(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
H01R13/52 B
(21)【出願番号】P 2022145836
(22)【出願日】2022-09-14
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】山梨 大介
(72)【発明者】
【氏名】曽根 隆
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-054929(JP,A)
【文献】登録実用新案第3015382(JP,U)
【文献】特開2002-122109(JP,A)
【文献】特開2012-252858(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0226415(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0146072(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/533
F16B 23/00-43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手方端子金具に対して物理的且つ電気的に接続させる端子金具と、
前記端子金具を収容し、かつ、相手方嵌合部に嵌合接続させた状態で金属製の相手方壁体の壁面から突出部を飛び出させるハウジングと、
前記ハウジングの前記突出部に外から被せたシールド本体、及び、前記相手方壁体の前記壁面に接触させ且つ前記相手方壁体の雌螺子部と同軸上のボルト挿通孔が形成された固定部を有するシールドシェルと、
前記ボルト挿通孔に挿通させ且つ前記雌螺子部に螺合させて前記固定部を前記相手方壁体に螺子止め固定する金属製のボルトと、
前記ボルトの頭部に被せるボルトキャップと、
を備え、
前記ボルトキャップは、前記頭部に被せて当該頭部を隠すキャップ本体と、前記固定部の保持孔に入口から差し込んで前記保持孔に密着させ且つ保持させる保持体と、前記キャップ本体及び前記保持体を連結させる連結体と、を
有し、
前記保持体は、前記保持孔の前記入口から先端を差し込んで前記保持孔に挿通させる挿通部を有し、
前記固定部には、前記保持孔の出口から抜け出た前記挿通部の前記先端を嵌合接続状態で前記相手方壁体の前記壁面に当接させないために、前記壁面と前記出口との間で前記先端を収める凹部を設けることを特徴としたコネクタ。
【請求項2】
前記保持体は、前記保持孔の内周面に1周に亘って密着させるリップ部を有することを特徴とした請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記保持孔の前記入口には、その周縁を1周に亘って面取り加工した面取り部を設け、
前記挿通部の前記先端は、先を尖らせた錐形状に形成されることを特徴とした請求項1又は2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記保持体は
、前記挿通部の前記先端に設け、かつ、先を尖らせた傘形状に形成された係止
部を有し、
前記係止部は、前記保持孔の出口を抜け出たその先で、前記固定部における前記出口側の壁面に係止させることを特徴とした請求項1又は2に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記ボルトキャップは、前記固定部の前記入口側の外壁における前記入口の周縁部に密着させ、かつ、前記入口を覆い隠す被覆部を有することを特徴とした請求項1又は2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタは、合成樹脂製のハウジング内の端子金具や電線に対する外部ノイズの侵入を抑えるために、そのハウジングに対して外から被せた金属製のシールドシェルを備えている。このコネクタにおいては、そのシールドシェルを相手方の金属製の筐体等に金属製のボルトで螺子止め固定することによって、その筐体等を介してシールドシェルに乗った外部ノイズを逃がす。このコネクタは、そのような螺子止め構造を採っているので、ボルトの頭部が外に飛び出ている。このため、従来のコネクタには、その頭部に被せて、この頭部への被水を抑えるボルトキャップが設けられている。例えば、下記の特許文献1から6に記載コネクタには、ボルトの頭部に被せるキャップ本体と、そのボルトで共締めされる共締め部と、を有するボルトキャップが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-207385号公報
【文献】特開2013-54929号公報
【文献】特開2014-93289号公報
【文献】特開2015-17625号公報
【文献】特開2015-18615号公報
