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特許7597815火炎噴霧熱分解によって被覆酸化亜鉛粒子を調製するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】火炎噴霧熱分解によって被覆酸化亜鉛粒子を調製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C09C 1/04 20060101AFI20241203BHJP
   C09C 3/06 20060101ALI20241203BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20241203BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20241203BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20241203BHJP
   C01G 9/02 20060101ALI20241203BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20241203BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20241203BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20241203BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
C09C1/04
C09C3/06
C09D17/00
C09D7/62
C09D201/00
C01G9/02 B
A61K8/27
A61Q17/04
A61K47/02
A61Q1/12
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022539228
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-01
(86)【国際出願番号】 EP2020087873
(87)【国際公開番号】W WO2021130369
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-06-24
(31)【優先権主張番号】1915678
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリー・ジャンヌ-ローズ
(72)【発明者】
【氏名】アンリ・サマン
(72)【発明者】
【氏名】イアニス・デリギアンナキス
(72)【発明者】
【氏名】マリア・ロウロウディ
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-545509(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0008872(US,A1)
【文献】特表2010-508229(JP,A)
【文献】特開2010-053019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C
B22F9/
B01J19/
A61K8/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にZn-M酸化物タイプの被覆酸化亜鉛粒子を調製するための方法において、少なくとも以下の工程:
a.可燃性溶媒又は可燃性溶媒の混合物に1つ以上の亜鉛前駆体を添加することにより、組成物(A)を調製する工程と、次いで、
b.火炎噴霧熱分解装置において、酸化亜鉛の凝集体が得られるまで、前記組成物(A)及び酸素含有ガスを注入することにより、火炎を形成する工程と、
c.少なくとも1つの元素Mと、少なくとも1つの酸素原子とからなる無機のコーティング層が前記酸化亜鉛の凝集体の表面上に得られるまで、元素Mの1つ以上の前駆体と、1つ以上の溶媒とを含む組成物(B)を前記火炎に注入する工程であって、前記元素Mは、元素の周期表の第4列からの元素、第13列からの元素及び第14列からの元素から選択される、工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記亜鉛前駆体は、少なくとも1つの炭素原子を含有する1つ以上の配位子に任意選択的に錯化された1つ以上の亜鉛原子を含み、好ましくは、前記配位子は、以下の基:アセテート、(C~C)アルコキシレート、(ジ)(C~C)アルキルアミノ及びアリーレート、例えばナフタレート又はナフテネートから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記可燃性溶媒は、プロトン性可燃性溶媒、非プロトン性可燃性溶媒及びそれらの混合物から、好ましくはアルコール、エステル、酸、非環状エーテル、環状エーテル、芳香族炭化水素又はアレーン、非芳香族炭化水素及びそれらの混合物から選択され、より優先的には、前記可燃性溶媒は、少なくとも3つの炭素原子を含む非プロトン性可燃性溶媒及びそれらの混合物から、さらにより良好にはキシレン、テトラヒドロフラン、2-エチルヘキシルアセテート、2-エチルヘキサン酸(EHA)及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物(A)中の亜鉛前駆体の含有率は、前記組成物(A)の合計質量に対して1質量%~60質量%、好ましくは15質量%~30質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(b)で形成され、且つ工程(c)で維持される前記火炎は、前記組成物(B)を輸送する管の出口において、200℃~600℃、好ましくは300℃~400℃の温度であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記元素Mは、チタン、ジルコニウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ及び鉛から、好ましくはチタン、ジルコニウム、アルミニウム、炭素、ケイ素及びスズから、より優先的にはケイ素、アルミニウム及びチタンから、さらにより良好にはケイ素及びアルミニウムから選択され、さらにより優先的には、前記元素Mは、ケイ素であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記元素Mの前駆体は、少なくとも2つのM原子と、いくつかのM-炭素共有結合とを含み、好ましくは、前記元素Mの前駆体は、少なくとも3つのM原子と、いくつかM-炭素共有結合とを含み、より優先的には、前記元素Mの前駆体は、ヘキサジメチルジシロキサン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記元素Mは、ケイ素であり、及び(亜鉛/ケイ素)注入モル原子比は、厳密に2.5未満、好ましくは2以下、より優先的には1.5以下であり、さらにより良好には0.1~1.5、さらにより優先的には0.5~1にわたる範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記元素Mは、ケイ素と異なり、及び(亜鉛/M)注入モル原子比は、0.1~10、好ましくは0.2~5にわたる範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物(B)は、水以外の極性プロトン性溶媒から、より優先的には(C~C)アルカノールから選択される1つ以上の溶媒を含み、さらにより良好には、前記溶媒は、エタノールであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物(B)中の元素Mの前駆体の含有率は、前記組成物(B)の合計質量に対して1質量%~60質量%、好ましくは5質量%~30質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
