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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】人工心臓弁
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
A61F2/24
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021574842
(86)(22)【出願日】2020-08-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 US2020045577
(87)【国際公開番号】W WO2021030244
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-08-09
(31)【優先権主張番号】62/885,556
(32)【優先日】2019-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500218127
【氏名又は名称】エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ノーム・ニア
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ブキン
(72)【発明者】
【氏名】ジヴ・ヨハナン
(72)【発明者】
【氏名】タミール・エス・リーヴァイ
(72)【発明者】
【氏名】エレナ・シャーマン
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/226628(WO,A1)
【文献】特開2016-209665(JP,A)
【文献】国際公開第2019/032992(WO,A2)
【文献】中国特許出願公開第108125732(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0078367(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工心臓弁であって、
ピボット接合部において一緒に結合された複数の交差するストラットを含む、半径方向に拡張可能かつ折りたたみ可能な環状のフレームであって、前記環状のフレームの半径方向の拡張または収縮により、前記交差するストラットが前記ピボット接合部において互いに対して枢動する、環状のフレームと、
前記フレーム内に取り付けられ、前記人工心臓弁を通る血流を調節する弁膜構造であって、弁尖を含む、弁膜構造と、を備え、
前記弁尖は、前記弁尖の横方向交連端において、および前記横方向交連端の間に延在する前記弁尖のスカラップ状の縁に沿って、前記フレームに結合されており、
前記弁尖の前記スカラップ状の縁は、縫合糸ループを介して前記フレームの前記ストラットの構成部分に結合され、前記縫合糸ループが結合される前記ストラットの構成部分は、前記弁尖の前記スカラップ状の縁を横切って配向されている、
人工心臓弁。
【請求項2】
前記弁尖の前記スカラップ状の縁を、前記スカラップ状の縁を横切って配向された前記ストラットの構成部分に結合することにより、前記フレームの半径方向の拡張および圧縮中に前記ストラットの構成部分に沿って摺動する前記縫合糸ループを介して前記ストラットの構成部分に対して前記スカラップ状の縁が移動することが可能となる、請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項3】
収縮期および拡張期の間に、前記スカラップ状の縁に沿って前記ストラットの構成部分への取り付け点において前記弁尖に作用する解剖学的力が前記縫合糸ループに直交し、それによって前記縫合糸ループおよび前記弁尖の望ましくない摩耗を抑制する、請求項1または請求項2に記載の人工心臓弁。
【請求項4】
各弁尖の前記スカラップ状の縁が、縫合糸ループを介して、前記フレームの少なくとも6つの異なるストラットの構成部分に結合されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の人工心臓弁。
【請求項5】
前記少なくとも6つの異なるストラットの構成部分が、前記スカラップ状の縁の一方の側にある3つの平行なストラットの構成部分と、前記スカラップ状の縁の第2の側にある別の3つの平行なストラットの構成部分とを含む、請求項4に記載の人工心臓弁。
【請求項6】
前記縫合糸ループが結合されている前記ストラットの構成部分が、前記弁尖の前記スカラップ状の縁に直交して配向されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の人工心臓弁。
【請求項7】
3つのスカラップライン要素を含むスカラップライン基礎構造をさらに備え、前記3つのスカラップライン要素のそれぞれが、前記弁尖のそれぞれの1つのスカラップ状の縁に取り付けられている、請求項1から6のいずれか一項に記載の人工心臓弁。
【請求項8】
スカラップライン要素は、金属または金属合金などの剛性材料で形成され、前記弁尖の前記スカラップ状の縁の半径方向内側への変位に抵抗するように弾性変形可能である、請求項1から7のいずれか一項に記載の人工心臓弁。
【請求項9】
スカラップライン要素が、短いスカート、布、ケーブル、またはストリングなどの柔らかい材料で形成されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の人工心臓弁。
【請求項10】
前記スカラップライン要素は、前記スカラップライン要素の端部が互いに向かって移動する間、前記フレームの半径方向の圧縮中に前記スカラップライン要素の中央部分が略U字形から略V字形に変形することを可能にする柔軟性を有する、請求項7から9のいずれか一項に記載の人工心臓弁。
【請求項11】
前記ストラットが変形することなく互いに対して枢動できるように、前記フレームの各々の前記ストラットが、それぞれの機械的ピボット接合部において前記フレームの他の3つ以上のストラットに枢動可能に結合されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の人工心臓弁。
【請求項12】
各ストラットが少なくとも3つのストラットの構成部分を含み、各ストラットの構成部分が2つの隣接する機械的ピボット接合部の間に延在する、請求項11に記載の人工心臓弁。
【請求項13】
前記ストラットの構成部分が、前記フレームの流入端から前記フレームの流出端に向かって前記ストラットの構成部分の幅が減少するように、先細になっている、請求項1から12のいずれか一項に記載の人工心臓弁。
【請求項14】
前記弁尖は、前記ストラットの先細構成部分の周りに延在する縫合糸ループが前記ストラットの先細構成部分の狭い方の端の周りに収まるのに十分な大きさであり、かつ前記ストラットの先細構成部分の広い方の端の周りに収まらないのに十分小さいように、前記縫合糸ループを介して前記ストラットの先細構成部分に結合されている、請求項13に記載の人工心臓弁。
【請求項15】
前記縫合糸ループは、前記ストラットの先細構成部分に沿って前記狭い方の端から前記広い方の端に向かって摺動し、かつ
前記縫合糸ループの円周が前記ストラットの先細構成部分の周長と等しく、記ストラットの先細構成部分に沿った中間位置において摩擦により自己ロックするように構成されている、請求項14に記載の人工心臓弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる2019年8月12日に出願された米国仮特許出願第62/885,556号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、半径方向に折りたたみ可能かつ拡張可能な機械的フレームおよびフレームのストラットに取り付けられたスカラップ状の弁尖を有する人工心臓弁に関する。
【背景技術】
【0003】
弁尖を人工弁に組み立てる方法の中には、一連の縫合糸ループを介して弁尖をフレームストラットのスカラップ縫合ラインに取り付ける方法がある。弁尖は、それらの対向する側端の交連を介してフレームにも取り付けられているため、フレームセルの対向する接合部間の長手方向の距離が増加する圧着手順中の完全に拡張した状態から圧縮された状態への遷移などのフレーム直径の変化は、弁尖の伸長および圧縮、ならびに縫合糸ループに沿った高い応力集中をもたらし得る。さらに、人工弁が埋め込まれるときにフレームに作用する収縮期および拡張期のサイクルは、取り付け領域における縫合糸ループおよび弁尖の摩耗をもたらし得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書に開示されるのは、人工心臓弁を構築するためのいくつかの新規技術、特に、中間結合部材として縫合糸および/または他の材料を使用して、弁膜弁尖のスカラップ状の縁を機械的フレームのストラットに取り付けるための技術である。
