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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】異物検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20180101AFI20241203BHJP
   G01N 23/18 20180101ALI20241203BHJP
   G01N 21/90 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
G01N23/04 340
G01N23/18
G01N21/90 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022545304
(86)(22)【出願日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 JP2021017259
(87)【国際公開番号】W WO2022044430
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2020142573
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】土屋 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】須山 敏康
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-526061(JP,A)
【文献】特開2019-020156(JP,A)
【文献】特開昭61-249198(JP,A)
【文献】特開2017-203658(JP,A)
【文献】国際公開第2007/049305(WO,A1)
【文献】特開2007-309687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-23/2276
G01N 21/00-21/01
G01N 21/17-21/61
G01N 21/84-21/958
A61B 6/00- 6/58
G01J 3/00- 4/04
G01J 7/00- 9/04
G02B 5/20- 5/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物における異物の有無を検査する異物検査装置であって、
前記検査対象物を所定の搬送方向に搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送される前記検査対象物にX線を照射するX線照射部と、
前記検査対象物を透過した前記X線を検出し、検出結果に基づくX線画像データを出力するX線検出部と、
前記搬送部によって搬送される前記検査対象物に赤外線を照射する赤外線照射部と、
前記検査対象物からの前記赤外線を検出し、検出結果に基づく赤外線画像データを出力する赤外線検出部と、
記赤外線照射部及び前記赤外線検出部を覆うように設けられた保護部と、
前記X線画像データに基づく前記検査対象物のX線画像を生成し、前記赤外線画像データに基づく前記検査対象物の赤外画像を生成する画像生成部と、を備え
前記保護部は、前記赤外線の光路に位置する部分に、前記X線を遮蔽し、かつ前記赤外線を透過させる部材によって形成された窓部を有している、異物検査装置。
【請求項2】
前記検査対象物への前記X線の照射位置と前記赤外線の照射位置とが前記搬送方向に対して異なる位置となっており、
前記X線検出部における前記X線の検出タイミングと、前記赤外線検出部における前記赤外線の検出タイミングとが同期する請求項1記載の異物検査装置。
【請求項3】
前記X線検出部は、前記X線の検出タイミングに応じて前記赤外線検出部に同期信号を出力する請求項2記載の異物検査装置。
【請求項4】
前記赤外線検出部は、前記赤外線の検出タイミングに応じて前記X線検出部に同期信号を出力する請求項2記載の異物検査装置。
【請求項5】
前記X線検出部における前記X線の検出タイミングと、前記赤外線検出部における前記赤外線の検出タイミングとを同期させる同期部を更に備える請求項2記載の異物検査装置。
【請求項6】
前記同期部は、パルスジェネレータによって構成されている請求項5記載の異物検査装置。
【請求項7】
前記同期部は、前記搬送部における前記検査対象物の移動量を検出するエンコーダによって構成されている請求項5記載の異物検査装置。
【請求項8】
前記赤外線検出部は、前記検査対象物を反射した前記赤外線及び前記検査対象物を透過した前記赤外線の少なくとも一方を検出する請求項1~7のいずれか一項記載の異物検査装置。
【請求項9】
前記赤外線検出部は、前記検査対象物からの前記赤外線の光路に対応して配置されたスリットを有している請求項1~8のいずれか一項記載の異物検査装置。
【請求項10】
前記画像生成部は、前記X線画像と前記赤外画像とを重畳した重畳画像を生成する請求項1~9のいずれか一項記載の異物検査装置。
【請求項11】
前記画像生成部は、前記X線画像の画素数と前記赤外画像の画素数が一致するように前記X線画像及び前記赤外画像の一方を補正した後、前記X線画像と前記赤外画像とを重畳する請求項10記載の異物検査装置。
【請求項12】
前記搬送部によって搬送される前記検査対象物に紫外線を照射する紫外線照射部と、
