(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】球状粒子材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 2/16 20060101AFI20241203BHJP
C01F 7/025 20220101ALI20241203BHJP
【FI】
B01J2/16
C01F7/025
(21)【出願番号】P 2024508176
(86)(22)【出願日】2023-03-14
(86)【国際出願番号】 JP2023009789
(87)【国際公開番号】W WO2023176812
(87)【国際公開日】2023-09-21
【審査請求日】2024-07-24
(31)【優先権主張番号】P 2022040818
(32)【優先日】2022-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501402730
【氏名又は名称】株式会社アドマテックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松江 郁弥
(72)【発明者】
【氏名】中村 展歩
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-038125(JP,A)
【文献】特開2004-037159(JP,A)
【文献】特開2016-073919(JP,A)
【文献】特開2019-182714(JP,A)
【文献】特開2013-035751(JP,A)
【文献】国際公開第2014/142019(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/065387(WO,A1)
【文献】島田 泰拓 他,定容積せん断試験装置を用いた粉体流動性の新しい評価法,粉体工学会誌,2017年,Vol.54,P.90-96
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 7/00 - 7/788
B01J 2/00 - 2/30
G01N 11/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナを50質量%以上含有する無機材料からなる原料粒子材料を調製する原料粒子材料調製工程と、
前記原料粒子材料を高温雰囲気下に投入して溶融させた後に急冷し、体積平均粒径が1μm以上10μm未満の球状粒子材料を調製する球状化工程と、
を有し、
前記原料粒子材料調製工程は、前記無機材料からなり前記原料粒子材料よりも体積平均粒径が大きい球状の粗原料粒子材料に対し、
原料粒子材料全体の質量を基準として粒径が1μmより小さい粒子の含有量が2%以上、且つ、球形度が0.9以下になるように粉砕することで、パウダーレオメーターによる粉体圧縮性評価FF値が2.0以上になるようにする粉砕工程をもつ、
球状粒子材料の製造方法。
【請求項2】
前記原料粒子材料調製工程は、前記原料粒子材料に対して、表面処理剤で表面処理を行う表面処理工程を有し、
前記表面処理工程は、前記粉砕工程に組み合わせてパウダーレオメーターによる粉体圧縮性評価FF値が2.0以上になるようにしている請求項1に記載の球状粒子材料の製造方法。
【請求項3】
前記球状化工程で調製される前記球状粒子材料は、アルミナのみからなり、
前記表面処理剤は、アルミネート系カップリング剤である請求項2に記載の球状粒子材料の製造方法。
【請求項4】
前記原料粒子材料調製工程は、金属アルミニウムからなる金属粒子材料を高温酸化雰囲気下で爆燃させることで前記粗原料粒子材料を調製する爆燃工程をもつ請求項1
~3のうちの何れか1項に記載の球状粒子材料の製造方法。
【請求項5】
前記金属粒子材料は、Naの含有量が5ppm以下であり、
前記球状粒子材料は、Naの含有量が5ppm以下である請求項
4に記載の球状粒子材料の製造方法。
【請求項6】
前記金属粒子材料は、U及びThの合計の含有量が5ppb以下であり、
前記球状粒子材料は、U及びThの合計の含有量が5ppb以下である請求項
4に記載の球状粒子材料の製造方法。
【請求項7】
前記金属粒子材料は、U及びThの合計の含有量が5ppb以下であり、
前記球状粒子材料は、U及びThの合計の含有量が5ppb以下である請求項
5に記載の球状粒子材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状粒子材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の封止材料や基板材料に含有させるフィラーなどの電子材料用フィラーとして無機材料からなる球状粒子材料が採用されている。球状粒子材料としては粒度分布、円形度、純度などについて種々の要求が為されている。
【0003】
