(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】高強度経口タキサン組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/337 20060101AFI20241204BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20241204BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20241204BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20241204BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20241204BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
A61K31/337
A61K9/16
A61K9/20
A61K47/38
A61K47/20
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2020519763
(86)(22)【出願日】2018-10-05
(86)【国際出願番号】 US2018054552
(87)【国際公開番号】W WO2019071092
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-10-05
(32)【優先日】2017-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518110556
【氏名又は名称】エイジネックス・ホンコン・イノヴェイティヴ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ATHENEX HK INNOVATIVE LIMITED
【住所又は居所原語表記】UNIT 608 ‐ 613 IC DEVELOPMENT CENTRE, NO. 6 SCIENCE PARK WEST AVENUE, HONG KONG SCIENCE PARK, SHA TIN, HONG KONG, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ラウ,ジョンソン・ユ‐ナム
(72)【発明者】
【氏名】ヨーン,ウェン・リ
(72)【発明者】
【氏名】リー,ミン・ツン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジァハオ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,デニス・ソ・ビック
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-500306(JP,A)
【文献】特表2016-507574(JP,A)
【文献】特表2017-509653(JP,A)
【文献】国際公開第2017/133662(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103083240(CN,A)
【文献】薬剤学,2013年,73(4):214-222
【文献】Drug Development and Industrial Pharmacy,2016年,421(3):353-363
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/337
A61K 9/16
A61K 9/20
A61K 47/38
A61K 47/20
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投与準備済(ready to administer)の経口組成物であって、
少なくとも90mgのタキサン、ヒプロメロースアセテートスクシネート(HPMCAS)担体、及び、界面活性剤を含む非晶質顆粒の固体分散体を含み、タキサン:担体:界面活性剤の比は
1:2:1又は1:1.67:0.67であり、
ここで、前記界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウムであり、
経口投与時に前記経口組成物は、900mLのpH7.5の溶液中に前記非晶質顆粒の固体分散体の溶解後の少なくとも2時間、少なくとも70μg/mLのタキサンの過飽和濃度を維持し、
前記タキサンが前記経口組成物の少なくとも6重量%の濃度で存在する、組成物。
【請求項2】
前記タキサンが、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、及びテセタキセルからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記非晶質顆粒の固体分散体が、流動床造粒によって製造される請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記非晶質顆粒の固体分散体を顆粒内賦形剤と湿式造粒法により混合して混合物を形成し、
前記顆粒内賦形剤が、潤滑剤、充填剤及び超崩壊剤からなる群から選択され、錠剤混合物を形成し、そして、
前記錠剤混合物を錠剤に圧縮して投与準備済経口組成物を形成する、請求項1~3の何れか一項に記載の組成物。
【請求項5】
崩壊剤又は超崩壊剤をさらに含む、請求項1~4の何れか一項に記載の組成物。
【請求項6】
投与準備済経口組成物を製造する方法であって、
タキサンとHPMCAS担体とを含む溶液を調製する工程、
流動床造粒システムを使用して顆粒内賦形剤に前記溶液を適用して、前記タキサンと前記HPMCAS担体とを含む非晶質固体を形成する工程、
前記非晶質固体を乾燥する工程、そして、
前記非晶質固体を圧縮して、少なくとも6重量%のタキサン濃度を有する錠剤を形成する工程、とを含み、
ここで、界面活性剤は、圧縮の前に非晶質顆粒と混合され、
前記界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウムであり、タキサン:担体:界面活性剤の比は
1:2:1又は1:1.67:0.67である、方法。
【請求項7】
前記顆粒内賦形剤が微結晶性セルロースである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
乾燥前に顆粒外賦形剤を添加するステップを含み、
前記顆粒外賦形剤が、架橋ポリビニルピロリドン、非晶質二酸化ケイ素、フマル酸ステアリルナトリウム、及び、微結晶性セルロースからなる群から選択される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記タキサンが、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、及び、テセタキセルからなる群から選択される、請求項6~8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
圧縮前に安定剤を添加する工程を含み、前記安定剤が、クエン酸及びアスコルビン酸からなる群から選択される、請求項6~9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
圧縮前に崩壊剤又は超崩壊剤を添加する工程をさらに含む、請求項6~10の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2017年10月6日に出願された米国特許仮出願第62/569258号の利益を主張する。これらや他のすべての参照される外部資料は、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる。参照により組み込まれる文献において用語の定義又は使用が本明細書中で提示される用語の定義と一致しないか又は矛盾する場合、本明細書中で提示される用語の定義が支配的であるとみなされる。
