(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
A61M25/00 620
A61M25/00 504
(21)【出願番号】P 2022546994
(86)(22)【出願日】2021-09-06
(86)【国際出願番号】 JP2021032574
(87)【国際公開番号】W WO2022050403
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2020148824
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】393015324
【氏名又は名称】株式会社グッドマン
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100152515
【氏名又は名称】稲山 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】地搗 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】平塚 信介
(72)【発明者】
【氏名】田村 瑞基
(72)【発明者】
【氏名】横井 東君
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-023811(JP,A)
【文献】特開2016-217455(JP,A)
【文献】特開2015-171616(JP,A)
【文献】特開2005-230318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びる複数の第1素線と、前記第1方向と交差する第2方向に延びる複数の第2素線とが網状に織り込まれた編組体からなり、延伸方向に延びる筒状の補強部材を少なくとも備え、
前記複数の第1素線の融点は、前記複数の第2素線の融点よりも500℃以上高く、
前記複数の第1素線は、前記複数の第2素線よりも吸光係数が大きく、
前記補強部材の前記延伸方向の両端部の少なくとも一方において、前記複数の第1素線及び前記複数の第2素線が交差する複数の交点の一部に
、前記延伸方向、及び前記延伸方向と直交する方向にそれぞれ配列される複数の接合部が形成され、
前記接合部は、
前記複数の交点の一部で互いに交差する前記複数の第1素線及び前記複数の第2素線である第1交差素線及び第2交差素線を接合し、
前記第1交差素線及び前記第2交差素線の夫々の接触部分で合金化することで接合
し、
前記接合部において、前記第1交差素線は、前記第2交差素線に対して、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向の一方側に配置され、
前記第3方向の一方側は、前記補強部材の外側である
ことを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記複数の第1素線及び前記複数の第2素線の夫々のうち、前記延伸方向の両端部の少なくとも一方は、前記延伸方向に対して湾曲した湾曲部を有することを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記第2交差素線のうち前記接合部よりも先端側の第2先端部が、前記第1交差素線に巻きついたことを特徴とする請求項1又は2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記補強部材の中心軸を中心とした筒状を有し、前記補強部材の内腔に配置された内層チューブと、
前記中心軸を中心とした筒状を有し、前記補強部材を外側から覆う外層チューブと
を備えたことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のカテーテル。
【請求項5】
前記内層チューブの光透過率が、前記外層チューブの光透過率よりも高いことを特徴とする請求項4に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記内層チューブの材料が、ポリテトラフルオロエチレンであることを特徴とする請求項4又は5に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記複数の第1素線及び前記複数の第2素線のうち一方の断面形状が円形であり、
前記複数の第1素線及び前記複数の第2素線のうち他方の断面形状が矩形である
ことを特徴とする請求項1から
6の何れかに記載のカテーテル。
【請求項8】
前記複数の第1素線の断面形状が円形であり、
前記複数の第2素線の断面形状が矩形である
ことを特徴とする請求項
7に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記第2交差素線のうち前記接合部を除く部分の組成が、前記接合部からの距離に関わらず等しいことを特徴とする請求項1から
8の何れかに記載のカテーテル。
【請求項10】
前記複数の第1素線の材料がタングステンであり、前記複数の第2素線の材料がステンレスであることを特徴とする請求項1から
9の何れかに記載のカテーテル。
【請求項11】
前記複数の第1素線の吸光係数が0.4以上であり、前記複数の第2素線の吸光係数よりも0.1以上大きいことを特徴とする請求項1から
10の何れかに記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルは、血管内のうち治療対象となる部位に先端部を適切に到達させる必要があるため、良好な押し込み性が要求される。従って、このような特性を実現するための補強構造を有するカテーテルが各種提案されている。特許文献1は、ステンレス鋼(SUS)の素線からなる金属メッシュを補強構造として有するカテーテルを開示する。このカテーテルでは、金属メッシュの第1組の素線と第2組の素線との交差部にレーザ光が照射され溶接される。次いで、切断ラインに沿って金属メッシュにレーザ光が照射され、金属メッシュが切断される。この加工方法によって、金属メッシュの端部は解け難くなる。なお、レーザ光の照射による溶接時、第1組の素線と第2組の素線とが夫々接触部分で溶融して合金化することが、溶接部分の強度を維持するために好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
補強構造としての強度を強めるため、材料の異なる複数の素線からなる金属メッシュが用いられる場合がある。夫々の融点の差が大きい2種類の材料の夫々の素線に対し、上記の加工方法に基づいてレーザ光が照射された場合を例に挙げる。2つの素線のうち融点の相対的に高い素線(第1素線という。)を溶融するのに必要な強度でレーザ光が照射された場合、2つの素線のうち融点の相対的に低い素線(第2素線という。)は溶解し、第2素線が溶断する可能性がある。一方、第2素線を溶融するのに必要な強度でレーザ光が照射された場合、第1素線は溶融しない可能性がある。即ち、何れの場合も、第1素線及び第2素線の両方が接触部分で溶融せず合金化しないので、溶接部分の強度を維持できない場合があるという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、融点の異なる複数の素線が用いられた場合でも、金属メッシュの端部を解け難くできるカテーテルを提供することである。
【0006】
本発明の第1態様に係るカテーテルは、第1方向に延びる複数の第1素線と、前記第1方向と交差する第2方向に延びる複数の第2素線とが網状に織り込まれた編組体からなり、延伸方向に延びる筒状の補強部材を少なくとも備え、前記複数の第1素線の融点は、前記複数の第2素線の融点よりも500℃以上高く、前記補強部材の前記延伸方向の両端部の少なくとも一方において、前記複数の第1素線及び前記複数の第2素線が交差する複数の交点の一部に接合部が形成され、前記接合部は、前記複数の交点の一部で互いに交差する前記複数の第1素線及び前記複数の第2素線である第1交差素線及び第2交差素線を接合し、前記第1交差素線及び前記第2交差素線の夫々の接触部分で合金化することで接合することを特徴とする。
【0007】
カテーテルでは、第1交差素線と第2交差素線との夫々の接触部分で合金化し、第1交差素線及び第2交差素線が接合されることにより、接合部が形成され。従ってカテーテルは、融点が異なる複数の第1素線及び複数の第2素線からなる編組体が補強部材として用いられた場合でも、補強部材の延伸方向の端部を解け難くできる。
