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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】シート体験システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20241204BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20241204BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20241204BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
G06Q50/10
B60N2/90
A47C7/62 Z
A61B5/107 300
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020162095
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022054853
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】東 洋祐
【審査官】原 忠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/235462(WO,A1)
【文献】特開2018-102861(JP,A)
【文献】特開2014-167438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
A61B 5/107
B60N 2/90
A47C 7/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート本体と、前記シート本体上のユーザの姿勢を検出するための情報を取得するセンサを有するシートと、
前記センサから前記情報を取得する制御部と、を備えたシート体験システムであって、
前記制御部は、
前記センサから取得した情報に基づいて、前記ユーザの上半身または下半身の左右の偏りに対応した第1評価値算出し、
第1評価値に基づいて、前記ユーザの姿勢に対応した座位年齢を、前記偏りが大きいほど高くなるように決定することを特徴とするシート体験システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1評価値に係数をかけることで、前記座位年齢を決定することを特徴とする請求項1に記載のシート体験システム。
【請求項3】
シート本体と、前記シート本体上のユーザの姿勢検出するための情報を取得するセンサを有するシートと、
前記センサから前記情報を取得する制御部と、を備えたシート体験システムであって、
前記制御部は、
前記センサから取得した情報に基づいて、第1所定時間中における前記ユーザの姿勢の維持に対応した第2評価値算出し、
第2評価値に基づいて、前記ユーザの姿勢対応した座位年齢を、ユーザの身体のふらつきが大きいほど高くなるように決定することを特徴とするシート体験システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2評価値に係数をかけることで、前記座位年齢を決定することを特徴とする請求項3に記載のシート体験システム。
【請求項5】
シート本体と、前記シート本体上のユーザの動作を検出するための情報を取得するセンサを有するシートと、
前記センサから前記情報を取得する制御部と、を備えたシート体験システムであって、
前記制御部は、
前記センサから取得した情報に基づいて、第2所定時間中における前記ユーザの動作量に対応した第3評価値算出し、
第3評価値に基づいて、前記ユーザ動作に対応した座位年齢を、前記動作量が大きいほど低くなるように決定することを特徴とするシート体験システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記第3評価値に係数をかけることで、前記座位年齢を決定することを特徴とする請求項5に記載のシート体験システム。
【請求項7】
シート本体と、前記シート本体上のユーザの姿勢または動作を検出するための情報を取得するセンサを有するシートと、
前記センサから前記情報を取得する制御部と、を備えたシート体験システムであって、
前記制御部は、
前記センサから取得した情報に基づいて、
前記ユーザの上半身または下半身の左右の偏りに対応した第1評価値、第1所定時間中における前記ユーザの姿勢の維持に対応した第2評価値、および、第2所定時間中における前記ユーザの動作量に対応した第3評価値算出し、
前記第1評価値、前記第2評価値および前記第3評価値に基づいて、前記ユーザの姿勢および動作に対応した座位年齢を、前記偏りが大きいほど高く、かつ、ユーザの身体のふらつきが大きいほど高く、かつ、前記動作量が大きいほど低くなるように決定することを特徴とするシート体験システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1評価値に係数をかけた値と、前記第2評価値に係数をかけた値と、前記第3評価値に係数をかけた値とを足し合わせることで、前記座位年齢を決定することを特徴とする請求項7に記載のシート体験システム。
【請求項9】
前記センサは、ユーザからの圧力値を取得する圧力センサであり、
前記制御部は、前記圧力値に基づいて、前記第1評価値、前記第2評価値および前記第3評価値を算出することを特徴とする請求項7または請求項8に記載のシート体験システム。
【請求項10】
前記圧力センサは、前記シート本体の左に配置される左センサと、前記シート本体の右に配置される右センサと、を備え、
前記制御部は、前記左センサの圧力値と前記右センサの圧力値との差の大きさを、前記第1評価値として算出することを特徴とする請求項に記載のシート体験システム。
【請求項11】
前記制御部は、前記第1所定時間中における前記圧力値の変動幅を、前記第2評価値として算出することを特徴とする請求項または請求項10に記載のシート体験システム。
【請求項12】
