(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】パワーパックサブアセンブリ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20241203BHJP
A61M 5/20 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
A61M5/315 550V
A61M5/20 510
(21)【出願番号】P 2023553082
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(86)【国際出願番号】 EP2021085126
(87)【国際公開番号】W WO2022184304
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-08-31
(32)【優先日】2021-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520011887
【氏名又は名称】エスエイチエル・メディカル・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンデシュ・ボーストレーム
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-526904(JP,A)
【文献】特表2014-507219(JP,A)
【文献】特表2020-519373(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0080159(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達装置(100)のためのパワーパックサブアセンブリ(10)であって、該パワーパックサブアセンブリ(10)は、近位端(14)から遠位端(16)へと軸方向に軸(12)に沿って延びており、前記パワーパックサブアセンブリ(10)は、
該パワーパックサブアセンブリ(10)の
前記遠位端から延びたハウジング(20)と、
該ハウジング(20)に対して軸方向にスライド可能な係止リング(60)と、
前記ハウジング(20)に対しておよび前記係止リング(60)に対して軸方向にスライド可能な起動リング(40)であって、前記係止リング(60)は、前記起動リング(40)よりも前記パワーパックサブアセンブリ(10)の
前記遠位端により接近して配置された、起動リング(40)と、
を備え、
前記起動リング(40)の一部と前記係止リング(60)の一部とが、使用の際に、前記起動リング(40)を前記係止リング(60)に接続する接続機構
を構成し、
前記起動リング(40)の前記一部が前記起動リング(40)のコネクタ
を構成し、
前記係止リング(60)の前記一部が前記係止リング(60)の相手側コネクタ
を構成し、
前記係止リング(60)の遠位配向面(72)と、前記ハウジング(20)の対応した近位配向面(24)と、が、使用後に、前記パワーパックサブアセンブリ(10)を係止するための係止機構
を構成し、
使用の際に、前記起動リング(40)は、前記係止リング(60)から離間した位置から前記係止リング(60)に隣接した位置へと、遠位方向において移動可能であり、前記起動リング(40)が前記係止リング(60)に隣接した位置に移動すると、前記起動リング(40)上の前記コネクタが、前記係止リング(60)上の前記相手側コネクタと係合し、
前記起動リング(40)および前記係止リング(60)は引き続き、遠位位置から近位位置へと前記ハウジング(20)に対して一体となって移動可能であり、前記起動リング(40)および前記係止リング(60)が、前記遠位位置から前記近位位置へと前記ハウジング(20)に対して移動した後に、前記係止リング(60)の前記遠位配向面(72)が、前記ハウジング(20)の対応した前記近位配向面(24)に対向し、これにより使用後に前記パワーパックサブアセンブリ(10)を係止するパワーパックサブアセンブリ(10)。
【請求項2】
前記ハウジング(20)と前記起動リング(40)との間に配置されたバネ(80)を備えている、請求項1に記載のパワーパックサブアセンブリ(10)。
【請求項3】
前記ハウジング(20)は、近位方向に延びた可撓性アーム(22)を備え、前記ハウジングの
