(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】クロストークプロセッシングb-チェーン
(51)【国際特許分類】
H04S 7/00 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
H04S7/00 320
(21)【出願番号】P 2023137381
(22)【出願日】2023-08-25
(62)【分割の表示】P 2021088445の分割
【原出願日】2018-11-26
【審査請求日】2023-09-21
(32)【優先日】2017-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518253875
【氏名又は名称】ブームクラウド 360 インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザッカリー セルデス
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-110400(JP,A)
【文献】特開平06-165297(JP,A)
【文献】特表2013-507047(JP,A)
【文献】特開2014-022959(JP,A)
【文献】特開2005-184837(JP,A)
【文献】特表2019-508978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04S 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左スピーカーおよび右スピーカーに対して入力オーディオ信号をエンハンスメントするためのシステムであって、
前記左スピーカーおよび前記右スピーカーが互いに関して非平行に向いていること、もしくは前記左スピーカーおよび前記右スピーカーからのリスナーとの距離の間の不一致、または
前記左スピーカーおよび前記右スピーカーとの間の振幅特性もしくは周波数特性のうちの少なくとも1つにおける不一致
のうちの少なくとも1つを含む、前記左スピーカーおよび前記右スピーカーの間の非対称性を決定し、前記決定される非対称性は、前記左スピーカーおよび前記右スピーカーの間の周波数応答、タイムアライメント、および信号レベルにおいて非対称性を生じさせており、
前記入力オーディオ信号にNバンドイコライゼーションを適用して、前記周波数応答における前記非対称性を調整すること、
前記入力オーディオ信号に遅延を適用して、前記タイムアライメントにおける前記非対称性を調整すること、または
前記入力オーディオ信号に利得を適用して、前記信号レベルにおける前記非対称性を調整すること
のうちの少なくとも1つによって、前記左スピーカーのための左出力チャネルおよび前記右スピーカーのための右出力チャネルを生成する
ように構成された処理回路を備えたことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記処理回路は、前記入力オーディオ信号の左チャネルまたは右チャネルのうちの少なくとも1つに1つまたは複数のフィルターを適用することによって、前記Nバンドイコライゼーションを適用するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記1つまたは複数のフィルターは、前記左スピーカーおよび前記右スピーカーの周波数応答のバランスをとることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記1つまたは複数のフィルターは、
ローシェルフフィルターおよびハイシェルフフィルターと、
バンドパスフィルターと、
バンドストップフィルターと、
ピークノッチフィルターと、
ローパスフィルターおよびハイパスフィルターと
のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記処理回路は、前記入力オーディオ信号の左チャネルまたは右チャネルのうちの1つに前記遅延を適用することによって、前記入力オーディオ信号に前記遅延を適用するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記処理回路は、前記入力オーディオ信号の左チャネルまたは右チャネルのうちの1つに前記利得を適用することによって、前記入力オーディオ信号に前記利得を適用するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記処理回路は、前記入力オーディオ信号に前記遅延および前記利得を適用するように構成され、
前記処理回路は、聴取位置における変化に従って、前記遅延および前記利得のうちの少なくとも1つを調整するようにさらに構成される
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記処理回路は、前記入力オーディオ信号に前記遅延および前記利得を適用するように構成され、
前記遅延および前記利得は、前記左スピーカーおよび前記右スピーカーから等しくない距離である聴取位置に対して調整する
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記処理回路は、前記入力オーディオ信号にクロストーク補償またはクロストークキャンセルのうちの少なくとも1つを適用するようにさらに構成されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記処理回路は、前記入力オーディオ信号の空間成分および非空間成分を利得調整するようにさらに構成されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
少なくとも1つのプロセッサーにより実行されると、
左スピーカーおよび右スピーカーが互いに関して非平行に向いていること、もしくは前記左スピーカーおよび前記右スピーカーからのリスナーとの距離の間の不一致、または
前記左スピーカーおよび前記右スピーカーとの間の振幅特性もしくは周波数特性のうちの少なくとも1つにおける不一致
のうちの少なくとも1つを含む、前記左スピーカーおよび前記右スピーカーの間の非対称性を決定し、前記決定される非対称性は、前記左スピーカーおよび前記右スピーカーの間の周波数応答、タイムアライメント、および信号レベルにおいて非対称性を生じさせており、
入力オーディオ信号にNバンドイコライゼーションを適用して、前記周波数応答における前記非対称性を調整すること、
前記入力オーディオ信号に遅延を適用して、前記タイムアライメントにおける前記非対称性を調整すること、または
前記入力オーディオ信号に利得を適用して、前記信号レベルにおける前記非対称性を調整すること
のうちの少なくとも1つによって、前記左スピーカーのための左出力チャネルおよび前記右スピーカーのための右出力チャネルを生成する
ように前記少なくとも1つのプロセッサーを構成する命令を格納する非一時的なコンピューター読み取り可能な媒体。
【請求項12】
前記命令は、前記入力オーディオ信号の左チャネルまたは右チャネルのうちの少なくとも1つに1つまたは複数のフィルターを適用することによって前記Nバンドイコライゼーションを適用するように前記少なくとも1つのプロセッサーを構成することを特徴とする請求項11に記載の非一時的なコンピューター読み取り可能な媒体。
【請求項13】
前記1つまたは複数のフィルターは、前記左スピーカーおよび前記右スピーカーの周波数応答のバランスをとることを特徴とする請求項12に記載の非一時的なコンピューター読み取り可能な媒体。
【請求項14】
前記1つまたは複数のフィルターは、
ローシェルフフィルターおよびハイシェルフフィルターと、
バンドパスフィルターと、
バンドストップフィルターと、
ピークノッチフィルターと、
ローパスフィルターおよびハイパスフィルターと
のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項12に記載の非一時的なコンピューター読み取り可能な媒体。
【請求項15】
前記命令は、前記入力オーディオ信号の左チャネルまたは右チャネルのうちの1つに前記遅延を適用することによって前記入力オーディオ信号に前記遅延を適用するように前記少なくとも1つのプロセッサーを構成することを特徴とする請求項11に記載の非一時的なコンピューター読み取り可能な媒体。
【請求項16】
前記命令は、前記入力オーディオ信号の左チャネルまたは右チャネルのうちの1つに前記利得を適用することによって前記入力オーディオ信号に前記利得を適用するように前記少なくとも1つのプロセッサーを構成することを特徴とする請求項11に記載の非一時的なコンピューター読み取り可能な媒体。
【請求項17】
前記命令は、前記入力オーディオ信号に前記遅延および前記利得を適用するように前記少なくとも1つのプロセッサーを構成し、
前記命令は、聴取位置における変化に従って、前記遅延および前記利得のうちの少なくとも1つを調整するように前記少なくとも1つのプロセッサーをさらに構成する
ことを特徴とする請求項11に記載の非一時的なコンピューター読み取り可能な媒体。
【請求項18】
前記命令は、前記入力オーディオ信号に前記遅延および前記利得を適用するように前記少なくとも1つのプロセッサーをさらに構成し、
前記遅延および前記利得は、前記左スピーカーおよび前記右スピーカーから等しくない距離である聴取位置に対して調整する
ことを特徴とする請求項11に記載の非一時的なコンピューター読み取り可能な媒体。
【請求項19】
前記命令は、前記入力オーディオ信号にクロストーク補償またはクロストークキャンセルのうちの少なくとも1つを適用ように前記少なくとも1つのプロセッサーをさらに構成することを特徴とする請求項11に記載の非一時的なコンピューター読み取り可能な媒体。
【請求項20】
前記命令は、前記入力オーディオ信号の空間成分および非空間成分を利得調整するように前記少なくとも1つのプロセッサーをさらに構成することを特徴とする請求項11に記載の非一時的なコンピューター読み取り可能な媒体。
【請求項21】
左スピーカーおよび右スピーカーに対して入力オーディオ信号をエンハンスメントするための方法であって、処理回路によって、
前記左スピーカーおよび前記右スピーカーが互いに関して非平行に向いていること、もしくは前記左スピーカーおよび前記右スピーカーからのリスナーとの距離の間の不一致、または
