(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】楔形の渦体を備えた混合カートリッジ
(51)【国際特許分類】
F16K 11/044 20060101AFI20241203BHJP
E03C 1/044 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
F16K11/044 B
E03C1/044
(21)【出願番号】P 2022525088
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(86)【国際出願番号】 EP2020076105
(87)【国際公開番号】W WO2021083576
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】102019129058.9
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513228719
【氏名又は名称】グローエ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Grohe AG
【住所又は居所原語表記】58675 Hemer, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オーレ ベネディクト コストアツ
(72)【発明者】
【氏名】ヨナス キック
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-145576(JP,U)
【文献】特開2008-202702(JP,A)
【文献】国際公開第97/032147(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110285255(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第2407849(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/00-11/24
F16K 7/00- 7/20
F16K 31/12-31/165;31/36-31/42
F16K 31/44-31/62
F16K 21/00-24/06
E03C 1/00- 1/10
G05G 1/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛生器具用の混合カートリッジ(1)であって、少なくとも、
-温水用の少なくとも1つの温水流入部(3)と、冷水用の少なくとも1つの冷水流入部(4)とを備えた混合室(2)
と、
-該混合室(2)内で温水と冷水とを少なくとも部分的に渦動させる渦部材(5)であって、該渦部材(5)は、複数の
半径方向外側の楔形の渦体(6)と、
前記複数の半径方向外側の楔形の渦体(6)の半径方向内側に配置された複数の
半径方向内側の楔形の渦体(7)とを有している、渦部材(5)
と
を
有しており、
前記複数の半径方向外側の楔形の渦体(6)と前記複数の半径方向内側の楔形の渦体(7)とは、それぞれ、先の尖ったヘッド(28)を有しており、前記複数の半径方向外側の楔形の渦体(6)と前記複数の半径方向内側の楔形の渦体(7)とは、それぞれ、前記先の尖ったヘッド(28)から出発してV字形に延びる2つの脚部(29)から形成されており、前記2つの脚部(29)の間に、前記混合カートリッジ(1)の周方向(9)で所定の角度が形成されている、
混合カートリッジ(1)。
【請求項2】
前記
半径方向外側の楔形の渦体(6)と前記
半径方向内側の楔形の渦体(7)とは、スリーブ(8)に形成されている、請求項1記載の混合カートリッジ(1)。
【請求項3】
前記
半径方向外側の楔形の渦体(6)及び前記
半径方向内側の楔形の渦体(7)は、環状に配置されている、請求項1または2記載の混合カートリッジ(1)。
【請求項4】
前記複数の
半径方向外側の楔形の渦体(6)は、
前記周方向(9)に互いに間隔をあけて配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の混合カートリッジ(1)。
【請求項5】
前記複数の
半径方向内側の楔形の渦体(7)は、
前記周方向(9)に互いに間隔をあけて配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の混合カートリッジ(1)。
【請求項6】
前記
半径方向外側の楔形の渦体(6)と前記
半径方向内側の楔形の渦体(7)とは、
前記周方向(9)において互いにずらされて配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の混合カートリッジ(1)。
【請求項7】
前記
半径方向内側の楔形の渦体(7)は、前記