前記近位配向面(24)は前記可撓性アーム(22)上にある、請求項1または2に記載のパワーパックサブアセンブリ(10)。
【請求項4】
前記可撓性アーム(22)は、前記軸(12)に対して径方向に可撓性である、請求項3に記載のパワーパックサブアセンブリ(10)。
【請求項5】
前記ハウジング(20)、前記起動リング(40)、および前記係止リング(60)は、すべて同軸である、請求項1から4のいずれか一項に記載のパワーパックサブアセンブリ(10)。
【請求項6】
前記ハウジング(20)は管状部(26)を備え、前記起動リング(40)および前記係止リング(60)の両方は、前記ハウジング(20)の
前記管状部(26)の周りに延びている、請求項1から5のいずれか一項に記載のパワーパックサブアセンブリ(10)。
【請求項7】
前記接続機構はスナップ式である、請求項1から6のいずれか一項に記載のパワーパックサブアセンブリ(10)。
【請求項8】
前記係止リング(60)の
前記相手側コネクタは可撓性アーム(62)のフック(64)であり、前記起動リングの
前記コネクタは突起またはリブ(46)である、請求項1から7のいずれか一項に記載のパワーパックサブアセンブリ(10)。
【請求項9】
前記可撓性アーム(62)は、前記軸(12)に対して周方向に柔軟である、請求項8に記載のパワーパックサブアセンブリ(10)。
【請求項10】
前記ハウジング(20)および前記係止リング(60)は、互いに対して回転可能なように係止されており、前記ハウジング(20)および前記起動リング(40)は、互いに対して回転可能なように係止されている、請求項1から9のいずれか一項に記載のパワーパックサブアセンブリ(10)。
【請求項11】
前記パワーパックサブアセンブリ(10)はプランジャロッド(108)を備え、前記ハウジング(20)は可撓性アーム(22)を備え、該可撓性アーム(22)の少なくとも一部は前記起動リング(40)の内側にあり、
前記ハウジング(20)の
前記可撓性アーム(22)の一部は、前記プランジャロッド(108)の凹部内へと延びている、請求項1から
10のいずれか一項に記載のパワーパックサブアセンブリ(10)。
【請求項12】
請求項1から
11のいずれか一項に記載のパワーパックサブアセンブリ(10)を備えている自己注射器(100)。
【請求項13】
前記自己注射器は、前記起動リング(40)に突き当たる針シールド(120)を備えている、請求項
12に記載の自己注射器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパワーパックサブアセンブリ、特に係止機構を備えたパワーパックサブアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
自己注射器等の薬剤送達装置は、早過ぎる薬剤送達を回避するために、係止機構を備えることが可能である。出願人は、これらの既存の係止機構と比較して改良が可能であることを認識した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2011/123024号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は添付の請求項により定義され、ここで参照されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示においては、「遠位方向」との用語が使用されており、これは、薬剤送達装置の使用の際に、用量送達部位から離れるように向いた方向を参照している。「遠位部/遠位端」との用語が使用された場合、これは、送達装置の一部/端部またはその部材の一部/端部を参照しており、薬剤送達装置の使用の際に、それらの部分は用量送達部位から最も遠くに離れて配置されている。結果として、「近位方向」との用語が使用された場合、これは、薬剤送達装置の使用の際に、用量送達部位に向かうように向いた方向を参照している。「近位部/近位端」との用語が使用された場合、これは、送達装置の一部/端部またはその部材の一部/端部を参照しており、薬剤送達装置の使用の際に、それらの部分は用量送達部位に最も接近して配置されている。
【0006】
さらに、「長手方向の」、「長手方向に」、「軸方向に」、および「軸方向の」との用語は、近位端から遠位端へと装置またはその構成部品に沿って延伸した方向であり、典型的に、装置および/または構成部品の最も長い延伸方向である。
