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特許7597753竪型焼成炉、原料充填層の高さ測定方法及び焼成品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】竪型焼成炉、原料充填層の高さ測定方法及び焼成品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F27B 1/20 20060101AFI20241203BHJP
   F27D 21/00 20060101ALI20241203BHJP
   G01F 23/284 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
F27B1/20
F27D21/00 A
G01F23/284
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022045240
(22)【出願日】2022-03-22
(65)【公開番号】P2023139623
(43)【公開日】2023-10-04
【審査請求日】2023-07-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 宇部マテリアルズ株式会社から依頼を受けた田口真人が令和3年10月28日に第46回石灰工業技術大会講演要旨集にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000119988
【氏名又は名称】宇部マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 真人
(72)【発明者】
【氏名】片山 悠司
(72)【発明者】
【氏名】山田 敦史
(72)【発明者】
【氏名】古賀 貴寛
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-097943(JP,A)
【文献】特許第6893588(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 21/00
F27B 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒と、内筒と、該外筒と該内筒との間に形成された原料通路とを有し、該原料通路に充填された原料を焼成する竪型焼成炉であって、
前記原料通路の上方において前記原料通路の周方向に間隔をおいて複数設けられ、前記原料通路に原料が充填されて形成された原料充填層の上端の位置を連続的に検出可能なレベル計と、
複数の前記レベル計により測定された測定データを用いて、複数の前記レベル計ごとに前記レベル計から前記原料充填層の上端までの距離が変化する速度を算出すると共に、算出した複数の前記レベル計ごとの前記速度の平均を算出する算出部と、
前記算出部で算出された前記速度及び前記速度の平均を用いて、原料の焼成の条件を判断する判断部と
を有している
ことを特徴とする竪型焼成炉。
【請求項2】
前記レベル計は、該レベル計から前記原料充填層の上端までの距離を連続的に測定することにより、前記原料充填層の上端の位置を連続的に検出するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の竪型焼成炉。
【請求項3】
前記レベル計は、前記原料充填層に向けて電磁波を照射し、該原料充填層の上端で反射した電磁波である反射波を受信して、該原料充填層の上端までの距離を連続的に測定することにより、前記原料充填層の上端の位置を検出するように構成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の竪型焼成炉。
【請求項4】
前記レベル計により測定された測定データを連続的に格納する記憶部と、
前記記憶部に格納された測定データを表示する表示部と
を更に備える
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の竪型焼成炉。
【請求項5】
前記算出部は、前記記憶部に格納された測定データを用いて、前記速度及び前記速度の平均を算出するように構成されており、
前記表示部は、前記判断部の判断結果を表示するように構成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の竪型焼成炉。