半径方向外側の楔形の渦体(6)に取り付けられている、請求項1から6までのいずれか1項記載の混合カートリッジ(1)。
【請求項8】
前記渦部材(5)は、混合水の混合水温度を調節する調節部材(10)を取り囲んでいる、請求項1から7までのいずれか1項記載の混合カートリッジ(1)。
【請求項9】
前記渦部材(5)は、前記調節部材(10)と当該混合カートリッジ(1)のケーシング(12)との間のリングギャップ(11)内に配置されている、請求項8記載の混合カートリッジ(1)。
【請求項10】
前記温水流入部(3)を通る温水の流量と、前記冷水流入部(4)を通る冷水の流量とを調節する調節スライダ(13)を有しており、該調節スライダ(13)は、前記調節部材(10)により当該混合カートリッジ(1)の軸線方向(14)に移動可能であり、前記調節スライダ(13)内には、冷水用の第1の数の冷水通路(15)と、温水用の第2の数の温水通路(16)とが形成されており、前記第1の数および前記第2の数は、前記
半径方向外側の楔形の渦体(6)の第3の数および前記
半径方向内側の楔形の渦体(7)の第4の数と相違している、請求項8または9記載の混合カートリッジ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷水と温水とを所望の混合水温度を有する混合水に混合可能な、衛生器具用の混合カートリッジに関する。衛生器具は、特に必要に応じて、洗面台、流し、シャワーまたは浴槽に混合水を供給するために用いられる。
【0002】
伸長材料部材により混合水の混合水温度を調節可能な混合カートリッジが知られている。冷水と温水とが伸長材料部材まで進む距離は極めて短いため、冷水と温水とは伸長材料部材に到達しても良好に混合されていないことが多い。混合カートリッジ内の流れ特性に基づき、伸長材料部材における温度は部分的に、(完全に混合された)混合水の混合水温度とは明らかに異なっているため、混合水温度を、伸長材料部材により最適に調節することができない。
【0003】
したがって本発明の課題は、従来技術に関して述べた問題を少なくとも部分的に解決すると共に、特に、混合水の混合水温度をより良好に調節可能な、衛生器具用の混合カートリッジを提供することにある。
【0004】
この課題は、独立特許請求項に記載の特徴に基づく混合カートリッジにより解決される。混合カートリッジの別の有利な構成は、従属特許請求項に記載されている。従属特許請求項に個別に記載された特徴は、それぞれ技術的に有意な任意の形式で互いに組み合わせられてよく、本発明の別の構成を規定する、ということを指摘しておく。さらに、特許請求項に記載の特徴は、本明細書中でより詳細に規定かつ説明され、この場合、本発明の別の好適な構成も説明される。
【0005】
このためには、少なくとも以下のコンポーネント、すなわち:
-温水用の少なくとも1つの温水流入部と、冷水用の少なくとも1つの冷水流入部とを備えた混合室、および
-混合室内で温水と冷水とを少なくとも部分的に渦動させる渦部材であって、渦部材は、複数の外側の楔形の渦体と、複数の内側の楔形の渦体とを有している、渦部材
を有する、衛生器具用の混合カートリッジが寄与する。
【0006】
混合カートリッジは、特に必要に応じて、洗面台、流し、シャワーまたは浴槽に混合水を供給するために用いられる衛生器具と共に使用可能である。このために混合カートリッジには、特に所定の冷水温度を有する冷水と、所定の温水温度を有する温水とが供給可能であってよい。冷水と温水とは、混合カートリッジにより、所望の混合水温度を有する混合水に混合可能である。混合水温度は、特に混合カートリッジの、例えば伸長材料部材の形式の調節部材により調節可能である。冷水温度は、特に最高25℃(摂氏)、好適には1℃~25℃、特に好適には5℃~20℃でありかつ/または温水温度は、特に最高90℃、好適には25℃~90℃、特に好適には55℃~65℃である。混合カートリッジは、例えば衛生器具の器具ケーシング内に配置されていてよい。器具ケーシングは、特に少なくとも部分的にプラスチックおよび/または(鋳造)金属、例えば黄銅等から成っている。器具ケーシングは、支持体、例えば調理台、流し、洗面台、浴槽またはシャワーに取付け可能であってよい。
【0007】
