(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】油中水型乳化日焼け止め化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20241203BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20241203BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20241203BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20241203BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20241203BHJP
A61K 8/40 20060101ALI20241203BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20241203BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20241203BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20241203BHJP
A61K 8/892 20060101ALI20241203BHJP
A61K 8/894 20060101ALI20241203BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20241203BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/06
A61K8/25
A61K8/36
A61K8/37
A61K8/40
A61K8/49
A61K8/60
A61K8/891
A61K8/892
A61K8/894
A61Q17/04
A61K8/86
(21)【出願番号】P 2022114478
(22)【出願日】2022-07-19
(62)【分割の表示】P 2020106940の分割
【原出願日】2015-10-30
【審査請求日】2022-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2014222962
(32)【優先日】2014-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2015201594
(32)【優先日】2015-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【氏名又は名称】内田 直人
(74)【代理人】
【識別番号】100137512
【氏名又は名称】奥原 康司
(72)【発明者】
【氏名】八巻 悟史
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一貴
(72)【発明者】
【氏名】松井 隆
(72)【発明者】
【氏名】西田 百合香
(72)【発明者】
【氏名】田代 麻友里
(72)【発明者】
【氏名】永禮 由布子
(72)【発明者】
【氏名】水谷 彩香
(72)【発明者】
【氏名】山口 和弘
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-088346(JP,A)
【文献】特開2011-153079(JP,A)
【文献】特開2004-083541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)6~40質量%の紫外線防御剤、
(B)有機変性粘土鉱物、
(C)
1~10質量%の前記(B)以外の油相増粘剤、及び
(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤を含有し、
前記(A)紫外線防御剤が紫外線吸収剤を含み、
[(B)成分と(C)成分との合計量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の質量比が0.04以上0.68未満であり、
前記(C)油相増粘剤が、デキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、
常温で固形の脂肪酸及びその塩から選択される少なくとも一種であり、
前記(E)不揮発性液状油分が、油性の紫外線吸収剤、炭化水素油、植物油、エステル油、及び高分子量のポリオキシアルキレングリコールから選択される少なくとも一種であり、
(G)ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンジアルキルエーテルを更に含有することを特徴とする、油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【請求項2】
(B)有機変性粘土鉱物が、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライトである、請求項1に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【請求項3】
(C)油相増粘剤が、2種以上配合される、請求項1に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【請求項4】
紫外線吸収剤の配合量が6質量%以上である、請求項1に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【請求項5】
(F)油溶性被膜剤を含有する、請求項1に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【請求項6】
[(F)成分の配合量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の質量比が0.01以上0.5未満である、請求項5に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油中水型乳化日焼け止め化粧料に関する。さらに詳しくは、水や汗等と接触することにより塗布直後よりも紫外線防御効果が向上するという従来にない特性を有し、なおかつ使用感に優れ、容易に洗浄することが可能な油中水型乳化日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線の害から皮膚を守ることはスキンケア、ボディケアにおける重要な課題の一つであり、紫外線が皮膚に与える悪影響を最小限に抑えるために種々のUVケア化粧料が開発されている。UVケア化粧料の1種である日焼け止め化粧料(サンスクリーン化粧料)は、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤を配合することによりUVA及びUVBの皮膚への到達を遮り、紫外線の害から皮膚を守る(非特許文献1)。最近では夏のプールや海での水浴や冬のスキーなどの野外活動における過酷な紫外線条件に限らず、日常生活においても紫外線から皮膚を守ることが重要であると考えられており、通常のスキンケア化粧品でも紫外線防御効果を有するものが望まれている。