【請求項6】
前記判断部は、前記判断結果を用いて、前記原料通路内の異常を検知するように構成されており、
前記表示部は、前記判断部が前記原料通路内の異常を検知した場合に、該原料通路内に異常が発生したことを表示するように構成されている
ことを特徴とする請求項5に記載の竪型焼成炉。
【請求項7】
前記レベル計は、炉頂に設けられている
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の竪型焼成炉。
【請求項8】
外筒と、内筒と、該外筒と該内筒との間に形成された原料通路とを有し、該原料通路に充填された原料を焼成する竪型焼成炉の該原料通路に原料が充填されて形成された原料充填層の高さを測定する原料充填層の高さ測定方法であって、
前記原料通路の上方において前記原料通路の周方向に間隔をおいて複数設けられたレベル計により前記原料充填層の上端の位置を連続的に検出する測定工程と、
複数の前記レベル計により測定された測定データを用いて、複数の前記レベル計ごとに前記レベル計から前記原料充填層の上端までの距離が変化する速度を算出すると共に、算出した複数の前記レベル計ごとの前記速度の平均を算出する算出工程と、
前記算出工程で算出された前記速度及び前記速度の平均を用いて、原料の焼成の条件を判断する判断工程と
を備えることを特徴とする原料充填層の高さ測定方法。
【請求項9】
前記測定工程は、前記原料充填層の上端までの距離を連続的に測定することにより、前記原料充填層の上端の位置を連続的に検出する
ことを特徴とする請求項8に記載の原料充填層の高さ測定方法。
【請求項10】
前記測定工程は、レベル計により前記原料充填層に向けて電磁波を照射し、該原料充填層の上端で反射した電磁波である反射波を受信して、該原料充填層の上端までの距離を連続的に測定することにより、前記原料充填層の上端の位置を連続的に検出する
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の原料充填層の高さ測定方法。
【請求項11】
前記測定工程により測定された測定データを連続的に格納する記憶工程と、
前記記憶工程により格納された測定データを表示する表示工程と
を更に備える
ことを特徴とする請求項8~10のいずれか1項に記載の原料充填層の高さ測定方法。
【請求項12】
前記算出工程は、前記記憶工程により格納された測定データを用いて、前記速度及び前記速度の平均を算出する工程を更に備え、
前記表示工程は、前記判断工程の判断結果を表示する工程を更に備える
ことを特徴とする請求項11に記載の原料充填層の高さ測定方法。
【請求項13】
前記判断工程は、前記判断結果を用いて、前記原料通路内の異常を検知する工程を更に備えており、
前記表示工程は、前記判断工程で前記原料通路内の異常を検知した場合に、該原料通路内に異常が発生したことを表示する工程を更に備える
ことを特徴とする請求項12に記載の原料充填層の高さ測定方法。
【請求項14】
請求項1~7のいずれか1項に記載の竪型焼成炉を用いて焼成品の製造を行う
ことを特徴とする焼成品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石灰石等の原料を焼成し、生石灰等の焼成品を生成する竪型焼成炉、その竪型焼成炉内の原料充填層の高さ測定方法及びその竪型焼成炉による焼成品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、石灰石等の原料を焼成し、生石灰等の焼成品を生成する竪型焼成炉、例えば、ベッケンバッハ炉が知られている(特許文献1等)。竪型焼成炉において、原料補充のタイミングや適正な焼成が行われているかを確認するために、竪型焼成炉の原料通路に充填された原料の量を目視により測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2010-501819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の竪型焼成炉では、原料通路に充填された原料の量を目視により測定しているため、正確に測定を行うことができず、その結果、原料を適切なタイミングで補充することができず、また適正な焼成が行われているかを正確に把握できないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的は、原料通路に充填された原料の量を正確に測定することが可能な竪型焼成炉、原料充填層の高さ測定方法及び焼成品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る竪型焼成炉は、外筒と、内筒と、該外筒と該内筒との間に形成された原料通路とを有し、該原料通路に充填された原料を焼成する竪型焼成炉であって、前記原料通路に原料が充填されて形成された原料充填層の上端の位置を連続的に検出可能なレベル計を有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る原料充填層の高さ測定方法は、竪型焼成炉内の原料充填層の高さを測定する原料充填層の高さ測定方法であって、レベル計により前記原料充填層の上端の位置を連続的に検出する測定工程を備えることを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明に係る焼成品の製造方法は、前記竪型焼成炉を用いて焼成品の製造を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、原料通路に充填された原料の量を正確に測定することが可能な竪型焼成炉、原料充填層の高さ測定方法及び焼成品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る竪型焼成炉を示す概略図である。
図2】本実施形態に係る上部連結部材及び上部燃焼室を示す概略図である。
図3】本実施形態に係る下部連結部材及び下部燃焼室を示す概略図である。
図4】本実施形態に係るレベル計を示す概略図である。
図5】本実施形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、本実施形態においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や、一部の構成要素が省略されている場合がある。
【0012】
[竪型焼成炉の構成]
本実施形態に係る竪型焼成炉1は、後述する原料通路13に充填された原料を焼成すると共に、該焼成により発生した排ガスを炉外に排出する竪型焼成炉である。具体的には、竪型焼成炉1は、図1に示すように、炉の本体である炉体10と、炉体10の外部に、焼成により発生した排ガスと炉外空気との間で熱交換を行う熱交換器20と、該熱交換器20に空気を供給するブロワ30と、熱交換器20により加熱された空気を炉体10に供給するインジェクタ40と、焼成により発生した排ガスを大気中に排出する排気ファン50とを備えている。本実施形態において、竪型焼成炉1は、ベッケンバッハ炉であることが好ましい。
【0013】
図1に示すように、炉体10は、長尺円筒状の外筒11と、該外筒11の内側に配置された長尺円筒状の内筒12とを備えており、全体として鉛直方向に沿って延びる竪型円筒状に形成されている。内筒12は、軸方向において、外筒11よりも長尺に形成されるとともに、外筒11と同軸に配置されており、内筒12の上端が外筒11よりも上方に位置している。また、内筒12の内径は、外筒11の内周面と内筒12の外周面の間に、石灰石などが流通するのに十分なスペースを有する原料通路13を形成できるように、外筒11の内径よりも小さく形成されている。
【0014】
外筒11の内周面と内筒12の外周面の間には、両面を橋架けるように複数(本実施形態においては5つ)の上部連結部材14及び複数(本実施形態においては5つ)の下部連結部材15が設けられ、外筒11と内筒12は、これら上部連結部材14及び下部連結部材15によって連結されている。上部連結部材14は、下部連結部材15よりも上方に設置されている。
【0015】
複数の上部連結部材14は、図2に示すように、炉体10の周方向に沿って等間隔において放射状に配置されている。また、下部連結部材15は、図3に示すように、炉体10の周方向に沿って等間隔において、かつ鉛直方向において上部連結部材14に重ならないように、放射状に配置されている。
【0016】
