(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/42 20060101AFI20241204BHJP
A47C 27/15 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
B60N2/42
A47C27/15
(21)【出願番号】P 2021049251
(22)【出願日】2021-03-23
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】石塚 喬
【審査官】松山 雛子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/241810(WO,A1)
【文献】特開2020-082849(JP,A)
【文献】特開2018-158096(JP,A)
【文献】米国特許第04930171(US,A)
【文献】独国特許出願公開第102015201237(DE,A1)
【文献】実開昭58-161600(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/42
A47C 27/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションを備えた乗物用シートであって、
前記シートクッションは、シートクッションパッドと、前記シートクッションパッドの内部に設けられた衝撃吸収部材と、を有し、
前記シートクッションパッドは、
第1パッド部材と、
前記第1パッド部材の下方に配置された第2パッド部材と、を有し、
前記衝撃吸収部材は前記第2パッド部材の上に配置され
、
前記衝撃吸収部材は、前記第2パッド部材に形成された凹部を避けた位置に配置されていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
シートクッションを備えた乗物用シートであって、
前記シートクッションは、シートクッションパッドと、前記シートクッションパッドの内部に設けられた衝撃吸収部材と、を有し、
前記シートクッションパッドは、
第1パッド部材と、
前記第1パッド部材の下方に配置された第2パッド部材と、を有し、
前記衝撃吸収部材は前記第2パッド部材の上に配置され、
前記第2パッド部材には、複数の凹部が形成されており、
前記乗物用シートの幅方向において、前記衝撃吸収部材は、前記複数の凹部の間の位置に配置されていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項3】
前記衝撃吸収部材は、前記第2パッド部材が備える平坦部の上に配置されていることを特徴とする請求項
1又は2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記第2パッド部材は、前方から後方に向かって傾斜した傾斜部を備え、
前記衝撃吸収部材は、前記傾斜部の上に配置されていることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記第2パッド部材は、部品を取り付けるためのブラケットを備え、
前記乗物用シートの幅方向において、前記衝撃吸収部材は、前記ブラケットとは異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記第2パッド部材は、前記ブラケットとして、第1ブラケットと、前記乗物用シートの幅方向において前記第1ブラケットと離間した第2ブラケットと、を備え、
前記衝撃吸収部材は、前記乗物用シートの幅方向において、前記第1ブラケットと前記第2ブラケットの間に配置されていることを特徴とする請求項
5に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記第2パッド部材は、前記第1パッド部材よりも硬いことを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記シートクッションは、前記シートクッションパッドを覆う表皮材を有していることを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記第2パッド部材の後面部には、U字状のワイヤが取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに係り、特に衝突などの衝撃発生時に着座者に加わる衝撃を吸収することが可能な乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