【0002】
(技術分野)
本発明の分野は、高バイオアベイラビリティ及び高強度でのタキサンの経口送達を提供する形態を製造するための医薬組成物及び拡張可能な方法である。
【背景技術】
【0003】
以下の記載は、本発明の理解に有用であり得る情報を含む。本明細書中で提示する情報の何れも、本発明の先行技術であるか若しくは関連するものであること、又は具体的若しくは暗黙的に参照される任意の刊行物が先行技術であることを認めるものではない。
【0004】
背景の記載は、本発明の理解において有用であり得る情報を含む。本明細書中で提示する情報の何れも、ここで請求される発明の先行技術であるか若しくは関連すること、又は具体的若しくは暗黙的に参照される任意の刊行物が先行技術であることを認めるものではない。
【0005】
タキサンは、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、ドセタキセル(Taxotere(登録商標)又はDocecad)、カバジタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、テセタキセルなどを含む細胞毒性薬の重要な一種である。パクリタキセルは、太平洋イチイ(Taxus brevifolia)から単離されるジテルペンである。パクリタキセルはチューブリンと結合するので、パクリタキセルは細胞分裂を阻害する能力を有する。したがって、パクリタキセルは、卵巣がん、乳がん、肺がん、頭頚部がん、及び膵臓がんの治療について承認されている。さらに、パクリタキセルは、マラリアや腎疾患などの他の病気を効果的に治療することができる。しかしながら、パクリタキセルは水への溶解性が低く、このため安全かつ有効な治療法の策定が困難である。
【0006】
注射用タキサンの溶解度を改善するための公知の一つのアプローチにおいて、パクリタキセル製剤には、Cremophor(登録商標)EL(Kolliphor(登録商標)EL、ポリオキシル35ヒマシ油)又はTween(登録商標)80(ポリソルベート80)及びエタノールが含まれる。そのような製剤で投与される場合、Cremophor(登録商標)EL(又はTween(登録商標)80)は独立して有毒であり、血管拡張、低血圧、呼吸困難、倦怠感、アナフィラキシー様過敏性反応、高脂血症、異常なリポタンパク質パターン、赤血球の凝集、及び末梢神経障害などの副作用を示す。これらの副作用を回避するための一つの選択肢は、医薬組成物を経口投与することである。残念ながら、経口投与する場合、そのようなパクリタキセル製剤はバイオアベイラビリティ及び吸収が非常に低いという難点がある。
【0007】
ドセタキセルは、乳がん、肺がん、前立腺がん、胃がん、及び頭頚部がんの治療について承認されている、パクリタキセルの誘導体である。典型的には、ドセタキセルも非経口送達用に界面活性剤と配合され、パクリタキセルと同様に、経口投与されたドセタキセルのバイオアベイラビリティは非常に低い。
【0008】
バイオアベイラビリティが低い要因の一つは、タキサンがP糖タンパク質(PGP)などの多剤トランスポーターにより標的細胞から排出されることであり得る。この問題に対処するために、タキサンをPGP阻害剤(例えば、HM30181A、リトナビル、及びケトコナゾール)と共に同時投与する試みがなされてきた。例えば、米国特許第6,245,805号(Broder et al.:特許文献1)、米国特許第7,041,640号(Broder et al.:特許文献2)、及び米国特許第7,115,565号(Gao et al.:特許文献3)を参照。
【0009】
バイオアベイラビリティが低い別の要因は、タキサンの水への溶解度が低いことである。タキサンの溶解度を増強させることを試みて、様々な技術が開発されてきた。例えば、米国特許出願公開第2011/0,207,804Al号(Slotervaart Participaties BV:特許文献4)には、カプセルに充填された固体分散体製剤が記載され、中国特許出願第103083240A号(Shenyang Pharmaceutical University:特許文献5)は、エマルジョンを形成するために貧溶媒及び液体架橋溶媒を使用し、その後、固体マイクロスフィアの分散液を形成するために使用されることを記載している。
【0010】
これらの組成物の多くによって、タキサンの過飽和溶解度及びバイオアベイラビリティがある程度改善され得るが、そのような製剤は臨床投与のための実際的かつ便利な最終剤型を呈しない。一般的に、固体粉末分散体は「最終生成物」ではなく「中間生成物」と考えられ、嵩密度が低いために本来は非常に軽くフワフワしている。カプセルに充填する場合、実際的な寸法の経口カプセル内に収容できる粉末の体積には限度があるため、1カプセルあたり非常に限られた活性物質ローディングしか達成できない。例えば、米国特許出願公開第2011/0,207,804Al号(Slotervaart Participaties BV:特許文献4)は、1カプセル中わずか15mgのドセタキセルを提供するカプセル中の固体分散体製剤を記載している。
【0011】
あるいは、賦形剤の圧縮性によってカプセル中の固体分散体粉末よりも高い単位剤型当たりの活性成分ローディングが可能になるならば、剤型は錠剤であり得る。例えば、10%活性成分ローディングを提供できる1g錠剤では、100mgタキサン活性物質ローディングが達成可能であり得ると考えられる。例えば、中国特許出願第CN103083240A号で採用されているアプローチは、固体マイクロスフィアの分散液を形成するために使用されるエマルジョンを形成するために、貧溶媒及び液体架橋溶媒の使用を必要とする。残念ながら、そのようなマイクロスフィアは高用量形態に圧縮するには適さない。そのようなプロセスから得られるマイクロスフィアは中空であり、その圧縮はそれらの構造の完全性に影響を及ぼす。このことは次に活性成分の遊離にマイナスの影響を及ぼす。その結果、そのようなマイクロスフィアは、典型的には、圧縮することなく、カプセルに充填される。加えて、中国特許出願第CN103083240A(特許文献5)号で開示されている製剤は、「分散剤」(多孔質シリカなど)を含めて活性成分のバイオアベイラビリティを増加させることに依存する。好ましい実施形態において、35%までのシリカ含有量が必要である。この賦形剤(又は類似の賦形剤)の実質的な量を含める必要があるので、そのような製剤が高い活性物質ローディング内容物を達成する能力は必然的に制限される。好ましい液体架橋溶媒が塩化メチレンとされると理解されるべきである。この有機溶媒は連邦政府保健福祉省食品医薬品局によってクラス2溶媒に分類されている(https://www.fda.gov/downloads/drugs/guidances/ucm073395.pdf(非特許文献1))。このガイダンスによると、クラス2溶媒の使用は、医薬品において、固有の毒性が一日当たりの許容可能な曝露量(Permissible Daily Exposure:PDE)6mg/日となるように制限されるべきである。加えて、マイクロスフィアを産生するために教示されている良溶媒/貧溶媒法は比較的低速かつ非拡張可能であり、したがって、大規模製造には適さない。
【0012】
タキサンの錠剤組成物は、国際特許出願公開第2015/152433Al号(Hanmi Phar.Co.Ltd:特許文献6)に記載されている。残念ながら、750mgの錠剤総重量中わずか30mgパクリタキセルの強度しか達成されなかった。当然のことながら、ヒトへの使用を対象とする錠剤は、容易に嚥下できることを確実にするためには、典型的には1gを超えない。静脈内投与されるタキサンの総用量は、多くの場合、135~175mg/m2(すなわち、1.70m2の体表面積(BSA)を有する個体に対して約300mg)であり、経口投与されるタキサンのバイオアベイラビリティは静脈内投与されるタキサンよりも低いので、1人の患者あたり必要な総経口用量は、場合によっては300mgを超えることが予測できる。15~30mgの強度を有する公知タキサンカプセルでは、患者に投与する必要がある単位用量の数は、容易に10カプセル/錠剤を超える可能性があり、多くの患者は摂取できないか又は摂取を望まないであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第6,245,805号
