(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 36/14 20090101AFI20241203BHJP
H04W 36/24 20090101ALI20241203BHJP
H04W 84/06 20090101ALI20241203BHJP
H04W 36/18 20090101ALI20241203BHJP
【FI】
H04W36/14
H04W36/24
H04W84/06
H04W36/18
(21)【出願番号】P 2024074816
(22)【出願日】2024-05-02
【審査請求日】2024-05-02
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和5年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、「スマートモビリティプラットフォームの実現に向けたドローン・自動運転車の協調制御プラットフォームの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条第1項の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】足立 崇
(72)【発明者】
【氏名】志田 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】大河 亮介
【審査官】篠田 享佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-035866(JP,A)
【文献】特表2023-524461(JP,A)
【文献】特開2022-188454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4、6
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上の通信設備と通信衛星とのうちのいずれかを利用して飛行体と通信する通信部と、
前記飛行体の状態を特定するための状態情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記状態情報によって特定される前記飛行体の状態と、前記飛行体が飛行する飛行範囲における前記地上の通信設備の通信品質を示す地上通信品質マップとに基づいて、前記地上の通信設備
から前記通信衛星
に切り替える実行時刻を推定する推定部と、
前記取得部が取得した前記状態情報によって特定される前記飛行体の状態と、前記飛行範囲における前記通信衛星の通信品質を示す衛星通信品質マップとに基づいて、前記通信衛星と前記飛行体との間における通信品質を示す衛星通信品質値が予め定められた衛星閾値以上であるか否かを判定する判定部と、
前記推定部が推定した前記実行時刻から所定の期間前の時刻を現在時刻が経過した場合において、前記衛星通信品質値が前記衛星閾値以上ではないと前記判定部が判定した場合、前記衛星通信品質値が前記衛星閾値以上であると前記判定部が判定するまで、前記飛行体をホバリングさせるための処理を実行する飛行管理部と、
前記推定部が推定した前記実行時刻から
前記所定の期間前の時刻を現在時刻が経過し
、かつ、前記衛星通信品質値が前記衛星閾値以上であると前記判定部が判定したことを条件として
、前記通信衛
星との接続を確立させるための処理を実行する接続処理部と、
前記推定部が推定した前記実行時刻に基づいて、前記
通信衛星に切り替えるための処理を実行する切替処理部と、
を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記推定部は、前記取得部が取得した前記状態情報によって特定される前記飛行体の状態と、前記地上通信品質マップとに基づいて、前記飛行体が、前記地上の通信設備の通信品質を示す地上通信品質値が予め定められた第1地上閾値以上であるエリアから前記地上通信品質値が前記第1地上閾値未満であるエリアに入る時
刻を、前記実行時刻として推定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記接続処理部は、前記
地上の通信設備との接続が確立されている状態で、前記
通信衛星との接続を確立させるための処理を実行する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記情報処理装置は、
前記地上の通信設備から前記通信衛星への切り替えに対応する前記実行時刻から前記所定の期間前の時刻を現在時刻が経過した場合において、前記衛星通信品質値が前記衛星閾値以上ではないと前記判定部が判定した場合、前記地上の通信設備から前記通信衛星への切り替えができない旨を、前記飛行体を管理する管理者に通知する通知部
をさらに有し、
前記飛行管理部は、前記地上の通信設備から前記通信衛星への切り替えに対応する前記実行時刻から前記所定の期間前の時刻を現在時刻が経過した場合において、前記衛星通信品質値が前記衛星閾値以上ではないと前記判定部が判定した場合、前記飛行体をホバリングさせるための処理を実行する
、
請求項
1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記情報処理装置は、前記飛行管理部が前記飛行体をホバリングさせるための処理を実行した時点から所定の期間が経過するまでの間に前記衛星通信品質値が前記衛星閾値以上であると前記判定部が判定しなかった場合、前記地上の通信設備から前記通信衛星への切り替えができない旨を、前記飛行体を管理する管理者に通知する通知部をさらに有する、
請求項
1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記
飛行管理部は、前記接続処理部が前記通信衛星との接続を確立させるための処理を実行した場合、前記通信衛星との接続が確立されるまで、前記飛行体の飛行速度を、少なくとも当該処理が実行される前における前記飛行体の飛行速度よりも遅らせるための処理を実行す
る、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記
