(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】骨標的抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20241203BHJP
C07K 16/22 20060101ALI20241203BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241203BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241203BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241203BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241203BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20241203BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20241203BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241203BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20241203BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20241203BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20241203BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20241203BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
C07K19/00
C07K16/22
C12N15/62 Z
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12P21/08
A61K47/64
A61K39/395 N
A61P19/00
A61P19/08
A61P19/10
A61P13/12
A61P35/04
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023017271
(22)【出願日】2023-02-08
(62)【分割の表示】P 2019539277の分割
【原出願日】2018-01-19
【審査請求日】2023-03-09
(32)【優先日】2017-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500034653
【氏名又は名称】ジェンザイム・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ファーウェイ・チウ
(72)【発明者】
【氏名】サングヘー・パーク
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ステファノ
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】特許第7227138(JP,B2)
【文献】特表2003-506028(JP,A)
【文献】特表2016-519093(JP,A)
【文献】特表2008-529503(JP,A)
【文献】特表2012-524818(JP,A)
【文献】特表2015-502336(JP,A)
【文献】特表2011-509084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトTGFβ1、TGFβ2、およびTGFβ3に結合する、抗体またはその抗原結合断片であって、配列番号2内の重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列、配列番号6内の軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列、ならびに、前記抗体またはその抗原結合断片の重鎖、および/または前記抗体またはその抗原結合断片の軽鎖のC末端、に連結された1つまたはそれ以上のポリアスパラギン酸(ポリD)ペプチドを含み、そして、前記1つまたはそれ以上のポリDペプチドは、前記重鎖または軽鎖のアミノ酸配列と一体化している、前記抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
(i)重鎖のN末端と一体化しているポリDペプチド、(ii)重鎖のC末端と一体化しているポリDペプチド、または(iii)(i)と(ii)の両方を含む、請求項1に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項3】
軽鎖のC末端と一体化しているポリDペプチドを含む、請求項1または2に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項4】
ポリDペプチドは、ペプチドリンカーを介して重鎖または軽鎖に融合している、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項5】
1つまたはそれ以上のポリDペプチドは、それぞれ独立して2~30個のアスパラギン酸残基を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合断片、および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項7】
TGFβの阻害から利益を得る骨状態を有するヒトを治療するための医薬を製造するための、請求項1~
5のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合断片の使用。
【請求項8】
治療は、ヒトにおける(1)TGFβレベルの低下、(2)TGFβ活性の低下、(3)骨量減少の低下、(4)骨量減少率の低下、(5)骨密度の増加、(6)骨強度の増加
、および(7)IL-11レベルの低下の少なくとも1つをもたらす、請求項
7に記載の使用。
【請求項9】
ヒトは、骨形成不全症、骨量減少もしくは骨粗鬆症、慢性腎臓病、または骨転移を有する癌を有する、請求項
7または
8に記載の使用。
【請求項10】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合断片の重鎖および軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項11】
請求項
10に記載の単離された核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項12】
請求項
11に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項13】
宿主細胞は哺乳動物細胞である、請求項
12に記載の宿主細胞。
【請求項14】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合断片の製造方法であって、
抗体または抗原結合断片の重鎖可変領域および軽鎖可変領域をそれぞれコードする配列を含む、第1および第2のヌクレオチド配列を含む宿主細胞を提供すること、
抗体または抗原結合断片の産生を可能にする条件下で宿主細胞を増殖させること、ならびに
抗体または抗原結合断片を回収すること
を含む、前記製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2017年1月20日に出願された米国仮特許出願第62/448,763号の優先権を主張し、その開示はその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる。2018年1月11日に作成された前記ASCIIコピーは、022548_WO012_SL.txtと名付けられており、75,113バイトである。
【0003】
発明の分野
本発明は、骨標的ペプチドで修飾された抗体、および病態生理学的骨変性を治療するためのそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
適切な骨の発達と維持は、正常な健康にとって重要な要素である。平均的なヒトでは、骨の発達は、骨密度が典型的に最大となる約20歳の年齢まで生じる。その後、骨密度は適切な食事と身体運動が無いと、減少する可能性がある。しかしながら、正常な骨の維持は、古い骨が取り除かれて新しい骨と置き換えられる恒常性の骨代謝回転を必要とする。
【0005】
いまだに、骨の発達と維持に影響し得る数多くの疾患および状態がある。例えば、骨強度が損なわれ、子供の骨が脆弱となり骨折しやすくなる骨形成不全症などの疾患においては、骨の発達が影響を受ける。さらに、加齢に伴って、他の点では健康な個体でも、恒常性の骨代謝回転の欠如を生じ、骨密度が経時的に低下する骨粗鬆症、最終的には脆弱な骨および骨折を招き得る。
【0006】
さらにまた、骨の健康が原発性疾患に付随的に影響を受け、慢性腎臓病(CKD)のような他の併発性続発症に関与している特定の疾患がある。CKDは腎機能が経時的に低下する進行性疾患であり、しばしば骨の健康不良および骨代謝回転速度の変化に関連した心血管疾患を引き起こす。骨の健康を改善する治療が同時に付随する心血管疾患を軽減することが示されている。そのような報告は、正常な骨代謝回転率が、原因とはならないにしても、他の疾患に影響を及ぼし得ることを示唆している。したがって、骨の発達および/または維持を調節するための改善された方法論は、多数の異なる疾患および状態に罹患している個体の健康を改善する上で、広範囲に直接的または間接的な影響を及ぼし得る。
【0007】
TGFβはトランスフォーミング成長因子ベータ(TGFβ)スーパーファミリーの一員であり、哺乳動物の発生時における骨形成において重要である(非特許文献1参照)。TGFβは、恒常性の骨維持にも同様に重要であるように思われる。興味深いことに、TGFβは、CKDの患者ではより高いレベルで発現されることが示されており、これが治療的介入のための現実性のあるターゲットであることが示唆されている。抗TGFβ抗体によるCKDのjckマウスモデルの全身処置は、高い骨代謝回転率の低下を実証した(非特許文献2)。しかしながら、この研究は、骨における抗TGFβ抗体の局在が治療効果を改善し得る程度については調査していない。TGFβが、ほんの数例を挙げても、DNA損傷応答、アレルギー性免疫応答、および創傷上皮化を含む多数の細胞プロセスに関与していることを考えれば、TGFβ活性を制御するためのより標的化されたアプローチが、潜在的な望ましくない副作用を最小限に抑えるために望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Chenら,Int.J.Biol.Sci.8(2):272-88(2012)
【文献】Liuら,J.Bone Miner Res.29(5):1141-57(2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、TGFβ活性を調節するためのより正確なアプローチが、骨の発達および/または維持を調節するための改善された治療を提供するために必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書において提供されるのは、骨を効果的に標的とする抗体、例えば抗TGFβ抗体である。第1の側面において、本開示は、重鎖、軽鎖、および1つまたはそれ以上のポリアスパラギン酸(ポリD)ペプチドを含む抗体、またはその抗原結合断片を提供する。特定の1つの実施態様では、抗体または抗原結合断片は、重鎖、軽鎖、ならびに重鎖および/または軽鎖のC末端に連結された1つまたはそれ以上のポリアスパラギン酸(ポリD)ペプチドを含む。
【0011】
1つの実施態様では、抗体またはその抗原結合断片は、同じ重鎖および軽鎖を有するが1つまたはそれ以上のポリDペプチドを欠く抗体と比較して、骨への局在化において少なくとも2倍の増加を示す。
【0012】
1つの実施態様では、1つまたはそれ以上のポリDペプチドは、化学的コンジュゲーションによって抗体またはその抗原結合断片に連結されている。別の実施態様では、1つまたはそれ以上のポリDペプチドは、重鎖のヒンジ領域で連結されている。さらなる実施態様では、1つまたはそれ以上のポリDペプチドは、軽鎖のN末端またはC末端に連結されている。なおさらなる実施態様においては、1つまたはそれ以上のポリDペプチドは、1つまたはそれ以上のスペーサー/リンカー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)スペーサーおよびペプチドリンカー)によって、抗体またはその抗原結合断片に連結されている。
【0013】
1つの実施態様では、1つまたはそれ以上のポリDペプチドは、重鎖のアミノ酸配列と一体化しており、および/または1つまたはそれ以上のポリDペプチドは、軽鎖のアミノ酸配列と一体化している。アミノ酸配列と「一体化」しているポリDペプチドは、同じポリペプチド鎖に含まれる。例えば、一体化したポリDペプチドは、組換えDNAプラスミドにコードされる、重鎖または軽鎖配列と同じRNA鎖から翻訳される。1つの実施態様では、1つまたはそれ以上のポリDペプチドは、重鎖のN末端と一体化しており、および/または1つまたはそれ以上のポリDペプチドは、重鎖のC末端と一体化している。2つ以上のポリDペプチドが、0個、1個以上の他のアミノ酸残基(すなわち、アスパラギン酸でないアミノ酸)によって、またはペプチドリンカーによって分離されて、重鎖のN末端またはC末端にタンデムに連結される。さらなる1つの実施態様では、1つまたはそれ以上のポリDペプチドは、軽鎖のN末端と一体化しており、および/または1つまたはそれ以上のポリDペプチドは、軽鎖のC末端と一体化している。例えば、2つ以上のポリDペプチドが、0個、1個以上の他のアミノ酸残基(すなわち、アスパラギン酸でないアミノ酸)によって、またはペプチドリンカーによって分離されて、軽鎖のN末端またはC末端にタンデムに連結される。1つの実施態様では、ポリDペプチドは、重鎖のC末端と一体化している。別の実施態様では、ポリDペプチドは、重鎖のC末端と一体化しており、
かつポリDペプチドは、重鎖のN末端と一体化している。
【0014】
1つの実施態様では、軽鎖はポリDペプチドを含まない。別の実施態様では、重鎖はポリDペプチドを含まない。
【0015】
1つの実施態様では、1つまたはそれ以上のポリDペプチドは、それぞれ独立して、2~30個のアスパラギン酸残基を含む。例えば、ポリDペプチドは、2、または3、または4、または5、または6、または7、または8、または9、または10、または11、または12、または13、または14、または15、または16、または17、または18、または19、または20、または21、または22、または23、または24、または25、または26、または27、または28、または29、または30個のアスパラギン酸残基を含み得る。別の実施態様では、1つまたはそれ以上のポリDペプチドは、それぞれ独立して、6、7、8、9、10または11個のアスパラギン酸残基を含む。別の実施態様では、1つまたはそれ以上のポリDペプチドは、10個のアスパラギン酸残基をそれぞれ含む;そのようなペプチドは、本明細書において「D10」(配列番号1)と呼ばれる。一部の実施態様では、抗体または断片は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または12を超えるポリDペプチドを含んでいてもよい。
【0016】
別の実施態様では、抗体のアイソタイプはIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgE、またはIgDのいずれかである。別の実施態様では、抗体のアイソタイプはIgG1またはIgG4である。別の実施態様では、抗体またはその抗原結合断片は、1つまたはそれ以上のヒトTGFβ1、TGFβ2、およびTGFβ3などといった、1つまたはそれ以上のTGFβ1、TGFβ2、およびTGFβ3と特異的に結合する。
【0017】
1つの実施態様では、抗体断片は、1つまたはそれ以上のポリアスパラギン酸(ポリD)ペプチドを有することが意図される。抗体断片は、1つまたはそれ以上のポリDペプチドを欠く同じ抗体断片と比較して、骨への局在化において少なくとも2倍の増加を示すことが想定される。抗体断片は、例えば、Fab、F(ab’)2、単一特異性Fab2、二重特異性Fab2、三重特異性Fab3、一価IgG、scFv、二重特異性ダイアボディ、三重特異性トリアボディ、scFv-sc、ミニボディ、IgNAR、V-NAR、hcIgG、またはVhHのいずれかまたはそれらの組合せであり得る。1つの実施態様では、抗体断片は、1つまたはそれ以上のヒトTGFβ1、TGFβ2、およびTGFβ3などといった、1つまたはそれ以上のTGFβ1、TGFβ2、およびTGFβ3と結合する。本明細書の抗体または抗体断片は、完全ヒト型、ヒト化型、またはキメラ型であり得る。
【0018】
第2の側面において、本開示は、抗体重鎖を提供する工程、抗体軽鎖を提供する工程、重鎖に結合した1つまたはそれ以上のポリDペプチドおよび/または軽鎖に結合した1つまたはそれ以上のポリDペプチドを提供する工程、重鎖と軽鎖を組み合わせて骨を標的とする抗体またはその抗原結合断片を生成する工程を含む、骨を標的とする抗体またはその抗原結合断片の製造方法を提供する。