前記検査対象物からの前記紫外線を検出し、検出結果に基づく紫外線画像データを出力する紫外線検出部と、
前記X線を遮蔽し、かつ前記紫外線を透過させる部材を有し、前記紫外線照射部及び前記紫外線検出部を覆うように設けられた保護部と、を更に備える請求項1~11のいずれか一項記載の異物検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、異物検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、例えば食品製造の分野において、金属探知機やX線検査装置による非破壊の異物検査が行われている。例えば特許文献1に記載の包装体の検査装置は、外装体に内容物が収納された包装体を移動させる移動機構と、包装体にX線を照射する照射部と、包装体を透過したX線を検知する検知部と、包装体を照明する照明部と、包装体の光学画像を取得する光学検知部とを備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/049765号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなX線検査装置は、金属、石、ガラスといった硬物質による異物の発見を得手としている。一方、X線検査装置は、プラスチック、虫、毛髪、カビといった軟物質による異物の発見を不得手としている。軟物質による異物の発見に資する装置としては、例えば赤外線を利用した赤外線検査装置が挙げられる。しかしながら、X線検査装置の製造者と赤外線検査装置の製造者が全く別個であることを背景とし、双方の技術は別々の進歩を遂げている。このため、硬物質や軟物質を含む幅広い種類の異物の検査を実施するためには、X線検査装置と赤外線検査装置とを別個に配備する必要があり、コンパクトな異物検査装置の登場が望まれていた。
【0005】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、硬物質や軟物質を含む幅広い種類の異物の検査をコンパクトに実施できる異物検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る異物検査装置は、検査対象物における異物の有無を検査する異物検査装置であって、検査対象物を所定の搬送方向に搬送する搬送部と、搬送部によって搬送される検査対象物にX線を照射するX線照射部と、検査対象物を透過したX線を検出し、検出結果に基づくX線画像データを出力するX線検出部と、搬送部によって搬送される検査対象物に赤外線を照射する赤外線照射部と、検査対象物からの赤外線を検出し、検出結果に基づく赤外線画像データを出力する赤外線検出部と、X線を遮蔽し、かつ赤外線を透過させる部材を有し、赤外線照射部及び赤外線検出部を覆うように設けられた保護部と、X線画像データに基づく検査対象物のX線画像を生成し、赤外線画像データに基づく検査対象物の赤外画像を生成する画像生成部と、を備える。
【0007】
この異物検査装置では、検査対象物によって搬送される検査対象物に対し、X線の照射による異物の検査と、赤外線の照射による異物の検査とが順次実施される。したがって、X線検査装置と赤外線検査装置とを別個に配備する場合と比べて、硬物質や軟物質を含む幅広い種類の異物の検査をコンパクトに実施できる。また、X線及び赤外線の双方を用いるあたり、X線を遮蔽し、かつ赤外線を透過させる部材を有する保護部が赤外線照射部及び赤外線検出部を覆うように設けられている。したがって、X線の被曝によって赤外線照射部及び赤外線検出部に不具合が生じることが防止され、異物の検査を精度良く実施できる。
【0008】
検査対象物へのX線の照射位置と赤外線の照射位置とが搬送方向に対して異なる位置となっており、X線検出部におけるX線の検出タイミングと、赤外線検出部における赤外線の検出タイミングとが同期してもよい。このように、X線の照射位置と赤外線の照射位置とを別にし、かつX線の検出タイミングと赤外線の検出タイミングとを同期させることで、検査対象物に一定の厚さがある場合でも、X線による検査位置と赤外線による検査位置とを一致させることができる。
【0009】
X線検出部は、X線の検出タイミングに応じて赤外線検出部に同期信号を出力してもよい。これにより、X線検出部におけるX線の検出タイミングと、赤外線検出部における赤外線の検出タイミングとを好適に同期できる。
【0010】
赤外線検出部は、赤外線の検出タイミングに応じてX線検出部に同期信号を出力してもよい。これにより、X線検出部におけるX線の検出タイミングと、赤外線検出部における赤外線の検出タイミングとを好適に同期できる。
【0011】
異物検査装置は、X線検出部におけるX線の検出タイミングと、赤外線検出部における赤外線の検出タイミングとを同期させる同期部を更に備えていてもよい。これにより、X線検出部におけるX線の検出タイミングと、赤外線検出部における赤外線の検出タイミングとを好適に同期できる。
【0012】
同期部は、パルスジェネレータによって構成されていてもよい。この場合、パルスジェネレータによって同期信号を精度良く生成できる。
【0013】
同期部は、搬送部における検査対象物の移動量を検出するエンコーダによって構成されていてもよい。この場合、エンコーダによって同期信号を精度良く生成できる。
【0014】
