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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】濾過要素および濾過システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/52 20060101AFI20241203BHJP
   B01D 45/12 20060101ALI20241203BHJP
   B01D 50/00 20220101ALI20241203BHJP
   B01D 50/20 20220101ALI20241203BHJP
【FI】
B01D46/52 B
B01D46/52 A
B01D45/12
B01D50/00 501E
B01D50/00 501J
B01D50/20
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021571330
(86)(22)【出願日】2020-05-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2020063013
(87)【国際公開番号】W WO2020244888
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】102019115568.1
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505229863
【氏名又は名称】マン ウント フンメル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カウフマン、ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】ルーランド、クラウス-ディエター
(72)【発明者】
【氏名】ワーグナー、マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ヘットカンプ、フィリップ
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0133517(US,A1)
【文献】中国実用新案第204246998(CN,U)
【文献】独国特許出願公開第102015011339(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102010025971(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102017221592(DE,A1)
【文献】特開平09-262424(JP,A)
【文献】特表2013-503735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 46/00-46/90
F02M 35/00-35/16
B01D 45/00-45/18
B01D 49/00-51/10
B01D 24/00-37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体を濾過するための濾過要素(10)であって、
未処理側流入面(50)および清浄側流出面(52)を有する、ジグザグ状に折られた濾材(13)を含む少なくとも1つのフィルタベローズ(12)を備え、
前記フィルタベローズ(12)は、補強フレーム(18)に配置され、
前記濾過要素(10)は、前記フィルタベローズ(12)の前記流入面(50)および/または前記流出面(52)において、前記濾材(13)の外周側の少なくとも一部に少なくとも部分的に連続して周方向に配置された少なくとも1つのシール(20)を備え、
前記シール(20)は、前記補強フレーム(18)の少なくとも部分的に周方向に延びる嵌合リブ(32)により、前記補強フレーム(18)に接続され、鋳造、発泡またはモールド成形によって前記補強フレーム(18)に接続され、
前記フィルタベローズ(12)の前記流入面(50)および/または前記流出面(52)において、複数の細長い接着部(28)が、前記濾材(13)上に少なくとも2つの接着剤トラック(26)に沿って配置され、
前記濾過要素(10)は、前記濾材(13)および/または前記シール(20)に対する前記接着剤トラック(26)の長さ変化を補償する歪緩和手段(38)を備えることを特徴とする濾過要素。
【請求項2】
前記フィルタベローズ(12)は、前記未処理側流入面(50)および/または前記清浄側流出面(52)において、前記補強フレーム(18)に接続される請求項1に記載の濾過要素。
【請求項3】
前記シール(20)は、鋳造、発泡またはモールド成形によって、前記フィルタベローズ(12)に密封して接続される請求項1又は2に記載の濾過要素。
【請求項4】
前記濾材(13)は、ジグザグ状に折り畳まれた複数の折り畳み部(22)および前記複数の折り畳み部(22)のそれぞれの折られた部分である複数の折り端(24)を有し、