【0005】
いくつかの例示的な人工心臓弁は、機械的ピボット接合部で一緒に結合された複数の交差するストラットを含む、半径方向に拡張可能かつ折りたたみ可能な環状フレームであって、環状フレームの半径方向の拡張または収縮により、交差するストラットがピボット接合部で互いに対して枢動する、環状フレームと、フレーム内に取り付けられ、人工心臓弁を通る血流を調節する弁膜構造であって、弁尖を含む、弁膜構造と、を備え、弁尖は、弁尖の横方向交連端において、および交連端の間に延在する弁尖のスカラップ状の縁に沿ってフレームに結合されており、弁尖のスカラップ状の縁は、縫合糸ループを介してフレームのストラットの部分に結合され、縫合糸ループが結合されるストラット部分は、弁尖のスカラップ状の縁に実質的に直交して配向されている。
【0006】
弁尖のスカラップ状の縁を、スカラップ状の縁に実質的に直交して配向されたストラット部分に結合することにより、フレームの半径方向の拡張および圧縮中にストラット部分に沿って摺動する縫合糸ループを介してストラット部分に対してスカラップ状の縁が移動することが可能となる。収縮期および拡張期の間に、ストラットへの取り付け点において弁尖に作用するスカラップ状の縁に沿った解剖学的力が縫合糸ループに実質的に直交し得、それによって縫合糸ループおよび弁尖の望ましくない摩耗を抑制する。
【0007】
いくつかの実施形態では、各弁尖のスカラップ状の縁が、縫合糸ループを介して、フレームの少なくとも6つの異なるストラットの部分に結合されている。例えば、少なくとも6つの異なるストラットは、スカラップ状の縁の一方の側にある3つの平行なストラット部分と、スカラップ状の縁の第2の側にある別の3つの平行なストラット部分とを含み得る。
【0008】
いくつかの例示的な人工心臓弁は、3つのスカラップライン要素を含むスカラップライン基礎構造を備え、3つのスカラップライン要素のそれぞれが、3つの弁尖のそれぞれの1つのスカラップ状の縁に取り付けられており、スカラップライン要素のそれぞれは、2つの対向する端部と、2つの対向する端部の間の中央部分とを含み、端部は、交連部において弁尖の側端とともにフレームに取り付けられ、スカラップライン要素の中央部分は、弁尖のスカラップ状の縁に取り付けられており、フレームに取り付けられていない。いくつかのそのような実施形態では、スカラップライン要素は、金属または金属合金などの剛性材料で形成され、弁尖のスカラップ状の縁の半径方向内側への変位に抵抗するように弾性変形可能である。他の実施形態では、スカラップライン要素が、短いスカート、布、ケーブル、またはストリングなどの柔らかい材料で形成されている。いくつかの実施形態では、スカラップライン要素は、スカラップライン要素の端部が互いに向かって移動する間、フレームの半径方向の圧縮中にスカラップライン要素の中央部分が略U字形からほぼV字形に変形することを可能にする柔軟性を有する。
【0009】
いくつかの例示的な人工心臓弁では、各弁尖のスカラップ状の縁は、布ストリップを介してストラット部分に結合されており、布ストリップの第1の端はスカラップ状の縁に取り付けられており、布ストリップの第2の反対側の端は、ストラット部分に別々に取り付けられている。いくつかのそのような実施形態では、布ストリップの第1の端が第1の縫合糸を介してスカラップ状の縁に取り付けられており、布ストリップの第2の端が第1の縫合糸とは別の第2の縫合糸を介してストラット部分に取り付けられている。いくつかの実施形態では、第2の縫合糸が、ストラット部分および布ストリップの第1の端の一部の周りにループ状になっている。いくつかの実施形態では、布ストリップの第1の端がストラット部分の少なくとも2つの側面の周りに延在する。
【0010】
いくつかの人工心臓弁では、フレームのストラットは、ピボット接合部間に複数のストラット部分を含み、ストラット部分の少なくともいくつかは、ピボット接合部間の幅が先細になっている。いくつかのそのような実施形態では、ストラット部分は、幅の減少が流入端から流出端に向かって移動するように先細になっている。いくつかの実施形態では、弁尖は、先細ストラット部分の周りに延在する縫合糸ループが先細ストラット部分の狭い方の端の周りに収まるのに十分な大きさであり、かつ先細ストラット部分の広い方の端の周りに収まらないのに十分小さいように、縫合糸ループを介して先細ストラット部分に結合されている。縫合糸ループは、先細ストラット部分に沿って狭い方の端から広い方の端に向かって摺動し、縫合糸ループの円周がストラット部分と等しい先細ストラット部分に沿った中間位置において摩擦により固着、すなわち「自己ロックする」ように構成され得る。
【0011】
いくつかの人工心臓弁では、各スカラップ状の縁は、スライド式縫合糸ループを介して交差するストラットの隣接する部分に取り付けられ、隣接する部分は、ピボット接合部の共通のピボット接合部において接合し、スライド式縫合糸ループは、隣接する部分に沿って、共通のピボット接合部に向かって、および共通のピボット接合部から離れるように摺動することができる。スライド式縫合糸ループは、半径方向のフレーム拡張中に、隣接する部分に沿って共通のピボット接合部に向かって摺動し得え、スライド式縫合糸ループは、半径方向のフレーム収縮中に、共通のピボット接合部から離れて隣接する部分に沿って摺動し得る。
【0012】
開示された技術の前述および他の目的、特徴、および利点は、添付の図を参照して進む以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】人工心臓弁の一部を示しており、弁尖のフレームへの結合を示している図である。
図2A】別の人工心臓弁を示しており、弁尖のフレームへの結合を示している図である。
図2B図2Aの一部の拡大図である。
図3A】別の人工心臓弁を示しており、弁尖のフレームへの結合を示している図である。
図3B図2Aの一部の拡大図である。
図4A】別の人工心臓弁を示しており、弁尖のフレームへの結合を示している図である。
図4B】別の人工心臓弁を示しており、弁尖のフレームへの結合を示している図である。
図5A】弁尖のフレームへの結合を示す人工心臓弁の内部図である。
図5B】弁尖のフレームへの結合を示す人工心臓弁の内部図である。
図6A】人工心臓弁の半径方向の圧縮のさまざまな段階を示しており、フレームセルの寸法の変化を示している図である。
図6B】人工心臓弁の半径方向の圧縮のさまざまな段階を示しており、フレームセルの寸法の変化を示している図である。
図6C】人工心臓弁の半径方向の圧縮のさまざまな段階を示しており、フレームセルの寸法の変化を示している図である。
図6D】人工心臓弁の半径方向の圧縮のさまざまな段階を示しており、フレームセルの寸法の変化を示している図である。
図6E】人工心臓弁の半径方向の圧縮のさまざまな段階を示しており、フレームセルの寸法の変化を示している図である。
図7】弁尖をフレームストラットに結合するための例示的な縫合スキームを示している図である。
図7A】人工心臓弁の一部を示しており、弁尖のフレームへの結合を示している図である。
図7B】人工心臓弁の一部を示しており、弁尖のフレームへの結合を示している図である。
図8A】人工心臓弁の半径方向の圧縮のさまざまな段階を示しており、フレームセルの寸法の変化を示している図である。
図8B】人工心臓弁の半径方向の圧縮のさまざまな段階を示しており、フレームセルの寸法の変化を示している図である。
図8C】人工心臓弁の半径方向の圧縮のさまざまな段階を示しており、フレームセルの寸法の変化を示している図である。
図9A】人工心臓弁の一部を示しており、弁尖のフレームへの結合を示している図である。
図9B】人工心臓弁の一部を示しており、弁尖のフレームへの結合を示している図である。
図10A】人工心臓弁の半径方向の圧縮のさまざまな段階を示しており、フレームセルの寸法の変化を示している図である。
図10B】人工心臓弁の半径方向の圧縮のさまざまな段階を示しており、フレームセルの寸法の変化を示している図である。
図10C】人工心臓弁の半径方向の圧縮のさまざまな段階を示しており、フレームセルの寸法の変化を示している図である。
図10D】人工心臓弁の半径方向の圧縮のさまざまな段階を示しており、フレームセルの寸法の変化を示している図である。
図10E】人工心臓弁の半径方向の圧縮のさまざまな段階を示しており、フレームセルの寸法の変化を示している図である。
図10F】人工心臓弁の半径方向の圧縮のさまざまな段階を示しており、フレームセルの寸法の変化を示している図である。
図11】人工心臓弁の一部を示しており、弁尖のフレームへの結合を示している図である。
