(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】二重層熱収縮チューブ
(51)【国際特許分類】
B29C 61/08 20060101AFI20241203BHJP
F16L 11/04 20060101ALI20241203BHJP
B29K 27/12 20060101ALN20241203BHJP
B29K 67/00 20060101ALN20241203BHJP
B29K 23/00 20060101ALN20241203BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20241203BHJP
B29L 23/00 20060101ALN20241203BHJP
【FI】
B29C61/08
F16L11/04
B29K27:12
B29K67:00
B29K23:00
B29L9:00
B29L23:00
(21)【出願番号】P 2022572627
(86)(22)【出願日】2021-05-27
(86)【国際出願番号】 US2021034545
(87)【国際公開番号】W WO2021243036
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-01-23
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522169793
【氏名又は名称】ゼウス カンパニー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【氏名又は名称】本田 亜希
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100189474
【氏名又は名称】田村 修
(72)【発明者】
【氏名】ハンター,キャメロン
(72)【発明者】
【氏名】カンパネリ,ジョン リチャード
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/097820(WO,A1)
【文献】特開2015-039843(JP,A)
【文献】特表2017-524491(JP,A)
【文献】国際公開第2016/204174(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
F16L 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さt
1及び外径D
1を有する内側ポリマー層と、
厚さt
2’及び外径D
2’を有する拡張された外側ポリマー層と、
を備え、
前記拡張された外側ポリマー層は、外径D
2
、厚さt
2
を有するポリマーチューブを
、選択された温度で
、D
2
’-2(t
2
’)がD
1
より大きくなるように拡張させることによって得られ
た、二重層熱収縮チューブであって、
前記二重層熱収縮チューブ
は、tanδ曲線下面積が、1℃~12℃を示し、
前記tanδ曲線下面積は、動的粘弾性分析計(DMA)を使用して、前記二重層熱収縮チューブの断面から
切り取られたリングを、切れ目を入れて矩形物にし、切離端で引張グリップによりDMA内で把持
されて試験することで決定され、
前記DMAは、前記内側ポリマー層の融解
開始
から前記拡張された外側ポリマー層の融解
開始
まで1Hzの周波数で3℃/分の
速度で使用される、二重層熱収縮チューブ。
【請求項2】
前記拡張された外側ポリマー層は、フルオロポリマーを含む、請求項1に記載の二重層熱収縮チューブ。
【請求項3】
前記拡張された外側ポリマー層は、PTFE、FEP、PFA、PEEK、PVDF、及びそれらの組合せからなる群から選択されるフルオロポリマーを含む、請求項1に記載の二重層熱収縮チューブ。
【請求項4】
前記拡張された外側ポリマー層は、ポリエステルを含む、請求項1に記載の二重層熱収縮チューブ。
【請求項5】
前記拡張された外側ポリマー層は、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)を含む、請求項1に記載の二重層熱収縮チューブ。
【請求項6】
前記内側ポリマー層は、フルオロポリマーを含む、請求項1に記載の二重層熱収縮チューブ。
【請求項7】
前記内側ポリマー層は、PFA、FEP、EFEP、PVDF、及びそれらの組合せからなる群から選択されるフルオロポリマーを含む、請求項1に記載の二重層熱収縮チューブ。
【請求項8】
前記内側ポリマー層は、ポリオレフィンを含む、請求項1に記載の二重層熱収縮チューブ。
【請求項9】
前記内側ポリマー層は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、及びそれらの組合せからなる群から選択されるポリオレフィンを含む、請求項1に記載の二重層熱収縮チューブ。
【請求項10】
前記拡張された外側ポリマー層は、
PTFEからなり、かつ前記内側ポリマー層は、
PFAからなる、請求項1に記載の二重層熱収縮チューブ。
【請求項11】
前記拡張された外側ポリマー層は、
PTFEからなり、かつ前記内側ポリマー層は、
FEPからなる、請求項1に記載の二重層熱収縮チューブ。
【請求項12】
前記拡張された外側ポリマー層は、
PFAからなり、かつ前記内側ポリマー層は、
FEPからなる、請求項1に記載の二重層熱収縮チューブ。
【請求項13】
前記拡張された外側ポリマー層は、
PEEKからなり、かつ前記内側ポリマー層は、
FEPからなる、請求項1に記載の二重層熱収縮チューブ。
【請求項14】
前記拡張された外側ポリマー層は、
FEPからなり、かつ前記内側ポリマー層は、
EFEPからなる、請求項1に記載の二重層熱収縮チューブ。
【請求項15】
前記拡張された外側ポリマー層は、
FEPからなり、かつ前記内側ポリマー層は、
PVDFからなる、請求項1に記載の二重層熱収縮チューブ。
【請求項16】
前記拡張された外側ポリマー層は、熱収縮した後に除去可能である、請求項1に記載の二重層熱収縮チューブ。
【請求項17】
前記内側ポリマー層及び前記拡張された外側ポリマー層の一方又は両方は、フィラーを含む、請求項1~
9のいずれか一項に記載の二重層熱収縮チューブ。
【請求項18】
前記内側ポリマー層及び前記拡張された外側ポリマー層の一方又は両方は、ポリマーのブレンドを含む、請求項1~
9のいずれか一項に記載の二重層熱収縮チューブ。
【請求項19】
請求項1~16のいずれか一項に記載の二重層熱収縮チューブを加熱することによって作製される収縮した二重層チューブであって、前記内側ポリマー層が溶融して、内側密封層が形成され、かつ前記拡張された外側ポリマー層が縮まって、縮まった外側ポリマー層が形成される、収縮した二重層チューブ。
【請求項20】
前記縮まった外側ポリマー層は、除去可能である、請求項19に記載の収縮した二重層チューブ。
【請求項21】