各接着剤トラック(26)上の歪緩和手段(38)として、少なくとも1つの接着部(28)と少なくとも1つの非接着部(30)が設けられ、隣接する接着剤トラック(26)の非接着部(30)は、前記折り畳み部(22)に交差する方向に異なる折り端(24)に配置される請求項1~のいずれか一項に記載の濾過要素。
【請求項5】
前記隣接する接着剤トラック(26)の非接着部(30)は、前記折り畳み部(22)に交差する方向に重なり合うことなく配置される請求項に記載の濾過要素。
【請求項6】
前記接着部(28)は、前記非接着部(30)の少なくとも5倍の折り畳み部(22)にわたって延びる請求項またはに記載の濾過要素。
【請求項7】
前記非接着部(30)は、折り端(24)にわたって延びる請求項のいずれか一項に記載の濾過要素。
【請求項8】
前記接着剤トラック(26)は、互いに平行に、等距離に配置され、および/または、前記非接着部(30)は、前記流入面(50)および/または前記流出面(52)にわたって均一に分散して配置される請求項のいずれか一項に記載の濾過要素。
【請求項9】
前記接着剤トラック(26)は、折り端(24)に垂直に延びる請求項1~のいずれか一項に記載の濾過要素。
【請求項10】
流体を濾過するための濾過システム(100)であって、
流体流れ(120)を導入するための少なくとも1つの流入口(102)および精製された流体流れ(122)を排出するための少なくとも1つの流出口(104)を有するフィルタハウジング(110)と、
流体を濾過するための請求項1~のいずれか一項に記載の濾過要素(10)と、を備え、
前記濾過要素(10)は、未処理側(40)と清浄側(42)との間で前記フィルタハウジング(110)に交換可能に配置される濾過システム。
【請求項11】
前記フィルタハウジング(110)内で、前記濾過要素(10)より流体流れ方向の上流側にサイクロンプレセパレータ(14)が設けられ、および/または、前記濾過要素(10)より流体流れ方向の下流側に平坦なベローズ(16)が設けられる請求項10に記載の濾過システム。
【請求項12】
前記濾過要素(10)が適切に取り付けられている時、前記濾過要素(10)のシール(20)によって、前記未処理側(40)と前記清浄側(42)とが隔てられる請求項10または11に記載の濾過システム。
【請求項13】
前記濾過要素(10)は、流体の主流れ軸(128)に交差する方向に前記フィルタハウジング(110)に挿入されたまたは挿入可能なスライドイン濾過要素として設計される請求項1012のいずれか一項に記載の濾過システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を濾過するための、特に自動車両の、特に内燃機関のエアフィルタまたは内部エアフィルタとして使用される濾過要素、および濾過要素を備えた濾過システムに関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2017/133796号には、特に自動車両および/または機械の、特に内燃機関の、特に気体、特に空気用フィルタの濾過要素が開示されている。濾過要素は、フィルタのフィルタハウジング内に、設置軸に対して平行または同軸に伸びる設置方向に設置することができる。濾過要素は、少なくとも1つの濾材を含む少なくとも1つのフィルタベローズを備える。フィルタベローズは、設置軸に対して垂直または交差する方向に延びる要素軸に関して、軸方向両側に流体の流路側を有している。濾過要素は、要素軸に関して、濾過要素の径方向外側の少なくとも一部に少なくとも部分的に連続して周方向に配置された少なくとも1つのシールを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、動作時に高い信頼性を有し、長い耐用年数を示す、流体を濾過するための改良された濾過要素を提供することを目的とする。
【0004】
さらに、本発明は、このような交換可能な濾過要素を収容する、流体を濾過するための濾過システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によると、上述の目的は、流体、特に空気を濾過するための濾過要素であって、未処理側流入面および清浄側流出面を有する、ジグザグ状に折られた濾材を含む少なくとも1つのフィルタベローズを備える濾過要素によって解決される。フィルタベローズは、フレーム、特に補強フレームに配置、好ましくは接続され、特に未処理側流入面および/または清浄側流出面でフレームに接続される。フィルタベローズの流入面または流出面には、濾材の外周側の少なくとも一部に少なくとも部分的に連続して周方向に配置された少なくとも1つのシールが設けられる。シールは、特にフォームフィット要素によって、好ましくはフレームに接続され、好ましくは補強フレームの少なくとも部分的に周方向に延びる嵌合リブまたは嵌合開口部によって、補強フレームに接続され、特に鋳造、発泡またはモールド成形によって、補強フレームに接続される。また、フィルタベローズの流入面および/または流出面には、複数の細長い接着部が、濾材上に少なくとも2つの接着剤トラック(Klebstoffspuren)に沿って配置される。また、濾過要素は、濾材および/またはシールに対する接着剤トラックの長さ変化を補償する歪緩和手段を備えることを特徴とする。通常、使用される接着剤は、好ましくは、ポリアミドまたはポリエステルの熱可塑性ホットメルトであり、アプリケーターノズルによって、可塑状態で塗布され、冷却されると硬化する。換言すると、硬化状態の接着部がビーズ状の樹脂部になる。