前記制御部は、前記第2所定時間中における前記動作量を前記圧力値に基づいて算出することを特徴とする請求項から請求項11のいずれか1項に記載のシート体験システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサを有するシートを備えたシート体験システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員の着座姿勢を検出するために、シート上に複数の圧力センサを配置した車両用シートが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-65504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の車両用シートは、運転者の着座姿勢を評価して提示するだけであるので、あまり有効に利用できないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、シートの新たな価値を提案するべく、シートに着座したユーザの姿勢または動作に対応した座位年齢を決定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するため、本発明に係るシート体験システムは、シート本体と、前記シート本体上のユーザの姿勢または動作を検出するための情報を取得するセンサを有するシートと、前記センサから前記情報を取得する制御部と、を備える。
前記制御部は、前記センサから取得した情報に基づいて、前記ユーザの上半身または下半身の左右の偏りに対応した第1評価値、第1所定時間中における前記ユーザの姿勢の維持に対応した第2評価値、および、第2所定時間中における前記ユーザの動作量に対応した第3評価値のうち少なくとも1つの評価値を算出し、前記評価値に基づいて、前記ユーザの姿勢または動作に対応した座位年齢を決定する。
【0007】
この構成によれば、センサから取得した情報に基づいて、シートに着座したユーザの姿勢または動作に対応した座位年齢を決定することができる。
【0008】
また、前記制御部は、前記第1評価値、前記第2評価値および前記第3評価値のうち少なくとも2つの評価値に基づいて、前記座位年齢を決定してもよい。
【0009】
この構成によれば、座位年齢をより精度よく決定することができる。
【0010】
また、前記制御部は、前記第1評価値、前記第2評価値および前記第3評価値に基づいて、前記座位年齢を決定してもよい。
【0011】
この構成によれば、座位年齢をより精度よく決定することができる。
【0012】
また、前記センサは、ユーザからの圧力値を取得する圧力センサであり、前記制御部は、前記圧力値に基づいて、前記第1評価値、前記第2評価値および前記第3評価値を算出してもよい。
【0013】
この構成によれば、ユーザからの圧力値に基づいて各評価値を精度よく算出することができる。
【0014】
また、前記圧力センサは、前記シート本体の左に配置される左センサと、前記シート本体の右に配置される右センサと、を備え、前記制御部は、前記左センサの圧力値と前記右センサの圧力値との差の大きさが大きいほど、前記座位年齢を大きくしてもよい。
【0015】
ここで、人は、高年齢になるほど骨盤のねじれなどによりシートに着座したときの上半身または下半身の左右の偏りが大きくなる。そのため、左センサの圧力値と右センサの圧力値との差の大きさが大きいほど座位年齢を大きくすることで、ユーザの上半身または下半身の左右の偏りが大きい人ほど高年齢となるように、座位年齢を適正に決定することができる。
【0016】
また、前記制御部は、前記第1所定時間中における前記圧力値の変動幅が大きいほど、前記座位年齢を大きくしてもよい。
【0017】
ここで、人は、高年齢になるほど、シート上での着座姿勢を維持することが難しく、身体のふらつきも大きい。そのため、第1所定時間中における圧力値の変動幅が大きいほど座位年齢を大きくすることで、第1所定時間中において姿勢を維持できない人ほど高年齢となるように、座位年齢を適正に決定することができる。
【0018】
また、前記制御部は、前記第2所定時間中における前記動作量を前記圧力値に基づいて算出し、前記動作量が大きいほど、前記座位年齢を小さくしてもよい。
【0019】
ここで、シート上での人の動作量は、若い人ほど大きい。そのため、動作量が大きいほど座位年齢を小さくすることで、シート上での動作量が大きい人ほど若年齢となるように、座位年齢を適正に決定することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、センサから取得した情報に基づいて、シートに着座したユーザの姿勢または動作に対応した座位年齢を決定することができる。
【0021】
また、第1評価値、第2評価値および第3評価値のうち少なくとも2つの評価値に基づいて座位年齢を決定することで、座位年齢をより精度よく決定することができる。
【0022】
また、第1評価値、第2評価値および第3評価値に基づいて座位年齢を決定することで、座位年齢をより精度よく決定することができる。
【0023】
また、センサを圧力センサとすることで、ユーザからの圧力値に基づいて各評価値を精度よく算出することができる。
【0024】
また、シート本体の左右に配置される左センサおよび右センサで検出した各圧力値の差の大きさが大きいほど座位年齢を大きくすることで、ユーザの上半身または下半身の左右の偏りが大きい人ほど高年齢となるように、座位年齢を適正に決定することができる。
【0025】
また、第1所定時間中における圧力値の変動幅が大きいほど座位年齢を大きくすることで、第1所定時間中において姿勢を維持できない人ほど高年齢となるように、座位年齢を適正に決定することができる。
【0026】
また、シート上でのユーザの動作量が大きいほど座位年齢を小さくすることで、シート上での動作量が大きい人ほど若年齢となるように、座位年齢を適正に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】一実施形態に係るシート体験システムを示す図である。
図2】スマートフォンでの処理を示すフローチャートである。
図3】座位年齢診断処理を示すフローチャートである。
図4】スタート画面を示す図である。
図5】第1指示画面を示す図(a)と、左右バランス年齢を表示する画面を示す図(b)である。
図6】第2指示画面を示す図(a)と、姿勢維持年齢を表示する画面を示す図(b)である。
図7】第3指示画面を示す図(a)と、筋力年齢を表示する画面を示す図(b)である。
図8】座位年齢を表示する画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態のシート体験システム1は、シートSと、シート体験装置10とを含んでなる。
シートSは、シート本体S10と、圧力センサ21~26とを備えてなる。シート本体S10は、一例として、車両などの乗物に設置される乗物用シートであり、シートクッションS1、シートバックS2およびヘッドレストS3を有する。シートクッションS1とシートバックS2には、表皮の下に複数の圧力センサ21~26が設けられている。圧力センサ21~26は、シート本体S10上のユーザの姿勢および動作を検出するための情報を取得するセンサである。
【0029】
