(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】LED構造および関連付けられた方法並びにディスプレイ
(51)【国際特許分類】
H01L 33/26 20100101AFI20241203BHJP
H01L 33/32 20100101ALI20241203BHJP
H01L 33/06 20100101ALI20241203BHJP
H01L 33/08 20100101ALI20241203BHJP
H01L 33/10 20100101ALI20241203BHJP
【FI】
H01L33/26
H01L33/32
H01L33/06
H01L33/08
H01L33/10
(21)【出願番号】P 2022567172
(86)(22)【出願日】2021-05-04
(86)【国際出願番号】 US2021030699
(87)【国際公開番号】W WO2021226121
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-03-20
(32)【優先日】2020-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502208397
【氏名又は名称】グーグル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Google LLC
【住所又は居所原語表記】1600 Amphitheatre Parkway 94043 Mountain View, CA U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン,イン-ラン
(72)【発明者】
【氏名】レオン,ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ,ミャオ-チャン
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー,リチャード・ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ハート,シーラ
(72)【発明者】
【氏名】ホー,ガン
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-512671(JP,A)
【文献】特表2018-531514(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0075798(US,A1)
【文献】特開平11-330552(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0261717(US,A1)
【文献】米国特許第10141477(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオード(LED)構造であって、
半導体テンプレート上に形成されたバルクまたはプレップ層と、
前記バルクまたはプレップ層上に形成された活性領域とを備え、前記活性領域は、
前記バルクまたはプレップ層上に形成された第1のバリア層と、
前記第1のバリア層上に形成された少なくとも1つの
窒化物ベースのアルミニウム含有活性量子井戸(QW)層と、
前記少なくとも1つの
窒化物ベースのアルミニウム含有活性QW層上に形成された第2のバリア層とを含み、前記LED構造はさらに、
前記活性領域上に形成された少なくとも1つのp-層を備え、
前記少なくとも1つの
窒化物ベースのアルミニウム含有活性QW層が注入電流によって駆動されると、前記少なくとも1つの
窒化物ベースのアルミニウム含有活性QW層は赤色波長で発光する、LED構造。
【請求項2】
前記活性領域は、前記第1のバリア層上に形成されたアルミニウム含有底部層をさらに含み、前記少なくとも1つの
窒化物ベースのアルミニウム含有活性QW層は、前記アルミニウム含有底部層上に形成されている、請求項1に記載のLED構造。
【請求項3】
前記アルミニウム含有底部層は、AlGa(In)N、AlGaN、AlInNおよびInAlGaNからなる群から選択された材料を含む、請求項2に記載のLED構造。
【請求項4】
前記活性領域は、前記少なくとも1つの
窒化物ベースのアルミニウム含有活性QW層上に形成されたアルミニウム含有キャップ層をさらに含む、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のLED構造。
【請求項5】
前記アルミニウム含有キャップ層は、AlGaN材料を含む、請求項4に記載のLED構造。
【請求項6】
前記少なくとも1つの窒化物ベースのアルミニウム含有活性QW層は、擬合金、デジタル合金および短周期超格子のうちの1つを含む、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のLED構造。
【請求項7】
発光ダイオード(LED)構造であって、
半導体テンプレート上に形成されたバルクまたはプレップ層と、
前記バルクまたはプレップ層上に形成された活性領域とを備え、前記活性領域は、
前記バルクまたはプレップ層上に形成された第1のバリア層と、
前記第1のバリア層上に形成された少なくとも1つのアルミニウム含有活性量子井戸(QW)スタックと、
前記少なくとも1つのアルミニウム含有活性QWスタック上に形成された第2のバリア層とを含み、前記LED構造はさらに、
前記活性領域上に形成された少なくとも1つのp-層を備え、
前記少なくとも1つのアルミニウム含有活性QWスタックは、(a)前記第1のバリア層上に形成されたアルミニウム含有底部層と、(b)前記アルミニウム含有底部層上に形成された中間層と、(c)前記中間層上に形成された活性QW層とを含み、
前記少なくとも1つのアルミニウム含有活性QWスタックが注入電流によって駆動されると、前記活性領域は前記LED構造から発光する、LED構造。
【請求項8】
前記中間層は、GaN、AlGaN、InGaNおよびAlInGaNからなる群から選択された材料を含む、請求項
7に記載のLED構造。
【請求項9】
前記活性QW層は、少なくとも1つのアルミニウム含有活性QW層である、請求項
7または請求項
8に記載のLED構造。
【請求項10】
前記少なくとも1つのアルミニウム含有活性QW層は、擬合金、デジタル合金および短周期超格子のうちの1つを含む、請求項
9に記載のLED構造。
【請求項11】
半導体テンプレート上にアレイとしてモノリシックに形成されている複数のマイクロLED構造を備え、
前記複数のマイクロLED構造は、青色波長で発光するように構成されている青色マイクロLED構造、緑色波長で発光するように構成されている緑色マイクロLED構造、および赤色波長で発光するように構成されている赤色マイクロLED構造を含み、
前記赤色マイクロLED構造は、請求項1から請求項
10のいずれか一項に記載のLED構造を有している、ディスプレイ。
【請求項12】
発光ダイオード(LED)構造であって、
半導体テンプレートと、
前記半導体テンプレート上に形成された第1の準備層と、
前記第1の準備層上に形成された第2の準備層と、
前記第2の準備層上に形成された少なくとも1つの活性量子井戸(QW)層と、
前記少なくとも1つの活性QW層上に形成された少なくとも1つのp-層とを備え、
前記第1の準備層は、非活性QWを含み、
前記第2の準備層は、アルミニウム含有底部層を含み、
前記少なくとも1つの活性QW層は、活性化されると前記LED構造から発光する、LED構造。
【請求項13】
前記第2の準備層は反射層を備える、請求項
12に記載のLED構造。
【請求項14】
前記第2の準備層は正孔阻止層を備える、請求項
12または請求項
13に記載のLED構造。
【請求項15】
半導体基板上に発光ダイオード(LED)構造を形成するための方法であって、
前記半導体基板上に少なくとも1つのプレップ層を堆積させることと、
前記少なくとも1つのプレップ層上に活性多重量子井戸(MQW)領域を形成することと、
前記活性MQW領域上にp-層を堆積させることとを備え、
前記活性MQW領域を形成することは、
第1のバリア材料を堆積させることと、
活性QW材料を堆積させることと、
第2のバリア材料を堆積させることとを含み、
前記活性MQW領域を形成することは、
前記第1のバリア材料と前記活性QW材料との間に底部層を堆積させることと、
前記底部層と前記活性QW材料との間に中間層を堆積させることと、
前記活性QW材料と前記第2のバリア材料との間にキャップ層を堆積させることとを含み、
前記活性QW材料を堆積させること、前記底部層を堆積させること、前記中間層を堆積させること、および前記キャップ層を堆積させることのうちの少なくとも1つは、アルミニウムを組み込むことを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2020年5月4日に出願された「性能および指向性を向上させるためのLED構造における量子井戸の下方の追加の層(Additional Layers Below Quantum Wells in LED Structures for Enhanced Performance and Directionality)」と題される米国特許出願番号第63/019,765号および2021年1月8日に出願された「アルミニウム含有層を組み入れた発光ダイオード、および関連付けられた方法(Light Emitting Diodes with Aluminum-Containing Layers Integrated Therein and Associated Methods)」と題される米国特許出願番号第63/135,288号に対する優先権を主張し、これらの特許出願は両方とも引用によって全文が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