【0006】
本発明の更なる態様によると、更なる目的は、流体を濾過するための濾過システムであって、流体流れを導入するための少なくとも1つの流入口および精製された流体流れを排出するための少なくとも1つの流出口を有するフィルタハウジングと、未処理側と清浄側との間でフィルタハウジングに交換可能に配置される、流体を濾過するための濾過要素と、を備える濾過システムによって解決される。濾過要素は、未処理側流入面および清浄側流出面を有する、ジグザグ状に折られた濾材を含む少なくとも1つのフィルタベローズを備える。フィルタベローズは、清浄側に設けられた補強フレームに配置される。フィルタベローズの流入面または流出面には、濾材の外周側の少なくとも一部に少なくとも部分的に連続して周方向に配置された少なくとも1つのシールが設けられる。シールは、少なくとも部分的に周方向に延びる嵌合リブによって補強フレームに接続され、特に鋳造またはモールド成形によって補強フレームに接続される。また、フィルタベローズの流入面および/または流出面には、複数の細長い接着部が、濾材上に少なくとも2つの接着剤トラックに沿って配置される。また、濾過要素は、濾材および/またはシールに対する接着剤トラックの長さ変化を補償する歪緩和手段を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の好ましい実施形態および利点は、添付の特許請求の範囲、明細書、および図面から得られる。
【0008】
提案される流体、特に空気を濾過するための濾過要素は、未処理側流入面および清浄側流出面を有する、ジグザグ状に折られた濾材を含む少なくとも1つのフィルタベローズを備える。フィルタベローズは、補強フレームに配置され、フィルタベローズの流入面または流出面において、濾材の外周側の少なくとも一部に少なくとも部分的に連続して周方向に配置された少なくとも1つのシールが設けられる。シールは、例えば、少なくとも部分的に周方向に延びる嵌合リブによって補強フレームに接続され、特に発泡またはモールド成形によって補強フレームに接続される。また、フィルタベローズの流入面および/または流出面において、複数の細長い接着部が、濾材上に少なくとも2つの接着剤トラックに沿って配置される。
【0009】
本発明によると、濾過要素は、濾材および/またはシールに対する接着剤トラックの長さ変化を補償する歪緩和手段を備える。
【0010】
フィルタベローズは、例えば、ジグザグ状に折り畳まれており、平行な折り端が、フィルタベローズの長手方向に順次配列され、それぞれフィルタベローズの両端面間に延在する。ここで、連続した補強フレームがフィルタベローズの外周に成形されてもよい。このようなフィルタベローズは、例えば、内燃機関のエアフィルタとして有利に利用され、エアフィルタの安価で効率的な解決策を示す。成形されたフレームにより、フィルタベローズを容易に取り付け、必要に応じて交換することが可能となる。
【0011】
シールは、好ましくは、補強フレームの領域内でフィルタベローズ上に発泡またはモールド成形することで製造されるポリウレタン(PUR)シールである。
【0012】
フラットフィルタでは、流れ方向は、例えば、フラットフィルタの場合にフィルタベローズの両平坦面に設けられる流入面および流出面に対して垂直である。好ましくは、折り目が立設されたフィルタの流出面および流入面は、それぞれ濾材の折り目の折り端が配置される面を形成する。
【0013】
フィルタベローズの一方の流路側は、流体の流入面を成し、他方の流路側は流出面を成し得る。流体は、フィルタベローズを流入面から流出面に流れる。流路側はそれぞれ流路面として実現することができ、折り畳まれたフィルタベローズの場合、それぞれの折り端が対応する流路面を規定する。
【0014】
