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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】レーザ加工システムおよび制御装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20241203BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20241203BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20241203BHJP
   B23K 26/08 20140101ALI20241203BHJP
【FI】
B23K26/00 M
B23K26/21 W
B23K26/08 H
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2023568858
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2021047463
(87)【国際公開番号】W WO2023119458
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2024-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】畑田 将伸
(72)【発明者】
【氏名】田中 隆博
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-066378(JP,A)
【文献】特開2016-155169(JP,A)
【文献】特開2021-188111(JP,A)
【文献】特開2020-019058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00
B23K 26/21
B23K 26/082
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットと、該ロボットに装着されたレーザ光射出ツールと、前記ロボットおよび前記レーザ光射出ツールを動作プログラムに基づいて制御する制御装置とを備え、
前記レーザ光射出ツールが、2以上の異種レーザ光を独立して射出可能であり、
前記制御装置が、前記動作プログラム中の1つのレーザ加工命令により、前記レーザ光射出ツールに対し、前記異種レーザ光を同時に射出させる複数のレーザ射出指令を実行可能であるレーザ加工システム。
【請求項2】
前記レーザ射出指令が、予熱用射出指令および加工用射出指令を含む請求項1に記載のレーザ加工システム。
【請求項3】
前記制御装置が、前記レーザ加工命令において、各前記レーザ射出指令の射出条件を設定可能である請求項1または請求項2に記載のレーザ加工システム。
【請求項4】
前記射出条件が、前記レーザ射出指令によって射出される前記異種レーザ光の強度および射出時間を含む請求項3に記載のレーザ加工システム。
【請求項5】
前記レーザ射出指令が、前記ロボットに対する動作指令の実行を待機させる待機指令を含む請求項1から請求項4のいずれかに記載のレーザ加工システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記動作プログラムの教示において、前記レーザ加工命令を選択することにより、複数の前記レーザ射出指令を実行順に羅列して表示し、各前記レーザ射出指令における前記射出条件を入力させる請求項3に記載のレーザ加工システム。
【請求項7】
前記レーザ加工命令が、レーザ加工開始命令であり、
前記制御装置は、前記動作プログラムの教示において、前記レーザ加工命令を選択すると、前記レーザ射出指令のランピング回数の入力を要求し、要求に応じて入力されたランピング回数に対応する数の前記レーザ射出指令を羅列して表示する請求項6に記載のレーザ加工システム。
【請求項8】
前記レーザ加工命令が、レーザ加工終了指令であり、
前記制御装置は、前記動作プログラムの教示において、前記レーザ加工命令を選択すると、前記レーザ射出指令のランピング回数の入力を要求し、要求に応じて入力されたランピング回数に対応する数の前記レーザ射出指令を羅列して表示する請求項6に記載のレーザ加工システム。
【請求項9】
前記レーザ加工命令が、レーザ加工中のレーザ出射条件切替指令であり、