【0008】
第1態様において、前記複数の第1素線及び前記複数の第2素線の夫々のうち、前記延伸方向の両端部の少なくとも一方は、前記延伸方向に対して湾曲した湾曲部を有してもよい。カテーテルは、複数の第1素線及び複数の第2素線の夫々が湾曲部にて湾曲した状態でも、接合部において合金化することによって、複数の第1素線及び複数の第2素線の夫々が互いに接合した状態を維持できる。
【0009】
第1態様において、前記第2交差素線のうち前記接合部よりも先端側の第2先端部が、前記第1交差素線に巻きついていてもよい。この場合カテーテルは、第1交差素線と第2交差素線とを更に強固に接合できる。
【0010】
第1態様において、前記補強部材の中心軸を中心とした筒状を有し、前記補強部材の内腔に配置された内層チューブと、前記中心軸を中心とした筒状を有し、前記補強部材を外側から覆う外層チューブとを備えてもよい。内層チューブは、補強部材の内腔をワイヤ等が通過する場合において、ワイヤが補強部材に引っ掛ることを抑制できる。又、外層チューブは、補強部材が露出することを抑制できる。従ってカテーテルは、血管内をカテーテルが通過する時に補強部材が血管に引っ掛かる可能性を軽減できる。
【0011】
第1態様において、前記内層チューブの光透過率が、前記外層チューブの光透過率よりも高くてもよい。複数の第1素線と複数の第2素線とを加熱により接合する為にレーザ光が照射される場合、内層チューブがレーザ光の吸収により発熱することを抑制できる。従って、カテーテルは、内層チューブが発熱によって溶解、破損する可能性を軽減できる。
【0012】
第1態様において、前記内層チューブの材料が、ポリテトラフルオロエチレンであってもよい。この場合、透過率の高い内層チューブを容易に実現できる。
【0013】
第1態様において、前記第1交差素線は、前記第2交差素線に対して、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向の一方側に配置されてもよい。この場合、第3方向の一方側からレーザ光を照射することによって第1交差素線と第2交差素線とを容易に接合できる。又、レーザ光を照射して接合部を形成させる場合、融点の高い第1素線に対してレーザ光のエネルギーをより多く与え、第1素線を溶融できる。又、融点の低い第2素線に対するレーザ光のエネルギーの供与を抑制し、第2素線を溶融、溶断できる。
【0014】
第1態様において、前記複数の第1素線及び前記複数の第2素線のうち一方の断面形状が円形であり、前記複数の第1素線及び前記複数の第2素線のうち他方の断面形状が矩形であってもよい。又、第1態様において、前記複数の第1素線の断面形状が円形であり、前記複数の第2素線の断面形状が矩形であってもよい。この場合、カテーテルは、第1交差素線及び第2交差素線の夫々の接触部分で合金化して接合部を形成させる工程を容易に実現できる。
【0015】
第1態様において、前記複数の第1素線は、前記複数の第2素線よりも吸光係数が大きくてもよい。この場合、1回のレーザ光の照射により、第1素線及び第2素線の接合が実現される場合でも、第1素線と第2素線とを適切に溶融して合金化し、夫々を接合できる。
【0016】
第1態様において、前記第2交差素線のうち前記接合部を除く部分の組成が、前記接合部からの距離に関わらず等しくてもよい。この場合、カテーテルは、第2素線の組成を安定的に維持できるので、編組体の強度を維持できる。
【0017】
第1態様において、前記複数の第1素線の材料がタングステンであり、前記複数の第2素線の材料がステンレスであってもよい。この場合、カテーテルは、編組体によって良好な押し込み性を実現できる。又、タングステンは放射線の遮蔽能力に優れているので、体内におけるカテーテルの位置確認を、放射線照射により容易に行うことができる。
【0018】
本発明の第2態様に係るカテーテルの製造方法は、第1方向に延びる複数の第1素線と、前記第1方向と交差する第2方向に延びる複数の第2素線とが網状に織り込まれた編組体からなり、延伸方向に延びる筒状の補強部材を少なくとも備え、
前記複数の第1素線の融点は、前記複数の第2素線の融点よりも500℃以上高く、
前記補強部材の前記延伸方向の両端部の少なくとも一方において、前記複数の第1素線及び前記複数の第2素線が交差する複数の交点の一部である接合交点に接合部が形成され、
前記接合部は、
前記複数の交点のうち接合交点[n]で互いに交差する第1素線[n]及び第2素線[n]を、夫々の接触部分で合金化することで接合し、
前記接合交点[n]において、前記第1素線[n]は前記第2素線[n]に対し、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向の一方側に配置された
ことを特徴とするカテーテルを製造する製造方法であって、
前記接合交点[n]において、前記編組体を前記第3方向の一方側から視た状態で前記第1素線[n]と前記第2素線[n]とが重複する接合領域[n]のうち前記第2方向の一方側の一部と、前記第2素線[n]のうち前記第1素線[n]と重複しない部分とを少なくとも含む第1照射領域[n]に対し、前記第3方向の一方側からレーザ光を照射することによって、前記第1素線[n]と前記第2素線[n]とを前記接合交点[n]において合金化させて接合させ、且つ、前記第2素線[n]のうち前記接合交点[n]に対して前記第2方向の一方側の部分を溶断する第1照射工程と、
前記第1照射工程によるレーザ光の照射の後、前記第1素線[n]のうち前記接合交点[n]に対して前記第1方向の一方側に離隔した第2照射領域[n]に、前記第3方向の一方側からレーザ光を照射することによって、前記第1素線[n]を前記第2照射領域[n]の位置で切断する第2照射工程と
を備えたことを特徴とする。
【0019】
第1照射工程において照射されるレーザ光は、はじめに第1素線[n]の一部を加熱して溶融し、次に、第2素線[n]を加熱して溶融、溶断すると同時に、溶融された第1素線[n]及び第2素線「n」を合金化して接合する。第2照射工程において照射されるレーザ光は、第1素線[n]を加熱して溶断する。これによって、補強部材の延伸方向の少なくとも一方は、接合部により解け難くなる。
【0020】
上記の製造方法では、第1照射工程において1回のレーザ光を照射することにより、第1素線[n]及び第2素線[n]の合金化による接合と、第2素線[n]の溶断を同時に行う。このため、接合部の位置と、第2素線の溶断位置との位置関係の精度が低下する可能性を低減できる。又、レーザ光のエネルギーは、最初に第1素線[n]に供与され、残りのエネルギーが第2素線[n]に供与される。このため、第1素線の融点が第2素線の融点よりも500℃以上高い場合でも、第1素線[n]及び第2素線[n]の接合と、第1素線[n]の溶断とを、1回のレーザ光の照射によって効率よく行うことができる。
【0021】
第2態様において、前記第1照射工程及び前記第2照射工程の少なくとも一方は、
レーザ光の照射によって前記編組体に供与されるエネルギーを経時的に変化させて照射してもよい。
【0022】
この場合、第1素線及び第2素線においてレーザ光の照射領域の近傍に向けて熱が伝達することを抑制できるので、レーザ光の照射領域の近傍において第1素線及び第2素線の溶解、蒸発、消滅の発生を防止できる。
【0023】
第2態様において、前記第1照射工程及び前記第2照射工程の少なくとも一方は、
強度が相対的に小さいレーザ光を照射する前照射工程と、
前記前照射工程の後、強度が相対的に大きいレーザ光を照射する後照射工程と
を備えてもよい。
【0024】
この場合、レーザ光の照射領域の近傍において第1素線及び第2素線の溶解、蒸発、消滅の発生を更に効果的に防止できる。
【0025】
第2態様において、前記第1照射工程及び前記第2照射工程の少なくとも一方は、
レーザ光を間欠的に複数回照射してもよい。
【0026】
この場合、レーザ光の照射領域の近傍において第1素線及び第2素線の溶解、蒸発、消滅の発生を更に効果的に防止できる。
【0027】
第2態様において、前記複数の交点のうち、前記第1素線[n]に対して前記第2方向の他方側に隣接する第1素線[n+1]と前記第2素線[n]とが交差する第1交点において、前記第1素線[n+1]は前記第2素線[n]に対して前記第3方向の一方側に配置され、