混合カートリッジは、内部で温水と冷水とが混合可能な混合室を有している。混合室は、特に混合カートリッジの、特に(実質的に)管状のかつ/または長手方向軸線に沿って延在するケーシングの内部に形成されている。混合室内へは、温水用の少なくとも1つの温水流入部と、冷水用の少なくとも1つの冷水流入部とが開口している。混合室内には、混合室内で温水と冷水とを少なくとも部分的に渦動させるために用いられる渦部材が配置されている。このために渦部材は、複数の外側の楔形の渦体と、複数の内側の楔形の渦体とを有している。「外側」および「内側」という用語は、特に混合カートリッジもしくは渦部材の半径方向、すなわち特に長手方向軸線に直交する方向に関係する。つまり外側の楔形の渦体は、半径方向において、内側の楔形の渦体よりもさらに外側に配置されている。ただし、外側の楔形の渦体と内側の楔形の渦体とは、半径方向において特にすぐ隣り合って配置されているかもしくは接触し合っている。「楔形」とは、ここでは特に、渦体が先の尖ったヘッドもしくは先の尖った縁部または領域を有していることを意味する。渦体は、先の尖ったヘッドもしくは先の尖った縁部または先の尖った領域から、特に冷水および温水の流れ方向にかつ/または混合カートリッジの長手方向に広幅になる。この場合、渦体の幅は、特に混合カートリッジの周方向に増大する。半径方向における渦体の厚さは、特に(実質的に)一定である。長手方向は、特に長手方向軸線に対して平行に延びている。渦体はそれぞれ、先の尖ったヘッド(もしくは先の尖った縁部または先の尖った領域)から出発してV字形に延びる2つの脚部もしくは足から形成されていてよい。脚部もしくは足は、それらのヘッドとは反対の側に位置する端部においてフットで終わっていてよい。個々の外側の楔形の渦体と、個々の内側の楔形の渦体とは、特に同一に形成されている。さらに渦部材は、例えば2~20の外側の楔形の渦体および/または2~20の内側の楔形の渦体を有していてよい。外側の楔形の渦体と内側の楔形の渦体とは、混合室内で温水と冷水とを少なくとも部分的に(半径方向に)渦動させる。これにより、(例えば温水から成る)内側の流動層が調節部材により剥離させられ、(例えば冷水から成る)外側の流動層と共に少なくとも部分的に渦動させられてよい。これにより、調節部材における温度の平均値が、温水と冷水との完全な混合後の混合水温度により正確に相応することになり、これにより、混合カートリッジの調節特性が改良される。
【0008】
外側の楔形の渦体と内側の楔形の渦体とは、スリーブに形成されていてよい。スリーブは、特に少なくとも部分的に管状に形成されている。さらに、外側の楔形の渦体と内側の楔形の渦体とは、特にスリーブの内周面に形成されている。
【0009】
外側の楔形の渦体及び内側の楔形の渦体は、環状に配置されていてよい。
【0010】
複数の外側の楔形の渦体は、周方向に互いに間隔をあけて配置されていてよい。このことは、個々の外側の楔形の渦体の間に、温水と冷水とが通流可能な通路が形成されている、ということを意味し得る。
【0011】
複数の内側の楔形の渦体は、周方向に互いに間隔をあけて配置されていてよい。このことは、個々の内側の楔形の渦体の間に、温水と冷水とが通流可能な通路が形成されている、ということを意味し得る。
【0012】
外側の楔形の渦体と内側の楔形の渦体とは、周方向において互いにずらされて配置されていてよい。このことは特に、外側の楔形の渦体と内側の楔形の渦体とは、半径方向において互いに(完全には)整合していない、ということを意味し得る。
【0013】
内側の楔形の渦体は、外側の楔形の渦体に取り付けられていてよい。特に内側の楔形の渦体は、外側の楔形の渦体に材料結合式に結合されていてよい。さらに、内側の楔形の渦体は、特に外側の楔形の渦体に設けられた脚部のフットに(のみ)取り付けられている。
【0014】
渦部材は、混合水の混合水温度を調節する調節部材を取り囲んでいてよい。このことは特に、調節部材が渦部材を貫通して延びている、ということも意味し得る。調節部材は、特に伸長材料部材の形式で形成されている。
【0015】
渦部材は、調節部材と混合カートリッジのケーシングとの間のリングギャップ内に配置されていてよい。この場合、外側の楔形の渦体は、半径方向において特にケーシングに接触していてよくかつ/または内側の楔形の渦体は、半径方向において特に調節部材に接触していてよい。
【0016】
混合カートリッジは、温水流入部を通る温水の流量と、冷水流入部を通る冷水の流量とを調節する調節スライダを有していてよく、この場合、調節スライダは、調節部材により混合カートリッジの軸線方向に移動可能であり、調節スライダ内には、冷水用の第1の数の冷水通路と、温水用の第2の数の温水通路とが形成されており、第1の数および第2の数は、外側の楔形の渦体の第3の数および内側の楔形の渦体の第4の数と相違している。調節スライダにより、温水流入部もしくは温水調節ギャップと、冷水流入部もしくは冷水調節ギャップとが少なくとも部分的に開閉され得、これにより、温水と冷水との間の混合比を、混合水温度を調節するために制御することができる。外側および内側の楔形の渦体の数とは異なる冷水通路および温水通路の数は、外側および内側の楔形の渦体と、冷水通路および温水通路との間で異なるピッチをもたらす。これにより、温水および冷水の渦動が大幅に改良される。
【0017】
