(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】治療のためのベンズアミド共結晶
(51)【国際特許分類】
C07D 403/14 20060101AFI20241203BHJP
A61K 31/497 20060101ALI20241203BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20241203BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241203BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20241203BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20241203BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20241203BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20241203BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20241203BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20241203BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20241203BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20241203BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241203BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241203BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20241203BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241203BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20241203BHJP
C07C 57/145 20060101ALI20241203BHJP
C07C 57/15 20060101ALI20241203BHJP
C07C 59/255 20060101ALI20241203BHJP
C07C 65/05 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
C07D403/14 CSP
A61K31/497
A61P1/04
A61P1/16
A61P1/18
A61P5/14
A61P9/00
A61P9/10 101
A61P11/00
A61P13/12
A61P17/06
A61P19/02
A61P25/00
A61P27/02
A61P27/16
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P37/06
C07C57/145
C07C57/15
C07C59/255
C07C65/05
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022176753
(22)【出願日】2022-11-02
【審査請求日】2024-03-22
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522431209
【氏名又は名称】コンジット ユーケイ マネージメント リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アレックス エーベルリン
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー フランプトン
(72)【発明者】
【氏名】ジョアン ホランド
【審査官】藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/007041(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/092386(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/135355(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/007758(WO,A2)
【文献】特表2016-536134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 403/14
A61K 31/497
A61P 1/04
A61P 1/16
A61P 1/18
A61P 5/14
A61P 9/00
A61P 9/10
A61P 11/00
A61P 13/12
A61P 17/06
A61P 19/02
A61P 25/00
A61P 27/02
A61P 27/16
A61P 29/00
A61P 37/06
C07C 57/145
C07C 57/15
C07C 59/255
C07C 65/05
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1:1 ベンズアミドフマル酸共結晶
であって、以下の少なくとも1つを特徴とする
、ベンズアミド共結晶:
292(4)Kの温度における三斜晶P1結晶系空間群;
単位格子寸法a=9.8435(3)Å、b=11.4054(3)Å、c=15.0743(6)Å、α=95.605(3)°、β=108.628(3)°、及びγ=113.219(3)°;
6.4、8.7、14.4、15.9、22.2及び27.3°2θ±0.2°2θから選択される少なくとも3つのピークを有する、1.54184ÅのCu Kα放射線波長におけるX線粉末回折パターン;又は
下図と同じである、1.54184ÅのCu Kα放射線波長におけるX線粉末回折パターン
、
[
図1]
ただし、前記ベンズアミドは3-{[5-(アゼチジン-1-イルカルボニル)ピラジン-2-イル]オキシ}-5-{[(1S)-1-メチル-2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-N-(5-メチルピラジン-2-イル)ベンズアミドである。
【請求項2】
1:1 ベンズアミドマレイン酸共結晶
であって、以下の少なくとも1つを特徴とする
、ベンズアミド共結晶:
292(2)Kの温度における三斜晶P1結晶系空間群;
単位格子寸法a=7.8811(2)Å、b=9.6568(2)Å、c=19.2761(4)Å、α=97.4767(17)°、β=97.5064(18)°、及びγ=96.242(2)°;
4.7、9.3、12.2、12.8、14.5及び15.6°2θ±0.2°2θから選択される少なくとも3つのピークを有する、1.54184ÅのCu Kα放射線波長におけるX線粉末回折パターン;又は
下図と同じである、1.54184ÅのCu Kα放射線波長におけるX線粉末回折パターン
、
[
図7]
ただし、前記ベンズアミドは3-{[5-(アゼチジン-1-イルカルボニル)ピラジン-2-イル]オキシ}-5-{[(1S)-1-メチル-2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-N-(5-メチルピラジン-2-イル)ベンズアミドである。
【請求項3】
1:1 ベンズアミドマロン酸共結晶
であって、以下の少なくとも1つを特徴とする
、ベンズアミド共結晶:
6.3、8.7、9.7、11.1、12.6及び13.4°2θ±0.2°2θから選択される少なくとも3つのピークを有する、1.54184ÅのCu Kα放射線波長におけるX線粉末回折パターン;又は
下図と同じである、1.54184ÅのCu Kα放射線波長におけるX線粉末回折パターン。
[
図13]
ただし、前記ベンズアミドは3-{[5-(アゼチジン-1-イルカルボニル)ピラジン-2-イル]オキシ}-5-{[(1S)-1-メチル-2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-N-(5-メチルピラジン-2-イル)ベンズアミドである。
【請求項4】
1:1 ベンズアミドL-酒石酸水和物共結晶
であって、以下の少なくとも1つを特徴とする
、ベンズアミド共結晶:
3.5、5.4、14.8、16.5、18.6及び19.3°2θ±0.2°2θから選択される少なくとも3つのピークを有する、1.54184ÅのCu Kα放射線波長におけるX線粉末回折パターン;又は
下図と同じである、1.54184ÅのCu Kα放射線波長におけるX線粉末回折パターン
、
[
図16]
ただし、前記ベンズアミドは3-{[5-(アゼチジン-1-イルカルボニル)ピラジン-2-イル]オキシ}-5-{[(1S)-1-メチル-2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-N-(5-メチルピラジン-2-イル)ベンズアミドである。
【請求項5】
1:1 ベンズアミドゲンチジン酸共結晶
であって、
以下の少なくとも1つを特徴とする
、ベンズアミド共結晶:
9.1、9.9、12.2、12.8、18.4及び19.7°2θ±0.2°2θから選択される少なくとも3つのピークを有する、1.54184ÅのCu Kα放射線波長におけるX線粉末回折パターン;又は
下図と同じである、1.54184ÅのCu Kα放射線波長におけるX線粉末回折パターン
、
[
図20]
ただし、前記ベンズアミドは3-{[5-(アゼチジン-1-イルカルボニル)ピラジン-2-イル]オキシ}-5-{[(1S)-1-メチル-2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-N-(5-メチルピラジン-2-イル)ベンズアミドである。
【請求項6】
治療有効量の請求項1~
5のいずれかに記載のベンズアミド共結晶及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項7】
医薬組成物が、固体投与形態又は溶液である、請求項
6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
ベンズアミド共結晶の治療有効量が、100mg~1000mgである、請求項
6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
医薬組成物が局所製剤である、請求項
6に記載の医薬組成物。
【請求項10】
吸入可能な製剤である、請求項
6に記載の医薬組成物。
【請求項11】
医薬組成物が注射可能な製剤である、請求項
6に記載の医薬組成物。
【請求項12】
以下の工程を含む、液体医薬組成物を調製する方法:
請求項1~
5のいずれかに記載のベンズアミド共結晶を薬学的に許容される溶媒に溶解すること。
