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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】ウェアラブル保護具
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/018 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
A41D13/018
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022522788
(86)(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(86)【国際出願番号】 EP2020080153
(87)【国際公開番号】W WO2021083877
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-04-26
(31)【優先権主張番号】102019000020214
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】502016471
【氏名又は名称】アルパインスターズ リサーチ ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョバンニ マッツァローロ
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツォ ナルド
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0183283(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01749705(EP,A2)
【文献】特開2007-038796(JP,A)
【文献】国際公開第2011/148350(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03498117(EP,A1)
【文献】特開2011-132625(JP,A)
【文献】米国特許第04089065(US,A)
【文献】米国特許第05295765(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/018
A62B99/00
B60R21/237
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収縮状態にある少なくとも部分的に折り畳まれた状態または巻き取られた状態と、膨張状態にある展開状態または巻出状態との間を移行するように設計された少なくとも1つの膨張可能部材(20)を含むウェアラブル保護具(10)であって、
前記少なくとも部分的に折り畳まれた状態または巻き取られた状態で、前記少なくとも1つの膨張可能部材(20)は、ウェアラブル保護具(10)に設けられるハウジング(30)内に収容されており、
展開状態または巻出状態にある前記少なくとも1つの膨張可能部材(20)は、ハウジング(30)の限界内に留まり、
少なくとも部分的に折り畳まれた状態または巻き取られた状態の膨張可能部材(20)は、ハウジング(30)の第1部分(31)を占有し;第1部分(31)が、第1部分(31)をハウジング(30)の第2部分(33)から少なくとも部分的に分離する隔壁(35)によって、少なくとも部分的に閉鎖されている
ことを特徴とするウェアラブル保護具(10)。
【請求項2】
収縮状態の少なくとも部分的に折り畳まれた状態または巻き取られた状態にある膨張可能部材(20)は、展開または巻出部分Uと、少なくとも1つの折畳または巻取部分(F)とを有し、前記少なくとも1つの折畳または巻取部分(F)は、前記少なくとも1つの膨張可能部材(20)の外周領域および/または内部領域に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のウェアラブル保護具(10)。
【請求項3】
保持手段(50)を含み、前記保持手段(50)は、前記少なくとも1つの膨張可能部材(20)の前記少なくとも1つの折畳または巻取部分(F)を、折畳状態または巻取状態に維持するように設計されていることを特徴とする請求項2に記載のウェアラブル保護具(10)。
【請求項4】
前記ハウジング(30)は、前記ウェアラブル保護具(10)に設けられたポケットであり、および/または前記ハウジング(30)は、前記ウェアラブル保護具(10)の外面または内面に付着された別個のケーシングであり;前記別個のケーシングは前記ウェアラブル保護具(10)に恒久的または取り外し可能に固定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のウェアラブル保護具(10)。
【請求項5】
少なくとも1つの膨張可能部材(20)の折畳または巻取部分(F)は、アコーディオン状の構成またはS字状の構成またはU字状の構成を有することを特徴とする、請求項2に記載のウェアラブル保護具(10)。
【請求項6】
前記U字状の構成は、前記膨張可能部材(20)の内面(21)および外面(22)によって画定される空洞の内部に、前記少なくとも1つの膨張可能部材(20)の端部を挿入することによって得られることを特徴とする請求項5に記載のウェアラブル保護具(10)。
【請求項7】
前記保持手段(50)は、調節された破断張力を有することを特徴とする請求項3に記載のウェアラブル保護具(10)。