赤外線検出部は、検査対象物を反射した赤外線及び検査対象物を透過した赤外線の少なくとも一方を検出してもよい。これにより、検査対象物の一面側からの検査或いは他面側の検査を好適に実施できる。
【0015】
赤外線検出部は、検査対象物からの赤外線の光路に対応して配置されたスリットを有していてもよい。これにより、赤外線の光路外からの赤外線検出部へのX線の入射を低減できる。
【0016】
画像生成部は、X線画像と赤外画像とを重畳した重畳画像を生成してもよい。これにより、重畳画像においてX線による検査結果と赤外線による検査結果とを一度に確認できる。
【0017】
画像生成部は、X線画像の画素数と赤外画像の画素数が一致するようにX線画像及び赤外画像の一方を補正した後、X線画像と赤外画像とを重畳してもよい。これにより、重畳画像を用いた異物の検出精度を向上できる。
【0018】
搬送部によって搬送される検査対象物に紫外線を照射する紫外線照射部と、検査対象物からの紫外線を検出し、検出結果に基づく紫外線画像データを出力する紫外線検出部と、X線を遮蔽し、かつ紫外線を透過させる部材を有し、紫外線照射部及び紫外線検出部を覆うように設けられた保護部と、を更に備えていてもよい。この場合、例えば検査対象物の自家蛍光の検出などが可能となり、更に幅広い種類の異物の検査が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、硬物質や軟物質を含む幅広い種類の異物の検査をコンパクトに実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示の第1実施形態に係る異物検査装置の構成を示す概略図である。
図2図1に示した異物検査装置の機能的な構成要素を示すブロック図である。
図3】補正チャートの一例を示す平面図である。
図4】本開示の第2実施形態に係る異物検査装置の構成を示す概略図である。
図5】本開示の第3実施形態に係る異物検査装置の構成を示す概略図である。
図6図5に示した異物検査装置の機能的な構成要素を示すブロック図である。
図7】検査方式と検査可能な異物との対応関係を示す図である。
図8】(a)及び(b)は、保護部の変形例を示す概略図である。
図9】(a)及び(b)は、赤外線ラインセンサの別例を示す概略的な図である。
図10】(a)及び(b)は、赤外線ラインセンサの更なる別例を示す概略的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る異物検査装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0022】
図1は、本開示の第1実施形態に係る異物検査装置の構成を示す概略図である。また、図2は、図1に示した異物検査装置の機能的な構成要素を示すブロック図である。この異物検査装置1は、X線L1及び赤外線L2の双方を用いて検査対象物Sにおける異物の混入の有無を連続的に検査する装置である。検査対象物Sとしては、例えば食品を包装した包装体などが挙げられる。異物検査装置1において検査対象となる異物は、硬物質及び軟物質の双方である。硬物質とは、例えば金属、石、ガラスといった密度の比較的高い物質である。軟物質とは、例えばプラスチック、虫、毛髪、カビといった密度の比較的低い物質である。
【0023】
図1に示すように、異物検査装置1は、遮蔽箱2を備えている。遮蔽箱2は、検査に用いるX線L1が遮蔽箱2の外部に漏れないように、X線L1を遮蔽可能な鉛などの材料によって形成されている。遮蔽箱2において互いに対向する側面部分2a,2aには、検査対象物Sを遮蔽箱2に導入する導入口3、及び検査対象物Sを遮蔽箱2から排出するための排出口4がそれぞれ設けられている。
【0024】
図1及び図2に示すように、異物検査装置1は、搬送部5と、X線照射部6と、X線検出部7と、赤外線照射部8と、赤外線検出部9と、同期部10と、画像生成部11と、判定部12と、表示部13とを含んで構成されている。搬送部5は、検査対象物Sを所定の搬送方向に搬送する部分である。図1の例では、搬送部5は、遮蔽箱2の導入口3及び排出口4の位置に対応して水平配置された複数のベルトコンベア14によって構成されている。複数のベルトコンベア14により、複数の検査対象物Sが図1の紙面右側から紙面左側に向かって一定の速度かつ一定の間隔をもって搬送される。導入口3から遮蔽箱2内に導入された検査対象物Sは、遮蔽箱2内でX線L1及び赤外線L2による検査を受けた後、排出口4から遮蔽箱2外に排出される。
【0025】
X線照射部6は、搬送部5によって搬送される検査対象物SにX線L1を照射する部分である。本実施形態では、X線照射部6は、例えばX線管15によって構成され、遮蔽箱2内の排出口4側において搬送部5の上方に配置されている。X線管15のX線焦点(点光源)で発生したX線L1は、X線管15から下方に出射する。X線L1は、搬送部5上の検査対象物Sを透過した後、X線検出部7に入射する。本実施形態では、検査対象物SへのX線L1の照射位置においてベルトコンベア14,14間の隙間が位置している。これにより、検査対象物Sを透過したX線L1は、ベルトコンベア14に当たらずにX線検出部7に向かうようになっている。
【0026】