前記左スピーカーおよび前記右スピーカーとの間の振幅特性もしくは周波数特性のうちの少なくとも1つにおける不一致
のうちの少なくとも1つを含む、前記左スピーカーおよび前記右スピーカーの間の非対称性を決定することであって、前記決定される非対称性は、前記左スピーカーおよび前記右スピーカーの間の周波数応答、タイムアライメント、および信号レベルにおいて非対称性を生じさせている、ことと、
前記入力オーディオ信号にNバンドイコライゼーションを適用して、前記周波数応答における前記非対称性を調整すること、
前記入力オーディオ信号に遅延を適用して、前記タイムアライメントにおける前記非対称性を調整すること、または
前記入力オーディオ信号に利得を適用して、前記信号レベルにおける前記非対称性を調整すること
のうちの少なくとも1つによって、前記左スピーカーのための左出力チャネルおよび前記右スピーカーのための右出力チャネルを生成することと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項22】
前記Nバンドイコライゼーションを適用することは、前記入力オーディオ信号の左チャネルおよび右チャネルのうちの少なくとも1つに1つまたは複数のフィルターを適用することを含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記1つまたは複数のフィルターは、前記左スピーカーおよび前記右スピーカーの周波数応答のバランスをとることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記1つまたは複数のフィルターは、
ローシェルフフィルターおよびハイシェルフフィルターと、
バンドパスフィルターと、
バンドストップフィルターと、
ピークノッチフィルターと、
ローパスフィルターおよびハイパスフィルターと
のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記入力オーディオ信号に前記遅延を適用することは、前記入力オーディオ信号の左チャネルまたは右チャネルのうちの1つに前記遅延を適用することを含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記入力オーディオ信号に前記利得を適用することは、前記入力オーディオ信号の左チャネルまたは右チャネルのうちの1つに前記利得を適用することを含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記方法は、
前記入力オーディオ信号に前記遅延および前記利得を適用すること、および
聴取位置における変化に従って、前記遅延および前記利得のうちの少なくとも1つを調整すること
を含む特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記方法は、前記入力オーディオ信号に前記遅延および前記利得を適用することを含み、
前記遅延および前記利得は、前記左スピーカーおよび前記右スピーカーから等しくない距離である聴取位置に対して調整する
ことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記入力オーディオ信号にクロストーク補償またはクロストークキャンセルのうちの少なくとも1つを適用することをさらに備えることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記入力オーディオ信号の空間成分および非空間成分を利得調整することをさらに備えることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において説明する主題は、オーディオ信号処理に関し、より詳細には、スピーカーに音声クロストークキャンセルを適用するときの(幾何学的なおよび物理的な)非対称性の対処に関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオ信号(audio signal)は、あまり最適に設定されていないレンダリングシステムおよび/または室内音響に、出力されることがあり得る。
図1Aは、理想的なトランスオーラル(transaural)構成、すなわち、空いている防音室に1人のリスナーの2チャネルステレオスピーカーシステムに理想的なラウドスピーカーおよびリスナー構成の例を示す。
図1Aに示すように、リスナー140は、コンテンツ制作者の本来の意図に関して、空間的および音色的(timbral)に最も正確に再現された、左ラウドスピーカー110Lおよび右ラウドスピーカー110Rからのレンダリングされたオーディオを体験する理想的な位置(すなわち、「スイートスポット」)にいる。
【0003】
しかしながら、理想的な「スイートスポット」条件が満たされない、またはオーディオ出力デバイスにより達成できない様々な状況がある。
図1Bに示すように、今までに述べたことは、リスナー140の頭の位置が、ラウドステレオスピーカー110Lとラウドステレオスピーカー110Rとの間の理想的な「スイートスポット」の聴取位置から横方向にオフセットされる状況を含む。または、
図1Cに示すように、リスナー140は、理想的な位置にあるが、各ラウドスピーカー110Rおよびラウドスピーカー110Rと、リスナー140の頭の位置との距離は、等しくない。さらに、
図1Dに示すように、リスナー140は、理想的な位置にあるが、ラウドスピーカー110Lおよびラウドスピーカー110Rの周波数特性および振幅特性は、等しくない(すなわち、レンダリングシステムは、「アンマッチ(un-matched)」である)。別の例において、リスナー140とラウドスピーカー110Lおよびラウドスピーカー110Rとの物理的な位置は、理想的であるかもしれないが、
図1Eに示すように、1つまたは複数のラウドスピーカー110Lおよびラウドスピーカー110Rは、右ラウドスピーカー110Rに対して、理想的な角度から回転としてオフセットされことがあり得る。
【発明の概要】
【0004】
例示的な実施形態は、さまざまなスピーカーまたは環境の非対称性を調整する空間的にエンハンスメントされたオーディオ信号(spatially enhanced audio signal)のb-チェーン処理に関する。非対称性の例は、あるスピーカーと、別のスピーカーのとは異なるリスナーとの間の時間遅延、あるスピーカーと、別のスピーカーのとは異なるリスナーとの間の(知覚されるおよび目的の)信号レベル、または、あるスピーカーと、別のスピーカーのとは異なるリスナーとの間の周波数応を含むことがあり得る。
【0005】
例示的な実施形態において、左スピーカーおよび右スピーカーの入力オーディオ信号をエンハンスメントするためのシステムは、空間エンハンスメントプロセッサーおよびb-チェーンプロセッサーを含む。空間エンハンスメントプロセッサーは、入力オーディオ信号の空間成分および非空間成分を利得調整することによって、空間エンハンスメント信号(spatially enhanced signal)を生成する。b-チェーンプロセッサーは、周波数応答、タイムアライメントおよび聴取位置の信号レベルにおいて、左スピーカーと右スピーカーとの間の非対称性を決定する。b-チェーンプロセッサーは、次の方法、空間エンハンスメント信号にN-バンドイコライゼーション(N-band equalization)を適用して、周波数応答の非対称性を調整すること、空間エンハンスメント信号に遅延を適用して、タイムアライメントの非対称性を調整すること、および空間エンハンスメント信号に利得を適用して、信号レベルの非対称性を調整することによって、左スピーカー用の左出力チャネルと右スピーカー用の右出力チャネルとを生成する。
【0006】
実施形態において、b-チェーンプロセッサーは、左空間のエンハンスメントされたチャネルと右空間のエンハンスメントされたチャネルとの少なくとも1つに1つまたは複数のフィルターを適用することによって、Nバンドイコライゼーションを適用する。1つまたは複数のフィルターは、左スピーカーおよび右スピーカーの周波数応答のバランスをとり、ローシェルフフィルターおよびハイシェルフフィルター、バンドパスフィルター、バンドストップフィルター、ピークノッチフィルター、ローパスフィルターおよびハイパスフィルターのうちの少なくとも1つのフィルターを含むことがあり得る。
【0007】
実施形態において、b-チェーンプロセッサーは、聴取位置の変化に応じて、遅延および利得のうちの少なくとも1つを調整する。
【0008】
実施形態は、プロセッサーにより実行されると、左スピーカー用の左入力チャネルと右スピーカー用の右入力チャネルとを含む入力オーディオ信号の空間成分および非空間成分を利得調整することにより空間エンハンスメント信号を生成し、左スピーカーと右スピーカーとの間の非対称性を決定し、Nバンドイコライゼーションを空間エンハンスメント信号に適用して周波数応答の非対称性を調整することと、空間エンハンスメント信号に遅延を適用してタイムアライメントの非対称性を調整することと、空間エンハンスメント信号に利得を適用して信号レベルの非対称性を調整することと、によって左スピーカー用の左出力チャネルと右スピーカー用の右出力チャネルとを生成するようにプロセッサーを構成する命令を格納する非一時的なコンピューター読み取り可能な媒体を含むことがあり得る。
【0009】
実施形態は、左スピーカーおよび右スピーカーの入力オーディオ信号を処理する方法が含むことがあり得る。方法は、左スピーカー用の左入力チャネルと右スピーカー用の右入力チャネルを含む入力オーディオ信号の空間成分および非空間成分を利得調整することによって空間エンハンスメント信号を生成することと、周波数応答、タイムアライメント、および聴取位置の信号レベルにおける左スピーカーと右スピーカーとの間の非対称性を決定することと、Nバンドイコライゼーションを空間エンハンスメント信号に適用して周波数応答の非対称性を調整すること、空間エンハンスメント信号に遅延を適用してタイムアライメントの非対称性を調整すること、および空間エンハンスメント信号に利得を適用して信号レベルの非対称性を調整することによって左スピーカー用の左出力チャネルと右スピーカー用の右出力チャネルとを生成することとを含むことがあり得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】いくつかの実施形態に係るリスナーに関するラウドスピーカーの位置を例示する。
【
図1B】いくつかの実施形態に係るリスナーに関するラウドスピーカーの位置を例示する。