【請求項8】
前記ハウジング(30)は、内面(32)および外面(34)を有し;1つまたは複数のスペーサ(60)が、前記内面(32)と前記外面(34)との間に、それらを離間状態に維持するように設けられることを特徴とする請求項1に記載のウェアラブル保護具(10)。
【請求項9】
ハウジング(30)が通気性材料またはメッシュ材料で作られていることを特徴とする、請求項1に記載のウェアラブル保護具(10)。
【請求項10】
前記ハウジング(30)は、1つまたは複数の可撓性内部連結材(90)によって接続された内面(32)および外面(34)を有し、前記1つまたは複数の可撓性内部連結材(90)は、ウェアラブル保護具(10)の通常使用時にはハウジング(30)の内部に折りたたまれた非緊張状態であり、前記少なくとも1つの膨張可能部材(20)が膨張状態に移行する際に前記1つまたは複数の可撓性内部連結材(90)は引張力を受けることを特徴とする請求項1に記載のウェアラブル保護具(10)。
【請求項11】
膨張可能部材(20)が折畳状態にあるとき、前記少なくとも1つの折畳または巻取部分(F)は、2.5cm未満、好ましくは1.8~2.2cmの間に含まれる厚さ(t)を有することを特徴とする請求項2に記載のウェアラブル保護具(10)。
【請求項12】
隔壁(35)が、第1部分(31)を第2部分(33)から完全に分離するように第1部分(31)を密閉することを特徴とする、請求項1に記載のウェアラブル保護具(10)。
【請求項13】
前記隔壁(35)は、前記膨張可能部材(20)が膨張した時に破断するように調節された破断張力を有することを特徴とする請求項1に記載のウェアラブル保護具(10)。
【請求項14】
膨張状態における前記少なくとも1つの膨張可能部材(20)が、ハウジング(30)全体を占有することを特徴とする請求項1に記載のウェアラブル保護具(10)。
【請求項15】
収縮状態にある少なくとも部分的に折り畳まれた状態または巻き取られた状態と、膨張状態にある展開状態または巻出状態との間を移行するように設計された少なくとも1つの膨張可能部材(20)を含むウェアラブル保護具(10)であって、
前記少なくとも部分的に折り畳まれた状態または巻き取られた状態で、前記少なくとも1つの膨張可能部材(20)は、ウェアラブル保護具(10)に設けられるハウジング(30)内に収容されており、
前記ウェアラブル保護具(10)は、前記少なくとも1つの膨張可能部材(20)の折畳または巻取部分(F)の一部をハウジング(30)の内面に接続するための締結手段(65)を備える
ことを特徴とするウェアラブル保護具(10)。
【請求項16】
締結手段(65)は、膨張後において、初期の折畳状態または巻取状態にある前記少なくとも1つの膨張可能部材(20)の再配置を可能にするように、弾性材料で作製されていることを特徴とする請求項15に記載のウェアラブル保護具(10)。
【請求項17】
前記少なくとも1つの膨張可能部材(20)が、ウェアラブル保護具(10)の背面部分において少なくとも2つの別個の折畳または巻取部分(F)を備え、弾性締結手段(65)が、前記少なくとも1つの膨張可能部材(20)の前記少なくとも2つの別個の折畳または巻取部分(F)のそれぞれをハウジング(30)の対向する内部部分と連結するように交差した構成で配置されていることを特徴とする請求項16に記載のウェアラブル保護具(10)。
【請求項18】
収縮状態にある少なくとも部分的に折り畳まれた状態または巻き取られた状態と、膨張状態にある展開状態または巻出状態との間を移行するように設計された少なくとも1つの膨張可能部材(20)を含むウェアラブル保護具(10)であって、
前記少なくとも部分的に折り畳まれた状態または巻き取られた状態で、前記少なくとも1つの膨張可能部材(20)は、ウェアラブル保護具(10)に設けられるハウジング(30)内に収容されており、
展開状態または巻出状態にある前記少なくとも1つの膨張可能部材(20)は、ハウジング(30)の限界内に留まり、
前記ウェアラブル保護具(10)は、保持手段(50)を含み、前記保持手段(50)は、前記少なくとも1つの膨張可能部材(20)の少なくとも1つの折畳または巻取部分(F)を、折畳状態または巻取状態に維持するように設計されており、
前記保持手段(50)は、前記膨張可能部材(20)の少なくとも1つの折畳または巻取部分(F)を、前記膨張可能部材(20)の対向する部分と外部的に接続する少なくとも1つの連結部材(53)を含む
ことを特徴とするウェアラブル保護具(10)。
【請求項19】
前記少なくとも1つの連結部材(53)が弾性材料で作製されていることを特徴とする、請求項18に記載のウェアラブル保護具(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェアラブル保護具に関する。特に、本発明は、膨張可能部材を備えるウェアラブル保護具に関するものである。
【0002】
より具体的には、本発明は、衝撃および/または転倒に対する効果的な保護が必要なあらゆる分野での使用に適した、膨張可能部材を備えたウェアラブル保護具に関する。たとえば、このウェアラブル保護具は、オートバイ運転者、自転車運転者またはスキーヤーが着用するのに適している。
【0003】
明確さのために、本明細書では、非限定的方法で、オートバイ運転者が着用するのに適したウェアラブル保護具について言及する。
【背景技術】
【0004】
「エアバッグ」とも呼ばれる1つまたは複数の膨張可能部材を備えたウェアラブル保護具は、当技術分野でよく知られている。
【0005】