圧力センサ21~26は、シート本体S10に着座するユーザに対向する座面の状態を検知可能に配置され、シート本体S10に座っているユーザからの圧力値を取得する。ECU(電子制御ユニット)100は、シート本体S10の動作(例えば、図示しない電動リクライニングのモータやヒータなど)を制御する装置であり、各圧力センサ21~26から、測定値を取得可能に圧力センサ21~26と接続されている。
【0030】
各圧力センサ21~26は、シートSの左右の中心に対して左右対称に1対ずつ設けられている。なお、以下の説明や図面においては、左側に配置される圧力センサ21~26については、符号の末尾に「L」を付して「左センサ」と称し、右側に配置される圧力センサ21~26については、符号の末尾に「R」を付して「右センサ」と称して区別することもある。
【0031】
シートクッションS1には、圧力センサ21~23が設けられている。
圧力センサ21は、ユーザの坐骨の最下部に対応する位置に設けられている。この位置では、ユーザの荷重が最も大きくかかる。
【0032】
圧力センサ22は、圧力センサ21の少し前に配置されている。
【0033】
圧力センサ21および圧力センサ22は、いずれも、ユーザの臀部からの圧力を測定するためのものであり、いずれか一方のみが設けられていてもよい。
【0034】
圧力センサ23は、圧力センサ21および圧力センサ22から前方に大きく離れて配置されている。圧力センサ23は、ユーザの大腿の下に位置し、ユーザの大腿からの圧力値を測定可能である。
【0035】
シートバックS2には、圧力センサ24~26が設けられている。圧力センサ24は、ユーザの腰に対応する位置に設けられている。
【0036】
圧力センサ25は、ユーザの背中に対応する位置、詳しくは圧力センサ24の少し上に配置されている。
【0037】
圧力センサ26は、圧力センサ24および圧力センサ25から上方に大きく離れて配置されている。圧力センサ26は、ユーザの肩に対応して位置し、ユーザの肩からの圧力値を測定可能である。
【0038】
本実施形態においては、シート体験システム1は、各圧力センサ21~26を使用した座位年齢診断を提供するものとする。ここで、座位年齢診断とは、シートSに着座したユーザの姿勢または動作に対応した座位年齢を決定して、ユーザに報知する処理である。詳しくは、シート体験システム1は、スマートフォンSPの画面であるディスプレイDSP上にユーザに対する指示を表示することで、ユーザを所定の姿勢にさせたり、ユーザに所定の動作を行わせたりして、座位年齢を決定する。
【0039】
シート本体S10には、スマートフォンSPを保持するためのホルダ4が設けられている。ホルダ4は、ワイヤを屈曲させて形成され、一端がシートバックS2に固定され、他端にスマートフォンSPを固定する固定部4Aが設けられている。固定部4AにスマートフォンSPを固定することで、ユーザは、スマートフォンSPを手に持たなくても、スマートフォンSPのディスプレイDSPを見ることができる。
【0040】
シート体験装置10は、ECU100と、制御部の一例としてのスマートフォンSPとを有してなる。
ECU100には、ブルートゥース(登録商標)またはWi-Fi(登録商標)などの近距離無線通信を可能にする近距離通信機3Aが接続されている。また、ECU100は、圧力センサ21~26と接続されている。本実施形態では、ECU100と近距離通信機3Aは、シート本体S10に設けられている。スマートフォンSPは、ECU100を介して、各圧力センサ21~26から測定値を取得する。
【0041】
ECU100およびスマートフォンSPは、図示しないCPU、ROM、RAM、書換可能な不揮発性メモリ等を有し、予め記憶されたプログラムを実行する。なお、スマートフォンSPは、ディスプレイDSPをさらに備えている。スマートフォンSPは、プログラムに従って動作することで、座位年齢診断を実行するための各手段として機能する。
【0042】
スマートフォンSPは、圧力センサ21~26のうち所定の圧力センサから取得した測定値に基づいて、座位年齢診断で用いる、第1評価値B2,C2、第2評価値D2および第3評価値E2を算出する機能を有している。第1評価値B2は、ユーザの上半身の左右の偏りに対応した評価値であり、第1評価値C2は、ユーザの下半身の左右の偏りに対応した評価値である。
【0043】
ここで、人は、高年齢になるほど骨盤のねじれなどによりシートSに着座したときの上半身または下半身の左右の偏りが大きくなる。そのため、第1評価値B2,C2に基づいて、上半身または下半身の左右の偏りの程度を特定することで、上半身または下半身の左右の偏りが大きいほど、年齢が高いと推測することができる。
【0044】
第2評価値D2は、第1所定時間中におけるユーザの姿勢の維持に対応した評価値である。具体的に、第2評価値D2は、第1所定時間中における圧力値の変動幅に相当している。
【0045】
ここで、人は、高年齢になるほど、シートS上での着座姿勢を維持することが難しく、身体のふらつきも大きい。そのため、第2評価値D2に基づいて、第1所定時間中における圧力値の変動幅を特定することで、変動幅が大きいほど、年齢が高いと推測することができる。
【0046】
第3評価値E2は、第2所定時間中におけるユーザの動作量に対応した評価値である。ここで、シート上でのユーザの動作量は、若い人ほど大きい。そのため、第3評価値E2に基づいて、シート上での動作量が大きい人ほど、年齢が低いと推定することができる。なお、本実施形態では、シートS上での動作は、シートS上においてユーザが両脚を交互に上下動させる動作とする。
【0047】
スマートフォンSPは、ユーザの腰・背中に対応した圧力センサ24,25から取得した圧力値に基づいて、上半身の左右の偏りを示す第1評価値B2を算出する。詳しくは、スマートフォンSPは、以下の式(1)により第1評価値B2を算出する。
B2 = (L4+L5)-(R4+R5) ・・・(1)
L4:規定時間中に左センサ24Lから取得した複数の圧力値の平均値
L5:規定時間中に左センサ25Lから取得した複数の圧力値の平均値
R4:規定時間中に右センサ24Rから取得した複数の圧力値の平均値
R5:規定時間中に右センサ25Rから取得した複数の圧力値の平均値
【0048】
また、スマートフォンSPは、算出した第1評価値B2と、以下の式(2)により、上半身の左右の偏りの程度を示す上半身偏り度合いB3を算出する。
B3 = |B2÷Ya1×100| ・・・(2)
Ya1:係数
【0049】
そして、スマートフォンSPは、第1評価値B2に基づいて上半身が左右のどちらに偏っているかを判定し、上半身偏り度合いB3に基づいて上半身の左右の偏りがどの程度かを判定している。詳しくは、スマートフォンSPは、第1評価値B2を、プラスのしきい値(Yb1)およびマイナスのしきい値(-Yb1)と比較することで、上半身が左右のどちらに偏っているかを判定する。
【0050】