前記制御装置は、前記動作プログラムの教示において、前記レーザ加工命令を選択すると、前記レーザ射出指令のランピング回数の入力を要求し、要求に応じて入力されたランピング回数に対応する数の前記レーザ射出指令を羅列して表示する請求項6に記載のレーザ加工システム。
【請求項10】
前記異種レーザ光を射出させる複数の前記レーザ射出指令を実行順に羅列した1以上のテーブルを記憶し、
前記レーザ加工命令の選択において、いずれかの前記テーブルが選択され、選択された該テーブルが表示される請求項6に記載のレーザ加工システム。
【請求項11】
前記レーザ加工命令が、レーザ加工開始命令であり、
前記制御装置は、前記動作プログラムの教示において、前記レーザ加工命令を選択すると、選択された前記テーブルを表示するとともに、表示された該テーブルにおいて、前記レーザ射出指令のランピング回数の入力を要求し、要求に応じて入力されたランピング回数に対応する数の前記レーザ射出指令を前記テーブルに羅列して表示する請求項10に記載のレーザ加工システム。
【請求項12】
前記レーザ加工命令が、レーザ加工終了指令であり、
前記制御装置は、前記動作プログラムの教示において、前記レーザ加工命令を選択すると、選択された前記テーブルを表示するとともに、表示された該テーブルにおいて、前記レーザ射出指令のランピング回数の入力を要求し、要求に応じて入力されたランピング回数に対応する数の前記レーザ射出指令を前記テーブルに羅列して表示する請求項10に記載のレーザ加工システム。
【請求項13】
前記レーザ加工命令が、レーザ加工中のレーザ出射条件切替指令であり、
前記制御装置は、前記動作プログラムの教示において、前記レーザ加工命令を選択すると、選択された前記テーブルを表示するとともに、表示された該テーブルにおいて、前記レーザ射出指令のランピング回数の入力を要求し、要求に応じて入力されたランピング回数に対応する数の前記レーザ射出指令を前記テーブルに羅列して表示する請求項10に記載のレーザ加工システム。
【請求項14】
ロボットと、該ロボットに装着されたレーザ光射出ツールとを動作プログラムに基づいて制御する制御装置であって、
前記動作プログラム中の1行のレーザ加工命令により、前記レーザ光射出ツールに対し、2以上の異種レーザ光を同時に射出させる複数のレーザ射出指令を実行可能である制御装置。
【請求項15】
前記レーザ射出指令が、予熱用射出指令および加工用射出指令を含む請求項14に記載の制御装置。
【請求項16】
前記レーザ加工命令において、各前記レーザ射出指令の射出条件を設定可能である請求項14または請求項15に記載の制御装置。
【請求項17】
前記射出条件が、前記レーザ射出指令によって射出される前記異種レーザ光の強度および射出時間を含む請求項16に記載の制御装置。
【請求項18】
前記レーザ射出指令が、前記ロボットに対する動作指令の実行を待機させる待機指令を含む請求項14から請求項17のいずれかに記載の制御装置。
【請求項19】
前記動作プログラムの教示において、前記レーザ加工命令を選択することにより、複数の前記レーザ射出指令を実行順に羅列して表示し、各前記レーザ射出指令における前記射出条件を入力させる請求項16に記載の制御装置。
【請求項20】
前記レーザ加工命令が、レーザ加工開始命令であり、
前記動作プログラムの教示において、前記レーザ加工命令を選択すると、前記レーザ射出指令のランピング回数の入力を要求し、要求に応じて入力されたランピング回数に対応する数の前記レーザ射出指令を羅列して表示する請求項19に記載の制御装置。
【請求項21】
前記レーザ加工命令が、レーザ加工終了指令であり、
前記動作プログラムの教示において、前記レーザ加工命令を選択すると、前記レーザ射出指令のランピング回数の入力を要求し、要求に応じて入力されたランピング回数に対応する数の前記レーザ射出指令を羅列して表示する請求項19に記載の制御装置。
【請求項22】
前記レーザ加工命令が、レーザ加工中のレーザ出射条件切替指令であり、
前記動作プログラムの教示において、前記レーザ加工命令を選択すると、前記レーザ射出指令のランピング回数の入力を要求し、要求に応じて入力されたランピング回数に対応する数の前記レーザ射出指令を羅列して表示する請求項19に記載の制御装置。
【請求項23】
前記異種レーザ光を射出させる複数の前記レーザ射出指令を実行順に羅列した1以上のテーブルを記憶し、
前記レーザ加工命令の選択において、いずれかの前記テーブルが選択され、選択された該テーブルが表示される請求項19に記載の制御装置。
【請求項24】
前記レーザ加工命令が、レーザ加工開始命令であり、
