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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】カムクラッチ
(51)【国際特許分類】
   F16D 41/08 20060101AFI20241204BHJP
   F16D 41/06 20060101ALI20241204BHJP
   F16D 41/07 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
F16D41/08 A
F16D41/06 A
F16D41/07 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021095680
(22)【出願日】2021-06-08
(65)【公開番号】P2022187603
(43)【公開日】2022-12-20
【審査請求日】2024-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】中川 栄一
(72)【発明者】
【氏名】嶌中 祐仁
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/235137(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 41/06-41/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸上に相対回転可能に設けられている少なくとも1組の内輪及び外輪と、前記内輪と前記外輪の間の周方向に設けられている複数のカムと、前記複数のカムを径方向に付勢する付勢手段とを備えたカムクラッチであって、
前記外輪及び前記内輪の両方向の相対的な回転動作を許容するフリー状態、前記外輪及び前記内輪の正逆いずれか一方向の相対的な回転動作を許容するワンウェイクラッチ状態、前記外輪及び前記内輪の両方向の相対的な回転動作を禁止するロック状態のいずれか2つ以上を切り換える動作モード切換機構を備え、
前記動作モード切換機構は、前記内輪及び前記外輪の回転動作とは独立して軸方向に移動可能なカム姿勢変更部を備え、
前記複数のカムの一部または全部は、側面から前記カム姿勢変更部側に突出するように設けられた係合部を備え
前記カム姿勢変更部は、前記係合部が嵌合する円周状の溝形状に形成され、前記係合部と摺動しつつ前記係合部の半径方向位置を両方向で拘束するように設けられていることを特徴とするカムクラッチ。
【請求項2】
前記複数のカムは、前記外輪又は前記内輪の一方向回転時に前記外輪及び前記内輪と摩擦係合するように傾倒する第1のカムと、前記外輪又は前記内輪の他方向回転時に前記外輪及び前記内輪と摩擦係合するように傾倒する第2のカムとを含むことを特徴とする請求項1に記載のカムクラッチ。
【請求項3】
少なくとも2組の前記外輪及び前記内輪が、それぞれ前記動作モード切換機構を挟んで軸方向両側に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のカムクラッチ。
【請求項4】
前記第1のカムは、前記動作モード切換機構の一方の側方に配置された前記外輪及び前記内輪の間に設けられ、
前記第2のカムは、前記動作モード切換機構の他方の側方に配置された前記外輪及び前記内輪の間に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のカムクラッチ。
【請求項5】
前記第1のカムと前記第2のカムとが同一円周上に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のカムクラッチ。
【請求項6】
前記第1のカムと前記第2のカムとが交互に並ぶよう配置されていることを特徴とする請求項5に記載のカムクラッチ。
【請求項7】
少なくとも2組の前記外輪及び前記内輪が、同一円周上に異なる直径で二重に設けられていることを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれかに記載のカムクラッチ。
【請求項8】
同軸上に相対回転可能に設けられている少なくとも1組の内輪及び外輪と、前記内輪と前記外輪の間の周方向に設けられている複数のカムと、前記複数のカムを径方向に付勢する付勢手段とを備えたカムクラッチであって、
前記外輪及び前記内輪の両方向の相対的な回転動作を許容するフリー状態、前記外輪及び前記内輪の正逆いずれか一方向の相対的な回転動作を許容するワンウェイクラッチ状態、前記外輪及び前記内輪の両方向の相対的な回転動作を禁止するロック状態のいずれか2つ以上を切り換える動作モード切換機構を備え、
前記動作モード切換機構は、前記内輪及び前記外輪の回転動作とは独立して軸方向に移動可能なカム姿勢変更部を備え、
前記複数のカムの一部または全部は、側面から前記カム姿勢変更部側に突出するように設けられた係合部を備え、