7~11のpHを有するアルカリ浴中への、工程(c)後に得られた前記酸化亜鉛粒子の導入を含む処理工程(d1)及び/又は工程(c)後若しくは前記処理工程(d1)の終了時に得られた前記酸化亜鉛粒子を仮焼する工程(d2)をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火炎噴霧熱分解技術によって被覆酸化亜鉛粒子を調製するための方法、被覆酸化亜鉛粒子及び前記粒子を含む組成物に関する。
【0002】
本発明は、かかる方法から誘導される特定の酸化亜鉛粒子、かかる粒子を含む組成物及びまたその使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
酸化亜鉛は、とりわけその光学的性質のため、多くの用途(化粧品、塗料、染色剤、電子部品、ゴムなど)に使用されている。特に、UV線から表面を保護し、且つ/又は周囲光を電気に変換するために、その光吸収性及び/又は光散乱性が使用される。
【0004】
しかしながら、酸化亜鉛は、特に経時的に不安定であるという欠点を有する。より特に、酸化亜鉛は、それを含む組成物又は大気湿分に由来する水の存在下で水酸化亜鉛又はさらにZn2+イオンに分解するおそれがある。かかる分解は、酸化亜鉛の部分的又はさらに完全な水への可溶化をもたらし、且つ酸化亜鉛の所望の性質を大幅に低減又はさらに除去する作用がある。
【0005】
こうした不安定性は、酸化亜鉛を光保護化粧用組成物に使用するときに特に問題になる。実際に、紫外線保護は、酸化亜鉛の分解に伴って減少する。
【0006】
ゾル-ゲル方法を用いて酸化亜鉛をシリカで被覆するか、又はさもなければフルオロ化合物を酸化亜鉛にグラフトすることが想定されている。しかしながら、これらの解決策は、完全に満足のいくものではない。ゾル-ゲル方法を介してシリカで被覆された酸化亜鉛は、一般に、未被覆粒子よりも悪い光学的性質を有する。グラフト化技術に関して、フルオロ化合物の使用は、環境に有害であり、ユーザーにとって危険であるおそれがある。
【0007】
酸化亜鉛粒子を調製するために火炎噴霧熱分解法(FSP法)を使用することも公知である。
【0008】
火炎噴霧熱分解又はFSPは、一般的には、有機又は無機の好ましくは引火性の噴霧可能な液体の形態において、多様な金属前駆体から出発することにより、本来、モルフォロジーを制御して各種の金属の単一若しくは混合酸化物(例えば、SiO、Al、B、ZrO、GeO、WO、Nb、SnO、MgO、ZnO)の超微細粉末を合成し、且つ/又はそれらを各種の基材に堆積するために開発された最近では周知の方法であり、火炎中に噴霧された液体は、燃焼されることにより、とりわけ、これらの各種の基材に火炎自体により噴霧された金属酸化物のナノ粒子を放出する。この方法の原理は、例えば、(非特許文献1)という名称のJohnson Mattheyによる最近(2011年)の刊行物で想起された。多くの様々なFSP方法及び反応器も、例えば、特許又は特許出願:(特許文献1)、(特許文献2)、(特許文献3)又は(特許文献4)、(特許文献5)又は(特許文献6)、(特許文献7)、(特許文献8)、(特許文献9)又は(特許文献10)、(特許文献11)又は(特許文献12)、(特許文献13)、(特許文献14)、(特許文献15)、(特許文献16)、(特許文献17)に記載されている。
【0009】
しかしながら、この方法は、酸化亜鉛の調製物に適用される場合、とりわけ酸化亜鉛粒子の経時的安定性、より特にその耐水性を改善するために、さらに完全なものにすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第5958361号明細書
【文献】米国特許第2268337号明細書
【文献】国際公開第01/36332号
【文献】米国特許第6887566号明細書
【文献】国際公開第2004/005184号
【文献】米国特許第7211236号明細書
【文献】国際公開第2004/056927号
【文献】国際公開第2005/103900号
【文献】国際公開第2007/028267号
【文献】米国特許第8182573号明細書
【文献】国際公開第2008/049954号
【文献】米国特許第8231369号明細書
【文献】国際公開第2008/019905号
【文献】米国特許出願公開第2009/0123357号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0126604号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0055340号明細書
【文献】国際公開第2011/020204号
【非特許文献】
【0011】
【文献】“Flame Spray Pyrolysis:a Unique Facility for the Production of Nanopowders”,Platinum Metals Rev.,2011,55,(2),149-151
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、酸化亜鉛粒子を調製するための方法であって、光、より特に紫外線の吸収及び/又は散乱に関して良好な光学的性質を保持しつつ、良好な経時安定性、極めて特に良好な耐水性を前記粒子に与えることを可能にする方法を開発する必要性が実際に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目標は、本発明によって達成され、その1つの主題は、とりわけ、特にZn-M酸化物タイプの被覆酸化亜鉛粒子を調製するための方法において、少なくとも以下の工程:
a.可燃性溶媒又は可燃性溶媒の混合物に1つ以上の亜鉛前駆体を添加することにより、組成物(A)を調製する工程と、次いで、
b.火炎噴霧熱分解装置において、酸化亜鉛の凝集体が得られるまで、組成物(A)及び酸素含有ガスを注入することにより、火炎を形成する工程と、
c.少なくとも1つの元素Mと、少なくとも1つの酸素原子とを含有する(無機)有機、好ましくは無機のコーティング層が前記酸化亜鉛の凝集体の表面上に得られるまで、元素Mの1つ以上の前駆体と、1つ以上の溶媒とを含む組成物(B)を火炎に注入する工程であって、前記元素Mは、元素の周期表の第4列からの元素、第13列からの元素及び第14列からの元素から選択される、工程と
を含むことを特徴とする方法である。
【0014】
本発明に係る方法は、特に経時安定性があり、且つ良好な耐水性を有する、元素Mに基づく無機材料の層で被覆された酸化亜鉛粒子を得ることを可能にすることが観測された。
【0015】
さらに、従来の被覆方法と異なり、本発明に係る方法は、コーティングの存在にもかかわらず、中心部の良好な固有の性質を保持するという利点を有する。実際に、コーティング層の特異的な性質のため、所与の粒子質量に対して酸化亜鉛の割合を低減することが可能であり、それにもかかわらず、前記酸化亜鉛の性質を低減し、且つ/又はそれに悪影響を及ぼすことがない。
【0016】
そのため、本発明の方法は、酸化亜鉛の良好な光学的性質を維持するために従来から必要とされてきた粒子の量の増加に起因する不都合を回避しつつ、安定な酸化亜鉛粒子の製造を可能にする。
【0017】
特にZn-M酸化物タイプのこれらの酸化亜鉛粒子は、コア1と、前記コア1を覆う1つ以上の上側コーティング層2とを含み、且つ
(i)コア1が、好ましくは結晶状態の酸化亜鉛からなること、