なお、前述した係数Ya1やしきい値Yb1は、実験やシミュレーション等により適宜決定すればよい。また、係数Ya1やしきい値Yb1は、例えば複数のユーザから得られた圧力値の情報に基づいて、適宜変更してもよい。なお、後述する係数やしきい値についても同様である。
【0051】
B2>Yb1の場合には、スマートフォンSPは、上半身が左に偏っていると判定する。また、B2<-Yb1の場合には、スマートフォンSPは、上半身が右に偏っていると判定する。また、-Yb1≦B2≦Yb1の場合には、スマートフォンSPは、上半身が左右に偏っておらず、上半身の左右の荷重配分のバランスが良いと判定する。
【0052】
スマートフォンSPは、上半身偏り度合いB3を、しきい値Yb2,Yb3と比較することで、上半身の左右の偏りがどの程度かを判定する。ここで、しきい値Yb2,Yb3の大きさの関係は、Yb2<Yb3である。
【0053】
B3<Yb2の場合には、スマートフォンSPは、上半身が左右に偏っておらず、上半身の左右の荷重配分のバランスが良いと判定する。Yb2≦B3<Yb3の場合には、スマートフォンSPは、上半身が左右に少し偏っており、上半身の左右の荷重配分のバランスがあまり良くないと判定する。B3≧Yb3の場合には、スマートフォンSPは、上半身が左右に大きく偏っており、上半身の左右の荷重配分のバランスが悪いと判定する。
【0054】
また、スマートフォンSPは、第1評価値B2と、以下の式(3)により、上半身の左右の偏りに対応した座位年齢としての上半身バランス年齢B1を算出する。
B1 = Ya2×|B2|+Ya3 ・・・(3)
Ya2,Ya3:係数
【0055】
ここで、係数Ya2は、第1評価値B2を年齢に相当する数値に換算するための係数である。また、係数Ya3は、例えば、シート体験システム1を利用する複数のユーザの年齢層の幅のうち下限値とすることができる。具体的には、例えば、複数のユーザの年齢層の幅が、20~90才である場合には、Ya3=20とすることができる。
【0056】
式(1),(3)によって上半身バランス年齢B1を算出することで、スマートフォンSPは、腰に対応した、左センサ24Lの圧力値と右センサ24Rの圧力値との差の大きさが大きいほど、上半身バランス年齢B1を大きくする。また、スマートフォンSPは、背中に対応した、左センサ25Lの圧力値と右センサ25Rの圧力値との差の大きさが大きいほど、上半身バランス年齢B1を大きくする。
【0057】
なお、スマートフォンSPは、算出した上半身バランス年齢B1が、予め設定した複数のユーザの年齢層の幅の上限値よりも大きい場合には、上半身バランス年齢B1を年齢層の幅の上限値としてもよい。また、スマートフォンSPは、算出した上半身バランス年齢B1が、予め設定した複数のユーザの年齢層の幅の下限値よりも小さい場合には、上半身バランス年齢B1を年齢層の幅の下限値としてもよい。なお、この算出の仕方は、以下に示す他の年齢の算出に適用してもよい。
【0058】
スマートフォンSPは、ユーザの下半身に対応した圧力センサ21~23から取得した圧力値に基づいて、下半身の左右の偏りを示す第1評価値C2を算出する。詳しくは、スマートフォンSPは、以下の式(4)により第1評価値C2を算出する。
C2 = (L1+L2+L3)-(R1+R2+R3) ・・・(4)
L1:規定時間中に左センサ21Lから取得した複数の圧力値の平均値
L2:規定時間中に左センサ22Lから取得した複数の圧力値の平均値
L3:規定時間中に左センサ23Lから取得した複数の圧力値の平均値
R1:規定時間中に右センサ21Rから取得した複数の圧力値の平均値
R2:規定時間中に右センサ22Rから取得した複数の圧力値の平均値
R3:規定時間中に右センサ23Rから取得した複数の圧力値の平均値
【0059】
また、スマートフォンSPは、算出した第1評価値C2と、以下の式(5)により、下半身の左右の偏りの程度を示す下半身偏り度合いC3を算出する。
C3 = |C2÷Yc1×100| ・・・(5)
Yc1:係数
【0060】
そして、スマートフォンSPは、第1評価値C2に基づいて下半身が左右のどちらに偏っているかを判定し、下半身偏り度合いC3に基づいて下半身の左右の偏りがどの程度かを判定している。詳しくは、スマートフォンSPは、第1評価値C2を、プラスのしきい値(Yd1)およびマイナスのしきい値(-Yd1)と比較することで、下半身が左右のどちらに偏っているかを判定する。
【0061】
C2>Yd1の場合には、スマートフォンSPは、下半身が左に偏っていると判定する。また、C2<-Yd1の場合には、スマートフォンSPは、下半身が右に偏っていると判定する。また、-Yd1≦C2≦Yd1の場合には、スマートフォンSPは、下半身が左右に偏っておらず、下半身の左右の荷重配分のバランスが良いと判定する。
【0062】
スマートフォンSPは、下半身偏り度合いC3を、しきい値Yd2,Yd3と比較することで、下半身の左右の偏りがどの程度かを判定する。ここで、しきい値Yd2,Yd3の大きさの関係は、Yd2<Yd3である。
【0063】
C3<Yd2の場合には、スマートフォンSPは、下半身が左右に偏っておらず、下半身の左右の荷重配分のバランスが良いと判定する。Yd2≦C3<Yd3の場合には、スマートフォンSPは、下半身が左右に少し偏っており、下半身の左右の荷重配分のバランスがあまり良くないと判定する。B3≧Yb3の場合には、スマートフォンSPは、下半身が左右に大きく偏っており、下半身の左右の荷重配分のバランスが悪いと判定する。
【0064】
また、スマートフォンSPは、第1評価値C2と、以下の式(6)により、下半身の左右の偏りに対応した座位年齢としての下半身バランス年齢C1を算出する。
C1 = Yc2×|C2|+Yc3 ・・・(6)
Yc2,Yc3:係数
なお、係数Yc2,Yc3は、前述した係数Ya2,Ya3と同様に設定すればよい。
【0065】
式(4),(6)によって下半身バランス年齢C1を算出することで、スマートフォンSPは、座骨に対応した、左センサ21Lの圧力値と右センサ21Rの圧力値との差の大きさが大きいほど、下半身バランス年齢C1を大きくする。また、スマートフォンSPは、座骨の少し前の部位に対応した、左センサ22Lの圧力値と右センサ22Rの圧力値との差の大きさが大きいほど、下半身バランス年齢C1を大きくする。さらに、スマートフォンSPは、大腿に対応した、左センサ23Lの圧力値と右センサ23Rの圧力値との差の大きさが大きいほど、下半身バランス年齢C1を大きくする。
【0066】
スマートフォンSPは、上半身バランス年齢B1と、下半身バランス年齢C1と、以下の式(7)とに基づいて、ユーザの身体全体の左右のバランスに対応した座位年齢としての左右バランス年齢A1を算出する。
A1=Za1×B1+Za2×C1 ・・・(7)
Za1,Za2:係数
【0067】