【文献】米国特許第7,041,640号
【文献】米国特許第7,115,565号
【文献】米国特許出願公開第2011/0,207,804Al号
【文献】中国特許出願第103083240A号
【文献】国際特許出願公開第2015/152433Al号
【非特許文献】
【0014】
【文献】https://www.fda.gov/downloads/drugs/guidances/ucm073395.pdf
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
タキサンについての可能性のある臨床的経口投薬レジメンを考えると、より高い投与強度及びより高いバイオアベイラビリティを有するタキサンの改善された錠剤製剤についていまだ対処されていない強い要望がある。これは、より高濃度のタキサンが溶解度、ひいてはバイオアベイラビリティを損なうと考えられるので、本質的に技術的に困難である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の概要)
本発明の主題は、容易に拡張可能な方法により製造される、タキサンの高強度かつ高バイオアベイラビリティ投与準備済(ready to administer)経口組成物を提供する。投与準備済経口組成物は、タキサンの固体分散体とヒプロメロースアセテートスクシネート(HPMCAS)担体とを含み得、これを圧縮して高タキサンローディングを有する錠剤形態にする。好ましくは、タキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、及びテセタキセルのうちの少なくとも1つを含み、錠剤中、少なくとも6重量%、より好ましくは少なくとも8重量%、少なくとも10重量%、又は少なくとも13重量%の濃度で存在する。本明細書中の開示はHPMCASをポリマー担体として含む経口組成物を対象とするが、他の商業的に好適な担体を使用することができ(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、Eudragit(登録商標)など)、これによりタキサンの高ローディング及び高バイオアベイラビリティが可能になることが想定される。概して、ポリマー担体の重量は、医薬組成物の総重量の90重量%以下、92重量%以下、94重量%以下、96重量%以下、又は、98重量%を構成する。
【0017】
タキサン及び担体は固体分散体及び最終錠剤形態中に任意の好適な比で存在し得る。しかしながら、投薬あたりに必要な錠剤数を減少させるために、タキサン及び担体(複数可)が1:0.5以上から1:6以下の比で、さらに好ましくは1:0.5以上から1:4以下の比で存在するのが好ましい。
【0018】
本明細書中で記載する経口タキサンの最終投与剤型は有利でありかつ驚くべきことに、高バイオアベイラビリティを維持しつつ投与単位あたり高い活性物質ローディングを提供でき、それによりタキサンに関する臨床的経口投薬レジメンの患者許容性を増強できると理解されるべきである。
【0019】
さらに、発明の主題の経口組成物が経口投与されると、遊離されるタキサンの少なくとも70%(又はさらには少なくとも80%若しくは少なくとも90%)の過飽和溶解度が、少なくとも2時間(又は少なくとも3時間若しくはさらにそれ以上)の期間にわたり維持されることが想定される。
【0020】
必要とされるものではないが、いくつかの実施形態では、経口組成物はさらに、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポリエチオキシル化(polyethyoxylated)ヒマシ油、カプリロカプロイルポリオキシルグリセリド、又はドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などの界面活性剤を含み得る。含まれる場合、界面活性剤及びタキサンは、1:5~5:1の比、又は任意の他の好適な比(例えば、1:1)で存在し得る。
【0021】
発明の主題はまた、タキサンの投与準備済経口組成物を製造する方法も提供する。本明細書中で想定される方法は、(a)タキサンとHPMCAS担体とを含むスプレー溶液を調合する工程と、(b)スプレー溶液を噴霧乾燥して非晶質固体分散体粉末を形成する工程と、(c)非晶質固体分散体粉末を圧縮して、少なくとも6重量%、さらに好ましくは少なくとも10重量%、なお一層好ましくは少なくとも13重量%のタキサン濃度を有する錠剤を形成する工程、とを含み得る。
【0022】
発明の主題の様々な目的、特徴、態様、及び利点は、添付の図面と併せて以下の好ましい実施形態の詳細な説明からさらに明らかになり、図中、同じ数字は同じ成分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、ドセタキセル:ポビドンK-30:SDSの非晶質固体分散体(ASD実施例1~3)の典型的な溶解プロファイルである。
【
図2A】
図2Aは、ドセタキセル:HPMCP-50:SDS及びHPMCP-55の非晶質固体分散体(ASD実施例4及び5)の典型的な溶解プロファイルである。
【
図2B】
図2Bは、ドセタキセル:HPMCP-50及びHPMCP-55の非晶質固体分散体(SDS無、ASD実施例6及び7))の典型的な溶解プロファイルである。
【
図3A】
図3Aは、ドセタキセル:Eudragit:SDSの非晶質固体分散体(ASD実施例8~10)の典型的な溶解プロファイルである。
【
図3B】
図3Bは、ドセタキセル:Eudragitの非晶質固体分散体(SDS無、ASD実施例11及び12)の典型的な溶解プロファイルである。
【
図4A】
図4Aは、ドセタキセル:HPMCAS:SDSの非晶質固体分散体(ASD実施例13~17)の典型的な溶解プロファイルである。
【
図4B】
図4Bは、ドセタキセル:HPMCASの非晶質固体分散体(SDS無、ASD実施例18~20)の典型的な溶解プロファイルである。
【
図5】
図5は、パクリタキセル:HPMCAS:SDSの非晶質固体分散体(ASD)(ASD実施例21)の典型的な溶解プロファイルである。
【
図6A】
図6Aは、ドセタキセル非晶質固体分散体(ASD実施例20)及び結晶性ドセタキセル製剤原料の典型的なX線ディフラクトグラムである。
【
図6B】
図6Bは、パクリタキセル非晶質固体分散体(ASD実施例21)及び結晶性パクリタキセル製剤原料の典型的なX線ディフラクトグラムである。
【
図7A】
図7Aは、発明の概念の非晶質固体分散体から調製したドセタキセル錠剤:ドセタキセル錠剤実施例1の典型的な溶解プロファイルである。
【
図7B】
図7Bは、発明の概念の非晶質固体分散体から調製したドセタキセル錠剤:ドセタキセル錠剤実施例2の典型的な溶解プロファイルである。
【
図7C】
図7Cは、発明の概念の非晶質固体分散体から調製したドセタキセル錠剤:ドセタキセル錠剤実施例3の典型的な溶解プロファイルである。
【
図7D】
図7Dは、発明の概念の非晶質固体分散体から調製したドセタキセル錠剤:ドセタキセル錠剤実施例4の典型的な溶解プロファイルである。
【
図7E】
図7Eは、発明の概念の非晶質固体分散体から調製したドセタキセル錠剤:ドセタキセル錠剤実施例5の典型的な溶解プロファイルである。
【
図7F】
図7Fは、D非晶質固体分散体から調製されるドセタキセル錠剤:ドセタキセル錠剤実施例6の典型的な溶解プロファイルである。
【
図8A】
図8Aは、非晶質固体分散体から調製されるパクリタキセル錠剤:パクリタキセル錠剤実施例1の典型的な溶解プロファイルである。
【
図8B】