典型的には、通常使用時には、膨張可能部材は、ウェアラブル保護具の内部に設けられたシート状の収縮状態すなわち休止配置に配列される。
【0006】
ウェアラブル保護具は、皮革のような耐摩耗性材料で作られた保護衣であることができる。この場合、膨張可能部材は、通常、衣服の外層と内層の間に配置される。あるいはまた、ウェアラブル保護具は、さらなる保護衣と組み合わせて使用するのに適した下着であることができる。この場合、膨張可能部材は、必ずしも耐摩耗性材料で作られていない下着の2つの層の間に配置される。
【0007】
膨張可能部材は、緊急時にのみ作動するように設計される。一般に、膨張可能部材は、膨張装置と流体連通している。膨張装置は、たとえば、膨張可能部材を膨張させ、したがって拡張させるように、圧縮ガスのような所定量の膨張流体を膨張可能バッグに導入するよう適合されている。膨張流体の放出は、機械的または電子的なシステムによって制御することができる。通常、膨張可能部材は、膨張時に膨張流体によって発揮される圧力に耐えられるように、伸縮性の低い織布または膜で作製される。低伸縮性のため、膨張可能部材は、休止配置において、膨張した際にカバー/保護しなければならない身体の部分の形状に極めて類似した形状を有する。
【0008】
膨張可能部材を備えた既知のウェアラブル保護具には、主に膨張可能部材に関連するいくつかの欠点がある。
【0009】
実際、膨張可能部材は伸縮性の低い布または膜で作られており、保護すべき身体の部位全体を覆う形状であるため、ウェアラブル保護具に印加される剛性のために、オートバイ運転者にとって不快なものとなることがあった。また、ウェアラブル保護具を通気性のある生地で作ったとしても、どうしても膨張可能部材が障壁となって空気を通さないため、使用者の身体の過熱または発汗減少を招く。
【0010】
また、衣服内のスペースを節約するために、休止配置において折り畳まれている膨張可能部材を備えた保護衣も知られている。このようなタイプの衣服は、たとえば、国際公開第2008/044222号、および国際公開第2009/047733号に開示されている。これらの衣服は、膨張可能部材が障壁として機能せず、衣服内の少ない空間を占有する収容手段の中に収容されるため、通気性が改善される可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、衣服内のスペースを可能な限り小さくするために、膨張可能部材の完全な折り畳みまたは巻き取りがなされる。その結果、膨張式エアバッグは、折畳状態において、着用者の快適性に影響を与える可能性のある太い管状または巻き付き形状を帯びる。作動した際の膨張可能部材の適切な展開を可能にするために、折り畳まれた膨張可能部材が通常は使用者の首または肩に配置されるという事実を考慮すると、折り畳まれたエアバッグが着用者の頭部および腕部の動きを阻害するおそれがある。同時に、膨張可能部材が折り畳まれた状態で生じる膨らみは、膨張可能部材が取り付けられたウェアラブル保護具の空力特性にも影響を与える可能性がある。また、膨張可能部材を完全に折り畳んでしまうと、危険時に膨張可能部材の展開が遅くなる可能性がある。
【0012】
さらに、折り畳まれた膨張可能部材は、衣服の外側に展開されるように設計される。実際、収容手段(たとえば、ポケットまたは衣服の領域)は、調節された破断張力を有する糸を用いる縫い目によって密封される。膨張装置の作動は、膨張可能部材を展開させ、調節された破断張力を有する縫い目を破り、衣服から出てくる。また、このような膨張可能部材の配置には、いくつかの欠点がある。
【0013】
最初に、膨張した膨張可能部材は外部環境にさらされるため、障害物または路面に直接接触して破裂し、着用者の安全性に影響を与える可能性がある。さらに、膨張式バッグの外方への展開を可能にするために、その外面に沿って破断可能な縫い目を備えた収容手段が設けられているため、衣服の製造が複雑である。したがって、衣服の製造は、コストおよび時間がかかる。さらに、一旦膨張すると、膨張可能部材は風船状になり、障害物または地面に衝突の後に転動を開始し、怪我をする可能性が高くなる。同時に、誤検知で作動した場合、運転者が車両の制御を失う危険性があります。最後に、膨張可能部材が作動した後は、たとえ着用者が被害を受けていなくても、メーカーによって修復されるまでは衣服を再利用できないので、着用者は乗車を中止する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明の主な目的は、公知のウェアラブルエアバッグ装置に関する前述の欠点を克服するか、または少なくとも低減するように構成された、ウェアラブル保護具を提供することである。
【0015】
より具体的には、本発明の主な目的は、膨張可能部材を備え、かつ、保護具を通した空気の流れを可能にするように構成されたウェアラブル保護具を提供することである。それによって、本発明は、装着者に提供される安全レベルに影響を与えることなく、通気性および快適性を向上させることである。
【0016】
本発明の別の目的は、ウェアラブル保護具の空気力学に影響を与えることのない折畳みまたは巻き取りに適した膨張可能部材を備えた、ウェアラブル保護具を提供することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、競争力のあるコストで製造するのに適した、膨張可能部材を備えたウェアラブル保護具を提供することである。
【0018】
本発明の他の目的は、膨張可能部材を備えたウェアラブル保護具であって、膨張可能部材が膨張した際の最終形状を制御するように構成された保護具を提供することにある。
【0019】