【請求項13】
以下の工程を含む、グルコキナーゼを介して媒介される、疾患、障害又は状態を処置又は予防する方法に用いるための、請求項1~
5のいずれかに記載のベンズアミド共結晶を含む医薬組成物:
治療有効量の請求項1~
5のいずれかに記載のベンズアミド共結晶を、それを必要とする対象に投与すること。
【請求項14】
以下の工程を含む、グルコキナーゼを介して媒介される、疾患、障害又は状態を処置又は予防する方法に用いるための、請求項
6に記載の医薬組成物を含む医薬:
治療有効量の請求項
6に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与すること。
【請求項15】
以下の工程を含む、T細胞媒介性の、自己免疫疾患、障害、又は状態を処置又は予防する方法に用いるための、請求項1~
5のいずれかに記載のベンズアミド共結晶を含む医薬組成物:
治療有効量の請求項1~
5のいずれかに記載のベンズアミド共結晶を、それを必要とする対象に投与すること。
【請求項16】
以下の工程を含む、T細胞媒介性の、自己免疫疾患、障害、又は状態を処置又は予防する方法に用いるための、請求項
6に記載の医薬組成物を含む医薬:
治療有効量の請求項
6に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与すること。
【請求項17】
T細胞媒介性の、自己免疫疾患、障害、又は状態が、以下から選択される、請求項
15に記載の医薬組成物:
ブドウ膜炎、橋本甲状腺炎、乾癬、動脈硬化症、自己免疫性アジソン病、自己免疫性肝炎、自己免疫性心筋炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、セリアック病、クローン病、円板状ループス、特発性肺線維症、過敏性腸症候群、ループス腎炎、自己免疫性メニエール病、多発性硬化症、乾癬性関節炎、関節リウマチ、サルコイドーシス、全身性ループス、潰瘍性大腸炎、及び甲状腺炎。
【請求項18】
T細胞媒介性の、自己免疫疾患、障害、又は状態が、以下から選択される、請求項
16に記載の医薬:
ブドウ膜炎、橋本甲状腺炎、乾癬、動脈硬化症、自己免疫性アジソン病、自己免疫性肝炎、自己免疫性心筋炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、セリアック病、クローン病、円板状ループス、特発性肺線維症、過敏性腸症候群、ループス腎炎、自己免疫性メニエール病、多発性硬化症、乾癬性関節炎、関節リウマチ、サルコイドーシス、全身性ループス、潰瘍性大腸炎、及び甲状腺炎。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年9月2日に出願された米国仮出願第63/239,979号を基礎とする優先権を主張するものであり、同出願の開示は、参照を介して本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、ベンズアミド化合物に関し、具体的には3-{[5-(アゼチジン-1-イルカルボニル)ピラジン-2-イル]オキシ}-5-{[(1S)-1-メチル-2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-N-(5-メチルピラジン-2-イル)ベンズアミドの共結晶、ベンズアミド共結晶の治療的使用、及びそれらを含む医薬組成物に関する。本発明のベンズアミド共結晶は、1:1 ベンズアミドフマル酸(共結晶1)、1:1 ベンズアミドマレイン酸(共結晶2)、1:1 ベンズアミドマロン酸(共結晶3)、1:1 ベンズアミドL-酒石酸水和物(共結晶4)、及び1:1 ベンズアミドゲンチジン酸(共結晶5)を含み、1:1 ベンズアミドゲンチジン酸形態1(共結晶5A)、1:1 ベンズアミドゲンチジン酸形態2(共結晶5B)、1:1 ベンズアミドゲンチジン酸形態3(共結晶5C)、及び1:1 ベンズアミドゲンチジン酸形態4(共結晶5D)を含む。
【背景技術】
【0003】
下記され、国際公開第2007/007041号公報に開示されるベンズアミド化合物の3-{[5-(アゼチジン-1-イルカルボニル)ピラジン-2-イル]オキシ}-5-{[(1S)-1-メチル-2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-N-(5-メチルピラジン-2-イル)ベンズアミドは、グルコキナーゼ(GLK又はGK)の活性化剤であり、それ自体が、グルコキナーゼを介して媒介される疾患又は病状の処置又は予防に有用である。ベンズアミド化合物の3-{[5-(アゼチジン-1-イルカルボニル)ピラジン-2-イル]オキシ}-5-{[(1S)-1-メチル-2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-N-(5-メチルピラジン-2-イル)ベンズアミドは、より一般的にAZD1656と呼ばれる。本開示の目的のため、及び理解を容易にするために、「ベンズアミド」又は「ベンズアミド化合物」ならびに「AZD1656」の語は、3-{[5-(アゼチジン-1-イルカルボニル)ピラジン-2-イル]オキシ}-5-{[(1S)-1-メチル-2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-N-(5-メチルピラジン-2-イル)ベンズアミドを示すものとする。
【化1】
3-{[5-(アゼチジン-1-イルカルボニル)ピラジン-2-イル]オキシ}-5-{[(1S)-1-メチル-2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-N-(5-メチルピラジン-2-イル)ベンズアミド
【0004】
国際公開第2007/007041号公報は、ベンズアミド化合物の2つの多形結晶形態(形態1及び形態2)及び二水和物結晶形態(形態3)を開示している。ベンズアミド化合物のさらなる3つの多形結晶形態は、国際公開第2010/092386号公報(形態4、形態5及び形態6)に開示されている。形態6は、製剤開発のために選択された形態であり、これまでに臨床試験において用いられたベンズアミド化合物は、すべて当該形態である。原薬の異なる多形体は、融点、見かけの溶解度、溶解速度(dissolution rate)、機械的特性、蒸気圧、及び密度を含む異なる化学的特性及び物理的特性を有し得ることが知られている。これらの特性は、製剤の製造ならびにその安定性、溶解及びバイオアベイラビリティに直接影響を及ぼす。したがって、多型は、製剤の品質、安全性及び有効性に影響を及ぼし得る。原薬が複数の多形形態で存在する性質(ability)は、問題となりえることがあるし、薬物製造中又は保存中の製剤自体の中においても多形形態の移行が生じ得る。
【0005】
国際公開第2012/007758号公報は、3-{[5-(アゼチジン-1-イルカルボニル)ピラジン-2-イル]オキシ}-5-{[(1S)-1-メチル-2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-N-(5-メチルピラジン-2-イル)ベンズアミドの粒径を減少させて、薬物の十分な分解の挙動を確実にする方法を開示している。ステンレス鋼又は窒化チタンに対する強い固有の凝集及び/又は顕著な接着性を有する特定の化合物の微粒子化中に、材料が粉砕装置の表面に蓄積することが分かった。国際公開第2012/007758号公報のp.1、l.20-22を参照されたい。これは、材料の損失、不均質な生成物、プロセスの速度及び効率の低下、処理時間及びコストの増加、ならびに厳しい場合には商業規模での実施阻止をもたらす。同文献p.1、l.22-26。国際公開第2012/007758号公報は、3-{[5-(アゼチジン-1-イルカルボニル)ピラジン-2-イル]オキシ}-5-{[(1S)-1-メチル-2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-N-(5-メチルピラジン-2-イル)ベンズアミドを、場合により界面活性剤の存在下で、ラクトース又はマンニトールなどの1つ以上の共粉砕賦形剤と共に粉砕することによって、この問題を解決する。同文献p.2、l.13-20。共粉砕賦形剤を必要とすることにより、単一錠剤中の3-{[5-(アゼチジン-1-イルカルボニル)ピラジン-2-イル]オキシ}-5-{[(1S)-1-メチル-2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-N-(5-メチルピラジン-2-イル)ベンズアミドの量に限界がある現在の錠剤製剤が得られ得る。これは、高い錠数負担(pill burden)又は静脈内、吸入などの送達方法には不適切な製剤をもたらす可能性がある。したがって、すべての固有の固体形態は、粒径の縮小が必要とされない十分な溶解速度を潜在的に有するとともに、異なる凝集/接着特性を有するため、新しい固体形態が依然として必要とされている。
【0006】
APIの共結晶を形成することにより、特定の医薬品有効成分(API)のより望ましい特性を達成することが可能であり得る。APIの共結晶は、API及びコフォーマー(coformer)の別個の結晶性化学組成物であり、一般に、API及びコフォーマーの結晶学的特性及び分光学的特性と個別に比較した場合に、別個の結晶学的特性及び分光学的特性を有する。結晶形態の結晶学的特性及び分光学的特性は、典型的には、数ある技術の中でとりわけ、X線粉末回折(XRPD)及び単結晶X線結晶学によって測定される。共結晶は異なる熱挙動を示すことも多い。熱挙動は、実験室において、毛細管融点、熱重量分析(TGA)及び示差走査熱量測定(DSC)などの技術によって測定される。共結晶は、多くの場合、APIの既知の形態又は製剤よりも好ましい固体状態、物理的、化学的、医薬的及び/又は薬理学的特性を有するか、又は処理が容易である。例えば、共結晶は、APIとは異なる分解特性及び/又は溶解度特性(solubility properties)を有し、したがって治療送達においてより効果的であり得る。共結晶の形成は、薬物の多形形成を回避する方法として用いることができる。したがって、所与のAPIの共結晶を含む新しい医薬組成物は、その既存の製剤と比較して異なる又は優れた特性を有し得る。
【0007】
中性の正味電荷を有するが電荷平衡成分で構成される塩とは異なり、共結晶は中性種で構成される。したがって、塩とは異なり、電荷バランスに基づいて共結晶の化学量論を決定することはできない。実際、多くの場合、1:1より大きい又は1:1より小さい薬物対コフォーマーの化学量論比を有する共結晶を得ることができる。コフォーマーに対するAPIの化学量論比は、一般に予測不可能な共結晶の特徴である。
【0008】
開示された発明を特定の定義に限定するものではないが、用語定義が異なる場合があるため、「共結晶」の語は、中性分子で構成された多成分結晶と考えることができる。これらの多成分アセンブリは、物理化学的特性を変化させるそれらの能力について、特に製薬分野内で、刺激し、有用性を見出し続けている。より具体的には、共結晶は、融点、水溶性及び/又は溶解速度を変化させ、安定性を高め、医薬品有効成分のバイオアベイラビリティを改善することが報告されている。
【0009】