【0007】
同様に、「横方向」、「横方向の」、および「横方向に」との用語は、先の長手方向に全体的に直交した方向である。
【0008】
本発明の一態様は、薬剤送達装置のためのパワーパックサブアセンブリに関し、パワーパックサブアセンブリは、近位端から遠位端へと軸方向に軸に沿って延びており、このパワーパックアセンブリは、パワーパックサブアセンブリの遠位端から延びたハウジングと、ハウジングに対して軸方向にスライド可能な係止リングと、ハウジングに対しておよび係止リングに対して軸方向にスライド可能な起動リングであって、係止リングは、起動リングよりもパワーパックサブアセンブリの遠位端により接近して配置された、起動リングと、使用の際に、起動リングを係止リングに接続する接続機構であって、起動リングのコネクタと、係止リングの相手側コネクタと、を備えた接続機構と、使用後に、パワーパックサブアセンブリを係止する係止機構であって、係止リングの遠位配向面と、ハウジングの対応した近位配向面と、を備えた係止機構と、を備えている。このことは、起動リングの軸方向移動により提供される起動を伴った、明確な起動位置を有することが可能なパワーパックサブアセンブリを提供することが可能である。このことは、使用された装置の再使用を停止することが可能な係止部を含んだパワーパックサブアセンブリを提供することが可能である。
【0009】
随意的に、パワーパックサブアセンブリは、ハウジングと起動リングとの間に配置されたバネを備えている。随意的に、ハウジングは、近位方向に延びた可撓性アームを備え、ハウジングの近位配向面は可撓性アーム上にある。随意的に、可撓性アームは、軸に対して径方向に可撓性である。随意的に、ハウジング、起動リング、および係止リングは、すべて同軸である。随意的に、ハウジングは管状部を備え、起動リングおよび係止リングの両方は、ハウジングの管状部の周りに延びている。
【0010】
随意的に、接続機構はスナップ式である。随意的に、係止リングのコネクタは可撓性アームのフックである。随意的に、起動リングのコネクタは突起またはリブである。随意的に、可撓性アームは、軸に対して周方向に柔軟である。
【0011】
随意的に、ハウジングおよび係止リングは、互いに対して回転可能なように係止されている。随意的に、ハウジングおよび起動リングは、互いに対して回転可能なように係止されている。一方ではハウジングと係止リングとの間の、および他方ではハウジングと起動リングとの間の回転可能な係止の形成は、接続機構が整列されることを確実にすることを補助することが可能である。
【0012】
使用の際に、起動リングは、係止リングから離間した位置から係止リングに隣接した位置へと、遠位方向において移動可能であり、起動リングおよび係止リングは引き続き、遠位位置から近位位置へとハウジングに対して一体となって移動可能であり、これにより使用後に前記パワーパックサブアセンブリを係止する。随意的に、接続機構は、起動リングが係止リングに隣接した位置へと移動した場合に、起動リングを係止リングに接続する。
【0013】
随意的に、パワーパックサブアセンブリはプランジャロッドを備え、ハウジングは可撓性アームを備え、可撓性アームの少なくとも一部は起動リングの内側にあり、ハウジングの可撓性アームの一部は、プランジャロッドの凹部内へと延びている。起動リングが遠位方向に移動した場合、可撓性アームは、もはや起動リングにより軸から離れるように曲がることを制限されておらず、可撓性アームがプランジャロッドの凹部の外側へと移動することを可能にして、それによりプランジャロッドが軸方向に移動し、パワーパックサブアセンブリの一部である薬剤送達装置を作動させることを可能にしている。
【0014】
本発明の別の態様は、前述の任意のパワーパックサブアセンブリを含んだ自己注射器を含んでいる。随意的に、自己注射器は、起動リングに突き当たった針シールドを備えている。
【0015】
本発明の別の態様は、ハウジング、係止リング、および起動リングを備えたパワーパックサブアセンブリを含み、起動リングが遠位方向に移動した場合、係止リングは起動リングに接続され、起動リングが続いて近位方向に移動した場合、起動リングおよび係止リングは、一体となって近位方向に移動する。
【0016】
