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特許7597806臓器に薬剤および/またはモダリティを送達するための医療デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】臓器に薬剤および/またはモダリティを送達するための医療デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/34 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
A61B17/34
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022525622
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 US2020058239
(87)【国際公開番号】W WO2021087276
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-10-30
(31)【優先権主張番号】16/672,217
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522173022
【氏名又は名称】トイ、ステファニー
【氏名又は名称原語表記】TOY,Stephanie
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】トイ、ステファニー
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-516205(JP,A)
【文献】特開2012-035005(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0238968(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/34
A61M 25/02-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
臓器に薬剤および/またはモダリティを送達するための医療デバイスであって、
第1の近位端、第1の遠位端、前記第1の近位端と前記第1の遠位端との間に延在する第1の管腔、および前記第1の近位端から前記第1の遠位端まで延在する第1の長手方向軸を備える、外側管状体と、
第2の近位端、第2の遠位端、前記第2の近位端と前記第2の遠位端との間に延在する第2の管腔、および前記第2の近位端から前記第2の遠位端まで延在する第2の長手方向軸を備える、内側管状体であって、
前記内側管状体は、前記外側管状体の前記第1の管腔内に移動可能に配置されており、
前記内側管状体の前記第2の近位端は、前記外側管状体の前記第1の近位端に動作可能に結合されており、
前記内側管状体は、前記外側管状体の前記第1の長手方向軸に沿って、第1の位置から第2の位置まで変位可能である、内側管状体と、
第3の近位端、第3の遠位端、および前記第3の近位端から前記第3の遠位端まで延在する第3の長手方向軸を備える、組織係合部材であって、
前記組織係合部材は、前記内側管状体の前記第2の遠位端に取り付けられており、
前記組織係合部材は、らせん形に成形されており、前記内側管状体を前記第2の長手方向軸を中心に回転させたときにコルク栓抜き様の移動で移動するように構成されており、
前記組織係合部材は、前記組織係合部材を前記第2の長手方向軸を中心に回転させたとき、前記コルク栓抜き様の移動によって、標的組織に貫入するように、かつ前記標的組織に前記医療デバイスを固定するように構成されており、
前記組織係合部材は、前記外側管状体の前記第1の管腔内にあり、前記組織係合部材の前記第3の遠位端は、前記内側管状体が前記第1の位置にあるときには前記外側管状体の前記第1の遠位端に対して陥凹しており、前記組織係合部材の前記第3の遠位端は、前記内側管状体が前記第2の位置にあるときには前記外側管状体の前記第1の遠位端の外に延在しており、
前記組織係合部材の前記第3の長手方向軸は、前記内側管状体が前記第1の位置、前記第2の位置、および前記第1の位置と前記第2の位置との間の位置にあるときには、前記外側管状体の前記第1の長手方向軸および前記内側管状体の前記第2の長手方向軸に実質的に平行である、組織係合部材と、
第4の近位端および第4の遠位端を有する、少なくとも1つの送達機構であって、
前記少なくとも1つの送達機構は、前記外側管状体の前記第1の管腔内に位置しているとともに、前記内側管状体の前記第2の管腔の外側に位置しており、
前記少なくとも1つの送達機構は、前記外側管状体に動作可能に結合されており、
前記少なくとも1つの送達機構は、前記外側管状体の前記第1の長手方向軸に沿って、第3の位置から第4の位置まで変位可能であり、
前記少なくとも1つの送達機構の前記第4の遠位端は、前記少なくとも1つの送達機構が前記第3の位置にあるときには前記外側管状体の前記第1の遠位端に対して陥凹しており、
前記少なくとも1つの送達機構の前記第4の遠位端は、前記少なくとも1つの送達機構が前記第4の位置にあるときには前記外側管状体の前記第1の遠位端の外に延在するように構成されている、少なくとも1つの送達機構と、を備える、医療デバイス。
【請求項2】
前記外側管状体は、ステンレス鋼で作製されており、
前記外側管状体の外径は、前記第1の遠位端から前記第1の近位端に向かって増加し、
前記外側管状体の前記第1の遠位端は、面取りされている、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記組織係合部材の前記第3の遠位端に取り付けられた先端部をさらに備え、
前記先端部の自由端は、鈍端である、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項4】
歯車をさらに備え、
前記歯車は、前記内側管状体の前記移動を制御するように構成されており、
前記外側管状体に対する前記歯車の回転可能範囲は、第1の所定の角度に制限されている、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項5】
前記内側管状体を前記第2の長手方向軸を中心に第1の方向に回転させたとき、前記内側管状体および前記組織係合部材は、前記外側管状体の前記第1の遠位端に向かって移動し、
前記内側管状体を前記第2の長手方向軸を中心に第2の方向に回転させたとき、前記内側管状体および前記組織係合部材は、前記外側管状体の前記第1の近位端に向かって移動する、請求項4に記載の医療デバイス。
【請求項6】
ばねと、
親指押しボタンと、をさらに備え、
前記ばねは、前記内側管状体の移動を制御するように構成されており、
前記親指押しボタンは、前記ばねの移動を制御するように構成されている、請求項5に記載の医療デバイス。
【請求項7】
前記外側管状体に対する前記内側管状体の回転可能範囲は、第1の所定の角度に制限されており、
前記親指押しボタンの操作は、前記外側管状体に対する前記内側管状体の回転を漸増的に可能にする、請求項6に記載の医療デバイス。
【請求項8】
前記少なくとも1つの送達機構は、ニードル、カテーテル、チューブ、ガイドワイヤ、マッピング電極、リード、およびカメラからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項9】
前記外側管状体に動作可能に結合された側面ポートをさらに備え、
前記少なくとも1つの送達機構は、前記側面ポートまたは前記親指押しボタンを操作することによって、前記第3の位置と前記第4の位置との間を移動するように構成されており、
前記側面ポートは、前記側面ポートを通して供給され、かつ前記少なくとも1つの送達機構の前記第4の遠位端から分配される、前記薬剤および/または前記モダリティを送達するための導管となるように構成されている、請求項6に記載の医療デバイス。
【請求項10】
前記側面ポートに取り付けられた活栓をさらに備え、
前記活栓は、空気漏れを防止するように構成されており、
前記活栓は、注射器を接続するように構成されている、請求項9に記載の医療デバイス。
【請求項11】
前記薬剤および/または前記モダリティは、医薬、ゲル、成長因子、細胞、電流、電圧、または電気信号を含む、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項12】
臓器に薬剤および/またはモダリティを送達するための医療デバイスであって、
第1の近位端、第1の遠位端、前記第1の近位端と前記第1の遠位端との間に延在する第1の管腔、および前記第1の近位端から前記第1の遠位端まで延在する第1の長手方向軸を備える、外側管状体であって、
前記外側管状体の外径は、前記第1の遠位端から前記第1の近位端に向かって増加し、
前記外側管状体の前記第1の遠位端は、面取りされている、外側管状体と、
第2の近位端、第2の遠位端、前記第2の近位端と前記第2の遠位端との間に延在する第2の管腔、および前記第2の近位端から前記第2の遠位端まで延在する第2の長手方向軸を備える、内側管状体であって、
前記内側管状体は、前記外側管状体の前記第1の管腔内に移動可能に配置されており、
前記内側管状体の前記第2の近位端は、前記外側管状体の前記第1の近位端に動作可能に結合されており、
前記内側管状体は、前記外側管状体の前記第1の長手方向軸に沿って、第1の位置から第2の位置まで変位可能である、内側管状体と、