X線検出部7は、検査対象物Sを透過したX線L1を検出し、検出結果に基づくX線画像データを出力する部分である。X線検出部7は、例えばX線ラインセンサ18によって構成され、X線照射部6の真下となる位置で搬送部5の下方に配置されている。X線検出部7は、検査対象物Sを透過したX線L1を検出し、検出結果に基づくX線画像データを生成する。そして、X線検出部7は、生成したX線画像データを画像生成部11に出力する(図2参照)。X線検出部7を構成するX線ラインセンサは、シングルラインセンサであってもよく、マルチラインセンサであってもよい。X線検出部7は、TDI(Time Delay Integration)センサによって構成されていてもよい。X線検出部7は、デュアルエナジーX線ラインセンサ等のマルチエナジーに対応した検出器であってもよい。検出方式は、シンチレータを用いた間接変換方式であってもよく、シンチレータを用いない直接変換方式であってもよい。
【0027】
図1の例では、X線L1がベルトコンベア14,14間の隙間を通る態様となっているが、X線に対する透過性を有する材料によってベルトコンベア14を構成することにより、ベルトコンベア14に隙間を生じさせない態様としてもよい。また、X線管15と検査対象物Sの間にX線を遮蔽する部材から構成されるスリットを設け、検査対象物S以外へのX線Lの照射を軽減してもよい。この場合、スリットは、X線L1を遮蔽可能な鉛やタングステン、鉄、ステンレス、銅などから形成され得る。
【0028】
赤外線照射部8は、搬送部5によって搬送される検査対象物Sに赤外線L2を照射する部分である。赤外線照射部8は、例えば一対の赤外光源16,16によって構成されている。赤外光源16としては、例えば発光ダイオード、ハロゲンランプ、レーザ光源などが用いられる。赤外線検出部9は、検査対象物Sからの赤外線L2を検出し、検出結果に基づく赤外線画像データを出力する部分である。赤外線検出部9は、例えばInGaAsラインセンサなどの赤外線ラインセンサ17によって構成されている。ここでは、赤外線検出部9は、検査対象物Sで反射した赤外線L2の一部成分を検出し、検出結果に基づく赤外線画像データを生成する。そして、赤外線検出部9は、生成した赤外線画像データを画像生成部11に出力する(図2参照)。赤外線検出部9を構成する赤外線ラインセンサ17は、X線検出部7と同様に、シングルラインセンサであってもよく、複数のラインセンサを有するマルチラインセンサであってもよい。マルチラインセンサは、ラインセンサ毎に異なる感度波長を有していてもよい。赤外線ラインセンサ17は、TDIセンサによって構成されていてもよい。赤外線検出部9としては、赤外線ラインセンサ17以外にも、例えば可視波長から赤外波長まで分光可能なイメージング分光光学系と二次元の検出素子を組み合わせたイメージング分光カメラを用いることもできる。
【0029】
本実施形態では、検査対象物SへのX線L1の照射位置と赤外線L2の照射位置とは、搬送方向に対して異なる位置となっている。図1の例では、検査対象物Sへの赤外線L2の照射位置が搬送方向の前段側となっており、検査対象物SへのX線L1の照射位置が搬送方向の後段側となっている。検査対象物Sの搬送方向に対する検査対象物SへのX線L1の照射位置と赤外線L2の照射位置の前後関係は、図1の例に対して反転していてもよい。すなわち、検査対象物Sへの赤外線L2の照射位置が搬送方向の後段側となっており、検査対象物SへのX線L1の照射位置が搬送方向の前段側となっていてもよい。
【0030】
本実施形態では、図1及び図2に示すように、赤外線照射部8及び赤外線検出部9は、検査対象物Sの一面側を検査する赤外線照射部8A及び赤外線検出部9Aと、検査対象物Sの他面側を検査する赤外線照射部8B及び赤外線検出部9Bとによって構成されている。赤外線照射部8A及び赤外線検出部9Aは、遮蔽箱2内の導入口3側において搬送部5の下方に配置されている。赤外線照射部8Aから上方に出射した赤外線L2の一部成分は、搬送部5上の検査対象物Sの一面側で反射した後、赤外線検出部9Aに入射する。
【0031】
本実施形態では、検査対象物Sの一面側への赤外線L2の照射位置においてベルトコンベア14,14間の隙間が位置しており、検査対象物Sに向かう赤外線L2及び検査対象物Sの一面側で反射した赤外線L2がベルトコンベア14に当たらずに赤外線検出部9Aに向かうようになっている。また、赤外線照射部8B及び赤外線検出部9Bは、赤外線照射部8A及び赤外線検出部9Bの後段側において搬送部5の上方に配置されている。赤外線照射部8Bから下方に出射した赤外線L2の一部成分は、搬送部5上の検査対象物Sの他面側で反射した後、赤外線検出部9Bに入射する。図1の例では、赤外線L2がベルトコンベア14,14間の隙間を通るようになっているが、赤外線に対する透過性を有する材料によってベルトコンベア14を構成することにより、ベルトコンベア14に隙間を生じさせない態様としてもよい。
【0032】
赤外線照射部8及び赤外線検出部9は、図1に示すように、保護部21内に配置されている。この保護部21は、赤外線照射部8及び赤外線検出部9を覆うように設けられている。保護部21の本体部分21aは、例えば遮蔽箱2と同様に、X線L1を遮蔽可能な鉛、タングステン、鉄、ステンレス、銅などの材料によって形成されている。保護部21の前面部分(赤外線照射部8からの赤外線L2及び検査対象物Sからの赤外線L2の光路上に位置する部分)には、X線L1を遮蔽し、かつ赤外線L2を透過させる部材によって形成された窓部21bが設けられている。窓部21bの形成材料としては、例えば鉛ガラスが挙げられる。また、窓部21bの形成材料としては、鉛フリーの放射線遮蔽ガラスを用いることもできる。鉛フリーの放射線遮蔽ガラスは、例えばSr、Ba、Ti、B、W、Si、Gd、Zrなどの重元素を含んでいてもよい。窓部21bの形成材料は、ガラスに限られず、アクリルなどの樹脂であってもよい。