従来の無機材料から球状粒子材料を製造する代表的な方法としては、無機材料が金属酸化物である場合には金属酸化物を構成する金属からなる金属粒子材料を高温酸化雰囲気下に投入して爆燃させた後に急冷する方法(VMC法)や、その無機材料からなる粒子材料を高温雰囲気下に投入後に急冷する方法(溶融法)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
VMC法では投入する金属粒子材料の粒度分布や投入速度などを制御することで生成される球状粒子材料の粒度分布などは制御できるものの、その制御範囲は完全に自由にはならない。特にアルミナをVMC法で製造する際に制御範囲を広げることは困難である。
【0006】
そこで、原料となる粒子材料の粒度分布を制御することで、生成する球状粒子材料についてある程度の制御が可能な溶融法について検討すると、溶融法では原料となる粒子材料の粒度分布により生成される球状粒子材料の粒度分布などが制御できるものの、溶融が完全に行われないことがあった。例えばアルミナからなる粒子材料を溶融法により球状化すると一部溶融されないものが混在することがあった。このように原料となる粒子材料がどの程度溶融しているかの指標として溶融球状化率と称する(詳細は後述する)。
【0007】
更に、小粒径の粒子材料を造粒して製造した大粒径の粒子材料を原料となる粒子材料として採用して溶融法に供することで粒度分布を制御する方法が開示されている(特許文献1)。しかしながら、造粒した粒子材料が破壊されるなどの不具合により目的の粒度分布をもつ球状粒子材料を得ることが困難である場合があった。
【0008】
本発明は上記実情に鑑み完成したものであり、溶融法により球状粒子材料を製造する方法であって、従来よりも溶融球状化率が高くできる製造方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する目的で本発明者らは鋭意検討を行った結果、溶融法に供する原料について、パウダーレオメーターによる粉体圧縮性評価FF値が溶融球状化率の高さと相関することを見出し、以下の発明を完成した。
【0010】
上記課題を解決する本発明の球状粒子材料の製造方法は、無機材料からなる原料粒子材料を調製する原料粒子材料調製工程と、
前記原料粒子材料を高温雰囲気下に投入して溶融させた後に急冷し、体積平均粒径が1μm以上10μm未満の球状粒子材料を調製する球状化工程と、
を有し、
前記原料粒子材料は、パウダーレオメーターによる粉体圧縮性評価FF値が2.0以上である。
【0011】
粉体圧縮性評価FF値(以下、本明細書では単に「FF値」と称する)は、流動性指数を意味し、最大主応力(MPS)/単軸崩壊応力(UYS)で算出される値である。具体的にはfreeman technology社の粉体流動性分析装置パウダーレオメーターFT4のせん断応力試験で測定される値である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の球状粒子材料の製造方法は、上記構成を有することで溶融球状化率が高いか比表面積が小さい球状粒子材料を得ることが可能となり、樹脂組成物中にフィラーとして含有させる際に好ましい球状粒子材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例の試験1における原料粒子材料の粒度分布を示すグラフである。
【
図2】実施例の試験1における原料粒子材料のSEM写真である。
【
図3】実施例の試験1における球状粒子材料の粒度分布を示すグラフである。
【
図4】実施例の試験1における球状粒子材料のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の球状粒子材料の製造方法について以下実施形態に基づき詳細に説明を行う。本実施形態の球状粒子材料の製造方法にて製造される球状粒子は、樹脂材料中にフィラーとして充填され、樹脂組成物を形成することができる。その樹脂組成物は、電子材料用に好適である。
【0015】
本実施形態の球状粒子材料の製造方法は、原料粒子材料調製工程と球状化工程と必要に応じて選択されるその他の工程とを有する。本実施形態の球状粒子材料の製造方法にて製造される球状粒子材料は、無機材料から構成され、体積平均粒径が1μm以上10μm未満である。体積平均粒径の下限値は、1μm、2μm、3μmが例示でき、上限値は、4μm、5μm、6μmが例示できる。これらの下限値及び上限値は任意に組み合わせ可能である。
【0016】
本実施形態の製造方法で製造される球状粒子材料は、円形度が0.9以上で有り、0.95以上であることが好ましく、0.98以上であることがより好ましく、0.99以上であることが更に好ましい。本明細書における円形度は、SEMで写真を撮り、その観察される粒子の面積と周囲長から、(円形度)={4π×(面積)÷(周囲長)2}で算出される値として算出する。1に近づくほど真球に近い。具体的には画像解析ソフト(旭化成エンジニアリング株式会社:A像くん)を用いて100個の粒子について測定した平均値を採用する。