図12A】人工心臓弁の一部を示しており、弁尖のフレームへの結合を示している図である。
図12B】人工心臓弁の一部を示しており、弁尖のフレームへの結合を示している図である。
図13】ストラットの周りおよび弁尖を通って延在する縫合糸ループを使用して、弁尖をストラットに結合することを示している図である。
図14】一端がストラットに結合され、他端が弁尖に結合された布ストリップを使用して、弁尖をストラットに結合することを示している図である。
図15】布ストリップを使用して弁尖をストラットに結合するための縫合パターンを示している図である。
図16】人工心臓弁の一部を示しており、弁尖のフレームへの結合を示している図である。
図17】先細部分で構成されるフレームストラットを示している図である。
図18】先細部分で構成されるフレームストラットを示している図である。
図19A】弁尖のフレームへの結合を示す人工心臓弁を示している図である。
図19B図19Aの一部の拡大図である。
図20A】人工心臓弁の半径方向の圧縮の段階を示し、フレームセルの寸法の変化を示している図である。
図20B】人工心臓弁の半径方向の圧縮の段階を示し、フレームセルの寸法の変化を示している図である。
図21A】縫合糸ループを備えたフレームへの弁尖の結合を示し、縫合糸ループがストラット部分に沿ってどのように摺動できるかを示している図である。
図21B】縫合糸ループを備えたフレームへの弁尖の結合を示し、縫合糸ループがストラット部分に沿ってどのように摺動できるかを示している図である。
図22A】弁尖のフレームへの結合を示す人工心臓弁の内部図である。
図22B図22Aの人工心臓弁の外観図である。
図23A】弁尖および他の材料をフレームの内側に縫合するためのさらなる技術を示している図である。
図23B】弁尖および他の材料をフレームの内側に縫合するためのさらなる技術を示している図である。
図23C】弁尖および他の材料をフレームの内側に縫合するためのさらなる技術を示している図である。
図23D】弁尖および他の材料をフレームの内側に縫合するためのさらなる技術を示している図である。
図24】弁尖のフレームへの結合を示す人工心臓弁を示している図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に開示されるのは、新規の人工心臓弁ならびに関連する構成要素、システム、および方法である。いくつかの開示された実施形態は、各弁尖を半径方向に拡張可能かつ半径方向に折りたたみ可能なフレームのストラットに取り付ける新しい方法を含み、フレームの個別のストラットは、ストラット接合部(例えば、機械的フレーム)において互いに枢動可能に結合されている。弁尖をストラットに取り付ける新しい方法は、弁尖のスカラップ状の部分が、スカラップステッチラインに対して実質的に平行なストラットではなく、スカラップステッチラインに対して横方向または実質的に直交する隣接するストラットに縫合される実施形態を含み得る。いくつかの実施形態では、弁尖がストラットに取り付けられる縫合糸ループは、それぞれのストラットに沿ってスライド可能に移動可能であり、長手方向/軸方向に沿って弁尖のスカラップ状の縁の変位を可能にし、それにより、縫合糸ループおよび縫合糸ループの取り付け領域の弁尖に作用する応力集中を低減するように構成される。
【0015】
図1は、人工弁のフレーム10への弁尖50の取り付けの例を示している。フレーム10は、ストラット接合部において接合された複数の重なり合うストラットを含み得、ストラット接合部は、機械的ピボット接合部を含み得る。ストラットは、全体として互いに平行な第1のストラットグループストラットであって、第1の方向(またはキラリティ)に対角線上に延在し、例えば、ストラット22を含み得る、第1のストラットグループストラットを含み得る。また、ストラットは、全体として互いに平行な第2のストラットグループストラットであって、第1の方向を横切る第2の方向(またはキラリティ)に対角線上に延在し、例えば、ストラット24を含み得る、第2のストラットグループストラットを含み得る。第1のストラットグループストラットのストラットは、ピボット接合部を介して、それらが重なり合う/交差する第2のストラットグループストラットのストラットに接合され得る(例えば、ストラット接合部26および28)。図1に示すように、どちらのストラットグループも他のストラットグループを覆うことができる。フレーム10が半径方向に拡張し、半径方向に折りたたまれる際、ストラットはストラット接合部においてピボットする。フレームが完全に拡張されると、ストラットはより円周方向に配向され、フレームが半径方向に折りたたまれると、ストラットはより軸方向に配向される。
【0016】
人工弁は、複数の弁尖50、例えば3つの弁尖を含み得、それぞれが2つの対向する交連52(図1の側面に示される)を介してそのスカラップ状の縁に沿ってフレーム10に取り付けられる。図1に、例えば、内側スカートを弁尖50のスカラップ領域に取り付けるために使用されるスカラップステッチライン54が示される。弁尖50は、スカラップステッチライン54を越えて延在し、さらに、縫合糸ループ60を介して、スカラップステッチライン54とほぼ平行である弁フレームのストラットに取り付けられる。この例では、弁尖50は、縫合糸ループ60を介してストラット22および24に、全体としてスカラップステッチライン54と平行に取り付けられている。縫合糸ループ60は、ストラット22および24に沿って、ストラット接合部26の交点まで下って配置される。
【0017】
フレーム10は、拡大された状態で図1に示され、例示的なセル12は、破線で区切られている。フレームセル12は、2つの対向するストラット接合部26と28との間に長手方向距離Lcを有する。フレーム10が、例えば、圧着プロセス中に、半径方向に圧縮されるとき、接合部26と28との間の距離Lcは長くなり、場合によっては、完全に拡張された状態でその距離の最大2倍になり、それにより、弁尖50を軸方向に伸ばし、これにより、縫合糸ループ60に沿って高い応力集中がもたらされ得る。
【0018】
図1の構成の別の不利な点は、埋め込まれた人工弁が脈動する収縮期および拡張期のサイクルにさらされるとき、フレーム10の振動運動が縫合糸ループ60にさらなる応力集中を加えることである。
【0019】
他の実施形態では、弁は、図1のようにスカラップステッチラインに平行なストラットの代わりに、スライド可能な縫合糸ループを介してスカラップステッチラインに直交するストラットにそのスカラップ状の縁に沿って各弁尖をステッチする方法を使用して構築される。
【0020】
図2Aおよび図2Bは、弁尖50が、2つの交連52a、52b、ならびにストラット32、34、36、42、44、および46において、縫合糸ループ70を介して、ストラット22または24ではなく、スカラップステッチライン54に対してすべて横方向および/または実質的に直交して、完全に拡張されたフレーム10に取り付けられる人工弁の実施形態を示している。
【0021】
図2Bは、図2Aの領域2Bを拡大して示したものである。図2Bには、スカラップ50をその接合部J1とJ2との間のストラット36に取り付ける縫合糸ループ70が示されている。接合部J1に隣接して図2Bに配置された縫合糸70は、これらの2つの隣接する接合部の間を摺動することができ、応力の蓄積を軽減する。
【0022】
図3Aは、図2Aのようにフレーム10に取り付けられた弁尖50を示し、図3Aのフレーム10は、図2Aのその状態に対してわずかに圧縮されている。図3Bは、図3Aの領域3Bの拡大図を示している。縫合糸ループ70a、70b、および70cは、弁尖50をそれぞれストラット32、34、および36に取り付ける。図3Bに示されるように、各縫合糸ループ70は、フレーム10の状態および形状、ならびにスカラップ50の構造構成および取り付け領域の結果としてそこに作用する力に応答して、それぞれのストラットに沿って摺動し得る。縫合糸ループ70aは、接合部J5とJ6との間でスライド可能に移動可能である。縫合糸ループ70bは、接合部J3とJ4との間でスライド可能に移動可能である。縫合糸ループ70cは、接合部J1とJ2との間でスライド可能に移動可能である。縫合糸ループ70cが接合部の1つ、すなわちJ1のより近くに配置されている間、縫合糸ループ70bおよび70aは、それらの対応する接合部の間の中間部分のより近くに配置されている。
【0023】