本発明は、ベンズアミド化合物に関し、具体的には3-{[5-(アゼチジン-1-イルカルボニル)ピラジン-2-イル]オキシ}-5-{[(1S)-1-メチル-2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-N-(5-メチルピラジン-2-イル)ベンズアミドの新規な共結晶に関する。ここで、「ベンズアミド」又は「ベンズアミド化合物」とは、3-{[5-(アゼチジン-1-イルカルボニル)ピラジン-2-イル]オキシ}-5-{[(1S)-1-メチル-2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-N-(5-メチルピラジン-2-イル)ベンズアミドを指す。
【0010】
本発明のベンズアミド共結晶は、とくに、1:1 ベンズアミドフマル酸(共結晶1)、1:1 ベンズアミドマレイン酸(共結晶2)、1:1 ベンズアミドマロン酸(共結晶3)、1:1 ベンズアミドL-酒石酸水和物(共結晶4)、及び1:1 ベンズアミドゲンチジン酸(共結晶5)を含み、1:1 ベンズアミドゲンチジン酸形態1(共結晶5A)、1:1 ベンズアミドゲンチジン酸形態2(共結晶5B)、1:1 ベンズアミドゲンチジン酸形態3(共結晶5C)、及び1:1 ベンズアミドゲンチジン酸形態4(共結晶5D)を含む。
【0011】
本発明はまた、本発明のベンズアミド共結晶及び薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物に関する。本発明のベンズアミド共結晶は、ベンズアミド化合物と同様に用いることができる。ベンズアミド化合物は、グルコキナーゼ(GLK又はGK)の活性化剤であり、それ自体がグルコキナーゼを介して媒介される疾患又は病状の処置又は予防に有用である。本発明のベンズアミド共結晶自体は、そのような特性に関連する疾患、障害及び状態の処置に有用であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】1:1 ベンズアミドフマル酸共結晶(共結晶1)のXRPDダイアグラムを示す。
【0013】
【
図2】292 Kでの1:1 ベンズアミドフマル酸共結晶(共結晶1)のORTEP図を示す。
【0014】
【
図3】292 Kでの1:1 ベンズアミドフマル酸共結晶(共結晶1)の算出されたXRPDパターンを示す。
【0015】
【
図4】1:1 ベンズアミドフマル酸共結晶(共結晶1)のDSCトレースを示す。
【0016】
【
図5】1:1 ベンズアミドフマル酸共結晶(共結晶1)のTGAトレースを示す。
【0017】
【
図6】1:1 ベンズアミドフマル酸共結晶(共結晶1)の
1H NMRスペクトルを示す。
【0018】
【
図7】1:1 ベンズアミドマレイン酸共結晶(共結晶2)のXRPDダイアグラムを示す。
【0019】
【
図8】292 Kでの1:1 ベンズアミドマレイン酸共結晶(共結晶2)のORTEP図を示す。
【0020】
【
図9】292 Kでの1:1 ベンズアミドマレイン酸共結晶(共結晶2)の算出されたXRPDパターンを示す。
【0021】
【
図10】1:1 ベンズアミドマレイン酸共結晶(共結晶2)のDSCトレースを示す。
【0022】
【
図11】1:1 ベンズアミドマレイン酸共結晶(共結晶2)のTGAトレースを示す。
【0023】
【
図12】1:1 ベンズアミドマレイン酸共結晶(共結晶2)の
1H NMRスペクトルを示す。
【0024】
【
図13】1:1 ベンズアミドマロン酸共結晶(共結晶3)のXRPDダイアグラムを示す。
【0025】
【
図14】1:1 ベンズアミドマロン酸共結晶(共結晶3)のDSCトレースを示す。
【0026】
【
図15】1:1 ベンズアミドマロン酸共結晶(共結晶3)の
1H NMRスペクトルを示す。
【0027】
【
図16】1:1 ベンズアミドL-酒石酸水和物共結晶(共結晶4)のXRPDダイアグラムを示す。
【0028】
【
図17】1:1 ベンズアミドL-酒石酸水和物共結晶(共結晶4)のDSCダイアグラムを示す。
【0029】
【
図18】1:1 ベンズアミドL-酒石酸水和物共結晶(共結晶4)のTGAダイアグラムを示す。
【0030】
【
図19】1:1 ベンズアミドL-酒石酸水和物共結晶(共結晶4)の
1H NMRスペクトルを示す。
【0031】
【
図20】1:1 ベンズアミドゲンチジン酸共結晶形態1(共結晶5A)のXRPDダイアグラムを示す。
【0032】
【
図21】1:1 ベンズアミドゲンチジン酸共結晶形態1(共結晶5A)のDSCトレースを示す。
【0033】
【
図22】1:1 ベンズアミドゲンチジン酸共結晶形態1(共結晶5A)のTGAトレースを示す。
【0034】
【
図23】1:1 ベンズアミドゲンチジン酸共結晶形態1(共結晶5A)の
1H NMRスペクトルを示す。
【0035】
【
図24】1:1 ベンズアミドゲンチジン酸共結晶形態2(共結晶5B)のXRPDダイアグラムを示す。
【0036】
【
図25】1:1 ベンズアミドゲンチジン酸共結晶形態2(共結晶5B)のDSCトレースを示す。
【0037】
【
図26】1:1 ベンズアミドゲンチジン酸共結晶形態2(共結晶5B)の
1H NMRスペクトルを示す。
【0038】
【
図27】1:1 ベンズアミドゲンチジン酸共結晶形態3(共結晶5C)のXRPDダイアグラムを示す。
【0039】
【
図28】1:1 ベンズアミドゲンチジン酸共結晶形態3(共結晶5C)のDSCトレースを示す。
【0040】
【
図29】1:1 ベンズアミドゲンチジン酸共結晶形態3(共結晶5C)の
1H NMRスペクトルを示す。
【0041】
【
図30】1:1 ベンズアミドゲンチジン酸共結晶形態4(共結晶5D)のXRPDダイアグラムを示す。
【0042】
【
図31】1:1 ベンズアミドゲンチジン酸共結晶形態4(共結晶5D)のDSCトレースを示す。
【0043】
【
図32】1:1 ベンズアミドゲンチジン酸共結晶形態4(共結晶5D)の
1H NMRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、ベンズアミド化合物に関し、具体的には、3-{[5-(アゼチジン-1-イルカルボニル)ピラジン-2-イル]オキシ}-5-{[(1S)-1-メチル-2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-N-(5-メチルピラジン-2-イル)ベンズアミドの新規な共結晶に関する。上述のとおり、「ベンズアミド」又は「ベンズアミド化合物」ならびに「AZD1656」とは、3-{[5-(アゼチジン-1-イルカルボニル)ピラジン-2-イル]オキシ}-5-{[(1S)-1-メチル-2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-N-(5-メチルピラジン-2-イル)ベンズアミドを指す。
【0045】
本発明のベンズアミド共結晶は、とくに、1:1 ベンズアミドフマル酸(共結晶1)、1:1 ベンズアミドマレイン酸(共結晶2)、1:1 ベンズアミドマロン酸(共結晶3)、1:1 ベンズアミドL-酒石酸水和物(共結晶4)、及び1:1 ベンズアミドゲンチジン酸(共結晶5)を含み、1:1 ベンズアミドゲンチジン酸形態1(共結晶5A)、1:1 ベンズアミドゲンチジン酸形態2(共結晶5B)、1:1 ベンズアミドゲンチジン酸形態3(共結晶5C)、及び1:1 ベンズアミドゲンチジン酸形態4(共結晶5D)を含む。
【0046】
本発明のベンズアミド共結晶、それらの調製及び特徴付けは、以下の例により説明され、図に示される。本発明は、治療有効量の本発明のベンズアミド共結晶及び薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物に関する。本発明はまた、本明細書に記載の疾患、障害及び状態の治療方法、ならびにその処置のための治療有効量の本発明のベンズアミド共結晶又はそれを含有する医薬組成物の使用に関する。本発明はさらに、本明細書に記載の疾患、障害及び状態の治療に用いるための医薬品の製造における本発明のベンズアミド共結晶の使用を提供する。
【0047】
本発明のベンズアミド共結晶の治療的使用
【0048】
上述のように、ベンズアミド化合物AZD1656は、グルコキナーゼ(GSK又はGL)を介して媒介される様々な疾患、障害及び状態の処置又は予防に有用であることは本技術分野において公知である。本発明のベンズアミド共結晶、1:1 ベンズアミドフマル酸(共結晶1)、1:1 ベンズアミドマレイン酸(共結晶2)、1:1 ベンズアミドマロン酸(共結晶3)、1:1 ベンズアミドL-酒石酸水和物(共結晶4)、及び1:1 ベンズアミドゲンチジン酸(共結晶5)を含み、1:1 ベンズアミドゲンチジン酸形態1(共結晶5A)、1:1 ベンズアミドゲンチジン酸形態2(共結晶5B)、1:1 ベンズアミドゲンチジン酸形態3(共結晶5C)、及び1:1 ベンズアミドゲンチジン酸形態4(共結晶5D)、及びそれらを含有する医薬組成物もまた、そのような疾患、障害及び状態を処置するために用いることができる。
【0049】
このように本発明は、グルコキナーゼ(GSK又はGL)を介して媒介される疾患、障害又は状態を処置する方法であって、それを必要とする患者に治療有効量の本発明のベンズアミド共結晶を投与すること、又はそれを必要とする患者に本発明のベンズアミド共結晶を含有する治療用組成物を投与することを含む方法に関する。
【0050】
本発明の一態様においては、グルコキナーゼ(GSK又はGL)を介して媒介される疾患、障害又は状態が、1型糖尿病、2型糖尿病、脂質異常症、肥満、インスリン抵抗性、メタボリックシンドロームX、及び耐糖能障害から選択される。本発明は、治療有効量の本発明のベンズアミド共結晶又は本発明のベンズアミド共結晶を含有する治療用組成物を、それを必要とする患者に投与することによって、1型糖尿病、2型糖尿病、脂質異常症、肥満、インスリン抵抗性、メタボリックシンドロームX又は耐糖能障害を処置する方法に関する。
【0051】
本発明の一態様においては、不適切なT細胞媒介性応答が関与するグルコキナーゼ(GSK又はGL)を介して媒介される疾患、障害又は状態は、呼吸器ウイルス感染症、臓器移植拒絶、及びT細胞媒介性自己免疫状態から選択される。本発明のさらなる態様においては、不適切なT細胞媒介性応答が関与するグルコキナーゼ(GSK又はGL)を介して媒介される疾患、障害又は状態は、腎移植拒絶、ブドウ膜炎、早産、橋本甲状腺炎、乾癬、動脈硬化症、自己免疫性アジソン病、自己免疫性肝炎、自己免疫性心筋炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、セリアック病、クローン病、円板状ループス、特発性肺線維症、過敏性腸症候群、ループス腎炎、自己免疫性メニエール病、多発性硬化症、乾癬性関節炎、関節リウマチ、サルコイドーシス、全身性ループス、潰瘍性大腸炎、及び甲状腺炎から選択される。本発明は、治療有効量の本発明のベンズアミド共結晶又は本発明のベンズアミド共結晶を含有する治療用組成物を、それを必要とする患者に投与することによって、呼吸器ウイルス感染症、臓器移植拒絶、又はT細胞媒介性自己免疫状態を処置する方法に関する。本発明はさらに、治療有効量の本発明のベンズアミド共結晶又は本発明のベンズアミド共結晶を含有する治療用組成物を、それを必要とする患者に投与することによって、腎移植拒絶、ブドウ膜炎、早産、橋本甲状腺炎、乾癬、動脈硬化症、自己免疫性アジソン病、自己免疫性肝炎、自己免疫性心筋炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、セリアック病、クローン病、円板状ループス、特発性肺線維症、過敏性腸症候群、ループス腎炎、自己免疫性メニエール病、多発性硬化症、乾癬性関節炎、関節リウマチ、サルコイドーシス、全身性ループス、潰瘍性大腸炎、及び甲状腺炎を処置する方法に関する。本発明のベンズアミド共結晶又は本発明のベンズアミド共結晶を含有する治療用組成物の治療有効量は、炎症部位への制御性T細胞(Treg)の移動を増強することによって自然免疫応答及び適応免疫応答を制御し、それによって炎症を低減させ、免疫ホメオスタシスの回復に寄与する(help)ことができる。