前記複数の交点のうち、前記第2素線[n]に対して前記第1方向の他方側に隣接する第2素線[n+1]と前記第1素線[n]とが交差する第2交点において、前記第2素線[n+1]は前記第1素線[n]に対して前記第3方向の一方側に配置されてもよい。
【0028】
カテーテルは、接合交点[n]において第1素線[n]と第2素線[n]とを接合する場合において、第1素線[n]が第3方向の一方側に移動することを、第2素線[n+1]により抑制できる。又、カテーテルは、接合交点[n]において第1素線[n]と第2素線[n]とを接合する場合において、第2素線[n]が第3方向の一方側に移動することを、第1素線[n+1]により抑制できる。
【0029】
第2態様において、前記第2照射工程によるレーザ光の照射の後、前記第1素線[n+1]と前記第2素線[n+1]とが交差する接合交点[n+1]において、前記編組体を前記第3方向の一方側から視た状態で前記第1素線[n+1]と前記第2素線[n+1]とが重複する接合領域[n+1]のうち前記第2方向の一方側の一部と、前記第2素線[n+1]のうち前記第1素線[n+1]と重複しない部分とを少なくとも含む第1照射領域[n+1]に対し、前記第3方向の一方側からレーザ光を照射することによって、前記第1素線[n+1]と前記第2素線[n+1]とを前記接合交点[n+1]において合金化させて接合させ、且つ、前記第2素線[n+1]のうち前記接合交点[n+1]に対して前記第2方向の一方側の部分を溶断する第3照射工程と、
前記第3照射工程によるレーザ光の照射の後、前記第1素線[n+1]のうち前記接合交点[n+1]に対して前記第1方向の一方側に離隔した第2照射領域[n+1]に、前記第3方向の一方側からレーザ光を照射することによって、前記第1素線[n+1]を前記第2照射領域[n+1]の位置で切断する第4照射工程と
を備えてもよい。
【0030】
この場合、第1素線[n+1]と第2素線[n+1]とを接合し且つ溶断できる。
【0031】
第2態様において、前記接合交点[n]と前記接合交点[n+1]とは、前記延伸方向に並んで配置されてもよい。
【0032】
この場合、補強部材を、延伸方向と直交する方向に切断できる。
【0033】
第2態様において、前記第1照射工程及び前記第2照射工程では、
前記補強部材に対して、層流状態の不活性ガスが吹き付けられた状態でレーザ光が照射されてもよい。
【0034】
この場合、レーザ照射による第1素線及び第2素線の油焼けや酸化の発生を抑制できる。
【0035】
第2態様において、前記延伸方向に延びる円柱状の金属線の周囲に円筒状の内層チューブを配置し、前記補強部材の内腔に、前記金属線及び前記内層チューブを配置する前工程を備え、
前記第1照射工程及び前記第2照射工程では、
前記前工程により準備された前記補強部材の前記編組体にレーザ光が照射され、
前記第2照射工程によるレーザ光の照射後、前記補強部材の周囲に円筒状の外層チューブを配置する後工程を更に備えてもよい。
【0036】
この場合、補強部材、内層チューブ、及び外層チューブを備えたカテーテルを製造できる。特に、金属線を用いることによって、厚さの薄い内層チューブを備えたカテーテルを容易に製造できる。又、金属線を用いることによって、補強部材に照射されたレーザ光が、補強部材の内腔を通過して反対側に到達することを抑制できるので、反対側の補強部材がレーザ光により溶解する可能性を軽減できる。
【0037】
第2態様において、前記内層チューブの光透過率が、前記外層チューブの光透過率よりも高くてもよい。
【0038】
この場合、内層チューブがレーザ光の吸収により発熱することを抑制できる。従って、レーザ光の照射によって内層チューブが発熱によって溶解、破損し、接合部以外の部位で第1素線と第2素線とが溶融して接合する可能性を軽減できる。
【0039】
第2態様において、前記金属線の熱伝導率が350~450w/mKであってもよい。
【0040】
つまり、金属線の中でも熱伝導率の高い材料を用いることで熱拡散を促しているので、金属線の局所的な温度上昇を、熱拡散により抑制できる。従って、金属線の温度上昇によって内層チューブが溶解する可能性を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】カテーテル1及びコネクタ9を示す図である。
【
図3】展開された状態の補強部材2を示す図である。
【
図4】展開された状態の補強部材2の一部を拡大した斜視図である。
【
図5】展開された状態の補強部材2の先端部近傍を示す図である。
【
図7】補強部材2の接合部5を撮影した写真である。
【
図8】接合部5[x]の断面を撮影した写真である。
【
図9】従来の方法において接合された接合部の断面を示す模式図である。
【
図10】カテーテル1の製造方法を示すフローチャートである。
【
図11】前工程において準備された長尺線材10を示す図である。
【
図12】カテーテル1の製造過程において、展開された状態の補強部材2の一部を拡大した斜視図である。
【
図13】接合交点Qc[n]近傍を第1方向から視た図である。
【
図14A】レーザ光の照射によって接合部5[n]が形成される過程を示す図である。
【
図14B】レーザ光の照射によって接合部5[n]が形成される過程を示す図である。
【
図15A】レーザ光の出力パターンを説明する為の説明図である。
【
図15B】レーザ光の出力パターンを説明する為の説明図である。
【
図16A】レーザ光の照射によって第1素線3[n]が溶断される過程を示す図である。
【
図16B】レーザ光の照射によって第1素線3[n]が溶断される過程を示す図である。
【
図17A】第1素線3[n]の溶断時の状態を示す図である。
【
図17B】第1素線3[n]の溶断時の状態を示す図である。
【
図18】外層チューブ7を配置する後工程を示す図である。
【
図19A】変形例におけるレーザ光の出力パターンを説明する為の説明図である。
【
図19B】変形例におけるレーザ光の出力パターンを説明する為の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
<カテーテル1の概要>
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1、
図2に示すように、カテーテル1は、補強部材2、内層チューブ6、及び外層チューブ7を有する。以下、カテーテル1に沿って延びる方向を、「延伸方向」という。カテーテル1の延伸方向の両端のうち一方側に対応する端部を「先端部1D」という。カテーテル1の延伸方向の両端のうち他方側に対応する端部を「基端部1P」という。カテーテル1は、ワイヤ等を通すための内腔6Lを内部に有する。内腔6Lは、カテーテル1の先端部1Dと基端部1Pとの間に亘って延伸方向に延びる。カテーテル1にワイヤ等を通すためのコネクタ9は、カテーテル1の基端部1Pに接続される。補強チューブ90は、カテーテル1の基端部1Pとコネクタ9との接続部分の近傍を補強する。延伸方向と直交する平面において、カテーテル1の断面中心を通る線分(「中心線C」という。)を基準とする半径方向を、第3方向という。第3方向のうち、カテーテル1の中心線Cに近接する側を「内側」といい、カテーテル1の中心線Cから離隔する側を「外側」という。
【0043】
<補強部材2>
補強部材2は、可撓性を有する筒状の部材である。補強部材2は、カテーテル1の延伸方向の強度を補強する。補強部材2は、延伸方向に沿ってカテーテル1の先端部1Dから基端部1Pまで延びる。補強部材2は、金属製の複数の素線が織り込まれた編組体20(
図3参照)が円筒状とされ、その両端部が切断されることによって形成される。中心線Cは、編組体20の中心を通って延伸方向に延びる。
【0044】
図3、
図4は、編組体20の一部を展開した状態を示す。編組体20は、複数の第1素線30及び複数の第2素線40を有する。複数の第1素線30は、延伸方向と交差する第1方向に沿って延びる。複数の第2素線40は、延伸方向及び第1方向と交差する第2方向に沿って延びる。編組体20は、複数の第1素線30と複数の第2素線40とが相互に2本ずつ乗り越して網状に織り込まれた金網、所謂綾織金網である。
図4に示すように、第1方向及び第2方向と直交する方向は、第3方向に対応する。第3方向は延伸方向と直交する。
図3の手前側は、第3方向の外側に対応する。
図3の奥側は、第3方向の内側に対応する。
【0045】
