキット(Qiagen)を用いて抽出して、S.サーモフィルス(S.thermophilus)中に形質転換した(Hynes et al.,2017)。1%アガー及び5μg/mLのクロラムフェニコールを補充したLM17上に形質転換混合物を広げることによって、クローンを選択した。
【0244】
指向性突然変異誘発及びランダム突然変異誘発
所望の突然変異を有するmetAP対立遺伝子を、プライマーSJL128及びSJL130(表2)を用いるPCRによって増幅させた。50μLの少なくとも10回のPCR反応をアッセイ毎に行って、自然形質転換に十分なDNAを得た。全ての反応液をプールして、1.5mLの95%エタノール及び75μLの3M酢酸ナトリウム(pH5.2)を加えることによって析出させた。チューブを、25,000×gで4℃にて20分間遠心分離した。DNAペレットを、1mLの70%エタノールで2回洗浄して、室温にて10分間乾燥させて、微量のエタノールを除去した。最後に、ペレットを150μLの水中に溶解させた。直鎖状DNAフラグメントを、自然形質転換(Gardan et al.,2009)によってS.サーモフィルス(S.thermophilus)中に導入した。手短に言うと、S.サーモフィルス(S.thermophilus)を、1mLのLM17中で37℃にて一晩増殖させた。培養体を17,000×gにて1分間遠心分離して、細菌細胞を合成培地(CDM)で2回洗浄して、1mLのCDM中に回収した。最終培養体を30倍希釈して0.05のOD600nmを得て、37℃にて75分インキュベートしてから-20℃にて保存した。形質転換用に、1μMのペプチドComS及び1μgの直鎖状DNAを、300μLの自然コンピテント細胞に加えた。混合液を、37℃にて3時間インキュベートした。細胞を段階希釈して、非選択LM17アガー上に広げて、単離したコロニーを得た。所望の突然変異を有するクローンを検出するように具体的に設計したPCRアプローチを用いて、コロニーをスクリーニングした。このプロトコルに用いたプライマーの1つは、その3’末端に所望の突然変異を含んだ。ゆえに、スクリーニングしたクローン中に突然変異が存在すれば、PCR増幅は陽性のみであった。形質転換体をスクリーニングするのに用いたプライマーSJL154及びSJL155の配列を、表2に記載する。ランダム突然変異誘発のために、指向性突然変異誘発と同じプロトコルを用いたが、唯一の例外は、MnSOを加えた(最終10μM)こと、そしてファージDT1を耐性クローンの選択に用いたことである。
【0245】
【表2】
【0246】
ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)における指向性metAP突然変異誘発
metAP遺伝子の対立遺伝子を、所望の突然変異(MetAPH206Q)を含有する2セットのプライマーによりS.ミュータンス(S.mutans)HER 1503から増幅させた。2セットのプライマー(SJL160及びSJL161並びにSJL162及びSJL163)は、2つの重なり合うアンプリコンを生成し、重なり合う領域に突然変異を有する。2つの断片を、QIAquick PCR精製キット(Qiagen)を用いて精製して、Gibson Assembly(Gibson et al.,2009)によって融合させた。続いて、PCRを、プライマーSJL160及びSJL163を用いてGibson Assemblyサンプルに実行して、融合断片を増幅させた。QIAquick PCR精製キットを用いた精製の後に、突然変異したmetAPアンプリコンを、S.ミュータンス(S.mutans)HER 1503中に、自然形質転換によって形質転換した;Biomatikからオーダーしたコンピテンス刺激ペプチド(CSP)を、1μMの濃度にて500μlのS.ミュータンス(S.mutans)の指数関数的に増殖した培養体(0.1のOD600nm)に、1μgの精製した突然変異metAPアンプリコンと共に加えた(Dufour et al.,2011)。培養体を、5%COと37℃にて一晩インキュベートしてから、0.7%アガーを補充したBHI中で病原性ファージM102ADと混合して、1%アガーを補充したBHI上にプレーティングした。生き残っている誘導体中のmetAP対立遺伝子を、プライマーSJL160及びSJL163を用いるPCRによって増幅させて配列決定して、突然変異の存在を確認した。