(ii)上側コーティング層2が、コア1の表面の少なくとも90%を覆い、好ましくはコア1の表面の全体を覆い、且つ1つ以上の元素Mと、1つ以上の酸素原子とを含有する1つ以上の(無機)有機、好ましくは無機の化合物を含むこと、
(iii)前記元素Mが、元素の周期表の第4列からの元素、第13列からの元素及び第14列からの元素から選択されること
を特徴とし、及び
- 前記元素Mがケイ素であるとき、(亜鉛/ケイ素)粒子モル原子比は、厳密に2未満であること、及び
- 前記元素Mがケイ素と異なるとき、(亜鉛/M)粒子モル原子比は、0.1~10にわたる範囲内であること、及び
- 粒子のBET比表面積は、1m/g~350m/gであること
が理解される。
【0018】
より特に、本発明に係る被覆酸化亜鉛粒子は、たとえ水性組成物中に配合されたとしても、水の存在下で経時的にごくわずかに劣化するにすぎない。
【0019】
本発明に従って調製された酸化亜鉛粒子は、光吸収及び/又は光散乱に関して良好な光学的性質を有することも観測された。より特に、それは、高いUV吸収と、低い可視散乱又は高い可視散乱とを有するため、水の存在下での耐性に基づく利益を享受しつつ、日焼け止めなどの使用及び/又は視覚的外観の修飾を可能にする。
【0020】
そのうえ、本発明に係る被覆酸化亜鉛粒子を含む組成物は、とりわけ、長い及び短いUV-A線に対して良好な遮蔽力を示した。
【0021】
さらに、本発明の被覆酸化亜鉛粒子を含む組成物は、とりわけ高い透明度を有するため、特に皮膚上に組成物を適用してそのコーティングを乾燥させたとき、有利であることが証明され得る。
【0022】
そのうえ、本発明に係る被覆酸化亜鉛粒子は、疎水性コーティングを必要としないため、広い配合物範囲にわたって使用可能である(例えば、完全に水性の配合物及び/又は界面活性剤を含まない配合物において)。こうして得られた配合物が最終的に水(洗面台排水、湖水又は海水)に入れられたとき、不適切な堆積物(洗面台の縁上、パイプの壁上又は岩石上のもの)のリスクがさらに低減される。
【0023】
添付の図面は、概略図である。図面は、必ずしも原寸通りであるとは限らず、とりわけ本発明の原理を例示することが意図される。これらの図1図2の図面では、同一の要素(又は要素の一部分)は、同一の参照記号によって同定される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る酸化亜鉛粒子の断面図を表す。
図2】本発明の他の実施形態に係る追加のコーティング層でも覆われた酸化亜鉛粒子の断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の他の主題、特徴、態様及び利点は、説明及び後続の実施例を読むことでさらに明らかになるであろう。
【0026】
本明細書では、特に指示がない限り、
- 「少なくとも1つ」という表現は、「1つ以上」という表現と均等であり、それと置き換えることが可能であり、
- 「~」という表現は、「~の範囲」という表現と均等であり、それと置き換えることが可能であり、限界点を含むことが示唆され、
- 「ケラチン物質」という表現は、特に皮膚、さらに毛髪などのヒトケラチン線維を表し、
- コア(1)は、「中心部」とも呼ばれ、
- 上側コーティング層(2)は、「外側層」、「シェル」又は「コーティング」とも呼ばれ、
- 「(無機)有機化合物」という表現は、「有機又は無機化合物」と均等であり、
- 「アルキル」は、「アルキル基」、すなわちC~C10、特にC~C、より特にC~C、優先的にはC~C線状又は分岐状炭化水素系基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルを意味するものと理解され、
- 「アリール」基は、6~22個の炭素原子を含む単環式又は多環式の縮合又は非縮合炭素系基であって、その少なくとも1つの環が芳香族であるものを意味するものと理解され、優先的には、アリール基は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、インデニル、アントラセニル又はテトラヒドロナフチル、好ましくはフェニルであり、
- 「アリーレート」基は、1つ以上の-C(O)Oカルボキシレート基を含むアリール基、例えばナフタレート又はナフテネートを意味するものと理解され、
- 「錯化亜鉛」は、亜鉛が「金属錯体」又は「配位化合物」を形成し、その中心原子に対応する金属イオン、すなわち亜鉛が1つ以上の電子ドナー(配位子)に化学結合されることを意味するものと理解され、
- 「配位子」は、配位性有機化学基又は化合物、すなわち少なくとも1つの炭素原子を含み、且つ金属、とりわけZn原子、好ましくはZn(II)に配位する能力があり、配位又は錯化されると、あらかじめ決められた数の電子を伴って配位圏の原理に対応する金属化合物(内部錯体又はキレート)をもたらすものを意味するものと理解される - Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,“Metal complex dyes”,2005,p.1-42を参照されたい。より特に、配位子は、誘起及び/若しくはメソメリー効果を介して電子供与性の少なくとも1つの基を含む有機基、より特に少なくとも1つのアミノ、ホスフィノ、ヒドロキシ若しくはチオール電子供与性基を担持する有機基であるか、又は配位子は、持続性カルベン、特に「アルジェンゴ」型(イミダゾール-2-イリデン)であるか若しくは少なくとも1つのカルボニル基を含む。配位子として、より特に以下が挙げられ得る:i)少なくとも1つのリン原子-P<を含有するもの(すなわちホスフィン、例えばトリフェニルホスフィン)、ii)式R-C(X)-CR’R’’-C(X)-R’’’のバイデンデート配位子(式中、R及びR’’’’は、同一であるか又は異なり、線状又は分岐状(C~C)アルキル基を表し、且つR’及びR’’は、同一であるか又は異なり、水素原子又は線状若しくは分岐状(C~C)アルキル基を表し、優先的には、R’及びR’’は、水素原子を表し、Xは、酸素若しくは硫黄原子又はN(R)基(ここで、Rは、水素原子又は線状若しくは分岐状(C~C)アルキル基を表す)を表す)、例えばアセチルアセトン又はβ-ジケトン、iii)式[HO-C(O)]n-A-C(O)-OH(式中、Aは、nが値ゼロを有するときに1価基を、又はnが1以上であるときに多価基を表し、それは、1つ以上のヘテロ原子が任意選択的に介在し、且つ/又はとりわけ1つ以上のヒドロキシル基で任意選択的に置換されている、1~20個の炭素原子を含む炭化水素に基づいて、飽和又は不飽和、環式又は非環式及び芳香族又は非芳香族であり、好ましくは、Aは、1つ以上のヒドロキシル基で任意選択的に置換されている1価(C~C)アルキル基又は多価(C~C)アルキレン基を表し、且つnは、0~10(両端値を含む)の整数を表し、好ましくは、nは、0~5、例えば0、1又は2である)の(ポリ)ヒドロキシカルボン酸配位子及びその脱プロトン化形、例えば乳酸、グリコール酸、酒石酸、クエン酸、マレイン酸及びアリーレート、例えばナフタレート、及びiv)2~5つのヒドロキシル基を含むC~C10ポリオール配位子、とりわけエチレングリコール、グリセロール、さらにより特に、配位子は、カルボキシ基、カルボキシレート基又はアミノ基を担持し、特に、配位子は、アセテート基、(C~C)アルコキシレート基、(ジ)(C~C)アルキルアミノ基及びアリーレート基、例えばナフタレート基又はナフテネート基から選択され、