【0052】
「処置」(treatment)又は「処置すること」(treating)という用語は、哺乳動物における疾患、障害又は状態の任意の処置を意味し、疾患、障害もしくは状態を予防するかもしくは保護すること、すなわち、臨床症状を発症させないこと;疾患、障害もしくは状態を阻害すること、すなわち、臨床症状の発症を停止もしくは抑制すること;及び/又は疾患、障害もしくは状態を軽減すること(状態もしくは障害に関連する不快感の軽減を含む)、すなわち、臨床症状の後退を引き起こすことが含まれる。ヒト医学では、最終的な1つ以上の誘導事象が未知であり、潜在的であり得るため、又は1つ以上の事象発生のかなり後まで患者が確認されないため、「予防する」と「抑制する」とを区別することは必ずしも可能ではないことが当業者には理解されよう。したがって、本明細書で使用される場合、「予防」という用語は、疾患、障害、又は状態を「予防する」及び「抑制する」の両方を包含する「処置」の要素として意図されている。「保護」という用語は、「予防」を含むことを意味する。
【0053】
本発明の別の側面は、上述の疾患、障害及び状態の処置における本発明のベンズアミド共結晶の使用に関する。したがって、本発明はさらに、そのような疾患、障害、及び状態の処置に用いるための医薬品の製造に関する。
【0054】
本発明のベンズアミド共結晶を含有する医薬組成物
【0055】
本発明は、治療有効量の本発明のベンズアミド共結晶及び薬学的に許容される担体(薬学的に許容される賦形剤としても知られる)を含む医薬組成物、それらから本質的になる医薬組成物、又はそれらからなる医薬組成物、に関する。上述のように、これらの医薬組成物は、グルコキナーゼ(GSK又はGL)を介して媒介される障害、例えば上述の障害を処置又は予防するために治療上有用である。本発明の医薬組成物は、固体投与形態、又は本発明のベンズアミド共結晶で作製された溶液であってよい。
【0056】
本発明の医薬組成物は、本発明のベンズアミド共結晶を含有する任意の医薬形態であってよい。医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、経口溶液、注射用組成物、局所用組成物、吸入用組成物又は経皮用組成物であってよい。液体医薬組成物は、本発明のベンズアミド共結晶を用いて調製され得、本発明の特定の実施形態を表す。液体医薬組成物の場合、本発明のベンズアミド共結晶は、その時点及びポイントオブケアで溶媒、例えば水に溶解され得る。
【0057】
本医薬組成物は、通常は(generally)、例えば約0.1重量%~約99.9重量%の本発明のベンズアミド共結晶、例えば約0.5重量%~約99.5重量の本発明のベンズアミド共結晶、及び例えば99.5重量%~0.5重量%の少なくとも1つの適切な医薬賦形剤又は溶媒を含有する。一態様において本組成物は、本発明のベンズアミド共結晶の約5重量%~約75重量%と、残部は少なくとも1つの適切な医薬賦形剤、溶媒又は少なくとも1つの他のアジュバントであってよい。残部の成分については後述する。
【0058】
「本発明のベンズアミド共結晶の治療有効量」とは、治療効果と相関するものであり、例えば、約25mg~約300mg、約50mg~約250mg、約75mg~約225mg、又は好ましくは約100mg~約200mgであってよい。任意の特定の患者の任意の特定の疾患、障害又は状態の治療に必要な実際の量は、例えば、治療される特定の疾患、障害又は状態;治療される疾患状態及びその重症度;使用される特定の医薬組成物;患者の年齢、体重、全身の健康、性別及び食事;投与様式;投与時間;投与経路;及び排泄率;治療期間;使用される特定の化合物と組み合わせて又は同時に使用される任意の薬物;及び医学分野で周知の他のそのような因子を含む様々な因子に依存し得る。これらの因子は、Goodman及びGilmanの「The Pharmacological Basis of Therapeutics」、第10版、A Gilman、J.Hardman及びL.Limbird編、McGraw-Hill Press、155-173、2001で論じられており、参照を介して本明細書に組み入れられる。
【0059】
薬学的に許容される担体は、本医薬組成物の種類に応じて、本技術分野で公知の担体のいずれか1つ又は組み合わせから選択してよい。薬学的に許容される担体の選択は、用いられる医薬の形態及び所望の投与方法に依存する。本発明の医薬組成物、すなわち本発明のベンズアミド共結晶を含有するものについては、結晶形態を維持する担体を選択する必要がある。換言すれば、担体は、本発明のベンズアミド共結晶を実質的に変化させるものではない必要がある。また、該担体は、ほかの観点から、用いられる本発明のベンズアミド共結晶と適合するものである必要がある。不適合性は、あらゆる望ましくない生物学的な影響が生じることによって、又は別の可能性として(otherwise)、本医薬組成物における他のあらゆる成分との有害な様式による相互作用によって生じえる。
【0060】
本発明の医薬組成物は、医薬製剤分野で公知の方法によって調製することができ、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版(Mack Publishing Company、ペンシルバニア州イーストン、1990)を参照し、これは参照により本明細書に組み込まれる。固体投与形態では、本発明のベンズアミド共結晶は、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤、例えばクエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウム、又は(a)充填剤又は増量剤、例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及びケイ酸など、(b)結合剤、例えばセルロース誘導体、デンプン、アルギナート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及びアラビアゴムなど、(c)湿潤剤、例えばグリセロールなど、(d)崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプン又はタピオカデンプン、アルギン酸、クロスカルメロースナトリウム、複合シリカート、及び炭酸ナトリウムなど、(e)溶液遅延剤、例えばパラフィンなど、(f)吸収促進剤、例えば、四級アンモニウム化合物など、(g)湿潤剤、例えば、セチルアルコール及びグリセロールモノステアラート、ステアリン酸マグネシウムなど、(h)吸着剤、例えば、カオリン及びベントナイトなど、(i)潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、又はそれらの混合物と混合されてもよい。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合、投与形態は緩衝剤も含んでよい。
【0061】
医薬製剤分野で公知の薬学的に許容されるアジュバントも、本発明の医薬組成物に用いてよい。これらには、保存剤、湿潤剤、懸濁剤、甘味剤、香味剤、芳香剤、乳化剤及び分注剤が含まれるが、これらに限定されない。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを含めることによって確実にすることができる。等張剤、例えば糖、塩化ナトリウムなど、を含むことが望ましい場合もある。所望される場合には、本発明の医薬組成物は、少量の補助物質、例えば、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤、酸化防止剤など、例えば、クエン酸、ソルビタンモノラウラート、トリエタノールアミンオレアート、ブチル化ヒドロキシトルエンなども含有してよい。
【0062】
上記の固体投与形態は、コーティング及びシェル、例えば腸溶コーティングなどを用いて調製することができ、これは医薬分野で公知である。それらは、鎮静剤を含有してもよく、腸管の特定の部分において遅延様式で活性化合物を放出するような組成物であってもよい。用いてよい包埋組成物の非限定的な例は、ポリマー物質及びワックスである。活性化合物はまた、適切な場合には、1つ以上の上記賦形剤と共にマイクロカプセル化された形態であってもよい。
【0063】
懸濁液は、活性化合物に加えて、懸濁化剤、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカント、又はこれらの物質の混合物などを含有してよい。液体投与形態は水性であってもよく、薬学的に許容される溶媒ならびに緩衝剤、香味料、甘味剤、保存剤及び安定剤を含むがこれらに限定されない本技術分野で公知の従来の液体投与形態賦形剤を含有してもよい。
【0064】
直腸投与用の組成物は、例えば、本発明のベンズアミド共結晶を、例えば、適切な非刺激性賦形剤又は担体、例えば、カカオバター、ポリエチレングリコール又は坐剤ワックスと混合することによって調製してよい坐剤であり、これは、常温では固体であってよいが、体温では液体であってもよく、したがって、適切な体腔にある間に融解し、その活性成分を放出してよい。
【0065】
外的(topical)投与に適した組成物には、本技術分野で知られている液体もしくは半液体の調製物、例えばリニメント剤、ローション、ゲル、アプリカント、水中油型もしくは油中水型のエマルジョン、例えばクリーム、軟膏、ペースト又はフォーム;又は液滴などの溶液もしくは懸濁液が含まれる。本発明の組成物は、外的投与を意図であってよく、その場合、担体は、溶液、エマルジョン、軟膏又はゲル基剤を適切に含んでよい。担体又は基剤は、例えば、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、蜜蝋、鉱油、水及びアルコールなどの希釈剤、ならびに乳化剤及び安定剤のうちの1つ以上を含んでよい。増粘剤は、外的投与用の本医薬組成物中に存在し得る。経皮投与を意図する場合、本組成物は、経皮パッチ又はイオン導入装置を含んでよい。外的投与用製剤は、約0.1~約10% w/v(単位体積当たりの重量)の濃度の本発明の化合物を含有してよい。
【0066】