【0247】
BIM S.ミュータンス(S.mutans)HER 1503:MetAPH206Qの相補性について、HER 1503 S.ミュータンス(S.mutans)のmetAP対立遺伝子をpNZ123中にクローニングした。pNZ123をXhoI及びEcoRIで線状化して、2つの部位間の24塩基対を取り除き、そして結果として生じたプラスミドを、QIAquick Gel Extractionキット(Qiagen)を用いて精製した。metAP対立遺伝子を、S.ミュータンス(S.mutans)HER 1503から、プライマーCM_145及びCM_146を用いて増幅させて、XhoI及びEcoRI制限部位が側面に位置する遺伝子を生成した。PCRサンプルを、QIAgen PCR精製キットを用いて精製して、XhoI及びEcoRIによって切断して、T4 DNAリガーゼを用いて線状化pNZ123中にライゲートした。ライゲーション中に用いた挿入/ベクターモル比は、3:1であった。ライゲートしたプラスミドを、メーカーの説明書に従って大腸菌(E.coli)NEB5α中に形質転換して、25μg/mLクロラムフェニコールを補充した固体LB培地上にプレーティングした。プライマーCM_145及びCM_146によるmetAP対立遺伝子の増幅、並びに配列決定により、相補性プラスミド中にクローニングされた配列を確認した。QIAprep Spin Miniprepキットを用いてプラスミドDNAを抽出して、S.ミュータンス(S.mutans)HER 1503:MetAPH206Q中に形質転換した。株を、BHI中で0.1のOD600nmに達するまで増殖させて、500μLのアリコートを1μM CSPに曝して、1μgの相補性プラスミドで形質転換した。5%COとの37℃にて2.5時間のインキュベーション期間の後に、培養体を、10μg/mLのクロラムフェニコールを補充したBHI+1%アガー上にプレーティングした。
【0248】
突然変異安定性試験
突然変異H206Qの安定性を試験するために、10mLのM17培地(Nutri-Bact)中に、そして還元乳(10%脱脂粉乳)中に、株S.サーモフィルス(S.thermophilus)SMQ-301及びDGCC7796、並びにそれらの各ミュータント[SMQ-301:MetAPH206Q及びDGCC7796:MetAPH206Q]を接種した(1%)。株を、日中42℃にてインキュベートした。続いて、1%の接種原を、フレッシュな培地又は乳に移して、夜間37℃にてインキュベートした。おおよそ60世代に相当する9回の移行(5日、4晩)の後に、10コロニーを、4つの株の各々からランダムに選択して、S.サーモフィルス(S.thermophilus)SMQ-301及びS.サーモフィルス(S.thermophilus)SMQ-301:MetAPH206QについてファージDT1(cos)、そしてS.サーモフィルス(S.thermophilus)DGCC7796及びS.サーモフィルス(S.thermophilus)DGCC7796:MetAPH206QについてファージD4090(cos)及びD4274(pac)に対する感受性を試験した。metAP遺伝子及びCR1の配列決定を、移行及び株の識別の後に、SMQ-301及びSMQ-301:MetAPH206Qコロニーについて、プライマーSJL128/SJL130及びCR1-fwd/CR1-revにより行って、突然変異の存在を確認した。
【0249】
実施例1
メチオニンアミノペプチダーゼをコードする遺伝子中の突然変異が、ファージに対する感受性を引き下げる