【
図1C】いくつかの実施形態に係るリスナーに関するラウドスピーカーの位置を例示する。
【
図1D】いくつかの実施形態に係るリスナーに関するラウドスピーカーの位置を例示する。
【
図1E】いくつかの実施形態に係るリスナーに関するラウドスピーカーの位置を例示する。
【
図2】いくつかの実施形態に係るオーディオ処理システムの概略的なブロック図である。
【
図3】いくつかの実施形態に係る空間エンハンスメントプロセッサーの概略的なブロック図である。
【
図4】いくつかの実施形態に係るサブバンド空間プロセッサーの概略的なブロック図である。
【
図5】いくつかの実施形態に係るクロストーク補償プロセッサーの概略的なブロック図である。
【
図6】いくつかの実施形態に係るクロストークキャンセルプロセッサーの概略的なブロック図である。
【
図7】いくつかの実施形態に係るb-チェーンプロセッサーの概略的なブロック図である。
【
図8】いくつかの実施形態に係る入力オーディオ信号のb-チェーン処理のための方法のフローチャートである。
【
図9】いくつかの実施形態に係る理想的ではない頭の位置およびアンマッチのラウドスピーカーを例示する。
【
図10A】いくつかの実施形態に係る
図9に示す理想的ではない頭の位置およびアンマッチのラウドスピーカーの周波数応答を例示する。
【
図10B】いくつかの実施形態に係る
図9に示す理想的ではない頭の位置およびアンマッチのラウドスピーカーの周波数応答を例示する。
【
図11】いくつかの実施形態に係るコンピューターシステムの概略的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面は、および詳細な説明は、例示のみの目的のための様々な非限定的な実施形態を描写する。
【0012】
ここで、実施形態を詳細に参照し、その例を添付図面に示す。以下の説明は、ある特定の具体的詳細を、様々な実施形態の徹底した理解を提供するために示す。ただし、これらの具体的な詳細なしに、記載されている実施形態を実施することができる。その他の事例では、明確な方法、手順、構成要素、回路、およびネットワークについては、実施形態の態様を不必要に曖昧にしないように詳細に説明されていない。
【0013】
本開示の実施形態は、空間エンハンスメントおよびb-チェーンの処理を提供するオーディオ処理システムに関する。空間エンハンスメントは、サブバンド空間処理およびクロストークキャンセルを入力オーディオ信号に適用することを含むことがあり得る。b-チェーン処理は、非理想的に構成されたステレオラウドスピーカーレンダリングシステム上に、トランスオーラルにレンダリングされたオーディオの知覚される空間的なサウンドステージを復元する。
【0014】
例えば、映画館または個人用ヘッドフォンに使用されることが可能であるようなデジタルオーディオシステムは、a-チェーンとb-チェーンとの2つの部分として考えられることが可能である。例えば、映画館のような環境では、a-チェーンは、通常、ドルビーアナログに、さらにドルビーデジタル、DTS、およびSDDSなどのデジタルフォーマットの中からの選択に、利用できるフィルムプリント上の音声録音を含む。さらに、フィルムプリントからオーディオを取得し処理して、増幅の準備ができるような装置は、a-チェーンの一部である。
【0015】
b-チェーンは、あまり最適に構成されていないレンダリングシステムの設置、室内音響、またはリスナーの位置の影響を修正および/または最小化するために、マルチチャネルの音量制御、イコライゼーション、タイムアライメント、および増幅を、ラウドスピーカーに適用するためのハードウェアおよびソフトウェアシステムを含む。b-チェーン処理は、リスナーを「理想的な」体験に近づけるという一般的な目的で、リスニング体験の知覚される質を最適化するように、分析的またはパラメトリックに構成されることが可能である。
【0016】
例示的なオーディオシステム
図2は、いくつかの実施形態に係るオーディオ処理システム200の概略的なブロック図である。オーディオ処理システム200は、サブバンド空間処理、クロストークキャンセル処理、およびb-チェーン処理を、左入力チャネルXLおよび右入力チャネルXRを含む入力オーディオ信号Xに適用して、左出力チャネルOLおよび右出力チャネルORを含む出力オーディオ信号Oを生成する。出力オーディオ信号Oは、非理想的に構成されたステレオラウドスピーカーレンダリングシステム上で、トランスオーラルにレンダリングされた入力オーディオ信号Xに対して、知覚される空間的なサウンドステージを復元する。
【0017】
オーディオ処理システム200は、b-チェーンプロセッサー240に接続された空間エンハンスメントプロセッサー205を含む。空間エンハンスメントプロセッサー205は、サブバンド空間プロセッサー210と、クロストーク補償プロセッサー220と、サブバンド空間プロセッサー210およびクロストーク補償プロセッサー220に接続されたクロストークキャンセルプロセッサー230とを含む。
【0018】
サブバンド空間プロセッサー210は、左入力チャネルXLおよび右入力チャネルXRのミッドおよびサイドのサブバンドコンポーネントを利得調整することによって、空間的にエンハンスメントされたオーディオ信号を生成する。クロストーク補償プロセッサー220は、クロストーク補償(crosstalk compensation)を実行して、クロストークキャンセルプロセッサー230によって適用されたクロストークキャンセルのスペクトル欠陥またはアーチファクトを補償する。クロストークキャンセルプロセッサー230は、サブバンド空間プロセッサー210およびクロストーク補償プロセッサー220の組み合わされた出力にクロストークキャンセルを実行して、左エンハンスメントチャネルALおよび右エンハンスメントチャネルARを生成する。空間エンハンスメントプロセッサー210に関する追加の詳細は、
図3~6に関して以下に説明される。
【0019】
b-チェーンプロセッサー240は、ディレイアンドゲインプロセッサー260に接続されたスピーカーマッチングプロセッサー250を含む。特に、b-チェーンプロセッサー240は、ラウドスピーカー110Lおよびラウドスピーカー110Rとリスナーの頭との差の全体的な遅延時間、ラウドスピーカー110Lおよびラウドスピーカー110Rとリスナーの頭との間の(知覚されるおよび目的の)信号レベルの差、およびラウドスピーカー110Lおよびラウドスピーカー110Rとリスナーの頭との間の周波数応答の差を調整することが可能である。
【0020】
スピーカーマッチングプロセッサー250は、左エンハンスメントチャネルALおよび右エンハンスメントチャネルARを受信し、例えば、モバイルデバイスのスピーカーペアまたは他のタイプの左/右スピーカーペアなど、マッチしたスピーカーペアを提供しないデバイスに対してスピーカーバランシングを行う。実施形態において、スピーカーマッチングプロセッサー250は、左エンハンスメントチャネルALおよび右エンハンスメントチャネルARの各々にイコライゼーションおよび利得または減衰を適用して、理想的なリスニングスイートスポットの視点からスペクトル的に知覚的にバランスのとれたステレオイメージを提供する。ディレイアンドゲインプロセッサー260は、スピーカーマッチングプロセッサー250の出力を受信し、チャネルALおよびARの各々にイコライゼーションおよび利得または減衰を適用して、タイムアライメントをし、さらに、レンダリング/リスニングシステム内の実際の物理的な非対称性(例えば、オフセンターの頭の位置および/または同等でないラウドスピーカーとヘッドとの間の距離など)が与えられた、特定のリスナーの頭の位置からの空間イメージの知覚的なバランスをとる。スピーカーマッチングプロセッサー250およびディレイアンドゲインプロセッサー260によって適用される処理は、異なる順序で行うことがあり得る。b-チェーンプロセッサー240に関する追加の詳細は、
図7に関して以下に説明する。
【0021】
空間エンハンスメントプロセッサーの例
図3は、いくつかの実施形態に係る空間エンハンスメントプロセッサー205の概略的なブロック図である。空間エンハンスメントプロセッサー205は、入力オーディオ信号を空間的にエンハンスメントし、空間的にエンハンスメントされたオーディオ信号上にクロストークキャンセルを行う。その目的のために、空間エンハンスメントプロセッサー205は、左入力チャネルXLおよび右入力チャネルXRを含む入力オーディオ信号Xを受信する。実施形態において、入力オーディオ信号Xは、デジタルビットストリーム(例えば、PCMデータなど)のソースコンポーネントから提供される。ソースコンポーネントは、コンピューター、デジタルオーディオプレーヤー、光学式ディスクプレーヤー(例えば、DVD、CD、ブルーレイなど)、デジタルオーディオストリーマー、またはデジタルオーディオ信号の他のソースであることがあり得る。空間エンハンスメントプロセッサー205は、入力チャネルXLおよび入力チャネルXRを処理することにより、2つの出力チャネルALおよび出力チャネルARを含む出力オーディオ信号Aを生成する。出力オーディオ信号Aは、クロストーク補償およびクロストークキャンセルによる入力オーディオ信号Xの空間的にエンハンスメントされたオーディオ信号である。
図3に示さないが、さらに、空間エンハンスメントプロセッサー205は、クロストークキャンセルプロセッサー230からの出力オーディオ信号Aを増幅し、例えば、ラウドスピーカー110Rおよびラウドスピーカー110Rなど、出力チャネルALおよび出力チャネルARを音に変換する出力デバイスに信号Aを提供する増幅器を含むことがあり得る。
【0022】
空間エンハンスメントプロセッサー205は、サブバンド空間プロセッサー210、クロストーク補償プロセッサー220、コンバイナー222、およびクロストークキャンセルプロセッサー230を含む。空間エンハンスメントプロセッサー205は、入力音声入力チャネルXL、XRのクロストーク補償およびサブバンド空間処理を実行し、サブバンド空間処理の結果をクロストーク補償の結果と組み合わせて、次に、組み合わされた信号にクロストークキャンセルを実行する。
【0023】