走行中の車両が前突した際には、シートに着座した着座者(乗員)の体が、シートベルトに拘束された状態でシートの表面上を前下方に滑り落ちるサブマリン現象が発生することがある。このような衝撃発生時に着座者に加わる衝撃を吸収する技術として、特許文献1には、ハニカム構造体からなるインサート材である衝撃吸収部材を、シートクッションパッドの下方に備える技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用シートが備える衝撃吸収部材により衝撃を効果的に吸収するためには、衝撃吸収部材を下方から適切に支持する必要がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、衝撃吸収部材を適切に支持することが可能な乗物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明の乗物用シートによれば、シートクッションを備えた乗物用シートであって、前記シートクッションは、シートクッションパッドと、前記シートクッションパッドの内部に設けられた衝撃吸収部材と、を有し、前記シートクッションパッドは、第1パッド部材と、前記第1パッド部材の下方に配置された第2パッド部材と、を有し、前記衝撃吸収部材は前記第2パッド部材の上に配置され、前記衝撃吸収部材は、前記第2パッド部材に形成された凹部を避けた位置に配置されていることにより解決される。
【0007】
上記のように構成された本発明の乗物用シートでは、第2パッド部材によって衝撃吸収部材を適切に支持することが可能となる。また、凹部を避けることで第2パッド部材によって衝撃吸収部材を適切に支持することが可能となる。
また、前記課題は、本発明の乗物用シートによれば、シートクッションを備えた乗物用シートであって、前記シートクッションは、シートクッションパッドと、前記シートクッションパッドの内部に設けられた衝撃吸収部材と、を有し、前記シートクッションパッドは、第1パッド部材と、前記第1パッド部材の下方に配置された第2パッド部材と、を有し、前記衝撃吸収部材は前記第2パッド部材の上に配置され、前記第2パッド部材には、複数の凹部が形成されており、前記乗物用シートの幅方向において、前記衝撃吸収部材は、前記複数の凹部の間の位置に配置されていることにより解決される。
上記のように構成された本発明の乗物用シートでは、第2パッド部材によって衝撃吸収部材を適切に支持することが可能となる。また、第2パッド部材に形成された複数の凹部の間の位置において衝撃吸収部材を適切に支持することが可能となる。
【0008】
また、上記の構成において、前記衝撃吸収部材は、前記第2パッド部材が備える平坦部の上に配置されているとよい。
上記の構成では、第2パッド部材の平坦部によって衝撃吸収部材を面によって適切に支持することが可能となる。
【0012】
また、上記の構成において、前記第2パッド部材は、前方から後方に向かって傾斜した傾斜部を備え、前記衝撃吸収部材は、前記傾斜部の上に配置されているとよい。
上記の構成では、第2パッド部材に形成された傾斜部に衝撃吸収部材を配置することで荷重の入力方向に沿って衝撃吸収部材を適切に支持することが可能となる。
【0013】
また、上記の構成において、前記第2パッド部材は、部品を取り付けるためのブラケットを備え、前記乗物用シートの幅方向において、前記衝撃吸収部材は、前記ブラケットとは異なる位置に配置されているとよい。
上記の構成では、第2パッド部材が備えるブラケットを避けた位置において衝撃吸収部材を適切に支持することが可能となる。
【0014】
また、上記の構成において、前記第2パッド部材は、前記ブラケットとして、第1ブラケットと、前記乗物用シートの幅方向において前記第1ブラケットと離間した第2ブラケットと、を備え、前記衝撃吸収部材は、前記乗物用シートの幅方向において、前記第1ブラケットと前記第2ブラケットの間に配置されているとよい。
上記の構成では、第2パッド部材が備える2つのブラケットの間の位置において衝撃吸収部材を適切に支持することが可能となる。
【0015】
また、上記の構成において、前記第2パッド部材は、前記第1パッド部材よりも硬いとよい。
上記の構成では、第1パッド部材よりも硬い第2パッド部材によって衝撃吸収部材を強固に支持することが可能となる。
【0016】
また、上記の構成において、前記シートクッションは、前記シートクッションパッドを覆う表皮材を有しているとよい。
上記の構成では、第1パッド部材及び第2パッド部材を有するシートクッションを備えた乗物用シートにおいて衝撃吸収部材を適切に支持することが可能となる。