「燃料」という用語は、二酸素及びエネルギーを用いて、熱を発生する化学反応:燃焼で燃やされる液状化合物を意味するものと理解されられる。特に、液状燃料は、プロトン性溶媒、特にメタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノールなどのアルコール、非プロトン性溶媒、特にメチルエステルなどのエステルから選択されるもの及び2-エチルヘキシルアセテートなどのアセテート、2-エチルヘキサン酸(EHA)などの酸、エチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、メチルtert-アミルエーテル(TAME)、メチルtert-ヘキシルエーテル(THEME)、エチルtert-ブチルエーテル(ETBE)、エーテルtert-アミルエーテル(TAEE)、ジイソプロピルエーテル(DIPE)などの非環状エーテル、テトラヒドロフラン(THF)などの環状エーテル、キシレンなどの芳香族炭化水素又はアレーン、非芳香族炭化水素から誘導されるもの並びにそれらの混合物から選択される。
【0027】
燃料は、アセチレン、メタン、プロパン又はブタンなどの液化炭化水素及びそれらの混合物から任意選択的に選択され得る。
【0028】
被覆酸化亜鉛粒子の調製方法
本発明に係る調製方法は、1つ以上の亜鉛前駆体と、1つ以上の可燃性溶媒とを含有する組成物(A)を調製する工程(a)を含む。
【0029】
本発明に従って使用可能な亜鉛前駆体及び可燃性溶媒は、火炎噴霧熱分解で従来から使用されている亜鉛前駆体及び可燃性溶媒から選択され得る。
【0030】
好ましくは、組成物(A)に含まれる亜鉛前駆体は、少なくとも1つの炭素原子を含有する1つ以上の配位子で任意選択的に錯化された1つ以上の亜鉛原子を含む。
【0031】
より優先的には、前記配位子は、アセテート基、(C~C)アルコキシレート基、(ジ)(C~C)アルキルアミノ基及びアリーレート基、例えばナフタレート基又はナフテネート基から選択される。
【0032】
好ましくは、可燃性溶媒は、プロトン性可燃性溶媒、非プロトン性可燃性溶媒及びそれらの混合物から、より優先的にはアルコール、エステル、酸、非環状エーテル、環状エーテル、芳香族炭化水素又はアレーン、非芳香族炭化水素及びそれらの混合物から、さらにより良好には2-エチルヘキシルアセテート、2-エチルヘキサン酸(EHA)、エチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、メチルtert-アミルエーテル(TAME)、メチルtert-ヘキシルエーテル(THEME)、エチルtert-ブチルエーテル(ETBE)、エーテルtert-アミルエーテル(TAEE)、ジイソプロピルエーテル(DIPE)、テトラヒドロフラン(THF)、キシレン及びそれらの混合物から選択される。
【0033】
より優先的には、可燃性溶媒は、少なくとも3つの炭素原子を含む非プロトン性可燃性溶媒及びそれらの混合物から、さらにより優先的にはキシレン、テトラヒドロフラン、2-エチルヘキシルアセテート、2-エチルヘキサン酸(EHA)及びそれらの混合物から選択される。
【0034】
有利には、組成物(A)中の亜鉛前駆体の含有率は、組成物(A)の合計質量に対して1質量%~60質量%、好ましくは15質量%~30質量%である。
【0035】
本発明に係る調製方法は、組成物(A)及び酸素含有ガスを火炎噴霧熱分解(FSP)装置に注入して火炎を形成する工程(b)をさらに含む。
【0036】
この工程(b)では、組成物(A)及び酸素含有ガスは、有利には、互いに独立した2回の注入により、火炎噴霧熱分解装置に注入される。換言すると、組成物(A)及び酸素含有ガスは、個別に注入される。すなわち、組成物(A)及び酸素含有ガスは、単一ノズルを利用して注入されない。
【0037】
より特に、組成物(A)は、一方の管によって輸送され、酸素含有ガス(「分散酸素」とも呼ばれる)は、他方の管によって輸送される。2つの管の入口は、酸素含有ガスが負圧を生成してベンチュリ効果によって組成物(A)を吸い上げて、液滴に変換するように配置される。
【0038】
工程(b)は、任意選択的に、酸素と、1つ以上の可燃性ガスとを含む「プレミックス」混合物の追加の注入をさらに含み得る。この「プレミックス」混合物は、「支援火炎酸素」とも呼ばれ、点火して組成物(A)及び酸素含有ガス(すなわち「分散酸素」)から生じる火炎を維持することが意図される支援火炎の生成を可能にする。
【0039】
好ましくは、工程(b)では、組成物(A)、酸素含有ガス及び任意選択的に存在する場合には「プレミックス」混合物は、「包囲管」とも呼ばれる反応管に注入される。好ましくは、この反応管は、金属又は石英で作製される。有利には、反応管は、30cm以上、より優先的には40cm以上、さらにより良好には50cm以上の高さを有する。有利には、前記反応管の長さは、30cm~300cm、好ましくは40cm~200cm、より優先的には45cm~100cmであり、さらにより良好には、この長さは、50cmに等しい。
【0040】
一方の組成物(A)中に存在する溶媒の質量と、他方の酸素含有ガスの質量との質量比は、以下のように定義される。すなわち、最初に、酸素含有ガス(酸化剤化合物とも呼ばれる)の量は、組成物(A)によって形成される集合体、すなわち一方の可燃性溶媒及び亜鉛前駆体と、他方の酸素含有ガスとを化学量論比において燃焼反応で一緒に反応させることができるように計算される(したがって酸化剤化合物の過剰又は不足が生じない)。
【0041】
「計算酸化剤」とも呼ばれる酸素含有ガスのこの計算量から出発して、「注入酸化剤」とも呼ばれる、注入される酸素含有ガスの量をそれから推測するために、式:注入酸化剤=計算酸化剤/φ(ここで、φは、好ましくは、0.30~0.9、より優先的には0.4~0.65である)に従って新しい計算を実施する。
【0042】
この方法は、とりわけ、Turns,S.R.in An Introduction to Combustion:Concepts and Applications,3rd ed.;McGraw-Hill:New York,2012によって定義されている。
【0043】
本発明に係る調製方法は、工程(b)で形成された火炎に、1つ以上の溶媒と、元素Mの1つ以上の前駆体とを含む組成物(B)を注入する工程(c)をさらに含み、前記元素Mは、元素の周期表の第4列からの元素、第13列からの元素及び第14列からの元素から選択される。
【0044】
換言すると、本発明の方法は、連続方式であり、工程(b)で形成された火炎は、維持される。
【0045】
本発明の調製方法の工程(c)では、組成物(A)及び(B)は、個別に同時に注入される。換言すると、組成物(A)は、一方の管によって輸送され、組成物(B)は、他方の管によって輸送される。2つの管の出口間の距離は、好ましくは、少なくとも30cm、より優先的には少なくとも40cmである。
【0046】
好ましくは、工程(b)で形成された火炎は、火炎の少なくともの一部で2000℃以上の温度である。
【0047】
工程(b)で形成され、且つ工程(c)で維持される火炎への組成物(B)の注入の部位において、すなわち工程中、温度は、好ましくは、200℃~600℃、より優先的には300℃~400℃である。
【0048】
有利には、工程(c)では、組成物(B)は、上記に記載の前記反応管の上に配置された噴霧リングを介して注入され、特に、組成物(A)の注入は、ここで行われる。
【0049】
好ましくは、元素M前駆体は、少なくとも2つのM原子と、いくつかのM-炭素共有結合とを含む。より優先的には、元素M前駆体は、少なくとも3つのM原子と、いくつかのM-炭素共有結合とを含む。
【0050】
本発明に従って使用可能な元素Mは、元素の周期表の第4列からの元素(チタン列)、第13列からの元素(ホウ素列)及び第14列からの元素(炭素列)から選択される。
【0051】