上記の外的投与方法に加えて、本発明の活性ベンズアミド共結晶を肺に外的投与する方法には種々の方法がある。そのような方法(means)の1つは、処置される患者が吸入する本発明のベンズアミド共結晶からなる呼吸性粒子の乾燥粉末吸入器製剤が包含される。乾燥粉末製剤においては、本発明のベンズアミド共結晶の粒子が付着することができる担体粒子を含むことが一般的である。前記担体粒子は、任意の許容される薬理学的に不活性な材料又は材料の組み合わせであってもよい。例えば、善意担体粒子は、糖アルコール、ポリオール、例えばソルビトール、マンニトール又はキシリトール、ならびに単糖類及び二糖類を含む結晶性糖;塩化ナトリウム及び炭酸カルシウムなどの無機塩;乳酸ナトリウムなどの有機塩;ならびに尿素、多糖類、例えばシクロデキストリン及びデキストリンなどの他の有機化合物から選択される1種以上の材料から構成されていてもよい。担体粒子は、結晶性糖、例えばグルコースもしくはアラビノースなどの単糖、又はマルトース、サッカロース、デキストロースもしくはラクトースなどの二糖であってもよい。
【0067】
上記の外的投与方法に加えて、そのような方法によって本発明の活性ベンズアミド共結晶を全身投与する様々な方法がある。そのような方法(means)の1つは、処置される患者が吸入する本発明のベンズアミド共結晶からなる呼吸用粒子(respirable particle)のエアロゾル懸濁液を含む。本発明のベンズアミド共結晶は、医薬的に有効な量で肺を介して血流に吸収される。前記呼吸用粒子は、吸入時に口及び喉頭を通過するのに十分に小さい粒径を有する液体又は固体であってよい。
【0068】
本発明のベンズアミド共結晶の結晶形態は調製中に維持されるため、固体の投与形態が本発明の医薬組成物の一実施形態である。カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤及び懸濁剤が含まれる経口投与用の投与形態を用いてよい。定量吸入器、乾燥粉末吸入器又はエアロゾル製剤を含む、肺投与用の投与形態を用いてよい。そのような固体投与形態では、活性化合物は、少なくとも1つの不活性な薬学的に許容される賦形剤(薬学的に許容される担体としても知られる)と混合することができる。
【0069】
本発明のベンズアミド共結晶はまた、液体又は注射可能な医薬組成物を製剤化するために用いてよい。純粋な形態又は適切な医薬組成物での本発明のベンズアミド共結晶の投与は、同様の有用性を提供するための許容される投与様式又は薬剤のいずれかを介して行ってよい。したがって、投与は、固体、半固体、凍結乾燥粉末、又は液体投与形態、例えば、錠剤、坐剤、丸剤、軟カプセル及び硬カプセル、粉末、溶液、懸濁液、又はエアロゾルなどの形態で、例えば、正確な投与量の単純な投与に適した単位投与形態で、例えば、経口、頬側、経鼻、肺、非経口(静脈内、筋肉内、又は皮下)、局所(topically)、経皮、膣内、膀胱内、膀胱内、全身内、眼又は直腸であってよい。1つの投与経路は、処置される状態の重症度に応じて調整することができる便利な1日投与レジメンを用いた経口投与であってよい。
【0070】
本発明はまた、本発明のベンズアミド共結晶を薬学的に許容される溶媒に溶解する(dissolve)工程を含む液体医薬組成物を調製する方法、及びその方法に従って調製された液体医薬組成物に関する。上述のように、本発明の液体医薬組成物は、経口、非経口(吸入を含む)及び静脈内に投与することができる。
【0071】
例
【0072】
以下の分析方法を用いて、本発明のベンズアミド共結晶を特徴付けた:
【0073】
X線粉末回折(XRPD)特性評価:XRPDディフラクトグラムを、Cu Kα(40kV、40mA)を用いるBruker D8回折計及びGeモノクロメーターを取り付けたθ-2θゴニオメーターで取得した。入射ビームは、2.0mmの発散スリットを通過し、続いて0.2mmの散乱防止スリット及びナイフエッジを通過する。回折ビームは、2.5°のSollerスリットを有する8.0mmの受光スリットを通過し、続いてLynxeye検出器を通過する。データの取得及び分析に用いたソフトウェアは、それぞれDiffrac Plus XRD Commander及びDiffrac Plus EVAであった。試料は、受け取った粉末を用いて平板試料として2°~42°2θの角度範囲(0.05°2θのステップサイズ及び0.5秒のステップ時間を使用)にわたって周囲条件下で実行した。試料は、研磨されたゼロバックグラウンド(510)シリコンウェハー上に、平坦な表面に穏やかに押し付けることによって調製されるか、又はカットキャビティに充填された。試料をそれ自体の平面で回転させた。小型D8ディスク凹部ホルダを用いて試料を調製した。
【0074】
単結晶X線回折(SCXRD):データは、Oxford Diffraction SuperNova Dual source、ゼロのCu、Atlas CCD回折計により、室温で取得した。Bruker SHELXTLプログラムを用いて構造を解明し、Bruker SHELXTL一式の一部としてSHELXTLプログラムで精密化した。他に明記しない限り、炭素に結合した水素原子を幾何学的に配置し、ライディング等方性変位パラメータで精密化した。ヘテロ原子に結合した水素原子は、差分フーリエ合成に位置し、等方性変位パラメータで自由に精密化することができた。
【0075】
熱分析-示差走査熱量測定(DSC):DSCデータを、45ポジションの試料ホルダを備えたPerkinElmer Pyris 4000 DSCで取得した。この機器を、認証されたインジウムを用いたエネルギー及び温度の較正について検証した。試料の所定量である0.5~3.0mgを、ピンホール加工アルミニウムパンに入れ、20℃./分で30~350℃に加熱した。60ml./分の乾燥窒素のパージを試料上で維持した。機器の制御、データの取得及び分析は、Pyris Software v9.0.1.0203を用いて行った。
【0076】
熱重量分析(TGA):TGAデータは、16ポジションオートサンプラーを備えたTA Instruments Q500 TGAで取得した。典型的には、5~10mgの各試料を風袋計量済みアルミニウムDSCパンに入れ、周囲温度から350℃まで10℃/分で加熱した。60ml/分の窒素パージをサンプルにわたって維持した。機器制御ソフトウェアは、Advantage for Q Series and Thermal Advantageであり、Universal Analysis又はTRIOSを用いてデータを分析した。
【0077】
溶液プロトン核磁気共鳴(NMR):
1H NMRスペクトルは、オートサンプラーを備え、Avance NEOナノベイコンソールによって制御されるBruker 400 MHz機器を用いて取得した。試料を分析のためにd6-DMSOに溶解した。データは、Topspinソフトウェア内のICONNMR構成を用いて取得した。
【0078】
以下の例において、ベンズアミド化合物である3-{[5-(アゼチジン-1-イルカルボニル)ピラジン-2-イル]オキシ}-5-{[(1S)-1-メチル-2-(メチルオキシ)エチル]オキシ}-N-(5-メチルピラジン-2-イル)ベンズアミドを、AZD1656と称することがある。
【0079】
例1:1:1 ベンズアミドフマル酸共結晶(共結晶1)
【0080】
共結晶1の調製
【0081】
特性評価に用いた共結晶1のバッチを以下のように調製した:
【0082】
手順1:
【0083】
AZD1656(456mg、0.95mmol)及びフマル酸(111mg、0.95mmol)を、Retschボールミルにおいて30Hzで3×20分間、ニトロメタン(3滴)で粉砕した。生成物を、40℃で一晩、真空乾燥した。
【0084】
手順2:
【0085】
AZD1656(139mg、0.29mmol)及びフマル酸(33mg、0.28mmol)をガラスバイアルに入れ、ニトロメタン(2ml)を添加した。得られたスラリーをシェーカーに入れ、24時間熟成させた(8時間サイクルで室温~50℃、4時間かけて50℃まで加熱し、次いで4時間かけて室温まで冷却)。次いで、生成物を真空下で濾過し、40℃で一晩真空乾燥させた。
【0086】
共結晶1のXRPD特性評価
【0087】
手順1によって調製された共結晶1の実験XRPDパターンを
図1に示す。表1(Table 1)は、
図1の実験XRPDパターンで同定されたピークの角度、°2θ±0.2°2θ、及びd間隔(d-spacing)の一覧である。ピークのリスト全体又はその部分集合によって、本共結晶を十分に特徴付けることができるし、本結晶はまた、
図1と実質的に同じであるXRPDパターンによっても十分に特徴付けることができる。例えば、本共結晶の特徴付けは、6.4、8.7、14.4、15.9、22.2及び27.3°2θ±0.2°2θのピークから選択される、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ又はすべての、ピークにより行い得る。
Table 1
【表1】
【0088】
共結晶1のSCXRD特性評価
【0089】
単結晶の構造決定に使用する単結晶を、以下のように調製した:約5mg(目視により判断した)の共結晶1を2mlガラスバイアルに入れ、500μLのニトロメタンを添加した。溶液を室温でゆっくり蒸発させ、結晶を形成させた。好適な結晶をSCXRD特性評価のために選択した。
【0090】
室温で測定した構造の単結晶データ及び構造精密化パラメータを、下記の、表2(Table 2)により報告する。用いた付番システムを示す、室温での共結晶1のORTEP図を
図2に示す。非水素原子の異方性原子変位楕円体は30%の確率レベルで示され、水素原子は任意の半径の球として表示されている。室温での共結晶1の単結晶データ及び構造に基づいて計算されたXRPDパターンを
図3に示す。実験パターンに存在する好ましい配向効果により、僅かな強度差が
図1と
図3との間に生じていることが分かる。
Table 2
【表2】
【0091】
共結晶1のDSC
【0092】
共結晶1の示差走査熱量測定(DSC)トレースである
図4は、144.3℃の開始温度及び148.4℃のピーク最大値を有する、単一の吸熱(endotherm)であることを示している。
【0093】
共結晶1のTGA
【0094】
共結晶1の熱重量分析(TGA)トレースである
図5は、175℃の前に有意な重量の減少はないことを示している。該TGAは、共結晶が無水物であることを示している。
【0095】
共結晶1の1H NMRスペクトル
【0096】
共結晶1の
1H NMRスペクトルは
図6に示され、以下のピークを示している:
1H NMR(400MHz,DMSO):δ 1.24-1.26(3H),2.27-2.32(2H),2.48(3H),3.30(3H),3.46-3.55(2H),4.06-4.12(2H),4.52-4.59(2H),4.74-4.84(1H),6.62(2H),7.10-7.14(1H),7.45-7.49(1H),7.55-7.58(1H),8.34-8.39(1H),8.55-8.59(1H),8.66-8.70(1H),9.25-9.27(1H),11.05(1H)and 13.0-13.5(2H).