【0033】
また、赤外線検出部9は、図1に示すように、検査対象物Sからの赤外線L2の光路に対応して配置されたスリット22を有している。スリット22は、例えば遮蔽箱2と同様に、X線L1を遮蔽可能な鉛、タングステン、鉄、ステンレス、銅などの材料によって形成されている。スリット22は、一定の厚さを有していてもよく、筒状になっていてもよい。スリット22の厚さを増すことにより、散乱X線や赤外迷光の入射を防止でき、散乱X線や赤外迷光に起因するノイズを低減できる。これにより、SN比が向上し、検査精度の向上が図られる。スリット22の形成材料は、窓部21bと同様に、鉛ガラスや鉛フリーの放射線遮蔽ガラスであってもよい。本実施形態では、スリット22は、保護部21の内部において、赤外線検出部9における検出面の近傍に配置されている。スリット22の先端部は、保護部21(窓部21b)の外側に位置していてもよい。また、スリット22の後端部が保護部21(窓部21b)の外側に位置していてもよい。すなわち、スリット22の全体が保護部21(窓部21b)の外側に位置していてもよい。
【0034】
同期部10、画像生成部11、及び判定部12は、物理的には、例えばプロセッサ、メモリ等を含むコンピュータシステムによって構成されている。コンピュータシステムとしては、例えばパーソナルコンピュータ、マイクロコンピュータ、クラウドサーバ、スマートデバイス(スマートフォン、タブレット端末など)などが挙げられる。画像生成部11は、PLD(programmable logic device)によって構成されていてもよく、FPGA(Field-programmable gate array)等の集積回路によって構成されていてもよい。
【0035】
同期部10は、X線検出部7におけるX線L1の検出タイミングと、赤外線検出部9における赤外線L2の検出タイミングとを同期させる部分である。本実施形態では、同期部10は、パルスジェネレータによって構成され、X線検出部7及び赤外線検出部9(9A,9B)に対して通信可能に接続されている。この場合、同期部10は、検査対象物Sが赤外線L2の照射位置からX線L1の照射位置に搬送されるまでに要する時間を遅延時間とする。同期部10は、赤外線検出部9に同期信号を出力した後、赤外線検出部9における赤外線L2の検出時刻から遅延時間が経過したときにX線検出部7に同期信号を出力する。
【0036】
画像生成部11は、検査対象物Sの検査画像を生成する部分である。画像生成部11は、X線検出部7からX線画像データを受け取り、赤外線検出部9(9A,9B)から赤外線画像データを受け取る。画像生成部11は、X線画像データに基づいて検査対象物SのX線画像を生成し、赤外線画像データに基づいて検査対象物Sの赤外画像を生成する。そして、画像生成部11は、X線画像と赤外画像とを重畳した重畳画像を生成し、当該重畳画像を検査画像として判定部12に出力する。重畳画像の生成の際、画像生成部11は、X線画像の画素数と赤外画像の画素数が一致するようにX線画像及び赤外画像の一方を補正した後、X線画像と赤外画像とを重畳する。
【0037】
X線画像と赤外画像との重畳にあたっては、X線画像の画素位置と赤外線画像の画素位置とを合わせる必要がある。この点に関し、本実施形態では、例えば図3に示すような補正チャート25が用いられる。補正チャート25は、例えば矩形のステンレス鋼板にマトリクス状の細孔25aを設けたものである。検査対象物Sの検査を実施する際の事前準備として、当該補正チャート25を搬送部5によって搬送し、補正チャート25のX線画像及び赤外画像を取得する。取得した補正チャート25のX線画像及び赤外画像を変換することで、X線画像の画素位置と赤外線画像の画素位置とを合わせることができる。画像変換方法としては、例えばアフィン変換や射影変換などが挙げられる。
【0038】
判定部12は、検査画像に基づいて検査対象物Sにおける異物の有無を判定する部分である。判定部12は、画像生成部11から検査対象物Sの検査画像を受け取ると、当該検査画像に所定の画像処理などを施し、異物の有無を判定する。判定部12は、判定結果を示す情報を検査画像と共に表示部13に出力する。表示部13は、例えばディスプレイであり、判定結果を示す情報を検査画像と共に表示する。異物検査装置1は、表示部13のほか、検査対象物Sに異物があると判定された場合に、その旨を警告音などで報知する報知部を備えていてもよい。
【0039】
以上の構成を有する異物検査装置1では、検査対象物Sによって搬送される検査対象物Sに対し、X線L1の照射による異物の検査と、赤外線L2の照射による異物の検査とが順次実施される。したがって、X線検査装置と赤外線検査装置とを別個に配備する場合と比べて、硬物質や軟物質を含む幅広い種類の異物の検査をコンパクトに実施できる。また、X線検査装置と赤外線検査装置とを別個に配置する場合と比べて、装置間の検査対象物Sの受け渡しなどで生じる搬送物のずれが少なくなり、検査精度を高めることができる。また、異物検査装置1では、X線L1及び赤外線L2の双方を用いるあたり、X線L1を遮蔽し、かつ赤外線L2を透過させる部材を有する保護部21が赤外線照射部8及び赤外線検出部9を覆うように設けられている。したがって、X線L1の被曝によって赤外線照射部8及び赤外線検出部9に不具合が生じることが防止され、異物の検査を精度良く実施できる。