飛行管理部は、前記通信部が前記通信衛星を利用して前記飛行体と通信している状態において、前記通信衛星と前記飛行体との間における通信品質を示す衛星通信品質値が予め定められた衛星閾値未満になった場合、前記地上通信品質マップを参照し、前記地上の通信設備と接続が可能なエリアに前記飛行体を飛行させるための処理を実行す
る、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
地上の通信設備と通信衛星とのうちのいずれかを利用して飛行体と通信する通信部を有するコンピュータが実行する、
前記飛行体の状態を特定するための状態情報を取得するステップと、
取得した前記状態情報によって特定される前記飛行体の状態と、前記飛行体が飛行する飛行範囲における前記地上の通信設備の通信品質を示す地上通信品質マップとに基づいて、前記地上の通信設備
から前記通信衛星
に切り替える実行時刻を推定するステップと、
取得した前記状態情報によって特定される前記飛行体の状態と、前記飛行範囲における前記通信衛星の通信品質を示す衛星通信品質マップとに基づいて、前記通信衛星と前記飛行体との間における通信品質を示す衛星通信品質値が予め定められた衛星閾値以上であるか否かを判定するステップと、
推定した前記実行時刻から所定の期間前の時刻を現在時刻が経過した場合において、前記衛星通信品質値が前記衛星閾値以上ではないと判定した場合、前記衛星通信品質値が前記衛星閾値以上であると判定するまで、前記飛行体をホバリングさせるための処理を実行するステップと、
推定した前記実行時刻から
前記所定の期間前の時刻を現在時刻が経過し
、かつ、前記衛星通信品質値が前記衛星閾値以上であると判定したことを条件として
、前記通信衛
星との接続を確立させるための処理を実行するステップと、
推定した前記実行時刻に基づいて、前記
通信衛星に切り替えるための処理を実行するステップと、
を有する情報処理方法。
【請求項9】
地上の通信設備と通信衛星とのうちのいずれかを利用して飛行体と通信する通信部を有するコンピュータを、
前記飛行体の状態を特定するための状態情報を取得する取得部、
前記取得部が取得した前記状態情報によって特定される前記飛行体の状態と、前記飛行体が飛行する飛行範囲における前記地上の通信設備の通信品質を示す地上通信品質マップとに基づいて、前記地上の通信設備
から前記通信衛星
に切り替える実行時刻を推定する推定部、
前記取得部が取得した前記状態情報によって特定される前記飛行体の状態と、前記飛行範囲における前記通信衛星の通信品質を示す衛星通信品質マップとに基づいて、前記通信衛星と前記飛行体との間における通信品質を示す衛星通信品質値が予め定められた衛星閾値以上であるか否かを判定する判定部、
前記推定部が推定した前記実行時刻から所定の期間前の時刻を現在時刻が経過した場合において、前記衛星通信品質値が前記衛星閾値以上ではないと前記判定部が判定した場合、前記衛星通信品質値が前記衛星閾値以上であると前記判定部が判定するまで、前記飛行体をホバリングさせるための処理を実行する飛行管理部、
前記推定部が推定した前記実行時刻から
前記所定の期間前の時刻を現在時刻が経過し
、かつ、前記衛星通信品質値が前記衛星閾値以上であると前記判定部が判定したことを条件として
、前記通信衛
星との接続を確立させるための処理を実行する接続処理部、及び
前記推定部が推定した前記実行時刻に基づいて、前記
通信衛星に切り替えるための処理を実行する切替処理部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信機能を有する飛行体が知られている。特許文献1には、飛行体が地上の基地局を介した地上通信と通信衛星を介した衛星通信とを切り替える技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
飛行体における通信品質として継続的な通信が要求される場合、通信手段として地上通信よりも衛星通信を優先して利用した方が上記要求を満たしやすくなることが考えられる。しかしながら、地上通信の通信費用よりも衛星通信の通信費用の方が高い場合、通信手段として衛星通信よりも地上通信を優先して利用することが望ましい。また、衛星通信においては、地上通信よりも通信速度が遅く、通信に遅延が生じ得るため、地上通信を優先して利用することが望ましい。そのため、通信品質を維持しつつ、通信費用と通信の遅延とを低減させることが求められている。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、通信品質を維持しつつ、通信費用と通信の遅延の発生とを低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る情報処理装置は、地上の通信設備と通信衛星とのうちのいずれかを利用して飛行体と通信する通信部と、前記飛行体の状態を特定するための状態情報を取得する取得部と、前記取得部が取得した前記状態情報によって特定される前記飛行体の状態と、前記飛行体が飛行する飛行範囲における前記地上の通信設備の通信品質を示す地上通信品質マップとに基づいて、前記地上の通信設備と前記通信衛星とを切り替える実行時刻を推定する推定部と、前記推定部が推定した前記実行時刻から所定の期間前の時刻を現在時刻が経過したことを条件として、前記飛行体との通信に利用中の前記地上の通信設備と前記通信衛星とのうちのいずれか一方の設備とは異なる他方の設備との接続を確立させるための処理を実行する接続処理部と、前記推定部が推定した前記実行時刻に基づいて、前記他方の設備に切り替えるための処理を実行する切替処理部と、を有する。
【0007】
前記推定部は、前記取得部が取得した前記状態情報によって特定される前記飛行体の状態と、前記地上通信品質マップとに基づいて、前記飛行体が、前記地上の通信設備の通信品質を示す地上通信品質値が予め定められた第1地上閾値以上であるエリアから前記地上通信品質値が前記第1地上閾値未満であるエリアに入る時刻、及び、前記飛行体が、前記地上通信品質値が予め定められた第2地上閾値未満であるエリアから前記地上通信品質値が前記第2地上閾値以上であるエリアに入る時刻のうちのいずれかを、前記実行時刻として推定してもよい。
【0008】
前記接続処理部は、前記一方の設備との接続が確立されている状態で、前記他方の設備との接続を確立させるための処理を実行してもよい。
