(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】電力融通システム、および制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20241204BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20241204BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20241204BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20241204BHJP
H02J 3/06 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
H02J13/00 311B
H02J3/38 130
H02J3/38 110
H02J3/32
H02J3/00 150
H02J3/06
(21)【出願番号】P 2020208657
(22)【出願日】2020-12-16
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】片元 優太
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-177580(JP,A)
【文献】特開2008-253118(JP,A)
【文献】特開2009-178006(JP,A)
【文献】特開2010-183680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00 - 1/16
H02J 3/00 - 5/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の配電ユニットが共通の配電線に接続される電力融通システムであって、
前記複数の配電ユニットは、該複数の配電ユニットの1つから構成され、
前記配電線の電圧を制御する電圧制御によって他の配電ユニットへの電力融通を制御するマスタ機と、前記他の配電ユニットから構成されるスレーブ機とを含み、
前記複数の配電ユニットの各々には、互いに異なる固有電圧が予め割り当てられており、
前記マスタ機は、該マスタ機としての動作が継続できない場合、自装置に割り当てられた前記固有電圧に前記配電線を電圧変化させ、
前記配電線の電圧変化に基づいて、
前記スレーブ機のうちの1つが前記電圧制御を引き継ぐように前記マスタ機を前記スレーブ機のうちの1つに切り替える、電力融通システム。
【請求項2】
前記スレーブ機は、前記マスタ機に割り当てられた前記固有電圧に前記配電線が電圧変化した場合、自装置がマスタ機に切り替わることができるか否かを判定する、請求項
1に記載の電力融通システム。
【請求項3】
前記マスタ機は、該マスタ機としての動作が継続できる場合、前記スレーブ機に割り当てられた前記固有電圧に基づいて前記配電線の電圧を変化させる、請求項
1または2に記載の電力融通システム。
【請求項4】
前記スレーブ機が複数である場合、前記マスタ機は、前記スレーブ機に割り当てられた複数の前記固有電圧に基づいて前記配電線の電圧を段階的に切り替える、請求項
3に記載の電力融通システム。
【請求項5】
前記スレーブ機は、自装置に割り当てられた前記固有電圧に前記配電線が電圧変化した場合、前記マスタ機から電力融通を受けるか否かを判定する、請求項
4に記載の電力融通システム。
【請求項6】
複数の配電ユニットが共通の配電線に接続される電力融通システムの制御方法であって、
前記複数の配電ユニットは、前記複数の配電ユニットの1つから構成され、
前記配電線の電圧を制御する電圧制御によって他の配電ユニットへの配電を制御するマスタ機と、前記他の配電ユニットから構成されるスレーブ機とを含み、
前記複数の配電ユニットの各々には、互いに異なる固有電圧が予め割り当てられており、
前記マスタ機は、該マスタ機としての動作が継続できない場合、自装置に割り当てられた前記固有電圧に前記配電線を電圧変化させ、
前記配電線の電圧変化に基づいて、
前記スレーブ機のうちの1つが前記電圧制御を引き継ぐように前記マスタ機を前記スレーブ機のうちの1つに切り替える切替ステップを含む、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力融通システムおよび該電力融通システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自立マイクログリッド間で電力融通を行う電力融通システムが知られている。この種の電力融通システムに関連して、例えば特許文献1には、太陽光発電設備、DC-DCコンバータおよび蓄電池等を組み合わせて1つのノード(ユニット)とし、複数のノード間で電力融通を行う電力融通システムが提案されている。この電力融通システムでは、中央制御装置が、各ノードの電力状態の情報を受信し、各ノードへ電力融通情報を送信することにより、ノード間の電力融通の制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来技術では、ノード間の電力融通の制御を行うための中央制御装置、各ノードの電力潮流を検出するためのセンサを設置する必要性がある。このため、システム構築にコストを要するという課題があった。また、中央制御装置等のマスタ機および各ノード間の制御装置に異常が発生した場合に、システムが正常に機能しなくなるという課題があった。
