(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】防災システム
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
G08B17/00 D
(21)【出願番号】P 2023133777
(22)【出願日】2023-08-21
(62)【分割の表示】P 2019083630の分割
【原出願日】2019-04-25
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】松熊 秀成
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-181354(JP,A)
【文献】特開2002-063664(JP,A)
【文献】特開2018-136726(JP,A)
【文献】特開2001-076265(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0084913(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
E21F 1/00-17/18
G08B 17/00,23/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内を複数の区間に分けて、前記区間の各々に所定数の火災検知器を設けた防災システムに於いて、
各区間の信頼性の判断は、自己の区間に設けた前記火災検知器の所定の故障予兆に関する区間信頼性情報と、自己の区間を含む複数の区間を対象とした所定の系統における各区間に設けた前記火災検知器の所定の故障予兆に関する総合故障予兆情報との比較に基づき行われることを特徴とする防災システム。
【請求項2】
請求項1記載の防災システムに於いて、更に、
前記火災検知器の信頼性の判断は、自己の所定の故障予兆に関する故障予兆情報と、自己が属する区間の前記区間信頼性情報との比較に基づき行われることを特徴とする防災システム。
【請求項3】
請求項2記載の防災システムに於いて、
前記信頼性低下と判断された区間に設けた前記火災検知器に対して信頼性低下が判断されなかった場合、前記信頼性低下が判断された区間に信頼性を阻害する要因が存在すると判断することを特徴とする防災システム。
【請求項4】
請求項2記載の防災システムに於いて、
前記信頼性低下と判断された区間に設けた前記火災検知器に対して信頼性低下が判断された場合、当該信頼性低下と判断された火災検知器の周辺環境に信頼性を阻害する要因が存在すると判断することを特徴とする防災システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災受信盤から引き出された信号線に接続された火災検知器により監視領域の火災を監視する防災システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車専用道路等のトンネルには、トンネル内で発生する火災事故から人身及び車両等を守るため、火災を監視する火災検知器が設置され、防災受信盤から引き出された信号線に接続されて火災を監視している。
【0003】
火災検知器は左右の両方向に検知エリアを持ち、トンネルの長手方向に沿って、隣接して配置される火災検知器との検知エリアが相互補完的に重なるように、例えば、25m間隔、或いは50m間隔で連続的に配置されている。
【0004】
また、火災検知器は透光性窓を介してトンネル内で発生する火災炎からの放射線、たとえば赤外線を監視しており、炎の監視機能を維持するために、受光素子の感度を点検するための感度試験や透光性窓の汚れを監視するための汚れ試験を行っている。
【0005】
しかしながら、このような従来の火災検知器にあっては、運用期間が長くなって火災検知器の劣化が進んだ場合、感度試験によるセンサ故障や汚れ試験による汚れ異常が検出されることなく正常に運用されていると思われる状態でも、火災検知器が火災検知信号を出力して防災受信盤から非火災報が出される事態が発生する可能性があり、このような場合、それが非火災報であることを確認するまでは、警報表示板設備などにより進入禁止警報を行って車両のトンネル通行を禁止し、管理担当者が現場に出向いて確認する必要があり、トンネル通行を再開するまでに手間と時間がかかり、交通渋滞を招くなどの影響が小さくない。
【0006】
このため、防災受信盤で火災検知器の温度、湿度、衝撃振動及び電気的ノイズ等の環境ストレスに基づいて劣化の度合いを判定して報知するようにしたトンネル防災システムが提案されており、火災検知器の劣化の進み具合が把握できることで、非火災報が出されてしまう前に、火災検知器を予備の火災検知器に交換する等の対応を可能としている。
【0007】
また、従来のトンネル防災システムは、防災受信盤が火災検知器からの火災信号を受信したときに、非火災報を防止するために、所定時間後に火災検知器を一旦復旧し、再度、所定時間以内に火災信号を受信したときに火災と判断して警報表示板設備などにより進入禁止警報を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2002-246962号公報
【文献】特開2016-128796号公報
【文献】特開2018-169893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、従来のトンネル防災システムは、火災検知器の試験異常に基づいて劣化の度合いを判定しているものがあるが、この場合、例えば場所によって常時、また所定期間にわたり外乱源が存在するような状況、例えば照明類の常設場所や車両の通行状況、周辺の所定場所での工事等に伴う一時的な工事照明設置や溶接光、塵埃の発生、作業員の往来等によっても、試験中に外乱源が作用して試験異常となることがあり(例えば試験光に外乱光が作用して適切な試験結果が得られないなど)、このような場合、火災検知器は劣化していないにもかかわらず劣化と判断してしまう可能性がある。このため、時期的、局所的及び全体的な環境要因を考慮した火災検知器の劣化度合等の判定が求められる。
【0010】
本発明は、運用状態で監視領域を複数の区間に分けて火災検知器の信頼性を判断することにより効率的且つ適切に劣化を捉え、ひいては非火災報を抑制可能とする防災システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(防災システム)
本発明は、トンネル内を複数の区間に分けて、区間の各々に所定数の火災検知器を設けた防災システムに於いて、
各区間の信頼性の判断は、自己の区間に設けた火災検知器の所定の故障予兆に関する区間信頼性情報と、自己の区間を含む複数の区間を対象とした所定の系統における各区間に設けた火災検知器の所定の故障予兆に関する総合故障予兆情報との比較に基づき行われることを特徴とする。
【0012】
(火災検知器の信頼性判断)
火災検知器の信頼性の判断は、自己の所定の故障予兆に関する故障予兆情報と、自己が属する区間の区間信頼性情報との比較に基づき行われる。
【0013】
(信頼性低下の区間で火災検知器の信頼性低下を判断しなかった場合の対処)
信頼性低下と判断された区間に設けた火災検知器に対して信頼性低下が判断されなかった場合、信頼性低下が判断された区間に信頼性を阻害する要因が存在すると判断する。
【0014】
(火災検知器の信頼性低下を判断した場合の対処)
信頼性低下と判断された区間に設けた火災検知器に対して信頼性低下が判断された場合、当該信頼性低下と判断された火災検知器の周辺環境に信頼性を阻害する要因が存在すると判断する。
【発明の効果】
【0015】
(基本的な効果)
