(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】一回使用プラスチック圧力センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 19/00 20060101AFI20241203BHJP
G01K 13/02 20210101ALI20241203BHJP
【FI】
G01L19/00 Z
G01K13/02
(21)【出願番号】P 2023519838
(86)(22)【出願日】2021-09-21
(86)【国際出願番号】 US2021051276
(87)【国際公開番号】W WO2022072175
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-05-26
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597115727
【氏名又は名称】ローズマウント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ウィルコックス,チャールズ・アール
(72)【発明者】
【氏名】ルッド,ジェイソン・エイチ
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-98118(JP,A)
【文献】特開2006-300580(JP,A)
【文献】特開平10-332445(JP,A)
【文献】特開2016-118505(JP,A)
【文献】特開2006-250955(JP,A)
【文献】特開平7-198503(JP,A)
【文献】特開2018-141666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 9/04
G01L 9/12
G01L 19/00
G01F 1/36
G01K 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー流体センサであって、
流体を受け取るように構成された入口、
出口、
前記入口と前記出口との間に流体結合的に挿入されたポリマーチューブ、ここで、前記
ポリマーチューブは、第1の側壁厚を持つ第1の感知位置と、前記第1の感知位置から空間を空けられた第2の側壁厚を持つ第2の感知位置とを有している、
前記ポリマーチューブの周りに配置されたスリーブ、
を備え、且つ
前記第1の側壁厚は前記第2の側壁厚よりも薄く、第1の感知素子は前記第1の感知位置に配置され、第2の感知素子は前記第2の感知位置に配置される、
前記ポリマー流体センサ。
【請求項2】
前記第1の感知素子は、前記スリーブの内面上に配置された対向する容量プレートを用いて第1の可変コンデンサを形成する容量プレートであり、前記第1の可変コンデンサは前記第1の感知位置でポリマーチューブの撓みによって変化する静電容量を有する、請求項1に記載のポリマー流体センサ。
【請求項3】
前記第2の感知素子は、前記スリーブの内面上に配置された対向する容量プレートを用いて第2の可変コンデンサを形成する容量プレートであり、前記第2の可変コンデンサは前記第2の感知位置でポリマーチューブの撓みによって変化する静電容量を有する、請求項2に記載のポリマー流体センサ。
【請求項4】
前記第1及び第2の可変コンデンサは、ゼロ圧力で同じ静電容量を有する、請求項3に記載のポリマー流体センサ。
【請求項5】
前記第1及び第2の可変コンデンサの対向するプレート間の距離が、ゼロ圧力で等しい、請求項3に記載の高分子流体センサ。
【請求項6】
前記第1及び第2の感知素子は、温度センサである、請求項1に記載のポリマー流体センサ。
【請求項7】
前記温度センサは、容量プレート内に組み込まれる、請求項6に記載のポリマー流体センサ
。
【請求項8】
前記
ポリマーチューブはポリカーボネートから構築される、請求項1に記載のポリマー流体センサ。
【請求項9】
前記
ポリマーチューブは、ABSから構築される、請求項1に記載のポリマー流体センサ。
【請求項10】
前記第1及び第2の感知素子は、歪みゲージである、請求項1に記載のポリマー流体センサ。
【請求項11】
ポリマー流体センサであって、
流体を受け取るように構成された入口、
出口、
前記入口と前記出口との間に流体結合的に挿入されたチューブ、ここで、前記チューブは、第1の側壁厚を持つ第1の感知位置を有し、且つ前記第1の感知位置から空間を取られた、前記第1の側壁厚と同じ第2の側壁厚を持つ第2の感知位置を有し、前記チューブは前記第1の感知位置と前記第2の感知位置との間に配置された流量制限部を有する、