【0005】
本発明の一態様は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、マスタ機に異常等が発生した場合であっても電力融通の制御を継続可能なシステムを低コストで実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る電力融通システムは、複数の配電ユニットが共通の配電線に接続される電力融通システムであって、前記複数の配電ユニットは、該複数の配電ユニットの1つから構成され、他の配電ユニットへの電力融通を制御するマスタ機と、前記他の配電ユニットから構成されるスレーブ機とを含み、前記配電線の電圧変化に基づいて、前記マスタ機を前記スレーブ機のうちの1つに切り替える。
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る制御方法は、複数の配電ユニットが共通の配電線に接続される電力融通システムの制御方法であって、前記複数の配電ユニットは、前記複数の配電ユニットの1つから構成され、他の配電ユニットへの配電を制御するマスタ機と、前記他の配電ユニットから構成されるスレーブ機とを含み、前記配電線の電圧変化に基づいて、前記マスタ機を前記スレーブ機のうちの1つに切り替える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、マスタ機に異常等が発生した場合であっても電力融通制御を継続可能なシステムを低コストで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る電力融通システムの概略構成を示す概念図である。
【
図2】
図1に示される電力融通システムの主要構成を示すブロック図である。
【
図3】マスタ機(第1配電ユニット)およびスレーブ機(第2配電ユニット~第4ユニット)の基本動作を示すタイミングチャートである。
【
図4】マスタ機(第1配電ユニット)およびスレーブ機(第3配電ユニット)の電力融通動作を示すタイミングチャートである。
【
図5】マスタ機の基本動作および電力融通動作を示すフローチャートである。
【
図6】スレーブ機の基本動作および電力融通動作を示すフローチャートである。
【
図7】マスタ機(第1配電ユニット)およびスレーブ機(第2配電ユニット~第4配電ユニット)のマスタ機の切り換え動作を示すタイミングチャートである。
【
図8】第1配電ユニットから第3配電ユニットへのマスタ機の切り換え動作を示すタイミングチャートである。
【
図9】マスタ機におけるマスタ機切り換え動作を示すフローチャートである。
【
図10】スレーブ機におけるマスタ機切り換え動作の工程を表すフローチャートである。
【
図11】実施形態に係る電力融通システムの状態遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下の説明は本発明に係る電力融通システムの一例であり、本発明の技術的範囲は図示例に限定されるものではない。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0011】
〔電力融通システムの概要〕
まず、本実施形態に係る電力融通システム100の概要を説明する、
図1は、本実施形態に係る電力融通システム100の概略構成を示す概念図である。
図1に示すように、電力融通システム100は、共通の配電線Lに接続される複数の配電ユニットを含む。図示の例では、電力融通システム100は、複数の配電ユニットとして、第1配電ユニット1、第2配電ユニット2、第3配電ユニット3、および第4配電ユニットの4つの配電ユニットを含む。なお、共通の配電線Lに接続される配電ユニットの数は、少なくとも2つ以上であればよい。
【0012】
第1配電ユニット1~第4配電ユニット4は、需要家C1~C4単位に設置される直流配電ユニットである。第1配電ユニット1~第4配電ユニット4は、需要家C1~C4間で電力融通を行う。需要家C1~C4の各々は自立マイクログリッドであってもよい。
【0013】
これらの第1配電ユニット1~第4配電ユニット4は、第1配電ユニット1~第4配電ユニット4の1つから構成され、他の配電ユニットへの電力融通(配電)を制御するマスタ機と、マスタ機を除く他の配電ユニットから構成されるスレーブ機とを含む。例えば、第1配電ユニット1がマスタ機として動作する場合、残りの第2配電ユニット2~第4配電ユニット4がスレーブ機として動作する。
【0014】
本実施形態に係る電力融通システム100では、配電線Lの電圧変化に基づいて、マスタ機をスレーブ機のうちの1つに切り替え可能になっている。従って、仮にマスタ機として動作する配電ユニットに異常等が発生した場合であっても、他の配電ユニットにマスタ機を切り替えることにより、電力融通の制御を継続することができる。
【0015】
〔電力融通システムの構成〕
図2は、
図1に示される電力融通システム100の主要構成を示すブロック図である。
図2に示すように、電力融通システム100では、第1配電ユニット1~第4配電ユニット4が共通の配電線Lに接続される。
【0016】
