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特許7597728負極集電体、負極シート、電気化学装置及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】負極集電体、負極シート、電気化学装置及び装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
H01M4/66 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021556889
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 CN2019125148
(87)【国際公開番号】W WO2020238155
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-09-21
【審判番号】
【審判請求日】2023-12-25
(31)【優先権主張番号】201910469957.3
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】524304976
【氏名又は名称】香港時代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】LEVEL 19, CHINA BUILDING, 29 QUEEN’S ROAD CENTRAL, CENTRAL, CENTRAL AND WESTERN DISTRICT, HONG KONG, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 欣
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲シ▼▲ウェン▼
(72)【発明者】
【氏名】黄 起森
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲チェン▼
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲銘▼▲領▼
(72)【発明者】
【氏名】彭 佳
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 向▲輝▼
【合議体】
【審判長】井上 信一
【審判官】須原 宏光
【審判官】渡辺 努
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/127561(WO,A1)
【文献】特開2007-217598(JP,A)
【文献】特開2006-012998(JP,A)
【文献】特開2018-181823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/64-4/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子材料系の支持層と、前記支持層の少なくとも一つの表面に設置された銅系導電層と、保護層と、を備えた負極集電体であって、
前記保護層は、上部保護層及び下部保護層を備え、前記上部保護層は、前記銅系導電層における前記支持層に背向する表面に設置され、前記下部保護層は、前記銅系導電層と前記支持層との間に設置されており、
前記銅系導電層の厚さD、前記支持層の引張強度T及び前記支持層の厚さDは、0.1≦(300×D)/(T×D)≦0.48という関係式1を満たし、前記式1において、D及びDの単位は同じであり、Tの単位はMPaであり、
前記銅系導電層の厚さDは、30nm≦D≦3μmを満たし、前記支持層の引張強度Tは、200MPa≦T≦300MPaを満たし、前記支持層の厚さDは、2μm≦D≦10μmを満たすことを特徴とする負極集電体。
【請求項2】
前記銅系導電層の厚さD、前記支持層の引張強度T及び前記支持層の厚さDは、0.1≦(300×D)/(T×D)≦0.3という関係式1.1を満たす請求項1に記載の負極集電体。
【請求項3】
前記支持層のヤング率Eは、E≧2GPaである請求項1又は2に記載の負極集電体。
【請求項4】
前記支持層のヤング率Eは、2GPa≦E≦20GPaである請求項3に記載の負極集電体。
【請求項5】
前記銅系導電層の厚さDは、800nm≦D≦1.2μmを満たし、及び/又は、
前記支持層の厚さDは、2μm≦D≦6μmを満たす請求項1乃至4のいずれか一項に記載の負極集電体。
【請求項6】
前記銅系導電層は、銅及び銅合金のうちの一種類又は複数種類を含み、前記銅合金における銅元素の質量パーセント含有量は80wt%以上である請求項1乃至5のいずれか一項に記載の負極集電体。
【請求項7】
前記銅合金における銅元素の質量パーセント含有量は90wt%以上である請求項6に記載の負極集電体。
【請求項8】
前記銅系導電層は、気相成長層又は電気めっき層である請求項1乃至7のいずれか一項に記載の負極集電体。
【請求項9】
前記支持層は、高分子材料のうちの一種類又は複数種類を含み、
前記高分子材料は、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリアセチレン、シリコーンゴム、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレングリコール、ポリ窒化硫黄系、ポリフェニル、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピリジン、セルロース、デンプン、タンパク質、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、上記材料の誘導体、上記材料の架橋物及び上記材料の共重合体から選択される一種類又は複数種類である請求項1乃至8のいずれか一項に記載の負極集電体。
【請求項10】
前記支持層は、さらに添加剤を含み、前記添加剤は、金属材料及び無機非金属材料のうちの一種類又は複数種類を含む請求項1乃至9のいずれか一項に記載の負極集電体。
【請求項11】
前記保護層は、金属、金属酸化物及び導電性炭素のうちの一種類又は複数種類を含む請求項1乃至10のいずれか一項に記載の負極集電体。
【請求項12】
前記保護層は、ニッケル、クロム、ニッケル系合金、銅系合金、酸化アルミニウム、酸化コバルト、酸化クロム、酸化ニッケル、黒鉛、超伝導炭素、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一種類又は複数種類を含む請求項11に記載の負極集電体。
【請求項13】
前記保護層の厚さDは、1nm≦D≦200nm、かつD≦0.1Dを満たす請求項1乃至12のいずれか一項に記載の負極集電体。
【請求項14】
負極集電体及び前記負極集電体に設置された負極活物質層を備えた負極シートであって、前記負極集電体は、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の負極集電体であることを特徴とする負極シート。
【請求項15】
正極シート、負極シート及び電解質を備えた電気化学装置であって、前記負極シートは、請求項14に記載の負極シートであることを特徴とする電気化学装置。
【請求項16】
請求項15に記載の電気化学装置を備えた装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年5月31日に提出された「負極集電体、負極シート及び電気化学装置」という名称の中国特許出願201910469957.3の優先権を主張することを要求し、該出願の全ての内容は引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、電気化学装置の技術分野に属し、具体的には負極集電体、負極シート、電気化学装置及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン二次電池を代表とする電気化学装置は高い充放電性能を備え、かつ環境に優しく、電気自動車及びコンシューマ電子製品に広く応用される。集電体は電気化学装置における重要な構成部分であり、それは活物質層に支持を提供するだけでなく、活物質層により生成された電流を集めて外部に出力するために用いられる。従って、集電体は電極シート及び電気化学装置の性能に重要な影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、依然として性能に優れた負極集電体を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第一態様において、本出願は負極集電体を提供し、その負極集電体は高分子材料系支持層及び支持層の少なくとも一つの表面に設置された銅系導電層を含む。ここで、銅系導電層の厚さD、支持層の引張強度T及び支持層の厚さDの間は関係式1を満たし、