ファージDT1に対する感受性が引き下げられているS.サーモフィルス(S.thermophilus)SMQ-301のいくつかのBIMを、表題「バクテリオファージ非感受性ミュータント単離」のセクションにおいて先に記載したプロトコルに従って単離した。95%超のBIMは、それらのCRISPR遺伝子座内に、ファージDT1ゲノムを標的化する新しいスペーサーを獲得していた。新しいスペーサーを獲得しなかった9つのSMQ-301 BIMを選択して、ファージDT1に対する感受性の引下げを実現する突然変異を細菌ゲノム中の他の場所に有していると推測した。これらの9つの非CRISPR BIMのゲノムを配列決定した。これらの配列を、S.サーモフィルス(S.thermophilus)SMQ-301(Labrie et al.,2015)のゲノムと比較することによって、いくつかの突然変異を見出した。これらの突然変異の多くが、ファージ感染に潜在的に関与し得るが、同じ突然変異(T->G)が、9つのBIMのうち3つのmetAP遺伝子の位置618にて生じていた。この遺伝子は、メチオニンアミノペプチダーゼ(MetAP)をコードしており、当該突然変異は、MetAPタンパク質(H206Q)内の位置206にて、ヒスチジンからグルタミンへのアミノ酸置換を誘導する。BLAST検索は、このヒスチジンが、分析した全てのMetAPタンパク質配列内に保存されていることを示した。S.サーモフィルス(S.thermophilus)のMetAPタンパク質は、以前に研究されていないが、肺炎球菌(Streptococcus pneumonia)TIGR4のMetAPタンパク質との89%の同一性及び96%の類似性を共有し、これは、構造的なレベル(PDB 4KM3)でも特徴付けられてきた(Arya et al.2013)。
【0250】
実施例2
metAP遺伝子中の突然変異が、S.サーモフィルス(S.thermophilus)において、ファージに対する感受性を引き下げる
ファージに対する感受性の引下げが、MetAPH206Q突然変異に起因する(そしてゲノム中の他の突然変異に起因しない)ことを確認するために、MetAPH206Qタンパク質をコードする対立遺伝子を増幅させて、自然コンピテンスを用いてS.サーモフィルス(S.thermophilus)SMQ-301中に形質転換した。ファージによる選択はかなり有効であるが、CRISPR BIMを、そして他の、ファージに対する感受性の引下げを付与する突然変異を選択する確率を大幅に増大させる。その代わりに、突然変異を有するPCR産物をゲノム中に統合した形質転換体を、ファージ選択の不在下で検出するPCR戦略を設計した。3’末端に所望の突然変異を有するSJL151と組み合わせたプライマーSJL150を用いて、細菌ゲノム内の突然変異を特異的に検出した。細菌細胞質内の形質転換由来の残留直鎖状DNAの潜在的存在に起因する偽陽性を回避するために、形質転換されたDNAフラグメントのフランキングゲノム領域にマッチするプライマーを設計した。総計282クローンを、H206Q metAP対立遺伝子の統合の有無に関してスクリーニングして、所望のMetAPH206Q突然変異を有する4つの陽性クローンを得た。これらのクローンの1つ、S.サーモフィルス(S.thermophilus)SMQ-301:MetAPH206Qをランダムに選択して、そのファージ感受性をEOPアッセイIによって求めた。プラーク形成は、ファージ溶解液の種々の希釈液による細菌培養体に関して、目に見えなかった。このことは、かなり高いファージ耐性表現型を示している(EOP10-8、表3)。種々の実験条件を用いて、H206Q MetAPの効果を克服することとなるファージミュータントを単離することを試みたが、無益であった。インキュベーション温度を変え、嫌気性条件を用い、異なる濃度のグリシンを培地に加えて細菌細胞壁を弱め、アガーを、異なる濃度のアガロースで置き換え、そして液体培地中でのレスキュー実験を試みたが、BIM SMQ-301:MetAPH206Q上で増殖することができるファージDT1誘導体は得られなかった。
【0251】
【表3】
【0252】
実施例3
SMQ-301のmetAP遺伝子の対立遺伝子との相補性により、ファージ感受性が回復する