従来技術によれば、通常、端面に配置される接着部は、流入面または流出面にわたって、濾材の折り目の折り端上に、折り端に交差して連続的に延びる接着剤トラックとして配置される。これにより、各折り端は、互いに対して一定の距離に明確に位置付けられる。接着剤トラックは、隣接する折り端によって形成された流入面または流出面のいずれかに、または、まだ折り畳まれていない、接着剤が可塑状態で折り目がつけられる予定の紙に、折り端に交差するように適用され、流入側または流出側の折り端の領域において、隣接する折り目の接着部が互いに接合し、その結果、流入面および/または流出面で、折り端に交差して延在する連続的で比較的ひずみに強い接続部が形成される。いずれの場合も、折り目に交差して延在する連続的で、硬化状態で強度の高いビーズが形成される。本発明の歪緩和手段によると、接着剤トラックが、時間経過に伴う接着剤の収縮によって、フィルタベローズの折り端に交差する方向に引張応力を生じることを有利に防ぐことができる。この歪緩和手段の利点は、接着剤の収縮によって生じる変形を低減または防止することである。このような変形は、例えば、シール面などの機能要素の位置を変化させたり、極端な場合には、損傷を引き起こしたりする可能性がある。しかしながら、歪緩和手段により、これらの領域に不利な応力効果が生じさせることなく、接着剤の収縮を起こすことができる。
【0015】
有利には、濾過要素は、いわゆるフラットフィルタ要素である。本発明の意味におけるフラットフィルタ要素は、濾材が中空体を形成するように閉じられていない。
【0016】
本発明の濾過要素は環状ではない。流路側は、要素軸に関して、軸方向両側に配置されている。これに対して、中空状の濾過要素、特にいわゆる円形濾過要素の場合、濾材は周方向に閉じられて内部を囲っている。本発明の濾過要素は、平面状または湾曲状であり得る。これに関して、流体用のフィルタベローズの流入面および/または流出面は、平面状、湾曲状、または段差状であり得る。また、濾過要素は、ボックス状であってもよい。フィルタベローズは、略多面体形状であってもよい。有利には、フィルタベローズは、立方体状、直方体状、ピラミッド状、角柱状、楔状などである。なお、フィルタベローズのすべての面、特に周方向側の面が平面である必要はない。フィルタベローズの少なくとも1つの面は、少なくとも部分的に湾曲、特に放物線状および/または段差状に延びていてもよい。反対側に配置された面は、互いに平行に延びていてもよい。これに代わってまたはこれに加えて、これらの面は、互いに斜めに、または別の方法で非平行に延びていてもよい。有利には、流入面および/または流出面は、それぞれ要素軸に対して、少なくとも部分的に垂直または斜めに延びていてもよい。
【0017】
有利には、流入面および流出面は、互いに、少なくとも部分的に斜めに、および/または、少なくとも部分的に平行に延びていてもよい。有利には、少なくとも1つのフィルタベローズは、ジグザグ状および/または波状の濾材を含んでいてもよい。これにより、フィルタベローズの空間的拡張に関連して、流体が流れる濾材の表面を拡張することができる。
【0018】
有利には、濾材の折り端は、両流路側、特に流入面および/または流出面において、互いに平行に延びる。
【0019】
有利には、少なくとも1つのフィルタベローズは、比較的深い折り目および/または可変の折り高さを有する。流入側の折り端と隣接する流出側の折り端との間の折り畳まれた濾材の折り目の範囲を「折り高さ」と呼ぶ。深い折り目の場合、折り高さ、すなわち、対応する折り目の領域におけるフィルタベローズの高さは、折り高さに垂直または交差する方向のフィルタベローズの幅および/または長さよりも大きい。
【0020】
濾材は、濾紙、濾不織布、メルトブロー、布、および/または流体、特に空気を濾過するのに適した別の濾材を含み得る。有利には、濾材は可撓性を有し、特に折り畳み可能または折り曲げ可能である。
【0021】
これに代わってまたはこれに加えて、フィルタベローズは、流体透過性、特に空気透過性の発泡フィルタを含んでいてもよい。
【0022】
フィルタベローズは、フィルタ材料、特に発泡フィルタの塊として少なくとも部分的に実現することができる。
【0023】
有利な実施形態によると、各接着剤トラック上の歪緩和手段として、少なくとも1つの接着部と少なくとも1つの非接着部が設けられ、特に、隣接する接着剤トラックの非接着部は、特に折り目に交差する方向に、異なる折り端に配置される。このように、連続した接着剤トラックは、互いに分離された個々の接着部に分割される。これらの非接着部は、接着剤の流れを中断することで、接着剤トラックの生成に都合よく導入することができる。好ましくは、非接着部は、折り端に配置される。
【0024】
有利な実施形態によると、隣接する接着剤トラックの非接着部は、折り目に交差する方向に重なり合うことなく配置される。換言すると、隣接する接着剤トラックは、好ましくは、同じ折り端上に非接着部を含まない。このように流入面または流出面において、非接着部が互いにズレて配置される場合、フィルタベローズ全体の剛性への影響が比較的少なく、より高い流体圧力でもフィルタベローズが安定したままとなる。
【0025】
有利な実施形態によると、連続した接着部は、非接着部の少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍、特に好ましくは少なくとも15倍の折り目にわたって延びる。非接着部に対して接着部をこのような寸法にすることで、実際の操作時に、十分な歪緩和が提供されるのと同時に、フィルタベローズの十分な安定性が保証される。