本開示の局面は、一般に、さまざまなタイプのディスプレイで使用される発光素子などの発光素子に関し、より具体的には、発光素子における活性層への活性元素の組み込みの向上に関する。
【0003】
よりよいユーザエクスペリエンスを提供して新たな用途を可能にするためにディスプレイ内の発光体(たとえば、画素)の数を増やし続ける必要があるが、ディスプレイ構成内の発光体の数を増やすことは難題になってきた。発光体の個数も密度も増加させるためにさらに小さな発光体を実現するためには、マイクロLED構造またはナノ発光体などの小さな発光ダイオード(LED)を使用する可能性は魅力的である。しかし、マイクロLED構造を大量に高密度で製造してさまざまな色(たとえば、赤色、緑色、青色)を生成することができるようにするための現在利用可能な技術は、煩雑であり、時間がかかり、高価であり、または性能制約を有するLED構造を生じさせる。
【0004】
窒化インジウムガリウム(InGaN)量子井戸(QW)構造に基づく高効率LEDなどの先進的なLED構造は、所望の発光特性を有する発光を生じさせるために協働するように設計されたさまざまな材料の層の正確な形成を必要とする。
【0005】
図1は、一般的に実施される先行技術のエピタキシャル層LED構造100を示す図である。LED構造100は、1つまたは複数のバルクまたはプレップ(prep)層120を支持するための、半導体基板としても知られている半導体テンプレート110を含む。バルクまたはプレップ層120上には活性多重量子井戸(MQW)領域130が形成されている。バルクまたはプレップ層120は、たとえば格子不整合の影響および/または熱膨張係数不整合の影響および/または半導体テンプレート110から活性MQW領域130への欠陥のフィルタリングの影響を減少させるように構成された1つの材料からなる厚い層または2つもしくはそれ以上の材料からなる構造である。バルクまたはプレップ層120の材料組成は、活性MQW領域130の材料選択における柔軟性を向上させるように調整され、そのため、所望の発光特性を有する活性領域の形成が可能になる。最後に、活性QW上には1つまたは複数のp-層140が堆積されて、LED構造100に電子的接続を提供するp-nダイオードが形成される。p-層140は、p-ドープ層および/またはコンタクト層を含む。次いで、LED構造100は、エッチングまたは別の方法で成形されて、指定の用途にとって望ましいマイクロLEDフォームファクタが形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
概要
先行技術のLED構造100は、マイクロLEDを設計するためのフレームワークを提供するが、さまざまな材料選択、特定のエピタキシャル堆積条件、およびそれら2つの組み合わせが可能である。たとえば、マイクロLED構造内に特定の材料の層を含めることは、欠陥を減少させて放射効率を高くしたり発光波長シフトを減少させたりするなどの有利な光学的および電気的特性を提供することが知られている。しかし、赤色波長において高い効率および輝度を有するマイクロLED、特に窒化インジウムガリウム(InGaN)またはリン化インジウムガリウム(InGaP)ベースのマイクロLEDは、製造するのがこれまでは困難であった。
【0007】
1つまたは複数の局面の基本的理解を提供するために、このような局面の簡略化された概要を以下に提示する。この概要は、全ての考えられる局面の広範な全体像ではなく、全ての局面の重要なまたは不可欠な要素を特定することを意図しているわけではなく、いずれかまたは全ての局面の範囲を描写することを意図しているわけでもない。その目的は、1つまたは複数の局面のいくつかの概念を、簡略化された形式で、後に提示されるさらに詳細な説明への前置きとして提供することである。
【0008】
本開示の局面は、発光素子の性能を向上させる技術および構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
特定の実施形態において、発光ダイオード(LED)構造は、半導体テンプレート上に形成されたバルクまたはプレップ層と、上記バルクまたはプレップ層上に形成された活性領域とを含み、上記活性領域は、上記バルクまたはプレップ層上に形成された第1のバリア層と、上記第1のバリア層上に形成された少なくとも1つのアルミニウム含有活性量子井戸(QW)スタックと、上記活性QWスタック上に形成された第2のバリア層とを含み、上記LED構造はさらに、上記活性領域上に形成された少なくとも1つのp-層を含み、上記少なくとも1つの活性QWスタックが注入電流によって駆動されると、上記活性領域は上記LED構造から発光する。
【0010】
他の実施形態において、発光ダイオード(LED)構造は、半導体テンプレートと、上記半導体テンプレート上に形成された第1の準備層と、上記第1の準備層上に形成された第2の準備層と、上記第2の準備層上に形成された少なくとも1つの活性量子井戸(QW)層と、上記活性QW層上に形成された少なくとも1つのp-層とを含み、上記活性QW層は、活性化されると上記LED構造から発光する。
【0011】
他の実施形態において、方法は、半導体基板上に発光ダイオード(LED)構造を形成する。上記方法は、上記半導体基板上に少なくとも1つのプレップ層を堆積させることと、上記少なくとも1つのプレップ層上に活性多重量子井戸(MQW)領域を形成することと、上記活性MQW領域上にp-層を堆積させることとを含み、上記活性MQW領域を形成することは、第1のバリア材料を堆積させることと、活性QW材料を堆積させることと、第2のバリア材料を堆積させることとを含み、上記活性MQW領域を形成することは、任意に、上記第1のバリア材料と上記活性QW材料との間に底部層を堆積させることと、上記底部層と上記活性QW材料との間に中間層を堆積させることと、上記活性QW材料と上記第2のバリア材料との間にキャップ層を堆積させることとを含み、上記活性QW材料を堆積させること、上記底部層を堆積させること、上記中間層を堆積させること、および上記キャップ層を堆積させることのうちの少なくとも1つは、アルミニウムを組み込むことを含む。
【0012】
添付の図面は、いくつかの実現例を示しているに過ぎないため、範囲を限定するものとして考えられるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一般的に実施される先行技術のマイクロLED構造を示す図である。
【
図2】実施形態における、ディスプレイで使用される、単一の基板によって支持された複数のマイクロLED構造を有する1つの例示的なLEDアレイの一部を示す上面図である。
【
図3】実施形態における、モルフォロジーおよび歪み特性を向上させた、第1および第2の準備層を有する1つの例示的なマイクロLED構造を示す概略断面図である。
【
図4】実施形態における、モルフォロジーおよび歪み特性を向上させた、非活性QW層およびAlGaN層を有する1つの例示的なLED構造を示す概略断面図である。
【
図5】実施形態における、指向性を向上させた1つの例示的なLED構造を示す概略断面図である。
【
図6】実施形態における、正孔漏れを減少させることによって性能を向上させた1つの例示的なLED構造を示す概略断面図である。
【
図7】実施形態における、活性多重量子井戸(MQW)領域内にアルミニウムを含めた1つの例示的なマイクロLED構造を示す概略断面図である。
【
図8A】実施形態における、活性MQW領域内にアルミニウム含有底部層を含む例示的なマイクロLED構造を示す概略断面図である。
【
図8B】実施形態における、活性MQW領域内にアルミニウム含有底部層を含む例示的なマイクロLED構造を示す概略断面図である。
【
図9】実施形態における、活性MQW領域内で活性QWの上方に配置されたアルミニウム含有キャップ層を含む1つの例示的なマイクロLED構造を示す概略断面図である。
【
図10】実施形態における、少なくとも1つの活性QW層内に組み込まれたアルミニウムを含む1つの例示的なマイクロLED構造を示す概略断面図である。
【
図11】実施形態における、
図10のマイクロLED構造と同様であって、アルミニウム含有底部層をさらに含む1つの例示的なマイクロLED構造を示す概略断面図である。
【
図12】実施形態における、
図10のマイクロLED構造と同様であって、アルミニウム含有キャップ層をさらに含む1つの例示的なマイクロLED構造を示す概略断面図である。
【
図13】実施形態における、
図12のマイクロLED構造と同様であって、アルミニウム含有底部層をさらに含む1つの例示的なマイクロLED構造を示す概略断面図である。
【
図14】実施形態における、マイクロLED構造を作製するための1つの例示的なプロセスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施形態の詳細な説明