少なくとも2組の前記外輪及び前記内輪が、それぞれ前記動作モード切換機構を挟んで軸方向両側に設けられていることを特徴とするカムクラッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外輪及び内輪の両方向の相対的な回転動作を許容するフリー状態、前記外輪及び前記内輪の正逆いずれか一方向の相対的な回転動作を許容するワンウェイクラッチ状態、外輪及び内輪の両方向の相対的な回転動作を禁止するロック状態のいずれか2つ以上を切り換える動作モード切換機構を備えたカムクラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
回転力の伝達と遮断を制御するクラッチとして、正転方向及び逆転方向の両方向に駆動と空転が切り換え可能な2方向クラッチが知られている。
2方向クラッチのある種のものは、内輪及び外輪の相対的な回転動作を禁止(回転力を伝達)するロック状態と、内輪及び外輪の相対的な回転動作を許容(回転力を遮断)するフリー状態との切り換えを、カム又はスプラグを傾倒させることで行う構成とされている(例えば特許文献1,特許文献2参照。)。
【0003】
また、特許文献3には、動力伝達部材としてのローラを外輪の内周に形成されたカム面の中立位置あるいは一方の係合位置に保持する保持器を制御して、2方向フリーモード、1方向ロックモード及び2方向ロックモードの3つの動作モードの切り換えが可能な切換機構を備えた2方向クラッチが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-220509号公報
【文献】特開平11-182589号公報
【文献】特開2014-219015号公報
【文献】特開2020-190255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、特許文献1に記載の2方向クラッチにおいては、入力側回転体が出力側回転体に対して相対回転したとき、スプラグが入力側回転体の回転方向と同方向に傾くことで、入力側回転体と出力側回転体との係合及び切り離しが切り換えられる。このため、回転方向が切り換わる際に時間ロスが発生し応答性が悪いという問題がある。また、特許文献2に記載の2方向クラッチにおいても同様の問題がある。
特許文献3に記載の2方向クラッチは、板ばね状の部材で両方向同時に動力伝達可能にしている。しかしながら、摩擦による動力伝達のため、2方向クラッチの体格に対して伝達可能なトルクが小さいといった問題がある。
【0006】
このような問題点を解決し、簡単な構造で、動作モードの切り換えが可能であり、応答性が高く、所期のトルク容量を確保することのできるカムクラッチを提供することを目的として、出願人は特許文献4に示す動作モード切換機構を有したカムクラッチを発明した。
特許文献4に記載のカムクラッチの第1、第2、第4実施形態では、外輪を回転体として使用する場合、動作モード切換機構を固定側から操作するためには複雑な機構が必要となるという課題があった。
また、第3実施形態では、特殊な形状のカムが必要となり、また、軸方向のサイズが大きくなるという課題があった。
【0007】
本発明は、これらの問題点を解決するものであり、簡単な構造で、動作モードの切り換えが可能であり、応答性が高く、所期のトルク容量を確保することができるとともに、外輪を回転体と使用しても構造が複雑化せず、軸方向サイズも小さくすることができるカムクラッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、同軸上に相対回転可能に設けられている少なくとも1組の内輪及び外輪と、前記内輪と前記外輪の間の周方向に設けられている複数のカムと、前記複数のカムを径方向に付勢する付勢手段とを備えたカムクラッチであって、前記外輪及び前記内輪の両方向の相対的な回転動作を許容するフリー状態、前記外輪及び前記内輪の正逆いずれか一方向の相対的な回転動作を許容するワンウェイクラッチ状態、前記外輪及び前記内輪の両方向の相対的な回転動作を禁止するロック状態のいずれか2つ以上を切り換える動作モード切換機構を備え、前記動作モード切換機構は、前記内輪及び前記外輪の回転とは独立して軸方向にカム姿勢変更部を備え、前記複数のカムの一部または全部は、側面から前記カム姿勢変更部側に突出するように設けられた係合部を備え、前記カム姿勢変更部は、前記係合部が嵌合する円周状の溝形状に形成され、前記係合部と摺動しつつ前記係合部の半径方向位置を両方向で拘束するように設けられていることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0009】
本請求項1に係る発明によれば、カム姿勢変更部を軸方向に移動させるだけで係合部を備えたカムを所定方向に傾倒させることができる。このため、カムクラッチの動作モード切り換えに際して高い応答性を得ることができる。しかも、カムによる動力伝達機構であるため、伝達可能なトルク容量が摩擦力により制限されることがなく、所期のトルク容量を確保することができる。