ここで、係数Za1,Za2は、それぞれ1未満の値であって、足し合わせると1になる値に設定することができる。例えば、係数Za1,Za2は、それぞれ0.5に設定されてもよいし、重みづけをするために一方の係数を他方の係数よりも大きくしてもよい。
【0068】
スマートフォンSPは、ユーザの腰に対応した左センサ24Lおよび右センサ24Rから取得した圧力値に基づいて、第1所定時間中におけるユーザの姿勢の維持に対応した第2評価値D2を算出する。詳しくは、スマートフォンSPは、以下の式(8)により第2評価値D2を算出する。
D2
=(L4max + R4max)-(L4min + R4min) ・・(8)
L4max:第1所定時間中に左センサ24Lから取得した圧力値の最大値
R4max:第1所定時間中に右センサ24Rから取得した圧力値の最大値
L4min:第1所定時間中に左センサ24Lから取得した圧力値の最小値
R4min:第1所定時間中に右センサ24Rから取得した圧力値の最小値
【0069】
また、スマートフォンSPは、算出した第2評価値D2と、以下の式(9)により、ユーザの姿勢の程度を示す姿勢維持度合いD3を算出する。
D3 = |D2÷Wa1×100| ・・・(9)
Wa1:係数
【0070】
そして、スマートフォンSPは、姿勢維持度合いD3に基づいて、ユーザがどの程度姿勢を維持できているかを判定している。詳しくは、スマートフォンSPは、姿勢維持度合いD3を、しきい値Wb1,Wb2と比較することで、ユーザがどの程度姿勢を維持できているかを判定している。ここで、しきい値Wb1,Wb2の大きさの関係は、Wb1<Wb2である。
【0071】
D3<Wb1の場合には、スマートフォンSPは、ユーザの姿勢の維持が良好になされていると判定する。Wb1≦D3<Wb2の場合には、スマートフォンSPは、第1所定時間中においてユーザの身体が多少ふらついており、ユーザの姿勢の維持があまり良好になされていないと判定する。D3≧Wb2の場合には、スマートフォンSPは、第1所定時間中においてユーザの身体が大きくふらついており、ユーザの姿勢の維持が良好でない、つまり悪いと判定する。
【0072】
また、スマートフォンSPは、第2評価値D2と、以下の式(10)により、ユーザの姿勢の維持に対応した座位年齢としての姿勢維持年齢D1を算出する。
D1 = Wa2×|D2|+Wa3 ・・・(10)
Wa2,Wa3:係数
なお、係数Wa2,Wa3は、前述した係数Ya2,Ya3と同様に設定すればよい。
【0073】
式(8),(10)によって姿勢維持年齢D1を算出することで、スマートフォンSPは、第1所定時間中における左センサ24Lの圧力値の変動幅が大きいほど、姿勢維持年齢D1を大きくする。また、スマートフォンSPは、第1所定時間中における右センサ24Rの圧力値の変動幅が大きいほど、姿勢維持年齢D1を大きくする。
【0074】
スマートフォンSPは、ユーザの大腿に対応した左センサ23Lおよび右センサ23Rから取得した圧力値に基づいて、第2所定時間中におけるユーザの動作量に対応した第3評価値E2を算出する。詳しくは、スマートフォンSPは、以下の式(11)により第3評価値E2を算出する。
E2=ΣE(t) ・・・(11)
E(t)=|L3(t)-R3(t)|
L3(t):第2所定時間中の所定のタイミングで左センサ23Lから取得した圧力値
R3(t):第2所定時間中の所定のタイミングで右センサ23Rから取得した圧力値
【0075】
つまり、スマートフォンSPは、第2所定時間中において、左センサ23Lおよび右センサ23Rから圧力値を取得するたびに、左センサ24Lの圧力値から右センサ24Rの圧力値を引いた値の絶対値を求め、絶対値を順次積算している。そのため、第3評価値E2は、シートS上において上げ下げする各脚の動作量が大きいほど、大きな値となる。
【0076】
なお、本実施形態では、式(11)より動作量としての第3評価値E2を算出するが、他の方法で第3評価値E2を算出してもよい。例えば、ユーザの両脚を交互に上下動させる回数を圧力値から求め、回数を第3評価値E2としてもよい。
【0077】
また、スマートフォンSPは、算出した第3評価値E2と、以下の式(12)により、ユーザの動作量に応じたユーザの筋力の程度を示す筋力レベルE3を算出する。
E3 = E2÷Va1×100 ・・・(12)
Va1:係数
【0078】
スマートフォンSPは、筋力レベルE3を、しきい値Vb1,Vb2と比較することで、ユーザの筋力レベルがどの程度かを判定する。ここで、しきい値Vb1,Vb2の大きさの関係は、Vb1>Vb2である。
【0079】
E3>Vb1の場合、スマートフォンSPは、ユーザの筋力レベルが十分高いため、筋力レベルが良好であると判定する。Vb1≧E3>Vb2の場合、スマートフォンSPは、ユーザの筋力レベルがあまり良好でないと判定する。E3≦Vb2の場合、スマートフォンSPは、ユーザの筋力レベルが良好でない、つまり悪いと判定する。
【0080】
また、スマートフォンSPは、第3評価値E2と、以下の式(13)により、ユーザの動作量に対応した座位年齢としての筋力年齢E1を算出する。
E1 = |-Va2×E2+Va3|・・・(13)
-Va2,Va3:係数
【0081】
ここで、係数-Va2は、第3評価値E2を年齢に相当する数値に換算するための負の係数である。また、係数Va3は、例えば、シート体験システム1を利用する複数のユーザの年齢層の幅のうち上限値とすることができる。具体的には、例えば、複数のユーザの年齢層の幅が、20~90才である場合には、Va3=90とすることができる。
【0082】
式(11),(13)によって筋力年齢E1を算出することで、スマートフォンSPは、シートS上でのユーザの動作量が大きいほど、筋力年齢E1を小さくする。
【0083】
スマートフォンSPは、左右バランス年齢A1と、姿勢維持年齢D1と、筋力年齢E1と、以下の式(14)とによって、ユーザの身体の左右の偏り、姿勢維持および筋力を考慮したユーザの座位年齢Asを算出する。
As=Ta1×A1+Ta2×D1+Ta3×E1 ・・・(14)
Ta1,Ta2,Ta3:係数
【0084】
ここで、係数Ta1,Ta2,Ta3は、それぞれ1未満の値であって、足し合わせると略1になる値に設定することができる。例えば、係数Ta1,Ta2,Ta3は、それぞれ0.3に設定されてもよいし、重みづけをするために係数Ta1,Ta2,Ta3をそれぞれ異なる値にしてもよい。
【0085】
なお、左右バランス年齢A1は、前述した式(3),(6),(7)より、第1評価値B2,C2に基づいて算出される。また、姿勢維持年齢D1は、前述した式(10)より、第2評価値D2に基づいて算出され、筋力年齢E1は、前述した式(13)より、第3評価値E2に基づいて算出される。そのため、スマートフォンSPは、第1評価値B2,C2、第2評価値D2および第3評価値E2に基づいて、座位年齢Asを決定している。