添付の図面または図に関連付けて以下に記載される詳細な説明は、さまざまな構成の説明として意図されており、本明細書に記載されている概念を実施できる構成のみを表すことを意図しているわけではない。詳細な説明は、さまざまな概念を十分に理解できるようにするための具体的な詳細を含んでいる。しかし、これらの具体的な詳細がなくてもこれらの概念を実施できるということは、当業者に明らかであろう。いくつかの事例では、このような概念を曖昧にすることを回避するために、周知の構成要素はブロック図の形式で示されている。
【0015】
特定の用途では、赤色、緑色および青色(RGB)波長で動作するマイクロLED構造を組み合わせて、スマートウォッチ、スマートフォンおよびテレビなどの低コスト低電力消費用途のための低フィルファクタ低密度ディスプレイにする。このような低密度ディスプレイでは、各色のマイクロLED構造は、別々に作製され、次いで低フィルファクタRGB画素の別個のディスプレイバックプレーン上に転写されて組み合わせられて、たとえば電力消費が少ないという利点を有する、既存の液晶ディスプレイまたは有機発光ダイオードディスプレイのフルカラー等価物を提供する。
【0016】
別の用途アプローチでは、マイクロLED構造(たとえば、およそ10ミクロン以下のフォームファクタを有するLED)を使用して、拡張現実(AR)または仮想現実(VR)イメージングのためのコンパクトなライトフィールドディスプレイなどの新たな種類のディスプレイ用途を可能にするための発光体の高密度アレイを形成し得る。このようなマイクロLED構造の高密度アレイを実現する1つの方法は、単一の基板上にミクロン規模の発光体をモノリシックに集積するというものである。しかし、さまざまな範囲の波長で発光する(赤色、緑色および青色など)よう意図されたマイクロLED構造の構造および材料組成の違い、ならびに、別々に形成されたマイクロLED構造を高密度の構成でバックプレーン上に転写するのに必要な精密さを実現することの難しさのために、さまざまな波長で発光するマイクロLED構造のモノリシック集積は、元来問題がある。たとえば、高い輝度および効率で動作する青色および緑色マイクロLED構造は、両立できる材料を使用して可能であるが、同等の輝度および効率を有する赤色(または、長波長緑色、琥珀色または赤橙色)マイクロLED構造を実現することは困難であることが分かった。たとえば、青色および緑色可視波長範囲のマイクロLED構造は高い効率を有することが証明されたが、赤色可視波長範囲のマイクロLED構造は製造するのがより困難であった。
【0017】
「極性InGaN/GaN量子井戸:グリーンギャップ問題に対するキャリア局在化の影響の再考(Polar InGaN/GaN quantum wells: Revisiting the impact of carrier localization on the green gap problem)」と題される論文(2020年1月28日、タナー等)には、(たとえば、620nm以上における)InGaNベースの赤色LEDの内部量子効率(IQE)が非常に低いことが知られていると記載されている(たとえば、タナーの
図1を参照して、IQEが実質的にゼロであることを示している)。そこに記載されている実施形態は、LED構造のさまざまな層内にアルミニウムを含めることを開示しており、635nm波長において12%以上のIQE値を実現した。例示的なQW構造層組成は、GaN、AlGaN、GaN、InxGa1-xNおよびAlGaNのうちの1つまたは複数を含む。改良されたLED構造は、アルミニウムを含む1つまたは複数の追加の中間層も含み得る。
【0018】
本実施形態の一局面は、ディスプレイデバイスのニーズを満たすために、ディスプレイ素子(たとえば、画素)を形成する発光構造の数および密度は増やすべきであるため、発光効率および品質を維持しながら発光構造のサイズを小さくする必要がある、という認識を含む。さらに小さな発光構造を実現するために小さなLED(たとえば、マイクロLED構造またはナノ発光体)を使用することは魅力的であるが、小さなLEDを大量に高密度で製造してさまざまな色(たとえば、赤色、緑色、青色)を生成することができるようにするためのいくつかの技術は、現在のところ、煩雑であり、時間がかかり、高価であり、または性能制約を有する構造を生じさせる。ライトフィールドディスプレイなどのためのより高度なディスプレイアーキテクチャは、小さなLED構造の使用から恩恵を受けることができるが、このようなディスプレイの要求事項は、小さなLEDの実現を困難にする。本実施形態は、さまざまな色の光を生成する多数の小さな発光構造を同一の基板(たとえば、単一の集積半導体デバイス)上にモノリシックに集積することを可能にする新たな技術を提供することによって、この問題を解決する。
【0019】
たとえばエピタキシャル成長およびドライエッチングまたは選択領域成長(SAG)などの、発光構造を製造するための特定の半導体処理技術の使用は、多数のマイクロLEDを単一の集積半導体デバイス上にモノリシックに集積するための前途有望なアプローチを提供する。発光構造を製造するためのテンプレート上に成長させる材料の品質は、LEDの性能特性に重大な影響を及ぼす。
【0020】
この目的のために、高品質活性(たとえば、発光)領域を有する小さな発光構造の形成を可能にする構造的構成が必要である。たとえば、QWベースのLEDでは、追加の層を戦略的に含めることは、作製プロセスに複雑さを持ち込むおそれがあるものの、発光構造のモルフォロジーおよび/または指向性を改良するまたは向上させる機能を提供する。
【0021】
本明細書に開示されている1つのアプローチは、LED構造に高バンドギャップ材料または層を組み込むことを含む。従来の半導体デバイスでは、高バンドギャップ層は、通常、デバイス動作に必要とされない限り、またはデバイス性能をどうにか向上させない限り、含まれることはない。しかし、本明細書に記載されている実施形態は、発光多重量子井戸(MQW)活性領域の前(たとえば、下方または下)に成長させるかまたはMQW活性領域自体に組み入れられるアルミニウム含有層を実現し、これらのアルミニウム含有層は、活性量子井戸の品質を向上させて、活性量子井戸によって生成される光によりよい指向性を提供する。これらの実施形態は、これまで不可能であった広範にわたる新たな用途を可能にするモノリシック構造の、およそ10ミクロン以下の寸法を有する、電磁スペクトル全体にわたってある波長範囲にわたって動作する複数の高輝度マイクロLED構造を提供する。
【0022】
以下の説明は、赤色波長範囲で動作するマイクロLED構造についての改良点に焦点をあてるが、本明細書に記載されている技術および構造は、他のマイクロLEDもしくはより大きなLED、および、可視(長波長緑色、琥珀色および赤橙色を含む)波長、赤外波長または紫外波長などの他の波長で動作する他の半導体ベースの発光体にも適用可能であるということに留意されたい。赤色波長範囲の第1の例は、0.59μm~0.76μmである。赤色波長範囲の第2のより狭い例は、0.61μm~0.76μmである。
【0023】
図2は、単一の基板240によって支持された複数のマイクロLED構造210,220および230を有する1つの例示的なLEDアレイ200の一部を示す上面図であり、LEDアレイ200は、ディスプレイで使用され得る。マイクロLED構造210,220および230は、それぞれ赤色波長、緑色波長および青色波長で発光し得る。LEDアレイ200の一部は、16個のマイクロLED構造を有するように示されているが、LEDアレイ200は、たとえばディスプレイで使用され得るマイクロLED構造210,220および230のはるかに大きなアレイであってもよく、マイクロLED構造210,220および230は、画素(たとえば、マイクロLED構造210,220および230のグループまたはサブアレイ)に配置されてもよい。このような場合、画素の配置、それらの形状、それらの数、それらのサイズ、およびそれらの対応する波長発光は、LEDアレイ200を特定の用途に合わせるように製造中に設定可能である。特定の実施形態では、LEDアレイ200は、ライトフィールド用途で使用されるディスプレイなどの高解像度高密度ディスプレイで使用される。他の実施形態では、LEDアレイ200は、拡張現実(AR)または仮想現実(VR)用途のためのコンパクトなディスプレイに組み込まれてもよい。
【0024】
特に、発光体の高密度を実現するために、相互に両立できるプロセスを使用して、モノリシックに集積された態様で基板240上にマイクロLED構造210,220および230を形成することが望ましい。すなわち、別個の基板上に各タイプのマイクロLED構造を形成し(たとえば、第1の基板上に1つまたは複数の赤色発光マイクロLED構造、第2の基板上に1つまたは複数の緑色発光マイクロLED構造、および第3の基板上に1つまたは複数の青色発光マイクロLED構造)、次いで、各マイクロLED構造を第4の基板に転写して、ディスプレイで使用するためのマイクロLEDアレイを形成するのではなく、3つ全てのタイプのマイクロLED構造210,220および230のアレイを基板240上に直接形成する。特に、3つ全てのタイプのマイクロLED構造210,220および230をアレイとして基板240(たとえば、単一の基板)上に直接形成することによって、より高密度のLEDアレイを形成することができる。言い換えれば、各色のマイクロLED構造210,220および230を別々のウェーハ上に形成して、各LEDを別の基板に転写してディスプレイのためのLEDアレイを形成するのではなく、マイクロLED構造210,220および230を基板240上に直接形成するので、LEDアレイ200は、より高い密度を実現する。