換言すると、元素Mは、好ましくは、チタン、ジルコニウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ及び鉛から、より優先的にはチタン、ジルコニウム、アルミニウム、炭素、ケイ素及びスズから、さらにより良好にはケイ素、アルミニウム及びチタンから選択される。有利には、元素Mは、ケイ素及びアルミニウムから選択され、さらにより良好には、元素Mは、ケイ素である。
【0052】
さらにより優先的には、元素M前駆体は、ヘキサジメチルジシロキサン、テトラエトキシシラン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、メトキシトリメチルシラン及びそれらの混合物から選択される。
【0053】
本発明の第1の具体的な実施形態によれば、元素Mは、好ましくは、第4列からの元素であり、さらにより良好には、元素Mは、チタンである。
【0054】
本発明の他の具体的な実施形態によれば、元素Mは、好ましくは、第13列からの元素であり、さらにより良好には、元素Mは、アルミニウムである。
【0055】
本発明の他の具体的な実施形態によれば、元素Mは、第14列からの元素であり、さらにより良好には、元素Mは、ケイ素である。
【0056】
本発明に係る方法では、(亜鉛/M)注入モル原子比は、計算可能である。この比は、一方の工程(b)で注入される亜鉛原子のモル単位の量と、他方の工程(c)で注入される元素Mのモル単位の量との比に対応する。
【0057】
特に、元素Mがケイ素であるとき、(亜鉛/ケイ素)注入モル原子比は、好ましくは、厳密に2.5未満、より優先的には2以下、さらにより良好には1.5以下であり、さらにより優先的には0.1~1.5、さらにより良好には0.5~1にわたる範囲内である。
【0058】
元素Mがケイ素と異なるとき、(亜鉛/M)注入モル原子比は、好ましくは、0.1~10、より優先的には0.2~5にわたる範囲内である。
【0059】
好ましくは、工程(c)での注入前に、本発明の組成物(B)に窒素がバブリングされる。したがって、組成物(B)の注入速度は、当業者に公知の圧力決定により、例えばScott,D.W.;Messerly,J.F.;Todd,S.S.;Guthrie,G.B.;Hossenlopp,I.A.;Moore,R.T.;Osborn,A.G.;Berg,W.T.;McCullough,J.P.,Hexamethyldisiloxane:chemical thermodynamic properties and internal rotation about the siloxane linkage,J.Phys.Chem.,1961,65,1320-6によって規定される方法によって制御可能である。
【0060】
本発明の具体的な実施形態によれば、上記に記載の組成物(B)は、工程(c)での注入前に、25℃~70℃、より優先的には30℃~60℃にわたる範囲内の温度に調整される。
【0061】
好ましくは、本発明に係る方法の工程(c)で注入される組成物(B)中の元素M前駆体の含有率は、組成物(B)の合計質量に対して1質量%~60質量%、より優先的には5質量%~30質量%である。
【0062】
組成物(B)は、1つ以上の溶媒を含む。
【0063】
好ましくは、組成物(B)中に存在する溶媒は、水以外の極性プロトン性溶媒、より優先的には(C~C)アルカノールからから選択される。さらにより優先的には、組成物(B)は、エタノールを含む。
【0064】
好ましくは、組成物(B)中に存在する溶媒は、工程(c)の火炎温度で可燃性である、好ましくは200℃~600℃、より優先的には300℃~400℃の温度で可燃性である溶媒から選択される。さらにより良好には、組成物(B)中に存在する溶媒は、室温(25℃)以上、より優先的には50℃~120℃の沸点を有する。
【0065】
好ましくは、本発明に係る方法の工程(c)で注入される組成物(B)中に存在する溶媒の含有率は、組成物(B)の合計質量に対して40質量%~99質量%、より優先的には50質量%~98質量%、さらにより良好には70質量%~95質量%である。
【0066】
本発明に係る調製方法は、任意選択的に、
- 7~11、優先的には7.5~9のpHを有するアルカリ浴に、工程(c)後に得られた酸化亜鉛粒子を導入することを含む処理工程(d)、及び/又は
- 工程(c)後又は処理工程(d)の終了時に得られた酸化亜鉛粒子を仮焼する工程(d
をさらに含み得る。
【0067】
処理工程(d)が存在するとき、
(i)処理は、好ましくは、10~600分間、より優先的には40~300分間持続し、及び/又は
(ii)アルカリ浴のpHは、好ましくは、7~11、より優先的には7.5~9で変動し、及び/又は
(iii)温度は、好ましくは、室温、すなわち25℃であり、及び/又は
(iii)アルカリ浴で工程(c)後に得られる粒子の含有率は、好ましくは、アルカリ浴1リットル当たり0.5~100gの粒子、より優先的にはアルカリ浴1リットル当たり1~10gの粒子である。
【0068】
仮焼する工程(d)が存在するとき、
(i)仮焼は、好ましくは、60~400分間、より優先的には60~180分間持続し、及び/又は
(ii)温度は、好ましくは、100℃~600℃、より優先的には100℃~300℃、さらにより優先的には130℃~250℃の範囲内である。
【0069】
本発明の具体的な実施形態によれば、本発明に係る調製方法によって得られる粒子は、ドープされる。この実施形態によれば、組成物(A)は、元素Mと異なる元素Dの1つ以上の前駆体をさらに含み、Dは、フッ素、イットリウム、バナジウム、スカンジウム、ジルコニウム、ハフニウム、鉄、銅及びタングステンから選択される。
【0070】
酸化亜鉛粒子
本発明の他の主題は、コア1と、前記コア1を覆う1つ以上の上側コーティング層2とを含む、特にZn-M酸化物タイプの酸化亜鉛粒子において、
(i)コア1は、優先的には結晶状態の酸化亜鉛からなること、
(ii)上側コーティング層2は、コア1の表面の少なくとも90%を覆い、好ましくはコア1の表面の全体を覆い、且つ1つ以上の元素Mと、1つ以上の酸素原子とを含有する1つ以上の(無機)有機、好ましくは無機の化合物を含むこと、
(iii)前記元素Mは、元素の周期表の第4列からの元素、第13列からの元素及び第14列からの元素から選択されること
ことを特徴とし、及び
- 前記元素Mがケイ素であるとき、(亜鉛/ケイ素)粒子モル原子比は、厳密に2未満であり、好ましくは0.1~1.5、より優先的には0.5~1にわたる範囲内であること、及び
- 前記元素Mがケイ素と異なるとき、(亜鉛/M)粒子モル原子比は、0.1~10にわたる範囲内であり、好ましくは0.1~5にわたる範囲内であること、及び
- 粒子のBET比表面積は、1m/g~350m/gであること
が理解される、酸化亜鉛粒子である。
【0071】
本発明に係る粒子は、好ましくは結晶状態の酸化亜鉛からなるコア1を含む。コア1の結晶状態及びまたその組成は、例えば、従来のX線回折法によって決定され得る。
【0072】
有利には、本発明に係る粒子のコア1は、結晶一次酸化亜鉛粒子の1つ以上の凝集体からなる。換言すると、コア1は、酸化亜鉛のいくつかのマイクロ結晶からなる。
【0073】
好ましくは、酸化亜鉛の粒子は、上記で規定された本発明の調製方法によって得られる。
【0074】
図1による酸化亜鉛粒子は、結晶状態の酸化亜鉛からなり、且つ一次酸化亜鉛粒子の1つ以上の凝集体を含む、直径Dのコア1を含む。
【0075】
図1による酸化亜鉛粒子は、コア1の表面を完全に覆う厚さdを有する上側コーティング層2も含む。
【0076】
図2による酸化亜鉛粒子は、コーティング層2と異なる追加のコーティング層3をさらに含む、図1による酸化亜鉛粒子に対応する。前記追加のコーティング層3は、上側層2の表面の少なくとも90%を覆い、好ましくは上側コーティング層2を完全に覆う。