請求項19に記載の収縮した二重層チューブ内に構成要素を含む、
組み立て物品。
【請求項22】
前記構成要素は、前記内側
ポリマー層によって完全に密封されている、請求項21に記載の
組み立て物品。
【請求項23】
前記内側ポリマー層の融解開始及び前記拡張された外側ポリマーの融解開始が、示差走査熱量計(DSC)により決定される請求項1に記載の二重層熱収縮チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は一般に、熱収縮チューブ、並びにそのような熱収縮チューブを製造する方法及び使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱収縮チューブは一般に、管形に押出しされて拡張されたプラスチック材料を含む。押出しされて拡張されたチューブは、所与の温度に加熱すると収縮する(すなわち、直径が減少する)ように設計されている。したがって、熱収縮チューブは様々な機能を果たすことができる。熱収縮チューブは、様々な要素を密に覆い、遮断する(例えば、それらを摩耗から保護し、断熱、薬品遮断、遮湿、及び/又は電気絶縁をもたらす)緊密な保護外被を提供することができ、或る特定の要素をまとめて(すなわち、同じ熱収縮チューブ内に)束ねるのに役立つ場合があり、或る特定の要素を他の要素から封止/隔離するのに役立つ場合があり、2つの要素、例えば、2本のチューブを互いに繋ぎ合わせ/融合するのに使用することができ、下にある材料の特性を(例えば、別の材料を取り囲んで、その材料も同様に収縮させることによって)変更するのに役立つ場合がある。これらの性能により、上記チューブは様々な目的に有用となり、熱収縮チューブは、様々な分野、例えば、環境分野、医療分野、化学分野、電気分野、光学分野、電子分野、航空宇宙分野、自動車分野、及び電気通信分野の全体にわたって使用される。医療の面では、熱収縮チューブは、体内に挿入されるますます小型になっているより複雑なデバイス(例えば、カテーテル、内視鏡等)の設計において特に有益である。
【0003】
所与の用途への熱収縮チューブの適性は、少なくとも部分的に、特に熱に曝した後のチューブの物理的特性に依存する。特に、二重層熱収縮チューブは、外側熱収縮チューブ/層を備え、これは有利には、熱を加えると流動化する溶融する内側チューブ/層の周りで縮まって、下にある構成要素(複数の場合もある)を適切に密封する。流動化した熱収縮ポリマー材料における空隙若しくは不規則性、又は下にある構成要素(複数の場合もある)の周りの熱収縮材料の冷却時に発生する空隙若しくは不規則性により、熱収縮チューブは、その意図された目的に対して効果がなくなる場合がある。回復するチューブ/層よりも内側チューブ/層が早期に溶融すると、又は外側チューブ/層の回復力が高すぎると、チューブを加熱した際のポリマーの流動により、回復したチューブ長さの許容することができない増加だけでなく、チューブ端部からの溶融したポリマーの溢流が引き起こされることになる。内側チューブのポリマーが十分に変形可能でないときに外側チューブ/層の回復が起こると、又は外側チューブ/層の回復力が低すぎると、下にある構成要素は適切に密封されない可能性がある。
【0004】
下にある構成要素(複数の場合もある)の適切な密封を確実にする代替的な熱収縮チューブ設計、及び熱収縮チューブが所望の通りに機能することを確実にする方法、例えば下にある構成要素(複数の場合もある)の適切な密封をもたらす方法を提供することが有利であると考えられる。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、本明細書において「二重層熱収縮チューブ」とも呼ばれる、第2の外側チューブ/層内に第1の内側チューブ/層を備える(すなわち、「チューブ内チューブ」構造)複合熱収縮チューブを提供する。本開示の目的のために、内側部分は、「内側チューブ」、「内側ポリマーチューブ」、「内側層」、又は「内側ポリマー層」と呼ばれる。同様に、外側部分は、拡張又は配向された「外側チューブ」、「外側ポリマーチューブ」、「外側層」、又は「外側ポリマー層」と呼ばれる。第1のチューブ/層及び第2のチューブ/層は、二重層熱収縮チューブとして配置された場合に、第1の内側層が熱を受けて溶融して流動化し、第2の外側層が確実に縮む(効果的な熱収縮チューブとして機能する)ように設計され、或る特定のパラメーターに基づいて独自に評価される。この設計により、熱を加えると、下にある1つ以上の構成要素の適切な密封及び保護がもたらされる。さらに、この設計により、チューブの長さの変化、第1の内側層の溢流、及び回復に際しての空隙の存在が制御可能となり得る。有利には、本明細書において記載されるように作製され、述べられた条件下で回復した二重層熱収縮チューブは、最適な密封特性(空隙が少なく、溢流が殆どない)を示すことができ、外側層の回復した長さの増加は、その元の長さの約20%未満である。
【0006】
本開示は、限定されるものではないが、以下の実施の形態を含む。
【0007】
実施の形態1:厚さt1及び外径D1を有する内側ポリマー層と、厚さt2’及び外径D2’を有する拡張された外側ポリマー層とを備え、ポリマーチューブを、D2’-2(t2’)>D1となるように、選択された温度でD2からD2’まで及びt2からt2’まで拡張させることによって得られる、二重層熱収縮チューブであって、二重層熱収縮チューブの断面からリングを切り出し、切れ目を入れて矩形物にし、切離端で引張グリップによりDMA内で把持し、内側ポリマー層の融解吸熱の開始(DSCにより決定される)から拡張された外側ポリマー層の融解吸熱の開始(DSCにより決定される)まで1Hzの周波数で3℃/分の温度スイープに供すると、1℃超で、かつ12℃未満である、二重層熱収縮チューブ。
【0008】
実施の形態2:拡張された外側ポリマー層は、フルオロポリマーを含む、実施の形態1に記載の二重層熱収縮チューブ。
【0009】
実施の形態3:拡張された外側ポリマー層は、PTFE、FEP、PFA、PEEK、PVDF、及びそれらの組合せからなる群から選択されるフルオロポリマーを含む、実施の形態2に記載の二重層熱収縮チューブ。
【0010】
実施の形態4:拡張された外側ポリマー層は、ポリエステルを含む、実施の形態1~3のいずれかに記載の二重層熱収縮チューブ。
【0011】
実施の形態5:拡張された外側ポリマー層は、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)を含む、実施の形態4に記載の二重層熱収縮チューブ。
【0012】
実施の形態6:内側ポリマー層は、フルオロポリマーを含む、実施の形態1~5のいずれかに記載の二重層熱収縮チューブ。
【0013】
実施の形態7:内側ポリマー層は、PFA、FEP、EFEP、PVDF、及びそれらの組合せからなる群から選択されるフルオロポリマーを含む、実施の形態6に記載の二重層熱収縮チューブ。
【0014】