【0026】
有利な実施形態によると、非接着部は、少なくともまたはちょうど1つの折り端、好ましくは少なくともまたはちょうど2つの隣接する折り端にわたって延びる。好ましくは、フィルタベローズの最後の折り目で終わらない限り、複数のまたはすべての非接着部の両側に、連続した接着部がそれぞれ隣接し、少なくとも5つの折り端、または非接着部の少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍、特に好ましくは少なくとも15倍の折り端にわたって延びる。これにより、濾材を通る流れによる高い流体圧力に対するフィルタベローズの十分な安定性が保証される。
【0027】
有利な実施形態によると、接着剤トラックは、互いに平行に、等距離に配置され、および/または、非接着部は、流入面および/または流出面にわたって均一に分散して配置される。このような接着剤トラックの配置と、非接着部に対する接着部の寸法により、実際の操作時、流体が濾材を通って流れる際に、十分な歪緩和が提供されるのと同時に、フィルタベローズの十分な安定性が保証される。
【0028】
有利な実施形態によると、接着剤トラックは、折り端に垂直に延びる。これにより、流体から濾過された汚れ粒子が蓄積することで濾材の負荷が増加する場合でも、より高い流体圧力に対する濾材の有益な安定性を得ることができる。
【0029】
有利な実施形態によると、補強フレームの少なくとも一方の縦方向側面および/または横方向側面上の歪緩和手段として、シールのスライドシートが設けられ、該縦方向側面および/または横方向側面は、接着剤トラックに対して斜めまたは垂直である。このようなシールのスライドシートにより、接着剤トラックの収縮によって起こるフィルタベローズの移動と共に、シールが移動することができ、濾過された流体の漏れ口となる濾材とシールとの間の望ましくない接着剤の開口の形成を防ぐことができる。従って、濾過要素の耐用年数にわたって、濾材とシールとの間のシールの気密性を確保することができる。このようなシールのスライドシートは、好ましくは、補強フレームの折り端に平行な少なくとも1つの面、特に、折り端に平行な2つの面に配置される。
【0030】
有利な実施形態によると、補強フレームは、複数の開口部またはリブ、例えば、嵌合リブなどのフォームフィット手段を含む。好ましくは、補強フレームの少なくとも一方の縦方向側面または一方の横方向側面は、フォームフィットまたは嵌合リブなしで設計される。シールは、好ましくは、フィルタベローズおよび/またはフィルタベローズを囲む補強フレームに密封して接続され、好ましくは、その上に形成、例えば発泡またはモールド成形され、さらに好ましくは、発泡またはモールド成形によって形成された嵌合リブなどのフォームフィット手段により、補強フレームに固定的に接続される。補強フレームの少なくとも一方の縦方向側面または横方向側面に嵌合リブがないことで、シールのスライドシートが得られ、これにより、シールは単に補強フレームの平滑な前面に置かれるため、容易に移動することが可能となる。
【0031】
有利な実施形態によると、シールは、縦方向側面または横方向側面に摺動可能に配置される。嵌合リブなどのフォームフィット要素がないことで、これらの面では、シールは、特に折り端に交差する方向にフォームフィットや嵌合がなく、補強フレームに弱く接続され、従って、接着剤トラックの収縮によりフィルタベローズが移動すると、フィルタベローズと一緒に移動することができる。これにより、濾材とシールの間に、濾過された流体の漏れ口になり得る予期せぬ接着剤の開口が生じるのを防ぐことができる。
【0032】
更なる態様によると、本発明は、流体を濾過するための濾過システムであって、流体流れを導入するための少なくとも1つの流入口および精製された流体流れを排出するための少なくとも1つの流出口を有するフィルタハウジングと、未処理側と清浄側との間でフィルタハウジングに交換可能に配置される、流体を濾過するための濾過要素と、を備える濾過システムに関する。濾過要素は、未処理側折り端によって形成される未処理側流入面および清浄側折り端によって形成される清浄側流出面を有する、ジグザグ状に折られた濾材を含む少なくとも1つのフィルタベローズを備える。フィルタベローズは、清浄側補強フレームに配置される。フィルタベローズの流入面または流出面には、濾材の外周側の少なくとも一部に少なくとも部分的に連続して周方向に配置された少なくとも1つのシールが設けられる。シールは、少なくとも部分的に周方向に延びる嵌合リブによって補強フレームに接続され、特に鋳造または成形によって補強フレームに接続される。また、フィルタベローズの流入面および/または流出面において、複数の細長い接着部が、濾材上に少なくとも2つの接着剤トラックに沿って配置される。
【0033】
本発明によると、濾過要素は、濾材および/またはシールに対する接着剤トラックの長さ変化を補償する歪緩和手段を備える。