0.01≦(300×D)/(T×D)≦0.5 式1
式1において、D及びDの単位は同じであり、Tの単位はMPaである。
【0006】
第二態様において、本出願は負極シートを提供し、その負極シートは負極集電体及び負極集電体に設置された負極活物質層を含み、負極集電体は本出願の第一態様に係る負極集電体である。
【0007】
第三態様において、本出願は電気化学装置を提供し、その電気化学装置は正極シート、負極シート及び電解質を含み、負極シートは本出願の第二態様に係る負極シートである。
【0008】
第四態様において、本出願は第三態様に係る電気化学装置を備えた装置を提供する。
【0009】
本出願が提供する負極集電体は高分子材料系支持層及び支持層に設置された銅系導電層を含み、かつ銅系導電層の厚さD、支持層の引張強度T及び支持層の厚さDは関係式1を満たす。該負極集電体は適切な靭性及び良好な導電及び集電の性能を有することが見出された。適切な靭性は負極集電体が高い力学的性能及び機械的性能を有することを確保し、負極集電体が電気化学装置の製造加工及び動作過程において一定の変形を受けて破断破壊を引き起こさないことを可能にする。これは負極集電体の加工可能性能及び使用過程での安定性能を向上させ、それによりそれが後続の加工及び使用過程で断裂が発生するか又はクラックが発生することを効果的に防止することができる。それにより、負極集電体及びそれを用いた負極シートと電気化学装置の製造過程での良品率及び使用過程での信頼性を顕著に向上させる。導電集電性能が高い負極集電体を採用することにより、電気化学装置は高い電気化学性能を有する。また、本出願の提供する負極集電体を用いて、さらに電気化学装置の重量エネルギー密度を向上させることができる。
【0010】
本出願の装置は、本出願の提供する電気化学装置を含むため、少なくとも前記電気化学装置と同じ利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本出願の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下に本出願の実施例に必要な図面を簡単に説明する。当業者にとって、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【0012】
図1】本出願の一実施例に係る負極集電体の構造概略図である。
図2】本出願の別の実施例に係る負極集電体の構造概略図である。
図3】本出願の別の実施例に係る負極集電体の構造概略図である。
図4】本出願の別の実施例に係る負極集電体の構造概略図である。
図5】本出願の別の実施例に係る負極集電体の構造概略図である。
図6】本出願の一つの実施例に係る負極シートの構造概略図である。
図7】本出願の実施例による電池の概略図である。
図8】本出願の実施例による電池モジュールの概略図である。
図9】本出願の実施例による電池パックの概略図である。
図10図9の分解図である。
図11】本出願の実施例による装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本出願の発明目的、技術案及び有益な技術的効果をより明確にするために、以下に実施例を参照して本出願をさらに詳細に説明する。理解すべきことは、本明細書に記載の実施例は本出願を説明するためのものに過ぎず、本出願を限定するものではない。
【0014】
簡略にするために、本明細書はいくつかの数値範囲のみを明確に開示する。しかしながら、任意の下限は任意の上限と組み合わせて明確に記載されない範囲を形成することができる。また、任意の下限は他の下限と組み合わせて明確に記載されない範囲を形成することができ、同様に、任意の上限は任意の他の上限と組み合わせて明確に記載されない範囲を形成することができる。また、明確に記載されていないが、範囲の端点間の各点又は単一の数値はいずれも該範囲内に含まれる。従って、各点又は単一の数値は自身の下限又は上限として任意の他の点又は単一の数値と組み合わせるか又は他の下限又は上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。
【0015】
本明細書の説明において、説明すべきこととして、特に説明しない限り、「以上」、「以下」は対象となる数字を含み、「一種類又は複数種類」における「複数種類」の意味は二つ以上である。
【0016】
上述した本出願の発明の概要は、本出願の全ての実施形態や実現形態を説明するためのものではない。以下、本実施形態をより具体的に例示する。出願全体の複数箇所において、一連の実施例により指導を提供し、これらの実施例は様々な組み合わせ形式で使用することができる。各実施例において、代表的なグループのみとして列挙し、網羅的に解釈すべきではない。
【0017】
(負極集電体)
本出願の第1の態様は、負極集電体10を提供する。図1は、一例としての負極集電体10の概略構成図である。図1に示すとおり、負極集電体10は積層設置された高分子材料系支持層101及び銅系導電層102を含む。支持層101はその厚さ方向に対向する第一表面101a及び第二表面101bを有し、銅系導電層102は支持層101の第一表面101a及び第二表面101bに設置される。
【0018】
当然のことながら、銅系導電層102はさらに支持層101の第一表面101a及び第二表面101bのうちのいずれか一つに設置されてもよい。例えば、銅系導電層102は支持層101の第一表面101aに設置される。当然のことながら、銅系導電層102は支持層101の第二表面101bに設置されてもよい。
【0019】
便宜上、負極集電体10の脆性パラメータCを以下のように定義する。
C=(300×D)/(T×D) 式1
【0020】
ここで、300は係数であり、Dは銅系導電層102の厚さであり、Tは支持層101の引張強度であり、Dは支持層101の厚さであり、D及びDの単位は同じであり、Tの単位はMPaである。
【0021】
負極集電体10の脆性パラメータCは、0.01≦C≦0.5という関係を満たす。
【0022】
式1は支持層101の少なくとも一つの表面に銅系導電層102が設けられた負極集電体10に適用することができ、さらに支持層101の対向する二つの表面にそれぞれ銅系導電層102が設けられた負極集電体10に適用し、特に支持層101の対向する二つの表面にそれぞれ銅系導電層102が設けられ、かつ両側の銅系導電層102の厚さが等しいか又はほぼ等しい負極集電体10に適用する。上記したほぼ等しいことは、両側の銅系導電層102の厚さの差が10%を超えず、例えば10%、9%、8%、7%、6%、5%、3%、2%、1%を超えないことを指す。
【0023】
いくつかの実施例において、「銅系導電層102の厚さD」は支持層101の片側の銅系導電層102の厚さを指す。
【0024】
他の実施例において、「銅系導電層102の厚さD」は支持層101の両側の銅系導電層102の平均厚さを指し、即ち、支持層101の両側の銅系導電層102の厚さの和の半分である。
【0025】
例えば、支持層101の片面に銅系導電層102が設けられた負極集電体10について、「銅系導電層102の厚さD」は支持層101の片側の銅系導電層102の厚さを指す。支持層101の対向する二つの表面にそれぞれ銅系導電層102が設けられ、かつ両側の銅系導電層102の厚さが等しいか又はほぼ等しい負極集電体10に対して、「銅系導電層102の厚さD」は支持層101の片側の銅系導電層102の厚さ又は支持層101の両側の銅系導電層102の平均厚さを指す。支持層101の対向する二つの表面にそれぞれ銅系導電層102が設けられ、かつ両側の銅系導電層102の厚さの差が10%を超える負極集電体10に対して、「銅系導電層102の厚さD」は支持層101の両側の銅系導電層102の平均厚さを指す。これにより式1をより好適に適用することができる。
【0026】