【0025】
しかし、フルカラーディスプレイ(たとえば、赤色-緑色-青色(RGB)ディスプレイ)を製造するために、必要な波長範囲にわたる効率的な発光に適合したプロセスおよび材料を使用してマイクロLED構造を形成することが非常に難しいことは、既存の文献に十分に記録されている。窒化インジウムガリウム(InGaN)QWに基づくLEDなどの高効率大規模(たとえば、寸法が数百ミクロン)窒化物ベース青色LED、および、リン化アルミニウムガリウムインジウム(AlGaInP)に基づくLEDなどの高効率大規模リン化物ベース赤色LEDが容易に入手可能であるが、同様に高い効率で動作する緑色LEDの欠如に起因する「グリーンギャップ」が数十年にわたって認識されてきた。それぞれの発光範囲(たとえば、赤色、青色、緑色)の各タイプのLEDを形成する従来のアプローチは、それ自体の最適化されたプロセスを使用し、次いで、結果として得られたLED構造を別個のディスプレイ基板上に転写してLEDアレイを形成する。このアプローチは、独立して形成されたマイクロLED構造を別個のディスプレイ基板に転写することを可能にするのに必要なLEDの最小サイズ、および、高密度マイクロLEDアレイを形成するためのマイクロLED構造の正確な位置合わせに必要な位置合わせ忠実度に関連する制約を有している。本実施形態の一局面は、マイクロLED構造(たとえば、赤色、緑色および青色発光マイクロLED構造)のアレイを単一の基板上に形成して、同様の輝度および効率レベルを有するフルカラー画像を提供することが非常に難しいという認識を含む。
【0026】
本実施形態は、マイクロLED構造の複数の色のモノリシック集積に適合した材料および製造プロセスを使用しながら、より長い波長で高効率マイクロLED構造を実現するために、量子井戸(QW)内における活性元素の含有を制御するためのマイクロLED構造設計および作製プロセスを使用することによって、この問題を解決する。より具体的には、本実施形態は、短波長(たとえば、青色および緑色)の高効率マイクロLED構造の製造に適合した材料を使用して長波長(たとえば、赤色)の高効率マイクロLED構造を形成することを可能にすることにより、さまざまな色で発光するマイクロLED構造のモノリシックに集積されたアレイの実現を可能にするデバイス構造および作製プロセスを開示している。しかし、本明細書に開示されている技術は、たとえば赤色のみのマイクロLED構造を含む全てのサイズおよび構成のエピタキシャルに形成されたLEDに適用可能である、ということが強調される。
【0027】
上記のように、別々に製造された高効率大規模窒化物ベース青色LEDおよびリン化物ベース赤色LEDが知られている。長波長LED(たとえば、赤色)のための発光窒化物ベースQW構造を形成する際、層の均一性を維持するとともに欠陥を制御しながら長波長発光を実現するためにQW内の必要な活性材料(たとえば、インジウム(In))の百分率組成を増加させることは難しい。とりわけ、特に高い反応物蒸気圧下では、QW内で優れた均一性を有する状態で所望の高い割合のInを得ることは難しい。インジウムの割合が減少すると、LEDの公称設計よりもQW構造からの発光波長が短くなる。さらに、QW構造内では、Inクラスタリング、相分離およびくぼみなどの欠陥が一般的に見られる。好適な材料品質を維持しながらのIn組成の改良が従来の窒化ガリウム(GaN)/InGaN/GaN QW材料および成長技術の限界に達する前に成長条件パラメータ(たとえば、温度、時間、蒸気圧)を介して利用できる調整は限られる。
【0028】
MQW構造内に活性InGaN QW層を堆積させる前にアルミニウム(Al)からなる薄層を底部層として含めることは、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)/InGaN境界面におけるさらなる分極電荷および場合によっては点欠陥の多少の減少に起因するQWにおける正孔濃度の増大のために青色LED性能の向上を実現することが分かった。このような技術は、AlGaNからなる1nmの層と、3.5nm厚みのInGaN QW層と、それに続くバリア層としてのGaNからなる5nmの層とのスタックを使用してシリコン基板上に青色LEDを生成するのに使用された(「Si(111)基板上に成長させたInGaN/GaN MQW内に薄いAlGaN中間層を有する高効率青色LED(High- efficiency blue LEDs with thin AlGaN interlayers in InGaN/GaN MQWs grown on Si (111) substrates)」、S.木村等、Proc. of SPIE、第9748巻、97481U)。Alなどの材料を底部層として含めることは、活性領域内のキャリア分布および場合によっては欠陥の減少を促進するものと思われる。
【0029】
しかし、InGaN QW内にAlを含めることは、青色LEDでは実現可能であり得るが、赤色LEDではAlを含めることが適当でないということを一般通念は示しているであろう。特に、AlはInと比較してバンドギャップが広い材料であるので、QW構造内にAlを含めることにより、QWのバンドギャップ全体が広くなり、そのため、発光体波長にブルーシフト(すなわち、より短い波長の方へのシフト)が生じやすくなる。このブルーシフトは、青色LEDでは容易に補償することができるが、赤色LEDの通常の目標は、長波長での発光を実現することであるため、赤色LEDのQW構造内にAlを含めることは、逆効果であるものと思われるであろう。
【0030】
以前は、窒化物ベースの青色LEDの発光波長を緑色、さらには赤みがかったオレンジ色の波長に拡張しようとして、QW構造を覆うのにAlGaNからなる薄層(たとえば、1~2nm厚みの層)が使用されていた。たとえば、1nm厚みのAlGaN層をキャップ層として各3nm厚みのInGaN QW層上に直接堆積し、次いで、MQW構造内で10nm厚みのInGaNバリア層によって覆って、11%~20%の範囲内の外部量子効率(EQE)値を有する緑色-黄色波長、黄色波長および琥珀色波長の発光を実現していた(橋本、「新規の活性領域によるグリーンギャップへの対処(Addressing the green gap with a novel active region)」、www.compoundsemiconductor.net、2014年3月、第44頁)。この橋本論文は、AlGaNキャップ層が電子の波動関数を井戸の内部の方にシフトさせるように機能することによって、電子-正孔の重なりおよび放射再結合を増加させるとともに、InGaN井戸の後の表面の平滑性を取り戻しながら各井戸からの電子のオーバーフローに対するバリアを生じさせる、ということを推測している。さらに別の例として、同一の技術、すなわち各QW層のキャップ層として1nm厚みのAlGaN層を含めること(すなわち、755℃で成長させた窒化インジウムガリウム(InGaN)からなる3nm厚みの活性層に続いて、755℃で成長させたAlGaNからなる1nmの層を形成して、バリア層としての855℃で成長させたInGaNからなる10nmの層によって覆う)は、2.9%という低いEQE値にもかかわらず、赤色波長範囲の短波長側の端である629nmの波長で動作するLEDを製造することが分かった(J.I.ファン等、「(0001)極性表面上に成長させたInGaNベースの赤色LEDの開発(Development of InGaN-based red LED grown on (0001) polar surface)」、アプライド・フィジックス・エクスプレス7、071003(2014))。しかし、AlGaNキャップ層は、QW構造自体の中にInを含む欠陥を防止するものとは思われず、これは、より短い波長の方への赤色LEDの発光のシフトおよび低いEQE値の一般的な原因である。実際、ファン等は、結果として得られたLEDを駆動するための注入電流が増加すると発光波長におけるレッドシフトが無くなることに特に言及している。さらに、上記で報告された全ての実験結果において、LEDデバイスの各々は、各辺がおよそ数百ミクロンの寸法を有する大面積デバイスである。
【0031】
このような一般通念とは逆の、以下でさらに詳細に説明する予期せぬ結果として、MQW構造内にまたはMQW構造内の1つまたは複数の場所に均一にAlを含めることにより、長波長発光の高効率生成を含む赤色LEDの性能の向上が実際にもたらされることが分かった。特に、底部層にアルミニウムを適切に組み込むこと、キャップ層にアルミニウムを適切に組み込むこと、さらには活性量子井戸自体の中にアルミニウムを適切に組み込むこと、およびそれらの組み合わせは、一辺が1ミクロンほどの寸法を有するマイクロLEDデバイスであっても、可視スペクトルの赤色範囲(たとえば、625nmよりも長い)内での高い効率での赤色LED性能の向上を予想外にもたらした。
【0032】
図3は、モルフォロジーおよび歪み特性を向上させた、第1および第2の準備層320および330を有する1つの例示的なマイクロLED構造300を示す概略断面図である。LED構造300は、半導体テンプレート310(たとえば、支持層)の表面上に形成されている。LED構造300は、半導体テンプレート310上に形成、成長(たとえば、エピタキシャル成長)または堆積された第1の準備層320(準備層1)と、第1の準備層320上に形成、成長または堆積された第2の準備層330(準備層2)と、第2の準備層330上に形成、成長または堆積された活性QW領域340と、活性QW領域340上に形成、成長または堆積されたコンタクト層(たとえば、p-ドープ層)を含むp-層350とを含む。いくつかの実現例では、半導体テンプレート310上のLED構造300の位置、形状およびサイズを定義するために、エピタキシャル成長およびドライエッチングまたは選択領域成長などの技術が使用され得る。