【0040】
また、異物検査装置1では、検査対象物SへのX線L1の照射位置と赤外線L2の照射位置とが搬送方向に対して異なる位置となっており、X線検出部7におけるX線L1の検出タイミングと、赤外線検出部9における赤外線L2の検出タイミングとが同期部10によって同期している。搬送方向に対して同一位置でX線L1及び赤外線L2を検査対象物Sに照射する場合、例えば赤外線L2を検査対象物Sの真上から照射する一方、X線を検査対象物Sの斜め上方から照射する必要がある。この場合、検査対象物Sに一定の厚さがあると、X線による検査位置と赤外線による検査位置とがずれてしまうことが考えられる。これに対し、異物検査装置1では、X線L1の照射位置と赤外線L2の照射位置とを別にし、かつX線L1の検出タイミングと赤外線L2の検出タイミングとを同期させることで、検査対象物Sに一定の厚さがある場合でも、X線L1による検査位置と赤外線L2による検査位置とを一致させることができる。
【0041】
また、異物検査装置1では、同期部10がパルスジェネレータによって構成されている。これにより、パルスジェネレータによって同期信号を精度良く生成できる。
【0042】
また、異物検査装置1では、赤外線検出部9(9A,9B)が検査対象物Sの一面側及び他面側で反射した赤外線L2をそれぞれ検出している。これにより、検査対象物Sの一面側からの検査及び他面側からの検査を好適に実施できる。
【0043】
また、異物検査装置1では、赤外線検出部9は、検査対象物Sからの赤外線L2の光路に対応して配置されたスリット22を有している。このようなスリット22の配置により、赤外線L2の光路外からの赤外線検出部9へのX線L1の入射を低減できる。スリット22は、一定の厚さを有していてもよく、筒状になっていてもよい。スリット22の厚さを増すことにより、散乱X線や赤外迷光の入射を防止でき、散乱X線や赤外迷光に起因するノイズを低減できる。これにより、SN比が向上し、検査精度の向上が図られる。
【0044】
また、異物検査装置1では、画像生成部11がX線画像と赤外画像とを重畳した重畳画像を生成する。このような重畳画像を検査対象物Sの検査画像として用いることにより、重畳画像においてX線L1による検査結果と赤外線L2による検査結果とを一度に確認できる。
【0045】
図4は、本開示の第2実施形態に係る異物検査装置の構成を示す概略図である。同図に示すように、第2実施形態に係る異物検査装置31は、赤外線検出部9Bが検査対象物Sを透過した赤外線L2を検出する構成となっている点で第1実施形態と相違している。より具体的には、異物検査装置31では、搬送部5を構成するベルトコンベア14が赤外線L2に対する透過性を有する材料によって構成されている。また、赤外線照射部8Bは、当該ベルトコンベア14の内側(搬送面の下側)に配置されている。赤外線照射部8Bは、X線Lを遮蔽する材料で防護されていてもよい。赤外線照射部8Bから出射した赤外線L2は、ベルトコンベア14を透過した後、搬送部5上の検査対象物Sの一面側から他面側に透過し、赤外線検出部9Bに入射する。
【0046】
このような異物検査装置31においても、第1実施形態と同様に、硬物質や軟物質を含む幅広い種類の異物の検査をコンパクトに実施できる。また、X線L1の被曝によって赤外線照射部8及び赤外線検出部9に不具合が生じることが防止され、異物の検査を精度良く実施できる。異物検査装置31では、検査対象物Sを透過した赤外線L2と、検査対象物Sの一面側で反射した赤外線L2とを組み合わせて異物の有無を検査するため、異物の検査精度の向上が図られる。
【0047】
図4の形態では、ベルトコンベア14が赤外線L2に対する透過性を有する材料によって構成され、赤外線照射部8Bが当該ベルトコンベア14の内側に配置されているが、赤外線照射部8Bによる赤外線L2の照射位置においてベルトコンベア14,14間の隙間を位置させ、赤外線照射部8Bからの赤外線L2がベルトコンベア14に当たらずに検査対象物Sに向かう構成としてもよい。また、図4の形態では、赤外線照射部8Bが検査対象物Sの下側から赤外線L2を照射しているが、赤外線照射部8Bが検査対象物Sの上側から赤外線L2を照射する構成としてもよい。
【0048】
図5は、本開示の第3実施形態に係る異物検査装置の構成を示す概略図である。また、図6は、図5に示した異物検査装置の機能的な構成要素を示すブロック図である。同図に示すように、第3実施形態に係る異物検査装置41は、紫外線L3による検査を更に組み合わせている点で第1実施形態と相違している。より具体的には、異物検査装置41では、赤外線照射部8A及び赤外線検出部9Aに代えて、紫外線照射部42及び紫外線検出部43が設けられている。紫外線検出部43は、紫外線L3による検査対象物Sの自家蛍光を検出する場合には、当該蛍光(例えば可視光)を検出可能なシングルラインセンサ、マルチラインセンサ、TDIセンサ等によって構成されていてもよい。
【0049】