前記動作プログラムの教示において、前記レーザ加工命令を選択すると、選択された前記テーブルを表示するとともに、表示された該テーブルにおいて、前記レーザ射出指令のランピング回数の入力を要求し、要求に応じて入力されたランピング回数に対応する数の前記レーザ射出指令を前記テーブルに羅列して表示する請求項23に記載の制御装置。
【請求項25】
前記レーザ加工命令が、レーザ加工終了指令であり、
前記動作プログラムの教示において、前記レーザ加工命令を選択すると、選択された前記テーブルを表示するとともに、表示された該テーブルにおいて、前記レーザ射出指令のランピング回数の入力を要求し、要求に応じて入力されたランピング回数に対応する数の前記レーザ射出指令を前記テーブルに羅列して表示する請求項23に記載の制御装置。
【請求項26】
前記レーザ加工命令が、レーザ加工中のレーザ出射条件切替指令であり、
前記動作プログラムの教示において、前記レーザ加工命令を選択すると、選択された前記テーブルを表示するとともに、表示された該テーブルにおいて、前記レーザ射出指令のランピング回数の入力を要求し、要求に応じて入力されたランピング回数に対応する数の前記レーザ射出指令を前記テーブルに羅列して表示する請求項23に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ加工システムおよび制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットと、ロボットの先端に搭載されたレーザ光射出ツールと、レーザ発振器と、制御装置とを備えるレーザ加工システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
ロボットを動作させながらレーザ光射出ツールから射出されたレーザ光によりワークに切断、溶接等の加工を施す場合には、加工箇所毎に、ロボットの動作に合わせてレーザ光の出力等を切り替えていく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-086665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的なロボットプログラムによりレーザ加工を実施するには、レーザ光の出力および射出時間等の加工条件毎に1行の命令を記載した複数行に亘るプログラミングが必要となる。加工箇所毎に複数行に亘るプログラミングを、教示忘れあるいは実行順序の間違いを生ずることなく行うには相当の熟練を要する。
【0005】
特に、単一の加工箇所に対するレーザ光の照射のための複数行に亘る命令の間に、ロボットの動作あるいは信号入出力のための命令が挟まれることもあり、そのような場合には、プログラムが複雑となって正誤確認が困難になる。したがって、プログラミングに熟練を要さず、かつ、加工箇所毎のレーザ光の照射のためのプログラムを確認し易くすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、ロボットと、該ロボットに装着されたレーザ光射出ツールと、前記ロボットおよび前記レーザ光射出ツールを動作プログラムに基づいて制御する制御装置とを備え、前記レーザ光射出ツールが、2以上の異種レーザ光を独立して射出可能であり、該制御装置が、前記動作プログラム中の1つのレーザ加工命令により、前記レーザ光射出ツールに対し、前記異種レーザ光を同時に射出させる複数のレーザ射出指令を実行可能であるレーザ加工システムである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施形態に係るレーザ加工システムを示す全体構成図である。
図2図1のレーザ加工システムの動作の一例を示す図である。
図3図1のレーザ加工システムの制御装置による動作プログラムの教示例を示す図である。
図4図3の動作プログラムに補助命令として追加する命令のリストの表示例を示す図である。
図5図4においてレーザ加工開始命令が選択されたときに表示されるランピング回数設定画面例を示す図である。
図6図5においてランピング回数が設定されることにより表示されるレーザ加工開始命令の内容を示す図である。
図7図6において表示されたレーザ加工開始命令に、レーザ光の強度および射出時間を設定した動作プログラム例を示す図である。
図8】動作プログラムの参考例を示す図である。
図9図4においてレーザ加工開始命令が選択されたときに表示される動作プログラムの他の表示例を示す図である。