図3に示すように、複数の第1素線30の夫々を、・・・第1素線3[n-1]、第1素線3[n]、第1素線3[n+1]・・・といい、これらを総称して第1素線3という。複数の第2素線40の夫々を、・・・第2素線4[n-1]、第2素線4[n]、第2素線4[n+1]・・・といい、これらを総称して第2素線4という。複数の第1素線30と複数の第2素線40とが交差する複数の位置を、複数の交点Qという。
図3では、複数の交点Qのうち、第1素線3[n+2]と第2素線4[n+4]とが交差する交点Qのみ符号が付され、他の複数の交点Qの符号は省略されている。
【0046】
図3で示す複数の交点Qのうち、延伸方向に延びる仮想直線L1、L2、L3、L4、L5と重なる位置に配置される交点Qでは、第1素線3が第2素線4に対して第3方向の外側(
図3の手前側)に配置される。
【0047】
第1素線3の材料はタングステン(W)であり、融点は3422℃である。第1素線3の断面形状は真円形である(
図4参照)。第1素線3の吸光係数は0.4以上である。第2素線4の材料はステンレス(SUS304)であり、融点は1450℃である。第2素線4の断面形状は矩形である(
図4参照)。第2素線4の吸光係数は約0.3である。第1素線3と第2素線4との融点の差は、約2000℃である。第1素線3の融点は第2素線4の融点よりも少なくとも500℃以上高い。第1素線3の吸光係数は、第2素線4の吸光係数よりも大きい。なお、第1素線3の吸光係数が第2素線4の吸光係数よりも大きくなるように、第1素線3として黒色系のブラックワイヤが用いられる。
【0048】
図1に示す補強部材2の先端側の端部(以下、「補強部材2の先端部2D」という。)及び基端側の端部(以下、「補強部材2の基端部2P(
図1参照)という。」)は、夫々、レーザ光の照射によって編組体20を切断することにより、形成される。又、先端部2D及び基端部2Pでは、切断された編組体20の複数の第1素線30と複数の第2素線40とが解けないように、複数の第1素線30と複数の第2素線40との複数の交点Qの一部に複数の接合部50(
図5参照)が形成される。
【0049】
図3、
図4に示すように、第1方向の両側のうち、先端部2D(
図1参照)に近接する側を「第1先端側」といい、基端部2P(
図1参照)に近接する側を「第1基端部」という。第2方向の両側のうち、先端部2D(
図1参照)に近接する側を「第2先端側」といい、基端部2P(
図1参照)に近接する側を「第2基端部」という。
【0050】
図5は、補強部材2の先端部2Dの一部を拡大した図である。複数の接合部50の夫々を、・・・接合部5[n]、接合部5[n+1]・・・といい、これらを総称して接合部5という。複数の交点Qのうち接合部5が形成される交点を、・・・接合交点Qc[n]、接合交点Qc[n+1]・・・という。接合部5[x](xは、n、n+1、n+2、n+3、n+4、n+5の何れか)は、第1素線3[x]と第2素線4[x]との接合交点Qc[x]に形成される。接合部5[x]は、接合交点Qc[x]において第1素線3[x]と第2素線4[x]とを接触部分で合金化することにより、第1素線3[x]と第2素線4[x]とを接合する。接合部5[x]における合金は、詳細には、次の条件を満たした状態である。
(1)レーザ光の照射により第1素線3[x]と第2素線4[x]とが溶融されている。
(2)第1素線3[x]と第2素線4[x]との夫々の成分が混合、拡散され、その後に溶融凝固されている。
(3)第1素線3[x]と第2素線4[x]との間の界面全てが金属間化合物の層で覆われていない。
(4)(3)における金属化合物の層を境に、第1素線3[x]と第2素線4[x]とが分離されておらず、固溶体も形成され、両者が良好に混ざり合っている。
接合交点Qc[n]及び接合交点Qc[n+1]、接合交点Qc[n+2]及び接合交点Qc[n+3]、接合交点Qc[n+4]及び接合交点Qc[n+5]は、夫々、延伸方向に並んで配置される。
【0051】
接合交点Qc[x]において、第1素線3[x]は第2素線[x]に対して第3方向の外側(
図5の手前側)に配置される。
図6、
図7に示すように、第2素線4[x]のうち、接合交点Qc[x]よりも第2方向の第2先端側の部分は、第3方向の外側(
図6、
図7における手前側)に湾曲し、第1素線3[x]に巻き付いている。第1素線3[x]の第1方向の第1先端側の端部は、接合交点Qc[x]に対して離隔する。つまり、第1素線3[x]は、接合交点Qc[x]から第1方向の第1先端側に僅かに延びる。第1素線3[x]の第1先端側の端部と接合交点Qc[x]との間の第1方向の距離は、0.03mm~0.15mmの範囲の何れかの値である。
【0052】
図8は、接合交点Qc[x]において第1素線3[x]と第2素線4[x]とが接合部5[x]によって接合された状態を示す断面図である。
図8に示すように、第1素線3[x]と第2素線4[x]とは、夫々の界面において、形成された固溶体により混ざって再結晶している様子が確認された。なお、例えば従来の一般的な方法により、第1素線(金属材料1、例えば鋼等)と第2素線(金属材料2、例えばアルミニウム合金等)とが接合された場合、
図9に示すように、第1素線と第2素線との夫々の界面に形成される金属間化合物層によって、第1素線と第2素線とは分離される。この結果から、接合部5[x]は、従来に比べて第1素線3[x]と第2素線4[x]とをより強固に接合できることが確認された。
【0053】
<内層チューブ6、外層チューブ7、ソフトチップ8>
図2に示すように、内層チューブ6は、中心線Cを中心とした円筒状を有し、補強部材2の内腔2Lに配置される。内層チューブ6の材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。内層チューブ6の光透過率は、90%以上である。内層チューブ6の内腔6Lは延伸方向に延び、カテーテル1の内腔6Lを形成する。内層チューブ6は、カテーテル1の内腔6Lと補強部材2とを隔てる為に設けられ、内腔6Lを通過するワイヤ等が補強部材2に引っ掛ることを防止する。
【0054】
外層チューブ7は、中心線Cを中心とした円筒状を有し、補強部材2を外側から覆う。外層チューブ7の材料は、顔料を含む色付きの樹脂材料である。外層チューブ7の光透過率は、90%未満である。外層チューブ7の光透過率は、より好適には、10%~20%である。外層チューブ7の光透過率よりも、内層チューブ6の光透過率の方が高い。
【0055】
図1に示すように、外層チューブ7は、夫々の剛性が異なる第1外層チューブ71、第2外層チューブ72、第3外層チューブ73、及び第4外層チューブ74を有する。第1外層チューブ71、第2外層チューブ72、第3外層チューブ73、及び第4外層チューブ74は、延伸方向に配列され、この順番でカテーテル1の先端部1Dから基端部1Pに向けて並ぶ。外層チューブ7の剛性は、第1外層チューブ71、第2外層チューブ72、第3外層チューブ73、及び第4外層チューブ74の順で次第に大きくなる。
【0056】
ソフトチップ8は、カテーテル1の先端部1Dに設けられる。ソフトチップ8は、内層チューブ6の側面のうち先端側の端部の近傍と、補強部材2の先端部2Dの近傍との夫々に接触する。ソフトチップ8は、内層チューブ6及び補強部材2に溶着されることによって固定され、カテーテル1の先端部1Dを終端する。
【0057】
カテーテル1の先端部1Dの近傍に、湾曲部2Rが設けられる。湾曲部2Rは、補強部材2、内層チューブ6、及び外層チューブ7の夫々が延伸方向に対して湾曲することにより形成される。
【0058】
<カテーテル1の製造方法>
図10を参照し、カテーテル1の製造方法について説明する。本実施形態では、補強部材2の延伸方向の両端がレーザ光の照射により接合、溶断され、先端部2D及び基端部2Pが形成されることによってカテーテル1が製造される。はじめに補強部材2の先端がレーザ光の照射により切断されて先端部2Dが形成され、次いで、補強部材2の基端がレーザ光の照射により切断されて基端部2Pが形成されることを前提とする。
【0059】
はじめに前工程が実行される(S11)。前工程では、金属線100、内層チューブ6、及び補強部材2(
図11参照)が準備される。詳細には次の通りである。
【0060】
ボビンに巻回された長尺線材10が引き出される。