配電線Lは、商用電力系統を介さずに、第1配電ユニット1~第4配電ユニット4の各々を電気的に接続する電力線である。本実施形態では、配電線Lは、直流電力を送電するDC(Direct Current)配電線から構成される。
【0017】
第1配電ユニット1~第4配電ユニット4は、共通の配電線Lを介して、第1配電ユニット1~第4配電ユニット4間で互いに直流電力を需給して電力融通し合う。これらの第1配電ユニット1~第4配電ユニット4の各々は、何れも共通の構成および機能を有する。このため、以下では、第1配電ユニット1の構成例について説明を行い、第2配電ユニット2~第4配電ユニット4の構成例についての説明を省略する。
【0018】
(配電ユニットの構成)
第1配電ユニット1は、太陽光発電装置11、蓄電池12、DC-DCコンバータ13、電圧センサ14、電流センサ15、記憶部16、および制御部17を備える。
【0019】
太陽光発電装置11は、太陽光を直流電力に変換する光電変換素子を有する発電装置である。太陽光発電装置11は、太陽光の日射量に応じて直流電力を発電する。なお、第1配電ユニット1は、太陽光で発電する太陽光発電装置11に代えて、または太陽光発電装置11と共に、太陽光以外の自然エネルギーまたは再生可能エネルギーで発電する発電装置を備えてもよい。
【0020】
蓄電池12は、直流電力を充放電するバッテリーである。蓄電池12は、例えば、リチウムイオン電池、NaS(ナトリウム・硫黄)電池、レドックスフロー電池、鉛蓄電池等の2次電池から構成される。蓄電池12に蓄えられた直流電力は、DC-DCコンバータ13を介して、第2配電ユニット2~第4配電ユニット4等へ供給される。また、蓄電池12に蓄えられた直流電力は、需要家C1に設置される負荷20等へ供給される。
【0021】
なお、負荷20は、需要家C1に設置される電気機器等の電気的な負荷である。本実施形態では、負荷20は、例えば直流電力によって動作する直流負荷である。ただし、負荷20は、直流電力を交流電力へ変換するDC-ACインバータ等によって変換された交流電力によって動作する交流負荷であってもよい。
【0022】
DC-DCコンバータ13は、直流電力の電圧を変換する変換器である。本実施形態では、DC-DCコンバータ13は、電力融通用のコンバータとして第1配電ユニット1に備えられる。DC-DCコンバータ13は、制御部17からの制御信号に従って、配電線L側の電圧および電流を変化させることにより、第2配電ユニット2~第4配電ユニット4との間で電力需給を行う。
【0023】
電圧センサ14は、DC-DCコンバータ13の配電線L側の電圧を検出するセンサである。電圧センサ14は、検出した電圧値を制御部17へ出力する。
【0024】
電流センサ15は、DC-DCコンバータ13の配電線Lからの電流を検出するセンサである。電流センサ15は、検出した電流値を制御部17へ出力する。
【0025】
記憶部16は、電力融通の制御に用いられる制御プログラムおよびパラメータ等を記憶する記憶装置である。記憶部16は、例えば、第1配電ユニット1~第4配電ユニット4の各々に予め割り当てられた(設定された)固有電圧等を記憶する。なお、固有電圧について後述する。
【0026】
制御部17は、第1配電ユニット1の各部を統括的に制御する制御装置である。制御部17は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサによって構成されるか、または、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路によって構成される。制御部17は、判定部171と、機器制御部172とを含む。
【0027】
判定部171は、例えば、蓄電池12の蓄電量値、電圧センサ14から出力される電圧値、または電流センサ15から出力される電流値等を取得し、これらの値が所定値以上であるか否かを判定する。判定部171は、判定結果を機器制御部172へ出力する。
【0028】
機器制御部172は、判定部171から入力される判定結果に基づいて、第1配電ユニット1の各部の動作を制御して、電力融通の動作を実行させる。
【0029】
〔電力融通システムの動作〕
次に、電力融通システム100の動作例について、
図3~
図6に基づいて説明する。上述した通り、電力融通システム100では、第1配電ユニット1~第4配電ユニット4のうちの1つがマスタ機として動作し、他の配電ユニットがスレーブ機として動作する。そして、状況に応じて、マスタ機をスレーブ機のうちの1つに切り替え可能になっている。
【0030】
従って、第1配電ユニット1~第4配電ユニット4の各々は、マスタ機としての動作とスレーブ機としての動作との双方を実行可能であり、状況に応じてその動作を切り替える。このため、ある状況でマスタ機として動作していた配電ユニットが、別の状態ではスレーブ機として動作しうる。
【0031】
マスタ機は、電圧制御によって配電線Lの電圧を制御し、スレーブ機への電力融通を統括して制御する。マスタ機は、自装置の蓄電池12から電力を放電または自装置の太陽光発電装置11から電力を出力し、スレーブ機へ電力を出力する。これにより、マスタ機は、スレーブ機の蓄電池12を充電する。また、スレーブ機は、電流制御によってマスタ機に追従しながら、自装置の蓄電池12への電力の充電または自装置への電力供給を行う。以下、電力融通システムの動作例について具体的に説明する。