【0019】
1つの実施態様では、重鎖に結合した1つまたはそれ以上のポリDペプチドおよび/または軽鎖に結合した1つまたはそれ以上のポリDペプチドは、化学的コンジュゲーションによって結合されている。別の実施態様では、重鎖に結合している1つまたはそれ以上のポリDペプチドおよび/または軽鎖に結合している1つまたはそれ以上のポリDペプチドは、組換えによって結合されている。
【0020】
第3の側面において、本開示は、配列番号2、3、4、および5のいずれかに記載のア
ミノ酸配列(重鎖C末端リジンを含む、または含まない)を含む重鎖、ならびに配列番号6、7、8、11、および12のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む骨を標的とする抗TGFβ抗体であって、ただし、軽鎖アミノ酸配列が配列番号6である場合、重鎖アミノ酸配列は配列番号2(重鎖C末端リジンを含む、または含まない)ではない、抗TGFβ抗体を提供する。
【0021】
第4の側面において、本開示は、配列番号13、14、16、および17のいずれかに記載のアミノ酸配列(重鎖C末端リジンを含む、または含まない)を含む重鎖、ならびに配列番号15、18、19、20、21、および22のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む骨を標的とする抗TGFβ抗体であって、ただし、軽鎖アミノ酸配列が配列番号15である場合、重鎖アミノ酸配列は配列番号13(重鎖C末端リジンを含む、または含まない)ではない、抗TGFβ抗体を提供する。
【0022】
第5の側面において、本開示は、配列番号14のアミノ酸配列を含む重鎖(重鎖C末端リジンを含む、または含まない)、および配列番号15のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、ヒトIgG4抗体(例えば、mAb2 F6)を提供する。この抗体はTGFβ1、TGFβ2、およびTGFβ3の1つまたはそれ以上に特異的に結合する。1つの実施態様では、抗体はTGFβ1に特異的に結合する。
【0023】
第6の側面において、本開示は、配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖(重鎖C末端リジンを含む、または含まない)、および配列番号15のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、ヒトIgG4抗体(例えば、mAb2 F16)を提供する。この抗体はTGFβ1、TGFβ2、およびTGFβ3の1つまたはそれ以上に特異的に結合する。1つの実施態様では、抗体はTGFβ1に特異的に結合する。
【0024】
第7の側面において、本開示は、配列番号16のアミノ酸配列を含む重鎖(重鎖C末端リジンを含む、または含まない)、および配列番号15のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、ヒトIgG4抗体(例えば、mAb2 F11)を提供する。この抗体はTGFβ1、TGFβ2、およびTGFβ3の1つまたはそれ以上に特異的に結合する。1つの実施態様では、抗体はTGFβ1に特異的に結合する。
【0025】
第8の側面において、本開示は、配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖(重鎖C末端リジンを含む、または含まない)、および配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、ヒトIgG4抗体(例えば、mAb2 F17)を提供する。この抗体はTGFβ1、TGFβ2、およびTGFβ3の1つまたはそれ以上に特異的に結合する。1つの実施態様では、抗体はTGFβ1に特異的に結合する。
【0026】
第9の側面において、本開示は、配列番号16のアミノ酸配列を含む重鎖(重鎖C末端リジンを含む、または含まない)、および配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、ヒトIgG4抗体(例えば、mAb2 F12)を提供する。この抗体はTGFβ1、TGFβ2、およびTGFβ3の1つまたはそれ以上に特異的に結合する。1つの実施態様では、抗体はTGFβ1に特異的に結合する。
【0027】
第10の側面において、本開示は、配列番号14のアミノ酸配列を含む重鎖(重鎖C末端リジンを含む、または含まない)、および配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、ヒトIgG4抗体(例えば、mAb2 F7)を提供する。この抗体はTGFβ1、TGFβ2、およびTGFβ3の1つまたはそれ以上に特異的に結合する。1つの実施態様では、抗体はTGFβ1に特異的に結合する。
【0028】
第11の側面において、本開示は、配列番号13のアミノ酸配列を含む重鎖(重鎖C末
端リジンを含む、または含まない)、および配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、ヒトIgG4抗体(例えば、mAb2 F2)を提供する。この抗体はTGFβ1、TGFβ2、およびTGFβ3の1つまたはそれ以上に特異的に結合する。1つの実施態様では、抗体はTGFβ1に特異的に結合する。
【0029】
第12の側面において、本開示は、配列番号23、24、25、および26のいずれかに記載の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列(重鎖C末端リジンのためのコドンを含む、または含まない)を含む重鎖、ならびに配列番号27、28、29、30、31、および32のいずれかに記載の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、骨を標的とする抗TGFβ抗体であって、ただし、軽鎖アミノ酸配列が配列番号27に記載の核酸配列によってコードされる場合、重鎖アミノ酸配列は配列番号23に記載の核酸配列によってコードされるもの(重鎖C末端リジンのためのコドンを含む、または含まない)ではない、抗TGFβ抗体を提供する。
【0030】
第13の側面において、本開示は、配列番号25に記載の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖(重鎖C末端リジンのためのコドンを含む、または含まない)、および配列番号27に記載の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、ヒトIgG4抗体を提供する。この抗体はTGFβ1、TGFβ2、およびTGFβ3の1つまたはそれ以上に特異的に結合する。
【0031】
第14の側面において、本開示は、配列番号26に記載の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む重鎖(重鎖C末端リジンのためのコドンを含む、または含まない)、および配列番号27に記載の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、ヒトIgG4抗体を提供する。この抗体はTGFβ1、TGFβ2、およびTGFβ3の1つまたはそれ以上に特異的に結合する。
【0032】
第15の側面において、本開示は、骨を標的とする有効量の抗TGFβ抗体またはその抗原結合断片を個体に投与すること、およびTGFβレベルの低下、TGFβ活性の低下、骨量減少の低下、骨量減少率の低下、骨密度の増加、骨強度の増加、およびIL-11レベルの低下の少なくとも1つを検出することを含む、骨量減少について個体を治療する方法を提供する。
【0033】
1つの実施態様では、個体はヒトである。別の実施態様では、抗TGFβ抗体または抗体断片は、TGFβ1、TGFβ2、およびTGFβ3のうちの1つまたはそれ以上に特異的に結合する。さらなる実施態様において、抗TGFβ抗体は、重鎖、軽鎖、および1つまたはそれ以上のポリアスパラギン酸(ポリD)ペプチドを含む。抗体は、同じ重鎖および軽鎖を有するが1つまたはそれ以上のポリDペプチドを欠く抗体と比較して、骨への局在化において少なくとも2倍の増加を示す。1つの実施態様では、抗体のアイソタイプはIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgE、およびIgDのいずれかである。別の実施態様では、抗体のアイソタイプはIgG1またはIgG4である。1つの実施態様では、個体は、慢性腎臓病および/または、癌の骨への転移を含む骨疾患を有する。骨疾患は、骨形成不全症または骨粗鬆症であり得る。1つの実施態様では、骨を標的とする有効量の抗TGFβ抗体または抗体断片が、皮下、静脈内または筋肉内に投与される。
【0034】
第16の側面において、本開示は、本発明の抗体または抗原結合断片と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。例えば、抗体は、配列番号2、3、4、および5のいずれかに記載のアミノ酸配列(重鎖C末端リジンを含む、または含まない)を含む重鎖、ならびに配列番号6、7、8、11、および12のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み得るが、ただし、軽鎖アミノ酸配列が配列番号6である場合、重鎖ア
ミノ酸配列は配列番号2(重鎖C末端リジンを含む、または含まない)ではない。別の実施態様では、抗体は、配列番号13、14、16、および17のいずれかに記載のアミノ酸配列(重鎖C末端リジンを含む、または含まない)を含む重鎖、ならびに配列番号15、18、19、29、21、および22のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含み得るが、ただし、軽鎖アミノ酸配列が配列番号15である場合、重鎖アミノ酸配列は配列番号13(重鎖C末端リジンを含む、または含まない)ではない。
【0035】
第17の側面において、本開示は、骨を標的とする抗TGFβ抗体の重鎖、軽鎖、またはその両方をコードする核酸配列を含む単離された核酸分子を提供し、ここで、抗TGFβ抗体の重鎖は、配列番号13、14、16、および17のいずれかに記載のアミノ酸配列(重鎖C末端リジンを含む、または含まない)を含み、抗TGFβ抗体の軽鎖は、配列番号15、18、19、20、21、および22のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むが、ただし、軽鎖アミノ酸配列が配列番号15である場合、重鎖アミノ酸配列は配列番号13(重鎖C末端リジンを含む、または含まない)ではない。
【0036】
第18の側面において、本開示は、骨を標的とする抗TGFβ抗体の重鎖、軽鎖、またはその両方をコードする核酸配列を含む発現ベクターを提供し、ここで、抗TGFβ抗体の重鎖は、配列番号13、14、16、および17のいずれかに記載のアミノ酸配列(重鎖C末端リジンを含む、または含まない)を含み、抗TGFβ抗体の軽鎖は、配列番号15、18、19、20、21、および22のいずれかに記載のアミノ酸配列を含むが、ただし、軽鎖アミノ酸配列が配列番号15である場合、重鎖アミノ酸配列は配列番号13(重鎖C末端リジンを含む、または含まない)ではない。
【0037】
第19の側面において、本開示は、骨を標的とする抗TGFβ抗体をコードする核酸配列を含む1つまたはそれ以上の発現ベクターを含む宿主細胞を提供し、ここで、抗TGFβ抗体の重鎖は、配列番号13、14、16、および17のいずれかに記載のアミノ酸配列(重鎖C末端リジンを含む、または含まない)を含む重鎖並びに配列番号15、18、19、29、21、および22のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むが、ただし、軽鎖アミノ酸配列が配列番号15である場合、重鎖アミノ酸配列は配列番号13(重鎖C末端リジンを含む、または含まない)ではない。1つの実施態様では、宿主細胞は哺乳動物細胞または原核細胞である。別の実施態様では、宿主細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または大腸菌(E.coli)細胞である。
【0038】
第20の側面において、本開示は、骨を標的とする抗TGFβ抗体またはその抗原結合断片を産生する方法を提供する。この方法は、抗体またはその抗原結合断片の産生を可能にする条件下で宿主細胞を増殖させることを含む。宿主細胞は(i)配列番号13、14、16、および17のいずれかに記載のアミノ酸配列(重鎖C末端リジンを含む、または含まない)を含む重鎖をコードする核酸配列;ならびに(ii)配列番号15、18、19、29、21、および22のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む軽鎖をコードする核酸配列を含むが、ただし、軽鎖アミノ酸配列が配列番号15である場合、重鎖アミノ酸配列は配列番号13(重鎖C末端リジンを含む、または含まない)ではない。1つの実施態様では、方法は、許容される担体を含む医薬組成物として、抗体またはその抗原結合断片を調剤することをさらに含む。
【0039】
第21の側面において、本開示は、骨を標的とする抗TGFβ抗体を含む医薬組成物を提供する。骨を標的とする抗TGFβ抗体は、配列番号2、3、4、および5のいずれかに記載のアミノ酸配列(重鎖C末端リジンを含む、または含まない)を含む重鎖、および配列番号6、7、8、11、および12のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むが、ただし、軽鎖アミノ酸配列が配列番号6である場合、重鎖アミノ酸配列は配列番号2(重鎖C末端リジンを含む、もしくは含まない)ではなく、または、骨を標的とする抗
TGFβ抗体は、配列番号13、14、16、および17のいずれかに記載のアミノ酸配列(重鎖C末端リジンを含む、もしくは含まない)を含む重鎖、および配列番号15、18、19、29、21、および22のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むが、ただし、軽鎖アミノ酸配列が配列番号15である場合、重鎖アミノ酸配列は配列番号13(重鎖C末端リジンを含む、または含まない)ではない。1つの実施態様では、医薬組成物は液体医薬品として調剤される。別の実施態様では、医薬組成物は凍結乾燥医薬品として調剤される。
【0040】
第22の側面において、本開示は、骨を標的とする抗TGFβ抗体を提供する。抗体の重鎖は、配列番号33のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号34のアミノ酸配列を含むHCDR2、および配列番号35のアミノ酸配列を含むHCDR3を含む。抗体の軽鎖は、配列番号36のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号37のアミノ酸配列を含むLCDR2、および配列番号38のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む。抗体はさらに、重鎖のN末端、重鎖のC末端、軽鎖のN末端、および軽鎖のC末端のうちの1つまたはそれ以上にD10ポリペプチドを含む。
【0041】
第23の側面において、本開示は、骨を標的とする抗TGFβ抗体を提供し、ここで、抗体の重鎖は、配列番号39の重鎖相補性決定領域(CDR)1~3および配列番号40の軽鎖CDR1~3を含み、抗体はさらに、重鎖のN末端、重鎖のC末端、軽鎖のN末端、および軽鎖のC末端のうちの1つまたはそれ以上にD10ポリペプチドを含む。一部の態様において、抗体は、配列番号39のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VHまたはHCVD)、および配列番号40のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VLまたはLCVD)を含む。
【0042】
第24の側面において、本開示は、骨を標的とする抗TGFβ抗体であって、ここで、抗体の重鎖は、配列番号33のアミノ酸配列を含むHCDR1、配列番号34のアミノ酸配列を含むHCDR2、および配列番号35のアミノ酸配列を含むHCDR3を含み、抗体の軽鎖は、配列番号36のアミノ酸配列を含むLCDR1、配列番号37のアミノ酸配列を含むLCDR2、および配列番号38のアミノ酸配列を含むLCDR3を含み、抗体はさらに、重鎖のN末端、重鎖のC末端、軽鎖のN末端、および軽鎖のC末端のうちの1つもしくはそれ以上にD10ポリペプチドを含む、骨を標的とする抗TGFβ抗体;または、骨を標的とする抗TGFβ抗体であって、ここで、抗体の重鎖は、配列番号39の重鎖相補性決定領域(CDR)1~3および配列番号40の軽鎖CDR1~3を含み、抗体はさらに、重鎖のN末端、重鎖のC末端、軽鎖のN末端、および軽鎖のC末端のうちの1つもしくはそれ以上にD10ポリペプチドを含む、骨を標的とする抗TGFβ抗体をコードするポリヌクレオチド配列を提供する。
【0043】
第25の側面において、本開示は、本明細書に記載の治療方法において使用するための、本発明の骨標的抗TGFβ抗体または抗原結合断片などの骨標的抗体を提供する。
【0044】
第26の側面において、本開示は、本明細書に記載の治療方法のための医薬の製造のための、本発明の骨標的抗TGFβ抗体または抗原結合断片などの骨標的抗体の使用を提供する。