外筒11及び内筒12の上方には、炉体10の頂点部である炉頂10aが設けられており、炉頂10aは、外筒11及び内筒12の上端を覆う略ドーム状に形成されている。炉頂10aの上部には、外筒11及び内筒12の軸の延長線と重なる位置に開口する投入口10bが形成されていると共に、石灰石等の任意の原石と、固体燃料とを含む原料を該投入口10bから投入可能な投入装置(図示せず)が設けられている。また炉頂10aの内部には、外筒11及び内筒12と同軸であり、頂点が上側に位置する円錐状の上蓋10cが設置されている。そして、投入装置から投入口10bを経由して上蓋10cの上に原料が投入されることにより、原料通路13に原料が周方向に略均等になるように充填(堆積)されて原料充填層Aが形成される。
【0017】
外筒11の外周面の上部連結部材14及び下部連結部材15それぞれの下方には、上部燃焼室16及び下部燃焼室17が設けられており、これら複数の上部燃焼室16及び下部燃焼室17は、図4に示すように、上部連結部材14及び下部連結部材15と同様に周方向に等間隔をおいて放射状に配置されている。すなわち、複数の上部燃焼室16と下部燃焼室17は、互いに上下方向で重ならないように放射状に配置されている。
【0018】
上部燃焼室16及び下部燃焼室17は、それぞれの内部に上部バーナ16a及び下部バーナ17aを備えており、これら上部バーナ16a及び下部バーナ17aにより原料通路13内を熱するように構成されている。また下部燃焼室17には、熱交換器20と接続されるインジェクタ40が接続されている。
【0019】
外筒11及び内筒12の下端部(炉体10の底部)には、焼成品を炉体10の外部に排出可能な焼成品排出口18が設けられている。焼成品排出口18としては、例えば、外筒11及び内筒12の下端部に設けられた回転体(図示せず)が回転することにより、焼成品を炉体10の外部に周方向において均等な量を排出できる構成等、種々の公知の構成を採用することができる。また、本実施形態において、焼成品とは、原料充填層Aの原料が原料通路13を流れる上向きの熱ガスと向流接触することで焼成されて製造された成品であり、例えば、生石灰等である。
【0020】
内筒12は、原料通路13を流れる熱ガスを内筒12内部に流入させることが可能な上部流入口12a及び下部流入口12bを備えている。上部流入口12aは、上部連結部材14の上部近傍において、内筒12の周方向に沿って等間隔に複数(本実施形態においては5つ)設けられており、上向きの熱ガスの一部を内筒12内部に流入させるように構成されている。上部流入口12aより内筒12内部に流入された熱ガスは、熱源となる排ガスとして熱交換器20に送気される。また、上部流入口12aより内筒12内部に流入されない上向きの熱ガスは、外筒11の上方より排ガスとして排気ファン50に送気されている。
【0021】
下部流入口12bは、下部燃焼室17の下部近傍において、内筒12の周方向に沿って等間隔に複数(本実施形態においては5つ)設けられており、原料通路13を流れる下向きの熱ガス及び焼成品排出口18から原料通路13に流入した空気を内筒12内部に流入させるように構成されている。下部流入口12bから内筒12内部に流入した下向きの熱ガス及び空気は、下部燃焼室17の下部バーナ17aに供給され、熱ガスは下部バーナ17aでの燃焼により更に加熱された状態で再度原料通路13を流れる。
【0022】
熱交換器20は、配管(図示せず)を介して内筒12の上部と接続されており、内筒12から送気された排ガスと、熱交換器20の下方に設けられたブロワ30から供給された空気とを熱交換する。熱交換により加熱された空気は、インジェクタ40に供給され、該インジェクタ40から、下部燃焼室17内に吐出されて、下部バーナ17aで更に加熱されて原料通路13内へと導かれる。熱交換器20に供給されない排ガスは、排気ファン50に送気される。
【0023】
排気ファン50は、外筒11及び熱交換器20とそれぞれ配管(図示せず)を介して接続されており、外筒11及び熱交換器20から排ガスを吸引するように構成されている。また、排気ファン50により吸引された排ガスは、サイクロン等の脱塵装置(図示せず)へ導かれてダスト捕集された後に大気中に放出される。
【0024】
本実施形態に係る竪型焼成炉1は、原料通路13に原料が充填されて形成された原料充填層Aの上端の位置を連続的に検出可能なレベル計60を有している。レベル計60は、原料通路13の上方(炉頂10a)かつ、径方向において上部燃焼室16と平行になる位置に配置されており、該レベル計60から原料充填層Aの上端までの距離を連続的に測定することにより、原料充填層Aの上端の位置を連続的に検出するように構成されている。そのため、竪型焼成炉を管理する管理者は、目視による測定誤差を防止できると共に、原料を補充する適切なタイミングを把握し、適正な焼成が行われているかを正確に把握することができる。また、本実施形態に係る竪型焼成炉1ではレベル計60により連続的な測定が可能となるため、管理者が所定時間ごとに測定を行う必要がなく、作業性を向上させることが可能となる。