第3の近位端、第3の遠位端、および前記第3の近位端から前記第3の遠位端まで延在する第3の長手方向軸を備える、組織係合部材であって、
前記組織係合部材は、前記内側管状体の前記第2の遠位端に取り付けられており、
前記組織係合部材は、らせん形に成形されており、前記内側管状体を前記第2の長手方向軸を中心に回転させたときにコルク栓抜き様の移動で移動するように構成されており、
前記組織係合部材は、前記組織係合部材を前記第2の長手方向軸を中心に回転させたとき、前記コルク栓抜き様の移動によって、標的組織に貫入するように、かつ前記標的組織に前記医療デバイスを固定するように構成されており、
前記組織係合部材は、前記外側管状体の前記第1の管腔内にあり、前記組織係合部材の前記第3の遠位端は、前記内側管状体が前記第1の位置にあるときには前記外側管状体の前記第1の遠位端に対して陥凹しており、前記組織係合部材の前記第3の遠位端は、前記内側管状体が前記第2の位置にあるときには前記外側管状体の前記第1の遠位端の外に延在しており、
前記組織係合部材の前記第3の長手方向軸は、前記内側管状体が前記第1の位置、前記第2の位置、および前記第1の位置と前記第2の位置との間の位置にあるときには、前記外側管状体の前記第1の長手方向軸および前記内側管状体の前記第2の長手方向軸に実質的に平行である、組織係合部材と、
歯車であって、
前記歯車は、前記内側管状体の動きを制御するように構成されており、
前記外側管状体に対する前記歯車の回転可能範囲は、第1の所定の角度に制限されており、
前記内側管状体を前記第2の長手方向軸を中心に第1の方向に回転させたとき、前記内側管状体および前記組織係合部材は、前記外側管状体の前記第1の遠位端に向かって移動し、
前記内側管状体を前記第2の長手方向軸を中心に第2の方向に回転させたとき、前記内側管状体および前記組織係合部材は、前記外側管状体の前記第1の近位端に向かって移動し、
前記外側管状体に対する前記内側管状体の回転可能範囲は、第1の所定の角度に制限されている、歯車と、
ばねであって、
前記ばねは、前記内側管状体の動きを制御するように構成されている、ばねと、
親指押しボタンであって、
前記親指押しボタンは、前記ばねの移動を制御するように構成されており、
前記親指押しボタンの操作は、前記外側管状体に対する前記内側管状体の回転を漸増的に可能にする、親指押しボタンと、
第4の近位端および第4の遠位端を有する少なくとも1つの送達機構であって、
前記少なくとも1つの送達機構は、前記外側管状体の前記第1の管腔内に位置しているとともに、前記内側管状体の前記第2の管腔の外側に位置しており、
前記少なくとも1つの送達機構は、前記外側管状体に動作可能に結合されており、
前記少なくとも1つの送達機構は、前記外側管状体の前記第1の長手方向軸に沿って、第3の位置から第4の位置まで変位可能であり、
前記少なくとも1つの送達機構の前記第4の遠位端は、前記少なくとも1つの送達機構が前記第3の位置にあるときには前記外側管状体の前記第1の遠位端に対して陥凹しており、
前記少なくとも1つの送達機構の前記第4の遠位端は、前記少なくとも1つの送達機構が前記第4の位置にあるときには前記外側管状体の前記第1の遠位端の外に延在するように構成されている、少なくとも1つの送達機構と、を備える、医療デバイス。
【請求項13】
中央ルアーロックをさらに備え、
前記中央ルアーロックの管腔は、前記内側管状体の前記第2の管腔と、または前記少なくとも1つの送達機構の管腔と連続しており、
前記中央ルアーロックは、前記中央ルアーロックを通して供給され、かつ前記内側管状体の前記第2の遠位端または前記少なくとも1つの送達機構の前記第4の遠位端から分配される、前記薬剤および/または前記モダリティを送達するための導管となるように構成されており、
前記中央ルアーロックは、活栓を受容するように構成されている、請求項1に記載の医療デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、患者の心臓、または他の臓器に直接、治療剤および/またはモダリティを送達することによる、ヒト患者の治療のための、医療デバイス、その使用のための操作指示、ならびに適応症および方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
医療技術の進歩にもかかわらず、心筋梗塞は依然として世界第1位の死因である。心筋梗塞が起こると、心臓組織は損傷を受け、最終的には、冠動脈血流の完全または不完全な閉塞によって引き起こされる虚血によって死亡する。この閉塞は、心筋細胞死、アポトーシス、および壊死につながる一連の事象を開始する。細胞死のプロセスが継続するにつれて、この状態は、心機能障害、不整脈をもたらし、高齢者の罹患の主要な原因である心不全を引き起こす可能性がある。
【0003】
心臓は、最も再生性の低い臓器の1つである。いったん心臓の細胞が死ぬと、失われた細胞が、生存可能な機能性の心筋細胞で補充される可能性は極めて低い。このため、虚血性心臓損傷後の罹患率および死亡率は共に高く、世界中の医療費の重要な要因となっている。効果的な心臓再生療法が必要とされている。
【0004】
心臓再生療法のための方法を開発するために、損傷した心筋または虚血した心臓の筋肉への様々な治療剤および/またはモダリティの送達が模索されている。静脈注射、カテーテルによる送達、および心臓の外部からの直接注入を含む、治療剤を心臓に送達するための複数の方法が試験されている。
【0005】
心臓および心膜腔内に薬物を直接注入するために開発された既存の器具および方法は、意図しない心臓壁穿孔、出血、心臓損傷、さらには患者の死亡を含む、重篤な合併症のリスクを有していたので、直接注入技術は現在、広く使用されていないし、さもなければ、手術を行わない心臓患者の標準的なケアとなっている。
【発明の概要】
【0006】
患者の臓器内への薬剤および/またはモダリティの正確で、タイムリーで、かつ安全な直接送達を可能にする医療デバイスを記載する。この医療デバイスは、送達機構の挿入深度を正確に制御することができないことによって引き起こされる臓器壁の意図せぬ穿刺のリスクを軽減することができる。医療デバイスはまた、臓器の同じ領域への薬剤および/またはモダリティの同時または順次の送達を可能にする。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決すべき問題を、心臓病を患う患者の心臓を例に説明する。しかしながら、送達機構の同様の正確な挿入深度制御はまた、心臓以外の臓器に対しても必要とされる。開示は、心臓以外の臓器への使用に適合するように容易に改変されるべきである。
【0008】
従前の心臓への直接送達技術は、心臓壁の意図せぬ穿刺および心臓の管腔への貫入のリスクを有していた。特に、虚血性心疾患を患う患者では、心臓壁の厚さが減少していることが多く、そのような患者は、心臓壁の意図せぬ穿刺を被るリスクが高い。そのような意図せぬ穿刺は、心臓および心タンポナーデからの出血を引き起こす可能性があり、直接送達処置を行う際の重大な危険因子を呈する。これらのニードルは、挿入深度を制御する手段を欠いているので、意図しない穿刺が引き起こされる。心臓内への薬剤および/またはモダリティの安全な直接送達を提供するデバイスおよび方法が必要とされていた。
【0009】
さらに、心臓の同じ領域への1つを超える薬剤および/またはモダリティの同時または順次の送達が望まれたとき、第2の送達デバイスを使用するために第1の送達デバイスを心臓から取り外す必要があったので、第2の送達デバイスで第1の標的領域を狙うことは困難であった。第1のデバイスを取り外すことなく、心臓の同じ領域への1つを超える薬剤および/またはモダリティの同時または順次の送達を支援することができるデバイスおよび方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の目的は、上述の問題に対する解決策を提供することができる。心臓内への薬剤および/またはモダリティの送達を支援することができ、かつ複数の薬剤および/またはモダリティを心臓の同じ領域内に送達することができる、挿入深度制御機構を有するデバイスが開示される。心臓に薬剤および/またはモダリティを同時または順次に送達することによって心臓病を治療するための方法も開示される。
【0011】
本開示に開示される実施形態は、上述の問題を解決し、医療デバイスに関することができる。医療デバイスは、所定の方向および距離で互いに相対的に移動する、外側管状体および内側管状体を有する。組織係合部材が、内側管状体の遠位端に取り付けられており、組織係合部材および内側管状体は、ユニットを形成する。組織係合部材は、らせん形状を有する。らせん形組織係合部材および内側管状体のユニットは、外側管状体の内部に後退可能である。らせん形組織係合部材および内側管状体の前進および後退は、内側管状体のコルク栓抜き様の移動を案内する歯車内に切削されたらせん形溝によって案内される。外側管状体に対する内側管状体の一方の方向における回転により、内側管状体が前進して、取り付けられたらせん形組織係合部材の一部分が外側管状体の遠位端から露出される。内側管状体の第2の方向への回転により、内側管状体と取り付けられたらせん形組織係合部材とが外側管状体内に後退する。組織係合部材がコルク栓抜き様の移動によって外側管状体の外部に露出されると、組織係合部材の先端部は、心膜を貫通することができ、組織係合部材は、コルク栓抜き様の移動によって、心膜の内側または心筋内に固定されることができる。組織係合部材のコルク栓抜き様の移動は、所定の角度に制限され、したがって、内側管状体の前進は、所定の距離に制限される。この構成により、心臓壁の意図せぬ穿刺のリスクを低減することができる。組織係合部材は、適用中、医療デバイスを心臓上に固定し、医療デバイスの動きを防止することができるので、複数の薬剤および/またはモダリティを、内側管状体を通して心臓の標的領域に、同時または順次のいずれかで適用することができる。薬剤および/またはモダリティは、外側管状体の内部に置かれた1つ以上の送達機構を通して供給することができる。