【0077】
コア1の数平均直径Dは、例えば、透過電子顕微鏡法(TEMと略記される)によって決定され得る。好ましくは、本発明に係る粒子のコア1の数平均直径Dは、3~1000nm、より優先的には6~50nm、さらにより優先的には10~30nmにわたる範囲内である。
【0078】
本発明に係る酸化亜鉛粒子は、コアの表面の少なくとも90%を覆う1つ以上の上側コーティング層を含む。
【0079】
上側コーティング層によるコアの被覆の度合いは、例えば、STEM-EDX分析に結合されたTEM-BF又はSTEM-HAADFタイプの視覚的分析を利用して決定され得る。
【0080】
分析の各々は、統計的粒子数、特に少なくとも20個の粒子で行われる。粒子は、亜鉛と異なり、且つコア又は上側コーティング層にかかわらず、粒子の一部を形成するいずれの他の金属とも異なる金属で作製された金属グリッド上に堆積される。例えば、グリッドは、銅で作製される(ただし、粒子の製造で銅を使用することが望まれる場合を除く)。
【0081】
TEM-BF及びSTEM-HAADF画像の視覚的分析は、コントラストに基づいて、コーティングが粒子のコアを完全に包囲するか否かの推測を可能にする。20個(以上)の画像の各々を分析することにより、コアの被覆の度合いを推測し、次いで平均を取ることにより、平均の被覆の度合いを決定することが可能である。
【0082】
STEM-EDX分析は、コーティングが実際に主に又は排他的に金属Mを含有するかの検証を可能にする。このために、粒子の縁部で測定を行う必要がある(少なくとも20個の粒子で)。次いで、これらの測定によって金属Mが明らかにされる。
【0083】
STEM-EDX分析は、コアが実際に金属亜鉛を含有するかの検証も可能にする。このために、粒子の中心部で測定を行う必要がある(少なくとも20個の粒子で)。次いで、これらの測定によって金属亜鉛及び金属Mが明らかにされる。
【0084】
好ましくは、上側コーティング層2は、コア1の表面を完全に覆う。
【0085】
上側コーティング層2の数平均厚さdも透過電子顕微鏡法によって決定され得る。好ましくは、数平均厚さdは、1~30nm、より優先的には1~15nm、さらにより優先的には1~6nmにわたる範囲内である。
【0086】
有利には、上側コーティング層2は、アモルファスである。
【0087】
好ましくは、上側コーティング層2は、元素Mの1つ以上の酸化物からなる。上記に記載のように、元素Mは、元素の周期表の第4列からの元素(チタン列)、第13列からの元素(ホウ素列)及び第14列からの元素(炭素列)から選択される。
【0088】
換言すると、元素Mは、好ましくは、チタン、ジルコニウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ及び鉛から、より優先的にはチタン、ジルコニウム、アルミニウム、炭素、ケイ素及びスズから、さらにより良好にはケイ素、アルミニウム及びチタンから選択される。有利には、元素Mは、ケイ素及びアルミニウムから選択され、さらにより良好には、元素Mは、ケイ素である。
【0089】
本発明の第1の具体的な実施形態によれば、元素Mは、好ましくは、第4列からの元素であり、さらにより良好には、元素Mは、チタンである。
【0090】
本発明の他の具体的な実施形態によれば、元素Mは、好ましくは、第13列からの元素であり、さらにより良好には、元素Mは、アルミニウムである。
【0091】
本発明の他の具体的な実施形態によれば、元素Mは、第14列からの元素であり、さらにより良好には、元素Mは、ケイ素である。
【0092】
極めて特に好ましくは、上側コーティング層2は、酸化ケイ素SiO、酸化アルミニウムAl及び/又は酸化チタンTiO、より優先的には酸化ケイ素SiOからなる。
【0093】
本発明に係る酸化亜鉛粒子は、本発明に係る粒子に対する(亜鉛/M)粒子モル原子比で亜鉛及び元素Mを含む。
【0094】
この比は、一方では本発明に係る粒子中に存在する元素Mのモル単位の量と、他方では本発明に係る粒子中に存在する亜鉛原子のモル単位の量との比に対応する。
【0095】
この比は、下記の2つ方法の1つに従って分光測定によって決定可能である。第1の方法によれば、粉末を展延し、X線分光計を用いてX線蛍光測定試験を行い、それから金属比を推測する。他の方法によれば、事前に本発明の粒子を酸に溶解させる。次いで、得られた材料でICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析)によって元素分析を行って、それから金属比を推測する。
【0096】
特に、元素Mがケイ素であるとき、(亜鉛/ケイ素)粒子モル原子比は、好ましくは、1.5以下、より優先的には、前記比は、0.1~1.5、さらにより優先的には0.5~1にわたる範囲内である。
【0097】
元素Mがケイ素と異なるとき、(亜鉛/M)粒子モル原子比は、好ましくは、0.1~5にわたる範囲内である。
【0098】
好ましくは、酸化亜鉛の含有率と、元素M酸化物の含有率との和は、コア1と、上側コーティング層2との合計質量に対して少なくとも99質量%に等しい。
【0099】
本発明に係る粒子の数平均直径も透過電子顕微鏡法によって決定され得る。好ましくは、本発明に係る粒子の質量平均直径は、3~1000nm、より優先的には10~100nm、好ましくは15~70nmにわたる範囲内である。
【0100】
本発明に係る粒子のBET比表面積は、1m/g~350m/g、より優先的には1m/g~200m/g、さらにより優先的には30~100m/gである。
【0101】
酸化亜鉛粒子は、任意選択的に、上側コーティング層2を覆い、且つ好ましくは1つ以上の疎水性有機化合物を含む追加のコーティング層3をさらに含み得る。
【0102】
疎水性有機化合物は、より優先的には、シリコーン、特に少なくとも1つの脂肪鎖を含むシリコーン、少なくとも6つの炭素原子を含む炭素系誘導体、特に脂肪酸エステル及びそれらの混合物から選択される。
【0103】
追加のコーティング層3は、液体法又は固体法によって作製され得る。
【0104】
液体法を介して、粒子の表面のヒドロキシル官能基と、コーティングを形成する化合物の反応性官能基(典型的にはシリコーンのシラノール官能基又は炭素系脂肪物質の酸官能基)とを反応させる。
【0105】
固体法を介して、粒子と、疎水性物質を含む液状若しくはペースト状化合物とを接触させる。次いで、接触後、混合物を乾燥させ、且つ例えばミル処理することによって混合物を破砕する。
【0106】
本発明の他の主題は、1つ以上の上記に記載の酸化亜鉛粒子を含み、且つ好ましくは本発明に係る方法によって得られる組成物、好ましくは化粧用組成物に関する。
【0107】
本発明に係る組成物は、有利には、水性組成物である。
【0108】
本発明の被覆酸化亜鉛粒子は、乾燥形態(粉末、フレーク、プレート)において、分散体として、又は液状懸濁液として、又はエアロゾルとしても存在し得る。本発明の被覆酸化亜鉛粒子は、そのまま使用され得るか、又は他の成分と混合され得る。
【0109】
本発明の組成物は、各種のガレヌス製剤形態であり得る。そのため、本発明の組成物は、粉末(粉末状)組成物又は液状組成物の形態、ミルク、クリーム、ペースト又はエアロゾル組成物の形態であり得る。
【0110】
本発明に係る組成物は、特に化粧用組成物である。すなわち、本発明の多層材料は、化粧用媒体中にある。「化粧用媒体」という用語は、ケラチン物質、とりわけ皮膚などのヒトケラチン物質への適用に好適な媒体を意味し、前記化粧用媒体は、一般に、水若しくは水と1つ以上の有機溶媒との混合物又は有機溶媒の混合物からなる。好ましくは、組成物は、組成物の合計質量に対してとりわけ5質量%~95質量%の含有率で水を含む。
【0111】
