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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】包装袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/01 20060101AFI20241204BHJP
   B65D 81/34 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
B65D33/01
B65D81/34 U
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020093657
(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公開番号】P2021187487
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】喜井 宏治
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-500241(JP,A)
【文献】特開2000-203657(JP,A)
【文献】特開2000-327044(JP,A)
【文献】特開2003-311896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/01
B65D 81/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装袋の製造方法であって、
前記包装袋は、フィルムがシール部において溶着されて構成され、
前記シール部は、内圧上昇に伴って蒸気流路を形成する蒸気抜きシール部を備え、
前記フィルムは、前記フィルムの表面がコロナ放電処理された改質領域を備えるとともに、基材フィルムとシーラントフィルムが積層された積層フィルムであり、
前記シーラントフィルムは、前記基材フィルム側のラミネート面と、前記ラミネート面と反対側のシール面を備え、
前記改質領域は、前記シール面がコロナ放電処理されたシール面改質領域であり、
前記ラミネート面に、前記ラミネート面がコロナ放電処理されたラミネート面改質領域が設けられ、
前記蒸気抜きシール部は、前記改質領域とその対向面が溶着された部位であり、
前記方法は、コロナ放電処理工程を備え、
前記コロナ放電処理工程では、前記シール面改質領域の表面エネルギーが、前記ラミネート面改質領域の表面エネルギーよりも大きくなるようなコロナ放電処理において、
前記ラミネート面改質領域を形成するためのラミネート面コロナ放電処理を行った後に、前記シール面改質領域を形成するためのシール面コロナ放電処理を行う、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記ラミネート面改質領域は、前記シール面改質領域よりも面積が大きい、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジでの内容物の加熱に適した包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、可撓性を有するフィルムがシール部において溶着されて構成された包装袋が開示されている。この包装袋には、内容物を電子レンジで加熱する際に発生する蒸気を逃がすために、蒸気抜きシール部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2013/100058号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、包装袋の内側方向に向かって略V字状に湾曲させて突出させるシール部を合掌部に設けることによって蒸気抜きシール部を構成しているが、製袋と、内容物の充填を連続して行う装置(製袋充填装置)においては、このような構成の蒸気抜きシール部を形成することが容易ではない。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、特殊な製袋充填装置を用いることなく、製袋充填において蒸気抜きシール部を容易に形成することができる、包装袋を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、フィルムがシール部において溶着されて構成された包装袋であって、前記シール部は、内圧上昇に伴って蒸気流路を形成する蒸気抜きシール部を備え、前記フィルムは、前記フィルムの表面がコロナ放電処理された改質領域を備え、前記蒸気抜きシール部は、前記改質領域とその対向面が溶着された部位である、包装袋が提供される。
【0007】