開示の効果
本開示の医療デバイスは、心臓壁の意図せぬ穿刺のリスクを軽減しながら、薬剤および/またはモダリティを心臓内に直接、送達するために使用することができる。加えて、医療デバイスは、心臓の同じ領域への薬剤および/またはモダリティの同時または順次の適用を可能にすることができる。医療デバイスは、心臓以外の臓器への薬剤および/またはモダリティの直接送達のために使用されるように容易に適合させることができる。
【0012】
複数の実施形態が開示されるが、本開示のさらに他の実施形態が、以下の詳細な説明から、当業者に明らかになるであろう。理解されるように、本開示は、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、すべて様々な態様において改変することができる。したがって、図面および詳細な説明は、本質的に例示と見なされるべきであり、限定と見なされるべきではない。
【0013】
臓器に薬剤および/またはモダリティを送達するための医療デバイスが開示される。医療デバイスは、第1の近位端、第1の遠位端、第1の近位端と第1の遠位端との間に延在する第1の管腔、および第1の近位端から第1の遠位端まで延在する第1の長手方向軸を有する外側管状体を有する。内側管状体は、第2の近位端、第2の遠位端、第2の近位端と第2の遠位端との間に延在する第2の管腔、および第2の近位端から第2の遠位端まで延在する第2の長手方向軸を有する。内側管状体は、外側管状体の第1の管腔内で移動可能である。内側管状体の第2の近位端は、外側管状体の第1の近位端に動作可能に結合されており、内側管状体は、外側管状体の第1の長手方向軸に沿って、第1の位置から第2の位置まで移動可能である。らせん形組織係合部材が、第3の近位端、第3の遠位端、および第3の近位端から第3の遠位端まで延在する第3の長手方向軸を有する。らせん形組織係合部材は、内側管状体の第2の遠位端に取り付けられており、らせん形組織係合部材の第3の長手方向軸は、外側管状体の第1の長手方向軸および内側管状体の第2の長手方向軸に実質的に平行である。らせん形組織係合部材は、外側管状体の第1の管腔内に位置する。らせん形組織係合部材の第3の遠位端は、内側管状体が第1の位置にあるときには外側管状体の第1の遠位端に対して陥凹しており、らせん形組織係合部材の第3の遠位端は、内側管状体が第2の位置にあるときには外側管状体の第1の遠位端の外に延在している。
【0014】
心臓病を患う患者を治療または監視するための方法が開示される。方法は、1つ以上の薬剤および/またはモダリティを、それを必要とする患者の心筋に直接、送達することを含む。
【0015】
図は、縮尺通りに描かれておらず、例示目的にのみ存在する。相対サイズや厚さなどの寸法は、特定の用途に合わせて調整することができる。
同様の参照番号は、全体を通して同様の部品を表す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】1つの実施形態による医療デバイスの側面近位等角図である。
図1B】別の実施形態による医療デバイスの側面近位等角図である。
図2A-1】1つの実施形態による医療デバイスの側面図である。外側管状体および内側管状体の部分が取り除かれている。図2A-1は、医療デバイスの近位半分を示す。
図2A-2】1つの実施形態による医療デバイスの側面図である。外側管状体および内側管状体の部分が取り除かれている。図2A-2は、医療デバイスの遠位半分を示す。
図2A-3】図2A-1に示された位置における医療デバイスの断面を示す。
図2B図2A-2に示された位置における医療デバイスの断面を示すが、外側管状体のみが示されている。
図2C図2A-2に示された位置における医療デバイスの断面を示すが、外側管状体のみが示されている。
図2D図2A-2に示された位置における医療デバイスの断面を示すが、外側管状体のみが示されている。
図2E図2A-1に示された位置における医療デバイスの断面を示すが、外側管状体のみが示されている。
図2F図2A-1に示された位置における医療デバイスの断面を示すが、外側管状体のみが示されている。
図2G-1】別の実施形態による医療デバイスの側面図である。外側管状体および内側管状体の部分が取り除かれている。
図2G-2】別の実施形態による医療デバイスの側面図である。外側管状体および内側管状体の部分が取り除かれている。
図3A】1つの実施形態による医療デバイスの長軸に沿った断面図である。
図3B】1つの実施形態による医療デバイスの長軸に沿った断面図である。
図3C】別の実施形態による医療デバイスの長軸に沿った断面図である。
図3D】別の実施形態による医療デバイスの長軸に沿った断面図である。
図4A】2つのニードルを有する1つの実施形態による医療デバイスの遠位端の側面遠位等角図の拡大断面図である。
図4B】1つの実施形態による医療デバイスの近位端の拡大側面近位等角図である。
図5A】2つのニードルを有する1つの実施形態による医療デバイスの遠位端の側面遠位等角図の拡大断面図である。
図5B】1つの実施形態による医療デバイスの近位端の拡大側面近位等角図である。
図6】心臓を治療するために患者に挿入された医療デバイスを示す、1つの実施形態による図である。
図7A】体腔に挿入され、心膜に接触している医療デバイスの遠位端を示す、1つの実施形態による図である。
図7B】体腔に挿入され、心膜に接触している医療デバイスの遠位端を示す、別の実施形態による図である。
図8A】体腔に挿入された医療デバイスの遠位端を示す、1つの実施形態による図である。
図8B】体腔に挿入された医療デバイスの遠位端を示す、別の実施形態による図である。
図9A】体腔に挿入された医療デバイスの遠位端を示す、1つの実施形態による図である。組織係合部材は示されていない。
図9B】体腔に挿入された医療デバイスの遠位端を示す、別の実施形態による図である。らせん形組織係合部材は示されていない。
図10】ホルダに取り付けられた、1つの実施形態による医療デバイスの側面近位等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
「心臓」は、概して、心膜、心筋、心膜腔、心室、心房、中隔、冠動脈、および心房を含む、心臓のすべての部分を指す。
「心臓の筋肉」は、一般に、心筋を指す。
【0018】
心臓の「同じ領域」は、適用された薬剤および/またはモダリティが効果を及ぼすことができる実質的に重複する領域を指すが、同一の領域に限定されない。
心臓へ「送達すること」は、心臓への薬剤および/またはモダリティの注入または表面適用を含む。モダリティの適用は、電極を介した電流または電圧の印加、および電極を介した電流または電圧の測定を含む。
【0019】
「密封」を形成することは、2つのアイテムが接続されている場合、医学的に適切な圧力がかかったときに、空気または液体が接続部内に漏入したり、または接続部から漏出したりすることがないかまたは無視し得るほどであることを意味する。
【0020】
心臓について「穿刺/穿刺すること」、「意図せぬ穿刺/穿刺すること」、「貫通/貫通すること」、および「意図しない貫通/貫通すること」は、心臓からの血液の漏出を引き起こす可能性がある、物体による心臓壁の完全な貫通を意味する。
【0021】
本開示は、概して、患者を治療するための医療デバイスおよび方法、ならびに医療デバイスを操作するための方法に関する。より具体的には、本開示は、臓器壁の意図せぬ穿刺のリスクを軽減しながら、患者の臓器に直接、薬剤および/またはモダリティを送達するためのデバイスおよび方法に関する。以下の実施形態は、患者の心臓を例として使用して説明される。しかしながら、医療デバイスは、心臓以外の臓器内への薬剤および/またはモダリティの直接送達に適用することもできる。
実施形態
図1Aおよび図1Bは、いくつかの実施形態による医療デバイスの側面近位等角図である。医療デバイス(1)は、外側管状体(10)および親指押しボタン(60)を有する。外側管状体(10)は、第1の近位端(11)および第1の遠位端(12)を有する。第1の長手方向軸(13)が、第1の近位端(11)から第1の遠位端(12)への方向に延在する。第1の近位端(11)に近い外側管状体(10)の側面上に、側面ポート1(70)および側面ポート2(75)が、それぞれスリット1(71)およびスリット2(76)を介して移動可能に配置されている。側面ポート1(70)および側面ポート2(75)は、外側管状体(10)の側壁の周囲輪郭の周りで、ある角度でずらされている。側面ポート1(70)および側面ポート2(75)が配置される角度は、0~180°とすることができる。親指押しボタン(60)は、親指押しボタン(60)から独立して可動であり、かつ第1の長手方向軸(13)を中心に回転する、弁(図示せず)を制御するためのリング(83)を有することができる。親指押しボタン(60)は、医療デバイス(1)の近位端(463)に中央ルアーロック(81)を有することができる。中央ルアーロック(81)には、任意選択的に、蓋(501)を取り付けることができる。側面ポート1(70)、側面ポート2(75)、親指押しボタン(60)、弁を制御するためのリング(83)、および中央ルアーロック(81)の動作は、本明細書で後に詳述する。外側管状体(10)の内部には、内側管状体が配置されており、内側管状体は、この図には示されておらず、本明細書に後述される。