以下に、本発明ならびに技術的な環境を、図面に基づきより詳細に説明する。図面は、本発明の1つの特に好適な実施形態を示すものであるが、本発明は、これに限定はされない、ということを指摘しておく。この場合、図面において同一の構成部材には、同一の符号を付してある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】混合カートリッジを概略的に例示する縦断面図である。
【
図2】渦部材を備えた混合カートリッジのスリーブを概略的に例示する図である。
【
図3】混合カートリッジを概略的に例示する詳細図である。
【
図4】混合カートリッジのスリーブと調節スライダとを概略的に例示する横断面図である。
【0019】
図1には、冷水と温水とを所定の混合水温度を有する混合水にすることができる混合カートリッジ1が縦断面図で示されている。混合カートリッジ1はケーシング12を有しており、ケーシング12は(実質的に)管状に形成されており、混合カートリッジ1の長手方向軸線17に沿って延在している。ケーシング12内には、少なくとも1つの温水流入部3と、少なくとも1つの冷水流入部4とが形成されている。ここに示す混合カートリッジの実施形態は、複数の温水流入部3と冷水流入部4とを有しており、これらは
図2に示すケーシング12の周方向9に配分されて配置されている。温水流入部3を介して温水を、かつ冷水流入部4を介して冷水を、混合カートリッジ1の混合室2内へ案内可能である。つまり混合室2は、水の流れ方向において温水流入部3および冷水流入部4の下流側に配置されている。混合室2は、温水と冷水とが互いに出会う領域内で始まる。混合室2内で、温水と冷水とを少なくとも部分的に、所定の混合水温度を有する混合水に混合可能である。水の流れ方向において混合室2の下流側には混合水流出部18が配置されており、混合水流出部18を通って、混合水温度を有する混合水が混合カートリッジ1から流出することができるようになっている。混合水流出部18から、混合水は例えば衛生器具に供給可能である。
【0020】
混合水の混合水温度は、温水と冷水との間の混合比ならびに温水の温水温度と冷水の冷水温度との間の混合比により決定される。混合水温度の調節用に、混合カートリッジ1は、ねじ締結によりねじ部材20に結合された操作部材19を有している。操作部材19の回転により、ねじ部材20はねじ締結に基づき軸線方向14に、すなわち長手方向軸線17に対して平行に移動させられる。ねじ部材20の軸線方向14への移動は、調節部材10に伝達され、調節部材10もやはり、調節スライダ13を軸線方向14に移動させる。軸線方向における調節スライダ13の位置に応じて、温水調節ギャップ22と冷水調節ギャップ23とを交互に開閉することができる。調節スライダ13の位置に応じて、相応する量の温水と冷水とが、温水調節ギャップ22と冷水調節ギャップ23とを通って混合カートリッジ1内に導入され、これらの温水と冷水とから、相応する混合水温度を有する混合水が混合される。混合カートリッジ1の本実施形態では、温水調節ギャップ22および冷水調節ギャップ23は、混合カートリッジ1の周方向9(
図2参照)に延在している。調節部材10は、少なくとも部分的に熱膨張材料から成っていてよい。これにより、調節部材10が加熱されると、調節部材10は特に軸線方向14に膨張し、調節部材10が冷却されると、調節部材10は特に軸線方向14に収縮することになる。これにより、調節部材10は混合水を(実質的に)一定の混合水温度に保つことができるようになっている。例えば極度に多量の温水または極度に少量の冷水が混合カートリッジ1に流入した場合には、調節部材10が加熱されて伸長し、これにより、調節部材10は調節スライダ13を軸線方向14で混合水流出部18に向かって移動させ、その結果、温水調節ギャップ22が縮小されると共に冷水調節ギャップ23は拡大される。これにより混合室2内には、より少ない温水と、より多くの冷水とが流入することになる。例えば極度に多量の冷水または極度に少量の温水が混合カートリッジ1に流入した場合には、調節部材10が収縮し、これにより、調節部材10は調節スライダ13を混合水流出部18から離反させ、その結果、温水調節ギャップ22が拡大されると共に冷水調節ギャップ23は縮小される。これにより混合室2内には、より多くの温水と、より少ない冷水とが流入することになる。調節部材10は、軸線方向14において混合水流出部18の方向に向けられた第1の端部24と、軸線方向14において第1の端部24とは反対の側に位置しておりかつねじ部材20と協働する第2の端部25とを有している。調節部材10とケーシング12との間のリングギャップ11内には、渦部材5を備えたスリーブ8が配置されており、渦部材5は、混合室2内で温水と冷水とを少なくとも部分的に渦動させるために用いられる。
【0021】