また、上記の構成において、前記第2パッド部材の後面部には、U字状のワイヤが取り付けられているとよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の乗物用シートによれば、第2パッド部材によって衝撃吸収部材を適切に支持することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、第2パッド部材の平坦部によって衝撃吸収部材を面によって適切に支持することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、凹部を避けることで第2パッド部材によって衝撃吸収部材を適切に支持することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、第2パッド部材に形成された複数の凹部の間の位置において衝撃吸収部材を適切に支持することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、第2パッド部材に形成された傾斜部に衝撃吸収部材を配置することで荷重の入力方向に沿って衝撃吸収部材を適切に支持することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、第2パッド部材が備えるブラケットを避けた位置において衝撃吸収部材を適切に支持することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、第2パッド部材が備える2つのブラケットの間の位置において衝撃吸収部材を適切に支持することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、第1パッド部材よりも硬い第2パッド部材によって衝撃吸収部材を強固に支持することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、第1パッド部材及び第2パッド部材を有するシートクッションを備えた乗物用シートにおいて衝撃吸収部材を適切に支持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用シートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、
図1乃至
図7を参照しながら、本発明の実施形態(以下、本実施形態)に係る乗物用シートについて説明する。本実施形態に係る乗物用シートとして、車両に搭載される車両用のリアシートを例に挙げて説明することとするが、自動車・鉄道など車輪を有する地上走行用乗物に搭載される車両用のリアシートに限定されるものではなく、車両用のフロントシートや3列シートの2列目のシート、地上以外を移動する航空機や船舶などに搭載されるシートであってもよい。
【0020】
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0021】
本明細書における方向を示す用語に関し、
図1のように各方向を定義する。具体的には、以下の説明中、「前後方向」とは、車両用シートの着座者から見たときの前後方向を意味し、車両の走行方向と一致する方向である。「シート幅方向」とは、車両用シートの横幅方向を意味し、車両用シートの着座者から見たときの左右方向と一致する。また、「上下方向」とは、車両用シートの高さ方向を意味し、車両用シートを正面から見たときの上下方向と一致している。
【0022】
[1.車両用シートSの構成]
本実施形態に係る車両用シートSは、3人が着座可能な自動車の後部座席であり、
図1に図示した外観を有している。なお、
図1中、車両用シートSの一部(具体的には、シートクッションS1の前端角部)については、図示の都合上、トリムカバーS12を外した構成にて図示している。
【0023】
車両用シートSは、着座者の臀部を支える着座部分となるシートクッションS1、着座者の背部を支える背もたれ部分となるシートバックS2、及び、シートバックS2の上部に配され、着座者の頭部を支えるヘッドレストS3を主な構成要素として有する。
【0024】
シートクッションS1は、シートクッションパッドS11をトリムカバーS12で覆うことで構成されている(
図1及び
図3)。シートバックS2は不図示のシートバックフレームに不図示のクッションパッドを載置して、トリムカバーS12で覆うことで構成されている。ヘッドレストS3は、不図示の芯材に不図示のパッド材を配して、トリムカバーS12で被覆して形成されている。
【0025】
図2に示されるように、シートクッションS1のトリムカバーS12には、シートクッション右側に設けられ前後方向に延在する第1吊りこみ部T1(右側吊りこみ部)、シートクッション左側に設けられ前後方向に延在する第2吊りこみ部T2(左側吊りこみ部)がそれぞれ設けられている。