【0022】
図2A-1および図2A-2は、1つの実施形態による医療デバイス(1)の側面図である。2つのニードルを有する一実施例が示されている。図2A-1は、医療デバイス(1)の近位部であり、図2A-2は、医療デバイス(1)の遠位部である。外側管状体(10)および内側管状体(20)の部分は、内部を示すために取り除かれている。図2A-3、図2B図2Fは、図2A-1および図2A-2に示された位置における断面図である。図2B図2Fには、外側管状体(10)のみが示されている。
【0023】
医療デバイス(1)は、外側管状体(10)の内部に、内側管状体(20)と、らせん形組織係合部材(30)とを有する。外側管状体(10)は、第1の内側表面(14)と、第1の長手方向軸(13)の方向に延在する第1の管腔(15)とを有する。
【0024】
医療デバイス(1)の外側管状体(10)は、ステンレス鋼または任意の外科的に好適な材料で作製することができる。外側管状体(10)の外側表面は、外側管状体(10)の外径が第1の遠位端(12)から第1の近位端(11)に向かって増加するようにテーパ化することができる。外側管状体(10)の第1の遠位端(12)は、面取りすることができ、対象者(100)(図6を参照)の体壁(101)(図7Aおよび図7Bを参照)を貫通するのを支援するように、刃先(16)を有することができる。外側管状体(10)は、患者への挿入を容易にするように、かつ身体からの圧力に起因する医療デバイス(1)の屈曲を防止するように、形状化することができる。例えば、外側管状体(10)の断面の形状は、近位端および遠位端に近い部分では円形とすることができ、中間部分では丸みを帯びた正方形のような形状および丸みを帯びた台形状に次第に変化することができる。一実施例の一連の断面を図2B図2Fに示すが、外側管状体(10)は、患者への挿入を容易にし、身体からの圧力による屈曲を防止する任意の形状に、任意の順序で構成することができる。
【0025】
内側管状体(20)は、第2の近位端(21、図3Aを参照)、第2の遠位端(22)、第2の近位端(21)と第2の遠位端(22)との間に延在する第2の長手方向軸(23)、および第2の長手方向軸(23)の方向に延在する第2の管腔(25)を有する。内側管状体は、歯車(50)に接続されており、その近位側に拡幅部(120)を有することができる。
【0026】
内側管状体(20)は、外側管状体(10)の第1の管腔(15)内に移動可能に配置されている。内側管状体(20)は、外側管状体(10)の第1の近位端(11)および親指押しボタン(60)に動作可能に結合されている。内側管状体(20)は、外側管状体(10)の第1の長手方向軸(13)に沿って、第1の位置から第2の位置まで変位可能である。内側管状体(20)の移動は、コルク栓抜きのようなものであり、第1の位置と第2の位置との間を移動するときに、第2の長手方向軸(23)を中心に回転することができる。
【0027】
外側管状体(10)に取り付けられた歯車(50)は、内側管状体(20)上に形成された突起(18)と係合するように構成されているらせん形溝(52)を有する。らせん形溝(52)および突起(18)は、内側管状体(20)のコルク栓抜き様の移動を案内するように構成されている。らせん形溝(52)は、内側管状体(20)の回転が所定の角度に制限されるように形成されている。
【0028】
内側管状体(20)の回転は、内側管状体(20)を第2の長手方向軸(23)を中心に第1の方向に回転させたとき、内側管状体(20)およびらせん形組織係合部材(30)が外側管状体(10)の第1の遠位端(12)に向かって移動し、内側管状体(20)を第2の長手方向軸(23)を中心に第2の方向に回転させたとき、内側管状体(20)およびらせん形組織係合部材(30)が外側管状体(10)の第1の近位端(11)に向かって移動するように、歯車(50)によって案内することができる。
【0029】
親指押しボタン(60)は、内側管状体(20)の移動をトリガするように構成されている。内側管状体(20)を回転させるための機構は特に限定されず、手動回転、ばね(55)作動機構、ねじりハブ、および電気機械的制御デバイスを含む、好適な回転制御機構のうちのいずれか1つとすることができる。
【0030】
医療デバイス(1)は、外側管状体(10)に対する内側管状体(20)の回転可能範囲は第1の所定の角度に制限されるように構成することができ、親指押しボタン(60)を操作する都度、第2の所定の角度の、外側管状体(10)に対する内側管状体(20)の回転が可能になる。
【0031】
らせん形組織係合部材(30)は、第3の近位端(31)、第3の遠位端(32)、および第3の近位端(31)から第3の遠位端(32)まで延在する第3の長手方向軸(33)を有する。らせん形組織係合部材(30)の第3の近位端(31)は、内側管状体(20)の第2の遠位端(22)側に取り付けられ、内側管状体(20)の遠位方向に向かってさらに延在する。外側管状体(10)の第1の長手方向軸(13)、内側管状体(20)の第2の長手方向軸(23)、およびらせん形組織係合部材(30)の第3の長手方向軸(33)は、互いに実質的に平行であるか、または実質的に重複している。
【0032】
らせん形組織係合部材(30)は、ユニットとして内側管状体(20)と共に移動する。作動中、らせん形組織係合部材(30)の第3の遠位端(32)は、内側管状体(20)が第1の位置にあるときには外側管状体(10)の第1の遠位端(12)に対して陥凹しており、らせん形組織係合部材(30)の第3の遠位端(32)は、内側管状体(20)が第2の位置にあるときには外側管状体(10)の第1の遠位端(12)の外に延在する。
【0033】
組織係合部材(30)は、第3の遠位端(32)に先端部(34)を有することができる。作動中、内側管状体(20)が第1の位置から第2の位置まで動かされたとき、先端部(34)は、心膜(91)に切り込みを作ったり、または心膜(91)を貫通したりすることができる(図7A図8Bを参照、この特徴は本明細書で後に詳述する)。コルク栓抜き様の移動によって、組織係合部材(30)は、心膜(91)または心筋(93)と係合することができる(図7A図8Bを参照)。先端部(34)の自由端は、対象者の心臓(90)に意図せぬ損傷を引き起こさないように鈍端とすることができる(図6を参照)。
【0034】
医療デバイス(1)は、少なくとも1つの送達機構をさらに含むことができる。送達機構は、外側管状体(10)の第1の管腔(15)内に位置し、外側管状体(10)に動作可能に結合されている。図2A-1および図2A-2には、2つのニードル、すなわちニードル1(44)およびニードル2(45)を有する一実施例が示されている。ニードル1(44)は側面ポート1(70)に接続され、ニードル2(45)は側面ポート2(75)に接続されている。ニードルの移動は、ニードルガイド(500)によって案内される。少なくとも1つの送達機構は、以下でさらに説明される。
【0035】
図2G-1および図2G-2は、別の実施形態における医療デバイス(1)を示す。この実施形態では、内側管状体(20)に取り付けられた歯車(50)は、外側管状体(10)の第1の内側表面(14)上に、外側管状体(10)の第1の管腔(15)に向かって形成された突起(17)と係合するように構成されているらせん形溝(51)を有する。らせん形溝(51)および突起(17)は、内側管状体(20)のコルク栓抜き様の移動を案内するように構成されている。らせん形溝(51)は、歯車(50)および内側管状体(20)の回転が所定の角度に制限されるように形成されている。
【0036】
図3Aおよび図3Bは、1つの実施形態による医療デバイス(1)の長軸に沿った断面図である。図3Aは、医療デバイス(1)の近位部を示し、図3Bは、医療デバイス(1)の遠位部を示す。2つのニードルを有する一実施例が示されている。組織係合部材は示されていない。
【0037】
医療デバイス(1)は、少なくとも1つの送達機構を備えることができる。送達機構は、外側管状体(10)の第1の管腔(15)内に位置し、外側管状体(10)に動作可能に結合されている。送達機構は、外側管状体(10)の第1の長手方向軸(13)に沿って、第3の位置(後退位置)から第4の位置(露出位置)まで変位可能である。作動中、送達機構の遠位端は、送達機構が第3の位置にあるときには外側管状体(10)の第1の遠位端(12)に対して陥凹しており、送達機構が第4の位置にあるときには外側管状体(10)の第2の遠位端(12)の外に延在する。
【0038】
図3Aおよび図3Bでは、2つのニードルを有する一実施例を使用して、送達機構が説明されている。しかしながら、送達機構は、これらの実施例に限定されず、他の実施形態、例えば、カテーテル、ガイドワイヤ、電極、リード、およびカメラと取り換えることができる。送達機構は、独占的に使用されるか、または同時に使用されるように構成することができる。
【0039】