図11に示すように、引き出された長尺線材10の必要な長さ分が、鋏等によって粗切断される。長尺線材10は、円柱状の金属線100の周囲に配置された状態の内層チューブ6が、補強部材2の内腔2Lに配置された構成を有する。
図11では、理解を容易化する為に、補強部材2の内腔2Lに配置された内層チューブ6及び金属線100を可視化して示してある。金属線100は軟銅性である。金属線100の熱伝導率は350~450w/mKである。金属線100は、製造過程でレーザ光が照射された場合の局部的な温度上昇を、熱拡散により抑制できる。金属線100の表面は銀色にメッキ加工されており、製造過程で照射されるレーザ光を反射させる。内層チューブ6は、金属線100の表面に被膜として樹脂成形される。内層チューブ6の光透過率は90%以上であり、製造過程で照射されるレーザ光を透過させる。補強部材2は、内層チューブ6の外側に配置され、暴露されている。更に前工程では、補強部材2の製造時に複数の第1素線30及び複数の第2素線40(
図3参照)に付着した機械油等を除去するために、長尺線材10に対して有機溶剤による脱脂が行われる。
【0061】
図10に示すように、S11による前工程の後、長尺線材10の先端において第1素線3と第2素線4とを接合部5で接合し且つ接合部5の近傍で第2素線4を切断するために、レーザ光の照射領域が決定される。次に、決定された照射領域にレーザ光が照射されるように、レーザ光の光源の位置決めが行われる(S13)。補強部材2の先端に、n、n+1、n+2、n+3・・・の順でxを変化させた時の夫々に対応する接合部5[x]が順番に形成され、先端部2Dが形成されることを前提とする。
【0062】
x=nとした場合、即ち、
図5に示す接合交点Qc[n]において接合部5[n]により第1素線3[n]と第2素線[n]とが接合され、且つ、第2素線4[n]が切断される場合について説明する。なお、
図12に示すように、接合交点Qc[n]において、第1素線3[n]は第2素線4[n]に対して第3方向の外側に配置される。第1素線3[n]に対して第2方向の第2基端側に隣接する第1素線3[n+1]と第2素線4[n]とが交差する交点Q1[n]において、第1素線3[n+1]は第2素線4[n]に対して第3方向の外側に配置される。第2素線4[n]に対して第1方向の第1基端側に隣接する第2素線4[n+1]と第1素線3[n]とが交差する交点Q2[n]において、第2素線4[n+1]は第1素線3[n]に対して第3方向の外側に配置される。
【0063】
S13によって位置決めされるレーザ光の照射領域を、第1照射領域51[n]という。第1照射領域51[n]は、具体的に次の領域として規定される。
図13に示すように、接合交点Qc[n]において、編組体20を第3方向の外側から視た状態で第1素線3[n]と第2素線4[n]とが重複する接合領域53[n]を定義する。この場合、第1照射領域51[n]は、接合領域53[n]のうち第2方向の第2先端側の一部分511と、第2素線4[n]のうち接合領域53[n]よりも第2先端側の部分であって第1素線3[n]と重複しない部分512とを少なくとも含む。
【0064】
なお、レーザ光の光源の位置決めは、画像システムを用いることにより行われる。画像システムは、光源の位置に応じて決定されるレーザ光の光路の中心及び周縁を表示できる。レーザ光の光路の周縁が描く円形の直径(レーザ光のスポット径)は、第1素線3の直径、又は、第2素線4の幅のうち小さい方の長さ以下に設定される。
【0065】
図10に示すように、S13によるレーザ光の光源の位置決めの後、編組体20の第1照射領域51[n](
図13参照)の近傍に向けた層流状態の不活性ガスの吹き付けが開始される(S15)。不活性ガスは、具体的には、アルゴンガス又はヘリウムガスである。次に、不活性ガスが吹き付けられた状態で光源からレーザ光が出力される。これにより、第3方向の外側から第1照射領域51[n]に対してレーザ光が照射される(S17)。
【0066】
S17でレーザ光が第1照射領域51[n]に照射された場合、
図14Aに示すように、レーザ光は、最初に第1素線3[n]に照射される。これにより、レーザ光のエネルギーが第1素線3[n]に供与され、第1素線3[n]は加熱し溶融する。又、レーザ光のエネルギーは、第1素線3[n]に供与されることにより減少する。レーザ光は、次に、第2素線4[n]に照射される。これにより、レーザ光のエネルギーが第2素線4[n]に供与され、第2素線4[n]は加熱して溶融、溶断する。この結果、
図14Bに示すように、第1素線3[n]と第2素線4[n]とは、互いの溶融部分が接触して合金化し、接合する。又、第2素線4[n]は、接合部5[n]よりも第2方向の第2先端側の部分で溶断され、第3方向の外側に湾曲して第1素線3[n]に巻き付く(
図6、
図7参照)。第1素線[n]と第2素線[n]が接合交点Qc[n]により接合された後、光源からのレーザ光の照射は停止される。
【0067】
なお、S17では、1パルス分のレーザ光の照射によって、第1素線3[n]及び第2素線4[n]の接合及び第2素線[4]の溶断が実現される。このため、夫々が別工程で行われる場合と比べて、接合交点Qc[n]の位置と第2素線4[n]の溶断位置とのずれが生じ難い。
【0068】
又、レーザ光の照射による第1素線3[n]と第2素線4[n]との接合、及び第2素線4[n]の溶断の過程で、接合交点Qc[n]と異なる位置で第1素線3及び第2素線4がレーザ光の照射により発熱する可能性がある。この場合、接合交点Qc[n]と異なる領域で第1素線3及び第2素線4の物性が熱により変化したり、溶断が発生したりする可能性があり、好ましくない。これに対し、本実施形態では、レーザ光の照射によって編組体20に供与されるエネルギーを経時的に変化させて照射する。このことにより、接合交点Qc[n]と異なる位置で第1素線3及び第2素線4がレーザ光の照射によって発熱する可能性を軽減する。詳細は次の通りである。
【0069】
図15Aに示すように、S17では、1パルス分のレーザ光は分割されて間欠的に複数回照射される。より具体的には、レーザ光は、強度の相対的に大きい期間(以下、「高レベル期間」という。)と、強度の相対的に小さい期間(以下、「低レベル期間」という。)とを交互に繰り返し切り替えながら照射される。この場合、編組体20の第1素線3又は第2素線4においてレーザ光のエネルギーにより発生した熱は、周囲に拡散し難い。理由は、照射されるレーザ光の強度が相対的に小さい低レベル期間において熱が冷え、周囲への拡散が抑制されるためである。この効果は、一般的にパルス分割効果(Cool効果)と呼ばれている。この場合、
図15Bに示すように、1パルス分のレーザ光が一定の強度で継続して照射されることで熱が周囲に拡散する(矢印Y1)ことを抑制できる。
【0070】
なお、レーザ光の強度及び照射時間は、1パルス分のエネルギーによって第1素線3の溶断に必要なエネルギーを供与できるように調整される。なお、低レベル期間におけるレーザ光の強度は、高レベル期間におけるレーザ光の強度の半分以下であればよい。つまり、低レベル期間におけるレーザ光の強度は、高レベル期間におけるレーザ光の強度の0%~50%の何れかの値とすればよい。又、低レベル期間におけるレーザ光の強度を0とする場合、低レベル期間においてレーザ光の照射は停止されることになる。又、低レベル期間の時間は、高レベル期間の時間に対して10%~100%の何れかの値とする。
【0071】
図10に示すように、S17で第1照射領域51[n]に対するレーザ光の照射が終了した後、S15で開始された不活性ガスの吹き付けが停止される(S19)。次に、接合部5[n]の近傍で第1素線3[n]を切断するために照射されるレーザ光の照射領域が決定される。なお、
図5に示す第1素線3[n]のうち、接合交点Qc[n]に対して第1方向の第1先端側に離隔した位置で、第1素線3[n]は溶断される。
【0072】
次に、決定された照射領域にレーザ光が照射されるように、レーザ光の光源が位置決めされる(S21)。
図12に示すように、S21によって位置決めされるレーザ光の照射領域を、第2照射領域52[n]という。
図10に示すように、S21によるレーザ光の光源の位置決めの後、編組体20の第2照射領域52[n]の近傍に向けた層流状態の不活性ガスの吹き付けが開始される(S23)。次に、不活性ガスが吹き付けられた状態で光源からレーザ光が出力される。これにより、第3方向の外側から第2照射領域52[n]に対してレーザ光が照射される(S25)。