本発明は、トンネル内を複数の区間に分けて、区間の各々に所定数の火災検知器を設けた防災システムに於いて、各区間の信頼性の判断は、自己の区間に設けた火災検知器の所定の故障予兆に関する区間信頼性情報と、自己の区間を含む複数の区間を対象とした所定の系統における各区間に設けた火災検知器の所定の故障予兆に関する総合故障予兆情報との比較に基づき行われるため、火災検知器における故障予兆に関する情報に基づく区間信頼性情報と総合故障予兆情報とを比較することで、火災検知器の劣化等が進んで信頼性低下となった区間がわかり、運用管理者は、信頼性低下と判断された区間に設置されている火災検知器を重点的に点検することで、必要があれば火災検知器を新品に交換することとなり、劣化等が進んで非火災報となる火災信号を出す可能性の高い区間の火災検知器に対し適切な対処を行うことを可能とする。
【0016】
また、信頼性低下と判断された区間について、例えば火災検知器の劣化要因となる温度、湿度、塵埃、電気的ノイズ、外乱光等の環境的要因を調べ、劣化等により信頼性を低下させる原因となる環境的要因を抑制又は除去するといった対処を行うことができる。
【0017】
(火災検知器の信頼性判断の効果)
また、火災検知器の信頼性の判断は、自己の所定の故障予兆に関する故障予兆情報と、自己が属する区間の区間信頼性情報との比較に基づき行われるため、信頼性低下と判断された区間に設置している複数の火災検知器の中で、信頼性低下と判断された火災検知器を特定することで、その火災検知器を重点的に点検し、また必要があれば火災検知器を新品に交換し、更に、設置場所の環境的要因を調べて信頼性を低下させる原因となる環境的要因を抑制又は除去するといった対処を行うことができる。
【0018】
(信頼性低下の区間で火災検知器の信頼性低下を判断しなかった場合の対処の効果)
また、信頼性低下と判断された区間に設けた火災検知器に対して信頼性低下が判断されなかった場合、信頼性低下が判断された区間に信頼性を阻害する要因が存在すると判断するようにしたため、区間の信頼性低下が判断されても、当該区間に設置されている特定の火災検知器につき信頼性低下が判断されない場合には、当該区間に設置されている火災検知器の故障劣化の発生回数が全体的に多くなっており、これは当該区間の環境的要因による故障予兆の発生回数が他の区間に比べ多くなっていることが想定されることから、火災検知器の劣化要因となる温度、湿度、塵埃、電気的ノイズ、外乱光等の環境的要因を調べ、劣化等により信頼性を低下させる原因となる環境的要因を抑制又は除去するといった対処を報知することで、信頼性を損なっている環境的要因を除去又は抑制し、故障劣化の発生数を低減可能とする。
【0019】
(火災検知器の信頼性低下を判断した場合の対処1の効果)
また、信頼性低下と判断された区間に設けた火災検知器に対して信頼性低下が判断された場合、当該信頼性低下と判断された火災検知器の周辺環境に信頼性を阻害する要因が存在すると判断するようにしたため、信頼性低下と判断された区間に設置している複数の火災検知器の中から信頼性低下と判断された1又は複数の火災検知器が分かることで、運用管理者は、信頼性低下と判断された火災検知器を重点的に点検することで、必要があれば火災検知器を新品に交換することで、信頼性のそれ以上の低下を抑制したり、信頼性を回復させたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】火災検知器の区間と検知エリアを示した説明図
【
図4】火災検知器の機能構成の概略を示したブロック図
【
図5】火災検知器の制御動作を示したフローチャート
【
図6】火災検知器の感度試験により内部試験光源を駆動した際の受光信号のピークレベルと故障予兆の発生回数を示した説明図
【
図7】故障予兆の判断を伴う火災検知器の感度試験を示したフローチャート
【
図8】防災受信盤の機能構成の概略を示したブロック図
【
図9】防災受信盤による信頼性判断制御を示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0021】
[トンネル防災システム]
[実施形態の基本的な概念]
図1はトンネル防災システムの概要を示した説明図である。本実施形態によるトンネル防災システムの基本的な概念は、トンネル内に、防災受信盤10から信号系統ごとに配線された信号線14a,14bに火災検知器12が接続されており、火災検知器12は劣化等に伴う所定の故障予兆の発生回数を示す故障予兆情報を保持しており、防災受信盤10は、所定の信頼性判断制御のタイミングで火災検知器12から故障予兆情報を取得して、故障予兆の発生回数を抽出収集し、トンネル内を複数区間に分けた場合の各区間内に設けた火災検知器の所定の故障予兆の発生回数を平均した故障予兆の区間平均発生回数を含む区間信頼性情報を生成し、併せて、複数の区間における各区間の故障予兆の区間平均発生回数を平均したトンネル全体としての故障予兆の総合平均発生回数を含む総合故障予兆情報を生成し、故障予兆の区間平均発生回数と故障予兆の総合平均発生回数とを比較した場合に所定の条件を充足する特定の区間を、信頼性低下区間と判断して報知する、というものである。
【0022】
このため、トンネル全体の火災検知器12を対象とした故障予兆の総合平均発生回数に対し、区間に設けられた火災検知器12を対象とした故障予兆の区間平均発生回数が所定値を超えて多い場合は、その区間が信頼性低下と判断して報知され、火災検知器12の劣化等が進んで信頼性低下となったトンネル内の区間が特定されることで、運用管理者は、信頼性低下と判断された区間に設置されている火災検知器12を重点的に点検し、必要があれば火災検知器12を新品に交換する等によって、劣化等が進んで、誤った火災信号(非火災の火災信号)を出力する可能性の高い区間の火災検知器12に対し適切な対処を行い、非火災報によってトンネルの進入禁止警報を伴う火災処理によりトンネル通行を止めてしまうといったことを未然に防止可能とする。
【0023】
また、信頼性低下と判断された区間の火災検知器12について、例えば火災検知器12の劣化要因となる温度、湿度、塵埃、電気的ノイズ、外乱光等の環境的要因を調べ、劣化等により故障が見込まれる火災検知器を修理又は交換し、或いは、信頼性を低下させる原因となる区間の環境的要因を抑制又は除去するといった対処を行うことができる。具体的には、例えば、外乱光源を撤去又は移設する、換気流を調整して温湿度を調節する、工事や周辺設備点検等に係る作業員等の通行を規制するといったことが考えられる。
【0024】
防災受信盤10には、更に、故障予兆の区間平均発生回数に対し、故障予兆の発生回数が所定値以上又は所定値を超えている火災検知器12を、信頼性低下検知器と判断して報知するものであり、信頼性低下と判断された区間に設置している複数の火災検知器12の中で、信頼性低下と判断された火災検知器12が特定されることで、その火災検知器12を重点的に点検し、また必要があれば火災検知器を修理又は交換し、更に、設置場所の環境的要因を調べて信頼性を低下させる原因となる環境的要因を抑制又は除去するといった対処を行うことができる。
【0025】
なお、本実施形態における故障予兆とは、将来に起こるべき故障を予測させる状態を意味し、故障のきざし、故障の前兆、故障の前ぶれ等ということもできる。
【0026】
また、
図1の例では信号系統とトンネルは一対一に対応しているが、例えば1つのトンネルに複数の信号系統を設けることができる。或いは、複数のトンネルを1つの信号系統とすることもでき、信号系統とトンネルとの関係は任意である。
【0027】
[トンネル防災システムの概要]
図1に示すように、自動車専用道路のトンネルとして、上り線トンネル1aと下り線トンネル1bが構築されている。上り線トンネル1aと下り線トンネル1bの内部には、トンネル長手方向の壁面に沿って例えば25メートル又は50メートル間隔で火災検知器12が設置されている。なお、本発明は自動車専用道路以外のトンネルにおける防災システムにも適用できる。
【0028】
本実施形態にあっては、
図2(A)に示すように、例えば上り線トンネル1aを複数の区間A1~Anに分けており、この例では1区間に3台の火災検知器12が含まれている。なお、区間A1~Anの分割は任意であり、少なくとも1台の火災検知器12が含まれればよく、区間A1~Anの長さは同じであっても良いし、異なっていてもよく、任意で良い。各区間の火災検知器12の設置台数についても同様である。
【0029】