本発明の包装袋では、コロナ放電処理された改質領域では、高温でのシール強度が低下することを利用して、蒸気抜きシール部を構成しているので、特殊な製袋充填装置を用いることなく、製袋充填において蒸気抜きシール部を容易に形成することができる。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記記載の包装袋であって、前記シール部は、前記包装袋の上側を閉塞させるように設けられた上側横シール部と、前記包装袋の下側を閉塞させるように設けられた下側横シール部を備え、前記改質領域は、前記上側横シール部と、前記下側横シール部と、その間の非シール部に渡って筋状に設けられている、包装袋である。
好ましくは、前記記載の包装袋であって、前記フィルムは、基材フィルムとシーラントフィルムが積層された積層フィルムであり、前記シーラントフィルムは、前記基材フィルム側のラミネート面と、前記ラミネート面と反対側のシール面を備え、前記改質領域は、前記シール面がコロナ放電処理されたシール面改質領域であり、前記ラミネート面に、前記ラミネート面がコロナ放電処理されたラミネート面改質領域が設けられる、包装袋である。
好ましくは、前記記載の包装袋であって、前記ラミネート面改質領域は、前記シール面改質領域よりも面積が大きい、包装袋である。
好ましくは、前記記載の包装袋の製造方法であって、コロナ放電処理工程を備え、前記コロナ放電処理工程では、前記シール面改質領域の表面エネルギーが、前記ラミネート面改質領域の表面エネルギーよりも大きくなるようにコロナ放電処理を行う、包装袋である。
好ましくは、前記記載の包装袋の製造方法であって、コロナ放電処理工程を備え、前記コロナ放電処理工程では、前記ラミネート面改質領域を形成するためのラミネート面コロナ放電処理を行った後に、前記シール面改質領域を形成するためのシール面コロナ放電処理を行う、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態の包装袋1の正面図である(便宜上、内容物が充填されていない状態を図示している)。
図2図2Aは、包装袋1の製造に用いるフィルム2の層構成を示す分解図であり、図2Bは、フィルム2をシール面2dからみた状態を示す。
図3】コロナ放電処理されたシーラントフィルム12の製造工程を示す構成図である。
図4】製袋充填機100の構成図である。
図5図4の製袋充填機100の横シール機116近傍の拡大図であり、横シール機116で横シール部32を形成している状態を示す。
図6図5の状態から横シール機116が開き、横シール部32がプレス兼カッター118の位置に移動した後の状態を示す。
図7図6の後に、プレス兼カッター118で横シール部32を挟持している状態を示す。
図8図7の状態からプレス兼カッター118及びしごきローラ115が開いた後の状態を示す。
図9図8の状態から、内容物Wをさらに投入した後にしごきローラ115が閉じた後の状態を示す。
図10図9の状態から密着部5aが横シール機116の位置に移動した後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0011】
1.包装袋1
図1図2に示すように、本発明の一実施形態の包装袋1は、フィルム2がシール部3において溶着されて構成される。シール部3は、包装袋1の内圧上昇に伴って蒸気流路を形成する蒸気抜きシール部4を備える。
【0012】
包装袋1は、包装袋1内の内容物を電子レンジで加熱するためのものであることが意図されており、内容物の加熱に伴って内容物に含まれる水分が蒸気になることによって包装袋1の内圧が上昇する。蒸気抜きシール部4は、シール部3のその他の部位よりもシール強度が弱くなっているために、包装袋1の内圧が上昇すると、蒸気抜きシール部4においてシールが破壊されて蒸気流路が形成される。この蒸気流路から蒸気が外部に放出されることによって包装袋1の過度の内圧上昇による包装袋1の破損が抑制される。
【0013】
シール部3は、縦シール部31と、横シール部32を備える。縦シール部31は、フィルム2を筒状に湾曲させてフィルム2の両側縁部を重ね合わせた重ね合わせ部においてフィルム2を溶着することによって形成される。本実施形態では、縦シール部31は、フィルム2の内面同士が溶着された合掌貼り形式となっている。フィルム2に縦シール部31を形成することによって筒体5が形成される。
【0014】
横シール部32は、上側横シール部32aと、下側横シール部32bを備える。上側横シール部32a及び下側横シール部32bは、それぞれ、筒体5の上側及び下側を閉塞させるように設けられる。横シール部32a,32bは、それぞれ、筒体5の上端及び下端に沿って形成することが好ましい。横シール部32a,32bは、縦シール部31に直交するように形成することが好ましい。横シール部32a,32bは、それぞれ、筒体5をヒートシールすることによって形成することができる。