【0033】
第1の準備層320および第2の準備層330は、適切なモルフォロジーおよび歪みを有するように活性QW領域340を形成して活性QW領域340が向上した材料特性および発光性能を有するようにするのに使用される表面を準備するように構成されている。この目的のために、第1の準備層320、第2の準備層330、またはそれら両方は、アルミニウム含有層などの高バンドギャップ材料を含んでいる。アルミニウム含有層は、たとえば、5%~100%の範囲内のAlの組成を有するAlInGaN合金を含む。第1および第2の準備層320および330の各々は、0.3ナノメートル~250ナノメートルの範囲内の厚みを有し得る。
【0034】
活性QW領域340は、LED構造300の動作中に発光するように構成されている。
一例では、第1の準備層320は、アルミニウム含有層であって、超格子を含む。超格子は、たとえばAlInGaNおよびAlGaNからなる交互の層によって形成され得る。一例として、超格子は、異なるAlおよびIn組成を有するAlInGaNおよびAlGaNからなる交互の層によって形成されてもよい。別の例では、第1の準備層320は、バルク層である。バルク層は、アルミニウム含有層であり得る。活性QW領域340とは異なって、第1および第2の準備層320および330は、それぞれ、活性QW領域340と同一の可視波長で発光するようには構成されていない。たとえば、活性QW領域340が赤色波長で発光するよう意図されている場合、第1または第2の準備層に含まれる超格子は、活性QW領域340の所期の機能と干渉しないように、緑色波長、青色波長または紫外波長の波長に関連付けられてもよい。
【0035】
一例として、上記のように、第2の準備層330はアルミニウム含有層であってもよい。一例では、第2の準備層330は、LED構造300の動作中に活性QW領域340と同一の波長で発光するように構成されない超格子、バルク層、1つまたは複数のQW構造を含み得る。さらに、第2の準備層330が単一の量子井戸または複数の量子井戸を含む事例では、第2の準備層330は、単一の量子井戸または複数の量子井戸の下または上に形成されたAlGaN層などの高バンドギャップ中間層をさらに含み得る。Al含有層などの高バンドギャップ材料を組み込むなど、第1および第2の準備層320および330をそれぞれ含めることにより、活性QW領域340の発光特性が向上する。たとえば、高温処理に対する耐性の向上、移動する不純物の捕獲、歪み特性の向上および活性QW領域340の化学量論の最適化などであるがこれらに限定されない有利な効果を提供することによって、発光波長仕様などの発光性能、発光波長の狭ピーク化、および活性QWの発光強度を向上させることができる。
【0036】
図4は、モルフォロジーおよび歪み特性を向上させた1つの例示的なLED構造400を示す概略断面図である。LED構造400は、
図3のLED構造300と同様であって、GaNテンプレートまたは支持層であり得る半導体テンプレート310の表面上に形成されている。LED構造400は、非活性QW層410と、AlGaN層420と、活性QW領域340と、p-層350とを含む。非活性QW
層41
0とAlGaN層420との組み合わせが1つだけ示されているが、LED構造400は、非活性QW層410とAlGaN層420との複数のまたは繰り返される組み合わせを含んでいてもよい。非活性QW層410は、活性QW領域340の発光波長よりも短い波長に関連付けられ得る。たとえば、活性QW領域340が赤色波長の発光を生成するように構成される場合、非活性QW層410は、緑色波長、青色波長または紫外波長の波長に関連付けられ得る。AlGaN層420は、Inに対してAlが5%~100%の組成を有するAlInGaN合金などの、AlGaNを含むさまざまな合金からなっていてもよい。
【0037】
図3のLED構造300と比較して、LED構造400は、非活性QW層410内に少なくとも1つのQWを含み、この少なくとも1つのQW上にAlGaN層420が形成されている。たとえば、単一または複数の非活性QWを含み得る非活性QW層410は第1の準備層320に対応し、AlGaN層420は第2の準備層330に対応する。
図4は、非活性QW層410とAlGaN層420との対を1つだけ示しているが、LED構造400は、その範囲から逸脱することなく非活性QW層410とAlGaN層420との複数の層状の対を含んでいてもよい。
【0038】
図5は、指向性を向上させた1つの例示的なLED構造500を示す概略断面図である。LED構造500は、
図3のLED構造300と同様であって、半導体テンプレート310の表面上に形成されている。LED構造500は、第1の準備層320と、反射層510と、活性QW領域340と、p-層350とを含む。反射層510は、AlInN/GaN底部ミラーまたはAlInGaN/InGaN底部ミラーであってもよく、活性QW領域340の前に形成され得る。別の例では、反射層510は、異なるAlおよびIn組成を有するAlInGaN/AlInGaNを含んでいてもよい。したがって、反射層510は、反射スタックを形成する少なくとも1つのアルミニウム含有層を含み得る。反射層510がAlInN/GaN底部ミラーである場合、AlInN層は、GaNに格子整合し得るおよそ82%のInに対するAl含有率を有するため、Inに対するAl含有率が約50%であるAlGaN/GaN系と同等の7%という高い屈折率コントラストを維持しながら、後続の活性層における歪み関連の問題を回避する。
【0039】
さらに、反射層510は、活性QW領域340によって生成された放射パターンを特定の用途に合わせることを可能にする分布ブラッグ反射器(DBR)であり得て、またはDBRとして機能するように構成され得るため、活性QW340からの発光の指向性を向上させる。たとえば、反射層510がDBRである、またはDBRとして動作するように構成される場合、LED構造500は、共振空洞LEDまたは垂直共振器面発光型レーザ(VCSEL)として動作するように構成され得る。すなわち、活性QW340からの光の所期の発光波長に対する活性QW340の厚みによっては、LED構造500が共振空洞LEDまたはVCSELとして動作し得るように、p-層350および反射層510は、活性QW340を含む共振器空洞を形成する。
【0040】
上記のLED構造300,400および500の各々は、高密度用途に適した1ミクロンまでの直径サイズまたは特徴サイズを有するようにエピタキシャル成長およびドライエッチングまたは選択領域成長などの技術によって作製することができる。特定の実施形態では、直径サイズは、1ミクロン~10ミクロンなど、1ミクロンよりも大きい。
【0041】
アルミニウム含有層を使用することは、小さなLEDの製造およびこのような小さなLEDのモノリシックな集積と関連付けてLED構造300,400および500によって提供されるモルフォロジー、歪みおよび指向性の利点に加えて、他の利点を有する。これらのアルミニウム含有層は、不純物を取り込むためのゲッタの役割を果たし、そのため、それらをLED構造のパッシブ領域に局在させることによって活性領域(たとえば、活性QW領域340)内の不純物を減少させることができる。さらに、取り込まれたまたは局在した不純物は、後続のプロセス動作における高温の用途下であっても移動することを阻止され得る。
図4の例では、非活性QW層410上に成長させたAlGaN層420を不純物(たとえば、酸素)のゲッタリングに使用することによって、活性QW領域340への不純物(たとえば、酸素)の混入を減少させることができる。
図5の例では、反射層510を形成するのに使用されるAlInN層も酸素ゲッタリング層として機能し得る。
【0042】
図6は、正孔漏れを減少させることによって性能を向上させた1つの例示的なLED構造600を示す概略断面図である。LED構造600は、
図3のLED構造300と同様であって、半導体テンプレート310の表面上に形成されている。LED構造600は、第1の準備層320と、正孔阻止層610と、活性QW領域340と、p-層350とを含む。正孔阻止層610は、半導体テンプレート310および第1の準備層320から活性QW領域340への正孔のオーバーフロー、ならびに、活性QW領域340から第1の準備層320および半導体テンプレート310への正孔のオーバーフローを防止する。特定の実施形態では、正孔阻止層610は、n-AlGaNを含んでいてもよい。他の実施形態では、正孔阻止層610は、活性QW領域340の発光効率を向上させるAlGaN/GaNまたはInAlN/GaN層からなる超格子である。しかし、正孔阻止層610は、n-AlGaN、nドープAlGaN/GaN超格子およびnドープInAlN/GaN超格子を含む他の好適な材料を使用してもよい。
【0043】