【0032】
なお、以下では、第1配電ユニット1がマスタ機であり、第2配電ユニット2~第4配電ユニット4がスレーブ機である場合の基本動作について説明する。また、第1配電ユニット1のDC-DCコンバータ13の配電線L側の電圧をVdc1~Vdc4とし、電流をIdc1~Idc4とする(
図1参照)。
【0033】
〔基本動作〕
まず、マスタ機およびスレーブ機の基本動作について説明する。
図3は、マスタ機(第1配電ユニット1)およびスレーブ機(第2配電ユニット2~第4配電ユニット4)の基本動作を示すタイミングチャートである。
図3の上段がマスタ機(第1配電ユニット1)のタイミングチャートであり、
図3の下段がスレーブ機(第2配電ユニット2~第4配電ユニット4)のタイミングチャートである。
【0034】
電力融通システム100では、第1配電ユニット1~第4配電ユニット4の各々に、互いに異なる固有電圧が予め割り当てられている。本実施形態では、第1配電ユニット1に固有電圧V1、第2配電ユニット2に固有電圧V2、第3配電ユニット3に固有電圧V3、第4配電ユニット4に固有電圧V4が予め割り当てられている。本実施形態では、固有電圧V1~V4は、固有電圧V1、固有電圧V2、固有電圧V3、固有電圧V4の順で電圧値が段階的に大きくなるように設定される。これらの固有電圧V1~V4は、第1配電ユニット1~第4配電ユニット4の記憶部16の各に記憶される。
【0035】
基本動作において、マスタ機である第1配電ユニット1は、スレーブ機に割り当てられた固有電圧V2、固有電圧V3、固有電圧V4の順で、Vdc1を繰り返し変化させる。つまり、マスタ機は、自装置に割り当てられた固有電圧V1を除く固有電圧V2,V3,V4に配電線Lの電圧を段階的に変化させる繰返し制御を行う。
【0036】
具体的には、
図3の上段に示すように、時刻t11において、第1配電ユニット1はVdc1を第2配電ユニット2の固有電圧V2に変更する。次に、所定時間T1後の時刻t12に、第1配電ユニット1はVdc1を第3配電ユニット3の固有電圧V3に変更する制御を開始し、時刻t13にVdc1が固有電圧V3に変更される。次に、所定時間T1後の時刻t14に、第1配電ユニット1はVdc1を第4配電ユニット4の固有電圧V4に変更する制御を開始し、時刻t15にVdc1が固有電圧V4に変更される。次に、所定時間T1後の時刻t16に、第1配電ユニット1はVdc1を第2配電ユニット2の固有電圧V2に変更する制御を開始し、時刻t17にVdc1が固有電圧V1に変更される。以後、第1配電ユニット1は、所定値以上のIdc1が検出されるまで、Vdc1を固有電圧V2,V3,V4に変化せる繰返し制御を継続する。
【0037】
スレーブ機である第2配電ユニット2~第4配電ユニット4の各々は、配電線Lの電圧を電圧センサ14によって検出する。第2配電ユニット2は、自装置に割り当てられた固有電圧V2が電圧センサ14によって検出された場合、マスタ機からの電力融通(充電)が必要か否かを判定する。この判定は、太陽光発電装置11の発電量、蓄電池12の蓄電量等に基づいて、行われる。
【0038】
マスタ機からの電力融通が不要と判定した場合、第2配電ユニット2は、自装置の電流がIdc2=0Aとなるように制御する、第1定電流制御を行う。第3配電ユニット3、第4配電ユニット4においても、第2配電ユニット2と同様の制御を行う。第2配電ユニット2~第4配電ユニット4の全てが電力融通が不要と判定している場合、
図3の下段に示すように、各スレーブ機が検出する電圧Vdc2~Vdc4は、固有電圧V2,V3,V4間の段階的な変化が繰り返される。
【0039】
〔電力融通動作〕
次に、マスタ機からスレーブ機へ電力融通を行う電力融通動作について説明する。
図4は、マスタ機である第1配電ユニット1から、スレーブ機である第3配電ユニット3へ電力融通(充電)を行う場合のマスタ機およびスレーブ機の充電動作を示すタイミングチャートである。
【0040】
図4に示すように、時刻t21において、スレーブ機である第3配電ユニット3は、電圧センサ14によって自装置の固有電圧V3が検出された場合、電力融通(充電)が必要か否かを判定する。
【0041】
電力融通が必要であると判定した場合、時刻t22において、第3配電ユニット3は自装置の電流Idc3が0ではない所定値(Icc)となるように制御する、第2定電流制御を行う。これにより、第1配電ユニット1から第3配電ユニット3へ電力が供給され、スレーブ機の蓄電池12が充電される。
【0042】
マスタ機である第1配電ユニット1は、配電線Lの電圧を第3配電ユニット3の固有電圧V3に制御している間に、電流センサ15が所定値(Icc)の電流を検出した場合、第3配電ユニット3が第2定電流制御を開始したと判定する。その結果、第1配電ユニット1は、繰返し制御を中断し、当該充電を希望するスレーブ機(第3配電ユニット3)の固有電圧V3を維持する(第1定電圧制御)。
【0043】
時刻t23において、充電を行っている第3配電ユニット3は、当該スレーブ機の蓄電池12が十分に充電され、充電を終了する場合、第1定電流制御に切り替える。
【0044】
これにより、時刻t24において、第1配電ユニット1の電流センサ15が0Aを検出することで、マスタ機は、スレーブ機が充電を終了したと判定し、繰返し制御に切り替える。
【0045】