【0086】
次に、スマートフォンSPの動作について詳細に説明する。
スマートフォンSPは、ユーザが座位年齢診断を行うためのアプリケーションを立ち上げると、図2に示す処理を開始する(START)。この処理において、スマートフォンSPは、まず、シートSと通信可能な状態であるか否かを判断する(S41)。
【0087】
ステップS41において通信可能な状態でないと判断した場合には(No)、スマートフォンSPは、本処理を終了する。ステップS41において通信可能な状態であると判断した場合には(Yes)、スマートフォンSPは、座位年齢診断のスタート画面(図4参照)をディスプレイDSP上に表示する(S42)。
【0088】
なお、図4に示すスタート画面では、座位年齢診断を開始するためのスタートボタンBSと、座位年齢診断を終了するためのボタンBEとが表示されている。
【0089】
ステップS42の後、スマートフォンSPは、スタートボタンBSが選択されたか否かを判断する(S43)。ステップS43においてスタートボタンBSが選択されたと判断した場合には(Yes)、座位年齢診断処理を開始する(S44)。なお、座位年齢診断処理については、後で詳述する。
【0090】
座位年齢診断処理が終了すると、スマートフォンSPは、図4に示すスタート画面を表示する。図2に戻って、ステップS44の後、または、ステップS43においてNoと判断した場合には、スマートフォンSPは、座位年齢診断を終了するためのボタンBEが選択されたか否かを判断する(S45)。ステップS45においてボタンBEが選択されていないと判断した場合には(No)、スマートフォンSPは、ステップS42の処理に戻る。ステップS45においてボタンBEが選択されたと判断した場合には(Yes)、スマートフォンSPは、本処理を終了する。
【0091】
図3に示すように、座位年齢診断処理において、スマートフォンSPは、まず、図5(a)に示すような第1指示画面をディスプレイDSPに表示することで、ユーザを第1姿勢でシートSに着座させることを促す指示をユーザに対して行う(S61)。第1指示画面では、例えば、「規定時間の間、背中をシートに密着させてください。」などのメッセージや、第1姿勢でシートS上に着座しているユーザを示す図などが表示される。
【0092】
このようにユーザに第1姿勢をとるように促す指示を出すことで、ユーザがシートSに深く腰掛けてリラックスすることになるので、ユーザの身体の左右の偏りの判定を良好に行うことが可能となる。ステップS61の後、スマートフォンSPは、規定時間の間、ユーザの下半身、腰および背中に対応した左右の圧力センサ21~25から圧力値を制御サイクルごとに順次取得する(S62)。ここで、規定時間は、例えば5秒などの比較的短い時間とすることができる。
【0093】
ステップS62の後、スマートフォンSPは、取得した各圧力値に基づいて、左右バランス年齢A1を算出するとともに、算出した左右バランス年齢A1を図5(b)に示すようにディスプレイDSPに表示する(S63)。詳しくは、スマートフォンSPは、圧力センサ24,25の圧力値に基づいて算出した上半身バランス年齢B1と、圧力センサ21~23の圧力値に基づいて算出した下半身バランス年齢C1とに基づいて、左右バランス年齢A1を算出する。
【0094】
また、スマートフォンSPは、ステップS63において、ユーザの上半身および下半身がそれぞれ左右のどちらにどの程度偏っているかを、前述した第1評価値B2,C2、上半身偏り度合いB3および下半身偏り度合いC3に基づいて判定する。そして、スマートフォンSPは、図5(b)に示すように、判定結果(具体的には、良好、あまり良好でない、悪いといった判定結果)を、ゲージGA上に表示されるカーソルCSの種類で表示し、上半身偏り度合いB3および下半身偏り度合いC3を、カーソルCSの位置やシートS上の圧力センサの位置を示す図などによって表示する。
【0095】
ここで、ゲージGAは、左右方向に延びる直線に目盛りが振られたゲージであり、その中央の目盛りに、判定結果が良好であることを示す「Good」の表示がされている。
【0096】
カーソルCSは、上半身の左右の偏りの度合いが大きいほど、「Good」の表示から離れた位置に配置される。また、カーソルCSの種類は、判定結果に応じて変わるようになっている。例えば、判定結果が良好である場合には、カーソルCSは、晴れマークとなる。また、判定結果があまり良くない場合には、カーソルCSは、曇りマークとなる。また、判定結果が悪い場合には、カーソルCSは、雨マーク(図7(b)参照)となる。
【0097】
スマートフォンSPは、例えば、ユーザの上半身が左に少し偏っていると判定した場合には、上半身に対応したカーソルCSを、曇りマークにするとともに、ゲージGAの中央から左に所定量ずれた位置に配置する。また、スマートフォンSPは、例えば、ユーザの下半身が左右にほとんど偏っていないが若干右寄りであると判定した場合には、下半身に対応したカーソルCSを、晴れマークにするとともに、ゲージGAの中央から僅かに右にずれた位置に配置する。
【0098】
圧力センサの位置を示す図においては、左右の圧力センサのうち大きな圧力値が検出された方の圧力センサを強調して表示する。
【0099】
また、スマートフォンSPは、メッセージによっても判定結果を表示する。例えば、スマートフォンSPは、ユーザの上半身が左に少し偏っていると判定した場合には、上半身の偏りを示すゲージGAの下において、「やや左に偏る傾向です。」というメッセージを表示する。また、スマートフォンSPは、下半身の判定結果に対するメッセージも同様にして行う。
【0100】
ステップS63の後、スマートフォンSPは、図6(a)に示すような第2指示画面をディスプレイDSPに表示することで、ユーザを第2姿勢でシートSに着座させることを促す指示をユーザに対して行う(S64)。第2指示画面では、例えば、「第1所定時間の間、背中をシートから離してください。」などのメッセージや、第2姿勢でシートS上に着座しているユーザを示す図などが表示される。
【0101】
このようにユーザに第2姿勢をとるように促す指示を出すことで、ユーザの上半身が不安定となり高齢者などによっては姿勢を維持することが難しくなるので、姿勢が維持されるかの判定を良好に行うことが可能となる。ステップS64の後、スマートフォンSPは、第1所定時間の間、ユーザの腰に対応した左右の圧力センサ24から圧力値を制御サイクルごとに順次取得する(S65)。ここで、第1所定時間は、前述した規定時間よりも長い時間、例えば30秒などとすることができる。
【0102】
ステップS65の後、スマートフォンSPは、取得した各圧力値に基づいて、姿勢維持年齢D1を算出するとともに、算出した姿勢維持年齢D1を図6(b)に示すようにディスプレイDSPに表示する(S66)。また、スマートフォンSPは、ステップS66において、ユーザがどの程度姿勢を維持できているかを、前述した姿勢維持度合いD3に基づいて判定する。そして、スマートフォンSPは、判定結果を、図6(b)に示すように、ゲージGBおよびカーソルCSによってユーザに報知する。