サブバンド空間プロセッサー210は、空間周波数帯域ディバイダー310、空間周波数帯域プロセッサー320、空間周波数帯域コンバイナー330を含む。空間周波数帯域ディバイダー310は、入力チャネルXLおよび入力チャネルXRと空間周波数帯域プロセッサー320に接続される。空間周波数帯域ディバイダー310は、左入力チャネルXLおよび右入力チャネルXRを受け取り、入力チャネルを、空間(または「サイド」)成分Ysおよび非空間(または「ミッド」)成分Ymへと処理する。例えば、空間成分Ysは、左入力チャネルXLと右入力チャネルXRとの差に基づいて、生成されることが可能である。非空間成分Ymは、左入力チャネルXLと右入力チャネルXRとの和に基づいて、生成されることが可能である。空間周波数帯域ディバイダー310は、空間成分Ysおよび非空間成分Ymを空間周波数帯域プロセッサー320に提供する。
【0024】
空間周波数帯域プロセッサー320は、空間周波数帯域ディバイダー310および空間周波数帯域コンバイナー330に接続される。空間周波数帯域プロセッサー320は、空間周波数帯域ディバイダー310から空間Ysおよび非空間成分Ymを受信し、受信信号をエンハンスメントする。特に、空間周波数帯域プロセッサー320は、空間成分Ysからエンハンスメントされた空間成分Esを生成し、非空間成分Ymからエンハンスメントされた非空間成分Emを生成する。
【0025】
例えば、空間周波数帯域プロセッサー320は、空間成分Ysにサブバンドゲインを適用してエンハンスメントされた空間成分Esを生成し、非空間成分Ymにサブバンドゲインを適用してエンハンスメントされた非空間成分Emを生成する。いくつかの実施形態では、追加としてまたは代替として、空間周波数帯域プロセッサー320は、エンハンスメントされた空間成分Esを生成するために空間成分Ysにサブバンド遅延を、およびエンハンスメントされた非空間成分Emを生成するために非空間成分Ymにサブバンド遅延を提供する。サブバンドの利得および/または遅延は、空間成分Ysおよび非空間成分Ymの異なる(例えば、n個の)サブバンドに対して異なることが可能であるか、または(例えば、2つ以上のサブバンドに対して)同じであることが可能である。空間周波数帯域プロセッサー320は、空間成分Ysと非空間成分Ymとの異なるサブバンドの利得および/または遅延を互に関して調整して、エンハンスメントされた空間成分Esおよびエンハンスメントされた非空間成分Emを生成する。次に、空間周波数帯域プロセッサー320は、エンハンスメントされた空間成分Esおよびエンハンスメントされた非空間成分Emを空間周波数帯域コンバイナー330に提供する。
【0026】
空間周波数帯域コンバイナー330は、空間周波数帯域プロセッサー320に接続され、さらにコンバイナー222に接続される。空間周波数帯域コンバイナー330は、空間周波数帯域プロセッサー320からエンハンスメントされた空間成分Esおよびエンハンスメントされた非空間成分Emを受け取り、エンハンスメントされた空間成分Esおよびエンハンスメントされた非空間成分Emを左空間エンハンスメントチャネルELおよび右空間エンハンスメントチャネルERに組み合わせる。たとえば、左空間エンハンスメントチャネルELは、エンハンスメントされた空間成分Esとエンハンスメントされた非空間成分Emとの和に基づいて、生成されることが可能であり、右空間エンハンスメントチャネルERは、エンハンスメントされた非空間成分Emとエンハンスメントされた空間成分Esとの差に基づいて、生成されることが可能である。空間周波数帯域コンバイナー330は、左空間エンハンスメントチャネルELおよび右空間エンハンスメントチャネルERをコンバイナー222に提供する。
【0027】
クロストーク補償プロセッサー220は、クロストーク補償を実行して、クロストークキャンセルのスペクトル欠陥やアーチファクトを補償する。クロストーク補償プロセッサー220は、入力チャネルXLおよびXRを受け取り、クロストークキャンセルプロセッサー230によって実行されるエンハンスメントされた非空間成分Emおよびエンハンスメントされた空間成分Esの後続のクロストークキャンセルにおけるアーチファクトを補償する処理を実行する。実施形態では、クロストーク補償プロセッサー220は、左クロストーク補償チャネルZLおよび右クロストーク補償チャネルZRを含むクロストーク補償信号Zを生成するフィルターを適用することによって、非空間成分Xmおよび空間成分Xs上のエンハンスメントを実行し得る。他の実施形態において、クロストーク補償プロセッサー220は、非空間成分Xm上にのみエンハンスメントを実行することがあり得る。
【0028】
コンバイナー222は、左空間エンハンスメントチャネルELを左クロストーク補償チャネルZLと組み合わせて左エンハンスメント補償チャネルTLを生成し、右空間エンハンスメントチャネルERを右クロストーク補償チャネルZRと組み合わせて右エンハンスメント補償チャネルTRを生成する。コンバイナー222は、クロストークキャンセルプロセッサー230に接続され、左エンハンスメント補償チャネルTLおよび右エンハンスメント補償チャネルTRをクロストークキャンセルプロセッサー230に提供する。
【0029】
クロストークキャンセルプロセッサー230は、左エンハンスメント補償チャネルTLおよび右エンハンスメント補償チャネルTRを受け取り、チャネルTL、TRに対してクロストークキャンセルを実行して、左出力チャネルOLおよび右出力チャネルORを含む出力オーディオ信号Aを生成する。
【0030】
サブバンド空間プロセッサー210に関する追加の詳細は、
図4に関して以下に説明され、クロストーク補償プロセッサー220に関する追加の詳細は、
図5に関して以下に説明され、クロストークキャンセルプロセッサー230に関する追加の詳細は、
図6に関して以下に説明される。
【0031】
図4は、いくつかの実施形態に係るサブバンド空間プロセッサー210の概略的なブロック図である。サブバンド空間プロセッサー210は、空間周波数帯域ディバイダー310、空間周波数帯域プロセッサー320、および空間周波数帯域コンバイナー330を含む。空間周波数帯域ディバイダー310は、空間周波数帯域プロセッサー320と接続され、空間周波数帯域プロセッサー320は、空間周波数帯域コンバイナー330と接続される。
【0032】
空間周波数帯域ディバイダー310には、左入力チャネルXLおよび右入力チャネルXRを受信し、これらの入力を空間成分Xsおよび非空間成分Xmに変換するL/R-M/Sコンバーター402を含む。空間成分Xsは、左入力チャネルXLおよび右入力チャネルXRを減算することによって、生成されることがあり得る。非空間成分Xmは、左入力チャネルXLおよび右入力チャネルXRを加算することによって、生成されることがあり得る。
【0033】
空間周波数帯域プロセッサー320は、非空間成分Xmを受信し、サブバンドフィルターのセットを適用して、非空間エンハンスメントサブバンドコンポーネントEmを生成する。さらに、空間周波数帯域プロセッサー320は、空間サブバンドコンポーネントXsを受信し、サブバンドフィルターのセットを適用して、非空間エンハンスメントサブバンドコンポーネントEmを生成する。サブバンドフィルターは、ピークフィルター、ノッチフィルター、ローパスフィルター、ハイパスフィルター、ローシェルフフィルター、ハイシェルフフィルター、バンドパスフィルター、バンドストップフィルター、および/またはオールパスフィルターのさまざまな組み合わせを含むことが可能である。
【0034】
実施形態において、空間周波数帯域プロセッサー320は、非空間成分Xmのうちのn個の周波数サブバンドの各々に対するサブバンドフィルターと、空間成分Xsのうちのn個の周波数サブバンドの各々に対するサブバンドフィルターを含む。例えば、n=4に対して、空間周波数帯域プロセッサー320は、サブバンド(1)用のミッドイコライゼーション(EQ)フィルター404(1)、サブバンド(2)用のミッドEQフィルター404(2)、サブバンド(3)用のミッドEQフィルター404(3)、サブバンド(4)用のミッドEQフィルター404(4)を含む非空間成分Xm用の一連のサブバンドフィルターを含む。各ミッドEQフィルター404は、非空間成分Xmの周波数サブバンド部分にフィルターを適用して、エンハンスメントされた非空間成分Emを生成する。
【0035】
さらに、空間周波数帯域プロセッサー320は、サブバンド(1)用のサイドイコライゼーション(EQ)フィルター406(1)、サブバンド用(2)のサイドEQフィルター406(2)、サブバンド用のサイドEQフィルター406(3)、サブバンド用のサイドEQフィルター406(4)を含む空間成分Xsの周波数サブバンドに対する一連のサブバンドフィルターを含む。各サイドEQフィルター406は、空間成分Xsの周波数サブバンド部分にフィルターを適用して、エンハンスメントされた空間成分Esを生成する。
【0036】
非空間成分Xmおよび空間成分Xsに関するn個の周波数サブバンドの各々は、周波数の範囲に対応することがあり得る。たとえば、周波数サブバンド(1)は0~300Hzに対応し、周波数サブバンド(2)は300~510Hzに対応し、周波数サブバンド(3)は510~2700Hzに対応し、周波数サブバンド(4)は2700Hz~ナイキスト周波数に対応する。いくつかの実施形態では、n個の周波数サブバンドは重要なバンドの統合セットである。重要なバンドは色々な音楽的なジャンルからの可聴周波サンプルのコーパスを使用して定められ得る。24バーク尺度の臨界帯域における中間成分とサイド成分の長期平均エネルギー比は、サンプルから決定される。次に、同様の長期平均比を持つ連続周波数帯域をグループ化して、重要な帯域のセットを形成する。周波数サブバンドの範囲と周波数サブバンドの数は調整することができる。実施形態において、n個の周波数サブバンドの各々は、重要なバンドのセットを含むことがあり得る。
【0037】
実施形態において、ミッドEQフィルター404またはサイドEQフィルター-406は、式1により定義される伝達関数を有する4次フィルター(biquad filter)を含むことがあり得る。
【0038】
【0039】
ただし、zは複素変数で、a0、a1、a2、b0、b1、およびb2はデジタルフィルター係数である。フィルターは、式2により定義されるダイレクトフォーム(direct form)Iトポロジーを使用して実装されることがあり得る。
【0040】
【0041】
ここで、Xは、入力ベクトルであり、Yは、出力である。他のトポロジーは、最大ワード長およびサチュレーションビヘイビア(saturation behavior)に依存する、あるプロセッサーに対して利点があることがあり得るだろう。
【0042】