本発明の別の態様は、ハウジング、係止リング、および起動リングを備えたパワーパックサブアセンブリを含んでいる。第1の状態においては、起動リングは第1の近位位置にあり、係止リングはハウジングに対して遠位位置にあり、起動リングは、係止リングから軸方向に離間されている。続く第2の状態においては、起動リングは遠位位置にあり、係止リングは遠位位置にあり、起動リングは係止リングに隣接している。続く第3の状態においては、起動リングは第2の近位位置(随意的に第1の近位位置と同じ)にあり、係止リングは近位位置にあり、起動リングは係止リングに隣接している。
【0017】
全体的に、請求項で使用されているすべての用語は、本明細書において明示的に別段の定義がない限り、技術分野における通常の意味に従って解釈されるものとする。1つの/1つの/前記要素、装置、部材、部品、手段等のすべての参照は、特に明記しない限り、例えば少なくとも1つの要素、装置、部材、部品、手段等参照するものとして、公然と解釈される。
【0018】
本開示の実施形態は、添付の図を参照するとともに例示することのみによりここに記載される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】文脈に関する針シールドを備えたパワーパックサブアセンブリを示した斜視図である。
【
図2】薬剤送達の際の、
図1の構成を示した図である。
【
図3】薬剤送達の後の、
図1の構成を示した図である。
【
図4】
図1の係止リングを示した2つの斜視図である。
【
図5】
図1の起動リングを示した2つの斜視図である。
【
図7】
図1の構成を含んだ自己注射器を示した斜視図である。
【
図9】
図7の自己注射器の一部を示した断面斜視図である。
【
図10】
図7の自己注射器の一部を示した、別の断面斜視図である。
【
図11】係止リングおよびハウジングの相互作用面に関する代替的なアプローチを示した断面斜視図である。
【
図12】
図1のパワーパックサブアセンブリの係止リングおよびハウジングの相互作用面を示した図である。
【
図13】
図1のパワーパックサブアセンブリの係止リングおよびハウジングの相互作用面を示した図である。
【
図14】係止リングおよびハウジングの相互作用面に関する別の代替的な形状を示した図である。
【
図15】係止リングおよびハウジングの相互作用面に関する別の代替的な形状を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
パワーパックサブアセンブリ10が、ここに記載される。パワーパックサブアセンブリ10(例えば
図1参照)は、近位端14から遠位端16へと軸12に沿って軸方向に延びている。パワーパックサブアセンブリ10は、ハウジング20(または後部ハウジング)、起動リング40、係止リング60、および随意的なバネ80を備えている。ハウジング20は、パワーパックサブアセンブリ10の遠位端16から延びている。係止リング60は、ハウジングに対して軸方向にスライド可能である。起動リング40は、ハウジングに対して軸方向にスライド可能であり、且つ係止リング60に対してスライド可能である。係止リング60は、起動リング40よりもパワーパックサブアセンブリ10の遠位端16により近接して配置されている。
【0021】
パワーパックサブアセンブリ10は、接続機構を備えている。接続機構は、使用の際に、係止リングを起動リングに接続することが可能である。接続機構は、係止リング上のコネクタおよび起動リング上の相手側コネクタを備えている。本例においては、起動リング40上のコネクタは突起46であり、係止リング上のコネクタは、可撓性アーム62上のフック64である(例えば
図4参照)。代替的に、係止リング上のコネクタが突起であり、且つ起動リング上のコネクタが可撓性アーム上のフックとされ得る。他のスナップ式デザインが、または摩擦式接続等の他のタイプの接続が、代替的に使用され得る。
【0022】
パワーパックサブアセンブリ10は、係止機構も備えている。係止機構は、使用後に、パワーパックサブアセンブリ10を係止することが可能である。係止機構は、係止リング上の遠位配向面、およびそれに対応したハウジング上の近位配向面を備えている。本例においては、係止リング上の遠位配向面は、突起70の遠位配向面72であり、ハウジング上の近位配向面は、ハウジング20の可撓性アーム22の近位配向面24である(
図6参照)。
【0023】
図11から
図15は、係止リングおよびハウジングがどのようにして相互作用し得るかということの3つの例を示している。