1H NMRスペクトルの6.62ppmのピークは、フマル酸の2つのプロトンに対応している。このピークの積分と、AZD1656の1つのプロトンに対応する7.10-7.14の積分との比較により、本共結晶が1:1のAPI:コフォーマー化学量論比を有することが示される。
【0097】
共結晶1の多形性の検討
【0098】
AZD1656は6つの異なる結晶形態で存在することが知られているため、共結晶1が複数の多形形態でも存在し得るか否かを調べるために調査を行った。上記の調製方法1及び2は、2-プロパノール、酢酸エチル、アセトニトリル、メチルエチルケトン及び水を用いて行われた。すべての場合において、同じ結晶形態の共結晶1が得られ、この共結晶が単一の多形体として存在することが示された。
【0099】
例2:1:1 ベンズアミドマレイン酸共結晶(共結晶2)
【0100】
共結晶2の調製
【0101】
特性評価に用いた共結晶2のバッチを以下のように調製した:
【0102】
手順1:
【0103】
AZD1656(275mg、0.58mmol)及びマレイン酸(66mg、0.58mmol)をRetschボールミルで30Hzにて3×20分間エタノール(2滴)で粉砕した。生成物を40℃で一晩真空乾燥した。
【0104】
手順2:
【0105】
AZD1656(164mg、0.34mmol)及びマレイン酸(39mg、0.34mmol)をガラスバイアルに入れ、2-プロパノール(1ml)を添加した。得られたスラリーをシェーカーに入れ、24時間熟成させた(8時間サイクルで室温~50℃、4時間かけて50℃まで加熱し、次いで4時間かけて室温まで冷却)。次いで、生成物を真空下で濾過し、40℃で一晩真空乾燥させた。
【0106】
共結晶2のXRPD特性評価
【0107】
手順1によって調製された共結晶2の実験XRPDパターンを
図7に示す。表3(Table 3)は、
図7の実験XRPDパターンで同定されたピークの角度、°2θ±0.2°2θ、及びd間隔(d-spacing)の一覧である。ピークのリスト全体又はその部分集合によって、本共結晶を十分に特徴付けることができるし、
図7と実質的に同じXRPDパターンによっても十分に特徴付けることができる。例えば、本共結晶の特徴付けは、4.7、9.3、12.2、12.8、14.5及び15.6°2θ±0.2°2θのピークから選択される少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ又はすべての、ピークにより行い得る。
Table 3
【表3-1】
【表3-2】
【0108】
共結晶2のSCXRD特性評価
【0109】
単結晶の構造決定に用いたする単結晶を以下のように調製した:約5mg(目視により判断した)の共結晶2を2mlガラスバイアルに入れ、500μLの酢酸エチルを添加した。溶液を室温でゆっくり蒸発させ、結晶形成させた。好適な結晶をSCXRD特性評価のために選択した。
【0110】
室温で測定した構造の単結晶データ及び構造精密化パラメータを、下記の表4(Table 4)に報告する。用いた付番システムを示す、室温での共結晶2のORTEP図を
図8に示す。非水素原子の異方性原子変位楕円体は30%の確率レベルで示され、水素原子は任意の半径の球として表示されてい
る。室温での共結晶2の単結晶データ及び構造に基づいて計算されたXRPDパターンを
図9に示す。実験パターンに存在する好ましい配向効果により、僅かな強度差が
図7と
図9との間に生じていることが分かる。
Table 4
【表4】
【0111】
共結晶2のDSC
【0112】
共結晶2の示差走査熱量測定(DSC)トレースである
図10は、94.6℃の開始温度及び99.5℃のピーク最大値を有する、単一の吸熱であることを示す。
【0113】
共結晶2のTGA
【0114】
共結晶2の熱重量分析(TGA)トレースである
図11は、125℃の前に有意な重量の減少はないことを示している。該TGAは、共結晶が無水物であることを示している。
【0115】
共結晶2の1H NMRスペクトル
【0116】
共結晶2の
1H NMRスペクトルは
図12に示され、以下のピークを示す:
1H NMR(400MHz,DMSO):δ 1.24-126(3H),2.27-2.32(2H),2.48(3H),3.30(3H),3.46-3.55(2H),4.06-4.12(2H),4.52-4.59(2H),4.74-4.84(1H),6.27(2H),7.10-7.14(1H),7.45-7.49(1H),7.55-7.58(1H),8.34-8.39(1H),8.55-8.59(1H),8.66-8.7-(1H),9.25-9.27(1H)and 11.05(1H).
1H NMRスペクトルの6.27ppmのピークは、マレイン酸の2つのプロトンに対応している。このピークの積分と、AZD1656の1つのプロトンに対応する7.10-7.14の積分との比較により、本共結晶が1:1のAPI:コフォーマー化学量論比を有することが示される。
【0117】
共結晶2の多形性の検討
【0118】
AZD1656は6つの異なる結晶形態で存在することが知られているため、共結晶2が複数の多形形態でも存在し得るか否かを調べるために調査を行った。上記の調製方法1及び2は、2-プロパノール、酢酸エチル、アセトニトリル、メチルエチルケトン及び水を用いて行われた。すべての場合において、同じ結晶形態の共結晶2が得られ、この共結晶が単一の多形体として存在することが示された。
【0119】
例3:1:1 ベンズアミドマロン酸共結晶(共結晶3)
【0120】
共結晶3の調製
【0121】
特性評価に用いた共結晶3のバッチを以下のように調製した:
【0122】
AZD1656(140mg、0.29mmol)及びマロン酸(40mg、0.38mmol)をガラスバイアルに入れ、マロン酸飽和2-プロパノール(2ml)を添加した。得られたスラリーをシェーカーに入れ、24時間にわたり十分に反応(mature)させた(8時間サイクルで室温~50℃、4時間かけて50℃まで加熱し、次いで4時間かけて室温まで冷却した)。次いで、生成物を真空下で濾過し、ニトロメタン(3ml)中で24時間再スラリー化した後、濾過し、真空中40℃で一晩乾燥させた。
【0123】
共結晶3のXRPD特性評価
【0124】
共結晶3の実験XRPDパターンを
図13に示す。表5(Table 5)は、
図13の実験XRPDパターンで同定されたピークの角度、°2θ±0.2°2θ、及びd間隔(d-spacing)の一覧である。ピークのリスト全体又はその部分集合によって、本共結晶を十分に特徴付けることができるし、
図13と実質的に同じであるXRPDパターンによっても十分に特徴付けることができる。例えば、共結晶は、6.3、8.7 9.7、11.1、12.6及び13.4°2θ±0.2°2θのピークから選択される少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ又はすべての、ピークにより行い得る。
Table 5
【表5】
【0125】
共結晶3のDSC
【0126】
共結晶3の示差走査熱量測定(DSC)トレースである
図14は、111.2℃の開始温度及び114.4℃のピーク最大値を有する、単一の吸熱を示している。
【0127】
共結晶3の1H NMRスペクトル
【0128】
共結晶3の
1H NMRスペクトルは
図15に示され、以下のピークを示している:
1H NMR(400MHz,DMSO):δ 1.24-1.26(3H),2.27-2.32(2H),2.48(3H),3.24(2H),3.30(3H),3.46-3.55(2H),4.06-4.12(2H),4.52-4.59(2H),4.74-4.84(1H),7.10-7.14(1H),7.45-7.49(1H),7.55-7.58(1H),8.34-8.39(1H),8.55-8.59(1H),8.66-8.70(1H),9.25-9.27(1H),11.05(1H)and 12.66(2H).