SMQ-301のmetAP遺伝子の対立遺伝子を、シャトル発現ベクターpNZ123中にクローニングした。結果として生じた構築体を、S.サーモフィルス(S.thermophilus)SMQ-301:MetAPH206Q中に形質転換して、突然変異をトランスで補完した。ファージDT1に対する感受性は、プラスミドpNZ123:MetAPで補完した3つのBIMのうち、2つについて回復した(表4)。これにより、MetAPH206Q置換がファージ表現型を担っていることを確認した。注目すべきは、1つのBIM(#3)について、ファージDT1に対する感受性は、完全に回復されなかった(EOP=0.02)。このことは、他の遺伝子内の突然変異が、ファージDT1耐性におそらく関与していることを示唆している(表4)。また、突然変異metAP遺伝子をpNZ123中にクローニングして、S.サーモフィルス(S.thermophilus)SMQ-301中に形質転換した。pNZ123:MetAPH206Qを有する株と比較すると、pNZ123を有する株間でEOPの差はなかった。このことは、突然変異が支配的な(dominant)表現型をもたらさないことを示唆している。
【0253】
【表4】
【0254】
実施例4
MetAPH206Q置換は、cos型ファージに対する範囲が広い
MetAPH206Q置換によって提供される耐性がファージ依存性であるかを判定するために、SMQ-301に感染することもできるcos型ファージMD2を試験した。また、ファージMD2を、H206Q MetAPによって厳格に阻害した。
【0255】
この突然変異が株依存性でないことを示すために、MetAPH206Qを、指向性突然変異誘発を用いていくつかのS.サーモフィルス(S.thermophilus)株中に導入した。突然変異を、cos型ファージN1032、N1117、N1119、N1169、N1358、及びN3782に対して感受性であるS.サーモフィルス(S.thermophilus)DGCC782株中に導入した。また、突然変異を、cos型ファージ、すなわち、D5691、D5913、D6037、及びD6215、並びにいくつかのpac型ファージ、すなわち、858、2972、D3288、4259、D4752、D4754、及びD939に対して感受性であるS.サーモフィルス(S.thermophilus)DGCC7710株中に導入した。最後に、突然変異を、いくつかのcos型ファージ、すなわち、D4090、D5821、D4807、及びD6179、並びにいくつかのpac型、すなわち、D2765、D4274、D5787、及びD5876に対して感受性であるS.サーモフィルス(S.thermophilus)DGCC7796中に導入した。当該突然変異は、S.サーモフィルス(S.thermophilus)DGCC7710に感染するcos型ファージに対してあまり有効でなかったが(EOP10-5)、試験した全てのcos型ファージに対して耐性を与えた。S.サーモフィルス(S.thermophilus)DGCC7796及びDGCC782中へのmetAPH206Q対立遺伝子の導入は、少なくとも10-6のEOPの引下げに至った。これは、検出限界(希釈10-1の溶解ゾーン)に相当した。さらに、ファージミュータントを、当該アッセイから回収することはできなかった。他方では、試験したS.サーモフィルス(S.thermophilus)pac型ファージはいずれも、突然変異によって影響されなかった。このことは、この群のファージの複製にとってMetAPが重要でないことを示唆している。
【0256】
MetAP突然変異が、別の細菌種に対する感受性を引き下げるかを判定するために、MetAPH206Qタンパク質をコードする対立遺伝子を、cos型ファージM102ADに対して感受性であるS.ミュータンス(S.mutans)株HER 1503中に導入した(Delisle et al.,2012)。S.ミュータンス(S.mutans)HER 1503のmetAP遺伝子は、S.サーモフィルス(S.thermophilus)SMQ-301の遺伝子と同じ長さ(861bp)を有する。2つのmetAP遺伝子は、74%の同一性を共有する一方、2つのメチオニンアミノペプチダーゼ(MetAPタンパク質)は、85%の同一性を共有する。位置206にて見出されるヒスチジン残基は、S.ミュータンス(S.mutans)中に存在する。S.ミュータンス(S.mutans)ゲノム中への(元のmetAP対立遺伝子に代わる)MetAPH206Qタンパク質をコードする対立遺伝子の挿入は、ファージM102ADに対する感受性の引下げを実現した(EOP<1×10-7、表5)。突然変異株の、元のmetAP対立遺伝子との相補性により、ファージ感受性表現型が回復した(表5)。全体的に見て、これらのデータは、ファージ複製におけるMetAPの比較的広範囲にわたる役割を示唆している。