実施の形態8:内側ポリマー層は、ポリオレフィンを含む、実施の形態1~7のいずれかに記載の二重層熱収縮チューブ。
【0015】
実施の形態9:内側ポリマー層は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、及びそれらの組合せからなる群から選択されるポリオレフィンを含む、実施の形態8に記載の二重層熱収縮チューブ。
【0016】
実施の形態10:拡張された外側ポリマー層は、PTFEを含むか、又は本質的にPTFEからなり、かつ内側ポリマー層は、PFAを含むか、又は本質的にPFAからなる、実施の形態1に記載の二重層熱収縮チューブ。
【0017】
実施の形態11:拡張された外側ポリマー層は、PTFEを含むか、又は本質的にPTFEからなり、かつ内側ポリマー層は、FEPを含むか、又は本質的にFEPからなる、実施の形態1に記載の二重層熱収縮チューブ。
【0018】
実施の形態12:拡張された外側ポリマー層は、PFAを含むか、又は本質的にPFAからなり、かつ内側ポリマー層は、FEPを含むか、又は本質的にFEPからなる、実施の形態1に記載の二重層熱収縮チューブ。
【0019】
実施の形態13:拡張された外側ポリマー層は、PEEKを含むか、又は本質的にPEEKからなり、かつ内側ポリマー層は、FEPを含むか、又は本質的にFEPからなる、実施の形態1に記載の二重層熱収縮チューブ。
【0020】
実施の形態14:拡張された外側ポリマー層は、FEPを含むか、又は本質的にFEPからなり、かつ内側ポリマー層は、EFEPを含むか、又は本質的にEFEPからなる、実施の形態1に記載の二重層熱収縮チューブ。
【0021】
実施の形態15:拡張された外側ポリマー層は、FEPを含むか、又は本質的にFEPからなり、かつ内側ポリマー層は、PVDFを含むか、又は本質的にPVDFからなる、実施の形態1に記載の二重層熱収縮チューブ。
【0022】
実施の形態16:拡張された外側ポリマー層は、熱収縮した後に除去可能である、実施の形態1~15のいずれかに記載の二重層熱収縮チューブ。
【0023】
実施の形態17:内側ポリマー層及び拡張された外側ポリマー層の一方又は両方は、フィラーを含む、実施の形態1~16のいずれかに記載の二重層熱収縮チューブ。
【0024】
実施の形態18:内側ポリマー層及び拡張された外側ポリマー層の一方又は両方は、ポリマーのブレンドを含む、実施の形態1~9及び16~17のいずれかに記載の二重層熱収縮チューブ。
【0025】
実施の形態19:実施の形態1~18のいずれかに記載の二重層熱収縮チューブを加熱することによって作製される収縮した二重層チューブであって、内側ポリマー層が溶融して、内側密封層が形成され、かつ拡張された外側ポリマー層が縮まって、縮まった外側ポリマー層が形成される、収縮した二重層チューブ。
【0026】
実施の形態20:縮まった外側ポリマー層は、除去可能である、実施の形態19に記載の収縮した二重層チューブ。
【0027】
実施の形態21:実施の形態19~20のいずれかに記載の収縮した二重層チューブ内に構成要素を含む、密封された構成要素。
【0028】
実施の形態22:構成要素は、内側密封層によって完全に密封されている、請求項21に記載の密封された構成要素。
【0029】
実施の形態23:構成要素を密封する方法であって、実施の形態1~18のいずれかに記載の二重層熱収縮チューブを構成要素の周りに適用することと、二重層収縮チューブを加熱することと、得られる密封された構成要素を冷却することとを含む、方法。
【0030】
実施の形態24:二重層熱収縮チューブの適性を評価する方法であって、厚さt1及び外径D1を有する内側ポリマー層と、厚さt2’及び外径D2’を有する拡張された外側ポリマー層とを備える二重層熱収縮チューブを提供することと、二重層熱収縮チューブの断面からリングを切り出し、リングに切れ目を入れて矩形物にし、矩形物を配置して、その切離端で引張グリップによりDMA内で把持することと、矩形物を内側ポリマー層の融解吸熱の開始(DSCにより決定される)から拡張された外側ポリマー層の融解吸熱の開始(DSCにより決定される)まで1Hzの周波数で3℃/分の温度スイープに供することと、内側ポリマー層の融解吸熱と拡張された外側ポリマー層の融解吸熱との間の差が1℃超で、かつ12℃未満である場合に、二重層熱収縮チューブが、下にある構成要素の良好な密封に適していると判断することとを含む、方法。
【0031】
本開示のこれらの及び他の特徴、態様及び利点は、以下で簡潔に記載される添付の図面と併せて以下の詳細な説明を読むことで明らかとなり得る。本発明は、上述の実施の形態の2つ、3つ、4つ又はそれ以上の任意の組合せ、及び、本明細書中の具体的な実施の形態の記載においてかかる特徴又は要素を特定して組み合わせているかにかかわらず、本開示に記載される任意の2つ、3つ、4つ、又はそれ以上の特徴又は要素の組合せも含むものである。本開示は総合的に読むことが意図され、そのためその様々な態様及び実施の形態のいずれかにおいて、文脈上明示された場合を除き、開示される本発明の任意の分離可能な特徴又は要素は組み合わせることができることが意図されているとみなす。本発明の他の態様及び利点は以下により明らかとなろう。
【0032】
本発明の実施形態を理解するために、添付の図面について言及する。これらは、必ずしも正しい縮尺で描かれているものではなく、図面中、参照符号は、本発明の例示的な実施形態の構成要素を表している。図面は、単なる例示であり、本発明を限定するように解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本開示の或る特定の実施形態による二重層熱収縮チューブ10の一部の一般的な図である。
【
図2】ポリマーチューブ11を拡張して、拡張されたチューブ12を得る方法の概略図である(断面図において示される)。
【
図3】本開示の或る特定の実施形態による二重層熱収縮チューブ10の概略図である(断面図において示される)。
【
図4】本開示の或る特定の実施形態による方法の一般的な図である。
【
図5】比較例1の二重層チューブのDMA温度スイープのプロットとともに、tanδ面積の計算を示す図である。
【
図6】実施例1からの二重層熱収縮チューブのDMAスイープからの温度に対する貯蔵弾性率のプロットを示す図である。
【
図7】実施例4の二重層チューブのDMA温度スイープのプロットとともに、235℃から323℃までのtanδ面積の計算を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
ここで、以下に本発明を更に詳しく説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に示される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示を徹底した完全なものにし、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるために提示されるものである。本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合に、単数形("a"、"an"、及び"the")は、文脈上別段の明示的な規定がない限り、複数の指示対象を含む。