【0026】
また、
図4に示されるように、シートクッションパッドS11の第1パッド部材の第1吊りこみ部T1及び第2吊りこみ部T2に対応する位置には、第1吊りこみ溝t1及び第2吊りこみ溝t2が形成されている。
【0027】
[2.本実施形態のシートクッションS1]
本実施形態の車両用シートSのシートクッションS1は、主に、シートクッションパッドS11(第1パッド部材10及び第2パッド部材20)、トリムカバーS12及び衝撃吸収部材30から構成されている(
図4)。具体的には、シートクッションS1は、シートクッションパッドS11と、シートクッションパッドS11の内部に設けられた衝撃吸収部材30と、を有し、シートクッションパッドS11をトリムカバーS12により被覆することにより構成されている。
【0028】
図3に示されるように、シートクッションパッドS11は、第1パッド部材10、及び第1パッド部材10より硬い材質からなる第2パッド部材20から構成されている。なお、第1パッド部材10は、第2パッド部材20の上に配置される。換言すれば、第1パッド部材10は、下方から第2パッド部材20により支持されている。
【0029】
(第1パッド部材10)
ここで、第1パッド部材10の構成について説明する。第1パッド部材10は、第1表面10a及び第1裏面10bを備えている。第1パッド部材10は、例えばウレタンフォーム等の発泡樹脂から構成される緩衝部材である。
図4及び
図5に示されるように、第1パッド部材10は、シートクッションS1の上面形状と略同一の形状をなす。
【0030】
図3乃至
図5に示すように、第1パッド部材10において底面部が下方に向けて膨出した膨出部11は、乗員の臀部を支持する部分となる。なお、第1パッド部材10が第2パッド部材20の上に配置された場合に、膨出部11の底面部が、第2パッド部材20の開口部22に嵌り込むこととなる。
【0031】
また、
図4に示すように、第1パッド部材10の第1表面10aに形成された第1吊りこみ溝t1及び第2吊りこみ溝t2の一部には、吊り込み用穴12が形成されており、吊り込み用穴12を通じて、トリムカバーS12の表皮端部S12aが第1パッド部材10の裏面側に引き込まれる。また、
図4に示すように、第1パッド部材10の膨出部11の後方には、後方に延出する後方延出部14が形成されている。
【0032】
(第2パッド部材20)
次に、第2パッド部材20の構成について説明する。第2パッド部材20は、第2表面20a及び第2裏面20bを備えている。第2パッド部材20は、例えば発泡ポリプロピレン(EPP)等の発泡樹脂から構成され、第1パッド部材10を下方から支持する支持部材である。
【0033】
図6に示されるように、第2パッド部材20の第2表面20a(上面)には、乗員が着座する座面部と対向する位置に開口部22が形成されている。そして、
図3及び
図6に示されるように、左右の開口部22の前方には、下方に窪んだ凹部26が形成されている。凹部26は、シートの幅方向と前後方向に並んで複数形成されている。このように、第2パッド部材20に、複数の凹部26を設けたことにより、凹部26の間に空間が形成される。これにより、第2パッド部材20を軽量化することが可能となる。
【0034】
また、
図6に示されるように、第2パッド部材20の後面部21において、左右の開口部22の後方には、第1ブラケットB1及び第2ブラケットB2が取り付けられている。なお、第2パッド部材20へのブラケットB1,B2の取り付けは、第2パッド部材20の金型にブラケットB1,B2をインサートした状態で第2パッド部材20を成形することにより行われる。
【0035】
図2及び
図3に示されるように、ブラケットB1,B2は、第2パッド部材20に埋設される埋設部Baと、第2パッド部材20からシート後方に突出する突出部Bcを備えている。そして、埋設部Baは、水平に延出する水平延出部と、水平延出部から傾斜する傾斜部とを有し、傾斜部には貫通孔Bbが形成されている。
【0036】
このように、埋設部Baに貫通孔Bbを形成することにより、インサート成形時に第2パッド部材20を構成するEPPが、埋設部Baの貫通孔Bbにも入り込んで形成されることとなる。そのため、ブラケットB1,B2が第2パッド部材20に強固に固定され、ブラケットB1,B2を第2パッド部材20から抜けてしまうことを抑制することが可能となる。
【0037】