図4Aは、フレーム10に取り付けられた2つの隣接する弁尖50aおよび50bを示している。弁尖50aおよび50bはいずれも、交連52bを介してフレームの支持ストラットに取り付けられている。弁尖50aは、縫合糸ループ70a、70b、および70cを介して、スカラップステッチライン54に実質的に直交するストラットに取り付けられて示されている。弁尖50bは、縫合糸ループ70g、70hおよび70iを介してスカラップステッチライン54に実質的に直交するストラットに取り付けられて示されている。図4Bは、2つの交連52aおよび52bにおいてフレームに取り付けられ、縫合糸ループ70a、70b、70c、70d、70eおよび70fを介してスカラップステッチライン54に実質的に直交するストラットに取り付けられた弁尖50aを示す。
【0024】
図5Aおよび図5Bは、それぞれ縫合糸ループ70a、70bおよび70cを介して、ストラット32、34、および36などのスカラップステッチライン54に実質的に直交するストラットに取り付けられた弁尖50の上面図を示す。
【0025】
図6Aから図6Eは、半径方向に拡張されたフレーム(図6A)と半径方向に圧縮されたフレーム(図6E)との間の異なる遷移段階を示している。フレームのセルの2つの対向する接合部間の長手方向の距離Lcは、Lc1<Lc2<Lc3<Lc4<Lc5となるように、Lc1からLc5に増加している。縫合糸ループ70aは、接合部J5とJ6との間でスライド可能に移動可能であり、縫合糸ループ70bは、接合部J7とJ6との間でスライド可能に移動可能である。縫合糸ループ70aおよび70bの位置は、変化するフレーム直径に従って、それぞれの接合部の間のストラットに沿って変化する。
【0026】
有利なことに、フレームへの弁尖取り付けのこの開示された構成は、図1に例示されている従来技術の取り付けモードによる、弁尖の伸長のために縫合糸ループ60の近くに発生する応力集中を回避しながら、フレームの拡張または圧縮中にストラットに沿ったスカラップ状の縁の移動を可能にする。
【0027】
さらなる利点は、収縮期および拡張期の間に、ストラットへのその取り付け点において弁尖に作用する力が、縫合糸ループ70の付着に直交し、それにより、縫合糸ループおよび弁尖の望ましくない摩耗を抑制することである。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、ストラットは、それらの長さに沿って開口を備え、弁尖は、それらのスカラップラインの円周に沿って開口を備え、開口は、そこを通って縫合糸ループ70を受け入れるように適合される。図7は、その長さに沿った異なる位置に複数の開口カップル80を備えたストラット30、および1つの開口90のカップルを備えた弁尖50の一部を示しており、その結果、弁尖がストラットの上に配置され、その開口90が、一致する2つのストラット開口と位置合わせされる。有利なことに、この構成により、弁尖50のストラット30への取り付けが容易になる。いくつかの実施形態によれば、縫合糸ループ70は、ストラットにあまりしっかりと取り付けられていないが、むしろ、それらがそれぞれのストラットに沿って摺動することができるように十分に緩い。
【0029】
現在の構成のさらなる利点は、スカラップステッチラインに実質的に平行なストラットに弁尖を連続的に取り付ける必要がある設計に制限されることなく、弁尖設計の最適化を可能にすることである。
【0030】
いくつかの人工弁は、それらのスカラップラインに取り付けられたスカートに弁尖を取り付けることによって構築することができ、スカートは、それらのスカラップ縫合ラインに実質的に平行なストラットに縫合される。いくつかの実施形態では、スカートは、スカラップ縫合ラインに実質的に平行なストラットと、実質的に直交するストラットとの両方に縫合される。弁尖は、対向する長手方向の端において交連を介してフレームにも取り付けられているため、フレームセルの対向する接合部間の長手方向の距離が増加する圧着手順中の完全に拡張された状態から圧縮された状態への遷移などのフレーム直径の変化により、弁尖が伸ばされ、そこに高い応力集中が生じ得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、人工弁は、3つのスカラップライン要素を含むスカラップライン基礎構造を含み得、各ライン要素は、それぞれの弁尖に取り付けられるように構成される。各スカラップライン要素は、2つの対向する端部と、端部の間に配置された中央部分とを含み得る。中央部分は、弁尖の尖端に取り付けられ得る(例えば、縫合される)。端部は、交連部において(弁尖とともに)フレームに接続され得る。中央部分はフレームから自由になり得る(つまり、フレームのストラットに取り付けられていない)。スカラップライン要素は柔軟な材料で形成できるため、フレームの圧縮/圧着中にU字型からV字型に圧縮できる。スカラップライン要素は、剛性のある材料(金属、ニチノールなど)で形成されてもよく、フレームに対してばねで付勢されてもよい。スカラップライン要素は、中央部分の内側への半径方向の変位を防ぐために、少なくとも1つの縫合糸ループによって少なくとも1つのストラットに接続され得る柔らかい材料(短いスカート、布、ケーブル、ストリングなど)で形成されてもよい。いくつかの実施形態では、スカラップライン要素は、フレームの任意の直径での弁尖内の折り目の形成を防ぐように構成される。
【0032】
図7Aから図7Bは、人工弁のフレームへの弁尖の従来の取り付けの例を示している。図7Aは、フレーム110に取り付けられた2つの隣接する弁尖150aおよび150bを示している。弁尖150aおよび150bはいずれも、交連152bを介してフレームの支持ストラットに取り付けられている。弁尖150aおよび150bは、スカラップステッチライン154aおよび154bを介して内側スカート130に縫合される。図7Bは、2つの交連152aおよび152bにおいてフレームに取り付けられた弁尖150aを示している。弁尖150aは、スカラップステッチライン154を介して内側スカート130に縫合される。スカート130は、縫合糸ループ116を介して、スカラップステッチライン154a、154bに対して実質的に直交および実質的に平行の両方のストラットに取り付けられて示されている。
【0033】
フレーム110は、拡大された状態で図7Bに示され、例示的なセル112は、2つの対向する接合部の間の長手方向距離Lcで示されている。フレーム110が半径方向に圧縮されるとき、例えば、圧着プロセス中に、距離Lcは、場合によっては、完全に拡張された状態でその距離の2倍まで引き伸ばされる。スカート130の伸長は、スカラップ縫合ライン154でのスカート130との接続のために、弁尖150aの対応する変位に伝達され、それにより、弁尖150aも軸方向に引き伸ばされ、その結果、縫合糸ループ116およびスカラップ縫合ライン154に沿って高い応力集中が生じる。
【0034】
この構成の別の欠点は、埋め込まれた人工弁が脈動する収縮期および拡張期のサイクルにさらされるとき、フレーム110の振動運動が、縫合糸ループ116およびスカラップ縫合ライン154にさらなる応力集中を加えることである。
【0035】
図8Aから図8Cを参照すると、いくつかの例示的な人工弁は、各弁尖をその尖端に沿ってスカラップライン要素140に縫い合わせる方法を採用し、スカラップライン要素は少なくとも交連部においてフレームに取り付けられる。人工弁は、複数の弁尖、例えば3つの弁尖を含み得、それぞれが2つの対向する交連を介してそのスカラップ状の縁に沿ってフレーム110に取り付けられている。図8Aは、3つのスカラップライン要素140a、140b、および140cを示しており、縫合糸を介して(例えば)それぞれ、弁尖150a、150b、および150cの尖端に付着するように構成されている(簡単にするために図8Aから図8Cには示されていない)。各スカラップライン要素は、弁尖150の交連取り付け領域に向かって延在するように構成された2つの対向する端部142と、尖端の形状に従うように構成された端部142の間に配置された中央部分144とを含む。スカラップライン要素140a、140bおよび140cは、別個の要素として形成され得る。いくつかの実施形態によれば、スカラップライン要素140a、140b、140cは、互いに(例えば、端部142において)取り付けられ、一緒にスカラップライン基礎構造140を形成し得る。いくつかの実施形態によれば、スカラップライン要素140a、140b、140cは、スカラップライン基礎構造140を形成するように事前に組み立てられ、その結果、すべての弁尖のすべての尖端がスカラップライン基礎構造140に取り付けられ得る(例えば、縫合される)。いくつかの実施形態によれば、すべてのスカラップライン要素は、単一のスカラップライン基礎構造140として一体的に形成される。図8Aから図8Cは、半径方向に拡張されたフレーム(図8A)と圧縮されたフレーム(図8C)との間のさまざまな遷移段階を示している。フレームのセルの2つの対向する接合部間の長手方向の距離Lcは、Lc1<Lc2<Lc3となるように、Lc1からLc2に増加している。
【0036】