前記チューブの周りに配置されたスリーブ、
を備え、
第1の感知素子は前記第1の感知位置に配置され、且つ
第2の感知素子は、前記第2の感知位置に配置される、
前記ポリマー流体センサ。
【請求項12】
前記スリーブは、前記第1及び第2の感知素子を用いてコンデンサを形成する複数の容量プレートを含む、請求項11に記載のポリマー流体センサ。
【請求項13】
前記チューブは、ポリカーボネートから構築される、請求項11に記載のポリマー流体センサ。
【請求項14】
前記チューブは、ABSから構築される、請求項11に記載のポリマー流体センサ。
【請求項15】
前記第1及び第2の感知素子は、歪みゲージである、請求項11に記載のポリマー流体センサ。
【請求項16】
流体特性を感知する方法であって、
流体を複数の感知位置を有するポリマーチューブを通るように誘導すること、
前記複数の感知位置のうちの第1の位置に配置された第1の感知素子の電気的特性を感知すること、
前記複数の感知位置のうちの第2の位置に配置された第2の感知素子の電気的特性を感知すること、
前記第1及び第2の感知素子の前記感知された電気的特性に基づいて流体パラメータを計算すること、
前記計算された流体パラメータを出力として提供すること、及び
交流励起信号を用いて前記第1及び第2の感知素子を駆動すること、及び流体伝導率を決定すること、
を包含する、前記方法。
【請求項17】
前記ポリマーチューブは、
第1の感知位置で第1の側壁厚を有し、
第2の感知位置で第2の側壁厚を有し、前記第2の側壁厚は前記第1の側壁厚より厚い、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記計算された流体パラメータは、流体圧力である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記計算された流体パラメータは、温度である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記感知された電気的特性は、熱流計算に提供される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記計算された流体パラメータは、流体流量である、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリマーチューブは、
第1の感知位置で第1の側壁厚を有し、
第2の感知位置で第2の側壁厚を有し、前記第2の側壁厚は、前記第1の側壁厚と同じであり、且つ、前記ポリマーチューブは、前記第1及び第2の感知位置との間に流量制限部を有し、前記計算された流体パラメータは質量流量である、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記計算された流体パラメータは、複数の計算された流体パラメータの組み合わせである、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
多くのプロセスは、プロセスを制御するためにセンサの使用を必要とする。一部の業界において、これらのプロセスは生物学的又は衛生的なプロセスを含みうる場合があり、従って汚染は防止されなければならない。このようなプロセスに用いられるセンサーの例には、圧力センサ、温度センサ、流量センサ、pHセンサ、導電率センサなどがある。
【0002】
バイオ医薬品製造業者は、効率を高め、機器をより多用途化し、相互汚染のリスクを低減するために、一回使用の使い捨て機具を増々利用するようになっている。同様に、衛生及び食品加工業界において、洗浄コストが高いことや衛生状態を維持することへの懸念から、一回使用又は使い捨て測定機器を用いることが益々望まれている。これらの用途の多くにおいて、高精度さは必要とされないため、金属以外の材料の使用が容易になり、費用対効果が最も高く、製造も容易になる。更に場合によっては、プロセス流の潜在的な汚染を回避するために、充填流体がないことが設計に必須になる場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
ポリマー流体センサは、流体を受け取るように構成された入口及び出口を含む。ポリマーチューブは、上記入口と出口との間に流体結合的に挿入され、第1の側壁厚を持つ第1の感知位置と、上記第1の感知位置から空間を空けて第2の側壁厚を持つ第2の感知位置とを有する。スリーブは上記ポリマーチューブの周りに配置されている。上記第1の側壁厚は上記第2の側壁厚よりも薄く、第1の感知素子は上記第1の位置に配置され、第2の感知素子は上記第2の位置に配置されている。別の例では、上記第1及び第2の側壁の厚さは同じであり、上記第1及び第2の感知位置の間の上記ポリマーチューブ内に流体制限部が配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】本発明の一実施形態による一回使用プラスチック圧力センサーの概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態による非侵入型及び非侵襲型圧力センサの概略断面図である。