【0073】
図16Aに示すように、S25でレーザ光が照射された場合、レーザ光は、第1素線3[n]の第2照射領域52[n]にエネルギーを供与する。この結果、
図16Bに示すように、第1素線3[n]は接合部5[n]よりも第1方向の第1先端側で溶断する。第1素線[n]が溶断された後、光源からのレーザ光の照射は停止される。
【0074】
なお、S23で第2照射領域52[n]に照射されるレーザ光の照射条件は、S17で第1照射領域51[n]に照射されるレーザ光の照射条件と同一である。つまり、1パルス分のレーザ光は分割されて間欠的に複数回照射される。このため、第1素線3[n]においてレーザ光のエネルギーにより発生した熱は周囲に拡散し難い。従って、
図17Aに示すように、第1素線3[n]のうちレーザ光の照射により溶断した溶断部301は、レーザ光の照射が停止した後は移動せず、レーザ光の照射直後の位置で維持される。このため、例えば
図17Bに示すように、1パルス分のレーザ光が一定の強度で継続して照射されることで熱が周囲に拡散し、第1素線3[n]の溶断部301が接合部5[n]に向けて移動する(矢印Y2)ことを抑制できる。
【0075】
上記のように、第1素線3[n]の溶断部301と第2素線4[n]とは離隔した状態が維持され、第1素線3[n]の溶断部301の熱は第2素線4[n]に伝わらない。従って、第2照射領域52[n]にレーザ光が照射された場合でも、第2素線4[n]の組成は、接合部5[n]を除く部位では変化しない。言い換えれば、第2素線4[n]の組成は、接合部5[n]を除き、接合部5[n]からの距離に関わらず等しい。
【0076】
図10に示すように、S25で第2照射領域52[n]に対するレーザ光の照射が終了した後、S23で開始された不活性ガスの吹き付けが停止される(S27)。
【0077】
次に、補強部材2の先端において第1素線3及び第2素線4の接合及び溶断が全て終了したか判定される(S29)。接合及び溶断が全て終了していない場合(S29:NO)、S13に戻る。xがnからn+1に更新され、S13~S27の処理が繰り返される。これによって、
図5に示すように、接合交点Qc[n+1]において接合部5[n+1]により第1素線3[n+1]と第2素線4[n+1]とが接合され、且つ、第2素線4[n+1]が切断される(S13~S19)。又、第1素線3[n+1]のうち、接合交点Qc[n+1]に対して第1方向の第1先端側に離隔した位置で、第1素線3[n+1]は溶断される(S21~S27)。この時、接合部5[n]、5[n+1]は延伸方向に配列される。
【0078】
上記の処理は、xがn+2、n+3の順で更新されながら繰り返し実行される。これによって、
図5に示すように、接合交点Qc[n+2]において接合部5[n+1]により第1素線3[n+2]と第2素線4[n+2]とが接合され、且つ、第2素線4[n+2]が切断される(S13~S19)。又、第1素線3[n+2]のうち、接合交点Qc[n+2]に対して第1方向の第1先端側に離隔した位置で、第1素線3[n+2]は溶断される(S21~S27)。又、接合交点Qc[n+3]において接合部5[n+3]により第1素線3[n+3]と第2素線4[n+3]とが接合され、且つ、第2素線4[n+3]が切断される(S13~S19)。又、第1素線3[n+3]のうち、接合交点Qc[n+3]に対して第1方向の第1先端側に離隔した位置で、第1素線3[n+3]は溶断される(S21~S27)。この時、接合部5[n+2]、5[n+3]は延伸方向に配列される。
【0079】
上記と同様の処理は、xがn+4、n+5の順で更新されながら繰り返し実行される。これにより、
図5に示す接合部5[n+4]、接合部5[n+5]が形成される。なお、接合部5[n+4]、5[n+5]は延伸方向に配列される。又、接合部5[n]、5[n+2]、5[n+4]、及び、接合部5[n+1]、5[n+3]、5[n+5]は夫々、延伸方向と直交する方向に配列される。これにより、補強部材2は先端にて、延伸方向と直交する方向に切断され、先端部2Dが形成される。
【0080】
図10に示すように、補強部材2の先端において第1素線3及び第2素線4の接合及び溶断が全て終了したと判定された場合(S29:YES)、S31に進める。補強部材2の先端と基端との両方において、第1素線3及び第2素線4の接合及び溶断が全て完了したか判定される(S31)。補強部材2の先端のみ接合及び溶断が完了し、基端の接合及び溶断が完了していない場合(S31:NO)、S13に戻る。次いで、補強部材2の基端の第1素線3及び第2素線4に対し、先端部と同様の工程が実行される(S13~S29)。これにより、補強部材2の基端は切断され、基端部2P(
図1参照)が形成される。補強部材2の両端が切断されて先端部2D及び基端部2Pが形成されたことになるので、(S31:YES)、S33に進める。
【0081】
次に、補強部材2の周囲に外層チューブ7を配置する後工程が実行される(S33)。
図18に示すように、第4外層チューブ74の内腔74L、第3外層チューブ73の内腔73L、及び第2外層チューブ72の内腔72Lに対し、金属線100、内層チューブ6、及び補強部材2が順番に挿通される。なお、
図18では省略されているが、、第1外層チューブ71の内腔にも金属線100、内層チューブ6、及び補強部材2が挿通される。外層チューブ7は、補強部材2の先端部2Dから基端部2P(
図1参照)に向けて、第1外層チューブ71(
図1参照)、第2外層チューブ72、第3外層チューブ73、及び第4外層チューブ74の順に並ぶ。
【0082】
図10に示すように、後工程(S33)の終了後、ソフトチップ8によって、補強部材2の先端部2Dの終端処理が施される(S35)。最後に内層チューブ6の内腔6Lから金属線100が除去される(S37)。以上により、カテーテル1の製造工程は完了する。
【0083】
<カテーテル1の使用方法>
カテーテル1の使用方法の一例について説明する。はじめに、ユーザは、必要に応じてカテーテル1の先端に形状付け(シェイピング)を行う。ユーザは医師等である。次に、血管内に先行して挿通されたガイドワイヤーに、カテーテル1の内腔6Lが通される。ユーザは、カテーテル1の基端側に力を加え、カテーテル1を先端側から順に血管内に押し込む。なお、ユーザは、必要に応じてカテーテル1を回転させ、カテーテル1の先端を所望する方向に向ける。このようにして、ユーザは、カテーテル1の先端を、血管内の目的部位に到達させる。その後、ユーザは、ガイドワイヤーをカテーテル1から抜去する。この状態で、ユーザは、必要に応じてコネクタ9から造影剤を注入したり、塞栓物質の挿入を行ったりする。
【0084】
<本実施形態の作用、効果>
カテーテル1は、第1素線3[x]と第2素線4[x]とを夫々の接触部分で合金化し、第1素線3[x]及び第2素線4[x]が接合されることにより、接合部5[x]が形成される。従って、カテーテル1は、融点が500℃以上異なる複数の第1素線30及び複数の第2素線40からなる編組体20が補強部材2として用いられた場合において、補強部材2の延伸方向の端部を解け難くできる。
【0085】
補強部材2は湾曲部2Rにて湾曲する。補強部材2の接合部5[x]は、補強部材2が湾曲部2Rにて湾曲することにより力が作用しても、第1素線[x]及び第2素線[x]が互いに接合した状態を維持できる。
【0086】
第2素線4[x]のうち、接合交点Qc[x]よりも第2先端側の部分は、第3方向の外側に湾曲し、第1素線3[x]に巻き付いている(
図6、
図7参照)。この場合、カテーテル1は、第1素線3[x]と第2素線4[x]とを更に強固に接合できる。
【0087】
カテーテル1は内層チューブ6を備える。内層チューブ6は、補強部材2の内腔2Lをワイヤ等が通過する場合において、ワイヤ等が補強部材2に引っ掛ることを抑制できる。又、カテーテル1は、補強部材2を外側から覆う外層チューブ7を備える。外層チューブ7は、補強部材2が露出することを抑制できる。従って、カテーテル1は、血管内を通過する時に補強部材2が血管に引っ掛かる可能性を軽減できる。
【0088】
内層チューブ6の光透過率は、外層チューブ7の光透過率よりも高い。この場合、レーザ光の照射によって第1素線3[x]と第2素線4[x]とを接合する場合、内層チューブ6がレーザ光の吸収により発熱することを抑制できる。従ってカテーテル1は、レーザ光の照射の際に内層チューブ6が発熱し、接合部5[x]以外の部位で複数の第1素線30と複数の第2素線40とが熱の影響を受けて変形する可能性を軽減できる。又、内層チューブの材料としてポリテトラフルオロエチレンを用いることによって、透過率の高い内層チューブ6を容易に実現できる。