【0009】
前記情報処理装置は、前記取得部が取得した前記状態情報によって特定される前記飛行体の状態と、前記飛行範囲における前記通信衛星の通信品質を示す衛星通信品質マップとに基づいて、前記通信衛星と前記飛行体との間における通信品質を示す衛星通信品質値が予め定められた衛星閾値以上であるか否かを判定する判定部をさらに有してもよいし、前記接続処理部は、前記地上の通信設備から前記通信衛星への切り替えに対応する前記実行時刻から前記所定の期間前の時刻を現在時刻が経過し、かつ、前記衛星通信品質値が前記衛星閾値以上であると前記判定部が判定したことを条件として、前記他方の設備として前記通信衛星との接続を確立させるための処理を実行してもよい。
【0010】
前記情報処理装置は、前記地上の通信設備から前記通信衛星への切り替えに対応する前記実行時刻から前記所定の期間前の時刻を現在時刻が経過した場合において、前記衛星通信品質値が前記衛星閾値以上ではないと前記判定部が判定した場合、前記地上の通信設備から前記通信衛星への切り替えができない旨を、前記飛行体を管理する管理者に通知する通知部と、前記地上の通信設備から前記通信衛星への切り替えに対応する前記実行時刻から前記所定の期間前の時刻を現在時刻が経過した場合において、前記衛星通信品質値が前記衛星閾値以上ではないと前記判定部が判定した場合、前記飛行体をホバリングさせるための処理を実行する飛行管理部と、をさらに有してもよい。
【0011】
前記情報処理装置は、前記地上の通信設備から前記通信衛星への切り替えに対応する前記実行時刻から前記所定の期間前の時刻を現在時刻が経過した場合において、前記衛星通信品質値が前記衛星閾値以上ではないと前記判定部が判定した場合、前記衛星通信品質値が前記衛星閾値以上であると前記判定部が判定するまで、前記飛行体をホバリングさせるための処理を実行する飛行管理部をさらに有してもよい。
【0012】
前記情報処理装置は、前記飛行管理部が前記飛行体をホバリングさせるための処理を実行した時点から所定の期間が経過するまでの間に前記衛星通信品質値が前記衛星閾値以上であると前記判定部が判定しなかった場合、前記地上の通信設備から前記通信衛星への切り替えができない旨を、前記飛行体を管理する管理者に通知する通知部をさらに有してもよい。
【0013】
前記情報処理装置は、前記接続処理部が前記通信衛星との接続を確立させるための処理を実行した場合、前記通信衛星との接続が確立されるまで、前記飛行体の飛行速度を、少なくとも当該処理が実行される前における前記飛行体の飛行速度よりも遅らせるための処理を実行する飛行管理部をさらに有してもよい。
【0014】
前記情報処理装置は、前記通信部が前記通信衛星を利用して前記飛行体と通信している状態において、前記通信衛星と前記飛行体との間における通信品質を示す衛星通信品質値が予め定められた衛星閾値未満になった場合、前記地上通信品質マップを参照し、前記地上の通信設備と接続が可能なエリアに前記飛行体を飛行させるための処理を実行する飛行管理部をさらに有してもよい。
【0015】
本発明の第2の態様に係る情報処理方法は、地上の通信設備と通信衛星とのうちのいずれかを利用して飛行体と通信する通信部を有するコンピュータが実行する、前記飛行体の状態を特定するための状態情報を取得するステップと、取得した前記状態情報によって特定される前記飛行体の状態と、前記飛行体が飛行する飛行範囲における前記地上の通信設備の通信品質を示す地上通信品質マップとに基づいて、前記地上の通信設備と前記通信衛星とを切り替える実行時刻を推定するステップと、推定した前記実行時刻から所定の期間前の時刻を現在時刻が経過したことを条件として、前記飛行体との通信に利用中の前記地上の通信設備と前記通信衛星とうちのいずれか一方の設備とは異なる他方の設備との接続を確立させるための処理を実行するステップと、推定した前記実行時刻に基づいて、前記他方の設備に切り替えるための処理を実行するステップと、を有する。
【0016】
本発明の第3の態様に係るプログラムは、地上の通信設備と通信衛星とのうちのいずれかを利用して飛行体と通信する通信部を有するコンピュータを、前記飛行体の状態を特定するための状態情報を取得する取得部、前記取得部が取得した前記状態情報によって特定される前記飛行体の状態と、前記飛行体が飛行する飛行範囲における前記地上の通信設備の通信品質を示す地上通信品質マップとに基づいて、前記地上の通信設備と前記通信衛星とを切り替える実行時刻を推定する推定部、前記推定部が推定した前記実行時刻から所定の期間前の時刻を現在時刻が経過したことを条件として、前記飛行体との通信に利用中の前記地上の通信設備と前記通信衛星とうちのいずれか一方の設備とは異なる他方の設備との接続を確立させるための処理を実行する接続処理部、及び前記推定部が推定した前記実行時刻に基づいて、前記他方の設備に切り替えるための処理を実行する切替処理部、として機能させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、通信品質を維持しつつ、通信費用と通信の遅延の発生とを低減させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】各通信設備と飛行体との位置関係を模式的に表した図である。
【
図3】情報処理装置の機能構成を模式的に示す図である。
【
図4】基地局から通信衛星への切り替えを模式的に表した図である。
【
図5】通信衛星から基地局への切り替えを模式的に表した図である。
【
図6】情報処理装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[情報処理システムSの概要]
図1は、情報処理システムSの構成を示す図である。情報処理システムSは、通信事業者が提供する通信サービスにおける通信を管理するために用いられるシステムである。情報処理システムSは、基地局1と、通信衛星2と、飛行体3と、情報処理装置4とを有する。
【0020】
基地局1は、飛行体通信ネットワークにおける通信を中継するための地上の通信設備である。基地局1は、飛行体3と情報処理装置4との通信を中継する。
【0021】