図3Aおよび図3Bに示された実施例では、ニードル1(49)の管腔は、側面ポート1(70)と連続しており、側面ポート1(70)の底部に開口している。ニードル2の管腔は、側面ポート2(図示せず)と連続しており、側面ポート2(図示せず)の底部に開口している。
【0040】
内側管状体(20)は、外側管状体(15)の第1の管腔内に配置されている。内側管状体(21)の近位端は、医療デバイス(1)の近位端(463)に向かって開口している。医療デバイス(463)の近位端には、中央ルアーロック(81)が配置され得る。中央ルアーロック(81)は、チューブ材、活栓、他の医療デバイスなどを受容するように構成され、密封を形成するように構成されている。中央ルアーロック(81)は、蓋(501)を受容するように構成され得る。蓋は、中央ルアーロック(81)が使用されていないときに、中央ルアーロック(81)の汚染を防止する任意の形状または材料とすることができる。
【0041】
弁(82)と、弁を制御するためのリング(83)とを、親指押しボタン(60)上に配置することができる。弁(82)の開口部は、完全閉鎖から完全開放まで変化させることができ、弁を制御するためのリング(83)は、弁(82)の開口サイズを制御するように構成されている。中央ルアーロック(81)または同様の機能を実行する構造を、弁(82)の遠位側または近位側に置くことができる。中央ルアーロック(81)または同様の機能を実行する構造は、親指押しボタン(60)の内部に封入することもできるし、または図1A図2A-1、図2G-1、図3A図3C図4B、および図5Bに示されたように、露出させることもできる。親指押しボタン(60)の形状は、図1A図6に示された形状に限定されず、例えば、図10の実施形態に示されるような任意の人間工学的に好適な形状とすることができる(親指押しボタン(160)および弁を制御するためのリング(183)を参照)。弁(82)を制御するための機構は、リング、レバー、またはボタンを含む多くの形状とすることができる。
【0042】
作動中、弁(82)は、内側管状体(20)を通して提供される材料の流れの制御を提供する。あるいは、外部チューブを、弁(82)の開口部を通して挿入し、弁(82)の遠位側で内側管状体(20)に接続することができる。後者の場合、弁(82)は、接続部の無菌性を維持するためのバリアを提供する。
【0043】
別の実施形態を、図3Cおよび図3Dに、医療デバイス(1)の長軸に沿った断面図として示す。図3Cは、医療デバイス(1)の近位部を示し、図3Dは、医療デバイス(1)の遠位部を示す。任意選択的な2つのニードル(44および45)および任意選択的な中央管状体(46)を送達機構として有する一実施例が示されている。組織係合部材は示されていない。中央管状体(46)は、内側管状体(20)の第2の管腔(25)内に配置されている。中央管状体(46)は、近位端(461)および遠位端(462)を有し、中空構造を有する。中央管状体の近位端(461)は、中央チューブ材(80)と連続させることができる。中央管状体(47)の管腔は、中央チューブ材(48)の管腔と連続しており、医療デバイス(1)の近位端(463)に向かって開口している。
【0044】
図4Aは、1つの実施形態による医療デバイス(1)の遠位端の側面遠位等角図の拡大断面図であり、図4Bは、医療デバイス(1)の近位端の拡大側面近位等角図である。2つのニードル(ニードル1(44)およびニードル2(45))ならびに内側管状体(20)が示されている。外側管状体(10)および内側管状体(20)の部分は、内部を示すために取り除かれている。組織係合部材は示されていない。ニードルは、第3の(後退)位置にあり、外側管状体(12)の第1の遠位端に対して陥凹している。内側管状体(20)の第2の遠位端(22)は、鈍端であるか、または面取りされ得る。
【0045】
送達機構は、側面ポートを動かすことによって、第3の位置(後退位置)と第4の位置(露出位置)との間を移動するように構成することができる。送達機構がニードルである図4Aおよび図4Bに示された一実施例では、ニードル1(44)は側面ポート1(70)に接続され、ニードル2(45)は側面ポート2(75)に接続されている。ニードル1(44)およびニードル2(45)は、それぞれ側面ポート1(70)および側面ポート2(75)を操作することによって、別々に移動可能である。ニードル1(44)およびニードル2(45)の移動距離(74)および(79)は、それぞれ、外側管状体(10)の側面に形成されたスリット1(71)およびスリット2(76)によって制限される。側面ポート1(70)がスリット1の近位端(72)にあるとき、ニードル1(44)は第3の位置(後退位置)にあり、側面ポート1(70)がスリット1の遠位端(73)にあるとき、ニードル1(44)は第4の位置(露出位置)にある。同様に、側面ポート2(75)がスリット2の近位端(77)にあるとき、ニードル2(45)は第3の位置(後退位置)にあり、側面ポート2(75)がスリット2の遠位端(78)にあるとき、ニードル2(45)は第4の位置(露出位置)にある。
【0046】
作動中、治療剤および/またはモダリティは、側面ポート1(70)および側面ポート2(75)を通して、ニードル1(44)の近位端(441)およびニードル2(45)の近位端(451)内に供給され、ニードル1(44)の遠位端(442)およびニードル2(45)の遠位端(452)からそれぞれ送達することができる。
【0047】
側面ポート1(70)および側面ポート2(75)は、チューブ材、活栓、注射器、または他の医療デバイスと接続するように構成することができる。活栓は、空気または流体の漏れを防止し、注射器、チューブ、または他の医療デバイスを医療デバイス(1)に流体接続するように構成することができる。
【0048】
図5Aは、別の実施形態による医療デバイス(1)の遠位端の側面遠位等角図の拡大断面図であり、図5Bは、近位端の拡大側面近位等角図である。任意選択的な2つのニードル(ニードル1(44)およびニードル2(45))ならびに中央管状体(46)が示されている。外側管状体(10)および内側管状体(20)の部分は、内部を示すために取り除かれている。組織係合部材は示されていない。
【0049】
医療デバイス(1)は、任意選択的に、中央管状体(46)を含むことができる。中央管状体(46)は、送達機構の別の実施形態であり、管腔(47)を有する。内側管状体の第2の遠位端(22)は、鈍端とすることができ、または面取りすることができる。中央管状体の遠位端(462)もまた、鈍端とすることができ、または面取りすることができる。中央管状体(47)の管腔は、中央管状体の近位端にある中央チューブ材(80)と連続しており、中央チューブ材(80)は、医療デバイス(1)の近位端(463)に開口している。中央管状体(46)の近位端(461)は、親指押しボタン(60)が操作されたときに中央管状体(46)が内側管状体(20)と一緒に移動するように、親指押しボタン(60)に動作可能に接続されている。
【0050】
中央管状体(46)は、ニードル1(44)およびニードル2(45)よりも幅広くすることができ、流体が、中央管状体(46)の両方向に通過することができる。作動中、例えば、中央管状体(46)は、組織中に存在する流体または物質を吸引することができる。あるいは、中央管状体(46)は、例えば、最初に生理食塩水を組織に送達し、次に、注入された生理食塩水を除去することによって、組織を「洗浄」することができる。さらに、中央管状体(46)は、ゲルなどの、より高い粘度を有する材料を送達することができる。
【0051】
作動中、医療デバイス(1)を使用して送達される薬剤および/またはモダリティは、医薬、成長因子、細胞、電流、電圧、および電気信号を含む。
図6は、心臓(90)を治療するために患者に挿入された医療デバイス(1)を示す、1つの実施形態による図である。医療デバイス(1)の対象者(100)への挿入中、内側管状体(図示せず)は第1の位置に保持され、組織係合部材(図示せず)および送達機構(図示せず)は医療デバイス(1)の内部に後退している。
【0052】
図7Aは、体壁(101)を通して挿入され、心膜(91)に接触している医療デバイス(1)の遠位端(12)を示す、1つの実施形態による図である。図7Bは、体壁(101)を通して挿入され、心膜(91)に接触している医療デバイス(1)の遠位端(12)を示す、別の実施形態による図である。内側管状体(20)は、第1の位置に示されており、組織係合部材(30)は、医療デバイス(1)の内部に後退している。医療デバイスは、これらの図においては、心膜(91)、心膜腔(92)、および心筋(93)に挿入されていない。送達機構は、第3の位置に示されており、医療デバイス(1)の内部に後退している。
【0053】
図8Aは、体壁(101)を通して挿入され、心膜(91)に接触している医療デバイス(1)の遠位端を示す、1つの実施形態による図である。図8Bは、体壁(101)を通して挿入され、心膜(91)に接触している医療デバイス(1)の遠位端を示す、別の実施形態による図である。らせん形組織係合部材(30)は、これらの図においては、心膜(91)と係合している。らせん形組織係合部材(30)は、心膜腔(92)および心筋(93)に到達し得る。内側管状体(20)は、第2の位置に示されている。送達機構は、第3の位置に示されており、医療デバイス(1)の内部に後退している。
【0054】