図8Bは、非晶質固体分散体から調製したパクリタキセル錠剤:パクリタキセル錠剤実施例2の典型的な溶解プロファイルである。
【
図8C】
図8Cは、非晶質固体分散体から調製したパクリタキセル錠剤:パクリタキセル錠剤実施例3の典型的な溶解プロファイルである。
【
図8D】
図8Dは、非晶質固体分散体から調製したパクリタキセル錠剤:パクリタキセル錠剤実施例4の典型的な溶解プロファイルである。
【
図8E】
図8Eは、発明の概念の非晶質固体分散体から調製したパクリタキセル錠剤:パクリタキセル錠剤実施例5の典型的な溶解プロファイルである。
【
図9】
図9は、発明の概念の非晶質固体分散体から調製したパクリタキセル(パクリタキセル錠剤実施例5)、先行技術のパクリタキセル錠剤(パクリタキセル錠剤比較基準1)、及び先行技術パクリタキセルカプセル(パクリタキセルカプセル比較基準2)の比較溶解プロファイルである。
【
図10】
図10は、流動床造粒によって製造される発明の概念のパクリタキセル非晶質顆粒の典型的な溶解プロファイルである。
【
図11】
図11は、流動床造粒により製造される発明の概念のパクリタキセル固体顆粒分散体及び結晶性パクリタキセル製剤原料の典型的なX線ディフラクトグラムである。
【
図12A】
図12Aは、流動床造粒によって生成される発明の概念の非晶質顆粒から製造される30mg強度のパクリタキセル錠剤の典型的な溶解プロファイルを示す。
【
図12B】
図12Bは、流動床造粒によって生成される非晶質顆粒から製造される発明の概念の90mg強度のパクリタキセル錠剤の典型的な溶解プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(発明の詳細な説明)
発明の主題は、タキサンの高強度の投与準備済経口組成物及びその製造方法を提供する。本明細書中で記載する投与準備済経口組成物は、高タキサンローディングの圧縮錠を含み、これは、タキサン及びヒプロメロースアセテートスクシネート(HPMCAS)担体の溶液から形成されるタキサンの非晶質固体分散体(ASD)から製造することができる。簡単かつ商業規模の製造に適した方法も記載する。好適なタキサンとしては、パクリタキセル、ドセタキセル、及びカバジタキセルなどのタキサジエンコアを有するジテルペン化合物が挙げられる。化学療法において、タキサンは概して1時間~数時間にわたって点滴として投与される。
【0025】
意外にも、本発明者らは、ヒプロメロースアセテートスクシネート(HPMCAS)を使用して、水溶液への高い溶解度と高バイオアベイラビリティとを提供するタキサンの固体分散体を提供できることを見出した。理論によって拘束されることを望まないが、本発明者らは、バイオアベイラビリティが、HPMCAS担体のpHに依存した溶解によって少なくとも部分的に改善され、これにより次いで、摂取後の消化管の後半部分(例えば、胃よりもpHが高い小腸及び/又は大腸)において組成物の活性成分(例えばタキサン)の少なくとも部分的に選択的な遊離がもたらされると考える。異なる等級のHPMCASは約5~約6又は約6.8以上の範囲の溶解pHで溶解する。その結果、水溶液中に入れられた発明の概念の組成物のタキサン活性成分の大部分又は少なくともその約半分の遊離は、高酸性pH(すなわちpH5未満)からpH約5又はそれ以上(例えば約pH5超、約pH5.5超、約pH6超、及び/又は約pH6.5超)へシフトした後に起こる。固体分散体は非晶質固体として製造することができ、これを次に圧縮して、化学療法に適した形態及び量でタキサンを提供する錠剤、カプレット、又は類似の経口投与可能な形態にすることができる。いくつかの実施形態では、非晶質固体は噴霧乾燥技術を用いて製造することができる。他の実施形態では、非晶質固体は流動床造粒及び/又はトップダウンスプレー(top-down spray)造粒などの造粒法により製造することができる。
【0026】
いくつかの実施形態において、さらなる化合物を固体分散体に組み入れることができる。例えば、タキサン及びヒプロメロースアセテートスクシネートに加えて、1以上の界面活性剤を含めることができる。好適な界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、及び両性イオン性界面活性剤が挙げられる。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、スルフェート基(ドデシルスルフェートなど)又はそれらの塩を有する炭化水素鎖であり得る。
【0027】
非晶質固体の製造で使用される方法、例えば噴霧乾燥及び/又は流動床造粒は、概して、製造プロセスの間に溶媒の使用を組み入れる。これらの溶媒は、乾燥ステップで除去されるか又は実質的に除去される。具体的な例示的な溶媒を以下で記載するが、医薬用途に適した任意の溶媒を使用することができる。そのような溶媒の例としては、FDA公開Q3C-Tables and List Guidance for Industryに記載されているようなクラス2及びクラス3溶媒が挙げられる。この文書は、www.fda.gov/downloads/drugs/guidances/ucm073395.pdf(その内容は参照により本明細書中に組み込まれる)で入手可能である。発明の概念の組成物において、処理完了後に残存するクラス2溶媒の濃度は、有効な投薬スケジュールを用いてそこに記載されている1日当たり推奨されるよりも少ないPDEを提供する量でなければならない。同様に、発明の概念の組成物において、処理完了後に残存するクラス3溶媒の量は、有効な投薬スケジュールを用いて1日当たり50mg未満を提供する量でなければならない。
【0028】
高強度の製剤-高バイオアベイラビリティのタキサン錠剤組成物
【0029】
噴霧乾燥による非晶質タキサン分散液の調製
【0030】
噴霧乾燥法
1以上のタキサン及びポリマー担体(例えば、HPMCAS)を含むスプレー溶液は、まず、タキサン(複数可)を薬剤的に許容される有機溶媒系中に溶解させることによって調製した。好適な有機溶媒系としては、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、及び、そのような有機溶媒の水溶液が挙げられる。必ずしも必要とされるわけではないが、いくつかの実施形態では、界面活性剤をスプレー溶液に添加することができる。
【0031】
スプレー溶液を、除湿器(dehumidifier)(例えば、Buchi Dehumidifier)、及び噴霧乾燥器が有機溶媒と安全に機能して、非晶質固体分散体粉末を生成することを可能にする不活性ループ(例えば、Buchi Inert Loop B295(商標))に接続された噴霧乾燥器(例えば、Buchi Mini Spray Dryer B290(商標))に供給した。
【0032】
非晶質固体分散体の形成は、入口温度、出口温度、及び噴霧化流速などの因子によって影響を受ける。典型的な操作では、80℃~120℃の入口温度及び40℃~80℃の出口温度を使用できる。ただし、出口温度は入口温度よりも低いものとする。いくつかの実施形態において、入口温度と出口温度との温度差は、約5℃、約7℃、約10℃、約15℃、約20℃、約25℃、約30℃、約35℃、又は約40℃の範囲であり得る。噴霧化流速は、100%吸引で約10%~約20%の範囲であり得る。例えば、スプレー溶液を以下の条件下で噴霧乾燥器に提供することができる。入口温度100℃、出口温度59℃、及び100%吸引で噴霧化流速15%。
【0033】
結果として得られる噴霧乾燥された非晶質固体分散体を、好ましくは低水分/湿度条件下で保存する。例えば、そのような噴霧乾燥された非晶質固体分散体は、シリカゲルを入れた気密容器内で保存することができる。
【0034】
界面活性剤を利用する実施形態では、界面活性剤は、スプレー溶液の一部として噴霧乾燥するか、又は、保存前に(例えば、ブレンダーを使用して)タキサン及び上記のようなポリマー担体から調製した非晶質固体分散体と物理的に混合するかの何れかであった。
【0035】
噴霧乾燥非晶質固体分散体の溶解試験