紫外線照射部42及び紫外線検出部43は、保護部44内に配置されている。ここでは、保護部44の本体部分44aは、X線L1を遮蔽可能な鉛などの材料によって形成され、保護部44の窓部44bは、X線L1を遮蔽し、かつ紫外線L3を透過させる部材によって形成されている。また、保護部44の内部において、紫外線検出部43における検出面の近傍には、スリット45が配置されている。スリット45は、スリット22と同様、一定の厚さを有していてもよく、筒状になっていてもよい。スリット45の先端部は、保護部44(窓部44b)の外側に位置していてもよい。また、スリット45の後端部は、保護部44(窓部44b)の外側に位置していてもよい。すなわち、スリット45の全体が保護部44(窓部44b)の外側に位置していてもよい。
【0050】
紫外線照射部42から上方に出射した紫外線L3の一部成分は、搬送部5上の検査対象物Sの一面側で反射した後、紫外線検出部43に入射する。紫外線検出部43は、検出結果に基づく紫外線画像データを出力する。画像生成部11は、X線画像データに基づくX線画像と、赤外線画像データに基づく赤外画像と、紫外線画像データに基づく紫外線画像とを重畳した重畳画像を生成し、当該重畳画像を検査対象物Sの検査画像として判定部12に出力する。
【0051】
このような異物検査装置41においても、第1実施形態と同様に、硬物質や軟物質を含む幅広い種類の異物の検査をコンパクトに実施できる。また、X線L1の被曝によって赤外線照射部8、赤外線検出部9、紫外線照射部42、及び紫外線検出部43に不具合が生じることが防止され、異物の検査を精度良く実施できる。紫外線L3を用いることで、例えば検査対象物Sの自家蛍光の検出などが可能となり、更に幅広い種類の異物の検査が可能となる。
【0052】
図7は、検査方式と検査可能な異物との対応関係を示す図である。同図では、金属探知機、X線検出装置、赤外線検出装置、紫外線(自家蛍光)検出装置の4つの検査方式について検査可能な異物をまとめている。金属探知機は、参考例である。図中の「A」は検査可能、「B(B1~B3)」は一定条件下で検査可能、「C」は検査困難を意味する。金属探知機では、鉄/SUSの検出が可能となっている。X線検出装置では、鉄/SUS、石、ガラス、ゴム、及びボイドの検出が可能となっている。
【0053】
赤外線検出装置では、鉄/SUS、石、ゴム、プラスチック、水分、カビ、毛髪の検出が可能となっている。ガラスについては、透明のものは検出が難しいが、半透明のものであれば検出が可能である(図7のB1)。また、気泡については、検査対象物の包装体が透明である場合に検出が可能である(図7のB2)。紫外線(自家蛍光)検出装置では、埃、羽の検出が可能となっており、鶏などの軟骨の検出への適用も考えられる。また、種類によってはカビの検出も可能である(図7のB3)。したがって、上述した第1実施形態~第3実施形態のように、X線L1と赤外線L2とを組み合わせた検査、或いは更に紫外線L3を組み合わせた検査を行うことにより、硬物質や軟物質を含む幅広い種類の異物の検査を実施できることが分かる。
【0054】
本開示は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、同期部10がパルスジェネレータによって構成されているが、同期部10は、エンコーダによって構成されていてもよい。この場合、エンコーダは、搬送部5における検査対象物Sの移動量を検出し、検査対象物Sが赤外線L2の照射位置からX線L1の照射位置まで搬送されたときにX線検出部7に同期信号を出力する。また、パルスジェネレータやエンコーダを用いず、X線検出部7から赤外線検出部9に同期信号を出力してもよく、赤外線検出部9からX線検出部7に同期信号を出力してもよい。紫外線検出部43を配置する場合も同様である。
【0055】
上記各実施形態において、搬送部5上の検査対象物Sのいずれの面からX線L1、赤外線L2、及び紫外線L3を照射するかについては、検査対象物Sの種類、形状等に応じて適宜変更が可能である。例えば上記各実施形態では、検査対象物Sの他面側から一面側に透過したX線L1を検出しているが、検査対象物Sの一面側から他面側に透過したX線L1を検出する態様としてもよい。
【0056】
赤外線検出部9の配置数は、2体に限られず、1体でもよく、3体以上であってもよい。複数体の赤外線検出部9を配置する場合、一の赤外線検出部9から他の赤外線検出部9に同期信号を出力して同期をとるようにしてもよい。画像生成部11は、検査対象物Sの各検査画像の画素数を合わせる処理のほか、各検査画像を無次元化して互いに比率を合わせる処理を行ってもよい。
【0057】
また、例えば図4に示した第2実施形態では、検査対象物Sの一面側で反射した赤外線L2と、検査対象物Sの一面側から他面側に透過した赤外線L2とを検出しているが、検査対象物Sの他面側で反射した赤外線L2と、検査対象物Sの一面側から他面側に透過した赤外線L2とを検出する態様としてもよく、検査対象物Sの他面側から一面側に透過した赤外線を検出する態様としてもよい。紫外線L3の検出についても同様である。また、例えば図4に示した第2実施形態の態様に、検査対象物Sの一面側で反射した赤外線L2を検出する構成を追加してもよい。
【0058】
上記各実施形態では、検査対象物Sに対して上側又は下側からX線L1、赤外線L2、紫外線L3を照射する態様(いわゆる縦型照射)について例示したが、検査方向はこれに限られない。例えば検査対象物Sに対して側面側からX線L1、赤外線L2、紫外線L3を照射する態様(いわゆる横型照射)であってもよい。
【0059】