【文献】特開2019-96472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コネクタにおいては、シールドシェルとボルトの座面との間にボルトキャップの共締め部が介在することによって、ボルトの軸力が低下し、これら3者の間に水が浸入してしまう虞がある。そして、その水は、シールドシェルのボルト挿通用の貫通孔に入り込み、相手方に流れてしまう可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、防水性の低下を抑え得るボルトキャップを備えたコネクタを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、相手方端子金具に対して物理的且つ電気的に接続させる端子金具と、前記端子金具を収容し、かつ、相手方嵌合部に嵌合接続させた状態で金属製の相手方壁体の壁面から突出部を飛び出させるハウジングと、前記ハウジングの前記突出部に外から被せたシールド本体、及び、前記相手方壁体の前記壁面に接触させ且つ前記相手方壁体の雌螺子部と同軸上のボルト挿通孔が形成された固定部を有するシールドシェルと、前記ボルト挿通孔に挿通させ且つ前記雌螺子部に螺合させて前記固定部を前記相手方壁体に螺子止め固定する金属製のボルトと、前記ボルトの頭部に被せるボルトキャップと、を備え、前記ボルトキャップは、前記頭部に被せて当該頭部を隠すキャップ本体と、前記固定部の保持孔に入口から差し込んで前記保持孔に密着させ且つ保持させる保持体と、前記キャップ本体及び前記保持体を連結させる連結体と、を有し、前記保持体は、前記保持孔の前記入口から先端を差し込んで前記保持孔に挿通させる挿通部を有し、前記固定部には、前記保持孔の出口から抜け出た前記挿通部の前記先端を嵌合接続状態で前記相手方壁体の前記壁面に当接させないために、前記壁面と前記出口との間で前記先端を収める凹部を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るコネクタは、ボルトキャップによってボルトの頭部への被水を抑えることができるので、その頭部の耐久性を向上させることができる。そして、このコネクタは、保持体を固定部の保持孔に密着状態で挿通させることによって、その保持孔の内周面に保持体を保持させ、かつ、この内周面と保持体との間の隙間を塞いで防水性の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態のコネクタを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態のコネクタを相手方コネクタと共に別角度から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態のコネクタを示す平面図である。
【
図6】
図6は、実施形態のボルトキャップを示す斜視図である。
【
図7】
図7は、
図3のX2-X2線断面に相当する部分拡大図であり、ボルトキャップを組み付ける前の状態を表している。
【
図8】
図8は、
図3のX2-X2線断面に相当する部分拡大図であり、ボルトキャップの頭部への嵌め込み前の状態を表している。
【
図9】
図9は、変形例のコネクタを示す斜視図である。
【
図10】
図10は、変形例のコネクタを別角度から見た斜視図である。
【
図12】
図12は、変形例のボルトキャップを示す斜視図である。
【
図13】
図13は、
図9のX2-X2線断面に相当する部分拡大図であり、ボルトキャップを組み付ける前の状態を表している。
【
図14】
図14は、
図9のX2-X2線断面に相当する部分拡大図であり、ボルトキャップの頭部への嵌め込み前の状態を表している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係るコネクタの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
[実施形態]
本発明に係るコネクタの実施形態の1つを
図1から
図8に基づいて説明する。
【0011】
図1から
図5の符号1は、本実施形態のコネクタを示す。このコネクタ1は、電線Weの端末に取り付けられ、この電線Weの先の機器(図示略)に対して電気接続される。そして、このコネクタ1は、相手方機器500の相手方端子金具510(
図2)に電気接続させることによって、この相手方機器500と電線Weの先の機器との間を電気接続させる。例えば、ここでは、電線Weの先の機器が車両のインバータであり、相手方機器500が車両の回転機である。
【0012】
このコネクタ1は、端子金具10とハウジング20とシールドシェル30とを備える(
図3及び
図4)。
【0013】