次に、4次を使用して、実数の入力値および出力値を有する任意の2次フィルターを実装することが可能である。離散時間フィルターを設計するために、連続時間フィルターは、設計され、双一次変換を介して離散時間に変換する。さらに、中心周波数および帯域幅における任意の結果のシフトに対する補償は、周波数歪みを使用して、達成されることがあり得る。
【0043】
例えば、ピークフィルターは、式3により定義されるS平面伝達関数(S-plane transfer function)を含むことがあり得る。
【0044】
【0045】
ここで、Sは、複素変数であり、Aは、ピークの振幅であり、Qはフィルター「品質」(次のようにカノニカルに導かれる
【0046】
【0047】
)である。
デジタルフィルター係数は、次のとおりである。
【0048】
【0049】
ただし、ω0は、フィルターの中心周波数をラジアンおよび
【0050】
【0051】
で表したものである。
【0052】
空間周波数帯域コンバイナー330は、中間部とサイドの成分を受け取り、各成分にゲインを適用し、中間とサイドの成分を左右のチャネルに変換する。たとえば、空間周波数帯域コンバイナー330は、エンハンスメントされた非空間成分Emおよびエンハンスメントされた空間成分Esを受信し、エンハンスメントされた非空間成分Emおよびエンハンスメントされた空間成分Esを左空間エンハンスメントチャネルELおよび右空間エンハンスメントチャネルERに変換する前に、大域的なミッドアンドサイドの利得を実行する。
【0053】
具体的には、空間周波数帯域コンバイナー330は、グローバルミッドゲイン408と、グローバルサイドゲイン410と、グローバルミッドゲイン408およびグローバルサイドゲイン410に接続されたM/S-L/Rコンバーター412を含む。グローバルミッドゲイン408は、エンハンスメントされた非空間成分Emを受信し、利得を適用し、グローバルサイドゲイン410は、エンハンスメントされた非空間成分Esを受信し、利得を適用する。M/S-L/Rコンバーター412は、グローバルミッドゲイン408からエンハンスメントされた非空間成分Emを、グローバルサイドゲイン410からエンハンスメントされた空間成分Esを受信し、これらの入力を左空間エンハンスメントチャネルELおよび右空間エンハンスメントチャネルERに変換する。
【0054】
図5は、いくつかの実施形態に係るクロストーク補償プロセッサー220の概略的なブロック図である。クロストーク補償プロセッサー220は、左右の入力チャネルを受信し、入力チャネル上にクロストーク補償を適用することによって、左右の出力チャネルを生成する。クロストーク補償プロセッサー220は、L/R-M/Sコンバーター502、ミッドコンポーネントプロセッサー520、サイドコンポーネントプロセッサー530、およびM/S-L/Rコンバーター514を含む。
【0055】
クロストーク補償プロセッサー220がオーディオシステム202、400、500または504の部分であるとき、クロストーク補償プロセッサー220は、入力チャネルXLおよびXRを受信し、前処理を実行して左クロストーク補償チャネルZLおよび右クロストーク補償チャネルZRを生成する。チャネルZL、ZRは、例えば、クロストークキャンセルまたはシミュレーションなど、クロストーク処理のアーチファクトを補償するのに使用されることがあり得る。L/R-M/Sコンバーター502は、左入力音声チャネルXLおよび右入力音声チャネルXRを受信し、入力チャネルXL、XRの非空間成分Xmおよび空間成分Xsを生成する。一般に、左右のチャネルは、加算されて左右のチャネルの非空間成分を生成し、減算されて左右のチャネルの空間成分を生成することがあり得る。
【0056】
ミッドコンポーネントプロセッサー520には、m個のミッドフィルター540(a)、540(b)、540(m)などの複数のフィルター540が搭載されている。ここで、m個のミッドフィルター540の各々は、非空間成分Xmおよび空間成分Xsのm個の周波数帯域のうちの1つを処理する。ミッドコンポーネントプロセッサー520は、非空間成分Xmを処理することによって、ミッドクロストーク補償チャネルZmを生成する。実施形態において、ミッドフィルター540は、シミュレーションを通したクロストーク処理による非空間成分Xmの周波数応答プロットを使用して、構成される。また、周波数応答プロットを解析することにより、クロストーク処理のアーチファクトとして発生する周波数応答プロットのピークやトラフなどのスペクトル障害を、あらかじめ設定されたしきい値(10dbなど)を超えて推定することができる。これらのアーチファクトは、主にクロストーク処理において、遅延され反転された対側信号と、対応する同側信号との合計に起因し、よって、最終的なレンダリング結果にコームフィルターのような周波数応答を効果的に導入する。ミッドクロストーク補償チャネルZmは、ミッドコンポーネントプロセッサー520によって生成されて、推定されたピークまたはトラフに対して補償することが可能であり、ただし、m個の周波数帯域の各々がピークまたはトラフに対応する。具体的には、クロストーク処理で適用される特定の遅延、フィルタリング周波数、およびゲインに基づいて、周波数応答でピークとトラフが上下に移動し、スペクトルの特定の領域におけるエネルギーの増幅や減衰を引き起こす。各ミッドフィルター540は、1つまたは複数のピークとトラフに合わせて調整するように設定できる。
【0057】
サイドコンポーネントプロセッサー530は、m個のサイドフィルター550(a)、550(b)~550(m)などの複数のフィルター550を含む。サイドコンポーネントプロセッサー530は、空間成分Xsを処理することによって、サイドクロストーク補償チャネルZsを生成する。実施形態において、クロストーク処理による空間成分Xsの周波数応答プロットは、シミュレーションによって、得られることが可能である。周波数応答プロットを解析することにより、クロストーク処理のアーチファクトとして発生する周波数応答プロットのピークやトラフなどのスペクトル障害を、あらかじめ設定されたしきい値(10dBなど)を超えて推定できる。サイドクロストーク補償チャネルZsは、サイドコンポーネントプロセッサー530によって生成されて、推定されるピークまたはトラフを補償することが可能である。具体的には、クロストーク処理で適用される特定の遅延、フィルタリング周波数、およびゲインに基づいて、周波数応答でピークとトラフが上下に移動し、スペクトルの特定の領域におけるエネルギーの増幅や減衰を引き起こす。各サイドフィルター550は、1つまたは複数のピークおよびトラフに合わせて調整するように設定できる。一部の実施形態では、ミッドコンポーネントプロセッサー520とサイドコンポーネントプロセッサー530に異なる数のフィルターが含まれている場合がある。
【0058】
実施形態において、ミッドフィルター540およびサイドフィルター550は、式4により定義された伝達関数を有する4次フィルターを含むことがあり得る。
【0059】
【0060】
ただし、zは複素変数で、a0、a1、a2、b0、b1、およびb2はデジタルフィルター係数である。このようなフィルターを実装する1つの方法は、式5で定義されたダイレクトフォームIトポロジーである。
【0061】
【0062】
ただし、Xは入力ベクトル、Yは出力である。ほかのトポロジーは最大ワード長および飽和動作に応じて、使用される。
【0063】
その後、バイクアッドを使用して、実値の入出力を持つ2次フィルターが実装できる。離散時間フィルターを設計するために、連続時間フィルターが設計され、双一次変換によって離散時間に変換される。さらに、中心周波数と帯域幅のシフトは、周波数歪みを使用して補償できる。
【0064】
例えば、ピークフィルターは、式6で定義され複素平面転送機能がある。
【0065】
【0066】
ただし、sは、複素変数であり、Aは、ピークの振幅であり、Qは、フィルター「品質」であり、デジタルフィルター係数は、次のように定義される。
【0067】
【0068】
ただし、ω0は、フィルターの中心周波数をラジアンおよび
【0069】
【0070】
で表したものである。
【0071】
さらに、フィルター品質Qは式7で定義できる。
【0072】
【0073】
ただし、
【0074】
【0075】
は帯域幅、fcは中心周波数である。
【0076】
M/S-L/Rコンバーター514は、ミッドクロストーク補償チャネルZmおよびサイドクロストーク補償チャネルZsを受信し、左クロストーク補償チャネルZLおよび右クロストーク補償チャネルZRを生成する。一般に、ミッドチャネルとサイドチャネルとを加算して、ミッドコンポーネントおよびサイドコンポーネントの左チャネルを生成し、ミッドチャネルとサイドチャネルとを減算して、ミッドコンポーネントおよびサイドコンポーネントの右チャネルを生成することがあり得る。
【0077】
図6は、いくつかの実施形態に係るクロストークキャンセルプロセッサー230の概略的なブロック図である。クロストークキャンセルプロセッサー230は、コンバイナー222から左エンハンスメント補償チャネルTLおよび右エンハンスメント補償チャネルTRを受信し、チャネルTL、TR上にクロストークキャンセルを実行して、左出力チャネルALおよび右出力チャネルARを生成する。
【0078】
クロストークキャンセルプロセッサー230は、インアウトバンドディバイダー610、インバーター620および622、対側エスティメーター630および640、コンバイナー650および652、インアウトバンドコンバイナー660を含む。これらの構成要素は、入力チャネルTL、TRを帯域内成分および帯域外成分に分割し、帯域内成分上にクロストークキャンセルを実行して、出力チャネAL、ARを生成する。
【0079】
入力オーディオ信号Tを異なる周波数帯域成分に分割し、選択的成分(帯域内成分など)でクロストークキャンセルを実行することで、他の周波数帯域での劣化をなくしながら、特定の周波数帯域でクロストークキャンセルを実行できる。入力オーディオ信号Tを異なる周波数帯域に分割せずにクロストークキャンセルを実行すると、クロストークキャンセル後のオーディオ信号は、低周波数(350Hz未満など)、高周波数(12000Hz以上など)、または両方での非空間成分および空間成分で大きな減衰または増幅を示す場合がある。影響の大きい空間的手がかりの大部分が存在するインバンド(250Hz~14000Hzなど)のクロストークキャンセルを選択的に実行することで、ミックス内のスペクトル全体にわたって、特に非空間的な成分でバランスのとれた全体的なエネルギーを維持できる。