いくつかの実施形態によれば、交連152において、端部142のみが、弁尖150とともにフレーム110に取り付けられており、一方、弁尖の尖端に取り付けられた中央部分144は、フレームストラットに取り付けられておらず、フレーム110の内面の周りに緩く配置されている。
【0037】
スカラップライン要素140は、フレーム圧縮中に対向する端部142が互いに向かって移動している間にその中央部分144が圧縮できるように構成された内部柔軟性を備えている(図8Cを参照)。
【0038】
好ましくは、スカラップライン要素140は、その耐久性を延長するために、弁の性能中およびフレーム状態間の遷移中に最適化された弁尖形状を維持するように設計されている。具体的には、スカラップライン要素140は、フレーム140の任意の直径で弁尖150内に折り目が形成されるのを防ぐように設計されている。いくつかの実施形態によれば、スカラップライン要素140は、フレーム110の直径変化中の中央部分144の所望の柔軟性を除いて、その変形を防ぐするように構成された比較的剛性のある材料から作られる。いくつかの実施形態によれば、スカラップライン要素140は、コバルトクロムまたはニチノールなどのワイヤ(例えば、レーザー切断ワイヤ)で形成されている。いくつかの実施形態によれば、スカラップライン要素140は、中央部分144の内側への半径方向の変位を防ぐために、フレーム110の内面に対してばね付勢されている。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、スカラップライン要素140は、ストリング、ケーブル、縫合糸、布などのような柔らかい材料でできている。いくつかの実施形態によれば、スカラップライン要素140は、中央部分144の内側への半径方向の変位を防ぐために、少なくとも1つのストラットへの中央部分144の少なくとも1つの取り付け点(例えば、縫合糸ループを介して)をさらに含む。
【0040】
有利なことに、軸方向の力のほとんどは、スカラップライン要素140の開示された形状の弧状構造を介して、交連152への端部部分142の取り付け領域に向かって伝達される。
【0041】
いくつかの実施形態は、短いスカートまたは布ストリップを使用してスカラップライン基礎構造に取り付けられた弁尖を含む。図9Aは、交連152bを介してフレームの支持ストラットに取り付けられた2つの隣接する弁尖150aおよび150bを示している。弁尖150aおよび150bは、それぞれ、スカラップ縫合ライン154aおよび154bを介してスカラップライン基礎構造140に取り付けられている。図9Aは、2つの交連152aおよび152bにおいてフレームに取り付けられた弁尖150aを示している。図9Aから図9Bに示される実施形態のスカラップライン基礎構造140が布などの柔軟な材料でできている場合、スカラップライン基礎構造140は、中央部分144の内側への半径方向の変位を防ぐために、いくつかの縫合糸ループ170を介してフレーム110のストラットに取り付けられ得る。
【0042】
図9Aから図9Bに示す実施形態では、フレーム110への取り付けのモードは、スカラップライン基礎構造140が、縫合糸ループ170を介して、スカラップステッチライン154に実質的に直交するストラットに取り付けられ、各縫合糸ループ170がそれぞれのストラットに沿って摺動できるようなものであり得る。
【0043】
いくつかの実施形態によれば、スカラップライン基礎構造140は、布とそれに縫合された弁尖の尖端との間に配置された、補強ストリップなどの補強部材を取り囲む布ストリップを含む。
【0044】
図10Aから図10Fは、半径方向に拡張されたフレーム(図10A)と半径方向に圧縮されたフレーム(図10F)との間の異なる遷移段階を示している。フレームのセルの2つの対向する接合部間の長手方向の距離Lcは、Lc1<Lc2<Lc3<Lc4<Lc5<Lc6となるように、Lc1からLc6に増加している。縫合糸ループ170の位置は、変化するフレーム直径に従って、それらのそれぞれの接合部の間のストラットに沿って変化する。
【0045】
図9Aから図10Fに示される実施形態の構成は、圧着構成(例えば、図10F)において、隣接するストラットの縫合糸ループ170を互いに接近させるという不利な点を提示し得るが、図8Aから図8Cに示される実施形態は、スカラップライン基礎構造140がそのような縫合糸ループを介してストラットに接続されていないため、そのようなリスクを回避する。
【0046】
人工弁のフレームに弁尖を取り付けるいくつかの組み立て方法には、スカラップステッチラインを介して弁尖を布ストリップに取り付ける(スカートを形成する)こと、および一連の縫合糸ループを介して弁尖を布ストリップと一緒にフレームストラットに取り付けることが含まれる。ただし、このプロセスにはいくつかの課題がある。このような課題には、(1)布ストリップと弁尖組織とを通して縫合糸ループを縫うことから生じる困難(ループが弁尖なしで布ストリップを通して縫うことができる場合、潜在的にはるかに簡単なプロセスと比較して)、(2)プロセスの高精度と再現性を提供するための専門知識が必要であり、スカラップラインに近接したストラットに弁尖を取り付けるのが難しいこと、(3)スカートの布は摩耗が激しく、長期耐久性が低くなる可能性があること、および(4)スカートを多数のストラットに取り付けるには、長い組み立て時間が必要であること、が含まれ得る。
【0047】
これらの問題を克服するために、最初にスカラップステッチラインを介して布ストリップ(内側スカート)を弁尖に縫合し、次に布を通ってストラットの周りに延在する縫合糸ループによって布ストリップをストラットに取り付けることによって、弁尖をフレームに取り付けることができる。これにより、弁尖は布ストリップを介してストラットに間接的に取り付けられ、つまり、ストラット自体に直接縫合されることはない。したがって、取り付けプロセスが大幅に簡素化され、組み立て時間が短縮される。布には、スカラップステッチラインと縫合糸ループ用に事前にカットされたステッチ穴を設けることができる。穴は、ジグザグパターンなどのストラットの幾何学的パターンに従うことができるため、アセンブリの結合と精度が向上する。布ストリップは、ソフトヒンジ接続としても機能し得る。スカラップステッチラインと縫合糸ループとの間の距離をより正確に制御することができる。
【0048】
図11は、人工弁のフレーム210への弁尖250の1つのタイプの取り付けを示している。人工弁は、それぞれが2つの対向する交連252を介してそのスカラップ状の縁に沿ってフレーム210に取り付けられた複数の弁尖250を含み得る。図11には、弁尖250のスカラップ領域にスカートを取り付けるために使用されるスカラップステッチライン254が示されている。いくつかの実施形態によれば、スカートは、弁尖250のスカラップラインとストラット212との間に配置された第1の布232と、フレーム210の内腔に面して、弁尖250のスカラップラインの反対側の表面に取り付けられた第2の布234(図13を参照)とを含み得る。
【0049】
図11に示されるように、弁尖は、縫合糸ループ260を介してストラット212に取り付けられ、縫合糸ループ260は、第1および第2の布232、234を通って、弁尖250の尖端を通って、ストラット212の周りに延在する。
【0050】
図12Aから図12Bは、人工弁のフレーム210への弁尖250の別のタイプの取り付けを示している。図12Aは、フレーム210に取り付けられた2つの隣接する弁尖250aおよび250bを示している。弁尖250aおよび250bはいずれも、交連252bを介してフレームの支持ストラットに取り付けられている。図11Bは、2つの交連252aおよび252bにおいてフレームに取り付けられた弁尖250aを示している。弁尖250aおよび250bはいずれも、それぞれスカラップステッチライン254aおよび254bを介してスカート(第1の布232および第2の布234を有する)に縫合される。第1の布232は、縫合糸ループ260を介してスカラップステッチライン254a、254bに対して実質的に平行および実質的に直交の両方のいくつかの異なるストラット212に取り付けられて示されている。
【0051】
変化する距離Lは、スカラップステッチライン254と縫合糸ループ260との間の距離を示す。いくつかの実施形態によれば、図12Aから図12Bに示される実施形態における最大または平均距離Lは、図11に示される実施形態のそれぞれの最大または平均距離Lよりも大きい。いくつかの実施形態によれば、図12Aから図12Bに示される実施形態における最大または平均距離Lは、2mmまで高くすることができる。
【0052】