通信衛星2は、地球の軌道上に存在する人工衛星である。通信衛星2は、衛星インターネットアクセスのサービスを提供する通信設備として用いられる。衛星インターネットアクセスのサービスは、例えば、当該サービスに加入した加入者に対して、衛星通信を提供するサービスである。衛星インターネットアクセスのサービスにおいては、例えば、従量課金制であり、送受信したデータ容量に応じて料金が発生する。通信衛星2は、飛行体3と情報処理装置4との通信を中継する。
【0022】
飛行体3は、無人で飛行する航空機である。飛行体3は、基地局1及び通信衛星2と通信するための通信機能を有する。飛行体3は、例えば、通信サービスにおける基地局として用いられる。
【0023】
情報処理装置4は、飛行体3との通信を管理する装置であり、例えば、サーバである。情報処理装置4は、基地局1及び通信衛星2と通信するための通信機能を有する。飛行体3及び情報処理装置4を管理する管理者は、例えば、通信サービスを提供する通信事業者であり、衛星インターネットアクセスのサービスの加入者である。情報処理装置4は、所定のエリアにおける基地局1の通信品質を示す地上通信品質マップを管理している。
【0024】
飛行体3と情報処理装置4との間における通信においては、基地局1と通信衛星2とのうちのいずれかが利用される。基地局1と通信衛星2とを比較すると、電波が届かないエリアは通信衛星2の方が少ないため、継続的な通信を実現させるためには、通信衛星2を優先して利用した方が良いように思える。しかしながら、通信衛星2を利用して通信する場合、送受信したデータ容量に応じて料金が発生するため、通信費用を低減させるためには、基地局1を優先して利用した方が良いことが考えられる。また、通信衛星2を利用して通信する場合、基地局1を利用して通信する場合よりも通信速度が遅くなり得るため、通信の遅延の発生を低減させるためには、基地局1を優先して利用した方が良いことが考えられる。そこで、情報処理システムSは、飛行体3が基地局1の電波が届くエリアに存在する場合、基地局1を利用して飛行体3と情報処理装置4との間において通信させ、飛行体3が基地局1の電波が届かないエリアに存在する場合、通信衛星2を利用して飛行体3と情報処理装置4との間において通信させる。
【0025】
図2は、各通信設備と飛行体3との位置関係を模式的に表した図である。
図2(a)に示す例においては、飛行体3が、矢印で示すように、基地局1aから離れる方向に向かって飛行している。電波エリアA1は、基地局1aの電波が届くエリアである。情報処理システムSは、飛行体3が位置L1に存在する場合、基地局1aを利用して飛行体3と情報処理装置4との間において通信させる。情報処理システムSは、飛行体3が位置L3に存在する場合、通信衛星2を利用して飛行体3と情報処理装置4との間において通信させる。
【0026】
ここで、飛行体3が通信衛星2との接続を確立するためには、数秒又は数十秒の時間を要するため、飛行体3が位置L3を通過したとき(電波エリアA1の外に出るとき)に飛行体3が通信衛星2との接続を開始すると、当該接続が確立されるまで通信できなくなってしまう。そこで、情報処理システムSは、飛行体3が位置L3を通過する前に、飛行体3に対して通信衛星2との接続を確立させる。
【0027】
情報処理システムSは、例えば、飛行体3が位置L3を通過する前として、飛行体3が位置L2に通過したときに飛行体3に対して通信衛星2との接続を確立させる。そして、情報処理システムSは、飛行体3が位置L3を通過したときに、基地局1aから通信衛星2に切り替えて飛行体3と情報処理装置4との間において通信させる。
【0028】
続いて、
図2(b)に示す例においては、飛行体3が、矢印で示すように、基地局1bに近づく方向に向かって飛行している。電波エリアA2は、基地局1bの電波が届くエリアである。情報処理システムSは、飛行体3が位置L4に存在する場合、通信衛星2を利用して飛行体3と情報処理装置4との間において通信させる。情報処理システムSは、飛行体3が位置L5を通過したときに飛行体3に対して基地局1bとの接続を確立させる。そして、情報処理システムSは、飛行体3が位置L6を通過したときに、通信衛星2から基地局1bに切り替えて飛行体3と情報処理装置4との間において通信させる。
【0029】
このようにすることで、情報処理システムSは、通信品質を維持しつつ、通信費用と通信の遅延の発生とを低減させることができる。
以下、情報処理装置4の構成について説明する。
【0030】
[情報処理装置4の構成]
図3は、情報処理装置4の機能構成を模式的に示す図である。情報処理装置4は通信部41と、記憶部42と、制御部43とを備える。
図3において、矢印は主なデータの流れを示しており、
図3に示していないデータの流れがあってもよい。
図3において、各機能ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、
図3に示す機能ブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。機能ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてもよい。
【0031】
通信部41は、ネットワークに接続するための通信インターフェースであり、外部の装置とデータを送受信するための通信コントローラを有する。通信部41は、基地局1と通信衛星2とのうちのいずれかを利用して飛行体3と通信する。通信部41は、例えば、ネットワークにトンネルを構築し、構築したトンネルを介して飛行体3と通信する。トンネルには、基地局1用のトンネルと、通信衛星2用のトンネルとが含まれ、通信部41は、利用する通信設備に応じたトンネルを構築して飛行体3と通信する。
【0032】
なお、情報処理装置4がトンネルを構築する場合に限らず、外部のサーバがトンネルを構築してもよい。この場合、外部のサーバが、情報処理装置4からの要求に応じてトンネルを構築し、情報処理装置4は、外部のサーバ及び外部のサーバが構築したトンネルを介して、飛行体3と通信する。
【0033】