図12および
図13は、前述の例、例えば
図6および
図9にいて使用されたアプローチの拡大図を示している。本アプローチにおいては、近位配向面24および遠位配向面72に加えて、可撓性アーム22の近位端には近位延出突起25が存在している。近位延出突起25は、可撓性アーム22の近位配向面24よりもさらに近位方向に延びており、したがって、近位配向面24および遠位配向面72の位置合わせのために径方向支持を提供することが可能である。近位延出突起25は好適に、遠位配向面72よりもさらに軸12から離れている(
図1参照)。
【0024】
図14および
図15は、遠位延出突起67が係止リング60の遠位端に設けられたアプローチを示している。遠位延出突起67は、遠位配向面72よりもさらに遠位方向に延びており、したがって、近位配向面24および遠位配向面72の位置合わせのために径方向支持を提供することが可能である。遠位延出突起67は好適に、近位配向面24よりもさらに軸12に接近している(
図1参照)。
【0025】
図11は、軸方向延出突起25が設けられていない、代替的なアプローチを示している。別の代替例では、
図12の近位延出突起25および遠位延出突起67の両方が設けられている。
【0026】
パワーパックサブアセンブリ10の操作方法は、
図1から
図3を参照してここに記載される。使用前に、パワーパックサブアセンブリ10は、一般的に
図1に示された形態にある。この形態において、係止リング60は、ハウジング20に対して第1の位置(遠位位置)にあり、起動リング40は、ハウジング20に対して第1の位置(第1の近位位置)にある。起動リング40は、係止リング60から離間されている。
【0027】
ここに記載されたようなパワーパックサブアセンブリを収容した薬剤送達装置を使用する際に、起動リング40は、ハウジング20に対して遠位方向に最初に押される。これにより、起動リング40は、第1の位置から第2の位置(遠位位置)へと移動する。一般的に、係止リング60はこの段階では移動しない。図示された例においては、起動リング40は、針シールド120により遠位方向に押されるが、(ボタン等の)別の起動部材が、起動リング40を遠位方向に代替的に押し得る。起動リング40が遠位方向に押された後に、係止リング60は、接続機構により起動リング40に取り付けられる。本例においては、
図2に示された位置において、パワーパックサブアセンブリ10により注射が実行される(
図9も参照、本例においては、起動リング40がハウジング20の第2の可撓性アーム32の動作をもはや妨げないので、ハウジング20の第2の可撓性アーム32はここでは軸から離れるように移動することが可能であり、これによりプランジャロッド108が近位方向に移動して、薬剤送達装置内に提供された場合に、薬剤の送達を開始することが可能である)。この段階においては、起動リング40は、
図2に示されたように係止リング60に隣接しているが、係止リング60と起動リンク40との間には未だにギャップが存在し得る。
【0028】
注射が完了すると(または本例においては、使用者が注射の間に注射部位から薬剤送達装置を時期尚早に除去した場合も)、針シールド120は近位方向に移動する。本例においては、バネ80はそのとき、起動リング40を第2の位置から第3の位置(第2の近位位置)へと押す。この場合、第3の位置は第1の位置と同じであるが、第3の位置は第1の位置とは異なるようにもし得る。ここで係止リング60が接続機構により起動リング40に取り付けられているので、係止リング60も起動リング40とともに(係止リング60の第1の位置から第2の位置(近位位置)へと)移動する。この最終位置において、係止機構が起動される。係止リング(この場合係止リング60の突起70)の遠位配向面およびそれに対応したハウジング(この場合可撓性アーム22)の近位配向面は、互いに対向して、針シールド120が遠位方向に押された場合であっても、係止リング60がその原位置(第1の位置)に戻るように移動することを停止させている。
【0029】
これまでに示された部品の構造は、
図4から
図6を参照してより詳細に記載されており、それぞれの図が、係止リング60、起動リング40、およびハウジング20を示している。
【0030】