【0003】
しかし、皮膚に塗布した日焼け止め化粧料が水や汗と接触すると、塗布した化粧料から紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が流出し、紫外線防御効果が低下することが避けられない。そこで、紫外線防御効果の低下を阻止するため、日焼け止め化粧料の耐水性や被膜強度を改善する等の様々な試みがなされてきた。
【0004】
例えば、特許文献1には、水膨潤性粘土鉱物、第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、水相、及び一般式RnSiO(4-n)/2で表される有機シリコーン樹脂を含有する油中水型乳化組成物が開示されており、有機シリコーン樹脂を配合することにより、耐水性、撥水性を改善し、紫外線吸収剤を皮膚上に長時間保持することが提案されている。
また、特許文献2には、紫外線防止剤、有機変性粘土鉱物、揮発性成分、球状樹脂粉末及び被膜剤を含有する油中水型乳化化粧料が開示されており、被膜剤を配合することにより、粉末のこすれ落ちや、衣服への二次付着を防止することが提案されている。
【0005】
しかし、皮膚に塗布した化粧料は、皮膚から分泌される汗や海水といった外部環境からの水分など、塗膜の内外から種々の水分に曝されるため、耐水性を付与するための樹脂や被膜剤を高配合しても、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤等の流出を完全に阻止することは難しかった。また、紫外線吸収剤等の流出を完全に阻止できた場合であっても、得られる紫外線防御効果は塗布直後を上回ることはないと考えられていた。
【0006】
シリコーン樹脂や被膜剤等を高配合すると、塗布した化粧料の被膜感が強くなり、使用性が損なわれるほか、適用時の伸びが悪く、通常の洗浄料や石鹸で簡単に落とすことができず、専用クレンジング剤を用いなければならないといった紫外線防御効果とは別の問題が生じる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平1-180237号公報
【文献】特開平8-217619号公報
【0008】
【文献】「新化粧品学」第2版、光井武夫編、2001年、南山堂発行、第497~504頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、強力な紫外線防御効果を持つ日焼け止め化粧料を開発する研究過程において、水や汗等との接触により、紫外線防御効果が低下せず、逆に効果が向上するという現象を見出したことに基づき、水分と接触することにより紫外線防御効果が向上するという従来にない革新的な特性を有する日焼け止め化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、有機変性粘土鉱物及び油相増粘剤を、シリコーン油を除く不揮発性液状油分に対して所定の質量比となるように配合することにより、前記目的とする新規な特性を有する日焼け止め化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、
(A)6~40質量%の紫外線防御剤、
(B)有機変性粘土鉱物、
(C)前記(B)以外の油相増粘剤、及び
(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤を含有し、
[(B)成分と(C)成分との合計量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の比率が0.04以上0.68未満である、油中水型乳化日焼け止め化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記構成とすることにより、水や汗等と接触した後の紫外線防御効果が、化粧料を肌に塗布した直後よりも顕著に向上する。即ち、本発明に係る油中水型乳化日焼け止め化粧料は、従来の日焼け止め化粧料において効果劣化の原因とされていた水分との接触により紫外線防御効果が向上するという、従来の常識とは正反対の特性を有する革新的な日焼け止め化粧料である。
【0013】
さらに、本発明の日焼け止め化粧料は、シリコーン樹脂や被膜剤等を高配合しなくても優れた紫外線防御効果を発揮するため、被膜感がなく、使用時(適用時)の伸びが良く、汎用の洗浄料や石鹸で簡単に落とすことも可能である。即ち、本発明は、特異な紫外線防御効果に加えて、使用性及び洗浄性にも優れた油中水型乳化日焼け止め化粧料を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記の通り、本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料は、(A)6~40質量%の紫外線防御剤、(B)有機変性粘土鉱物、(C)前記(B)以外の油相増粘剤、及び(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤を含有し、[(B)成分と(C)成分との合計量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の比率が0.04以上0.68未満であることを特徴としている。以下、本発明の日焼け止め化粧料を構成する各成分について詳述する。
【0015】
<(A)紫外線防御剤>
本発明に係る油中水型乳化日焼け止め化粧料に配合される(A)紫外線防御剤(以下、単に「(A)成分」と称する場合がある)は、紫外線吸収剤及び紫外線散乱剤から選択される少なくとも一種からなり、日焼け止め化粧料に通常配合されるものを使用することができる。
【0016】
本発明で用いられる紫外線吸収剤は、特に限定されるものではないが、具体例としては、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オクトクリレン、ジメチコジエチルベンザルマロネート、ポリシリコン-15、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルトリアゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、オキシベンゾン-3、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、ホモサレート、サリチル酸エチルへキシル等の有機紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0017】