端子金具10は、金属等の導電性材料で成形される。例えば、この端子金具10は、母材となる金属板に対する折曲げ加工や切断加工等のプレス成形によって所定形状に成形される。この端子金具10は、電線Weに対して電気接続させるべく、この電線Weの端末に取り付けられる。また、この端子金具10は、相手方端子金具510に対して物理的且つ電気的に接続させる。よって、この端子金具10は、相手方端子金具510の相手方端子接続部511に対して物理的且つ電気的に接続させる端子接続部11と、電線Weの端末に対して物理的且つ電気的に接続させる電線接続部12と、を有する(
図4)。
【0014】
端子接続部11は、例えば、相手方端子金具510の相手方端子接続部511との間で嵌合接続させるものであってもよく、その相手方端子接続部511との間で螺子止め固定させるものであってもよい。本実施形態の端子接続部11は、ハウジング20への端子挿入方向に沿う嵌合接続方向で相手方端子接続部511に対して嵌合接続させるものとして形成される。よって、端子接続部11と相手方端子接続部511は、その内の一方が雌端子形状に形成され、その内の他方が雄端子形状に形成される。
【0015】
ここで示す端子接続部11は、相手方端子接続部511をハウジング20からの端子抜去方向に差し込ませる筒状の雌端子形状に形成されている。この端子接続部11は、例えば、角筒状又は円筒状に形成される。ここでは、端子接続部11が角筒状に形成されている。よって、ここで示す相手方端子接続部511は、片体状(所謂雄タブ状)の雄端子形状に形成されている(
図2)。
【0016】
電線接続部12は、電線Weの端末の芯線に対して、例えば、圧着又は溶着させることによって、この電線Weに対して物理的且つ電気的に接続させる。ここで示す電線接続部12は、2枚のバレル片を剥き出しの芯線に加締め接続させることによって、その芯線に圧着させている。
【0017】
この例示の端子金具10は、その端子接続部11と電線接続部12を直線上に配置したストレート形状のものとして成形されている。よって、電線Weは、その直線に沿う端子金具10の延在方向に電線接続部12から引き出される。但し、この端子金具10は、端子接続部11と電線接続部12を直交配置させるなど、これらを交差させて配置したものであってもよい。
【0018】
ここで示すコネクタ1は、その対になる端子金具10と電線Weの組み合わせを3組備えている。
【0019】
ハウジング20は、合成樹脂等の絶縁性材料で成形される。このハウジング20は、端子金具10と電線Weを内方に収容させる。そして、このハウジング20においては、その端子金具10が収容状態のまま保持され、かつ、その電線Weが内方から外方に引き出される。
【0020】
このハウジング20には、端子金具10を内方の端子収容室20aに収容させる端子収容部21が端子金具10毎に設けられている(
図1、
図3及び
図4)。この端子収容部21は、角筒状に形成されており、その内方の端子収容室20aに角筒状の端子接続部11が収容される。そして、この端子収容部21においては、筒軸方向における一方の開口から相手方端子接続部511が端子収容室20aに挿入され、その端子収容室20aの中で相手方端子接続部511が端子接続部11に差し込まれる。
【0021】
このハウジング20は、そのそれぞれの端子収容部21を外方から間隔を空けて覆う筒状のフード部22を有する(
図1から
図5)。ここで示すフード部22は、長円筒状に形成されている。ハウジング20においては、そのフード部22とそれぞれの端子収容部21との間の長円環状の隙間に相手方ハウジング520の長円筒状の相手方端子収容部521(
図2)が嵌入され、これと共に、その相手方端子収容部521の内方のそれぞれの相手方端子接続部511が各々の端子収容室20aに挿入される。よって、このハウジング20においては、そのフード部22とそれぞれの端子収容部21とが嵌合部となり、この嵌合部を相手方嵌合部としての相手方端子収容部521に嵌合接続させる。
【0022】
ここで、相手方ハウジング520は、相手方機器500の金属製の筐体500aに固定され、この筐体500aにおける相手方壁体500a
1の長円形の貫通孔500bの中に配置される(
図2)。このコネクタ1においては、その貫通孔500bの挿入口500b
1からハウジング20のフード部22が差し込まれていく。ハウジング20には、その貫通孔500bの中で挿入口500b
1側に位置する長円形の外周面に長円筒状のシール部材51が組み付けられている(
図1から
図5)。このシール部材51は、そのハウジング20の長円形の外周面と筐体500aの貫通孔500bの内周面との間の長円筒状の隙間の一部を埋める防水部材である。
【0023】
このハウジング20は、そのフード部22とシール部材51を貫通孔500bの中に収めた状態(つまり、相手方嵌合部としての相手方端子収容部521に嵌合部としてのフード部22及びそれぞれの端子収容部21を嵌合接続させた状態(以下、「嵌合接続状態」という。))で相手方壁体500a
1の挿入口500b
1側の壁面500a
11から飛び出させる突出部23を有する(
図4及び
図5)。その突出部23には、ハウジング20の電線収容部24が含まれている。
【0024】