【0080】
インアウトバンドディバイダー610は、入力チャネルTL、TRを、それぞれ、帯域内チャネルTL,In、TR,In、および帯域外チャネルTL,Out、TR,Outに分離する。特に、インアウトバンドディバイダー610は、左エンハンスメント補償チャネルTLを、左帯域内チャネルTL,In、および左帯域外チャネルTL,Outに分割する。同様に、インアウトバンドディバイダー610は、右エンハンスメント補償チャネルTRを、右帯域内チャネルTR,In、および右帯域外チャネルTR,Outに分割する。各帯域内チャネルは、例えば250Hz~14kHzなど、周波数範囲に対応する各入力チャネルの一部を包含する。周波数帯域の範囲は、スピーカーのパラメーターなどに応じて調整できる。
【0081】
インバーター620および対側エスティメーター630は、左帯域内チャネルTL,Inによる対側サウンド成分を補償するために、左対側キャンセル成分SLを生成するようにともに動作する。同様に、インバーター622および対側エスティメーター640は、右帯域内チャネルTR,Inによる対側サウンド成分を補償するために、右対側キャンセル成分SRを生成するようにともに動作する。
【0082】
1つのアプローチでは、インバーター620は、帯域内チャネルTL,Inを受信し、受信された帯域内チャネルTL,Inの極性を反転して、反転された帯域内チャネルTL,In’を生成する。対側エスティメーター630は、反転された帯域内チャネルTL,In’を受け取り、フィルタリングを通じて、対側サウンド成分に対応する反転された帯域内チャネルTL、In’の一部を抽出する。フィルタリングが、反転された帯域内チャネルTL,In’上に実行されるので、対側エスティメーター630によって抽出された部分は、対側サウンドコンポーネントに帰する帯域内チャネルTL,Inの一部の逆になる。したがって、対側エスティメーター630によって抽出された部分は、左対側キャンセル成分SLになり、反対側の帯域内チャネルTR,Inに加算して、帯域内チャネルTL,Inに起因する対側サウンド成分を減らすことが可能である。一部の実施形態では、インバーター620と対側エスティメーター630は、異なる順序で実装される。
【0083】
インバーター622および対側エスティメーター640は、帯域内チャネルTR,Inに関して同様の操作を行い、右対側キャンセル成分SRを生成する。従って、その詳細な説明は、本明細書では簡潔さのために省略される。
【0084】
1つの例示的な実装形態において、対側エスティメーター630は、フィルター632、アンプ634、およびディレイユニット636を含む。フィルター632は、反転された入力チャネルTL,In’を受け取り、フィルタリング機能を通して対側サウンド成分に対応する反転された帯域内チャネルTL,In’の一部を抽出する。フィルターの実装の例は、5000~10000Hzにおいて選択される中心周波数と、0.5~1.0において選択されるQとを使用するNotchまたはHighshelfのフィルターがある。デシベル(GdB)単位の利得は、式8から導出されることがあり得る。
GdB=-3.0-log1.333(D) 式8
ただし、Dは、サンプルにおけるディレイユニット636による遅延量、例えば、48KHzのサンプリングレートである。
【0085】
別の実装方法としては、ローパスフィルターがあり、コーナー周波数は5000~10000Hzの範囲で選択され、Qは0.5~1.0の範囲で選択される。さらに、アンプ634は、対応するゲイン係数GL,Inによって抽出部分を増幅し、ディレイユニット636は遅延機能Dに従ってアンプ634からの増幅出力を遅延させ、左対側キャンセル成分SLを生成する。対側エスティメーター640には、フィルター642、アンプ644、およびディレイユニット646が含まれている。このユニットは、反転された帯域内チャネルTR,In’で同様の操作を実行して、右対側キャンセル成分SRを生成する。1つの例において、対側エスティメーター630、640は、次の式に従って、左対側キャンセル成分SL、および右対側キャンセル成分SRを生成する。
SL=D[GL,In*F[TL,In’]] 式9
SR=D[GR,In*F[TR,In’]] 式10
ただし、F[]はフィルター関数、D[]は遅延関数である。
【0086】
クロストークキャンセルの設定は、スピーカーのパラメーターによって決定できる。例えば、2つのスピーカー110間のリスナーに対する角度に応じて、フィルターの中心周波数、遅延量、アンプゲイン、およびフィルターゲインを決定できる。一部の実施形態では、スピーカー角度間の値を使用して他の値を補間する。
【0087】
コンバイナー650は、右対側キャンセル成分SRを左帯域内チャネルTL,Inに組み合わせて、左帯域内補償チャネルULを生成し、コンバイナー652は、左対側キャンセル成分SLを右帯域内チャネルTR,Inに組み合わせて、右帯域内補償チャネルURを生成する。インアウトバンドコンバイナー660は、左帯域内補償チャネルULを帯域外チャネルTL,Outに組み合わせて、左出力チャネルALを生成し、右帯域内補償チャネルURを帯域外チャネルTR,Outに組み合わせて、右出力チャネルARを生成する。
【0088】
したがって、左出力チャネルALは、対側の音に帰する帯域内チャネルTR,Inの一部の逆に対応する右対側キャンセル成分SRを含み、右出力チャネルARは、対側の音に帰する帯域内チャネルTL,Inの一部の逆に対応する左対側キャンセル成分SLを含む。本構成において、右耳に届く右出力チャネルARに応じたラウドスピーカー110Rによる同側サウンド成分出力の波面は、左出力チャネルALに応じたラウドスピーカー110Lによる対側サウンド成分出力の波面をキャンセルすることが可能である。同様に、左耳に届く左出力チャネルALに応じたラウドスピーカー110Lによる同側サウンド成分出力の波面は、右出力チャネルARに応じたラウドスピーカー110Rによる対側サウンド成分出力の波面をキャンセルすることが可能である。したがって、対側サウンド成分は、空間的な検出性をエンハンスメントするために削減されることが可能である。
【0089】
例示的なb-チェーンプロセッサー
図7は、いくつかの実施形態に係るb-チェーンプロセッサー240の概略的なブロック図である。b-チェーンプロセッサー240は、スピーカーマッチングプロセッサー250およびディレイアンドゲインプロセッサー260を含む。スピーカーマッチングプロセッサー250は、左アンプ704と右アンプ706とに接続されたN-バンドイコライザー(EQ)702を含む。ディレイアンドゲインプロセッサー260は、左アンプ712に接続された左ディレイ708と、右アンプ714に接続された右ディレイ710とを含む。
【0090】
図1A~1Eに示すように、リスナー140の向きは、理想的な空間イメージ(例えば、音場の仮想的なラテラルセンター(lateral center)、所定の対称性、マッチング、および等距離のラウドスピーカーなど)の中心に向かって固定されたままであると仮定すると、理想的な空間イメージと実際にレンダリングされる空間イメージとの間の変換関係は、(a)1つのスピーカーとリスナー140との間の全体的な時間遅延が別のスピーカーのとは異なることと、(b)1つのスピーカーとリスナー140との間の(知覚されるおよび目的の)信号レベルが別のスピーカーのとは異なることと、(c)1つのスピーカーとリスナー140との間の周波数応答が別のスピーカーのとは異なることとに基づいて、説明されることが可能である。
【0091】
b-チェーンプロセッサー240は、遅延、信号レベル、および周波数応答における上記の相対的な違いを訂正して、リスナー140(ヘッド位置など)および/またはレンダリングシステムが理想的に構成されているかのように、ほぼ理想的な空間イメージの復元に帰着する。
【0092】
b-チェーンプロセッサー240は、空間エンハンスメントプロセッサー205から、左エンハンスメントチャネルALおよび右エンハンスメントチャネルARを含むオーディオ信号Aを入力として受信する。b-チェーンプロセッサー240への入力は、(
図1Aに例示するように)理想的な状態において、与えられたリスナー/スピーカーの構成に対してトランスオーラルに処理されたどんなステレオオーディオストリームでも含むことがあり得る。オーディオ信号Aが空間非対称性を有さないならば、および他の異常がシステムに存在しないならば、空間エンハンスメントプロセッサー205は、劇的にエンハンスメントされた音場をリスナー140に提供する。しかしながら、上記で説明され
図1B~1Eに例示されるように、非対称がシステムに存在するならば、b-チェーンプロセッサー240は、非理想的な条件下にエンハンスメントされた音場を維持するのに適用されることがあり得る。
【0093】
理想的なリスナー/スピーカーの構成が左右のスピーカーと頭との距離が一致するラウドスピーカーのペアを含むのに対して、実際の設定の多くは、これらの基準を満たさず、欠陥のあるステレオリスニング体験に帰着する。たとえば、モバイルデバイスは、限られた帯域幅(例えば、1000~8000Hzの周波数応答)の正面向きイヤピースラウドスピーカー、および直交する向き(下向きまたは横向き)のマイクロラウドスピーカー(例えば、200~20000Hzの周波数応答)を含むことがあり得る。ここで、スピーカーシステムは、オーディオドライバーの性能特性(例えば、信号レベル、周波数応答など)が異なることと、「理想的な」リスナー位置に関するタイムアライメントが、スピーカーの向きが平行でないために不一致であることとによる2つの要素において、アンマッチである。別の例は、ステレオデスクトップスピーカーシステムを使用するリスナーが、ラウドスピーカーかそれら自体かのいずれかを(例えば、
図1B、1C、または1Eに示すように)理想的な構成に配置しない場合がある。従って、b-チェーンプロセッサー240は、各チャネルの特性を調整すること、関連するシステム固有の非対称に対処すること、より知覚的に説得力のあるトランスオーラルな音場に帰着することを支える。
【0094】