図10図9においてランピング回数が編集されることにより表示される動作プログラムの表示例を示す図である。
図11図7の動作プログラムにおけるレーザ加工開始命令を、予め記憶された複数のテーブルから選択する場合を説明する図である。
図12図11のテーブルの他の例を示す図である。
図13図12のテーブルにおいてランピング回数を編集した後のテーブルを示す図である。
図14図11のテーブルの他の例を示す図である。
図15図12のテーブルにおいて必要箇所だけ設定した後のテーブルを示す図である。
図16図1のレーザ加工システムの他の例を示す全体構成図である。
図17図7の動作プログラムの他の例を示す図である。
図18図17の動作プログラムによる図1のレーザ加工システムの動作の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の一実施形態に係るレーザ加工システム1および制御装置4について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るレーザ加工システム1は、図1に示されるように、ロボット2と、ロボット2に装着されたレーザ光射出ツール3と、ロボット2およびレーザ光射出ツール3を制御する制御装置4とを備えている。
【0009】
ロボット2は、図1に示す例では、垂直6軸多関節型のロボットであるが、レーザ光射出ツール3の3次元空間内における位置および姿勢を任意に移動することができるものであれば、その形式は任意のものを採用することができる。
レーザ光射出ツール3は、ロボット2の手首7先端に固定されたツール本体8,9と、ツール本体8,9に接続され、ツール本体8,9にレーザ光(異種レーザ光)を供給するレーザ発振器10,11とを備えている。
【0010】
図1に示す例では、レーザ光射出ツール3は2種類のツール本体8,9と、各ツール本体8,9にそれぞれ接続された2つのレーザ発振器10,11とを備えている。レーザ発振器10,11は、ロボットアーム5,6等に装着されていてもよいし、ロボット2の外部に固定されていてもよい。
【0011】
本実施形態においては、2種類のツール本体8,9は、予熱用のツール本体8と加工用のツール本体9である。予熱用のツール本体8には予熱用レーザ発振器10が接続され、加工用のツール本体9には加工用レーザ発振器11が接続されている。なお、図1においては、図示を容易にするために、2つのツール本体8,9は、相互に傾斜した光軸に沿ってワークW上の同一の加工箇所にレーザ光を照射するものを示しているが、これに代えて、2種類のレーザ光を同軸に照射するものを採用してもよい。
【0012】
本開示の一実施形態に係る制御装置4は、少なくとも1つのプロセッサ(図示略)と少なくとも1つの記憶装置(図示略)とを備え、記憶装置に記憶された動作プログラムをプロセッサが処理することにより、ロボット2およびレーザ光射出ツール3を制御する。
制御装置4は、操作者が把持して操作することにより、動作プログラムを教示する教示操作盤12を備えている。教示操作盤12には、操作者が操作して入力するためのキーパッド13と、教示された動作プログラム等を表示するためのモニタ14とが備えられている。
【0013】
レーザ加工システム1における動作プログラムは、実行順に記述された複数のプログラム行を備えている。各プログラム行には、ロボット2を動作させるための命令であるロボット動作指令が記述されている。下位プログラム行のロボット動作指令は、上位プログラム行のロボット動作指令の実行終了後に実行される。
【0014】
また、本実施形態においては、レーザ光射出ツール3を動作させるための命令であるレーザ加工命令は、ロボット動作指令の付属命令として、いずれかのロボット動作指令を記述するプログラム行に記述されている。
付属命令としてのレーザ加工命令は、付属先であるロボット動作指令の実行終了時を基準として実行される。
【0015】
レーザ加工命令は、複数のレーザ射出指令を含み、本実施形態においては、レーザ射出指令にはレーザ予熱指令(予熱用射出指令)およびレーザ加工指令(加工用射出指令)が含まれている。各レーザ射出指令には、レーザ光の射出条件として、レーザ光の強度およびレーザ光の射出時間が設定可能である。
【0016】
すなわち、本実施形態に係る制御装置4は、動作プログラム中の1つのレーザ加工命令によって、レーザ光射出ツール3に対し、射出条件の異なる複数のレーザ射出指令を実行する。これにより、ワークW上の1箇所の加工箇所に対して、複数のレーザ光を同時に照射することができる。
【0017】