【
図3】異なる温度でのポリカーボネート及びABSのウェーラー(Woehler)曲線を示す、様々な温度での応力対サイクルを示すグラフである。
【
図4】様々な温度でのポリカーボネート及びABSの疲労限界を示すチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態による、一回使用プラスチック質量流量センサの概略図である。
【
図6】本発明の別の実施形態による、一回使用プラスチック流体センサの概略図である。
【
図7】本発明の別の実施形態による、一回使用プラスチック流体センサの概略図である。
【
図8】本発明の一実施形態による、流体特性を測定するためのシステムの概略図である。
【
図9】本発明の一実施形態による、生物医薬品又は衛生流体処理システムにおける流体特性を提供する方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
衛生用途において、一般に、プロセスを監視するのに用いられるセンサからのプロセスバッチ汚染の懸念がある。センサに有機充填液(圧力検出に時々必要とされる)を用いることで、毒性の問題に対処できる場合があるが、汚染の可能性をなくすことはできず、プロセス バッチ全体の損失につながる。圧力センサのオイルレス設計は、これにある程度対処可能であるが、それでもコストのかかる洗浄が必要である。使い捨て可能な一回使用センサは、洗浄コストを削減するが、競合的な使い捨てコストと使いやすさとによって相殺されなければならない。
【0006】
設計には、プロセス流体と圧力感知システムの金属分離ダイヤフラムとの間にプラスチックフィルムインターフェースを用いるものもある。しかし、これらの設計でさえ、損傷を受けやすく、圧力検出システムからの分離流体がセンサー内に存在する場合には汚染を引き起こし、性能を犠牲にする可能性がある。
【0007】
以下に説明する実施形態は、一般に、非侵入型及び非侵襲型圧力センサを提供するが、これは、ポリマー(及び好ましくはプラスチック)チューブから構築され、汚染の可能性のない一回使用感知解に関する容量測定を提供するために、その外径上の複数の導電性被覆領域を用いる。このセンサは、チューブの一部が圧力によって撓むように設計されており、この撓みによって、チューブと外側スリーブの接点との間のギャップ(gap:間隙)が減少する。このギャップは、容量測定で監視され、且つ、より剛性が高く、内部圧力の変化によって有意には変形しないチューブの領域内に設けられているところの疑似固定ギャップコンデンサに対して参照されうる。センサはポリマーチューブから開発されているので、センサは、プロセス流をセンサを通過するように仕向けるために、簡単にチューブ配線に結合され得、且つ、プロセス流をプロセスに戻す追加のプロセスチューブ配線に結合されたセンサの出口を有しうる。更に、以下の実施形態において提供される設計は、一般にどのような電子機器も含まないことに留意されたい。従って、本明細書で提供されるセンサは、製薬及び衛生処理用途でしばしば用いられる蒸気、及び/又はガンマ線照射を用いる滅菌サイクルに耐えることができる。
【0008】
図1は、本発明の一実施形態による一回使用プラスチック圧力センサの概略図である。圧力センサ100は、一般に、バイオ医薬品又は衛生プロセスのチューブ配線又は配管に結合するように構成された一対の管状部分102、104を含む。図示された例において、チューブ配線106は、これを通って流れるプロセス流体が流体の流路内に障害物又は侵入物を一般に含まないように、管状部分102に結合されている。同様に、チューブ配線108は、プロセス流体が実質的に妨げられず非侵襲的な方法でチューブ配線セクション及びセンサを通って必須的に流れるように、管状部分104に結合されている。以下でより詳細に示されるように、センサ100は、関連するプロセス流体圧力を提供するために、チューブ壁の撓みを測定及び特徴付けうるように配置されている複数の電気的構造を含んでいる。測定されるものは壁自体の撓みであるので、圧力センサやその他の構造物は流れに挿入されていない。更に、測定回路110は、1以上の導体112によってセンサ100内の様々な電気的構造に結合され、その結果、測定回路110は上記構造の電気的特性の変化を識別又は別の方法で検出することができ、その変化はプロセス流体圧力を示す。