図9Aは、体壁(101)を通して挿入され、心膜(91)に接触している医療デバイス(1)の遠位端(12)を示す、1つの実施形態による図である。内側管状体(20)ならびに2つのニードル(44および45)は、第4の位置にあり、内側管状体の先端部(22)ならびに2つのニードルの先端部(442および452)は、心膜腔(92)および心筋(93)に挿入されている。図9Bは、体壁(101)を通して挿入され、心膜(91)に接触している医療デバイス(1)の遠位端(12)を示す、別の実施形態による図である。中央管状体(46)ならびに2つのニードル(44および45)は、第4の位置にあり、中央管状体の先端部(462)ならびに2つのニードルの先端部(442および452)は、心膜腔(92)および心筋(93)内に挿入されている。組織係合部材は、これらの図には示されていない。
【0055】
図10は、1つの実施形態による、ホルダに取り付けられた医療デバイスの側面近位等角図である。医療デバイス(1)は、人間工学的な使用のためのホルダ(84)に取り付けることができる。ホルダ(84)は、デバイス受容部(85)と、ハンドル(88)と、トリガ(89)とを有する。デバイス受容部(85)は、外側管状体(10)の外側表面および外側管状体(10)の側面上の事前形成ねじ山(86)と係合する突起(87)と同じ輪郭を有する。医療デバイス(1)は、ホルダ(84)のデバイス受容部(85)にスナップ嵌めされ、トリガ(89)を引くことにより解放されることができる。
【0056】
心臓を患う患者を治療または監視するための方法は、1つ以上の薬剤および/またはモダリティを、心筋および心膜腔を含む対象者の心臓に直接、送達することを含む。そのような薬剤および/またはモダリティは、医薬、成長因子、細胞、電流、電圧、および電気信号を含むが、これらに限定されない。1つを超える薬剤および/またはモダリティが送達されるとき、第1の薬剤またはモダリティ、ならびに1つ以上のさらなる薬剤および/またはモダリティは、患者の心臓の同じ領域に同時または順次に送達することができる。医療デバイス(1)は、患者の心臓(90)へのそのような直接送達のために使用することができる。
【0057】
医療デバイス(1)を使用し、心臓病を患う患者を治療または監視する方法が開示される。方法は、図6に示されたように、内側管状体(20)が第1の位置にある状態の医療デバイス(1)の第1の遠位端(12)を患者の体腔に挿入することを含む。方法はまた、図7Aおよび7Bに示されたように、医療デバイス(1)の第1の遠位端(12)が患者の心膜(91)と接触するように、医療デバイス(1)を操作することを含む。方法はまた、図8Aおよび8Bに示されたように、らせん形状組織係合部材(30)の先端部(34)を使用して心膜(91)を貫通することを含む。方法はまた、らせん形組織係合部材(30)が心膜腔(92)および心筋(93)に進入するように、内側管状体(20)を第1の方向に回転させることを含む。方法はまた、内側管状体(20)を第2の位置に位置させることを含む。方法はまた、図9Aおよび9Bに示されたように、ニードル1(44)またはニードル2(45)などの送達機構を、第3の位置(後退位置)から第4の位置(露出位置)まで動かすことを含む。方法はまた、1つ以上の薬剤および/またはモダリティを心筋(93)に順次または同時に送達することを含む。方法はまた、らせん形状組織係合部材(30)を第2の方向に回動させることによって、医療デバイス(1)を患者から解放することを含む。方法はまた、医療デバイス(1)を患者から取り出すことを含む。
【0058】
医療デバイス(1)を使用して、2つ以上の薬剤および/またはモダリティが順次に心臓に送達されるとき、医療デバイス(1)は、第1の薬剤またはモダリティの送達中、ならびに1つ以上のさらなる薬剤および/またはモダリティの送達中に、らせん形状組織係合部材(30)を介して心筋に取り付けられたままにすることができ、医療デバイス(1)は、第1の薬剤またはモダリティの送達と、1つ以上のさらなる薬剤および/またはモダリティの送達との合間、心臓(90)に接続されたままにすることができる。
【0059】
あるいは、医療デバイス(1)を使用して、2つ以上の薬剤および/またはモダリティが同時に心臓(90)に送達されるとき、医療デバイス(1)がらせん形状組織係合部材(30)を介して心膜(91)または心筋(93)に取り付けられている間に、1つを超える送達機構を第4の位置(露出位置)に前進させることができる。
実施例
以下、いくつかの異なる実施形態による医療デバイスおよび患者を治療する方法のさらなる詳細説明を行う。しかしながら、本開示は、以下に示す実施形態に限定されないことを理解されたい。
【0060】
作動中、医療デバイス(1)の材料は、医療用途に好適な任意の材料とすることができる。1つの実施例では、外側管状体(10)および内側管状体(20)は、316型ステンレス鋼皮下チューブ材(H316)で作製される。1つの実施例では、らせん形組織係合部材(30)は、AISI304合金で作製される。1つの実施例では、内側管状体(20)の移動を制御するように構成されているばね(55)は、MP35Nまたは同様の合金で作製される。1つの実施例では、ばねは、各らせん形リング間の間隔が約0.8mm~約1.1mmの生体適合性材料で作製される。1つの実施例では、中央管状体(46)は、AISI316または同様の合金で作製される。上述の材料は、同様の目的で使用される他の外科的に適合性のある材料と置き換えることができる。
【0061】
作動中、外側管状体(10)の第1の遠位端(12)は、刃先(16)を有することができ、そして、刃先が外側管状体の第1の長手方向軸(13)に対して約10°~約70°の間の角度を有するように、面取りすることができる。
【0062】
1つの実施形態では、内側管状体(20)の第2の遠位端(22)は、組織係合部材(30)が心臓(90)と係合するときに密封を形成するように構成される。心臓(90)との間に形成された封止を壊すことなく、送達機構の通過を可能にするポートを、内側管状体(20)の第2の遠位端(22)に配置することができる。ポートは、弾性材料で作製することができ、内側管状体(20)の第2の遠位端(22)と心臓(90)との間に形成された封止を壊すことなく、送達機構の通過を可能にするように構成される。
【0063】
作動中、組織係合部材(30)は、ばねとすることができ、短い先端部(34)は、心膜を貫通することができるが、意図せずに心筋(93)を貫通することができないように構成されている鈍端を有することができる。組織係合部材(30)は、コルク栓抜き形状であり、第1の方向に回転させると、心臓(90)内に進み、第2の方向に回転させると、心臓から出る。組織係合部材(30)のこの移動は、医療デバイス(1)を心臓(90)上に固定し、内側管状体(20)と心臓(90)との間に封止を形成するのを助ける。
【0064】
作動中、歯車(50)は、内側管状体(20)の移動を制御するように構成されており、機構は、内側管状体(20)に同様の回転運動を提供するように構成された任意の設計とすることができる。図3Aに示された実施例では、内側管状体(20)の外側表面に形成された突起(18)が、歯車(50)の内側表面に形成されたらせん形溝(52)と係合し、その回転運動を案内する。図3Cに示された実施例では、外側管状体(10)の内側表面(14)に形成された突起(17)が、歯車(50)の周囲に形成されたらせん形溝(51)と係合し、内側管状体(20)の回転運動を案内する。
【0065】
作動中、歯車(50)を第1の方向に回転させると、組み合わされた内側管状体(20)および組織係合部材(30)のユニットが前進し、組織係合部材(30)が外側管状体(10)の遠位端(12)から露出する。歯車(50)を第2の方向に回転させると、組み合わされた内側管状体(20)および組織係合部材(30)のユニットが、外側管状体(10)内に後退する。らせん形溝(51および52)は、内側管状体(20)の回転が所定の角度、例えば約1080°に制限され、したがって、組織係合部材(30)が前進することができる距離が所定の長さに制限されるように構成される。これにより、心臓(90)の意図せぬ穿刺を引き起こす可能性がある、意図しないまたは偶発的な過剰回動のリスクを低減することができる。作動中、回転角度範囲は、標的とする組織にしたがって調整することができる。
【0066】
作動中、内側管状体(20)の回転および前進は、親指押しボタン(60)によって作動させることができる。親指押しボタン(60)は、ばね(55)と接続し、親指押しボタンの操作は、所定の角度の、第1の方向への内側管状体(20)の回転を可能にするように構成することができる。例えば、親指押しボタン(60)を1回押すと、第1の方向への内側管状体(20)の約90°の回転をトリガし、組織係合部材(30)を所定の距離だけ前進させることができる。許容される前進の総回数は、例えば約12回に制限することができ、したがって、組み合わされた内側管状体(20)および組織係合部材(30)のユニットの回転は、約1080°に制限される。この機構は、組織係合部材(30)が挿入される深度を操作員が正確に制御することを可能にし、心臓(90)の意図しない穿刺のリスクを低減することができる。組織係合部材(30)は、組織係合部材(30)を第2の方向に回動させることによって、組織から解放することができる。
【0067】
作動中、様々な機械的設計を使用して、内側管状体(20)の回転運動を引き起こすことができる。1つの実施形態では、ねじりハブ(図示せず)を、医療デバイス(1)に配置することができる。ねじりハブは、ユーザが手動で回動させて、組織係合部材(30)を前進および後退させることができる。ねじりハブの回動は、歯車(50)上に形成された成形ストップによって、所定の回動数または所定の角度に制限することができる。