【0045】
本明細書において企図される特定の実施態様が、以下にさらに記載される。本発明の上記および他の機能および利点は、付随する特許請求の範囲とあわせて解釈される以下の本発明の詳細な説明からより完全に理解されるであろう。なお、特許請求の範囲は、その中の記載によって定義され、本明細書に記載の機能および利点の具体的な説明によって定義されるのではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】抗TGFβ(α-TGFβ)抗体に化学的にコンジュゲートされたD10ペプチドを示す図である。
【
図2】リンカー(ペプチドリンカー)とマレイミド官能基を有するペプチドを、マウスIgG1抗体上の還元されたヒンジ領域ジスルフィドに化学的にコンジュゲートさせるプロセスを示す図である。
【
図3A】D10ペプチド-リンカーと抗TGFβマウスIgG1、mAb1との化学的コンジュゲートの還元SDS-PAGEゲルを示す図である。上側のバンドは重鎖を表し、下側のバンドは軽鎖を表す。
【
図3B】実施例1の化学的コンジュゲーション反応におけるペプチドと抗体の比(PAR)の値に対するペプチド-マレイミド:mAb比を示す図であり、これは、最大8モル:モルPARまでのペプチドの数の増加に伴うPARの直線的増加を示している。
【
図4A】TGFβ1と、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))または抗TGFβ抗体mAb1のいずれかとD10ペプチドとの化学的コンジュゲートとの1:1モル混合物のサイズ排除クロマトグラフィーを示す図である。D10ペプチドとmAb1との化学的コンジュゲートのSECプロファイルを示す。
【
図4B】TGFβ1と、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))または抗TGFβ抗体mAb1のいずれかとD10ペプチドとの化学的コンジュゲートとの1:1モル混合物のサイズ排除クロマトグラフィーを示す図である。mAb1-D10化学的コンジュゲートとTGFβ1との1:1モル混合物のSECプロファイルを示す。
【
図4C】TGFβ1と、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))または抗TGFβ抗体mAb1のいずれかとD10ペプチドとの化学的コンジュゲートとの1:1モル混合物のサイズ排除クロマトグラフィーを示す図である。未修飾mAb1のSECプロファイルを示す。
【
図4D】TGFβ1と、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))または抗TGFβ抗体mAb1のいずれかとD10ペプチドとの化学的コンジュゲートとの1:1モル混合物のサイズ排除クロマトグラフィーを示す図である。mAb1とTGFβ1の1:1モル混合物のSECプロファイルを示す。
【
図4E】TGFβ1と、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))または抗TGFβ抗体mAb1のいずれかとD10ペプチドとの化学的コンジュゲートとの1:1モル混合物のサイズ排除クロマトグラフィーを示す図である。ハーセプチン(登録商標)のSECプロファイルを示す。
【
図4F】TGFβ1と、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))または抗TGFβ抗体mAb1のいずれかとD10ペプチドとの化学的コンジュゲートとの1:1モル混合物のサイズ排除クロマトグラフィーを示す図である。D10ペプチドとハーセプチン(登録商標)との化学的コンジュゲートのSECプロファイルを示す。
【
図4G】TGFβ1と、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))または抗TGFβ抗体mAb1のいずれかとD10ペプチドとの化学的コンジュゲートとの1:1モル混合物のサイズ排除クロマトグラフィーを示す図である。TGFβ1と1:1の比で混合されたD10とハーセプチン(登録商標)との化学的コンジュゲートのSECプロファイルを示す。
【
図5A】mAb1およびD10-mAb1コンジュゲートのヒドロキシアパタイトクロマトグラフィのA
280トレースを示す図である(x軸=分、y軸=吸光度(標準化))。
【
図5B】フロースルー(FT)およびピーク4の画分のSDS-PAGEゲルを示す図である。
【
図6A】増加する数のペプチドを有する化学的コンジュゲートのヒドロキシアパタイトクロマトグラフィを示す。各コンジュゲートについての溶出液の280nmにおける吸光度を示す図である(x軸=分、y軸=吸光度(標準化))。
【
図6B】SDS-PAGEにより決定された、コンジュゲートされたペプチドの数の相関的要素としての、結合した分析物の割合(上の曲線、円、左の目盛り)と保持時間(下の曲線、三角形、右の目盛り)を示す図である。
【
図7】対照のコンジュゲート(PAR=0)および、未修飾のmAb1と比較して平均4または9個のペプチドを有するコンジュゲートを用いて、A549細胞により実施したin vitroのTGFβ中和アッセイを示す図である。
【
図8A】フルオロフォア標識mAb1および約4.5個のペプチドを含む1mg/kg(1mpk)の化学的コンジュゲートの時間依存的な体内分布を示す図である。動物が画像化された時間が各パネルに表示されている。写真毎に、左のマウスはmAb1を、右のマウスは化学的コンジュゲートを投与された。画像の明暗度は、分布の違いを明らかにするように調整されている。
【
図8B】
図8Aに示される画像において、遠位大腿骨に対応する関心領域と心臓に対応する関心領域に見られる蛍光の比率を示す図である。丸はmAb1抗体に対応し、四角はmAb1とコンジュゲートしたD10ペプチド(D10 mAb1)に対応している。
【
図9A】組換え方法を用いたD10ペプチドの重鎖および/または軽鎖末端への結合によって得られる一連のmAb1融合バリアント抗体を作製するための、IgGサブタイプ抗体上のD10ペプチドの可能な位置を図式的に示す図である。D10ペプチドの付加部位は丸で示され、ペプチドリンカー配列の使用は波線で示されている(長い波線は、短い波線より長いリンカーを表す)。
【
図9B】
図9Aに示されているようなペプチドの配置によって得られる、一連の融合バリアント抗体(融合バリアント)を示す図である。結合位置およびペプチドの数の様々な組合せを有する組換え融合バリアントが生成された。各図の下の小さい数字は、明確さのために本明細書において参照される各組換え融合バリアントの識別番号を示している。本明細書で言う、融合バリアントは、「融合物」または「F」のいずれかの後に目的のバリアント番号が続くようにして指定される。例えば、「融合物1」および「F1」はどちらも、D10ペプチドを含まない抗体「1」の構成を有する抗体を指す。より長い波線は、より短い波線よりも長いリンカーを表す。
【
図10】還元(上部ゲル)または非還元(下部ゲル)条件下における、表示の精製組換えmAb1融合バリアントのSDS-PAGEを示す図である。
【
図11】示差走査蛍光光度法(DSF)によって決定された、組換えmAb1融合バリアントの熱安定性を示す図である。各温度における部分的に変性した形態への遷移は、色素蛍光の増加によって検出される。温度による蛍光増加の勾配(-d(RFU)/dT)が計算され、サンプルの温度に対して表示されている。変性速度は、熱転移(Tm)の中間点を表す曲線の最小値で最大となる。参考のために、各組換えmAb1融合バリアントの構造が図式的に示されている。
【
図12A】
図9Bに図式的に示されている8つの組換えmAb1融合バリアントによる、in vitroでのA549細胞によるIL-11産生の誘発におけるTGFβの中和を示す図である。
【
図12B】
図9Bに図式的に示されている8つの組換えmAb1融合バリアントによる、in vitroでのA549細胞によるIL-11産生の誘発におけるTGFβの中和を示す図である。
【
図13】セラミックヒドロキシアパタイトカラムでのカラムクロマトグラフィーにより評価された、ヒドロキシアパタイトに対する組換えmAb1融合バリアントおよびmAb1化学的コンジュゲートの親和性を示す図である。
【
図14】CD-1マウスにおいて、投与後の様々な時点でのライブイメージングによって得られた、選択されたフルオロフォア標識組換えmAb1融合バリアントおよびmAb1化学的コンジュゲートの体内分布を示す図である。
【
図15】CD-1マウスに投与した後における、蛍光色素標識した抗体、組換えmAb1融合バリアントおよびmAb1化学的コンジュゲートの脊柱に局在した量を示す図である。蛍光は3週間の期間にわたりIVIS装置により測定された。ROI内の最大蛍光の対数が示されている。
【
図16】実施例13および
図15に記載の試験において、組換えmAb1融合バリアントのmAb1 F6、mAb1 F16およびmAb1 F17、ならびにmAb1化学的コンジュゲート(「Conj」)を投与したマウスの切除した脊椎および大腿骨の10日後と21日後における蛍光画像を示す図である。
【
図17A】実施例15に記載されている24および96時間後の10μLの血清、ならびに切除した腰椎、遠位(小柱)大腿骨、腎臓および心臓におけるmAb2 F1およびmAb2 F6の蛍光レベルを示す図である。
【
図17B】実施例15に記載されている24および96時間後の10μLの血清、ならびに切除した腰椎、遠位(小柱)大腿骨、腎臓および心臓におけるmAb2 F1およびmAb2 F6の蛍光レベルを示す図である。
【
図18A】単回投与後、mAb1-D10(mAb1 F6)を介した骨標的化が血清PKに大きく影響することを示す図である。mAb1 F6は、ELISAにより測定すると、mAb1よりも13から14倍低い血清曝露(AUC)、より速い血清クリアランス、および、より短い血清半減期(t
1/2)を示す。データは平均±SDとして表されている:分散分析(AVOVA)、Dunnetの多重比較検定によって測定したところ、統計的有意性(
*p≦0.05、mAb1 F6とmAb1との比較)が観察された。mAb1は、マウスの抑制性抗TGFβモノクローナル抗体であり、mAb1 F6はmAb1の重鎖のC末端に結合したアスパラギン酸ポリペプチドD10を有する組換えマウス抑制性抗TGFβモノクローナル抗体である。画像/骨のAUCは1.0に標準化されている。各mAb1 F6およびmAb1の用量は5mg/kgであった。
【
図18B】光学イメージングにより測定した場合、mAb1と比較して、mAb1 F6が骨において22倍高い曝露(AUC)を呈することを示す図である。データは平均±SDとして表されている:AVOVA、Dunnetの多重比較検定によって測定したところ、統計的有意性(
*p≦0.05、mAb1 F6とmAb1との比較)が観察された。各mAb1 F6およびmAb1の用量は1mg/kgであった。
【
図19】複数回投与のピーク-トラフPKプロファイルを示す図である。(mAb1 F6による)骨標的化は、複数回投与のピーク-トラフ血清PKに大きな影響を及ぼす。mAb1 F6は、投与後24および48時間の両方において、ならびに初回投与および投与23後において、mAb1よりも低い血清濃度を示している。倍率差は、24時間で3~4.5倍、48時間で6~9倍、mAb1 F6のほうが低かった。蓄積もまた、mAb1よりもmAb1 F6のほうが少ないようであった。データは平均±SDとして表されている:独立t検定によって測定したところ、統計的有意性(
*p≦0.05、mAb1 F6とmAb1との比較)が観察された。血清濃度は質量分析によって測定された。
【
図20】骨標的化(mAb1 F6)およびmAb1が、G610C(OI)マウスにおいて用量依存的にBV/TV(%)を増加させることを示す図である。対照の抗体13C4(マウスIgG1抗体)で処置したG610Cマウスに比べて、BV/TV(%)の有意な変化が、1および5mg/kgの用量で両方の処置について観察された。13C4(13C4)で処置したG610Cマウスは、WTバックグラウンド系統(WT 13C4)に比べて、BV/TVの有意な減少を示した。データは平均±SDとして表されている:一元配置分散分析によって測定したところ、統計的有意性(
*p≦0.05、mAb1 F6とmAb1との比較;
#p≦0.05、13C4とWT 13C4との比較)が観察された。BV/TV(%)はμCTイメージングにより測定された。
【
図21】骨標的化(mAb1 F6)およびmAb1が、G610C(OI)マウスにおいて用量依存的に最大破断力(maximum force to failure)を増加させることを示す図である。13C4で処置したG610Cマウスと比較した最大破断力の有意な変化が、mAb1 F6については1および5mg/kg、mAb1については5mg/kgのみで観察された。抗体対照(13C4)で処置したG610Cマウスは、WTバックグラウンド系統と比較して最大破断力の有意な減少を示した。データは平均±SDとして表されている:一元配置分散分析によって測定したところ、統計的有意性(
*p≦0.05、mAb1 F6とmAb1との比較;
#p≦0.05、13C4とWT 13C4との比較)が観察された。最大破断力は、生体力学的圧縮試験によって測定された。
【
図22】G610CマウスにおけるBV/TVに対するmAb1およびmAb1 F6の効果を示す図である。5mg/kgの抗体が様々な頻度(毎週3回、毎週1回、2週間毎に1回、または4週間毎に1回)で12週間投与された。抗体13C4が対照として使用された。一元配置分散分析によって測定したところ、統計的有意性(
*p≦0.05、mAb1 F6とmAb1との比較;
#p≦0.05、13C4とWT 13C4との比較)が観察された。BV/TVはμCTイメージングにより測定された。
【
図23】G610Cマウスにおける最大破断力に対するmAb1およびmAb1 F6の効果を示す図である。5mg/kgの抗体が様々な頻度(毎週3回、毎週1回、2週間毎に1回、または4週間毎に1回)で12週間投与された。抗体13C4が対照として使用された。一元配置分散分析によって測定したところ、統計的有意性(
*p≦0.05、mAb1またはmAb1 F6と13C4との比較)が観察された。最大破断力は、生体力学的圧縮試験によって測定された。
【
図24】G610CマウスにおけるBV/TV(%)および抗体の平均血清レベルに対するmAb1およびmAb1 F6の効果を示す図である。抗体は5mg/kgで2週間毎に1回または毎週1回、12週間投与された。抗体13C4が対照として使用された。一元配置分散分析によって測定したところ、統計的有意性(*p≦0.05、mAb1またはmAb1 F6と13C4との比較;
#p≦0.05、13C4とWT 13C4との比較)が観察された。BV/TV(%)はμCTイメージングにより測定された。
【
図25】G610CマウスにおけるBV/TV(%)に対するmAb1およびmAb1 F16の効果を示す図である。抗体は5mg/kgで毎週3回、8週間投与された。抗体13C4が対照として使用された。一元配置分散分析によって測定したところ、統計的有意性(
*p≦0.05、mAb1またはmAb1 F16と13C4との比較;
#p≦0.05、13C4とWT 13C4との比較)が観察された。BV/TV(%)はμCTイメージングにより測定された。
【
図26】野生型マウスにおけるBV/TV(%)に対するmAb1およびmAb1 F11の効果を示す図である。抗体は5mg/kgで毎週3回、9週間投与された。一元配置分散分析によって測定したところ、統計的有意性(
*p≦0.05、mAb1またはmAb1 F11と13C4との比較)が観察された。BV/TV(%)はμCTイメージングにより測定された。
【
図27】ビヒクルまたは蛍光標識したmAb1またはmAb1 F6の単回腹腔内投与を受けた後の野生型マウスの腰椎における総放射効率(total radiant efficiency)を示す図である。一元配置分散分析によって測定したところ、統計的有意性(
*p≦0.05、mAb1 F6とmAb1との比較)が観察された。
【
図28】ビヒクルまたは蛍光標識したmAb1またはmAb1 F6の単回腹腔内投与を受けた後の野生型マウスの心臓における総放射効率を示す図である。一元配置分散分析によって測定したところ、統計的有意性(
*p≦0.05、mAb1とmAb1 F6との比較)が観察された。
【
図29】ビヒクルまたは蛍光標識したmAb1またはmAb1 F6の単回腹腔内投与を受けた後の野生型マウスの肝臓における総放射効率を示す図である。一元配置分散分析によって測定したところ、統計的有意性(
*p≦0.05、mAb1とmAb1 F6との比較)が観察された。
【
図30】ビヒクルまたは蛍光標識したmAb1またはmAb1 F6の単回腹腔内投与を受けた後の野生型マウスの腸における総放射効率を示す図である。
【
図31】蛍光標識したmAb2またはmAb2 D10の単回腹腔内投与を受けた24時間または96時間後における野生型マウスの表示の組織における総放射効率を示す図である。t検定によって測定したところ、統計的有意性(
*p≦0.05、mAb1とmAb1 F6との比較)が観察された。
【
図32】蛍光標識したmAb2またはmAb2 D10の単回腹腔内投与を受けた24時間または96時間後における野生型マウスの腰椎/血清総放射効率比を示す図である。
【