【0015】
図2に示すように、フィルム2は、フィルム2の表面がコロナ放電処理された改質領域7を備える。改質領域7は、フィルム2のシール面(溶着される側の面)2dに設けられる。改質領域7は、改質領域7の一部又は全部が、シール部3が形成される領域に重なるように形成される。改質領域7では、コロナ放電処理によって水酸基、カルボニル基などの極性基が形成されている。改質領域7とその対向面が溶着された部位は、高温でのシール強度が低くなるので、この部位が蒸気抜きシール部4となる。対向面は、コロナ放電処理されていてもされていなくてもよい。
【0016】
図1に示すように、[蒸気抜きシール部4の左右方向の幅W1/横シール部32a,32bの左右方向の幅W2]の値は、例えば、0.05~0.8であり、0.1~0.3が好ましい。この値が小さすぎると、蒸気が適切に抜けない場合があり、この値が大きすぎると、蒸気が急激に抜けて内容物の加熱が不十分になる場合がある。この値は、具体的には例えば、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0017】
改質領域7は、上側横シール部32aと、下側横シール部32bと、その間の非シール部8に渡って筋状に設けられている。この場合、横シール部32a,32bのそれぞれに蒸気抜きシール部4が設けられるので、蒸気抜きがスムーズに行われやすい。また、非シール部8に設けられた改質領域7は、表面の濡れ性が良好であるので、非シール部8の改質領域7では、フィルム2が曇りにくく、内容物の視認性が優れる。さらに、このような筋状の改質領域7は、長手方向に移動するフィルムに対して連続的にコロナ放電処理を行うことによって形成することができるので、容易に形成することができる。
【0018】
図2Aに示すように、フィルム2は、基材層2aとシーラント層2bを有する積層フィルムであることが好ましく、基材層2aとシーラント層2bの間に接着層2cを備えることがさらに好ましい。
【0019】
基材層2aは、包装袋1の外表面に露出するように配置され、シーラント層2bは、包装袋1の内表面に露出するように配置される。シーラント層2b同士がヒートシールされることによって、縦シール部31及び横シール部32a,32bが形成される。
【0020】
基材層2aは、強度に優れて高い耐衝撃性を有する素材により形成されている。基材層2aとしては、例えば、ポリアミドが用いられる。接着層2cは、基材層2aとシーラント層2bを互いに積層するように接着するための層であり、接着層2cとしては、例えば、ポリエチレン等が用いられる。
【0021】
基材層2aのポリアミドは、芳香族ポリアミドを含むものが好ましい。この場合、基材層2aのバリア性に優れるからである。芳香族ポリアミドとしては、特に制限はないが、キシリレンジアミンと炭素数が6~12のα,ω脂肪族ジカルボン酸とからなるポリアミド構成単位を分子鎖中に70モル%以上含有している樹脂等が使用できる。具体的には、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリメタキシリレンピメラミド、ポリメタキシリレンアゼラミド、ポリパラキシリレンアゼラミド、ポリパラキシリレンデカナミドなどの単独重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアジパミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンピメラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアゼラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンセパカミド共重合体などの共重合体が挙げられるが、ポリメタキシリレンアジパミド(以下、「MXD6」という)が強度やガスバリア性等の基本特性に優れ、工業的にも比較的入手しやすい点から好ましい。
【0022】
シーラント層2bは、ヒートシール性に優れた樹脂で形成可能である。シーラント層2bとしては、例えば、ポリエチレン(例:直鎖状低密度ポリエチレン)で形成することができる。
【0023】
フィルム2は、厚さ10μm~20μm、例えば15μmの基材層2aと、厚さ10μm~30μm、例えば20μmの接着層2cと、厚さ30μm~50μm、例えば40μmのシーラント層2bを積層して形成することができ、フィルム2として、通常は50μm~100μmの厚さを有する。
【0024】