【0025】
本実施形態において、レベル計60は、鉛直方向下方側に位置する原料充填層Aに向けて電磁波を照射し、該原料充填層Aの上端で反射した電磁波である反射波を受信して、該原料充填層Aの上端までの距離を測定することにより、原料充填層Aの上端の位置を検出するように構成されている。これにより、測定精度をさらに向上させることができる。
【0026】
また、本実施形態において、レベル計60は、所定の間隔で電磁波を原料充填層Aに向けて照射することにより、該レベル計60から原料充填層Aの上端までの距離を連続的に測定するように構成されている。本実施形態において、原料充填層Aに対する電磁波の照射は、短い間隔(例えば、数秒ごと)で行われても良いし、長い間隔(例えば、数分又は数時間ごと)で行われても良い。また、レベル計60から照射される電磁波としては、マイクロ波が好ましいが、レーダー波等の任意の電磁波を採用することができる。
【0027】
また、図4に示すように、レベル計60は、炉頂10a内に、周方向に等間隔を置いて放射状に複数(本実施形態においては5つ)設けられており、該複数のレベル計60のそれぞれが該レベル計60から原料充填層Aの上端までの距離を連続的に測定することにより原料充填層Aの上端の位置を連続的に検出するように構成されている。このように、レベル計60が炉頂10aの周方向に複数設けられているため、原料通路13の略全域に亘って測定を行うことができると共に、原料通路13の周方向における原料充填層Aの沈降速度の相違を把握することができる。
【0028】
図5に示すように、本実施形態において、レベル計60は、炉体10の外部に設けられた制御装置70とデータ通信可能に構成されており、レベル計60により測定した測定データ(原料充填層Aの上端の位置)を制御装置70に対して連続的に送信するように構成されている。
【0029】
以下、図5を用いて制御装置70の内部構成について説明する。なお、本実施形態に係る制御装置70は、操作部(図示せず)及び表示画面(図示せず)を少なくとも備える装置であり、例えば、パーソナルコンピュータやタブレット端末等の種々の公知の装置を採用することができる。
【0030】
制御装置70は、該制御装置70全体の制御を行う制御部71と、各種データを格納する記憶部72と、記憶部72に格納された各種データを表示する表示部73とを少なくとも備えている。また、制御部71は、レベル計60から原料充填層Aの上端までの距離が変化する速度を算出する算出部71aと、原料の焼成の条件の判断等を行う判断部71bとを備えている。
【0031】
記憶部72は、レベル計60により測定された測定データを連続的に格納するように構成されている。すなわち、記憶部72は、レベル計60から連続的に送信される測定データを連続的に格納する。また、記憶部72は、算出部71aの算出結果、判断部71bの判断結果及び判断部71bにより検知された後述する異常発生予兆情報並びに異常発生情報をそれぞれ格納するように構成されている。
【0032】
算出部71aは、記憶部72に格納された測定データを用いて、レベル計60から原料充填層Aの上端までの距離が変化する速度を算出するように構成されている。本実施形態において、算出部71aは、複数のレベル計60ごとに、該レベル計60から原料充填層Aの上端までの距離が変化する速度(沈降速度)を算出すると共に、複数のレベル計60の測定データより平均の沈降速度を算出する。また、算出部71aの算出結果は記憶部72に格納される。
【0033】
判断部71bは、算出部71aの算出結果を用いて、原料の焼成の条件を判断するように構成されている。これによって、レベル計60により正確な測定を行うことができるだけでなく、焼成品の品質異常を回避することができる。また、判断部71bは、上記判断結果を用いて、原料通路13内における異常発生の恐れ(予兆)を検知すると共に、原料通路13内の異常、例えば炉壁への膠着物の発生等を検知するように構成されている。これにより、原料通路13内で発生した問題に対して早急に対応可能になると共に、異常発生箇所の特定が容易になる。本実施形態において、判断部71bは、算出部71aで算出した複数のレベル計60ごとの算出結果を用いて、及び算出部71aで算出した平均の沈降速度を用いて焼成の条件の判断及び異常の検知を行うように構成されている。また、判断部71bの判断結果及び判断部71bにより検知された異常発生予兆情報並びに異常発生情報は記憶部72に格納される。