火災検知器12は右眼、左眼の2組の火災検知部を備えることで、
図2に示すように、トンネル長手方向上り側および下り側の両方向に検知エリア15を持ち、トンネルの長手方向に沿って、隣接して配置される火災検知器12と検知エリア15が例えば右眼13Rと左眼13Lで相互補完的に重複するように連続的に配置され、検知エリア15内で起きた火災による炎からの赤外線を観測して火災を監視して検知する。
【0030】
また、上り線トンネル1aと下り線トンネル1bには、非常用施設として、火災通報のために手動通報装置や非常電話が設けられ、火災の消火や延焼防止のために消火栓装置が設けられ、更にトンネル躯体やダクト内を火災から防護するために水噴霧ヘッドから消火用水を散水させる水噴霧設備などが設置されるが、図示を省略している。
【0031】
防災受信盤10からは上り線トンネル1aと下り線トンネル1bに対し電源信号線および信号線14a,14bを引き出してそれぞれに対し複数の火災検知器12が接続されており、火災検知器12には固有のアドレスが設定されている。以下の説明では、信号線14a,14bについて、区別する必要がない場合は信号線14という場合がある。
【0032】
また、防災受信盤10に対しては、消火ポンプ設備16、ダクト用の冷却ポンプ設備18、IG子局設備20、換気設備22、警報表示板設備24、ラジオ再放送設備26、テレビ監視設備28及び照明設備30等が設けられており、火災検知器12と防災受信盤10は信号線14を介して所謂R型伝送方式で通信する。
【0033】
ここで、IG子局設備20は、防災受信盤10と外部に設けた上位設備である遠方監視制御設備32とをネットワークを経由して結ぶ通信設備である。
【0034】
換気設備22は、トンネル内の天井側に設置されているジェットファンの運転によってトンネル長手方向に換気流を発生する設備である。
【0035】
警報表示板設備24は、利用者に対して、火災に伴う進入禁止警報等の情報を電光表示板に表示して知らせる設備である。ラジオ再放送設備26は、トンネル内で運転者等が道路管理者からの情報を受信できるようにするための設備である。テレビ監視設備28は、火災の規模や位置を確認したり、水噴霧設備の作動、避難誘導を行う場合のトンネル内の状況を把握したりするための設備である。照明設備30はトンネル内の照明機器を駆動して管理する設備である。
【0036】
[火災検知器]
(火災検知器の外観)
図3は火災検知器の外観を示した説明図、
図4は火災検知器の機能構成の概略を示したブロック図である。
【0037】
図3に示すように、火災検知器12は、筐体51の上部に設けられたセンサ収納部53に左右に分けて2組の透光性窓50R,50Lが設けられ、透光性窓50R,50L内の各々に対応して、センサ部が内蔵されている。また、透光性窓50R,50Lの近傍の、センサ部を見通せる位置に、透光性窓50R,50Lの汚れ試験に使用される外部試験光源を収納した2組の試験光源用透光性窓52R,52Lが設けられている。
【0038】
以下の説明では、透光性窓50Rを右眼透光性窓50Rといい、透光性窓50Lを左眼透光性窓50Lという場合がある。
【0039】
(火災検知器の概略構成)
図4に示すように、火災検知器12には、検知器制御部54、伝送部56、電源部58、左右2組の火災検知部60R,60L、試験発光駆動部76、感度試験に用いられる内部試験光源78R,80R,82Rと内部試験光源78L,80L,82L、汚れ試験に用いられる外部試験光源84R,84Lが設けられている。以下の説明では、火災検知部60Rを右眼火災検知部60Rといい、火災検知部60Lを左眼火災検知部60Lという場合がある。
【0040】
検知器制御部54は、例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等が使用される。
【0041】
伝送部56は信号線14の伝送線Sと伝送コモン線SCにより
図1に示した防災受信盤10に接続され、各種信号がR型伝送により送受信される。
【0042】
電源部58は信号線14に含まれる電源線Bと電源コモン線BCにより
図1に示した防災受信盤10から電源供給を受け、例えば検知器制御部54、伝送部56、左右2組の火災検知部60R,60L、試験発光駆動部76に対し所定の電源電圧が供給されている。
【0043】
試験発光駆動部76には、感度試験に使用する内部試験光源78R,80R,82R,78L,80L,82Lが接続され、また、汚れ試験に使用する外部試験光源84R,84Lが接続され、それぞれ発光素子としてクリプトンランプが設けられている。
【0044】
(火災検知部)
火災検知部60R,60Lは、センサ部64,68,72と増幅処理部66,70,74を備える。例えば右眼火災検知部60Rを例にとると、センサ部64,68,72の前面にはセンサ収納部53に設けた右眼透光性窓50Rが配置されており、右眼透光性窓50Rを介して外部の検知エリアからの赤外線エネルギーがセンサ部64,68,72に入射される。
【0045】
右眼火災検知部60Rは、例えば3波長式の炎検知により火災を監視している。センサ部64は、右眼透光性窓50Rを介して入射した赤外線エネルギーの中から、炎に特有なCO2の共鳴放射帯である4.5μm帯の赤外線を光学波長バンドパスフィルタにより選択透過(通過)させて、受光センサにより該赤外線を受光して光電変換したうえで、増幅処理部66により増幅等所定の処理を施して受光エネルギー量に対応する炎受光信号E1Rとして検知器制御部54へ出力する。
【0046】
センサ部68は、右眼透光性窓50Rを介して入射した赤外線エネルギーの中から、第1の非炎波長帯域となる、例えば5.0μm帯の赤外線エネルギーを光学波長バンドパスフィルタにより選択透過(通過)させて、受光センサにより受光して光電変換したうえで、増幅処理部70により増幅等所定の処理を施して受光エネルギー量に対応する第1の非炎受光信号E2Rとして検知器制御部54へ出力する。
【0047】
センサ部72は、右眼透光性窓50Rを介して入射した赤外線エネルギーの中から、第2の非炎波長帯域となる、例えば2.3μmの赤外線エネルギーを光学波長バンドパスフィルタにより選択透過(通過)させて、受光センサにより受光して光電変換したうえで、増幅処理部74により増幅等所定の処理を施して受光エネルギー量に対応する第2の非炎受光信号E3Rとして検知器制御部54へ出力する。
【0048】
増幅処理部66,70,74には、プリアンプ、炎のゆらぎ周波数を含む所定の周波数帯域を選択通過させる周波数フィルタ及びメインアンプ等が設けられている。
【0049】
(火災判断)
検知器制御部54には、プログラムの実行により実現される機能として、火災判断部86の機能が設けられている。火災判断部86は、炎受光信号E1R、第1の非炎受光信号E2R及び第2の非炎受光信号E3Rに基づき、複数の火災判定段階により火災を判断している。火災判断部86は例えば次の3段階の火災判定を行う。
【0050】
火災判断部86は、炎受光信号E1Rが所定の閾値以上又はこれを上回った場合、第1の非炎受光信号E2Rとの相対比(E1R/E2R)を算出し、相対比(E1R/E2R)が所定の閾値を超えた場合に、第1段階の火災判定条件を充足したとして、火災(火災候補)と判定し、次の第2段階の火災判定を行う。
【0051】
火災判断部86による第2段階の火災判定は、炎受光信号E1Rについて、第2の非炎受光信号E3Rとの相対比(E1R/E3R)を算出し、相対比(E1R/E3R)が所定の閾値を超えた場合に、第2段階の火災判定条件を充足したとして火災と判定する。
【0052】
続いて、火災判断部86は、次の第3段階の火災判定を行う。火災判断部86による第3段階の火災判定条件は、炎受光信号E1Rを高速フーリエ変換(FFT)して結果を分析し,例えば4Hz以下の低周波側成分の相対強度と4Hz超8Hz以下の高周波側成分の相対強度の相対比を算出し、この相対化が所定の閾値以上又はこれを上回った場合に、第3段階の火災判定条件を充足したとして火災と判定し、これにより第1~第3の火災判定段階の全てにおいて火災と判定されたことになり、全体として一旦火災と判断する。