図2には、渦部材5を備えたスリーブ8が斜視図で示されている。渦部材5は、スリーブ8の長辺の第1の端部26に形成されており、半径方向27に、すなわち長手方向軸線17に対して直交する方向に、複数の外側の楔形の渦体6と、複数の内側の楔形の渦体7とを有している。各渦体6,7は、ヘッド28と、ヘッド28から延びる2つの脚部29とを有しており、(周方向9において)脚部29の間には、所定の角度30が形成されている。脚部29は、それぞれそのヘッド28とは反対側の端部にフット31を有している。個々の外側の楔形の渦体6と、個々の内側の楔形の渦体7とは(実質的に)同一である。外側の楔形の渦体6は、スリーブ8の内周面32に形成されているのに対し、内側の楔形の渦体7は、それらのフット31でもって、外側の楔形の渦体のフット31に取り付けられている。
【0022】
スリーブ8と、外側の楔形の渦体6と、内側の楔形の渦体7とは、ここでは一体であり、例えばプラスチック射出成形構成部材として形成されている。
【0023】
さらに、外側の楔形の渦体6及び内側の楔形の渦体7は、長手方向軸線17の周りに環状に配置されている。さらに、複数の外側の楔形の渦体6は、周方向9に互いに間隔をあけて配置されており、これにより、冷水と温水とが個々の外側の楔形の渦体6の間を通流することができるようになっている。また複数の内側の楔形の渦体7も、周方向9に互いに間隔をあけて配置されており、これにより、冷水と温水とが個々の内側の楔形の渦体7の間を通流することができるようになっている。さらに、外側の楔形の渦体6と内側の楔形の渦体7とは、周方向9において互いにずらされて配置されている。これは特に、内側の楔形の渦体7は、半径方向27において外側の楔形の渦体6と整合していない、ということを意味する。内側の楔形の渦体7は内側で、
図1に示した調節部材10の外周面33に(半径方向27で)接触しており、これにより内側の楔形の渦体7は、半径方向27においてリングギャップ11を塞いでいる。
【0024】
よって、混合室2内に流入する冷水と温水とは、混合室2内でまず、外側の楔形の渦体6および内側の楔形の渦体7のヘッド28にぶつかる。次いで、外側の楔形の渦体6および内側の楔形の渦体7の脚部29が、長手方向軸線17の方向で流れ横断面を先細にし、これにより、外側の楔形の渦体6の領域に流れ込む冷水および温水が、内側の楔形の渦体7の領域に流れ込む冷水および温水と共に、少なくとも部分的に(半径方向27に)渦動させられる。次いで、渦動させられた冷水と温水とは、個々の外側の楔形の渦体6と内側の楔形の渦体7との間に周方向9に形成された通路34を介して、渦部材5から流出する。
【0025】
図3には、
図1に円でしるしを付けた領域の混合カートリッジ1が拡大図で示されている。ここでは、ケーシング12の温水流入部3と冷水流入部4とが認められる。温水は、温水流入部3から出発して温水調節ギャップ22と調節スライダ13の温水通路16とを通り、混合室2内に流入する。これに相応して冷水も、冷水流入部4から出発して冷水調節ギャップ23と調節スライダ13の冷水通路15とを通り、混合室2内に流入する。温水および冷水の流動コースは、
図3に矢印で示されている。混合室2内で、温水と冷水とは渦部材5にぶつかり、外側の楔形の渦体6と内側の楔形の渦体7とにより、半径方向27に少なくとも部分的に渦動させられる。
【0026】
図4にはスリーブ8と調節スライダ13とが、
図3に示した断面線IV-IVに沿った断面図で示されている。ここでは、調節スライダ13内に8つの冷水通路15が形成されており、冷水は、
図3に示した冷水調節ギャップ23から冷水通路15を介して渦部材5に流れ込む、ということが認められる。個々の冷水通路15は、リブ21により互いに隔離されている。
図3に示した調節スライダ13の温水通路16は、
図4に示した冷水通路15と実質的に同一に形成されている。特に調節スライダ13は同様に、8つの冷水通路15も有している。さらに
図4では、渦部材5は5つの外側の楔形の渦体6と、5つの内側の楔形の渦体7とを有している、ということが認められる。したがって、冷水通路の数と温水通路の数とは、外側の楔形の渦体6の数もしくは内側の楔形の渦体7の数と相違している。これにより、渦体6,7と調節スライダ13との間に異なるピッチが形成されており、これにより、温水および冷水のより高度な渦動が達成される。
【0027】
本発明により、混合カートリッジの調節特性が改良される。
【符号の説明】
【0028】
1 混合カートリッジ
2 混合室
3 温水流入部
4 冷水流入部
5 渦部材
6 外側の楔形の渦体
7 内側の楔形の渦体
8 スリーブ
9 周方向
10 調節部材
11 リングギャップ
12 ケーシング
13 調節スライダ
14 軸線方向
15 冷水通路
16 温水通路
17 長手方向軸線
18 混合水流出部
19 操作部材
20 ねじ部材
21 リブ
22 温水調節ギャップ
23 冷水調節ギャップ
24 第1の端部
25 第2の端部
26 長辺の第1の端部
27 半径方向
28 ヘッド
29 脚部
30 角度
31 フット
32 内周面
33 外周面
34 通路