この電線収容部24は、ハウジング20にて電線Weを内方に収容させ且つ外方に引き出させる円筒状の部位であり、電線We毎に設けられている。この電線収容部24の内方には、その内周面と電線Weの外周面との間の円筒状の隙間の一部を埋める円筒状のシール部材52が組み付けられている(
図4)。電線Weの端末に取り付けられた端子金具10は、その電線収容部24の電線引出口24aから端子収容室20aまで挿入されていく。このコネクタ1は、そのそれぞれの電線収容部24の電線引出口24aと電線Weとの間の隙間に嵌め込ませるリヤホルダ60を備えている(
図1、
図2、
図4及び
図5)。
【0025】
シールドシェル30は、そのハウジング20の突出部23を外方から覆うことによって、それぞれの電線収容部24の内方の電線Weに対する外部からのノイズの侵入を抑える。よって、このシールドシェル30は、金属材料(例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金)で成形されている。
【0026】
このシールドシェル30は、ハウジング20の突出部23に外から被せた長円筒状のシールド本体31を有する(
図1から
図5)。ハウジング20には、その突出部23におけるそれぞれの電線収容部24よりもフード部22側の長円形の外周面に長円環状のシール部材53が組み付けられている(
図4及び
図5)。このシール部材53は、そのハウジング20の長円形の外周面とシールドシェル30のシールド本体31の内周面との間の長円筒状の隙間の一部を埋める防水部材である。
【0027】
このシールドシェル30は、シールド本体31における筒軸方向の一端に設け、かつ、嵌合接続状態で相手方壁体500a
1の挿入口500b
1側の壁面500a
11に接触させる長円環状のフランジ部32を有する(
図1から
図5)。そして、このシールドシェル30は、そのフランジ部32から突出させ、かつ、嵌合接続状態で相手方壁体500a
1の挿入口500b
1側の壁面500a
11に接触させる固定部33を有する(
図1から
図5)。その固定部33には、嵌合接続状態で相手方壁体500a
1の雌螺子部500cと同軸上に配置させる貫通孔(以下、「ボルト挿通孔」という。)33aが形成されている(
図4)。
【0028】
コネクタ1は、そのボルト挿通孔33aに挿通させ且つ雌螺子部500cに螺合させて固定部33を相手方壁体500a
1に螺子止め固定する金属製のボルト70を備える(
図1から
図5)。このボルト70は、ボルト挿通孔33aに挿通させ且つ嵌合接続状態で雌螺子部500cに螺合させる雄螺子部71と、その螺合に際しての軸周りのトルクを工具(図示略)から受ける頭部72と、を有する(
図4及び
図5)。コネクタ1は、雄螺子部71をボルト挿通孔33aに挿通させた状態で、固定部33に対してボルト70を軸周りに回転自在に保持させるスナップリング75を備える(
図1及び
図3から
図5)。
【0029】
ここで、このコネクタ1においては、ボルト70の頭部72が外に飛び出ており、設置場所如何で、その頭部72に水等の液体が付着する可能性がある。そこで、このコネクタ1は、その頭部72に被せるボルトキャップ80を備えている(
図1から
図8)。このボルトキャップ80は、合成ゴム等の柔軟性を持った材料で成形される。尚、
図7及び
図8では、説明の便宜上、ボルトキャップ80を断面図として表していない。
【0030】
ボルトキャップ80は、頭部72に被せて当該頭部72を隠すキャップ本体81と、固定部33の貫通孔(以下、「保持孔」という。)33bに入口33b
1から差し込んで当該保持孔33bに密着させ且つ保持させる保持体82と、このキャップ本体81及び保持体82を連結させる連結体83と、を有する(
図1から
図8)。
【0031】
キャップ本体81は、一端を閉塞させ且つ他端を開口させた筒形状に形成され、その開口からボルト70の頭部72を差し込む。このキャップ本体81は、その頭部72に応じた筒形状に形成される。ここで示すキャップ本体81は、六角ボルトの頭部72の形状に合わせて、一端を閉塞させた円筒形状に形成されている。そして、ここで示すキャップ本体81は、開口側の円環状の端面を頭部72の円環状の座部72aに密着させ、この端面と座部72aとの間からの液体の浸入を抑止する(
図4及び
図5)。
ている。
【0032】
保持体82と連結体83は、キャップ本体81の外周面から突出させ且つ延在させた折り曲げ可能な軸状に形成される。ここで示す保持体82は、保持孔33bの入口33b
1から先端82a
1を差し込んで保持孔33bに挿通させる挿通部82aを有している(
図5から
図8)。ここでは、その挿通部82aと連結体83が円柱軸として形成されている。
【0033】