【0017】
本実施形態の球状粒子材料を構成する無機材料は特に限定しないが、金属酸化物であることが好ましく、特にアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、それらの複合酸化物が例示できる。無機材料としては特に上述の金属酸化物を単独又は組み合わせて、全体の質量を基準として50%以上含むことが好ましく、特にアルミナを50%以上含むことがより好ましい。
【0018】
無機材料は、不純物としてアルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計の含有量が5ppm以下であることが好ましく、3ppm以下であることがより好ましく、1ppm以下であることが更に好ましい。特にNaの含有量が5ppm以下であることが好ましく、3ppm以下であることがより好ましく、1ppm以下であることが更に好ましい。
【0019】
更に、無機材料は、不純物としてU及びThの合計の含有量が5ppb以下であることが好ましく、3ppb以下であることがより好ましく、1ppb以下であることが更に好ましい。
【0020】
無機材料がアルミナである場合には、比表面積が1.0m2/g以下であることが好ましく、0.8m2/g以下であることが更に好ましい。そして溶融球状化率が85%以上であることが好ましい。溶融球状化率の下限値としては、88%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%が挙げられる。溶融球状化率の測定方法は、実施例にて後述する。
【0021】
・原料粒子材料調製工程
原料粒子材料調製工程は、無機材料からなる原料粒子材料を調製する工程である。無機材料は、製造される球状粒子材料を構成する無機材料と同じものを採用できる。原料粒子材料は、パウダーレオメーターによる粉体圧縮性評価FF値が2.0以上であり、好ましくは2.5以上、より好ましくは3.0以上、更に好ましくは4.0以上であることが望ましい。
【0022】
FF値は、原料粒子材料の粒子形状、表面処理、粒度分布により制御できる。原料粒子材料全体の質量を基準として、粒径が1μmより小さい粒子の含有量が2%以上である場合は、原料粒子材料の円形度を小さくすることでFF値を大きくすることができる。その場合、円形度は特に0.9以下にすることが好ましく、0.88以下にすることがより好ましく、0.85以下にすることが更に好ましい。原料粒子材料全体の質量を基準として、粒径が1μmより小さい粒子の含有量が2%以下である場合は、逆に原料粒子材料の円形度が高いほうがよい。その場合、特に0.85以上にすることが好ましく、0.88以上にすることがより好ましく、0.90以上にすることが更に好ましい。
【0023】
表面処理としては、官能基としてトリメチルシリル基、イソシアネート基、アミノ基、フェニル基が導入できる表面処理剤を用いることが好ましい。例えば、導入する官能基をもつ、アルミネート系カップリング剤や、シラン化合物を反応させることができる(表面処理工程)。
【0024】
アルミネート系カップリング剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムジイソプロピレートモノセカンダリーブチレート、アルミニウムセカンダリーブチレート、アルミニウムエチレート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムモノイソプロポキシモノオレキシエチルアセトアセテートが例示できる。
【0025】
表面処理は、FF値が2.0以上となる程度に行うことが好ましい。例えば、原料粒子材料の質量を基準として0.5μmol~10μmol程度の処理量とすることが好ましく、下限値としては0.6μmol、0.7μmol程度が例示でき、上限値としては6.0μmol、7.0μmol程度が例示できる。これらの下限値及び上限値は任意に組み合わせ可能である。
【0026】
粒度分布としては、粒度分布の分散が小さい程、FF値は高くなる。例えばD90/D10が1.5以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましい。分散を小さくする方法としては、原料粒子材料の粒径を揃えたり、粒径が1μmより小さい粒子を除くことが好ましい。その小さい粒子を除く方法としては、一般的な方法が採用でき、例えばサイクロンによる方法、篩による方法、流体中での沈降速度の差による方法が挙げられる。
【0027】
原料粒子材料として必要な体積平均粒径よりも大きい体積平均粒径をもつ粒子材料を粗原料粒子材料として採用し、粉砕操作を行うことで必要な体積平均粒径をもつ原料粒子材料にできる。例えば粗原料粒子材料を粉砕した後に、粒度分布を調整することができる。また、粉砕後の粒度分布の調整に代えて又は加えて、粉砕前に粒度分布を調整することもできる。粒度分布の調整としては、特に上述したように粒径が小さい粒子を除くことが好ましい。