【0009】
図2は、本発明の一実施形態による、一回使用感知解のための容量測定を提供するように、ポリマーチューブ(その外側に導電的に被覆又は堆積された領域を含む)を利用する非侵入型及び非侵襲型圧力センサーの概略断面図である。センサ100は、参照符号120で概略的に示されるチューブの部分が圧力によって撓むことができるように設計されており、この撓みは、チューブ接点122とスリーブ接点124との間のギャップG
0
1を減少させる。このギャップG
0
1は、容量測定(例えば、測定回路110(
図1に示される)を使用する)によって測定され監視され得、そして剛性が高く且つ内圧の変化に対して大きく変形しないチューブの領域127で形成されうる疑似固定ギャップコンデンサ(参照符号126で概略的に示されている)に対して参照される。
【0010】
図2に示されるように、センサ100は、一対のポリマー管状部分102、104を含み、それらは、上記センサをプラスチック配線又は導管へ結合するのを容易にする。管状部分102、104は、何等かの適切なポリマー材料で形成されてもよく、そしてポリマーチューブ134に結合される。理解できるように、管状部分102、104の形状及び構造は、センサをチューブ配線又は導管に結合するために、様々な異なる技術を受け入れるように大きく変化しうる。更に、管状部分102、104の各々は、任意の適切な方法でチューブ134に密封的に結合されうる。しかし、チューブ134は、管状部分102、104と同じ材料で形成されることが好ましい。更に、チューブ134及び管状部分102、104は、同じ材料から単一の一体部品として形成されることが好ましい。例えば、管状部分102、104及びチューブ134は、3D印刷されたプラスチック又は射出成形プラスチックの単一片として形成されうる。
【0011】
チューブ134は、スリーブ142を受け入れる大きさの外径140を有する一対のカラー(collar:軸つば)136、138を含む。スリーブ142は、超音波溶接を含む任意の適切な方法で、カラー136、138の外径部140に取り付けられうる。代替的に、センサは付加製造技術(例えば、3D印刷)を用いて構築され、且つチューブ及びスリーブは単一の一体構成要素として形成されうることが明確に考えられる。スリーブ140がカラー136、138に結合される場合、スリーブ142の内面144とチューブ134の外面146との間に一対のギャップG0
1、G0
2が形成される。更に、第1ギャップG0
1は、スリーブ142の相対的に薄いセクション148と内面144との間に形成される。第2のギャップG0
2は、チューブ134の比較的厚い部分127とスリーブ142の内面144との間に形成される。導電性電極又はプレート122、150は各々、チューブ134の外面に、位置148、127で取り付けられている。同様に、導電性電極又はプレートは、スリーブ142の内面144に、位置152,154で取り付けられている。
【0012】
導電性電極又はプレート122、150は、ギャップに基づく静電容量を有する可変コンデンサの一部分を形成するので、感知素子と見なすことができる。導電性電極又はプレートは、円形パッド、楕円形パッド、及び、表面の周りに選択量(例えば270度)だけ延ばす環状バンド(勿論これらに限定するわけではない)、を含む任意の適切な形状をとりうる。従って、第1の可変コンデンサは、位置148のプレート又は導電性電極122とプレート152との間に形成される。基準静電容量は、プレート150とプレート154との間に形成される。位置127でのチューブ配線の相対的に分厚い部分により、基準静電容量は、チューブ134内での圧力変化によって有意には撓まない。好ましい実施形態において、ギャップG0
1及びG0
2は、センサが加圧されていない(即ちゼロ圧力の)場合に等しい。この特徴は、スリーブについて異なる側壁の厚さを用いることによって提供される。しかし、静電容量に影響を与える別の要因(例えば、温度の変化及びセンサ100の熱膨張及び収縮)は、一般に、両方のコンデンサに比較的共通している。このようにして、感知コンデンサC1の応答を基準コンデンサC2の応答と対比することは、他の要因から実質的に独立した圧力を直接的に示す。
【0013】
パイプ内に圧力Pが導入された場合に、肉厚パイプの外径がどのように変化(ΔD0で表す)するかを定量化するために、いくつかの仮定が役立つ。第1の仮定は、パイプの外部環境が大気圧であるということであり、従って、圧力はゲージ圧適用である。このような仮定の下で、外径の変化(ΔD0)は、次の方程式1から計算されうる。