本分野の公知の装置及び方法を用いて支持層101の引張強度Tを測定することができ、例えば米国INSTRON 3365型万能引張試験機を用いて測定する。例示的な測定方法は以下のとおりである。支持層101を条状のサンプルに切断し、例えば幅が15mmであり長さが150mmのサンプルである。その後にサンプルを万能引張試験機の対向する二つの治具に取り付け、初期長さを50mmに設定し、5mm/minの引張速度で引張試験を行い、サンプルが破断されるまでに引張を停止する。サンプルが切断する時に受けた最大引張力Fを記録し、T=F/Sに基づいて支持層101の引張強度Tを計算する。ここで、Sはサンプルの初期断面積である。Sはサンプルの幅とサンプルの厚さとの積により計算することができ、上記したサンプルの厚さは支持層101の厚さDである。
【0027】
銅系導電層102の厚さD及び支持層101の厚さDは本分野の公知の装置及び方法を用いて測定することができ、例えば万分尺を利用する。
【0028】
負極集電体10は高分子材料系支持層101及び支持層101に設置された銅系導電層102を含み、かつ負極集電体10の脆性パラメータCは0.01≦C≦0.5を満たす。これにより、負極集電体10は適切な靭性を有し、負極集電体10が高い力学的性質及び機械的性質を有することを確保する。該負極集電体10は電気化学装置の製造加工及び動作過程において一定の変形を受けて破断破壊を引き起こされない。これは負極集電体10の加工可能性能及び使用過程における安定性能を向上させることに役立ち、それが製造及び使用過程において断裂が発生するか又はクラックが発生することを効果的に防止する。従って、本出願は負極集電体10及びそれを用いた負極シートと電気化学装置の製造過程における良品率及び使用過程における信頼性を顕著に向上させることができる。
【0029】
負極集電体10は電気化学装置の製造加工及び動作過程において破断しにくくかつクラックが発生しにくい。一方、負極集電体10の導電及び集電性能の効果的な発揮を保証し、他方では負極活物質層が破断するか又はクラックが発生することを防止し、その内部導電ネットワークの連続性を保持し、これは負極活物質層の性能の効果的な発揮を保証する。本出願の負極集電体10を用いることは電気化学装置の耐用年数を向上させることに役立つ。
【0030】
負極集電体10の脆性パラメータCは上記範囲内にあり、同時に負極集電体10が良好な導電性及び集電性を有することを保証する。これは負極シート及び電気化学装置が低インピーダンスを有し、電気化学装置の分極を減少させることに役立ち、それにより電気化学装置は高い電気化学性能を有する。この電気化学装置は高い倍率性能及びサイクル性能を有する。
【0031】
また、支持層101の密度が金属の密度よりも小さいため、本出願の負極集電体10を採用して電気化学装置の重量を低減することができ、それにより電気化学装置のエネルギー密度をさらに向上させる。
【0032】
いくつかの実施例において、負極集電体10の脆性パラメータC≦0.5、≦0.48、≦0.45、≦0.42、≦0.4、≦0.38、≦0.36、≦0.35、≦0.32、≦0.3、≦0.28又は≦0.25であってもよく、さらに≧0.01、≧0.05、≧0.08、≧0.1、≧0.12、≧0.15、≧0.17、≧0.19、≧0.2又は≧0.22であってもよい。
【0033】
本出願の発明者は、負極集電体10の脆性パラメータCを適切な範囲内にすることにより、電気化学装置のエネルギー密度をよりよく改善し、同時に負極集電体10及び負極シートが高い過電流能力を有することを確保することができることを見出した。この負極集電体10を用いた電気化学装置は、総合性能に優れている。好ましくは、負極集電体10の脆性パラメータCは0.1~0.3である。この負極集電体10は、上記効果をよりよく発揮することができる。
【0034】
いくつかの実施例において、好ましくは、銅系導電層102の厚さDは30nm≦D≦3μmである。例えば、銅系導電層102の厚さD≦3μm、≦2.5μm、≦2μm、≦1.8μm、≦1.5μm、≦1.2μm、≦1μm、≦900nm、≦750nm、≦450nm、≦250nm又は≦100nmであってもよく、さらに≧30nm、≧80nm、≧100nm、≧150nm、≧300nm、≧400nm、≧600nm、≧800nm、≧1μm又は≧1.6μmであってもよい。
【0035】
厚さが小さい銅系導電層102を支持層101の表面に設置し、従来の金属集電体(例えば銅箔など)に対して、負極集電体10の重量を顕著に低減することができ、それにより電気化学装置の重量を低減し、電気化学装置のエネルギー密度を顕著に向上させる。
【0036】
また、銅系導電層102の厚さDは銅系導電層102が高い導電性能を有することに適し、それにより負極集電体10が高い導電及び集電性能を有し、それにより電気化学装置の性能を向上させ、かつ負極のリチウム析出を防止する。かつ、該銅系導電層102は加工及び使用過程において断裂が発生しにくく、負極集電体10が高い破壊靭性を有し、負極集電体10が高い機械的安定性及び動作安定性を有することを保証する。
【0037】
好ましくは、300nm≦D≦2μmである。より好ましくは、500nm≦D≦1.5μmである。特に好ましくは、800nm≦D≦1.2μmである。
【0038】
いくつかの実施例において、銅系導電層102は銅及び銅合金のうちの一種類又は複数種類を含むことができる。銅合金における銅元素の質量パーセント含有量は好ましくは80wt%以上であり、より好ましくは90wt%以上である。
【0039】
いくつかの実施例において、支持層101の引張強度Tは、好ましくは100MPa≦T≦400MPaであり、さらに好ましくは150MPa≦T≦300MPaである。支持層101の引張強度は適切な範囲内にあり、負極集電体10が高い力学的性質を有することに役立ち、従って該負極集電体10が破断するか又はクラックが発生しにくい。かつ、該支持層101は過大な伸び又は変形が発生せず、それにより銅系導電層102の断裂又はクラックの発生をさらに防止し、同時に支持層101と銅系導電層102との間に高い結合堅牢度を有し、銅系導電層102が剥離しにくい。従って、該負極集電体10を採用することは電気化学装置の耐用年数及びサイクル性能を向上させることに役立つ。
【0040】
適切な引張強度Tはさらに支持層101が銅系導電層102に対して良好な支持作用を果たすことに適する。
【0041】
いくつかの実施例において、支持層101のヤング率E≧2Gpaである。該支持層101は剛性を有することにより、それが銅系導電層102に対して高い支持作用を果たし、負極集電体10の全体的な強度を確保する。かつ、支持層101は負極集電体10の加工過程において過大な伸び又は変形が発生せず、さらに支持層101及び銅系導電層102の断裂の発生を防止し、同時に支持層101と銅系導電層102との間の結合堅牢度をより高くし、それを剥離しにくくする。従って、負極集電体10の機械的安定性及び動作安定性を向上させ、それにより電気化学装置の性能を向上させ、例えばサイクル寿命を向上させる。
【0042】
好ましくは、支持層101のヤング率Eは2GPa≦E≦20GPaを満たす。例えば、Eは、2GPa、3GPa、4GPa、5GPa、6GPa、7GPa、8GPa、9GPa、10GPa、11GPa、12GPa、13GPa、14GPa、15GPa、16GPa、17GPa、18GPa、19GPa又は20GPaである。これにより支持層101は適切な剛性及び適切な靭性を兼ね備え、支持層101及びそれを用いた負極集電体10が加工過程において巻回する可撓性を保証する。
【0043】
支持層101のヤング率Eは、公知の装置及び方法を用いて測定することができる。例えば米国INSTRON 3365型万能引張試験機を採用する。例として、支持層101を15mm×200mmに裁断したサンプルを取り、万分尺でサンプルの厚さh(μm)を取り、常温常圧(25℃、0.1MPa)で引張試験機を用いて引張試験を行う。初期位置を設置して治具の間のサンプルを50mmの長さにし、引張速度を5mm/minにし、破断まで引張する荷重L(N)を記録し、装置がy(mm)変位すると、応力ε(GPa)=L/(15×h)、歪みη=y/50であり、応力歪み曲線を作成し、初期線形領域曲線を取り、該曲線の傾きはヤング率Eである。
【0044】
いくつかの実施例において、支持層101の厚さDは1μm≦D≦30μmを満たす。支持層101は厚さDを有することで高い機械的強度を有し、加工及び使用過程において破断が発生しにくく、銅系導電層102に対して良好な支持及び保護作用を果たす。それにより負極集電体10の機械的安定性及び動作安定性を向上させる。同時に、該支持層101の厚さDが小さく、それにより電気化学装置は小さい体積及び低い重量を有し、それにより電気化学装置の体積エネルギー密度及び重量エネルギー密度を向上させる。