【0053】
更に、第1乃至第3段階の火災判定条件が所定回数連続して充足された場合に、所定の火災判断蓄積条件を満足したとして火災を断定し、火災信号を防災受信盤10に送信する制御を行う。左眼火災検知部60Lにおいても同様に行う。
【0054】
なお、火災判断部86による複数の火災判定段階による火災判断は、上記の火災判断に限定されず、更に、1又は複数の火災判定段階を加えても良いし、例えば上記3段階のうち何れかを省略して2段階としても良い。或いは例えば蓄積判定段階までを含む4段階としても良い。
【0055】
(故障予兆の判定)
火災判断部86は、前述した3段階の火災判定段階の途中で火災が判定されずに火災と判断するに至らなかった場合に故障予兆の発生と判断し、故障予兆の発生回数Nをカウンタにより計数する制御を行う。
【0056】
また、火災判断部86は、故障予兆の発生回数Nが所定の故障予兆判断蓄積条件を充足したとき、例えば、故障予兆の発生回数Nが所定閾値Nthに達したときに故障予兆と判定(確定)し、防災受信盤10に故障予兆信号を送信し、続いて、所定の故障予兆処理を行う。なお、火災判断部86は、更に、故障予兆の確定回数が所定数に達したときに所定の故障予兆処理を行うようにしても良い。
【0057】
火災判断部86による所定の故障予兆処理は、例えば火災信号の送信を停止する処理、火災判断の蓄積回数閾値を増加させて火災判断蓄積条件を厳格にする等の処理とする。火災信号の送信を停止する故障予兆処理は、故障予兆を判定した後に火災を判断しても故障による誤った火災判断である可能性が高いことから、火災信号の送信を停止して、非火災報の発生を抑止させる、というものである。なお、火災信号の送信を停止する処理は行わないようにすることもできる。
【0058】
また、火災判断部86は、防災受信盤10から内部状態要求コマンド信号を受信した場合、そのとき得られている故障予兆の発生回数Nを示す故障予兆情報を生成して送信する制御を行い、防災受信盤10は取得した故障予兆情報から抽出された故障予兆の発生回数Nに基づいて火災検知器12の信頼性を評価し、信頼性有り、信頼性低下を判断するために用いられる。なお、信頼性低下については、その度合により複数段階に分け、例えば信頼性低下状態と信頼性が無い状態を区別できるようにしても良い。
【0059】
なお、カウンタにより計数している故障予兆の発生回数Nは、所定の期間毎にリセットされるか、又は、故障予兆をカウントしてから所定の期間が経過したときにリセットされる。ただし、リセット前の故障予兆の発生回数Nは、故障予兆情報として記憶するようにしても良い。
【0060】
(感度試験)
検知器制御部54には、プログラムの実行により実現される機能として、感度試験部88の機能が設けられている。感度試験部88は、伝送部56を介して防災受信盤10から自身のアドレスを指定した試験指示信号を受信した場合に動作し、試験発光駆動部76に指示して、内部試験光源78R,80R,82R,78L,80L,82Lを順番に発光駆動して火災検知部60R,60Lの感度試験を行わせる。なお、内部試験光源78R,80R,82Rと内部試験光源78L,80L,82Lは、それぞれ1つの光源で共用しても良い。
【0061】
例えば右眼火災検知部60Rにおけるセンサ部64と増幅処理部66の回路系統を例にとると、試験発光駆動部76は内部試験光源78Rを発光駆動することにより、火災炎に相当する炎疑似光(炎を模擬した赤外線光)をセンサ部64に入射させる。
【0062】
センサ部64と増幅処理部66の回路ブロックについては、工場出荷時の初期感度試験時の基準受光値がメモリに記憶されており、システム立上げ時の感度試験で得られる検出受光値は基準受光値に略一致しており、検出受光値を基準受光値で割った検出感度係数は1となっている。運用期間が経過していくと、検出受光値は徐々に低下し、検出感度係数は0.9,0.8,0.7・・・というように低下していく。
【0063】
このように検出感度係数が1以下に低下した場合、感度試験部88は検出感度係数の逆数となる補正係数を求めてメモリに記憶させ、その後の運用状態で検出される受光値に補正係数を乗算して感度補正を行い、火災判断部86は感度補正された受光値により火災を判断する。
【0064】
また、感度試験部88には、感度補正の限界となる補正係数に対応した感度補正限界閾値、例えば感度補正限界閾値0.5が予め設定されており、感度試験で求められた感度係数が感度補正限界閾値以下又は感度補正限界閾値を下回った場合にセンサ部64の感度異常と判断し、伝送部56に指示して、自己アドレスに一致する呼出信号に対する応答信号に感度異常を示す情報を設定して防災受信盤10へ感度異常信号を送信させる制御を行う。
【0065】
また、感度試験部88には、感度補正限界に達する前の感度異常の予兆を示す感度係数に対応して、例えば感度異常の予兆閾値0.6が予め設定されており、感度試験で求められた検出感度係数が感度異常の予兆閾値以下又は予兆閾値を下回った場合に、近い将来、感度補正ができなくなる可能性が高い感度異常状態の予兆と判定し、伝送部56に指示して感度異常の予兆を示す感度異常予兆信号を防災受信盤10へ送信して報知させる制御を行う。
【0066】
なお、感度試験部88で感度異常の予兆が判定された場合、これを故障予兆の1つと見做し、火災判断部86のカウンタによる計数動作を行って故障予兆の発生回数Nを増加させるようにしても良い。
【0067】
また、運用期間の経過に伴い検出感度が1.1,1.2,1.3…と増加する場合も同様にして補正し、限界に達すると異常とする。
【0068】
センサ部68と増幅処理部70及びセンサ部72と増幅処理部74の回路系統も同様に感度試験が行われる。また、左眼火災検知部60Lについても、試験発光駆動部76により内部試験光源78L,80L,82Lを発光駆動することにより、同様にして感度試験が行われる。
【0069】
(汚れ試験)
検知器制御部54には、プログラムの実行により実現される機能として、汚れ試験部90の機能が設けられている。汚れ試験部90は、感度試験と同様に、伝送部56を介して防災受信盤10から自身のアドレスを指定した試験指示信号を受信した場合に動作し、試験発光駆動部76に指示して、外部試験光源84R,84Lを順番に発光駆動して透光性窓50R,50Lの汚れ試験を行わせる。
【0070】
例えば透光性窓50Rの汚れ試験を例にとると、試験発光駆動部76は外部試験光源84Rを発光駆動することにより、火災炎に相当する炎疑似光を、試験光源用透光性窓52R及び透光性窓50Rを介してセンサ部64に入射させる。試験光源用透光性窓52R及び透光性窓50Rは工場出荷時に汚れはなく、その際に汚れ試験で得られた受光値が基準受光値としてメモリに記憶されており、減光率の演算に利用される。
【0071】
システム立上げ時の汚れ試験で得られる検出受光値は基準受光値に略一致しており、基準受光値から検出受光値を減算した値を基準受光値で割った減光率は0となっている。運用期間が経過していくと、透光性窓50Rに汚れが付着し、減光率は、0.1,0.2,0.3・・・いうように徐々に増加していく。
【0072】
このように減光率が増加した場合、汚れ試験部90は汚れ試験により減光率を求めると共に、(1-減光率)の逆数となる補正値を求めてメモリに記憶させ、その後の運用状態で検出される受光値(感度試験の補正値により補正された受光値)を補正値により除算して汚れ補正を行い、火災判断部86は汚れ補正された受光値により火災を判断する。
【0073】
また、汚れ試験部90には、汚れ補正の限界に対応した減光率となる汚れ閾値、例えば汚れ閾値0.5が予め設定されており、感度試験で求められた減光率が汚れ閾値以上又は汚れ閾値を上回った場合に透光性窓50Rの汚れ補正が不可能となる汚損異常と判断し、伝送部56に指示して、自己アドレスに一致する呼出信号に対する応答信号に汚損異常情報を設定して防災受信盤10へ汚損信号を送信して報知させる制御を行う。
【0074】