図7は、活性MQW領域730にアルミニウムを導入させた1つの例示的なマイクロLED構造700を示す概略断面図である。マイクロLED構造700は、1つまたは複数のバルクまたはプレップ層720を支持するための、半導体基板としても知られている半導体テンプレート710と、活性MQW領域730と、少なくとも1つのp-層740とを含む。活性MQW領域730は、バルクまたはプレップ層720上に形成され得て、隣接するバリア層734(たとえば、GaNまたはInGaNバリア層)を有する、アルミニウムを含有する少なくとも1つの活性QWスタック732を含む。各活性QWスタック732は、アルミニウム含有材料からなる単一の層を含んでいてもよく、または、異なる材料からなる2つまたはそれ以上の層を、これらの層のうちの少なくとも1つがアルミニウムを含有するように含んでいてもよい。
図7の例は、各々が隣接するバリア層734を有する4つの活性QWスタック732を有する活性MQW領域730を示しているが、マイクロLED構造700の所望の発光性能によっては、より少ないまたはより多くの活性QWスタック732および対応するバリア層734が含まれていてもよい。
【0044】
上記のように、Inと比較してバンドギャップが広い材料であるAlを含めることは、結果として得られるマイクロLED構造からの発光波長を短くすることに有利であるものと思われるであろう。しかし、直観に反して、Alを適切に含めることは、Alを含めないマイクロLED構造と比較して高い効率およびフォトルミネセンス性能を有するマイクロLED構造をもたらす。より具体的には、Alを含めることは、上記のように、LED構造にわたる電流密度が増加した場合に、マイクロLED構造から発せられた波長をより短い波長の方にシフトさせる(たとえば、ブルーシフト)ため、このブルーシフトを補償するためにマイクロLED構造全体で調整が必要になる。活性QW領域内および活性QW領域の周囲の特定の層など、活性QWスタック732にAlを組み込むさまざまな方法が開示されており、これらについては以下でさらに詳細に説明する。
【0045】
図8Aおよび
図8Bは、活性MQW領域830Aおよび830B内にそれぞれアルミニウム含有底部層を含む例示的なマイクロLED構造800Aおよび800Bを示す概略断面図である。マイクロLED構造800Aおよび800Bは、
図7のマイクロLED構造と同様である。活性MQW領域830Aおよび830Bは、バルクまたはプレップ層720上に形成されている。
図8Aは、QWスタックと総称される4つの活性QW層832のスタックを含むマイクロLED構造800Aの活性MQW領域830Aを示す。各QW層832は、それぞれのAlGa(In)N底部層836(以下、Al底部層836)上に堆積されて、バリア層734によって分離された層の対を形成する。Al底部層836は、厚みが数原子層~数ナノメートルであり得る。このような厚みを超えると、Al底部層836は、バンドギャップの増加に起因してマイクロLED構造内に望ましくないブルーシフトを生じさせる可能性がある。活性QW層832は、InGaNからなっていてもよい。Al底部層836は、マイクロLED構造800Aなどの窒化物ベースのマイクロLED構造の作製プロセスに適合した、AlGaN、AlInNおよびInAlGaNのうちの1つなどの、アルミニウムを含む合金である。Al底部層836は、中間層と称されてもよい。
【0046】
QWベースのLED構造において活性QW層の下にAlGaN底部層を含めることは青色波長で証明されており、これは概念上筋が通っている。なぜなら、Alの導入に起因する発光波長のブルーシフトは、青色LEDに対応するからである。しかし、Al底部層836をさらに含めることは、活性MQW領域830Aの有効バンドギャップをさらに広げるものと思われるが、Al底部層836内にAlを含めることにより、活性QW層832内の高In含有率材料の品質および均一性を向上させる。AlGaNまたはAlInN底部層を含めることにより、活性QW層を成長させる結晶面モルフォロジーが変更され、欠陥を減少させて、バリア層734の成長中などの高温処理中の材料の安定性を向上させるものと思われる。したがって、活性MQW領域830Aのバンドギャップが事実上広くなることに起因するいかなるブルーシフトも、活性QW層832内の成長モードの向上および欠陥の減少によって克服されるものと思われる。その結果、予想外なことに、マイクロLED構造800Aは、
図8Aに示される特徴の組み合わせを有しないマイクロLED構造と比較して優れた効率および長波長発光をもたらす。たとえば、マイクロLED構造800Aは、その他の点では同様の材料構造を有する先行技術のLED構造100と比較して、適用される電流密度が増加した場合に波長が10nm以下のブルーシフトを有する同様のピークIQE値を示すことが証明された。
【0047】
図8Bは、
図8AのマイクロLED構造800Aと同様であるが、活性MQW領域830BのAl底部層836と活性QW層832との間に中間層838を含むマイクロLED構造800Bを示す。中間層838は、GaNなどの従来のバリア層材料、または、窒化物ベースのマイクロLEDの作製に適合したさまざまな組成のAlGaN、InGaNおよびAlInGaN材料などの他の材料からなっていてもよい。Al底部層836と中間層838との組み合わせは、活性QW層832の接着および均一性をさらに向上させ、境界面における欠陥および活性QW層832内の欠陥を減少させ、各活性QW層832内のInの保持を向上させる。その結果、マイクロLED構造800Bの発光は、赤色波長の方にシフトされて、マイクロLED構造800Bの量子効率性能は、Al底部層836を含まないマイクロLED構造と比較して向上する。
【0048】
図9は、
図7のマイクロLED構造700と同様であって、バルクまたはプレップ層720上に形成された活性MQW領域930内で活性QW層832の上方に配置されたアルミニウム含有キャップ層932(以下、Alキャップ層932と称される)をさらに含む1つの例示的なマイクロLED構造900を示す概略断面図である。たとえば、およそ1ナノメートル以下の厚みを有するAlGaN層がキャップ層932として使用されてもよい。Alキャップ層932は、別の中間層と称されてもよい。Alキャップ層932を含めることは、活性MQW領域930の有効バンドギャップを広くするものと思われるが、Alキャップ層932は、多くの利点を提供するため、Alキャップ層932は、マイクロLED構造800Aおよび800BのAl底部層836のように、活性QW層832とバリア層734との間の歪みを均衡させる役割を果たし、活性QW層832の成長前後のモルフォロジーを合わせること、活性QW層832内にInを保持すること、および/または、ブルーシフトを最小限にしながら長波長発光に寄与するバンドアライメントを提供することを可能にする。したがって、活性QW層832は、よりよいInの保持および均一性を示し、
図9に示される特徴の組み合わせを有しないマイクロLEDと比較して優れた効率および長い波長の発光をもたらす。
【0049】
Alキャップ層932は、構造全体に組み込まれ得る任意の電子阻止層およびp-層からの水素を含む点欠陥の移動に対するバリアとしての役割を果たし得る。しかし、Alキャップ層932は、必ずしも活性QW層832自体の中の欠陥を防止することを手助けするわけではないので、場合によっては
図8Aおよび
図8Bに示されるようにAl底部層836を含めるなどの追加の対策が必要になる。
【0050】
図10は、バルクまたはプレップ層720上に形成された活性MQW領域1030の少なくとも1つの活性QW層1032内にアルミニウムを含む1つの例示的なマイクロLED構造1000を示す概略断面図である。活性MQW領域1030は、QWスタックとも総称される活性QW層1032を4つ有するように示されているが、その範囲から逸脱することなくより多くのまたはより少ない活性QW層1032を含んでいてもよい。特定の実施形態では、活性QW層1032の堆積中に、たとえば0.01~5%の濃度で活性QW層1032の合金組成にAlを組み込むために、Al含有ガスが特定の濃度で導入される。特定の実施形態では、このプロセスは、Alを含めるために活性MQW領域1030内の全ての活性QW層1032について実行される。他の実施形態では、同様のプロセスを使用して、活性MQW領域1030の各活性QW層1032に含められるAlの量を変化させる。たとえば、特定のQW層内にAlを含めることは、擬合金、デジタル合金または短周期超格子の形態であってもよい。活性MQW領域1030内で、活性QW層1032は、GaNなどの好適な材料からなるバリア層734によって分離されている。
【0051】
活性QW層1032内にAlを含めることは、Inの分布の均一性を向上させ、通常は活性QW層1032の堆積中よりも約100℃高い温度を必要とするバリア層734の成長中などの後続の高温処理中の活性QW層1032からのInの脱離を防止する。Alを含めることは、QW歪みを補償することにより分極誘導電界を変更するものと思われる。言い換えれば、活性QW層1032の堆積中にAlを含めることは、Inの閉じ込めおよびInの保持を向上させ、高In含有率InGaN材料に関連付けられた欠陥を減少させ、および/または、活性QW層1032内のInGaNの安定性を向上させ、そのため、Alなどのバンドギャップがより広い材料を含めることの考えられるマイナスの影響を克服するものと思われる。さらに、Alは、従来のLED(およそ100ミクロン以上の寸法を有する)も赤外波長、可視波長および紫外波長の波長で動作するように構成されたマイクロLED構造も含む発光構造のさまざまな波長のためのドーパントとして活性MQW領域1030内で使用され得る。Alは、有機金属気相成長(MOCVD)システムなどの、QW構造の生成に一般的に使用されるシステムで容易に利用できる標準的な前駆体であるので、有利である。