〔マスタ機の基本動作および電力融通におけるフローチャート〕
以上の基本動作および電力融通の各工程をフローチャートで説明する。
図5は、マスタ機である第1配電ユニット1の基本動作および電力融通動作を示すフローチャートである。
【0046】
S11において、マスタ機である第1配電ユニット1は繰返し制御を行い、第1配電ユニット1のVdc1をV2,V3,V4と順に変化させる(
図3の上段参照)。この繰り返し制御は、記憶部16に記憶された固有電圧V1~V4を参照して、マスタ機の機器制御部172が、DC-DCコンバータ13を制御することにより実行される。
【0047】
次に、S12において、第1配電ユニット1の判定部171は、繰返し制御中に、電流センサ15によって所定値以上の電流が検出されたか否かを判定する(
図4の時刻t21参照)。検出されない場合(S12においてNo)、第1配電ユニット1の機器制御部172は、S11に戻り繰返し制御を継続する。一方、検出された場合(S12においてYes)、S13に進む。
【0048】
次に、S13において、第1配電ユニット1の機器制御部172は、繰り返し制御を終了し、S12時点での電圧を維持する第1定電圧制御に切り替える(
図4の時刻t22参照)。
【0049】
次に、S14において、第1配電ユニット1の判定部171は、電流センサ15によって所定値未満の電流が検出されたか否かを判定する(
図4の時刻t22~t23参照)。検出されない場合(S14においてNo)、S13に戻る。一方、検出された場合(S14においてYes)、S15に進む。
【0050】
次に、S15において、第1配電ユニット1の機器制御部172は、第1定電圧制御を終了し、繰返し制御に切り替える(
図4の時刻t24参照)。すなわち、始めに充電していた第3配電ユニット3の固有電圧V3から第4配電ユニット4の固有電圧V4にVdc1を変化させる。
【0051】
〔スレーブ機の基本動作および電力融通におけるフローチャート〕
図6は、スレーブ機である第3配電ユニット3の基本動作および電力融通動作を示すフローチャートである。
【0052】
S21において、第3配電ユニット3は、電流センサ15を用いて電流Idc3=0Aとなるように第1定電流制御を行う。第3配電ユニット3のVdc3は、マスタ機である第1配電ユニット1のVdc1とほぼ等しくなる(
図3の下段参照)。
【0053】
次に、S22において、第3配電ユニット3の判定部171は、電圧センサ14によって自装置の固有電圧V3が検出されたか否かを判定する(
図4の時刻t21参照)。検出されない場合(S22においてNo)、S21に戻り、第1定電流制御を継続する。一方、検出された場合(S22においてYes)、S23に進む。
【0054】
次に、S23において、第3配電ユニット3の判定部171は、自装置の蓄電池12の蓄電量等を取得し、充電(電力融通)が必要か否かを判定する(
図4の時刻t21参照)。充電が必要ない場合(S23においてNo)、S21に戻り、第1定電流制御を継続する。一方、充電が必要な場合(S23においてYes)、S24に進む。
【0055】
次に、S24において、スレーブ機の機器制御部172は、充電を行うため、DC-DCコンバータ13を第2定電流制御に切り替え、Idc3をIccに制御し、充電を行う(
図4の時刻t21参照)。
【0056】
次に、S25において、スレーブ機の判定部171は、自装置の蓄電池12を確認し、所定の電力量が充電されているかを判定する(
図4の時刻t22~t23参照)。電力量が不足している場合(S25においてNo)、S24に戻る。電力量が充足している場合(S25においてYes)、S26に進む。
【0057】
最後に、S26において、スレーブ機の機器制御部172は、第2定電流制御を終了し、DC-DCコンバータ13を第1定電流制御に切り替える(
図4の時刻t23参照)。
【0058】
〔切り換え動作〕
次に、マスタ機である第1配電ユニット1からスレーブ機である第2配電ユニット2にマスタ機を切り替える場合を例にして、マスタ機をスレーブ機の1つに切りかえるマスタ機の切り換え(引継ぎ)動作を説明する。
【0059】
図7は、第1配電ユニット1がマスタ機であり、第2配電ユニット2~第4配電ユニット4がスレーブ機である場合におけるマスタ機およびスレーブ機のマスタ機の切り換え動作を示すタイミングチャートである。
【0060】
時刻t31において、マスタ機である第1配電ユニット1は、例えば蓄電池12の蓄電量不足または故障等原因によりマスタ機としての動作が継続できなくなった場合、繰返し制御を終了し、Vdc1を自装置の固有電圧V1に制御する第2定電圧制御を行う。
【0061】
時刻t32において、スレーブ機である第2配電ユニット2は、配電線Lの電圧が今までのマスタ機である第1配電ユニット1の固有電圧(V1)になったことを検出し、第1配電ユニット1がマスタ機としての運転を継続できなくなったことを認識する。その後、スレーブ機のうち、当該マスタ機の次の号機(第1配電ユニット1の次の第2配電ユニット2のこと)は、自装置がマスタ機として運転可能かを判定する。
【0062】
時刻t33において、時刻t32までスレーブ機であった第2配電ユニット2は、マスタ機として運転可能とわかり、マスタ機として運転を開始する。マスタ機になった第2配電ユニット2は、繰返し制御を開始し、Vdc2を自装置の次の号機の固有電圧(V3)に変更させようとする。