過飽和溶解度、物理的安定性、及び組成物からのタキサンの遊離は、ヒトの胃腸管の様々な部分(例えば胃、小腸、大腸、及び/又はそれらの部分)の代表的な様々なpH値を有する水性緩衝液の形態の疑似胃腸液と組み合わせて、37±0.5℃で平衡化した溶出溶媒を使用して、USP2011溶解装置II(Copley、UK)を使用して調査した。胃腸管に沿って変化するpH条件及び経過時間をシミュレーションするために、pH値4、6.8及び7.5での以下の例示的な3-pH溶解試験法を使用した。(a)非晶質固体分散体粉末をサイズ0ゼラチンカプセル(複数可)に充填する、(b)溶解パドルの撹拌速度を100回転/分(RPM)に設定する、(c)カプセル(複数可)(シンカー装置中)を、pH4.0溶出溶媒を入れた溶解容器に1時間導入し、次いで1時間pH6.8に調節(NaOHの添加による)し、次いで2時間pH7.5に調節(NaOHの添加による)する、(d)サンプルを以下の時点-pH4については0、10、20、30、及び60分、pH6.8については70、80、90及び120分、pH7.5については130、140、150、180、210及び240分で収集し、次いで等体積の新鮮な溶出溶媒と置換して、各サンプリングによるロスを補う、(e)収集したサンプルを遠心分離し、上清をHPLC分析に使用する。いくつかの実施形態において、そのような上清をHPLC分析前に好適な有機溶媒で希釈することができる(例えばメタノール中1:1に希釈)。
【0036】
溶解試験(上記の通り)によるドセタキセル製剤の例示的HPLC分析において、HPLCは以下の条件を用いて実施した。
カラム:液体クロマトグラフィー用多孔質シリカ支持体(例えばC18.5μm粒径)に結合したジメチル-n-オクタデシルシラン固定相を充填したステンレスカラム(内径4.6mm及び長さ15cm)
移動相:A:超純水中0.1%ギ酸
B:アセトニトリル中0.1%ギ酸
検出器:UV吸収検出器(230nmでの吸光度)
流速:1.2mL/分
注入体積:20μL
カラム温度45℃
グラジエント系:
【0037】
【0038】
溶解試験(上記の通り)によるパクリタキセル製剤の例示的HPLC分析において、HPLCは以下の条件を使用して実施した。
カラム:液体クロマトグラフィー用多孔質シリカ支持体(例えばC18.5μm粒径)に結合されたジメチル-n-オクタデシルシラン固定相を充填したステンレスカラム(内径約4.6mm及び長さ15cm)
移動相:A:超純水、B:アセトニトリル
検出器:UV-吸収検出器(227nmでの吸光度)
流速:1.2mL/分
注入体積:20μL
カラム温度:30℃
勾配系:
【0039】
【0040】
240分に及ぶこの「3-pH溶解モデル」は、120分にわたって実施されるPCT/KR2014/002734(Hanmi Pharm.Co,Ltd)で以前に開示された単一pH溶解法と比較して、過飽和濃度でのタキサンの沈殿を防止する非晶質組成物の有効性を評価するためのよりストリンジェントなスクリーンであると考えられる。
【0041】
噴霧乾燥された非晶質固体分散体(ASD)の組成物
上記の非晶質固体分散体の組成物は、主にタキサン活性成分、ポリマー担体、及び(いくつかの実施形態では)任意の界面活性剤成分を含んでいた。高タキサン活性物質ローディングを提供する錠剤組成物を開発することを目的とするので、活性成分と比較して賦形剤の割合を可能な限り低く維持することが必要である。非晶質固体分散体の場合、ポリマー担体の割合は、最小化する必要もある。しかしながら、この考えは、従来の製剤原理と反対である。というのも、活性成分の過飽和溶解度を維持するためにはより高いポリマー担体対タキサン比が必要であると通常考えられるからである。このことは、タキサンの非晶質固体分散体の既知製剤で使用されるポリマー担体であるポリビニルピロリドンK-30(PVP K-30)を使用する様々な組成物を要約した表1に示すデータから明らかである(例えば、US2011/0207804A1及びPCT/KR2014/002734を参照)。対応する溶解プロファイル(ASD実施例1~3)を示す
図1は、PVP K-30の含有量が、記載した溶解モデル中で過飽和溶解度が維持可能であるように、活性タキサン成分と比較して(例えば、ドセタキセル:PVP K-30:SDS=1:9:1(ASD実施例3)の組成比においてと同等に)高くなければならない、ことを明確に示している。必要とされるPVP K-30の割合が高いために、PVP K-30は、高強度タキサン錠剤製剤を対象とする非晶質分散体ポリマー担体として使用するのに適さない。
【0042】
【0043】
表2A及び2Bは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートHPMCP(50)及び(55)をそれぞれ別のポリマー担体として使用し、それぞれ界面活性剤成分としてのSDSを含む場合又は含まない場合でのASD実施例4~7の組成物を示す。
図2A及び2Bは、これらの組成物の対応する溶解プロファイルを示す。第1の比較的酸性のpH4ステップにおける溶解が最小(実質的に50%未満)であり、pH6.8まで増加すると急速に増加すると理解すべきである。これは、発明の概念の製剤に関して一貫して見られる。
図2Aは、1:3:1のドセタキセル:HPMCP:SDS比で、持続的過飽和溶解度が達成されないことを示す。
図2Bに示すように、SDSの非存在下で遊離はまた非常に緩徐であり、HPMCPポリマーの溶解の約3時間後に最大遊離に達する。
【0044】
【0045】
【0046】
表3A及び3Bは、それぞれSDSを含む場合、及び、含まない場合で、Eudragit L100-55を使用する組成物を示し、
図3A及び3Bは対応する溶解プロファイルを示す。過飽和溶解度を成功裏に維持できる最小ドセタキセル:Eudragit L100-55:SDS比は1:4:1(ASD実施例9)であることが
図3Aから明らかである。
図3Bは、Eudragit L100-55がSDSを含まず製剤化された場合に有効なポリマーであり得る一方で、ドセタキセルの遊離は緩徐であり、開始して180分後にようやく最大濃度に達したことを示す。したがって、Eudragitを含むタキサンの組成物で、SDSは望ましい成分であり得、そのような製剤中のドセタキセルの遊離を助け得るようである。
【0047】
【0048】
【0049】
表4A及び4Bは、それぞれSDSを含む場合及びSDSを含まない場合で、HPMCASを使用する組成物を示し、
図4A及び4Bは対応する溶解プロファイルを示す。
図4Aは、意外にも、非常に小さい割合のHPMCAS(ASD実施例16におけるように、1:1.67:0.67のドセタキセル:HPMCAS:SDS比)で、>70%のドセタキセルの過飽和状態を、3時間を超えて達成できることを示す。なお一層驚くべきことに、組成物中のHPMCASとSDSの割合がドセタキセル:HPMCAS-LG:SDS=1:3:1(ASD実施例13)まで若干増加させた場合、遊離されるドセタキセルの100%に近い過飽和に近い状態を長時間にわたって維持できる。
【0050】
【0051】
【0052】
図4Bからのさらなる予想外の観察結果は、1:3のドセタキセル:HPCMAS比をもたらすように選択されたHPMCAS含有量を有する組成物(ASD実施例20)において、SDS(すなわち界面活性剤成分)は、持続された過飽和濃度を維持するその能力を保持しつつ、高用量錠剤タキサン製剤組成物から除外できることであった。1:3及びそれ以上のドセタキセル:HPMCASの製剤組成物で示されるように、遊離されたドセタキセルの80%の過飽和溶解度を少なくとも3時間維持することができる。これは、界面活性剤が必須成分である上記の他のポリマー(例えばPVP K-30、Eudragit及びHPMCP)を使用した以前の観察結果とは対照的である。意外にも、HPMCASでは、これは当てはまらない。界面活性剤成分の必要性がないことで、高ローディング錠剤の活性成分ローディングの観点からさらなる利点がもたらされる。
【0053】