図4においては、係止リング60が2つの視点から示されている。係止リングは、内側面61および外側面63を備えている。フック64を備えた可撓性アーム62、支持面66、および係止リング60の突起70を含んだ多様な特徴がリング構造に見られており、各突起は遠位配向面72を備えている。追加のリブ68も示されている。本例においては、遠位配向面72は係止リング60の遠位端面65とは異なっており、遠位配向面72は遠位端面65から軸方向に後退しているが、代替的に、遠位配向面は遠位端面の一部とされ得る。
【0031】
図5においては、起動リング40が2つの視点から示されている。起動リングは、軸12に向いた内側面55および軸12から離れるように向いた外側面56を備えている。近位配向面42、起動リング40の内側面55上の追加のリブ44、起動リング40の外側面56上の突起(またはリブ)46、遠位配向面48、および傾斜面50を含んだ多様な特徴がリング構造に見られている。傾斜面50は、例えば15°から75°の間(好適に30°から60°の間)で軸に対して傾斜しており、随意的であるが、使用の際に起動リング40がハウジング20の可撓性アーム22を通過することを容易にすることにより、使用の際の摩擦を有利に減少することが可能である。
【0032】
図6においては、ハウジング20がより詳細に示されている。管状本体26および可撓性アーム22を含んだ複数の特徴がハウジング20にみられており、各可撓性アームは近位配向面24を備えている。外側ハウジング102等の完成した薬剤送達装置の別部品へのハウジング20の取り付けを補助するために使用され得るリブ30、組立の際の部品の位置合わせを補助し得る、リブ30内の切り欠き31、装置の起動に先立って、プランジャロッド108を所定の位置に保持するために使用され得る第2の可撓性アーム32、起動リング40が遠位方向に移動される前に装置の起動を停止させるために設けられ得る、第2の可撓性アーム32上の突起33、起動リング40に対するハウジング20の回転を制限するために、起動リング40のリブ44と相互作用し得る長手方向溝34、および起動リング40がハウジング20の近位端から外れることを防止し得る、長手方向溝34内の突起35を含んだ、ハウジグの他の複数の追加的な特徴も示されており、ここに簡単に記載されている。ハウジングの追加の支持アーム36も示されており、このアームは可撓性とされてよく、一次パッケージ114の遠位端の支持を補助すること、および/または薬剤送達装置内の公差の管理を補助することが可能である。
【0033】
ここに記載されたパワーパックサブアセンブリは、自己注射器等の薬剤送達装置内で使用されることが可能である。ここに記載されたパワーパックサブアセンブリが使用された自己注射器100の一例は、
図7に示されている。
図7においては、自己注射器100内のハウジング20は、遠位端16に見られており、近位端14におけるキャップ106、およびキャップとハウジングとの間に延びた外側ハウジング102(一部品または他部品とされ得る。)を備えている。外側ハウジング102内の追加の窓104も見られている。ここに記載されたパワーパックサブアセンブリが使用され得る自己注射器の別の例は、参照によりここに統合された特許文献1に示されている。
【0034】
ここに記載されたようなパワーパックサブアセンブリを備えた自己注射器は、針シールド、追加のキャップ、外側ハウジング、薬剤を収容した一次パッケージ、一次パッケージを支持したシリンジホルダ、および針注射器またはジェット式注射器等の薬剤送達部材を一般的に備えるだろう。それに加えて、パワーパックサブアセンブリは、上述のパワーパックサブアセンブリと同様にプランジャロッドを一般的に備えるだろう。ただし、多くの異なったデザインが、ここに記載したパワーパックサブアセンブリとともに機能し得る。例えば、簡単なバリエーションをいくつか挙げると、シリンジホルダ116は外側ハウジングの一体的な部分とされ得、外側ハウジングはハウジングの一体的な部分とされ得、および/または薬剤送達部材は一次パッケージの一体的な部分とされ得る。
【0035】
完全を期すために、
図8は、ここに記載されたパワーパックサブアセンブリとともに使用され得る針シールド120の例を示している。針シールド120は、2つの遠位延出アーム122を備えている。これらのアームの遠位配向面は、
図1から
図3に示されたように、起動リング40と相互作用することが可能である。針シールド120の近位端に見られたノッチは任意であるが、キャップと相互作用するために含まれることが可能であり、それは例えば参照によりここに統合されたPCT/EP2020/086279号に記載されている。