各加工箇所においては、図2に示されるように、ロボット2の動作、予熱用レーザ光の射出および加工用レーザ光の射出が行われる。図2に示す例においては、ロボット動作指令2の実行終了後に、ロボット動作指令3に合わせてレーザ加工が実施される場合が示されている。
【0018】
ロボット動作指令2の終了時点t0から予熱用レーザ光の射出が開始され、予熱用レーザ光の射出開始から所定時間t1経過後に、加工用レーザ光が射出され、さらに、加工用レーザ光の射出開始から所定時間t2経過後に、ロボット動作指令3が実行される。
【0019】
次いで、ロボット2の加速中には、予熱用のツール本体8からの予熱用レーザ光および加工用のツール本体9からの加工用レーザ光が複数段階にわたってランピング、例えば、レーザ光の強度が段階的に増大させられる。そして、ロボット2が目標速度に達した後には、目標強度を有する予熱用レーザ光および加工用レーザ光が射出される。
【0020】
これにより、ロボット2が目標速度に達するまでの低い速度で動作しているときには、予熱用レーザ光および加工用レーザ光の強度を抑えて、ワークWに過度の熱エネルギが入射されてしまうことを防止している。その結果、レーザ加工開始位置近傍におけるビード幅の増大等を防止することができる。また、加工箇所において、加工用レーザ光と同時に予熱用レーザ光を照射することにより、スパッタの発生を低減し、加工品質を改善し、加工の高速化を図ることができる。
【0021】
本実施形態においては、制御装置4は、操作者による動作プログラムの教示において、図3に示されるように、まず、ロボット動作指令1~ロボット動作指令3を教示させ、モニタ14に、教示されたロボット動作指令および命令ボタンを表示する。操作者が、例えば、ロボット動作指令3においてレーザ加工を実施したい場合には、図3に示されるように、モニタ14に表示されているロボット動作指令2のプログラム行の末尾にカーソルを合わせる。
【0022】
そして、操作者がモニタ14に表示されている命令ボタンを押下することにより、制御装置4は、図4に示されるように、モニタ14に追加したい命令リストを表示させ、操作者に選択させる。操作者が命令リスト内の命令の内、レーザ加工開始命令を選択すると、制御装置4は、図5に示されるように、予熱用レーザ光のランピング回数および加工用レーザ光のランピング回数を入力させる。
【0023】
操作者が、各ランピング回数を入力してOKボタンを押下すると、制御装置4は、図6に示されるように、複数のレーザ射出指令を、ロボット動作指令2の後ろの同一プログラム行に実行順に羅列したレーザ加工開始命令(レーザ加工命令)を表示する。各レーザ射出指令は、レーザ光の射出条件を設定可能に表示されている。表示されたレーザ加工開始命令は、表示上は複数の行にわたっているが、ロボット動作指令2と同一のプログラム行「2:」内に含まれている。
【0024】
本実施形態においては、レーザ射出指令は、予熱用のツール本体8から予熱用レーザ光を射出させるレーザ予熱指令(予熱用射出指令)と、加工用のツール本体9から加工用レーザ光を射出させるレーザ加工指令(加工用射出指令)とを含んでいる。
各レーザ光の射出条件の1つであるレーザ光の強度は、レーザ予熱指令およびレーザ加工指令に付属するパラメータとして設定可能であり、例えば、図6に示されるようにモニタ14に「**」として表示される。
【0025】
もう1つの射出条件である射出時間は、レーザ予熱待機時間、レーザ予熱時間、レーザ加工待機時間およびレーザ加工時間に付属するパラメータとして設定可能である。例えば、図6に示されるようにモニタ14に「**」として表示される。
【0026】
レーザ予熱待機時間およびレーザ予熱時間は、それぞれレーザ予熱指令に付属することにより、付属したレーザ予熱指令において射出する予熱用レーザ光の射出時間を規定する。レーザ加工待機時間およびレーザ加工時間は、それぞれレーザ加工指令に付属することにより、付属したレーザ加工指令において射出する加工用レーザ光の射出時間を規定する。
【0027】
さらに、レーザ予熱待機時間は、付属したレーザ予熱指令による予熱用レーザ光の射出時間を規定するだけでなく、レーザ予熱待機時間に設定された射出時間だけ、ロボット動作指令の実行を待機させる。同様に、レーザ加工待機時間は、付属したレーザ加工指令による加工用レーザ光の射出時間を規定するだけでなく、レーザ加工待機時間に設定された射出時間だけ、ロボット動作指令の実行を待機させる。
レーザ予熱待機時間およびレーザ加工待機時間の両方が存在する場合には、長い方の待機時間だけロボット動作指令の実行が待機させられる。