本発明のさらなる目的は、膨張した状態でも膨張可能部材の適切な配置を保証するように構成された、膨張可能部材を備えたウェアラブル保護具を提供することである。
【0020】
本発明の他の目的は、複数回使用するのに適し、いずれの引き続く作動においても同一の安全レベルを提供する、膨張可能部材を備えたウェアラブル保護具を提供することである。
【0021】
最後に、本発明の目的は、膨張後に使用者または顧客サービスによる最小限の介入を必要とする、膨張可能部材を備えたウェアラブル保護具を提供することである。
【0022】
前述の目的、および本明細書の以下の説明でより良好に理解される他の目的は、請求項1に記載のウェアラブル保護具によって達成される。
【0023】
本発明の利点および特徴的な特徴は、添付の図面を参照するウェアラブル保護具の好適かつ非排他的な実施形態の以下の説明から、より明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】使用者が装着した状態の、本発明によるウェアラブル保護具の模式的背面図である。
図2】文字Aで識別される図1の特定領域の拡大図である
図2A】休止状態における、図1のウェアラブル保護具に取り付けられるように設計された膨張可能部材の側方断面図である。
図2B】膨張可能部材が作動状態にある、図2Aと同様の図である。
図2C】膨張可能部材の異なる配置を示す、図2Aと同様の図である。
図2D】膨張可能部材の異なる配置を示す、図2Aと同様の図である。
図3】異なる実施形態に係る、図2と同様の図である。
図3A図1のウェアラブル保護具の膨張可能部材の膨張段階を示す模式図である。
図3B図1のウェアラブル保護具の膨張可能部材の膨張段階を示す模式図である。
図3C図1のウェアラブル保護具の膨張可能部材の膨張段階を示す模式図である。
図3D図1のウェアラブル保護具の膨張可能部材の膨張段階を示す模式図である。
図4】第1の作動状態における、図1のウェアラブル保護具の一部を断面とした模式的正面図である。
図5図4のウェアラブル保護具の一部を断面とした模式的背面図である。
図6】ウェアラブル保護具が第2の作動状態にある、図4と同様の図である。
図7】ウェアラブル保護具が第2の作動状態にある、図5と同様の図である。
図8】本発明によるウェアラブル保護具の第2の実施形態に関する、図4に対応する図である。
図9】本発明によるウェアラブル保護具の第2の実施形態に関する、図5に対応する図である。
図10】本発明によるウェアラブル保護具の第2の実施形態に関する、図6に対応する図である。
図11】本発明によるウェアラブル保護具の第2の実施形態に関する、図7に対応する図である。
図12】本発明によるウェアラブル保護具のさらなる実施形態の一部を断面とした模式的正面図である。
図13】文字Bで識別される図12の特定領域の模式的拡大図である。
図14】膨張可能部材が第2の作動状態にある、図13と同様の図である。
図15】本発明によるウェアラブル保護具のさらなる実施形態の一部を断面とした模式的背面図である。
図16図15の切断線XVI-XVIに沿った模式的断面図である。
図17】本発明によるウェアラブル保護具の異なる実施形態を示す、図15と同様の図である。
図18】本発明によるウェアラブル保護具の異なる実施形態を示す、図15と同様の図である。
図19】本発明によるウェアラブル保護具の異なる実施形態の一部を断面とした模式的正面図である。
図20】文字Cで識別される図19の特定領域の模式的拡大図である。
図21】膨張可能部材が第2の作動状態にある、図20と同様の図である。
図22】膨張可能部材が展開状態にある、本発明によるウェアラブル保護具の模式的正面図である。
図23】文字Dで識別される図22の特定領域の模式的拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1図4図12図15図17図19および図22を参照すると、本発明によるウェアラブル保護具の例が、その全体を、参照番号10で示されている。
【0026】
ウェアラブル保護具10は、たとえばジャケットやスーツのような衣服とすることができ、あるいはまた、外側の保護衣と組み合わせて使用されるのに適した下着とすることができる。さらなる実施形態において、ウェアラブル保護具10は、さらなる衣服の上または下に着用されるように設計されたハーネスとすることができる。
【0027】
ウェアラブル保護具10は、少なくとも1つの膨張可能部材20を含む。膨張可能部材20は、衝撃、落下または滑動に対してウェアラブル保護具10の着用者を保護するために膨張するように、たとえば空気またはガスのような流体で膨張するように設計されている。好ましくは、膨張可能部材20は、袋様の形状を有する。
【0028】
有利なことには、膨張可能部材20は、膨張可能体積V(たとえば図2A~2D参照)を画定するように、膨張可能部材20の周囲に沿って互いに接合される第1面21および第2面22を含む。当該技術分野において周知のように、膨張可能部材20の第1面21と第2面22とを、それらの周縁部において縫合することができる。
【0029】
あるいはまた、膨張可能部材20は、たとえばジャカード織機を用いた単一の織り操作によって製造することができる。有利には、ジャカード織機によって、接続部分によって周縁を結合される2つの布層21および22によって形成される、いわゆるワンピース織物(OPW)エアバッグを得ることが可能である。
【0030】