空間エンハンスメント処理または他の処理が、理想的に構成されたシステム(すなわち、スイートスポットのリスナー、マッチング、対称的に配置されたラウドスピーカーなど)の仮定の下に調整されたステレオ入力信号Xに、適用された後に、スピーカーマッチングプロセッサー250は、大多数のモバイルデバイスにおける場合と同様に、マッチしたスピーカーペアを供給しないデバイスに実用的なラウドスピーカーバランシングを提供する。スピーカーマッチングプロセッサー250のN-バンドEQ702は、左エンハンスメントチャネルALおよび右エンハンスメントチャネルARを受信し、チャネルALおよびARの各々にイコライゼーションを適用する。
【0095】
実施形態において、N-バンドEQ702は、例えば、ローシェルフフィルター、ハイシェルフフィルター、バンドパスフィルター、バンドストップフィルター、ピークノッチフィルター、ローパスフィルター、ハイパスフィルターなど、さまざまなEQフィルター-タイプを提供する。例えば、ステレオペアの1つのラウドスピーカーが理想的なリスナースイートスポットから離れた角度であるならば、そのラウドスピーカーは、リスナースイートスポットから顕著な高周波減衰を示すだろう。N-バンドEQ702の1つまたは複数の帯域は、スイートスポットから(例えば、ハイシェルフフィルターを介してなど)見たときに高周波エネルギーを復元するために、ラウドスピーカーチャネルに適用することが可能であり、その他の前方のラウドスピーカーの特性に近いマッチングを達成する。別のシナリオでは、両方のラウドスピーカーが前面に面しているが1つのラウドスピーカーが大きく異なる周波数特性を有するならば、EQチューニングを、左右の両方のチャネルに適用して、2つの間のスペクトルバランスをとることが可能である。上記の調整を適用することは、相手側の前向きのスピーカーの向きに合わせて、目的のスピーカーを「回転」させることに等しいことが可能である。実施形態において、N-バンドEQ702は、独立して処理されるn個の帯域の各々に対するフィルターを含む。帯域の数は、異なることがあり得る。実施形態において、帯域の数は、サブバンド空間処理のサブバンドに対応する。
【0096】
実施形態において、スピーカーの非対称性は、N-バンドEQ702のパラメーターを選択するための基礎として使用される既知の非対称性によって、特定のスピーカーセットに対して予め定義されることがあり得る。別の例では、スピーカーの非対称性は、例えば、試験オーディオ信号を使用すること、スピーカーによって信号から生成された音を記録すること、記録された音を分析することなどによるスピーカーのテストに基づいて決定されることがあり得る。
【0097】
左アンプ704は、N-バンドEQ702に接続されて、左チャネルを受信し、右アンプ706は、N-バンドEQ702に接続されて、右チャネルを受信する。アンプ704および706は、1つまたは両方のチャネル上の出力利得を調整することにより、ラウドスピーカーのラウドネスおよびダイナミックレンジ機能における非対称に対処する。これは、聴取位置からのラウドスピーカーの距離においてラウドネスオフセットのバランスをとるのに、および音圧レベル(SPL)出力特性が大きく異なるアンマッチのラウドスピーカーペアのバランスをとるのに特に有益である。
【0098】
ディレイアンドゲインプロセッサー260は、スピーカーマッチングプロセッサー250の左右の出力チャネルを受信し、1つまたは複数のチャネルに時間遅延および利得または減衰を適用する。その目的のために、ディレイアンドゲインプロセッサー260は、スピーカーマッチングプロセッサー250から左チャネル出力を受信し時間遅延を適用する左ディレイ708と、左チャネルに利得または減衰を適用して左出力チャネルOLを生成する左アンプ712とを含む。さらに、ディレイアンドゲインプロセッサー260は、スピーカーマッチングプロセッサー250から右チャネル出力を受信し時間遅延を適用する右ディレイ710と、右チャネルに利得または減衰を適用して右出力チャネルORを生成する右アンプ714を含む。前述のように、スピーカーマッチングプロセッサー250は、理想的なリスナー「スイートスポット」の観点から左/右の空間イメージの知覚的なバランスを取り、その位置から各ドライバにバランスの取れたSPLおよび周波数応答を提供することに焦点を当てて、実際の構成に存在する時間ベースの非対称を無視する。このスピーカーマッチングが達成された後に、ディレイアンドゲインプロセッサー260は、レンダリング/リスニングシステムの実際の物理的な非対称性(例えば、オフセンターの頭の位置および/または同等でないスピーカーと頭との距離など)が与えられた、特定のリスナーの頭の位置からの空間イメージのタイムアライメントをし、さらに知覚的バランスをとる。
【0099】
ディレイアンドゲインプロセッサー260によって適用される遅延値および利得値は、例えば、直交する向きのラウドスピーカーを使用する携帯電話などの静的なシステム構成、または例えば、ホームシアターサウンドバーなどのスピーカーの前にある理想的なスイートスポットから横方向にオフセットされたリスナーに対処するように設定されることがあり得る。
【0100】
さらに、ディレイアンドゲインプロセッサー260によって適用される遅延値および利得値は、(例えば、ゲームや人工現実システムなどの深度カメラを使用した位置追跡など)ゲームプレイの要素として物理的な動きを使用するゲームシナリオで発生する可能性があるように、リスナーの頭とラウドスピーカーとの間の変化する空間的な関係に基づいて動的に調整されることがあり得る。実施形態において、音声処理システムは、カメラ、光センサー、近接センサー、またはスピーカーに対するリスナーの頭の位置を決定するのに使用される他の適切なデバイスを含む。決定されるユーザーの頭の位置は、ディレイアンドゲインプロセッサー260の遅延値および利得値を決定するのに使用されることがあり得る。
【0101】
音声解析ルーチンは、b-チェーンプロセッサー240を構成するのに使用される適切なスピーカー間の遅延および利得を提供し、タイムアライメントされ、知覚的なバランスがとれた左/右のステレオイメージに帰着することが可能である。実施形態において、このような分析方法から測定可能なデータが得られない場合、直感的なユーザーの手動制御、またはコンピュータービジョンもしくは他のセンサー入力を介する自動制御は、以下の式11および12により定義されるようなマッピングを使用して達成されることが可能である。
【0102】
【0103】
【0104】
ただし、delayDeltaおよびdelayは、ミリ秒単位であり、gainは、デシベル単位である。delayおよびgainの列ベクトルは、第1成分が左チャネルに、第2成分が右チャネルに関連することを仮定する。したがって、
【0105】
【0106】
は、左スピーカーの遅延が右スピーカーの遅延以上を示し、delayDelta<0は、左スピーカー遅延が右スピーカーの遅延より小さいことを示す。
【0107】
実施形態では、チャネルに減衰を適用する代わりに、同じ量の利得を、反対側のチャネルに、または1つのチャネルに適用される利得と他のチャネルに適用される減衰との組み合わせに適用することがあり得る。たとえば、利得は、左チャネルの減衰よりもむしろ左チャネルに適用されることがあり得る。モバイルと、デスクトップPCおよびコンソールゲームと、ホームシアターのシナリオとに生じるような近距離のリスニングに対して、リスナーの位置と各スピーカーとの間の距離の差は、十分に小さく、したがって、リスナーの位置と各スピーカーとの間のSPLデルタは、十分に小さく、上記のマッピングのいずれかが、理想的なリスナー/スピーカーの構成と比較して、全体的に許容できる大きさの音場を維持しつつ、トランスオーラルな空間イメージを首尾よく復元するのに役立つだろう。
【0108】
例示的なオーディオシステム処理
図8は、いくつかの実施形態に係る入力オーディオ信号を処理する方法800のフローチャートである。方法800は、より少ないまたは追加のステップを有することがあり、ステップは、異なる順において実行されることがあり得る。
【0109】
オーディオ処理システム200(例えば、空間エンハンスメントプロセッサー205)は、入力オーディオ信号をエンハンスメントして、エンハンスメント信号を生成する802。エンハンスメントは、空間的なエンハンスメントを含むことがあり得る。例えば、空間エンハンスメントプロセッサー205は、サブバンド空間処理、クロストーク補償処理、およびクロストークキャンセル処理を、左入力チャネルXLおよび右入力チャネルXRを含む入力オーディオ信号Xに適用して、左エンハンスメントチャネルALおよび右エンハンスメントチャネルARを含むエンハンスメント信号Aを生成する。ここでは、オーディオ処理システム200は、入力オーディオ信号Xのミッド(非空間)およびサイド(空間)サブバンド成分を利得調整することによって空間エンハンスメントを適用し、エンハンスメント信号Aは、「空間エンハンスメント信号(spatially enhanced signal)」という。オーディオ処理システム200は、他のタイプのエンハンスメントを実行してエンハンスメント信号Aを生成することがあり得る。
【0110】
オーディオ処理システム200(例えば、b-チェーンプロセッサー240のスピーカーマッチングプロセッサー250のN-バンドEQ702)は、N-バンドイコライゼーションをエンハンスメント信号Aに適用して、左スピーカーと右スピーカーとの間の周波数応答の非対称性を調整する804。N-バンドEQ702は、1つまたは複数のフィルターを、左エンハンスメントチャネルAL、右エンハンスメントチャネルAR、または左チャネルALおよび右チャネルARの両方に適用することがあり得る。左エンハンスメントチャネルALおよび/または右エンハンスメントチャネルARに適用される1つまたは複数のフィルターは、左右のスピーカーについての周波数応答のバランスをとる。実施形態において、周波数応答のバランスをとることは、左右のスピーカーの理想的な角度からの回転オフセットを調整するのに使用されることがあり得る。実施形態において、N-バンドEQ702は、左右のスピーカーの非対称性を調整し、決定された非対称性に基づいてNバンドEQを適用するためのフィルターのパラメーターを決定する。
【0111】
オーディオ処理システム200(例えば、左アンプ704および/または右アンプ706など)は、信号レベルで左スピーカーと右スピーカーとの間の非対称性を調整するために、左エンハンスメントチャネルALおよび右エンハンスメントチャネルARの少なくとも1つに利得を適用する806。適用される利得は、スピーカーのラウドネスおよびダイナミックレンジ機能における、または異なる音圧レベル(SPL)出力特性を有するアンマッチのスピーカーペアにおける非対称に対処するための正の利得または負の利得(減衰ともいう)であることがあり得る。