【0045】
いくつかの好ましい実施例において、支持層101の厚さD≦30μm、≦25μm、≦20μm、≦18μm、≦15μm、≦12μm、≦10μm又は≦8μmであってもよく、さらに≧1μm、≧1.5μm、≧2μm、≧3μm、≧4μm、≧5μm、≧6μm、≧7μm、≧9μm又は≧16μmであってもよい。好ましくは、1nm≦D≦20μmである。より好ましくは、1μm≦D≦15μmである。特に好ましくは、2μm≦D≦10μmである。特に好ましくは、2μm≦D≦8μmである。さらに好ましくは、2μm≦D≦6μmである。
【0046】
支持層101は、高分子材料の一種類または複数種類を含む。いくつかの実施例において、高分子材料はポリアミド系、ポリイミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリアセチレン炭化水素系、シロキサンポリマー、ポリエーテル系、ポリアルコール系、ポリスルホン系、多糖類ポリマー、アミノ酸系ポリマー、ポリ窒化硫黄系、芳香族環ポリマー、芳香族複素環ポリマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、上記材料の誘導体、上記材料の架橋物及び上記材料の共重合体のうちの一種類又は複数種類から選択することができる。
【0047】
いくつかの好ましい実施例において、高分子材料はポリカプロラクタム(ナイロン6とも言える)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66とも言える)、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)、ポリメタフェニレンイソフタルアミド(PMIA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレンゴム(PPE)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTEE)、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSS)、ポリアセチレン(Polyacetylene)、シリコーンゴム、ポリオキシメチレン(POM)、ポリフェニレンエーテル(PPO)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレングリコール(PEG)、セルロース、デンプン、タンパク質、ポリフェニル、ポリピロール(PPy)、ポリアニリン(PAN)、ポリチオフェン(PT)、ポリピリジン(PPY)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、上記材料の誘導体、上記材料の架橋物及び上記材料の共重合体のうちの一種類又は複数種類を含むことができる。
【0048】
いくつかの実施例において、支持層101は、さらに好ましくは添加剤を含む。添加剤は金属材料及び無機非金属材料のうちの一種類又は複数種類を含むことができる。金属材料添加剤はアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、鉄、鉄合金、銀及び銀合金のうちの一種類又は複数種類を含むことができる。無機非金属材料添加剤は炭素系材料、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素、ケイ酸塩及び酸化チタンのうちの一種類又は複数種類を含むことができ、さらに例えばガラス材料、セラミック材料及びセラミック複合材料のうちの一種類又は複数種類を含む。炭素系材料添加剤は、例えば、グラファイト、超電導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェンおよびカーボンナノファイバーのうちの一種類または複数種類である。
【0049】
添加剤は、さらに金属材料で被覆された炭素系材料、例えばニッケルで被覆された黒鉛粉及びニッケルで被覆された炭素繊維のうちの一種類又は複数種類を含むことができる。
【0050】
いくつかの好ましい実施例において、支持層101は絶縁高分子材料及び絶縁高分子系複合材料のうちの一種類又は複数種類を採用する。絶縁高分子系複合材料は上記高分子材料のうちの一種類又は複数種類及び上記添加剤のうちの一種類又は複数種類を含むことができ、かつそれは電気絶縁性を有する。該支持層101の体積抵抗率が高く、電気化学装置の安全性能を向上させることに役立つ。
【0051】
好ましくは、支持層101はポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSS)及びポリイミド(PI)のうちの一種類又は複数種類を含むことができる。
【0052】
いくつかの実施例において、支持層101は単層構造であってもよく、二層以上の複合層構造であってもよく、例えば二層、三層、四層等である。
【0053】
図2は本出願に係る別の負極集電体10の構造概略図である。図2に示すとおり、支持層101は第一サブ層1011、第二サブ層1012及び第三サブ層1013が積層設置されて形成された複合層構造である。複合層構造の支持層101は対向する第一表面101a及び第二表面101bを有し、銅系導電層102は支持層101の第一表面101a及び第二表面101bに積層設置される。当然のことながら、銅系導電層102は支持層101の第一表面101aのみに設置されてもよく、支持層101の第二表面101bのみに設置されてもよい。
【0054】
支持層101が二層以上の複合層構造である場合、各サブ層の材料は同じであってもよく異なってもよい。
【0055】
発明者らは鋭意研究により、特に支持層101の厚さが10μm以下であり、より特に8μm以下である場合、負極集電体10の脆性パラメータは負極集電体10の力学的性能及び機械的性能に対して、より重要なパラメータであり、負極集電体10の加工可能な性能、製造効率、使用信頼性などにより大きく影響することを見出した。
【0056】
いくつかの実施例において、負極集電体10はさらに好ましくは保護層103を含む。図3図5に示すとおり、保護層103は銅系導電層102と支持層101との間に設置することができる。又は、保護層103は銅系導電層102の支持層101から離れる表面に設置されてもよい。又は、銅系導電層102と支持層101との間、及び銅系導電層102の支持層101から離れる表面にいずれも保護層103が設置されてもよい。
【0057】
保護層103は銅系導電層102を保護し、銅系導電層102が化学的腐食又は機械的破壊などの損傷を発生することを防止し、負極集電体10の動作安定性及び耐用年数を保証することができる。それにより、電気化学装置が高い安全性能及び電気化学的性能を有することに役立つ。また、保護層103はさらに負極集電体10の強度を向上させることができる。
【0058】
当然のことながら、図3図5において支持層101の片面に銅系導電層102を有することを示す。銅系導電層102自体の厚さ方向に対向する二つの表面のうちの一つ又は両者に保護層103を有する。他の実施例において、さらに支持層101の対向する二つの表面にそれぞれ銅系導電層102を有してもよく、いずれか一つの銅系導電層102自体の厚さ方向に対向する二つの表面のうちの一つ又は両者に保護層103を有してもよく、二つの銅系導電層102自体の厚さ方向に対向する二つの表面のうちの一つ又は両者に保護層103を有してもよい。
【0059】
いくつかの実施例において、保護層103は金属、金属酸化物及び導電性炭素のうちの一種類又は複数種類を含むことができる。
【0060】
金属はニッケル、クロム、ニッケル系合金及び銅系合金のうちの一種類又は複数種類を含むことができる。ニッケル系合金は純ニッケルを基体として一種類以上の他の元素を添加して構成された合金であり、好ましくはニッケルクロム合金である。ニッケルクロム合金は金属ニッケルと金属クロムで形成された合金であり、好ましくは、ニッケルクロム合金におけるニッケルとクロムの重量比は1:99~99:1であり、例えば9:1である。銅系合金は純銅を基体として一種類又は複数種類の他の元素を加えて構成された合金であり、好ましくはニッケル銅合金である。好ましくは、ニッケル銅合金におけるニッケルと銅の重量比は1:99~99:1であり、例えば9:1である。
【0061】