上記実施形態では、保護部21が赤外線照射部8及び赤外線検出部9を覆うように構成されているが、図8(a)に示すように、赤外線照射部8を覆う保護部21Aと、赤外線検出部9を覆う保護部21Bとによって保護部21が構成されていてもよい。このような構成によれば、赤外線照射部8から出射される赤外線L2が保護部21内を反射して赤外線検出部9で直接検出されてしまうことを防止できる。保護部44についても同様であり、図8(b)に示すように、紫外線照射部42を覆う保護部44Aと、紫外線検出部43を覆う保護部44Bとによって保護部44が構成されていてもよい。このような構成によれば、紫外線照射部42から出射される紫外線L3が保護部44内を反射して紫外線検出部43で直接検出されてしまうことを防止できる。
【0060】
赤外線検出部9を構成する赤外線ラインセンサ17として、異なる波長域に感度を有する赤外線マルチラインセンサ17Aを用いてもよい。赤外線マルチラインセンサ17Aは、図9(a)に示すように、不感帯によって所定の間隔をもって配置された赤外線ラインセンサ171a及び赤外線ラインセンサ172aを有している。赤外線マルチラインセンサ17Aは、赤外線ラインセンサ171a及び赤外線ラインセンサ172aの延在方向が検査対象物Sの搬送方向に直交するように配置される。
【0061】
図9(b)に示すように、赤外線ラインセンサ171a上には、第1の赤外波長域の赤外線を透過する光学フィルタ171bが配置され、赤外線ラインセンサ172a上には、第2の赤外波長域の赤外線を透過する光学フィルタ172bが配置されている。第1の赤外波長域は、例えば900nm以上1400nm以下となっている。第2の赤外波長域は、例えば1400nm以上1700nm以下となっている。
【0062】
赤外線マルチラインセンサ17Aでは、例えば食品内の虫、プラスチック、木片、ゴム等を異物として検出する場合、波長900nm以上1400nm以下の赤外線の画像と、波長1400nm以上1700nm以下の赤外線の画像との比若しくは差分をとることにより、食品と異物(虫、プラスチック、ゴム等)との判別が容易なものとなる。このことは、食品の赤外線の吸光度が波長1400nm以上の領域では大きく変化するのに対して、異物の吸光度が同領域で大きく変化しないことに起因している。なお、第1の赤外波長域と第2の赤外波長域との一部同士が重畳していてもよい。
【0063】
赤外線マルチラインセンサ17Aでは、赤外線ラインセンサ17aによる撮像を制御する第1の制御パルスと、赤外線ラインセンサ172aによる撮像を制御する第2の制御パルスとが、不感帯の幅及び検査対象物Sの搬送速度に基づいて設定されていてもよい。この場合、不感帯の幅及び検査対象物Sの搬送速度に基づいて第1の制御パルスの周波数と第2の制御パルスの周波数が設定されていてもよく、第2の制御パルスの立ち上がりに対する第1の制御パルスの立ち上がりの遅延時間が不感帯の幅及び検査対象物Sの搬送速度に基づいて設定されていてもよい。これにより、検査対象物Sの同じ位置での赤外線画像を異なる波長によっても取得できる。
【0064】
また、赤外線検出部9を構成する赤外線ラインセンサ17として、異なる波長域に感度を有する赤外線マルチラインセンサ17Bを用いてもよい。赤外線マルチラインセンサ17Bは、図10(a)に示すように、不感帯によって所定の間隔をもって配置された赤外線ラインセンサ171a、赤外線ラインセンサ172a、及び赤外線ラインセンサ173aを有している。赤外線マルチラインセンサ17Aは、赤外線ラインセンサ171a、赤外線ラインセンサ172a、及び赤外線ラインセンサ173aの延在方向が検査対象物Sの搬送方向に直交するように配置される。
【0065】
図10(b)に示すように、赤外線ラインセンサ171a上には、第1の赤外波長域の赤外線を透過する光学フィルタ171bが配置され、赤外線ラインセンサ172a上には、第2の赤外波長域の赤外線を透過する光学フィルタ172bが配置され、赤外線ラインセンサ173a上には、第3の赤外波長域の赤外線を透過する光学フィルタ173bが配置されている。第1の赤外波長域は、例えば900nm以上1200nm以下となっている。第2の赤外波長域は、例えば1200nm以上1400nm以下となっている。第3の赤外波長域は、例えば1400nm以上1700nm以下となっている。
【0066】
赤外線マルチラインセンサ17Bでは、例えば食品内の虫、複数種類のプラスチック、木片、ゴム等を異物として検出する場合、波長900nm以上1200nm以下の赤外線の画像と、波長1200nm以上1400nm以下の赤外線の画像と、波長1400nm以上1700nm以下の赤外線の画像との比若しくは差分をとることにより、食品と異物(虫、プラスチック、ゴム等)との判別が容易なものとなる、また、食品内の虫、複数種類のプラスチック、木片、ゴム等の種類の判別が可能になる。なお、第1の赤外波長域と第2の赤外波長域との一部同士が重畳していてもよく、第2の赤外波長域と第3の赤外波長域との一部同士が重畳していてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1,31,41…異物検査装置、5…搬送部、6…X線照射部、7…X線検出部、8(8A,8B)…赤外線照射部、9(9A,9B)…赤外線検出部、10…同期部、11…画像生成部、21(21A,21B),44(44A,44B)…保護部、22…スリット、42…紫外線照射部、43…紫外線検出部、L1…X線、L2…赤外線、L3…紫外線、S…検査対象物。
図1
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