【0034】
フィルタベローズは、例えば、ジグザグ状に折り畳まれており、平行な折り端が、フィルタベローズの長手方向に順次配列され、それぞれフィルタベローズの両端面間に延在する。ここで、連続した補強フレームがフィルタベローズの外周に成形されてもよい。このようなフィルタベローズは、例えば、内燃機関のエアフィルタとして有利に利用され、エアフィルタの安価で効率的な解決策を示す。成形されたフレームにより、フィルタベローズを容易に取り付け、必要に応じて交換することが可能となる。
【0035】
シールは、好ましくは、補強フレームの領域内でフィルタベローズ上に発泡またはモールド成形することで製造されるポリウレタン(PUR)シールである。
【0036】
フラットフィルタでは、流れ方向は、例えば、フラットフィルタの場合にフィルタベローズの両平坦面に設けられる流入面および流出面に対して垂直である。好ましくは、折り目が立設されたフィルタの流出面および流入面は、それぞれ濾材の折り目の折り端が配置される面を形成する。
【0037】
フィルタベローズの一方の流路側は、流体の流入面を成し、他方の流路側は流出面を成し得る。流体は、フィルタベローズを流入面から流出面に流れる。流路側はそれぞれ流路面として実現することができ、折り畳まれたフィルタベローズの場合、それぞれの折り端が対応する流路面を規定する。
【0038】
従来技術によれば、通常、端面に配置される接着部は、流入面または流出面にわたって、濾材の折り目の折り端上に連続的に延びる接着剤トラックとして配置される。本発明の歪緩和手段によれば、接着剤トラックが、時間の経過に伴う接着剤の収縮によって、濾材とシールとの間に濾過流体の漏れ口となり得る接着剤の開口を生じさせるのを有利に防ぐことができる。歪緩和手段の利点は、フィルタベローズのシールへの重要な接続領域において、接着剤の収縮による比較的広い剥離効果が生じないことである。これらの領域で対応するひずみが発生しないように、依然として接着剤の収縮は起こり得る。
【0039】
有利な実施形態によると、フィルタハウジング内で、濾過要素より流体流れ方向の上流側にサイクロンプレセパレータが設けられ、および/または、濾過要素より流体流れ方向の下流側に安全要素が設けられる。
【0040】
有利には、フィルタは、多段フィルタ、特に2段コンパクトエアフィルタとして構成される。有利には、少なくとも1つの濾過要素は、少なくとも1つの粒子分離装置、特にサイクロンプレセパレータより流れ方向の下流側に配置される。少なくとも1つの粒子分離装置は、フィルタの一部であってもよく、またはフィルタの外部でフィルタの上流に接続されていてもよく、特にプレセパレータとして使用することができる。外部プレセパレータは、モータールームの外側に配置されてもよい。有利には、少なくとも1つの流入口、少なくとも1つの流出口、および任意の粒子分離装置が実質的に直線上に配置される。これにより、流体は、フィルタに従って、特にフィルタハウジングのハウジング軸に実質的に沿って流れることができる。
【0041】
有利な実施形態によると、濾過要素が適切に取り付けられている時、濾過要素のシールによって、未処理側と清浄側とが隔てられる。これにより、流入する流体の信頼性の高い精製が、濾過要素の長い耐用年数で保証される。
【0042】
有利な実施形態によると、濾過要素は、流体の主流れ軸に交差する方向にフィルタハウジングに挿入されたまたは挿入可能なスライドイン濾過要素として設計される。これにより、負荷がかかった濾過要素を適切に交換することができる。また、内燃機関または自動車両の停止を伴うメンテナンスの間隔期間を短縮することができる。
【0043】
記載された濾過システムは、エアフィルタとして、特に自動車両の、特に内燃機関のエアフィルタまたは内部エアフィルタとして有利に使用することができる。
【0044】
本発明は、自動車両、建設/農業機械、圧縮機、工業用モーター、または内燃機関を備えた他の装置に使用することができる。本発明の意味における車両は、陸上車両、船舶、および/または航空機を含む。
【0045】
有利には、自動車両は、乗用車、トラック、オートバイ、バス、トラクター、農業用車両および/または建設用車両などである。
【0046】
本発明は、有利には、内燃機関の吸気マニホルドの一部であり得る。本フィルタは、内燃機関に供給される燃焼用空気を浄化するのに役立つ。しかしながら、本発明は、自動車両の内燃機関の吸気マニホルドのエアフィルタに限定されない。代わりに、自動車両やその他の機械、特に農業機械や建設機械などのエアシステムに使用することもできる。エアフィルタは、自動車技術以外、特に産業用モーターなどにも使用できる。
【0047】
他の点では、本発明の濾過要素、本発明の要素フレーム、本発明のフィルタベローズ、本発明のフィルタハウジング、および本発明のフィルタに関連して開示される特徴および利点、ならびに、それらの有利な実施形態は、互いに相互に適用され、逆もまた同様である。もちろん、個々の特徴および利点は互いに相互に組み合わせることができ、その場合、個々の効果の合計を超えるさらなる有利な効果が生じる可能性がある。