本発明で用いられる紫外線散乱剤は、特に限定されるものではないが、具体例としては、微粒子状の金属酸化物、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄、酸化セリウム、酸化タングステン等を挙げることができる。
【0018】
紫外線散乱剤は、表面処理していないものでも各種疎水化表面処理したものでもよいが、疎水化表面処理をしたものが好ましく、疎水化表面処理剤としては、化粧料分野で汎用されているもの、例えば、ジメチコン、アルキル変性シリコーン等のシリコーン、オクチルトリエトキシシランなどのアルコキシシラン、パルミチン酸デキストリンなどのデキストリン脂肪酸エステル、ステアリン酸などの脂肪酸を用いることができる。これらの中で、オクチルトリエトキシシランなどのアルコキシシランで表面処理した紫外線散乱剤は、洗浄性が良好であるため特に好ましい。
【0019】
(A)成分の配合量は、油中水型乳化日焼け止め化粧料全量に対して6~40質量%、より好ましくは7~30質量%である。(A)成分の配合量が6質量%未満では十分な紫外線防御効果が得られにくく、40質量%を超えて配合しても配合量に見合った紫外線防御効果の増加を期待できず、安定性が悪くなるなどの点から好ましくない。
本発明における紫外線防御剤((A)成分)は、紫外線吸収剤及び紫外線散乱剤から選択される少なくとも一種であり、紫外線吸収剤のみからなる態様、紫外線散乱剤のみからなるからなる態様、及び紫外線吸収剤と紫外線散乱剤の両方を含む態様を包含する。
なお、前記の数値範囲は紫外線吸収剤と紫外線散乱剤との合計配合量を表すが、紫外線吸収剤の配合量を6質量%以上とするのが特に好ましい。
【0020】
<(B)有機変性粘土鉱物>
(B)有機変性粘土鉱物(以下、単に「(B)成分」と称する場合がある)は、三層構造を有するコロイド性含水ケイ酸アルミニウムの一種で、下記一般式(1)で表される粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で変性したものを使用することができる。
(X,Y)2―3(Si,Al)4O10(OH)2Z1/3・nH2O (1)
(但し、X=Al,Fe(III),Mn(III),Cr(III)、Y=Mg,Fe(II),Ni,Zn,Li、Z=K,Na,Ca)
【0021】
具体的にはモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト等の天然または合成(この場合、式中の(OH)基がフッ素で置換されたもの)のモンモリロナイト群(市販品ではビーガム、クニピア、ラポナイト等がある。)およびナトリウムシリシックマイカやナトリウムまたはリチウムテニオライトの名で知られる合成雲母(市販品ではダイモナイト:トピー工業(株)等がある。)等の粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で処理して得られる。
【0022】
ここで用いられる第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤は、下記一般式(2)で表されるものである。
【化1】
(式中、R
1は炭素数10~22のアルキル基またはベンジル基、R
2はメチル基または炭素数10~22のアルキル基、R
3およびR
4は炭素数1~3のアルキル基またはヒドロキシアルキル基、Xはハロゲン原子またはメチルサルフェート残基を表す。)
【0023】
かかる第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤としては、例えばドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、アラキルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルジメチルエチルアンモニウムクロリド、セチルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ステアリルジメチルエチルアンモニウムクロリド、アラキルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ベヘニルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ミリスチルジエチルメチルアンモニウムクロリド、セチルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ステアリルジエチルメチルアンモニウムクロリド、アラキルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルミリスチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルベヘニルアンモニウムクロリド、ベンジルメチルエチルセチルアンモニウムクロリド、ベンジルメチルエチルステアリルアンモニウムクロリド、ジベヘニルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、および相当するブロミド等、更にはジパルミチルプロピルエチルアンモニウムメチルサルフェート等が挙げられる。本発明の実施にあたっては、これらのうち一種または二種以上が任意に選択される。
【0024】
(B)成分の代表的なものとしては、ジメチルジステアルアンモニウムヘクトライト(ジステアルジモニウムヘクトライト)、ジメチルアルキルアンモニウムヘクトライト、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム処理ケイ酸アルミニウムマグネシウム等が挙げられる。なかでも、ジメチルジステアルアンモニウムヘクトライトが特に好ましい。市販品としては、ベントン27(ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロライド処理ヘクトライト:エレメンティスジャパン社製)およびベントン38(ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド処理ヘクトライト:エレメンティスジャパン社製)が好ましい。
【0025】