金属酸化物は酸化アルミニウム、酸化コバルト、酸化クロム及び酸化ニッケルのうちの一種類又は複数種類を含むことができる。
【0062】
導電性カーボンはグラファイト、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一種類又は複数種類を含むことができ、さらにカーボンブラック、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック及びグラフェンのうちの一種類又は複数種類である。
【0063】
いくつかの実施例において、保護層103はニッケル、クロム、ニッケル系合金、銅系合金、酸化アルミニウム、酸化コバルト、酸化クロム、酸化ニッケル、黒鉛、超伝導炭素、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一種類又は複数種類を含むことができる。
【0064】
例として、図3に示すとおり、負極集電体10は積層設置された支持層101、銅系導電層102及び保護層103を含む。ここで、支持層101は自身の厚さ方向に対向する第一表面101a及び第二表面101bを有し、銅系導電層102は支持層101の第一表面101a及び第二表面101bのうちの少なくとも一つに積層設置され、保護層103は銅系導電層102の支持層101に背向する表面に積層設置される。
【0065】
銅系導電層102の支持層101に背向する表面に設置された保護層103(上部保護層と略称する)は、銅系導電層102に対して化学的腐食防止、機械的破壊防止の保護作用を果たす。特に、上部保護層はさらに負極集電体10と負極活物質層20との間の界面を改善し、負極集電体10と負極活物質層20との間の結合力を向上させることができる。
【0066】
いくつかの実施例において、負極集電体10の上部保護層は金属酸化物保護層であってもよく、例えば酸化アルミニウム、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化クロム等を含む。金属酸化物保護層の硬度及び機械的強度が高く、比表面積がより大きく、耐腐食性がより高く、銅系導電層102をよりよく保護することができる。
【0067】
好ましくは、負極集電体10の上部保護層は、金属保護層である。金属保護層は負極集電体10の導電性能を向上させることができ、それにより電気化学装置の分極を減少させ、負極のリチウム析出のリスクを低下させ、それにより電気化学装置のサイクル性能及び安全性能を向上させる。より好ましくは、負極集電体10の上部保護層は二層保護層であり、即ち一層の金属保護層と一層の金属酸化物保護層で形成された複合層である。好ましくは、金属保護層は銅系導電層102の支持層101に背向する表面に設置され、金属酸化物保護層は金属保護層の支持層101に背向する表面に設置される。このように、負極集電体10の導電性能、耐腐食性能、及び銅系導電層102と負極活物質層20との間の界面等を同時に改善することができ、それにより、総合性能がより高い負極集電体を得ることができる。
【0068】
他の例として、図4に示すとおり、負極集電体10は積層設置された支持層101、銅系導電層102及び保護層103を含む。ここで、支持層101は自身の厚さ方向に対向する第一表面101a及び第二表面101bを有し、銅系導電層102は支持層101の第一表面101a及び第二表面101bのうちの少なくとも一つに積層設置され、保護層103は銅系導電層102と支持層101との間に積層設置される。
【0069】
銅系導電層102と支持層101との間に設置された保護層103(下部保護層と略称する)は、銅系導電層102に対して化学的腐食防止、機械的損傷防止の保護作用を果たす。同時に、下部保護層はさらに銅系導電層102と支持層101との結合力を向上させ、銅系導電層102と支持層101との分離を防止することができ、それにより、銅系導電層102に対する支持保護作用を向上させる。
【0070】
好ましくは、下部保護層は金属酸化物又は金属保護層である。金属酸化物保護層の耐腐食性能が高く、かつその比表面積が大きく、銅系導電層102と支持層101との間の界面結合力をより向上させることができる。それにより、下部保護層が銅系導電層102に対する保護作用をよりよく果たし、電気化学装置の性能を向上させる。かつ金属酸化物保護層の硬度がより高く、機械的強度がより高く、負極集電体10の強度をより向上させることに役立つ。金属保護層は銅系導電層102に対して化学的腐食防止、機械的損傷防止の保護作用を果たすと同時に、負極集電体10の導電性能を向上させることができる。従って、電気化学装置の分極を減少させ、負極のリチウム析出のリスクを低下させる。それにより、電気化学装置のサイクル性能及び安全性能を向上させることができる。従って、好ましくは、負極集電体10の下部保護層は金属保護層である。
【0071】
別の例として、図5を参照し、負極集電体10は積層設置された支持層101、銅系導電層102及び保護層103を含む。ここで、支持層101は自身の厚さ方向に対向する第一表面101a及び第二表面101bを有し、銅系導電層102は支持層101の第一表面101a及び第二表面101bのうちの少なくとも一つに積層設置され、かつ銅系導電層102と支持層101との間、及び銅系導電層102の支持層101から離れる表面にいずれも保護層103が設置される。
【0072】
銅系導電層102の二つの表面側にいずれも保護層103が設置され、銅系導電層102をより十分に保護することにより、負極集電体10は高い総合性能を有する。
【0073】
当然のことながら、銅系導電層102の二つの表面側の保護層103は、その材料が同じであっても異なってもよく、その厚さが同じであっても異なってもよい。
【0074】
いくつかの実施例において、保護層103の厚さDは1nm≦D≦200nm、かつD≦0.1Dを満たす。このように、銅系導電層102を保護すると同時に、電気化学装置に高いエネルギー密度を備えさせることができる。
【0075】
例えば、保護層103の厚さD≦200nm、≦180nm、≦150nm、≦120nm、≦100nm、≦80nm、≦60nm、≦55nm、≦50nm、≦45nm、≦40nm、≦30nm又は≦20nmであってもよく、さらに≧1nm、≧2nm、≧5nm、≧8nm、≧10nm、≧12nm、≧15nm又は≧18nmであってもよい。好ましくは、5nm≦D≦200nmである。より好ましくは、10nm≦D≦200nmである。
【0076】
「保護層103の厚さD」は、銅系導電層102の片側に位置する保護層103の厚さを意味する。即ち、負極集電体10が上部保護層を含む場合、上部保護層の厚さDは1nm≦D≦200nmであり、かつD≦0.1Dである。さらに、5nm≦D≦200nmである。さらに、10nm≦D≦200nmである。負極集電体10が下部保護層を含む場合、下部保護層の厚さDは1nm≦D≦200nmでありかつD≦0.1Dである。さらに、5nm≦D≦200nmである。さらに、10nm≦D≦200nmである。
【0077】
及びDは保護層103が銅系導電層102を効果的に保護する役割を果たすと同時に、電気化学装置が高いエネルギー密度を有することを保証する。
【0078】
銅系導電層102の二つの表面にいずれも保護層103が設置される場合、即ち、負極集電体10が上部保護層及び下部保護層を含む場合、好ましくは、D>Dである。このように、上部保護層及び下部保護層は協働して銅系導電層102に対して良好な化学的腐食防止、機械的損傷防止の保護作用を果たし、同時に電気化学装置は高いエネルギー密度を有する。より好ましくは、0.5D≦D≦0.8Dである。これにより、上部保護層および下部保護層の相乗的な保護作用がより良好に発揮される。
【0079】
当然のことながら、保護層103の設置の有無は負極集電体10の脆性パラメータCに対する影響を無視することができる。
【0080】
銅系導電層102は、機械的圧延、接着、気相成長法、化学めっき(Electroless plating)、及び電気めっき(Electroplating)の少なくとも一つの手段により支持層101上に形成することができる。ここで、気相成長法、電気めっき法が好ましく、即ち、銅系導電層102はそれぞれ気相成長層、電気めっき層である。気相成長法又は電気めっき法により銅系導電層102を支持層101に形成することにより、銅系導電層102と支持層101との間に高い結合力を有し、それにより負極集電体10の性能を向上させる。
【0081】