好ましくは、膨張可能部材20は、膨張した際の膨張可能部材20の第1面21および第2面22の間の距離を制限するために、第1面21と第2面22とを接続する1つまたは複数の内部テザー40(たとえば図2Aおよび2B参照)を有して提供される。テザーによって、膨張した際の膨張可能部材20の最終形状を制御することが可能である。
【0031】
別の実施形態において、膨張可能部材20は、膨張可能部材20の第1面21と第2面22とを接続する内部シーム(添付の図面に不図示)を有して提供され、膨張可能部材20の内部に膨張しないゾーンを形成することができる。
【0032】
膨張可能部材20は、収縮状態にある、少なくとも部分的に折り畳まれた(folded)状態または巻き取られた(rolled)状態(たとえば図4~5、図8~9、図12図15図17図18および図19参照)と、膨張状態にある、展開(unfolded)状態または巻出(unrolled)状態(たとえば図6~7および図10~11参照)との間で移行できるように設計されている。
【0033】
少なくとも部分的に折り畳まれた状態または巻き取られた状態では、膨張可能部材20は、ウェアラブル保護具10内に設けられたハウジング30の内部に収容される。
【0034】
本発明によれば、展開状態または巻出状態の膨張可能部材20は、ハウジング30の範囲内に留まる。すなわち、膨張可能部材20は、作動時に衣服の外側に展開するように設計されていない。
【0035】
有利なことには、図2A図2Cおよび図2Dに明確に示されているように、収縮状態である少なくとも部分的に折り畳まれた状態または巻き取られた状態の膨張可能部材20は、展開または巻出部分Uと、折畳または巻取部分Fを有することができる。好ましくは、膨張可能部材20の折畳または巻取部分Fは、膨張可能部材20が少なくとも2層に重なることによって形成されている。
【0036】
好ましくは、膨張可能部材20の展開または巻出部分Uは、展開または巻出状態、すなわち膨張状態にあるときに膨張可能部材20によって覆われる面積の約3%から約80%に相当する面積を占有する。より好ましくは、膨張可能部材20の展開または巻出部分Uは、展開または巻出状態にあるときに膨張可能部材20によって覆われる面積の約30%から約80%に相当する面積を占有する。
【0037】
たとえば、その展開または巻出状態で1200cm2の面積を覆うことができるように、幅20cmおよび長さ60cmの長方形の形状を有する膨張可能部材20の場合、部分的に折り畳まれた状態または巻き取られた状態における膨張可能部材20の展開または巻出部分Uは、20cmの幅、および約1.8~2.0cmから約48cmまでの範囲、好ましくは約18cmから約48cmまで変動する長さを有するストリップに相当し得る。
【0038】
以下において、明瞭性のために、異なる表示がない限り、「折り畳まれた(折畳、folded)」という表現を「巻き取られた(巻取、rolled)」という表現と同義とであるものとして使用する。同様に、特に断りがない限り、「展開された(展開、unfolded)」という表現を「巻き出された(巻出、unrolled)」という表現と同義語として使用する。
【0039】
図2Aおよび図2Bは、収縮した状態(図2A参照)における膨張可能部材20の展開部分Uの長さU1と、膨張した状態(図2B参照)における膨張可能部材20が完全に展開した(すなわち展開した)ときの長さLとの比較を、概略的に示す。
【0040】
有利なことには、一方において、膨張可能部材20のこのような構成は、通常の使用中にウェアラブル保護具10の通気性を改善することを可能にする。なぜなら、折り畳まれた部分Fにより、ウェアラブル保護具10において膨張可能部材20が占有する部分が減少するためである。他方において、膨張可能部材20の最終的な面積に対してその一部のみを折り畳むことができるため、折畳部分Fの厚さtは、完全に巻き取りまたは折り畳まられた膨張可能部材に比較して減少し、ウェアラブル保護具10の快適性に影響を与えないようにすることが可能である。
【0041】
縮小された折畳部分Fを設けることにより、有利には、2.5cm未満、好ましくは1.8~2.2cmの間に含まれる折畳部分の厚さtを得ることができる。特に、そのような低減された厚さtは、使用者の動きを妨げず、またはウェアラブル保護具10の空気力学に影響を与えない。
【0042】
明瞭性のために、添付の図面において、展開部分Uにおける膨張可能部材20の第1面21と第2面22とは、離間されている。しかし、収縮した状態では、第1面21と第2面22とは、互いに接触している。
【0043】
本発明によれば、展開状態の膨張可能部材20は、ハウジング30の範囲内に留まる。
少なくとも部分的に折り畳まれた状態では、膨張可能部材20はハウジング30の限られた部分を占有し、一方、展開状態では、膨張可能部材20はハウジング30のより大きな部分を占有する。いくつかの実施形態では、展開状態の膨張可能部材20は、ハウジング30の全体を占有する。
【0044】
図4に示すように、少なくとも部分的に折り畳まれた状態の膨張可能部材20は、ハウジング30の第1部分31を占有してもよい。第1部分31は、第1部分31をハウジング30の第2部分33から少なくとも部分的に分離する隔壁35によって部分的に閉鎖されてもよい。隔壁35は、ハウジング30を画定する内面32と外面34との間に延在し、これらを互いに接続する。隔壁35は、第1部分31と第2部分33との間の分離領域の中央区域に配置することができる。
【0045】
あるいはまた、図5に示すように、隔壁35は、第1部分31と第2部分33との間の分離領域を完全に閉鎖することができる。この場合、隔壁35は、第1部分31を第2部分33から完全に分離するように、第1部分31を密閉する。有利なことには、隔壁35は、膨張可能部材20が膨張したときに破断して、後者が第2部分33に向かって膨張することを可能にするように、調節された破断張力を有することができる