【0063】
時刻t34において、第2配電ユニット2は、配電線Lの電圧をVdc2(V3)に変化させるために、配電線Lに向けて電流を流す。マスタ機であった第1配電ユニット1の電流センサ15は、電流の絶対値が所定値(Icc)以上に変化したことを検出する。その後、第1配電ユニット1は、スレーブ機としての動作を開始し、第1定電流制御を開始する。
【0064】
時刻t35において、マスタ機になった第2配電ユニット2は、繰返し制御により、一定時間おきに、順次電圧を変更する。この間、スレーブ機(第1配電ユニット1を含む)は、第1定電流制御を行う。
【0065】
次に、マスタ機である第1配電ユニット1からスレーブ機である第3配電ユニット3にマスタ機が変更される過程を基にして、マスタ機およびスレーブ機のマスタ機の切り換え動作を説明する。この時、第2配電ユニット2がマスタ機として運転不可能なため、さらに次の号機である第3配電ユニット3がマスタ機として運転する。
【0066】
図8は、第1配電ユニット1がマスタ機であり、第2配電ユニット2がマスタ機として運転不可能なスレーブ機であり、第3配電ユニット3がマスタ機として運転可能なスレーブ機である場合に、マスタ機およびスレーブ機のマスタ機の切り換え動作を示すタイミングチャートである。
【0067】
時刻t31および時刻t32は
図7と同一の内容なため割愛する。時刻t43において、時刻t32までスレーブ機であった第2配電ユニット2は、マスタ機としての運転を継続不可能とわかる。第2配電ユニット2は、第1定電流制御を終了し、第2定電圧制御に切り替え、Vdc2をV2(自装置の固有電圧)に変更させようとする。
【0068】
時刻t44において、第1配電ユニット1の電流センサ15は、電流の絶対値が所定値(Icc)以上に変化したことを検出する。その後、第1配電ユニット1は、自装置をスレーブ機として動作を開始し、第1定電流制御を開始する。
【0069】
時刻t45において、スレーブ機である第3配電ユニット3は第1定電流制御の間に、電圧センサ14によって検出した電圧がV2であることを計測することで、自装置がマスタ機として運転可能かを判定する。
【0070】
時刻t46において、時刻t45までスレーブ機であった第3配電ユニット3は、マスタ機として運転可能とわかり、マスタ機として運転を開始する。マスタ機になった第3配電ユニット3は、繰返し制御を開始し、Vdc3を自装置の次の号機の固有電圧(V4)に変更する。
【0071】
時刻t47において、第2配電ユニット2は、電流の絶対値が所定値以上に変化したことを検出することで、自装置をスレーブ機として動作を開始し、第1定電流制御に切り替える。
【0072】
時刻t48において、第3配電ユニット3は、繰返し制御により、一定時間おきに、順次電圧を変更する。この間、スレーブ機(第1配電ユニット1および第2配電ユニット2を含む)は、第1定電流制御を行う。
【0073】
〔マスタ機における切り換え動作のフローチャート〕
図9は、マスタ機である第1配電ユニット1におけるマスタ機の切り換え動作の工程を表すフローチャートである。
【0074】
S31において、マスタ機である第1配電ユニット1の判定部171は、マスタ機としての運転を継続可能か否かを判定する(
図7および
図8の時刻t31参照)。継続可能な場合(S31においてYes)、S31を繰り返す。一方、継続不可能な場合(S31においてNo)、S32に進む。
【0075】
次に、S32において、第1配電ユニット1の機器制御部172は、Vdc1=V1とする第2定電圧制御を行う(
図7および
図8の時刻t31~時刻t32参照)。
【0076】
次に、S33において、第1配電ユニット1の判定部171は、電流センサ15によって、絶対値が所定値以上の出力電流を検出する(
図7の時刻t32~時刻t33および
図8の時刻t32~t43参照)。出力電流が検出されない場合(S33においてNo)、S33を繰り返す。一方、出力電流が検出された場合(S33においてYes)、S34に進む。
【0077】
次に、S34において、第1配電ユニット1はスレーブ機となり、第1配電ユニット1の機器制御部172は、第1定電流制御を開始する(
図7の時刻t34および
図8の時刻t47参照)。
【0078】
〔スレーブ機における切り換え動作のフローチャート〕
図10は、スレーブ機である第2配電ユニット2または第3配電ユニット3におけるマスタ機の切り換え動作の工程を表すフローチャートである。
【0079】
S41において、スレーブ機である第2配電ユニット2または第3配電ユニット3は、配電線Lの電圧変化から、現行のマスタ機(第1配電ユニット1)の号機を類推しておく。第2配電ユニット2または第3配電ユニット3の判定部171は、電圧センサ14の計測値が、現行のマスタ機(第1配電ユニット1)の固有電圧(V1)かを確認する(
図7の時刻t33および
図8の時刻t43参照)。電圧センサ14の計測値が現行のマスタ機の電圧ではない場合(S61においてNo)、S61を繰り返す。一方、電圧センサ14の計測値が現行のマスタ機の電圧の場合(S61においてYes)、S62に進む。
【0080】
次に、S42において、第2配電ユニット2または第3配電ユニット3の判定部171は、自装置が現行のマスタ機(第1配電ユニット1)の次の号機かを判定する(