【0028】
粗原料粒子材料は、VMC法により製造すること(爆燃工程)が好ましい。VMC法により製造された粒子材料をそのまま原料粒子材料に採用することもできる。爆燃工程は、金属酸化物を構成する金属(金属アルミニウムなど)からなる金属粒子材料を高温酸化雰囲気下で爆燃させることで原料粒子材料又は粗原料粒子材料を調製する工程である。
【0029】
例えば、アルミナをVMC法で製造すると、粒径が大きい粒子材料と粒径が小さい粒子材料との混合物が得られるため、そのうちの粒径が大きい分画を分級して粗原料粒子材料に採用することができる。
【0030】
粉砕方法としては特に限定しないが、ジェットミル、ボールミル、振動ボールミルなどの一般的な粉砕方法が採用できる。特にジェットミルは粉砕に用いるメディアなどに由来の不純物の混入が少なく、更にはマイクロメートルオーダーでの粉砕効率も高いため好ましい。VMC法で製造された粒子材料は円形度が高く、粒度分布において粒径が1μmより小さい粒子をある程度の量だけ含むことがある。そのため、粉砕することにより円形度が小さくすることでFF値が大きくなる傾向にできる。
【0031】
VMC法により製造した金属酸化物からなる粒子材料をそのまま又は分級して粗原料粒子材料とすることが好ましい。VMC法の原料となる金属粒子材料を構成する金属は、その金属酸化物よりも精製が容易であるためVMC法を介して得られる原料粒子材料の純度を高くすることが容易だからである。
【0032】
金属粒子材料の不純物量(アルカリ金属、アルカリ土類金属、Na、U、Thなど)は、先述した本実施形態の球状粒子材料を構成する無機材料と同等以下の不純物含有量であることが好ましい。
【0033】
・球状化工程
球状化工程は、溶融工程と称される球状粒子材料の製造方法と類似の方法である。原料粒子材料を高温雰囲気下に投入することで原料粒子材料を溶融させた後に急冷することで球状粒子材料を製造する方法である。
【0034】
高温雰囲気の温度は、原料粒子材料を構成する無機材料の融点以上の温度である。原料粒子材料を構成する無機材料がアルミナの場合には2000℃以上にすることが好ましく、3000℃以上にすることがより好ましい。
【0035】
高温雰囲気を形成する方法としては、可燃性ガスを助燃性ガスと共に燃焼させて形成される火炎を用いることが好ましい。可燃性ガスは、プロパンや天然ガスなどの炭化水素ガスや、水素ガス、アンモニアガスが例示できる。助燃性ガスは、酸素や空気が例示できる。
【0036】
炉体の内部で火炎を形成し、その炉体内に原料粒子材料を適正なキャリア(気体、液体)に分散させた状態で投入する。キャリア中に分散する濃度を原料粒子材料間が融着しないように低くすることにより投入した原料粒子材料の粒度分布と同程度の粒度分布を持つ球状粒子材料が得られたり、キャリア中に分散する濃度を原料粒子材料間が融着する程度に高くすることにより投入した原料粒子材料の粒度分布よりも粒径が大きい側にシフトした球状粒子材料が得られたりする。
【0037】
溶融された原料粒子材料は、高温雰囲気の外部に移動することで急冷されて固化し球状粒子材料となる。製造された球状粒子材料はサイクロンやバグフィルタなどにより回収される。
【0038】
製造された球状粒子材料は表面処理を行っても良い。例えば、先述のシラン化合物により表面処理を行うことができる。
【実施例】
【0039】
本発明の球状粒子材料の製造方法について実施例に基づき詳細に説明を行う。
【0040】
(試験1)
VMC法により製造したアルミナ(アドマテックス製、AO-909、体積平均粒径10μm:爆燃工程で製造)から微粉を除去したものを粗原料粒子材料として採用した。粗原料粒子材料は、ジェットミルにより粉砕を行うことで粒度分布を調整し(粉砕工程)、体積平均粒径2.1μm(試験例1-1)、3.0μm(試験例1-2)、4.1μm(試験例1-3)の3種類の体積平均粒径をもつ原料粒子材料を得た(以上まとめて原料粒子材料調製工程)。得られた原料粒子材料を高温雰囲気下(約2000℃)に投入し、急冷することで球状粒子材料を製造した(球状化工程)。
【0041】
各試験例の原料粒子材料について、窒素を用いたBET法で測定した比表面積、カール・フィッシャー法により測定した水分量(KF水分量)、誘導結合プラズマ発光分光分析装置により測定したウラン量(U)及びトリウム量(Th)、FF値(最大主応力(MPS)及び単軸崩壊応力(UYS)も記載する)を測定し表1に示す。各試験例の原料粒子材料について粒度分布を測定した結果を
図1に、SEM写真を
図2に示す。
【0042】
各試験例の原料粒子材料を球状化工程に供した。球状化工程では、原料粒子材料の供給量を10kg/h、キャリアガスとしての酸素7.5Nm