【0046】
隔壁35は、耐久性が低減された糸で作られた縫い目で作ることができる。あるいはまた、隔壁35は、たとえば面ファスナーのような解放可能な締結手段によって作ることができる。この場合、有利なことには、膨張可能部材20の展開後、さらなる展開のために隔壁35を復元してもよい。
【0047】
隔壁35が膨張を妨げないので、隔壁35は、膨張可能部材20の別個の部分を互いに接続する必要なく、かつ、着用者に提供される保護に影響を与えることなしに、膨張可能部材20を折畳形状に保持することを可能にする。
【0048】
予想されるように、膨張プロセス中の膨張可能部材20は、ウェアラブル保護具10の内部に残っている保護すべき表面を覆うように展開することが可能である。
【0049】
図4および図5に示すように、膨張可能部材20は、膨張可能部材20の外周に配置される少なくとも1つの周囲折畳部分Fを有して提供することができる。本実施形態では、膨張可能部材の端部は、それ自体に折り畳まれている。あるいはまた、図13図15図17および図18に示すように、膨張可能部材20は、膨張可能部材20の内部領域に配置される少なくとも1つの内部折畳部分Fを含むことができる。この実施形態では、膨張可能部材の内部部分がそれ自体に折り畳まれる。
【0050】
有利なことには、膨張可能部材20は、それが収縮状態にあるとき、たとえそれが折畳状態であっても、保護されるべき身体部分を覆うように寸法設定されたハウジング30全体を占有してもよい。
【0051】
膨張可能部材が、収縮状態にある休止配置から膨張状態にある作動配置に移行する際に、保護表面積の減少をもたらす横方向の収縮を受けることが知られている。膨張可能部材の内部領域または周囲部分に折り返し部分を設けることで、そのような横方向の収縮を克服できる可能性がある。実際、膨張可能部材20が膨張する際に、折畳部分Fが展開して、膨張可能部材20の収縮を補償する。
【0052】
明らかなことには、膨張可能部材20は、複数の内部折畳部分および/または複数の周囲折畳部分を備えることができる。
【0053】
ハウジング30の内部に留まることで、膨張可能部材20は、展開時に地面や障害物などの外部物体に接触することがなく、穿孔または引裂の危険性がない。同時に、膨張可能部材20が誤作動した場合であっても、使用者がオートバイの制御を失う危険性を低減することができる。
【0054】
予想されるように、図1図2、および図4~11に示すように、ハウジング30は、ウェアラブル保護具10の内面32および外面34によって画定される(明確さの理由から、図4図11では外面34を省略している)。
【0055】
あるいはまた、ハウジング30は、ウェアラブル保護具10に意図的に設けられたポケットとすることも可能である。さらなる実施形態では、ハウジング30は、ウェアラブル保護具10の外面または内面に適用される別個のケーシングとすることができる。別個のケーシングは、ウェアラブル保護具10に恒久的にまたは取り外し可能に固定することができる。
【0056】
有利なことには、ハウジング30は、内面32と外面34とを接続する、1つまたは複数の内部連結材90(図3参照)を有して提供することができる。内部連結材90は、そこに収容された膨張可能部材20が、その少なくとも部分的に折り畳まれた状態から展開状態へ移行するときに、ハウジング30の膨張を制限するのに適している。内部連結材90は、ウェアラブル保護具10の通常の使用時には、ハウジングの内部に折りたたまれた非緊張状態にあるが、膨張可能部材が膨張状態に移行する際には、内部連結材90は引張力を受ける。このようにして、内部連結材90は、膨張可能部材の寸法の増大に対抗するのに適しており、膨張時に、膨張可能部材が風船状の形状をとる可能性を回避することができる。
【0057】
内部連結材90は、膨張可能部材20の内部テザーに代えて、またはそれらと組み合わせて使用することができる。内部連結材90は、柔軟な材料で作ることができる。あるいはまた、内部連結材90は、弾性材料で作ることができる。
【0058】
好ましくは、ハウジングは、たとえば皮革または革状材料のような通気性織物、またはメッシュ材料で作製される。このようにして、ハウジングは、その表面を通した空気の通過を可能にし、着用者の快適性を向上させる。そのような通過は膨張可能部材によって妨げられることはない。なぜなら、膨張可能部材は少なくとも部分的に折り畳まれているため、ハウジングのより小さな領域を覆う可能性があるからである。同時に、通常の使用中に少なくとも部分的に折り畳まれた状態で配置されることで、膨張可能部材20は、ウェアラブル保護具を剛直にしたり、不快にしたりしない。
【0059】
添付の図面に示すように、折畳状態または巻取状態の膨張可能部材20は、複数回にわたって折畳または巻取がなされている。
【0060】
添付の図面に示すように、膨張可能部材の折畳部分または巻取部分Fは、膨張可能部材の、膨張手段80が接続された端部部分から総体的に最も遠い端部部分または内部部分を折り畳むことまたは巻き取ることによって得られる(図2Aを参照)。
【0061】