【0035】
本開示は、第1の内側層及び第2の外側層を備える二重層熱収縮チューブを提供する。二重層熱収縮チューブの第1の内側層は、高められた温度で溶融し、流動化するのに対して、第2の外側層は縮み、それにより下にある構成要素又は部品を密封する。本開示の発明者らは、二重収縮チューブを配合し、チューブをその熱収縮能における展開前に(すなわち、その「回復」前に)評価する体系的な方法を開発した。特に、内側層及び外側層の両方の化学組成及び物理的特質を考慮することにより、良好な密封性能を示す二重層チューブが提供され得る。
【0036】
例えば、限定されるものではないが、内側層が、回復する/外側層に対して早期に溶融する場合若しくは外側層の回復力が高すぎる場合の回復したチューブ長さの許容することができない(例えば、元のチューブ長さの20%超の)増加につながる内側層のポリマー流動、又は内側チューブのポリマーが十分に変形可能でないときに外側チューブの回復が起こる場合若しくは外側層の回復力が低すぎる場合に下にある構成要素が適切に密封されないことを含め、様々な特徴が、二重層チューブが良好な密封性能を発揮する能力に影響を与える。有利には、本明細書において提供される方法及びチューブは、非等温環境における両方の層の溶融/流動特質及び回復特質を考慮するため、熱収縮用途において優れた物理的特性及び機能的特性を発揮し得るチューブが提供される。
【0037】
二重層熱収縮チューブの一般的な概略図を
図1に示す。そこに示されるように、二重層熱収縮チューブ10は、拡張された外側層12及び内側層14を備える。内側層14の外面の少なくとも一部は、典型的には、拡張された外側層12の内面の少なくとも一部と接触している。或る特定の実施形態においては、内側層14の外面の実質的に全て(全てを含む)は、典型的には、拡張された外側層12の内面の少なくとも一部と接触している。有利には、幾つかの実施形態においては、これらの層は互いに(例えば、二重層熱収縮チューブ10の全長に沿って)直接接触しており、その間に空間はない。二重層熱収縮チューブ10の全体のサイズは多岐にわたり得る。本明細書において記載される原理は、広範なサイズのチューブに適用可能である。特定の実施形態においては、本明細書において提供される(回復前の)二重層熱収縮チューブの全体の直径は、約2mm~約20mm、例えば、約4mm~約10mmの範囲である。
【0038】
熱収縮チューブ10の拡張された外側層12は、拡張された(例えば、配向された)熱収縮可能なチューブである。例えば、以下に概説されるように、拡張された押出チューブであり得る。拡張された外側層12は一般に、結晶化又は架橋が可能であり、その後、半径方向により大きな直径(これはチューブの急冷によって維持される)へと拡張されるポリマー又はポリマーブレンドを含む。適切なポリマーとしては、熱可塑性材料が挙げられる。層12は、例えば、フルオロポリマー、特に熱可塑性の溶融加工可能なフルオロポリマーを含み得る。適切なフルオロポリマーは既知であり、限定されるものではないが、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリフッ化ビニリデン、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンターポリマー(THV)、ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(エチレン-co-テトラフルオロエチレン)(ETFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン、テトラフルオロエチレン、及びヘキサフルオロプロピレン(EFEP)、テトラフルオロエチレン及びペルフルオロメチルビニルエーテルのコポリマー(MFA)、並びにそれらのコポリマー及び誘導体が挙げられる。幾つかの実施形態においては、拡張された外側層12は、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)等のポリエステル又はそれらの誘導体若しくはコポリマーを含む。拡張された外側層12についての追加のポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、及びPEEK等のポリアリールエーテルケトンである。或る特定の実施形態においては、拡張された外側層12は、単一の種類のポリマーを含み、他の実施形態においては、拡張された外側層12は、上記で参照されたポリマーの2つ以上を(例えば、ブレンドの形で)含む。幾つかの実施形態においては、拡張された外側層12は、1つ以上の添加剤、例えば、顔料、染料、フィラー等を更に含み得る。顔料、染料、及びフィラーの或る特定の非限定的な例としては、例えば、グラフェン、カーボンナノチューブ、粘土、有機粘土、シリカ、ケイ酸塩、ゼオライト、及び滑りを促進する、色を付与する、導電性を付与する、又は抗微生物特質を付与する機能性添加剤が挙げられる。
【0039】
拡張された外側層12は、t
2’の壁厚及びD
2’の外径を有する。
図3に示されるように、拡張された外側層12は、例えば、チューブ11を提供し、それを拡張させて、その壁厚t
2を減少させ、その外径D
2を増大させることによって作製され得る。チューブ11を提供する方法は特に限定されず、幾つかの実施形態においては、チューブ11は押出チューブである。チューブを拡張する方法は当該技術分野において既知であり、本開示は、拡張された外側層12を提供する特定の方法に何ら限定されない。典型的には、チューブ11を(例えば、機械的手段によって)半径方向に拡張して、熱収縮材料(すなわち、特定の温度以上に加熱するとその非拡張形態に戻り、その結果「収縮」する材料)として機能し得る拡張されたチューブ材料を提供する。拡張は、チューブ11の製造(例えば、押出)とインラインであるか、又はオフライン(すなわち、チューブ11の製造とは独立して行われる)のいずれかであり得る。拡張は、限定されるものではないが、約250℃より高い温度、又は約300℃より高い温度(例えば、或る特定の実施形態においては約330℃~350℃)を含む様々な温度(典型的には、高められた温度)で行われ得る。
【0040】
チューブを半径方向に拡張するあらゆる手段は、本発明により包含されることが意図される。或る特定の実施形態においては、チューブは、チューブを内側から外側に加圧して、チューブ壁へと応力を伝えることによって半径方向に拡張される。この加圧は、チューブの内側と外側との間に差圧を与えることができるあらゆる手段によって行われ得る。このような差圧は、チューブの中心に大気圧より高い圧力をかけるか、チューブの外側に大気圧より低い圧力をかけるか、又はその2つの組合せによって引き起こされ得る。チューブの壁に誘起される応力により、チューブは外側に拡張される。チューブが拡張された状態を保持し、更なる熱サイクルを受けるまで回復しないように拡張の速度が制御され得る。