【0103】
ここで、ゲージGBは、左右方向に延びる直線に目盛りが振られたゲージであり、その右端の目盛りに、判定結果が良好であることを示す「Good」の表示がされ、その左端の目盛りに、判定結果が悪いことを示す「Bad」の表示がされている。カーソルCSやゲージGBの下に表示するメッセージは、前述した通りである。
【0104】
ステップS66の後、スマートフォンSPは、図7(a)に示すような第3指示画面をディスプレイDSPに表示することで、ユーザに所定の動作を行わせることを促す指示をユーザに対して行う(S67)。第3指示画面では、例えば、「第2所定時間の間、両脚を交互に上下動させてください。」などのメッセージや、シートS上でユーザが両脚を交互に動かしている図などが表示される。
【0105】
これにより、ユーザは、どのような動作を行えばよいかを、図解付きで良好に理解することができるので、ユーザの動作量がどの程度かの判定を良好に行うことが可能となる。ステップS67の後、スマートフォンSPは、第2所定時間の間、ユーザの大腿に対応した左右の圧力センサ23から圧力値を制御サイクルごとに順次取得する(S68)。ここで、第2所定時間は、前述した規定時間よりも長い時間、例えば30秒などとすることができる。
【0106】
ステップS68の後、スマートフォンSPは、取得した各圧力値に基づいて、筋力年齢E1を算出するとともに、算出した筋力年齢E1を図7(b)に示すようにディスプレイDSPに表示する(S69)。また、スマートフォンSPは、ステップS69において、ユーザの動作量がどの程度であるかを、前述した筋力レベルE3に基づいて判定する。そして、スマートフォンSPは、判定結果を、図7(b)に示すように、ゲージGBおよびカーソルCSによってユーザに報知する。
【0107】
ステップS69の後、スマートフォンSPは、左右バランス年齢A1、姿勢維持年齢D1および筋力年齢E1に基づいて座位年齢Asを算出するとともに、算出した座位年齢Asを図8に示すようにディスプレイDSPに表示して(S70)、本処理を終了する。なお、スマートフォンSPは、座位年齢Asを表示する画面において、左右バランス年齢A1、姿勢維持年齢D1および筋力年齢E1を表示してもよい。なお、図8では、左右バランス年齢A1、姿勢維持年齢D1および筋力年齢E1を、レーダーチャートで表示しているが、棒グラフなどで表示してもよい。
【0108】
次に、シート体験システム1の具体的な動作の一例を詳細に説明する。
図1に示すように、シート体験システム1を構成する各機器(S,SP)が通信可能な状態において、ユーザがスマートフォンSPを操作して座位年齢診断を立ち上げると、図2に示す処理において、ステップS41:Yes→ステップS42の処理が順次実行される。これにより、図4(a)に示すスタート画面が、ディスプレイDSPに表示される。ユーザがスタートボタンBSを選択すると、ステップS43でYesと判断されて、座位年齢診断処理が実行される。
【0109】
座位年齢診断処理が実行されると、まず、図3のステップS61の処理により、図5(a)に示す第1指示画面がディスプレイDSPに表示される。ユーザは、第1指示画面の指示に従って、背中をシートSに密着させた第1姿勢を、規定時間の間、維持する。その後、スマートフォンSPは、規定時間の間、左右の圧力センサ21~25から圧力値を取得し、各圧力値に基づいて左右バランス年齢A1を算出する(S62,S63)。具体的に、スマートフォンSPは、ユーザの上半身および下半身の左右の偏りが大きいほど、高年齢となるように左右バランス年齢A1を大きな値に決定する。
【0110】
その後、スマートフォンSPは、図6(a)に示す第2指示画面をディスプレイDSPに表示する(S64)。ユーザは、第2指示画面の指示に従って、背中をシートSから離した姿勢を、第1所定時間の間、維持する。その後、スマートフォンSPは、第1所定時間の間、左右の圧力センサ24から圧力値を取得し、各圧力値に基づいて姿勢維持年齢D1を算出する(S65,S66)。具体的に、スマートフォンSPは、ユーザの身体のふらつきが大きいほど、高年齢となるように姿勢維持年齢D1を大きな値に決定する。
【0111】
その後、スマートフォンSPは、図7(a)に示す第3指示画面をディスプレイDSPに表示する(S67)。ユーザは、第3指示画面の指示に従って、第2所定時間の間、両脚を交互に上下動させる。その後、スマートフォンSPは、第2所定時間の間、左右の圧力センサ23から圧力値を取得し、各圧力値に基づいて筋力年齢E1を算出する(S68,S69)。具体的に、スマートフォンSPは、ユーザの動作量が大きいほど、若年齢となるように筋力年齢E1を小さな値に決定する。
【0112】
その後、スマートフォンSPは、左右バランス年齢A1、姿勢維持年齢D1および筋力年齢E1に基づいて座位年齢Asを算出して、図8に示すように、座位年齢Asを表示する(S70)。なお、スマートフォンSPは、座位年齢Asを表示した後、図4に示すスタート画面をディスプレイDSPに表示する。
【0113】
以上のような本実施形態のシート体験システム1において、次の各効果を奏することができる。
圧力センサ21~25から取得した圧力値に基づいて、シートSに着座したユーザの姿勢または動作に対応した座位年齢Asを決定することができる。特に、本実施形態では、第1評価値B2,C2、第2評価値D2および第3評価値E2に基づいて座位年齢Asを決定したので、座位年齢Asを精度よく決定することができる。
【0114】
圧力センサ21~25から取得した圧力値に基づいて各評価値を算出するので、例えば光センサから取得した情報に基づいて各評価値を算出する方法に比べ、各評価値を精度よく算出することができる。
【0115】
また、前記圧力センサは、前記シート本体の左に配置される左センサと、前記シート本体の右に配置される右センサと、を備え、前記制御部は、前記左センサの圧力値と前記右センサの圧力値との差の大きさが大きいほど、前記第1評価値を大きくしてもよい。
【0116】
左センサの圧力値と右センサの圧力値との差の大きさが大きいほど第1評価値B2,C2が大きくなるので、ユーザの上半身または下半身の左右の偏りが大きい人ほど高年齢となるように、座位年齢Asを適正に決定することができる。
【0117】
第1所定時間中における圧力値の変動幅が大きいほど第2評価値D2が大きくなるので、第1所定時間中において姿勢を維持できない人ほど高年齢となるように、座位年齢Asを適正に決定することができる。
【0118】