【0048】
更なる利点は、以下の図面の説明から得られる。図面には、本発明の実施形態が示されている。図面、明細書、および特許請求の範囲には、多数の特徴が組み合わせられて含まれる。当業者であれば、これらの特徴を適切に、また個別に検討し、組み合わせて、更なる組み合わせを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本発明の実施形態による濾過要素が取り付けられた濾過システムの等角図である。
図2図1の濾過システムの等角図の縦断面である。
図3】本発明の実施形態による濾過要素の等角図である。
図4図3の濾過要素の流出面の平面図である。
図5図4の濾過要素の流出面の拡大平面図である。
図6】本発明の更なる実施形態による濾過要素の等角図である。
図7図6の濾過要素のシール支持装置を備えた補強フレームの等角図である。
図8図6の濾過要素の拡大等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図中、同一または類似の構成要素は同一の参照記号で示される。これらの図は単なる例示であり、限定的なものとして理解されるべきではない。
【0051】
図1は、本発明の実施形態による、濾過要素10が取り付けられた、流体を濾過するための濾過システム100の等角図である。図2は、理解を深めるために、濾過システム100の等角図が縦断面で示されている。
【0052】
濾過システム100は、流体流れ120を導入するための少なくとも1つの流入口102(不可視)および精製された流体流れ122を排出するための少なくとも1つの流出口104を有するフィルタハウジング110を備える。フィルタハウジング110は、ねじ接続132によってフランジ130に沿って接合されたハウジング下部114およびハウジング上部112を含む。フィルタハウジング110には、未処理側40と清浄側42との間に、流体を濾過するための濾過要素10が交換可能に配置される。濾過要素10は、クランプクロージャ118によってフィルタハウジング110に密封して接続され得るハウジングカバー116を介して、フィルタハウジング110に着脱することができる。精製される流体の流入方向および流出方向は、矢印120、122によって示される。
【0053】
図2の濾過システム100の縦断面では、同じく断面化された濾過要素10が示されており、濾過要素10は、フィルタハウジング110に挿入されている。さらに、粗い汚れ粒子を流体流れから濾過して取り除くサイクロンプレセパレータ14が示される。分離された汚れ粒子は、フィルタハウジングから汚れ出口106を通って排出することができる。濾過要素10の流れ方向134は矢印で示される。下流側では、精製された流体は、流出口104を通ってフィルタハウジング110から排出される前に、未精製の流体や他の汚れ粒子の流入による汚染から清浄側42を、濾過要素10の交換時も、保護するために、例えば平坦なベローズとして構成される安全要素16を流れる。流出口104は、安全要素16によって完全に覆われている。
【0054】
図1および図2に示される濾過システム100に挿入された濾過要素10は、図3の等角図に示される。濾過要素10は、要素フレーム36に挿入されるフィルタベローズ12を備える。
【0055】
濾過要素10は、流体の主流れ軸128(図2参照)に交差する方向にフィルタハウジング110に挿入されたまたは挿入可能なスライドイン濾過要素として設計される。
【0056】
フィルタベローズ12は、ジグザグ状に折られた濾材13を含む。フィルタベローズ12は、主軸62方向から見ると、長方形状である。フィルタベローズ12は、横軸64方向から見ると、略台形状である。フィルタベローズ12の未処理側流入面50は、流れ中心面に平行に、すなわち、主軸62に垂直に延びる。清浄側流出面52は、横軸64に平行かつ流れ中心面に対して傾斜して、すなわち、流入面50に対して傾斜して延びる。
【0057】
フィルタベローズ12は、設置方向66から見たときに、その前方横側面に向かって先細り状になっている。流入面50および流出面52において、濾材13の折り端24は、それぞれ横軸64に平行に延びる。折り端24は、それぞれ流入面50または流出面52にわたって存在している。主軸62に沿った方向における折り畳まれた濾材13の折り目22の高さは、設置方向66に関して、フィルタベローズ12の後方横側面から前方横側面に向かって減少する。従って、フィルタベローズ12は、折り高さが可変である。
【0058】
流出面52はシール20に囲まれている。濾過要素10が適切に取り付けられている時、濾過要素10のシール20によって、未処理側40と清浄側42とが隔てられる。
【0059】