【0028】
一方、レーザ予熱時間およびレーザ加工時間は、付属したレーザ予熱指令あるいはレーザ加工指令による射出時間を規定するだけであり、射出時間の終了を待たずに、異種の指令の実行を許容する。
【0029】
例えば、図5に示されるように、予熱用レーザ光のランピング回数を3回、加工用レーザ光のランピング回数を4回と入力する。この場合には、図6に示されるようにレーザ射出指令、レーザ予熱待機時間、レーザ予熱時間、レーザ加工待機時間およびレーザ加工時間が表示される。表示は、ロボット動作指令2と同一のプログラム行内に、4つのレーザ予熱指令および予熱時間と、5つのレーザ加工指令および加工時間とが羅列して追加される。
【0030】
最初のレーザ予熱指令に、レーザ予熱待機時間が付属し、次の2つのレーザ予熱指令に、それぞれレーザ予熱時間が付属し、最後のレーザ予熱指令には何も付属しない。また、最初のレーザ加工指令に、レーザ加工待機時間が付属し、次の3つのレーザ加工指令に、それぞれレーザ加工時間が付属し、最後のレーザ加工指令には何も付属しない。
【0031】
そして、この状態で、制御装置4は、各レーザ予熱指令および各レーザ加工指令に付属するパラメータであるレーザ光の強度および射出時間を、モニタ14に表示されている「**」の位置にそれぞれ入力させる。本実施形態においては、図7に示されるように、操作者は、例えば、4つのレーザ予熱指令には、最初から順に、100W、200W,300W,400Wを入力したものとする。また、操作者は、5つのレーザ加工指令には、最初から順に、250W,500W,750W,1000W,1250Wを入力したものとする。
【0032】
さらに、操作者は、レーザ予熱待機時間として0.5秒、レーザ加工待機時間として0.25秒、レーザ予熱時間として0.5秒、レーザ加工時間として0.25秒をそれぞれ入力したものとする。
【0033】
このようにして教示されたロボット2の動作プログラムが実行されることにより、ロボット2、予熱用のツール本体8および加工用のツール本体9は、以下のように動作する。
まず、動作プログラムが実行されると、先頭のプログラム行「1:」のロボット動作指令1が実行され、ロボット動作指令1の実行終了直後に、下位のプログラム行「2:」のロボット動作指令2が実行される。
【0034】
レーザ加工開始命令は、ロボット動作指令2の付属命令であるため、ロボット動作指令2が終了するまで実行されない。そして、ロボット動作指令2によるロボットの動作が終了すると、その時刻t0を基準として、レーザ加工開始命令の最初のレーザ予熱指令および最初のレーザ加工指令が実行される。
【0035】
最初のレーザ予熱指令は、100Wのレーザ光強度で、レーザ予熱待機時間に設定された0.5秒の射出時間にわたって、予熱用レーザ光を予熱用のツール本体8から射出させる。また、最初のレーザ加工指令は、250Wのレーザ光強度で、レーザ加工待機時間に設定された0.25秒の射出時間にわたって、加工用レーザ光を加工用のツール本体9から射出させる。
【0036】
このとき、ロボット動作指令3は、長い方のレーザ予熱待機時間によって、時刻t0から0.5秒間だけ待機させられる。また、レーザ加工指令については、時刻t0から、長い方のレーザ予熱待機時間である0.5秒と短い方のレーザ加工待機時間である0.25秒との差分である0.25秒間だけ待機させられる。
【0037】
レーザ射出指令は、原則として、同種の指令については、プログラム行内の配列順序に従って上位の指令の実行終了後に実行され、異種の指令については実行終了を待たずに実行される。
その結果、図2に示されるように、まず、ロボット動作指令2が終了した時刻t0から100Wの予熱用レーザ光が射出開始され、その0.25秒後に250Wの加工用レーザ光が射出開始され、さらに0.25秒後にロボット動作指令3が実行される。
【0038】
ロボット動作指令3が実行されると、ロボット2は、目標速度となるまで加速し、目標速度に達した後は、その速度で、例えば、ツール先端点を移動させる。
そして、ロボット動作指令3の実行時には、時刻t0から0.5秒が経過するので、2番目の200Wのレーザ予熱指令および2番目の500Wのレーザ加工指令が実行される。
【0039】
その後は、0.5秒毎にレーザ光の強度が300W,400Wと切り替えられて予熱用レーザ光が射出され、0.25秒毎に、レーザ光の強度が750W,1000W,1250Wと切り替えられて加工用レーザ光が射出される。これにより、ロボット動作指令3の実行開始から約1秒後には、ロボット2の速度が目標速度に達し、予熱用レーザ光および加工用レーザ光の強度が、それぞれ目標強度に到達する。目標強度に到達後、レーザ加工終了命令によって予熱用レーザ光および加工用レーザ光の射出を停止またはランピングを実行する。