図7の時刻t33および
図8の時刻t43参照)。自装置が次の号機ではない場合(S42においてNo)、S41に戻る。一方、自装置が次の号機の場合(S42においてYes)、S43に進む。
【0081】
次に、S43において、第2配電ユニット2または第3配電ユニット3の判定部171は、自装置がマスタ機として運転可能かを判定する(
図7の時刻t33および
図8の時刻t43参照)。運転可能な場合(S43においてYes)、S44に進む。一方、運転不可能な場合(S43においてNo)、S45に進む。
【0082】
次に、S44において、第2配電ユニット2または第3配電ユニット3の機器制御部172は、マスタ機として動作を開始し、自装置の次の号機の固有電圧を出力する繰返し制御を開始する(
図7の時刻t33および
図8の時刻t46参照)。
【0083】
次に、S45において、第2配電ユニット2の機器制御部172は、自装置の固有電圧を出力する第2定電圧制御を開始する(
図8の時刻t43参照)。この時、第2配電ユニット2は、スレーブ機でありながら、継続運転可能なマスタ機が決まるまでマスタ機に変わり、暫定的に配電線Lの電圧制御を行う。
【0084】
次に、S46において、第2配電ユニット2の判定部171は、自装置の電流センサ15によって、絶対値が所定値以上の出力電流を確認する(
図8の時刻t46~時刻t47参照)。出力電流が確認されない場合(S46においてNo)、S46を繰り返す。一方、出力電流が確認された場合(S46においてYes)、S47に進む。
【0085】
次に、S47において、第2配電ユニット2は、第2定電圧制御を終了し、第1定電流制御に切り替える(
図8の時刻t47参照)。この時、第2配電ユニット2は、新たなマスタ機が決まったものと判断し、スレーブ機でありながらマスタ機に代わって、暫定的に配電線Lの電圧制御をしていた役割を終える。
【0086】
〔状態遷移図〕
図11は、実施形態に係る電力融通システムの状態遷移図である。
【0087】
上述したように、
図11に示すように、マスタ機は、状態Aでスレーブ機からの電力融通の要否の応答を待機し、電力融通が必要な場合に、状態Bに遷移する。マスタ機は、状態Bでスレーブ機に対して電力を放電し、スレーブ機を充電する。マスタ機は、放電する事により、自装置が蓄えている電力が減少するため、マスタ機として運転が不可能になり、状態Cに遷移し、スレーブ機としての動作を開始する。
【0088】
スレーブ機は、状態Cでマスタ機からの電力融通の要否の応答を待機し、電力融通が必要な場合に、状態Dに遷移する。スレーブ機は、状態Dでマスタ機から電力を充電する。また、スレーブ機は、状態Cにおいて、マスタ機からの要請に従い、状態Aに遷移し、マスタ機として動作を開始することもできる。
【0089】
このように、電力融通システムでは、マスタ機は電力を放電し、スレーブ機が電力を充電する。電力融通システムでは、マスタ機が電力を放電したことにより、マスタ機として動作できなくなった場合、スレーブ機のいずれかがマスタ機として動作するようになり、マスタ機が動的に切り替わることで、電力融通システムは動作を継続する。
【0090】
〔電力融通システムの効果〕
このように、本実施形態に係る電力融通システム100は、第1配電ユニット1~第4配電ユニット4が共通の配電線Lに接続される電力融通システムである。電力融通システム100では、第1配電ユニット1~第4配電ユニット4は、第1配電ユニット1~第4配電ユニット4の1つから構成され、他の配電ユニットへの配電を制御するマスタ機と、前記他の配電ユニットから構成されるスレーブ機とを含み、配電線Lの電圧変化に基づいて、マスタ機をスレーブ機のうちの1つに切り替える。
【0091】
電力融通システム100では、配電線Lの電圧変化に基づいて、マスタ機をスレーブ機のうちの1つに切り替えることができる。このため、仮にマスタ機に異常が発生した場合であっても、電力融通の制御を継続することができる。また、従来のように、複数の配電ユニット(ノード)間の電力融通の制御を行うための中央制御装置等を設置する必要性がない。このため、電力融通システム100の構築に要するコストが低減される。
【0092】
従って、本実施形態によれば、マスタ機に異常が発生した場合であっても電力融通の制御を継続可能な電力融通システム100を低コストで実現することができる。
【0093】
複数の配電ユニットのうち、1台がマスタ機として動作し、他の配電ユニットはマスタ機に従属して動作するスレーブ機となる。どの配電ユニットもマスタ機およびスレーブ機として動作が可能である。そのため、複数の配電ユニットを統括して制御する専用の中央制御装置も不要である。
【0094】
第1配電ユニット1~第4配電ユニット4は、自装置のセンサで計測した情報に基づき、電力融通システムの状態を判定し動作する。そのため、他の配電ユニットの状態を知り、制御に用いるための通信回線が不要である。
【0095】
また、複数の配電ユニットのうち、1台がマスタ機として動作し、他の配電ユニットはマスタ機に従属して動作するスレーブ機となる。どの配電ユニットもマスタ機およびスレーブ機として動作が可能である。そのため、複数の配電ユニットを統括して制御する専用の中央制御装置も不要である。
【0096】