フィルム2は、好ましくは、基材層2aを構成する基材フィルム11と、シーラント層2bを構成するシーラントフィルム12が積層された積層フィルムである。基材フィルム11とシーラントフィルム12は、好ましくは、押し出しラミネート法を用いて、接着層2cを介して互いに接着される。なお、接着層2cを介さずに、基材フィルム11とシーラントフィルム12を熱融着させてもよい。
【0025】
改質領域7を形成するためのコロナ放電処理は、積層フィルムを形成した後に行ってもよく、コロナ放電処理されたシーラントフィルム12を用いて積層フィルムを形成してもよい。
【0026】
ここで、シーラントフィルム12の、基材フィルム11側の面をラミネート面12aとし、ラミネート面12aと反対側の面とシール面12bとする。シール面12bは、フィルム2のシール面2dとなる。
【0027】
コロナ放電処理されたシーラントフィルム12は、好ましくは、ラミネート面12aがコロナ放電処理されたラミネート面改質領域7aと、シール面12bがコロナ放電処理されたシール面改質領域7bを備える。シール面改質領域7bが改質領域7となる。ラミネート面改質領域7aを設けることによって、シーラントフィルム12と基材フィルム11又は接着層2cとの接着性が向上する。
【0028】
図2に示すように、[シール面改質領域7bの左右方向の幅W3/シーラントフィルム12の左右方向の幅W4]の値は、例えば、0.02~0.4であり、0.05~0.2が好ましい。シール面改質領域7bの左右方向の幅W3は、蒸気抜きシール部4の幅W1と一致するので、この値が小さすぎると、蒸気が適切に抜けない場合があり、この値が大きすぎると、蒸気が急激に抜けて内容物の加熱が不十分になる場合がある。この値は、具体的には例えば、0.02、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0029】
ラミネート面改質領域7aは、シール面改質領域7bよりも面積が大きいことが好ましい。[ラミネート面改質領域7aの面積/シール面改質領域7bの面積]の値は、例えば1.1~30であり、具体的には例えば、1.1、1.5、2、3、4、5、10、15、20、25、30であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。好ましくは、改質領域7a,7bの左右方向の幅は、シーラントフィルム12の長手方向に沿って一定であり、この場合、改質領域7a,7bの面積比は、改質領域7a,7bの左右方向の幅の比に一致する。
【0030】
ラミネート剥離を抑制する観点から、ラミネート面改質領域7aは、ラミネート面12aのできるだけ広い範囲に形成することが好ましく、ラミネート面12aの全体に設けることがさらに好ましい。[ラミネート面改質領域7aの面積/ラミネート面12aの面積]の値は、例えば0.2~1であり、具体的には例えば、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0031】
ここでは、図3を用いて、コロナ放電処理されたシーラントフィルム12の製造方法について説明する。この方法は、コロナ放電処理工程を備える。
【0032】
まず、ダイ13の環状スリットから環状フィルム14を押し出し、一対のローラ15で挟んで扁平にして扁平フィルム16とする。
【0033】
次に、コロナ放電処理装置17の陽極17aと陰極17bとの隙間でコロナ放電を起こし、扁平フィルム16の外面のコロナ放電処理を行う。本実施形態では、陽極17aと陰極17bの配置を異ならせた2つのコロナ放電処理装置17を用いて、扁平フィルム16の両面のコロナ放電処理を行っている。陰極17bは、例えばローラ形状である。
【0034】
次に、転向ローラ19で転向させた扁平フィルム16の両縁を不図示のカッターで切断して、扁平フィルム16を2枚のフィルム20に分離して、転向ローラ21を用いて二股に分岐させる。なお、扁平フィルム16の片縁を切断した後に扁平フィルム16を開いて1枚のフィルムにしてもよい。
【0035】
次に、各フィルム20の、扁平フィルム16の内面に相当する面に対して、コロナ放電処理装置17を用いてコロナ放電処理を行い、ロール状に巻き取って、シーラントフィルム12のフィルムロール12rが得られる。
【0036】
以上の工程で、両面がコロナ放電処理されたシーラントフィルム12が得られる。なお、上記説明では、シーラントフィルム12の製造工程にコロナ放電処理を組み込んでいるが、シーラントフィルム12の製造が完了した後にコロナ放電処理を行う工程を行ってもよい。また、シーラントフィルム12をロール状に巻き取る前にシーラントフィルム12の一方の面に対してコロナ放電処理を行い、その後に、ロール・ツー・ロールで、シーラントフィルム12の他方の面に対してコロナ放電処理を行ってもよい。また、上記説明では、インフレーション法によってシーラントフィルム12を製造しているが、Tダイ法などの別の方法によってシーラントフィルム12を製造してもよい。