記憶部42は、情報処理装置4を実現するコンピュータのBIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)や情報処理装置4の作業領域となるRAM(Random Access Memory)、OS(Operating System)やアプリケーションプログラム、当該アプリケーションプログラムの実行時に参照される種々の情報を格納するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置である。
【0034】
記憶部42には、地上通信品質マップが記憶されている。地上通信品質マップは、例えば、基地局1の通信品質を示す地上通信品質値であって、値が異なる地上通信品質値ごとに当該地上通信品質値のエリアが示された情報である。
【0035】
制御部43は、情報処理装置4のCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部42に記憶されたプログラムを実行することによって、取得部431、推定部432、接続処理部433、切替処理部434、飛行管理部435、判定部436及び通知部437として機能する。
【0036】
(利用設備から未利用設備への切り替え)
まず、情報処理装置4が、利用設備から未利用設備に切り替えるために実行する処理について説明する。利用設備は、飛行体3と情報処理装置4との間における通信に利用中の基地局1と通信衛星2とのうちのいずれか一方の設備である。未利用設備は、飛行体3との通信に利用中の基地局1と通信衛星2とのうちの利用設備とは異なる他方の設備である。
【0037】
取得部431は、飛行体3の状態を特定するための状態情報を取得する。飛行体3の状態は、例えば、飛行体3が存在する位置、飛行体3が飛行している方向、飛行体3が飛行している速度等である。状態情報には、例えば、飛行体3が飛行する飛行ルートの飛行計画が含まれる。飛行計画には、飛行ルート上の地点と、当該地点を通過する予定の時刻とが関連付けられている。取得部431は、例えば、飛行体3を管理する管理担当者から飛行体3の飛行計画を取得する。
【0038】
状態情報には、飛行体3が測定した測定情報が含まれてもよい。測定情報は、例えば、飛行体3が測定した位置(飛行体3が存在する位置)、飛行体3が飛行している方向、飛行体3が飛行している速度等を示す情報である。取得部431は、例えば、所定の間隔で、飛行体3から測定情報を取得する。
【0039】
詳細については後述するが、推定部432は、取得部431が取得した状態情報によって特定される飛行体3の状態と、飛行体3が飛行する飛行範囲における基地局1の通信品質を示す地上通信品質マップとに基づいて、利用設備から未利用設備に切り替える実行時刻を推定する。
【0040】
接続処理部433は、推定部432が推定した実行時刻から接続期間前の時刻を現在時刻が経過したことを条件として、未利用設備との接続を確立させるための確立処理を実行する。接続期間は、例えば、飛行体3が未利用設備との接続を確立するまでに要する期間として定められた期間である。接続期間は、基地局1と通信衛星2とにおいて共通の期間であってもよいし、基地局1と通信衛星2とにおいてそれぞれ異なる期間であってもよい。
【0041】
具体的には、接続処理部433は、確立処理として、未利用設備との接続を確立させるための接続要求を飛行体3に送信する。飛行体3は、情報処理装置4から接続要求を取得すると、未利用設備への接続を確立させる。また、接続処理部433は、確立処理として、ネットワークにおいて未利用設備用のトンネル(基地局1用のトンネル及び通信衛星2用のトンネルのうちのいずれか)を構築させる。
【0042】
接続処理部433は、利用設備との接続が確立されている状態で、未利用設備との接続を確立させるための確立処理を実行する。接続処理部433は、例えば、利用設備用のトンネルを用いて飛行体3と通信部41とが通信している状態で、飛行体3に未利用設備への接続を確立させ、ネットワークにおいて未利用設備用のトンネルを構築させる。このようにすることで、情報処理装置4は、未利用設備への接続から利用設備と未利用設備とを切り替えるまでの間に一時的に通信できなくなる事態の発生を防ぐことができる。
【0043】
切替処理部434は、推定部432が推定した実行時刻に基づいて、利用設備から未利用設備に切り替えるための切替処理を実行する。具体的には、切替処理部434は、切替処理として、接続を確立させた未利用設備を利用設備として飛行体3に利用させるための切替要求を飛行体3に送信する。飛行体3は、情報処理装置4から切替要求を取得すると、接続を確立させた未利用設備を利用設備として利用して情報処理装置4と通信する。また、切替処理部434は、切替処理として、飛行体3と通信するために用いるトンネルを、利用設備用のトンネルから未利用設備用のトンネルに切り替える。
【0044】
(基地局1から通信衛星2への切り替え)
続いて、情報処理装置4が、基地局1から通信衛星2に切り替えるために実行する処理について説明する。
【0045】
推定部432は、取得部431が取得した状態情報によって特定される飛行体3の状態と、飛行体3が飛行する飛行範囲における基地局1の通信品質を示す地上通信品質マップとに基づいて、基地局1から通信衛星2に切り替える実行時刻を推定する。具体的には、推定部432は、取得部431が取得した状態情報によって特定される飛行体3の状態と、地上通信品質マップとに基づいて、飛行体3が、基地局1の通信品質を示す地上通信品質値が第1地上閾値以上であるエリアから地上通信品質値が第1地上閾値未満であるエリアに入る時刻を、実行時刻として推定する。第1地上閾値は、予め定められた数値であって、基地局1から通信衛星2への切り替えを判断するための閾値である。
【0046】
推定部432は、例えば、地上通信品質マップを参照し、地上通信品質値が第1地上閾値以上であるエリアに存在する飛行体3が、状態情報に含まれる飛行体3の飛行計画において地上通信品質値が第1地上閾値未満であるエリアに入る飛行ルート上の地点に関連付けられている時刻を、実行時刻として推定する。状態情報に飛行体3の測定情報が含まれている場合、推定部432は、地上通信品質マップを参照し、飛行体3の測定情報によって示される方向で飛行している飛行体3が、地上通信品質値が第1地上閾値未満であるエリアに入る地点を通過する時刻を、飛行体3の測定情報によって示される飛行体3の位置及び飛行体3の速度に基づいて算出することにより、実行時刻を推定してもよい。