図33】蛍光標識したmAb2またはmAb2 D10の単回腹腔内投与を受けた24時間または96時間後における野生型マウスの大腿骨/血清総放射効率比を示す図である。t検定によって測定したところ、統計的有意性(
*p≦0.05、mAb2 D10とmAb2との比較)が観察された。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、それを必要とする患者において抗体および断片が優先的に骨にホーミングするように、1つまたはそれ以上の骨標的化ポリDペプチドに連結されている抗体およびその抗原結合断片を提供する。そのような抗体または断片の骨標的化機能は、抗体および断片が骨組織を特異的に標的化し、抗体または断片への患者の全身曝露を減らすことを可能とし、それによって望ましくない有害な副作用を最小化しつつ、薬物の効能を高める。
【0048】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリDペプチド」とは、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、またはそれ以上のアスパラギン酸アミノ酸(残基)などといった、複数のアスパラギン酸またはアスパルテートまたは「D」アミノ酸を有するペプチド配列を指す。1つの実施態様では、ポリDペプチドは、約2から約30、または約3から約15、または約4から約12、または約5から約10、または約6から約8、または約7から約9、または約8から約10、または約9から約11、または約12から約14のアスパラギン酸残基を含み得る。1つの実施態様では、ポリDペプチドはアスパラギン酸残基のみを含む。別の実施態様では、ポリDペプチドは、1つまたはそれ以上の他のアミノ酸または類似の化合物を含んでいてもよい。本明細書で使用される場合、用語「D10」は、配列番号1に見られるように、10個のアスパラギン酸アミノ酸の連続した配列を指す。一部の実施態様では、本発明の抗体または抗体断片は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または12を超えるポリDペプチドを含んでいてもよい。
【0049】
ポリDペプチドは、組換え技術または化学的コンジュゲーションを介して目的の抗体または抗原結合断片に連結される。本明細書中で使用される場合、用語「融合バリアント」または「バリアント」とは、D10配列などのようなポリDペプチドが組み込まれているか、または何らかの形で結合している重鎖または軽鎖または抗体断片または下位部分の少なくとも1つを含む、組み立てられた抗体構築物(
図9B参照)を指す。例えば、ポリDペプチドは、組換え技術(例えば、ここで、ポリDペプチド配列は、重鎖、軽鎖、または抗体断片もしくは下位部分のアミノ酸配列と一体化している)、化学的コンジュゲーション、またはその両方によって融合バリアント中の抗体鎖に連結される。
【0050】
本明細書中で使用される場合、用語「化学的コンジュゲート」とは、1つまたはそれ以上のポリDペプチドが化学反応によって、例えば、重鎖、軽鎖、抗体断片、または下位部分のアミノ酸配列に存在するシステイン残基と連結されている少なくとも1つの重鎖または軽鎖または抗体断片または下位部分を含む、組み立てられた抗体を指す。コンジュゲーションに使用し得る例示的なシステイン残基は、重鎖ヒンジ領域にあるものである。システイン残基またはコンジュゲーションに適切な他の残基はまた、突然変異誘発によっても抗体鎖に導入し得る。ペプチドリンカーまたは化学的部分(例えば、マレイミド官能基およびポリエチレングリコール(PEG))などのスペーサー/リンカーを、コンジュゲーションにおいてポリDペプチドと抗体成分との間において使用してもよい。抗体への所望の部分の化学的コンジュゲーションのための方法は、当技術分野において周知である。例
えば、BehrensとLiu,mAbs 6:1,46-53(2014)を参照。
【0051】
本明細書中で使用される場合、用語「一体化している」とは、ポリDペプチドが、抗体鎖と同じRNA転写物から転写され、抗体鎖と同じポリペプチド配列中に存在するような、組換え技術による抗体鎖とポリDペプチドの統合を指す。このような場合、ポリDペプチドは、抗体鎖のいずれかまたは両方の末端で、ペプチドリンカーまたはアミノ酸スペーサーを伴ってまたは伴わずに、抗体鎖に連結され、または、抗体鎖の適切なフォールディング、抗体分子の集合、または抗体のその抗原への結合に影響を及ぼすことなく、抗体鎖の内部に組み込まれる。
【0052】
本発明の骨標的抗体の例示的なフォーマットが
図9Bに示されている(フォーマットF2~F20)。骨標的ペプチド(丸で表される)は、抗体の重鎖および/または軽鎖の一方または両方の末端に結合または融合(例えば、一体化)される。一部の実施態様では、骨標的ペプチドは、軽鎖のN末端を介して軽鎖に結合されていない。結合または融合は、直接的な連結(すなわち、スペーサーまたはリンカーなし)、またはスペーサーまたはリンカー(波線で表される;例えば、ペプチドリンカー)を介するものであり得る。これらのフォーマットの具体例が以下の表1および7に示されている。
【0053】
本発明においては、例えば、組換え技術または化学的コンジュゲーションによって骨標的ペプチドを目的の抗体に結合させるために、任意の適切なスペーサーまたはリンカーを使用し得る。例えば、G4Sペプチド(配列番号9)の1、2、3、またはそれ以上のリピートを有するペプチドリンカーを使用してもよい。他の適切なペプチドリンカーもまた使用し得る。例えば、Chenら,Adv Drug Deliv Rev 65(10):1357-1369(2013)を参照。
【0054】
例示的な骨標的抗体およびその抗原結合断片
本発明は、それに結合した1つまたはそれ以上のポリD(ポリアスパラギン酸またはポリ-Asp)ペプチド(例えば、D10配列)を有する抗体および抗原結合断片を開示する。これらの修飾抗体および断片は、骨への局在化が改善されている。1つの特定の実施態様では、これらの抗体は、本明細書に記載のような抗TGFβ抗体である。理論に束縛されることを望まないが、1つまたはそれ以上のポリDペプチドを用いて抗TGFβ抗体を骨に対して効果的に標的化することは、TGFβに関連する病態生理学的な骨変性を特徴とする疾患を有する個体に対して、新たな治療を提供し得ると考えられる。
【0055】
しかしながら、本明細書中の多数の実施態様および実施例は、α-TGFβ抗体とD10配列を使用する文脈で表現されているが、本明細書に記載の骨標的化部分で異常な骨状態または骨疾患を治療するのに適した他の抗体またはタンパク質を修飾し得ると考えられる。例えば、骨量減少を治療するため、骨成長を刺激するため、または骨中の異常な細胞(例えば癌細胞)を標的化するための治療用抗体が、本明細書に記載の1つまたはそれ以上の骨標的ペプチドに連結される。治療用抗体は、骨の形成または維持に関与するタンパク質またはペプチドに結合し得る。さらに、他の骨局在化ペプチドまたは標的化ペプチドを使用してもよい。
【0056】
本明細書中で使用される場合、用語「α-TGFβ抗体」および「抗TGFβ抗体」は交換可能に使用され、TGFβ1、TGFβ2、および/またはTGFβ3に特異的な抗体またはその抗原結合断片を指す。例えば、α-TGFβ抗体またはその抗原結合断片の少なくとも1つの抗原結合部位(またはパラトープ)は、ヒトTGFβ1、TGFβ2、および/またはTGFβ3に見出されるエピトープに結合する。
【0057】
1つの実施態様において、企図されるα-TGFβ抗体-D10構築物は、化学的コン
ジュゲーションによって作製される。例えば、化学的コンジュゲーションは、米国特許第7,763,712号、第4,671,958号、および第4,867,973号に開示されているものなど、当技術分野で既知の方法によって実施され、これらはそれぞれ参照によって本明細書に組み入れられる。別の例では、ペプチドまたは他のリンカーが、D10ペプチドを抗体に結合させるために使用される(
図1および
図2を参照)。さらなる実施態様では、抗体のヒンジ領域のチオール基(例えば、ヒンジ領域のシステイン残基)の還元が、PEGスペーサーを用いたポリDペプチドの化学的コンジュゲーションを可能にする。同様に、抗体および断片に天然に存在するか、または突然変異誘発によって導入された、企図される抗体および抗体断片の他のシステイン残基が、ポリDペプチドと化学的にコンジュゲートされる。D10ペプチドと化学的にコンジュゲートされたα-TGFβ抗体の1つのそのような考えられる組み立てスキームが
図2に示されている。
【0058】
別の実施態様では、企図されるα-TGFβ抗体-D10構築物は、D10配列がα-TGFβ抗体の重鎖および/または軽鎖のアミノ酸配列に付加される組換え発現によって作製される。例えば、重鎖および/または軽鎖のアミノ酸配列をコードする核酸配列が、α-TGFβ抗体の重鎖および/または軽鎖のN末端、C末端のいずれか、またはN末端とC末端の両方で発現されるD10配列をコードするように修飾される。同様に、1つまたはそれ以上のD10配列が、抗体重鎖のアミノ酸配列のヒンジ領域またはその近傍において、および/または抗体軽鎖のアミノ酸配列内に付加される。D10を有する重鎖および/または軽鎖の各核酸配列は、発現ベクターに組み込み、続いて、核酸配列を発現して対応するアミノ酸配列に翻訳することができる宿主細胞にトランスフェクトしてもよい。さらに、宿主細胞は、重鎖および軽鎖のそれぞれをその相補的配列と組み合わせてα-TGFβ抗体-D10構築物を形成することによって、発現されたアミノ酸配列を機能性タンパク質に組み立てることができる。企図される組換えα-TGFβ抗体-D10融合バリアントの例が、
図9Aおよび
図9Bに示されている。
【0059】
本明細書ではポリDペプチドについて論じられているが、抗体、別のタンパク質、またはペプチドの骨への標的化を可能にするために、他の類似のペプチドも使用し得る。例えば、アスパラギン酸リピート配列は、約2、または約4、または約6、または約8、または約12、または約14、または約16、または約18、または約20、または約30、または6、7、8、9、10または11残基などといった、D10配列よりも多いまたは少ない残基を有していてもよい。さらに、グルタメートのような類似の化学的性質を有する他の天然アミノ酸、または非天然アミノ酸、および/または他の化学的に等価な化合物は、アスパラギン酸の代わりに、またはそれと組み合わせて使用し得る。
【0060】
1つの実施態様では、それに結合した1つまたはそれ以上のポリDペプチドを有する抗体は、1つまたはそれ以上のポリDペプチドを含まない同じ抗体と比較して、骨への局在化において、少なくとも約2倍、または約3倍、または約5倍、または約10倍、または約20倍の増加を示すと考えられる。
【0061】
さらに、α-TGFβ抗体が本明細書に記載されているものの、骨形成または骨維持に関与する他のタンパク質に結合する任意の抗体を、所望に応じて抗体を骨に標的化するために同様に修飾し得る。本明細書において企図される抗体またはその抗原結合断片は、任意の種に由来するものでよく、または、異なる種由来の重鎖および軽鎖を組み合わせたハイブリッド抗体であってもよく、任意の所望のエピトープに対して特異的であり得る。さらに、本明細書において使用し得る抗体は、アイソタイプによって限定されず、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgE、またはIgDのうちの任意のものであり得る。抗体断片もまた使用し得る。例えば、D10配列または他の骨標的化化合物は、本明細書に記載されるような所望の結果を達成するために、Fabおよび/またはFc断片または任意の他の抗体断片に結合される。さらに、D10配列
はscFv断片および他の類似の融合タンパク質に結合される。別の実施態様では、D10配列は、S228Pコア-ヒンジ突然変異(EU番号付け方式に従った番号付け;または代替的にKabat方式に従うとS248P;Kabatら.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,第4版,合衆国政府印刷局,165-492(1987);およびSilvaら,Jour.Biol.Chem.290:5462-5469(2015)を参照)を有する抗体に結合させてもよい。
【0062】
さらなる実施態様では、本明細書で企図される抗体および/または他のタンパク質は、追加的な分子とコンジュゲートされる。例えば、本明細書で企図される抗体または他のタンパク質は、注射されるかまたは他の方法で対象に導入された場合に、抗体/タンパク質を追跡することを可能にする化学標識とコンジュゲートされる。例えば、放射性標識、蛍光化合物などが、それらのin vivoでの追跡を助けるために抗体/タンパク質に結合される。さらに、本明細書で企図される抗体および/または他のタンパク質はまた、小分子、医薬品、抗新生物剤、成長ホルモン、ビタミンなどといった治療効果を有するさらなる化合物とコンジュゲートされ、抗体および/または他のタンパク質が1つまたはそれ以上のそのような化合物のためのビヒクルとして働くようにしてもよい。
【0063】
一部の実施態様では、骨標的抗TGFβ抗体は、配列番号2、3、4、および5のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む重鎖、ならびに配列番号6、7、8、11、および12のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むが、ただし、軽鎖アミノ酸配列が配列番号6である場合、重鎖アミノ酸配列は配列番号2ではない。例示的な抗体は、mAb1
F3、mAb1 F4、mAb1 F5、mAb1 F6、mAb1 F8、mAb1
F9、mAb1 F10、mAb1 F11、mAb1 F13、mAb1 F14、mAb1 F15、mAb1 F16、mAb1 F18、mAb1 F19、およびmAb1 F20である(表1)。
【0064】
他の実施態様では、骨標的抗TGFβ抗体は、配列番号13、14、16、および17のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む重鎖、ならびに配列番号15、18、19、20、21および22のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むが、ただし、軽鎖アミノ酸配列が配列番号15である場合、重鎖アミノ酸配列は配列番号13ではない。例示的な抗体は、mAb2 F3、mAb2 F4、mAb2 F5、mAb2 F6、mAb2 F8、mAb2 F9、mAb2 F10、mAb2 F11、mAb2 F13、mAb2 F14、mAb2 F15、mAb2 F16、mAb2 F18、mAb2 F19、およびmAb2 F20である(表7)。
【0065】
一部の実施態様では、抗TGFβ抗体などの本発明の抗体は、重鎖にC末端リジンを有さない。C末端リジンは、製造中にまたは組換え技術によって除去できる(すなわち、重鎖のコード配列がC末端のリジンのコドンを含まない)。よって、本発明の範囲内で企図されるのは、C末端リジンを含まない、配列番号2または13の重鎖アミノ酸配列を含む抗体でもある。ポリDペプチドは、C末端リジンを伴って、または伴わずに、重鎖のC末端に結合される。
【0066】
治療方法
1つの特定の実施態様では、TGFβに関連する骨量減少についてヒト患者などの個体を治療する方法は、骨を標的とする有効量の抗TGFβ抗体を個体に投与することを含む。この方法はさらに、TGFβレベルまたは活性の低下、骨量減少または骨量減少率の低下、骨密度の増加、および/または骨強度の増加を測定または検出する工程を含み得る。
【0067】
本明細書で使用される「有効量」は、それを必要とする個体に投与されたときに、例え
ば、骨に関連するTGFβのレベルまたは活性を低下させること、骨量減少または骨量減少率を低下させること、骨密度を増加させること、および/または骨強度を増加させること、などによって個体の健康を改善する、α-TGFβ抗体または抗体断片などの治療薬の量を指す。
【0068】
本明細書中で使用される場合、用語「個体」とは動物を指す。個体の例は、ヒト、家畜、家庭用ペット、および他の動物を含むが、これらに限定はされない。個体のさらなる例は、TGFβに関連した骨疾患を有する動物を含む。
【0069】
別の実施態様では、化学的コンジュゲートまたは組換え融合バリアントなどの1つまたはそれ以上の骨標的抗TGFβ抗体を含有する、水性液体医薬品製剤および凍結乾燥医薬品製剤を含む、医薬抗体製剤または組成物が企図される。骨標的抗TGFβ抗体および/または抗体断片を含む医薬組成物は、参照によって本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第US2014/0286933A9号に記載されるように、またはそうでなければ当該分野で知られるようにして調剤し得る。
【0070】
1つの特定の実施態様では、骨疾患を治療する方法は、慢性腎臓病に関連する骨疾患、骨への癌転移、または異常代謝状態などといった骨疾患を有する個体に骨を標的とする有効量の抗TGFβ抗体を投与することを含む。別の特定の実施態様では、骨形成不全症を治療する方法は、骨を標的とする有効量の抗TGFβ抗体を、骨形成不全症を有する個体に投与することを含む。さらなる特定の実施態様では、骨粗鬆症を治療する方法は、骨を標的とする有効量の抗TGFβ抗体を骨粗鬆症の個体に投与することを含む。
【0071】
一部の実施態様において、患者は、本発明の骨標的化抗体または抗体断片と別