【0034】
表示部73は、記憶部72に格納された測定データを表示するように構成されている。具体的には、表示部73は、記憶部72に格納された測定データを数値として表示画面上に表示するように構成されている。そのため、管理者が原料通路13に充填された原料の量をリアルタイムに確認することができるので、所定時間ごとに測定を行う必要がなく、管理者の作業性を向上させることができる。
【0035】
また、表示部73は、判断部71bの判断結果を表示するように構成されている。具体的には、表示部73は、記憶部72に格納された判断部71bの判断結果を判別可能な状態で表示画面上に表示するように構成されており、例えば、沈降速度について「速い」、「適正」及び「遅い」という表示や、これらの速度から、焼成の条件の判断指標として「未焼」、「適正」及び「過焼」等の任意の表示方法により数時間後に焼成品排出口18から排出される焼生物の状態を表示することができる。
【0036】
さらに、表示部73は、判断部71bが原料通路13内の異常を検知した場合に、該原料通路13内に異常が発生したことを表示するように構成されている。具体的には、表示部73は、記憶部72に格納された判断部71bが検知した異常発生予兆情報に基づいて、原料通路13内において異常発生の恐れ(予兆)があることを表示するように構成されている。また、表示部73は、記憶部72に格納された判断部71bが検知した異常発生情報に基づいて、原料通路13内において異常が発生したことを表示画面上に表示するよう構成されており、例えば「異常」等の任意の表示方法により表示するように構成されている。
【0037】
[焼成品の製造方法]
次に、本実施形態に係る竪型焼成炉1を用いた焼成品の製造法について説明する。上記のように構成された竪型焼成炉1においては、まず、図1に示すように、投入装置(図示せず)から投入された原料が原料通路13に充填(堆積)されて原料充填層Aを形成する。この状態において、原料充填層Aの原料は、上部バーナ16a及び下部バーナ17aにより発生し、原料通路13を流れる上向きの熱ガスと向流接触して焼成される。そして、原料充填層Aの原料は、該焼成により焼成品となって、焼成品排出口18より炉体10の外部に排出される。
【0038】
[測定方法]
次に、本実施形態に係る竪型焼成炉1を用いた原料充填層Aの上端までの距離を測定する測定方法について説明する。
【0039】
[測定工程]
まず、炉体10の炉頂10aに設けられた複数のレベル計60により原料充填層Aの上端までの距離を連続的に測定することにより、原料充填層Aの上端の位置を連続的に検出する。本実施形態においては、上述したように、レベル計60により原料充填層Aに向けて電磁波を照射し、該原料充填層Aの上端で反射した電磁波である反射波を受信して、該原料充填層Aの上端までの距離を連続的に測定する。
【0040】
[記憶工程、算出工程、判断工程及び表示工程]
複数のレベル計60により測定された測定データは、記憶部72に連続的に格納されると共に、表示部73により表示画面上に表示される。また、該記憶部72に測定データが格納されると、算出部71aが記憶部72に格納された測定データを用いて、レベル計60から原料充填層Aの上端までの距離が変化する速度を算出する。
【0041】
具体的には、算出部71aは、記憶部72に格納された測定データに基づいて、所定の時間経過後におけるレベル計60から原料充填層Aの上端までの距離の変化と、当該経過時間とを算出し、該距離の変化及び経過時間に基づいて、レベル計60から原料充填層Aの上端までの距離が変化する速度(沈降速度)を算出する。本実施形態において、算出部71aは、複数のレベル計60ごとに沈降速度を算出すると共に、複数のレベル計60の測定データより平均の沈降速度を算出する。そして、算出部71aにより算出された算出結果は、記憶部72に格納される。
【0042】