【0014】
【0015】
ここで、Eはパイプのヤング率、D
iとD
0はそれぞれパイプの内径と外径とである。プラスチック及びプラスチック様材料の熱膨張が大きいので、レシオメトリック(ratiometric)又は差分スキームによって温度変化に対して受動的に補正することが望ましい。
図2に示される例は、特にゼロ圧力で、温度の影響に対して受動的に補正しうるセンサである。
【0016】
受動的な温度補償を達成するために、電極対は、
図2に示されたように、2つの異なる位置でギャップ変化を測定するように配設されている。ギャップ面は並列コンデンサのプレートであり、チューブ内の圧力が増加するにつれ減少する。位置C1及びC2のチューブは、位置148、127でそれぞれ異なる厚さ159、161を有することに留意されたい。プレートの各々は、コントローラが静電容量(したがって圧力)を決定できるようにするために、測定回路(
図8に示される)に動作可能に結合された電気リードに結合されている。これら2つの場所での温度によるチューブの膨張は同じであるが、チューブ壁の厚さが等しくないために、圧力によるギャップの変化量は異なる。このようにして、2つの場所からの信号を減算することによって、圧力信号が、定常状態温度の変化に影響されずに抽出されうる。
【0017】
ギャップは静電容量の逆数に比例するので、各静電容量分の1の間の差を取ることは、以下の方程式2に示されるように、効率的に2つのギャップG1とG2との差を取ることである。
【0018】
【0019】
ここで、Kは定数である。設計上、G1=G2=G0、即ち、ゼロゲージ圧力でのギャップは同一であるが、チューブ壁の厚さが異なるために、圧力によるギャップの変化は同一ではない。ギャップがゼロゲージ圧力で同じであるため、温度による変化は同じになる。従って、ゲージ圧ゼロでは温度による変化はない。更に、方程式3(下記)で、ΔGが次の近似圧力依存形式を有することを示すことができる。
【0020】
【0021】
ここで、t1とt2は各々、位置C1とC2での2つの直径の壁厚である。従って、圧力Pは、方程式2及び3を介して出力の測定値から取得されうる。つまり、
【0022】
【0023】
本明細書で説明されるセンサ設計は、好ましくは、非毒性の硬質プラスチック(例えば、ポリカーボネート又はアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS))を主要な要素として用いる。設計の詳細について説明する前に、プラスチッククリープ(creep)の問題に対処する必要がある。この制限を管理するには、センサの使用中に遭遇する最大応力が、疲労限界として知られているものを超えて耐えるように、上限レベル未満に維持されなければならない。
図3及び4は、ポリカーボネートとABSプラスチックの疲労限度に関するデータを提供する。
【0024】
図3は、ポリカーボネート及びABSの異なる温度での応力寿命又はウェーラー曲線を示す、様々な温度でのメガパスカル対サイクル数での応力を表示するグラフである。更に、
図4は、様々な温度でのポリカーボネート及びABSの様々な疲労限界(メガパスカルで表現)を示している。分るように、データは、応力レベルを10.3メガパスカル(約1500PSI)未満に維持するポリカーボネートプラスチックを用いた設計は、クリープなしで長期間の繰り返し応力動作に耐える必要があることを示唆している。従って、応力が疲労限度レベルを下回っていれば、3D印刷又は射出成形法を使用してプラスチックで圧力センサーを構築することが可能になるはずである。
【0025】
プラスチックセンサの利用は、多くの利点を提供する。第1に、一般に、センサ本体を貫通する内部の不感帯域、又は段階状変化、又は材料的変移はない。更に、少なくともポリカーボネートに関しては、このプラスチックは、304ステンレス鋼の50倍低いヤング率を有する。この違いは、PSI当たりの撓みを大幅に増加させる。加えて、ポリカーボネートは、電気絶縁性があり誘電率は約3である。更に、プラスチックセンサは、内蔵の過圧防止及び取り付けブラケットの組み込みを容易にする。最後に、プラスチックセンサのもう1つの利点は、一般的に無毒であることである。
【0026】
これまでのところ、実施形態は、チューブを通って流れる流体の圧力の指標である電気的応答を与えるプラスチック圧力センサを説明してきた。しかし、流体の追加の特性が、同様の技術を用いて感知又は決定されうる。
【0027】