(B)成分の配合量は、油中水型乳化日焼け止め化粧料全量に対して、0.1~3質量%、さらに好ましくは0.2~2質量%、より好ましくは0.4~1質量%である。(B)成分の配合量が0.1質量%未満では十分な安定性が得られにくく、3質量%を超えて配合すると高粘度となり、肌上での伸びが重くなるなどの使用性の点で好ましくない。
【0026】
<(C)油相増粘剤>
(C)油相増粘剤(以下、単に「(C)成分」と称する場合がある)は、前記(B)成分以外に油相の粘度を調整することができるものであり、例えば、デキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、あるいは脂肪酸又はその塩等が好ましく、これらから選択される二種以上を配合するのが特に好ましい。
デキストリン脂肪酸エステルは、デキストリンまたは還元デキストリンと高級脂肪酸とのエステルであり、化粧料に一般的に使用されているものであれば特に制限されず使用することができる。デキストリンまたは還元デキストリンは平均糖重合度が3~100のものを用いるのが好ましい。また、デキストリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸としては、炭素数8~22の飽和脂肪酸を用いるのが好ましい。具体的には、パルミチン酸デキストリン、オレイン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、(パルミチン酸/2-エチルヘキサン酸)デキストリン等を挙げることができる。
【0027】
ショ糖脂肪酸エステルは、その脂肪酸が直鎖状あるいは分岐鎖状の、飽和あるいは不飽和の、炭素数12から22のものを好ましく用いることができる。具体的には、ショ糖カプリル酸エステル、ショ糖カプリン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル等を挙げることができる。
【0028】
脂肪酸は、常温で固形のものを使用することができ、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等を挙げることができる。また、脂肪酸の塩としては、これらのカルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩等を挙げることができる。
【0029】
(C)成分の配合量は、油中水型乳化日焼け止め化粧料全量に対して、0.1~15質量%、さらに好ましくは0.2~10質量%、より好ましくは0.4~8質量%である。(C)成分の配合量が0.1質量%未満では十分な安定性が得られにくく、15質量%を超えて配合すると高粘度となり、肌上での伸びが重くなるなどの使用性の点で好ましくない。
【0030】
<(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤>
(D)シリコーン系界面活性剤(以下、単に「(D)成分」と称する場合がある)は、シリコーン骨格(ポリシロキサン構造)を有し、HLBが8未満の界面活性剤であれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、及び/又はポリグリセリン・アルキル共変性シリコーンの使用が好ましく、なかでも、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、ポリオキシアルキレン・アルキル変性シリコーンがより好ましい。
本発明において用いられるポリオキシアルキレン変性シリコーンは、直鎖又は分岐鎖のオルガノポリシロキサンを主骨格として、側鎖にポリオキシアルキレン基を有するものであり、例えば、下記一般式(3)で示されるものが挙げられる。
【0031】
【化2】
一般式(3)において、Rは炭素数1~3のアルキル基又はフェニル基(好ましくはメチル基)、R’は水素又は炭素数1~12のアルキル基(好ましくは水素又はメチル基)、qは1~50(好ましくは3)、mは1~100、n、xはそれぞれ1~50、yは0~50である。ポリオキシアルキレン変性シリコーンの好適な例の一つとして、KF-6017(PEG-10ジメチコン、信越化学工業(株)社製)が挙げられる。
【0032】
また、上記式(3)において、オルガノポリシロキサン主骨格は、別のオルガノポリシロキサン鎖を側鎖に有していてもよい。このようなポリオキシアルキレン変性シリコーンの好適な例の一つとして、KF-6028(PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、信越化学工業(株)社製)が挙げられる。
【0033】
本発明において用いられるポリオキシアルキレン・アルキル変性シリコーンは、直鎖又は分岐鎖のオルガノポリシロキサンを主骨格として、側鎖にポリオキシアルキレン基と炭素数4以上のアルキル基とを有するものであり、例えば、下記一般式(4)で示されるものが挙げられる。
【0034】
【化3】
一般式(4)において、Rは炭素数1~3のアルキル基又はフェニル基(好ましくはメチル基)、R’は水素又は炭素数1~12のアルキル基(好ましくは水素)、pは6~30(好ましくは10~18、特に好ましくは12~16)、qは1~50(好ましくは3)、mは1~100、n、w、xはそれぞれ1~50、yは0~50である。ポリオキシアルキレン・アルキル共変性シリコーンの好適な例の一つとして、ABIL EM90(セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、Evonik Goldschmidt社製)が挙げられる。
【0035】
また、上記一般式(4)において、オルガノポリシロキサン主骨格は、別のオルガノポリシロキサン鎖を側鎖に有していてもよい。このようなポリオキシアルキレン・アルキル変性シリコーンの好適な例の一つとして、KF-6038(ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、信越シリコーン社製)が挙げられる。
【0036】
ポリグリセリン変性シリコーンとしては、例えば、下記式(5)で示される直鎖型のポリグリセリン変性シリコーン(=両末端シリコーン化ポリグリセリン)が挙げられる。
【化4】
[式中、R
1は炭素原子数1~12の直鎖または分岐鎖のアルキル基、若しくはフェニル基を示し、R
2は炭素原子数2~11のアルキレン基を示し、pは10~120であり、qは1~11である]。具体例としては、ビスブチルジメチコンポリグリセリル-3等が含まれる。
ポリグリセリン・アルキル共変性シリコーンは、直鎖又は分岐鎖のオルガノポリシロキサンを主骨格として、側鎖にポリグリセリン基と炭素数4以上のアルキル基とを有するものであり、KF-6105(ラウリルポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、信越化学工業(株)社製)が挙げられる。
【0037】