【0040】
このように、本実施形態に係るレーザ加工システム1および制御装置4によれば、単一の加工箇所において実行される、異種のレーザ光の複数のレーザ射出指令を、動作プログラム中の1つのレーザ加工開始命令によって一纏めに記述することができる。
【0041】
これにより、まず、第1に、レーザ加工開始命令の選択と、各レーザ射出指令におけるランピング回数の指定とにより、必要な数のレーザ予熱指令およびレーザ加工指令を、射出条件を設定可能にモニタ14に表示することができる。したがって、各レーザ射出指令および射出条件を別々のプログラム行に記載していた従来の方法と比較して、操作者が動作プログラムの教示に熟練していなくても、教示忘れあるいは実行順序の間違い等の発生を防止することができる。
【0042】
第2に、1つの開口箇所において実行される、射出条件の異なる複数のレーザ射出指令を単一のプログラム行に含めることができる。これにより、動作プログラムに含まれる他の命令が1つの加工箇所において実行される複数のレーザ射出指令の間に混在してしまうことを防止し、動作プログラムの複雑化を防止することができる。その結果、加工箇所毎のレーザ光の照射のための動作プログラムの正誤確認を容易に確認することができる。
【0043】
例えば、ロボット動作指令のみならず、溶接用のガスの供給あるいは停止等のI/O命令などが、レーザ射出指令の間に配置されると、どのレーザ射出指令がどの加工箇所において実行されるのかを事後的に確認することが困難になる。本実施形態によれば、1つの加工箇所において実行される複数のレーザ予熱指令、複数のレーザ加工指令および複数の射出条件を1行に含めることができ、どの加工箇所において実行される指令であるかを容易に確認することができる。
【0044】
また、図8に示されるように、レーザ予熱プログラムおよびレーザ加工プログラムをロボット動作指令とは別タスクとして実行する場合も考えられる。この場合には、レーザ予熱プログラムおよびレーザ加工プログラムが別プログラムに分かれてしまうので、教示が面倒になるとともに、一度に確認できないという不都合がある。さらに、動作プログラム中に設定された待機時間を調整する場合に、それに合わせて、別プログラムであるレーザ予熱プログラムあるいはレーザ加工プログラム内の待機時間の調整も必要になる。
【0045】
これに対して、本開示の一実施形態によれば、ロボット動作指令と同一のプログラム行に、全ての予熱指令および加工指令およびレーザ光の射出条件を記述でき、教示作業を飛躍的に簡易にすることができるという利点がある。
【0046】
なお、本実施形態におけるレーザ光の強度、レーザ光の射出時間、待機時間およびランピング回数は一例であり、任意の値を設定することができる。また、予熱用と加工用の2つの異種レーザ光を照射する場合を例示したが、これに代えて、3種以上の異種レーザ光を照射する場合に適用してもよい。
【0047】
また、本実施形態においては、説明を簡単にするために、レーザ加工開始命令のみを例示して説明したが、これに加えて、レーザ加工終了指令を動作プログラムに含めてもよい。これにより、レーザ加工開始指令内の最後のレーザ予熱指令およびレーザ加工指令がレーザ加工終了指令によってOFFまたはランピングされる。
【0048】
例えば、ロボット2が減速して停止するまでレーザ加工を実施する場合に、ロボット2の減速動作に合わせて、予熱用レーザ光および加工用レーザ光をランピング、例えば、レーザ光の強度を段階的に減少させてもよい。この場合においても、ロボット動作指令と同一のプログラム行内に複数のレーザ予熱指令およびレーザ加工指令を羅列して記述することができる。
【0049】
これによっても、ロボット2が停止するまでの低い速度で動作しているときに、予熱用レーザ光および加工用レーザ光の強度を抑えて、ワークWに過度の熱エネルギが入射されてしまうことを防止できる。その結果、レーザ加工終了位置近傍におけるビード幅の増大等を防止することができる。
【0050】
また、レーザ加工中に予熱用レーザ光および加工用レーザ光の出射条件を切り替えるレーザ出射条件切替指令を動作プログラムに含めてもよい。この場合に、ロボット2の動作に合わせて、予熱用レーザ光および加工用レーザ光をランピング、例えば、レーザ光の強度を段階的に増加または減少させてもよい。この場合においても、ロボット動作指令と同一のプログラム行内に複数のレーザ予熱指令およびレーザ加工指令を羅列して記述することができる。