図13は、図11の取り付けの概略図を示しており、第1の布232および第2の布234は、スカラップステッチライン254を介して弁尖250の両側に縫い付けられている。縫合糸ループ260は、第2の布234、弁尖250、第1の布232を通って、ストラット212の周りに延在する。
【0053】
弁尖250をストラット212に取り付ける改良されたモードは、布230を、その一端で弁尖250のスカラップラインに、およびその反対側の端に沿ってストラット212に別々に取り付けることを含む。図14に、このような取り付けモードの例の概略図を示す。布ストリップ230は、スカラップステッチライン254と同様に、スカラップステッチライン256を介して弁尖250のスカラップラインに縫い付けられる。いくつかの実施形態によれば、スカラップステッチライン256は、布ストリップ230のステッチ穴282を通って延在する。布ストリップ230の反対側の部分は、縫合糸ループ270を介してストラット212に取り付けられており、縫合糸ループ270は、布ストリップ230を通してのみ、例えば、そのステッチ穴284を通って延在し、ストラット212に直接取り付けられた弁尖250を持たずに、ストラット212の周りをループする。いくつかの実施形態によれば、布ストリップ230は、ストラット212の少なくとも部分的にループ状にされているか、またはストラット212の少なくとも2つの表面を覆っている(図14の例を参照)。
【0054】
有利なことに、縫合糸ループ270を介してストラット212のみを布ストリップ230に取り付けることは、同様に弁尖250を通して縫合糸ループ270を縫合するよりもはるかに簡単なプロセスであり、これにより、取り付けプロセスが簡素化され、組み立て時間が短縮されるが、組み立てる人に要求される技能は少なくて済む。
【0055】
いくつかの実施形態によれば、布ストリップ230は、図15の例に示すように、複数のステッチ穴282およびステッチ穴284を含み得、ステッチ穴282は、ステッチライン256を受け入れるように適合されており、ステッチ穴284は、縫合糸ループ270を受け入れるように適合されている。
【0056】
いくつかの実施形態によれば、ステッチ穴284は、ジグザグパターンなどのストラットパターンに一致するパターンで提供され得る(図15を参照)。
【0057】
有利なことに、ストラット212のパターンに従って事前に切断されたステッチ穴282、284を布230に提供することにより、ストラットに挑戦的な形状が提供される場合でも、布230をスカラップ250またはストラット212のいずれかに取り付ける際のより高い精度が提供される。
【0058】
いくつかの実施形態によれば、ステッチ穴282とそれぞれのステッチ穴284との間の距離Lは、スカラップステッチライン256と縫合糸ループ270との間の所望の距離に従って選択される。有利なことに、布ストリップ230を通過する縫合糸ループ270と、弁尖250を通過するスカラップステッチライン256との間を分離することにより、距離Lをより簡単に制御でき、例えば、ショックアブソーバとして機能するのに十分な大きさの距離を設計することができ、それに沿って応力分布を提供しながら、他方で、弁尖250のための安定した、適切に配置された基礎構造を維持するのに十分に短くすることができる。
【0059】
さらなる利点は、布ストリップ230が、弁尖250とストラット212との間の内壁スカート部分としてのみ機能するのではなく、むしろソフトヒンジ接続として機能することである。
【0060】
好ましくは、布ストリップ230は、フレーム210の圧着または拡張中に、より高い伸縮性および応力緩和を提供することができる。
【0061】
人工弁が埋め込まれると、収縮期および拡張期のサイクルが弁尖に力を及ぼし、それが取り付けられているフレームストラット部分上で弁尖縫合糸ループを摺動させ得る。ループの振動運動により、ループは時間の経過とともに張力を失い、それによってループがそれぞれのストラット部分上をより自由に摺動できるようになり、ループの摩耗や耐久性の低下のリスクが生じ得る。
【0062】
これを回避するために、いくつかの実施形態は、先細ストラット部分を含むストラットを含み得る。そのような実施形態では、いくつかのストラット部分は、それらの幅が部分の一方の端部のより狭い幅と部分の反対側の端部のより広い幅との間で変化するように先細になっている。先細の部分に接続された縫合糸ループ(または結び目)は、それらの内径が部分の対応する幅と一致するまで、部分に沿って摺動し得る。ストラットは、その幅の広い方の端がフレームの流入方向に向くように組み立てることができる。好ましくは、ループまたは結び目は、それらが所定の位置に「自己ロック」されるまで、部分に沿って(例えば、流入に向かって)摺動し、すなわち、それらが部分に沿ってそれ以上移動するのを防ぐほどループまたは結び目が部分と緊密に係合することを意味する。ループが時間の経過とともにその気密性を少しでも失うと、新しい位置で「自己ロック」するまで、ループは部分に沿って少しさらに摺動する(例えば、流入に向かって)。収縮/拡張サイクル中に部分に沿ったループの動きを防ぐことにより、ループの摩耗が軽減され、耐久性が向上する。
【0063】
図16は、人工弁のフレーム310のストラット320、320'への弁尖350の取り付けを示している。弁尖は、2つの対向する交連を介して、そのスカラップ状の縁に沿って、例えばスカートや布を介してフレームに取り付けられる。ストラット320、320'への取り付けは、ループまたは結び目(例えば、330a、330b、330'a、330'b)を縫合するためのシリーズによって達成される。ストラット320、320'は、その端部324、324'との間に配置された複数の部分(例えば、322a、322b、322'a、322'b)と、ストラット内の隣接する部分の各カップルの間に配置された中間部分(例えば、326a、326b、326'a、326'b)とを含む。ストラットの端部および中間部分は、開口を含み、これを介して、例えば、開口を通過するピンなどの留め具を介してストラットを互いに接続して、接合部を形成することができる。すべてのストラットの部分には、その長さに沿って均一な幅「w」を設けることができる。
【0064】
図16の例では、弁尖350は、交差するストラット320および320'に取り付けられ、それらの端部324、324'で接続されて頂点を形成している。図16のストラット320の可視部分は、端部324と中間部分326aとの間に延在する部分322aと、中間部分326aと中間部分326bとの間に延在する部分322bとを含む。図16のストラット320'の可視部分は、端部324'と中間部分326'aとの間に延在する部分322'aと、中間部分326'aと中間部分326'bとの間に延在する部分322'bとを含む。弁尖350は、部分322aに沿って配置された縫合糸ループ330aを介して、および部分322bに沿って配置された縫合糸ループ330bを介して、ストラット320に取り付けられている。同様に、弁尖350は、部分322'aに沿って配置された縫合糸ループ330'aを介して、および部分322'bに沿って配置された縫合糸ループ330'bを介して、ストラット320'に取り付けられる。Lcは、フレーム310のセルの2つの対向する接合部の間の距離、例えば、交差する端部324、324'によって形成される頂点と、対向する(例えば、垂直の)接合部との間の距離を示す(図16を参照)。
【0065】
弁尖の配向は、収縮期と拡張期との間で変化し、拡張期中に弁尖によって縫合糸ループに力が加えられ、その結果、縫合糸ループ330a、330bが、それぞれ、部分322a、322b上を、方向392に(すなわち、弁の流入端に向かって)摺動する傾向があり、縫合糸ループ330'a、330'bは、それぞれ、部分322'a、322'b上を、方向394に摺動する傾向がある。収縮期/拡張期のサイクル中の縫合糸ループの振動運動は、縫合糸ループの結び目が時間の経過とともに張力を失い、それによってそれらがストラットの部分上を自由にスライドことを可能にするリスクをもたらす。
【0066】
図17は、中間部分364aと中間部分364bとの間に先細部分362が延在するストラット360の断面を示している。先細部分362は、中間部分364aに隣接するその一端の幅W1が、中間部分364bに隣接するその反対側の端の幅W2よりも大きくなるように、様々な幅を備えている。いくつかの実施形態によれば、ストラット360のすべての部分は、先細部分362として提供される。図18は、3つの隣接する先細部分362a、362b、および362cを備えたストラット360の断面を示し、縫合糸ループ330は、先細部分362b上に結ばれて示されている。縫合糸ループ330は、それらの内径が部分幅と一致する領域まで、先細部分362b上を摺動することができる。縫合糸ループの位置と中間部分364aとの間の領域に沿った部分の幅の拡大は、縫合糸ループ330が方向394にさらに摺動することを防ぐ。