の治療薬、例えば骨量減少状態の治療薬(例えばビスホスホネート)との組合せで治療される。抗体または抗体断片および他の治療薬は、患者に同時にまたは逐次的に投与される。
【0072】
一部の実施態様では、本発明の治療方法において使用される骨標的化抗体および他の成分は、キットまたは製品において提供される。
【0073】
抗体の作製方法
本発明の抗体または断片は、当技術分野において十分に確立されている方法によって作製し得る。抗体の重鎖および軽鎖をコードするDNA配列は、遺伝子が転写および翻訳制御配列などの必要な発現制御配列に機能的に連結されるように、発現ベクター中に挿入される。発現ベクターは、プラスミド、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、カリフラワーモザイクウイルス、タバコモザイクウイルスなどの植物ウイルス、コスミド、YAC、EBV由来エピソームなどを含む。抗体軽鎖コード配列および抗体重鎖コード配列は、別々のベクターに挿入してもよく、また、同一または異なる発現制御配列(例えば、プロモーター)に機能的に連結してもよい。1つの実施態様では、両方のコード配列が同一の発現ベクターに挿入され、同じ発現制御配列(例えば、共通のプロモーター)、別々の同一の発現制御配列(例えば、プロモーター)に、または異なる発現制御配列(例えば、プロモーター)に機能的に連結される。抗体コード配列は、標準的な方法(例えば、抗体遺伝子断片上の相補的制限部位とベクターとのライゲーション、または制限部位が存在しない場合は平滑末端のライゲーション)によって発現ベクターに挿入し得る。
【0074】
抗体鎖遺伝子に加えて、組換え発現ベクターは、宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を有していてもよい。哺乳動物宿主細胞発現のための調節配列の例は、レトロウイルスLTR由来のプロモーターおよび/またはエンハンサー、サイトメガロ
ウイルス(CMV)(CMVプロモーター/エンハンサーなど)、サルウイルス40(SV40)由来のもの(例えばSV40プロモーター/エンハンサー)、アデノウイルス由来のもの(例えばアデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、ポリオーマ由来のものなどの哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を導くウイルス要素、ならびに天然の免疫グロブリンおよびアクチンプロモーターのような強力な哺乳動物プロモーターを含む。
【0075】
抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば複製起点)および選択マーカー遺伝子などの、さらなる配列を保有していてもよい。例えば、選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に、G418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を付与する。選択マーカー遺伝子は、(dhfr-宿主細胞においてメトトレキサート選択/増幅と共に使用するための)ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子、(G418選択のため)neo遺伝子、およびグルタミン酸シンテターゼ遺伝子を含み得る。
【0076】
本発明の抗体をコードする発現ベクターは、発現のために宿主細胞に導入される。宿主細胞は、抗体の発現に適した条件下で培養され、次いで、抗体が回収され単離される。宿主細胞は、哺乳動物、植物、細菌または酵母宿主細胞を含む。発現のための宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は、当技術分野において周知であり、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株を含む。これらは、とりわけ、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0細胞、SP2細胞、HEK-293T細胞、293フリースタイル細胞(Invitrogen)、NIH-3T3細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、A549細胞、および他の多数の細胞株を含む。細胞株は、それらの発現レベルに基づいて選択し得る。使用可能な他の細胞株は、Sf9またはSf21細胞のような昆虫細胞株である。
【0077】
さらに、抗体の発現は、多くの既知の技術を用いて増強し得る。例えば、グルタミンシンテターゼ遺伝子発現系(GS系)は、特定の条件下で発現を増強するための一般的なアプローチである。
【0078】
宿主細胞用の組織培養培地は、ウシ血清アルブミンなどの動物由来成分(ADC)を含んでも含まなくてもよい。一部の態様においては、ADCを含まない培地がヒトの安全のために好まれる。組織培養は、流加培養法、連続灌流法、または宿主細胞および所望の収率に適した他の任意の方法を用いて実施し得る。
【0079】
医薬組成物
本発明の抗体は、適切な貯蔵安定性のために調剤できる。例えば、抗体は、凍結乾燥されるか、または薬学的に許容される賦形剤を用いて使用のために保存または再構成される。併用療法のために、抗体などの2つ以上の治療剤を共配合してもよく、例えば混合されて単一の組成物中において提供される。
【0080】
用語「賦形剤」または「担体」は、本発明の化合物以外の任意の成分を記述するために本明細書中で使用される。賦形剤の選択は、特定の投与方法、溶解度および安定性に対する賦形剤の効果、ならびに剤形の性質などの要因に大きく左右される。「薬学的に許容される賦形剤」は、生理学的に適合性のある、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。薬学的に許容される賦形剤のいくつかの例は、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール
、エタノールなど、ならびにそれらの組合せである。場合によっては、等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、または塩化ナトリウムが組成物に含まれるであろう。薬学的に許容される物質のさらなる例は、湿潤剤または、湿潤剤または乳化剤のような少量の補助物質、保存料または緩衝剤であり、これらは抗体の貯蔵寿命または有効性を高める。
【0081】
本発明の医薬組成物は、単一の単位用量として、または複数の単一単位用量として、バルクで製造、包装、または販売される。本明細書で使用される場合、「単位用量」は、所定量の活性成分を含む医薬組成物の個別量である。活性成分の量は、一般に、対象に投与される活性成分の投与量、またはそのような投与量の簡便な割合、例えばそのような投与量の半分または三分の一に等しい。
【0082】
本発明の医薬組成物は、典型的には非経口投与に適している。本明細書で使用される場合、医薬組成物の「非経口投与」は、対象の組織の物理的破壊および組織中の裂け目を通した医薬組成物の投与を特徴とする任意の投与経路を含み、よって、一般に血流中、筋肉内、または内臓への直接的な投与をもたらす。したがって、非経口投与は、組成物の注射による、外科的切開部を通した組成物の適用による、組織貫通非外科的創傷を通した組成物の適用などによる、医薬組成物の投与を含むが、これらに限定はされない。特に、非経口投与は、皮下、腹腔内、筋肉内、胸骨内、静脈内、動脈内、髄腔内、脳室内、尿道内、頭蓋内、腫瘍内、および滑液内注射または注入;ならびに腎臓透析注入技術を含むことが企図されるが、これらに限定はされない。局所灌流もまた企図される。好ましい実施態様は、静脈内経路および皮下経路を含み得る。
【0083】
非経口投与に適した医薬組成物の製剤は、典型的には、無菌水または無菌等張食塩水などの薬学的に許容される担体と組み合わされた活性成分を含む。そのような製剤は、ボーラス投与または連続投与に適した形態で、製造、包装、または販売される。注射用製剤は、アンプルまたは防腐剤を含む複数回投与用容器などの単位投与形態で、製造、包装、または販売される。非経口投与用の製剤は、懸濁液、溶液、油性または水性ビヒクル中のエマルジョン、ペーストなどを含むが、これらに限定はされない。そのような製剤は、懸濁剤、安定剤、または分散剤を含むがこれらに限定されない1つまたはそれ以上の追加の成分をさらに含み得る。非経口投与用製剤の1つの実施態様では、活性成分は、再構成組成物の非経口投与の前に適切なビヒクル(例えば、無菌の発熱物質非含有水)で再構成するための乾燥(すなわち粉末または顆粒)形態で提供される。非経口製剤はまた、塩、炭水化物および緩衝剤(例えば、3~9のpH)などの賦形剤を含み得る水溶液も含むが、一部の用途では、それらは滅菌非水溶液として、または無菌の発熱物質非含有水のような適切なビヒクルと共に使用される乾燥形態として、より適切に調剤し得る。例示的な非経口投与形態は、滅菌水溶液、例えば、水性プロピレングリコールまたはデキストロース溶液中の溶液または懸濁液を含む。そのような剤形は、所望により適切に緩衝し得る。有用な他の非経口投与製剤は、微結晶形態またはリポソーム製剤中に活性成分を含むものを含む。非経口投与用の製剤は、即時放出および/または調節放出となるように調剤してもよい。調節放出製剤は、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出およびプログラム放出を含む。
【0084】
一部の実施態様において、本発明の抗体または抗原結合断片は40、20、または15mg/kg以下(14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1mg/kgなど)で投与される。一部のさらなる実施態様において、用量は、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、または0.5mg/kgであり得る。投与頻度は、例えば、毎日、2、3、4、または5日毎、毎週、隔週、または3週間毎、毎月、隔月、3ヶ月毎、6ヶ月毎、または12ヶ月毎、または必要に応じてであり得る。抗体は、静脈内(例えば、0.5~8時間にわたる静
脈内注入)、皮下、筋肉内、または状態および医薬製剤に適した他の任意の投与経路によって投与し得る。
【0085】
例示的な実施態様
本発明のさらなる特定の実施態様が、以下に記述される。
【0086】
1.重鎖、軽鎖、ならびに(i)重鎖、(ii)軽鎖のC末端、または(iii)(i)および(ii)の両方に連結された1つまたはそれ以上のポリアスパラギン酸(ポリD)ペプチドを含む、抗体またはその抗原結合断片。
【0087】
2.1つまたはそれ以上のポリDペプチドが、化学的コンジュゲーションによって抗体または抗原結合断片に連結されている、実施態様1に記載の抗体または抗原結合断片。
【0088】
3.1つまたはそれ以上のポリDペプチドが、ヒンジ領域で重鎖にコンジュゲートされている、実施態様2に記載の抗体または抗原結合断片。
【0089】
4.1つまたはそれ以上のポリDペプチドが、ポリエチレングリコール(PEG)スペーサーによって抗体または抗原結合断片にコンジュゲートされている、実施態様2または3に記載の抗体または抗原結合断片。
【0090】
5.重鎖または軽鎖のアミノ酸配列と一体化しているポリDペプチドを含む、実施態様1に記載の抗体または抗原結合断片。
【0091】
6.重鎖のN末端と一体化しているポリDペプチドを含む、実施態様5に記載の抗体または抗原結合断片。
【0092】
7.重鎖のC末端と一体化しているポリDペプチドを含む、実施態様5に記載の抗体または抗原結合断片。
【0093】
8.重鎖のN末端と一体化している第1のポリDペプチド、および重鎖のC末端と一体化している第2のポリDペプチドを含む、実施態様5に記載の抗体または抗原結合断片。
【0094】
9.軽鎖のC末端と一体化しているポリDペプチドを含む、実施態様5~8のいずれか1つに記載の抗体または抗原結合断片。
【0095】
10.ポリDペプチドが、ペプチドリンカーを介して重鎖または軽鎖に融合している、実施態様5~9のいずれか1つに記載の抗体または抗原結合断片。
【0096】
11.ペプチドリンカーが、アミノ酸配列GGGGS(配列番号9)の1~3回のリピートを含む、実施態様10に記載の抗体または抗原結合断片。
【0097】
12.1つまたはそれ以上のポリDペプチドが、それぞれ独立して2~30個のアスパラギン酸残基を含む、前述の実施態様のいずれか1つに記載の抗体または抗原結合断片。
【0098】
13.1つまたはそれ以上のポリDペプチドが、10個のアスパラギン酸残基(配列番号1)をそれぞれ含む、実施態様12に記載の抗体または抗原結合断片。
【0099】
14.抗体がIgGである、前述の実施態様のいずれか1つに記載の抗体または抗原結合断片。
【0100】
15.抗体がIgG1またはIgG4である、実施態様15に記載の抗体または抗原結合断片。
【0101】
16.抗体または抗原結合断片が、TGFβ1、TGFβ2、およびTGFβ3の1つまたはそれ以上に特異的に結合する、前述の実施態様のいずれか1つに記載の抗体または抗原結合断片。
【0102】
17.抗体が、配列番号13の重鎖相補性決定領域(CDR)1~3および配列番号15の軽鎖CDR1~3を含む、実施態様16に記載の抗体または抗原結合断片。
【0103】
18.抗体が、配列番号13の残基1~120に対応する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列、および配列番号15の残基1~108に対応する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列を含む、実施態様17に記載の抗体または抗原結合断片。
【0104】
19.抗体が、228位(EU番号付け)にプロリンを有するヒトIgG4定常領域を含む、実施態様17または18に記載の抗体または抗原結合断片。
【0105】
20.抗体の重鎖が、重鎖C末端リジンを含む、または含まない配列番号13のアミノ酸配列を含み、抗体の軽鎖が、配列番号15のアミノ酸配列を含む、実施態様19に記載の抗体または抗原結合断片。
【0106】
21.重鎖が、重鎖C末端リジンを含む、もしくは含まない配列番号13のアミノ酸配列、C末端D10配列の直前にリジンを含む、もしくは含まない配列番号14、重鎖C末端リジンを含む、もしくは含まない配列番号16、またはC末端D10配列の直前にリジンを含む、もしくは含まない配列番号17を含み、軽鎖が、配列番号15、19、21、もしくは22のアミノ酸配列を含む、実施態様17に記載の抗体。
【0107】
22.抗体が、C末端リジンを含む、または含まない配列番号2、ならびに配列番号6の重鎖および軽鎖アミノ酸配列をそれぞれ有するマウス抗体1D11である、実施態様16に記載の抗体または抗原結合断片。
【0108】
23.抗体の重鎖が、(C末端D10配列の直前にリジンを含む、または含まない)配列番号14のアミノ酸配列を含み、軽鎖が、配列番号15のアミノ酸配列を含む、ヒトTGFβ1、TGFβ2、およびTGFβ3に結合するIgG4抗体。
【0109】
24.抗体の重鎖が、(C末端D10配列の直前にリジンを含む、または含まない)配列番号17のアミノ酸配列を含み、軽鎖が、配列番号15のアミノ酸配列を含む、ヒトTGFβ1、TGFβ2、およびTGFβ3に結合するIgG4抗体。
【0110】
25.抗体または抗原結合断片が、同じ重鎖および軽鎖を有するがポリDペプチドを欠く抗体と比較して、骨への局在化において少なくとも2倍の増加を示す、前述の実施態様のいずれか1つに記載の抗体または抗原結合断片。
【0111】
26.前述の実施態様のいずれか1つに記載の抗体または抗原結合断片、および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【0112】
27.TGFβの阻害から利益を得る骨状態を有する個体を治療する方法であって、請求項16~25のいずれか1項に記載の抗TGFβ抗体または抗原結合断片の有効量を個体に投与することを含む、前記方法。
【0113】
28.(1)TGFβレベルの低下、(2)TGFβ活性の低下、(3)骨量減少の低下、(4)骨量減少率の低下、(5)骨密度の増加、(6)骨強度の増加、および(7)IL-11レベルの低下の少なくとも1つを検出することをさらに含む、実施態様27に記載の方法。
【0114】
29.TGFβの阻害から利益を得る骨状態を有する個体を治療するのに使用するための、実施態様16~25のいずれか1つに記載の抗体または抗原結合断片。
【0115】
30.TGFβの阻害から利益を得る骨状態を有する個体を治療するための医薬を製造するための、実施態様16~25のいずれか1つに記載の抗体または抗原結合断片の使用。
【0116】
31.個体がヒトである、実施態様27に記載の方法、実施態様29に記載の使用のための抗体もしくは抗原結合断片、または実施態様30に記載の使用。
【0117】
32.ヒトが骨形成不全症を有する、実施態様31に記載の方法、使用のための抗体もしくは抗原結合断片、または使用。
【0118】
33.ヒトが骨量減少または骨粗鬆症を有する、実施態様31に記載の方法、使用のための抗体もしくは抗原結合断片、または使用。
【0119】
34.ヒトが慢性腎臓病を有する、実施態様31に記載の方法、使用のための抗体もしくは抗原結合断片、または使用。
【0120】