また、汚れ試験部90には、汚れ補正が限界に達する予兆段階に対応した減光率となる汚れ予兆閾値、例えば汚れ予兆閾値0.6が予め設定されており、汚れ試験で求められた減光率が汚れ予兆閾値以上又は汚れ予兆閾値を上回った場合に、近い将来、透光性窓50Rの汚れ補正が不可能となる可能性が高い汚損予兆状態と判断し、伝送部56に指示して汚損予兆信号を防災受信盤10へ送信して報知させる制御を行う。
【0075】
なお、汚れ試験部90で汚損予兆が判断された場合、これを故障予兆の1つと見做し、火災判断部86のカウンタによる計数動作を行って故障予兆の発生回数Nを増加させるようにしても良い。
【0076】
(火災検知器の制御動作)
図5は火災検知器の制御動作を示したフローチャートであり、
図4に示した火災判断部86による制御動作となる。
【0077】
図5に示すように、火災判断部86は、例えば、
図4の火災検知部60Rを例にとると、ステップS1で増幅処理部66,70,74から出力された炎受光信号E1R、第1の非炎受光信号E2R及び第2の非炎受光信号E3RをAD変換により取込み、ステップS2で炎受光信号E1Rが所定値以上であればステップS3に進み、炎受光信号E1Rと第1の非炎受光信号E2Rの比(E1R/E2R)を算出し、所定値以上の場合は第1段階の火災判定条件を充足したとしてステップS4に進み、ステップS4で炎受光信号E1Rと第2の非炎受光信号E3Rの比(E1R/E3R)を算出し、所定値以上の場合は第2段階の火災判定条件を充足したとしてステップS5に進む。
【0078】
続いて、火災判断部86はステップS5で炎受光信号E1Rの高速フーリエ変換(FFT演算)を行い、ステップS6で例えば4Hz以下の低周波数側と4Hz超8Hz以下の高周波側の成分の相対強度比が所定値以上であれば第3段階の火災判定条件を充足したとしてステップS7に進み、ステップS1~S6による第1段階から第3段階の火災判定条件を所定の蓄積回数閾値だけ連続して成立したか否か判定する。
【0079】
続いて、火災判断部86は、ステップS7で所定の火災判断蓄積条件としての蓄積回数閾値を充足するとステップS8に進んで火災と判断し、火災信号を防災受信盤10に送信して火災処理を行わせる。続いて、ステップS9で防災受信盤10からの火災復旧信号(復旧指示信号)の受信を判別するとステップS10で火災検知を初期状態に復旧してステップS1に戻る。
【0080】
一方、火災判断部86は、ステップS3で第1段階の火災判定条件が充足されなかったときは、故障予兆が発生したと判定し、ステップS11に進んで故障予兆の発生回数を計数するカウンタNを+1とし(インクリメントし)、ステップS12で故障予兆の発生回数Nが所定の閾値回数Nth未満の場合は、ステップS1からの処理を繰り返す。
【0081】
また、火災判断部86は、ステップS3の第1段階の火災判定条件は充足したが、ステップS4の第2段階の火災判定条件が充足されなかったときは、ステップS11に進んで故障予兆の発生回数を計数するカウンタNを+1とし、ステップS12で故障予兆の発生回数Nが所定の閾値回数Nth未満の場合は、ステップS1からの処理を繰り返す。
【0082】
更に、火災判断部86は、ステップS3の第1段階及びステップS4の第2段階の火災判定条件は充足したが、ステップS6の第3段階の火災判定条件が充足されなかったときは、ステップS11に進んで故障予兆の発生回数を計数するカウンタNを+1とし、ステップS12で故障予兆の発生回数Nが所定の閾値回数Nth未満の場合は、ステップS1からの処理を繰り返す。
【0083】
このような故障予兆の発生回数のカウントの繰り返しにより、火災判断部86は、ステップS12で故障予兆の発生回数Nが所定の閾値回数Nth以上となる故障予兆判定蓄積条件を満たした場合に故障予兆と判定(確定)し、ステップS13に進んで故障予兆信号を防災受信盤10に送信して報知させ、続いてステップS14で所定の故障予兆処理を行う。
【0084】
なお、ステップS13において、ステップS12の故障予兆判定蓄積条件に、更に、ステップS12による故障予兆の判断回数が所定の閾値回数に達しか否かの故障予兆判定蓄積条件の充足判定を追加しても良い。
【0085】
また、故障予兆処理は、例えば、ステップS7の蓄積回数閾値を増加させて火災判断蓄積条件を厳格にする。また、火災検知器12は、ステップS1~S7の監視動作とステップS8の火災信号の送信のうち、少なくとも後者を停止する。
【0086】
なお、ステップS3で相対比が所定値未満のときはステップS1に戻り、また、ステップS7で火災判断蓄積条件を充足しないと判別したときはステップS11に進むようにしても良い。
【0087】
また、火災判断部86は、制御動作中に、防災受信盤10から内部状態要求コマンドを受信すると、そのときカウンタで計数している故障予兆の発生回数Nに関する(Nを示す)情報を故障予兆情報として応答送信し、防災受信盤10で火災検知器12の信頼性判断に利用させる。
【0088】
(感度試験に伴う故障予兆の判定)
図6は火災検知器の感度試験により内部試験光源を駆動した際の受光信号のピークレベルと故障予兆の発生回数を示した説明図である。
【0089】
図4に示した火災検知器12の検知器制御部54に設けられた感度試験部88は、防災受信盤10から定期的(例えば1日に1回)に送信される試験指示信号を受信した場合に動作し、試験発光駆動部76に指示して、内部試験光源78R,80R,82R,78L,80L,82Lを順番に例えば2Hzで所定期間(例えば1秒間)点滅させる発光駆動を行って火災検知部60R,60Lに火災炎に相当する炎疑似光(試験光)を入射して感度試験を行わせる。
【0090】
感度試験部88による感度試験は、
図4について既に説明したと同じ内容となる。これに加え、本実施形態の感度試験部88は、感度試験に伴い火災検知部60Rから出力される炎受光信号E1R、第1の非炎受光信号E2R及び第2の非炎受光信号E3R、及び、火災検知部60Lから出力される感度試験時の炎受光信号E1L、第1の非炎受光信号E2L及び第2の非炎受光信号E3Lの各々について、各受光信号のピークレベルを検出し、
図6(A)に黒丸で示すように、例えば1日に1回検出したピークレベルが、工場出荷時の劣化無しの状態で検出されたピークレベルの初期値92に基づく所定の正常範囲94を外れたが、所定の故障閾値96以下又は故障閾値96を下回らず故障判断条件を充足しなかった場合、即ち故障予兆範囲98にある場合は故障予兆と判断し、
図6(B)に示すように、故障予兆の発生回数Nをカウンタにより計数する制御を行う。
【0091】
ここで、受光信号の正常範囲94は初期値92を中心に例えば上限値94aと下限値94bで挟まれた範囲とし、例えば初期値92に対し±10パーセントとしている。また、故障閾値96は例えば初期値92の50パーセント程度の値とする。
【0092】
なお、故障予兆範囲として、例えば正常範囲94の上限値94aから初期値92の50パーセントを初期値92に加えたまでの範囲、即ち
(上限値94a)を超え{(初期値92)+(初期値92の50パーセント)}以下
の範囲を追加して故障予兆と判断しても良い。
【0093】
一方、火災判断部86は、感度試験部88のカウンタで係数された故障予兆の発生回数Nを故障予兆判定蓄積条件として設定した所定の閾値回数Nthと比較しており、故障予兆の発生回数Nが所定閾値Nth以上又は所定閾値Nthを超えて故障予兆判定蓄積条件を充足したときに故障予兆と判定(確定)し、防災受信盤10に故障予兆信号を送信し、続いて、所定の故障予兆処理を行う。火災判断部86による故障予兆処理は、例えば、火災信号の送信を停止する処理とする。
【0094】
また、火災判断部86は、防災受信盤10から内部状態要求コマンド信号を受信した場合、そのとき得られている故障予兆の発生回数Nを示す情報を含む予兆故障情報を送信する制御を行い、防災受信盤10において故障予兆の発生回数Nを抽出し、これに基づいて火災信号を送信した火災検知器12の信頼性を評価して信頼性有り、信頼性低下を判断するために用いられる。
【0095】
なお、カウンタにより計数している故障予兆の発生回数Nは、例えば所定の期間毎にリセットされるか、又は、故障予兆をカウントしてから所定の期間が経過したときにリセットされる。リセット前の故障予兆の発生回数Nは、故障予兆情報履歴として記憶するようにしても良い。