シール20はポリウレタン製である。これは弾力性を有している。シール20は、濾材13の端面上に発泡成形される。シール20は、主軸62に関して軸方向かつ径方向外側に濾材13から突出している。端面におけるシール20の流出側シールリップは、主軸62に関して、周方向に連続したシール表面44を形成する。シール表面44は、取り付け状態で、ハウジング側シール面に配置される。
【0060】
主軸62に関してシール表面44の軸方向反対側にあるシール20の裏面において、樹脂材料からなる補強フレーム18がシール20のシールトラックに埋め込まれる。補強フレーム18は、シール面に平行にかつシール表面44に平行に延びる。補強フレーム18は、主軸62に関して、周方向に連続している。主軸62に関してシール表面44の軸方向反対側にあるシール20の裏面は、シール表面44に平行な面に延びる。濾過要素10が取り付けられている時、シール表面44およびシール裏面は、それぞれハウジング側シール面と平行に延びる。
【0061】
流出面52において、要素フレーム36は、シール支持装置34を備える。シール支持装置34は、要素フレーム36の流出側縁部に配置されている。シール支持装置34は、主軸62に関して、濾過要素10の外側に周方向に連続的に延びる。シール支持装置34は、要素フレーム36の縦側壁46および横側壁48と接続され、一体化している。
【0062】
流体の流体圧力に対して機械的に濾材13の折り目22を安定させるために、フィルタベローズ12の流入面50および/または流出面52(不可視)において、複数の細長い接着部28が、濾材13上に少なくとも2つの接着剤トラック26に沿って配置される。
【0063】
図3およびそれ以降の図では、簡略化のために、接着剤トラック26のうちの1つのみに参照記号が付される。
【0064】
濾材13および/またはシール20に対する接着剤トラック26の長さ変化を補償するために、濾過要素10は、本発明による歪緩和手段38を備える。
【0065】
これに関して、図4には、図3の濾過要素10の流出面52の平面図が示され、図5には、流出面52の拡大平面図が示される。
【0066】
図3から図5に示される第1の実施形態では、各接着剤トラック26上の歪緩和手段38として、少なくとも1つの接着部28と少なくとも1つの非接着部30が設けられ、特に、隣接する接着剤トラック26の非接着部30は、折り目22に交差する方向に異なる折り端24に配置される。
【0067】
特に図5に示されるように、隣接する接着剤トラック26の非接着部30は、折り目22に交差する方向に重なり合うことなく配置される。有利には、連続した接着部28は、非接着部30の少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍、特に好ましくは少なくとも15倍の折り目22にわたって延びる。非接着部30は、折り端24にわたって、好ましくは折り目22にわたって延びる。
【0068】
接着剤トラック26は、互いに平行に、等距離に配置され、折り端24に垂直に伸びる。非接着部30は、流出面52にわたって均一に分散して配置される。
【0069】
図6には、本発明の更なる実施形態による濾過要素10の等角図が示されており、歪緩和手段38として、シール20のスライドシートが、接着剤トラック26に対して垂直である補強フレーム18の少なくとも一方の横方向側面60に設けられている。シール20は、部分的に断面化され、濾過要素10の流出面52の一方側にのみ図示されている。ここで、嵌合リブ32を含む補強フレーム18において、補強フレーム18の横方向側面60は、嵌合リブなしで設計される。シール20は、これらの横方向側面60では、嵌合リブ32と、すなわち発泡によって補強フレームと固定的に接続されないため、シール20は、横方向側面60において摺動可能に配置され、補強フレーム18上でスライドすることができる。これにより、シール20は、接着剤トラック26の収縮による濾材13の移動時に、補強フレーム18の横方向側面60に対して移動することができる。これにより、濾材13とシール20の間に、濾過された流体の漏れ口になり得る接着剤の開口が生じるのを防ぐことができる。従って、濾過要素10の耐用年数にわたって、濾材13とシール20との間のシールの気密性を確保することができる。
【0070】
これ関して、図7には、濾過要素10のシール支持装置34に支持される補強フレーム18の等角図が示される。図示されるように、補強フレーム18の横方向側面60は、嵌合リブ32を有さないため、フィルタベローズ12のシール20は、その上で移動可能である。
【0071】
図8は、図6の濾過要素10の拡大等角図である。ここで、シール20は、部分的に断面化され、嵌合リブ32のない補強フレーム18の横方向側面60が見えるように、濾過要素10の流出面52の一方側にのみ示されている。
【0072】
別の実施形態では、接着剤トラック26に対して傾斜してまたは垂直である少なくとも一方の縦方向側面58に、嵌合リブ32のない歪緩和手段38を設けることもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8