【0052】
活性QW層1032へのAlの組み込みは、活性QW材料の成長条件(たとえば、温度、圧力、時間)によっていろいろであるため、活性QW層1032へのAlの含有量は、活性QW層1032の所望の特性を提供するように調整され得る。活性MQW領域1030は、4つの活性QW層1032を有するように示されているが、マイクロLED構造1000の所望の発光および動作特性を実現するために、より多くのまたはより少ない活性QW層1032および対応するバリア層734が含められてもよい。
【0053】
図11は、
図10のマイクロLED構造1000と同様であって、
図8Aおよび
図8BのマイクロLED構造800Aおよび800BのAl底部層836などのアルミニウム含有底部層をさらに含む1つの例示的なマイクロLED構造1100を示す概略断面図である。バルクまたはプレップ層720上に活性MQW領域1130が形成されており、活性MQW領域1130は、両方がAl含有を有するAl底部層836と活性QW層1032との組み合わせを含む。Al底部層836は、堆積の均一性およびその中での活性QW層1032の接着を促進するものと思われ、活性QW層1032内にAlを含めることは、QW内でのInの保持を促進し、その結果、
図11の特徴を含まないマイクロLED構造の赤色波長での量子効率と比較して、赤色波長での量子効率を向上させる。特定の実施形態では、Al底部層836と活性QW層1032との間に中間層838(
図8Bに記載)が含まれていてもよい。
【0054】
図12は、
図10のマイクロLED構造1000と同様であって、マイクロLED構造900のAlキャップ層932(
図9)をさらに含む1つの例示的なマイクロLED構造1200を示す概略断面図である。マイクロLED構造1200の活性MQW領域1230は、バルクまたはプレップ層720上に形成されており、やはりAlを含む活性QW層1032を有するAlキャップ層932を含む。Alキャップ層932を上にのせた活性QW層1032の組み合わせは、活性QW層1032内のInの保持を促進するため、活性MQW領域1230を有しないマイクロLED構造の赤色波長での量子効率と比較して、赤色波長での量子効率を向上させる。
【0055】
図13は、
図12のマイクロLED構造1200と同様であって、
図8BのAl底部層836をさらに含む1つの例示的なマイクロLED構造1300を示す概略断面図である。マイクロLED構造1300は、バルクまたはプレップ層720上に形成された活性MQW領域1330を有しており、活性MQW領域1330は、各活性QW層1032についてAl底部層836とAlキャップ層932とを含んでおり、Al底部層836およびAlキャップ層932に隣接してバリア層734をさらに含んでいる。任意に、
図13に示されるように、Al底部層836がたとえばAlGa(In)Nである場合、Al底部層836と活性QW層1032との間には中間層838が配置されてもよい。活性MQW領域1330内にAlを含めることは、各活性QW層1032内のInの分布の均一性を向上させ、活性MQW領域1330内のInの保持を促進し、バリア層734の成長中の活性QW層1032からのInの脱離を減少させる。したがって、マイクロLED構造1300は、
図8B、
図9および
図10に示されるマイクロLED構造の有益な効果を兼ね備えている。
【0056】
図14は、マイクロLED構造を作製するための1つの例示的なプロセス1400を示すフローチャートである。プロセス1400は、たとえばマイクロLEDの作製に適したMOCVDシステムまたは他のシステム内で行われてもよい。プロセス1400のブロック1410において、1つまたは複数のバルクまたはプレップ層が基板上に堆積される。ブロック1410の一例では、第1および第2の準備層320,330が半導体テンプレート310上に堆積される。ブロック1410の別の例では、バルクまたはプレップ層720が半導体テンプレート710上に堆積される。ブロック1412は任意である。含まれる場合、ブロック1412において、プロセス1400は、1つまたは複数のバリア材料を堆積させる。ブロック1412の一例では、バリア層734がバルクまたはプレップ層720上に堆積される。なお、特定の実施形態では、ブロック1412においてバリア材料を別途堆積させるのではなく、ブロック1410において堆積された1つまたは複数のバルクまたはプレップ層720に第1のバリア材料が組み込まれてもよい。
【0057】
ブロック1420は判断である。ブロック1420において判断がAlを有する底部層を追加するというものである場合、プロセス1400はブロック1422に進み、そうでなければ、プロセス1400はブロック1424に進む。ブロック1422において、プロセス1400は、Al含有底部層を堆積させる。ブロック1422の一例では、Al底部層836が以前に堆積された層上に堆積される。
【0058】
ブロック1424は判断である。ブロック1424において判断が中間層を追加するというものである場合、プロセス1400はブロック1426に進み、そうでなければ、プロセス1400はブロック1430に進む。ブロック1426において、プロセス1400は、以前に堆積された層の中に中間層を堆積させる。ブロック1426の一例では、中間層838がAl底部層836上に堆積される。
【0059】
ブロック1430は判断である。ブロック1430において判断が活性QW層にAlを含めるというものである場合、プロセス1400はブロック1432に進み、そうでなければ、プロセス1400はブロック1440に進む。ブロック1432において、プロセス1400は、Alを組み込んだ活性QW材料を堆積させる。ブロック1432の一例では、活性QW層1032がバリア層734上に堆積されるときにAlが追加される。ブロック1432の別の例では、活性QW層1032がAl底部層836上に堆積されるときにAlが追加される。ブロック1432の別の例では、活性QW層1032が中間層838上に堆積されるときにAlが追加される。次いで、プロセス1400はブロック1450に進む。ブロック1440において、プロセス1400は、Alを追加することなく活性QW材料を堆積させる。ブロック1440の一例では、活性QW領域340が第2の準備層330上に堆積される。ブロック1440の別の例では、活性QW層832がAl底部層836上に堆積される。ブロック1440の別の例では、活性QW層832が中間層838上に堆積される。ブロック1440の別の例では、活性QW層832がバリア層734上に堆積される。
【0060】
ブロック1450は判断である。ブロック1450においてAlキャップ層を含めるという判断がなされる場合、プロセス1400はブロック1452に進み、そうでなければ、プロセス1400はブロック1470に進む。ブロック1452において、プロセス1400は、Alキャップ層を堆積させる。ブロック1452の一例では、Alキャップ層932が活性QW層832上に堆積される。ブロック1452の別の例では、Alキャップ層932が活性QW層1032上に堆積される。
【0061】
ブロック1470は判断である。ブロック1470において追加のQW層が堆積されると判断されると、プロセス1400はブロック1412に進み、そうでなければ、プロセス1400はブロック1480に進む。したがって、ブロック1412~1470は、追加される各々の追加のQW層について繰り返される。
【0062】
ブロック1480において、プロセス1400はバリア材料を堆積させる。ブロック1480の一例では、バリア層734が活性QWスタック732上に堆積される。ブロック1480の別の例では、バリア層734が活性QW層832上に堆積される。ブロック1480の別の例では、バリア層734がAlキャップ層932上に堆積される。ブロック1482において、プロセス1400は、1つまたは複数のp-層を堆積させる。ブロック1482の一例では、1つまたは複数のp-層350が活性QW領域340上に堆積される。ブロック1482の別の例では、p-層740がバリア層734上に堆積される。次いで、プロセス1400は終了し得る。
【0063】
本開示は、マイクロLED構造から発せられた赤色波長での性能を向上させるための技術および構造を使用するさまざまな実施形態を説明している。上記の説明は、赤色波長で発光するマイクロLED構造に焦点をあてたが、記載されている実施形態の技術および構造は、より短い可視波長および赤外波長を含む他の波長範囲で動作するLEDの性能を適合させるのにも使用されてもよい。さらに、開示されている実施形態は、主に窒化物ベースのマイクロLED構造を示しているが、バンドギャップおよび欠陥エンジニアリングのための同様の材料および層化構造変形例は、リン化物ベースのLED構造などの他の発光構造にも適用可能である。さらに、開示されている実施形態は、QW構造の生成に一般的に使用されるMOCVDシステムで容易に利用できる標準的な前駆体であるAlを含めることに関連しているが、マイクロLED構造からの所望の発光をさらにエンジニアリングするためにマイクロLED構造のMQW領域内に他の材料を含めることも検討されてもよい。さらに、
図9における活性QW層832とAlキャップ層932との間および/または
図12および
図13における活性QW層1032とAlキャップ層932との間に追加の中間層が含められてもよい。
【0064】