【0036】
文脈上、
図9および
図10は、
図1から
図6を参照して記載されたような、自己注射器内のパワーパックサブアセンブリを示している。
図9は、パワーパックサブアセンブリ10が
図2に示された位置にある場合の、選択された構成部品を示している(しかしながら、プランジャロッドバネを示していない。)。
図10は、パワーパックサブアセンブリ10が
図3に示された位置にある場合の、選択された構成部品を示している。これまでに示された特徴に加えて、プランジャロッド108、プランジャロッドバネ110、およびUブラケット112が、特に
図10において見られている。
【0037】
本例においては、ハウジング20(特にハウジングの管状部26)は、係止リング60および起動リング40を通じて延びており(
図1参照)、その結果、ハウジングは係止リングおよび起動リングを支持して、それらをハウジングに対して所定の位置に保持することが可能である。この機能性は、パワーパックサブアセンブリまたは薬剤送達装置の別の部品により代替的に達成され得る。前述の通り、ハウジング20の多くの構造的特徴は本質的ではなく、さらに詳細には記載されていない。
【0038】
ハウジング20の可撓性アーム22は随意的であり、ハウジングの近位配向面はハウジングの他の場所に設けられ得る。係止リングの遠位配向面は、随意的に係止リングの可撓性アームに設けられ得る。可撓性アーム22は径方向に柔軟であるが、周方向等の他の方向において代替的に可撓性とされ得る。
【0039】
例えば
図4および
図5に示された係止リング60および起動リング40の特徴のような、ここに記載された多様な特徴は、ほとんどが二重に設けられている(また、可撓性アーム62、リブ68等のいくつかの特徴は、四重に設けられている)。代替的に、これらの特徴は全体的に他の数だけ設けられることが可能であり、ここに記載された各特徴の1つで十分であるが、円周上に等間隔に2つ以上を設けることは、例えば構成部品間の力伝達の点においてなど、構成部品のバランスの点において有益になり得る。
【0040】
係止リング60および起動リング40は、軸の周り全体に展開しているように示されているが、代替的にそれらの一方または両方は、軸の周りの一部のみに展開し得る。係止リング60および起動リング40の各々は、軸に垂直に見た場合に、円形断面として示されているが、それらの一方または両方の断面は、代替的に別の形状とされ得る。
【0041】
ハウジングと起動リングとの間の随意的な回転係止部が、リブ44および対応した長手方向溝34により前述の例に設けられる。回転係止部は、起動リング40がハウジング20の近位端から脱落することを防止することが可能な突起35も備え得る。回転係止部は他の方法においても設けられることが可能であり、例えば起動リング40の内側面55が軸12に直交した断面において非円形であり、相手側のハウジングの外側面がそれに応じて非円形であることによっても設けられ得る。
【0042】
ハウジングと係止リングとの間の随意的な第2の回転係止部は、リブ68およびアーム22により前述の例に設けられ、リブ68は、周方向においてアーム22の両側に延びている。回転係止部は他の方法においても設けられることが可能であり、例えば係止リング60の内側面55が軸12に直交した断面において非円形であり、相手側のハウジングの外側面がそれに応じて非円形であることによっても設けられ得る。
【0043】
係止リング60の可撓性アーム62は、前述の例では周方向において柔軟であるが、径方向等の他の方向において代替的に柔軟とされることが可能である。
【0044】
支持面66は随意的(係止リング60が機構を作動させるために起動リング40に必ずしも突き当たる必要がなく、いくつかの実施形態においては、係止リングと起動リングとの間には、それらが一体に連結された後であっても、ギャップが残存している。)であるが、針シールドを押し戻すことが可能な距離に制限が生じ得る。代替的に、制限は装置の他の場所、例えば外側ハウジングの突起により針シールドの遠位移動を制限することにより、設けられることが可能である。
【0045】
突起70は随意的であり、係止リングの遠位配向面72は、係止リングの別の部分に設けられ得る。突起はハウジングのアームと相互作用して、使用前に係止リングを所定の位置に保持することを補助している。
【0046】