(D)成分の配合量は、油中水型乳化日焼け止め化粧料全量に対して、0.1~8質量%、さらに好ましくは0.2~7質量%、より好ましくは0.4~5質量%である。(D)成分の配合量が0.1質量%未満では十分な安定性が得られにくく、8質量%を超えて配合すると高粘度となり、肌上での伸びが重くなるなどの使用性の点で好ましくない。
【0038】
<(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分>
本発明の化粧料は油中水型乳化化粧料であり、外相(連続相)を構成する油分を必ず含有している。本発明における油分は不揮発性液状油分を含み、さらに揮発性油分を含んでいてもよい。
本明細書における「不揮発性液状油分」とは、常温(25℃)・常圧(1気圧(9.8×104Pa))で揮発性を示さず(例えば、常圧での沸点が約200℃以上の油分が含まれる)、常温・常圧で流動性を有し、固形でない液状の油分を意味し、シリコーン油及びシリコーン油以外の不揮発性油(炭化水素油、エステル油等)を包含する。
本発明においては、シリコーン油以外の不揮発性液状油分を成分(E)と呼ぶこととし、この成分(E)には、前記成分(A)に該当する油性の紫外線吸収剤も含まれる。従って、(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分が全て紫外線吸収剤からなる場合もある。
【0039】
成分(E)に含まれ、なおかつ紫外線吸収剤以外の不揮発性液状油分には、例えば、炭化水素油、植物油、エステル油、高分子量のポリオキシアルキレングリコールなどが含まれる。
具体例としては、アマニ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、キョウニン油、シナモン油、ホホバ油、ブドウ油、アルモンド油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマワリ油、小麦胚芽油、米胚芽油、米ヌカ油、綿実油、大豆油、落花生油、茶実油、月見草油、卵黄油、肝油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル等の液状油脂;オクタン酸セチル等のオクタン酸エステル、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット等のイソオクタン酸エステル、ラウリン酸ヘキシル等のラウリン酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル等のミリスチン酸エステル、パルミチン酸オクチル等のパルミチン酸エステル、ステアリン酸イソセチル等のステアリン酸エステル、イソステアリン酸イソプロピル等のイソステアリン酸エステル、イソパルミチン酸オクチル等のイソパルミチン酸エステル、オレイン酸イソデシル等のオレイン酸エステル、アジピン酸ジイソプロピル等のアジピン酸ジエステル、セバシン酸ジエチル等のセバシン酸ジエステル、リンゴ酸ジイソステアリル等のエステル油;流動パラフィン、スクワラン等の炭化水素油;ポリオキシブチレンポリオキシプロピレングリコール等が挙げられる。
【0040】
本発明の化粧料に配合される揮発性油分には、揮発性炭化水素油及び揮発性シリコーン油が含まれる。
揮発性炭化水素油分は、従来から化粧料等に使用されている常温(25℃)で揮発性を有する炭化水素油であれば特に限定されない。具体例としては、例えば、イソドデカン、イソヘキサデカン、水添ポリイソブテン等を挙げることができる。
【0041】
揮発性シリコーン油には、従来から化粧料等に使用されている常温で揮発性を有するシリコーン油、例えば、揮発性の直鎖状シリコーン油(揮発性ジメチコン)及び揮発性の環状シリコーン油(揮発性シクロメチコン)が含まれる。揮発性ジメチコンとしては、デカメチルテトラシロキサン等の低粘度ジメチルポリシロキサンを用いることができ、市販品としては、KF-96L-1.5cs、KF-96L-2cs(いずれも信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。揮発性シクロメチコンとしては、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)等が挙げられる。
【0042】
本発明の化粧料では、油分に揮発性油分、特に揮発性シリコーン油を配合するのが好ましい。揮発性油分の配合量は特に限定されないが、通常は1~40質量%程度である。
【0043】
<[(B)成分と(C)成分との合計量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の比率>
本発明に係る油中水型乳化日焼け止め化粧料では、油相の粘度調節に関わる前記(B)及び(C)成分の合計量が、(E)シリコーン油を除く不揮発性液状油分の合計量に対して、所定の比率を有することを必要とする。
即ち、[(B)及び(C)成分の合計量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の比率(以下、「油相増粘剤比率」と表記する場合がある)が、0.04以上0.68未満であることを必須とし、さらにこの比率が0.045以上0.5未満であることがより好ましい。当該比率が0.04未満又は0.68以上では、水分との接触による紫外線防御効果の向上が見られなくなる。
【0044】
<(F)油溶性被膜剤>
本発明では、上記(A)~(E)成分に加え、さらに、(F)油溶性被膜剤(以下、単に「(F)成分」と称する場合がある)を配合することができる。(F)成分を配合することにより、(A)紫外線防御剤の流出や衣服等によるこすれ落ちに対する抵抗性をさらに高めることができる。
【0045】
(F)成分としては、化粧料に通常用いられるものであれば特に制限されず、具体的には、ポリビニルピロリドン(PVP)、PVP/ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体、PVP/エイコセン共重合体、PVP/メタクリル酸エチル/メタクリル酸共重合体、PVP/ヘキサデセン共重合体、PVP/VA共重合体、PVP/ビニルアセテート/イタコン酸共重合体、スチレン/PVP共重合体等のPVP系被膜剤;アクリル酸エチル/アクリル酸アミド/アクリル酸共重合体、アクリル酸エチル/アクリル酸ブチル共重合体、アクリル酸エチル/メタクリル酸エチル共重合体、アクリル酸エチル/メタクリル酸共重合体、アクリル酸エチル/メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸オクチル/酢酸ビニル共重合体、アクリル酸オクチル/スチレン共重合体、アクリル酸ブチル/酢酸ビニル共重合体、アクリル酸ブチル/ヒドロキシメタクリル酸エチル共