35.ヒトが骨転移を有する癌患者である、実施態様31に記載の方法、使用のための抗体もしくは抗原結合断片、または使用。
【0121】
36.実施態様1~25のいずれか1つに記載の抗体または抗原結合断片の重鎖、軽鎖、またはその両方をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【0122】
37.実施態様36に記載の単離された核酸分子を含む発現ベクター。
【0123】
38.実施態様37に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【0124】
39.宿主細胞が哺乳動物細胞である、実施態様38に記載の宿主細胞。
【0125】
40.実施態様1~25のいずれか1つに記載の抗体または抗原結合断片の製造方法であって、
抗体または抗原結合断片の重鎖および軽鎖をそれぞれコードする第1および第2のヌクレオチド配列を含む宿主細胞を提供すること、
抗体または抗原結合断片の産生を可能にする条件下で宿主細胞を増殖させること、ならびに
抗体または抗原結合断片を回収すること
を含む、前記製造方法。
【0126】
41.第1のヌクレオチド配列が、(重鎖C末端リジンのコドンを含む、または含まない)配列番号23、24、25または26を含み、第2のヌクレオチド配列が、配列番号27、29、31または32を含む、実施態様40に記載の方法。
【0127】
42.骨標的抗体または抗原結合断片の製造方法であって、
抗体またはその抗原結合断片および1つまたはそれ以上のポリDペプチドを提供すること、ならびに
化学的コンジュゲーションによる共有結合を介してポリDペプチドを抗体に結合させること
を含む、前記製造方法。
【0128】
43.薬学的に許容される担体を含む医薬組成物として、抗体または抗原結合断片を調剤することをさらに含む、実施態様40~42のいずれか1項に記載の方法。
【0129】
44.骨標的化医薬組成物の製造方法であって、
実施態様1~25のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合断片を提供すること、および
抗体または抗原結合断片を薬学的に許容される担体と混合すること
を含む、前記製造方法。
【0130】
本発明は、以下の実施例においてさらに記載されるが、それらは特許請求の範囲に記載された発明の範囲を限定するものではない。
【0131】
実施例
以下の実施例は、本発明の特定の実施態様、およびその様々な用途を例示するものである。それらは説明の目的のためだけに記載されており、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0132】
TGFβ抗体
本明細書においてmAb1と呼ばれる第1の抗TGFβ抗体は、ヒトTGF-β1、TGF-β2、およびTGF-β3に特異的(「汎特異的」)なマウスIgG1モノクローナル抗体であり、R&D Systemsから入手可能である(クローン#1D11、ミネアポリス、ミネソタ州)。mAb1抗体は、実施例において鋳型として役立った。
【0133】
実施例において使用される、本明細書中でmAb2と呼ばれる第2の抗TGFβ抗体は、ヒンジ変異S228P(EU番号付け)を有するヒト抗TGFβ IgG4抗体である。mAb2抗体は、参照によって本明細書に組み入れられる米国特許第9,090,685号に開示されている抗体と同様である。抗体mAb2は、グリコシル化されていない場合、144KDの推定分子量を有する。その重鎖および軽鎖のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号13および15である。これら2つの配列は以下に示されている。可変ドメインはイタリック体で示されており、本明細書では重鎖可変ドメイン(HCVD、配列番号39)および軽鎖可変ドメイン(LCVD、配列番号40)と名付けられている。CDRは四角で示されており、重鎖相補性決定領域1(HCDR1、配列番号33);HCDR2(配列番号34);およびHCDR3(配列番号35)、ならびに軽鎖相補性決定領域1(LCDR1、配列番号36);LCDR2(配列番号37);およびLCDR3(配列番号38)と名付けられている。重鎖の定常ドメイン中のグリコシル化部位は、太字になっている(N297)。
【0134】
【0135】
本明細書中に記載されているように、骨形成または骨維持に関与するタンパク質に結合する他の抗体、抗体断片、タンパク質、またはペプチドを使用してもよい。
【実施例1】
【0136】
D10ペプチドとmAb1 α-TGFβ抗体との化学的コンジュゲートの製造
α-TGFβ抗体mAb1のD10ペプチド化学的コンジュゲートを
図2に示されるようにして製造した。mAb1(2.0mg)をAmicon(登録商標)Ultra 50kDa MWCO遠心フィルター(EMD Millipore)を用いた3回の限外濾過によって、脱気ホウ酸緩衝液(25mM塩化ナトリウム、1mM DTPA、20mMホウ酸ナトリウム、pH8.0)中に交換した。次に、ヒンジ領域のジスルフィドをmAbあたり12モル:モルのジチオトレイトール(DTT)により37℃で2時間、還元した。この生成物を、脱気ホウ酸緩衝液4mLによりAmicon(登録商標)Ultraフィルターを用いて脱塩した。一定分量(1nmol、150μg)を25℃で漸増量(1~15モル:モル)のD10-マレイミドペプチド(Ac-D10-C2-PEG12-C6-マレイミド、ここでPEG12は12個のエチレンオキシド基を含む規定の長さのPEGから成る)と反応させた。1.5時間後、残りの未反応のチオール基をN-エチルマレイミド12当量の添加と、それに続く1.5時間のインキュベーションによってブロックした。この生成物を限外濾過により脱塩した。
図3Aは、SimplyBlue(商標)(Thermo Scientific)で染色し、Odyssey(登録商標)近赤外スキャナー(LiCor)で画像化した4~12%のNuPAGEゲル上における各生成物0.5μgのSDS-PAGEを示している。レーン蛍光プロファイルをAlphaViewソフトウェア(ProteinSimple Corp.)を用いて統合し、ペプチド対抗体比(PAR)を決定した。重鎖または軽鎖のそれぞれにおける移動度のわずかなシフトは、単一のD10ペプチドの付加を表すと仮定されるが、これは、重鎖については最大5つの識別可能なバンド、軽鎖については1つの識別可能なバンドと一致し、それぞれのヒンジ領域システインの数とも一致する。重鎖および軽鎖上のペプチドの平均数は、各マイナーバンドの相対存在量とその割り当てられたペプチド数との積の合計から別々に計算された。各鎖はIgG全体中に2つあるため、PARは、重鎖および軽鎖からのそれらの数の2倍の合計から計算された。化学的コンジュゲーション反応におけるPAR値対ペプチド-マレイミド:mAb比が
図3Bに示されており、これは、最大8モル:モルまでのコンジュゲートされたペプチドの数の増加に伴うPARの直線的な増加を示している。
【実施例2】
【0137】
TGF-β1へのmAb1-D10化学的コンジュゲートの結合
この例では、DTTの比を8~10モル:モルに変え、マレイミド-ペプチド:mAbを3または15モル:モルのいずれかにしたことを除き、実施例1に記載したのと同じようにして、異なるPARの一群の化学的コンジュゲートを製造した。対照として、ヒトIgG1(ハーセプチン(登録商標))化学的コンジュゲートをアルゴン下、37℃、2時間の3モル:モルのトリス(2-カルボキシエチルホスフィン)(TCEP)による、そのヒンジジスルフィドの還元と、それに続く、25℃で一晩、15モル:モルのマレイミド-ペプチドによる反応によって製造し、限外濾過を用いて脱塩することにより精製した。
【0138】
TGF-β1と結合するそれらの能力を評価するために、化学的コンジュゲートを1:1のモル比でTGF-β1と混合し、続いて、pH7.2のリン酸緩衝食塩水(PBS)中のSuperdex200(GE Healthcare)でサイズ排除クロマトグラフィーを行った。mAb1-D10化学的コンジュゲート単独は、
図4Aに示されるように、未修飾mAb1よりも早く溶出する幾分不均一なピークを生成し、これは、コンジュゲートされたペプチドによって生じる電荷効果による可能性が高い。コンジュゲートへのTGF-β1の添加は、mAb1またはmAb1-D10化学的コンジュゲートのいずれよりも早く溶出するピークを生じ、これは、より高分子量の複合体の形成を示している(
図4B)。同様に、未修飾mAb1抗体へのTGF-β1の添加は、より早い保持時間へのシフトを生じさせた(
図4C、4D)。対照的に、ハーセプチン(登録商標)へのD10の化学的コンジュゲーションは、mAb1コンジュゲートと同様に抗体単独の保持時間にシフトを引き起こしたが(
図4E、4F)、ハーセプチン(登録商標)-D10コンジュゲートへのTGF-β1の添加(1モル:モル)は、その溶出時間または見かけのMWにいかなる変化も生じさせず(
図4F、4G)、これは、コンジュゲートへの結合が、コンジュゲーションの結果として生じたものではないことを示している。
【実施例3】
【0139】
ヒドロキシアパタイトへのmAb1-D10化学的コンジュゲートのペプチド依存的結合
この例では、
図2に示されているように、25mM NaCl、1mM DTPA、20mMホウ酸ナトリウム、pH8中、12当量のDTTを用いて、37℃で2時間、ヒンジ領域ジスルフィドを還元し、続いて、遊離チオールの一部をジスルフィドに変換するために2モル:モルの2,2’-ジピリジルジスルフィド(Sigma)と反応させることによって、D10とmAb1との化学的コンジュゲートを生成した。これに続き、実施例1に記載のD10-マレイミドペプチドとの反応を行った。最終生成物は、限外濾過により精製した。一部(25μg)は、スピンカラムで5mMリン酸ナトリウム(pH7.4)中に交換し、セラミックヒドロキシアパタイト(CHT)タイプII(BioRad)の100μLカラムでクロマトグラフィーにかけ、5~500mMリン酸ナトリウム(pH7.4)の勾配で0.5mL/分の流速で溶出させた。未修飾のmAb1を対照として使用した。A
280カラムプロファイルが
図5Aに示されている。mAb1はカラムへの微量の結合のみを示したが、コンジュゲートの約半分が結合し、0.2Mリン酸付近で溶出した。画分を濃縮し、SDS-PAGEによって分析した(
図5B)。未結合(フロースルーまたは「FT」)画分は、ほぼ未修飾mAbを示したが、主ピーク4は、SDS-PAGEによる推定で6のPARを有するコンジュゲートを含んでいた。
【実施例4】
【0140】
ヒドロキシアパタイトへの結合に対する一連のペプチド負荷の影響
この例では、実施例1に記載の様々な数のペプチドを有する一連のD10ペプチド化学的コンジュゲートを、実施例3に記載のようなCHTタイプIIカラムでのクロマトグラフィーにかけた。A
280プロファイルおよび結合したコンジュゲートの割合およびピーク保持時間のプロットが
図6Aに示されている。
図6Bに見られるように、カラムに結合
したコンジュゲートの量は、PAR3.8まで増加して横ばいになり、より多くのペプチドでは減少し始めた。対照的に、樹脂によるコンジュゲートの保持時間(相互作用の強さを示す)は、9までのペプチド数の増加に伴い増加した。
【実施例5】
【0141】
TGF-β1をin vitroで中和する能力に対するmAb1へのD10ペプチド化学的コンジュゲーションの効果
この例では、3つのmAb1-D10コンジュゲートのセットを、
図2に示されるように、実施例1に記載されているようにして製造した。対照のコンジュゲートは、コンジュゲーション中にD10-マレイミドペプチドを省くことによって製造した。
図3に示されるようなSDS-PAGE分析によって、これら3つのコンジュゲートについて、ペプチド負荷(PAR)は0、5または9であると決定した。次いで、これらのコンジュゲートがTGF-β1を不活性化する能力を1時間のTGF-β1との共インキュベーションによって決定した。次いで、増殖培地中の連続希釈物をヒトTGF-β1受容体を発現するヒトA549細胞に加え、続いて一晩インキュベートした。次いで、活性TGF-β1に対する細胞応答を増殖培地中へのIL-11の放出によって決定し、これをIL-11に特異的なELISAアッセイによって検出した。3つのコンジュゲートおよびmAb1対照についてのIL-11応答が
図7に示されている。全ての場合において、約0.1nMの抗体でIL-11放出の最大半量阻害(EC
50)が生じた。両方のコンジュゲート(PAR=5およびPAR=9)とペプチドを欠く擬似コンジュゲート(PAR=0)は、mAb1よりもわずかに良好な阻害を示した。コンジュゲートしたペプチドの数は、EC
50に影響を及ぼさなかった。
【実施例6】
【0142】
マウスに投与したmAb1の体内分布に対するコンジュゲートされたD10ペプチドの影響
D10-mAb1化学的コンジュゲートを、
図2に示されるように、実施例1に記載されているのと同様にして製造した。mAb1(19.6mg)を脱気ホウ酸緩衝液中に交換し、37℃で1.5時間、10.6当量(1.06μmol)のDTTと反応させた後、緩衝液交換せずに、アルゴン下、25℃で1.5時間、6当量のD10ペプチド(Ac-D10-C2-PEG12-C6-マレイミド)と反応させた。コンジュゲーションされていない遊離のチオールは、N-エチルマレイミド12当量の添加と、それに続く25℃、30分間のインキュベーションによりブロックした。最終生成物を限外濾過により精製した。SDS-PAGEを用いて、ペプチド対抗体比を決定した(約4.8のPAR)。軽鎖は、軽鎖システイン残基への単一のペプチドの付加に対応する微量のバンドを示した。
【0143】
コンジュゲートおよびmAb1抗体対照を、製造者によって記載された条件を用いて、AlexaFluor(登録商標)750(Thermo Fisher)により別々に標識した。蛍光試験品をSKH-1無毛マウスに投与し、これを投与直後(0.3~1時間)、および4時間後、ならびに1、2、3、4、7、8、および9日後にIVIS装置(Perkin Elmer)により画像化した。1mg/kgの標識mAb1およびコンジュゲートを注射したマウスの画像が
図8Aに示されている。標識mAb1の蛍光は、体全体に均一に分布しており、このパターンは9日間にわたって維持されたが、強度は減少した。対照的に、1日後、mAb1-D10コンジュゲートは、骨への局在化と一致して、背側正中、四肢および尾部またはその付近に濃縮されていたが、体の他の場所ではほとんど検出できないレベルであった。
図8Aの画像と一致して、
図8Aの画像において測定された心臓の蛍光と比較した遠位大腿骨の蛍光の比率は、対照と比較して、mAb1-D10コンジュゲートについては、24時間までに有意に上昇しており(P<0.05)、168時間まで有意に上昇したままであった(
図8Bを参照)。この分布は、強度がわ
ずかに変化しただけで、9日間にわたって維持された。
【実施例7】
【0144】
組換えマウス抗TGFβ-D10抗体融合バリアントの製造
図9Aおよび
図9Bに示される一群の組換え抗TGFβ-D10ペプチド融合バリアントを以下のようにして製造した。
【0145】
重鎖および軽鎖発現ベクター構築物
様々な位置にD10ペプチドを有するmAb1重鎖および軽鎖を発現するための一群のプラスミドを生成した。さらに、D10ペプチドを含まない野生型のmAb1重鎖および軽鎖についても、2つのプラスミドを生成した。クローニング目的のためにインフレームで設計された適切な制限酵素部位に隣接した、全てのコドン最適化配列を合成により生成した(GeneArt)。C末端にD10ペプチドを含む、または含まないマウスIgG1定常領域、およびmAb1野生型軽鎖全体をコードする3つの遺伝子断片をApaLI/HindIII制限酵素およびその後のライゲーションを用いて、Durocherら(2002,Nucl.Acids Res.30(2):E9)によって記載されたpTTベクターの類似体である空のエピソーム哺乳動物発現ベクターpFFにクローニングし、「mIgG1_CH123_pFF」、「mIgG1_CH123D10_pFF」および「mAb1_VLCL_pFF」を作製した。N末端D10ペプチドを含む、または含まない可変領域をコードする遺伝子断片は、重鎖についてはApaLI/EagIを、軽鎖についてはApaLI/MfeIを用いて、ベクターにクローニングした。野生型定常領域を置換するために、MfeI/HindIIIを使用して、C末端D10および異なる長さのG4S(配列番号9)スペーサーを有するマウスIgカッパ軽鎖の定常領域をコードする遺伝子断片を「mAb1_VLCL_pFF」にクローニングした。各構築物に予想される正しいDNA配列をDNA配列決定(ACGT,Inc.)によって確認した。
【0146】
融合バリアントの構築および発現
表1に記載の融合バリアントおよびペプチドなしの対照を生成するために、重鎖ベクターおよび軽鎖ベクターの各々の1つを同時トランスフェクションのために選択することによって、融合バリアントを作製した。「PAR」(ペプチド対抗体比)は、その重鎖および軽鎖の両方において、最終的に発現される抗体に付加されていると予想されるペプチドの総数を反映している。融合バリアントID「mAb1 F1」は、修飾なしのmAb1配列と実質的に同一である「野生型」(「wt」)構築物を表す。「HC」はmAb1の重鎖を表し、「LC」はmAb1の軽鎖を表し、「D10」はD10ペプチド(配列番号1)を表し、「G4S」は一部の構築物に組み込まれるgly-gly-gly-gly-ser(配列番号9)からなるスペーサー配列を表す。