保持体82は、固定部33の円柱状の保持孔33bに密着状態で挿通させることによって、その保持孔33bの内周面に保持させ、かつ、この内周面との間の隙間を塞いで防水性を高める。よって、この保持体82は、保持孔33bの内周面に1周に亘って密着させる。そこで、この保持体82は、挿通部82aの外周面に同心上に配置され、かつ、保持孔33bの内周面に1周に亘って密着させるリップ部82bを有している(
図6及び
図7)。ここで示すリップ部82bは、円環状に形成され、挿通部82aの軸線方向に沿って間隔を空けて複数配置されている。
【0034】
保持体82は、そのリップ部82bを用いて、固定部33の保持孔33bに保持される。そして、この保持体82は、そのリップ部82bを用いて、挿通部82aの外周面と保持孔33bの内周面との間の円環状の隙間を塞ぎ、その間の液体の行き来を抑止する。
【0035】
このボルトキャップ80は、入口33b
1から挿通部82aの先端82a
1を保持孔33bに差し込んでいく。そこで、ここでは、次のようにして、保持孔33bに対する挿通部82aの差込作業性を向上させる。先ず、保持孔33bの入口33b
1には、その周縁を1周に亘って面取り加工した面取り部33b
2を設ける(
図5及び
図7)。次に、挿通部82aの先端82a
1は、先を尖らせた錐形状に形成される。つまり、ここで示す保持孔33bの入口33b
1は、外側が大径の円錐台形状に形成されている。そして、ここで示す挿通部82aの先端82a
1は、円錐形状に形成されている。これにより、ボルトキャップ80は、保持孔33bに対する挿通部82aの差込作業性を向上させることができる。
【0036】
また、このボルトキャップ80は、入口33b
1から挿通部82aの先端82a
1を保持孔33bに差し込み、その先端82a
1を保持孔33bの出口33b
3から飛び出させることによって、その保持孔33bに保持体82を挿通させる(
図5、
図7及び
図8)。そこで、固定部33には、保持孔33bの出口33b
3から抜け出た挿通部82aの先端82a
1を嵌合接続状態で相手方壁体500a
1の挿入口500b
1側の壁面500a
11に当接させないために、その壁面500a
11と出口33b
3との間で先端82a
1を収める凹部33cを設けている(
図5、
図7及び
図8)。この凹部33cは、固定部33における壁面500a
11側の壁面を凹ませた部位であり、この中に保持孔33bの出口33b
3を配置している。その出口33b
3は、嵌合接続状態のときに壁面500a
11から間隔を空けた位置で、かつ、抜け出た先端82a
1を嵌合接続状態で壁面500a
11に接触させない位置に配置する。これにより、ボルトキャップ80においては、その壁面500a
11から保持体82に対する入口33b
1側に向けた荷重の印加を抑止することができるので、この保持体82による保持孔33bでの保持機能を維持することができる。
【0037】
また、このボルトキャップ80は、嵌合接続状態でボルト70の螺合作業を終えた後に、連結体83を折り曲げながら、キャップ本体81をボルト70の頭部72に被せる。
【0038】
以上示したように、本実施形態のコネクタ1は、そのボルトキャップ80によってボルト70の頭部72への被水を抑えることができるので、その頭部72の耐久性を向上させることができる。そして、このコネクタ1は、保持体82を固定部33の保持孔33bに密着状態で挿通させることによって、その保持孔33bの内周面に保持体82を保持させ、かつ、この内周面と保持体82との間の隙間を塞いで防水性の低下を抑えることができる。また、このコネクタ1は、保持体82を保持孔33bへと挿通させる際に、保持孔33bの入口33b1の面取り部33b2と挿通部82aの先端82a1の錐形状が拾いになって、保持体82の保持孔33bへの差込作業性を向上させることができる。また、このコネクタ1は、ボルトキャップ80でボルト70の頭部72を覆っているので、見栄えの向上に寄与するものとなる。また、このコネクタ1は、キャップ本体81をボルト70の頭部72に被せるだけであり、ボルトキャップ80を具備するに際して、ボルト70にボルトキャップ80用の特別な形状を設けなくてよいので、汎用性のある規格品のボルト70を使用することができる。
【0039】
[変形例]
本変形例のコネクタ2は、前述した実施形態のコネクタ1において、そのシールドシェル30とボルトキャップ80を下記のシールドシェル130とボルトキャップ180に置き換えたものである(
図9から
図14)。このため、以下においては、実施形態に対して変更の無い部品や部位、実施形態と同等のものとして捉えることが可能な部品や部位等について、その符号を必要に応じて踏襲して、ここでの説明を省略すると共に、必要に応じて符号の図示を省略する。
【0040】
本変形例のシールドシェル130は、前述した実施形態のシールドシェル30において、固定部33を下記の固定部133に変えたものに相当する(
図9から
図11、
図13及び
図14)。本変形例の固定部133は、前述した実施形態の固定部33と同様のボルト挿通孔33aと保持孔133bと凹部133cを有する(
図11、