重合体、アクリル酸ブチル/メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸メトキシエチル/アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸ブチル共重合体、アクリル酸ラウリル/酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリスチレンアクリル酸樹脂等のアクリル酸系被膜剤;ポリ酢酸ビニル等の酢酸ビニル系被膜剤;ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸オクチル酸、ジエチル硫酸ビニルピロリドン/N,N’-ジメチルアミノメタクリル酸共重合体等のメタクリル酸系被膜剤;ビニルメチルエーテル/マレイン酸エチル共重合体、ビニルメチルエーテル/マレイン酸ブチル共重合体等のビニルメチルエーテル系皮被膜剤;スチレン/メチルスチレン/インデン共重合体等のスチレン系被膜剤;シクロヘキサン系アルキッド樹脂等のアルキッド樹脂系被膜剤;トリメチルシロキシケイ酸等のシリコーン樹脂系被膜剤等が挙げられる。これらの中でも、トリメチルシロキシケイ酸が耐水性及び耐油性の点から好ましい。
【0046】
(F)成分を配合する場合、その配合量は、[(F)成分の配合量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の比率(以下、「被膜剤比率」と表記する場合がある)を0.5未満とする量が好ましい。当該比率が0.5以上では、被膜感が強くなり、使用性や洗浄性が低下する傾向がある。また、被膜剤比率の下限は特に限定されないが、被膜剤の十分な配合効果を得るには0.01以上とするのが好ましい。
【0047】
<(G)ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンジアルキルエーテル>
本発明では、上記(A)~(F)成分に加え、さらに、(G)ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンジアルキルエーテル(以下において、単に「(G)成分」と称する場合がある)を配合することができる。
【0048】
(G)成分は、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンのランダムまたはブロック共重合体のジアルキルエーテルであり、具体的には、ポリオキシエチレン(14)ポリオキシプロピレン(7)ランダム共重合体ジメチルエーテルが挙げられる。(G)成分の配合量は、油中水型乳化日焼け止め化粧料全量に対して、0.001~5質量%とするのが好ましい。
【0049】
<(H)球状樹脂粉末>
本発明の化粧料に球状樹脂粉末(以下、単に「(H)成分」と称する場合がある)を配合すると、使用感を更に改善してさらさらとした良好な感触を得ることができる。
本発明に用いられる球状樹脂粉末は、一般に化粧品等において球状樹脂粉末として用いられ得るものであれば特に制限されることなく任意に使用し得る。例えば、(メタ)アクリル酸エステル樹脂粉末、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末、スチレンと(メタ)アクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン粉末、セルロース粉末、及びトリメチルシルセスキオキサン粉末等(以下、「球状有機樹脂粉末」と称する)、並びにオルガノポリシロキサンエラストマー球状粉末(メチルシロキサン網状重合体粉末を含む)、またはこれを母粉末とする複合球状粉末(以下、「球状シリコーン樹脂粉末」と称する)を挙げることができる。配合される球状樹脂粉末の粒径等は特に限定されるものでないが、例えば、粒径1~50μm程度のものが好適に用いられる。また、これらの樹脂粉末は疎水化処理されていてもよい。
【0050】
市販の球状有機樹脂粉末としては、例えば、ガンツパール(アイカ工業社製)が挙げられ、市販の球状シリコーン樹脂粉末としては、例えば、トレフィルE-505C、トレフィルE-506C、トレフィルE-506S、トレフィルHP40T(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、トスパール145A(東芝シリコーン社製)、シリコーンパウダーKSP-100、KSP-300(信越化学工業株式会社)等が挙げられる。
【0051】
本発明では、これら球状樹脂粉末の中から一種または二種以上を任意に選択して用いることができる。本発明の化粧料における(H)成分の配合量は特に限定されない。
【0052】
本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料には、上記必須成分以外に、化粧料に通常用いられる成分、例えば、美白剤、保湿剤、酸化防止剤、油性活性剤、界面活性剤、水相増粘剤、アルコール類、非球状粉末成分、色剤、水性活性剤等を必要に応じて適宜配合してよく、常法により製造することができる。
【0053】
本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料は、例えば日焼け止めクリーム、日焼け止め乳液、日焼け止めローションとして提供できるのみならず、日焼け止め効果を付与したファンデーション、化粧下地、メーキャップ化粧料、毛髪化粧料等としても使用できる。
【実施例】
【0054】
以下に具体例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例等における配合量は特に断らない限り質量%を示す。
【0055】
(実施例1~5及び比較例1~2)
下記の表1に掲げた組成を有する油中水型乳化日焼け止め化粧料を、油性成分を加温して溶解し粉末を分散させたものに、別途溶かした水相を添加し、攪拌処理にて乳化することにより調製した。
油相増粘剤比率=[(B)成分と(C)成分との合計量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の比率は、該当する成分の配合量から算出した。
【0056】
紫外線防御効果の測定
測定プレート(Sプレート)(5×5cmのV溝PMMA板、SPFMASTER-PA01)に各例の化粧料(サンプル)を2mg/cm2の量で滴下し、60秒間指で塗布し、15分間乾燥した後、その吸光度を株式会社日立製作所社製U-3500型自記録分光光度計にて測定した。紫外線吸収のないグリセリンをコントロールとし、吸光度(Abs)を以下の式で算出した。
Abs=-log(T/To)
T:サンプルの透過率、To:グリセリンの透過率