【0067】
いくつかの実施形態によれば、先細部分を備えたストラットの形状により、縫合糸ループに「自己ロック」機能が提供され、各縫合糸ループ330は、対応する位置において部分362とあまりにも緊密に係合するまで部分362に沿って摺動し、縫合糸ループ330が任意の方向にそれ以上移動するのを防ぐ。縫合糸ループが時間の経過とともにその張力の一部を失い、その結果その内径が拡大すると、部分に沿ってさらにわずかに摺動し、部分362の部分幅がわずかに広い新しい位置において「自己ロック」される。有利なことに、先細ストラット部分362に沿った縫合糸ループ330の移動を防ぐ「自己ロック」機能により、ループ330の摩耗が軽減され、その耐久性が改善される。いくつかの実施形態によれば、ストラット360は、それらの部分362のより広い部分がフレームの流入端に向けられるように、フレームを形成するように組み立てられる。
【0068】
弁尖がスカラップ縫合ラインに実質的に平行な縫合糸ループを介してフレームストラットに取り付けられている場合、それらの対向する側端の交連を介してフレームにも取り付けられている間、フレームの直径の変化により、縫合糸ループに沿った高い応力集中を伴う、弁尖の伸長がもたらされ得る。この問題の解決策の1つは、スライド可能な縫合糸ループを介して、スカラップステッチラインに実質的に直交する縫合糸ループを備えたストラットに各弁尖を取り付けることである。ただし、弁尖のスカラップ状の縁と、それらが取り付けられているストラットに沿って形成されたフレームセルの接合部との間に形成される可能性のある潜在的な間隙に問題が残り、弁尖の縁は展開後に意図した位置に戻らない。
【0069】
この問題に対処するために、各弁尖は、そのスカラップ状の縁に沿って、スライド可能な縫合糸ループを介して交差するストラットに取り付けられ得る。そのような実施形態では、縫合糸ループの各対は、交差するストラットの部分に取り付けることができ、各縫合糸ループは、それが取り付けられているストラットの上で、その遠位接合部と近位接合部との間でスライド可能であり得る。フレーム拡張中、縫合糸ループは、それぞれのストラットに沿って、そのようなストラット間の交差する接合部(具体的には、遠位接合部)に向かって摺動するように構成される。ストラットが遠位接合部に向かって摺動している間、ストラットは弁尖のスカラップ状の縁を同じ方向に沿って引きずる。これにより、弁尖のスカラップ状の縁を、拡張済み、圧着前、または圧縮前の位置と同じ位置に戻すことができる。
【0070】
図19A図20Bは、スライド式縫合糸ループを介してスカラップラインを横切るストラットに弁尖を取り付ける技術を示している。図19Aは、フレーム410に取り付けられた弁尖450を示している。図19Bは、図19Aの領域19Bの拡大図を示している。縫合糸ループ470a、470bおよび470cは、弁尖450をそれぞれストラット432、434および436に取り付ける。図19Bに示されるように、各縫合糸ループ470は、それぞれのストラットに沿って摺動し、フレーム410の状態および形状、ならびに弁尖450の構造構成および取り付け領域の結果としてそこに作用する力に応答し得る。縫合糸ループ470aは、接合部J5とJ6との間でスライド可能に移動可能である。縫合糸ループ470bは、接合部J3とJ4との間でスライド可能に移動可能である。縫合糸ループ470cは、接合部J1とJ2との間でスライド可能に移動可能である。図19A図19Bでは、縫合糸ループ470cは接合部の1つ、すなわちJ1のより近くに配置されている間、縫合糸ループ470bおよび470aは、それらの対応する接合部の間の中間部分のより近くに配置されている。
【0071】
図20A図20Bは、半径方向に拡張されたフレーム(図20A)と半径方向にわずかに圧縮されたフレーム(図20B)との間の2つの遷移段階を示している。フレームのセルの2つの対向する接合部間の縦方向の距離Lcは、Lc1<Lc2となるように、Lc1からLc2に増加している。縫合糸ループ470aは、接合部J5とJ6との間でスライド可能に移動可能であり、縫合糸ループ470bは、接合部J7とJ6との間でスライド可能に移動可能である。縫合糸ループ470aおよび470bの位置は、変化するフレーム直径に従って、それぞれの接合部の間のストラットに沿って変化し、その結果、フレームが完全に圧着された状態(図示せず)にさらに圧縮されると、弁尖のスカラップ状の縁が接合部J6に向かって変位し、接合部J8から離れるようになり、弁尖のスカラップ状の縁と接合部J8との間に間隙が形成される。
【0072】
図21Aは、フレームの圧着前の拡張状態での縫合糸ループ470の位置の拡大図であり、縫合糸ループ470は、接合部J3に隣接している。図21Bは、弁圧着とそれに続くフレーム拡張後の縫合糸ループ470の位置の拡大図である。フレームが圧着されると、縫合糸ループ470は、弁の流出により近い接合部に向かって(すなわち、図示の例では接合部J4に向かって)摺動する傾向がある。図21Bに示すように、フレームが圧着状態から拡張されると、縫合糸ループは図21Aの元の位置に戻らず、むしろ接合部J3からかなり離れた位置に配置される。その結果、弁尖のスカラップ状の縁が、圧着前の元の位置に対して、弁の流出により近い位置に配置される。
【0073】
図22A図23Dは、人工弁のフレームへのスカートの取り付け構成を示し、取り付け構成は、図21BAに示されるように、拡張時に弁尖のスカラップ状の縁をその圧着前状態に戻すのを助けるように構成される。図22Aおよび図22Bは、そのストラットに取り付けられたスカート520を有する人工弁のフレーム510を示している。図22Aおよび図22Bは、それぞれ、フレーム510の内部視野角および外部視野角からのスカート520のフレーム510への取り付けを示している。スカート520は、縫合糸ループを介して交差するストラットに取り付けられている。図22Aは、2つのそのような縫合糸ループ542および544を示しており、スカート520の部分をそれぞれストラット552および554に取り付けている。縫合糸ループは、ストリング(個別に番号が付けられていない)を介して接続することができ、2つの交差するストラットに縫合されたストリングの端部を形成し得る。ストラット552および554は、接合点J2において交差する、フレーム510の1つのセルの2つの縁を構成する。縫合糸ループはストラットに過度に緊密に取り付けられておらず、むしろそれぞれのストラットに沿ってそれらが摺動できるように十分に緩んでいる。縫合糸ループ542は、接合部J1とJ2との間のストラット552に沿ってスライド可能に移動可能である。縫合糸ループ544は、接合部J3とJ2との間のストラット554に沿ってスライド可能に移動可能である。
【0074】
図23A図23Dは、半径方向に圧縮されたフレーム(図23A)と半径方向に拡張されたフレーム(図23D)との間の異なる遷移段階を示している。縫合糸ループ542および544は、それらが取り付けられているそれぞれのストラットに沿ってスライド可能に移動可能であり、その結果、それらの位置は、変化するフレーム直径に従って変化する。フレームが拡張するにつれて、縫合糸ループ542および544は、それらのそれぞれのストラットの間の交差する接合部J2に向かって摺動し、スカートの縁522をそれに沿って引きずることが理解され得る。具体的には、フレームが圧縮されたとき(図22A)、例えば、圧着段階中に、スカートの縁522が接合部J2から離れて距離を置いていることが示されているが、スカートの縁522は、拡張状態(図23D)で接合部J2と整列し、接合部J2とスカートの縁522との間の間隙形成を防ぐ。
【0075】
この技術の一態様によれば、人工弁の各弁尖を、そのスカラップ状の縁に沿って、スライド可能な縫合糸ループを介して交差するストラットに取り付ける方法が提供される。人工弁は、それぞれが2つの対向する交連を介して、そのスカラップ状の縁に沿って、またはその近くで、フレームに取り付けられている複数の弁尖(図には示されていない)を含み得る。図24は、弁尖に取り付けられた縫合糸ループ642および644を示している。見られるように、スカート520について図22Aに示される取り付け領域とは反対に、縫合糸ループ642および644は、各セルにおいて図22Aで利用されるストラットに対向するストラットに沿ってスライド可能に移動可能である。具体的には、縫合糸ループ642および644は、スカートの取り付けに利用された可能性のあるストラット652および654の代わりに、ストラット656および658に取り付けられ、それに沿ってスライド可能に移動可能である。縫合糸ループ642および644は、構造および機能が縫合糸ループ542および544と類似している。例えば、縫合糸ループ644は、接合部J3とJ4との間のストラット658に沿ってスライド可能に移動可能である。