1H NMRスペクトルの3.24ppmのピークは、マロン酸の2つのプロトンに対応している。このピークの積分と、AZD1656の1つのプロトンに対応する7.10-7.14の積分との比較により、本共結晶が1:1のAPI:コフォーマー化学量論比を有することが示される。
【0129】
例4:1:1 ベンズアミドL-酒石酸水和物共結晶(共結晶4)
【0130】
共結晶4の調製
【0131】
特性評価に用いた共結晶4のバッチを以下のように調製した:
【0132】
AZD1656(140mg、0.29mmol)及びL-酒石酸(41mg、0.27mmol)を、L-酒石酸で飽和した2-プロパノール(2ml)に40℃で溶解した。溶液を4℃で保存すると、白色沈殿物が得られた。スラリーをシェーカーに入れ、3日間にわたり十分に反応させた(8時間サイクルで室温~40℃、4時間かけて40℃まで加熱し、次いで4時間かけて室温まで冷却)。この時間の後、固体を濾過し、40℃で一晩真空乾燥させた。最初の分析により、生成物が約0.3 molの2-プロパノールを含有することが示された。固体を40℃/75%相対湿度(RH)に2週間置いた後、再分析し、ここで2-プロパノールが除去されて共結晶4が得られたことを示した。
【0133】
共結晶4のXRPD特性評価
【0134】
共結晶4の実験XRPDパターンを
図16に示す。表6(Table 6)は、
図16の実験XRPDパターンで同定されたピークの角度、°2θ±0.2°2θ、及びd間隔(d-spacing)の一覧である。ピークのリスト全体又はその部分集合によって、本共結晶を十分に特徴付けることができるし、
図16と実質的に同じであるXRPDパターンによっても十分に特徴付けることができる。例えば、本共結晶の特徴付けは、3.5、5.4、14.8、16.5、18.6及び19.3°2θ±0.2°2θのピークから選択される少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ又はすべての、ピークにより行い得る。
Table 6
【表6】
【0135】
共結晶4のDSC
【0136】
共結晶4の示差走査熱量測定(DSC)トレースである
図17は、30℃~70℃で広い吸熱を示し、続いて97.5℃の開始温度及び111.0℃のピーク最大値を有する第2の吸熱を示す。
【0137】
共結晶4のTGA
【0138】
図18の共結晶4の熱重量分析(TGA)トレースは、25℃~90℃で2.8%の重量減少を示す。これは1モルの水に相当する。
【0139】
共結晶4の1H NMRスペクトル
【0140】
共結晶4の
1H NMRスペクトルである
図19は、以下のピークを示している:
1H NMR(400MHz,DMSO):δ 1.24-1.26(3H),2.27-2.32(2H),2.48(3H),3.30(3H),3.46-3.55(2H),4.06-4.12(2H),4.31(2H),4.52-4.59(2H),4.74-4.84(1H),7.10-7.14(1H),7.45-7.49(1H),7.55-7.58(1H),8.34-8.39(1H),8.55-8.59(1H),8.66-8.70(1H),9.25-9.27(1H)and 11.05(1H).
1H NMRスペクトルの4.31ppmのピークは、酒石酸の2つのプロトンに対応する。このピークの積分と、AZD1656の1つのプロトンに対応する4.74~4.84の積分との比較により、本共結晶が1:1のAPI:コフォーマー化学量論比を有することが示される。
【0141】
例5:1:1 ベンズアミドゲンチジン酸共結晶形態1(共結晶5A)
【0142】
共結晶5Aの調製
【0143】
特性評価に用いた共結晶5Aのバッチを以下のように調製した:
【0144】
AZD1656(140mg、0.29mmol)及びゲンチジン酸(44mg、0.29mmol)をガラスバイアルに入れ、ニトロメタン(2ml)を添加した。得られたスラリーをシェーカーに入れ、3日間にわたり十分に反応させた(8時間サイクルで室温~50℃、4時間かけて50℃まで加熱し、次いで4時間かけて室温まで冷却)。次いで、生成物を真空下で濾過し、60℃で一晩真空乾燥させた。
【0145】
共結晶5AのXRPD特性評価
【0146】
共結晶5Aの実験XRPDパターンを
図20に示す。表7(Table 7)は、
図20の実験XRPDパターンで同定されたピークの角度、°2θ±0.2°2θ、及びd間隔(d-spacing)の一覧である。ピークのリスト全体又はその部分集合によって、本共結晶を十分に特徴付けることができるし、
図20と実質的に同じであるXRPDパターンによっても十分に特徴付けることができる。例えば、本共結晶の特徴付けは、9.1、9.9、12.2、12.8、18.4及び19.7°2θ±0.2°2θのピークから選択される少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ又はすべての、ピークにより行い得る。
Table 7
【表7】
【0147】
共結晶5AのDSC
【0148】
共結晶5Aの示差走査熱量測定(DSC)トレースである
図21は、128.1℃の開始温度及び131.5℃のピーク最大値を有する主要な吸熱を示す。
【0149】
共結晶5AのTGA
【0150】
図22の共結晶5Aの熱重量分析(TGA)トレースは、25℃~90℃で1.3%の重量減少を示す。これは0.45モルの水に相当する。
【0151】
共結晶5Aの1H NMRスペクトル
【0152】
共結晶5Aの
1H NMRスペクトルである
図23は、以下のピークを示している:
1H NMR(400MHz,DMSO):δ 1.24-1.26(3H),2.27-2.32(2H),2.48(3H),3.30(3H),3.46-3.55(2H),4.06-4.12(2H),4.52-4.59(2H),4.74-4.84(1H),6.77-6.79(1H),6.94-6.97(1H),7.10-7.14(1H),7.45-7.49(1H),7.55-7.58(1H),8.34-8.39(1H),8.55-8.59(1H),8.66-8.70(1H),9.14(1H),9.25-9.27(1H)and 11.05(1H).
1H NMRスペクトルの6.77-6.79ppmのピークは、ゲンチジン酸の1つのプロトンに対応する。このピークの積分と、AZD1656の1つのプロトンに対応する4.74~4.84の積分との比較により、本共結晶が1:1のAPI:コフォーマー化学量論比を有することが示される。
【0153】
例6:1:1 ベンズアミドゲンチジン酸共結晶形態2(共結晶5B)
【0154】
共結晶5Bの調製
【0155】
特性評価に用いた共結晶5Bのバッチを以下のように調製した:
【0156】
AZD1656(159mg、0.33mmol)をガラスバイアルに入れ、ゲンチジン酸で飽和した2-プロパノール(1.5ml)を添加した。水(1ml)を添加し、得られたスラリーをシェーカーに入れ、24時間にわたり十分に反応させた(8時間サイクルで室温~50℃、4時間かけて50℃まで加熱し、次いで4時間かけて室温まで冷却)。生成物を真空下で濾過し、次いで、室温で24時間ニトロメタン(3ml)に再スラリー化した後、真空下で濾過し、40℃で一晩真空中で乾燥させた。
【0157】
共結晶5BのXRPD特性評価
【0158】
共結晶5Bの実験XRPDパターンを
図24に示す。表8(Table 8)は、
図24の実験XRPDパターンで同定されたピークの角度、°2θ±0.2°2θ、及びd間隔(d-spacing)の一覧である。ピークのリスト全体又はその部分集合によって、本共結晶を十分に特徴付けることができるし、
図24と実質的に同じであるXRPDパターンによっても十分に特徴付けることができる。
Table 8
【表8】
【0159】
共結晶5BのDSC
【0160】
共結晶5Bの示差走査熱量測定(DSC)トレースである
図25は、98.2℃の開始温度及び106.0℃のピーク最大値を有する、単一の吸熱を示している。
【0161】
共結晶5Bの1H NMRスペクトル
【0162】
共結晶5Bの
1H NMRスペクトルは
図26に示され、以下のピークを示す:
1H NMR(400MHz,DMSO):δ 1.24-1.26(3H),2.27-2.32(2H),2.48(3H),3.30(3H),3.46-3.55(2H),4.06-4.12(2H),4.52-4.59(2H),4.74-4.84(1H),6.77-6.79(1H),6.94-6.97(1H),7.10-7.14(1H),7.45-7.49(1H),7.55-7.58(1H),8.34-8.39(1H),8.55-8.59(1H),8.66-8.70(1H),9.14(1H),9.25-9.27(1H)and 11.05(1H).
1H NMRスペクトルの6.77-6.79ppmのピークは、ゲンチジン酸の1つのプロトンに対応している。このピークの積分と、AZD1656の1つのプロトンに対応する4.74~4.84の積分との比較により、本共結晶が1:1のAPI:コフォーマー化学量論比を有することを示される。
【0163】
例7:1:1 ベンズアミドゲンチジン酸共結晶形態3(共結晶5C)
【0164】
共結晶5Cの調製
【0165】
特性評価に用いた共結晶5Cのバッチを以下のように調製した:
【0166】
AZD1656(136mg、0.28mmol)及びゲンチジン酸(40mg、0.25mmol)をガラスバイアルに入れ、ゲンチジン酸で飽和した水(2ml)を添加した。水(1ml)を添加し、得られたスラリーをシェーカーに入れ、4日間にわたり十分に反応させた(8時間サイクルで室温~50℃、4時間かけて50℃まで加熱し、次いで4時間かけて室温まで冷却)。次いで、生成物を真空下で濾過し、4時間風乾した。
【0167】
共結晶5CのXRPD特性評価
【0168】
共結晶5Cの実験XRPDパターンを
図27に示す。表9(Table 9)は、
図27の実験XRPDパターンで同定されたピークの角度、°2θ±0.2°2θ、及びd間隔(d-spacing)の一覧である。ピークのリスト全体又はその部分集合によって、本共結晶を十分に特徴付けることができるし、
図27と実質的に同じであるXRPDパターンによっても十分に特徴付けることができる。
Table 9
【表9】
【0169】
共結晶5CのDSC
【0170】
図28の共結晶5Cの示差走査熱量測定(DSC)トレースは、67.4℃のピーク最大値を有する主要な吸熱を示す。
【0171】
共結晶5Cの1H NMRスペクトル
【0172】
図29に示す共結晶5Cの
1H NMRスペクトルは、以下のピークを示す:
1H NMR(400MHz,DMSO):δ 1.24-1.26(3H),2.27-2.32(2H),2.48(3H),3.30(3H),3.46-3.55(2H),4.06-4.12(2H),4.52-4.59(2H),4.74-4.84(1H),6.77-6.79(1H),6.94-6.97(1H),7.10-7.14(1H),7.45-7.49(1H),7.55-7.58(1H),8.34-8.39(1H),8.55-8.59(1H),8.66-8.70(1H),9.14(1H),9.25-9.27(1H)and 11.05(1H).