気相成長法は、物理気相成長法であることが好ましい。物理気相成長法は好ましくは蒸発法及びスパッタリング法のうちの少なくとも一種類であり、ここで、蒸発法は好ましくは真空蒸着法、熱蒸発法及び電子ビーム蒸発法のうちの少なくとも一種類であり、スパッタリング法は好ましくはマグネトロンスパッタリング法である。
【0082】
一例として、真空蒸着法により銅系導電層102を形成することができる。ここで以下を含むことができる。表面洗浄処理された支持層101を真空メッキ室内に置き、1300℃~2000℃の高温で金属蒸発室内の金属線を溶融蒸発させ、蒸発後の金属は真空メッキ室内の冷却システムを通過し、最後に支持層101に堆積し、銅系導電層102を形成する。
【0083】
保護層103を有する場合、保護層103は気相成長法、インサイチュ形成法及び塗布法のうちの少なくとも一つの手段により銅系導電層102に形成されてもよい。気相成長法は、前述したような気相成長法であってもよい。好ましくは、インサイチュ形成法はインサイチュ不動態化法であり、即ち、金属表面に金属酸化物不動態化層をインサイチュ形成する方法である。好ましくは、塗布法は、ロール塗布、エクストルージョン塗布、ナイフ塗布及びグラビア塗布の少なくとも一つである。
【0084】
好ましくは、保護層103は気相成長法及びインサイチュ形成法のうちの少なくとも一つの手段により銅系導電層102に形成される。これにより、銅系導電層102と保護層103との間に高い結合力を有する。それにより、保護層103の負極集電体10に対する保護作用をよりよく発揮し、かつ負極集電体10の良好な動作性能を保証する。
【0085】
銅系導電層102と支持層101との間に保護層103(即ち下部保護層)が設置される場合、まず下部保護層を支持層101に形成し、次に銅系導電層102を下部保護層に形成してもよい。下部保護層は気相成長法及び塗布法のうちの少なくとも一つの手段により支持層101に形成されてもよく、ここで気相成長法が好ましい。銅系導電層102は機械ロール圧延、接着、気相成長法及び化学めっきのうちの少なくとも一つの手段により下部保護層に形成されてもよく、ここで気相成長法が好ましい。
【0086】
(負極シート)
本出願の第二態様は負極シートを提供する。負極シートは積層設置された負極集電体及び負極活物質層を含み、ここで、負極集電体は本出願の第一態様のいずれかの負極集電体10である。
【0087】
本出願の負極シートは本出願の第一態様の負極集電体10を採用するため、それは高い力学的性質、及び高い製造効率及び高い使用安全性及び信頼性を有し、同時に低重量及び高い電気化学的性能を兼ね備える。
【0088】
図6には、一例としての負極シート30が示されている。図6に示すとおり、負極シート30は積層設置された負極集電体10及び負極活物質層20を含み、負極集電体10は自身の厚さ方向に対向する二つの表面を有し、負極活物質層20は負極集電体10の二つの表面に積層設置される。当然のことながら、負極活物質層20はさらに負極集電体10の二つの表面のうちのいずれか一つに積層設置されてもよい。
【0089】
負極活物質層20は本分野で知られている活性イオンの可逆的挿入/脱離を行うことができる負極活物質を利用可能である。本出願はこれに対して限定しない。リチウムイオン二次電池に用いられる負極活物質としては、例えば、金属リチウム、天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェーズマイクロカーボンボール(MCMBと略記)、ハードカーボン、ソフトカーボン、シリコン、シリコン-炭素複合体、SiO、Li-Sn合金、Li-Sn-O合金、Sn、SnO、SnO、スピネル構造のチタン酸リチウム、Li-Al合金等が挙げられる。
【0090】
いくつかの実施例において、負極活物質層20はさらに導電剤を含むことができる。本出願は、導電剤の種類を制限するものではない。例として、導電剤はグラファイト、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一種類又は複数種類から選択することができる。
【0091】
いくつかの実施例において、負極活物質層20はさらに接着剤を含むことができる。本出願は、接着剤の種類を制限するものではない。例として、結着剤はスチレンブタジエンゴム(SBR)、水性アクリル樹脂、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリビニルブチラール(PVB)から選択される一種類又は複数種類である。
【0092】
負極シート30は本分野の従来の方法、例えば塗布法に基づいて製造できる。例として、負極活物質及び選択可能な導電剤と接着剤を溶媒に分散させ、溶媒はNMP又は脱イオン水であってもよく、均一な負極スラリーを形成する。負極スラリーを負極集電体10に塗布し、乾燥等の工程を経た後、負極シート30を得る。
【0093】
(電気化学装置)
本出願の第三形態は、電気化学装置を提供する。電気化学装置は正極シート、負極シート及び電解質を含む。ここで、負極シートは本出願の第二態様のいずれか一つの負極シートである。
【0094】
電気化学装置の実施例は、電池、前記電池を含む電池モジュール、前記電池を含む電池パックであってもよい。電池の実施例は、一次電池、二次電池であってもよい。具体的には、リチウムイオン二次電池、リチウム一次電池、ナトリウムイオン電池、マグネシウムイオン電池などが挙げられるが、これに限定されない。
【0095】
本出願の電気化学装置は本出願の第二態様に基づいて提供された負極シートを採用し、それにより高い総合電気化学性能を有し、そのうち、高いエネルギー密度、倍率性能、サイクル性能及び安全性能を有する。
【0096】
いくつかの実施例において、正極シートは正極集電体及び正極集電体に設置された正極活物質層を含む。例えば、正極集電体は自身の厚さ方向に対向する二つの表面を有し、正極活物質層は二つの表面のうちのいずれか一つ又は両者に積層して設置される。
【0097】
正極活物質層は本分野で知られている活性イオンの可逆的挿入/脱離可能な正極活物質を採用することができ、本出願はこれに対して限定しない。例えばリチウムイオン二次電池に用いられる正極活物質はリチウム遷移金属複合酸化物、リチウム遷移金属複合酸化物に他の遷移金属又は非遷移金属又は非金属を添加して得られた複合酸化物のうちの一種類又は複数種類を含むことができる。ここで遷移金属はMn、Fe、Ni、Co、Cr、Ti、Zn、V、Al、Zr、Ce及びMgのうちの一種類又は複数種類であってもよい。
【0098】
例として、正極活物質は、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩のうちの一種類又は複数種類から選択することができる。例えば、正極活物質はLiMn、LiNiO、LiCoO、LiNi1-yCo(0<y<1)、LiNiCoAl1-a-b(0<a<1、0<b<1、0<a+b<1)、LiMn1-m-nNiCo(0<m<1、0<n<1、0<m+n<1)、LiMPO(MはFe、Mn、Coのうちの一種類又は複数種類であってもよい)及びLi(POのうちの一種類又は複数種類を含む。
【0099】
いくつかの実施例において、正極活物質層はさらに接着剤を含むことができる。本出願は、接着剤の種類を制限するものではない。例として、接着剤はスチレンブタジエンゴム(SBR)、水性アクリル樹脂、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリビニルブチラール(PVB)から選択される一種類又は複数種類である。
【0100】
いくつかの実施例において、正極活物質層はさらに導電剤を含むことができる。本出願は、導電剤の種類を制限するものではない。例として、導電剤はグラファイト、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一種類又は複数種類から選択することができる。
【0101】
正極シートは、本分野の一般的な方法、例えば塗布法に応じて製造することができる。例として、正極活物質及び選択可能な導電剤と接着剤を溶剤に分散させ、溶剤はN-メチルピロリドン(NMP)であってもよく、均一な正極スラリーを形成する。正極スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥等の工程を経た後、正極シートを得る。
【0102】