【0037】
ラミネート面改質領域7aを形成するためのラミネート面コロナ放電処理と、シール面改質領域7bを形成するためのシール面コロナ放電処理は、どちらを先に行ってもよいが、ラミネート面コロナ放電処理を行った後に、シール面コロナ放電処理を行うことが好ましい。一般に、コロナ放電処理は、フィルムが形成されてから時間が立つほど処理度が低下する。このため、コロナ放電処理を行うタイミングが遅いほど、所望の表面状態にするために必要なコロナ放電処理の条件を強くする必要がある。コロナ放電処理の条件を強くする方法としては、コロナ放電処理のエネルギーを強くしたり、コロナ放電処理の時間を長くしたりする方法が挙げられる。
【0038】
コロナ放電処理の影響は、コロナ放電処理を行っている処理面に強く現れるが、その反対側の反対面にも現れる。従って、シール面コロナ放電処理の影響がラミネート面12aにも現れ、ラミネート面コロナ放電処理の影響がシール面12bにも現れる。前者は、ラミネート強度に若干の影響を及ぼしうるが大きな問題にはなりにくい。一方、後者は、シール部3でのシール強度に影響を及ぼし、この影響によってシール条件の設定が困難になったり、蒸気抜きシール部4で剥離する際に、シーラント層2b同士の接着界面で剥離が起こるのではなく、シーラント層2bと基材層2aの間で剥離が起こってしまいやすくなるという問題が生じやすくなる。このため、後者の影響をできるだけ小さくしたい。また、反対面での影響は、処理面でのコロナ放電処理の条件が強くなるほど大きくなる。
【0039】
以上の観点から、ラミネート面コロナ放電処理の条件をできるだけ弱くすべく、ラミネート面コロナ放電処理を、シール面コロナ放電処理の前に行うことが好ましい。
【0040】
また、コロナ放電処理は、ラミネート面改質領域7aの表面エネルギーが、シール面改質領域7bの表面エネルギーよりも小さくなるように行うことが好ましい。これによって、ラミネート面コロナ放電処理がシール面12bに与える影響がさらに小さくなる。表面エネルギーは、例えば、ダインペン(例:ARCOTEST社製)を用いてダインレベルを測定することによって評価することができる。一例では、シール面改質領域7bのダインレベルが42ダインであり、ラミネート面改質領域7aのダインレベルが38ダインである。
【0041】
2.製袋充填方法
次に、図4図10を用いて、フィルム2を用いた製袋充填方法について説明する。この方法は、縦型の製袋充填機100を用いて実施可能である。
【0042】
<S1:フィルム湾曲工程>
まず、ロール状原反Fから繰り出されたフィルム2は、複数の繰り出しローラ120、121を経てフォーマ112に導かれる。ロール状原反Fからフォーマ112までの経路途中にはセンサ119が配されており、フィルム2に長さ方向において一定間隔で印刷されたレジマークを検知して、製袋充填機100の軌道上に一定の長さのフィルム2を一定の時間間隔で送り出せるようになっている。フィルム2は、フォーマ112を通過する間に筒状に湾曲されて、湾曲した先端の両側縁部がオーバーラップした形態となる。オーバーラップした部分には重ね合わせ部が形成される。
【0043】
<S2:縦シール工程>
次に、フィルム2の重ね合わせ部を縦シール機113にてヒートシールし、縦シール部31を形成する。縦シール機113は、一対のシールローラを備え、フィルム2が一定の時間間隔で移動するタイミングに合わせて、フィルム2の重ね合わせ部を一対のシールローラで挟持しながら一対のシールローラを互いに逆方向に回転させることでフィルム2を送り出しながらヒートシールを行う。フィルム2に縦シール部31を形成することによって、筒体5が形成される。
【0044】
<S3:横シール工程>
次に、送りローラ114を回転させることで、筒体5を所定の長さだけ下流に移動させ、図5図6に示すように、筒体5の所定位置を横シール機116にてヒートシールし、横シール部32を形成する。横シール部32は、下流側の包装袋1の上側横シール部32aと上流側の筒体5の下側横シール部32bが繋がって構成されており、後述する切断工程において上下に分割される。横シール機116は、一対のシールバー116aを備え、上記所定位置を一対のシールバー116aで所定時間挟持することでヒートシールを行う。フィルム2には、フィルム2の長手方向に沿って筋状に改質領域7が形成されており、フィルム2のどの位置で横シール部32を形成しても、横シール部32が改質領域7に重なって形成される。横シール部32が改質領域7に重なった部位が蒸気抜きシール部4となる。
【0045】
<S4:切断工程>
次に、送りローラ114を回転させることで、図6に示すように、横シール部32をプレス兼カッター118の位置に移動させる。プレス兼カッター118は、一対のバー118aを備える。