図5は、本発明の一実施形態による一回使用プラスチック質量流量センサの概略図である。センサ200は、センサ100と多くの類似点を有し、同様の構成要素には同様の符号が付けられている。しかし、センサ200とセンサ100との間の主要な違いは、センサ200のチューブ部分234が、2つの静電容量領域C1及びC2を分離するチューブ234の内側にプラスチック開口プレート236を含むことである。さらに、センサ100とは異なり、チューブの位置C1及びC2における壁厚は、センサの両側で同じである。流れが存在する場合、開口プレート236を横切って圧力差が生じ、質量流量は圧力差の平方根に比例する。このようにして、適切な定数でスケーリングされた方程式2(上記)で定義された出力の平方根は、チューブ234を通る質量流量に比例する。更に、位置C1及びC2で形成された複数容量は両方とも、同様な仕方で温度によって影響されるので、センサ200は、依然として温度変化の影響を実質的に受けない。
【0028】
本明細書に記載の技術を用いて測定されうる別の流体特性は、流体自体の導電率である。コンデンサ電極の交流(AC)励起を用いて、流体の誘電特性と導電特性の反応及び散逸特性が決定されうる。具体的には、流体の導電率は、静電容量ESR又は直列等価抵抗の測定値から決定されうる。σで示されるバルク導電率は、以下の方程式5によって、ESRの測定値に関連付けられうる。
【0029】
【0030】
ここで、εは誘電率、Cは静電容量、fは励起周波数である。測定は、誘電率、周波数、及び静電容量の知識を前提としていることに注意されたい。
【0031】
本明細書に記載の実施形態及び技術を用いて決定されうる別の流体特性は、流体流量である。流体の誘電特性は、流量と共に変化することが観察される。例えば、ソ連科学アカデミーシベリア部門イルクーツク科学センターの A. A. Potapov による「Dynamic Dielectric Effect in Liquids at Low Flow Rates(低流量での流体における動的誘電効果)」というタイトルの論文(1991年4月18日提出)、Zh. Eksp. Teor. Fiz 101, 895-900(1992年3月)は、この現象を論証し、そして誘電流効果は、液体分子の長軸が液体流の方向に整列する傾向があるように、液体分子の部分的な配向に関連付けられことを提案した。このことは、今度は測定可能な流体の誘電特性に影響を与える。この論文が動的誘電効果と呼んでいる効果は、極性液体と非極性液体の両方で観察されている。従って、導電率が実質的に一定である流体において、誘電率の変動は、上記の効果を用いて流体流量の変化を示していると見なしうる。
【0032】
図6は、本発明の別の実施形態による一回使用プラスチック流体センサ250の概略図である。これまでの実施形態は、チューブの変形(即ち、ギャップの変化)を感知するために一般に容量プレートを利用してきたが、別の仕方で流体圧力に応答してチューブの変形を感知する実施形態が実用されうる。
図6は、位置258、260でチューブ壁256にそれぞれ結合された一対の歪みゲージ252、254を示している。歪みゲージは、歪みによって抵抗が変化するデバイスである。多くの場合、歪みゲージは、平行線のジグザグパターンの長くて薄い導電性ストリップを備えて形成される。歪みゲージ252、254は、チューブ壁256へ当接されるか、又はチューブ壁256内に製造されうる。さらに、歪みゲージ252、254は、チューブ壁256を部分的に取り囲むように配置されてもよいし、チューブ壁256を実質的に完全に取り囲んでもよい。しかし、歪みゲージ252、254はチューブ壁の周りに同じ量だけ延在することが好ましい。歪みゲージは温度変化の影響を受けやすいので、
図6に示す実施形態では、基準センサとしてより厚い位置260に歪みゲージ254を採用している。これは、位置260が(少なくとも位置258の範囲まで)流体圧力で歪まないためである。このようにして、歪みゲージ254からの信号の変化は、圧力に関連しない要因(例えば温度)の指標である。そして、この信号は、補償された歪み関連出力を提供するように、歪みゲージ252からの信号から差し引かれるか、又は除去されうる。
【0033】
図7は、本発明の別の実施形態による、一回使用プラスチック流体センサの概略図である。センサ300は、上述のセンサ100及び200といくつかの類似点を有しており、同様の構成要素には同様の符号が付けられている。特に、センサ300は、位置T
1及びT
2でチューブ334の外面上に配置された一対の温度センサを含む。これら温度センサは感知用素子と見なされうる。更に、位置T
1及びT
2でのチューブの厚さは異なる。これは、