【0096】
(火災検知器の感度試験動作)
図7は故障予兆の判定を伴う火災検知器の感度試験を示したフローチャートであり、
図4に示した火災検知器12の感度試験部88及び火災判断部86による制御動作となる。
【0097】
図7に示すように、感度試験部88は、例えば、
図4の火災検知部60Rを例にとると、ステップS21で防災受信盤10から順番にアドレスを指定して1日1回、送信される試験指示信号の受信(自己アドレスを示すもの)を判別してステップS22に進み、試験発光駆動部76に指示して内部試験光源78Rを2Hzで所定期間(例えば1秒間)点滅駆動してセンサ部64に火災炎に相当する炎疑似光(試験光)を入射する。
【0098】
続いて、感度試験部88はステップS23に進み、増幅処理部66より出力される試験光による炎受光信号(受光信号)E1Rのピークレベルを検出し、ステップS24で
図6(A)に示した正常範囲94内か否か判別し、正常範囲94内にある場合はステップS25に進み、工場出荷時の初期感度試験時に記憶された初期値(基準受光値)92により受光信号の例えばピークレベルを割って検出感度係数を算出し、ステップS27で検出感度係数の逆数として受光信号の補正係数を算出して記憶し、受光信号レベルの補正に用いる。
【0099】
続いて、感度試験部88はステップS27に進み、ステップS25で算出した検出感度係数が予め定めた所定の感度補正限界閾値(例えば0.5)に達するまで、ステップS21からの処理を繰り返す。なお、ステップS25における補正限界は、ステップS31と同様に、ピークレベルが故障閾値以下又はそれを下回った場合としても良い。
【0100】
感度試験部88は、ステップS27で検出感度係数の感度補正限界閾値への到達を判別した場合は、ステップS28で所定の感度異常判定蓄積条件、例えば所定の蓄積回数閾値に達するまでステップS21からの処理を繰り返し、ステップS28の感度異常判定蓄積条件を充足するとステップS29で感度異常信号を防災受信盤10に送信する。
【0101】
続いて、火災判断部86は感度試験部88における感度異常の判定を受けてステップS30で所定の感度異常処理を行う。この感度異常処理は、感度異常を判定した後は感度異常(例えば感度異常を伴う受光素子故障や電気回路故障等)による誤った火災判断がなされる可能性が高いことから、例えば火災判断部86における火災判断蓄積条件を設定する蓄積回数閾値を増加して実質的に火災感度を下げるか、或いは、火災信号の送信を停止する等の処理とする。
【0102】
一方、感度試験部88は、ステップS24で試験時の受光信号E1Rのピークレベルが正常範囲94を外れたことを判別するとステップS31に進み、ピークレベルが故障閾値96以下又は故障閾値を下回らない場合、即ち、
図5(A)に示した、故障予兆範囲98にある場合は、故障予兆が発生したと判定して火災判断部86に通知する。なお、ステップS31の故障予兆の判定は、受光信号のピークレベルに限らず、例えば積分値や平均レベルに基づいて行っても良い。
【0103】
続いて、感度試験部88から故障予兆の判定結果の通知を受けた火災判断部86は、ステップS32で故障予兆の発生回数を計数するカウンタNを+1し(インクリメントし)、ステップS33で故障予兆の発生回数Nが所定の故障予兆判定蓄積条件として設定した閾値回数Nth以下又はそれを下回った場合は、ステップS21からの処理を繰り返す。
【0104】
このような故障予兆の発生回数Nのカウントの繰り返しにより、火災判断部86は、ステップS33で故障予兆の発生回数Nが所定の閾値回数Nth以上となって故障予兆判定蓄積条件を充足した場合に故障予兆と判定(確定)し、ステップS35に進んで故障予兆信号を防災受信盤10に送信して報知させ、続いてステップS36で所定の故障予兆処理を行う。
【0105】
この故障予兆処理は、例えば、火災判断部86による火災判断蓄積条件として設定する蓄積回数閾値を増加させて火災判断蓄積条件を厳格にして実質的に火災感度を下げる。また、その後に火災判断部86で火災が判断されても、故障による誤った火災判断の可能性が高いことから火災信号の送信を停止して、非火災報の発生を抑止させる処理を行うようにしても良い。
【0106】
また、火災判断部86は、防災受信盤10から内部状態要求コマンドを受信すると、そのときカウンタで計数している故障予兆の発生回数Nを示す情報を含む故障予兆情報を応答送信し、防災受信盤10は取得した火災検知器12の故障予兆情報から故障予兆の発生回数を抽出して信頼性を評価し、信頼性有り又は信頼性低下を判断する。
【0107】
一方、感度試験部88は、ステップS31で受光信号のピークレベルが故障閾値96以下に低下したことを判別した場合にはステップS28に進み、感度異常判定蓄積条件として設定した所定の蓄積回数閾値に達するまでステップS21からの処理を繰り返し、ステップS28の感度異常判定蓄積条件を充足するとステップS29で感度異常信号を防災受信盤10に送信し、続いてステップS30で所定の感度異常処理を行う。
【0108】
また、本実施形態は火災検知器で定期的に行う感度試験により故障予兆の発生回数を求める場合を例にとっているが、これに限定されず、防災受信盤10からの試験指示操作により任意のタイミングで行われる試験を含み、また、感度試験以外の内部試験光源を駆動する適宜の試験も含む。左眼火災検知部60Lについても同様に行うことが出来る。また、試験時の第1の非炎受光信号E2R,E2L、第2の非炎受光信号E3R,E3Lについても同様に行うことができる。
【0109】
[火災判断部と感度試験部による故障予兆の判定]
本発明による火災検知器12の他の実施形態として、
図5のフローチャートに示した火災判断部86による故障予兆の判定と、
図7のフローチャートに示した感度試験部88による故障予兆の判定を組み合わせ、それぞれで判断された故障予兆の発生回数Nを累積してカウントするように構成し、火災信号を送信した火災検知器12から故障予兆の累積発生回数を示す情報を含む故障予兆情報を防災受信盤10で取得し、抽出した故障予兆の累積発生回数から信頼性を評価して信頼性有り、信頼性低下を判断する。
【0110】
また、故障予兆の判定も、故障予兆の累積発生回数が所定の閾値回数Nth以上となって故障予兆判定蓄積条件を充足した場合に、故障予兆と判定して故障予兆信号を防災受信盤10に送信して報知させ、続いて所定の故障予兆処理を行うようにする。
【0111】
[防災受信盤]
(防災受信盤の概略)
図8は防災受信盤の機能構成の概略を示したブロック図である。
図8に示すように、防災受信盤10は火災監視制御部42を備え、火災監視制御部42は例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。
【0112】
火災監視制御部42に対しては伝送部35a,35bが設けられ、伝送部35a,35bから引き出した信号線14a,14bに上り線トンネル1aと下り線トンネル1bに設置した火災検知器12がそれぞれ複数台接続されている。
【0113】
また、火災監視制御部42に対しスピーカ、警報表示灯等を備えた警報部36、液晶ディスプレイ、プリンタ等を備えた表示部37、各種スイッチ等を備えた操作部38、IG子局設備20を接続するモデム39が設けられ、更に、
図1に示した消火ポンプ設備16、冷却ポンプ設備18、換気設備22、警報表示板設備24、ラジオ再放送設備26、テレビ監視設備28及び照明設備30が接続されたI/O部40が設けられている。
【0114】
火災監視制御部42は、伝送部35a,35bに指示して信号線14a,14bを介して火災検知器12のアドレスを順次指定したポーリングコマンドを含む呼出信号を繰り返し送信しており、火災検知器12は自己アドレスに一致する呼出信号を受信すると、火災信号、感度異常予兆信号、感度異常信号、汚損予兆信号、汚損信号等の応答信号を返信する。
【0115】