表5及び
図5は、発明の概念のパクリタキセル:HPMCAS:SDSの非晶質固体分散体の組成物の一例、ならびに典型的な対応する溶解プロファイルを示す。ドセタキセルで観察されるように、パクリタキセルに基づく非晶質固体分散体も、1:3:1の比で持続的過飽和状態をもたらした。
【0054】
【0055】
X線回折解析
噴霧乾燥法及び各製剤原料を使用して調製したドセタキセル及びパクリタキセル非晶質固体分散体のX線粉末回折解析を、X’Pert PRO X線回折システム(Malvern Panalytical、英国)を使用して実施した。サンプルをサンプルホルダに取り付け、2θで5°~50°の角度範囲にわたって連続スキャンを行った。
【0056】
ドセタキセル及びパクリタキセルの非晶質固体分散体のX線ディフラクトグラムを示す
図6A及び6Bは、製剤原料のX線ディフラクトグラムと比較して、連続的X線回折パターンを示す。これにより、製剤原料の結晶形態から非晶質形態への変換が、これらの非晶質固体分散体を製造するプロセスにおいて、もたらされることが確認される。
【0057】
噴霧乾燥された非晶質固体分散体を利用する錠剤の製造法
【0058】
活性成分の噴霧乾燥された固体分散体を、超崩壊剤と結合剤とを含み得る1以上の顆粒内賦形剤と混合し、湿式造粒法を使用して水と組み合わせて湿塊を形成した。粗塊スクリーニングを#12シーブで実施した。結果として得られる顆粒を50℃で乾燥し、続いて#20シーブでスクリーニングした。混合物を次に顆粒外的(extragranular)様式で超崩壊剤、潤滑剤、及び充填剤の顆粒外部分と組み合わせた。最終混合物を次に、打錠機を使用して圧縮して錠剤にした。
【0059】
噴霧乾燥した非晶質固体分散体からのドセタキセル錠剤の組成物
表6は、1:2:1及び1:3:1のドセタキセル:HPMCAS:界面活性剤比と様々な活性成分ローディング及び様々な割合の主要機能賦形剤(例えば、超崩壊剤)に基づいて非晶質固体分散体から製造したドセタキセル錠剤の組成物を示す。
【0060】
【0061】
1:3:1の比のドセタキセル:HPMCAS:界面活性剤の固体分散体に基づいて、
図7A~7Fは、6.66%~13.89%のドセタキセルを含む、ドセタキセル錠剤実施例1~6の溶解曲線を示す。
図7Fは、ドセタキセルローディングを13.89%まで増加させた場合(ドセタキセル錠剤実施例6)でも、HPMCASを含む製剤は少なくとも3時間80~90%の高い過飽和濃度を維持することができたことを示す。発明の概念の製剤は、錠剤中約14重量%の活性成分のローディングについて、750mg錠剤中で104.2mgの活性タキサンを達成することができた(ドセタキセル錠剤6)と理解すべきである。これは、先行技術の製剤と比較してローディングにおいて約3.5倍の増加である。本発明者は、さらなる最適化で、より高いローディングが可能であると考える。約5%、10%、15%、20%、及び25%まで並びにこれらの値の間の中間範囲(例えば10%~15%、5%~20%など)の活性成分ローディングが想定される。(ドセタキセル錠剤実施例5及び6で見られるように、例えば約40%の錠剤含有量まで)HPMCASの濃度が高くなると、錠剤は、超崩壊剤の濃度がそれに応じて調節されないならば、活性成分の遊離を遅らせる可能性のあるゲル層を形成する傾向を有することが注目された(
図7Eを参照)。したがって、活性成分のより高いローディングには、少なくとも10%の超崩壊剤の濃度が好ましい。ポリビニルポリピロリドン(PVPP)、ポリビニルピロリドンの架橋修飾、及びクロスカルメロースナトリウムも、活性物質の有効な遊離を確実にするために有効な超崩壊剤として確認されている。これらの崩壊剤は、顆粒内若しくは顆粒外の何れか又は両方で組み入れることができることが想定される。国際特許出願公開第2015/152433Al号(Hanmi Phar.Co.Ltd)で記載されているタキサンの好ましい錠剤組成物は、750mgの重量の錠剤中で30mgの活性物質を達成することができるが、本発明の錠剤(ドセタキセル実施例5で記載されている通り)は750mgの同じ錠剤重量中で104.2mg強度の活性物質を実際に達成することができることも注目に値する。これは、先行技術の実施例と比較して、1錠あたりの活性物質ローディングにおいて3.47倍までの増加を示す。
【0062】
図7A~7Fから、HPMCAS-LG(pH5.5超で溶解する)を組み入れた製剤では、有意な割合の活性成分の遊離は、pH4から6.8へのシフト後に起こり得ると理解される。これにより、有利なことに、消化プロセスの後半(例えば胃から出た後)のタキサン活性成分の大部分の遊離が留保される。いくつかの実施形態では、製剤はp糖タンパク質阻害剤(例えば、P糖タンパク質)と同時投与することができ、したがって、製剤によってもたらされる、この遊離パターンは、実際には、タキサンの吸収が最大化され得るために望ましいと理解すべきである。
【0063】
本発明者らは、いくつかの実施形態において、発明の概念の錠剤が、HPMCAS-LG、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、Eudragit L100-55、及び/又はEudragit L100などの、pH5.5超で溶解する腸溶ポリマーで腸溶コーティングすることができると考える。
【0064】
噴霧乾燥された非晶質固体分散体から調製されるパクリタキセル錠剤の組成物
表7は、6.66%~11.11%のパクリタキセルローディングで、パクリタキセル:HPMCAS:界面活性剤に基づいて非晶質固体分散体から製造されるパクリタキセル錠剤の組成物を示す。
図8A~8Eは、錠剤ローディングが10%を超える(すなわち少なくとも11.11%まで)場合でも、3時間を超えてこれらの製剤において維持され得るパクリタキセルの過飽和を示す。これは、顆粒内若しくは顆粒外の何れか又は両段階で組み入れることができるポリビニル-ポリピロリドン及びクロスカルメロースナトリウムが有用な超崩壊剤であるドセタキセルに関して観察されるデータと一致する。
【0065】
【0066】
先行技術組成物に対する本発明のパクリタキセル錠剤の溶解及びバイオアベイラビリティの比較
パクリタキセル錠剤実施例5、先行技術のパクリタキセル錠剤製剤(パクリタキセル錠剤比較基準1)、及び先行技術のパクリタキセルカプセル製剤(パクリタキセルカプセル比較基準2)の溶解プロファイル及び経口バイオアベイラビリティを比較した。上記の3-pH法を使用した典型的な溶解プロファイルを
図9に示す。国際特許出願公開第2015/152433A1号(Hanmi Phar.Co.Ltd)の実施例9に記載されているように、パクリタキセル錠剤比較基準1は30mgの活性物質のローディングを有し、PVP K-30をポリマー担体として使用した非晶質固体分散体を含み、国際特許出願公開第2015/152433A1(Hanmi Phar.Co.Ltd)の比較例1に記載されているように、パクリタキセルカプセル比較基準2は、パクリタキセルがポリソルベート80中で溶解された30mg強度のカプセルである。
【0067】
溶解研究のために、33.33mgの錠剤強度のパクリタキセル実施例5を製造した。次いで、溶解試験をパクリタキセル錠剤実施例5、パクリタキセル錠剤比較基準1、及びパクリタキセルカプセル比較基準2に関して実施した。
図9に示すように、発明の概念のパクリタキセル錠剤製剤は酸性pH(例えばpH4.0又はpH6.8未満)で遅延遊離を示し、pH6.8以上で高レベルの飽和を維持する。
図9は、本発明の錠剤が3時間を超えてパクリタキセルの過飽和を維持できたが、パクリタキセル比較基準錠剤1及びパクリタキセルカプセル比較基準2からのパクリタキセルの過飽和濃度は1時間後に減少し始めたことを明らかに示し、これらの先行技術の組成物ではパクリタキセルが沈殿し始めたことを意味する。
【0068】