【0068】
別の実施形態では、歯車機構(図示せず)を有するばね荷重ボタン(図示せず)を使用することができる。例えば、ボタンは、ボタンを作動させる都度、所定の角度、例えば約90°の、内側管状体(20)の回転を引き起こすように構成することができ、回転の程度は、ボタンが押される回数、例えば最大約12回によって制御することができる。
【0069】
さらに別の実施形態では、事前荷重ねじりばね(図示せず)を使用して、組み合わされた内側管状体(20)および組織係合部材(30)のユニットを回転させることができる。この実施形態では、親指押しボタン(60)を作動させると、例えば約1080°回転させた後、らせん形溝(51および52)の端部によって回転が停止されるまで、ねじりばねによる内側管状体(20)の回転がトリガされる。この設計により、取り付けられたねじりハブをデバイス本体に対して回転させることによって、ねじりばねの「手動再荷重」が可能になる。
【0070】
作動中、例えば所望の角度で回転するように歯車を駆動するように構成された電気機械的手段によって、回転を制御するためのさらに異なる機構が可能である。
作動中、組織係合部材(30)の先端部(34)は、ばね荷重親指押しボタン(60)を完全に押し下げると、先端部(34)が心膜腔(92)内へ完全に伸展する結果となるように設計することができる。親指押しボタン(60)を解放すると、回転に必要な余分な隙間が排除され、歯車(50)の係合が生じ、それによって、親指押しボタン(60)が完全に押し下げられたときに見られる完全な伸展から、先端部(34)がわずかに後退する結果となる。
【0071】
図4Bおよび図5Bに示された実施例では、ニードル1(44)は、側面ポート(70)に結合されている。作動中、側面ポート(70)は、薬剤および/またはモダリティのための入口部位として、およびニードル1(44)を動かすためのノブとして使用される。外側管状体(10)に形成されたスリット1(71)は、側面ポート(70)の移動を、スリット1(71)の近位端(72)とスリット1(71)の遠位端(73)との間の位置に制限する。側面ポート(70)がスリット1(71)の近位端(72)にあることは、送達機構の第3の位置に対応し、側面ポート(70)がスリット1(71)の遠位端(73)にあることは、送達機構の第4の位置に対応する。医療デバイス(1)は、1つを超える送達機構を内側管状体(20)の内部に収容することができ、1つを超える送達機構は、同時または順次に使用することができる。
【0072】
作動中、送達機構は、ニードル、カテーテル、ガイドワイヤ、マッピング電極、リード、およびチップベースのカテーテルカメラを含むカメラから選択される1つ以上とすることができる。送達機構は、心臓内への薬剤および/またはモダリティの注入、心臓の電気刺激、心臓内の電圧および電流の監視、ならびに心臓の直接撮像を含む手順を実行するように構成される。複数の薬剤および/またはモダリティの送達が所望されるとき、組織係合部材(30)は、医療デバイス(1)を所定の位置に固定することができ、一方で、複数の薬剤および/またはモダリティを同時または順次に送達することができる。
【0073】
作動中、送達機構および内側管状体(20)は、プログラミング機能を有することができる外部プランジャデバイスまたは外部ポンプに接続することができる。
治療の方法
以下に、心臓病を患う患者を治療または監視する方法を説明する。
【0074】
薬剤および/またはモダリティが、心臓病を患う患者の心臓に直接送達されるとき、薬剤および/またはモダリティは、直ちに効果を発揮し、患者にとって有益である。例えば、心停止または心虚血などの即時介入を必要とする心臓病では、直接送達方法は、薬剤および/またはモダリティが直ちに標的組織に到達し、送達方法は、薬剤および/またはモダリティが血流によって心臓に送達されることを必要としないので、他の方法よりも著しい利点を有する。同様に、損傷した心筋の再生療法において、直接送達方法は、薬剤および/またはモダリティが梗塞領域を標的とすることができ、それらの送達は、心筋が損傷したときに多くの場合失われたり、または減少する血流に依存したりしないので、有利である。そのような薬剤および/またはモダリティは、医薬、成長因子、細胞、電流、電圧、または電気信号を含む。
【0075】
作動中、複数の薬剤および/またはモダリティを心臓の同じ領域に適用することが有益である可能性がある。例えば、標的領域を、医薬の注入によってプライミングすることができ、同じ領域に、第2の医薬または細胞を注入することができる。さらに別の実施形態では、医薬を適用し、後で、電極によって監視または刺激することができる。別の実施形態では、まず、心臓活性を監視し、後で、別の薬剤および/またはモダリティを注入することができる。これらの薬剤および/またはモダリティが適用される組み合わせおよび順序は、これらの実施形態に限定されず、任意の組み合わせおよび順序で行うことができる。
【0076】
作動中、薬剤および/またはモダリティの適用は、医療デバイス(1)を使用して行うことができる。薬剤および/またはモダリティは、送達機構を通して送達することができる。薬剤および/またはモダリティの流れは、医療デバイス(1)から心臓へ、または心臓から医療デバイス(1)へのいずれかとすることができ、薬剤および/またはモダリティの流れは可逆的である。薬剤および/またはモダリティは、同時または順次に送達することができる。すなわち、例えば、医薬は、送達機構を通して送達することができるが、一方、生理食塩水は、内側管状体(20)を通して送達することができる。1つの実施例では、患部が医薬の送達前に洗浄を必要とするとき、まず、組織係合部材(30)を使用して、医療デバイス(1)を心臓(90)に固定することができ、次に、患部を、内側管状体(20)を通過した生理食塩水を数回変えて洗浄することができ、次いで、医薬を、送達機構を通して、洗浄された領域に送達することができる。上述の洗浄および送達プロセス中、医療デバイス(1)は、組織係合部材(30)を介して心臓に取り付けられたままとすることができ、同じ患部が治療されることを保証することができる。
【0077】
本開示は、好ましい実施形態を参照して説明されたが、当業者は、本開示の趣旨および範囲からまったく逸脱することなく、形態および詳細において様々な改変を行うことができることを認識するであろう。当業者はまた、医療デバイスを、心臓以外の臓器内への直接送達に使用することができることを認識するであろう。
態様
本出願の医療デバイスは、以下の態様およびその明らかな変形態様を有する。以下の態様1~17、24、および25のうちの任意の1つは、態様18~23のうちの任意の1つと組み合わせることができることに留意されたい。
【0078】
[態様1]臓器に薬剤および/またはモダリティを送達するための医療デバイスであって、
第1の近位端、第1の遠位端、第1の近位端と第1の遠位端との間に延在する第1の管腔、および第1の近位端から第1の遠位端まで延在する第1の長手方向軸を備える外側管状体と、
第2の近位端、第2の遠位端、第2の近位端と第2の遠位端との間に延在する第2の管腔、および第2の近位端から第2の遠位端まで延在する第2の長手方向軸を備える内側管状体であって、
内側管状体は、外側管状体の第1の管腔内に移動可能に配置されており、
内側管状体の第2の近位端は、外側管状体の第1の近位端に動作可能に結合されており、
内側管状体は、外側管状体の第1の長手方向軸に沿って、第1の位置から第2の位置まで変位可能である、内側管状体と、
第3の近位端、第3の遠位端、および第3の近位端から第3の遠位端まで延在する第3の長手方向軸を備える組織係合部材であって、
組織係合部材は、内側管状体の第2の遠位端に取り付けられており、組織係合部材の第3の長手方向軸は、外側管状体の第1の長手方向軸および内側管状体の第2の長手方向軸に実質的に平行であるか、または重複しており、
組織係合部材は、外側管状体の第1の管腔内にあり、
組織係合部材の第3の遠位端は、内側管状体が第1の位置にあるときには外側管状体の第1の遠位端に対して陥凹しており、
組織係合部材の第3の遠位端は、内側管状体が第2の位置にあるときには外側管状体の第1の遠位端の外に延在している、組織係合部材と、を備える、医療デバイス。
【0079】
[態様2]第4の近位端および第4の遠位端を有する少なくとも1つの送達機構をさらに備え、
少なくとも1つの送達機構は、外側管状体の第1の管腔内に位置しており、
少なくとも1つの送達機構は、外側管状体に動作可能に結合されており、
少なくとも1つの送達機構は、外側管状体の第1の長手方向軸に沿って、第3の位置から第4の位置まで変位可能であり、
少なくとも1つの送達機構の第4の遠位端は、少なくとも1つの送達機構が第3の位置にあるときには外側管状体の第1の遠位端に対して陥凹しており、
少なくとも1つの送達機構の第4の遠位端は、少なくとも1つの送達機構が第4の位置にあるときには外側管状体の第1の遠位端の外に延在する、態様1に記載の医療デバイス。
【0080】
[態様3]外側管状体は、ステンレス鋼で作製されており、
外側管状体の外径は、第1の遠位端から第1の近位端に向かって増加し、
外側管状体の第1の遠位端は、面取りされている、態様1または2に記載の医療デバイス。
【0081】
[態様4]中央ポートをさらに備え、
中央ポートは、内側管状体の第2の遠位端に取り付けられており、