【0047】
状態情報に飛行体3の飛行計画と飛行体3の測定情報との両方が含まれている場合、推定部432は、飛行体3の飛行計画と、飛行体3の測定情報と、地上通信品質マップとに基づいて、実行時刻を推定してもよい。推定部432は、例えば、飛行体3の飛行計画と地上通信品質マップとに基づいて実行時刻を推定し、飛行体3の飛行計画において飛行体3の測定情報に含まれる飛行体3の位置(飛行体3が存在する現在位置)に関連付けられている時刻を、当該位置が測定された時刻で減算し、実行時刻に減算した時間を加算することにより、実行時刻を補正する。
【0048】
接続処理部433は、推定部432が推定した実行時刻から接続期間前の時刻を現在時刻が経過したことを条件として、通信衛星2との接続を確立させるための確立処理を実行する。具体的には、接続処理部433は、確立処理として、通信衛星2との接続を確立させるための接続要求を飛行体3に送信する。飛行体3は、情報処理装置4から接続要求を取得すると、通信衛星2への接続を確立させる。また、接続処理部433は、確立処理として、ネットワークにおいて通信衛星2用のトンネルを構築させる。
【0049】
情報処理装置4は、飛行体3において通信衛星2との接続が確立するまで、飛行体3の飛行を制御してもよい。具体的には、飛行管理部435は、接続処理部433が通信衛星2に対応する確立処理を実行した場合、通信衛星2との接続が確立されるまで、飛行体3の飛行速度を、少なくとも当該確立処理が実行される前における飛行体3の飛行速度よりも遅らせるための処理を実行する。
【0050】
飛行管理部435は、例えば、接続要求とともに、通信衛星2との接続が確立されるまで減速又はホバリングさせるための飛行要求を飛行体3に送信する。飛行体3は、情報処理装置4から飛行要求を取得すると、通信衛星2との接続が確立するまで減速又はホバリングする。なお、飛行体3は、情報処理装置4から接続要求を取得した場合に、通信衛星2との接続が確立するまで減速又はホバリングしてもよい。このようにすることで、情報処理装置4は、飛行体3が通信衛星2との接続が確立される前に基地局1から通信衛星2に切り替えてしまう事態の発生を低減させることができる。
【0051】
ここで、衛星インターネットアクセスのサービスにおいては、地球の軌道に沿って移動する複数の通信衛星2によって提供されるため、飛行体3が受信する通信衛星2の電波が一時的に弱くなる場合がある。そこで、情報処理装置4は、飛行体3における通信衛星2の通信品質を考慮して、確立処理を実行してもよい。具体的には、情報処理装置4は、以下の2つのステップを実行することにより、通信衛星2の通信品質を考慮して確立処理を実行する。
【0052】
第1のステップとして、判定部436は、取得部431が取得した状態情報によって特定される飛行体3の状態と、飛行体3の飛行範囲における通信衛星2の通信品質を示す衛星通信品質マップとに基づいて、通信衛星2と飛行体3との間における通信品質を示す衛星通信品質値(例えば、飛行体3が受信する通信衛星2の電波の強度)が予め定められた衛星閾値以上であるか否かを判定する。衛星閾値は、予め定められた数値であって、通信衛星2に接続するか否かを判断するための閾値である。
【0053】
衛星通信品質マップは、所定のシミュレータが出力した情報である。所定のシミュレータは、通信衛星2の移動に応じて変化する当該通信衛星2と通信可能な範囲をシミュレーションするプログラムであり、例えば、範囲を示す情報と時刻とが入力されると、当該範囲及び当該時刻において通信衛星2と通信可能な範囲を示す情報を出力する。判定部436は、例えば、所定のシミュレータに飛行体3の飛行範囲を示す情報と実行時刻から接続期間前の時刻とを入力し、当該入力に応じて所定のシミュレータが出力した衛星通信品質マップを用いて、衛星通信品質値が衛星閾値以上であるか否かを判定する。
【0054】
なお、取得部431が取得した状態情報には、飛行体3が測定した衛星通信品質値が含まれており、判定部436は、実行時刻から接続期間前の時刻を現在時刻が経過した後に飛行体3が測定した衛星通信品質値を用いて、当該衛星通信品質値が衛星閾値以上であるか否かを判定してもよい。
【0055】
第2のステップとして、接続処理部433は、基地局1から通信衛星2への切り替えに対応する実行時刻から接続期間前の時刻を現在時刻が経過し、かつ、衛星通信品質値が衛星閾値以上であると判定部436が判定したことを条件として、確立処理を実行する。このようにすることで、情報処理装置4は、飛行体3が通信衛星2と接続できない事態の発生を防ぐことができる。
【0056】
なお、実行時刻から接続期間前の時刻を現在時刻が経過した場合において、衛星通信品質値が衛星閾値以上ではないと判定部436が判定した場合、通知部437は、基地局1から通信衛星2への切り替えができない旨を、飛行体3を管理する管理担当者に通知してもよい。また、飛行管理部435は、実行時刻から接続期間前の時刻を現在時刻が経過した場合において、衛星通信品質値が衛星閾値以上ではないと判定部436が判定した場合、飛行体3をホバリングさせるための処理を実行してもよい。飛行管理部435は、例えば、飛行体3をホバリングさせるための要求を飛行体3に送信することにより、飛行体3をホバリングさせる。このようにすることで、情報処理装置4は、基地局1から通信衛星2に切り替えることができない状況への対応を、飛行体3の管理担当者に委ねることができる。
【0057】
上記のとおり、衛星インターネットアクセスのサービスにおいては、地球の軌道に沿って飛行する複数の通信衛星2によって提供されるため、飛行体3が受信する通信衛星2の電波が一時的に弱くなった場合であっても、しばらくすると飛行体3が受信する通信衛星2の電波が強くなり得る。そこで、情報処理装置4は、実行時刻から接続期間前の時刻を現在時刻が経過した時点において飛行体3が受信する通信衛星2の電波が弱い場合、飛行体3が受信する通信衛星2の電波が強くなるまで飛行体3をホバリングさせてもよい。
【0058】
具体的には、飛行管理部435は、実行時刻から接続期間前の時刻を現在時刻が経過した場合において、衛星通信品質値が衛星閾値以上ではないと判定部436が判定した場合、衛星通信品質値が衛星閾値以上であると判定部436が判定するまで、飛行体3をホバリングさせるための処理を実行する。