【0051】
また、本実施形態においては、レーザ加工開始命令を選択することにより表示されるランピング回数の入力により、図6のように、レーザ加工開始命令内に含まれる複数のレーザ射出指令を羅列した。これに代えて、図9に示されるように、レーザ加工開始命令が選択されると、ランピング回数が標準値(例えば、1回)に設定されたレーザ加工開始命令を表示し、レーザ加工開始命令内に含まれるランピング回数を編集可能にしてもよい。これにより、図10に示されるように、編集後のランピング回数に対応した数のレーザ射出指令を羅列したレーザ加工開始命令が表示されることにしてもよい。
【0052】
また、本実施形態においては、レーザ加工命令に含まれる複数のレーザ射出指令等を、ロボット動作指令を記述するプログラム行内に羅列した。これに代えて、図11に示されるように、異種レーザ光を射出させる複数のレーザ射出指令を実行順に羅列した複数のテーブルを記憶部に記憶し、ロボット動作指令の付属命令として、テーブルを呼び出して実行させるレーザ加工命令を記述してもよい。
【0053】
図11に示す例では、レーザ加工命令として、番号によって指定されたテーブルを読み出して実行するレーザ加工開始命令を示している。加工箇所等に応じて異なる射出条件が規定された複数のテーブルを番号等の識別子を付して記憶しておき、レーザ加工命令の選択において、いずれかのテーブルが選択され、選択されたテーブルがモニタ14に表示されることにしてもよい。
【0054】
また、ランピング回数が入力されることにより、入力されたランピング回数に応じた数のレーザ射出指令が羅列したテーブルが表示されてもよい。この場合には、ランピング回数、レーザ光強度および射出時間等を編集可能な単一のテーブルを記憶しておき、操作者に編集させることにすればよい。
【0055】
例えば、図12に示す例では、標準的なランピング回数「1」が規定されたテーブルが記憶されている。この場合には、レーザ予熱指令およびレーザ加工指令の数はそれぞれ2つである。操作者が、ランピング回数を「3」および「4」に変更することにより、図13に示されるように、テーブル内のレーザ予熱指令の数が4つ、レーザ加工指令の数が5つに更新される。
【0056】
また、ランピング回数を入力することなく、図14に示されるように、複数のレーザ射出指令および射出時間を設定可能な入力欄を有するテーブルを記憶していて、入力欄に入力された分のレーザ射出指令のみが有効になるようにしてもよい。例えば、図15に示す例では、3回分のランピング回数のレーザ予熱指令と4回分のランピング回数のレーザ加工指令とが設定されている。
【0057】
また、本実施形態においては、異種レーザ光として、予熱用レーザ光と加工用レーザ光とを例示したが、これに代えて、他の任意の異なる種類の複数のレーザ光を照射する場合に適用してもよい。
例えば、波長が異なる場合、あるいは、連続レーザ光とパルスレーザ光のように形態が異なる場合、あるいは、照射範囲、あるいは、スポット形状が異なる場合等に適用してもよい。
【0058】
また、本実施形態においては、レーザ光射出ツール3が、2種類のツール本体8,9と、各ツール本体8,9にそれぞれ接続された2つのレーザ発振器10,11とを備えている場合を例示した。これに代えて、図16に示されるように、2種類のツール本体8,9に、レーザ予熱指令を受けるインターフェイスとレーザ加工指令を受けるインターフェイスとを備える共通のレーザ発振器20が接続されてもよい。
【0059】
また、本実施形態においては、時刻t0から予熱用レーザ光を0.5秒間射出し、時刻t0の0.25秒後から加工用レーザ光を0.25秒間射出した。これに代えて、図17に示されるように、レーザ予熱待機時間を0.4秒、レーザ加工待機時間を0.9秒のように設定してもよい。これにより、図18に示されるように、時刻t0から加工用レーザ光を0.9秒間射出し、時刻t0の0.5秒後から予熱用レーザ光を0.4秒間射出することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 レーザ加工システム
2 ロボット
3 レーザ光射出ツール
4 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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