測定したプレートを硬度50~500の水に十分に浸し、30分間そのまま水中で撹拌した(3-1モーターで300rpm)。その後、表面の水滴がなくなるまで15~30分程度乾燥させ、再び吸光度を測定し、水浴前後のAbs積算値からAbs変化率(以下の式)を紫外線防御能向上効果として算出した。
紫外線防御能向上効果:
Abs変化率(%)=(水浴後のAbs積算値)/(水浴前のAbs積算値)×100
【0057】
本発明においては、前記Abs変化率が100(%)を超えた場合に、紫外線防御効果が向上したものと定義する。
【0058】
【0059】
表1に示されるように、(A)紫外線防御剤や(F)油溶性被膜剤の配合量がほぼ同一であっても、(B)成分、(C)成分、又は(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の配合量の相違により油相増粘剤比率が0.04未満となる場合(比較例1~4)には、水浴後に紫外線防御効果が低下した。これに対し、油相増粘剤比率が0.04以上0.68未満の範囲内である場合(実施例1~9)には、水浴後の紫外線防御効果が水浴前と比べて最大で約28%も増加した(実施例1)。
【0060】
(実施例10及び比較例5)
下記の表2に掲げた組成を有する油中水型乳化日焼け止め化粧料を調製し、上記と同様に水浴前後の吸光度変化率を求めた。
被膜剤比率=[(F)成分の合計量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の比率は、該当する成分の配合量から算出した。
【0061】
【0062】
表2に示されるように、不揮発性液状油分の配合量の相違により油相増粘剤比率が0.68以上である比較例5では、水浴後に紫外線防御効果が低下した。これに対し、当該比率が本発明の範囲内である実施例10では、水浴後の紫外線防御効果が水浴前よりも向上した。また、比較例5は、被膜剤比率が0.5以上であるため、塗布したときに被膜感があり、洗浄性にも劣っていた。
【0063】
(実施例11~18及び比較例6)
下記の表3及び表4に掲げた組成を有する油中水型乳化日焼け止め化粧料を調製し、上記と同様に水浴前後の吸光度変化率を求めた。
【表3】
【0064】
【0065】
表3及び表4に示されるように、油相増粘剤((C)成分)の種類を変更しても、水浴後に水浴前よりも高い紫外線防御効果が達成された(実施例11~18)。一方、(C)成分を配合しない場合には水浴後に紫外線防御効果が低下した(比較例6)。
【0066】
(実施例19~23及び比較例7~12)
下記の表5及び表6に掲げた組成を有する油中水型乳化日焼け止め化粧料を調製し、上記と同様に水浴前後の吸光度変化率を求めた。
【0067】
【0068】
【0069】
表5及び表6に示されるように、シリコーン系界面活性剤以外の界面活性剤を用いた場合(比較例7、10~12)や、HLBが8以上のシリコーン系界面活性剤を用いた場合(比較例8及び9)には、水浴後に紫外線防御効果が低下した。これに対し、HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤を用いた場合には、水浴後の紫外線防御効果が水浴前よりも向上した。
【0070】
(実施例24~27)
下記の表7に掲げた組成を有する油中水型乳化日焼け止め化粧料を調製し、上記と同様に水浴前後の吸光度変化率を求めた。
【0071】
【0072】
表7に示されるように、(C)成分及び(E)成分の配合量を変更しても、油相増粘剤比率が本発明の範囲である場合には、水浴後の紫外線防御効果が水浴前よりも向上した。これらの例では被膜剤比率も0.5未満であるため、使用性及び洗浄性にも優れていた。
【0073】
(実施例28)
下記の表8に掲げた組成を有する油中水型乳化日焼け止め化粧料を調製し、上記と同様に水浴前後の吸光度変化率を求めた。
【0074】
【0075】
表8に示されるように、(A)紫外線防御剤が紫外線散乱剤のみからなる(有機紫外線吸収剤を含まない)場合であっても、水浴後の紫外線防御効果が水浴前よりも向上するという本発明特有の効果が得られた。
【0076】
以下に、本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料の処方例を挙げる。本発明はこれらの処方例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。なお、配合量は全て油中水型乳化日焼け止め化粧料全量に対する質量%で表す。
【0077】
処方例1.日焼け止めクリーム
(成分名) 配合量(%)
精製水 残部
エタノール 8
キシリトール 1
グリセリン 2
1,3-ブチレングリコール 5
ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 3
3-(10-カルボキシデシル)-1,1,1,3,5,5,5-ヘプタ
メチルトリシロキサン 1
テトライソブタン 6
軽質イソパラフィン 4
メチルポリシロキサン 6
ミリスチン酸イソプロピル 5
トリメチルシロキシケイ酸 3
パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 7
オクトクリレン 3
ジメチルジステアルアンモニウムヘクトライト 2
ステアリン酸 1
パルミチン酸デキストリン 2
ポリオキシエチレン(14)ポリオキシプロピレン(7)ジメチルエーテル
0.5
酸化亜鉛 20
酸化チタン 2
ポリメタクリル酸メチル 5
メチルシロキサン網状重合体 2
タルク 1
無水ケイ酸 1
エデト酸三ナトリウム 適量
フェノキシエタノール 適量
香料 適量
【0078】
処方例2.日焼け止め乳液
(成分名) 配合量(%)
精製水 残部
エタノール 5
グリセリン 1
1,3-ブチレングリコール 5
ポリオキシエチレンメチルグルコシド 2
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 2.5
テトライソブタン 5
軽質イソパラフィン 5
メチルポリシロキサン 5
2-エチルヘキサン酸セチル 1
イソステアリン酸 1
ミリスチン酸イソプロピル 8
トリメチルシロキシケイ酸 4
パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 5
オクトクリレン 5
ジメチルジステアルアンモニウムヘクトライト 0.2
ステアリン酸 0.3
パルミチン酸デキストリン 0.4
ポリオキシエチレン(14)ポリオキシプロピレン(7)ジメチルエーテル
0.3
酸化亜鉛 20
酸化チタン 2
ポリメタクリル酸メチル 4
エデト酸三ナトリウム 適量
フェノキシエタノール 適量
香料 適量
【0079】
処方例3.日焼け止め乳液
(成分名) 配合量(%)
イオン交換水 残部