【0257】
【表5】
【0258】
実施例5
MetAP中の他の突然変異が、ファージDT1に対する感受性を引き下げる
metAP遺伝子中の他の突然変異が、ファージDT1に対する感受性を引き下げることができるかを判定するために、エラープローンPCR増幅アプローチを用いた。結果として生じたPCR産物を、自然コンピテンスを用いて、S.サーモフィルス(S.thermophilus)SMQ-301中に形質転換した。抗生物質耐性マーカーを導入しなかったので、ファージDT1を用いてクローンを選択した。陽性対照(MetAPH206Q)による形質転換アッセイは、陰性対照(DNAなし)によるよりも多くのBIMをもたらした。MetAPタンパク質をコードする遺伝子を配列決定した。7つのミュータントが、metAP遺伝子中に、アミノ酸の置換をもたらす突然変異を有していた。これらのミュータントのうちの6つについて、元のアミノ酸を、別のアミノ酸(Q57K、L153P、A168E、V228D、P233Q、及びP233L)によって置換した。別のミュータントについて、元のアミノ酸を、終止コドン(G226*)によって置換した(表6)。
【0259】
これらの7つのミュータントについてのファージDT1に対する感受性を再試験した。7つのミュータントは全て、ファージDT1に対する感受性が引き下げられており、EOPは1×10-6未満であった。耐性株を、pNZ123:MetAPで補完すると、先で観察されたように、配列番号2に示されるMetAPは、ファージ感受性表現型を回復した。これにより、MetAPタンパク質中のこれらの7つの突然変異はいずれも、cos型ファージに対する感受性を引き下げることを確認した。
【0260】
【表6】
【0261】
実施例6
MetAPH206Q突然変異は安定している
産業用の発酵にとって重要な特徴の1つが、ファージ耐性表現型の安定性である。ゆえに、乳及びLM17中の、S.サーモフィルス(S.thermophilus)SMQ-301及びDGCC7796、並びにそれらのミュータントの60世代にわたる突然変異MetAPH206Qの安定性を確認した。野生型株の選択したコロニーは全て、ファージ感受性のままであった一方、各ミュータント由来の10個のコロニーは全て、ファージ耐性のままであった。このことは、突然変異MetAPH206Qが安定していることを示している。
【0262】
結論
ここで、cos型ファージに対する感受性の引下げを、S.サーモフィルス(S.thermophilus)及びS.ミュータンス(S.mutans)のmetAP遺伝子中の突然変異により獲得することができることが実証される。しかしながら、metAP遺伝子において識別される突然変異はいずれも、pac型ファージに対する感受性を引き下げない。最後に、MetAP H206Q置換を克服したファージミュータントを単離することができないことにより、そのような突然変異は、ロバストな耐性表現型を提供することができることを確認した。
【0263】
先の本明細書中で言及した全ての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の範囲及び精神から逸脱することのない、本発明の記載される方法及びシステムの種々の変更及び変形が、当業者に明らかであろう。本発明を、特定の好ましい実施形態に関連して説明してきたが、特許請求される本発明は、そのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことが理解されるべきである。実際に、分子生物学又は関連分野の当業者には明白である、本発明を実施するための記載した様式の種々の修飾が、以下の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図されている。
【配列表】
0007597719000001.app