【0041】
チューブ11が拡張される程度は、チューブの意図される用途に依存し、少なくとも部分的には、それと組み合わされる内側層の直径(D1)に依存する。チューブ11は一般に、選択された温度でD2’-2×t2’>D1となるように拡張される。例えば、幾つかの実施形態においては、チューブは、その元の(非拡張の)直径D2の約1.05倍~その元の(非拡張の)直径D2の約10倍、例えば、その元の(非拡張の)直径D2の約1.5倍~その元の(非拡張の)直径D2の約4倍、又はその元の(非拡張の)直径D2の約2倍~その元の(非拡張の)直径D2の約4倍の外径D2’まで拡張される。この拡張により、外径D2のD2’への増加がもたらされるだけでなく、壁厚の(t2からt2’への)減少ももたらされる。D2及びt2の値は特に限定されず、本明細書において概説される原理は、広範なサイズを有するチューブに適用可能である。幾つかの実施形態においては、D2は約1mm~約30mmである。幾つかの実施形態においては、D2’は約2mm~約50mmである。幾つかの実施形態においては、t2’は約100μm~約500μmであるが、開示された二重層チューブの拡張された外側層は、そのような直径及び壁厚に決して限定されない。
【0042】
幾つかの実施形態においては、拡張された外側層12は、密封される物品上での回復後に容易に除去され、引き裂かれ、又は剥ぎ取られ、その結果、物品を密閉する内側層14しか残らないように配合される。このような除去可能性としては、例えば、回復後に外側層を引き剥がすのが簡単であることを挙げることができる。このような除去可能な拡張された外側層の或る特定の適切な材料及び作製方法は、例えば、Roofらの米国特許第9,440,044号(引用することにより本明細書の一部をなす)において記載されている。除去し易さを促進するために、幾つかの実施形態においては、拡張された外側層12の材料は、内側層14の材料と殆ど不相容性であるように、例えば、2つの層間の顕著な接着(これは、例えば、両方の層がフルオロポリマー層である場合に起こる可能性が高い)を回避するように選択される。除去可能な外側層を提供し得るそのような不相容性の非限定的な一例は、PEEK外側層及びFEP内側層である。幾つかの実施形態においては、材料は、外側層が回復後に容易に除去することができないように選択される(例えば、密封された構成要素とともに残留することが意図される)。
【0043】
二重層熱収縮チューブ10の内側層14は、限定されるものではないが、押出チューブを含むチューブである。幾つかの実施形態においては、層14は拡張も又は配向もされていない(けれども、二重層熱収縮チューブの製造の間に、幾つかの実施形態においては、層は二重層熱収縮チューブを提供するのに或る程度拡張されていてもよい)。内側層14は、典型的には、溶融加工可能なポリマーを含み、特に、外側層の材料が回復する前に又は回復する温度範囲で軟化して流動化し始めるポリマー又はポリマーのブレンドから選択される。内側ポリマー層14は、例えば、フルオロポリマー、特に熱可塑性の溶融加工可能なフルオロポリマーを含み得る。適切なフルオロポリマーは既知であり、限定されるものではないが、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリフッ化ビニリデン、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンターポリマー(THV)、ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(エチレン-co-テトラフルオロエチレン)(ETFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン、テトラフルオロエチレン、及びヘキサフルオロプロピレン(EFEP)、テトラフルオロエチレン及びペルフルオロメチルビニルエーテルのコポリマー(MFA)、並びにそれらのコポリマー及び誘導体が挙げられる。内側層12は、幾つかの実施形態においては、ポリアミド、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)又はポリエチレンテレフタレート(PET)を含み得る。幾つかの実施形態においては、二重層熱収縮チューブ10の内側層12は、ポリオレフィン、特に、限定されるものではないが、ポリエチレン又はポリプロピレンを含む熱可塑性の溶融加工可能なポリオレフィンを含み得る。或る特定の実施形態においては、内側ポリマー層14は、単一の種類のポリマーを含み、他の実施形態においては、内側ポリマー層14は、2つ以上のポリマーを(例えば、ブレンドの形で)含む。
【0044】
幾つかの実施形態においては、内側ポリマー層14は、1つ以上の添加剤、例えば、顔料、染料、フィラー等を更に含み得る。顔料、染料、及びフィラーの或る特定の非限定的な例としては、例えば、グラフェン、カーボンナノチューブ、粘土、有機粘土、シリカ、ケイ酸塩、ゼオライト、及び滑りを促進する、色を付与する、導電性を付与する、又は抗微生物特質を付与する機能性添加剤が挙げられる。例えば、一実施形態においては、内側層14はカーボンブラックを(例えば、約1重量%~約10重量%のような比較的少量で)含む。
【0045】
内側ポリマー層14のサイズは多岐にわたり得るが、一般に、拡張されたチューブ/層14の内径内に嵌まるほど外径D1が十分に小さい。同様に、内側ポリマー層14の壁厚t1は特に限定されない。幾つかの実施形態においては、t1は約25μm~約900μmであるが、本明細書において提供される二重層チューブはそのような厚さに限定されない。幾つかの実施形態においては、t1はt2’(すなわち、拡張された外側層12の厚さ)よりも大きく、他の実施形態においては、t1はt2’よりも小さい。
【0046】
本開示によれば、拡張された外側層12及び内側層14は、適切な二重層熱収縮チューブを提供するように設計された特定の様式で選択され、組み合わされる。各層について選択された個々の樹脂の特性だけでなく、外側ポリマー層12の拡張の様式(例えば、拡張の速度、程度、及び温度)も、得られる複合熱収縮チューブ10の全体的な性能に影響を与える。
【0047】