また、埋設部Baが、下方に向けて傾斜する傾斜部を有していることにより、埋設部Baが第2パッド部材20を貫通することなく、埋設部Baの長さを確保可能である。そのため、ブラケットB1,B2と第2パッド部材20の結合が強くなり、ブラケットB1,B2を第2パッド部材20から抜けてしまうことを抑制することが可能となる。なお、ブラケットB1,B2の突出部Bcには、ECU、ハーネス等の電装部品が取り付けられる。
【0038】
図6及び
図7に示されるように、第2パッド部材20の後面部21には、U字状のワイヤ27が取り付けられている。ワイヤ27は、第2パッド部材20を含む車両用シート1を車体に取り付けるための部材である。
【0039】
また、
図3及び
図7に示されるように、第2パッド部材20の第2裏面20b側において、開口部22の周辺には、表皮係止部23が形成されている。
図3に示されるように、トリムカバーS12の表皮端部S12aが、第1パッド部材10の吊り込み用穴12、第2パッド部材20の開口部22を通じて、第2パッド部材20の表皮係止部23に係止される。
【0040】
また、
図7に示すように、第2パッド部材20の第2裏面20bの外縁部には、複数の係止部29が形成されている。この係止部29には、トリムカバーS12の外縁端部に設けられるフックが差し込まれることにより、トリムカバーS12の外縁端部が第2パッド部材20に固定される。
【0041】
また、
図7に示すように、第2パッド部材20の第2裏面20bには、ガイド溝24が形成されている。ガイド溝24には、ハーネスを収容可能となっている。また、ガイド溝24は、開口部22に接続し、開口部22とガイド溝24を通じてハーネスを第2パッド部材20の後方に向けて配設することが容易となっている。
【0042】
また、
図7に示すように、第2パッド部材20の側面には、シート内側に切り欠かれた係合凹部28が複数形成されている。この係合凹部28は、
図5に示す第1パッド部材10の外縁部に設けられた係合凸部13と係合することにより、第1パッド部材10と、第2パッド部材20との位置ずれを抑制することが可能となっている。
【0043】
[3.シートクッションS1の特徴]
本実施形態のシートクッションS1を備えた車両用シートSであり、シートクッションS1は、シートクッションパッドS11と、シートクッションパッドS11の内部に設けられた衝撃吸収部材30と、を有している。
【0044】
(衝撃吸収部材30)
衝撃吸収部材30は、
図3及び
図6に示されるように、上下方向の上面31及び下面32と、前後方向の前面33a及び後面33bと、シート幅方向の右側面34a及び左側面34bとによって囲まれた中空形状を有している。また、衝撃吸収部材30の上面31には、後方に向かうにつれて下方へと傾斜した傾斜面31aが形成されている。
【0045】
衝撃吸収部材30は、中空形状のブロー成形品であり、ウレタンパッドである第1パッド部材10よりも硬度が高く、一定の荷重値を超えると潰れて衝撃吸収を行うように形成されている。
【0046】
シートクッションパッドS11は、第1パッド部材10と、第1パッド部材10の下方に配置された第2パッド部材20と、を有している。そして、衝撃吸収部材30は第2パッド部材20の上に配置されている。換言すると、衝撃吸収部材30の下面32は、第2パッド部材20によって支持されている。具体的には、衝撃吸収部材30は、第1パッド部材10の第1裏面10bと、第2パッド部材20の第2表面20aとの間に配置されている。このように構成された本実施形態の車両用シートSでは、第2パッド部材20によって下方から衝撃吸収部材30を適切に支持することが可能となる。
【0047】
また、
図6に示されるように、シート幅方向における中央の衝撃吸収部材30は、第2パッド部材20の第2表面20aが備える平坦部20cの上に配置されている。ここで平坦部20cとは、凹部等が形成されていない平坦な面を有する部位のことである。このような構成によれば、第2パッド部材20の平坦部20cによって衝撃吸収部材30を面によって適切に支持することが可能となる。
【0048】
また、
図3に示されるように、衝撃吸収部材30は少なくとも一部が、第2パッド部材20に形成された凹部26の中に配置されている。より詳細には、衝撃吸収部材30は、その下面32が、第2パッド部材20が備える凹部26の中に配置されている。このような構成によれば、第2パッド部材20に対する衝撃吸収部材30の位置が安定したものとなり、適切に衝撃吸収部材30を支持することが可能となる。
【0049】
また、衝撃吸収部材30は、第2パッド部材20に形成された凹部26や開口部22を避けた位置に配置されている。具体的には、シート幅方向における中央の衝撃吸収部材30は、シート幅方向において複数の凹部26の間の位置であって、開口部22の前方に配置されている。このような構成によれば、凹部26や開口部22を避けることで第2パッド部材20によって衝撃吸収部材30を適切に支持することが可能となる。