【0089】
第1素線3[x]は、第2素線4[x]に対して、第3方向の外側に配置される。この場合、カテーテル1の製造過程において第3方向の外側に配置された光源からのレーザ光を、第1素線3[x]に適切に照射し、第1素線3[x]と第2素線4[x]とを適切に接合できる。又、レーザ光の照射時において、融点の高い第1素線3[x]に対してレーザ光のエネルギーをより多く与え、第1素線3[x]を溶融できる。又、融点の低い第2素線4[x]に対するレーザ光のエネルギーの供与を抑制し、第2素線4[x]を溶融、溶断できる。
【0090】
第1素線3の断面形状は真円形であり、第2素線4の断面形状は矩形である。この場合、第1素線3[x]と第2素線4[x]とを接合する前の状態で、夫々の間に隙間を形成させることができる。従って、第1素線3[x]及び第2素線4[x]の夫々において隙間を形成する部位を溶融して接触させ、合金化することが容易に可能となる。このため、第1素線3[x]及び第2素線4[x]の夫々を接触部分で合金化し、接合部5[x]を形成させることが容易に可能となる。
【0091】
複数の第1素線30は、複数の第2素線40よりも吸光係数が大きい。この場合、融点が相対的に大きい第1素線3[x]と、融点の相対的に小さい第2素線4[x]とを同時に溶融して合金化し、且つ、第2素線[x]を溶断する工程を、1回のレーザ光の照射により実現できる。
【0092】
第2素線4[x]の組成は、接合部5[x]を除き、第1素線[x]を溶断するためにレーザ光が照射されても変化しない。このため、第2素線4[x]のうち接合部5[x]を除く部分の組成は、接合部5[x]からの距離に関わらず等しい。このためカテーテル1は、第2素線4の組成を安定的に維持できるので、編組体20の強度を維持できる。
【0093】
複数の第1素線30の材料はタングステンであり、複数の第2素線40の材料がステンレス鋼(SUS)である。この場合、カテーテル1は、タングステンの高い硬度により良好な押し込み性を実現できる。又、タングステンは放射線の遮蔽能力に優れているので、体内におけるカテーテル1の位置確認を、放射線照射により容易に行うことができる。
【0094】
カテーテル1を製造するために長尺線材10の任意の部分を切断した場合、第1素線3及び第2素線4の弾性により端部が解ける可能性がある。又、第1素線3としてタングステンが用いられた場合、硬度が高いのでカテーテル1の押し込み特性は改善されるものの、通常の刃物では容易に切断できない。
【0095】
これに対し、
図10に示すカテーテル1の製造方法において、S13にて第1照射領域51[x]に照射されるレーザ光は、はじめに第1素線3[x]の一部にエネルギーを供与して第1素線3[x]を溶融する。同時に、レーザ光は、第2素線4[x]にエネルギーを供与して第2素線[x]を溶融、溶断し、且つ、溶融された第1素線3[x]及び第2素線4「x」を合金化して接合する。S25にて第2照射領域52[x]に照射されるレーザ光は、第1素線3[x]にエネルギーを供与して第1素線3[x]を溶断する。以上の工程は、補強部材2の両端が切断されて先端部2D及び基端部2Pが形成されるまで繰り返される。これによって、補強部材2の先端部2D及び基端部2Pは、接合部5[x]により解け難くなる。
【0096】
第1素線3[x]及び第2素線4[x]の接合と、第2素線4[x]の切断とが異なるレーザ光の照射により実現される場合、はじめのレーザ光の照射によって第2素線4[x]の位置がずれることに応じ、第2素線4[n]の溶断部の位置が目的とする位置からずれる。この場合、接合部5「n」と、第2素線4[n]の溶断部との位置がずれる可能性がある。これに対し、本実施形態では、S13にて1回のレーザ光を照射することにより、第1素線3[x]及び第2素線4[x]の合金化による接合と、第2素線4[x]の溶断を同時に行う。このため、接合部5[x]と、第2素線4[x]の溶断位置とがずれる可能性を軽減できるので、接合部5[x]と、第2素線4[x]の溶断位置との位置関係の精度を良好に維持できる。
【0097】
S13にて照射されるレーザ光のエネルギーは、最初に第1素線3[x]に供与され、残りのエネルギーが第2素線4[x]に供与される。このため、第1素線3の融点が第2素線4の融点よりも500℃以上高い場合でも、第1素線3[x]及び第2素線4[x]の接合と、第2素線4[x]の溶断とを、1回のレーザ光の照射によって効率よく行うことができる。
【0098】
例えば、第1素線3[x]の溶断後に第1素線3[x]及び第2素線4[x]の接合が行われる場合、第1素線3[x]が溶断時に移動し、第1素線3[x]と第2素線[x]との位置関係がずれる可能性がある。この場合、第1素線3[x]及び第2素線4[x]の接合を精度良く実行できない可能性がある。これに対し、本実施形態では、第1素線3[x]及び第2素線4[x]の接合後、第1素線3[x]の溶断を行う。この場合、第2素線4[x]に対する第1素線3[x]の位置は、第1素線3[x]と第2素線4[x]とが接合することによってずれ難くなる。このため、第1素線3[x]及び第2素線4[x]の接合と、第1素線3[x]の切断とを、精度良く実行できる。
【0099】
本実施形態では、S13、S25によるレーザ光の照射によって編組体20に供与されるエネルギーを経時的に変化させる。より具体的には、S13、S25によるレーザ光の照射時、レーザ光を間欠的に複数回照射する。この場合、第1素線3及び第2素線においてレーザ光の照射領域から周囲に熱が伝達することを抑制できる。この場合、レーザ光の照射領域の近傍に配置された第1素線3及び第2素線4の溶解、蒸発、消滅の発生を防止できる。又、S13におけるレーザ光の照射条件と、S25におけるレーザ光の照射条件とは同一である。つまり、異なる工程におけるレーザ光の照射条件を共通化できることになるので、カテーテル1の製造作業を効率化できる。
【0100】
接合交点Qc[x]において、第1素線3[x]は第2素線4[x]に対して第3方向の外側に配置される。第1素線3[x]に隣接する第1素線3[x+1]と第2素線4[x]とが交差する交点Q1[x]において、第1素線3[x+1]は第2素線4[x]に対して第3方向の外側に配置される。この場合、S13にてレーザ光を照射して第1素線3[x]と第2素線4[x]とを接合交点Qc[x]で接合する場合において、第2素線4[x]が第3方向の外側に移動することを、第1素線3[x+1]が第3方向の外側から押さえつけることで抑制できる。又、第2素線4[x]に隣接する第2素線4[x+1]と第1素線3[x]とが交差する交点Q2[x]において、第2素線4[x+1]は第1素線3[x]に対して第3方向の外側に配置される。この場合、S13にてレーザ光を照射して第1素線3[x]と第2素線4[x]とを接合交点Qc[x]で接合する場合において、第1素線3[x]が第3方向の外側に移動することを、第2素線4[x+1]が第3方向の外側から押さえつけることで抑制できる。従って、第1素線3[x]と第2素線[x]との接合時における夫々の位置を安定化できるので、第1素線3[x]と第2素線4[x]とを接合部5[x]にて安定的に接合できる。
【0101】
接合部5[n]、5[n+1]は延伸方向に並んで配置される。接合部5[n+2]、5[n+3]は延伸方向に並んで配置される。接合部5[n+4]、5[n+5]は延伸方向に並んで配置される。又、接合部5[n]、5[n+2]、5[n+4]は延伸方向と直交する方向に配列される。接合部5[n+1]、5[n+3]、5[n+5]は延伸方向と直交する方向に配列される。接合部5をこのように配置することによって、補強部材2を延伸方向と直交する方向に切断し、先端部2D及び基端部2Pを形成させることができる。
【0102】
S17、S25にて、補強部材2に対して層流状態の不活性ガスが吹き付けられた状態で、レーザ光が照射される。この場合、レーザ光の照射による第1素線3及び第2素線4の発熱時、周囲の空気が第1素線3及び第2素線4に接触しないようにできるので、レーザ照射による第1素線3及び第2素線4の油焼けや酸化の発生を抑制できる。
【0103】