薬物動態研究に関して、パクリタキセル錠剤実施例5、パクリタキセル錠剤比較基準1、及びパクリタキセルカプセル比較基準2の経口バイオアベイラビリティは、実験未使用のビーグル犬においてHM30181A錠剤を同時投与することによって調査した。20匹の実験未使用のオスビーグル犬(体重9.5~10.5kg)を表8に示したレジメンにしたがって処置した。パクリタキセル錠剤実施例5については、80mg強度錠剤を製造し、一方、パクリタキセル錠剤比較基準1及びパクリタキセルカプセル比較基準2は30mg投与単位として入手可能であり、標的用量は1匹あたり80~90mgであった。これら製剤各々の経口投与の30分前に、各イヌを15mgHM30181A錠剤で処置した。静脈内経路に関して、イヌに2mL/kgのパクリタキセル溶液の単回注入(1mg/ml、4.9%Solutol HS15)を60分にわたって注入した。
【0069】
【0070】
薬物動態データを要約する表9は、パクリタキセル錠剤実施例5が意外なことにCmax、AUC0-t、AUC0-∞及びF(%)の増加によって証明されるように、大幅に改善された経口吸収をもたらすことを明確に示している。最も注目すべきことに、本発明について記載するこの組成物のバイオアベイラビリティF(%)は、単位投与形態当たり高い活性物質ローディングを提供する(すなわち、より少ないポリマー担体を使用)が、両比較基準製剤の2倍を上回った。したがって、本発明で記載する錠剤組成物によって提供されるこの結果は、予想外である。
【0071】
【0072】
流動床造粒による非晶質タキサン組成物の調製及び特性評価
【0073】
流動床造粒法
噴霧乾燥法と同様に、タキサンを含むスプレー溶液は、まずタキサン(例えば、パクリタキセル)及びHPMCASを好適な溶媒系(例えばエタノール水溶液)中に溶解させることによって調製することができる。いくつかの実施形態では、界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)をスプレー溶液中に添加することができ、他の実施形態では、タキサン製剤は界面活性剤を含まない。流動床造粒は任意の好適な流動床造粒システムを使用して実施することができる。好適な流動床造粒システムとしては、Vector(商標)FLM-3(Vector Corporation、米国マリオン)のトップスプレー流動床造粒機が含まれる。例示的実施形態において、上記の様に調製したタキサンの溶液を準備し、顆粒内賦形剤(例えば、微結晶性セルロース)及び1以上の顆粒外賦形剤(複数可)(例えば架橋ポリビニルピロリドン、コロイド状二酸化ケイ素、フマル酸ステアリルナトリウム、微結晶性セルロースなど)を含む製品容器中に噴霧した。このとき、以下のパラメータ、40~60g/分の範囲の噴霧速度、60℃~70℃の範囲の入口温度、30℃~38℃の範囲の排気温度、及び30~50PSIの噴霧空気圧、を使用した。噴霧プロセス完了後、2.0%以下の乾燥減量(LOD)値が達成されるまで造粒物を乾燥させた。使用したタキサンがパクリタキセルである場合、そのようなプロセスの結果として得られる固体分散体は自由流動性の非晶質パクリタキセル顆粒を含む。理論により拘束されることを望まないが、本発明者らは、タキサン活性成分が顆粒内賦形剤表面上でHPMCASにおける非晶質マトリックスのコーティング又は層を形成すると考える。そのような非晶質顆粒は、タキサンの所望の単位用量(例えば1mg~100mg以上)を提供する錠剤に形成することができる。そのような実施形態において、1以上の界面活性剤は、例えば、乾燥前に、スプレー溶液中に組み入れることによるか、又は溶液若しくは固体として添加することによって製剤中に提供することができる。同様に、そのような実施形態において、1以上の安定剤を、乾燥前のスプレー溶液への添加又は溶液若しくは固体としての添加によって組み入れることができる。そのような実施形態はまた、例えば、乾燥前にスプレー溶液中に組み入れることによるか、又は溶液若しくは固体として添加することによっても1以上の崩壊剤及び/又は超崩壊剤を組み入れることもできる。噴霧乾燥での使用に適した界面活性剤、安定剤、及び崩壊剤/超崩壊剤は流動床造粒に好適であり得ると考えられる。表10は、例えば、トップスプレー流動床造粒を使用して製造される30及び90mgの高強度パクリタキセル錠剤の組成例を示す。
【0074】
【0075】
流動床造粒により製造されたタキサン製剤の溶解試験
噴霧乾燥法を使用して製造した非晶質固体分散体及び錠剤組成物の溶解試験を、上記のような3-pHモデルを使用して実施した。pH1.2での溶解のさらなるステップを加えることにより、同様の4-pH溶解モデルを、非晶質タキサン含有顆粒及び流動床造粒により製造した非晶質タキサン含有顆粒から製造した錠剤の溶解を特徴づけるために利用した。これは、物理的試験及び組成物からのタキサンの遊離に関する厳密な評価を提供し、また、摂取後にそのような組成物が経験するGI管の変化するpHをより密接にシミュレーションする。第一の酸性pH1.2ステップ及び第二の酸性pH4.0ステップにおける溶解が最小(実質的に50%未満)であり、pH6.8まで増加すると急速に増加すると理解すべきである。これは発明の概念の製剤に関して一貫して見られる。
【0076】
1.2、4.0、6.8及び7.5のpH値での疑似胃腸液(ヒト胃腸管の様々な部分-例えば、胃、小腸、大腸、及び/又はその部分の代表的な様々なpH値を有する水性緩衝液の形態)を利用する例示的な4pH溶解試験方法は以下のようにして実施することができる。(a)非晶質固体顆粒分散体をサイズ0ゼラチンカプセル(複数可)に充填するか、又は別法として、非晶質タキサン含有顆粒分散体を含む錠剤を形成する、(b)溶解パドルの撹拌速度を100回転/分(RPM)に設定する、(c)カプセル又は錠剤(シンカー装置内)を、720mlの0.1N塩酸(pH1.2)を含む溶解容器に導入する、(d)pH1.2で1時間後、5%w/vポリソルベート80を含む180mlの0.25M一塩基性リン酸ナトリウム(NaH2PO4)溶液をそれぞれ最終モル濃度0.05MのNaH2PO4及び濃度1%w/vのポリソルベート80に添加し、pH4.0に調節する(20%水酸化ナトリウムを添加することによる(NaOH、溶解の間のシンカー装置の浸漬を維持するために1%w/vポリソルベート80を使用した)、(e)pH4.0で1時間後、溶液のpHをpH6.8に調節する(例えば20%NaOHを添加することによる)、(f)pH6.8で1時間後、溶液のpHをpH7.5に調節し(例えば20%NaOHを添加することによる)、さらに2時間撹拌する。サンプルを以下の時点で収集する-pH1.2については、0、10、20、30、及び60分、pH4については、70、80、90及び120分、pH6.8については、130、140、150及び180分、pH7.5については、190、200、210、240、270及び300分。等体積の新鮮な溶出溶媒をサンプリング後に添加して、体積損失を補う。収集したサンプルを遠心分離し、上清をHPLC分析に供する。いくつかの実施形態において、そのような上清は、HPLC分析前に好適な有機溶媒で希釈することができる(例えばメタノール中1:1に希釈)。
【0077】
90mgのパクリタキセルを含む高強度錠剤と等価なパクリタキセルの非晶質固体顆粒分散体の溶解を特徴づけるために、786mgの非晶質パクリタキセル顆粒を使用し、4つのサイズ0カプセルに充填し、上記手順に従って解析した。
図10は、そのような非晶質固体顆粒分散体の典型的な溶解プロファイルを示す。顆粒は、少なくとも3時間遊離される70%超の活性成分(すなわち、パクリタキセル)の過飽和濃度を持続させ得ることは明らかである。達成された、改善された溶解度及び過飽和濃度から、パクリタキセルは、流動床造粒プロセスを使用して非晶質状態に変換されていたと推測できる。
【0078】
流動床造粒によって製造される非晶質顆粒のX線回折解析
非晶質固体顆粒パクリタキセル分散体及び通常のパクリタキセル製剤原料のX線粉末回折解析は、X’Pert PRO(商標)X線回折システム(Malvern Panalytical、英国)を使用して実施した。サンプルをサンプルホルダ上に載せ、2θで5°~50°の角度範囲にわたって連続スキャニングを行った。