バネ80は随意的である。バネを備えることの代替の1つは、以下に記載されたように、起動リングに取り付けられた針シールドを備えることであり、この場合、使用後に針シールドを前方に引くと、同様に起動リングも前方に引かれる(針シールドは針シールドバネにより前方に移動し得るか、または例えば使用者が、針を近位方向に引き戻すことにより、針シールドを手動で前方に引くことが可能である)。バネ80は、本例においてはハウジングと起動リングとの間に延びている。本例においては、バネは係止リングの内側にあり、且つハウジングの管状部の外側にある。
【0047】
自己注射器100は、文脈の例として上に示されているが、より一般的な他のデザインの自己注射器または薬剤送達装置も、ここに記載されたパワーパックサブアセンブリを使用し得る。ここに記載された起動機構においては、起動係止リング60が邪魔にならない位置に移動した場合に(例えば
図9)、ハウジング20の第2の可撓性アーム32は、軸から離れるように径方向に移動することが可能であるが、これは随意的であり、起動の他の機構、例えば使用者により操作されるボタンによっても可能であり、このボタンは、起動リングが遠位方向に移動される前に、起動リングにより動作が制限され、起動リングが遠位方向に移動された後に、径方向に軸に向かって移動可能となり、これにより、例えばプランジャロッドを係止解除するまたはガス動力式注入機構を起動する装置を起動させる。ここに記載された係止の概念とは直接関係はないが、パワーパックサブアセンブリは動力源も含んでいる。いくつかの例においては、パワーパックサブアセンブリは、(バネにより駆動される)図示された例としての機械動力式よりも、むしろガス動力式である。薬剤送達装置は、1回限り使用する(使い捨て)製品とされ得る。プランジャロッドを設けることは随意的であり、いくつかの例においては、一次パッケージのストッパが、ストッパに隣接した別の構成部品によりまたは流体の圧力の増大により、近位方向に移動されることが可能である。Uブラケットを設けることも随意的である。Uブラケットは、プランジャロッドバネ110によりハウジング20から解放されおよびハウジング20に押し付けられることにより、エンドクリックなどの1つ以上のクリックを提供することが可能である。
図10に見られているように、プランジャロッドバネ110の内側に延びたガイドロッド113が設けられることが可能であるが、この特徴も随意的である。ガイドロッドは、(
図10に示されたような)Uブラケットまたは別の構成部品とされ得る。
【0048】
上述の例は、文脈として針シールドと共に記載されている。このデザインは、ジェット式注射器等の他の薬剤送達部材と共に使用されることも可能であり、ここに使用された「針シールド」との用語は、「薬剤送達部材シールド」と一般化されることが可能である。随意的に、起動リング40は、針シールド120の一体部品である。随意的に、起動リング40は、例えばスナップ式にまたは接着により針シールド120に取り付けられている。
【0049】
記載された実施形態に対する多様な改良が可能であり、以下の請求項により定義された発明から逸脱することなく、当業者が思いつくだろう。
【符号の説明】
【0050】
10 ・・・パワーパックサブアセンブリ
14 ・・・近位端
16 ・・・遠位端
20 ・・・ハウジング
22 ・・・可撓性アーム
24 ・・・近位配向面
25 ・・・近位延出突起
26 ・・・管状部
30 ・・・リブ
32 ・・・第2の可撓性アーム
33 ・・・突起
34 ・・・長手方向溝
35 ・・・突起
36 ・・・支持アーム
40 ・・・起動リング
42 ・・・近位配向面
44 ・・・リブ
46 ・・・突起
48 ・・・遠位配向面
50 ・・・傾斜面
55 ・・・内側面
56 ・・・外側面
60 ・・・係止リング
61 ・・・内側面
62 ・・・可撓性アーム
63 ・・・外側面
64 ・・・フック
65 ・・・遠位端面
66 ・・・支持面
67 ・・・遠位延出突起
68 ・・・リブ
70 ・・・突起
72 ・・・遠位配向面
80 ・・・バネ
100 ・・・自己注射器
102 ・・・外側ハウジング
104 ・・・追加の窓
106 ・・・キャップ
108 ・・・プランジャロッド
110 ・・・プランジャロッドバネ
112 ・・・Uブラケット
113 ・・・ガイドロッド
116 ・・・シリンジホルダ
120 ・・・針シールド
122 ・・・遠位延出アーム