【0147】
【0148】
所望の組換え融合バリアントが発現される能力を評価するために、表1からの16個のバリアントを、製造者によって記載された条件を用いて、Expi293F(商標)細胞(Life Technologies)への同時トランスフェクションによって評価した。4日後、発現を馴化培地のSDS-PAGEによって測定した。全てのバリアントが、10~30μg/mLと推定されるレベルで発現されていた。5および7日後にわずかに高いレベルが観察されたが、発現レベルはバリアントに依存的であった。WT(mAb1 F1)、HC-D10:LC-D10(mAb1 F8)、およびHC-D10:LC-G4S-D10(mAb1 F9)は特に高い発現を示したが、一方D10-HC:D10-LC(mAb1 F12)の発現は乏しかった。
【0149】
より大規模な発現
20種類全ての組換えmAb1-D10融合バリアントを30mLスケールでExpi293-F細胞において発現させた。馴化培地(CM)を6日目に回収し、発現レベルを非還元SDS-PAGEによって評価した。最初の評価と比較して、やや高いレベルの発現(30~150μg/ml)が観察されたが、相対的な発現レベルは、より小規模のトランスフェクションと一致していた。
【実施例8】
【0150】
組換えmAb1-D10融合バリアントの特徴付け
発現レベルおよびTGF-β1結合
発現レベルの定量化およびTGF-β1に結合する組換えmAb1-D10融合バリアントの能力をOctet(登録商標)QK384を用いて評価した。マウスIgGのためのOctet(登録商標)バイオセンサーを、サンプル希釈液(0.01%BSAおよび0.02%Tween20を含有するPBS、pH7.4)で1:10に希釈した馴化培地または1.25~100μg/mLの範囲の精製mAb1標準の2倍連続希釈液中に浸漬させた。サンプルを500rpmで振盪しながら、結合データを2分間収集した。力価
は、初期結合速度の4パラメータフィットおよび標準から得られたものとの比較を用いて計算した。次いで、バイオセンサーを希釈液で1分間洗浄して培地を除去し、ベースラインを再確立して、次いで、結合を追跡するために40nMのTGF-β1を含有するウェルに1000rpmで3分間浸漬させた。この後、1000rpmで3分間、希釈液にセンサーを移すことによる解離工程が続いた。表2に見られるように、培地中の融合バリアントの濃度は、11~178μg/mLの範囲(「Octet濃度」)であり、SDS-PAGEによって観察された傾向(「発現レベル」)と概して一致していた。さらに、融合バリアントの全てがTGF-β1に結合することができ、これは、表示の位置のいずれかにD10ペプチドが存在することが、抗原結合に深刻な影響を及ぼさなかったことを示唆している。
【0151】
マウスFcRn結合
組換えmAb1-D10融合バリアントによるマウスFcRn結合をOctet QK384を用いて評価した。全ての工程を1000rpmで実施した。10μg/mLの抗体濃度を達成するように希釈された馴化培地を5分間、抗マウスIgG Fvバイオセンサーに接触させた。次いで、バイオセンサーを、ベースラインを確立するために、PBSP pH6.0(50mMリン酸ナトリウム、pH6.0、150mM塩化ナトリウム、0.005%界面活性剤P2O)中に浸漬させた。次いで、センサーをPBSP pH6.0中1μMに希釈された可溶性マウスFcRnを含有するウェルに3分間移し、続いてPBSP pH6.0を含有するウェル中で3分間解離させた。表2に示されるように、全てのバリアントがマウスFcRnに結合した。
【0152】
プロテインG結合
組換えmAb1-D10融合バリアントによるプロテインGへの結合をOctet QK384を用いて評価した。プロテインGバイオセンサーをサンプル希釈液中10μg/mL抗体に希釈した馴化培地を含むウェルに浸漬させ、1000rpmで3分間シグナルを追跡した。表2に示されるように、全てのバリアントがプロテインGに結合した。
【0153】
【0154】
SDS-PAGE
精製WT構築物ならびに組換え融合バリアントmAb1 F2、mAb1 F6、mAb1 F7、mAb1 F11、mAb1 F12、mAb1 F16、およびmAb1
F17を還元および非還元条件下、4~20%トリス-グリシンSDS-PAGEゲル(Novex、Life Sciences)で分析し、クマシーブルーにより染色した。ProteinSimple(登録商標)イメージャーによって収集した可視光画像が
図10に示されている。重鎖および/または軽鎖の移動度のわずかな低下が観察され、これは、それぞれについて予想されるD10ペプチドの存在および数と一致していた。不純物および共有結合性の凝集体は検出されなかった。
【0155】
示差走査蛍光光度法(DSF)による熱安定性
重鎖および軽鎖の末端におけるD10ペプチドの全ての可能な組合せを代表するいくつかの組換えmAb1-D10融合バリアントの熱安定性を、レポーター色素としてSYPRO(登録商標)Orange(Thermo Scientific)を使用した示差走査蛍光光度法によって決定した。より高い温度でのタンパク質の安定性は、典型的な貯蔵条件下でのそれらの安定性を予測するものであり、よって、治療薬としての製造および
使用に対するそれらの適合性を評価するために使用し得ることが一般に受け入れられている。熱安定性は、タンパク質構造のアンフォールディングによって露出される疎水性領域への結合に伴って蛍光に増加を示す色素を用いて、リアルタイムPCR装置上で評価される(Loら,2004,Anal.Biochem.332(1):153-9)。1:1000希釈のSYPRO(登録商標)Orangeを含むサンプル(タンパク質1mlあたり0.5mgで10μL)の蛍光をCFX96リアルタイムPCR検出システムで温度を上げながら追跡した。データはCFX Manager 3.0(Bio-Rad Laboratories)を用いて分析した。
図11は、いくつかのバリアントについての温度による蛍光の変化率を示している。構造遷移によって影響されないタンパク質構造の部分への色素の結合を分離するため、一般に絶対蛍光ではなく変化率が使用される。負の変位は蛍光変化率の増加を反映し、最小値はアンフォールド状態への遷移の中間点(「Tm」)を表す。試験したバリアントのいくつか(mAb1 F6、mAb1 F11、mAb1 F16)は、未修飾の抗体対照(「WT」=mAb1 F1)と区別がつかないTmプロファイルを示した。他の2つ(mAb1 F2およびmAb1 F7)は、主要な遷移についてTmの有意な減少を示した。2つのバリアント(mAb1 F12およびmAb1 F17)が最も低いTm値を示した。特に、軽鎖のN末端にD10ペプチドを含む4つ全ての組換えmAb1-D10融合バリアントがTmの有意な減少を示し、これは、mAb1抗体上のこの位置にペプチドが配置されると、その構造が不安定になることを示唆している。逆に、重鎖のいずれかの末端へのD10ペプチドの配置は、Tmのいかなる変化とも相関していなかった。
図11に示されているように観察されたいくつかの融合バリアントについての優勢な遷移のTm値が表3にまとめられている。
【0156】
【実施例9】
【0157】
TGF-β1のin vitroでの中和における組換えmAb1-D10融合バリアントの効力
TGF-β1活性の中和における組換えmAb1-D10融合バリアントの効力を、培地に添加したTGF-β1に応答したA549腫瘍細胞によるIL-11の分泌のin vitroにおける阻害によって決定した。手順は、実施例3に記載されているようにして行った。実施例7からのいくつかの代表的な融合バリアントを(それらの精製の容易さの指標として)それらのプロテインGに対する親和性に基づき選択した。8つのバリアント(mAb1 F1、mAb1 F2、mAb1 F6、mAb1 F7、mAb1 F11、mAb1 F12、mAb1 F16、およびmAb1 F17)についてのTGF-β1阻害プロファイルが
図12Aおよび
図12Bに示されている。全ての融合タンパク質がmAb1対照と同様なEC
50を示した。
【実施例10】
【0158】
組換え融合バリアントによるTGF-β1の結合
実施例7の組換えmAb1-D10融合バリアントをBiacore(登録商標)によって検出される表面プラズモン共鳴(SPR)を使い、TGF-β1結合について定量的にも評価した。平衡定数KDを決定するために、精製されたバリアントを含有するサンプルを、アミンカップリングしたTGF-β1を有するセンサーチップに通した。チップ上の隣接するTGF-β1分子から生じるアビディティー効果の可能性を最小化するために、100応答単位(RU)未満のTGF-β1の標的固定化レベルを選択した。固定化のレベルは、チップ表面のNHS/EDC活性化後、エタノールアミンでクエンチする前の応答単位の変化によって決定した。融合バリアント、WT融合バリアントF1、およびmAb1対照をHBS-EP緩衝液中で30、10、3、1および0.37nMに希釈し、TGF-β1チップ上に30μL/分で3分間通し、続いて5分間、同じ緩衝液中での解離を行った。試験の間に、流速75μL/分でチップ上に40mMのHClを30秒間で2回注入して通すことによって、チップ表面を再生し、結合した抗体を除去した。表4に示されるように、全ての融合バリアントおよびWT構築物(F1)についての平衡定数(KD)がmAb1対照の2.4倍以内であった。予想外なことに、融合バリアントにより誘発された最大のシグナル(RU)は、ペプチドの数の増加に伴って減少し、バリアントF17(D10-HC-D10/D10-LC、PAR=6)が最も低いシグナルを示した。これは、試験された全ての融合バリアントがTGF-β1の中和においてmAb1またはWT構築物のいずれかに匹敵するか、またはそれよりも強力であることを示した実施例9に記載されているA549細胞の効力アッセイとは対照的である。この低下の可能な説明は、チップマトリクス(カルボキシメチルデキストラン)と負に荷電したD10ペプチドとの間の静電反発力から反映され得る。
【0159】
【実施例11】
【0160】
ヒドロキシアパタイトへの組換えmAb1-D10融合バリアントの結合
実施例7からの組換えmAb1-D10融合バリアントを、実施例3に記載されているセラミックヒドロキシアパタイト(CHT)カラムへの結合についても試験し、それらが骨のミネラル構造に結合する可能性を評価した。組換えmAb1-D10融合バリアント(5mMリン酸ナトリウムpH7.4中、各25μg)をヒドロキシアパタイトの100μLカラム(CHTタイプII、BioRad)に付し、0.005~0.5Mリン酸N
a
+(pH7.4)の勾配を用いて溶出させた。カラムから溶出する移動相中のタンパク質をA
280で追跡した。カラム性能の一貫性を確実にするために、各組の試験の始めと終わりに標準(通常、mAb1-D10化学的コンジュゲート)について試験した。
図13は各試験のA
280プロファイルを示している。以下の表5には、保持時間(RT)および結合画分が示されている。1つを除く全ての組換え融合バリアントがほぼ定量的に結合したが、それらの保持時間に反映されるように、親和性に差を示した。保持時間の順位はPARとあまり相関せず、これは、ペプチドの位置が結合に有意に影響することを示唆している。特に、最も強い結合(最高のRT)がバリアントF7(PAR4)で観察された一方、バリアントF17(PAR6)はわずかに弱い結合を示した。1つのバリアント(F6、PAR2)は、ほとんどのPAR4バリアントよりも弱い結合を示したが、他のPAR2バリアント(F2およびF11)よりも有意に良好であった。軽鎖のN末端のみにペプチドを有する1つのバリアント(F2)は、そのRTおよび結合画分に反映されるように、弱い結合しか示さなかった(23%)。mAb1-D10化学的コンジュゲート(「CC」;約4のPAR)は2つのピークを生成し、84%が全てのPAR4融合バリアントよりも早いRTで溶出した。
【0161】
【実施例12】
【0162】
組換え融合バリアントのマウスにおける体内分布
実施例6に記載されているようにして作製された組換えmAb1-D10融合バリアント(F6、F16、およびF17)およびmAb1-D10化学的コンジュゲートから選択されたサブセットの体内分布をCD-1マウスへの尾静脈注射後に決定した。組換えバリアントは、発現および精製収率、TGF-β1結合親和性、細胞での効力、およびヒドロキシアパタイトへの結合を含む、いくつかの要因に基づき選択した。これらのバリアントは、標的化がヒドロキシアパタイトへの結合を再現するかどうか、またはそれがペプチドの数の相関的要素であるかどうかを評価するために、2、4、または6個のD10ペプチドを含む例を含んでいた。タンパク質をHEK293細胞中で発現させ、プロテインA上で精製した。3つの組換えmAb1融合バリアントをin vitroとin vivoで詳細に分析した。これらにおいて、D10ペプチドは、重鎖のC末端(mAb1 F6)、重鎖のN末端およびC末端の両方(mAb1 F16)、または重鎖のN末端およびC末端と軽鎖のC末端(mAb1 F17)のいずれかのみに組換え的に付加されてい
た。mAb1 F6、F16およびF17組換えバリアントはそれぞれ、2、4および6のペプチド対抗体比(PAR)を有している。実施例6の試験において骨への標的化を示したmAb1-D10ペプチド化学的コンジュゲート(約4.8のPAR)をポジティブコントロールとして選択した。
【0163】
組換え融合バリアントおよび化学的コンジュゲートは、50mMホウ酸ナトリウムpH8.65中、色素:タンパク質モル比およそ5:1でDylight(登録商標)800-4×PEG NHSエステル(Thermo Scientific)との反応により標識した。標識の度合い(DOL)は、色素:タンパク質比の調整によって20%(約1.2モル:モル)以内に維持した。次いで、標識タンパク質を尾静脈注射によりCD-1マウスに1mg/kgで投与した。続いて、投与後24、48、168、および504時間(3週間)にIVIS小動物近赤外イメージャー(Perkin Elmer)により麻酔をかけた動物を撮像した。骨への送達を確認するために、240および504時間において、大腿骨および脊椎を各群の動物から回収した。
【0164】
図14の背面図に示されているように、mAb1-D10融合バリアントおよび化学的コンジュゲートは全て、脊柱近くの背側正中に濃縮され、3週間(504時間)そこに留まったが、試験品のシグナル強度間に有意差が観察された。
図14に示されているように、肩と骨盤との間の脊柱の部分を含む関心領域(ROI)を定量化に使用した。DOLに対して標準化したROI内の最大放射効率を計算し、
図15に示されるようにプロットした。重鎖C末端のそれぞれにD10ペプチドを有する組換え融合バリアントF6は、試験の全過程(3週間)にわたって、全ての構築物の脊柱において最高のレベルを示した。48時間後、ROI内のシグナル強度の順位は、バリアントF6>バリアントF16>バリアントF17≒化学的コンジュゲートとなっており、この順序は、試験の過程を通して維持された(
図15)。Phoenix(登録商標)WinNonlin(登録商標)ソフトウェア(Pharsight)を使用して計算された、経時的なROI内の最大放射効率からバックグラウンドの自己蛍光(ビヒクルのみの対照動物由来)を差し引いた曲線下面積(AUC)が表6に示されている。mAb1対照と比較して、骨曝露(AUC)には8~22倍の増加があり、D10含有構築物間では中程度の差(最大2.5倍)があった。バリアントF6は、mAb1と比較して、最も高い増加を示した(21.8倍、p<0.05)。WinNonlin(登録商標)を使用して計算された組織半減期も同様に、バリアントF6ではmAb1と比較して、骨における半減期に10倍超の増加を示した(p<0.05)。
【0165】
各コホートの代表的な動物からの脊椎および大腿骨を240および504時間後に単離し、周囲の組織から分離して画像化した(
図16)。これらのサンプルの相対蛍光強度は、生きている動物で観察された背面画像シグナルと一致しており、これは、それらが骨における組換え融合バリアントおよび化学的コンジュゲートの存在を反映していることを示している。
【0166】
【実施例13】
【0167】
組換えヒト抗TGFβ-D10抗体融合バリアントの製造
重鎖C末端にD10配列を有するmAb2(ヒンジ変異S228Pを有するヒト抗TGFβIgG
4抗体)を製造するための発現ベクター(すなわち、mAb2 HC-D10/mAb2 wt LC(配列番号14/配列番号15)、これはバリアントF6におけるものに対応する立体配置を有し(
図9B参照)、以下mAb2 F6と呼ばれる;表7参照)を、実施例7に記載されているのと同様にして生成した。Expi293F細胞をミニプレップDNAでトランスフェクトし、6日後に馴化培地(60mL)を回収し、タンパク質生成物をHiTrapプロテインA(GE Healthcare)上で精製した。
【0168】
【実施例14】
【0169】
マウスにおけるヒト抗TGFβ-D10抗体融合タンパク質の体内分布
組換えmAb2バリアントF6(mAb2 F6)およびmAb2対照抗体をAlexaFluor(登録商標)647(Thermo Scientific)で標識し、1mg/kgの用量でC57BL/6マウスに腹腔内投与した。24時間後および96時間後、数匹のマウスを屠殺し、脊椎および大腿骨を切除し、IVIS装置で画像化した。屠殺時に得られた血清サンプル(10μL)を並行して画像化した。大腿骨遠位(小柱)ROIおよび腰椎についての平均総放射効率が