シートS上でのユーザの動作量が大きいほど第3評価値E2が小さくなるので、シートS上での動作量が大きい人ほど若年齢となるように、座位年齢Asを適正に決定することができる。
【0119】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以下の他の形態に示すように、適宜変形して実施することが可能である。
【0120】
前記実施形態では、ユーザの上半身と下半身に対応した2つの第1評価値を座位年齢の算出に利用したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ユーザの上半身に対応した第1評価値のみを座位年齢の算出に利用してもよいし、ユーザの下半身に対応した第1評価値のみを座位年齢の算出に利用してもよい。
【0121】
前記実施形態では、上半身の左右の偏りを、腰・背中に対応した2組の左センサ・右センサで検出したが、本発明はこれに限定されず、背骨の延びる方向(上下方向)において同じ位置に位置する左センサおよび右センサの組であれば、1組であってもよいし、3組以上であってもよい。具体的には、例えば、肩に対応した1組の左センサ・右センサで上半身の左右の偏りを検出してもよい。
【0122】
前記実施形態では、下半身の左右の偏りを、大腿・臀部に対応した3組の左センサ・右センサで検出したが、本発明はこれに限定されず、脚の延びる方向(前後方向)において同じ位置に位置する左センサおよび右センサの組であれば、1組であってもよいし、3組以外の複数組であってもよい。
【0123】
前記実施形態では、第1評価値B2,C2、第2評価値D2および第3評価値E2に基づいて座位年齢Asを決定したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1評価値、第2評価値および第3評価値のうち、1つの評価値に基づいて座位年齢を決定してもよいし、2つの評価値に基づいて座位年齢を決定してもよい。
【0124】
座位年齢診断時において、ユーザの実年齢をスマートフォンの画面から入力可能になっていてもよい。この場合、例えば、実年齢と、座位年齢診断の結果を、クラウドサーバにアップロードしてもよい。これによれば、クラウドサーバを介して、同年代の座位年齢をスマートフォンの画面で見ることができる。また、この場合、同年代の座位年齢の平均値を算出して、その平均値をスマートフォンの画面に表示させることができる。
【0125】
前記実施形態では、制御部としてスマートフォンSPを例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、制御部は、ECU100であってもよい。
【0126】
前記実施形態では、座位年齢を画面に表示することでユーザに報知したが、本発明はこれに限定されず、例えば、音声などによってユーザに座位年齢を報知してもよい。
【0127】
前述したシート体験システムは、自動運転車にも適用することができる。この場合、自動運転時に、シート体験システムを使用可能な設定にするとよい。また、シート体験システムの使用中においては、自動運転解除前に、シート体験システムの使用を制限するとよい。なお、この場合、突然に使用制限とならないように、事前案内手段を作動させて、音声案内や表示案内によって、所定時間後に使用制限となる旨を通知してもよい。
【0128】
また、車両の停車時のみに、シート体験システムを使用可能に設定してもよい。なお、停車の判定は、車速が0であるかや、シフトレバーがパーキングレンジに位置するかなどで、判定すればよい。
【0129】
シート体験システムの制御部は、外部環境やシート体験システム自体の異常を取得可能となっていてもよい。この場合、異常を取得したときに、シート体験システムの使用を制限するとよい。シート体験システム自体の異常としては、例えば、センサの異常、ハーネスの異常(断線)、ECU異常、通信異常(端末の異常を含む)、シートに設けたヒータやファンなどの温度調整装置の異常や、シートの一部または全部を動かすアクチュエータの異常や、シートウェイトセンサや温度センサなどの他のセンサの異常や、シートに用いられる芳香剤の容量が少ないなど、消耗品の残量や使用状況に関する異常や、シート制御部自体の異常等が含まれる。また、外部環境の異常としては、例えば、アプリを実行するのに望ましくない状況であり、他の車が接近しているとか、道路状況が悪い、車速が高い、地震が発生した、目的地が近い、目的地に着いた、目的地に着くまでゲームが終わらないことが予測される、残燃料が少ない、バッテリーの残容量が少ない、車内または車外の温度や湿度が高い、等が含まれる。
【0130】
使用を制限する方法は、一度の異常で制限する方法や、複数回の異常で制限する方法などが挙げられる。制限の仕方も何段階か設定可能である。例えば、第1段階では、使用を止めたほうが好ましいことを勧めることをメッセージや音声等で報知し、第2段階では、使用の禁止を強く提案することをメッセージや音声等で報知し、第3段階では、システムを強制終了する。
【0131】
また、所定箇所のセンサの異常を検出したときには、異常が検出されていないセンサを使った座位年齢診断を推奨するように、シート体験システムを構成することもできる。例えば、シートクッションの座面のセンサが異常である場合には、シートクッションの座面の左右両側にある座面から盛り上がった側部のセンサを使った座位年齢診断を推奨する。
【0132】
前記実施形態では、センサとして圧力センサ21~26を例示したが、本発明はこれに限定されず、センサは、例えば光センサや静電容量センサなどであってもよい。
【0133】
また、センサは、シートクッションまたはシートバックの左右の側部(座面から突出した部分)、ヘッドレスト、アームレスト、または、シート周りの部品(インパネ、ドア、フロア)などに設けられていてもよい。
【0134】
前記実施形態では、シートSとして、自動車で使用される車両用シートを例示したが、本発明はこれに限定されず、その他の乗物用シート、例えば、船舶や航空機などで使用されるシートに適用することもできる。また、シートは、乗物用シートに限らず、例えば、座椅子などであってもよい。
【0135】
前記実施形態では、端末としてスマートフォンSPを例示したが、本発明はこれに限定されず、端末は、例えばタブレットなどのスマートフォンSP以外の携帯端末であってもよい。また、端末は、シートに備え付けの端末であり、シートに一体に設けられていてもよい。また、端末は、カーナビゲーションシステムを構成する端末であってもよい。
【0136】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0137】
1 シート体験システム
21~26 圧力センサ
As 座位年齢
S シート
S10 シート本体
SP スマートフォン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8