本実施形態において、「所定の時間」とは、レベル計60が測定をしてから次に測定を行うまでの時間であっても良いし、レベル計60が測定をしてから複数回測定を行った時点までの時間であっても良いし、予め規定された時間(例えば、数分間又は数時間)であっても良い。
【0043】
記憶部72に算出部71aの算出結果が格納されると、判断部71bが記憶部72に格納された算出部71aの算出結果を用いて、原料の焼成の条件を判断する。本実施形態においては、判断部71bは、記憶部72に格納されたレベル計60から原料充填層Aの上端までの距離が変化する速度(沈降速度)が、焼成品の生産量(原料投入量)から予め算出した沈降速度の適正な値(基準値)よりも速い場合には焼成が不足していると判断し、基準値よりも遅い場合には過剰な焼成を行っていると判断し、基準値である場合には適正な焼成を行っていると判断する。当該判断部71bによる判断結果は、記憶部72に格納されると共に、表示部73により表示画面上に表示される。なお、本実施形態において、上記基準値は、予め記憶部72に格納されている。
【0044】
本実施形態において、判断部71bは、算出部71aで算出した複数のレベル計60ごとの算出結果を用いて、及び算出部71aで算出した平均の沈降速度を用いて焼成の条件を判断する。判断部71bが算出部71aで算出した複数のレベル計60ごとの算出結果を用いて焼成の条件を判断する場合、算出部71aで算出した複数のレベル計60各々の沈降速度の偏差と基準値とに基づいて、焼成の条件を判断する。そして、判断部71bにより、焼成の不足や過剰な焼成をしていると判断され、周方向で原料充填層Aの沈降速度に差異(ズレ)が生じている場合には、沈降速度に差異が生じている原料充填層Aの近傍に位置する上部バーナ16a及び下部バーナ17aへ供給する燃料使用量等を調整しても良い。
【0045】
また、判断部71bが算出部71aで算出した算出部71aで算出した平均の沈降速度を用いて焼成の条件を判断する場合、平均の沈降速度と基準値とに基づいて、焼成の条件を判断する。そして、焼成の不足や過剰な焼成をしていると判断された場合、焼成品排出口18から排出される焼成品の排出量を少なく、又は多くなるように調整し、原料通路13内での原料の滞留時間を調整してもよい。
【0046】
また、判断部71bは、上記判断結果を用いて、原料通路13内の異常発生の恐れ(予兆)を検知する。本実施形態においては、判断部71bは、複数のレベル計60ごとの算出結果を用いて焼成の条件を判断し、焼成の不足や過剰な焼成をしていると判断した場合において、算出部71aで算出した複数のレベル計60各々の沈降速度の偏差が予め規定された第1の閾値以上である場合に、原料通路13内において異常発生の恐れ(予兆)があると判断する。当該判断部71bにより検知された異常発生予兆情報は記憶部72に格納される。本実施形態において、第1の閾値とは、上部バーナ16a及び下部バーナ17aへ供給する燃料使用量だけでは原料充填層Aの沈降速度を調整(焼成品の品質を調整)できないと判断する基準値であり、予め記憶部72に格納されている。
【0047】
そして、表示部73は、判断部71bが原料通路13内における異常発生の恐れ(予兆)を検知した場合に、記憶部72に格納された上記異常発生予兆情報に基づいて、原料通路13内において異常発生の恐れ(予兆)があることを表示する。また、当該表示に基づいて、自動的若しくは手動で生産量を下げて(原料投入量を少なくして)、原料充填層Aの沈降速度を調整(焼成品の品質を調整)してもよい。
【0048】
また、判断部71bは、上記判断結果を用いて、原料通路13内の異常を検知する。本実施形態においては、判断部71bは、複数のレベル計60ごとの算出結果を用いて焼成の条件を判断し、焼成の不足や過剰な焼成をしていると判断した場合において、算出部71aで算出した複数のレベル計60各々の沈降速度の偏差が予め規定された第2の閾値以上である場合には、上部バーナ16a及び下部バーナ17aへ供給する燃料使用量、生産量(原料投入量)での原料充填層Aの沈降速度の調整(焼成品の品質の調整)ができないため、判断の基となった測定データを送信したレベル計60を特定し、該当するレベル計60の下方位置において異常が発生したと判断する。当該判断部71bにより検知された異常発生情報は記憶部72に格納される。
【0049】
本実施形態において、第2の閾値とは、生産量を下げる(原料投入量を少なくする)だけでは、原料充填層Aの沈降速度を調整(焼成品の品質を調整)できないと判断する基準値であり、予め記憶部72に格納されている。また、第2の閾値の絶対値は、第1の閾値の絶対値よりも大きい値である。