図2に関して上述された実施形態及びセンサ100と同様である。しかし、2つの厚さ寸法を一回使用圧力センサに統合させることは、2つの導電性プレート間の熱流測定の利用を可能にする。単純な定常状態の熱流計算は、センサチューブを流れる流体の実際の内部温度に関する情報を得るために用いられうる。センサ内には漂遊熱経路があるので、熱インピーダンスを記述する単純な幾何学的関係はない。ただし、適切な近似として、プロセス流体は方程式6に示された次の関係に従うことが示されうる。
【0034】
【0035】
ここで、Tprocess はチューブを流れる内部プロセス流体の温度に等しく、Nは実験的に決定できる定数である。
【0036】
ポリカーボネートやその他のプラスチックは熱伝導率が比較的低いが、測定の時間応答を改善するために、より優れた熱伝導率を提供できる材料がある。このような材料の一例は、ドイツの Covestro AG から Makrolon という商品名で販売されている。これは、他のプラスチックよりも優れた熱伝導率を与えるので、ヒートシンクとして使用されるポリカーボネート材料である。
【0037】
位置T1及びT2でセンサ300に設けられた温度センサは、任意の形態(例えば、熱電対、サーミスタ、及びRTD)を取りうるが、温度センサ要素自体が容量プレート内に具現化されうることが明示的に意図されている。例えば、容量プレートは、感温金属(例えば、銅又はニッケル)で形成され、そして温度によって変化する測定可能な抵抗を提供するようにエッチング又は別の方法でパターン化されてもよい。
【0038】
図8は、本発明の一実施形態による流体特性を測定するためのシステムの概略図である。システム400は、一般に、コンデンサ404、406及び温度センサ408、410の周りの破線ボックスとして図式的に示される一回使用プロセス流体センサ402を含む。図示のように、各コンデンサ404、406は、スイッチ又はコントローラ414によって制御される別の適切な多重化回路412に動作可能に結合されている。コントローラ414は、コンデンサ404、406、及び温度センサ408の電気的パラメータを検出するために、スイッチ412を操作可能にし、且つ測定回路416と相互作用しうる任意の適切な電子デバイスでありうる。例えば、コントローラ414は、取り付けられた電気装置の電圧又は別の電気的応答を決定することができるアナログデジタル変換器に結合されるか、又はそれを含むマイクロプロセッサでありうる。スイッチ412を制御することによって、コントローラ414は、静電容量即ちコンデンサ404及び406と相互作用し、それらを個別に測定することができる。更に、コントローラ414は、計算されたプロセス流体パラメータ出力(例えば、流体圧力、質量流量、流量、導電率、及び/又は温度)を提供するために、方程式1~6に関して上述された様々な特性が計算されうるように、適切な処理能力(例えば算術処理)を含みうる。
【0039】
図9は、本発明の一実施形態による生物医薬品又は衛生流体処理システムにおいて流体特性を提供する方法の流れ図である。方法500はブロック502で始まり、そこで流体が流れるプラスチックチューブ内の第1の位置で測定値が得られる。例えば、第1の測定値は、参照符号503で示されるように、プロセス流体が流れるプラスチックチューブの歪みを示す第1の抵抗測定値であってもよい。代わりに、C1(
図2に示される)などの位置における一対の容量プレートの間のギャップの第1の容量測定値でありうる。これはブロック504に示される。追加的又は代わりに、第1の位置測定値は、ブロック506に示されるような温度測定値であってもよい。次に、ブロック508で、第2の測定値が、プラスチック流体センサの第2の位置で得られる。ブロック509に示されるように、この第2の測定値は、第2の歪みゲージの抵抗測定値であってもよい。代わりに、ブロック510で示されるように、この第2の測定は、位置(例えば、位置C2(
図2に示す))における静電容量ベースの測定値であってもよく、及び/又は、同じ位置での温度測定値512であってもよい。次に、ブロック514で、ブロック502及び508で得られた測定値に基づいて流体特性が計算される。上述のように、本明細書に記載の実施形態は、様々な流体特性の計算に使用されうる測定値を提供しうる。更に、流体特性の組み合わせは、より高次の指標を提供しうる。例えば、既知の流体の温度を知ることは、決定されるべき流体密度の補正、又はレイノルズ数(Re)の計算さえもを可能にしうる。とにかく、計算された流体特性は、ブロック516で示されるような圧力;ブロック518で示されるような質量流量; ブロック520で示されるような流体の流量を含みうる。最後に、ブロック524で、計算された流体特性は、出力として提供されるが、それは必要に応じローカル出力の形であっても、又は遠隔装置へ伝達されてもよい。