また、カム姿勢変更部の移動に伴ってカムの係合部の半径方向の位置を拘束する作用によってカムが傾倒されるため、カム姿勢変更部とカムとの摺動音や、フリー状態からロック状態への移行時にカムが軌道面に接触する際の騒音が生ずることがない。さらにまた、カムは内輪の軌道面及び外輪の軌道面に対して転がり接触し、カムと軌道面との間で滑りは生じないため、カムと内輪又は外輪との空転摩耗が生ずることを回避することができる。
さらに、動作モード切換機構は、内輪及び外輪の回転動作とは独立して軸方向に移動可能なカム姿勢変更部と、カムの側面からカム姿勢変更部側に突出するように設けられた係合部とからなるため、従来のカムとほぼ同じカムを使用できるとともに、外輪を回転体と使用しても、構造が複雑化せず、軸方向の寸法の増加も僅かとすることができる。
【0010】
また、カム姿勢変更部は、係合部が嵌合する円周状の溝形状に形成され、係合部と摺動しつつ係合部の半径方向位置を両方向で拘束するように設けられていることにより、カム姿勢変更部の軸方向移動によりカムの姿勢を拘束することができ、カム姿勢変更部に対してカムが周方向に移動しても常にカムの姿勢を維持可能となるため、外輪を回転体と使用しても、極めて簡単な構成で、動作モードの切り換えを確実に行うことが可能となる。
【0011】
本請求項2に記載の構成によれば、第1のカムと第2のカムは互いに係合する回転方向が異なるため、第1のカムと第2のカムのいずれか一方又は両方の姿勢を変更することにより、正転方向及び逆転方向の両方向の回転を許容する両方向フリーモード、正転方向及び逆転方向のいずれか一方向に対してのみ回転を許容する一方向ロックモード、並びに、正転方向及び逆転方向の両方向の回転を禁止する両方向ロックモードの4つの動作モードの切り換えを行うことが可能となる。
【0012】
本請求項3に記載の構成及び請求項8に係る発明によれば、軸方向に並列する2組のカムクラッチ機構の中央に共通する動作モード切換機構を設けることで、部品点数の削減を図ることができ、カムクラッチの構造の簡素化を図ることができる。
本請求項4に記載の構成によれば、共通する動作モード切換機構の動作により、設けることで、部品点数の削減を図ることができ、カムクラッチの構造の簡素化を図ることができる。
【0013】
本請求項5に記載の構成によれば、第1のカム及び第2のカムに共通のカム姿勢変更部によって第1のカム及び第2のカムの姿勢を制御することができるので、カムクラッチの構造の煩雑化や大型化を回避することができる。
そして、本請求項6に記載の構成によれば、第1のカム及び第2のカムに共通のカム姿勢変更部によって第1のカムの姿勢及び第2のカムの姿勢を選択的に制御することが可能となる。
【0014】
本請求項7に記載の構成によれば、軸方向の寸法の増加を抑制しつつ十分に高いトルク容量を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係るカムクラッチの構成を示す分解斜視図である。
図2図1に示すカムクラッチの中心軸を含む面の断面図である。
図3図1に示すカムクラッチの平面図であって、動作モード切換機構を省略した状態を示す図である。
図4図2に示す断面図の一部拡大図である。
図5図1に示すカムクラッチのカムの斜視図である。
図6図1に示す動作モード切替機構の斜視図である。
図7】本発明の第1実施形態に係るカムクラッチの他の実施形態の姿勢変更部と係合部の形状を概略的に示す図である。
図8】本発明の第2実施形態に係るカムクラッチの中心軸を含む面の断面図である。
図9】本発明の第3実施形態に係るカムクラッチの中心軸を含む面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施例を図1図9を参照して説明する。但し、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
本発明の第1実施形態に係るカムクラッチ100は、図1及び図2に示すように、同一の軸上に相対回転可能に設けられた内輪110及び外輪120と、互いに対向する内輪110の外周面と外輪120の内周面との間に配設されたカム機構と、カムクラッチ100の動作モードを切り換える動作モード切換機構140とを有している。
【0018】
カム機構は、同一円周上において周方向に配列された複数のカム131と、複数のカム131に設けられた保持溝132に掛け回されて径方向内方に付勢する付勢手段(図示せず)とから構成されている。カム131は、周方向に殆ど隙間なく配設するのが好ましい。このような構成とされることにより、高い伝達トルク容量を実現することができる。
本実施形態に係るカム機構は、互いに係合する回転方向が異なる第1のカム及び第2のカムを含む。以下においては、第1のカム及び第2のカムを特に区別して言及する場合を除いて、カム131と表現することもある。
【0019】
カム131の側面には、図5に示すように、動作モード切換機構140のカム姿勢変更部141と係合可能な係合部136が突出するように設けられている。