膨張可能部材20を、異なる折り畳み線に沿って折り畳んで、折畳部分Fが、少なくとも部分的には、アコーディオン状の構成(図2A参照)、またはS字状の構成(図2C参照)、またはU字状の構成(図2D参照)をとることができる。U字状の構成は、内面21と外面22とによって画定される膨張可能部材20の空洞の内部に、膨張可能部材20の端部を挿入することによって得られる。この構成により、膨張可能部材20の折畳部分Fの種々の部分を互いに接続する必要がなく、折畳部分Fをその折畳形状に安定的に維持することができる。有利なことには、上述した全ての構成により、膨張可能部材20の折畳部分Fの厚さを減少させることができる。
【0062】
あるいはまた、膨張可能部材20を巻き取ることで、巻取部分Fを得ることができる。図3Aは、巻取形状を模式的に示す。
【0063】
図3A~3Dに模式的に示すように、膨張可能部材20の少なくとも部分的に折り畳まれた状態または巻き取られた状態から展開状態または巻出状態への移行は、外面22および内面21によって画定される容積Vを満たすために膨張可能部材20内に導入される膨張流体によって自動的に引き起こされる。膨張流体によって及ぼされる力は、保護されるべき着用保護具の領域を覆うために展開される膨張可能部材20の折畳部分または巻取部分Fの緩やかな展開または巻出を可能にする。
【0064】
好ましくは、ウェアラブル保護具10は、緊急時の展開に影響を与えることなしに、膨張可能部材20の折畳部分Fをその折畳状態に維持するように設計された保持手段50を含む。
【0065】
有利なことには、保持手段50は、膨張可能部材20の折畳部分Fが膨張した際の展開を可能にするように、調節された破断張力を有する。たとえば、保持手段50は、膨張可能部材20の折畳部分Fを一周するのに適した1つまたは複数の紙ストリップ51で構成されてもよい(図2参照)。あるいはまた、保持手段は、その両端に面ファスナーを有して提供される布製ストリップであることもできる。
【0066】
さらなる実施形態(添付の図面には不図示)において、保持手段50は、膨張可能部材20の折畳部分の周囲に配置される外部スリーブである。あるいはまた、外部スリーブは、膨張可能部材20の展開部分の周囲に配置することもできる。外部スリーブは、膨張可能部材20の展開中に破断するように設計される。
【0067】
さらなる実施形態(図15および図16参照)において、保持手段は、膨張可能部材20の折畳部分Fの対向面を接続するのに適した、解放可能なボタン52、たとえばスナップファスナーボタンであってもよい。ボタン52は、調節された解放力を有するように設計される。
【0068】
あるいはまた、保持手段は、膨張可能部材の折畳部分Fと膨張可能部材の対向部分とを外部的に接続する少なくとも1つの連結部材53であってもよい(たとえば図19~21参照)。好ましくは、連結部材53は、可撓性テザーである。
【0069】
有利なことには、連結部材53は、弾性材料で作ることができる。このようにして、連結部材53は、伸長、および自発的な初期形状への復帰ができるので、膨張後に膨張可能部材20を元の折畳形状に戻すことを支援することができる。実際、弾性連結部材53は、膨張可能部材の部分Fの折り畳みを可能にすることができる。
【0070】
添付の図面に示すように、折畳状態の膨張可能部材20は、着用者の肩および/または胸の上部に配置することができる。膨張した際には、膨張可能部材20の折畳部分Fの展開がなされ、着用者の腕、背中および底部をも覆うのに適している。
【0071】
明らかなように、膨張可能部材20の異なる配置を想定することができる。たとえば、ウェアラブル保護具がズボンである場合、1つの膨張可能部材は、膨張した際にユーザの脚に向かって展開できるように、膨張可能部材を少なくとも部分的に折り畳まれた状態でウェストラインの近傍に配置することできる。
【0072】
ウェアラブル保護具10は、保護具10の異なる区域に配置される複数の膨張可能部材を含むことができる。
【0073】
有利なことには、ウェアラブル保護具10は、ハウジング30の内面32と外面34との間に設けられた1つまたは複数のスペーサ60を含むことができる。スペーサ60の機能は、緊急時に膨張可能部材20の折畳部分Fの折畳状態から展開状態への展開を容易にするために、ハウジングの内面および外面を離間しておくことである。有利なことには、スペーサ60は、ウェアラブル保護具の使用中にハウジングの内面および外面が互いに接着し、それによって膨張可能部材20の折畳部分Fの展開が妨げられることを回避する。スペーサ60は、それぞれハウジング30の内面32および外面34に接続される第1端および第2端を有する、プラスチック製のピンで構成することができる(図2参照)。スペーサ60は内面32と外面34との間の距離を一定に保つことができるので、柔軟な内部連結材と同様に、ハウジング内部に収容された膨張可能部材20の膨張を制限するのにも効果的であり得る。
【0074】
図1および図5を参照すると、好ましくは、ハウジング30は、少なくとも部分的に折り畳まれた状態および展開状態の両方において、膨張可能部材20をハウジング30内に保持できる支持手段70も含む。有利なことには、支持手段70は、ウェアラブル保護具に固定された剛性または半剛性のプレートであることができ;当該プレートは、ポリマー材料で作製される(図1参照)。あるいはまた、支持手段70は、ウェアラブル保護具の背部に適用される剛性または半剛性の背部保護材とすることもできる(図9参照)。
【0075】
有利なことには、膨張可能部材20の周囲部分を支持手段70に固定して、これによって、少なくとも部分的に折り畳まれた状態および展開状態の両方において、膨張可能部材20が、着用者に提供される保護に影響を与えるおそれがある変位(displacement)を受けないことを保証することができる。あるいはまた、膨張可能部材20の周囲部分は、取り外し可能な締結手段92によってハウジング30の周囲内縁に直接締結することができる。有利なことには、これらの締結手段92は、ハウジングの内縁に固定され、膨張可能部材20の周縁部に設けられるスリット96と係合するように設計されたストリップ94で構成され得る(図23参照)。あるいはまた、締結手段は、面ファスナー固定手段を含むことができる。