【0046】
次に、図7に示すように、プレス兼カッター118を閉じて横シール部32を挟圧して冷却するとともに、カッター刃(不図示)で横シール部32を切断して上下に分割することによって、図8に示すように、下流側の包装袋1の上側横シール部32aと、上流側の筒体5の下側横シール部32bを形成する。下流側の包装袋1は、横シール部32を切断すると、コンベア130上へ落下する。
【0047】
<S5:充填工程>
次に、図8に示すように、しごきローラ115を開くと、以前の工程でホッパ111から投入されてしごきローラ115の上側に溜まっている内容物Wがしごきローラ115の下側に落下する。筒体5には下側横シール部32bが形成されているので、落下した内容物Wは、筒体5内に充填される。筒体5の周囲には、成形装置123が配置されており、筒体5の周面が成形装置123に当接して筒体5の外形が規定されるようになっている。
【0048】
次に、内容物Wをさらに筒体5内に投入し、筒体5内の内容物Wがセンサ122の位置にまで到達すると、図9に示すようにしごきローラ115を閉じることによって、内容物Wをしごきローラ115の上側部分と下側部分に分断する。しごきローラ115の下側部分の内容物が包装袋1の一袋分の内容物である。また、しごきローラ115を閉じることによって筒体5に密着部5aが形成され、密着部5aと下側横シール部32bの間に袋部5bが形成される。袋部5bの上側に上側横シール部32aが形成されることによって包装袋1が形成される。
【0049】
<S6:送り工程>
次に、しごきローラ115を閉じたまま、送りローラ114を回転させることで、図10に示すように、密着部5aを横シール機116の位置にまで移動させる。その後は、S3と同様に横シール工程を実施することで、内容物Wが充填された部位(袋部5b)よりも高い位置(密着部5a)において横シール部32を形成することができる。
【0050】
この後は、S1~S6の工程を繰り返すことによって、内容物Wが充填された包装袋1を連続的に製造することができる。
【0051】
以上の工程により、内容物Wが充填された包装袋1が製造される。また、横シール部32が改質領域7に重なった部位が蒸気抜きシール部4となるので、特殊な装置を用いることなく、蒸気抜きシール部4を容易に形成することができる。なお、蒸気抜きシール部4は、上側横シール部32aと、下側横シール部32bの両方に形成されるが、例えば、下側横シール部32bでの溶着強度を、上側横シール部32aでの溶着強度よりも高くすることによって、上側横シール部32aが改質領域7に重なった部位のみが蒸気抜きシール部4となるようにしてもよい(下側横シール部32bが改質領域7に重なった部位は溶着強度が高すぎて蒸気抜きシール部4とならない。)。溶着強度は、シールバー116aの押圧力、シール幅、シール温度などを変更することによって変化させることができる。横シール部32a,32bは、別々のシールバーを用いて形成してもよい。
【0052】
3.その他の構成
・上記実施形態では、重ね合わせ部は、合掌貼り形式であるが、封筒貼り形式としてもよい。包装袋は、三方シールや四方シール、ガゼットなどの形式のものであってもよい。
・蒸気抜きシール部4は、シール部3の任意の位置に設けてもよく、例えば縦シール部31に設けてもよい。この場合、改質領域7の一部又は全部が、縦シール部31が形成される領域と重なるように改質領域7を形成する。
【符号の説明】
【0053】
1 :包装袋
2 :フィルム
2a :基材層
2b :シーラント層
2c :接着層
2d :シール面
3 :シール部
4 :蒸気抜きシール部
5 :筒体
5a :密着部
5b :袋部
7 :改質領域
7a :ラミネート面改質領域
7b :シール面改質領域
8 :非シール部
11 :基材フィルム
12 :シーラントフィルム
12a :ラミネート面
12b :シール面
12r :フィルムロール
13 :ダイ
14 :環状フィルム
15 :ローラ
16 :扁平フィルム
17 :コロナ放電処理装置
17a :陽極
17b :陰極
19 :転向ローラ
20 :フィルム
21 :転向ローラ
31 :縦シール部
32 :横シール部
32a :上側横シール部
32b :下側横シール部
100 :製袋充填機
111 :ホッパ
112 :フォーマ
113 :縦シール機
114 :送りローラ
115 :しごきローラ
116 :横シール機
116a :シールバー
118 :プレス兼カッター
118a :バー
119 :センサ
120 :繰り出しローラ
121 :繰り出しローラ
122 :センサ
123 :成形装置
130 :コンベア
F :ロール状原反
W :内容物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10