図17Aおよび
図17Bに示されている。表8には相対強度がまとめられている。これらの結果は、mAb2へのD10の組換え付加の結果として、96時間後における腰椎および大腿骨における抗体量の大幅な増加を示し、血清中の有意な減少を示している。
【0170】
【実施例15】
【0171】
マウス抗TGFβ-D10抗体融合タンパク質のマウスにおける単回投与の血清および骨での薬物動態
この例では、マウス抗TGFβ-D10抗体融合タンパク質の薬物動態をマウスにおいて測定した。
【0172】
mAb1または組換えmAb1 F6(表2参照)の単回用量をG610Cマウス(骨形成不全症動物モデル;各時点につきn=12)に腹腔内投与し、投与後4時間または2、7、15、22、および43日後に血液サンプルを採取した。関連する抗体の血清濃度を検出および定量するために最適化されたELISAが利用された。
【0173】
骨の画像化のために、フルオロフォア標識mAb1、組換えmAb1 F6または他の様々なD10代替物の単回用量をヌードCD-1マウスに静脈内投与し(各時点につきn=3)、投与後4時間または1、2、4、7、10、および21日後にin vivo光学イメージングを実施した。マウス脊柱の蛍光画像を生成し、これは、骨中のmAb1とmAb1 F6との間の相対的な試験品の比較を可能にした(図示せず)。
【0174】
血清および骨における薬物動態プロファイルはそれぞれ、
図18Aおよび18Bに見られ、以下の表9の薬物動態パラメータを与えた。
【0175】
結果は、単回投与後の血清および骨中のmAb1とmAb1 F6との間の薬物動態における基本的な対比を明らかにした。mAb1 F6は、mAb1と比較して、血清中において13倍少ないAUC(曝露)、骨中で22倍高い曝露を示した。加えて、mAb1
F6は血清中でmAb1よりも14倍短いt1/2と、それに応じて13倍速いクリアランスを示した。最後に骨については、mAb1 F6はmAb1よりも11倍長いt1/2と、それに応じて17倍遅いクリアランスを示した。これらの属性は、安全性の観点からTGFβの末梢(血清)阻害が望ましくない場合がある臨床領域におけるヒト型のmAb1-D10にとって有利であり得る一方、骨中のより高い曝露は効能を高め得る。
【0176】
【実施例16】
【0177】
マウス抗TGFβ-D10抗体融合タンパク質のマウスにおける複数回投与のピークトラフ血清薬物動態
この例では、骨形成不全症の動物モデルにおいて、複数回投与のピーク-トラフ薬物動態試験を実施した。
【0178】
mAb1およびmAb1 F6(表2参照)を0.3mg/kgおよび1mg/kgの濃度でG610Cマウス(n=10)の腹腔内に8週間にわたって毎週3回(合計24回投与)投与し、血液サンプルを投与1および投与23の後(試験の開始時および終了時)、24時間および48時間後に採取した。結果は1mg/kgの投与量についてのみ示されている(
図19参照)。関連する抗体の血清濃度を検出および定量するために最適化された質量分析アッセイが利用された。
【0179】
結果は以下の表10に表示されている。結果は、投与1および23の両方の後の血清におけるmAb1とmAb1 F6との間の薬物動態の基本的な対比を明らかにした。投与1および23のどちらについても、投与後24および48時間の両方で、mAb1と比較してmAb1 F6について有意に低い血清濃度が観察された。加えて、mAb1 F6の投与後24から48時間の間の勾配は、投与量1および23の両方でmAb1と比較して、より急勾配であり、これは、mAb1 F6はおそらくその高い骨(ヒドロキシアパタイト)への親和性のために、mAb1よりも速い速度で血清(全身循環)を離脱することを示唆している。最後に、mAb1 F6およびmAb1の両方が、投与1から23まで血清中に蓄積しているように見えるが、mAb1 F6はmAb1と比較して、低下した濃度で蓄積するように見える(投与1から23までに、mAb1 F6:2.5~3.5倍蓄積、mAb1:4~5.5倍蓄積)。これらの属性は、安全性の観点からTGFβの末梢(血清)阻害が望ましくない場合がある臨床領域におけるヒト型のmAb1 F6にとって有利であり得る。
【0180】
【実施例17】
【0181】
mAb1およびmAb1 F6を用いた腰椎骨における複数回投与効能試験
この例では、骨の密度および強度に対する非標的化mAb1に対する骨標的化(mAb1 F6)の効能を決定するために、骨形成不全症の動物モデルにおいて複数回投与の効能試験を実施した。
【0182】
mAb1およびmAb1 F6を0.3、1および5mg/kgで毎週3回、8週間、G610Cマウスの腹腔内に投与した。最終の投与後、マウスを剖検し、第6腰骨をμCTにより画像化して、全体積に対する骨体積(BV/TV)を決定し、最大破断力(骨強度)を確かめるために生体力学的試験にかけた。
【0183】
図20および21に結果が示されている。13C4で処置したG610Cマウスに比べて、BV/TV(%)の有意な変化が、1および5mg/kgの用量での両方の処置について観察された。13C4で処置したG610Cマウスに比べて、最大破断力の有意な変化がmAb1 F1については1および5mg/kg、mAb1については1mg/kgのみで観察された。抗体対照(13C4)で処置したG610Cマウスは、WTバックグラウンド系統と比較してBV/TVと最大破断力の両方の有意な減少を示した。これらの結果は、両方の処置が、週に3回の投与のこのレジメンで、G610Cマウスにおいて、BV/TVと最大破断力に同様な用量関連変化を誘導することを明らかにしている。5mg/kgのマウスのコホートの半分が、1mg/kgまたは5mg/kgのmAb1で処置されたマウスよりも実質的に高い最大破断力値(40ニュートン以上)を示したことから、骨強度に対するmAb1 F6の効能向上の傾向が確かに存在していた。
【実施例18】
【0184】
mAb1およびmAb1 F6を用いた腰椎骨における投与頻度試験
この例では、mAb1 F6についての適切な投与頻度を決定し、骨標的抗体のその最適有効性を達成するために、骨形成不全症の動物モデルにおいて、投与頻度試験を実施した。
【0185】
mAb1およびmAb1 F6を5mg/kgで様々な頻度(毎週3回、毎週1回、2週間毎に1回、または4週間毎に1回)で12週間、G610Cマウスに腹腔内投与した。mAb1およびmAb1 F6の両方についてピーク値およびトラフ値を確認するため、薬物動態(PK)血清サンプルを試験の開始時および終了時に採取した。最終の投与後、マウスを剖検し、第6腰骨をμCTにより画像化して、全体積に対する骨体積(BV/TV)を決定し、最大破断力(骨強度)を確かめるために生体力学的試験にかけた。
【0186】
図22、23および24に結果が示されている。mAb1については、13C4で処置したG610Cマウスに比べて、BV/TV(%)の有意な変化が、毎週3回、毎週1回、2週間毎に1回、および4週間毎に1回において観察された。mAb1 F6については、13C4で処置したG610Cマウスに比べて、BV/TV(%)の有意な変化が、毎週3回および毎週1回において観察された。mAb1処置は、2週間毎に1回および4週間毎に1回の投与頻度で、mAb1 F6処置と比較して、有意に高いBV/TVを示した。mAb1については、13C4で処置したG610Cマウスと比較した最大破断力の有意な変化が、毎週3回、毎週1回、および2週間毎に1回において観察された。mAb1 F6については、13C4で処置したG610Cマウスと比較した最大破断力の有意な変化が、毎週3回および毎週1回において観察された。対照抗体(13C4)で処置したG610Cマウスは、WTバックグラウンド系統と比較して、BV/TVの有意な減少と、より低い最大破断力の傾向を示した。
【0187】
これらの結果は、mAb1およびmAb1 F6の両方が、G610CマウスにおけるBV/TVおよび最大破断力において、同様な最大効果を誘発し得ることを実証している。mAb1は、mAb1 F6と比較して、有効性の持続性において利点を有するようであり、BV/TVについては4週間毎に1回、最大破断力については2週間毎に1回投与された場合に有意な有効性を維持する。しかしながら、同等に有効な投与レジメン(mAb1、2週間毎に1回、mAb1 F6、毎週1回)におけるPK血清サンプルの平均は、mAb1およびmAb1 F6についてそれぞれ、約38μg/mLおよび8μg/mLという結果となった。これは、血清曝露がmAb1 F6ではより少なくなり得ることを示唆しており、これは、OI患者に安全性の利点を提供し得る。
【実施例19】
【0188】
mAb1 F16を用いた腰椎骨における投与頻度試験
この例では、mAb1 F16についての適切な投与頻度を決定し、骨密度に対するその最適な影響を達成するために、骨形成不全症の動物モデルにおいて投与頻度試験を実施した。
【0189】
mAb1およびmAb1 F16を5mg/kgで毎週3回、8週間、G610Cマウスの腹腔内に投与した。最終の投与後、マウスを剖検し、第6腰骨をμCTにより画像化して、全体積に対する骨体積(BV/TV)を決定した。
【0190】
結果が
図25に示されている。13C4で処置したG610Cマウスに比べて、BV/TV(%)の有意な変化が、mAb1およびmAb F16の両方について5mg/kgで観察された。対照抗体(13C4)で処置したG610Cマウスは、WTバックグラウンド系統と比較してBV/TVの有意な減少を示した。これらの結果は、mAb1とmAb F16の両方が、この投与レジメンの下で、G610Cマウスにおいて同様なBV/TVの用量関連変化を誘導することを実証している。
【実施例20】
【0191】
mAb1 F11を用いた骨における投与頻度試験
この例では、mAb1 F11についての適切な投与頻度を決定し、骨密度に対するその最適な影響を達成するために、野生型マウスにおいて投与頻度試験を実施した。
【0192】
mAb1およびmAb1 F11を5mg/kgで毎週3回、11週間、野生型マウスの腹腔内に投与した。試験の生存部分中に、いくつかの時点でin vivo μCTをとった。データは、総体積に対する骨体積(BV/TV%)について、投与後9週間でのみ示されている。
【0193】
結果が
図26に示されている。13C4で処置した野生型マウスに比べて、BV/TV(%)の有意な変化が、5mg/kgの用量での両方の処置について観察された。これらの結果は、mAb1とmAb1 F11の両方が、この投与レジメンにおいて、野生型マウスにおいて同様なBV/TVの用量関連変化を誘導することを実証している。
【実施例21】
【0194】
マウスおよびヒトの骨標的化抗TGFβ抗体mAb1 F6およびmAb2 F6のマウスにおける体内分布
この例では、蛍光標識したmAb1、mAb1 F6、mAb2、およびmAb2 D10(mAb2の重鎖C末端にコンジュゲートしたD10;mAb2 F6)の、野生型マウスにおける体内分布を比較するための試験を実施した。各試験品およびビヒクルの単回腹腔内投与をマウスに行い、組織採取のために様々な時点でマウスを安楽死させた。採取した他の組織(データは示さず)のうち、mAb1およびmAb1 F6を投与した1、4、10、20、43、および98日後に腰椎、心臓、肝臓、および腸を回収した。また、mAb2およびmAb2 D10を投与した後、24および96時間においても組織をサンプリングした。
【0195】
図27~33に結果が示されている。
図27~30は、投与後1~98日目における、mAb1、mAb1 F6、またはビヒクルを投与されたマウスからの組織における総放射効率(TRE)を示している。腰椎は、mAb1に比べて、mAb1 F6の頑強な持続的存在を示し、各時点において有意に高い総放射効率(TRE)を示す。心臓および肝臓においては、mAb1 F6はmAb1に比べて、はるかに低いTREを示す。最後に、腸では、ビヒクルといずれの試験品との間にも、有意差は認められなかった。
【0196】
これらの結果は、mAb1 F6が他の組織(例えば、心臓および肝臓)において、よ
り低い曝露を逆にもたらす、高い骨親和性によって特徴付けられることを実証している。結果はまた、全身性TGF-β阻害を制限し、有害な副作用を減少させながら、骨にTGF-β阻害の部位を標的化することの安全性の利点を示している。腸において、ビヒクルと比較して、いかなるTREも存在しないことは、フルオロフォアがそれぞれの抗体上でその標識を維持したことを明らかにしている。以前のデータは、フルオロフォアが抗体上にその標識を維持しなかった場合、それが腸内で検出されることを示している。
【0197】
図31~33は、mAb2またはmAb2 D10のいずれかが投与されたマウスからの組織におけるTREを示している。
図31は、mAb2と比較して、mAb2 D10の高い骨親和性を実証している。意義深いことに、mAb2と比較して、mAb2 D10については、より高いTREが大腿骨において観察される。同じ全体的な傾向が腰椎で観察された。mAb2が投与されたマウスにおける腰椎/血清および大腿骨/血清比も、mAb2が投与されたマウスにおける比と比較して、mAb2 D10の骨標的化能を強く支持している(
図32および33)。
【0198】
本発明を詳細に、またその特定の実施態様を参照して説明したが、添付の特許請求の範囲において定義された本発明の範囲から逸脱することなく、変更および変形が可能であることは明らかであろう。より具体的には、本発明の一部の側面がここでは特に有利であると識別されているが、本発明は必ずしも本発明のこれらの特定の側面に限定されないことが企図される。一部の実施態様において、本明細書に開示された値は、開示された値から±10、20、または30%の量で代替的に変動してもよく、企図される発明の範囲内にとどまる。
【0199】
本明細書中で他に定義されない限り、本発明に関して使用される科学的および技術的用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。例示的な方法および材料が以下に記載されるが、本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料もまた、本発明の実施または試験に使用される。本明細書において言及された全ての刊行物および他の参考文献は、その全体が参照によって組み入れられる。矛盾がある場合は、定義を含め、本明細書が優先するものとする。本明細書では多数の文献が引用されているが、この引用は、これらの文献のいずれかが当該技術分野における一般常識の一部を形成することを認めるものではない。さらに、文脈によって別段要求されない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。一般に、本明細書に記載の細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、分析化学、合成有機化学、医薬および製薬化学、ならびにタンパク質および核酸化学ならびにハイブリダイゼーションに関連して使用される学術用語、および技術は、当該技術分野において周知であり、一般的に使用されているものである。酵素反応および精製技術は、当技術分野において一般的に達成されているように、または本明細書に記載されているように、製造業者の仕様書に従って実施される。本明細書および実施態様を通じて、「有する(have)」および「含む(comprise)」、または「有する(has)」、「有する(having)」、「含む(comprises)」、または「含む(comprising)」などの変形は、記述された整数または整数の群を含むことを意味すると理解されるが、他の整数または整数の群を除外するものではない。さらに、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明らかにそうでないと示さない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「抗体(an antibody)」への言及は、1つまたはそれ以上の抗体を意味する。
【0200】
本発明を説明し定義する目的で、「実質的に」という用語は、定量的比較、値、測定、または他の表現に起因する固有の不確実性の程度を表すために本明細書において利用される。「実質的に」という用語はまた、問題となっている主題の基本機能に変化をもたらすことなく、定量的表現が、記述された基準から異なり得る程度を表すためにも本明細書に
おいて利用される。
【0201】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、所与の量の±10%を指すが、問題の量がその同一性を失うであろうアミノ酸または他の対象などの不可分な対象が細分されることを指す場合は、「約」は不可分の対象の±1を指す。例えば、約2%の水は1.8%~2.2%の水を指し、一方、約6個のアミノ酸残基は5~7個のアミノ酸残基を指す。
【0202】
本明細書で使用される場合、用語「または」および「および/または」は、互いに組み合わせてまたは互いに排他的に、複数の構成要素を説明するために利用される。例えば、「x、y、および/またはz」は、「x」単独、「y」単独、「z」単独、「x、y、およびz」、「(xおよびy)またはz」、「xまたは(yおよびz)」、または「xまたはyまたはz」を指し得る。
【0203】
本明細書において参照される配列は、以下の表11および配列表に提供される。
【0204】
【0205】
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
【配列表】