S11で示す前工程にて準備される長尺線材10では、金属線100の周囲に内層チューブ6が配置され、補強部材2の内腔2Lに金属線100及び内層チューブ6が配置されている。又、補強部材2の延伸方向の両端部の切断の終了後、S33で示す後工程にて、補強部材2の周囲に外層チューブ7が配置される。これによって、補強部材2、内層チューブ6、及び外層チューブ7を備えたカテーテル1を製造できる。特に、金属線100を用いることによって、厚さの薄い内層チューブ6を備えたカテーテル1を容易に製造できる。又、金属線100の表面は銀色にメッキ加工されており、製造過程で照射されるレーザ光を反射させる。この場合、照射されたレーザ光が、内層チューブ6の内腔6Lを通過して反対側に到達することを抑制できる。このため、反対側の補強部材2がレーザ光により溶解する可能性を軽減できる。
【0104】
内層チューブ6の光透過率が外層チューブ7の光透過率よりも高いので、内層チューブ6がレーザ光の吸収により発熱することを抑制できる。従って、レーザ光の照射によって内層チューブ6が発熱によって溶解、破損する可能性を軽減できる。
【0105】
金属線100の熱伝導率は350~450w/mKに設定される。本実施形態では、熱伝導率の高い材料を金属線100の材料として用いることで、熱拡散を促している。このように、金属線100の中でも熱伝導率が高い材料を用いることで、金属線100の局所的な温度上昇を、熱拡散により抑制できる。従って、金属線100の温度上昇によって内層チューブ6が溶解する可能性を軽減できる。
【0106】
<変形例>
本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。第1素線3[x]と第2素線4[x]とを接合する接合部5[x]は、補強部材2の先端側にのみ形成され、基端側には形成されなくてもよい。又は、第1素線3[x]と第2素線4[x]とを接合する接合部5[x]は、補強部材2の基端側にのみ形成され、先端側には形成されなくてもよい。複数の第1素線30と複数の第2素線40との融点の差は、約2000℃であった。これに対し、複数の第1素線30の融点は、複数の第2素線40の融点よりも、約500℃高くてもよい。この場合、複数の第1素線30の材料として銅が用いられ、複数の第2素線40の材料としてSUSが用いられてもよい。又、複数の第1素線30の融点は、複数の第2素線40の融点よりも、約700℃高くてもよい。この場合、複数の第1素線30の材料としてアルミニウムが用いられ、複数の第2素線40の材料としてSUSが用いられてもよい。又、複数の第1素線30の融点は、複数の第2素線40の融点よりも、約1000℃高くてもよい。この場合、複数の第1素線30の材料としてアルミニウムが用いられ、複数の第2素線40の材料としてチタンが用いられてもよい。上記実施形態において、複数の第1素線30の融点は、複数の第2素線40の融点よりも500℃以上高いと規定したが、より好適には700℃以上高くてもよく、更に好適には1000℃以上高くてもよい。
【0107】
カテーテル1の湾曲部2Rは、基端部2Pの近傍に設けられてもよいし、先端部2Dと基端部2Pとの両方に設けられてもよい。カテーテル1の湾曲部2Rは、ユーザによって形成されてもよい。この場合、カテーテル1は延伸方向に直線状に延びた状態で出荷されてもよい。カテーテル1は、ユーザによって先端部2Dに湾曲部2Rが形成された後、使用されてもよい。
【0108】
第2素線4[x]のうち、接合交点Qc[x]よりも第2先端側の部分は、湾曲せずに直線状に延びていてもよい。上記では、第1素線3[x]のうち第1先端側の端部、即ち、レーザ光の照射により溶断された端部は、接合交点Qc[x]に対して第1方向の第1先端側に0.03mm~0.15mm離隔したが、この距離は適宜変更可能である。
【0109】
カテーテル1は内層チューブ6及び補強部材2のみ有し、外層チューブ7を備えなくてもよい。又は、カテーテル1は補強部材2及び外層チューブ7のみ有し、内層チューブ6を備えなくてもよい。外層チューブ7の硬さは、延伸方向の全域に亘って均一であってもよい。内層チューブ6は硬さが異なる部位を備えてもよい。内層チューブ6の硬さが異なる夫々の部位は、延伸方向に配列されてもよい。外層チューブ7の太さは、延伸方向において均一である必要はなく、太さの異なる複数の部位が延伸方向に配列されていてもよい。カテーテル1は補強部材2のみから構成されてもよい。
【0110】
内層チューブ6の光透過率は上記実施形態に限定されず、他の値でもよい。内層チューブ6の光透過率は、外層チューブ7の光透過率と同一でもよいし、外層チューブ7の光透過率よりも低くてもよい。内層チューブ6の材料は、PTFEに限定されず、他の材料であってもよい。複数の第1素線30の吸光係数は、複数の第2素線40の吸光係数と同一でもよいし、複数の第2素線40の吸光係数より小さくてもよい。
【0111】
複数の第1素線30の断面形状は、真円に限定されず、楕円であってもよい。複数の第1素線30の断面形状が矩形であり、複数の第2素線40の断面形状が円形であってもよい。複数の第1素線30及び複数の第2素線40の何れの断面も、円形又は矩形の何れか一方であってもよい。
【0112】
複数の第1素線30の材料はタングステンに限定されない。複数の第2素線40の材料はSUSに限定されない。複数の第1素線30及び複数の第2素線40の夫々の材料は、複数の第1素線30の融点が複数の第2素線40の融点よりも500℃以上高いという条件を満たす限り、任意の様々な材料が用いられてもよい。例えば、複数の第1素線30として、モリブデン、プラチナ、金が用いられ、複数の第2素線40としてニッケル合金、チタン合金、アルミ合金が用いられてもよい。又、第1素線30及び第2素線40として組成が夫々異なるSUSが用いられてもよい。
【0113】
S13、S25にてレーザ光を照射する場合の照射パターンは、上記実施形態に限定されない。例えば
図19Aに示すように、S13、25にて、強度が相対的に小さいレーザ光を初めに照射し、その後、
図19Bに示すように、強度が相対的に大きいレーザ光を照射してもよい。なお、この場合、強度が相対的に小さいレーザ光を初めに照射することによって、第1素線3及び第2素線4においてレーザ光により発熱する部分の範囲を制限できる。この効果は、一般的にスローアップ効果と呼ばれている。このため、強度が相対的に大きいレーザ光を照射する場合において、レーザ光の強度を抑制しても、十分なエネルギーを第1素線3及び第2素線4に供与できる。つまり、第1素線3及び第2素線4に供与されるエネルギーを局所化することができるので、レーザ光の照射領域の近傍において第1素線3及び第2素線4が溶解、蒸発、消滅することを防止できる。
【0114】
S13、S25におけるレーザ光の出力パターンは、上記に限らない。例えば、レーザ光の照射を間欠的に行う動作と、レーザ光の強度を徐々に大きくする動作とが併用されてもよい。レーザ光の照射を間欠的に行う場合の回数は、上記実施形態に限定されない。強度が相対的に大きいレーザ光を初めに照射し、その後、強度が相対的に小さいレーザ光を照射してもよい。レーザ光の照射態様の変更は、S13でのみ実行され、S25では実行されなくてもよい。逆に、レーザ光の照射態様の変更は、S25でのみ実行され、S13では実行されなくてもよい。S13、S25により照射されるレーザ光は、均一の強さで連続的に照射されてもよい。つまり、レーザ光の照射によって編組体20に供与されるエネルギーは、経時的に変化しなくてもよい。
【0115】
編組体20は、複数の第1素線30と複数の第2素線40とが相互に1本ずつ交互に交差した金網、所謂平織金網であってもよい。又、複数の第1素線30と複数の第2素線40とが織り込まれる場合の態様は、平織金網や綾織金網に限らず、他の態様でもよい。この場合、交点Q1[x]において、第1素線3[x+1]は第2素線4[x]に対して第3方向の内側に配置されてもよい。交点Q2[x]において、第2素線4[x+1]は第1素線3[x]に対して第3方向の内側に配置されてもよい。
【0116】
S15、S23にて開始される層流状態の不活性ガスの吹き付けの代わりに、レーザ光が照射される前に補強部材2の周囲の雰囲気として不活性ガスが注入、充満されてもよい。カテーテル1の製造過程において用いられる金属線100の材料及び伝導率は、上記実施形態に限定されない。カテーテル1の製造工程において、金属線100は用いられなくてもよい。