本発明者らは、例えば、有利には溶融/流動化するように設計された内側層14の溶融特性と、有利にはあらゆる下にある構成要素(複数の場合もある)を効果的に密封するように設計された拡張された外側層12の熱収縮特性とを考慮に入れて、或る特定の相互作用を評価した。内側層の溶融/流動化と、拡張された外側層の回復温度及び回復力との間の不一致は、構成要素の密封の間の(例えば、限定されるものではないが、回復/熱収縮したチューブ内での空隙の存在、チューブの許容することができない伸び、及び回復したチューブの端部の外側での内側層ポリマーの溢流を含む)問題を引き起こし得る。本開示の原理は、二重層熱収縮チューブの様々な特性のバランスを取る上での或る特定のそのような難点に対処し、良好な密封を得るのに役立つ。
【0048】
例えば、そのような難点としては、限定されるものではないが、内側層ポリマーの溶融範囲が非常に大きくなり得る(例えば、一部のポリマーについては40℃~50℃に及ぶ)ため、加熱中に法線力が加えられると、溶融しているポリマー塊の大部分が流動化して部品を効果的に密封することができる点を決定することが困難となるという事実が挙げられる。さらに、収縮チューブによって加えられる力だけでなく溶融粘度も、それ自体が温度の関数である。二重収縮チューブを加熱する方法が、現場応用において(すなわち、ヒートガンの使用により)安定した温度で行われない場合に、状況は更に複雑になる可能性がある。さらに、内側層ポリマーの粘度は、温度並びにポリマーの種類及びグレードによって多岐にわたることになり、外側層の回復力は、温度並びに壁厚及び拡張のプロセスパラメーターの関数でもある。さらに、回復プロセス自体は非等温であり得る。
【0049】
本開示によれば、非等温環境における両方の層の複雑な相互作用を考慮し、上記で参照された考慮事項を考慮に入れる評価プロセスから得られる二重層熱収縮チューブが提供され得る。より具体的には、開示された方法は、広範囲の温度にわたって複合構造物全体の動的機械的応答を評価することにより、溶融/流動化特質及び回復特質を同時に考慮する。このように、複合構造物の温度依存的変形及び流動化の正味の効果に基づいて、二重層熱収縮チューブを設計することができる。本発明者らは、二重層熱収縮チューブ内での複雑な現象の相互作用を理解することができる方法を認定したので、溶融する内側層を(熱収縮の展開の間に)回復する外側層によって構成要素の周りで効果的に変形させることができる。したがって、開示された方法を使用して製造された二重層熱収縮チューブを、回復による密封品質について最適化することができる。この方法により、迅速なDMA試験において外側の回復可能なチューブと内側の溶融するチューブとを組み合わせて、適切/最適な組合せを決定することにより、二重層熱収縮チューブの効率的な設計が可能となる。
【0050】
二重層熱収縮チューブの製造方法を
図4に示す。上記で参照されるように、この方法は一般に、内側層チューブを拡張された外側チューブと組み合わせて、組み立てられた二重層チューブを得ることを含む。工程21(チューブの作製、例えば樹脂のチューブへの押出)、工程22(チューブの拡張)、及び工程23(チューブの作製、例えば樹脂のチューブへの押出)は、開示された方法の文脈において任意であり(すなわち、工程21、工程22、及び/又は工程23を介して、内側層チューブ及び外側層の拡張されたチューブの一方又は両方を作製することができる)、又はこれらのチューブを提供し、組み立て工程24に供することができる。
【0051】
組み立て工程24は、内側層と外側層とを両者ともチューブ形で組み合わせることを含む。これらの層は、従来の方式において組み合わされ得る。例えば、幾つかの実施形態においては、内側層14を、拡張された外側層12へと挿入して、二重層熱収縮チューブを形成する。幾つかの実施形態においては、内側層14は、例えば、熱及び/又は圧力を加えることによって、拡張された外側層12内で及び拡張された外側層12へと或る程度は拡張される。幾つかの実施形態においては、拡張された外側層12を、例えば外側層を加熱することによって、内側層14上で部分的に回復させる。
【0052】
有利には、組み立て時に、所与の二重層熱収縮チューブを評価26に供して、そのチューブが有効な熱収縮チューブとして機能するかどうかを判断する(ここで、本明細書における目的で規定される、例えば熱収縮する材料として有効な熱収縮チューブは、空隙が少ないこと、溢流が殆どないこと、回復した長さの変化が元の長さの約20%未満であることを示す)。この段階で実施される独自の評価は、少なくとも部分的に、加熱ランプを経るDMA機器内での二重層熱収縮チューブのtanδ曲線下面積の評価に基づいている。複合チューブについて、tanδは、内側ポリマー層14の軟化及び溶融と、外側層12の回復との両方によって影響されることが見出された。増加する温度ランプにおいて、内側層が軟化及び溶融するにつれて、tanδは急速に増加する。したがって、tanδの温度での積分が大きいほど、加熱したときに内側チューブのポリマーが自由に流動する傾向が高くなる。最終的に拡張温度に達すると、外側層12によって及ぼされる回復力により、ポリマーの流動の拘束が高くなるため、複合構造物のtanδの減少が引き起こされることになる。外側チューブの貯蔵弾性率E’は、拡張温度に達するまで温度とともに減少する。この時点で、E’において顕著なキンクが見られ、続いて、外側層が回復するにつれて増加が見られる。E’-T曲線におけるキンクは、事前に拡張されたシートの回復において見られるようなエントロピー弾性に起因している。L. Andena et al., Polym. Eng. Sci, 44, 2004, 1368-1378(引用することにより本明細書の一部をなす)を参照のこと。全ての応力が解放された後に、E’曲線は再び温度とともに減少する。目下、内側チューブの溶融開始から外側チューブの溶融開始までで計算されたtanδ曲線下面積を使用して、これらの競合する現象を説明し得ることが判明した。tanδ曲線下面積の値が約1℃より低い場合に、内側チューブ内のポリマーの移動性は、下にある構成要素を適切に密封するに不十分であることが判明した。この面積の値が約12℃より高いと、内側チューブ内のポリマーが外側チューブの範囲外に自由に流動し、下にある構成要素を適切に密封しないことが判明した。したがって、本開示により目標とされる値は、1℃~12℃、例えば、2℃~12℃、3℃~12℃、4℃~12℃、又は5℃~12℃である。
【0053】
評価26は、評価される組み立てられた二重層チューブを提供することと、組み立てられた二重層チューブをリングに切り出し、切れ目を入れて矩形物にし、引張グリップによって把持し、矩形物の切断端をDMA内で保持して、内側層の融解吸熱の開始(DSCにより決定される)から外側層の融解吸熱の開始(DSCにより決定される)まで1Hzの周波数で3℃/分の温度スイープに供する場合のtanδ曲線下面積を評価することとを含む。内側層及び外側層の組合せは、a)tanδ曲線下面積が約12℃未満で、かつ約1℃を超える場合に内側層及び外側層の適切な組合せを提供すると判断される。内側層及び外側層の所与の組合せがそのような特性を示すことを確認することによって、本発明者らは、回復時に許容可能な熱収縮/密封特性、例えば、空隙が少なく、溢流が殆どないとともに、回復した長さの変化が元の長さの約20%未満であることを示すことになる二重層熱収縮チューブが製造されたことを合理的に予測することができることを見出した。この新しい手順では、DMA内で外側の回復可能な層と内側の溶融する層とを組み合わせ、結果を評価することによって、二重層熱収縮チューブの迅速な設計が可能となり、そのようなチューブの生産量を生産して試験する必要がない。