LED構造は、少なくとも1つの量子井戸を有する活性領域を含み得て、この活性領域は、LED構造に関連付けられた発光を提供するように構成されている。少なくとも1つの量子井戸内には、ある量のアルミニウムが組み込まれる。LED構造の活性領域は、少なくとも1つの量子井戸内に組み込まれたアルミニウムの量よりも多くの量のアルミニウムを組み込んだ少なくとも1つのアルミニウム含有層をさらに含み得る。少なくとも1つの量子井戸内に組み込まれるアルミニウムの量は、少なくとも1つの量子井戸の0.01~5%である。LED構造は、少なくとも1つの量子井戸内に組み込まれたアルミニウムの量を有しない無修正LED構造によって示される無修正内部量子効率値よりも高い修正内部量子効率値を示す。LED構造は、少なくとも1つの量子井戸内に組み込まれたアルミニウムの量を有しない無修正LED構造の無修正ピーク波長よりも長い修正ピーク波長で動作する。LED構造の直径は、10ミクロン未満である。
【0065】
LED構造は、LED構造に関連付けられた発光を提供するように構成された活性領域を含み、活性領域は、バリア層と、活性QW層とを含み、活性QW層は、一次活性QW材料で実質的に構成されており、活性QW層は、活性QW層内に組み込まれたある量の二次材料をさらに含み、二次材料は、一次活性QW材料よりも広いバンドギャップを示す。活性領域は、活性量子井戸層内に組み込まれた二次材料の量よりも多くの量の二次材料を組み込んだ少なくとも1つの中間層をさらに含み得る。少なくとも1つの中間層は、バリア層と活性量子井戸層との間に配置されている。少なくとも1つの中間層は、底部層であってもよい。少なくとも1つの中間層は、キャップ層であってもよい。二次材料は、アルミニウムである。LED構造は、少なくとも1つの量子井戸全体にわたって分散された二次材料の量を有しない無修正LED構造によって示される無修正内部量子効率値よりも高い修正内部量子効率値を示す。LED構造は、少なくとも1つの量子井戸全体にわたって分散された二次材料の量を有しない無修正LED構造の無修正ピーク波長よりも長い修正ピーク波長で動作する。LED構造の直径は、10ミクロン未満である。
【0066】
方法は、バリア層と活性量子井戸層とを含む少なくとも1つの量子井戸領域を含む発光ダイオード(LED)構造を形成する。少なくとも1つの量子井戸領域を形成する際、一次活性量子井戸材料が、一次活性量子井戸材料よりも広いバンドギャップを示すある量の二次材料とともに、堆積される。二次材料の量は、一次活性量子井戸材料の0.01~5%である。ある量の二次材料とともに一次活性量子井戸材料を堆積させることは、一次活性材料および二次材料の擬合金を形成することを含む。
【0067】
特徴の組み合わせ
以下の実施形態、および互いに両立できるこのような実施形態の任意の組み合わせが特に意図される。
【0068】
(A)発光ダイオード(LED)構造は、半導体テンプレート上に形成されたバルクまたはプレップ層と、上記バルクまたはプレップ層上に形成された活性領域と、上記活性領域上に形成された少なくとも1つのp-層とを含む。上記活性領域は、上記バルクまたはプレップ層上に形成された第1のバリア層と、上記第1のバリア層上に形成された少なくとも1つのアルミニウム含有活性量子井戸(QW)スタックと、上記活性QWスタック上に形成された第2のバリア層とを含む。上記少なくとも1つの活性QWスタックが注入電流によって駆動されると、上記活性領域は上記LED構造から発光する。
【0069】
(B)(A)として表されるLED構造において、上記活性領域は、上記LED構造から赤色波長で発光するように構成されている。
【0070】
(C)(A)および(B)として表されるLED構造のいずれかにおいて、上記少なくとも1つの活性QWスタックは、(a)上記第1のバリア層上に形成されたアルミニウム含有底部層と、(b)上記アルミニウム含有底部層上に形成された活性QW層とを備える。
【0071】
(D)(A)~(C)として表されるLED構造のいずれかにおいて、上記アルミニウム含有底部層は、AlGa(In)N、AlGaN、AlInNおよびInAlGaNからなる群から選択された合金を含む。
【0072】
(E)(A)~(D)として表されるLED構造のいずれかにおいて、上記少なくとも1つの活性QWスタックは、(c)上記活性QW層上に形成されたアルミニウム含有キャップ層をさらに備える。
【0073】
(F)(A)~(E)として表されるLED構造のいずれかにおいて、上記アルミニウム含有キャップ層は、1nmの厚みのAlGaN材料を含む。
【0074】
(G)(A)~(F)として表されるLED構造のいずれかにおいて、上記少なくとも1つの活性QWスタックは、(a)上記第1のバリア層上に形成されたアルミニウム含有底部層と、(b)上記アルミニウム含有底部層上に形成された中間層と、(c)上記中間層上に形成された活性QW層とを備える。
【0075】
(H)(A)~(G)として表されるLED構造のいずれかにおいて、上記中間層は、GaN、AlGaN、InGaNおよびAlInGaNからなる群から選択された材料を含む。
【0076】
(I)(A)~(H)として表されるLED構造のいずれかにおいて、上記少なくとも1つの活性QWスタックは、上記第1のバリア層上に形成されたアルミニウム含有QW層を備える。
【0077】
(J)(A)~(I)として表されるLED構造のいずれかにおいて、上記アルミニウム含有QW層は、擬合金、デジタル合金および短周期超格子のうちの1つを含む。
【0078】
(K)(A)~(J)として表されるLED構造のいずれかにおいて、上記少なくとも1つの活性QWスタックは、(a)上記第1のバリア層上に形成されたアルミニウム含有底部層と、(b)上記アルミニウム含有底部層上に形成されたアルミニウム含有活性QW層とを備える。
【0079】
(L)(A)~(K)として表されるLED構造のいずれかにおいて、上記少なくとも1つの活性QWスタックは、(a)上記第1のバリア層上に形成されたアルミニウム含有活性QW層と、(b)上記活性QW層上に形成されたアルミニウム含有キャップ層とを備える。
【0080】
(M)(A)~(L)として表されるLED構造のいずれかにおいて、上記少なくとも1つの活性QWスタックは、(a)上記第1のバリア層上に形成されたアルミニウム含有底部層と、(b)上記アルミニウム含有底部層上に形成されたアルミニウム含有活性QW層と、(c)上記アルミニウム含有活性QW層上に形成されたアルミニウム含有キャップ層とを備える。
【0081】
(N)(A)~(M)として表されるLED構造のいずれかにおいて、青色波長で発光する青色マイクロLED構造、緑色波長で発光する緑色マイクロLED構造、および赤色波長で発光する赤色マイクロLED構造の各々を含むアレイとして複数のマイクロLED構造が上記半導体テンプレート上にモノリシックに形成されている。
【0082】
(O)発光ダイオード(LED)構造は、半導体テンプレートと、上記半導体テンプレート上に形成された第1の準備層と、上記第1の準備層上に形成された第2の準備層と、上記第2の準備層上に形成された少なくとも1つの活性量子井戸(QW)層と、上記活性QW層上に形成された少なくとも1つのp-層とを備え、上記活性QW層は、活性化されると上記LED構造から発光する。
【0083】
(P)(O)として表されるLED構造において、上記第1の準備層は非活性QWを備え、上記第2の準備層はアルミニウム含有底部層を備える。
【0084】
(Q)(O)または(P)として表されるLED構造のいずれかにおいて、上記第2の準備層は反射層を備える。
【0085】
(R)(O)~(Q)として表されるLED構造のいずれかにおいて、上記第2の準備層は正孔阻止層を備える。
【0086】
(S)方法は、半導体基板上に発光ダイオード(LED)構造を形成する。上記方法は、上記半導体基板上に少なくとも1つのプレップ層を堆積させることと、上記少なくとも1つのプレップ層上に活性多重量子井戸(MQW)領域を形成することと、上記活性MQW領域上にp-層を堆積させることとを備える。上記活性MQW領域を形成することは、第1のバリア材料を堆積させることと、活性QW材料を堆積させることと、第2のバリア材料を堆積させることとを含む。上記活性MQW領域を形成することは、任意に、上記第1のバリア材料と上記活性QW材料との間に底部層を堆積させることと、上記底部層と上記活性QW材料との間に中間層を堆積させることと、上記活性QW材料と上記第2のバリア材料との間にキャップ層を堆積させることとを含む。上記活性QW材料を堆積させること、上記底部層を堆積させること、上記中間層を堆積させること、および上記キャップ層を堆積させることのうちの少なくとも1つは、アルミニウムを組み込むことを含む。
【0087】
したがって、示されている実現例に従って本開示が提供されてきたが、これらの実施形態に対する変更があってもよく、それらの変更は本開示の範囲内であろう、ということを当業者は容易に認識するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく多くの変更が当業者によってなされてもよい。上記の方法およびシステムにおいて、その範囲から逸脱することなく変更がなされてもよい。このように、上記の説明に含まれるか添付の図面に示される事項は、例示的として解釈されるべきであり、限定的な意味で解釈されるべきではない、ということに留意すべきである。以下の請求項は、本明細書に記載されている全ての一般的および具体的な特徴と、言語の問題としてそれらの間に入ると言える本方法およびシステムの範囲の全ての記載とをカバーするよう意図されている。