【0050】
また、第2パッド部材20には、複数の凹部26が形成されており、シート幅方向において、衝撃吸収部材30は、複数の凹部26の間の位置に配置されている。このような構成によれば、第2パッド部材20に形成された複数の凹部26の間の位置において衝撃吸収部材30を適切に支持することが可能となる。
【0051】
また、第2パッド部材20は、前方から後方に向かって下方へと傾斜した傾斜部25を備え、衝撃吸収部材30は、傾斜部25の上に配置されている。具体的には、衝撃吸収部材30は、シート幅方向において傾斜部25と重なる位置(同じ位置)に配置されている。このような構成によれば、第2パッド部材20に形成された傾斜部25に衝撃吸収部材30を配置することで荷重の入力方向に沿って衝撃吸収部材30を適切に支持することが可能となる。
【0052】
また、第2パッド部材20は、部品を取り付けるための第1ブラケットB1及び第2ブラケットB2を備え、シート幅方向において、中央に配置された衝撃吸収部材30は、第1ブラケットB1及び第2ブラケットB2とは異なる位置に配置されている(
図6)。このような構成によれば、第2パッド部材20が備える第1ブラケットB1及び第2ブラケットB2を避けた位置において衝撃吸収部材30を適切に支持することが可能となる。
【0053】
また、第2パッド部材20は、ブラケットとして、第1ブラケットB1と、シート幅方向において第1ブラケットB1と離間した第2ブラケットB2と、を備え、衝撃吸収部材30は、シート幅方向において、第1ブラケットB1と第2ブラケットB2の間に配置されている。このような構成によれば、第2パッド部材20が備える2つのブラケットの間の位置において衝撃吸収部材30を適切に支持することが可能となる。
【0054】
また、第2パッド部材20は、第1パッド部材10よりも硬いと好適である。具体的には、第1パッド部材10をウレタンフォーム等の発泡樹脂から構成される緩衝部材として、第2パッド部材20を発泡ポリプロピレン(EPP)から構成される支持部材とするとよい。このような構成によれば、第1パッド部材10よりも硬い第2パッド部材20によって衝撃吸収部材30を強固に支持することが可能となる。
【0055】
また、シートクッションS1は、シートクッションパッドS11を覆うトリムカバーS12を有している。このような構成によれば、第1パッド部材10及び第2パッド部材20を有するシートクッションS1を備えた車両用シートSにおいて衝撃吸収部材30を適切に支持することが可能となる。
【0056】
[4.変形例]
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態では、シート幅方向の中央の衝撃吸収部材30が、シート幅方向において凹部26を避けた位置に配置されていたが、衝撃吸収部材30の大部分が、シート幅方向において凹部26を避けた位置に配置されていれば、衝撃吸収部材30がシート幅方向において凹部26と重なっていてもよい。
【0057】
以上、本実施形態に係る乗物用シートについて、車両用シートを例として説明した。本実施形態に係るシートクッションは、着座者に衝撃が発生しうるシートのシートクッション、特に、衝撃発生時に着座者の腰部に対して沈み込みが発生し得るシートのシートクッションであれば、特に用途についての制限はない。例えば、本発明のシートクッションは、車両以外の乗物内で使用される乗物用シートのシートクッションとしても利用可能である。
【符号の説明】
【0058】
S 車両用シート(乗物用シート)
S1 シートクッション
S11 シートクッションパッド
S12 トリムカバー(表皮材)
S12a 表皮端部
T1 第1吊りこみ部(右側吊りこみ部)
T2 第2吊りこみ部(左側吊りこみ部)
S2 シートバック
S3 ヘッドレスト
10 第1パッド部材
10a 第1表面
10b 第1裏面
11 膨出部
12 吊り込み用穴
13 係合凸部
14 後方延出部
t1 第1吊りこみ溝
t2 第2吊りこみ溝
20 第2パッド部材
20a 第2表面
20b 第2裏面
20c 平坦部
21 後面部
22 開口部
23 表皮係止部
24 ガイド溝
25 傾斜部
26 凹部
27 ワイヤ
28 係合凹部
29 係止部
B1 第1ブラケット(ブラケット)
Ba 埋設部
Bb 貫通孔
Bc 突出部
B2 第2ブラケット(ブラケット)
30 衝撃吸収部材
31 上面
31a 傾斜面
32 下面
33a 前面
33b 後面
34a 右側面
34b 左側面