「有機溶媒」という用語は、化学修飾を行うことなく他の物質を溶解する能力のある有機物質を意味する。本発明の組成物で使用可能な有機溶媒の例としては、例えば、低級C~Cアルカノール、例えばエタノール及びイソプロパノール、ポリオール及びポリオールエーテル、例えば2-ブトキシエタノール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル並びにジエチレングリコールモノエチルエーテル及びモノメチルエーテル、さらに芳香族アルコール、例えばベンジルアルコール又はフェノキシエタノール並びにそれらの混合物が挙げられ得る。
【0112】
存在する場合、有機溶媒は、組成物の合計質量に対して好ましくは0.1質量%~40質量%、より優先的には1質量%~30質量%、さらにより特に5質量%~25質量%の割合で存在する。
【0113】
本発明の組成物は、脂肪相を含有し得、且つ直接又は逆エマルジョンの形態であり得る。
【0114】
本発明の組成物中に存在する酸化亜鉛粒子の含有率は、組成物の合計質量に対して好ましくは0.1質量%~40質量%、より優先的には0.5質量%~20質量%、さらにより良好には1質量%~10質量%、さらにより優先的には1.5%~5質量%の範囲内である。
【0115】
本発明の具体的な実施形態によれば、本発明に係る組成物は、無水組成物の形態、例えば油の形態でもあり得る。「無水組成物」という用語は、組成物の合計質量に対して2質量%未満の水、好ましくは1質量%未満の水、さらにより優先的には0.5質量%未満の水を含有する組成物又はさらに水を含まない組成物を意味することが意図される。このタイプの組成物では、存在する可能性のある水は、組成物の調製時に添加されず、混合成分によって提供される残留水に対応する。
【0116】
本発明に係る組成物は、当業者に周知の技術に従って調製され得る。特に、単純又は複合エマルジョン(水中油型若しくはO/W型と略記、油中水型若しくはW/O型、油中水中油型若しくはO/W/O型又は水中油中水型若しくはW/O/W型)、例えばクリーム、ミルク若しくはクリームゲルの形態又はさもなければ粉末形態若しくはエアロゾル組成物の形態であり得る。
【0117】
本発明の他の主題は、本発明に係る組成物、好ましくは可視線(すなわち400nm~800nmの波長)、及び/又は紫外線(すなわち100nm~400nmの波長)、UV-A線(すなわち320nm~400nmの波長)、及び/又はUV-B線(すなわち280nm~320nmの波長)に対して皮膚、好ましくはヒト皮膚を保護するために使用するための化粧用組成物である。本発明に係る組成物は、広範なスペクトルの太陽放射線、特にUV-A線(長波UV-A線を含む)の効率的遮蔽を可能にすると同時に、UV暴露下で特に経時安定性がある。
【0118】
本発明に係る組成物は、親水性、親油性若しくは不溶性の有機UVスクリーニング剤から選択される、本発明に係る酸化亜鉛粒子以外の1つ以上の追加のUVスクリーニング剤及び/又は1つ以上の鉱物顔料を任意選択的に含み得る。それは、優先的には、少なくとも1つの親水性、親油性又は不溶性の有機UVスクリーニング剤で構成されるであろう。
【0119】
本発明の他の主題は、上記に記載の酸化亜鉛粒子、好ましくは本発明に係る方法によって得られるものの使用であって、
- 特に皮膚、特にヒト皮膚を可視線及び/若しくは紫外線に対して保護するか又は皮膚、特にヒト皮膚の外見を修飾することを意図された化粧用組成物又は医薬組成物を配合すること、
- 塗料、ワニス及び/又は染色剤を配合すること、又は
- とりわけ耐湿電子部品を得るために、電子デバイス又は製品のコーティングを製造すること
のための使用である。
【0120】
本発明の被覆酸化亜鉛粒子は、好ましくは、UVA及びUVB線に対する保護剤である。それは、とりわけ、可視領域で良好な全透過及び可視領域(400~780nm)で優れた透明性を維持しつつ、UV線の全スクリーニング除去を改善し得る。
【0121】
適用方法
本発明の他の主題は、ケラチン物質、とりわけ皮膚などのヒトケラチン物質を処置するための方法であり、上記で規定された組成物を前記物質に適用することにより、好ましくは層間で乾燥させて1~5回の逐次適用により噴霧などで適用される。
【0122】
本発明の組成物は、単回適用又は複数回適用で使用され得る。本発明の組成物の複数回適用が意図されるとき、本発明の元素M酸化物の粒子の含有率は、組成物の単回適用が意図されるときよりも一般に低い。
【0123】
本発明の目的では、「単回適用」という用語は、組成物の単回適用を意味し、必要に応じて、各適用間の間隔を1時間以上空けて1日数回適用を繰り返すか、又は1日1回適用を行うことが可能である。
【0124】
本発明の目的では、「複数回適用」という用語は、数回、一般的には2~5回繰り返される組成物の適用を意味し、各適用間の間隔を数秒間~数分間空けて行われる。各複数回適用は、必要に応じて、1時間以上間隔をあけて1日数回繰り返され得るか、又は1日1回行われ得る。
【0125】
連結適用法、例えば飽和単回適用、すなわち本発明に係る酸化ケイ素で被覆された高濃度の酸化亜鉛粒子を含む化粧用組成物の単回適用又はさもなければ本発明に係る酸化ケイ素で被覆された1つ以上の酸化亜鉛粒子を含む化粧用組成物(より低濃度)の複数回適用も存在し得る。複数回適用の場合、本発明の酸化ケイ素で被覆された1つ以上の酸化亜鉛粒子を含む化粧用組成物の数回の逐次適用は、適用間に遅延を設けて又は設けずに繰り返され得る。
【0126】
本発明の一実施形態によれば、複数回適用は、本発明に係る酸化ケイ素で被覆された酸化亜鉛粒子を含む化粧用組成物の逐次適用間で乾燥工程を行ってケラチン物質に対して実施される。本発明に係る酸化ケイ素で被覆された1つ以上の酸化亜鉛粒子を含む化粧用組成物の逐次適用間の乾燥工程は、開放空気中において又は人為的に、例えばヘアドライヤーなどの熱風乾燥システムを用いて実施され得る。
【0127】
本発明の他の主題は、ケラチン物質、とりわけ皮膚などのヒトケラチン物質を保護するためのUVA及びUVBスクリーニング剤としての、上記で規定された本発明に係る酸化ケイ素で被覆された1つ以上の酸化亜鉛粒子の使用である。
【0128】
以下の実施例は、本発明を例示する役割を果たすものであり、本質的に限定するものではない。
【実施例
【0129】
実施例1:
1.1 最初に、キシレン中の亜鉛ナフテネート(500mM)の組成物(A)を調製した。
【0130】
次いで、あらかじめ作製された組成物(A)を用いて従来のFSP調製方法Prep 1によって未被覆酸化亜鉛粒子P1を調製した(本発明外)。
【0131】
次いで、その後、同じ組成物(A)及びヘキサジメチルジシロキサンとエタノールとを3:1の割合で含む組成物(B)を用いて、本発明に係る調製方法Prep 2により、二酸化ケイ素で被覆された酸化亜鉛粒子P2を調製した(発明)。
【0132】
Prep 1方法のパラメーターは、下記の通りである。
- 比(組成物(A)/O)=5mL/分の液体及び7L/分のガス(O)。酸素流量を調整するために、φ=0.48を使用する。
【0133】
Prep 2方法のパラメーターは、下記の通りである。
- 比(組成物(A)/O)=5/7、すなわち5mL/分の液体及び7L/分のガス(O)。酸素流量を調整するために、φ=0.48を使用する。
【0134】
このPrep 2方法では、40cm高温石英管を使用する。さらに、最初に窒素を組成物(B)にバブリングする。組成物(B)を注入するとき、ヘキサジメチルジシロキサン(HMDSO)の蒸発を可能にするために及び(Zn/Si)注入比=1になるように、25℃に加熱された窒素のストリームを調整する。
【0135】
1.2 粒子を調製した後、得られた酸化亜鉛粒子が結晶性であることが観測された。
【0136】