エタノール 5
グリセリン 2
1,3-ブチレングリコール 5
キシリトール 1
ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 3
テトライソブタン 5
軽質イソパラフィン 5
メチルポリシロキサン 3
トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 5
セバシン酸ジイソプロピル 10
ポリオキシブチレンポリオキシプロピレングリコール 2
トリメチルシロキシケイ酸 3
オクトクリレン 5
2,4-ビス-[{4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ}-フェニル]
-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン 1
4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン 2
オキシベンゾン 2
パルミチン酸デキストリン 0.2
ショ糖脂肪酸エステル 1
ステアリン酸 0.1
ポリオキシエチレン(14)ポリオキシプロピレン(7)ジメチルエーテル
0.2
ジメチルジステアルアンモニウムヘクトライト 1
酸化チタン 6
メチルシロキサン網状重合体 6
エデト酸2ナトリウム 適量
フェノキシエタノール 適量
香料 適量
【0080】
処方例4.日焼け止め乳液
(成分名) 配合量(%)
イオン交換水 残部
エタノール 10
PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1.5
ステアリン酸 0.3
ジメチルジステアルアンモニウムヘクトライト 0.5
パルミチン酸デキストリン 2
ドデカメチルシクロヘキサシロキサン 10
軽質流動イソパラフィン 10
メチルポリシロキサン 5
セバシン酸ジイソプロピル 1
ポリオキシブチレンポリオキシプロピレングリコール 1
ミリスチン酸イソプロピル 5
イソステアリン酸 0.7
トリメチルシロキシケイ酸 3
パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 8
オクトクリレン 2
2,4-ビス-[{4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ}-フェニル]
-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン 2
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 1
酸化亜鉛 11
酸化チタン 2
ポリメタクリル酸メチル 5
架橋型シリコーン・網状型シリコーンブロック共重合体 5
エデト酸3ナトリウム 適量
香料 適量
【0081】
処方例5.W/O 化粧下地
(成分名) 配合量(%)
ジメチコン 残部
水 24
エタノール 10
酸化亜鉛 10
セバシン酸ジイソプロピル 5
イソドデカン 4
ポリメタクリル酸メチル 4
(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー
3
カプリリルメチコン 3
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 3
タルク 3
酸化チタン 1.5
トリフルオロアルキルジメチルトリメチルシロキシケイ酸 1.2
PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1
グリセリン 1
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン
0.5
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 0.5
パルミチン酸デキストリン 0.5
イソステアリン酸 0.5
エデト酸三ナトリウム 適量
ジブチルヒドロキシトルエン 適量
トコフェロール 適量
酸化鉄 適量
【0082】
本発明は以下の態様を含む。
(第1項)
(A)6~40質量%の紫外線防御剤、
(B)有機変性粘土鉱物、
(C)前記(B)以外の油相増粘剤、及び
(D)HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤を含有し、
[(B)成分と(C)成分との合計量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の質量比が0.04以上0.68未満である、油中水型乳化日焼け止め化粧料。
(第2項)
(C)油相増粘剤が、デキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、及び脂肪酸又はその塩である、第1項に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
(第3項)
(B)有機変性粘土鉱物が、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライトである、第1項又は第2項に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
(第4項)
(C)油相増粘剤が、2種以上配合される、第1項から第3項のいずれか一項に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
(第5項)
紫外線吸収剤の配合量が6質量%以上である、第1項から第4項のいずれか一項に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
(第6項)
(A)紫外線防御剤が紫外線散乱剤のみからなる、第1項から第4項のいずれか一項に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
(第7項)
(F)油溶性被膜剤を含有する、第1項から第6項のいずれか一項に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
(第8項)
[(F)成分の配合量]/[(E)シリコーン油以外の不揮発性液状油分の合計量]の質量比率が0.01以上0.5未満である、第7項に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
(第9項)
(G)ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンジアルキルエーテルを含有する、第1項から第8項のいずれか一項に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。