カム機構において第1のカム及び第2のカムの配列は、特に限定されるものではないが、図3にも示すように、第1のカム131a及び第2のカム131bが交互に並ぶよう配列されることが好ましい。このような構成とされることにより、第1のカム131a及び第2のカム131bに共通の動作モード切換機構140によって第1のカム131a及び第2のカム131bの姿勢を制御することができるので、カムクラッチ100の構造の煩雑化や大型化を回避することができる。また、第1のカム131aの姿勢及び第2のカム131bの姿勢を同時に制御することも可能となる。
また、第1のカム131a及び第2のカム131bは同一円周上に交互に並んでいる必要はなく、従って、第1のカム131a及び第2のカム131bの数は、同じであっても、異なっていてもよい。
【0020】
第1のカム131a及び第2のカム131bは、例えば互いに同一の外形形状を有し、係合部136のみ異なる側面に設けられたものであって、第1のカム131aを表裏反転させたものを第2のカム131bとして用いている。なお、第1のカム131a及び第2のカム131bは互いに異なる外形形状を有するものであってもよいが、互いに同一の外形形状を有するものであることにより、部品点数の削減が図られる。
第1のカム131aは、例えば、外輪120の一方向回転時に内輪110及び外輪120と摩擦係合し、外輪120の他方向回転時には内輪110及び外輪120から離脱する方向に傾倒するように構成されている。
従って、第1のカム131aを表裏反転させて用いられる第2のカム131bは、外輪120の他方向回転時に内輪110及び外輪120と摩擦係合し、外輪120の一方向回転時には内輪110及び外輪120から離脱する方向に傾倒するように構成されたものとなる。
【0021】
付勢手段(図示せず)としては、例えば環状のガータースプリングが用いられており、ガータースプリングは、第1のカム131a及び第2のカム131bの各々の保持溝132を連通するように設けられている。
付勢手段は、複数のカム131の各々を径方向内方又は径方向外方のいずれかの方向に付勢する弾性体であればよく、また、複数の板バネ又はねじりバネなどを用いてもよい。
【0022】
本実施形態に係るカムクラッチ100は、内輪110及び外輪120の相対的な回転動作が許容されるフリー状態と、内輪110及び外輪120の相対的な回転動作が禁止されるロック状態とを切り換える動作モード切換機構を備えている。
【0023】
本実施形態の動作モード切換機構140は、内輪110及び外輪120の回転動作とは独立して軸方向に移動可能に設けられカム131の姿勢を拘束するカム姿勢変更部141を備えている。
本実施形態の動作モード切換機構140は、図2、4、6等に示すように、内輪110及び外輪120と相対回転可能に設けられた円環板状の本体部142と、カム131の係合部136と当接した際に、係合部136と摺動しつつ係合部136の半径方向位置を拘束するように本体部142のカム131側の側方に円周状に設けられたカム姿勢変更部141とを備えている。
カム姿勢変更部141は、本体部142を軸方向に移動することにより、カム131の姿勢の固定・解除を切り替えるように構成されている。
係合部136は、カム姿勢変更部141によって半径方向位置が変更されることでカム131が内輪110及び外輪120に対して同時に接触しない状態となる位置、例えば、カム131と内輪110との接触点の垂線及びカム131より外周側に設けられている。
本実施形態では、カム姿勢変更部141が円周状の溝形状に構成されているが、カム姿勢変更部141は、カム131の姿勢の固定・解除が可能なものであれば内周側のみの一条の円周上の突出部であってもよく、係合部136の形状に応じていかなる形状であってもよい。
また、本実施形態では本体部142が円環板状であり、カム姿勢変更部141が一体に形成されているが、カム姿勢変更部141を軸方向に移動可能であれば、レバー状等の他の形状であってもよく、カム姿勢変更部141とは独立して別体に構成されてもよい。
さらに、内輪110と外輪120の間に、第1のカム131a及び第2のカム131b以外に、ベアリングローラ等を適宜配列してもよい。
【0024】
以下、上記第1実施形態に係るカムクラッチ100の動作について説明する。
先ず、カム姿勢変更部141が係合部136に接することなく、カム131の姿勢が拘束されない位置にあるときに、内輪110に対する外輪120の正転方向及び逆転方向の両方向の相対回転を禁止するロック状態にあるものとする。すなわち、カムクラッチ100はツーウェイクラッチとして機能する。
本体部142を手動によりあるいは適宜の駆動源によりカム131側に移動させると、カム姿勢変更部141が係合部136に係合して、カム131a、bの両方の姿勢を拘束し、カム131a、bが内輪110及び外輪120に対して同時に接触しない状態として、カムクラッチ100を両方向の相対的な回転動作を許容するフリー状態として機能させることができる。
【0025】
以上において、カム131a、bを逆方向のものとしたが、カム131a、bいずれかのみを使用することで、ワンウェイクラッチ状態とフリー状態とを切り替える構成としてもよい。