【0059】
例えば、まず、飛行管理部435は、実行時刻から接続期間前の時刻を現在時刻が経過した場合において、衛星通信品質値が衛星閾値以上ではないと判定部436が判定した場合、飛行体3をホバリングさせるための要求を飛行体3に送信することにより、飛行体3をホバリングさせる。そして、接続処理部433は、衛星通信品質値が衛星閾値以上であると判定部436が判定した場合に、確立処理を実行する。また、飛行管理部435は、飛行(移動)の再開させるための要求を飛行体3に送信することにより、飛行体3の飛行を再開させる。このようにすることで、情報処理装置4は、飛行体3が基地局1及び通信衛星2のいずれを利用しても通信できない事態の発生を防ぐことができる。
【0060】
なお、通知部437は、飛行管理部435が飛行体3をホバリングさせるための処理を実行した時点から待機期間が経過するまでの間に衛星通信品質値が衛星閾値以上であると判定部436が判定しなかった場合、基地局1から通信衛星2への切り替えができない旨を、飛行体3の管理担当者に通知してもよい。待機期間は、通信衛星2の電波の強度が弱くなってから強くなるまでの期間として定められた期間である。このようにすることで、情報処理装置4は、基地局1から通信衛星2に切り替えることができない状況への対応を、飛行体3の管理担当者に委ねることができる。
【0061】
切替処理部434は、推定部432が推定した実行時刻に基づいて、基地局1から通信衛星2に切り替えるための切替処理を実行する。具体的には、切替処理部434は、切替処理として、接続を確立させた通信衛星2を利用設備として飛行体3に利用させるための切替要求を飛行体3に送信する。飛行体3は、情報処理装置4から切替要求を取得すると、接続を確立させた通信衛星2を利用設備として利用して情報処理装置4と通信する。また、切替処理部434は、切替処理として、飛行体3と通信するために用いるトンネルを、基地局1用のトンネルから通信衛星2用のトンネルに切り替える。
【0062】
図4は、基地局1から通信衛星2への切り替えを模式的に表した図である。
図4(a)に示す例において、飛行体3が、矢印で示すように、基地局1cから離れる方向に向かって飛行している。
図4(b)は、飛行体3が基地局1又は通信衛星2から受信する電波
を用いた通信の品質値を示すグラフである。
図4(b)に示すグラフの縦軸は、品質値を示し、横軸は時間を示す。なお、
図4(b)に示すグラフの
横軸は、飛行体3の位置であってもよい。値E1は、基地局1c
に対応する通信の品質値を示す。値E2は、通信衛星2
に対応する通信の品質値を示す。閾値T1は、第1地上閾値を示す。時刻C1は、実行時刻から接続期間前の時刻を示す。時刻C2は、実行時刻を示す。
【0063】
この場合において、接続処理部433は、現在時刻が時刻C1を経過したときに、通信衛星2への確立処理を実行する。
図4(b)の値E2が示すように、通信衛星2の電波の品質値が、時刻C1を経過した後に、飛行体3が通信衛星2との接続を確立させたことによって上昇したことが確認できる。そして、切替処理部434は、現在時刻が時刻C2を経過したときに、基地局1cから通信衛星2への切替処理を実行する。
【0064】
情報処理装置4は、基地局1から通信衛星2に切り替えた後において、飛行体3が受信する通信衛星2の電波が弱くなった場合、飛行体3との通信手段を通信衛星2から基地局1に切り替えるための処理を実行してもよい。具体的には、まず、飛行管理部435は、通信部41が通信衛星2を利用して飛行体3と通信している状態において、通信衛星2と飛行体3との間における通信品質を示す衛星通信品質値が衛星閾値未満になった場合、地上通信品質マップを参照し、基地局1と接続が可能なエリアに飛行体3を飛行させるための処理を実行する。
【0065】
飛行管理部435は、例えば、地上通信品質マップを参照し、飛行体3の現在位置から基地局1の地上通信品質値が地上閾値以上になる地点を特定し、特定した地点を示す情報を飛行体3に送信することにより、飛行体3を当該地点に飛行させる。そして、切替処理部434は、接続処理部433が基地局1との接続を飛行体3が確立させた後に、通信衛星2から基地局1に切り替えるための処理を実行する。このようにすることで、情報処理装置4は、飛行体3と通信できない期間を短くすることができる。
【0066】
上記において、情報処理装置4が、飛行体3と通信衛星2との間における通信品質に基づいて飛行体3を制御する例を説明したが、これに限らない。例えば、飛行計画において、飛行体3と通信衛星2との間における通信品質が考慮された飛行ルートが設定されてもよい。
【0067】
(通信衛星2から基地局1への切り替え)
続いて、情報処理装置4が、通信衛星2から基地局1に切り替えるために実行する処理について説明する。
【0068】
推定部432は、取得部431が取得した状態情報によって特定される飛行体3の状態と、飛行体3が飛行する飛行範囲における基地局1の通信品質を示す地上通信品質マップとに基づいて、通信衛星2から基地局1に切り替える実行時刻を推定する。具体的には、推定部432は、取得部431が取得した状態情報によって特定される飛行体3の状態と、地上通信品質マップとに基づいて、飛行体3が、地上通信品質値が第2地上閾値未満であるエリアから地上通信品質値が第2地上閾値以上であるエリアに入る時刻を、実行時刻として推定する。第2地上閾値は、予め定められた数値であって、通信衛星2から基地局1への切り替えを判断するための閾値である。第1地上閾値と第2地上閾値とは、同じ数値であってもよいし、異なる数値であってもよい。
【0069】
接続処理部433は、推定部432が推定した実行時刻から接続期間前の時刻を現在時刻が経過したことを条件として、基地局1との接続を確立させるための確立処理を実行する。具体的には、接続処理部433は、確立処理として、基地局1との接続を確立させるための接続要求を飛行体3に送信する。飛行体3は、情報処理装置4から接続要求を取得すると、基地局1への接続を確立させる。なお、飛行体3は、基地局1の電波を受信したことを契機として、基地局1への接続を確立させてもよい。また、接続処理部433は、確立処理として、ネットワークにおいて基地局1用のトンネルを構築させる。