3/hに分散して火炎中に供給した。火炎は、可燃性ガスとしてのLPGを7.5Nm
3/hと助燃性ガスとしての酸素9.0Nm
3/hとにより形成した。シースガス及び助燃性ガスとしての酸素21.0Nm
3/hを流入させた。原料粒子材料を火炎中に投入し、溶融させた後に急冷することで球状粒子材料が得られた。得られた球状粒子材料はバグフィルタにより回収した。各試験試料の球状粒子材料について、粒径(D50)、モード径、比表面積、KF水分量、及び、U及びTh量を先述の方法で測定し表1に示す。各試験例の球状粒子材料について粒度分布を測定した結果を
図3に、SEM写真を
図4に示す。
【0043】
溶融球状化率についても測定して表1に示す。溶融球状化率は、完全に溶融された試料(溶融球状化率が100%)は完全な真球になっていると仮定し、真球に近いほど溶融が進行しているとして以下の式から算出した値である。
【0044】
式(1):(溶融球状化率)=[1-{(球状粒子材料の比表面積)-(球状粒子材料の溶融球状化率が100%と仮定したときの比表面積)}/{(原料粒子材料の比表面積)-(原料粒子材料の溶融球状化率が100%と仮定したときの比表面積)}]×100(%)
(球状粒子材料の溶融球状化率が100%と仮定したときの比表面積)=6/{(球状粒子材料を構成する無機材料の真比重)×(球状粒子材料のD50)}
(原料粒子材料の溶融球状化率が100%と仮定したときの比表面積)=6/{(球状粒子材料を構成する無機材料の真比重)×(原料粒子材料のD50)}
ここで、式(1)中における比表面積の単位は、(m2/g)、D50の単位は、(μm)、真比重の単位は、(g/cm3)である。
【0045】
【0046】
表より明らかなように、FF値が3.0以上の試験例1-3の原料粒子材料から製造した球状粒子材料が、溶融球状化率が100%に近く、比表面積も小さくできた。また、FF値が2.0以上である試験例1-2の原料粒子材料から製造した球状粒子材料は、FF値が2.0未満の試験例1-1の原料粒子材料から製造した球状粒子材料よりも、溶融球状化率が僅かに小さいものの、比表面積が大幅に小さくなった。基本的に各試験例の個々の球状粒子材料は円形度が高いものであるため、比表面積が大きいことはD50と比べて粒径が小さい粒子の含有割合が高いこと、すなわち分散が大きいことを意味している。
【0047】
試験例1-1の原料粒子材料は、
図1より明らかなように、1μm程度の大きなピークと4μm程度のショルダーピークをもち、相対的に小さな粒径の粒子の含有量が多く、粒度分布はブロードになっている。そのため試験例1-1の球状粒子材料も相対的に小さな粒径の粒子の含有量が多く、粒度分布は広くなっている。このことは
図4のSEM写真からも明らかである。試験例1-2、1-3の原料粒子材料は、
図1及び2より明らかなように、試験例1-1の原料粒子材料よりも粒度分布が狭くなっている。
【0048】
試験例1-1の球状粒子材料は、
図3より明らかなように、試験例1-2及び1-3の球状粒子材料と比べて、粒度分布が広くなっており、試験例1-2及び1-3の球状粒子材料と比べて比表面積も大きくなっている。
【0049】
(試験2)
VMC法により製造したアルミナ(アドマテックス製、AO-909、体積平均粒径10μm)から微粉を除去したものを粗原料粒子材料として採用した。粗原料粒子材料は、ジェットミルにより粉砕を行うことで粒度分布を調整し、体積平均粒径2.0μm(試験例2-1)、4.1μm(試験例2-2)の2種類の体積平均粒径をもつ原料粒子材料を得た。得られた原料粒子材料に対し、表面処理剤としてのアルミニウム系カップリング剤(味の素ファインテクノ株式会社製、プレンアクトAL-M、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート)又はヘキサメチルジシラザン(HMDS)を反応させて表面処理を行った。表面処理剤の量は表2に示す。
【0050】
各試験例の原料粒子材料について、パウダーレオメーターを用いてCohesion、UYS、MPSを測定し表2に示す。UYSとMPSからFF値を算出し表2に示す。
【0051】
【0052】
表より明らかなように、粒径が1.5μmの試料については、表面処理を行っていない試験例2-1に比べて表面処理を行った試験例2-2~2-5はFF値が向上した。特にHMDSで処理した試験例2-5の方が、アルミニウム系カップリング剤で処理するよりもFF値が向上した。アルミニウム系カップリング剤については処理量を変化させてもFF値の変化は殆ど認められなかった。
【0053】
粒径が3.0μmの試料については、表面処理を行っていない試験例2-6に比べて効果の高い表面処理剤であるHMDSにより表面処理を行った試験例2-7でもFF値の向上は認められなかった。つまり粒径が大きいと表面処理の効果が小さくなることが分かった。