図13及び
図14)。その保持孔133bは、前述した実施形態の保持孔33bと同様の入口133b
1の面取り部133b
2を有している(
図11及び
図13)。
【0041】
一方、本変形例の固定部133は、前述した実施形態の固定部33とは異なり、ボルトキャップ180における下記の被覆部184の環状の端部184aが隙間を抑えて環状に面接触されるザグリ部133dを有している(
図10、
図11、
図13及び
図14)。
【0042】
ここで、本変形例のボルトキャップ180は、前述した実施形態のボルトキャップ80と同様のキャップ本体181と保持体182と連結体183を有する(
図11から
図14)。そして、その保持体182は、前述した実施形態の保持体82と同様の挿通部182aとリップ部182bを有している(
図12及び
図13)。
【0043】
一方、本変形例のボルトキャップ180は、前述した実施形態のボルトキャップ80とは異なり、固定部133の入口133b
1側の外壁133eにおける入口133b
1の周縁部に密着させ、かつ、その入口133b
1を覆い隠す被覆部184を有している(
図10から
図14)。この被覆部184は、その入口133b
1への液体の浸入を抑止するために設けられたものであり、挿通部182a及び連結体183と同軸の円錐台の傘形状に形成される。この被覆部184は、保持体182と連結体183との境界部分に配置される。この被覆部184は、その下底側の環状の端部184aを固定部133の外壁133eにおける入口133b
1の周縁部に密着させることによって、その周縁部から入口133b
1への液体の浸入を抑止する(
図11及び
図14)。ここでは、その周縁部をザグリ部133dの底面に設ける。
【0044】
ザグリ部133dは、固定部133における入口133b1側の外壁133eに対して保持孔133bと同軸上で円形にザグリ加工を施した凹部であり、その底面に保持孔133bの入口133b1が配置される。このザグリ部133dは、その底面の表面粗さが固定部133の外壁133eにおける壁面の表面粗さよりも小さく仕上げられている。これにより、被覆部184の環状の端部184aは、ザグリ部133dの底面に対して隙間を抑えて環状に面接触させることができる。よって、このコネクタ2においては、ザグリ部133dの底面と被覆部184の環状の端部184aとの間で隙間の発生が抑えられるので、その間の防水性を向上させることができる。
【0045】
また、本変形例のボルトキャップ180は、次の点でも前述した実施形態のボルトキャップ80とは異なる。本変形例の保持体182は、挿通部182aの先端182a
1に設け、かつ、先を尖らせた傘形状に形成された係止部182cを有している(
図11から
図14)。この係止部182cは、保持孔133bの出口133b
3を抜け出たその先で、固定部133における出口133b
3側の壁面に係止させる。ここで示す係止部182cは、挿通部182aと同軸の円錐の傘形状に形成され、その底部側の環状の端部182c
1を固定部133における出口133b
3側の壁面で且つ当該出口133b
3の周縁部に係止させる(
図11及び
図14)。本変形例のボルトキャップ180は、この係止部182cによって、固定部133に対する保持力を向上させることができる。
【0046】
ここで、その係止部182cは、前述した実施形態の挿通部82aの先端82a1と同じように、先を尖らせた円錐形状になっている。このため、本変形例のボルトキャップ180は、前述した実施形態のボルトキャップ80と同じように、保持孔133bの入口133b1の面取り部133b2と係止部182cの錐形状が拾いになって、保持孔133bに対する挿通部182aの差込作業性を向上させることができる。
【0047】
以上示したように、本変形例のコネクタ2は、実施形態のコネクタ1と同様の効果を奏するものとなっている。そして、本変形例のコネクタ2は、ボルトキャップ180の被覆部184によって、実施形態のコネクタ1以上の防水性を確保することができ、かつ、係止部182cによって、実施形態のコネクタ1以上のボルトキャップ180の保持力を確保することができる。
【符号の説明】
【0048】
1,2 コネクタ
10 端子金具
20 ハウジング
23 突出部
30,130 シールドシェル
31 シールド本体
33,133 固定部
33a,133a ボルト挿通孔
33b,133b 保持孔
33b1,133b1 入口
33b2,133b2 面取り部
33b3,133b3 出口
70 ボルト
72 頭部
80,180 ボルトキャップ
81,181 キャップ本体
82,182 保持体
82a,182a 挿通部
82a1,182a1 先端
82b,182b リップ部
83,183 連結体
133e 外壁
182c 係止部
184 被覆部
500c 雌螺子部
500a1 相手方壁体
500a11 壁面
510 相手方端子金具
521 相手方端子収容部(相手方嵌合部)