正極集電体はアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン及び銀のうちの一種類又は複数種類を含むことができ、例えばアルミニウム及びアルミニウム合金のうちの一種類又は複数種類である。アルミニウム合金におけるアルミニウム元素の質量パーセント含有量は好ましくは80wt%以上であり、より好ましくは90wt%以上である。
【0103】
いくつかの実施例において、電解質は固体電解質を採用してもよく、非水系電解液を採用してもよい。非水電解液は、電解質塩を有機溶媒に分散させて電解液として得ることができる。電解液において、有機溶媒は電気化学反応においてイオンを輸送する媒体として、本分野の任意の有機溶媒を採用することができる。電解質塩はイオンの供給源として、本分野の任意の電解質塩であってもよい。
【0104】
リチウムイオン二次電池に用いられる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、メチルホルメート(MF)、メチルアセテート(MA)、酢酸エチル(EA)、プロピルアセテート(PA)、メチルプロピオネート(MP)、エチルプロピオネート(EP)、プロピルプロピオネート(PP)、メチルブチレート(MB)、エチルブチレート(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルスルホン(EMS)、ジエチルスルホン(ESE)のうちの一種類又は複数種類を含む。
【0105】
例えば、リチウムイオン二次電池に用いられる電解質塩は、LiPF(六フッ化リン酸リチウム)、LiBF(四フッ化ホウ酸リチウム)、LiClO(過塩素酸リチウム)、LiAsF(六フッ化ヒ酸リチウム)、LiFSI(二フッ化スルホニルイミドリチウム)、LiTFSI(二フッ化トリフルオロメタンスルホニルイミドリチウム)、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiDFOB(二フッ化シュウ酸ホウ酸リチウム)、LiBOB(二シュウ酸ホウ酸リチウム)、LiPO(二フッ化リン酸リチウム)、LiDFOP(二フッ化二シュウ酸リン酸リチウム)、LiTFOP(四フッ化シュウ酸リン酸リチウム)のうちの一種類または複数種類を含んでいてもよい。
【0106】
電解液はさらに添加剤を選択的に含み、ここで添加剤の種類を具体的に限定せず、必要に応じて選択することができる。例えば添加剤は負極成膜添加剤を含んでもよく、正極成膜添加剤を含んでもよく、さらに電気化学装置のある性能を改善できる添加剤、例えば電気化学装置の過充電性能を改善する添加剤、電気化学装置の高温性能を改善する添加剤、電気化学装置の低温性能を改善する添加剤等を含んでもよい。
【0107】
例として、添加剤はビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、スクシノニトリル(SN)、アジポニトリル(ADN)、1,3-プロペンスルトン(PST)、トリス(トリメチルシラン)リン酸エステル(TMSP)及びトリス(トリメチルシラン)ホウ酸エステル(TMSB)のうちの一種類又は複数種類を含むことができる。
【0108】
電気化学装置が電解液を採用する場合、正極シートと負極シートとの間にセパレータが設置され、隔離の役割を果たす。セパレータの種類は特に限定されず、任意の公知の良好な化学的安定性及び機械的安定性を有する多孔質構造セパレータを選択することができ、例えばガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンのうちの一種類又は複数種類である。セパレータは、単層フィルムであっても多層複合フィルムであってもよい。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は同じであってもよく異なってもよい。
【0109】
いくつかの実施例において、電気化学装置は電池であってもよい。電池は、正極シート、負極シート及び電解質を封止するための外装を含む。例として、正極シート、負極シート及びセパレータは積層又は巻回により積層構造の電極アセンブリ又は巻回構造の電極アセンブリを形成することができ、電極アセンブリは外装内に封入される。電解質は電解液を採用することができ、電解液は電極アセンブリに浸潤する。電池における電極アセンブリの数は一つ又は複数であってもよく、必要に応じて調整することができる。
【0110】
いくつかの実施例において、電池の外装はソフトパックであってもよく、例えば袋式ソフトパックである。ソフトパックの材質はプラスチックであってもよく、例えばポリプロピレンPP、ポリブチレンテレフタレートPBT、ポリブチレンサクシネートPBS等のうちの一種類又は複数種類を含むことができる。電池の外装は硬質ケースであってもよく、例えばアルミニウムケース等である。
【0111】
本出願は電池の形状を特に限定せず、それは円筒形、角形又は他の任意の形状であってもよい。図7は、一例としての角形構造の電池5である。
【0112】
いくつかの実施例において、電池は電池モジュールに組み立てることができ、電池モジュールに含まれる電池の数は複数であってもよく、具体的な数は電池モジュールの応用及び容量に応じて調整することができる。
【0113】
図8は、一例としての電池モジュール4である。図8に示すとおり、電池モジュール4において、複数の電池5は電池モジュール4の長手方向に沿って順に配列して設置されてもよい。当然のことながら、他の任意の方式で配列することができる。さらに、この複数の電池5を締結具で固定してもよい。
【0114】
電池モジュール4はさらに収容空間を有するケースを選択的に含み、複数の電池5は該収容空間に収容される。
【0115】
いくつかの実施例において、上記電池モジュールはさらに電池パックに組み立てることができ、電池パックに含まれる電池モジュールの数は電池パックの応用及び容量に応じて調整することができる。
【0116】
図9および図10は、一例としての電池パック1である。図9及び図10に示すとおり、電池パック1は電池ケース及び電池ケース内に設置された複数の電池モジュール4を含むことができる。電池ケースは上部ケース本体2及び下部ケース本体3を含み、上部ケース本体2は下部ケース本体3にカバーすることができ、かつ電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成する。複数の電池モジュール4は、任意の態様で電池ケース内に配置されてよい。
【0117】
(装置)
本出願の第四態様は装置を提供し、前記装置は本出願の第三態様の電気化学装置を含み、前記電気化学装置は前記装置の電源として用いられてもよく、前記装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。前記装置は携帯機器(例えば携帯電話、ノートパソコン等)、電動車両(例えば純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクータ、電動ゴルフカート、電動トラック等)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システム等であってもよいがこれらに限定されない。前記装置はその使用必要に応じて異なる電気化学装置、例えば電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0118】
図11は、一例としての装置である。該装置は純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車等である。該装置が電気化学装置の高出力及び高エネルギー密度に対する要求を満たすために、電池パック又は電池モジュールを採用することができる。
【0119】
他の例としての装置は携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートパソコン等であってもよい。該装置は一般的に薄型化を要求し、二次電池を電源として採用することができる。
【実施例
【0120】
以下の実施例は、本出願に開示された内容をより具体的に説明し、叙述的に説明するためのものに過ぎない。本出願に開示された内容の範囲内で様々な修正及び変更を行うことは当業者にとって明らかである。特に断らない限り、以下の実施例に報告された全ての部、百分率、及び比はいずれも重量に基づいて計算され、かつ実施例に使用された全ての試薬はいずれも市販されるか又は従来の方法に従って合成して取得され、かつさらに処理する必要がなく直接使用することができ、実施例に使用された装置はいずれも市販されて取得される。