【0076】
ハウジングの内縁に固定された膨張可能部材の周囲部分は、膨張可能部材20の展開部分Uの位置に設けられていることが好ましい。このようにして、膨張可能部材の周囲部分を保持することによって、締結手段は、作動時の膨張可能部材の折畳部分Fの展開または巻出を補助することができる。同時に、締結手段によって、ハウジング30の内部での折畳部分Fの展開または巻出の間に、膨張可能部材が変位を受けることを回避することが可能である。
【0077】
あるいはまた、膨張可能部材の折畳部分Fの一部をハウジング30の内面に接続するための、締結手段65も設けることができる。このようにして、膨張可能部材を少なくとも部分的に折り畳まれた構成に維持することが可能である(図18参照)。また、これらの締結手段65は、調節された破断張力を有する材料で作製することができ、あるいは、面ファスナー固定手段を含むことができる。さらなる実施形態において、締結手段65はまた、膨張後における初期折畳状態の膨張可能部材の再配置を容易にするように、弾性材料で作ることができる。
【0078】
図18に示すように、膨張可能部材20がウェアラブル保護具10の背部において2つの別個の折畳部分を有して提供される場合、膨張可能部材20の折畳部分Fのそれぞれをハウジング30の対向する内部部分と接続するように、弾性締結手段65を交差した構成で配置することが可能である。
【0079】
締結手段65は、支持手段70と組み合わせてもよいし、支持手段70を用いずに用いてもよい。
【0080】
好ましくは、支持手段70は、膨張可能部材20と流体連通し、膨張可能部材に対して所定量の膨張流体を導入するように構成される、膨張装置80を支持することもできる。
【0081】
膨張装置80の作動は、オートバイの動きを常に監視する制御装置(図示せず)により電気的に制御することができる。より具体的には、制御ユニットは、一定の時間間隔で、その内部に予めロードされたアルゴリズムを用いて、たとえばウェアラブル保護具10またはオートバイに配置された適切なセンサ(図示せず)によって検出されたデータを比較することができる。このアルゴリズムに基づいて、センサによって検出されたデータが、オートバイ運転者が乗っているオートバイの制御不能またはその他の異常を示す場合、制御ユニットは、膨張可能部材20を膨張させるための作動コマンドを膨張装置80に送信する。その結果、膨張可能部材20は、その少なくとも部分的に折り畳まれた状態から展開状態へ移行する。有利なことには、支持手段70は、ウェアラブル保護具10の制御ユニットおよび/またはセンサを支持することができる。代替案として、膨張装置80は、オートバイに接続された作動ケーブルを利用することによって機械的に制御することができ、このケーブルは、典型的には転倒および/または衝撃によって引き起こされるような、オートバイからオートバイ運転者が分離した場合に、膨張装置80を作動させる。
【0082】
当技術分野において周知であるように、一旦膨張した膨張可能部材20は、その収縮状態に復帰することができる。いくつかの実施形態によれば、膨張可能部材20は、展開後にその折畳状態に復帰することもできる。
【0083】
有利なことには、膨張装置80は、膨張可能部材20を複数回膨張させて、膨張可能部材20の膨張を時系列的に実施できるように、複数の膨張装填量を含んでもよい。
【0084】
この時点で、本発明によるウェアラブル保護具10を用いて、予め定められた目的がどのように達成され得るかは明らかである。
【0085】
ウェアラブル保護具の減少した表面を占有する可能性がある折畳部分または巻取部分Fの提供により、膨張可能部材20は、ウェアラブル保護具10は、ユーザに高いレベルの快適性および通気性を提供する。
【0086】
さらに、折畳部分Fは、膨張時の膨張可能部材の面積の限定された部分を占有するため、折畳部分Fが、その厚みによって、使用者の動きを妨げること、ならびにウェアラブル保護具の空気力学に影響を及ぼすことが回避される。
【0087】
さらに、緊急時において、少なくとも部分的に折り畳まれた状態から展開状態への移行は、即時的であり、使用者に提供される保護に影響を与えない。
【0088】
また、折畳部分Fが膨張可能部材20の内部領域を占有する場合、膨張可能部材のためのより大きなハウジングを配置する必要なしに、膨張による膨張可能部材の収縮のバランスをとるために使用することが可能である。
【0089】
また、膨張可能部材の膨張を許容するための調節された破断可能張力を有する部分または領域を設ける必要がないため、ウェアラブル保護具を競争力のあるコストで製造することができる。
【0090】
最後に、折畳状態から展開状態への移行中、膨張可能部材は露出しないので、引き裂きおよび/または破裂に対してより良好に保護される。
【0091】
前述のウェアラブル保護具10の実施形態に関して、当業者は、特定の要件を満たすために、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、記載された要素に修正を加えること、および/または、記載された要素を同等の要素に置換することができる。
図1
図2
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23