また、火災監視制御部42は、火災検知器12からの火災信号の受信に基づき火災と判断した場合は、警報部36による火災警報の出力、I/O部40を介して他設備の連動制御例えば警報表示板設備24による進入禁止警報の表示、遠方監視制御設備32に対する火災移報信号の送信を含む所定の火災処理を行う。
【0116】
また、火災監視制御部42は、システムの立上げ時あるいは運用中の所定の周期毎(例えば1日1回となる24時間周期)に、火災検知器12のアドレスを順次指定した試験指示信号を送信し、火災検知器12に感度試験及び汚れ試験を行わせ、それぞれの試験結果を応答させ、例えばセンサ故障の応答信号を受信した場合、火災検知器12のアドレスを特定したセンサ故障警報を警報部36の警報音、表示部37のディスプレイ表示、印刷により報知させる制御を行う。
【0117】
また、火災監視制御部42は火災検知器12の汚れ試験により得られた汚損異常の応答信号を受信した場合、火災検知器のアドレスを特定した汚れ警報を警報部36の警報音、表示部37のディスプレイ表示、印刷により報知させる制御を行う。
【0118】
また、火災監視制御部42は、火災検知器12の感度試験及び汚れ試験により得られたセンサ故障又は汚損異常の応答信号を受信した場合、モデム39から
図1に示したIG子局設備20を介して遠方監視制御設備32に移報信号を送信し、故障警報又は異常警報を報知させる制御を行う。
【0119】
(信頼性判断制御)
防災受信盤10における制御部34には、トンネルに設置された火災検知器12の信頼性判断制御を行うため、区間信頼性情報生成部44、総合信頼性情報生成部46、区間信頼性判断部48及び火災検知器信頼性判断部50の機能が設けられる。
【0120】
区間信頼性情報生成部44は、所定期間毎の信頼性判断タイミング、例えば1週間に1回の信頼性判断タイミングへの到達を判断すると、火災検知器12のアドレスを順次指定した内部状態要求コマンド信号を送信し、火災検知器12がそのとき保持している故障予兆の発生回数Nを示す情報を含む故障予兆情報を収集し、
図2(A)に示した区間A1~Anごとに、区間A1~Anの各々に設けた例えば3台の火災検知器12の故障予兆の発生回数を平均した故障予兆の区間平均発生回数を示す区間信頼性情報を生成する制御を行う。
【0121】
総合信頼性情報生成部46は、区間信頼性情報生成部44により生成された区間A1~Anの区間信頼性情報から取得した各区間A1~Anの故障予兆の区間平均発生回数を平均したトンネル全体(例えば信号線14単位)としての故障予兆の総合平均発生回数を示す総合故障予兆情報を生成する制御を行う。なお、総合信頼性情報生成部46は、所定の信号系統について収集された全ての火災検知器12の故障予兆の発生回数を平均して総合平均発生回数を求めても良い。
【0122】
また、区間信頼性判断部48は、区間信頼性情報生成部44で生成された故障予兆の区間平均発生回数と総合信頼性情報生成部46で生成された故障予兆の総合平均発生回数とを比較し、所定の条件を充足する特定の区間、例えば、故障予兆の総合平均発生回数より所定値以上又は所定値を超えて多い故障予兆の区間平均発生回数を持つ区間を、信頼性低下区間と判断してその旨を報知する制御を行う。
【0123】
更に、火災検知器信頼性判断部50は、区間信頼性判断部48により信頼性低下と判断された区間の火災検知器12を対象に、故障予兆の区間平均発生回数に対し、故障予兆の発生回数が所定値以上又は所定値を超えている火災検知器12を、信頼性低下検知器と判断してその旨を報知する制御を行う。
【0124】
ここで、火災検知器信頼性判断部50で火災検知器12の信頼性低下が判断されなかった場合(信頼性低下と判断された火災検知器12が無かった場合)、区間信頼性判断部48は、例えば警報部36を介して、信頼性低下が判断された区間に信頼性を阻害する要因が存在する旨と所定の対処を報知する。
【0125】
例えば、区間信頼性判断部48は、例えば警報部36を介して、区間の信頼性を阻害する要因として、温度、湿度、塵埃、電気的ノイズ、外乱光等の環境要因の確認を促す報知をし、また、例えば表示部37を介して、これに対する対処として、区間環境の調査による原因の究明、当該区間に設置している火災検知器12の外観確認や動作試験等の点検の必要性を示すガイダンス表示等を行う。
【0126】
また、火災検知器信頼性判断部50は、信頼性低下と判断された区間の中の特定の火災検知器12の信頼性低下を判断した場合、例えば警報部36を介して、当該火災検知器12の周辺環境に信頼性を阻害する要因が存在する可能性がある旨と当該火災検知器の交換を含む所定の対処を促す報知をする。例えば、火災検知器信頼性判断部50は、警報部36を介して、火災検知器12の信頼性を阻害する設置環境要因として、温度、湿度、塵埃、電気的ノイズ、外乱光等の環境要因の存在可能性を報知し、また、表示部37を介して、これに対する対処として、区間環境の調査による原因の究明、当該区間に設置している火災検知器12の外観確認や動作試験等の点検の必要性、更には火災検知器12の交換を促すガイダンス表示等を行う。
【0127】
(信頼性判断の制御動作)
図9は防災受信盤による信頼性判断制御を示したフローチャートであり、
図8に示した区間信頼性情報生成部44、総合信頼性情報生成部46、区間信頼性判断部48及び火災検知器信頼性判断部50の機能を備えた防災受信盤10の制御部34による制御動作となる。なお、説明を簡単にするため、ここでは信号系統は1つであるものとする。
【0128】
図9に示すように、防災受信盤10の制御部34は、ステップS41で例えば1週間に1回の信頼性情報収集タイミングへの到達を判別するとステップS42に進み、信号系統の火災検知器12のアドレスを順次指定した内部状態要求コマンド信号を送信し、火災検知器12がそのとき保持している故障予兆の発生回数を示す情報を含む故障予兆情報を取得し、ステップS43で全ての火災検知器12の故障予兆の発生回数の平均による故障予兆の総合平均発生回数を示す総合信頼性情報を生成し、続いて、ステップS44で区間ごとに設けられた火災検知器12の故障予兆の発生回数を平均して故障予兆の区間平均発生回数を求めて区間信頼性情報を生成する。なお、ステップS43,S44に代えて、最初に各区間の故障予兆の区間平均発生回数を求めた後に、全ての区間の故障予兆の区間平均発生回数を平均して故障予兆の総合平均発生回数を求めるようにしても良い。
【0129】
続いて、制御部34は、ステップ45で故障予兆の総合平均発生回数と各区間の故障予兆の区間平均発生回数を比較し、故障予兆の総合平均発生回数に対し所定値以上の故障予兆の区間平均発生回数を持つ区間を判別するとステップS46に進み、信頼性低下の区間を判断する。
【0130】
続いて、制御部34は、信頼性低下と判断した区間の故障予兆の区間平均発生回数に対し、当該区間に設けている各火災検知器12の故障予兆の発生回数とを比較し、故障予兆の区間平均発生回数に対し所定値以上の故障予兆の故障予兆の発生回数を持つ火災検知器12を判別するとステップS50に進み、信頼性低下の火災検知器12を判断し、ステップS51で信頼性低下と判断した火災検知器12と区間及び信頼性低下に対する対処を報知し、ステップS52で火災監視制御部42に対し信頼性低下を判断した火災検知器12をアドレスに対応付けて設定し、信頼性低下と判断された火災検知器12からの火災信号に対応する火災制御(火災検知器の信頼性低下に対応する火災処理)を可能とする。
【0131】
一方、制御部34は、ステップS47で故障予兆の区間平均発生回数に対し所定値以上の故障予兆の故障予兆の発生回数を持つ火災検知器12が判別されなかった場合はステップS48に進み、信頼性低下と判断された区間を報知し、続いてステップS49で信頼性低下と判断した区間に対する対処を報知する。
【0132】
なお、
図9の信頼性判断制御では、信頼性低下を判断しているが、信頼性ありを判断した場合も同様である。
【0133】
(信頼性判断に対応した火災処理)
図8の防災受信盤10の制御部34に設けられた火災検知器信頼性判断部50により、信頼性低下と判断された区間の特定の火災検知器12の信頼性低下が判断された場合、当該火災検知器12の情報を火災監視制御部42に設定し、火災監視制御部42は火災検知器12から火災信号を受信したとき、信頼性ありか、信頼性低下かに応じた火災処理を行う。