【0070】
切替処理部434は、推定部432が推定した実行時刻に基づいて、通信衛星2から基地局1に切り替えるための切替処理を実行する。切替処理部434は、切替処理として、接続を確立させた基地局1を利用設備として飛行体3に利用させるための切替要求を飛行体3に送信する。飛行体3は、情報処理装置4から切替要求を取得すると、接続を確立させた基地局1を利用設備として利用して情報処理装置4と通信する。また、切替処理部434は、切替処理として、飛行体3と通信するために用いるトンネルを、通信衛星2用のトンネルから基地局1用のトンネルに切り替える。
【0071】
図5は、通信衛星2から基地局1への切り替えを模式的に表した図である。
図5(a)に示す例において、飛行体3が、矢印で示すように、基地局1dに近づく方向に向かって飛行している。
図5(b)は、飛行体3が基地局1又は通信衛星2から受信する電波
を用いた通信の品質値を示すグラフである。
図5(b)に示すグラフの縦軸は、品質値を示し、横軸は時間を示す。なお、
図5(b)に示すグラフの
横軸は、飛行体3の位置であってもよい。値E2は、通信衛星2
に対応する通信の品質値を示す。値E3は、基地局1d
に対応する通信の品質値を示す。閾値T2は、第2地上閾値を示す。時刻C3は、実行時刻から接続期間前の時刻を示す。時刻C4は、実行時刻を示す。時刻C5は、切断時刻を示す。
【0072】
この場合において、接続処理部433は、現在時刻が時刻C3を経過したときに、基地局1dへの確立処理を実行する。
図5(b)の値E3が示すように、基地局1dの電波の品質値が、時刻C3を経過した後に、飛行体3が基地局1dとの接続を確立させたことによって上昇したことが確認できる。そして、切替処理部434は、現在時刻が時刻C4を経過したときに、通信衛星2から基地局1dへの切替処理を実行する。
【0073】
また、接続処理部433は、現在時刻が時刻C5を経過したときに、通信衛星2との通信を切断するための切断処理を実行する。接続処理部433は、切断処理として、通信衛星2との通信の切断の要求を飛行体3に送信することにより、飛行体3に通信衛星2との通信を切断させる。また、接続処理部433は、通信衛星2用のトンネルを削除させる。このようにすることで、情報処理装置4は、通信手段として利用されていない通信衛星2に対してデータが送受信されることよって料金が増えてしまう事態の発生を防ぐことができる。
【0074】
[情報処理装置4の処理]
続いて、情報処理装置4が実行する処理の流れについて説明する。
図6は、情報処理装置4の処理の流れを示すフローチャートである。本処理は、取得部431が、飛行体3の状態情報を取得したことを契機として開始する(S1)。
【0075】
推定部432は、取得部431が取得した状態情報によって特定される飛行体3の状態と、記憶部42に記憶されている地上通信品質マップとに基づいて、利用設備から未利用設備に切り替える実行時刻を推定する(S2)。接続処理部433は、推定部432が推定した実行時刻から接続期間前の時刻である接続時刻を現在時刻が経過したか否かを判定する(S3)。接続処理部433は、接続時刻を現在時刻が経過していないと判定した場合(S3においてNOの場合)、処理をS3の前に戻す。
【0076】
一方、接続処理部433は、接続時刻を現在時刻が経過したと判定した場合(S3においてYESの場合)、未利用設備との接続を確立させるための確立処理を実行する(S4)。切替処理部434は、推定部432が推定した実行時刻を現在時刻が経過したか否かを判定する(S5)。切替処理部434は、実行時刻を現在時刻が経過していないと判定した場合(S5においてNOの場合)、処理をS5の前に戻す。
【0077】
一方、切替処理部434は、実行時刻を現在時刻が経過したと判定した場合(S5においてYESの場合)、利用設備から未利用設備に切り替えるための切替処理を実行する(S6)。
【0078】
[本実施の形態における効果]
以上説明したとおり、情報処理装置4は、飛行体の状態と地上通信品質マップとに基づいて、利用設備から未利用設備に切り替える実行時刻を推定し、推定した実行時刻から接続期間前の時刻を現在時刻が経過したことを条件として、未利用設備との接続を確立させるための処理を実行し、推定した実行時刻に基づいて、未利用設備に切り替えるための処理を実行する。このようにすることで、情報処理装置4は、通信品質を維持しつつ、通信費用と通信の遅延の発生とを低減させることができる。
【0079】
なお、本発明により、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献することが可能となる。
【0080】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0081】
1 基地局
2 通信衛星
3 飛行体
4 情報処理装置
41 通信部
42 記憶部
43 制御部
431 取得部
432 推定部
433 接続処理部
434 切替処理部
435 飛行管理部
436 判定部
437 通知部
S 情報処理システム
【要約】 (修正有)
【課題】通信品質を維持しつつ、通信費用と通信の遅延の発生とを低減させる情報処理装置、方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】飛行体における情報処理装置4は、地上の通信設備と通信衛星とのうちの何れかを利用して飛行体と通信する通信部41、飛行体の状態を特定するための状態情報を取得する取得部431、取得部が取得した状態情報によって特定される飛行体の状態と、地上通信品質マップとに基づいて、地上の通信設備と通信衛星とを切り替える実行時刻を推定する推定部432、推定部が推定した実行時刻から所定の期間前の時刻を現在時刻が経過したことを条件として、飛行体との通信に利用中の地上の通信設備と通信衛星とのうちのいずれか一方の設備とは異なる他方の設備との接続を確立させるための処理を実行する接続処理部433及び推定部が推定した実行時刻に基づいて、他方の設備に切り替えるための処理を実行する切替処理部434を有する。
【選択図】
図3