【0054】
本明細書において提供される二重層熱収縮チューブは、様々な分野において利用可能である。例えば、これらは、様々な医療の面だけでなく、環境分野、医療分野、化学分野、電気分野、光学分野、電子分野、航空宇宙分野、自動車分野、及び電気通信分野において使用され得る。したがって、本開示は、例えば、構成要素(例えば、環境用構成要素、医療用構成要素、化学用構成要素、又は電気用構成要素、光学用構成要素、電子用構成要素、航空宇宙用構成要素、自動車用構成要素、又は電気通信用構成要素)の周りで二重層熱収縮チューブを回復させることによって作製された、チューブ内で密封されたそのような構成要素を含む。同様に、構成要素を効果的に密封する方法(例えば、本明細書において述べられた基準を満たす方法)は、本開示により包含される。これらの方法により、本明細書において提供される2つの層(回復した外側層及び溶融した内側層)によって密封された構成要素を得ることができ、ここで、幾つかの実施形態においては、回復した外側層は除去可能であり、最終的な密封された構成要素は、内側層材料のコーティングのみを含み得る。
【実施例】
【0055】
本発明の態様は、以下の実施例によってより完全に説明されるが、これらは本発明の或る特定の態様を説明するために示され、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【0056】
TA InstrumentsのDSC Q2000を使用して、複合試料の内側チューブ及び外側チューブの両方の熱的挙動を研究し、内側チューブ及び外側チューブの両方についての溶融域の開始を決定した。試料を最初に-60℃で平衡化し、10℃/分の一定速度で400℃まで昇温させた。次に、TA InstrumentsのUniversal Analysis 2000(バージョン4.5A)ソフトウェアを使用して、溶融域の開始を決定した。
【0057】
引張モードで動作するフィルム引張治具を備えたTA InstrumentsのQ800 DMAを使用して、複合チューブの熱機械的特性を決定した。ここで、対象となる主な特性はtanデルタ(δ)である。複合チューブをその長さに対して垂直に切断して環を形成し、引き続きそれを切り開いて矩形の試験片にした。矩形の試験片の両方の層を引張グリップに配置したため、チューブの切り口周りはグリップの平面と平行であった。3℃/分の一定速度で温度ランプを行い、試験周波数は1Hzであった。温度スキャンが完了したら、DMAデータをTA InstrumentsのTRIOSソフトウェア(バージョン4.3)にインポートした。生データファイルをMSのExcel 2016にエクスポートした。次に、ExcelデータファイルをOriginLabのOriginPro 2020(バージョン9.7)データ分析及びグラフ作成ソフトウェアにインポートし、温度に対するtanデルタをプロットした。OrginLabの積分ガジェットを使用して、温度に対するtanデルタの面積を計算した。ここで、最下限の温度限界は、DSCによって決定された内側チューブの融解吸熱の開始温度であり、最上限の温度限界は、DSCによって決定された外側チューブの融解吸熱の開始温度であり、対象領域(ROI)は、これらの2つの限界の間である。全ての計算について、ベースラインをy=0(すなわち、tanδ=0)に設定した。
【0058】
密封品質を以下のように評価した。約15cmの長さを有する複合チューブを、複合チューブの内径の60%±10%に等しいマンドレル上に配置した。強制空気炉を使用して、初期拡張温度よりも高い温度で回復を行った。10分時点で、密封されたマンドレルを炉から取り出し、放置して周囲温度まで冷やした。冷えたら、回復した複合チューブの外側層を測定して、長手方向の変化パーセントを決定した。初期長さの15%を超える長さの増加、又は初期長さの2%を超える長さの減少は、不良な密封の指標であった。次に、目視検査を行って、大きな空隙、すなわち2mmの直径を超える空隙が存在しないことを確認した。回復した外側チューブの各端部からの溶融したポリマーの溢流の幅が5mmを超える場合は、密封が不良であると見なした。
【0059】
比較例1
3.59mmの初期外径を有する二重層熱収縮チューブを、330℃から350℃の間で2:1の比率にて拡張されたPTFEの外側層(104μmの壁厚)及びPFAの内側層(315μmの壁厚)を用いて製造した。DSC吸熱からの融解の開始は、PFAについて265℃であると決定された。DSC吸熱からの融解の開始は、PTFEについて323℃であると決定された。回復を350℃の熱風循環炉内で5分間行った。元の複合チューブの周縁から切断して切り開いた矩形の試料において、DMA温度スイープを1Hzで行った。265℃から323℃までのtanδ曲線下面積は、19.48℃であると決定された。E’曲線は、回復温度付近で正の傾きを示した。1.74mmの直径を有するマンドレル上で350℃にて回復/熱収縮させると、マンドレルの密封は、空隙を有するとともに-4.6%の長さの変化を有するが、PFA層のかなりの溢流を伴うことが判明した。
図5は、二重層熱収縮チューブのDMA温度スイープを示し、265℃から323℃までのtanδ面積の計算を示している。
【0060】
実施例1
3.52mmの初期外径を有する二重層熱収縮チューブを、330℃から350℃の間で2:1の比率にて拡張されたPTFEの外側層(107μmの壁厚を有する)及びPFAの内側層(219μmの壁厚を有する)を用いて製造した。DSC吸熱からの融解の開始は、PFAについて265℃であると決定された。DSC吸熱からの融解の開始は、PTFEについて323℃であると決定された。チューブを1.48mmのマンドレル上で350℃にて10分間回復/収縮させた。元の複合チューブの周縁から切断して切り開いた矩形の試料において、DMA温度スイープを1Hzで行った。結果を表1に示す。
図6は、二重層熱収縮チューブについての温度に応じた弾性率の変化を示している。
【0061】
実施例2
8.37mmの初期外径を有する二重層熱収縮チューブを、330℃から350℃の間で2:1の比率にて拡張されたPTFEの外側層(162μmの壁厚を有する)及びPFAの内側層(315μmの壁厚を有する)を用いて製造した。DSC吸熱からの融解の開始は、PFAについて265℃であると決定された。DSC吸熱からの融解の開始は、PTFEについて323℃であると決定された。チューブを3.83mmのマンドレル上で350℃にて10分間回復/熱収縮させた。元の複合チューブの周縁から切断して切り開いた矩形の試料において、DMA温度スイープを1Hzで行った。結果を表1に示す。