さらに、本発明に係る方法Prep 2に従って得られた粒子は、二酸化ケイ素で被覆され、1の(Zn/Si)粒子原子比を有する。
【0137】
方法Prep 2に係る粒子のBET比表面積は、74m/gである。
【0138】
方法Prep 2に係る粒子は、40nmに等しい数平均直径を有する。
【0139】
1.3 耐水性の評価:
200mgのP1/L水の含有率で粒子P1及び水から第1の水性懸濁液S1を調製した。
【0140】
同様に、200mgのP2/L水の含有率で粒子P2及び水から第2の水性懸濁液S2を調製した。
【0141】
次に、懸濁液S1及びS2の各々を20Wの出力で超音波浴に10分配置した。
【0142】
次いで、硝酸溶液を利用して懸濁液S1の画分及び懸濁液S2の画分をpH=5に調整した。
【0143】
次いで、各懸濁液に対して、従来のアノーディックストリッピングボルタンメトリー法を利用して、時間の関数として及び導入された亜鉛の量に対して懸濁液中に存在するZn2+の含有率を測定する。
【0144】
結果は、以下の表で照合されている。
【0145】
【表1】
【0146】
本発明に係る調製方法Prep 2に従って得られた被覆酸化亜鉛粒子P2は、比較調製方法Prep 1に従って得られた未被覆酸化亜鉛粒子P1よりもかなり良好な耐水性を有することに留意すべきである。未被覆粒子P1は、1時間未満でほとんど排出され、したがって水を含む組成物中において又はコーティングが水に接触する場合に使用できない。
【0147】
実施例2:
BASF社によってZ-COTE HP1(酸化物及びトリエトキシカプリリルシラン)という品名で販売されている酸化亜鉛粒子及び水から、200mgの市販のZnO/L水の含有率で水性懸濁液S3を調製した。換言すると、粒子Z-COTE HP1は、トリエトキシカプリリルシランの層で被覆され、そのため、疎水性及び水からの保護を与える。この粒子のBET比表面積は、15.8m/gである。
【0148】
次に、懸濁液S3を20Wの出力で超音波浴に10分配置した。
【0149】
次いで、各懸濁液に対して従来のアノーディックストリッピングボルタンメトリー法を利用して、上記の実施例1で調製された懸濁液S2(pH=8)中及び懸濁液S3(pH=8)中に存在するZn2+の含有率を時間の関数として及び導入された亜鉛の量に対して測定する。
【0150】
結果は、以下の表で照合されている。
【0151】
【表2】
【0152】
本発明に係る調製方法Prep 2に従って得られた被覆酸化亜鉛粒子P2は、とりわけ大きいBET比表面積(Prep 2から誘導された粒子では74m/gである一方、市販の化合物では15.8m/gである)にもかかわらず、市販の酸化亜鉛粒子よりもかなり良好な耐水性を有することに留意すべきである。
【0153】
2.4. 光学的性質の評価
実施例1で調製された粒子P1及びP2から水性溶液S’1及びS’2を調製し、Z-COTE HP1という品名で販売されている酸化亜鉛粒子から水性溶液S’3を調製した。溶液の各々では、粒子の含有率は、0.3質量%を表す一方、残部は、水/プロピレングリコール(50/50)混合物である。
【0154】
透過率は、サンプルを光束に暴露して、次いで透過強度と入射強度との比を求めることによって得られる。
T=I/I
【0155】
結果は、以下の表で照合されている。
【0156】
【表3】
【0157】
本発明の粒子(ZnO/SiO、P2)では、亜鉛濃度が比較未被覆酸化亜鉛粒子(ZnO、P1)の1/2であるにもかかわらず、未被覆亜鉛粒子(P1)、本発明に係る粒子(P2)及び市販の粒子の透過率は、UVA線ゾーンで類似していることが以上の結果から示される。
【0158】
さらに、本発明に係る酸化亜鉛粒子(P2)及び未被覆粒子(P1)は、可視スペクトル域で高レベルの透過率を有し、市販品よりもかなり良好である。
【0159】
そのため、本発明の酸化亜鉛粒子は、良好な光学的性質を保持しつつ、より良好な耐水性、可視スペクトル域でのより良好な透明性を得ることを可能にする。
【0160】
実施例3:
組成物(A)と、アルミニウム前駆体(アルミニウムトリ-sec-ブトキシド、C1227AlO)及びキシレンを含む組成物(C)とを3:1の割合で用いて、本発明に係る調製方法Prep 2により、アルミナで被覆された酸化亜鉛粒子P3を調製した。
【0161】
Prep 2方法のパラメーターは、下記の通りである。
- 比(組成物(A)/O)=5/7、すなわち5mL/分の液体及び7L/分のガス(O)。酸素流量を調整するために、φ=0.48を使用する。
【0162】
このPrep 2方法では、40cm高温石英管を使用する。さらに、最初に窒素を組成物(C)にバブリングする。組成物(C)を注入するとき、アルミニウムトリ-sec-ブトキシドの蒸発を可能にするために及び(Zn/Al)注入比=1になるように、40℃に加熱された窒素のストリームを調整する。
【0163】
粒子を調製した後、得られた酸化亜鉛粒子が結晶性であることが観測された。
【0164】
さらに、本発明に係る方法Prep 2に従って得られた粒子は、Alで被覆され、1の(Zn/Al)粒子原子比を有する。
【0165】
方法Prep 2に係る粒子のBET値は、60m/gである。
【0166】
粒子は、サイズ:36nmを有する。
【0167】
実施例4:
同じ組成物(A)と、キシレン中にスズ前駆体(スズエチルヘキサノエート、C1630Sn)を含む組成物(D)とを3:1の割合で用いて、本発明に係る調製方法Prep 2により、二酸化スズで被覆された酸化亜鉛粒子P4を調製した。
【0168】
Prep 2方法のパラメーターは、下記の通りである。
- 比(組成物(A)/O)=5/7、すなわち5mL/分の液体及び7L/分のガス(O)。酸素流量を調整するために、φ=0.48を使用する。
【0169】
このPrep 2方法では、40cm高温石英管を使用する。さらに、最初に窒素を組成物(D)にバブリングする。組成物(D)を注入するとき、スズエチルヘキサノエートの蒸発を可能にするために及び(Zn/Sn)注入比=1になるように、50℃に加熱された窒素のストリームを調整する。
【0170】
粒子を調製した後、得られた酸化亜鉛粒子が結晶性であることが観測された。
【0171】
さらに、本発明に係る方法Prep 2に従って得られた粒子は、二酸化スズで被覆され、1の(Zn/Sn)粒子原子比を有する。
【0172】
方法Prep 2に係る粒子のBET値は、72m/gである。
【0173】
実施例5:
同じ組成物(A)と、チタン前駆体(チタンイソプロポキシド、C1228Ti)及びキシレンを含む組成物(E)とを3:1の割合で用いて、本発明に係る調製方法Prep 2により、二酸化チタンで被覆された酸化亜鉛粒子P5を調製した。
【0174】
Prep 2方法のパラメーターは、下記の通りである。
- 比(組成物(A)/O)=5/7、すなわち5mL/分の液体及び7L/分のガス(O)。酸素流量を調整するために、φ=0.48を使用する。
【0175】
このPrep 2方法では、40cm高温石英管を使用する。さらに、最初に窒素を組成物(E)にバブリングする。組成物(E)を注入するとき、チタンイソプロポキシドの蒸発を可能にするために及び(Zn/Ti)注入比=1になるように、50℃に加熱された窒素のストリームを調整する。
【0176】
粒子を調製した後、得られた酸化亜鉛粒子が結晶性であることが観測された。
【0177】
さらに、本発明に係る方法Prep 2に従って得られた粒子は、二酸化チタンで被覆され、1の(Zn/Ti)粒子原子比を有する。
【0178】
方法Prep 2に係る粒子のBET値は、40m/gである。
【0179】
粒子P1~P5のRAMAN試験を行った。粒子P1~P5のZnOのラマンピークを観測した。
図1
図2