第1配電ユニット1~第4配電ユニット4は、自装置のセンサで計測した情報に基づき、電力融通システム100の状態を判定し動作する。そのため、他の配電ユニットの状態を知り、制御に用いるための通信回線が不要である。
【0097】
配電線Lは、各配電ユニット1~4で共通するため、各配電ユニット1~4間で電力を授受することができる。
【0098】
また、複数の配電ユニットのうち、1台がマスタ機として動作し、他の配電ユニットはマスタ機に従属して動作するスレーブ機となる。どの配電ユニットもマスタ機およびスレーブ機として動作が可能である。そのため、複数の配電ユニットを統括して制御する専用の中央制御装置も不要である。
【0099】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る電力融通システムは、複数の配電ユニットが共通の配電線に接続される電力融通システムであって、前記複数の配電ユニットは、該複数の配電ユニットの1つから構成され、他の配電ユニットへの電力融通を制御するマスタ機と、前記他の配電ユニットから構成されるスレーブ機とを含み、前記配電線の電圧変化に基づいて、前記マスタ機を前記スレーブ機のうちの1つに切り替える。
【0100】
上記の構成によれば、配電線の電圧変化に基づいてマスタ機をスレーブ機に切り替えることができるため、マスタ機に異常等が発生した場合であっても電力融通の制御を継続することができる。
【0101】
本発明の態様2に係る電力融通システムは、上記態様1において、前記複数の配電ユニットの各々には、互いに異なる固有電圧が予め割り当てられており、前記固有電圧に基づいて前記配電線を電圧変化させることにより、前記マスタ機を前記スレーブ機のうちの1つに切り替える。
【0102】
上記の構成によれば、配電ユニットの固有電圧を制御に用いることで、各配電ユニットの状態を管理することができる。
【0103】
本発明の態様3に係る電力融通システムは、上記態様2において、前記マスタ機は、該マスタ機としての動作が継続できない場合、自装置に割り当てられた前記固有電圧に前記配電線を電圧変化させる。
【0104】
上記の構成によれば、マスタ機は、自装置に割り当てられた固有電圧に配電線を電圧変化させることにより、マスタ機としての動作が継続できなくなったことをスレーブ機に通知することができる。
【0105】
本発明の態様4に係る電力融通システムは、上記態様3において、前記スレーブ機は、前記マスタ機に割り当てられた前記固有電圧に前記配電線が電圧変化した場合、自装置がマスタ機に切り替わることができるか否かを判定する。
【0106】
上記の構成によれば、マスタ機が動作を継続できなくなった場合に、スレーブ機にマスタ機として動作を引き継ぐことが可能か否かを判定させることができる。
【0107】
本発明の態様5に係る電力融通システムは、上記態様2から4のいずれかにおいて、前記マスタ機は、該マスタ機としての動作が継続できる場合、前記スレーブ機に割り当てられた前記固有電圧に基づいて前記配電線の電圧を変化させる。
【0108】
上記の構成によれば、マスタ機は、マスタ機として動作を継続できることを、スレーブ機に通知することができる。また、マスタ機はスレーブ機への電力融通の開始を待機することができる。
【0109】
本発明の態様6に係る電力融通システムは、上記態様5において、前記スレーブ機が複数である場合、前記マスタ機は、前記スレーブ機に割り当てられた前記固有電圧に基づいて前記配電線の電圧を段階的に切り替える。
【0110】
上記の構成によれば、複数のスレーブ機に対し、現在がどのスレーブ機の応答を待っているかを明示的に通知することができる。
【0111】
本発明の態様7に係る電力融通システムは、上記態様6において、前記スレーブ機は、自装置に割り当てられた前記固有電圧に前記配電線が電圧変化した場合、前記マスタ機から電力融通を受けるか否かを判定する。
【0112】
上記の構成によれば、スレーブ機は、マスタ機が自装置からの応答を待機していることを認識することができる。
【0113】
本発明の他の態様に係る制御方法は、複数の配電ユニットが共通の配電線に接続される電力融通システムの制御方法であって、前記複数の配電ユニットは、前記複数の配電ユニットの1つから構成され、他の配電ユニットへの配電を制御するマスタ機と、前記他の配電ユニットから構成されるスレーブ機とを含み、前記配電線の電圧変化に基づいて、前記マスタ機を前記スレーブ機のうちの1つに切り替える切替ステップを含む。
【0114】
〔ソフトウェアによる実現例〕
各配電ユニット1~4の制御ブロック(特に制御部17および記憶部16)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0115】
後者の場合、各配電ユニット1~4は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路等を用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)等をさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0116】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0117】
1 第1配電ユニット
2 第2配電ユニット
3 第3配電ユニット
4 第4配電ユニット
100 電力融通システム
L 配電線