【0112】
オーディオ処理システム200(例えば、b-チェーンプロセッサー240のディレイアンドゲインプロセッサー260)は、遅延および利得をエンハンスメント信号Aに適用して、聴取位置を調整する808。聴取位置は、左スピーカーおよび右スピーカーに関するユーザーの位置を含むことがあり得る。ユーザーは、スピーカーのリスナーを参照する。遅延および利得は、レンダリング/リッスンシステムの実際の物理的な非対称(例えば、中心を外れた頭の位置および/または同等でないラウドスピーカーと頭との距離)が与えられたリスナーの位置に対して、スピーカーマッチングプロセッサー250からの空間イメージ出力のタイムアライメントをし、さらに知覚的なバランスをとる。たとえば、左エンハンスメントチャネルALに、左ディレイ708は、遅延を適用することがあり、左アンプ712は、利得を適用することがあり得る。右エンハンスメントチャネルARに、右ディレイ710は、遅延を適用することがあり、右アンプ714は、利得を適用することがあり得る。実施形態において、遅延は、左エンハンスメントチャネルALまたは右エンハンスメントチャネルARのうちの1つに適用されることがあり、利得は、左エンハンスメントチャネルALまたは右エンハンスメントチャネルARのうちの1つに適用されることがあり得る。
【0113】
オーディオ処理システム200(例えば、b-チェーンプロセッサー240のディレイアンドゲインプロセッサー260)は、聴取位置の変化に応じて、遅延および利得の少なくとも1つを調整する810。たとえば、左スピーカーと右スピーカーに関するユーザーの空間的な位置は、変わることがあり得る。オーディオ処理システム200は、時間経過に伴うリスナーの位置を監視し、リスナーの位置に基づいてエンハンスメント信号Oに適用される利得および遅延を決定し、時間経過に伴うリスナーの位置の変化に応じてエンハンスメント信号Oに適用される遅延および利得を調整して、左出力チャネルOLおよび右出力チャネルORを生成する。
【0114】
さまざまな非対称の調整は、異なる順序において実行されることがあり得る。たとえば、スピーカーの特性(例えば、周波数応答など)の非対称性に対する調整は、スピーカーの位置または向きに関する聴取位置の非対称性に対する調整の前、後、または関連して実行されることがあり得る。オーディオ処理システムは、周波数応答、タイムアライメント、および聴取位置の信号レベルにおいて左スピーカーと右スピーカーとの間の非対称性を決定し、Nバンドイコライゼーションを空間エンハンスメント信号に適用して、周波数応答の左スピーカーと右スピーカーとの間の非対称性を調整することと、空間エンハンスメント信号に遅延を適用してタイムアライメントの非対称性を調整することと、空間エンハンスメント信号に利得を適用して信号レベルの非対称性を調整することと、によって左スピーカーの左出力チャネルおよび右スピーカーの右出力チャネルを生成する。
【0115】
実施形態において、複数の利得または遅延を適用して非対称性の異なる原因(例えば、スピーカー特性または聴取位置など)に対して調整するよりもむしろ、単一の利得および単一の遅延を使用して、スピーカー間の利得または時間遅延の差に起因し、聴取位置の有利な地点に帰着する複数のタイプの非対称性を調整する。しかしながら、スピーカーの非対称性および聴取位置の非対称性に対する処理を分離して処理ニーズを減らすことは、有益であることがあり得る。例えば、スピーカーの周波数応答がわかると、同じフィルター値を、スピーカーの調整に使用することがあり得る一方、別個の時間遅延および信号レベルの調整は、聴取位置の変更(例えば、ユーザーの移動など)に対して行われる。
【0116】
図9は、いくつかの実施形態に係る理想的ではない頭の位置およびアンマッチのラウドスピーカーを例示する。リスナー140は、左スピーカー910Lおよび右スピーカー910Rから異なる距離にある。さらに、スピーカー910Lおよび910Rの周波数および/または振幅特性は、同等ではない。
図10Aは、左スピーカー910Lの周波数応答を例示し、および
図10Bは、右スピーカー910Rの周波数応答を例示する。
【0117】
図9、10Aおよび10Bに示すように、スピーカー910Lおよび910Rのスピーカーの非対称性と、スピーカー910Lおよび910Rの各々に関するリスナー140の位置とを訂正するために、b-チェーンプロセッサー240のコンポーネントは、次の構成を使用することがあり得る。N-バンドEQ702は、4,500HZの遮断周波数、0.7のQ値、および-6dBの傾斜を有するハイシェルフフィルターを、左エンハンスメントチャネルALに適用することがあり、6,000HZの遮断周波数、0.5のQ値、および+3dBの傾斜を有するハイシェルフフィルターを、右エンハンスメントチャネルARに適用することがあり得る。左ディレイ708は、0ミリ秒の遅延を適用することがあり、右ディレイ710は、0.27ミリ秒の遅延を適用することがあり、左アンプ712は、0dBの利得を適用することがあり、および右アンプ714は、-0.40625dBの利得を適用することがあり得る。
【0118】
例示的なコンピューティングシステム
本明細書において説明されるシステムおよびプロセスは、埋め込まれた電子回路または電子システムに具現化されることがあり得ることが留意される。さらに、システムおよびプロセスは、1つまたは複数の処理システム(例えば、デジタル信号プロセッサーなど)、メモリー(例えば、プログラムされた読み取り専用メモリーもしくはプログラム可能なソリッドステートメモリなど)、または例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)もしくはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)回路などの他の回路を含むコンピューティングシステムにおいて、具現化されることがあり得る。
【0119】
図11は、ある実施形態に係るコンピューターシステム1100の例を例示する。オーディオシステム200は、システム1100上に実装されることがあり得る。チップセット1104に接続された少なくとも1つのプロセッサー1102を、例示する。チップセット1104は、メモリーコントローラーハブ1120およびI/O(入力/出力)コントローラーハブ1122を含む。メモリー1106およびグラフィックスアダプター1112は、メモリーコントローラーハブ1120に接続され、ディスプレイデバイス1118は、グラフィックスアダプター1112に接続される。ストレージデバイス1108、キーボード1110、ポインティングデバイス1114、およびネットワークアダプター1116は、I/Oコントローラーハブ1122に接続される。コンピューター1100の他の実施形態は、異なるアーキテクチャーを有する。例えば、いくつかの実施形態によると、メモリー1106はプロセッサー1102に直接接続されている。
【0120】
ストレージデバイス1108には、ハードドライブ、コンパクトディスク読み取り専用メモリー(CD-ROM)、DVD、ソリッドステートメモリデバイスなど、一時的にコンピューターで読み取り可能な1つ以上のストレージメディアが含まれている。メモリー1106は、プロセッサー1102により使用される命令およびデータを保持する。例えば、メモリー1106は、プロセッサー1102により実行されると、プロセッサー1102に、例えば、方法800など、本明細書において説明される機能を実行させる、または実行するように構成する命令を格納することがあり得る。ポインティングデバイス1114は、キーボード1110と組み合わせて使用され、コンピューターシステム1100にデータを入力する。グラフィックスアダプター1112は、ディスプレイデバイス1118に画像および他の情報を表示する。実施形態において、ディスプレイデバイス1118は、ユーザーの入力および選択を受信するためのタッチスクリーンの性能を含む。ネットワークアダプター1116は、コンピューターシステム1100をネットワークに接続する。コンピューター1100のいくつかの実施形態は、
図11に示すものとは異なるおよび/または他のコンポーネントを有する。たとえば、コンピューターシステム1100は、ディスプレイデバイス、キーボード、および他のコンポーネントがないサーバーであることがあり、または他のタイプの入力デバイスを使用することがあり得る。
【0121】
追加の考慮事項
開示される構成は、いくつもの利益および/または利点を含むことがあり得る。例えば、入力信号は、音場の空間感覚を維持し、またはエンハンスメントしながら、アンマッチのラウドスピーカーに出力させることが可能である。高品質のリスニング体験は、スピーカーがアンマッチであるときでさえ、リスナーがスピーカーに関する理想的な聴取位置にいないときでさえ、到達されることが可能である。
【0122】
本開示を読むと、依然として、当業者は、本明細書において開示される原理原則の追加の代替の実施形態を認めるだろう。従って、特定の実施形態および応用が例示され説明される一方、開示される実施形態は、本明細書において開示されるとおりの構造およびコンポーネントに限定されないことが理解されることである。当業者には明らかであろう様々な修正、変更、およびバリエーションは、本明細書において説明される範囲から逸脱することなく、本明細書において開示される方法および装置の配置、動作および細部に行われることがあり得る。
【0123】
本明細書において説明されるステップ、オペレーションまたはプロセスは、1つまたは複数のハードウェアまたはソフトウェアモジュールにより、単独または他のデバイスと組み合わせにおいて実行されるまたは実装されることがあり得る。1つの実施形態において、ソフトウェアモジュールは、コンピュータープログラムコードを含むコンピューター読み取り可能な媒体(例えば、非一時的なコンピューター読み取り可能な媒体など)により実装され、説明されるステップ、オペレーションまたはプロセスのいくつかまたはすべてを行うためのコンピュータープロセッサーによって実行されることが可能である。
【符号の説明】
【0124】
110L 左ラウドスピーカー
110R 右ラウドスピーカー
200 オーディオ処理システム
910L 左スピーカー
910R 右スピーカー
1100 コンピューターシステム