【0076】
フレームが拡張すると、縫合糸ループ442および444は、それぞれのストラット656と656との間の交差する接合部J3に向かって摺動し、そこに沿って弁尖のスカラップ状の縁を引きずるように構成される。具体的には、フレームが圧縮されたときにスカラップ状の縁が接合部J3から離れる一方で、フレームは、図21Aの圧着前の位置と同様に、拡張状態で接合部J3と整列し、接合部J3と弁尖のスカラップ状の縁との間に間隙が形成されるのを防ぐ。
【0077】
開示された技術の重要な利点は、展開後に弁尖のスカラップラインが正しく配置されていることを確認しながら、(図19A図20Bに示すように)圧着段階中にスライディングスカラップラインを使用できることである。
【0078】
一般的な考慮事項
本明細書に開示される実施形態は、心臓の天然の弁輪(例えば、大動脈、肺、僧帽弁、および三尖弁輪)のいずれかに人工器官を搬送および移植するために適合させることができ、様々な搬送アプローチ(例えば、逆行性、順行性、経中隔、経脳室、経心房など)のいずれかを使用して人工弁を搬送するための様々な搬送デバイスのいずれかと共に使用することができる。人工心臓弁は、身体を介した搬送中に半径方向に折りたたまれ、次に、弁に結合された搬送デバイスを使用することなどによって、移植部位において半径方向に拡張され得る。本明細書に開示される弁および他の埋め込み型デバイスは、カテーテルおよび/またはガイドワイヤを使用して搬送され得る。ガイドワイヤは患者を通して前進させることができ、次にガイドワイヤ上でカテーテルを前進させることができる。カテーテルは、ガイドワイヤが通過するガイドワイヤ内腔を定義する最も内側のシャフトを有し得る。カテーテルは、複数のカテーテル、シャフト、および/またはシース、作動機構、動力機構、および他の構成要素を含み得る搬送システムの一部であり得る。例えば、搬送デバイスは、移植部位においてフレームを機械的に拡張する作動機構を含み得る。
【0079】
この説明の目的のために、本開示の実施形態の特定の態様、利点、および新規の特徴が本明細書に記載されている。開示された方法、装置、およびシステムは、いかなる方法でも限定的であると解釈されるべきではない。代わりに、本開示は、単独で、および互いに様々な組み合わせおよびサブコンビネーションにおいて、様々な開示された実施形態のすべての新規で非自明な特徴および態様に向けられている。方法、装置、およびシステムは、特定の態様または特徴またはそれらの組み合わせに限定されず、開示された実施形態は、任意の1つ以上の特定の利点が存在すること、または問題が解決されることを必要としない。任意の例からの技術は、他の任意の1つ以上の例で説明されている技術と組み合わせることができる。開示された技術の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮して、図示された実施形態は単なる好ましい例であり、開示された技術の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを認識すべきである。
【0080】
開示された実施形態のいくつかの動作は、便利な提示のために特定の連続した順序で説明されているが、本明細書に記載の特定の言語によって特定の順序が要求されない限り、この説明の方法は再配置を含むことを理解されたい。例えば、順番に記述された動作は、場合によっては、再配置されたり、同時に実行されたりし得る。さらに、簡単にするために、添付の図は、開示された方法を他の方法と組み合わせて使用することができる様々な方法を示していない場合がある。さらに、説明では、開示された方法を説明するために「提供する」または「達成する」などの用語を使用することがある。これらの用語は、実行される実際の動作の高レベルの抽象化である。これらの用語に対応する実際の動作は、特定の実装に応じて変化する可能性があり、当業者によって容易に識別可能である。
【0081】
本出願および特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、複数形を含む。さらに、「含む(include)」という用語は「備える(comprise)」を意味する。本明細書で使用される場合、「および/または」は、「および」または「または」、ならびに「および」および「または」を意味する。さらに、「結合された(coupled)」および「接続された(connected)」という用語は、一般に、物理的(例えば、機械的または化学的に)、電気的、および/または磁気的に結合またはリンクされたものを意味し、特定の反対の言葉がない結合または関連するアイテム間の中間要素の存在を排除しない。
【0082】
方向および他の相対的な参照(例えば、内側(inner)、外側(outer)、上部(upper)、下部(lower)など)は、本明細書の図面および原理の議論を容易にするために使用され得るが、限定することを意図するものではない。例えば、「内側(inside)」、「外側(outside)」、「上(top)」、「下(down)」、「内(interior)」、「外(exterior)」などの特定の用語を使用することができる。このような用語は、該当する場合、特に図示の実施形態に関して、相対的な関係を扱うときに説明をいくらか明確にするために使用される。ただし、そのような用語は、絶対的な関係、位置、および/または配向を意味することを意図したものではない。例えば、対象物に関しては、対象物を裏返すだけで「上部」の部分を「下部」の部分にすることができる。それにもかかわらず、それは依然として同じ部分であり、対象物は同じままである。
【0083】
本明細書に開示される弁およびフレームは、環状フレームの中心線によって定義される軸方向、および流入端から流出端までの全体的な血流方向、フレームの中心線から直交して放射するように定義される半径方向、および軸方向および半径方向に直交し、フレームの中心線の周りに延在する円周方向を使用して説明される。「内側(inner)」という用語は、フレームの中心線に近い対象物、表面、および領域を指し、「外側(outer)」という用語は、フレームの中心線から遠い対象物、表面、および領域を指す。
【0084】
開示された技術の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮して、図示された実施形態は技術の好ましい例にすぎず、技術の範囲を限定するものと見なされるべきではないことを認識すべきである。むしろ、開示された技術の範囲は、少なくとも以下の特許請求の範囲およびそれらの同等物と同じくらい広い。
【符号の説明】
【0085】
10、110、210、310、410、510 フレーム
12、112 セル
22、24、30、32、34、36、42、44、46、212、320、320'、360、432、434、436、552、554、652、654、656、658 ストラット
26、28 ストラット接合部
50 スカラップ
50、50a、50b、150、150a、150b、150c、250、250a、250b、350、450 弁尖
52、52a、52b、152、152a、152b、252、252a、252b 交連
54、154、154a、154b、254、254a、254b、256 スカラップステッチライン
60、70、70a、70b、70c、70d、70e、70f、70g、70h、70i、116、170、260、270、330、330a、330'a、330b、330'b、442、444、470、470a、470b、470c、542、544、642、644 縫合糸ループ
70 縫合糸
80 開口カップル
90 開口
130 内側スカート
140 スカラップライン基礎構造
140、140a、140b、140c スカラップライン要素
142、324、324' 端部
144 中央部分
154 スカラップ縫合ライン
230 布、布ストリップ
232 第1の布
234 第2の布
282、284 ステッチ穴
322a、322b、322'a、322'b 部分
326a、326b、326'a、326'b、364a、364b 中間部分
330a、330b、330'a、330'b 結び目
362、362a、362b、362c 先細部分
392、394 方向
520 スカート
522 スカートの縁
J1、J2、J3、J4、J5、J6 接合部
L 距離
Lc、Lc1、Lc2、Lc3、Lc4、Lc5、Lc6 接合部間の距離
w 幅
2B 領域
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図20A
図20B
図21A
図21B
図22A
図22B
図23A
図23B
図23C
図23D
図24