【0062】
比較例2
5.85mmの初期外径を有する二重層熱収縮チューブを、非拡張PTFEの外側チューブ(365μmの壁厚)及びPVDFの内側チューブ(445μmの壁厚)を用いて製造した。DSC吸熱からの融解の開始は、PVDFについて160℃であると決定された。DSC吸熱からの融解の開始は、PTFEについて323℃であると決定された。二重層熱収縮チューブを4.37mmのマンドレル上で350℃にて10分間回復させた。元の複合チューブの周縁から切断して切り開いた矩形の試料において、DMA温度スイープを1Hzで行った。結果を表1に示す。
【0063】
実施例3
4.22mmの初期外径を有する二重層熱収縮チューブを、330℃から350℃の間で2:1の比率にて拡張されたPTFEの外側層(260μmの壁厚を有する)及びPFAの内側層(315μmの壁厚を有する)を用いて製造した。DSC吸熱からの融解の開始は、PFAについて265℃であると決定された。DSC吸熱からの融解の開始は、PTFEについて323℃であると決定された。チューブを1.91mmのマンドレル上で350℃にて10分間回復/熱収縮させた。元の複合チューブの周縁から切断して切り開いた矩形の試料において、DMA温度スイープを1Hzで行った。結果を表1に示す。
【0064】
比較例3
14.06mmの初期外径を有する二重層熱収縮チューブを、330℃から350℃の間で2:1の比率にて拡張されたPTFEの外側層(251μmの壁厚を有する)及びFEPの内側層(750μmの壁厚を有する)を用いて製造した。DSC吸熱からの融解の開始は、FEPについて235℃であると決定された。DSC吸熱からの融解の開始は、PTFEについて330℃であると決定された。チューブを6.53mmのマンドレル上で350℃にて10分間回復/熱収縮させた。元の複合チューブの周縁から切断して切り開いた矩形の試料において、DMA温度スイープを1Hzで行った。結果を表1に示す。
【0065】
実施例4
4.22mmの初期外径を有する二重層熱収縮チューブを、330℃から350℃の間で2:1の比率にて拡張されたPTFEの外側層(260μmの壁厚を有する)及びFEPの内側層(200μmの壁厚を有する)を用いて製造した。DSC吸熱からの融解の開始は、FEPについて235℃であると決定された。DSC吸熱からの融解の開始は、PTFEについて323℃であると決定された。チューブを1.90mmのマンドレル上で350℃にて10分間回復/熱収縮させた。元の複合チューブの周縁から切断して切り開いた矩形の試料において、DMA温度スイープを1Hzで行った。結果を表1及び表7に示す。
【0066】
比較例4
7.88mmの初期外径を有する二重層熱収縮チューブを、330℃から350℃の間で2:1の比率にて拡張されたPTFEの外側チューブ(200μmの壁厚)及び4%(重量/重量)のカーボンブラックが充填されたPFAの内側層(51μmの壁厚)を用いて製造した。DSC吸熱からの融解の開始は、充填されたPFAについて290℃であると決定された。DSC吸熱からの融解の開始は、PTFEについて323℃であると決定された。二重層熱収縮チューブを4.17mmのマンドレル上で350℃にて10分間回復/熱収縮させた。元の複合チューブの周縁から切断して切り開いた矩形の試料において、DMA温度スイープを1Hzで行った。結果を表1に示す。
【0067】
実施例5
7.88mmの初期外径を有する二重層熱収縮チューブを、330℃から350℃の間で2:1の比率にて拡張されたPTFEの外側チューブ(200μmの壁厚)及び15%(重量/重量)のカーボンブラックが充填されたFEPの内側層(358μmの壁厚)を用いて製造した。DSC吸熱からの融解の開始は、FEPブレンドについて265℃であると決定された。DSC吸熱からの融解の開始は、PTFEについて330℃であると決定された。チューブを2.28mmのマンドレル上で350℃にて10分間回復/熱収縮させた。元の複合チューブの周縁から切断して切り開いた矩形の試料において、DMA温度スイープを1Hzで行った。結果を表1に示す。
【0068】
実施例6
4.19mmの初期外径を有する二重層熱収縮チューブを、180℃から220℃の間で1.6:1の比率にて拡張されたFEPの外側チューブ(435μmの壁厚)及びEFEPの内側層(254μmの壁厚)を用いて製造した。DSC吸熱からの融解の開始は、EFEPについて175℃であると決定された。DSC吸熱からの融解の開始は、FEPについて245℃であると決定された。チューブを1.42mmのマンドレル上で350℃にて10分間回復/熱収縮させた。元の複合チューブの周縁から切断して切り開いた矩形の試料において、DMA温度スイープを1Hzで行った。結果を表1に示す。
【0069】
実施例7
5.95mmの初期外径を有する二重層熱収縮チューブを、330℃から350℃の間で2:1の比率にて拡張されたPTFEの外側チューブ(284μmの壁厚)及びPVDFの内側層(445μmの壁厚)を用いて製造した。DSC吸熱からの融解の開始は、PVDFについて160℃であると決定された。DSC吸熱からの融解の開始は、PTFEについて323℃であると決定された。チューブを2.22mmのマンドレル上で350℃にて10分間回復/熱収縮させた。元の複合チューブの周縁から切断して切り開いた矩形の試料において、DMA温度スイープを1Hzで行った。結果を表1に示す。
【0070】
実施例8
6.29mmの初期外径を有する二重層熱収縮チューブを、180℃から220℃の間で1.3:1の比率にて拡張されたFEPの外側チューブ(262μmの壁厚)及びPVDFの内側層(445μmの壁厚)を用いて製造した。DSC吸熱からの融解の開始は、PVDFについて160℃であると決定された。DSC吸熱からの融解の開始は、FEPについて240℃であると決定された。チューブを2.51mmのマンドレル上で220℃にて10分間回復/熱収縮させた。炉から取り出すと、外側のFEPチューブが内側のPVDFチューブから容易に除去され得ることが分かった。元の複合チューブの周縁から切断して切り開いた矩形の試料において、DMA温度スイープを1Hzで行った。結果を表1に示す。
【0071】
【0072】
本発明の多くの変形形態及び他の実施形態が、上記説明に提示された教示の利益を有する、本発明が関係する技術分野の当業者には思い付くであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、変形形態及び他の実施形態が、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されていることが理解されるべきである。特定の用語が本明細書において用いられているが、それらの用語は、限定の目的で用いられているのではなく、一般的かつ説明的な意味でのみ用いられている。