【0050】
そして、表示部73は、判断部71bが原料通路13内の異常を検知した場合に、記憶部72に格納された上記異常発生情報に基づいて、原料通路13内に異常が発生したことを任意の表示方法により表示画面上に表示する。
【0051】
[変形例]
本発明に係る竪型焼成炉は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内において種々の改変を行なうことができる。
【0052】
例えば、上述した実施形態では、レベル計60は、原料充填層Aに向けて電磁波を照射し、該原料充填層Aの上端で反射した電磁波である反射波を受信して、該原料充填層Aの上端までの距離を連続的に測定するように構成されているものとして説明したが、これに限定されず、電磁波以外の他の方法により原料充填層Aの上端までの距離を測定する構成であっても良い。
【0053】
さらに、上述した実施形態では、竪型焼成炉1が算出部71a及び判断部71bを備えているものとして説明したが、これに限定されず、竪型焼成炉1が算出部71a及び判断部71bを備えない構成であっても良い。
【0054】
また、上述した実施形態では、判断部71bが原料の焼成の条件を判断すると共に、当該判断結果を用いて、原料通路13内の異常を検知するように構成されているものとして説明したが、これに限定されず、例えば、判断部71bとは別に原料通路13内の異常を検知する異常検知部を設ける構成であっても良い。
【0055】
さらに、上述した実施形態では、レベル計60は、炉頂10aの周方向に複数設けられているものとして説明したが、これに限定されず、例えば、レベル計60が炉頂10aに1つ設けられている構成であっても良い。
【0056】
また、上述した実施形態では、竪型焼成炉1は、判断部71bの判断結果を表示部73により表示し、判断部71bが原料通路13内の異常を検知した場合に、表示部73により原料通路13内に異常が発生したことを表示するように構成されているものとして説明したが、これに限定されず、例えば、上記表示を行うと共に、判断部71bの判断結果に基づいて、投入装置による原料投入速度及び原料投入量や、上部バーナ16a及び下部バーナ17aの燃焼火力、焼成品排出口18による焼成品の排出速度及び排出量を制御する構成を備えていても良い。
【0057】
また、判断部71bの判断結果に基づいて、投入装置が、レベル計60から原料充填層Aの上端までの距離が変化する速度が速い箇所に優先的に原料を投入し、原料充填層Aの上端までの距離が変化する速度が遅い箇所には投入する原料の量を少なくする構成を備えていても良いし、判断部71bの判断結果に基づいて、上部バーナ16a及び下部バーナ17aが、原料充填層Aの上端までの距離が変化する速度が速い箇所の燃焼火力を大きくし、原料充填層Aの上端までの距離が変化する速度が遅い箇所の燃焼火力を小さくする構成を備えていても良いし、判断部71bの判断結果に基づいて、焼成品排出口18が、原料充填層Aの上端までの距離が変化する速度が速い箇所の焼成品排出速度及び排出量を小さくし、原料充填層Aの上端までの距離が変化する速度が遅い箇所の焼成品排出速度及び排出量を大きくする構成を備えていても良い。
【0058】
さらに、本実施形態において、レベル計60は、原料通路13の上方に配置されているものとして説明したが、これに限定されず、例えば、レベル計60が外筒11の内面において、軸方向に等間隔に配置されている構成であっても良い。
【0059】
上記のような変形例が本発明の範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0060】
1 :竪型焼成炉
10 :炉体
10a :炉頂
10b :投入口
10c :上蓋
11 :外筒
12 :内筒
12a :上部流入口
12b :下部流入口
13 :原料通路
14 :上部連結部材
15 :下部連結部材
16 :上部燃焼室
16a :上部バーナ
17 :下部燃焼室
17a :下部バーナ
18 :焼成品排出口
20 :熱交換器
30 :ブロワ
40 :インジェクタ
50 :排気ファン
60 :レベル計
70 :制御装置
71 :制御部
71a :算出部
71b :判断部
72 :記憶部
73 :表示部
A :原料充填層
図1
図2
図3
図4
図5