【0134】
火災監視制御部42による火災検知器12の信頼性の評価は、例えば故障予兆情報として取得して抽出した火災検知器12の故障予兆の発生回数Nが信頼性判断蓄積条件として設定した所定の閾値回数Nref以下又は閾値回数Nrefを下回った場合は信頼性有りと判断し、所定の閾値回数Nref以上又は閾値回数Nrefを超えた場合は信頼性低下と判断する。
【0135】
火災検知器12が故障予兆を判定したときに火災信号を送信しないようにする場合は、例えば信頼性判断蓄積条件を設定する閾値回数Nrefは、
図4に示した火災判断部86で故障予兆判断蓄積条件として設定した閾値回数Nthより低い値を設定すれば良い。
【0136】
火災監視制御部42は、火災信号を送信した火災検知器12につき信頼性有りと判断したときは、火災検知器12に火災復旧コマンド信号を送信して復旧させた後に再度火災信号を受信した場合に火災と判断し、火災警報の出力、少なくとも警報表示板設備24による進入禁止警報の表示を含む他設備の連動制御、遠方監視制御設備32に対する火災移報信号の送信を含む所定の火災処理を行う。
【0137】
一方、火災監視制御部42は、火災信号を送信した火災検知器12につき信頼性低下と判断したときは、火災検知器12の蓄積条件変更コマンド信号(蓄積条件厳格化コマンド)の送信により、火災検知器12の第1の火災判断蓄積条件(
図5のステップS7の蓄積条件)を設定する蓄積回数閾値を増加して厳格な(より火災判断に到達し難い)第2の火災判断蓄積条件に変更し、具体的には例えば蓄積回数閾値を高くして実質的に火災に対し低感度化し、続いて、復旧コマンド信号を送信して復旧させる。
【0138】
この状態で、火災監視制御部42は、火災判断蓄積条件を変更した第1報目の火災信号を送信した火災検知器12から第2の火災判断蓄積条件の充足による第2報目の火災信号を受信し、且つ、又は、第1報目の火災信号を送信した火災検知器12と同じ検知エリアを重複監視している隣接した火災検知器12から火災信号を受信したときに火災と判断し、火災警報の出力、少なくとも警報表示板設備24による進入禁止警報の表示を含む他設備の連動制御、遠方監視制御設備32に対する火災移報信号の送信を含む所定の火災処理を行う。
【0139】
このように火災監視制御部42で火災信号を送信した火災検知器12につき信頼性低下と判断した場合、火災検知器12が火災以外の故障予兆により火災と判断して火災信号を送信した場合も、当該火災検知器の火災判断蓄積条件を厳格に変更することから復旧後に原因不明の非火災要因により再度火災信号を送信する可能性は低くなり、また、このとき隣接した火災検知器12は信頼性が低下しておらず、実火災でない場合に火災信号を送信する可能性は極めて低く、第1報目の火災信号を送信して復旧した火災検知器12とこれに隣接する火災検知器12の一方又は両方から火災信号が受信される場合に火災と判断するようすることで、非火災にもかかわらず火災と判断して火災処理を行ってしまうことを確実に防止できる。
【0140】
また、火災監視制御部42は、第1報目の火災信号を送信した火災検知器12につき信頼性低下と判断した後に当該火災検知器12及び又はこれに隣接した火災検知器12に基づく火災判断が成立しなかった場合、火災検知器12から非火災の(誤った)火災信号を受信したことを示す非火災移報信号を遠方監視制御設備32に送信して報知させる制御を行う。
【0141】
これにより遠方監視制御設備32側の管理担当者は、非火災報の原因となり得る火災検知器12の信頼性が低下した状態を知ることができ、火災検知器12の点検強化等といったトンネルの運用管理効率化のために利用可能とする。
【0142】
また、火災監視制御部42で火災信号を送信した火災検知器12につき信頼性低下と判断した場合、当該火災検知器12の検知エリアを重複監視している隣接した火災検知器12に、蓄積条件変更コマンド信号(蓄積条件緩和コマンド)を送信して、
図5のステップS7の蓄積回数閾値を低下させることで、第1の火災判断蓄積条件を緩和する(より火災判断に到達しやすくする)第3の火災判断蓄積条件に変更し、実質的に火災に対し高感度化しても良い。
【0143】
具体的には例えば、隣接した火災検知器12の第1の火災判断蓄積条件として設定した蓄積回数閾値を低下させて第3の火災判断蓄積条件に変更することで、実火災であった場合、隣接した火災検知器12よる火災信号が迅速に送信され、且つ又は第1報目の火災信号を送信して信頼性低下と判断された火災検知器12の復旧後再度の火災信号の送信によって速やかに火災処理を行うことができる。
【0144】
なお、火災検知器12が右眼と左眼を区別した火災信号を送信できる場合、例えば、この火災検知器12の右眼の検知エリアを左眼で重複監視している火災検知器(の左眼)を隣接した火災検知器12とすれば良い。右眼と左眼の区別ができない場合は、両隣かこのうちの何れかの火災検知器12となる。
【0145】
[本発明の変形例]
(火災検知器)
3波長方式の火災検知器を例にとっているが、他の方式でも良く、例えば、CO2の共鳴放射帯である4.5μm帯と、その短波長側の例えば、5.0μm付近の波長帯域における赤外線エネルギーを検知し、これらの2波長帯域における各受光信号の相対比によって炎の有無を判定する2波長式の炎検知器としても良い。
【0146】
(蓄積条件の変更)
また、上記の実施形態における火災検知器12の火災判断蓄積条件の変更、例えば蓄積回数閾値の変更は、火災検知器12自身が故障予兆処理として故障予兆判断条件を厳格にする(火災感度を下げる)ために蓄積回数閾値を増加する場合(
図5のステップS14)と、防災受信盤10が信頼性低下と判断したときの指示を受けて火災判断蓄積条件を厳格(感度を緩和)にするために蓄積回数閾値を増加させる場合(
図8のステップS51)とがあり、両者が重複して行われる場合には、全体の蓄積時間が必要以上に長くなり火災の発見が遅れることのないように適切に変更する。
【0147】
(P型トンネル防災システム)
上記の実施形態は、防災受信盤から引き出された信号線にアドレスが設定された火災検知を接続して火災監視する所謂R型のトンネル防災システムを示したが、本発明はこれに限定されず、防災受信盤から火災検知器単位に信号線を引き出し、各信号線に火災検知器が接続された所謂P型のトンネル防災システムについても同様である。
【0148】
一般的なP型のトンネル防災システムにあっては、防災受信盤と火災検知器との間で具体的な予兆発生回数等の情報通信はできないことから、上記の実施形態に示した防災受信盤で火災検知器の信頼性を評価して信頼性あり、信頼性低下と判断する機能は火災検知器側に設け、火災検知器で信頼性低下を判断した場合に、例えば、信号線を断線状態とすることで、又は信頼性低下信号専用線を設けるなどして信頼性情報を防災受信盤に送信して信頼性低下を報知させる。
【0149】
(その他)
また本発明は、その目的と利点を損なわない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0150】
1a:上り線トンネル
1b:下り線トンネル
10:防災受信盤
12:火災検知器
14a,14b:信号線
16:消火ポンプ設備
18:冷却ポンプ設備
20:IG子局設備
22:換気設備
24:警報表示板設備
26:ラジオ再放送設備
28:テレビ監視設備
30:照明設備
32:遠方監視制御設備
34:盤制御部
35a,35b:伝送部
42:火災監視制御部
44:区間信頼性情報生成部
46:総合信頼性情報生成部
48:区間信頼性情報判断部
50:火災検知器信頼性情報判断部
50R,50L:透光性窓
52R,52L:試験光源用透光性窓
54:検知器制御部
56:伝送部
58:電源部
60R,60L:火災検知部
64,68,72:センサ部
66,70,74:増幅処理部
76:試験発光駆動部
78R,78L,80R,80L,82R,82L:内部試験光源
84R,84L:外部試験光源
86:火災判断部
88:感度試験部
90:汚れ試験部