【0121】
〔製造方法〕
(負極集電体の製造)
所定の厚さの高分子材料系支持層を選択しかつ表面洗浄処理を行い、表面洗浄処理された支持層を真空メッキ室内に置き、1300℃~2000℃の高温で金属蒸発室内の高純度銅線を溶融して蒸発させ、蒸発後の金属は真空メッキ室内の冷却システムを経て、最後に支持層の二つの表面に堆積し、銅系導電層を形成する。
【0122】
(通常の負極集電体の製造)
厚さ8μmの銅箔を用いる。
【0123】
(負極シートの製造)
負極活物質である黒鉛、導電性カーボンブラック、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム、接着剤であるスチレンブタジエンゴム乳液を96.5:1.0:1.0:1.5の重量比に応じて適量の脱イオン水で十分に撹拌して混合し、それを均一な負極スラリーに形成させる。負極スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥等の工程を経た後、負極シートを得る。
【0124】
(通常の正極集電体の製造)
厚さ12μmのアルミニウム箔を用いる。
【0125】
(通常の正極シートの製造)
正極活物質LiNi1/3Co1/3Mn1/3、導電性カーボンブラック、接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を93:2:5の重量比に応じて適量のN-メチルピロリドン(NMP)溶媒に十分に撹拌して混合し、それを均一な正極スラリーに形成する。正極スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥等の工程を経た後、正極シートを得る。
【0126】
(電解液の調製)
体積比が3:7のエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)を均一に混合し、有機溶媒を得て、次に1mol/LのLiPF6を上記有機溶媒に均一に溶解する。
【0127】
(リチウムイオン二次電池の製造)
正極シート、セパレータ、負極シートを順に積層して設置し、ここでセパレータとしてはPP/PE/PP複合フィルムを採用する。次にコアに巻き取って包装ケースに入れ、上記電解液を電気コアに注入して封止することで、リチウムイオン二次電池を得る。
【0128】
(測定部)
1.負極集電体の測定
1)負極集電体の脆性パラメータCの測定
【0129】
支持層を幅が15mmで長さが150mmのサンプルに打ち抜き、その後にサンプルを米国INSTRON3365型の万能引張試験機の上下の二つの治具に取り付け、初期長さを50mmに設定し、5mm/minの引張速度で引張試験を行い、サンプルが破断するまで引張を停止し、サンプルが破断する時に受けた最大引張力Fを記録し、T=F/Sに基づいて支持層の引張強度Tを算出する。ここでSはサンプルの初期断面積であり、それはサンプルの幅とサンプルの厚さ(即ち支持層の厚さD)との積に等しい。
【0130】
銅系導電層の厚さD及び支持層の厚さDを万分尺で測定する。
【0131】
負極集電体の脆性パラメータC=(300×銅系導電層の厚さD)/(支持層の引張強度T×支持層の厚さD)である。
【0132】
2)負極集電体の破断伸び率測定
負極集電体を15mm×200mmに裁断したサンプルを取り、常温常圧(25℃、0.1MPa)で米国INSTRON3365型万能引張試験機を使用して引張試験を行い、初期位置を設置することにより治具の間のサンプルの長さが50mmであり、引張速度が5mm/minであり、引張破断時の装置変位y(mm)を記録し、最後に破断伸び率が(y/50)×100%であると計算する。
【0133】
2.電池の性能測定
(1)(サイクル特性測定)
45℃で、リチウムイオン二次電池を1C倍率で4.2Vまで定電流充電し、さらに電流≦0.05Cまで定電圧充電し、さらに1C倍率で2.8Vまで定電流放電し、これは充放電サイクルであり、今回の放電容量は、1回目のサイクルの放電容量である。リチウムイオン二次電池を上記方法に従って1000回充放電サイクルを行い、1000回目のサイクルの放電容量を記録し、リチウムイオン二次電池を1C/1Cで1000回サイクルした後の容量保持率を計算する。
【0134】
リチウムイオン二次電池を45℃、1C/1Cで1000サイクル後の容量保持率(%)=1000サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量×100%
【0135】
(2)(倍率性能測定)
25℃で、リチウムイオン二次電池を1C倍率で4.2Vまで定電流充電し、さらに電流が0.05C以下になるまで定電圧充電し、さらに1C倍率で3.0Vまで定電流放電し、試験してリチウムイオン二次電池の1C倍率放電容量を得る。
【0136】
25℃で、リチウムイオン二次電池を1C倍率で4.2Vまで定電流充電し、さらに電流が0.05C以下になるまで定電圧充電し、さらに4C倍率で3.0Vまで定電流放電し、試験してリチウムイオン二次電池の4C倍率放電容量を得る。
【0137】
二次電池4C倍率容量保持率(%)=4C倍率放電容量/1C倍率放電容量×100%
【0138】
(測定結果)
1.電気化学装置の重量エネルギー密度の改善での負極集電体の作用
【0139】
【表1】
【0140】
表1において、負極集電体の重量パーセントは、単位面積当たりの負極集電体の重量を単位面積当たりの通常の負極集電体の重量で割ったパーセントである。従来の銅箔負極集電体と比較して、本出願を採用する負極集電体の重量は、いずれも異なる程度で軽減され、それにより電気化学装置の重量エネルギー密度を向上させることができる。
【0141】
2.負極集電体及び電気化学装置の電気化学的性能に関する保護層の作用
【0142】
【表2-1】
【0143】
表2-1における負極集電体は、表1の負極集電体7に加えて保護層を設けたものである。表2-1におけるニッケル系合金は、90wt%のニッケルと、10wt%のクロムを含む。
【0144】
表2-1における二層保護層は、銅系導電層の支持層に背向する表面に設置され、厚さが25nmであるニッケル保護層と、ニッケル保護層の支持層に背向する表面に設置され、厚さが25nmである酸化ニッケル保護層と、を含む。
【0145】
【表2-2】
【0146】
表2-2における電池は、いずれも通常の正極シートを採用する。
【0147】
表2-2から分かるように、本出願の負極集電体を用いた電気化学装置はサイクル寿命及び倍率性能が良好であり、通常の負極集電体を用いた電気化学装置のサイクル性能及び倍率性能に相当する。これは本出願の複合負極集電体を採用することが電気化学装置の電気化学的性能に明らかな悪影響を与えないことを分かる。特に保護層が設置された複合負極集電体で製造された電気化学装置は、45℃、1C/1Cで1000回サイクルした後の容量保持率及び4C倍率の容量保持率がさらに向上し、電気化学装置の信頼性がより高いことを分かる。
【0148】
3.負極集電体の脆性パラメータ及びその負極集電体の力学的性質への影響
【0149】
【表3】
【0150】
表3において、銅合金はCuNi合金であり、95wt%のCuと5wt%のNiからなる。
【0151】
表3の結果から分かるように、負極集電体の脆性パラメータCを0.01~0.5にし、負極集電体の破断伸び率を改善し、負極集電体の破断伸び率が3%以上である。これにより負極集電体が高い力学的性能及び機械的性能を有することを確保することにより、それは電気化学装置の製造加工及び動作過程において一定の変形を受けて破断破壊を引き起こさない。これは負極集電体の加工可能性能及び使用中の安定性能を向上させ、それが製造及び使用中に断裂が発生するか又はクラックが発生することを効果的に防止することができ、それにより負極集電体及びそれを用いた負極シートと電気化学装置の製造中の良品率及び使用中の信頼性を顕著に向上させる。
【0152】
前記のように、本出願の具体的な実施形態に過ぎず、本出願の保護範囲はこれに限定されず、当業者は本出願に開示された技術的範囲内で、様々な等価の修正又は置換を容易に想到することができ、これらの修正又は置換はいずれも本出願の保護範囲内に含まれるべきである。従って、本出願の保護範囲は請求項の保護範囲を基準とすべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11