【0079】
図11は、パクリタキセルの非晶質固体顆粒分散体の典型的なX線ディフラクトグラムを示す。X線粉末回折パターンの連続的出現により、通常の結晶性パクリタキセルと比較した場合、製剤原料の結晶性形態から固体顆粒分散体中の非晶質形態への変換がさらに確認される。
【0080】
流動床造粒により製造される非晶質顆粒からのパクリタキセル錠剤の調製及びそれらの溶解プロファイル
上記のような流動床造粒によって製造される非晶質固体顆粒から錠剤を調製するための典型的なプロセスにおいて、顆粒を粉砕し、1つ以上の賦形剤とブレンドする。典型的な賦形剤としては、崩壊剤、充填剤、結合剤などが挙げられ、その例を表10に提示する。錠剤は任意の好適なプロセスによって、例えば成型及び/又は圧縮によって製造することができる。錠剤は、摂取を容易にする任意の好適な形状、例えば、円形、卵形、円筒形などで製造することができる。同様に、錠剤は、任意の好適な硬度又は好適な結合力及びサイズを提供するために必要な圧縮レベルで製造することができる。提示する例では、30mg錠剤は8kpの平均硬度に圧縮し、90mg錠剤は12kPの平均硬度に圧縮する。
【0081】
30及び90mg錠剤の溶解プロファイル(前記のような4-pHステッププロセスを使用して決定)をそれぞれ
図12A及び12Bに示す。これらの溶解プロファイルは、錠剤が崩壊し、かつpHが4.0を超えた後HPMCASポリマーが溶解する10分以内に活性物質の最大遊離を達成し、再度70%を超える遊離率(パーセンテージ)を提供し、これは少なくとも3時間持続可能であったことを意味する。
【0082】
流動床造粒を使用して生成した非晶質顆粒から製造したパクリタキセル錠剤のバイオアベイラビリティの、先行技術の組成物との比較
HPMCASポリマーを使用する流動床造粒(具体的には、トップスプレー流動床造粒)によって生成した非晶質顆粒から調製したパクリタキセル錠剤及び先行技術のパクリタキセル錠剤の経口バイオアベイラビリティを、実験未使用のビーグル犬におけるHM30181A錠剤の同時投与で調査した。先行技術のパクリタキセル錠剤は30mgの活性成分のローディングを有し、国際特許出願公開第2015/152433Al号(Hanmi Phar.Co.Ltd)の実施例9で記載するように、ポリマー担体としてPVP K-30を使用して製造された非晶質固体分散体を含む。
【0083】
薬物動態研究のために、15匹の実験未使用のオスビーグル犬(体重9.0~10.5kg)を表11に示す研究設計にしたがって5匹ずつ3群にランダムに分けた。1群及び2群の動物を、2相が1週間のウオッシュアウト期間により隔てられたクロスオーバ設計で両錠剤製剤についてHM30181Aと同時投与して、それぞれHPMCASポリマー又は先行技術のパクリタキセル錠剤を用いて流動床造粒により生成した非晶質顆粒から調製したパクリタキセル錠剤で処置した。3群における動物に単一相のみでパクリタキセルを静脈内投与した。
【0084】
【0085】
この研究のために選択した経口用量は1匹あたり60mgであり、これは、噴霧乾燥プロセスによって製造される発明の概念の錠剤を比較する先の薬物動態研究において使用する80~90mg用量よりも低い。したがって、適切な試験群中の各イヌに投与する場合、HPMCASポリマーを使用して流動床造粒により生成した非晶質顆粒から調製したパクリタキセル錠剤又は先行技術のパクリタキセル錠剤について2単位の30mg強度錠剤を使用した。これらの製剤の各々の経口投与の30分前に、各イヌを15mgのHM30181A錠剤で処置した。静脈内経路について、イヌにパクリタキセル溶液の2ml/kgの単回注入(1mg/ml、4.9%Solutol HS15(商標))を60分にわたって注入した。
【0086】
表12は得られた薬物動態データを要約するものであり、1匹あたり60mgの用量で、HPMCASポリマーを用いて流動床造粒により生成した非晶質顆粒から調製したパクリタキセル錠剤は、また、AUCo-t、AUCo-∞及びF(%)での増加によって証明されるような改善された経口吸収も提供することを示す。
【0087】
【0088】
このように、活性物質の高ローディング及び高バイオアベイラビリティを有するタキサンの様々な経口組成物を本明細書中で提示した。記載した方法は、有利なことに、先行技術のプロセスにより必要とされるようなエマルジョン、貧溶媒、又は、液体架橋溶媒の形成を含まない噴霧乾燥プロセス又は流動床造粒法を使用する。それどころか、本明細書中で記載するプロセスでは、溶解したタキサンを噴霧乾燥し、その結果、固体粉末/顆粒非晶質固体分散体が形成される。そのような固体分散体は、中空マイクロスフィアとは異なり、本明細書中で検討されるような錠剤に有効に圧縮することができる。
【0089】
本発明の組成物は有効に錠剤に圧縮することができると理解されるべきであり、これは活性成分を中空コアマイクロスフィアに組み入れた組成物とは共有されない性質である。同様に、発明の概念の組成物は、大規模製造に適切な、拡張可能な手段によって製造され、適切なバイオアベイラビリティを増大及び/又は提供するために分散剤(例えば、多孔質シリカ)の包含を必要としないと理解されるべきである。これにより、そのような分散剤を除外することにより、最終剤型中、活性成分(例えばタキサン)のより高いローディングが可能になるので、これにより、有益な技術的効果がもたらされる。
【0090】
いくつかの実施形態では、数値パラメータは、報告された有効数字における数字の観点から、そして通常の丸め技術を適用することによると理解すべきである。広範囲の本発明のいくつかの実施形態を示す数値範囲及びパラメータは近似値であるにもかかわらず、具体例で示されている数値は、実行できる限り正確に報告される。本発明のいくつかの実施形態で提示される数値は、それらの各試験測定値で見いだされる標準偏差から必然的に生じる、ある一定の誤差を含み得る。
【0091】
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲全体にわたる記載で使用される場合、「a」、「an」、及び「the」の意味は、文脈で明らかに別段の記載がない限り、複数の対象を包含する。また、本明細書中の記載で使用する場合、「中(in)」の意味は、文脈で明らかに別段の記載がない限り、「上(on)」を包含する。
【0092】
本明細書中で開示する発明の別の要素又は実施形態のグループ分けは、限定とは、みなされるべきでない。各群のメンバーは個別に又は群の他のメンバー若しくは本明細書中でみられる他の要素との任意の組み合わせで言及及び請求することができる。群の1以上のメンバーは、簡便性及び/又は特許可能性のために群に含めることができるか、又は群から削除することができる。そのような包含又は削除が起こる場合、本明細書は、添付の特許請求の範囲で用いられるすべてのマーカッシュ群の記載を満たすように修飾された群を含むものとする。
【0093】
本明細書中の発明の概念から逸脱することなく、すでに記載したもの以外の多くのさらなる修正が可能であることは、当業者には明らかである。したがって、発明の主題は添付の特許請求の範囲を除いて限定されるものではない。さらに、明細書及び特許請求の範囲の両方において、すべての用語は文脈と一致する限り最も広く解釈されるべきである。特に、「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」という用語は、非排他的に要素、成分、又はステップを指すと解釈すべきであり、言及された要素、成分、又はステップが、明らかに言及されていない他の要素、成分、又はステップと共に、存在し得る、又は利用し得る、又は組み合わせ得ることを意味する。明細書特許請求の範囲が、A、B、C....及びNからなる群から選択されるものの少なくとも1つについて言及する場合、本文は、A+N、又はB+Nなどではなく、その群からの要素1つだけを必要とすると解釈されるべきである。