中央ポートは、開口部を有する、態様1~3のいずれか1つに記載の医療デバイス。
【0082】
[態様5]組織係合部材の第3の遠位端に取り付けられた先端部をさらに備え、
先端部の自由端は、鈍端である、態様1~4のいずれか1つに記載の医療デバイス。
[態様6]歯車をさらに備え、
歯車は、内側管状体の移動を制御するように構成されている、態様1~5のいずれか1つに記載の医療デバイス。
【0083】
[態様7]内側管状体を第2の長手方向軸を中心に第1の方向に回転させたとき、内側管状体および組織係合部材は、外側管状体の第1の遠位端に向かって移動し、
内側管状体を第2の長手方向軸を中心に第2の方向に回転させたとき、内側管状体および組織係合部材は、外側管状体の第1の近位端に向かって移動する、態様1~6のいずれか1つに記載の医療デバイス。
【0084】
[態様8]ばねと、
親指押しボタンと、をさらに備え、
ばねは、内側管状体の移動を制御するように構成されており、
親指押しボタンは、ばねの移動を制御するように構成されている、態様1~7のいずれか1つに記載の医療デバイス。
【0085】
[態様9]外側管状体に対する内側管状体の回転可能範囲は、第1の所定の角度に制限されており、
親指押しボタンの操作は、第2の所定の角度の、外側管状体に対する内側管状体の回転を可能にする、態様1~8のいずれか1つに記載の医療デバイス。
【0086】
[態様10]少なくとも1つの送達機構は、ニードル、カテーテル、チューブ、ガイドワイヤ、マッピング電極、リード、およびカメラを含む、態様1~9のいずれか1つに記載の医療デバイス。
【0087】
[態様11]少なくとも1つの送達機構は、少なくとも2つの送達機構を含む、態様1~10のいずれか1つに記載の医療デバイス。
[態様12]少なくとも2つの送達機構は、独占的に使用される、態様1~11のいずれか1つに記載の医療デバイス。
【0088】
[態様13]少なくとも2つの送達機構は、同時に使用される、態様1~11のいずれか1つに記載の医療デバイス。
[態様14]外側管状体に動作可能に結合された側面ポートをさらに備え、
少なくとも1つの送達機構は、側面ポートまたは親指押しボタンを操作することによって、第3の位置と第4の位置との間を移動するように構成されており、
側面ポートは、側面ポートを通して供給され、かつ少なくとも1つの送達機構の第4の遠位端から分配される薬剤および/またはモダリティを送達するための導管であるように構成されている、態様1~13のいずれか1つに記載の医療デバイス。
【0089】
[態様15]側面ポートに取り付けられた活栓をさらに備え、
活栓は、空気漏れを防止するように構成されており、
活栓は、注射器を接続するように構成されている、態様1~14のいずれか1つに記載の医療デバイス。
【0090】
[態様16]薬剤および/またはモダリティの注入を制御するように構成されたプランジャをさらに備える、態様1~15のいずれか1つに記載の医療デバイス。
[態様17]薬剤および/またはモダリティは、医薬、ゲル、成長因子、細胞、電流、電圧、または電気信号を含む、態様1~16のいずれか1つに記載の医療デバイス。
【0091】
[態様18]心臓病を患う患者を治療または監視するための方法であって、
1つ以上の薬剤および/またはモダリティを、それを必要とする患者の心筋に直接、送達することを含む、方法。
【0092】
[態様19]1つ以上の薬剤および/またはモダリティは、第1の薬剤またはモダリティと、1つ以上のさらなる薬剤および/またはモダリティとを含み、
第1の薬剤またはモダリティ、および1つ以上のさらなる薬剤および/またはモダリティは、同時または順次に送達され、
第1の薬剤またはモダリティを受容する領域、および1つ以上のさらなる薬剤および/またはモダリティを受容する領域は、実質的に重複する、態様18に記載の方法。
【0093】
[態様20]第1の薬剤またはモダリティ、ならびに1つ以上のさらなる薬剤および/またはモダリティは、医薬、ゲル、成長因子、細胞、電流、電圧、または電気信号を含む、態様18または19のいずれか1つに記載の方法。
【0094】
[態様21]1つ以上の薬剤および/またはモダリティを、それを必要とする患者の心筋に直接、送達することは、態様1~17のいずれか1つに記載の医療デバイスを使用して、1つ以上の薬剤および/またはモダリティを送達することを含む、態様18~20のいずれか1つに記載の方法。
【0095】
[態様22]内側管状体が第1の位置にある状態の医療デバイスの第1の遠位端を患者の体腔に挿入することと、
医療デバイスの第1の遠位端が患者の心膜と接触するように医療デバイスを操作することと、
組織係合部材の先端部を使用して、心膜を貫通することと、
内側管状体を第1の方向に回転させて、組織係合部材を患者の心臓と係合させることと、
内側管状体を第2の位置に位置させることと、
1つ以上の薬剤および/またはモダリティを心筋に送達することと、
組織係合部材を第2の方向に回動させることによって、医療デバイスを患者から解放することと、
患者から医療デバイスを取り出すことと、をさらに含む、態様21に記載の方法。
【0096】
[態様23]医療デバイスは、第1の薬剤またはモダリティの送達中、ならびに1つ以上のさらなる薬剤および/またはモダリティの送達中に、組織係合部材を介して心筋に取り付けられており、
医療デバイスは、第1の薬剤またはモダリティの送達と、1つ以上のさらなる薬剤および/またはモダリティの送達との合間、心筋から解放されない、態様21および22のいずれか1つに記載の方法。
【0097】
[態様24]外側管状体の第1の長手方向軸、内側管状体の第2の長手方向軸、および組織係合部材の第3の長手方向軸は、実質的に平行である、態様1~17のいずれか1つに記載の医療デバイス。
【0098】
[態様25]外側管状体の第1の長手方向軸、内側管状体の第2の長手方向軸、および組織係合部材の第3の長手方向軸は、重複している、態様1~17および24のいずれか1つに記載の医療デバイス。
【0099】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することを意図し、制限することを意図しない。用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、明示的に別様に示されない限り、複数形を含む。用語「備える」および/または「備えている」は、本明細書で使用される場合、記載された特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を示すが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在または追加を除外しない。
【0100】
前述の説明に関して、詳細、特に採用される構築材料や、部品の形状、サイズ、および構成に関する事項において、本開示の範囲から逸脱することなく、変更が行われ得ることが理解される。本明細書内で使用される場合、語「実施形態」は、同じ実施形態を指す場合もあるが、必ずしもそうではない。本明細書および説明された実施形態は、実施例にすぎない。他のおよびさらなる実施形態が、それらの基本的な範囲から逸脱することなく考案され得、開示の真の範囲および趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0101】
1…医療デバイス、10…外側管状体、11…外側管状体の第1の近位端、12…外側管状体の第1の遠位端、13…外側管状体の第1の長手方向軸、14…外側管状体の第1の内側表面、15…外側管状体の第1の管腔、16…刃先、17…外側管状体に形成された突起、18…内側管状体に形成された突起、20…内側管状体、21…内側管状体の第2の近位端、22…内側管状体の第2の遠位端、23…内側管状体の第2の長手方向軸、24…内側管状体の第2の内側表面、25…内側管状体の第2の管腔、30…組織係合部材、31…組織係合部材の第3の近位端、32…組織係合部材の第3の遠位端、33…組織係合部材の第3の長手方向軸、34…先端部、44…ニードル1、45…ニードル2、46…中央管状体、47…中央管状体の管腔、50…歯車、51…らせん形溝、52…らせん形溝、60…親指押しボタン、160…親指押しボタン、70…側面ポート1、71…スリット1、72…スリット1の近位端、73…スリット1の遠位端、74…側面ポート2の移動距離、75…側面ポート2、76…スリット2、77…スリット2の近位端、78…スリット2の遠位端、79…側面ポート2の移動距離、80…中央チューブ材、81…中央ルアーロック、82…弁、83…弁を制御するためのリング、183…弁を制御するためのリング、84…ホルダ、85…ホルダのデバイス受容部、86…ねじ山、87…突起、88…ハンドル、89…トリガ、90…心臓、91…心膜、92…心膜腔、93…心筋、100…対象者、101…体壁、120…内側管状体の拡幅部、441…ニードル1の近位端、442…ニードル1の遠位端、451…ニードル2の近位端、452…ニードル2の遠位端、461…中央管状体の近位端、462…中央管状体の遠位端、463…医療デバイスの近位端、500…ニードルガイド、501…蓋。
図1A
図1B
図2A-1】
図2A-2】
図2A-3】
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G-1】
図2G-2】
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10