1H NMRスペクトルの6.77-6.79ppmのピークは、ゲンチジン酸の1つのプロトンに対応する。このピークの積分と、AZD1656の1つのプロトンに対応する4.74~4.84の積分との比較により、本共結晶が1:1のAPI:コフォーマー化学量論比を有することが示される。
【0173】
例8:1:1 ベンズアミドゲンチジン酸共結晶形態4(共結晶5D)
【0174】
共結晶5Dの調製
【0175】
特性評価に用いた共結晶5Dのバッチを以下のように調製した:
【0176】
共結晶5Cを50°Cで3時間真空乾燥し、共結晶5Dに変換した。
【0177】
共結晶5DのXRPD特性評価
【0178】
共結晶5Dの実験XRPDパターンを
図30に示す。表10((Table 10)は、
図30の実験XRPDパターンで同定されたピークの角度、°2θ±0.2°2θ、及びd間隔(d-spacing)の一覧である。ピークのリスト全体又はその部分集合によって、本共結晶を十分に特徴付けることができるし、
図30と実質的に同じであるXRPDパターンによっても十分に特徴付けることができる。
Table 10
【表10】
【0179】
共結晶5DのDSC
【0180】
共結晶5Dの示差走査熱量測定(DSC)トレースである
図31は、75.6℃の開始温度及び83.6℃のピーク最大値を有する主要な吸熱を示す。
【0181】
共結晶5Dの1H NMRスペクトル
【0182】
共結晶5Dの
1H NMRスペクトルである
図32は、以下のピークを示している:
1H NMR(400MHz,DMSO):δ 1.24-1.26(3H),2.27-2.32(2H),2.48(3H),3.30(3H),3.46-3.55(2H),4.06-4.12(2H),4.52-4.59(2H),4.74-4.84(1H),6.77-6.79(1H),6.94-6.97(1H),7.10-7.14(1H),7.45-7.49(1H),7.55-7.58(1H),8.34-8.39(1H),8.55-8.59(1H),8.66-8.70(1H),9.14(1H),9.25-9.27(1H)and 11.05(1H).
1H NMRスペクトルの6.77-6.79ppmのピークは、ゲンチジン酸の1つのプロトンに対応する。このピークの積分と、AZD1656の1つのプロトンに対応する4.74~4.84の積分との比較により、本共結晶が1:1のAPI:コフォーマー化学量論比を有することを示が示される。
【0183】
例9:共結晶5における固体形態の相互変換についての検討
【0184】
異なる結晶形態の共結晶5が固体形態変換を受ける可能性を評価し、かかる評価により、すべての形態の共結晶5を単一の多形体に変換できるか否かを決定するための検討を行った。
50mgの共結晶5A、5B、5C、及び5Dを、2mLのニトロメタン、アセトニトリル又は1:1(v/v)酢酸エチル/メチルtert-ブチルエーテルで24時間室温で別々にスラリー化した。共結晶5A、5B、5C、及び5Dのそれぞれ10mgを合わせ、2mLのニトロメタン、アセトニトリル又は1:1(v/v)酢酸エチル/メチルtert-ブチルエーテルで24時間スラリー化する実験の第2のセットを行った。この時間の後、得られた生成物をすべて真空下で濾過し、XRPDによって分析した。XRPDにより、共結晶5の異なる形態のすべてが、単独で又は形態の組み合わせとしてスラリー化された場合に試験された3つの溶媒すべてにおいて、単一の多形体、形態5Aに変換されたことが確認された。これにより、共結晶5の異なる形態のすべてを単一の多形体に変換することが可能であること、及び共結晶5Aが、熱力学的に最も安定な1:1 ベンズアミドゲンチジン酸共結晶の形態であることが確認される。
【0185】
例10:本発明のベンズアミド共結晶における固体状態の安定性についての検討
【0186】
環境条件(ambient conditions)及び加速条件の両方において、経時的な固体形態の変換又は分解の兆候に関して、本発明のベンズアミド共結晶の物理的安定性を調べるための検討を行った。共結晶1、共結晶2、共結晶4及び共結晶5Aのそれぞれ50mgを、40℃、相対湿度75%の密閉容器に別々に入れ、これらの条件下で3ヶ月間保存した。この時間の後、すべての試料において、外観は変化せず、潮解の兆候も変色の兆候もなかった。あらゆる潜在的な形態変化を特定する(observe)ために、各試料をXRPDによって分析した。検討結果を表11(Table 11)に示す。
Table 11
【表11】
【0187】
第2の安定性の検討を行った。共結晶1、共結晶2、共結晶3、共結晶4、及び共結晶5Aのそれぞれ50mgを透明ガラスバイアルに別々に入れ、次いでこれを周囲条件下で12ヶ月間保存した。この時間の後、すべての共結晶において、白色固体のままであり、変色の兆候はなかった。各試料をXRPDによって分析して、あらゆる潜在的な形態変化を特定する(observe)ために、各試料をXRPDによって分析した。検討の結果を表12(Table 12)に示す。
Table 12
【表12】
【0188】
表12から、環境条件下で12ヶ月間保存した後、すべての共結晶が元の結晶形態を保持すること、及び本発明のベンズアミド共結晶は、いずれもこれらの条件下で固体形態の変換又は解離を受けないことが分かる。本発明のベンズアミド共結晶は、環境条件及び促進保存条件のいずれにおいても元の多形体を保持した。
【0189】
例11:本発明のベンズアミド共結晶の乾式粉砕
【0190】
溶解性(dissolution)を検討するための同程度の粒径を有する共結晶試料を調製するために、及び共結晶の結晶化度に及ぼす粉砕の影響を評価するために、共結晶1、共結晶2、共結晶3、共結晶4及び共結晶5aをボールミルを用いて乾式粉砕した。国際公開第2012/007758号には、ベンズアミド化合物の十分な溶解を達成するためには、粒径の縮小が必要であったことが開示されている。純粋なベンズアミド化合物の乾式粉砕は、粉砕容器のステンレス鋼壁への過度の付着のために問題があり、回収率が低かった。したがって、効率的な回収率で粒径縮小を受けることを可能にする、共粉砕賦形剤を用いる必要がない、ベンズアミド化合物の固体形態は有益である。そこで、粉砕した共結晶、共結晶1、共結晶2、共結晶3、共結晶4及び共結晶5aについて、凝集の問題又は粉砕容器の壁への過度の固着が生じるかについて、目視による評価を行った。かかる評価は、純粋なベンズアミド化合物に生じるような、潜在的な接着/凝集の問題の判断指標になると考えられた。
【0191】
共結晶1、共結晶2、共結晶3、共結晶4及び共結晶5aのそれぞれ200mgを、1cmのステンレス鋼ボールベアリングを含む25mlのステンレス鋼ミリングジャーに別々に入れた。本発明の各ベンズアミド共結晶をRetsch MM400ボールミルで30Hzにて2×15分間乾式粉砕した。生成物を目視及びXRPDによって評価した。共結晶1、共結晶2、共結晶3、共結晶4又は共結晶5aのいずれも、粉砕による結晶化度の減少の兆候を示さなかった。共結晶1、共結晶2、共結晶3、共結晶4及び共結晶5aの各々の目視による評価により、粉砕された共結晶がすべて、ミリングジャーの壁に過度に付着することなく、ミリングチャンバから容易に回収可能であることが示された。また、共結晶1、共結晶2、共結晶3、共結晶4及び共結晶5aのそれぞれは、明らかな凝集の兆候のない流動性粉末として得られた。
【0192】
例12:溶解性の検討
【0193】
本発明のベンズアミド共結晶、共結晶1、共結晶2、共結晶3、共結晶4及び共結晶5aの溶解速度を、純粋なベンズアミド化合物と比較するために、疑似胃培地及び疑似腸培地の両培地における、溶解性の検討を行う。
【0194】
溶解性の検討は、pH1.6(37℃)の50mlの疑似胃液(FaSSGF)又はpH6.5(37℃)の50mlの疑似腸液(FaSSIF V2)を用いて、50mgの前記ベンズアミド化合物に相当する量の共結晶1、共結晶2、共結晶3、共結晶4、共結晶5a又は純粋なベンズアミド化合物形態6を用いて実施する。該溶解性の検討は、Pion inForm(登録商標)機器を用いて行う。ベンズアミド化合物の検出及び定量は、光ファイバプローブを用いたインサイツUV分光法によって行い、試料導入の時点からの瞬間的なデータの取得が可能である。UV吸収データを、予め決定されたpH依存性モル吸光係数を用いて、mg/ml(±0.2mg/ml)に変換して、溶解した薬物の量を定量する。共結晶1、共結晶2、共結晶3、共結晶4及び共結晶5aの各々の溶解性を、前記ベンズアミド化合物の溶解性と比較する。