また、カム131a、bのいずれか一方にのみ係合部136を設け、本体部142の移動によりカム姿勢変更部141といずれか一方の係合部136のみが係合することで、ロック状態とワンウェイクラッチ状態とを切り替える構成としてもよい。
さらに、図7に示すように、カム姿勢変更部141の溝を深くし、カム131a、bの一方の係合部136を長くしカム姿勢変更部141の溝内を軸方向にも摺動可能として、カム姿勢変更部141の軸方向移動の中間位置でカム131a、bの長い方の係合部136とのみ係合する状態を可能とすることで、ロック状態、ワンウェイクラッチ状態及びフリー状態の3つを切り替える構成としてもよい。
【実施例2】
【0026】
図8は、本発明の第2実施形態に係るカムクラッチの構成の中心軸を含む面の断面図である。
このカムクラッチ200は、第1実施形態に係るカムクラッチ100と同様の構成のカム機構を軸方向に並列に配置し、動作モード切換機構240の本体部242を中央側で共用するようにしたものである。
【0027】
動作モード切換機構240は、内輪210及び2つの外輪220と相対回転可能に設けられた円環板状の本体部242と、両側方のカム231に対応して本体部242の両側方に円周状に設けられたカム姿勢変更部241とを備えている。
【0028】
このカムクラッチ200においては、動作モード切換機構240は、両側方のカム姿勢変更部241がいずれも両側のカム231の係合部236にすることがない位置、一方のカム姿勢変更部241が係合部236に係合する位置、他方のカム姿勢変更部241が係合部236に係合する位置の3位置を切り替えるように設定されている。
ことにより、本体部242を手動によりあるいは適宜の駆動源により軸方向に駆動させることにより、両側のクラッチ機構をロック状態とする中立位置、一方のみ両方向の相対的な回転動作を許容するフリー状態とし他方をロック状態とする位置、その逆の位置の3つの動作状態に切り替えることができる。
【0029】
なお、中立位置を省略して、2つの動作状態を切り替えるようにしてもよい。
また、動作モード切換機構240の両側のカム機構は、それぞれ第1実施形態で例示したいずれの切り替え機能を持つものでもよく、異なるものを適宜組み合わせてもよい。
例えば、図7に示す形態のカム機構を両側に備えた場合、5つの動作状態に切り替えることが可能となる。
また、本体部242の形状や構造を変更して、両側のカム姿勢変更部241をそれぞれ独立して軸方向移動させるように構成し、両側のクラッチ機構で同時にカム姿勢変更部241と係合部236を係合可能としてもよい。
【実施例3】
【0030】
図9は、本発明の第3実施形態に係るカムクラッチの構成の中心軸を含む面の断面図である。
このカムクラッチ300は、第1実施形態に係るカムクラッチ100と同様の構成のカム機構を二重構造としたもので、内輪310と中間輪350の間に内側のクラッチ機構、中間輪350と外輪320の間に外側のクラッチ機構を配置したものである。
中間輪350は、内側のクラッチ機構においては外輪に相当し、外側のクラッチ機構においては内輪に相当する。
【0031】
動作モード切換機構340は、内輪310、中間輪350及び外輪320と相対回転可能に設けられた円環板状の本体部342と、内外のカム331に対応して本体部342のカム331側の側方に円周状に設けられた2重のカム姿勢変更部341とを備えている。
このカムクラッチ300においては、動作モード切換機構340の内外のカム姿勢変更部341と、内外のカム331の係合部336との関係は、それぞれ第1実施形態に係るカムクラッチ100と同様のものである。
【0032】
2重のカム機構は、それぞれ第1実施形態で例示したいずれの切り替え機能を持つものでもよく、異なるものを適宜組み合わせればよい。
また、内外のカム姿勢変更部341の溝の深さや、内外のそれぞれのカム331の係合部336の長さを適宜組み合わせることにより、軸方向の移動位置に応じた複数の状態を切り替え可能としてもよい。
さらに、本体部342の形状や構造を変更して、内外のカム姿勢変更部341をそれぞれ独立して軸方向移動させるように構成し、内外のカム機構の状態を独立して制御可能としてもよい。
【0033】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【符号の説明】
【0034】
100、200、300 ・・・ カムクラッチ
110、210、310 ・・・ 内輪
120、220、320 ・・・ 外輪
131、231、331 ・・・ カム
131a ・・・ 第1のカム
131b ・・・ 第2のカム
132 保持溝
136 ・・・ 係合部
140、240、340 ・・・ 動作モード切換機構
141、241、341 ・・・ カム姿勢変更部
142、242、342 ・・・ 本体部
350 ・・・ 中間輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9